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JP7430960B2 - 植物の培土、培土を含む栽培セット、培土を用いた栽培方法、及び、培土付き植物の苗 - Google Patents

植物の培土、培土を含む栽培セット、培土を用いた栽培方法、及び、培土付き植物の苗 Download PDF

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Description

本開示は、植物の培土、培土を含む栽培セット、培土を用いた栽培方法、及び、培土付き植物の苗に関する。
国連食糧農業機関によると、問題無く作物を生産できる農地面積は、世界の全農地面積の40%程度である。現在ではさらに年間約500万haの農地が劣化しており、農地の確保に関する新たな取り組みがなされない限り、2050年には、世界の1人当たりの耕作可能地は、1960年における耕作可能地の水準の1/4にまで減少すると予想されている。そのため、生産性を重視する慣行農法から、環境を重視する持続的農業への変換が必要となっている。
生産性を重視する慣行農法では、特定の農地で特定の種類の作物のみを栽培する場合がある。しかし同じ場所で同じ作物を栽培し続けることで、ある特定の種類の病原体(例えば病害虫又は病原菌等)の増殖が助長され、生態系のバランスが崩れ、そして作物の生産はダメージを受ける。これは、病原体の多くは作物に対して宿主特異性を有するからである。そこで、この問題を解消する方法として、根部エンドファイトを用いた栽培方法が知られている。根部エンドファイト(Dark-Septate Endophyte;DSE)とは、植物根内をすみかとする、植物と共生関係にある有用微生物である。
植物と共生関係にある有用微生物を用いた栽培方法としては、例えば、Fusarium(フザリウム)属の菌類により萎黄病が誘発されたイチゴの苗に、菌類であるCladophialophora chaetospira SK51(クラドフィアロフォラ ケトスピラ SK51)を共生させるという栽培方法が報告されている(例えば、Wiwiek Harsonowati et al., The Effectiveness of a Dark Septate Endophytic Fungus, Cladophialophora chaetospira SK51, to Mitigate Strawberry Fusarium Wilt Disease and With Growth Promotion Activities, Front. Microbiol., 2020.Apr.15, Vol.11, Art.585)。
しかしながら、現在では生産性を重視する慣行農法が主流であり、環境を重視する持続的農業のための知見は限られている。
本開示は上記に鑑みてなされたものであり、本開示は、通常は植物の生育に適さない条件下において植物の成長又は花芽形成を促進できる植物の培土、前記培土を含む栽培セット、前記培土を用いた栽培方法、及び、培土付き植物の苗を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の態様が含まれる。
<1> Cladophialophora(クラドフィアロフォラ)属の菌類と、強酸性の有機栽培土壌、強酸性の慣行栽培土壌、及び弱酸性~中性の有機栽培土壌のいずれか1種類の土壌と、を含む植物の培土。
<2> 前記Cladophialophora(クラドフィアロフォラ)属の菌類はCladophialophora chaetospira(クラドフィアロフォラ ケトスピラ)である、前記<1>に記載の植物の培土。
<3> Exophiala(エクソフィアラ)sp. SK47又はその変異株である菌類と、強酸性の有機栽培土壌又は強酸性の慣行栽培土壌と、を含む植物の培土。
<4> 前記強酸性はpH3以上pH5未満である、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の植物の培土。
<5> 前記植物は果菜類の植物である、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の植物の培土。
<6> 前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の植物の培土、及び植物体を含む、栽培セット。
<7> 前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の植物の培土を用いて植物を栽培する栽培工程を含む、植物の栽培方法。
<8> 前記栽培工程において、低温及び短日条件で花芽形成が起こる植物を、高温長日条件で栽培することを含む、前記<7>に記載の植物の栽培方法。
<9> 前記高温長日条件が、気温が15℃超25℃以下の範囲内であり、日長が12時間超24時間以下の範囲内である、前記<8>に記載の植物の栽培方法。
<10> 前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の植物の培土と、植物の苗と、を含む、培土付き植物の苗。
本開示によれば、通常は植物の生育に適さない条件下において植物の成長又は花芽形成を促進できる植物の培土、前記培土を含む栽培セット、前記培土を用いた栽培方法、及び、植物の苗が提供される。
図1は、イチゴの生育状態を示す写真である。 図2は、イチゴの地上部の乾燥質量を示すグラフである。 図3は、イチゴの根の乾燥質量を示すグラフである。 図4は、イチゴの果実形成数を示すグラフである。 図5は、イチゴの花芽形成までの日数を示すグラフである。
以下、本開示の一実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の開示において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ下限値及び上限値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本文中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
≪第一実施形態の植物の培土≫
本開示の第一実施形態の植物の培土は、Cladophialophora(クラドフィアロフォラ)属の菌類と、強酸性の有機栽培土壌、強酸性の慣行栽培土壌、及び弱酸性~中性の有機栽培土壌のいずれか1種類の土壌と、を含む。
Cladophialophora(クラドフィアロフォラ)属の菌類と、強酸性の有機栽培土壌、強酸性の慣行栽培土壌、及び弱酸性~中性の有機栽培土壌のいずれか1種類の土壌と、を含む培土は、通常は植物の生育に適さない条件下において植物の成長又は花芽形成を促進できる培土である。
第一実施形態の植物の培土の作用は明確ではないが、以下のように推定される。
培土に含まれるCladophialophora(クラドフィアロフォラ)属の菌類は、植物の根の周囲において、網目状に菌糸を伸ばす。そして菌類は、植物の根の表面に付着すると、付着器を形成し、植物の根の細胞内部へ侵入し、定着し、つまり菌類と植物との共生が成立する。
共生が成立すると、例えば培土が有機栽培土壌の場合、菌類は、有機栽培土壌中に存在し、そのままでは植物にとって栄養として効率良く利用できないアミノ酸又はタンパク質等を植物に提供することが出来る。これにより、植物は、窒素及びリン等の栄養分を吸収しやすくなり、栄養分を自身の生育に利用する。さらに、例えば培土が強酸性の土壌の場合又は植物にとって気温若しくは日長が適していない条件で植物を栽培する場合では、菌類は、これらの環境ストレスに対する耐性を植物に付与する。
すなわち、有機栽培土壌、強酸性の土壌、又は、植物の成長や花芽形成に適していない温度若しくは日長のような条件下であっても、第一実施形態の植物の培土を用いて植物を栽培することで、植物の成長又は花芽形成が促進される。
なお、本開示は、上記推定機構には何ら制限されない。
なお本開示において、植物の成長が促進されたことは、地上部の乾燥質量が増加すること、又は根の乾燥質量が増加することによって確認することができる。
本開示において、植物の花芽形成が促進されたことは、形成される花芽数が増加すること、又は花芽形成までの日数が減少することによって確認することができる。あるいは、本開示において、植物の花芽形成が促進されることは、形成される果実数が増加すること、又は果実形成までの日数が減少することによって確認することができる。なお本開示において、果実は、真果のみを指すものではなく、例えばイチゴ及びイチジク等のような偽果も含まれる。
<菌類>
(Cladophialophora属の菌類)
本開示に係るCladophialophora(クラドフィアロフォラ)属の菌類としては、例えば、Cladophialophora chaetospira、Cladophialophora arxii、Cladophialophora tortuosa、Cladophialophora floridana、Cladophialophora psammophila、Cladophialophora boppii、Cladophialophora hachijoensis、Cladophialophora carrionii、Cladophialophoratumbae、及びCladophialophora tumulicola等が挙げられ、本開示の効果がより奏される観点から、Cladophialophora chaetospira(クラドフィアロフォラ ケトスピラ)であることが好ましい。
Cladophialophora chaetospiraとしては、受領番号NITE ABP-03539で寄託されたCladophialophora chaetospira SK51(以下、SK51又はSK51株ともいう)又はその変異株が好ましい。前記SK51株は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8に住所を有する、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センターに寄託されている(受領日:2021年9月28日)。
上記変異株は、通常は植物の生育に適さない条件下における植物の成長又は花芽形成を促進させる作用が、SK51株の当該作用と同等又はそれ以上であるような変異株であることがより好ましい。変異の導入法としては、ニトロソ化合物(例えばニトロソアミン又はニトロソグアニジン等)若しくはアルキル化剤(例えばEMS;ethyl methanesulfonate等)のような化学物質処理による方法、紫外線照射、又は放射線照射等が挙げられるが、これらに限定されない。得られた変異株が、SK51株と同等又はそれ以上の当該作用を示すか否かは、得られた変異株による植物の成長又は花芽形成への促進作用を測定し、これをSK51株による当該作用の測定結果と比較することで検定することができる。
(その他の菌類)
第一実施形態の植物の培土は、植物の成長又は花芽形成を促進する効果を損ねない範囲で、以上に例示した菌類以外の菌類を含んでもよい。なおその他の菌類の種類は特に限定されない。
(菌類の含有量)
第一実施形態の植物の培土中、菌類は、本開示の効果がより奏される観点から、菌類を含む資材として5質量%~10質量%含有するように調製することが好ましい。なお本開示において、菌類を含む資材は、以下の方法により得ることができる。詳細には、10mLの菌類の前培養液(例えば1×10 hyphal fragments/ml~1×10hyphal fragments/ml)を、滅菌された培養材(例えば小麦ふすま100g、米ぬか100g、腐葉土300g、及び滅菌水340mLの混合物)を入れた滅菌済みプラスチックバッグに添加する。次に、前記菌類の前培養液及び培養材の混合物を、チャンバー内で3週間~4週間培養することで、菌類を含む資材を得ることができる。
なお第一実施形態の植物の培土中、菌類数は、例えば、10hyphal fragments/g以上としてもよい。なお植物と菌類とは共生関係にあることから、植物の栽培時間の経過と共に、培土中の菌類数は増加していく。上記した菌類数は、第一実施形態の植物の培土で植物の栽培を開始する時点(例えば、植物の培土に植物の種を播種する時点、又は植物の培土に、別途生育させた3葉期である苗を植え替えて定植させる時点等)における菌類数であることが好ましい。
なお第一実施形態の植物の培土中の菌類数は、50質量%CMMY寒天培地に菌類をプレーティングした後に、23℃で7日間培養することで、測定することができる。
(菌類の形態)
第一実施形態の植物の培土中、菌類の形態は、菌類の生活環のいずれの形態であってもよい。菌類の形態は、例えば菌糸体であってもよく、胞子体であってもよい。
<土壌>
(有機栽培土壌)
本開示に係る有機栽培土壌は、農薬及び化学肥料を含まない土壌をいう。なお、有機栽培土壌に相対する土壌としては慣行栽培土壌(すなわち無機栽培土壌)が挙げられ、慣行栽培土壌は農薬及び/又は化学肥料を含む土壌を指す。
(強酸性の土壌)
本開示に係る強酸性の土壌は、本開示の効果がより奏される観点から、pH3以上pH5未満の土壌であることが好ましく、pH3以上pH4未満の土壌であることがより好ましい。
本開示において、弱酸性の土壌はpH5以上pH7未満の土壌である。
本開示において、弱酸性~中性の土壌はpH5以上pH7以下の土壌であり、このpHは、通常、慣行栽培土壌として用いられるpHである。
なお本開示において、土壌のpHは、以下の方法で測定される。具体的には、土壌のpHは、土壌と蒸留水を1:2.5(有機物含量が高い土壌を用いる場合は1:5が好ましい)の試料:溶液比率で混合し、往復振とう機で1時間以上攪拌した後、23℃±2℃にて、懸濁液のpHをガラス電極法により測定することで確認できる。
なお第一実施形態の植物の培土は、本開示の効果がより奏される観点から、Cladophialophora(クラドフィアロフォラ)属の菌類と、強酸性の有機栽培土壌、強酸性の慣行栽培土壌、及び弱酸性~中性の有機栽培土壌のいずれか1種類の土壌と、を含み、これを植物の成長促進用培土又は植物の花芽形成促進用培土とすることが好ましい。
<その他の成分>
第一実施形態の植物の培土は、前記土壌及び前記菌類以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、固体媒質(例えば、ロイシン、メチオニン、若しくはフェニルアラニン等のアミノ酸、又はショ糖等)及び液体媒質(例えば、水、滅菌水、滅菌蒸留水、又は生理食塩水等)、本開示に係る菌類を培土中において安定的に保持するための成分(例えば、安定化剤又は等張化剤等)、及び本開示に係る菌類の増殖促進のための成分(例えば、麦芽エキス培地(MEB)、CM麦芽酵母培地(CMMY)(好ましくはCM寒天8.5g、寒天15g、麦芽エキス10g、酵母エキス1g、及び滅菌水1Lの混合物)、小麦ふすま、米ぬか、又は腐葉土等)等が挙げられるがこれらに限定されない。なお第一実施形態の植物の培土中のその他の成分の含有量は、植物の成長又は花芽形成を促進する効果を損ねない範囲であれば、特に限定されない。
<植物>
第一実施形態の植物の培土は、通常は植物の生育に適さない条件下において植物の成長又は花芽形成を促進できることから、植物は果菜類の植物の培土として特に優れる。あるいは、植物の培土における植物の種類としては、バラ科の植物(例えば、イチゴ、アンズ、ウメ、サクランボ、スモモ(プラム)、西洋ナシ、中国ナシ、日本ナシ、ビワ、モモ、リンゴ、プルーン、ネクタリン、カリン、又はマルメロ等)であってもよい。なお第一実施形態の植物の培土において、植物の種類は、イチゴであることがより好ましい。
≪第二実施形態の植物の培土≫
本開示の第二実施形態の植物の培土は、Exophiala(エクソフィアラ)sp. SK47又はその変異株である菌類と、強酸性の有機栽培土壌又は強酸性の慣行栽培土壌と、を含む。
Exophiala(エクソフィアラ)sp. SK47又はその変異株である菌類と、強酸性の有機栽培土壌又は強酸性の慣行栽培土壌と、を含む培土は、通常は植物の生育に適さない条件下において植物の成長又は花芽形成を促進できる培土である。
第二実施形態の植物の培土の作用は明確ではないが、第一実施形態と同様に、Exophiala(エクソフィアラ)sp. SK47又はその変異株である菌類と植物とが共生することで、有機栽培土壌若しくは強酸性の土壌、又は植物の成長又は花芽形成に適していない温度若しくは日長のような条件下であっても、前記菌類を含む培土で植物を栽培することで、植物の成長又は花芽形成が促進される。
なお、本開示は、上記推定機構には何ら制限されない。
<菌類>
(Exophiala sp. SK47又はその変異株である菌類)
本開示に係るExophiala sp. SK47(以下、SK47又はSK47株ともいう)は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8に住所を有する、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センターに、受領番号NITE ABP-03540として寄託されている(受領日:2021年9月28日)。
上記Exophiala sp. SK47の変異株は、通常は植物の生育に適さない条件下における植物の成長又は花芽形成を促進させる作用が、SK47株の当該作用と同等又はそれ以上であるような変異株であることがより好ましい。Exophiala sp. SK47への変異の導入法としては、ニトロソ化合物(例えばニトロソアミン又はニトロソグアニジン等)若しくはアルキル化剤(例えばEMS;ethyl methanesulfonate等)のような化学物質処理による方法、紫外線照射、又は放射線照射等が挙げられるが、これらに限定されない。得られた変異株が、SK47株と同等又はそれ以上の当該作用を示すか否かは、得られた変異株による植物の成長又は花芽形成への促進作用を測定し、これをSK47株による当該作用の測定結果と比較することで検定することができる。
第二実施形態の植物の培土における、(その他の菌類)、(菌類の含有量)、(菌類の形態)、(有機栽培土壌)、及び(強酸性の土壌)の説明は、定義、例、及び好ましい態様等を含め、上記≪第一実施形態の植物の培土≫の項目で記載した説明と同様である。
なお第二実施形態の植物の培土は、本開示の効果がより奏される観点から、Exophiala(エクソフィアラ)sp. SK47又はその変異株である菌類と、強酸性の慣行栽培土壌と、を含み、これを植物の成長促進用培土とすることが好ましい。あるいは、第二実施形態の植物の培土は、本開示の効果がより奏される観点から、Exophiala(エクソフィアラ)sp. SK47又はその変異株である菌類と、強酸性の有機栽培土壌又は強酸性の慣行栽培土壌と、を含み、これを植物の花芽形成促進用培土とすることが好ましい。
第二実施形態の植物の培土における、<その他の成分>及び<植物>の説明は、定義、例、及び好ましい態様等を含め、上記≪第一実施形態の植物の培土≫の項目で記載した説明と同様である。
≪栽培セット≫
本開示に係る栽培セットは、第一実施形態の植物の培土又は第二実施形態の植物の培土、及び植物体を含む。本開示によれば、通常は植物の生育に適さない条件下においても植物の成長又は花芽形成を促進できる栽培セットが得られる。
<第一実施形態の植物の培土又は第二実施形態の植物の培土>
本開示に係る栽培セットにおける第一実施形態の植物の培土又は第二実施形態の植物の培土の説明は、定義、例、及び好ましい態様等を含め、上記≪第一実施形態の植物の培土≫又は≪第二実施形態の植物の培土≫の項目で記載した説明と同様である。
<植物体>
本開示に係る栽培セットにおいて、植物体は、例えば、植物の種子又は苗であってもよい。植物の種子は、例えば幼根又は幼芽が現れた種子であってもよい。植物の苗は、例えば、子葉のみが現れた苗、3葉期である苗、若しくはそれ以上の期である苗、親株から増殖した小苗若しくは孫苗(例えばランナー苗)、又は挿し木等で増殖したクローン苗であってもよい。
本開示に係る栽培セットにおける植物体について、その植物の種類の説明は、定義、例、及び好ましい態様等を含め、上記≪第一実施形態の植物の培土≫の項目で記載した<植物>の説明と同様である。
≪植物の栽培方法≫
本開示に係る植物の栽培方法は、第一実施形態の植物の培土又は第二実施形態の植物の培土を用いて植物を栽培する栽培工程を含む。本開示に係る植物の栽培方法によれば、通常は植物の生育に適さない条件下においても植物の成長又は花芽形成を促進できる。
<栽培工程>
(植物の培土)
本開示に係る植物の栽培方法における植物の培土の説明は、定義、例、及び好ましい態様等を含め、上記≪第一実施形態の植物の培土≫又は≪第二実施形態の植物の培土≫の項目で記載した説明と同様である。
(植物)
本開示に係る植物の栽培方法における植物の種類の説明は、定義、例、及び好ましい態様等を含め、上記≪第一実施形態の植物の培土≫の項目で記載した<植物>の説明と同様である。
(栽培条件)
本開示の効果がより奏される観点から、本開示に係る植物の栽培方法における栽培工程では、低温及び短日条件で花芽形成が起こる植物を、高温長日条件で栽培することを含むことが好ましい。
なお前記低温及び短日条件で花芽形成が起こる植物は、具体的には、気温5℃超15℃以下(すなわち低温)では日長に関係なく花芽を形成し、気温15℃超25℃以下(すなわち高温)では短日条件下でのみ花芽を形成し、気温25℃超では日長に関係なく花芽を形成しない植物であることが好ましい。なお本開示において、短日条件下とは、日長が0時間以上12時間以下であることを指す。
低温条件で花芽形成が起こる植物としては、例えば、イチゴ、ソラマメ、エンドウ、ブロッコリー、及びカリフラワー等が挙げられる。短日条件で花芽形成が起こる植物としては、例えば、イチゴ、ダイズ及びイネ等の穀物、並びにキク及びアサガオ等の花卉類等が挙げられる。
本開示に係る植物の栽培方法において、高温条件は、気温が15℃超25℃以下の範囲内であることが好ましく、20℃超25℃以下の範囲内であることがより好ましく、23℃であることがさらに好ましい。本開示に係る植物の栽培方法において、長日条件は、日長が12時間超24時間以下の範囲内であることが好ましく、14時間超24時間以下の範囲内であることがより好ましく、16時間であることがさらに好ましい。
なお本開示において、気温は、以下の方法で制御される。具体的には、植物の育成に用いた人工気象室内を一定の気温に保ち、さらに育成場所を数日毎にローテーションすることで、気温の均一性を担保できる。
<供給工程>
本開示に係る植物の栽培方法は、供給工程を含んでいてもよい。供給工程は、土壌に、Cladophialophora(クラドフィアロフォラ)属の菌類、又はExophiala(エクソフィアラ
)sp. SK47若しくはその変異株である菌類を供給する工程であればよい。
(供給方法)
土壌に菌類を供給する方法は、土壌と菌類とを混合する方法が好ましい。菌類を土壌に供給する際には、上記≪第一実施形態の植物の培土≫の項目で記載した<その他の成分>も土壌に供給してもよい。
(供給時期)
土壌に菌類を供給する時期は、土壌に植物の種を播種する時点、土壌に3葉期である苗を植え替える時点、又は土壌に苗を定植させる時点であってもよい。あるいは、菌類を予め混合した土壌に、植物の種を播種する、3葉期である苗を植え替える、又は土壌に苗を定植させることによって、供給を行ってもよい。なお、本開示の効果がより奏される観点から、供給工程においてのみならず、栽培工程においても、培土に菌類を再供給してもよい。
(供給量)
土壌に供給する菌類は、本開示の効果がより奏される観点から、植物の培土中、菌類を含む資材として5質量%~10質量%含有するように供給することが好ましい。なお本開示において、菌類を含む資材を得る方法は、上記≪第一実施形態の植物の培土≫の項目で記載したとおりである。
なお土壌に供給する菌類数は、例えば、培土中10hyphal fragments/g以上としてもよい。
≪培土付き植物の苗≫
本開示に係る培土付き植物の苗は、本開示に係る植物の培土と、植物の苗と、を含む、培土付き植物の苗である。
本開示によれば、通常は植物の生育に適さない条件下においても成長又は花芽形成を促進できる植物の苗が得られる。
本開示に係る培土付き植物の苗における植物の好ましい態様は、上記≪第一実施形態の植物の培土≫の項目で記載した<植物>の説明と同様である。
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。「%」も同様に質量基準である。
≪供給工程≫
<菌類を含む資材の調製>
植物の培土に含まれる菌類として、Exophiala sp. SK47(以下、SK47ともいう。)、Exophiala pisciphila SK48(以下、SK48ともいう。)、及びCladophialophora chaetospira SK51(以下、SK51ともいう。)の3種類の根部エンドファイトを準備した。なお前記Exophiala sp. SK47は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8に住所を有する、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センターに、受領番号NITE ABP-03540として寄託された菌類である。前記Cladophialophora chaetospira SK51は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8に住所を有する、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センターに、受領番号NITE ABP-03539として寄託された菌類である。この3種類の菌類を、それぞれ250mLの2質量%麦芽エキス培地(MEB)を入れた500mL容量のフラスコで、23℃及び120rpmの振とう条件で4週間培養した。培養後、培養液をろ過することで3種類の菌糸体をそれぞれ採取し、MEB培地に由来する物質の持ち込みが無いように、採取された菌糸体を含む液体が透明になるまで滅菌蒸留水で菌糸体を洗浄した。その後、得られた各菌糸体と滅菌蒸留水とを、コンタミネーションを防ぐためにミキサー及びラミナーフローを使用して、それぞれ1分間最低速度で混合することで、前培養液を得た。前培養液中の各菌類の生存率は、菌糸体を含む前培養液を直接50質量%CMMY寒天培地にプレーティングした後に、23℃で7日間培養することで測定した。
なお各菌類の大量生産は、以下の方法で行った。詳細には、10mLの各菌類の前培養液(1×10hyphal fragments/ml)を、滅菌された培養材(小麦ふすま100g、米ぬか100g、腐葉土300g、及び滅菌水340mLの混合物)を入れた滅菌済みプラスチックバッグにそれぞれ添加した。そして、前記各菌類の前培養液及び培養材の混合物を、チャンバー内で3週間~4週間培養することで、各菌類を含む資材をそれぞれ調製した。
<土壌の調製>
有機栽培土壌(すなわち、持続的農業モデルである土壌)としては、有機の土(サカタのタネ製)を準備した。慣行栽培土壌(無機栽培土壌ともいう。すなわち、慣行農法モデルである土壌)としては、パワフルソイル イチゴ専用 子苗用N50(宝産業株式会社製)を準備した。
前記準備した有機栽培土壌はpH6.0~pH6.5であっため、これを「弱酸性~中性の有機栽培土壌」とした。一方で、前記準備した有機栽培土壌に対してピートモス(刀川平和農園製)を適量混合することで、pH3.8~pH4.3である「強酸性の有機栽培土壌」を調製した。
前記準備した慣行栽培土壌はpH6.0~pH6.5であっため、これを「弱酸性~中性の慣行栽培土壌」とした。一方で、前記準備した慣行栽培土壌に対してピートモス(刀川平和農園製)を適量混合することで、pH3.8~pH4.3である「強酸性の慣行栽培土壌」を調製した。
なお土壌のpHは、以下の方法で測定した。具体的には、土壌のpHは、土壌と蒸留水を1:2.5(有機物含量が高い土壌を用いる場合は1:5)の試料:溶液比率で混合し、往復振とう機で1時間以上攪拌した後、23℃±2℃にて、懸濁液のpHをガラス電極法により測定した。
上記のいずれの土壌も、121℃及び30分の条件で2回加圧滅菌した。
<土壌への菌類の供給>
準備した、弱酸性~中性の有機栽培土壌、弱酸性~中性の慣行栽培土壌、強酸性の有機栽培土壌、及び強酸性の慣行栽培土壌に、それぞれ、Exophiala sp. SK47、Exophiala pisciphila SK48、又はCladophialophora chaetospira SK51の根部エンドファイトを含む資材を、培土中10質量%になるよう混合し、第一実施形態の植物の培土(以下、第一の培土ともいう)、第二実施形態の植物の培土(以下、第二の培土ともいう)、比較例としての培土、及び参考例としての培土を調製した。なお参考例において使用されている弱酸性~中性の慣行栽培土壌は、一般的に、植物の生育に適する条件であるといえる土壌である。
すなわち、以下に示す条件の培土が調製された。
(比較例1) 強酸性の有機栽培土壌
(実施例1;第二の培土)強酸性の有機栽培土壌及びExophiala sp. SK47
(比較例2) 強酸性の有機栽培土壌及びExophiala pisciphila SK48
(実施例2;第一の培土)強酸性の有機栽培土壌及びCladophialophora chaetospira SK51
(比較例3) 強酸性の慣行栽培土壌
(実施例3;第二の培土)強酸性の慣行栽培土壌及びExophiala sp. SK47
(比較例4) 強酸性の慣行栽培土壌及びExophiala pisciphila SK48
(実施例4;第一の培土)強酸性の慣行栽培土壌及びCladophialophora chaetospira SK51
(比較例5) 弱酸性~中性の有機栽培土壌
(比較例6) 弱酸性~中性の有機栽培土壌及びExophiala sp. SK47
(比較例7) 弱酸性~中性の有機栽培土壌及びExophiala pisciphila SK48
(実施例5;第一の培土)弱酸性~中性の有機栽培土壌及びCladophialophora chaetospira SK51
(参考例1) 弱酸性~中性の慣行栽培土壌
(参考例2) 弱酸性~中性の慣行栽培土壌及びExophiala sp. SK47
(参考例3) 弱酸性~中性の慣行栽培土壌及びExophiala pisciphila SK48
(参考例4) 弱酸性~中性の慣行栽培土壌及びCladophialophora chaetospira SK51
≪栽培工程≫
<植物の準備>
植物としては、四季なりイチゴ(ワイルドストロベリー、サカタのタネ製)を使用した。イチゴの種子の表面を、以下に示す方法で殺菌した。具体的には、種子を70質量%エタノール溶液に1分30秒間浸し、次亜塩素酸ナトリウム(1質量%有効塩素)溶液に1分間浸した。次に、種子を滅菌蒸留水で3回洗浄し、一晩乾燥させた後、1.5質量%水寒天培地上に置き、23℃で培養して発芽させ、3葉期になるまで4週間生育させた。
<植物の培土への定植>
直径6cmのポットに、準備した実施例1~実施例5、比較例1~比較例7、及び参考例1~参考例4の培土をそれぞれ入れて、前記培土に3葉期であるイチゴを定植した。
<栽培条件>
イチゴは、高温長日条件として、23℃の一定の気温及び日長16時間にて、定植後150日間栽培した。すなわち、本実施例における栽培工程では、低温処理は行わなかった。
なおイチゴの花芽形成には温度と日長が関係する。イチゴは、一般的に、気温5℃超15℃以下(すなわち低温)では日長に関係なく花芽を形成し、気温15℃超25℃以下(すなわち高温)では短日条件下でのみ花芽を形成し、気温25℃超では日長に関係なく花芽を形成しない。そのため、通常であれば、イチゴは、15℃の低温庫を用いた花芽促進処理、すなわち低温処理が行われる。
≪評価≫
<イチゴの生育状態>
各種条件の培土での栽培の後、イチゴの生育状態を目視観察した。結果を図1に示す。なお図1中、aは強酸性の有機栽培土壌での生育状態を示し、bは強酸性の慣行栽培土壌での生育状態を示し、cは弱酸性~中性の有機栽培土壌での生育状態を示し、dは弱酸性~中性の慣行栽培土壌での生育状態を示す。Controlは菌類を含まない対照区の培土であることを示す。
<地上部の乾燥質量>
各種条件の培土での栽培の後、イチゴの植物体を各ポットから取り出し、前記イチゴを40℃で72時間乾燥させた後、地上部の質量を測定した。統計解析は、SPSS version 20.0(SPSS, IBM, Armonk, NY, United States)を用いて、一元配置分散分析(ANOVA)及びTukeyの範囲検定(p<0.05)を行った。結果を図2に示す。図2において、同じ土壌条件及び同じpH条件である棒グラフの中で、aとb、及びaとcは、それぞれの間で有意差があったことを示す。縦軸は、一つのイチゴ植物体の地上部の乾燥質量(mg)を示す。Controlは菌類を含まない対照区の培土であることを示す。
すなわち、強酸性の慣行栽培土壌の場合、菌類としてSK47又はSK51が培土に含まれると、イチゴの成長が促進された。強酸性の有機栽培土壌の場合、菌類としてSK51が培土に含まれると、イチゴの成長が促進された。
<根の乾燥質量>
各種条件の培土での栽培の後、イチゴの植物体を各ポットから取り出し、前記イチゴを40℃で72時間乾燥させた後、根部分の質量を測定した。結果を図3に示す。なお統計解析の方法及びa、b、及びcの記号は、<地上部の乾燥質量>の項目で記載した方法及び記号と同様である。縦軸は、一つのイチゴ植物体から得られた根の乾燥質量(mg)を示す。Controlは菌類を含まない対照区の培土であることを示す。
すなわち、強酸性の慣行栽培土壌の場合、菌類としてSK47又はSK51が培土に含まれると、イチゴの成長が促進された。強酸性の有機栽培土壌の場合、菌類としてSK51が培土に含まれると、イチゴの成長が促進された。
<果実形成数>
各種条件の培土での栽培の後、イチゴの果実形成数を計測した。結果を図4に示す。なお統計解析の方法及びa、b、及びcの記号は、<地上部の乾燥質量>の項目で記載した方法及び記号と同様である。弱酸性~中性の慣行栽培土壌の結果の棒グラフの中で、aとdは、その間で有意差があったことを示す。なおsは有意差があることを示し、nsは有意差が無いことを示す。縦軸は、一つのイチゴ植物体から得られた果実の個数(個)を示す。Controlは菌類を含まない対照区の培土であることを示す。
すなわち、強酸性の慣行栽培土壌の場合、菌類としてSK47又はSK51が培土に含まれると、イチゴの果実形成が促進された。強酸性の有機栽培土壌の場合も、菌類としてSK47又はSK51が培土に含まれると、イチゴの果実形成が促進された。そして弱酸性~中性の有機栽培土壌の場合、菌類としてSK51が培土に含まれると、イチゴの果実形成が促進された。なお参考例として実施した、弱酸性~中性の慣行栽培土壌(すなわち無機栽培土壌)の場合、菌類としてSK47、SK48、又はSK51が培土に含まれると、イチゴの果実形成が促進された。
<花芽形成までの日数>
各種条件の培土での栽培の後、イチゴの花芽形成までの日数を計測した。結果を図5に示す。図5中、花芽形成までの日数が150日であったと示されたものは、150日の時点で花芽形成が0個であったことを示す。図5の下方(pH6.0~6.5)のグラフにおいて、各プロット上部の数字は、イチゴ8個体中の花芽形成が起こった個体数を示す。Controlは菌類を含まない対照区の培土であることを示す。
すなわち、強酸性の慣行栽培土壌の場合、菌類としてSK47、SK48、又はSK51が培土に含まれると、イチゴの花芽形成が促進された。強酸性の有機栽培土壌の場合、菌類としてSK47又はSK51が培土に含まれると、イチゴの花芽形成が促進された。そして弱酸性~中性の有機栽培土壌の場合、菌類としてSK51が培土に含まれると、イチゴの花芽形成が促進された。なお参考例として実施した、弱酸性~中性の慣行栽培土壌(すなわち無機栽培土壌)の場合、菌類としてSK47、SK48、又はSK51が培土に含まれると、イチゴの花芽形成が促進された。
以上の結果から、対照区のイチゴが十分に花芽を形成出来ない気温23℃一定の高温条件及び日長16時間の長日条件において、培土中にExophiala sp. SK47又はCladophialophora chaetospira SK51が含まれることで、イチゴの成長又は花芽形成が促進された。特に培土中にCladophialophora chaetospira SK51が含まれる場合、その促進効果は顕著であった。
すなわち、本開示の植物の培土は、通常はイチゴの栽培に不適である高温長日条件において、有機栽培土壌(つまり持続的農業モデルである土壌)又は強酸性である土壌(つまり耕作不適地モデルである土壌)であっても、イチゴの成長又は花芽形成を促進させた。前記高温長日条件においてイチゴを収穫できることは、すなわちイチゴの周年収穫が可能となることを意味する。さらには、本開示の菌類は植物と共生することで効果を奏することから、イチゴ以外の植物に対しても、成長又は花芽形成を促進することができる。
2021年11月24日に出願された日本国特許出願2021-190595号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記載された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。

Claims (8)

  1. Cladophialophora chaetospira SK51(クラドフィアロフォラ ケトスピラ SK51)又はその変異株である菌類と、
    pH3以上pH5未満の有機栽培土壌、及び、pH3以上pH5未満の慣行栽培土壌いずれか1種類の土壌と、
    を含む植物の培土。
  2. Exophiala(エクソフィアラ)sp. SK47又はその変異株である菌類と、
    pH3以上pH5未満の有機栽培土壌又はpH3以上pH5未満の慣行栽培土壌と、
    を含む植物の培土。
  3. 前記植物は果菜類の植物である、請求項1又は請求項2に記載の植物の培土。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の植物の培土、及び植物体を含む、栽培セット。
  5. 請求項1又は請求項2に記載の植物の培土を用いて植物を栽培する栽培工程を含む、植物の栽培方法。
  6. 前記栽培工程において、低温及び短日条件で花芽形成が起こる植物を、高温長日条件で栽培することを含む、請求項5に記載の植物の栽培方法。
  7. 前記高温長日条件が、気温が15℃超25℃以下の範囲内であり、日長が12時間超24時間以下の範囲内である、請求項6に記載の植物の栽培方法。
  8. 請求項1又は請求項2に記載の植物の培土と、植物の苗と、を含む、培土付き植物の苗。
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植物と微生物叢の相互作用の研究開発戦略-理解・制御・応用に向けて-,科学技術未来戦略ワークショップ報告書,日本,2017年03月

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