図1から図31を参照して、表示体の一実施形態を説明する。
[表示体]
図1が示すように、表示体10は、凹凸構造が形成されたレリーフ層10Rを備えている。レリーフ層10Rが広がる平面と対向する視点から見て、レリーフ層10Rには複数の画素10Pが敷き詰められている。複数の画素10Pにおいて、各画素10Pは互いに隣り合っている。複数の画素10Pは、第1画素群PG1、第2画素群PG2、および、第3画素群PG3を含んでいる。
表示体10は、第1画像および第2画像を表示することが可能である。第1画素群PG1は、第1画像を形成するための画素10Pから形成されている。第2画素群PG2は、第2画像を形成するための画素10Pから形成されている。これに対して、第3画素群PG3に含まれる各画素10Pは、第1画像を形成するための画素であり、かつ、第2画像を形成するための画素である。
第1画素群PG1の各画素10Pは、第1凹凸構造を備えている。典型的には、第1画素群PG1の各画素10Pは第2凹凸構造を備えない。第2画素群PG2の各画素10Pは、第2凹凸構造を備えている。典型的には、第2画素群PG2の各画素10Pは第1凹凸構造を備えない。第3画素群PG3の各画素10Pは、第1凹凸構造と第2凹凸構造との両方を含んでいる。第1画像は、第1画素群PG1の各画素と第3画素群PG3の各画素とによって形成される。第2画像は、第2画素群PG2の各画素と第3画素群PG3の各画素とによって形成される。
図2は、表示体10が表示可能な第1画像および第2画像を説明するための図である。図2では、説明の便宜上、第1画像および第2画像を1つの図中に示している。なお、本実施形態では、実際には、所定の観察角度の範囲において、表示体10は第1画像を表示し、所定の観察角度の範囲において、表示体10は第2画像を表示する。第1画像が表示される観察角度の範囲には、第2画像が表示される観察角度の範囲における一部が含まれてもよいし、含まれなくてもよい。
図2が示すように、レリーフ層10Rが広がる平面と、観察者OBの視線方向を含む平面とが形成する角度が観察角度θOBである。表示体10は、第1画像PIC1および第2画像PIC2を互いに異なる観察角度θOBに表示可能である。本実施形態において、表示体10は、第1観察角度θOB1に第1画像PIC1を表示し、かつ、第2観察角度θOB2に第2画像PIC2を表示する。第2観察角度θOB2は、第1観察角度θOB1とは異なる角度である。
表示体10において、第1画像PIC1を形成するための第1凹凸構造は、光源LSからの光を第1反射角度θR1に反射する。これに対して、第2画像PIC2を形成するための第2凹凸構造は、光源LSからの光を第2反射角度θR2に反射する。第2反射角度θR2は、第1反射角度θR1とは異なる角度である。
第1画像PIC1の形状は、第1画素群PG1の外形と、第3画素群PG3の外形とによって形成される形状にほぼ等しい。第2画像PIC2の形状は、第2画素群PG2の外形と、第3画素群PG3の外形とによって形成される形状にほぼ等しい。以下、図面を参照して、各画素群PG1,PG2,PG3の構造を順に説明する。
[第1画素群]
図3から図13を参照して、第1画素群PG1を説明する。
図3が示すように、第1画素群PG1は複数の画素10Pを含んでいる。複数の画素10Pは、隙間なく並んでいる。本実施形態において、各画素10Pは、正方形状を有している。第1画素群PG1は、第1画素PG11と第2画素PG12とを含んでいる。
複数の画素10Pは、1つの方向であるx方向と、x方向と直交する方向であるy方向とに沿って並んでいる。x方向に沿う画素10Pの大きさは、300μm以下であり、100μm以下であることが好ましい。また、y方向に沿う画素10Pの大きさは、300μm以下であり、100μm以下であることが好ましい。画素10Pがx方向およびy方向においてこうした範囲に含まれることによって、各画素10Pは、観察者OBの解像限界未満の大きさを有することが可能である。なお、各画素10Pは、正方形状以外の形状を有してもよい。例えば、各画素10Pは、正方形状以外の多角形状を有してよい。正方形状以外の多角形状は、例えば、三角形状または八角形状などである。
図4は、第1画素PG11を拡大して、かつ、模式的に示している。
図4が示すように、第1画素群PG1の第1画素PG11では、レリーフ層10Rが広がる平面と対向する平面視において、複数の島領域PG11aが非周期的な形状および配置を有した海島構造を有している。海島構造において、複数の島領域PG11aを取り囲む部分が海領域PG11bである。海領域PG11bおよび島領域PG11aの一方が第1凹凸構造を有し、他方がブランク構造を有する。これにより、島領域PG11a,PG12aが非周期的に並ぶ海島構造を第1画素群PG1の画素10Pが有するため、第1画素群PG1の配置における周期性に基づく光学効果、すなわちノイズが抑えられ、結果として、第1画像PIC1の視認性が高められる。なお、第1画像PIC1の視認性が高められることから、表示体10は、表示体10が洗練された外観を有する印象を表示体10の観察者に与えることが可能である。
なお、非周期は、第一の方向と、第一の方向と直交する第二の方向との双方において非周期であってよい。このとき、各画素群を2次元フーリエ変換した周波数成分は、離散的なピークを有しない。より厳密には、1mm□中の画素群を2次元フーリエ変換した周波数成分において、離散的なピークを有しない場合を、非周期であるとすることができる。また、表示体10に対して入射したレーザー光の反射光における分布が0次光以外に離散的なピークしない場合を、非周期としてもよい。なお、レーザー光が有する波長は、例えば、波長が633nmおよび532nmなどであってよい。
本実施形態では、各島領域PG11aは四角形状を有している。複数の島領域PG11aは互いに四角形状を有する一方で、各島領域PG11aが有する幅および長さにおいて非周期的である。複数の島領域PG11aにおいて、x方向の寸法およびy方向の寸法の両方が非周期的であってもよいし、x方向の寸法およびy方向の寸法のいずれか一方が非周期的であってもよい。なお、各島領域PG11aが有する幅および長さの少なくとも一方は、ランダム性を有することがより好ましい。
また、複数の島領域PG11aは、レリーフ層10Rが広がる平面と対向する平面視において、各画素10P内に非周期的に配置されている。例えば、複数の島領域PG11aは、1つの画素10P内において、x方向における間隔およびy方向における間隔の両方が非周期的であるように配置されてもよいし、x方向における間隔およびy方向における間隔のいずれか一方が非周期的であるように配置されてもよい。なお、複数の島領域PG11aは、x方向における間隔およびy方向における間隔の少なくとも一方がランダム性を有するように、1つの画素10P内に配置されることがより好ましい。
図5は、第2画素PG12を拡大して、かつ、模式的に示している。
図5が示すように、第2画素PG12では、第1画素PG11と同様、レリーフ層10Rが広がる平面と対向する平面視において、複数の島領域PG12aが非周期的な形状および配置を有した海島構造を有している。海島構造において、複数の島領域PG12aを取り囲む部分が海領域PG12bである。海領域PG12bおよび島領域PG12aの一方が第1凹凸構造を有し、他方がブランク構造を有する。
本実施形態では、各島領域PG12aは四角形状を有している。複数の島領域PG12aは互いに四角形状を有する一方で、各島領域PG12aが有する幅および長さにおいて非周期的である。複数の島領域PG12aにおいて、x方向の寸法およびy方向の寸法の両方が非周期的であってもよいし、x方向の寸法およびy方向の寸法のいずれか一方が非周期的であってもよい。各島領域PG12aが有する幅および長さの少なくとも一方は、ランダム性を有することがより好ましい。
また、複数の島領域PG12aは、レリーフ層10Rが広がる平面と対向する平面視において、各画素10P内に非周期的に配置されている。例えば、複数の島領域PG12aは、1つの画素10P内において、x方向における間隔およびy方向における間隔の両方が非周期的であるように配置されてもよいし、x方向における間隔およびy方向における間隔のいずれか一方が非周期的であるように配置されてもよい。なお、複数の島領域PG12aは、x方向における間隔およびy方向における間隔の少なくとも一方がランダム性を有するように、1つの画素10P内に配置されることがより好ましい。
本実施形態では、第1画素群PG1に含まれる各画素10Pにおいて、複数の島領域PG11a,PG12aの形状および配置が、他の画素10Pにおける複数の島領域PG11a,PG12aの形状および配置と異なる。そのため、第2画素PG12における島領域PG12aの形状および配置は、第1画素PG11における島領域PG11aの形状および配置と異なる。これにより、第1画素群PG1が有する配置における周期性に基づくノイズがより確実に抑えられ、第1画像PIC1の視認性がより確実に高められる。
図6から図12を参照して、海島構造が有する第1凹凸構造およびブランク構造をより詳しく説明する。図6は、レリーフ層10Rが広がる平面に直交する断面での第1凹凸構造の形状を示している。図9は、レリーフ層10Rが広がる平面に直交する断面での第1凹凸構造およびブランク構造の形状における一例を示している。図10は、レリーフ層10Rが広がる平面に直交する断面での第1凹凸構造およびブランク構造の形状における他の例を示している。なお、図6、図9、および、図10では、説明および図示の便宜上、各構造に入射する入射光の角度、および、各構造が反射する反射光の角度として、入射光および反射光の各々における強度が最も高くなる角度のみを示している。また、図6、図9、および、図10では、図示の便宜上、凹凸構造の延びる方向と、入射光および反射光を含む平面とが直交している。両者は平行であっても良いし、直交、および、平行以外の角度で交差していてもよい。なお、後述のように、凹凸構造の周期性に起因する回折光、言い換えればノイズが観察者の方向に射出されない観点では、凹凸構造の延びる方向と、入射光および反射光を含む平面とが平行であることが好ましい。
図6が示すように、本実施形態の第1凹凸構造UE1は、レリーフ層10Rが広がる平面と直交する断面において、1つの方向に沿って周期的に繰り返す波状を有している。第1凹凸構造UE1は、正弦波状を有することが可能である。第1凹凸構造UE1の周期P1は、可視波長以下である。第1凹凸構造UE1の周期P1は、例えば200nm以上500nm以下である。第1凹凸構造UE1の高さH1は、例えば200nm未満であることが好ましい。なお、第1凹凸構造UE1は、頂部を含む凸面と、底部を含む凹面とを有する。第1凹凸構造UE1の周期P1は、第1凹凸構造UE1において、互いに隣り合う2つの頂部間の距離である。第1凹凸構造UE1の高さH1は、第1凹凸構造UE1が有する頂部と底部との間の距離である。
本実施形態において、第1凹凸構造UE1は、第1凹凸構造UE1における導波モード共鳴により正反射方向に可視光領域に含まれる光を反射する。この場合には、島領域PG11a,PG12aが第1凹凸構造UE1を有することが好ましい。これにより、第1凹凸構造UE1に入射した入射光が多重反射しながら伝搬する面積が、島領域PG11a,PG12aが有する面積の分だけ担保されるため、第1凹凸構造UE1が導波モード共鳴による反射光の発色強度が高くなる。
なお、入射光の伝搬距離は、正反射方向に反射される光の強度に寄与する。正反射方向に反射される光の強度は、入射光の伝搬距離が長いほど高くなる傾向を有する。正反射方向に反射される光が十分な強度を有する観点では、島領域における一辺の長さが50μm以上であることが好ましい。
第1凹凸構造UE1に入射光ILが入射すると、レリーフ層10Rが広がる平面に垂直であり、かつ、入射光を含む平面に対して回折光の反射が抑えられる一方で、導波モード共鳴による光の反射が生じる。導波モード共鳴は、特定の波長域の光が光学デバイス内を多重反射しながら伝搬することによって共鳴を起こし、これによって、当該波長域の光が高い強度を有した反射光RLとして光学デバイスにおいて反射される現象である。第1凹凸構造UE1は、正反射方向である第1反射角度θR1に反射光RLを反射する。
第1凹凸構造UE1が導波モード共鳴により、特定の波長を有した可視光を正反射する場合には、レリーフ層10Rは、少なくとも第1凹凸構造UE1に対応する部位において、3層構造を有する。三層構造は、第1低屈層、高屈層、および、第2低屈層から形成される。三層構造において、高屈層が、第1低屈層と第2低屈層とに挟まれている。各層はいずれも光透過性を有し、かつ、高屈層の屈折率は、第1低屈層および第2低屈層の屈折率よりも高い。第1低屈層の屈折率は、第2低屈層の屈折率と等しくてもよいし、第2低屈層の屈折率とは異なってもよい。
表示体10では、表示体10に入射した入射光のなかで、高屈層に回折された光の一部が、第1低屈層と高屈層との境界、および、高屈層と第2低屈層との境界において全反射しながら高屈層を伝搬する。こうした光の伝搬は、高屈層の第2屈折率n2が、第1低屈層の第1屈折率n1よりも高く、かつ、第2低屈層の第3屈折率n3よりも高いことによって生じる。なお、入射光のなかで、以下に説明する導波の伝搬条件を満たす波長を有した光のみが導波光として高屈層を伝搬し、伝搬の結果として、高い輝度を有した反射光として表示体10において反射される。反射光は、正反射の方向に反射される。一方で、伝搬条件を満たさない波長を有した光は、表示体を透過する透過光として表示体から出て行く。
表示体10内を伝搬する光から見て、表示体10は、高屈層の凹面と凸面とが並ぶ方向において、高屈層の一部と、第1低屈層あるいは第2低屈層の一部とが交互に並ぶ構造である。すなわち、凹面と凸面とが並ぶ方向において、高屈部と低屈部とが交互に並ぶ構造である。
伝搬条件は、周期dにおける高屈層の占有率F、入射光の波長λ、高屈層が有する凹凸面の周期d、波数k、および、逆格子ベクトルKを用いて、以下の式(1)から式(6)によって表すことが可能である。
k = 2π/λ … 式(4)
K = 2π/d … 式(5)
β = (2π/λ)・neff … 式(6)
式(3)において、回折次数mは整数である。また、式(3)において、導波層、すなわち高屈層の伝搬定数βは、入射光の波長λと、高屈層の有効屈折率neffに依存する。式(1)は、TE波に対する高屈層の有効屈折率neffを示し、式(2)は、TM波に対する高屈層の有効屈折率neffを示している。高屈層の有効屈折率neffでは、凹凸面の周期dが入射光の波長λよりも短い場合に、TE波に対する有効屈折率neffと、TM波に対する有効屈折率neffとが互いに異なる。
各有効屈折率neffは、周期dにおける高屈層の占有率によって決まる。高屈層の幅をaに設定し、第1低屈層あるいは第2低屈層の幅をbに設定する場合に、周期dにおける高屈層の占有率は、周期dに対する幅aの比であり、周期dにおける第1低屈層あるいは第2低屈層の占有率は、周期dに対する幅bの比である。
上記式(1)から式(6)を満たす導波条件は、以下の式によって表すことができる。
neff>n1,n3 … 式(7)
λ>d … 式(8)
上述したように、有効屈折率neffは周期dにおける高屈層の占有率(a/d)によって決まることから、以下の関係を導くことが可能である。
n2>n1,n3 … 式(9)
また、有効屈折率neffを用いて、表示体10において導波される光の波長と、当該波長を有した光の反射率とを求めることが可能である。すなわち、有効屈折率neffを調整することによって、導波モード共鳴を用いて高い輝度を有した有彩色の光を表示体10に反射させることが可能である。
また、上記式から明らかなように、有効屈折率neffおよび伝搬定数βは、これらを導出する式中に含まれるパラメーター、すなわち、第1屈折率n1から第3屈折率n3、周期d、および、占有率Fが変更されることによって、導波モード共鳴によって反射される光の波長と反射率とを制御することが可能である。さらに、導波モード共鳴によって反射される光は、表示体10に入射する入射光の角度にも依存する。そのため、導波モード共鳴を用いた表示体10は、表示体10が反射する光を機械読み取りによって判定する上で好適である。
また、有効屈折率neffと第1屈折率n1との差や、有効屈折率neffと第3屈折率n3との差が大きいほど、導波モード共鳴により反射される光の反射率は高くなる。すなわち、高屈層の占有率Fが大きいほど、光の反射率を高くすることが可能である。このように、有効屈折率neffと第1屈折率n1との差や、有効屈折率neffと第3屈折率n3との差に応じて光の反射率が決まる。そのため、第1低屈層および第2低屈層に用いることが可能な材料、言い換えれば屈折率が固定されている場合には、第1低屈層における凹凸面の形状、および、高屈層の厚さなどによって有効屈折率neffを制御することが、表示体10が反射する光の波長を多様化させる上で有用である。
図7および図8は、第1凹凸構造UE1が有する凹面および凸面が延びる方向と、観察者OBの視線方向との関係を示している。図7および図8では、凹面および凸面が延びる方向が、表示体10に記載された実線によって模式的に示されている。
図7が示すように、第1凹凸構造UE1が備える凹面および凸面は、1つの方向に沿って延びている。図7が示す例では、凹面および凸面は紙面の左右方向に沿って延びている。一方で、観察者OBの視線方向DOBを表示体10が広がる平面に投影した投影方向は、紙面の左右方向である。投影方向は、凹面および凸面が延びる方向と平行である。すなわち、第1凹凸構造UE1は、観察者OBに対して縦向きである。
図8が示す例では、凹面および凸面は紙面の上下方向に沿って延びている。これに対して、観察者OBの視線方向DOBを表示体10が広がる平面に投影した投影方向は、紙面の左右方向である。投影方向は、凹面および凸面が延びる方向と直交する。すなわち、第1凹凸構造UE1は、観察者OBに対して横向きである。
表示体10の反射光RLには、1次回折光が含まれる場合がある。1次回折光は、凹面および凸面が延びる方向と直交し、かつ、表示体10が広がる平面に対して直交する平面に反射される。そのため、観察者OBに対して第1凹凸構造UE1が横向きである場合には、観察者OBは表示体10が反射した1次回折光を視認する場合がある。また、観察者OBは、自身が視認した1次回折光を0次回折光、すなわち、導波モード共鳴による反射光であると誤認する可能性がある。これに対して、観察者OBに対して第1凹凸構造UE1が縦向きである場合には、観察者OBが1次回折光を0次回折光であると誤認する可能性を低くすることが可能である。
海島構造が有するブランク構造は、第1凹凸構造UE1が有する光学的な効果とは異なる光学的な効果を有する。第1凹凸構造UE1が有する光学的な効果は、第1画像PIC1を表示するための光学的な効果である。一方で、ブランク構造が有する光学的な効果は、第1画像PIC1の表示に寄与しない。ブランク構造は、第1画素群PG1から反射される光であって、第1画像PIC1を表示するための光の色彩と、第3画素群PG3から反射される光であって、第1画像PIC1を表示するための光の色彩とのばらつきを抑えるための構造である。ただし、ブランク構造が反射した光は、第1凹凸構造UE1が反射する光とともに、観察者OBによって観察されてもよい。すなわち、ブランク構造における反射光の反射角度は、第1凹凸構造UE1が反射する反射光RLの反射角度θR1に含まれてよい。
図9が示す例では、ブランク構造BLは、略平坦である。ブランク構造BLは、第1凹凸構造UE1よりも平坦である。ブランク構造BLにおいて、凹凸の高さは、例えば40nm以下であってよい。ブランク構造BLの粗さが高くなるにつれて、ブランク構造BLは、ブランク構造BLに入射した光を広範囲に散乱する傾向を有する。これに対して、ブランク構造BLの表面粗さが低くなるにつれて、ブランク構造BLは、ブランク構造BLに入射した光を鏡面反射、すなわち正反射する傾向を有する。
ブランク構造BLが平坦である場合には、ブランク構造BLの表面粗さが高い場合であれ低い場合であれ、ブランク構造BLに入射した光を少なからず正反射する。これにより、ブランク構造BLは、入射光ILの入射角度と等しい反射角度θRBに光を反射する。ブランク構造BLの反射角度θRBは、第1凹凸構造UE1の第1反射角度θR1に等しい。そのため、観察者OBが表示体10を観察した場合には、第1凹凸構造UE1が反射した光をブランク構造BLが反射した光とともに観察する。
ブランク構造BLは、入射光ILの反射に際して入射光ILを分光しないため、ブランク構造BLが反射した光が有する波長は光源LSが放射した光の波長に依存する。光源LSが太陽、蛍光灯、および、白色LEDなどである場合には、ブランク構造BLが反射する光は、互いに異なる波長を有した光の混合であるため、白色を有する。これにより、本実施形態によるように、第1凹凸構造UE1が、特定の波長を有した可視光を正反射する場合には、第1凹凸構造UE1が反射した光が有する色が、ブランク構造BLが反射した光によって弱められ、これによって第1凹凸構造UE1が反射した光が有する色が淡くなる。
この場合には、第1画素群PG1の総面積(TA1)に対する第1画素群PG1に含まれる第1凹凸構造UE1の総面積(TAU1)の比(TAU1/TA1)が、第3画素群PG3の総面積(TA3)に対する第3画素群PG3に含まれる第1凹凸構造UE1の総面積(TAU3)の比(TAU3/TA3)よりも大きいことが可能である。これにより、第1画素群PG1において、島領域PG11a,PG12aが反射する光による光学効果が、ブランク構造BLが反射する光によって弱められても、第1凹凸構造UE1の面積の割合を大きくすることによって、第1画像PIC1における濃淡のむらが抑えられる。
図10が示す例では、ブランク構造BLは凹凸構造UEBを有している。ブランク構造BLの凹凸構造UEBは、表示体10が広がる平面と直交する断面において波状を有する。ブランク構造BLの凹凸構造UEBにおける周期PBが可視波長以下、かつ、凹凸構造における高さHBが周期PBよりも大きく、これによって、ブランク構造BLはブランク構造BLに入射した光を透過する。なお、凹凸構造UEBの周期PBは、200nm以上500nm以下であることができ、可視光の最短波長よりも小さいこと、すなわち400nm以下であることが好ましい。
凹凸構造UEBは、正弦波状を有することができる。当該凹凸構造UEBにおいて、周期PBは、200nm以上500nm以下であることが可能である。凹凸構造UEBが有する高さHBは、第1凹凸構造UE1が有する高さH1よりも高い。凹凸構造UEBが有するアスペクト比は、0.5以上3.7以下であることが好ましく、1以上であることが以下に記載した光の反射を抑制する観点ではより好ましい。凹凸構造UEBが有するアスペクト比は、当該凹凸構造UEBの周期(PB)に対する当該凹凸構造UEBの高さ(HB)の比(HB/PB)である。凹凸構造UEBが有する高さHBは、例えば、200nm以上750nm以下であってよい。
こうしたブランク構造BLでは、高いアスペクト比を有した微細な凹凸が繰り返されるため、凹凸構造UEBの頂部から底部に向けて、レリーフ層10Rが広がる平面と平行な断面において、当該断面での屈折率が連続的に変わると見なすことが可能である。なお、当該断面の屈折率は、当該断面に含まれる凹凸構造UEBの一部と、凹凸構造UEBの周辺構造によって決まる。凹凸構造UEBの周辺構造は、例えば、空気、または、凹凸構造UEBを覆う樹脂などであることができる。そのため、凹凸構造UEBと、当該凹凸構造UEBの周辺構造との界面における光の反射が抑えられる。それゆえに、ブランク構造BLに入射した光の大部分は、ブランク構造BLを透過する。
こうした構造によれば、ブランク構造BLによって反射される光が、第1凹凸構造UE1が反射する光に影響しないため、ブランク構造BLが反射した光に起因した第1画像PIC1における濃淡のむらが抑えられる。そのため、第1画素群PG1において、ブランク構造BLが反射した光による濃淡のむらを抑えるために、第1凹凸構造UE1が有する面積や、ブランク構造BLが有する面積を、第3画素群PG3を基準として調整しなくともよい。こうした構造では、第1画素群PG1における単位面積当たりの第1凹凸構造UE1の面積と、第3画素群PG3における単位面積当たりの第1凹凸構造UE1の面積とが等しくてよい。それゆえに、第1画素群PG1の設計が容易である。
図11は、ブランク構造BLが有する凹凸構造UEBの一例を示す斜視図であり、図12は、ブランク構造BLが有する凹凸構造UEBの他の例を示す斜視図である。
図11が示すように、凹凸構造UEBは、シングルグレーティングであってもよい。この場合には、凹凸構造UEBは、1つの方向である延設方向に沿って延びる形状を有している。表示体10が広がる平面に直交し、かつ、当該凹凸構造UEBが延びる方向と直交する断面において、凹凸構造UEBは波状を有し、かつ、当該波状が延設方向に沿って連なっている。
図12が示すように、凹凸構造UEBは、クロスグレーティングであってもよい。この場合には、凹凸構造UEBは、第1方向と、第1方向に直交する第2方向とに沿って並ぶ複数の凸状部を有することが可能である。当該凹凸構造UEBは、第1方向と第2方向とに沿って並ぶ複数の凹状部を有してもよい。凹凸構造UEBは、第1方向において第1周期PB1を有し、第2方向において第2周期PB2を有する。第1周期PB1と第2周期PB2とは互いに同一であってもよいし、互いに異なってもよい。
なお、凹凸構造UEBがシングルグレーティングである場合には、第1凹凸構造UE1と同様の理由から、凹凸構造UEBは観察者OBに対して縦向きであることが好ましい。これに対して、凹凸構造UEBがクロスグレーティングである場合には、凹凸構造UEBが、観察者OBに対して縦向きでも横向きでもない、すなわち縦向きあるいは横向きに対して交差する方向に沿って並ぶことが好ましい。これにより、第1凹凸構造UE1と同様、凹凸構造UEBが反射する回折光を観察者OBが視認することが抑えられる。
図13が示すように、表示体10は、レリーフ層10Rを覆う反射層10RFを備えてもよい。反射層10RFは、レリーフ層10Rの表面よりも高い屈折率を有した層である。レリーフ層10Rの表面は、反射層10RFが位置する面である。反射層10RFは、透明な材料によって形成される。透明な材料は、例えば、TiO2、ZnS、および、SiO2などであってよい。反射層10RFは単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。反射層10RFが多層構造を有する場合には、反射層10RFは、透明な材料から形成された第1層と、第1層上に位置し、かつ、金属製の第2層を有することができる。金属は、例えばアルミニウムであってよい。なお、第2層の厚さは、20nm未満であることが好ましい。これにより、反射層10RFが金属製の第2層を有しても、観察者OBに表示体10が透明であると認識させることができる。
ブランク構造BLが図11および図12を参照して説明した凹凸構造UEBを有する場合には、反射層10RFは、第1凹凸構造UE1上に位置する第1部分RF1と、ブランク構造BLが備える凹凸構造UEB上に位置する第2部分RF2とを有する。反射層10RFにおいて、第1部分RF1の厚さが、第2部分RF2の厚さよりも厚くてよい。これにより、第1部分RF1における反射光の強度を高めつつ、第2部分RF2における反射光の強度が高まることが抑えられる。
なお、ブランク構造BLが備える凹凸構造UEBでの反射を抑える観点では、表示体10は、凹凸構造UEBを覆う反射層を有しないことが好ましい。すなわち、反射層10RFは、第2部分RF2を有しないことが好ましい。こうした反射層10RFは、例えば、第1凹凸構造UE1とブランク構造BLの凹凸構造UEBとを覆う反射層を形成した後に、反射層のうちで、凹凸構造UEBを覆う部分を取り除くことによって形成される。ただし、凹凸構造UEBのアスペクト比が第1凹凸構造UE1のアスペクト比よりも高い場合には、反射層10RFにおいて、第2部分RF2の厚さが第1部分RF1の厚さよりも薄くなることから、これによって、第2部分RF2における反射を抑えることが可能ではある。
[第2画素群]
図14から図21を参照して、第2画素群PG2を説明する。
図14が示すように、第2画素群PG2は複数の画素10Pを含んでいる。複数の画素10Pは、隙間なく並んでいる。本実施形態において、各画素10Pは、正方形状を有している。第2画素群PG2に含まれる画素10Pは、第1画素群PG1に含まれる画素10Pと同一の形状および大きさを有することが好ましい。第2画素群PG2は、第1画素PG21と第2画素PG22とを含んでいる。
第2画素群PG2に含まれる画素10Pは、第1画素群PG1に含まれる画素10Pと同様、正方形以外の多角形状を有してよい。
図15は、第1画素PG21を拡大して、かつ、模式的に示している。なお、図示の便宜上、第2画素群PG2の第1画素PG21における島領域の形状および配置は、第1画素群PG1の第1画素PG11における島領域PG11aの形状および配置と同じである。各第1画素PG11,PG21において、島領域の形状および配置は互いに同じであってもよいし、互いに異なってもよい。
図15が示すように、第2画素群PG2の第1画素PG21では、レリーフ層10Rが広がる平面と対向する平面視において、複数の島領域PG21aが非周期的な形状および配置を有した海島構造を有している。海島構造において、複数の島領域PG21aを取り囲む部分が海領域PG21bである。海領域PG21bおよび島領域PG21aの一方が第2凹凸構造を有し、他方がブランク構造を有する。島領域PG21a,PG22aが非周期的に並ぶ海島構造を第2画素群PG2の画素10Pが有するため、第2画素群PG2の配置における周期性に基づくノイズが抑えられ、結果として、第2画像PIC2の視認性が高められる。なお、第2画像PIC2の視認性が高められることから、表示体10は、表示体10が洗練された外観を有する印象を表示体10の観察者に与えることが可能である。
本実施形態では、各島領域PG21aは四角形状を有している。複数の島領域PG21aは互いに四角形状を有する一方で、各島領域PG21aが有する幅および長さにおいて非周期的である。複数の島領域PG21aにおいて、x方向の寸法およびy方向の寸法の両方が非周期的であってもよいし、x方向の寸法およびy方向の寸法のいずれか一方が非周期的であってもよい。なお、各島領域PG21aが有する幅および長さの少なくとも一方は、ランダム性を有することがより好ましい。
また、複数の島領域PG21aは、レリーフ層10Rが広がる平面と対向する平面視において、各画素10P内に非周期的に配置されている。例えば、複数の島領域PG21aは、1つの画素10P内において、x方向における間隔およびy方向における間隔の両方が非周期的であるように配置されてもよいし、x方向における間隔およびy方向における間隔のいずれか一方が非周期的であるように配置されてもよい。なお、複数の島領域PG21aは、x方向における間隔およびy方向における間隔の少なくとも一方がランダム性を有するように、1つの画素10P内に配置されることがより好ましい。
図16は、第2画素PG22を拡大して、かつ、模式的に示している。なお、図示の便宜上、第2画素群PG2の第2画素PG22における島領域の形状および配置は、第1画素群PG1の第2画素PG12における島領域PG12aの形状および配置と同じである。各第2画素PG12,PG22において、島領域の形状および配置は互いに同じであってもよいし、互いに異なってもよい。
図16が示すように、第2画素PG22では、第1画素PG21と同様、レリーフ層10Rが広がる平面と対向する平面視において、複数の島領域PG22aが非周期的な形状および配置を有した海島構造を有している。海島構造において、複数の島領域PG22aを取り囲む部分が海領域PG22bである。海領域PG22bおよび島領域PG22aの一方が第2凹凸構造を有し、他方がブランク構造を有する。
本実施形態では、各島領域PG22aは四角形状を有している。複数の島領域PG22aは互いに四角形状を有する一方で、各島領域PG22aが有する幅および長さにおいて非周期的である。複数の島領域PG22aにおいて、x方向の寸法およびy方向の寸法の両方が非周期的であってもよいし、x方向の寸法およびy方向の寸法のいずれか一方が非周期的であってもよい。なお、各島領域PG22aが有する幅および長さの少なくとも一方は、ランダム性を有していることが好ましい。
また、複数の島領域PG22aは、レリーフ層10Rが広がる平面と対向する平面視において、各画素10P内に非周期的に配置されている。例えば、複数の島領域PG22aは、1つの画素10P内において、x方向における間隔およびy方向における間隔の両方が非周期的であるように配置されてもよいし、x方向における間隔およびy方向における間隔のいずれか一方が非周期的であるように配置されてもよい。なお、複数の島領域PG22aは、x方向における間隔およびy方向における間隔の少なくとも一方がランダム性を有するように、1つの画素10P内に配置されることがより好ましい。
本実施形態では、第2画素群PG2に含まれる各画素10Pにおいて、複数の島領域PG21a,PG22aの形状および配置が、他の画素10Pにおける複数の島領域PG21a,PG22aの形状および配置と異なる。そのため、第2画素PG22における島領域PG22aの形状および配置は、第1画素PG21における島領域PG21aの形状および配置と異なる。
図17から図21を参照して、海島構造が有する第2凹凸構造をより詳しく説明する。なお、海島構造が有するブランク構造は、レリーフ層10R内における位置が互いに異なる以外は、第1画素群PG1に含まれる各画素10Pが有するブランク構造と同様である。そのため、第2画素群PG2の画素10Pが有するブランク構造の詳しい説明を省略する。
図17は、レリーフ層10Rが広がる平面に直交する断面での第2凹凸構造の形状の一例を示している。図21は、レリーフ層10Rが広がる平面に直交する断面での第2凹凸構造および第1凹凸構造の形状を示している。なお、図17および図21では、説明および図示の便宜上、各構造に入射する入射光の角度、および、各構造が反射する反射光の角度として、入射光および反射光の各々における強度が最も高くなる角度のみを示している。
図17が示すように、本実施形態の第2凹凸構造UE2は、レリーフ層10Rが広がる平面と直交する断面において、1つの方向に沿って周期的に繰り返す波状を有している。第2凹凸構造UE2の周期P2は、第1凹凸構造UE1の周期P1よりも大きい。第2凹凸構造UE2の周期P2は、例えば500nmよりも大きく2000nm以下である。第2凹凸構造UE2の高さH2は、例えば100nm以上200nm以下であることが好ましい。なお、第2凹凸構造UE2は、頂部を含む凸面と、底部を含む凹面とを有する。第2凹凸構造UE2の周期P2は、第2凹凸構造UE2において、互いに隣り合う2つの頂部間の距離である。第2凹凸構造UE2の高さH2は、第2凹凸構造UE2が有する頂部と底部との間の距離である。
本実施形態において、第2凹凸構造UE2は、反射型の一次回折格子である。第2凹凸構造UE2は、正弦波型回折格子、ブレーズド型回折格子、および、バイナリ型回折格子から選択されるいずれか1つであってよい。第2凹凸構造UE2は、これら回折格子の2つ以上を含んでもよい。
第2凹凸構造UE2が正弦波型回折格子である場合には、レリーフ層10Rが広がる平面と直交し、かつ、第2凹凸構造UE2が含む凹面および凸面が延びる方向と直交する断面において、第2凹凸構造UE2は、正弦波状を有する。第2凹凸構造UE2がブレーズド型回折格子である場合には、レリーフ層10Rが広がる平面と直交し、かつ、第2凹凸構造UE2が含む凹面および凸面が延びる方向と直交する断面において、第2凹凸構造UE2は、鋸歯状を有する。第2凹凸構造UE2がバイナリ型回折格子である場合には、レリーフ層10Rが広がる平面と直交し、かつ、第2凹凸構造UE2が含む凹面および凸面が延びる方向と直交する断面において、第2凹凸構造UE2は、鋸歯を近似した形状を有している。より詳しくは、第2凹凸構造UE2において、入射光を反射する斜面が、階段状の面によって近似されている。
第2凹凸構造UE2がいずれの回折格子である場合にも、以下の式(10)を満たす特定の周期を有した回折光を特定の回折角で反射する。第2凹凸構造UE2において、回折光が反射光RLであり、回折角が第2反射角度θR2である。
d(sinα+sinβ)=mλ … 式(10)
なお、上記式(10)において、dは回折格子の周期であり、αは入射角であり、βは回折角であり、mは回折次数であり、λは光の波長である。
第2凹凸構造UE2において、第2凹凸構造UE2が含む凹部と凸部とが単一の周期P2で繰り返される場合には、第2凹凸構造UE2が反射する1次回折光は分光される。結果として、第2凹凸構造UE2が観察者OBによって観察された場合には、観察者OBは、観察角度、あるいは、表示体10に対する光の入射角度における変化に応じて、第2凹凸構造UE2が表示する虹色を有した第2画像PIC2を視認することができる。
一方で、第2凹凸構造UE2は、以下のように設計されることによって、無彩色の光を反射することが可能である。まず、上述した式(10)を用いて算出される所定の周期dを基準周期drに設定する。次いで、基準周期drに対する正の方向、すなわち基準周期drよりも大きい範囲において、複数の周期dを離散的に設定し、かつ、基準周期drに対する負の方向、すなわち基準周期drよりも小さい範囲において、複数の周期dを離散的に設定する。こうして設定された複数の周期dの各々に対応する凹凸面を含む第2凹凸構造UE2を設計する。第2凹凸構造UE2によれば、特定の観察位置において、各周期dを有した凹凸面が反射する1次回折光の波長が、その凹凸面が有する周期dとは異なる周期dを有した凹凸面が反射する1次回折光の波長とは異なる。結果として、観察位置において、複数の波長の光が混合されるため、観察位置から第2凹凸構造UE2が観察された場合に、第2凹凸構造UE2が表示する無彩色、すなわち白色光により形成される画像が、観察者OBによって視認される。
なお、上述した複数の周期dを設計する場合には、比視感度が高い波長の光を反射することが可能な周期dを基準周期drに設定することができる。比視感度が高い波長の光は、例えば540nm以上560nm以下の範囲に含まれる波長を有した緑色光である。この場合には、比視感度が高い緑色光と緑色光に準じた比視感度を有する光とが、第2凹凸構造UE2が反射する光に含まれる。そのため、第2凹凸構造UE2が表示する画像が、観察者OBによって視認されやすくなる。また、第2凹凸構造UE2が反射する光が、緑色光を基準として、より長い波長を有した赤色光と、より短い波長を有した青色光とを含むことができる。これにより、第2凹凸構造UE2が反射する光を無彩色の光とすることが容易になる。
第2凹凸構造UE2において、基準周期drを有した凹凸面の密度が最も高く、かつ、基準周期drからのずれ量が大きい周期dを有した凹凸面ほど、第2凹凸構造UE2における密度が小さいことが好ましい。これにより、上述した特定の観察位置以外の観察位置に反射される1次回折光の強度を低くすることが可能である。
無彩色の光を反射することが可能な第2凹凸構造UE2は、以下の式(11)から式(13)を満たすことが好ましい。ただし、以下の式(11)において、rは221以下である。
図18は、上記式(11)から式(13)を満たす曲線を示している。
図18が示すように、上記式(11)から式(13)において、θR’は回折角度θの範囲である。θ’は離散間隔、すなわち、ある凹凸面における1次回折光の回折角度θと、その凹凸面の次に大きい周期dまたは小さい周期dを有した凹凸面における1次回折光の回折角度θとの差である。θn’は離散角、すなわち、ある凹凸面における1次回折光の回折角度θと、基準周期drを有した凹凸面における1次回折光の回折角度θとの差である。ρn’は、特定の離散角θn’を有した凹凸面が全ての凹凸面に占める密度である。
式(11)から式(13)を満たす第2凹凸構造UE2では、凹凸面の1次回折角度が、基準周期drに対応する0°を基準として、各凹凸面における回折角度θである離散角θn’が、離散間隔θ’ずつ変化する。そして、第2凹凸構造UE2において、基準周期drを有した凹凸面の密度が極大値を有し、かつ、凹凸面が有する離散角θn’が大きくなるほど、その凹凸面の密度が小さくなる。
このように、式(11)から式(13)を満たす第2凹凸構造UE2は、凹凸面の周期dに複数の値を含んでいる。例えば、凹凸面の周期dには、800nmから3200nmまでの範囲に含まれる複数の周期が混在する。そのため、図17に示すような第2凹凸構造UE2が凹凸面の周期dに1つの値のみを含む場合に比べて、第2凹凸構造UE2の偽造、ひいては第2凹凸構造UE2を含む表示体10の偽造が困難である。
なお、r値は、回折角度θが有する範囲θR’に寄与するパラメーターである。r値は、第2凹凸構造UE2が反射する光が無彩色であることを実現する上で重要なパラメーターである。r値は、221以下であることが好ましい。
図19は、r値が互いに異なる9つの表示体における反射光のスペクトルを示している。なお、図19が示すスペクトルは、540nmの波長を有した光が0°、すなわち真上から表示体に入射した場合に、25°に1次回折する凹凸面を基準とした表示体10によって得られたスペクトルである。また、各表示体10において、r値が255、238、221、204、187、170、153、136、および、119のいずれかに設定されている。
図19が示すように、r値を255に設定した場合に第1スペクトルS1が得られ、r値を238に設定した場合に第2スペクトルS2が得られ、r値を221に設定した場合に、第3スペクトルS3が得られる。また、r値を204に設定した場合に第4スペクトルS4が得られ、r値を187に設定した場合に第5スペクトルS5が得られ、r値を170に設定した場合に第6スペクトルS6が得られる。また、r値を153に設定した場合に第7スペクトルS7が得られ、r値を136に設定した場合に第8スペクトルS8が得られ、r値を119に設定した場合に第9スペクトルS9が得られる。第1スペクトルS1から第9スペクトルS9から明らかなように、r値を小さくするほど、表示体から反射された光の受光角度、言い換えれば1次回折角の範囲が広がる。一方で、第1スペクトルS1から第9スペクトルS9から明らかなように、r値を大きくするほど、25°において受光される光の強度、すなわち25°に反射される1次回折光の強度が高くなる。
図20は、xy色度図における上述した9つの表示体における反射光の位置を示している。
図20が示すように、第1スペクトルS1を有する反射光、および、第2スペクトルS2を有する反射光は、緑色を有する。これに対して、第3スペクトルS3から第9スペクトルS9のいずれかを有する反射光は、白色を有する。そのため、上記式(11)におけるr値は、221以下であることが好ましい。また、r値は204以上221以下の範囲に含まれることが好ましい。これにより、反射光における強度の低下を抑えることが可能である。なお、図21において、破線で囲まれる領域が、白色点WP(x=0.33,y=0.33)を含む白色の領域である。
本実施形態における第2凹凸構造UE2は、上記式(11)から式(13)を満たすことによって、無彩色の第2画像PIC2を表示することが可能である。そのため、第1画像PIC1が有彩画像であり、第2画像PIC2が無彩画像である場合には、第1画像PIC1と第2画像PIC2との両方が有彩画像の場合、および、第1画像PIC1と第2画像PIC2との両方が無彩画像の場合に比べて、表示体10の誘目性を高めることができる。
図21が示すように、表示体10では、上述した第1凹凸構造UE1が入射光ILを反射する第1反射角度θR1と、第2凹凸構造UE2が入射光ILを反射する第2反射角度θR2とが互いに異なっている。そのため、表示体10は、第1凹凸構造UE1による第1画像PIC1を表示する一方で第2凹凸構造UE2による第2画像PIC2を表示しない状態と、第2画像PIC2を表示する一方で、第1凹凸構造UE1による第1画像PIC1を表示しない状態とを有することが可能である。
なお、図21では、第1凹凸構造UE1が有する高さH1が第2凹凸構造UE2が有する高さH2と等しい。第1凹凸構造UE1が有する高さH1は、第2凹凸構造UE2が有する高さH2よりも高くてもよいし、低くてもよい。
[第3画素群]
図22から図29を参照して、第3画素群PG3を説明する。以下では、第3画素群PG3が含む画素10Pの第1例と第2例とを順に説明する。なお、第3画素群PG3が含む画素10Pの第1例は上述したブランク構造を含まない一方で、第2例はブランク構造を含む。
図22が示すように、第3画素群PG3は複数の画素10Pを含んでいる。複数の画素10Pは、隙間なく並んでいる。本実施形態において、各画素10Pは、正方形状を有している。第3画素群PG3に含まれる画素10Pは、第1画素群PG1に含まれる画素10P、および、第2画素群PG2に含まれる画素10Pと同一の形状および大きさを有することが好ましい。第3画素群PG3は、第1画素PG31と第2画素PG32とを含んでいる。
第3画素群PG3に含まれる画素10Pは、第1画素群PG1に含まれる画素10P、および、第2画素群PG2に含まれる画素10Pと同様、正方形状以外の多角形状を有してよい。
図23は、第1画素PG31の第1例における拡大図を示している。
図23が示すように、第1画素PG31は、複数のサブ画素PGSを含んでいる。複数のサブ画素PGSは、隙間なく並んでいる。本実施形態において、各サブ画素PGSは、正方形状を有している。各サブ画素PGSは、正方形以外の多角形状を有してよい。複数のサブ画素PGSは、複数の第1サブ画素PGS1と複数の第2サブ画素PGS2とから構成されている。各第1サブ画素PGS1は、第1凹凸構造UE1を含んでいる。第1凹凸構造UE1は、各第1サブ画素PGS1の全体に位置している。各第2サブ画素PGS2は、第2凹凸構造UE2を含んでいる。第2凹凸構造UE2は、各第2サブ画素PGS2の全体に位置している。
第1画素PG31内において、複数の第1サブ画素PGS1と複数の第2サブ画素PGS2とは、それぞれ非周期的に配置されている。第1画素PG31内において、複数の第1サブ画素PGS1と複数の第2サブ画素PGS2とは、それぞれランダム性を有するように配置されてもよい。
図24は、第2画素PG32の第1例における拡大図を示している。
図24が示すように、第2画素PG32は、第1画素PG31と同様、複数のサブ画素PGSを含んでいる。複数のサブ画素PGSは、隙間なく並んでいる。複数のサブ画素PGSは、複数の第1サブ画素PGS1と複数の第2サブ画素PGS2とから構成されている。各第1サブ画素PGS1は、第1凹凸構造UE1を含んでいる。第1凹凸構造UE1は、各第1サブ画素PGS1の全体に位置している。各第2サブ画素PGS2は、第2凹凸構造UE2を含んでいる。第2凹凸構造UE2は、各第2サブ画素PGS2の全体に位置している。
第2画素PG32内において、複数の第1サブ画素PGS1と複数の第2サブ画素PGS2とは、それぞれ非周期的に配置されている。第2画素PG32内において、複数の第1サブ画素PGS1と複数の第2サブ画素PGS2とは、それぞれランダム性を有するように配置されてもよい。
本実施形態では、第3画素群PG3が含む各画素10Pにおいて、第1サブ画素PGS1の配置、および、第2サブ画素PGS2の配置は、他の画素10Pにおける第1サブ画素PGS1の配置、および、第2サブ画素PGS2の配置とは異なっている。なお、1つの画素10P内では、複数の第1サブ画素PGS1、および、複数の第2サブ画素PGS2がそれぞれ非周期的に配置される一方で、互いに異なる画素10P間では、複数の第1サブ画素PGS1、および、複数の第2サブ画素PGS2の配置が互いに等しくてもよい。
図25は、第3画素群PG3が含むことが可能な画素10Pの第2例を示している。図25は、例えば、第3画素群PG3が含む第1画素PG31の平面構造を示している。
図25が示すように、第1画素PG31は、第1画素群PG1が含む画素10P、および、第2画素群PG2が含む画素10Pと同様、レリーフ層10Rが広がる平面と対向する平面視において、複数の島領域PG31a,PG31bが非周期的な形状および配置を有した海島構造を有している。ただし、第3画素群PG3が含む第1画素PG31は、複数の島領域が、複数の第1島領域PG31aと複数の第2島領域PG31bとから構成されている点において、第1画素群PG1が含む画素10P、および、第2画素群PG2が含む画素10Pとは異なっている。
第1島領域PG31a、第2島領域PG31b、および、海領域PG31cの各々には、第1凹凸構造UE1、第2凹凸構造UE2、および、ブランク構造BLのうちの1つであって、かつ、互いに異なる構造が位置している。本実施形態では、例えば、第1島領域PG31aに第1凹凸構造UE1が位置し、第2島領域PG31bに第2凹凸構造UE2が位置し、かつ、海領域PG31cにブランク構造BLが位置している。
これにより、第3画素群PG3において、第1凹凸構造UE1および第2凹凸構造UE2の両方が不規則に配置される。そのため、第1画像PIC1のうちで第3画素群PG3によって表示される部分、および、第2画像PIC2のうちで第3画素群PG3によって表示される部分では、島領域が有する配置の周期性に起因する回折光、言い換えればノイズが抑えられる。そのため、第1画像PIC1および第2画像PIC2の視認性が高められる。
本実施形態では、各第1島領域PG31a、および、各第2島領域PG31bは、四角形状、または、複数の四角形状が組み合わせられた形状を有している。複数の第1島領域PG31aにおいて、各第1島領域PG31aが有する幅および長さが非周期的である。また、複数の第2島領域PG31bにおいて、各第2島領域PG31bが有する幅および長さが非周期的である。さらには、複数の第1島領域PG31aおよび複数の第2島領域PG31bを含む全島領域において、各島領域が有する幅および長さが非周期的である。
複数の第1島領域PG31aにおいて、x方向の寸法およびy方向の寸法の両方が非周期的であってもよいし、x方向の寸法およびy方向の寸法のいずれか一方が非周期的であってもよい。複数の第2島領域PG31bにおいて、x方向の寸法およびy方向の寸法の両方が非周期的であってもよいし、x方向の寸法およびy方向の寸法のいずれか一方が非周期的であってもよい。全島領域において、x方向の寸法およびy方向の寸法の両方が非周期的であってもよいし、x方向の寸法およびy方向の寸法のいずれか一方が非周期的であってもよい。
また、複数の第1島領域PG31aは、レリーフ層10Rが広がる平面と対向する平面視において、各画素10P内に非周期的に配置されている。例えば、複数の第1島領域PG31aは、1つの画素10P内において、x方向における間隔およびy方向における間隔の両方が非周期的であるように配置されてもよいし、x方向における間隔およびy方向における間隔のいずれか一方が非周期的であるように配置されてもよい。
複数の第2島領域PG31bは、レリーフ層10Rが広がる平面と対向する平面視において、各画素10P内に非周期的に配置されている。例えば、複数の第2島領域PG31bは、1つの画素10P内において、x方向における間隔およびy方向における間隔の両方が非周期的であるように配置されてもよいし、x方向における間隔およびy方向における間隔のいずれか一方が非周期的であるように配置されてもよい。
全島領域は、レリーフ層10Rが広がる平面と対向する平面視において、各画素10P内に非周期的に配置されている。例えば、複数の島領域は、1つの画素10P内において、x方向における間隔およびy方向における間隔の両方が非周期的であるように配置されてもよいし、x方向における間隔およびy方向における間隔のいずれか一方が非周期的であるように配置されてもよい。互いに隣り合う島領域間の間隔は、x方向およびy方向の両方において、100μm以下であることが好ましい。また、検証器を用いて表示体10を解析する場合には、互いに隣り合う島領域間の間隔は、検証器が有する解像限界以上の大きさである必要がある。検証器は、例えば、顕微鏡およびカメラなどである。
なお、第3画素群PG3に含まれる画素10Pは、上述したサブ画素PGSを含み、かつ、ブランク構造BLを含んでもよい。
すなわち、図26が示すように、第3画素群PG3が含む画素10Pの1つである第1画素PG31は、複数のサブ画素PGSを含んでいる。複数のサブ画素PGSは、隙間なく並んでいる。各サブ画素PGSには、第1凹凸構造UE1および第2凹凸構造UE2のいずれか一方が位置している。ただし、各第1凹凸構造UE1および第2凹凸構造UE2は、その凹凸構造が位置するサブ画素PGSの一部にのみ位置している。各サブ画素PGSにおいて、凹凸構造が位置しない部分にはブランク構造BLが位置している。なお、図26が示す例では、x方向およびy方向において、第1凹凸構造UE1と第2凹凸構造UE2とが交互に並んでいるが、第1凹凸構造UE1と第2凹凸構造UE2とは非周期的に並んでよい。
本実施形態では、レリーフ層10Rが広がる平面と対向する平面視において、サブ画素PGSが正方形状を有し、かつ、第1凹凸構造UE1の外形、および、第2凹凸構造UE2の外形が、四角形状を有している。そのため、凹凸構造の外形におけるx方向の寸法、y方向の寸法、x方向におけるサブ画素PGSの中心PCと凹凸構造の中心UCとの差分Δx、および、y方向におけるサブ画素PGSの中心PCと凹凸構造の中心UCとの差分Δyによって、各サブ画素PGS内における凹凸構造の位置を特定することが可能である。
なお、本例においても、凹凸構造の外形におけるx方向の寸法、y方向の寸法、x方向におけるサブ画素PGSの中心PCと凹凸構造の中心UCとの差分Δx、および、y方向におけるサブ画素PGSの中心PCと凹凸構造の中心UCとの差分Δyを調整することによって、複数の凹凸構造を非周期的に配置することが可能である。
[真贋判定方法]
図27から図31を参照して、表示体10の真贋判定方法を説明する。以下では、検証器を用いた真贋判定方法の一例として、表示体10が備える第3画素群PG3を用いた真贋判定方法を説明する。ただし、以下に説明する方法は、表示体10が備える第3画素群PG3に限らず、第1画素群PG1および第2画素群PG2のいずれかを用いて行うことも可能である。また、真贋判定方法には、第1画素群PG1、第2画素群PG2、および、第3画素群PG3の2つ以上が用いられてもよい。
なお、以下に参照する図27および図28では、図25を参照して先に説明した第1画素PG31が表示体10の真贋判定に用いられる領域の一例として示されている。しかしながら、表示体10の真贋判定では、表示体10が備える1つの画素10Pを用いて表示体10の真贋を判定してもよいし、表示体10が備える複数の画素10Pを含む領域を真贋判定の対象としてもよい。
図27が示すように、表示体10は、第2島領域PG31bと海領域PG31cとが互いのコントラストによって区別される一方で、第1島領域PG31aと海領域PG31cとのコントラストがほぼ生じない状態を有することが可能である。表示体10に入射する入射光ILが特定の入射角を有し、かつ、検証器による観察角度が特定の観察角度である場合に、表示体10は、当該状態を有することが可能である。この場合には、第2島領域PG31bと、第1島領域PG31aおよび海領域PG31cを含む領域とのコントラスト差によって形成される画像が、表示体10の真贋を判定するための判定画像として機能することが可能である。すなわち、第3画素群PG3は、第2島領域PG31bの形状、および、第1画素PG31内における第2島領域PG31bの位置を、機械読み取りが可能なコードとして記録している。
図28が示すように、表示体10は、第1島領域PG31aと海領域PG31cとが互いのコントラストによって区別され、かつ、第2島領域PG31bと海領域PG31cとが互いのコントラストによって区別される一方で、第1島領域PG31aと第2島領域PG31bとのコントラストがほぼ生じない状態を有することが可能である。表示体10に入射する入射光ILが特定の入射角を有し、かつ、検証器による観察角度が特定の観察角度である場合に、表示体10は、当該状態を有することが可能である。なお、図28が示す状態を表示体10が有する場合の入射角および観察角度の少なくとも一方が、図27が示す状態を表示体10が有する場合の条件とは異なっている。
この場合には、第1島領域PG31aおよび第2島領域PG31bと海領域PG31cとのコントラスト差によって形成される画像が、表示体10の真贋を判定するための判定画像として機能することが可能である。すなわち、第3画素群PG3は、島領域PG31a,PG31bの形状、および、第1画素PG31内における島領域PG31a,PG31bの位置を、機械読み取り可能なコードとして記録している。
図29が示すように、第2島領域PG31bは、特定の文字、記号、および、数字などの形状を有してもよい。図29が示す例では、第1画素PG31は4つの第2島領域PG31bを有し、4つの第2島領域PG31bのいずれか1つが、「T」、「P」、「1」、および、「9」のいずれかに対応する形状を有している。すなわち、第3画素群PG3は、第2島領域PG31bの31bの形状、および、第1画素PG31内における第2島領域PG31bの位置を、機械読み取り可能なコードとして記録している。
なお、上述したように、表示体10が備える各島領域PG31a,PG31bは非常に微細であることから、観察者OBが検証器を用いることなく表示体10を肉眼で観察するのみでは、表示体10において真贋判定に用いられる構造を視認することはできない。
図30および図31を参照して、表示体10の真贋判定方法における手順の一例を説明する。
図30が示すように、表示体10の真贋判定では、表示体10に対して特定の入射角αで入射光が入射するように、表示体10に対する光源LSの位置を調整する。また、表示体10から特定の反射角βで反射される反射光を受光可能であるように、表示体10に対する検証器VFの位置を調整する。これにより、検証器VFによって、表示体10が表示する画像を撮像する。
図31が示すように、表示体10の真贋判定では、まず、検証器VFを用いて表示体10が表示する画像を撮像する(ステップS11)。これにより、表示体10の真贋判定に用いる判定画像を得ることができる。次いで、検証器VFが撮像した判定画像を、予め準備された判定用の基準画像と比較する(ステップS12)。検証器VFが撮像した判定画像と、基準画像との比較は、検証器VFを用いて行われてもよい。または、検証器VFに接続されたコンピューターに検証器VFが撮像した判定画像を送信し、送信された判定画像とコンピューターに記憶された基準画像とが、コンピューターによって比較されてもよい。またあるいは、検証器VFに接続されたコンピューターに検証器VFが撮像した判定画像を送信し、さらに、コンピューターに接続されたサーバーに検証器VFが撮像した判定画像を送信して、サーバーに記憶された基準画像と、サーバーに送信された判定画像とが、サーバーによって比較されてもよい。
次いで、2つの画像を比較した結果に基づいて、表示体10の真贋が判定される(ステップS13)。表示体10の真贋を判定するための比較では、画像が有するパターン、画像における輝度の分布、および、画像における色の分布の少なくとも一つを用いることが可能である。なお、こうした判定は、2つの画像についての比較を行った媒体によって行うことが可能である。
そして、表示体10の真贋判定の結果が出力される(ステップS14)。ステップS12およびステップS13の処理が検証器VFによって行われる場合には、真贋判定の結果も検証器VFが出力することが可能である。また、ステップS12およびステップS13の処理がコンピューターによって行われる場合には、真贋判定の結果もコンピューターが出力することが可能である。ステップS12およびステップS13の処理がサーバーによって行われる場合には、例えば、サーバーが真贋判定の結果をコンピューターに送信し、コンピューターが送信されたデータに基づいて、真贋判定の結果を出力することが可能である。真贋判定の結果は、例えば、検証器VFまたはコンピューターが備える表示部に出力される。
以上説明したように、表示体の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)島領域PG11a,PG12aが非周期的に並ぶ海島構造を第1画素群PG1の画素10Pが有するため、第1画素群PG1の配置における周期性に基づくノイズが抑えられ、結果として、第1画像PIC1の視認性が高められる。また、第3画素群PG3が記録するコードを用いて表示体10の真贋を判定することが可能であるため、表示体10が有する偽造に対する耐性を高めることが可能である。
(2)第1画素群PG1が有する各画素10Pにおいて、複数の島領域PG11a,PG12aの形状および配置が、他の画素10Pにおける複数の島領域PG11a,PG12aの形状および配置とは異なる場合には、配置における周期性に基づくノイズがより確実に抑えられ、第1画像PIC1の視認性がより確実に高められる。
(3)第1凹凸構造UE1に入射した入射光が多重反射しながら伝搬する面積が、島領域PG11a,PG12aが有する面積の分だけ担保されるため、第1凹凸構造UE1がサブ波長構造である場合に、導波モード共鳴による反射光の発色強度を高めることができる。
(4)第1画素群PG1において、島領域PG11a,PG12aが反射する光の光学効果が、ブランク構造BLが反射する光によって弱められても、第1凹凸構造UE1の面積の割合を大きくすることによって、第1画像PIC1における濃淡のむらが抑えられる。
(5)ブランク構造BLによって反射される光が、第1凹凸構造UE1が反射する光に影響しないから、ブランク構造BLが反射した光に起因した第1画像PIC1における濃淡のむらが抑えられる。
(6)島領域PG21a,PG22aが非周期的に並ぶ海島構造を第2画素群PG2の画素10Pが有するため、第2画素群PG2の配置における周期性に基づくノイズが抑えられ、結果として、第2画像PIC2の視認性が高められる。
(7)第3画素群PG3において、第1凹凸構造UE1および第2凹凸構造UE2の両方が不規則に配置されることから、第1画像PIC1のうちで第3画素群PG3によって表示される部分、および、第2画像PIC2のうちで第3画素群PG3によって表示される部分における視認性が高められる。
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[第1画素群]
・ブランク構造BLが正反射方向に光を反射する場合であっても、第3画素群PG3の総面積に対する第3画素群PG3に含まれる第1凹凸構造UE1の総面積の比と、第1画素群PG1の総面積に対する第1画素群PG1に含まれる第1凹凸構造UE1の総面積の比とが等しくてもよい。この場合であっても、第1画素群PG1が含む画素10Pが海島構造を有することによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
・海島構造において、第1凹凸構造UE1が海領域に含まれ、かつ、ブランク構造BLが島領域に含まれてもよい。この場合であっても、第1画素群PG1が含む画素10Pが海島構造を有することによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
・第1画素群PG1が含む第1凹凸構造UE1は、一次回折光を反射する一次回折格子であってもよい。この場合であっても、第1凹凸構造UE1における第1反射角度θR1が、第2凹凸構造UE2における第2反射角度θR2とは異なる角度であることによって、表示体10は、第1画像PIC1のみを表示する状態と、第2画像PIC2のみを表示する状態とを有することが可能である。
・第1画素群PG1に含まれる各画素10Pにおいて、複数の島領域の形状および配置が、他の画素10Pにおける複数の島領域の形状および配置と同じであってもよい。この場合には、以下に記載の効果を得ることができる。
(8)第1画素群PG1に属する各画素10Pが有する配置における周期性に基づくノイズを抑えつつ、第1画素群PG1の設計を容易にすることによって表示体10の製造を容易にすることができる。
・各画素PG11,PG12では、海島構造において、複数の島領域PG11a,PG12aは、非周期的な形状、および、非周期的な配置の少なくとも一方を有することが可能である。すなわち、複数の島領域PG11a,PG12aが、非周期的な形状、または、非周期的な配置のいずれかのみを有する場合であっても、こうした非周期性に応じて(1)に準じた効果を得ることは可能である。
[第2画素群]
・海島構造において、第2凹凸構造UE2が海領域に含まれ、かつ、ブランク構造BLが島領域に含まれてもよい。この場合であっても、第1画素群PG1が含む画素10Pが海島構造を有することによって、上述した(6)に準じた効果を得ることはできる。
・各画素PG21,PG22では、海島構造において、複数の島領域PG21a,PG22aは、非周期的な形状、および、非周期的な配置の少なくとも一方を有することが可能である。すなわち、複数の島領域PG11a,PG22aが、非周期的な形状、または、非周期的な配置のいずれかのみを有する場合であっても、こうした非周期性に応じて(6)に準じた効果を得ることは可能である。
・第2画素群PG2が含む画素10Pは、海島構造を有しなくてもよい。第2画素群PG2では、第2凹凸構造UE2を含む画素と、ブランク構造BLを含む画素とが、市松状に並んでもよいし、ストライプ状に並んでもよい。この場合であっても、少なくとも第1画素群PG1については、上述した(1)の効果を得ることはできる。
・第2画素群PG2に含まれる各画素10Pにおいて、複数の島領域の形状および配置が、他の画素10Pにおける複数の島領域の形状および配置と同じであってもよい。この場合には、第2画素群PG2に属する各画素10Pが有する配置における周期性に基づくノイズを抑えつつ、第2画素群PG2の設計を容易にすることによって表示体10の製造を容易にすることができる。
[第3画素群]
・第3画素群PG3の各画素10Pの海島構造において、複数の島領域PG31a,PG31bは、非周期的な形状、および、非周期的な配置の少なくとも一方を有することが可能である。すなわち、複数の島領域PG31a,PG31bが、非周期的な形状、または、非周期的な配置のいずれかのみを有してもよい。
・第3画素群PG3には、図32から図42を参照して説明するように、機械読み取りが可能なコードが記録されていてもよい。機械読み取り可能なコードは、第3画素群PG3が有する領域の形状および配置に対して対応付けられたコードである。
図32は、第3画素群PG3に含まれる複数の画素10Pの一部を示している。
図32が示す例において、第3画素群PG3に含まれる各画素10Pは、島領域10P1と海領域10P2とを有している。なお、本例では、各島領域10P1は、第3画素群PG3の全体において、離散的に配置されている。一方で、海領域10P2は、第3画素群PG3の全体において、複数の島領域10P1を取り囲んでいる。島領域10P1は第1凹凸構造UE1を有し、海領域10P2は第2凹凸構造UE2を有している。なお、島領域10P1が第2凹凸構造UE2を有し、海領域10P2が第1凹凸構造UE1を有してもよい。
島領域10P1は、画素10Pの形状と相似な形状を有している。本例では、画素10Pは正方形状を有し、島領域10P1も正方形状を有している。海領域10P2は、その海領域10P2が属する画素10Pにおいて、島領域10P1が位置する部分以外の部分に位置している。島領域10P1が有する面積は、海領域10P2が有する面積と等しくてもよいし、異なってもよい。各画素10Pにおいて、島領域10P1が反射する光の強度と、海領域10P2が反射する光の強度との間における差を生じにくくする観点では、島領域10P1の面積は、海領域10P2の面積と等しいことが好ましい。反対に、島領域10P1および海領域10P2のどちらか一方における光学効果を強調したい場合には、それぞれの面積比率を調整してもよい。
各島領域10P1の中心は、その島領域10P1が属する画素10Pの中心に対して、上下方向および左右方向の両方にずれて位置している。島領域10P1が有する1つの頂点が、その島領域10P1が属する画素10Pにおけるいずれかの頂点に位置している。
各画素10Pは、ブランク構造10P3を有してもよい。ブランク構造10P3は、島領域10P1と海領域10P2との間に位置している。図32が示す例では、ブランク構造10P3はL字状を有している。ブランク構造10P3は、島領域10P1が有する辺のうちで、画素10Pが有する辺に接する辺以外の辺に沿う形状を有している。
図33は、第3画素群PG3が有する画素10Pにおける領域の配置と、その配置に対応付けられたコードの一例とを示す表である。
図33が示すように、画素10Pが有する領域について、例えば、以下の3つの要素に対してコードを対応付けることが可能である。なお、以下では説明の便宜上、図33が示された紙面における左右方向、および、上下方向を用いている。
(要素1)左右方向における島領域10P1の位置
(要素2)上下方向における島領域10P1の位置
(要素3)ブランク構造10P3の有無
要素1において、島領域10P1の中心が画素10Pの中心に対して左にずれている場合に、コード「0」を対応付けることが可能である。また、島領域10P1の中心が画素10Pの中心に対して右にずれている場合に、コード「1」を対応付けることが可能である。要素2において、島領域10P1の中心が画素10Pの中心に対して上にずれている場合に、コード「0」を対応付けることが可能である。また、島領域10P1の中心が画素10Pの中心に対して下にずれている場合に、コード「1」を対応付けることが可能である。要素3において、画素10Pがブランク構造10P3を有する場合に、コード「0」を対応付けることが可能である。また、画素10Pがブランク構造10P3を有しない場合に、コード「1」を対応付けることが可能である。
図34は、図32に示した第3画素群PG3が有する画素10Pの一部を示している。詳細には、図32に示された第3画素群PG3のうち、最下段に位置する4つの画素10Pが示されている。
図34が示すように、4つの画素10Pには、紙面の左側から順に、「011」、「111」、「010」、「111」のコードが記録されている。これにより、1つの画素10Pによって、3ビットのコードを記録することが可能である。そのため、例えば、当該4つの画素10Pが、第3画素群PG3に記録されたコードにおける読み取り単位である場合には、「011111010111」の数列がコードとして読み取られる。すなわち、4つの画素10Pによって、12ビットのコードが記録されている。なお、第3画素群PG3における読み取り範囲は、複数の読み取り単位によって構成される。第3画素群PG3から読み取られたコードに基づき表示体10の真贋を判定する場合には、上述した数列そのものを、真贋を判定するための認証コードに設定してもよいし、数列に対して予め対応付けられたデジタルコードを、真贋を判定するための認証コードに設定してもよい。
図35が示すように、各画素10Pにおいて、画素10Pと相似な形状を有した島領域10P1の位置は、その島領域10P1が属する画素10Pの中心10PCに対して、島領域10P1の中心P1Cを左右方向および上下方向の少なくとも一方においてずらすことによって設定することが可能である。そのため、第3画素群PG3の全体において、複数の島領域10P1を不規則に配置するための設計が容易である。
第3画素群PG3に設定されるコードの読み取り範囲において、同一のコードが記録された読み取り単位の数が少ないほど、島領域10P1の配列が周期性を有する可能性がより低くなる。複数の読み取り単位において、同一のコードが記録された読み取り単位の割合は50%未満であることが好ましく、20%未満であることがより好ましい。なお、複数の島領域10P1を不規則に配置する観点では、各読み取り単位に記録されたコードを他の読み取り単位とは異ならせることが最も好ましい。
なお、図35が示すように、第3画素群PG3は、島領域10P1の中心P1Cが、その島領域10P1が属する画素10Pの中心10PCに一致した島領域10P1を有してもよい。あるいは、第3画素群PG3は、島領域10P1の中心P1Cがその島領域10P1が属する画素10Pの中心10PCに対して上下方向のみにおいてずれた島領域10P1を有してもよい。あるいは、第3画素群PG3は、島領域10P1の中心P1Cがその島領域10P1が属する画素10Pの中心10PCに対して左右方向のみにおいてずれた島領域10P1を有してもよい。
このように、画素10Pに対する島領域10P1の位置における種類を増やすことによって、各画素10Pが記録可能なコードの数を増やすことが可能である。これにより、島領域10P1の配列が周期性を有する可能性をより低くすることができ、かつ、表示体10における偽造に対する耐性を高めることもできる。
また、ブランク構造10P3は、島領域10P1が有する外縁の全体を囲む形状を有してもよい。図32が示す例では、ブランク構造10P3が、四角枠状を有してもよい。このように、ブランク構造10P3が有することが可能な形状の種類を増やすことによっても、各画素10Pが記録可能なコードの数を増やすことが可能である。これにより、表示体10における偽造に対する耐性を高めることができる。
図36は、島領域10P1にコードを記録させるために島領域10P1が有することが可能な形状の変更例を示している。
図36が示すように、島領域10P1は、画素10Pと相似な形状を有する領域から画素10P内に突出した突出部P1aを有することができる。島領域10P1は、画素10Pと相似な形状を有する領域を区画する外縁のうち、画素10Pに接しない部分における任意の位置に突出部P1aを有することが可能である。島領域10P1における突出部P1aの位置によって、各画素10Pにコードを記録させることができる。例えば、突出部P1aが画素10Pと相似な形状を有する領域を基準として、突出部P1aによって以下の8種類のコードを設定することが可能である。すなわち、突出部P1aが画素10Pと相似な形状における上辺の左側に位置する場合、あるいは、上辺の右側に位置する場合、下辺の左側に位置する場合、あるいは、下辺の右側に位置する場合、および、右辺の上側に位置する場合の各々を1つのコードに紐付けることが可能である。また、突出部P1aが画素10Pと相似な形状における右辺の下側に位置する場合、および、左辺の上側に位置する場合、あるいは、左辺の下側に位置する場合の各々を1つのコードに紐付けることが可能である。
また、島領域10P1は画素10Pと相似な形状でなくてもよい。例えば、図面には示していないが、島領域10P1を長方形とした場合に、島領域10P1において縦に延びる辺、および、横に延びる辺のどちらの辺が長いかに基づいて、各画素10Pにコードを記録させることも可能である。
上述したように、第3画素群PG3は、複数の画素10Pによって1つの認証コードを記録することが可能である。図37は、第3画素群PG3が、3つの画素10Pによって1つの認証コードを記録する例を示している。なお、第3画素群PG3は、2つ以上の画素10Pによって認証コードを記録することが可能であるから、1つの認証コードを記録する画素10Pの数は3に限定されない。
図37が示すように、画素10Pの左上に島領域10P1が位置する画素が3つ連続する画素群に対して、認証コードとしてアルファベットの「A」を対応付けることが可能である。なお、図33を用いて先に説明した例では、画素10Pの左上に島領域10P1が位置する画素には、「001」のコードが記録される。また、画素10Pの右上に島領域10P1が位置する画素が3つ連続する画素群に対して、認証コードとしてアルファベットの「B」を対応付けることが可能である。なお、図33を参照して先に説明した例では、画素10Pの右上に島領域10P1が位置する画素には、「101」のコードが記録される。また、画素10Pの右下に島領域10P1が位置する画素が3つ連続する画素群に対して、認証コードとしてアルファベットの「C」を対応付けることが可能である。なお、図33を参照して先に説明した例では、画素10Pの右下に島領域10P1が位置する画素には、「111」のコードが記録される。また、複数の画素10Pによって記録される認証コードは、アルファベットに限らず、例えば、数字、漢字、仮名、および、記号などであってよい。
図38および図39は、図37に例示される認証コードと、3つの画素群によって記録される認証コードを真贋判定の対象とするか否かを特定するための画素を有した構成を示している。
図38が示すように、第3画素群PG3は、1つの認証コードを記録する3つの画素群と、他の1つの認証コードを記録する3つの画素群との間に、読み取りの要否を決定する決定用画素10PRが位置している。なお、本例では、紙面の左右方向に沿って並ぶ3つの画素10Pの群と、当該画素群の右側に位置する決定用画素10PRとが、1つの読み取り単位を構成している。
決定用画素10PRは、島領域10P1および海領域10P2の両方を有しない画素である。決定用画素10PRは、例えば所定の形状が印字された画素、あるいは、当該形状が印字されていない画素であってよい。所定の形状は、例えば、文字、数字、記号、および、図形などであってよい。所定の形状を印字する方法は、レーザーマーキング法、および、インクジェット法などであってもよい。決定用画素10PRにおいて、所定の形状が印字された画素が読み取り画素PR2である。読み取り単位が読み取り画素PR2を含む場合には、読み取り単位に含まれるコードが表示体10に対する真贋の判定に用いられる。一方で、決定用画素10PRにおいて、所定の形状が印字されていない画素が非読み取り画素PR1である。読み取り単位が非読み取り画素PR1を含む場合には、読み取り単位に含まれるコードが表示体10に対する真贋の判定に用いられない。
なお、決定用画素10PRは、金属製の反射層が形成された画素であってもよい。決定用画素10PRにおいて、反射層が形成された画素が読み取り画素PR2である。一方で、決定用画素10PRにおいて、反射層が形成されていない画素が非読み取り画素PR1である。この場合には、第3画素群PG3の表面全体に反射層を形成した後に、反射層のうちで、非読み取り画素PR1に該当する決定用画素10PRに形成された部分を取り除くことによって、非読み取り画素PR1を形成することが可能である。反射層の一部を取り除く方法は、例えば、レーザーアブレーションであってよい。
図38が示す例では、認証コードである「A」に対応付けられた画素群を含む読み取り単位が非読み取り画素PR1を含む。そのため、認証コード「A」は、表示体10に対する真贋の判定に用いられない。これに対して、認証コードである「B」に対応付けられた画素群を含む読み取り単位、および、「C」に対応付けられた画素群を含む読み取り単位は、それぞれ読み取り画素PR2を含む。そのため、認証コード「B」および「C」は、表示体10に対する真贋の判定に用いられる。
図39が示す例では、認証コードである「A」に対応付けられた画素群を含む読み取り単位、および、「C」に対応付けられた画素群を含む読み取り単位が、それぞれ読み取り画素PR2を含む。そのため、認証コード「A」および「C」は、表示体10に対する真贋の判定に用いられる。これに対して、認証コードである「B」に対応付けられた画素群を含む読み取り単位は、非読み取り画素PR1を含む。そのため、認証コード「B」は、表示体10に対する真贋の判定に用いられない。
読み取り単位が決定用画素10PRを含むことによって、図38および図39が示すように、認証コードが記録された画素群は同一であっても、決定用画素10PRが読み取り画素PR2および非読み取り画素PR1のいずれであるかによって、表示体10に対する真贋の判定に用いる認証コードを変更することが可能である。決定用画素10PRを読み取り画素PR2および非読み取り画素PR1のいずれとするかは、オンデマンドで変更することが可能である。
決定用画素10PRを有する表示体10によれば、表示体10を偽造するためには、表示体10が有する凹凸構造の偽造と同時に、決定用画素10PRの偽造も必要とされる。そのため、表示体10が決定用画素10PRを備えていない場合に比べて、表示体10が有する偽造に対する耐性が高められる。
第3画素群PG3は、読み取り範囲を指定するための指定用画素を備えることが可能である。図40および図41は、第3画素群PG3が備えることが可能な指定用画素の一例を示している。
図40が示す例では、指定用画素10PSは、画素10Pよりも大きい。指定用画素10PSは、複数個の画素10Pが占有する大きさと同一の大きさを有することが可能である。例えば、図40が示す例では、指定用画素10PSは、4個の画素10Pが占有する大きさを有している。指定用画素10PSは、第1凹凸構造UE1、第2凹凸構造UE2、および、ブランク構造BLの少なくとも1つを含むことが可能である。第3画素群PG3において、4つの指定用画素10PSによって他の領域から区切られた領域が、機械読み取りの対象である読み取り範囲である。
図41が示す例では、指定用画素10PSは、画素10Pと同一の形状および大きさを有している。指定用画素10PSは、画素10Pと同様に、第1凹凸構造UE1を有した領域と、第2凹凸構造UE2を有した領域とを備えている。ただし、指定用画素10PSでは、指定用画素10PS内における第1凹凸構造UE1を有した領域の位置が、画素10P内における島領域10P1の位置とは異なり、かつ、指定用画素10PS内における第2凹凸構造UE2を有した領域の位置が、画素10P内における海領域10P2の位置とは異なっている。第3画素群PG3において、4つの指定用画素10PSによって他の領域から区切られた領域が、機械読み取りの対象である読み取り範囲である。
なお、第3画素群PG3は、図40が示す指定用画素10PSと図41が示す指定用画素10PSとの両方を備えてもよい。また、第3画素群PG3は、指定用画素10PSによって区切られた読み取り範囲を、第3画素群PG3のなかに複数有してよい。
図42は、第3画素群PG3に記録されたコードを用いた表示体10の真贋判定方法における手順の一例を示している。
図42が示すように、表示体10の真贋を判定する際には、まず、第3画素群PG3が含む読み取り範囲の画像を上述した検証器を用いて撮像する。このとき、表示体10に対して、あらかじめ決められた特定の第1角度から光を入射し、特定の第2角度において撮像することによって、画素10P内における島領域10P1、海領域10P2、ブランク構造10P3を任意のコントラストを有した画像として取得することができる。例えば、先に参照した図32では、島領域10P1、海領域10P2、および、ブランク構造10P3には、互いに異なる密度を有したドットが付され、これによって、各領域10P1,10P2、および、ブランク構造10P3が明確に区分されている。しかしながら実際には、表示体10を撮像した画像では、各領域10P1,10P2、および、ブランク構造10P3がそれぞれ互いに異なる輝度あるいは色などの光学特性を用いて表示されている。各領域10P1,10P2、および、ブランク構造10P3が有する光学特定における特性値の差、すなわちコントラストは、上述した入射角度および撮像角度などによって変化する。なお、表示体10に入射する光の光源は検証器に内蔵されていてもよいし、光を入射させる角度と撮像の角度とが固定されていれば、光源と検証器とが分かれていてもよい。
次いで、検証器は、例えば検証器が接続されたサーバーおよびコンピューターのいずれかである入力先に対して、検証器が撮像した画像を入力する(ステップS21)。そして、画像の入力先が、検証器が出力した画像を取り込む(ステップS22)。次に、画像の入力先は、画像を用いた表示体10の真贋判定を行うために、画像に対して所定の前処理を行う(ステップS23)。
前処理は、撮像した画像を容易に認証できるように加工する工程である。上述した図32を例に挙げると、撮像した画像の各領域において光学特性値、例えば輝度によるコントラストが小さい場合、この後のステップである特徴抽出を行なう上で、領域のそれぞれが明瞭に区別して画像表示されることが望ましい。そのため、前処理として、例えば輝度に対するしきい値を設定し、しきい値よりも低い輝度を有した領域には白黒の256階調における50を当てはめる一方で、しきい値よりも高い輝度を有した領域には当該256階調における150を当てはめることなどが可能である。このように、前処理の一例では、領域ごとに一定の階調を割り当て、これによって、画像を再構成することができる。
また、図27を例に挙げると、第1島領域PG31a、第2島領域PG31b、海領域PG31cに特定の第1角度から光を入射したとき、第2島領域PG31bのみが特定の第2角度に反射し、第1島領域PG31aおよび海領域PG31cは別の角度に反射する、あるいは、その逆であってもよい。この際に、図27では、第1島領域PG31aと第2島領域PG31bとの間においてコントラストが付けられているが、実際には、第2島領域PG31bの強度には及ばないにしても、第1島領域PG31aの反射光も第2角度に反射される可能性がある。そのため、前処理では、例えば、画像を輝度に関して二値化することによって、認証に用いる画像を図27に示される状態に近付け、これによって、認証精度を高めることが可能である。
また、図28が示す例のように、第1島領域PG31aおよび第2島領域PG31bを一体化させ、海領域PG31cと区別した画像として認証させたい場合には、二値化する際のしきい値を調整することによって、図27に示される例と同様の処理が可能となる。
なお、画像の二値化は、画像が有する輝度以外にも、例えば、画像が有する明度、彩度、および、色相などの任意の色彩値を基準に行なってもよい。また、前処理は、偏光フィルターを用いることによって、検証器に入射した光のうちで特定の光のみを、認証に利用するための光として取り出す処理などであってよい。
そして、画像の入力先は、前処理後の画像が有する特徴を抽出する(ステップS24)。これによって、画像内に含まれる画素10Pにおける領域の配置によって記録されたコードが読み取られる。上述したように、画像の入力先は、画素10Pにおける領域の配置に基づいて、「0」および「1」の少なくとも一方から構成されるコードを読み取る。なお、画素10Pにおける領域の配置によって記録されたコードがさらに別の認証コードに対応付けられている場合には、画像の入力先は、画素10Pにおける領域の配置に基づいて読み取ったコードを他のデジタルコードに変換する(ステップS25)。これに対して、画素10Pにおける領域の配置によって記録されたコードが別のコードに対応付けられていない場合には、画像の入力先は、画素10Pにおける領域の配置によって記録されたコードを認証コードとして取り扱う。そして、画像の入力先は、認証コードを、予め記録された判定用のコードと照合する(ステップS26)。最後に、画像の入力先は、照合の結果に基づいて、表示体10が真正の表示体であるか否かを判定する(ステップS27)。画像の入力先は、認証コードが判定用のコードに一致した場合に、表示体10が真正の表示体であると判定する。一方で、画像の入力先は、認証コードが判定用のコードに一致しなかった場合に、表示体10が偽造された表示体であると判定する。
以上説明したように、画素10Pが有する領域の配置によって記録されたコードを機械読み取りで真贋判定する場合、判定する人のみが知り得る特定の角度から光を入射し、さらに、その反射光を特定の角度で受光した際に得られる画像の光学特性値が真贋判定での重要な要素である。言い換えれば、画素10Pは、特定の角度から光を入射した際に所定の光学特性を発現しなければならない。そのため、偽造者は島領域および海領域の形状における外観のみをコピーするだけでなく、各領域内に設けられた凹凸構造を真正の画素10Pと同じ設計、および、同じ精度で作製する必要があることから、表示体10の偽造が困難である。さらに、第3画素群PG3にコードを記録することにより、表示体10を偽造する場合には、表示体10に光が入射した際の反射光の角度や強度などの光学特性が異なる第1島領域PG31aと第2島領域PG31bとの両方における凹凸構造を精度よく真似する必要が生じる。そのため、例えば、上述した第1画素群PG1あるいは第2画素群PG2によるように、島領域が備える凹凸構造が1種類のみである場合と比べて、表示体10の偽造を防止する効果がより一層高くなる。
以上説明した変更例によれば、以下に記載の効果を得ることが可能である。
(9)第3画素群PG3が、機械読み取りが可能なコードを記録しているため、当該コードを用いて表示体10の真贋を判定することが可能である。これにより、表示体10が表示することが可能な画像PIC1,PIC2と、表示体10が記録するコードとの両方を用いて、表示体10の真贋を判定することが可能である。そのため、表示体10がコードを記録していない場合に比べて、表示体10が有する偽造に対する耐性を高めることが可能である。
・上述した第3画素群PG3の変更例において、第3画素群PG3は、同一のコードが記録された読み取り単位を複数含むことが可能である。これにより、第3画素群PG3に記録されたコードの冗長性を高めることが可能である。また、この場合には、同一のコードが記録された読み取り単位を用いて、いずれかの読み取り単位に生じた誤りを訂正することも可能である。
・上述した第3画素群PG3の変更例において、読み取り単位に記録された認証コードは、誤り検出符号であるパリティビットを含んでもよい。これにより、読み取り単位の読み取り結果が誤りを含む場合に、当該誤りを検出することが可能である。
・上述した表示体10の真贋判定方法において、検証器に接続されたコンピューターまたはサーバーが、第3画素群PG3に含まれる読み取り範囲のうちで、表示体10の真贋判定に用いる読み取り範囲を指定するための信号を生成し、生成した信号を検証器に出力してもよい。そして、検証器は、コンピューターまたはサーバーによって指定された読み取り範囲を撮像した画像を出力してもよい。この場合には、表示体10の真贋判定ごとに、読み取り範囲が指定されるため、真贋判定される全ての表示体10において同一の読み取り範囲を用いた判定が行われる場合に比べて、表示体10が有する偽造に対する耐性を高めることが可能である。
・上述した表示体10の真贋判定方法では、第3画素群PG3の画素10Pにおける領域の配置に対応付けられたコードに加えて、第3画素群PG3が有する特定の島領域10P1が反射する光が有する色、言い換えれば光の波長が特定の波長であるか否かが表示体10の真贋を判定するための条件に含まれてもよい。
・図32から図42を参照して説明した第3画素群PG3の変更例は、第1画素群PG1および第2画素群PG2に適用することが可能である。例えば、第1画素群PG1において、1つの画素10Pが、第1凹凸構造UE1を有した島領域と、ブランク構造BLを有した海領域とを有することが可能である。島領域が画素10Pに相似な形状を有し、かつ、画素10Pの中心から島領域の中心をずらすように島領域を画素10P内に配置することによって、各画素10Pにコードを記録させることが可能である。また、例えば、第2画素群PG2において、1つの画素10Pが、第2凹凸構造UE2を有した島領域と、ブランク構造BLを有した海領域とを有することが可能である。島領域が画素10Pに相似な形状を有し、かつ、画素10Pの中心から島領域の中心をずらすように島領域を画素10P内に配置することによって、各画素10Pにコードを記録させることが可能である。
[他の変更例]
上述したように、第1画素群PG1および第2画素群PG2にも、第3画素群PG3と同様にコードを記録させることが可能である。例えば、第1画素群PG1にコードを記録させる場合には、第1画素群PG1に対して以下に記載する構成を適用することが可能である。なお、以下に記載する構成は、第1画素群PG1に限らず、第2画素群PG2および第3画素群PG3に対しても適用が可能である。
・複数の島領域PG11aの形状および配置が非周期的である場合、その形状および配置として記録されるコードのエントロピー、言い換えれば情報量を非ゼロとすることができる。逆に、複数の島領域PG11aの形状および配置が周期的である場合、その周期的な形状および配置の自己エントロピー、言い換えれば選択情報量はゼロである。なお、読み取りのエラーをキャンセルするために、表示体10が互いに同じコードを各別の場所に記録したり、複数の島領域PG11aの形状および配置が周期を有したりしてもよい。この場合、当該周期は、一般に十分に長いことが好ましい。例えば、当該周期は、16ビット以上、さらには128ビット以上とすることができる。また、表示体10に記録されるコードは、特定のデータサイズを有したコードブロックごとに記録されてもよい。このコードブロックのデータサイズは、16ビット、32ビット、64ビット、128ビット、256ビット、または、512ビットであってよい。複数の海島構造を含んだ長方形、または正方形の記録領域にこのコードブロックを記録することができる。
・島領域PG11aがランダム性を有する場合、記録されたコードのエントロピーは、非ゼロである。特に、2を底とするエントロピーが、1以上となることが好ましい。この場合、1ビット分の情報を記録することができる。また、このエントロピーは、2、4、8、16、32、または、64以上であってよい。また、一般に記録するエントロピーは、128未満で十分である。つまり、完全なランダム性を有する必要はなく、適度に長い周期を有することができる。また、コードに記録する情報のエントロピーを少なくするには、ハッシュ関数により生成されたハッシュ値をコードとして記録してもよい。特に、ハッシュ関数は、暗号学的ハッシュ関数であってよい。これにより、暗号による真正の検証が可能である。またこのとき、暗号学的ハッシュ関数のハッシュ値の長さは、128ビット以上、512ビット以下であってよい。このハッシュ値により、海島構造自体が偽造困難な構造であることに加え、その海島構造で記録された暗号も解読する必要があるため、表示体10の偽造をさらに困難にすることができる。また、暗号学的コードは、暗号学的ハッシュ関数で生成される必要はなく、各種の公開鍵暗号、非公開鍵暗号、または、それらを組み合わせたものにより生成されたコードを用いることができる。