JP7410392B2 - 機械構造用鋼、機械構造部品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
即ち、高周波焼入れ焼戻しを施して得た機械構造部品用素形材は、工具寿命を延長し、工具コストを低減することが喫緊の課題であり、機械構造部品用素形材には優れた被削性が要求される。
特許文献1は、Si含有量を低減することで被削性を改善できるとしているが、Siは面疲労強度を向上させる効果があり、Si含有量を低減せずとも被削性を改善できることが望ましい。
そこで、本発明者らは種々の化学成分を有する鋼材の熱間延性を詳細に調査分析した結果、熱間延性はIn単独の含有量よりもむしろ、SとInを足し合わせた量と良い相関関係があることを見出した。つまり、S量に応じて、含有可能なIn量が変化することを知見した。
(1)
成分が、質量%で、
C:0.35超~0.80%、
Si:0.25~1.00%、
Mn:0.01~1.50%、
Cr:0.01~3.00%、
P:0.100%以下、
S:0.001~0.150%、
In:0.038~0.230%、
Al:0.002~0.050%、
N:0.0030~0.0250%、
O:0.0009~0.0050%
を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
insol.Al:0.0011~0.0060%であり、かつ下記式(式1)~(式3)を満たすことを特徴とする機械構造用鋼。
[S]+[In]≦0.230 ・・・(式1)
[In]/[Si]≧0.15 ・・・(式2)
33+31×[C]+4.5×[Si]+1.5×[Mn]+2.4×[Cr]≧53.0 ・・・(式3)
ここで、[S]、[In]、[Si]、[C]、[Mn]および[Cr]は、それぞれS、In、Si、C、MnおよびCrの鋼中の含有質量%を表す(以下、同じ。)。
(2)
成分が、さらに、質量%で、
Ca:0.0050%以下、
Mg:0.0050%以下、
Zr:0.0050%以下、および、
REM:0.0050%以下
からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の機械構造用鋼。
(3)
成分が、さらに、質量%で、
Ti:1.000%以下、
Nb:1.000%以下、および、
V:1.000%以下
からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の機械構造用鋼。
(4)
成分が、さらに、質量%で、
Mo:1.00%以下、
Ni:1.40%以下、
Cu:1.40%以下、および、
B:0.0050%以下
からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)~(3)のいずれか1つに記載の機械構造用鋼。
(5)
成分が、さらに、質量%で、
Sn:0.5000%以下、
Sb:0.5000%以下、
Se:0.5000%以下、
Te:0.5000%以下、
Zn:0.5000%以下、
Bi:0.500%以下、および
Pb:0.09%以下
からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)~(4)のいずれか1つに記載の機械構造用鋼。
(6)
前記(1)~(5)のいずれか1つに記載の成分であり、表面から厚さ方向に50μm深さ位置での300℃焼戻し硬さが580HV以上であることを特徴とする機械構造部品。
(7)
前記(6)に記載の機械構造部品の製造方法であって、前記(1)~(5)のいずれか1つに記載の成分を有する鋼材を加工して粗部材を製造する工程、前記粗部材を高周波焼入れする工程、前記高周波焼入れした粗部材を焼戻しする工程、前記焼戻した粗部材に表面から板厚方向に0.05~0.40mmの深さを切削加工する切削加工工程を有することを特徴とする機械構造部品の製造方法。
Cは、鋼の強度を確保するために含有させる元素である。Cの含有量が0.35%以下では、高周波焼入れ焼戻し後の表層硬度が低下し、機械構造部品の疲労強度が得られない。このため、C含有量は、0.35%超にするとよい。一方、C含有量が0.80%より多いと、高周波焼入れ時に焼割れが生じる恐れがある。このため、C含有量は、0.80%以下にするとよい。C含有量の好ましい下限は、0.36%、0.38%、0.40%、または0.45%にすることができ、好ましい上限は、0.75%、0.70%、または0.65%にすることができる。
Siは、一般に脱酸元素として含有されているが、フェライトの強化および焼戻し軟化抵抗を付与する効果があり、機械構造部品に必要な面疲労強度を向上させる効果がある。しかしながら、Si含有量が0.25%未満の場合、十分な面疲労強度の向上の効果が得られない。一方、Si含有量が1.00%を超えると、高周波焼入れ焼戻し後の切削加工時に、工具と反応して凝着摩耗を引き起こす。そのため、Siは工具摩耗を増大させる。よって、Si含有量は0.25~1.00%とする。好ましいSi含有量の好ましい下限は0.40%であり、好ましい上限は0.80%である。
Mnは、鋼中の硫黄(S)をMnSとして固定・分散させると共に、マトリックスに固溶して焼入れ性の向上や焼入れ後の強度を確保するために必要な元素である。しかしながら、Mn含有量が0.01%未満であると、鋼中のSがFeと結合してFeSとなり、鋼が脆くなる。一方、Mn含有量が増えると、具体的には、Mn含有量が1.50%を超えると、焼入れ性が高くなりすぎて粗部材の硬さの大幅な増大を招き、粗部材の切削加工時の被削性が低下する。よって、Mn含有量は0.01~1.50%とする。Mn含有量の好ましい下限は0.10%でありさらに好ましくは0.20%である。Mn含有量の好ましい上限は1.30%でありさらに好ましくは1.20%である。
Crは、鋼の固溶強化元素であり、また部品を焼入れ、焼戻しして使用する場合には、焼入れ性を向上すると共に、焼戻し軟化抵抗を付与して焼入れ後の疲労強度を向上させる。Cr含有量が0.01%未満だと、これらの効果が得られない。一方、Cr含有量が3.00%を超えると、Cr炭化物が生成して鋼が脆化する。よって、Cr量を0.01~3.00%とする。Cr含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Cr含有量の好ましい上限は2.00%でありさらに好ましくは1.30%である。
Pは不純物である。Pはオーステナイト粒界に偏析して、熱間加工時に粒界割れの原因となるので、P量を0.100%以下にする。Pはできるだけ低減することが望ましいので、好ましくは0.030%以下にするとよい。P含有量の下限は特に限定しないが、P量を0.001%未満に制限するには過剰なコストがかかる。従って、P含有量の範囲は0.001%以上であってもよい。
SはMnと結合してMnSを形成する。MnSは被削性を向上させる効果があるが、その効果を得るためには、Sを0.001%以上含有させる必要がある。一方、S含有量が0.150%を超えると、靭性や疲労強度を顕著に低下させる。よって、S含有量を0.001~0.150%とする。S含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。S含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.030%である。
Inは被削性を向上させる効果があるが、In含有量が0.230%を超えると、800℃以上における延性が低下し、連続鋳造、圧延などの歩留まり低下や部品製造の鍛造時の製造性の低下の原因になる。このためにIn量を0.230%以下とするとよい。
一方、Inは、それ単体で被削性を向上させる効果があるため、少しでもInを含有させるとよい。後述するInとSiの関係(式2)からInは0.038%以上であるとよい。In含有による被削性改善効果を確実に得るため、In含有量の下限は、0.039%、0.040%、0.041%、0.042%、0.044%、0.046%、0.048%、0.050%、0.052%、0.054%、0.0056%、0.058%、0.060%の値を取り得る。一方、In含有量の上限は、熱間延性を確保することとコスト低減の観点から、0.220%、0.210%、0.200%、0.190%、0.180%、0.170%、0.160%、0.150%、0.140%、0.130%、0.120%、0.110%、0.100%、0.090%、0.080%の値を取り得る。
Alは、Nと結合してAlNを形成し、オーステナイト領域での結晶粒粗大化を抑制する作用がある。この効果を得るためには、Alの含有量を0.002%以上とする必要がある。しかしながら、Alを過剰に含有すると、粗大な酸化物として残存しやすくなり、強度特性が低下する。従って、Al量の範囲は0.002~0.050%であある。Al量の好ましい上限は0.040%でありさらに好ましくは0.030%である。Al量の好ましい下限は0.010%でありさらに好ましくは0.020%である。なお、ここでいうAl量とは全Al量を意味する。
Inの形態を制御するため、鋼に含有されるAlを、Al2O3として鋼中に分散させるとよい。酸不溶性Alであるinsol.Alは、Al2O3として存在するAlの量とみなされ、その量が測定される。所定サイズのInを十分確保する上では、insol.Alを0.0011%以上とするとよい。insol.Alの下限は、0.0012%、0.0015%、0018%、0.0020、0.0025%、0.0030%の値を取り得る。
また、insol.Alが多い場合は粗大な酸化物が残存しやすくなり、疲労特性が低下することが懸念される。このため、insol.Alは0.0060%以下にするとよい。insol.Alの上限は、0.0058%、0.0055%、0052%、0.0050、0.0048%、0.0045%の値を取り得る。
N(窒素)は鋼中でAlやVなどと結合して炭窒化物を形成し、オーステナイト結晶粒界をピンニングすることによって粒成長を抑制し、オーステナイトから変態する組織を微細化する働きがあり、この効果を得るには0.0030%以上含有させるとよい。一方、Nは0.0250%を超えて過剰に含有すると1000℃以上の高温域における延性が低下し、連続鋳造、圧延時の歩留まり低下の原因になる。このため、N量を0.0250%以下とする必要がある。N含有量の好ましい下限は0.0035%でありさらに好ましくは0.0040%である。N含有量の好ましい上限は0.0200%でありさらに好ましくは0.0150%である。
O(酸素)は酸化物系介在物を形成し、酸化物上に析出するIn介在物を増やすことを通じて被削性を向上させる。この効果を得るには、O含有量を0.0009%以上にするとよい。一方、O含有量が多い場合は粗大な酸化物として残存しやすくなり、強度特性が低下する。このためO含有量を0.0009%~0.0050%とするとよい。O含有量の好ましい下限は0.0010%でありさらに好ましくは0.0020%である。O含有量の好ましい上限は0.0045%でありさらに好ましくは0.0040%である。
SとInは共に被削性を改善する元素であるが、含有量が増えると高温域における延性が顕著に低下するため、連続鋳造、熱間圧延などの歩留まり低下や部品製造の熱間鍛造時の製造性の低下の原因になる。よってSとInの含有量(質量%)の和を0.230%以下に制限するとよい。SとInの含有量の和の上限は、好ましくは0.225、0.220、0.210、0.215、0.200、0.195、0.190、0.185、0.180、0.175、0.170、0.165、0.160、0.155、0.150の値を取り得る。 なお、ここで[S]、「In」は、それぞれSとInの含有量(質量%)を示す。
Siは高周波焼入れ焼戻し後の切削加工時に、工具と反応して凝着摩耗を引き起こすが、Inの含有によって工具との反応を抑制して被削性を改善し、工具摩耗を低減することができる。この効果を十分に得るには、Si含有量に対して、所定量以上のInを含有するとよい。具体的にはInとSiの含有量の比である[In]/[Si]0.15以上にするとよい。InとSiの比[In]/[Si]の下限は、0.17、0.19、0.21、0.23、0.25、0.27、0.30、0.33、0.37、0.40、0.43、0.47、0.50の値を取り得る
なお、ここで[Si]、「In」は、それぞれSiとInの含有量(質量%)を示す。
ここで、便宜上、F3=33+31×[C]+4.5×[Si]+1.5×[Mn]+2.4×[Cr]と定義する。F3は[C]、[Si]、[Mn]および[Cr]が、高周波焼入れおよび焼戻し後の焼戻し軟化抵抗に影響する程度を、各元素の影響度に重みを付けて相加的に評価する指標である。ここでいう焼戻し軟化抵抗とは高周波焼入れ、焼戻しおよび切削後に300℃で焼戻した後の表面の硬さを意味する。F3を53.0以上とすることで、部品の300℃焼戻し硬さが増加し、面疲労強度を高めることができる。F3の下限は、54.0、55.0、57.5、60.0、62.5、65.0、67.5、70.0、72.5、75.0、77.5、80.082.5、85.0、87.5、90.0、92.5、95.0、97.5、100.0の値を取り得る。
Mg:0.0050%以下、
Zr:0.0050%以下、および、
REM:0.0050%以下の1種または2種以上
Ca、Mg、Zr、およびREM(希土類元素)は、いずれも脱酸元素であり、鋼中で酸化物を生成し、鋼中のMnSの形態を制御して機械特性の向上に寄与する元素である。これらの効果を得るためには、本発明の特性を損なわない範囲で、Ca、Mg、Zr、およびREMを含有させてもよい。いずれの元素も好ましくは0.0001%以上、0.0005%以上、より好ましくは0.0010%以上含有するとよい。一方、Ca、Mg、ZrおよびREMが0.0050%を超えて含有させると、酸化物が粗大化し、疲労強度が低下する。従って、Ca、Mg、ZrおよびREMは0.0050%以下とし、好ましくは0.0020%以下とするとよい。
Nb:1.000%以下、
V:1.000%以下の1種または2種以上
Ti、NbおよびVは、Cおよび/またはNと微細な炭化物、窒化物、および/または、炭窒化物を形成して、オーステナイト温度域加熱時の結晶粒成長および異常粒成長を抑制して、組織の微細均質化に寄与し、衝撃特性を改善する。この効果を得るために、Ti、NbおよびVは、1種または2種以上を含有させてもよい。いずれの元素も好ましくは0.005%以上、0.010%以上、より好ましくは0.020%以上である。一方、Ti、NbおよびVが1.000%を超えて含有されると、硬質の炭化物が生成して被削性が低下する。従って、Ti、NbおよびVの含有量は、それぞれ1.000%以下とする。Ti、Nbのいずれの元素も、好ましい含有量は0.200%以下、より好ましくは0.150%以下、さらに好ましくは0.040%以下である。Vは、好ましくは0.500%以下、より好ましくは0.320%以下である。
Ni:1.40%以下、
Cu:1.40%以下、および
B:0.0050%のうちの1種または2種以上
Mo、Ni、CuおよびBは、いずれも、焼入れ性向上元素である。この効果を得るためには、本発明の鋼の優れた特性を損なわない範囲で含有させて含有してもよい。含有する場合、Mo、Ni、Cuは、それぞれ好ましくは0.01%以上、0.05%以上、より好ましくは0.10%以上含有するとよい。Bは、好ましくは0.0003%以上、0.0007%以上、より好ましくは0.0010%以上含有するとよい。一方、Moが1.00%を超えると、焼入れ性が高くなりすぎて粗部材の硬さの大幅な増大を招き、粗部材の切削や鍛造時の加工性が低下する。このため、Mo含有量は1.00%以下とし、好ましくは0.30%以下とする。NiとCuがいずれも1.40%を超えると、やはり、Moと同様に、焼入れ性が高くなりすぎて、粗部材の硬さの大幅な増大を招き、加工性が低下する。このため、NiとCuの含有量の上限は、いずれも1.40%以下とし、好ましくは1.00%以下とする。Bは0.0050%を超えて含有しても効果が飽和する。従ってBを含有する場合、B量を0.0050%以下とし、好ましくは0.0025%以下とする。
Sb:0.5000%以下、
Se:0.5000%以下、
Te:0.5000%以下、
Zn:0.5000%以下、
Bi:0.500%以下、および
Pb:0.09%以下の1種または2種以上
Sn、Sb、Se、Te、ZnおよびBiは、被削性向上元素である。この効果を得るためには、本発明鋼の優れた特性を損なわない範囲で含有してもよい。含有する場合、Sn、Sb、Se、Te、Znは、それぞれ好ましくは0.0003%以上、0.0005%以上、より好ましくは0.0010%以上含有するとよい。Biは、好ましくは0.001%以上、0.005%以上、より好ましくは0.010%以上含有するとよい。一方、Sn、Sb、Se、TeおよびZnが0.5000%を超え、Biが0.500%を超えると、熱間脆性が発現し、疵の原因となったり、圧延が困難になったりするので、Sn、Sb、Se、TeおよびZnは0.5000%以下、Biは0.500%以下とする。Sn、Sb、SeおよびTeは0.2000%以下が好ましい。Biは0.200%以下が好ましい。Pbも被削性を改善する元素であるが、環境負荷物質であるため、極力含有させないことが好ましく、含有する場合は0.09%以下とする。
[粗部材を製造する工程]
本発明に係る機械構造部品の製造方法の一例を説明する。例えば、上記した組成を有する溶鋼を、転炉等で溶製し、連続鋳造法等でスラブ等とし、それを加熱し、熱間圧延または熱間鍛造等で鋼素材を得ることができる。さらに、鋼素材を熱間加工、あるいは冷間加工などを施して所望の部品形状にすることによって、機械構造部品の粗部材を製造することができる。
上記のようにして得られた粗部材に対して、高周波焼入れ処理および焼戻し処理を施して鋼部品を得る。
高周波焼入れ処理は、初めに高周波加熱を施し、その後焼入れを施す。高周波加熱および焼入れは次の条件で行うことが好ましい。
周波数が低すぎれば、加熱範囲が広がり、焼入れ時の歪みが大きくなる場合がある。一方、周波数が高すぎれば、加熱範囲が表層のみに集中する。この場合、硬化層が薄くなり、疲労強度が低下する場合がある。従って、高周波加熱時の周波数は10~300kHzが好ましい。
加熱時間とは、粗部材の加熱が開始されてから水冷が開始されるまでの時間である。高周波加熱時の加熱時間が長すぎれば、オーステナイト粒が粗大化し、疲労強度が低下する場合がある。一方、加熱時間が短すぎれば、セメンタイトが十分に固溶せず、フェライトが残存する場合がある。従って、高周波加熱時の粗部材の加熱時間は0.5~60s(秒)が好ましい。
高周波加熱後の焼入れは水冷、あるいはポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどの高分子化合物系の水溶性焼入冷却材を使用して行う。液温は20~40℃の範囲とするのが好ましい。
高周波焼入れ後の焼戻しは、例えば120~200℃で0.5~3時間の条件で行うことが好ましい。この高周波焼入れ焼戻しによって、表面から0.05~0.40mmの深さにおける硬さを600~850HVとした機械構造部品用素形材を得ることができる。
高周波焼入れ焼戻し後に、前記素形材の表層を切削加工することで表面の硬さが600~850HVに調整された機械構造部品を得ることができる。なお、切削加工は部品表層の全てに施す必要はなく、寸法精度、強度が求められる部分に選択的に施すことができる。
切削加工は次の条件で行うことが好ましい。
切削工具のすくい角αが-5°よりも大きければ、切削加工時に工具が欠損しやすくなる場合がある。一方、すくい角が-30°以下であれば、切削抵抗が大きくなりすぎ、工具摩耗が増大する場合がある。従って、すくい角αは、-30°<α≦-5°であることが好ましい。
工具のノーズrが小さすぎれば表面粗さが大きくなりすぎ、部品の疲労強度が低下する場合がある。一方、工具のノーズrが大きすぎれば、切削抵抗が大きくなり、工具摩耗が増大する場合がある。従って、工具のノーズrは0.4~1.2mmであることが好ましい。
送りfが小さすぎれば、切削能率が低下し製造効率が低下する場合がある。一方、送りが大きすぎれば、切削抵抗が大きくなり、工具摩耗が大きくなる場合がある。従って、送りfは0.1超~0.4mm/revであることが好ましい。
切削速度vが大きすぎれば、切削温度が上昇し、凝着摩耗が発生する場合がある。一方、切削速度が小さすぎれば、切削能率が低下し製造効率が低下する場合がある。従って、切削速度vは50~250m/分が好ましく、上限は150m/分がさらに好ましい。
切り込みdが小さすぎれば、切削能率が低下し製造効率が低下する場合がある。一方、切り込みdが大きすぎれば、切削抵抗が大きくなり、工具摩耗が大きくなる場合がある。従って、切り込みdは0.05~0.40mmが好ましく、上限は0.20mmがさらに好ましい。
本実施形態で得られた機械構造部品の断面において、表面から厚さ方向(円柱形の場合は表面から中心方向)に50μm深さ位置の300℃焼戻し硬さは、580HV以上となる。300℃焼戻し硬さは、機械構造部品の面疲労強度に影響する。部品表面の300℃焼戻し硬さが580HVを下回ると十分な面疲労強度が得られない。
各鋼材を1250℃で1~4時間加熱した後、熱間鍛造を行って直径40mmの丸棒を得た。熱間鍛造時の仕上げ温度は1000℃であった。
被削性試験は、切削工具の逃げ面摩耗量(μm)によって評価した。高周波焼入れ焼戻し後の被削性試験片(機械構造部品用素形材相当)について、汎用旋盤による旋削加工を実施した。切削工具は、CBN粒子を主成分とし、セラミックスを結合材とした焼結材の表面に、TiAlNベースのセラミックコーティングを施したCBN焼結工具を利用した。切削条件は、切り込み0.1mm、切削速度150m/min、送り0.4mm/revとし、水溶性切削油を用いて湿式で行った。試験片1本あたり1パスの切削加工を行い、複数の試験片について切削加工を繰り返し、合計の切削時間が10分となるまで切削加工した後に、切削工具の逃げ面摩耗量を測定した。逃げ面摩耗量の測定には、マイクロスコープを用いた。工具逃げ面が測定物台と平行になるように工具を設置し、倍率200倍で摩耗部を観察した。この時の、摩耗部中心付近で摩耗が最大となる部分の切れ刃から摩耗先端部までの距離を測定し、逃げ面摩耗量とした。被削性試験の結果を「逃げ面摩耗量」として表2に示す。本測定において逃げ面摩耗量が40μm以下の場合が、従来技術に対して切削加工時の工具摩耗を抑制することができるという点で合格である。
機械構造部品の表面のビッカース硬さは次の方法で測定した。即ち、高周波焼入れ焼戻し後の被削性試験片を使用して、前記と同じ方法で1パスの切削加工を行った。切削加工後の試験片から、長さ方向と垂直な円形断面の円周から中心方向に50μm離れた位置を観察できるように試料を切り出して樹脂に埋め、研磨した後、同位置のビッカース硬さを測定した。上記位置にて硬さ測定を3回行い、その平均値を求めたところ、いずれの試験片においても600~850HVの範囲であった。
さらに同様の試験片を腐食して塑性流動組織の厚さを求めたところ、いずれの試験片においても1~15μmの範囲であった。
機械構造部品の表面の300℃焼戻し硬さは次の方法で測定した。即ち、高周波焼入れ焼戻し後の被削性試験片を使用して、前記と同じ方法で1パスの切削加工を行った。切削加工後の試験片を分割し、そのうち一つを300℃で90分間の焼戻しを行った後、長さ方向と垂直な円形断面の円周から中心方向に50μm離れた位置を観察できるように試料を切り出して、樹脂に埋め、研磨した後、同位置のビッカース硬さを測定した。上記位置にて硬さ測定を3回行い、その平均値を「300℃焼戻し硬さ」として表2に示す。
熱間延性の調査を次のように高温引張試験にて実施した。直径40mmの熱間鍛造後の丸棒を用いて、その長さ方向と垂直な円形断面上の円の中心と表面間の中間位置の部分から、Φ10×170mmの引張試験片を棒鋼の長さ方向に沿って作製した。熱間延性は1250℃に加熱して1分間保持後、1000℃まで温度を下げ、1000℃に達した後に1分間保持後に歪速度が5×10-3/sで引張試験を行い、その絞りの値により評価した。熱間延性は表2において、絞りが60%以上であれば合格(表2では○と表記)、60%未満であれば不合格(表2では×と表記)とした。
面疲労強度の評価は次のようなローラーピッチング試験にて実施した。まず、機械加工の後に前記条件で高周波焼入れ焼戻しを実施し、試験部の直径26.2mmのローラーピッチング試験片用素形材を作製した。さらにローラーピッチング試験用片素形材の試験部について、CBN粒子を主成分とし、セラミックスを結合材とした焼結材の表面に、TiAlNベースのセラミックコーティングを施したCBN焼結工具を利用し、切り込み0.1mm、切削速度150m/min、送り0.4mm/revの切削条件で、水溶性切削油を用いて湿式で旋削加工を行い、試験部の直径26mmのローラーピッチング試験片(機械構造部品相当)を作製した。ローラーピッチング試験は、大ローラー:SCM420浸炭品でクラウニング150R、回転数:2000rpm、潤滑油:トランスミッション油、油温:80℃、すべり率:-40%、最大1000万回の条件で行った。S-N線図を作成して疲労限(MPa、ローラーピッチング疲労強度)を求めた。比較のため、浸炭歯車に多く使用されるJIS-SCr420の107回疲労限も求めた。JIS-SCr420の107回疲労限は2600MPaである。本発明の疲労限(ローラーピッチング疲労強度)の目標値は、これを、約20%向上させた3200MPa以上とし、表2において疲労限度が3200MPa以上の場合が合格であり、3200MPa未満の場合が不合格とした。
Claims (7)
- 成分が、質量%で、
C:0.35超~0.80%、
Si:0.25~1.00%、
Mn:0.01~1.50%、
Cr:0.01~3.00%、
P:0.100%以下、
S:0.001~0.150%、
In:0.038~0.230%、
Al:0.002~0.050%、
N:0.0030~0.0250%、
O:0.0009~0.0050%
を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
insol.Al:0.0011~0.0060%であり、かつ下記式(式1)~(式3)を満たすことを特徴とする機械構造用鋼。
[S]+[In]≦0.230 ・・・(式1)
[In]/[Si]≧0.15 ・・・(式2)
33+31×[C]+4.5×[Si]+1.5×[Mn]+2.4×[Cr]≧53.0 ・・・(式3)
ここで、[S]、[In]、[Si]、[C]、[Mn]および[Cr]は、それぞれS、In、Si、C、MnおよびCrの鋼中の含有質量%を表す。
- 成分が、さらに、質量%で、
Ca:0.0050%以下、
Mg:0.0050%以下、
Zr:0.0050%以下、および、
REM:0.0050%以下
からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の機械構造用鋼。
- 成分が、さらに、質量%で、
Ti:1.000%以下、
Nb:1.000%以下、および、
V:1.000%以下
からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の機械構造用鋼。
- 成分が、さらに、質量%で、
Mo:1.00%以下、
Ni:1.40%以下、
Cu:1.40%以下、および、
B:0.0050%以下
からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の機械構造用鋼。
- 成分が、さらに、質量%で、
Sn:0.5000%以下、
Sb:0.5000%以下、
Se:0.5000%以下、
Te:0.5000%以下、
Zn:0.5000%以下、
Bi:0.500%以下、および
Pb:0.09%以下
からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の機械構造用鋼。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の成分であり、表面から厚さ方向に50μm深さ位置での300℃焼戻し硬さが580HV以上であることを特徴とする機械構造部品。
- 請求項6に記載の機械構造部品の製造方法であって、請求項1~5のいずれか1項に記載の成分を有する鋼材を加工して粗部材を製造する工程、前記粗部材を高周波焼入れする工程、前記高周波焼入れした粗部材を焼戻しする工程、前記焼戻した粗部材に表面から板厚方向に0.05~0.40mmの深さを切削加工する工程を有することを特徴とする機械構造部品の製造方法。
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