この発明に係る熱拡散用複合金属板は、全体の厚さが500μm以下の複合金属板であって、第1銅層とステンレス層と第2銅層とがこの順で接合されており、第1銅層の厚さをTc1とし、ステンレス層の厚さをTsとし、第2銅層の厚さをTc2とするとき、Ts/(Tc1+Tc2)で求まる厚さ比率が0.2以上5以下であり、複合金属板の平面方向の熱伝導率をKxとし、複合金属板の厚さ方向の熱伝導率をKzとするとき、Kx/Kzで求まる熱伝導率の比率が4.4以上6.8以下である。これにより、熱拡散の所望の用途に適する熱拡散用複合金属板の必要特性、特に、熱拡散用複合金属板の機械的特性と熱伝導特性とのバランス、および熱伝導特性の方向特性(熱伝導率の比率)すなわち熱伝導特性の異方性について、適切かつ簡易に見出すことが可能な構成を有する、熱拡散用複合金属板となる。
以下、この発明に係る熱拡散用複合金属板の一実施形態について、および、この発明に係る熱拡散用複合金属板を用いた熱拡散用部品の構成例について、適宜図面を参照しながら説明する。
この発明に係る熱拡散用複合金属板および熱拡散用部品について説明するに際して、以下の通りの表記を用いる。
・熱拡散用複合金属板 :複合金属板
・第1銅層および/または第2銅層 :銅層(第1銅層と第2銅層を区別しない場合)
・層間の接合 :/
・複合金属板の層構造 :銅層/ステンレス層/銅層
・複合金属板の全体の厚さ :T
・第1銅層の厚さ :Tc1
・第2銅層の厚さ :Tc2
・第1銅層と第2銅層の合計の厚さ :Tc(=Tc1+Tc2)
・ステンレス層の厚さ :Ts
・複合金属板の平面方向(代表) :X方向(圧延方向に対応する)
・複合金属板の平面方向 :Y方向(圧延幅方向に対応する)
・複合金属板の厚さ方向 :Z方向(圧延板厚方向に対応する)
・複合金属板のX方向の熱伝導率 :Kx
・複合金属板のY方向の熱伝導率 :Ky
・複合金属板のZ方向の熱伝導率 :Kz
・複合金属板の熱伝導率の比率 :AIS(=Kx/Kz)
この発明において、上記「AIS」を、熱拡散用複合金属板のX方向とZ方向とにおける熱伝導特性の異方性を表す指標として導入する。このAISは、所定の温度範囲において測定された複合金属板のKx(W/(m・K))を、同じ温度範囲において測定されたKz(W/(m・K))で除して求める。なお、複合金属板が、X方向とY方向とにおいて等方性を有する場合は、KxとKyとが略同等の値になる。例えば、単一の材質からなる金属板の場合は一般的に等方性であるため、AISが約1である。これに対して、熱伝導率が大きい金属(例えば、約370W/(m・K)の純銅)からなる表裏一対の金属層の間に熱伝導率が小さい金属(例えば、約16W/(m・K)のSUS304およびSUS630、約26W/(m・K)のSUS430、などのステンレス鋼)からなる中間層が存在する複合金属板の場合は、KxがKzよりも極めて大きくなるため熱伝導特性に異方性が生じて、AISが極めて大きな値になる。
図1は、この発明に係る熱拡散用複合金属板の一実施形態について、その層構成を模式的に示す図である。図1に示す複合金属板1は、Tが500μm以下である。この複合金属板1は、3層構造(銅層/ステンレス層/銅層)のクラッド板材である。こうした熱拡散用複合金属板は、例えば、発熱体の熱を当該発熱体の外部へ逃がすことを主目的とする用途に適用可能な熱伝導特性を有するとともに、当該用途に適する機械的特性を有するべきである。この観点では、当該用途の熱伝導特性および機械的特性などの必要特性を満たす限り、複合金属板1は、Tが200μm以下であることが好ましく、Tが100μm以下であることがより好ましく、Tが50μm以下であることがより一層好ましい。なお、複合金属板1のTの下限は、その用途に応じて異なると考えるべきであり、特に限定されない。例えば、複合金属板1のTは100μm以上500μm以下であってよく、50μm以上100μm以下であってよく、10μm以上50μm以下であってよい。
この複合金属板1は、Tがより小さい程、例えば、モバイルパソコン、携帯電話などの小型の機器および装置に搭載する放熱部材、伝熱部材などの熱拡散用部材として、あるいは熱拡散用部品として用いることにより、小型の機器および装置のさらなる軽量化およびコンパクト化により寄与することができる。なお、この発明に係る熱拡散用複合金属板は、熱拡散の用途に好適であるが、熱拡散以外の用途、例えば、導電部材、シャーシ、ケースまたはフレームなどの構成部材として用いることも可能である。
この複合金属板1は、第1銅層2とステンレス層3と第2銅層4とが、この順で接合されている。つまり、この複合金属板1は、銅層(第1銅層2、第2銅層4)がステンレス層3の表裏面に接合されている。このように構成すれば、銅層の材質を考慮し、濡れ性が良い銅層によって濡れ性が好ましくないステンレス層3の表裏面が覆われているため、めっき処理による上地層の追加や、半田付けなどを容易に行うことができる。また、銅層の材質を考慮し、大きな熱伝導率を有する銅層によって、銅層よりも熱伝導率が小さいステンレス層3の表裏面が覆われているため、単一のステンレス鋼からなるステンレス板と比べて、あるいはTcが過度に小さい複合金属板(銅層/ステンレス層/銅層)と比べて、X方向、Y方向およびZ方向のいずれにおいても好ましい熱伝導特性を有することができるし、特に、X方向およびY方向においてより好ましい熱伝導特性を有することができる。また、ステンレス層3の材質を考慮し、大きな機械的強さを有するステンレス層3によって、ステンレス層3よりも機械的強さが小さい銅層の中心部分(第1銅層2と第2銅層4の間)が補強されているため、単一の純銅からなる銅板に比べて、あるいはTsが過度に小さい複合金属板(銅層/ステンレス層/銅層)と比べて、X方向、Y方向およびZ方向のいずれにおいても好ましい機械的特性を有することができる。
この複合金属板1は、Ts/(Tc1+Tc2)すなわちTs/Tcで求まる比率(厚さ比率)が0.2以上5以下である。この複合金属板1は、Ts/Tcをより小さく構成することにより、Ts/Tcがより大きい構成と比べて、Z方向において好ましい熱伝導特性を有することができるし、全体の熱伝導特性も好ましい水準にすることができる。また、この複合金属板1は、Ts/Tcをより大きく構成することにより、好ましい機械的特性を有することができる。この観点から、Ts/Tcが0.2以上に構成された複合金属板1は、単一の純銅からなる銅板と比べて、あるいはTsが過度に小さい複合金属板(銅層/ステンレス層/銅層)と比べて、好ましい機械的特性を有することができる。一方、Ts/Tcが5以下に構成された複合金属板1は、単一のステンレス鋼板からなるステンレス板と比べて、あるいはTcが過度に小さい複合金属板(銅層/ステンレス層/銅層)と比べて、好ましい熱伝導特性を有することができる。なお、Ts/Tcが0.2未満になると複合金属板の機械的特性が不十分になるし、Ts/Tcが5.0を超えると複合金属板の熱伝導特性が不十分になる。
この複合金属板1のTs/(Tc1+Tc2)すなわちTs/Tcについて一例を挙げると、銅層/ステンレス層/銅層を構成する各層の厚さ比(Tc1:Ts:Tc2)が1:3:1の場合のTs/Tcは、3/(1+1)=1.5となる。銅層:ステンレス層:銅層が2:1:2の場合のTs/Tcは、1/(2+2)=0.25となる。銅層:ステンレス層:銅層が1:6:1の場合のTs/Tcは、6/(1+1)=3となる。銅層:ステンレス層:銅層が1:8:1の場合のTs/Tcは、8/(1+1)=4となる。
この複合金属板1は、X方向とZ方向について、Kx/Kzで求まる熱伝導率の比率が、4.4以上6.8以下である。これにより、複合金属板1は、熱拡散の所望の用途に適する熱伝導特性を有することができるとともに、当該用途に適する機械的特性を有することができるため、熱伝導特性と機械的特性とのバランスが好ましいものとなる。また、Kx/KzすなわちAISが4.4以上6.8以下である複合金属板1は、熱伝導特性の方向特性すなわち異方性を有してはいるが、一般的な熱拡散の用途においては適用可能な水準であるし、当該用途に適する熱伝導特性の異方性を選定しやすい。
以上述べたように、熱拡散の所望の用途、例えば、モバイルパソコン、携帯電話などの小型の機器および装置に搭載する放熱部材、伝熱部材などの熱拡散用部材として、あるいは熱拡散用部品として用いる場合に適する、熱拡散用複合金属板を適切かつ簡易に選定するには、上記した構成を有する複合金属板1は好ましいものとなる。
Ts/Tcを利用した複合金属板1の1つの選定方法としては、まず、Ts/Tcを選定し、次いで、後述する図11から図13に示すグラフに照らすことにより、その用途に応じた必要特性すなわち熱伝導特性(Kx、Kz)および熱伝導特性の異方性の程度(AIS)などを満たす、複合金属板1を選定する方法が簡便である。あるいは、まず、必要特性(Kx、Kz、AISなど)を選定し、次いで、後述する図11から図13に示すグラフに照らすことにより、その用途に応じたTs/Tcを満たす複合金属板1を選定する方法が簡便である。こうしたTs/Tcを利用した複合金属板1の選定方法により、熱拡散の各種用途に応じた複合金属板1の構成を適切かつ簡易に見出すことができる。
複合金属板1は、Kxが340W/(m・K)以下であり、Kzが20W/(m・K)以上であってよい。Kxが340W/(m・K)を超えるような複合金属板は、複合金属板を構成する第1銅層2とステンレス層3と第2銅層4のそれぞれの材質を実用に照らして考慮すると、Ts/Tcが0.2未満になってステンレス層の効能が実質的に失われ、熱拡散の所望の用途に適する機械的特性を有することができない可能性がある。同様に、Kzが20W/(m・K)未満であるような複合金属板は、Ts/Tcが5.0を超えて第1銅層および第2銅層の効能が実質的に失われ、熱拡散の所望の用途に適する熱伝導特性を有することができない可能性がある。
複合金属板1を構成する第1銅層2および第2銅層4は、99質量%以上がCu(元素)からなる純銅により構成されるか、ステンレス層3を構成するステンレス鋼よりも熱伝導率が大きい銅合金により構成されていることが好ましい。この場合、純銅に含まれるCu以外の元素は、不可避的不純物である。具体的には、銅層に純銅を用いる場合、熱伝導率が大きい、例えば、無酸素銅、りん脱酸銅、タフピッチ銅などのC1000系(JIS規格)の範疇に属するものが好ましい。また、銅層に銅合金を用いる場合は、熱伝導率が比較的大きいC2000系(JIS規格)の範疇に属するものが好ましい。また、その他の銅合金としては、銅層の結晶の粗大化を抑制するために、C1510(JIS規格)の0.05質量%以上0.15質量%以下のZr(ジルコニウム)を含むもの、質量比で、4ppm以上55ppm以下のTi(チタン)と、2ppm以上12ppm以下のS(硫黄)と、2ppm以上30ppm以下のO(酸素)を含むものなどを用いることもできる。Zrを含む上記銅合金は、相応の熱伝導率および機械的強さを有するため、複合金属板を構成する銅層の薄肉化が期待できる。微量のTiなどを含む上記銅合金は、相応の熱伝導特性を有するとともに、TiO、TiO2、TiS、Ti-O-Sなどが化合物または凝集物の形で存在し、TiやSなどが固溶体の形でそんざいするため、銅層の機械的特性の向上が期待できる。
ここで、第1銅層2と第2銅層4とは、同じ材質で構成されている必要はないが、同じ材質で構成されていることが好ましい。同じ材質とは、第1銅層2の組成と第2銅層4の組成とが実質的に同じ材料(たとえばJIS規格における種類の記号が同じ)である場合と、第1銅層2の性質と第2銅層4の性質とが実質的に同じ(たとえば圧延時の伸び率などが同値または所定範囲(ばらつき)にある)である場合と、その両方の場合とを含む意味である。例えば、複合金属板1をクラッド圧延によって作製する場合は、圧延の安定性などを考慮し、第1銅層2と第2銅層4とが同じ組成であることが好ましい。
複合金属板1を構成するステンレス層3は、質量%で、10.5%以上30%以下のCr(クロム)と、0.6%以25%以下のNi(ニッケル)と、0.20%以下のC(炭素)と、残部Fe(鉄)および不可避不純物からなるステンレス鋼により構成されることが好ましい。ステンレス層3に上記ステンレス鋼を用いれば、0.6%以上25%以下のNiと0.20%以下のCを含むことによって、ステンレス層3を構成するステンレス鋼がオーステナイト系ステンレス鋼または析出硬化系ステンレス鋼に特徴的な特性(材質)を有することができる。なお、ステンレス層3を構成するステンレス鋼は、ISO規格またはJIS規格にあるような一般的なステンレス鋼であってよく、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系または析出硬化系など、特定の系列に限定されない。ISO規格(ISO-15510)では、1.2質量%以下のCおよび10.5質量%以上のCrを含む鋼をステンレス鋼と定義している。JIS規格(JIS―G0203)では、ISO規格と同量のCおよびCrを含み、耐食性を向上させた合金鋼をステンレス鋼と定義している。
ステンレス層3を構成するステンレス鋼は、質量%で、10.5%以上30%以下のCrと、0.6%以25%以下のNiと、0.20%以下のCとを含む組成からなるステンレス鋼のうち、例えば、15%以上27%以下のCrと、5%以上23%以下のNiと、0.20%以下のCとを含む組成からなるステンレス鋼から選定することができる。こうしたステンレス鋼により構成されるSUS層は、SUS301、SUS304、SUS305、SUS310S、SUS316およびSUS316L(以上、JIS規格)のいずれかのオーステナイト系ステンレス鋼に特徴的な各種特性を有することができる。例えば、複合金属板1を、半導体素子などの電子部品を備える機器や装置の熱拡散用部品に適用する場合、熱拡散用部品が磁性を帯びるのは好ましくない場合がある。そのような場合にステンレス層3を構成するステンレス鋼は、好ましくは、オーステナイト系ステンレス鋼であり、より好ましくは、SUS300系(JIS規格)のオーステナイト系ステンレス鋼であり、より一層好ましくは、Cの含有量が少なく、磁性をより帯びにくい、SUS316L(JIS規格)である。なお、SUS316Lとは、質量%で、16%以上18%以下のCrと、12%以上15%以下のNiと、2%以上3%以下のMoと、0.03%以下のCと、残部Feおよび不可避不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼である。
また、ステンレス層3を構成するステンレス鋼は、質量%で、10.5%以上30%以下のCrと、0.6%以上25%以下のNiと、0.20%以下のCとを含む組成からなるステンレス鋼のうち、例えば、14%以上19%以下のCrと、2%以上8.5%以下のNiと、0.10%以下のCとを含む組成からなるステンレス鋼から選定することができる。こうしたステンレス鋼により構成されるステンレス層3は、2%以上5%以下(好ましくは3%以上5%以下)のCuおよび0.1%以上0.5%以下(好ましくは0.15%以上0.45%以下)のNb(ニオブ)をさらに含むことにより析出硬化系ステンレス鋼のSUS630(JIS規格)に特徴的な特性(材質)を有することができるし、あるいは0.5%以上2%以下(好ましくは0.75%以上1.5%以下)のAlをさらに含むことにより析出硬化系ステンレス鋼のSUS631(JIS規格)に特徴的な特性(材質)を有することができる。
こうした複合金属板1(第1銅層2/ステンレス層3/第2銅層4)は、例えば、純銅または銅合金により構成される第1銅板と、ステンレス鋼により構成されるステンレス鋼板と、純銅または銅合金により構成される第2銅板とを、この順に積層した状態で圧延して層間を接合するクラッド圧延工程と、クラッド圧延の後に拡散焼鈍を行う工程とを含む、クラッド圧延に係る技術者がよく知る、クラッド板材の製造方法によって作製することができる。なお、上記したクラッド板材(複合金属板1)の製造方法では、クラッド圧延工程において被圧延材(板材)の軟化工程(軟化焼鈍)を含んでよいし、拡散焼鈍を行う工程の後に所定の厚さ(板厚)の複合金属板1に形成する圧延(仕上げ圧延)を行う工程を含んでよい。
次に、上記した複合金属板1(熱拡散用複合金属板)を用いた、この発明に係る熱拡散用部品の実施形態について、具体的な構成例を挙げて、適宜図面を参照して説明する。
(第1構成例)
図2は、第1構成例として示す、この発明に係る熱拡散用部品の一実施形態となる、平板状の熱拡散用部品10の層構成である。なお、図2に示す各部材の形状、寸法、比率、倍率などは、明確化のために誇張および模式化している。
第1構成例として図2に示す平板状の熱拡散用部品10は、第1部材11から成る。第1部材11は、Tが500μm以下、Ts/Tcが0.2以上5以下、および、Kx/Kzが4.4以上6.8以下である上記した複合金属板1(第1銅層2/ステンレス層3/第2銅層4)から切り出された個片から成る。
平板状の熱拡散用部品10は、第1部材11の上側の表面、すなわち、第1銅層2の露出表面における平面部2a、2bに、発熱源5a、5bを直接的または間接的に接合可能な発熱源接合領域2A、2Bを備えている。発熱源5a、5bは、いずれか1つであってもよく、3つ以上であってもよく、例えば、半導体素子などの電子部品であってよい。
平板状の熱拡散用部品10を用いた場合、発熱源5a、5bが発する熱は、発熱源5a、5bに接する第1部材11に伝導し、平面部2a、2bから第1銅層2の内部に伝導する。第1銅層2に伝導した熱は、第1銅層2内部においてX方向、Y方向およびZ方向に伝導する。第1銅層2の内部においてX方向およびY方向に伝導した熱は、第1部材11の端部などに設けられる放熱端子(図示略)などを介して外部へ放出されるか、第1銅層2の露出表面から空中(例えば大気中)放出されて拡散する。同時に、第1銅層2の内部においてZ方向に伝導した熱は、ステンレス層3の内部に伝導する。ステンレス層3に伝導した熱は、ステンレス層3の内部において、熱エネルギーの水準が低く熱伝導しやすい方向、すなわち、伝導距離が相対的に小さいZ方向に隣接する第2銅層4に向かって優先的に伝導する。第2銅層4に伝導した熱は、第2銅層4の内部においてX方向、Y方向およびZ方向に伝導する。第2銅層4の内部においてX方向およびY方向に伝導した熱は、第1部材11の端部などに設けられる放熱端子(図示略)などを介して外部へ放出されるか、第2銅層4の露出表面から空中(例えば大気中)に放出されて拡散する。
平板状の熱拡散用部品10は、第1部材11を構成する、銅層(第1銅層2、第2銅層4)による適度な熱伝導特性およびステンレス層3による適度な機械的特性を有する。これにより、こうした平板状の熱拡散用部品10は、例えば、モバイルパソコン、携帯電話などの小型の機器および装置に搭載する放熱部材、伝熱部材などの熱拡散用部品として搭載することができるし、必要に応じて導電部材、シャーシ、ケースまたはフレームの機能を兼ね備えることができる。これにより、上記した機器および装置の薄型化、コンパクト化および軽量化などへの貢献が期待できる。
(第2構成例)
図3は、第2構成例として示す、この発明に係る熱拡散用部品の一実施形態となる、筐体状の熱拡散用部品20の断面構成である。なお、図3に示す各部材の形状、寸法、比率、倍率などは、明確化のために誇張および模式化し、断面を表す斜線は簡略化のために略している。
第2構成例として図3に示す筐体状の熱拡散用部品20は、第1部材21と、第2部材22と、内部空間24とを備える。すなわち、第1部材と第2部材とで構成された内部空間を備えている。第1部材21および第2部材22は、ともに、Tが500μm以下、Ts/Tcが0.2以上5以下、および、Kx/Kzが4.4以上6.8以下である上記した複合金属板1(第1銅層2/ステンレス層3/第2銅層4)から切り出された個片から成る。第1部材21は、一端側(X方向の右方側)に曲げ部21aが形成され、他端側(X方向の左方側)に曲げ部21bが形成されている。第2部材22は、一端側(X方向の右方側)に曲げ部22aが形成され、他端側(X方向の左方側)に曲げ部22bが形成されている。第1部材21と第2部材22とは、内部空間24が気密封止(好ましくは減圧封止)されるように、互いの曲げ部21a、22aの端面部21c、22cが突き合わされるとともに、互いの曲げ部21b、22bの端面部21d、22dが突き合わされて、接合されている。
ここで、第1部材21と第2部材22との接合は、半田または銀ろうなどの接合材料を用いる方法でもよいが、接合材料による筐体内部の汚染防止、接合強度の向上および内部空間24の封止の信頼性向上などの観点で、熱拡散を利用した方法(加圧拡散接合)が好ましい。加圧拡散接合は、被接合面が互いに加圧し合うように荷重を加えた状態で加熱(熱処理)して生じさせた熱拡散を利用して、被接合面同士(端面部21cと端面部22c、および、端面部21dと端面部22d)を接合する方法である。この場合の加熱(熱処理)は、例えば、窒素ガス、アルゴンガスまたは窒素とアルゴンとの混合ガスなどを用いた非酸化性雰囲気において行うのがよく、被接合面の材質にもよるが、一般的に、600℃以上1000℃以下の温度で保持することが必要とされている。
筐体状の熱拡散用部品20の内部空間24は、第1部材21および第2部材22により、気密封止(好ましくは減圧封止)されている。なお、内部空間24の気密封止に係る部材は、第1部材21および第2部材22に制限されず、それ以外の例えば放熱端子(図示略)などの部材が関わっていてもよい。このように気密封止(好ましくは減圧封止)された内部空間24は、その内部に、蒸発と凝縮による熱輸送を可能とする作動流体(冷媒)を封止することにより、熱流路として使用することができる。作動流体(冷媒)には、例えば、水、代替フロン、アルコール、またはアセトンなどの有機化合物などを用いることができるが、安全、低コスト、取扱い容易などの観点で、純水を用いるのが好ましい。
筐体状の熱拡散用部品20は、第1部材21の上側の表面、すなわち、第1銅層2の露出表面における平面部2a、2bに、発熱源5a、5bを直接的または間接的に接合可能な発熱源接合領域2A、2Bを備えることができる。なお、発熱源接合領域2A、2Bを設ける部位は、必要に応じて設定すればよく、第1部材21の表面に制限されない。また、発熱源5a、5bは、いずれか1つであってもよく、3つ以上であってもよく、例えば、半導体素子などの電子部品であってよい。
筐体状の熱拡散用部品20を用いた場合、発熱源5a、5bが発する熱は、発熱源5a、5bに接する第1部材21に伝導し、平面部2a、2bから第1銅層2の内部に伝導する。第1銅層2に伝導した熱は、第1銅層2の内部においてX方向、Y方向およびZ方向に伝導する。第1銅層2の内部においてX方向およびY方向に伝導した熱は、接合部23a、23bから第2部材22へ伝導するとともに、第1部材21の端部などに放熱端子(図示略)などが設けられている場合はそれを介して外部へ放出されて拡散し、一部が第1銅層2の露出表面から空中(例えば大気中)放出されて拡散する。同時に、第1銅層2の内部においてZ方向に伝導した熱は、ステンレス層3の内部に伝導する。ステンレス層3に伝導した熱は、ステンレス層3の内部において、熱エネルギーの水準が低く熱伝導しやすい方向、すなわち、伝導距離が相対的に小さいZ方向に隣接する第2銅層4に向かって優先的に伝導する。第2銅層4に伝導した熱は、第2銅層4の内部においてエネルギーの水準が低く熱伝導しやすい作動流体(冷媒)が存在する内部空間24の方向、すなわちZ方向に向かって優先的に伝導する。第1部材21を構成する第2銅層4の表面から内部空間24の作動流体(冷媒)に伝導した熱は、作動流体(冷媒)よって輸送され、内部空間24の端部などに設けられる放熱端子(図示略)などを介して外部へ放出される。なお、第1部材21から第2部材22へ伝導した熱は、第1部材21における挙動と同様な経路を通って外部へ放熱されて拡散する。
筐体状の熱拡散用部品20は、第1部材21および第2部材22を構成する、銅層(第1銅層2、第2銅層4)による適度な熱伝導特性およびステンレス層3による適度な機械的特性を有する。これにより、筐体状の熱拡散用部品20は、筐体の厚さ(Z方向の長さ)を小さくして薄肉化することができる。こうした筐体状の熱拡散用部品20は、放熱効果(熱拡散効果)の高い平板状のヒートパイプといえ、上記したベーパーチャンバーの筐体として用いるのに好適である。また、筐体状の熱拡散用部品20は、例えば、モバイルパソコン、携帯電話などの小型の機器および装置に搭載する放熱部材、伝熱部材などの熱拡散用部品として搭載することができるし、必要に応じて導電部材、シャーシ、ケースまたはフレームの機能を兼ね備えることができる。これにより、上記した機器および装置の薄型化、コンパクト化および軽量化などへの貢献が期待できる。
(第2構成例の変形例)
図4は、第2構成例の変形例として示す、この発明に係る熱拡散用部品の一実施形態となる、筐体状の熱拡散用部品20Aの断面構成である。なお、図4に示す各部材の形状、寸法、比率、倍率などは、明確化のために誇張および模式化し、断面を表す斜線は簡略化のために略している。
第2構成例の変形例として図4に示す筐体状の熱拡散用部品20Aは、上記した熱拡散用部品20と同様に、第1部材21と、第2部材22と、内部空間とを備え、さらに支持部25を備える。支持部25は、内部空間に配置され、第1部材21を構成する第2銅層4および第2部材22を構成する第2銅層4に対して接合されている。これにより、筐体状の熱拡散用部品20Aの機械的強さが高まるため、筐体状の熱拡散用部品20Aをより薄肉化することができる。また、支持部25により内部空間が2つの内部空間24a、24bに区分されるが、支持部25に連絡路25aを設けることにより2つの内部空間24a、24bを繋ぐことができる。この場合、支持部25に設ける連絡路25aは、1つに制限されず、必要に応じて複数設けることができる。なお、熱拡散用部品20Aを構成する第1部材21および第2部材22、第1部材21と第2部材22との接合方法、発熱源5a、5bおよび発熱源接合領域2A、2B、並びに、内部空間24a、24bに気密封止(好ましくは減圧封止)される作動流体(冷媒)などについての説明は、ここでは略し、上記した熱拡散用部品20についての説明を参照する。
筐体状の熱拡散用部品20Aを用いた場合、上記した筐体状の熱拡散部品20と同様に、発熱源5a、5bが発した熱は、発熱源5a、5bに接する第1部材21の平面部2a、2bから第1銅層2、ステンレス層3および第2銅層4を経由して、その大部分が第2銅層4の露出表面から内部空間24a、25bの熱エネルギーの水準が低い作動流体(冷媒)に伝導し、作動流体(冷媒)によって輸送され、内部空間24a、24bの端部などに設けられる放熱端子(図示略)などを介して外部へ放出される。このとき、内部空間24aの作動流体(冷媒)に伝導した熱量と、内部空間24bの作動流体(冷媒)に伝導した熱量とが、異なった場合であっても、内部空間24a、25nの作動流体(冷媒)のもつ熱エネルギーの水準が平衡になるように、作動流体(冷媒)が支持部25の連絡路25aを移動することができる。なお、第1部材21から第2部材22へ伝導した熱は、第1部材21における挙動と同様な経路を通って外部へ放熱されて拡散する。
筐体状の熱拡散用部品20Aは、第1部材21および第2部材22を構成する、銅層(第1銅層2、第2銅層4)による適度な熱伝導特性およびステンレス層3による適度な機械的特性を有する。さらに、筐体状の熱拡散用部品20Aは、第1部材21および第2部材22に対して接合されている支持部25を有する。これにより、筐体状の熱拡散用部品20Aは補強され、筐体の厚さ(Z方向の長さ)をさらに小さくすることができるので、さらなる薄肉化が可能である。こうした筐体状の熱拡散用部品20Aは、上記したベーパーチャンバーの筐体として用いるのに好適である。また、筐体状の熱拡散用部品20Aは、例えば、モバイルパソコン、携帯電話などの小型の機器および装置に搭載する放熱部材、伝熱部材などの熱拡散用部品として搭載することができるし、必要に応じて導電部材、シャーシ、ケースまたはフレームの機能を兼ね備えることができる。これにより、上記した機器および装置のさらなる薄型化、コンパクト化および軽量化などへの貢献が期待できる。
(第3構成例)
図5は、第3構成例として示す、この発明に係る熱拡散用部品の一実施形態となる、筐体状の熱拡散用部品30の断面構成である。なお、図5に示す各部材の形状、寸法、比率、倍率などは、明確化のために誇張および模式化し、断面を表す斜線は簡略化のために略している。
第3構成例として図5に示す筐体状の熱拡散用部品30は、第1部材31と、第2部材32と、内部空間34とを備える。すなわち、第1部材と第2部材とで構成された内部空間を備えている。第1部材31および第2部材32は、ともに、Tが500μm以下、Ts/Tcが0.2以上5以下、および、Kx/Kzが4.4以上6.8以下である上記した複合金属板1(第1銅層2/ステンレス層3/第2銅層4)から切り出された個片から成る。第1部材31は、一端側(X方向の右方側)に曲げ部31aが形成され、他端側(X方向の左方側)に曲げ部31bが形成されている。第2部材32は、平板状に形成されている。第1部材31と第2部材32とは、内部空間34が気密封止(好ましくは減圧封止)されるように、第1部材31の曲げ部31aの端面部31cが第2部材32の平面部32aに突き合わされるとともに、第1部材31の曲げ部31bの端面部31dが第2部材32の平面部32bに突き合わされて、接合されている。
ここで、第1部材31と第2部材32との接合は、半田または銀ろうなどの接合材料を用いる方法でもよいが、接合材料による筐体内部の汚染防止、接合強度の向上および内部空間34の封止の信頼性向上などの観点で、熱拡散を利用した方法(加圧拡散接合)が好ましい。加圧拡散接合は、被接合面が互いに加圧し合うように荷重を加えた状態で加熱(熱処理)して生じさせた熱拡散を利用して、被接合面同士(端面部31cと平面部32a、および、端面部31dと平面部32b)を接合する方法である。この場合の加熱(熱処理)は、例えば、窒素ガス、アルゴンガスまたは窒素とアルゴンとの混合ガスなどを用いた非酸化性雰囲気において行うのがよく、被接合面の材質にもよるが、一般的に、600℃以上1000℃以下の温度で保持することが必要とされている。
筐体状の熱拡散用部品30の内部空間34は、第1部材31および第2部材32により、気密封止(好ましくは減圧封止)されている。なお、内部空間34の気密封止に係る部材は、第1部材31および第2部材32に制限されず、それ以外の例えば放熱端子(図示略)などの部材が関わっていてもよい。このように気密封止(好ましくは減圧封止)された内部空間34は、その内部に、蒸発と凝縮による熱輸送を可能とする作動流体(冷媒)を封止することにより、熱流路として使用することができる。作動流体(冷媒)には、例えば、水、代替フロン、アルコール、またはアセトンなどの有機化合物などを用いることができるが、安全、低コスト、取扱い容易などの観点で、純水を用いるのが好ましい。
筐体状の熱拡散用部品30は、第1部材31の上側の表面、すなわち、第1銅層2の露出表面における平面部2a、2bに、発熱源5a、5bを直接的または間接的に接合可能な発熱源接合領域2A、2Bを備えることができる。なお、発熱源接合領域2A、2Bを設ける部位は、必要に応じて設定すればよく、第1部材31の表面に制限されない。また、発熱源5a、5bは、いずれか1つであってもよく、3つ以上であってもよく、例えば、半導体素子などの電子部品であってよい。
筐体状の熱拡散用部品30を用いた場合、発熱源5a、5bが発する熱は、発熱源5a、5bに接する第1部材31に伝導し、平面部2a、2bから第1銅層2の内部に伝導する。第1銅層2に伝導した熱は、第1銅層2の内部においてX方向、Y方向およびZ方向に伝導する。第1銅層2の内部においてX方向およびY方向に伝導した熱は、接合部33a、33bから第2部材32へ伝導するとともに、第1部材31の端部などに放熱端子(図示略)などが設けられている場合はそれを介して外部へ放出されて拡散し、一部が第1銅層2の露出表面から空中(例えば大気中)放出されて拡散する。同時に、第1銅層2の内部においてZ方向に伝導した熱は、ステンレス層3の内部に伝導する。ステンレス層3に伝導した熱は、ステンレス層3の内部において、熱エネルギーの水準が低く熱伝導しやすい方向、すなわち、伝導距離が相対的に小さいZ方向に隣接する第2銅層4に向かって優先的に伝導する。第2銅層4に伝導した熱は、第2銅層4の内部においてエネルギーの水準が低く熱伝導しやすい作動流体(冷媒)が存在する内部空間34の方向、すなわちZ方向に向かって優先的に伝導する。第1部材31を構成する第2銅層4の表面から内部空間34の作動流体(冷媒)に伝導した熱は、作動流体(冷媒)よって輸送され、内部空間34の端部などに設けられる放熱端子(図示略)などを介して外部へ放出される。なお、第1部材31から第2部材32へ伝導した熱は、第1部材31における挙動と同様な経路を通って外部へ放熱されて拡散する。
筐体状の熱拡散用部品30は、第1部材31および第2部材32を構成する、銅層(第1銅層2、第2銅層4)による適度な熱伝導特性およびステンレス層3による適度な機械的特性を有する。これにより、筐体状の熱拡散用部品30は、筐体の厚さ(Z方向の長さ)を小さくして薄肉化することができる。こうした筐体状の熱拡散用部品30は、放熱効果(熱拡散効果)の高い平板状のヒートパイプといえ、上記したベーパーチャンバーの筐体として用いるのに好適である。また、筐体状の熱拡散用部品30は、例えば、モバイルパソコン、携帯電話などの小型の機器および装置に搭載する放熱部材、伝熱部材などの熱拡散用部品として搭載することができるし、必要に応じて導電部材、シャーシ、ケースまたはフレームの機能を兼ね備えることができる。これにより、上記した機器および装置の薄型化、コンパクト化および軽量化などへの貢献が期待できる。
(第3構成例の変形例)
図6は、第3構成例の変形例として示す、この発明に係る熱拡散用部品の一実施形態となる、筐体状の熱拡散用部品30Aの断面構成である。なお、図6に示す各部材の形状、寸法、比率、倍率などは、明確化のために誇張および模式化し、断面を表す斜線は簡略化のために略している。
第3構成例の変形例として図6に示す筐体状の熱拡散用部品30Aは、上記した熱拡散用部品30と同様に、第1部材31と、第2部材32と、内部空間とを備え、さらに支持部35を備える。支持部35は、内部空間に配置され、第1部材31を構成する第2銅層4および第2部材32を構成する第2銅層4に対して接合されている。これにより、筐体状の熱拡散用部品30Aの機械的強さが高まるため、筐体状の熱拡散用部品30Aをより薄肉化することができる。また、支持部35により内部空間が2つの内部空間34a、34bに区分されるが、支持部35に連絡路35aを設けることにより2つの内部空間34a、34bを繋ぐことができる。この場合、支持部35に設ける連絡路35aは、1つに制限されず、必要に応じて複数設けることができる。なお、熱拡散用部品30Aを構成する第1部材31および第2部材32、第1部材31と第2部材32との接合方法、発熱源5a、5bおよび発熱源接合領域2A、2B、並びに、2つの内部空間34a、34bに気密封止(好ましくは減圧封止)される作動流体(冷媒)などについての説明は、ここでは略し、上記した熱拡散用部品30についての説明を参照する。
筐体状の熱拡散用部品30Aを用いた場合、上記した筐体状の熱拡散部品30と同様に、発熱源5a、5bが発した熱は、発熱源5a、5bに接する第1部材31の平面部2a、2bから第1銅層2、ステンレス層3および第2銅層4を経由して、その大部分が第2銅層4の露出表面から内部空間34a、35bの熱エネルギーの水準が低い作動流体(冷媒)に伝導し、作動流体(冷媒)によって輸送され、内部空間34a、34bの端部などに設けられる放熱端子(図示略)などを介して外部へ放出される。このとき、内部空間34aの作動流体(冷媒)に伝導した熱量と、内部空間34bの作動流体(冷媒)に伝導した熱量とが、異なった場合であっても、内部空間34a、35nの作動流体(冷媒)のもつ熱エネルギーの水準が平衡になるように、作動流体(冷媒)が支持部35の連絡路35aを移動することができる。なお、第1部材31から第2部材32へ伝導した熱は、第1部材31における挙動と同様な経路を通って外部へ放熱されて拡散する。
筐体状の熱拡散用部品30Aは、第1部材31および第2部材32を構成する、銅層(第1銅層2、第2銅層4)による適度な熱伝導特性およびステンレス層3による適度な機械的特性を有する。さらに、筐体状の熱拡散用部品30Aは、第1部材31および第2部材32に対して接合されている支持部35を有する。これにより、筐体状の熱拡散用部品30Aは補強され、筐体の厚さ(Z方向の長さ)をさらに小さくすることができるので、さらなる薄肉化が可能である。こうした筐体状の熱拡散用部品30Aは、上記したベーパーチャンバーの筐体として用いるのに好適である。また、筐体状の熱拡散用部品30Aは、例えば、モバイルパソコン、携帯電話などの小型の機器および装置に搭載する放熱部材、伝熱部材などの熱拡散用部品として搭載することができるし、必要に応じて導電部材、シャーシ、ケースまたはフレームの機能を兼ね備えることができる。これにより、上記した機器および装置のさらなる薄型化、コンパクト化および軽量化などへの貢献が期待できる。
(第4構成例)
図7は、第4構成例として示す、この発明に係る熱拡散用部品の一実施形態となる、筐体状の熱拡散用部品40の断面構成である。なお、図7に示す各部材の形状、寸法、比率、倍率などは、明確化のために誇張および模式化し、断面を表す斜線は簡略化のために略している。
第4構成例として図7に示す筐体状の熱拡散用部品40は、第1部材41と、第2部材42と、内部空間44とを備える。すなわち、第1部材と第2部材とで構成された内部空間を備えている。第1部材41は、Tが500μm以下、Ts/Tcが0.2以上5以下、および、Kx/Kzが4.4以上6.8以下である上記した複合金属板1(第1銅層2/ステンレス層3/第2銅層4)から切り出された個片から成る。第1部材41は、一端側(X方向の右方側)に曲げ部41aが形成され、他端側(X方向の左方側)に曲げ部41bが形成されている。第2部材42は、銅または銅合金により構成される銅板部42aと、銅または銅合金により構成されるポーラス銅部42bとが、組み合されて形成されている。なお、第2部材42を構成する銅板部42aは、ステンレス鋼により構成されるステンレス板を用いて構成することもできる。こうしたポーラス銅部42bを内部空間44に面して配置することにより、内部空間44に接する第2部材42の表面積が増加し、第2部材42側から内部空間44に存在する作動流体(冷媒)に熱が伝導しやすくなって、作動流体(冷媒)による熱の輸送効率を向上させることができる。
第2部材42を構成する銅板部42aおよびポーラス銅部42bの形態は、銅板部42aに対して焼結部材などによる立体的に多孔質な形態を有するポーラス銅部42bを接合した形態であってもよいし、銅板の一方側の面に対してエッチング処理または陽極酸化処理などを施して凹凸が分散配置されてなる平面的に多孔質な形態を有するポーラス銅部42bを形成し、当該銅板の残部を銅板部42aとした形態であってもよい。
第1部材41と第2部材42とは、内部空間44が気密封止(好ましくは減圧封止)されるように、第2部材42の端面部42cが第1部材41の曲げ部41aの平面部41cに突き合わされるとともに、第2部材42の端面部42dが第1部材41の曲げ部41bの平面部41dに突き合わされて、接合されている。第1部材41と第2部材42との接合は、半田または銀ろうなどの接合材料を用いる方法でもよいが、接合材料による筐体内部の汚染防止、接合強度の向上および内部空間44の封止の信頼性向上などの観点で、熱拡散を利用した方法(加圧拡散接合)が好ましい。加圧拡散接合は、被接合面が互いに加圧し合うように荷重を加えた状態で加熱(熱処理)して生じさせた熱拡散を利用して、被接合面同士(平面部41cと端面部42c、および、平面部41dと端面部42d)を接合する方法である。この場合の加熱(熱処理)は、例えば、窒素ガス、アルゴンガスまたは窒素とアルゴンとの混合ガスなどを用いた非酸化性雰囲気において行うのがよく、被接合面の材質にもよるが、一般的に、600℃以上1000℃以下の温度で保持することが必要とされている。
筐体状の熱拡散用部品40の内部空間44は、第1部材41および第2部材42により、気密封止(好ましくは減圧封止)されている。なお、内部空間44の気密封止に係る部材は、第1部材41および第2部材42に制限されず、それ以外の例えば放熱端子(図示略)などの部材が関わっていてもよい。このように気密封止(好ましくは減圧封止)された内部空間44は、その内部に、蒸発と凝縮による熱輸送を可能とする作動流体(冷媒)を封止することにより、熱流路として使用することができる。作動流体(冷媒)には、例えば、水、代替フロン、アルコール、またはアセトンなどの有機化合物などを用いることができるが、安全、低コスト、取扱い容易などの観点で、純水を用いるのが好ましい。
筐体状の熱拡散用部品40は、第1部材41の上側の表面、すなわち、第1銅層2の露出表面における平面部2a、2bに、発熱源5a、5bを直接的または間接的に接合可能な発熱源接合領域2A、2Bを備えることができる。なお、発熱源接合領域2A、2Bを設ける部位は、必要に応じて設定すればよく、第1部材41の表面に制限されない。また、発熱源5a、5bは、いずれか1つであってもよく、3つ以上であってもよく、例えば、半導体素子などの電子部品であってよい。
筐体状の熱拡散用部品40を用いた場合、発熱源5a、5bが発する熱は、発熱源5a、5bに接する第1部材41に伝導し、平面部2a、2bから第1銅層2の内部に伝導する。第1銅層2に伝導した熱は、第1銅層2の内部においてX方向、Y方向およびZ方向に伝導する。第1銅層2の内部においてX方向およびY方向に伝導した熱は、接合部43a、43bから第2部材42へ伝導するとともに、第1部材41の端部などに放熱端子(図示略)などが設けられている場合はそれを介して外部へ放出されて拡散し、一部が第1銅層2の露出表面から空中(例えば大気中)放出されて拡散する。同時に、第1銅層2の内部においてZ方向に伝導した熱は、ステンレス層3の内部に伝導する。ステンレス層3に伝導した熱は、ステンレス層3の内部において、熱エネルギーの水準が低く熱伝導しやすい方向、すなわち、伝導距離が相対的に小さいZ方向に隣接する第2銅層4に向かって優先的に伝導する。第2銅層4に伝導した熱は、第2銅層4の内部においてエネルギーの水準が低く熱伝導しやすい作動流体(冷媒)が存在する内部空間44の方向、すなわちZ方向に向かって優先的に伝導する。第1部材41を構成する第2銅層4の表面から内部空間44の作動流体(冷媒)に伝導した熱は、作動流体(冷媒)よって輸送され、内部空間44の端部などに設けられる放熱端子(図示略)などを介して外部へ放出される。なお、第1部材41から第2部材42へ伝導した熱は、ポーラス銅部42bを介して内部空間44の作動流体(冷媒)に伝導して外部へ放熱されて拡散するとともに、一部が銅板部42aの露出表面から空中(例えば大気中)放出されて拡散する。
筐体状の熱拡散用部品40は、第1部材41を構成する、銅層(第1銅層2、第2銅層4)による適度な熱伝導特性およびステンレス層3による適度な機械的特性を有する。これにより、筐体状の熱拡散用部品40は、筐体の厚さ(Z方向の長さ)を小さくして薄肉化することができる。こうした筐体状の熱拡散用部品40は、放熱効果(熱拡散効果)の高い平板状のヒートパイプといえ、上記したベーパーチャンバーの筐体として用いるのに好適である。また、筐体状の熱拡散用部品40は、例えば、モバイルパソコン、携帯電話などの小型の機器および装置に搭載する放熱部材、伝熱部材などの熱拡散用部品として搭載することができるし、必要に応じて導電部材、シャーシ、ケースまたはフレームの機能を兼ね備えることができる。これにより、上記した機器および装置の薄型化、コンパクト化および軽量化などへの貢献が期待できる。
(第4構成例の変形例)
図8は、第4構成例の変形例として示す、この発明に係る熱拡散用部品の一実施形態となる、筐体状の熱拡散用部品40Aの断面構成である。なお、図8に示す各部材の形状、寸法、比率、倍率などは、明確化のために誇張および模式化し、断面を表す斜線は簡略化のために略している。
第4構成例の変形例として図8に示す筐体状の熱拡散用部品40Aは、上記した熱拡散用部品40と同様に、第1部材41と、第2部材42と、内部空間とを備え、さらに支持部45を備える。支持部45は、内部空間に配置され、第1部材41を構成する第2銅層4および第2部材42を構成する銅板部42aに対して接合されている。これにより、筐体状の熱拡散用部品40Aの機械的強さが高まるため、筐体状の熱拡散用部品40Aをより薄肉化することができる。また、支持部45により内部空間が2つの内部空間44a、44bに区分されるが、支持部45に連絡路45aを設けることにより2つの内部空間44a、44bを繋ぐことができる。この場合、支持部45に設ける連絡路45aは、1つに制限されず、必要に応じて複数設けることができる。なお、熱拡散用部品40Aを構成する第1部材41および第2部材42、第1部材41と第2部材42との接合方法、発熱源5a、5bおよび発熱源接合領域2A、2B、並びに、2つの内部空間44a、44bに気密封止(好ましくは減圧封止)される作動流体(冷媒)などについての説明は、ここでは略し、上記した熱拡散用部品40についての説明を参照する。
筐体状の熱拡散用部品40Aを用いた場合、上記した筐体状の熱拡散部品40と同様に、発熱源5a、5bが発した熱は、発熱源5a、5bに接する第1部材41の平面部2a、2bから第1銅層2、ステンレス層3および第2銅層4を経由して、その大部分が第2銅層4の露出表面から内部空間44a、45bの熱エネルギーの水準が低い作動流体(冷媒)に伝導し、作動流体(冷媒)によって輸送され、内部空間34a、34bの端部などに設けられる放熱端子(図示略)などを介して外部へ放出される。このとき、内部空間44aの作動流体(冷媒)に伝導した熱量と、内部空間44bの作動流体(冷媒)に伝導した熱量とが、異なった場合であっても、内部空間44a、45nの作動流体(冷媒)のもつ熱エネルギーの水準が平衡になるように、作動流体(冷媒)が支持部45の連絡路45aを移動することができる。なお、第1部材41から第2部材42へ伝導した熱は、ポーラス銅部42bを介して内部空間44の作動流体(冷媒)に伝導して外部へ放熱されて拡散するとともに、一部が銅板部42aの露出表面から空中(例えば大気中)放出されて拡散する。
筐体状の熱拡散用部品40Aは、第1部材41を構成する、銅層(第1銅層2、第2銅層4)による適度な熱伝導特性およびステンレス層3による適度な機械的特性を有する。さらに、筐体状の熱拡散用部品40Aは、第1部材41および第2部材42に対して接合されている支持部45を有する。これにより、筐体状の熱拡散用部品40Aは補強され、筐体の厚さ(Z方向の長さ)をさらに小さくすることができるので、さらなる薄肉化が可能である。こうした筐体状の熱拡散用部品40Aは、上記したベーパーチャンバーの筐体として用いるのに好適である。また、筐体状の熱拡散用部品40Aは、例えば、モバイルパソコン、携帯電話などの小型の機器および装置に搭載する放熱部材、伝熱部材などの熱拡散用部品として搭載することができるし、必要に応じて導電部材、シャーシ、ケースまたはフレームの機能を兼ね備えることができる。これにより、上記した機器および装置のさらなる薄型化、コンパクト化および軽量化などへの貢献が期待できる。
(第5構成例)
図9は、第5構成例として示す、この発明に係る熱拡散用部品の一実施形態となる、筐体状の熱拡散用部品50の断面構成である。なお、図9に示す各部材の形状、寸法、比率、倍率などは、明確化のために誇張および模式化し、断面を表す斜線は簡略化のために略している。
第5構成例として図8に示す筐体状の熱拡散用部品50は、第1部材51と、第2部材52と、内部空間54とを備える。すなわち、第1部材と第2部材とで構成された内部空間を備えている。第1部材51は、Tが500μm以下、Ts/Tcが0.2以上5以下、および、Kx/Kzが4.4以上6.8以下である上記した複合金属板1(第1銅層2/ステンレス層3/第2銅層4)から切り出された個片から成る。第1部材51は、一端側(X方向の右方側)に曲げ部51aが形成され、他端側(X方向の左方側)に曲げ部51bが形成されている。第2部材52は、銅または銅合金により構成される銅板部52aと、銅または銅合金により構成されるポーラス銅部52bとが、組み合されて形成されている。なお、第2部材52を構成する銅板部52aは、ステンレス鋼により構成されるステンレス板を用いて構成することもできる。こうしたポーラス銅部52bを内部空間54に面して配置することにより、内部空間54に接する第2部材52の表面積が増加し、第2部材52側から内部空間54に存在する作動流体(冷媒)に熱が伝導しやすくなって、作動流体(冷媒)による熱の輸送効率を向上させることができる。
第2部材52を構成する銅板部52aおよびポーラス銅部52bの形態は、銅板部52aに対して焼結部材などによる立体的に多孔質な形態を有するポーラス銅部52bを接合した形態であってもよいし、銅板の一方側の面に対してエッチング処理または陽極酸化処理などを施して凹凸が分散配置されてなる平面的に多孔質な形態を有するポーラス銅部52bを形成し、当該銅板の残部を銅板部52aとした形態であってもよい。
第1部材51と第2部材52とは、内部空間54が気密封止(好ましくは減圧封止)されるように、第1部材51の曲げ部51aの端面部51cが第2部材52の平面部52cに突き合わされるとともに、第1部材51の曲げ部51bの端面部51dが第2部材52の平面部52dに突き合わされて、接合されている。第1部材51と第2部材52との接合は、半田または銀ろうなどの接合材料を用いる方法でもよいが、接合材料による筐体内部の汚染防止、接合強度の向上および内部空間44の封止の信頼性向上などの観点で、熱拡散を利用した方法(加圧拡散接合)が好ましい。加圧拡散接合は、被接合面が互いに加圧し合うように荷重を加えた状態で加熱(熱処理)して生じさせた熱拡散を利用して、被接合面同士(端面部51cと平面部52c、および、端面部51dと平面部52d)を接合する方法である。この場合の加熱(熱処理)は、例えば、窒素ガス、アルゴンガスまたは窒素とアルゴンとの混合ガスなどを用いた非酸化性雰囲気において行うのがよく、被接合面の材質にもよるが、一般的に、600℃以上1000℃以下の温度で保持することが必要とされている。
筐体状の熱拡散用部品50の内部空間54は、第1部材51および第2部材52により、気密封止(好ましくは減圧封止)されている。なお、内部空間54の気密封止に係る部材は、第1部材51および第2部材52に制限されず、それ以外の例えば放熱端子(図示略)などの部材が関わっていてもよい。このように気密封止(好ましくは減圧封止)された内部空間54は、その内部に、蒸発と凝縮による熱輸送を可能とする作動流体(冷媒)を封止することにより、熱流路として使用することができる。作動流体(冷媒)には、例えば、水、代替フロン、アルコール、またはアセトンなどの有機化合物などを用いることができるが、安全、低コスト、取扱い容易などの観点で、純水を用いるのが好ましい。
筐体状の熱拡散用部品50は、第1部材51の上側の表面、すなわち、第1銅層2の露出表面における平面部2a、2bに、発熱源5a、5bを直接的または間接的に接合可能な発熱源接合領域2A、2Bを備えることができる。なお、発熱源接合領域2A、2Bを設ける部位は、必要に応じて設定すればよく、第1部材51の表面に制限されない。また、発熱源5a、5bは、いずれか1つであってもよく、3つ以上であってもよく、例えば、半導体素子などの電子部品であってよい。
筐体状の熱拡散用部品50を用いた場合、発熱源5a、5bが発する熱は、発熱源5a、5bに接する第1部材51に伝導し、平面部2a、2bから第1銅層2の内部に伝導する。第1銅層2に伝導した熱は、第1銅層2の内部においてX方向、Y方向およびZ方向に伝導する。第1銅層2の内部においてX方向およびY方向に伝導した熱は、接合部53a、53bから第2部材52へ伝導するとともに、第1部材51の端部などに放熱端子(図示略)などが設けられている場合はそれを介して外部へ放出されて拡散し、一部が第1銅層2の露出表面から空中(例えば大気中)放出されて拡散する。同時に、第1銅層2の内部においてZ方向に伝導した熱は、ステンレス層3の内部に伝導する。ステンレス層3に伝導した熱は、ステンレス層3の内部において、熱エネルギーの水準が低く熱伝導しやすい方向、すなわち、伝導距離が相対的に小さいZ方向に隣接する第2銅層4に向かって優先的に伝導する。第2銅層4に伝導した熱は、第2銅層4の内部においてエネルギーの水準が低く熱伝導しやすい作動流体(冷媒)が存在する内部空間54の方向、すなわちZ方向に向かって優先的に伝導する。第1部材51を構成する第2銅層4の表面から内部空間54の作動流体(冷媒)に伝導した熱は、作動流体(冷媒)よって輸送され、内部空間54の端部などに設けられる放熱端子(図示略)などを介して外部へ放出される。なお、第1部材51から第2部材52へ伝導した熱は、ポーラス銅部52bを介して内部空間54の作動流体(冷媒)に伝導して外部へ放熱されて拡散するとともに、一部が銅板部52aの露出表面から空中(例えば大気中)放出されて拡散する。
筐体状の熱拡散用部品50は、第1部材51を構成する、銅層(第1銅層2、第2銅層4)による適度な熱伝導特性およびステンレス層3による適度な機械的特性を有する。これにより、筐体状の熱拡散用部品50は、筐体の厚さ(Z方向の長さ)を小さくして薄肉化することができる。こうした筐体状の熱拡散用部品50は、放熱効果(熱拡散効果)の高い平板状のヒートパイプといえ、上記したベーパーチャンバーの筐体として用いるのに好適である。また、筐体状の熱拡散用部品50は、例えば、モバイルパソコン、携帯電話などの小型の機器および装置に搭載する放熱部材、伝熱部材などの熱拡散用部品として搭載することができるし、必要に応じて導電部材、シャーシ、ケースまたはフレームの機能を兼ね備えることができる。これにより、上記した機器および装置の薄型化、コンパクト化および軽量化などへの貢献が期待できる。
(第5構成例の変形例)
図10は、第5構成例の変形例として示す、この発明に係る熱拡散用部品の一実施形態となる、筐体状の熱拡散用部品50Aの断面構成である。なお、図10に示す各部材の形状、寸法、比率、倍率などは、明確化のために誇張および模式化し、断面を表す斜線は簡略化のために略している。
第5構成例の変形例として図10に示す筐体状の熱拡散用部品50Aは、上記した熱拡散用部品50と同様に、第1部材51と、第2部材52と、内部空間とを備え、さらに支持部55を備える。支持部55は、内部空間に配置され、第1部材51を構成する第2銅層4および第2部材52を構成する銅板部52aに対して接合されている。これにより、筐体状の熱拡散用部品50Aの機械的強さが高まるため、筐体状の熱拡散用部品50Aをより薄肉化することができる。また、支持部55により内部空間が2つの内部空間54a、54bに区分されるが、支持部55に連絡路55aを設けることにより2つの内部空間54a、54bを繋ぐことができる。この場合、支持部55に設ける連絡路55aは、1つに制限されず、必要に応じて複数設けることができる。なお、熱拡散用部品50Aを構成する第1部材51および第2部材52、第1部材51と第2部材52との接合方法、発熱源5a、5bおよび発熱源接合領域2A、2B、並びに、2つの内部空間54a、54bに気密封止(好ましくは減圧封止)される作動流体(冷媒)などについての説明は、ここでは略し、上記した熱拡散用部品50についての説明を参照する。
筐体状の熱拡散用部品50Aを用いた場合、上記した筐体状の熱拡散部品50と同様に、発熱源5a、5bが発した熱は、発熱源5a、5bに接する第1部材51の平面部2a、2bから第1銅層2、ステンレス層3および第2銅層4を経由して、その大部分が第2銅層4の露出表面から内部空間54a、55bの熱エネルギーの水準が低い作動流体(冷媒)に伝導し、作動流体(冷媒)によって輸送され、内部空間54a、54bの端部などに設けられる放熱端子(図示略)などを介して外部へ放出される。このとき、内部空間54aの作動流体(冷媒)に伝導した熱量と、内部空間54bの作動流体(冷媒)に伝導した熱量とが、異なった場合であっても、内部空間54a、55nの作動流体(冷媒)のもつ熱エネルギーの水準が平衡になるように、作動流体(冷媒)が支持部55の連絡路55aを移動することができる。なお、第1部材51から第2部材52へ伝導した熱は、ポーラス銅部52bを介して内部空間54a、54bの作動流体(冷媒)に伝導して外部へ放熱されて拡散するとともに、一部が銅板部52aの露出表面から空中(例えば大気中)放出されて拡散する。
筐体状の熱拡散用部品50Aは、第1部材51を構成する、銅層(第1銅層2、第2銅層4)による適度な熱伝導特性およびステンレス層3による適度な機械的特性を有する。さらに、筐体状の熱拡散用部品50Aは、第1部材51および第2部材52に対して接合されている支持部55を有する。これにより、筐体状の熱拡散用部品50Aは補強され、筐体の厚さ(Z方向の長さ)をさらに小さくすることができるので、さらなる薄肉化が可能である。こうした筐体状の熱拡散用部品50Aは、上記したベーパーチャンバーの筐体として用いるのに好適である。また、筐体状の熱拡散用部品50Aは、例えば、モバイルパソコン、携帯電話などの小型の機器および装置に搭載する放熱部材、伝熱部材などの熱拡散用部品として搭載することができるし、必要に応じて導電部材、シャーシ、ケースまたはフレームの機能を兼ね備えることができる。これにより、上記した機器および装置のさらなる薄型化、コンパクト化および軽量化などへの貢献が期待できる。
次に、この発明に係る熱拡散用複合金属板(図1に示す複合金属板1で代表する)を実際に作製して評価した。具体的には、表1に示すように複合金属板1の厚さ比率(Ts/Tc)を変えて、複合金属板1の機械的特性、X方向およびZ方向の熱伝導特性(Kx、Kz)、および、熱伝導特性の異方性(AIS)を確認した。なお、厚み比率は横断面の光学顕微鏡写真を用いて求め、機械的強度(引張強さ、0.2%耐力、伸び)はJIS-Z2241:2011に準拠して測定し、硬さはJIS-Z2245:2016に準拠して求めた。また、熱伝導率は、後述する方法により求めた。また、各種評価に用いた試験体は、表1に示す材料を用いて上記したクラッド板材の製造方法により作製した複合金属板1から、各種評価に適した所定のサイズに切り出した。その結果を、表1および表2、図11、図12および図13に示す。なお、表1および表2には、複合金属板1との比較を目的として、単一のステンレス板(ステンレス層)および単一の銅板(銅層)についても同様に記載した。
(複合金属板の機械的特性)
複合金属板1の機械的特性として、引張強さ、耐力(0.2%耐力、0.01%耐力)、伸び、および、ステンレス層および銅層の硬さについて、評価した。
表2に示すように、引張強さは、Ts/Tcが0.5の場合(No.6、7、11)は489MPaから578MPaで、Ts/Tcが1.5の場合(No.1~5)は558MPaから1171MPaで、Ts/Tcが2.0の場合(No.8、9、12)は665MPaから856MPaで、および、Ts/Tcが3.0の場合(No.10)は758MPaであった。その結果、複合金属板1の引張強さは、Ts/Tcを例えば0.5から1.5または2.0へと大きくすれば高めることができること、および、Ts/Tcを考慮し、ステンレス層3を構成するステンレス鋼の組成(材質)、複合金属板1の最終的な厚さ(製品厚さ)を得る仕上げ圧延率、熱処理の有無および熱処理の条件などの調整により、比較的広い範囲で選択可能であることが判明した。
また、表2に示すように、複合金属板1の耐力(0.2%耐力)は、Ts/Tcが0.5の場合(No.6、7、11)は453MPaから551MPaで、Ts/Tcが1.5の場合(No.5)は222MPaで、Ts/Tcが2.0の場合(No.8、9、12)は570MPaから675MPaで、および、Ts/Tcが3.0の場合(No.10)は634MPaであった。参考までに、複合金属板1のTs/Tcが1.5の場合の0.01%耐力は、147MPaから1044MPaであった。その結果、複合金属板1の耐力は、Ts/Tcを考慮し、ステンレス層3を構成するステンレス鋼の組成(材質)、複合金属板1の最終的な厚さ(製品厚さ)を得る仕上げ圧延率、熱処理の有無および熱処理の条件などの調整により、比較的広い範囲で選択可能であることが判明した。
また、表2に示すように、複合金属板1の伸びは、Ts/Tcが0.5の場合(No.6、7、11)は9.0%から23.3%で、Ts/Tcが1.5の場合(No.1~5)は0.8%から1.8%で、Ts/Tcが2.0の場合(No.8、9、12)は24.6%から34.7%で、および、Ts/Tcが3.0の場合(No.10)は39.5%であった。その結果、複合金属板1の伸びは、Ts/Tcを考慮し、ステンレス層3を構成するステンレス鋼の組成(材質)、複合金属板1の最終的な厚さ(製品厚さ)を得る仕上げ圧延率、熱処理の有無および熱処理の条件などの調整により、比較的広い範囲で選択可能であることが判明した。
また、表2に示すように、複合金属板1のステンレス層の硬さは、Ts/Tcが0.5の場合(No.6、7、11)は301HVから353HVで、Ts/Tcが2.0の場合(No.8、9、12)は281HVから381HVで、および、Ts/Tcが3.0の場合(No.10)は274HVであった。その結果、複合金属板1のステンレス銅の硬さは、Ts/Tcを考慮し、ステンレス層3を構成するステンレス鋼の組成(材質)、複合金属板1の最終的な厚さ(製品厚さ)を得る仕上げ圧延率、熱処理の有無および熱処理の条件などの調整により、比較的広い範囲で選択可能であることが判明した。
また、表2に示すように、複合金属板1の銅層の硬さは、Ts/Tcが0.5の場合(No.6、7、11)は88HVから103HVで、Ts/Tcが2.0の場合(No.8、9、12)は86HVから102HVで、および、Ts/Tcが3.0の場合(No.10)は89HVであった。その結果、複合金属板1のステンレス銅の硬さは、Ts/Tcを考慮し、複合金属板1の最終的な厚さ(製品厚さ)を得る仕上げ圧延率などの調整により、比較的広い範囲で選択可能であることが判明した。
次に、複合金属板1のX方向(平面方向、圧延方向)の熱伝導率Kxについて、評価した。なお、表2および図11に示す複合金属板1のX方向の熱伝導率Kxは、ステンレス層3を構成するステンレス鋼の熱伝導率Ks(SUS631、SUS304)、第1銅層2および第2銅層4を構成する銅(C1020)の熱伝導率Kc、ステンレス層の厚さ(Ts)、および銅層の厚さの合計(Tc=Tc1+Tc2)に基づいて、Kx=Ts×Ks+Tc×Kcにより求めた。こうして求めた熱伝導率Kxに基づいて、複合金属板1のTs/TcとX方向の熱伝導率Kxとの関係を、図11に示す図(グラフ)に整理した。
図11に示すように、複合金属板1のX方向の熱伝導率Kxは、複合金属板1のTs/Tcが0.2以上5以下の範囲において、340W/(m・K)以下となり、Ts/Tcが大きくなるとともに小さくなる傾向を有することを見出すことができた(図11中の〇印、●印を参照)。また、X方向の熱伝導率Kxは、Ts/Tcが0.2以上4以下(特に0.2以上3以下、顕著には0.2以上2以下)の範囲において、Ts/Tcが大きくなるとともに低下する度合いが大きい傾向を有することを見出すことができた。例えば、Ts/Tcの0.2から4の間の変化量(3.8)に対して、X方向の熱伝導率Kxは約340W/(m・K)から約120乃至100W/(m・K)まで変化し(変化量は約220乃至240W/(m・K))、その変化勾配は58乃至63程度(220乃至240/3.8)になる。例えば、Ts/Tcの0.2から3の間の変化量(2.8)に対して、X方向の熱伝導率Kxは約340W/(m・K)から約120W/(m・K)まで変化し(変化量は約220W/(m・K))、その変化勾配は80程度(220/2.8)になる。例えば、Ts/Tcの0.2から2の間の変化量(1.8)に対して、X方向の熱伝導率Kxは約340W/(m・K)から約150W/(m・K)まで変化し(変化量は約190W/(m・K))、その変化勾配は106程度(190/1.8)になる。
こうした複合金属板1のTs/Tcに対するX方向の熱伝導率Kxの変化傾向は、図11中に破線で示す近似式(指数近似)によって、場合によっては図11中に点線で示す近似式(対数近似)によって、信頼性良く表すことができたことから、複合金属板1のTs/TcとX方向の熱伝導率Kxとの関係を適切かつ簡易に見出すことができるようになった。
また、複合金属板1のZ方向(厚さ方向、板厚方向)の熱伝導率Kzについて、評価した。ここで、同じ構成を有する金属材料(金属層)において、当該金属層のX方向の熱伝導率(Kとする)に対してZ方向の熱伝導率はその逆数(1/K)で表すことできる。具体的には、表2および図12に示す複合金属板1のZ方向の熱伝導率Kzは、ステンレス層3を構成するステンレス鋼の熱伝導率Ks(SUS631、SUS304)、第1銅層2および第2銅層4を構成する銅(C1020)の熱伝導率Kc、ステンレス層の厚さ(Ts)、および銅層の厚さの合計(Tc=Tc1+Tc2)に基づいて、Kz=Ts/Ks+Tc/Kcにより求めた。こうして求めた熱伝導率Kzに基づいて、複合金属板1のTs/TcとZ方向の熱伝導率Kzとの関係を、図12に示す図(グラフ)に整理した。
図12に示すように、複合金属板1のZ方向の熱伝導率Kzは、複合金属板1のTs/Tcが0.2以上5以下の範囲において、20W/(m・K)以上となり、Ts/Tcが大きくなるとともに小さくなる傾向を有することを見出すことができた(図11中の〇印、●印を参照)。また、Z方向の熱伝導率Kzは、Ts/Tcが0.2以上4以下(特に0.2以上3以下、顕著には0.2以上2以下)の範囲において、Ts/Tcが大きくなるとともに低下する度合いが大きい傾向を有することを見出すことができた。例えば、Ts/Tcの0.2から4の間の変化量(3.8)に対して、Z方向の熱伝導率Kzは約50W/(m・K)から約25乃至20W/(m・K)まで変化し(変化量は約25乃至30W/(m・K))、その変化勾配は7乃至8程度(25乃至30/3.8)になる。例えば、Ts/Tcの0.2から3の間の変化量(2.8)に対して、Z方向の熱伝導率Kzは約50W/(m・K)から約20W/(m・K)まで変化し(変化量は約30W/(m・K))、その変化勾配は11程度(30/2.8)になる。例えば、Ts/Tcの0.2から2の間の変化量(1.8)に対して、Z方向の熱伝導率Kzは約50W/(m・K)から約25W/(m・K)まで変化し(変化量は約25W/(m・K))、その変化勾配は14程度(25/1.8)になる。この観点から、Z方向の熱伝導率Kzは、X方向の熱伝導率Kxに比べて、変化勾配が1/6倍程であることを見出すことができた。
こうした複合金属板1のTs/Tcに対するZ方向の熱伝導率Kzの変化傾向は、図12中に破線で示す近似式(指数近似)によって、場合によっては図12中に点線で示す近似式(対数近似)によって、信頼性良く表すことができたことから、複合金属板1のTs/TcとZ方向の熱伝導率Kzとの関係を適切かつ簡易に見出すことができるようになった。
また、上記した複合金属板1のX方向およびZ方向の熱伝導率Kx、Kzを用いて、複合金属板1のX方向に対するZ方向の熱伝導率の比率(Kx/Kz)すなわち複合金属板1の熱伝導特性の異方性(AIS)について、評価した。複合金属板1のTs/Tcと熱伝導特性の異方性を表すAISとの関係を、図13に示す図(グラフ)に整理した。
図13に示すように、複合金属板1の熱伝導特性の異方性(AIS)は、複合金属板1のTs/Tcが0.2以上5以下の範囲において、AISすなわちKx/Kzで求まる熱伝導率の比率の上限が4.4で下限が8.8であり、すなわちAISが4.4以上6.8以下であり、Ts/Tcが大きくなるとともに小さくなる傾向を有することを見出すことができた。そして、複合金属板1のTs/Tcに対する熱伝導特性の異方性(AIS)の変化傾向は図13中に点線で示す近似式(線形近似)によって信頼性良く表すことができるとともに、その変化勾配は-0.49程度になることを見出すことができた。これより、複合金属板1の熱伝導特性の異方性(AIS)は、複合金属板1のTs/Tcが0.2以上5以下の範囲において、ステンレス層3の厚さ(Ts)が大きくなると、言い換えれば銅層の厚さ(Tc)が小さくなると、異方性が弱まることが判明した。これは、複合金属板1のTs/Tcを大きくして熱伝導特性の異方性を弱める(AISを小さくする)ことにより、相対的に、複合金属板1X方向の熱拡散性を弱めて、Z方向の熱拡散性を強める操作が可能であることを意味する。あるいは、複合金属板1のTs/Tcを小さくして熱伝導特性の異方性を強める(AISを大きくする)ことにより、相対的に、複合金属板1のX方向の熱拡散性を強めて、Z方向の熱拡散性を弱める操作が可能であることを意味する。
こうした複合金属板1の熱伝導特性の異方性(AIS)を利用して、例えば、発熱源から逃がした熱を外部へ放出する放熱部が複合金属板1を用いた熱拡散用部品のX方向の側端部に配置されるような場合は、熱拡散用部品に用いたれる複合金属板1のTs/Tcを小さく(AISを大きく)するように操作することにより、X方向への熱拡散性を強めた複合金属板1を構成することが好ましい。また、例えば、発熱源から逃がした熱を外部へ放出する放熱部が複合金属板1を用いた熱拡散用部品のZ方向の側端部に配置されるような場合は、熱拡散用部品に用いられる複合金属板1のTs/Tcを大きく(AISを小さく)するように操作することにより、X方向への熱拡散性を強めた複合金属板1を構成することが好ましい。
以上述べたように、複合金属板1のTs/Tcと機械的特性との関係、複合金属板1のTs/TcとX方向の熱伝導率Kxとの関係、複合金属板1のTs/TcとZ方向の熱伝導率Kzとの関係、複合金属板1のTs/Tcに対するX方向とZ方向との熱伝導率の比率(Kx/Kz)すなわち熱伝導特性に異方性(AIS)の関係、および、それぞれの関係における変化勾配について、明確にすることができた。その結果、複合金属板1のTs/Tcに対する上記した機械的特性および熱伝導率Kx、Kzとの関係を考慮し、当該用途に相応しい熱伝導特性の異方性(AIS)を有する複合金属板1の構成を適切かつ簡易に見出すことができるようになった。
これにより、各種の熱拡散の用途において、熱伝導特性以外の必要特性(例えば機械的特性)が当該用途に応じて異なることが一般的であるが、第1銅層とステンレス層と第2銅層とにより構成された、この発明に係る熱拡散用複合金属板および複合金属板を用いた熱拡散用部品について、熱拡散用複合金属板のステンレス層と銅層との厚さ比率(Ts/Tc)と、熱拡散用複合金属板のX方向とZ方向との熱伝導率の比率(Kx/Kz)すなわち熱伝導特性の異方性(AIS)との関係を考慮し、各種の熱拡散の用途に相応しい構成を適切かつ簡易に見出すことができるようになった。