JP7284257B2 - 複合糸および布帛および繊維製品 - Google Patents

Description

本発明は、コットン調外観、風合いおよび抗スナッギング性に優れ、好ましくは防透性および吸水速乾性にも優れる複合糸および布帛および繊維製品に関する。

ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）に代表されるポリエステル長繊維は、衣料用、産業資材用等に幅広く用いられている。しかし、その製造方法の特性により、天然繊維や紡績糸に比べて太さ斑が小さく、風合いや外観変化に乏しいという欠点を有している。

そのような欠点を解消するために、ポリエステル高配向未延伸糸の未延伸部分の長さをコントロールすることによりポリエステル繊維に太さ斑を付与し、布帛に任意のかすり状外観を付与する方法が提案されている（例えば、特許文献１、特許文献２）。

しかしながら、これらの布帛では、コットン調外観や抗スナッギング性などの点でまだ十分とは言えなかった。

特開昭６０－１９９９４１号公報 特開平７－２２９０３０号公報

本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、コットン調外観、風合いおよび抗スナッギング性に優れ、好ましくは防透性および吸水速乾性にも優れる複合糸および布帛および繊維製品を提供することにある。

本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。

かくして、本発明によれば「シックアンドシンヤーンと捲縮糸とを含むことを特徴とする複合糸。」が提供される。

その際、前記シックアンドシンヤーンが非捲縮糸であることが好ましい。また、複合糸が、前記シックアンドシンヤーンを複合糸重量対比３０～８５重量％の範囲内で含むことが好ましい。また、複合糸において交絡の個数１２０個／ｍ以下でインターレース加工が施されていることが好ましい。また、複合糸において、シックアンドシンヤーンと捲縮糸が交絡する、またはシックアンドシンヤーンが芯に位置し捲縮糸が鞘に位置する非引き揃え部と、シックアンドシンヤーンと捲縮糸が引き揃え状になった引き揃え部とが混在していることが好ましい。また、複合糸において、複合糸の長さに対し、非引き揃え部４０～９５％であることが好ましい。また、複合糸において、複合糸の長さに対し、引き揃え部分５～４０％であることが好ましい。また、前記シックアンドシンヤーンの単繊維繊度が１．５ｄｔｅｘ以上であることが好ましい。また、前記捲縮糸の単繊維繊度が１．０ｄｔｅｘ以下であることが好ましい。また、前記シックアンドシンヤーンおよび／または捲縮糸が、ポリエステル繊維またはナイロン繊維からなることが好ましい。また、前記シックアンドシンヤーンおよび／または捲縮糸が、ケミカルまたはマテリアルリサイクルされたポリマーからなることが好ましい。また、前記シックアンドシンヤーンおよび／または捲縮糸が、カチオン可染性ポリエステルからなることが好ましい。また、前記シックアンドシンヤーンおよび／または捲縮糸において、艶消し剤の含有率が０．１質量％以上であることが好ましい。

本発明によれば、前記の複合糸を含む布帛が提供される。その際、布帛が、３５～１００コース／２．５４ｃｍかつ３０～１００ウエール／２．５４ｃｍの密度を有する編物であることが好ましい。また、ＪＩＳ Ｌ １０５８－１９９５ Ｄ３法のカナノコにより１５時間テストして、抗スナッギング性が３級以上であることが好ましい。

また、本発明によれば、前記の複合糸または布帛を用いてなる、スポーツウエアー、アウターウエアー、インナーウエアー、紳士衣料、婦人衣料、介護用衣料、作業衣、カーシート表皮材、および寝具からなる群より選択されるいずれかの繊維製品が提供される。

本発明によれば、コットン調外観、風合いおよび抗スナッギング性に優れ、好ましくは防透性および吸水速乾性にも優れる複合糸、および布帛および繊維製品が得られる。

以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の複合糸は、シックアンドシンヤーンと捲縮糸とを含む複合糸である。

ここで、複合糸が、前記シックアンドシンヤーンを複合糸重量対比３０～８５重量％（より好ましくは５１～８０重量％）の範囲内で含むことが好ましい。また、捲縮糸の重量比（対複合糸重量）としては、１５～７０重量％（より好ましくは３０～４８重量％）の範囲内であることが好ましい。前記シックアンドシンヤーンの重量比（対複合糸重量）が該範囲より小さい場合、優れたコットン調外観が得られないおそれがある。また、前記シックアンドシンヤーンの重量比が該範囲よりも大きい場合、布帛の抗スナッギング性が低下するおそれがある。

ここで、前記シックアンドシンヤーンは捲縮糸でもよいが、非捲縮糸であることが好ましい。前記シックアンドシンヤーンが非捲縮糸であると、シックアンドシンヤーンと捲縮糸との捲縮差が大きいことで、複合糸中での太さ斑が大きくなり、コットン調外観および風合いに優れる。また、また、複合糸の芯部に非捲縮糸を配し、鞘部に捲縮糸を配した場合、毛細管現象により吸水速乾性が向上する。

前記シックアンドシンヤーンとしては、特開２０００－２３４２３２号公報に記載されたような紡績糸なみの太さ斑を有し単繊維間にもランダムな太さ斑をもったシックアンドシンヤーンや、特開平７－３２４２３７号公報に記載されたような摩擦抵抗体を用いて不均一延伸して得られたシックアンドシンヤーンなどが例示される。

一方、捲縮糸としては、サイドバイサイド型複合繊維の潜在捲縮を顕在化させた捲縮糸などでもよいが、仮撚捲縮加工糸が好ましい。

前記シックアンドシンヤーンおよび／または捲縮糸を形成するポリマーの種類としては、ポリエステルや脂肪族ポリアミド（ナイロン６、ナイロン６６など）が好ましい。なかでも、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第３成分を共重合させたポリエステルなどがより好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開２００４－２７００９７号公報や特開２００４－２１１２６８号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が１種または２種以上含まれていてもよい。特に艶消し剤がポリマー重量対比０．１重量％以上（より好ましくは０．３～２．０重量％）含まれていると、防透性が向上し好ましい。具体的には、セミダルポリエステルやフルダルポリエステルが好ましい。また、カチオン染料可染剤（エステル形成性スルホン酸金属塩化合物など）が含まれていると、国際公開第２０１１／０４８８８８号パンフレットに記載されているように酸性処理することで抗菌防臭性が付加され好ましい。

また、前記シックアンドシンヤーンにおいて、総繊度は２２～４００ｄｔｅｘ（より好ましくは３０～６０ｄｔｅｘ）であることが好ましい。また、単繊維繊度が１．５ｄｔｅｘ以上（より好ましくは１．５～３．０ｄｔｅｘ）であることが好ましい。また、フィラメント数が１２～２００本（より好ましくは２０～６０本）であることが好ましい。

また、前記捲縮糸において、優れたコットン調の外観と抗スナッギング性を得る上で、総繊度は前記シックアンドシンヤーンより小さいことが好ましい。特に総繊度が１８～３３３ｄｔｅｘ（より好ましくは２０～５０ｄｔｅｘ）であることが好ましい。また、単繊維繊度が１．０ｄｔｅｘ以下（より好ましくは０．１～１．０ｄｔｅｘ）であることが好ましい。また、フィラメント数１２～２００本（より好ましくは２０～６０本）であることが好ましい。また、捲縮率としては２～４０％（より好ましくは５～３５％）の範囲内であることが好ましい。

本発明の複合糸は前記のシックアンドシンヤーンと捲縮糸のみで構成されることが好ましいが、他の繊維を含んでいてもよい。また、複合方法は特に限定されないが、前記シックアンドシンヤーンおよび捲縮糸を引き揃えてインターレース加工（空気混繊加工）を施すことが好ましい。

その際、交絡個数としては、２００個／ｍ以下（より好ましくは１２０個／ｍ以下、特に好ましくは２０～１２０個／ｍ）の範囲内であることが好ましい。

また、複合糸において、シックアンドシンヤーンと捲縮糸が交絡する、またはシックアンドシンヤーンが芯に位置し捲縮糸が鞘に位置する非引き揃え部と、シックアンドシンヤーンと捲縮糸が引き揃え状になった引き揃え部とが混在していることが好ましい。なお、かかる複合糸は、例えば、特開２０００－２３４２３２号公報の実施例１に記載の方法に従い、紡績糸なみの太さ斑を有し単繊維間にもランダムな太さ斑をもったシックアンドシンヤーンを得た後、該シックアンドシンヤーンと捲縮糸とを引き揃えてインターレース加工を施すことにより得られる。

ここで、複合糸において、複合糸の長さに対し、非引き揃え部が４０～９５％であることが好ましい。また、複合糸において、複合糸の長さに対し、引き揃え部分が５～４０％であることが好ましい。ただし、それぞれの比率は布帛から複合糸（２０ｃｍ）を１０本抜き出し、複合糸（２０ｃｍ）に対するそれぞれの比率を算出し、１０本の平均を求めるものとする。

本発明の布帛は前記の複合糸を含む。かかる布帛において、布帛の組織は限定されず通常の方法で製編織されたものでよい。例えば、織組織としては、平織、斜文織、サテン織物等の三原組織、変化組織、変化斜文織等の変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。また、編物としては、天竺や、２枚筬または３枚筬を用いた、ハーフ組織、ハーフベース組織、サテン組織などが例示される。特に、吸水速乾性の点で３５～１００コース／２．５４ｃｍかつ３０～１００ウエール／２．５４ｃｍの密度を有する編物が好ましい。

また、布帛の目付けとしては、７０～１３０ｇ／ｍ^２の範囲内であることが好ましい。

かかる布帛には、染色加工、吸水加工、エンボス加工、着色プリント、撥水加工、紫外線遮蔽剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。

かくして得られた布帛は、優れたコットン調外観、優れた風合い、優れた風合い、抗スナッギング性、防透性および吸水速乾性を有する。その際、ＪＩＳ Ｌ １０５８－１９９５ Ｄ３法のカナノコにより１５時間テストして、抗スナッギング性が３級以上であることが好ましい。

次に、本発明の繊維製品は、前記の布帛を用いてなる、スポーツウエアー、アウターウエアー、インナーウエアー、紳士衣料、婦人衣料、介護用衣料、作業衣、カーシート表皮材、および寝具からなる群より選択されるいずれかの繊維製品である。

かかる繊維製品は前記の布帛を用いているので、コットン調外観、抗スナッギング性、防透性および吸水速乾性に優れる。

次に、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
（１） 目付け
ＪＩＳ Ｌ１０９６－２０１０により織物の目付け（ｇ／ｍ^２）を測定した。
（２）抗スナッギング性
JＩＳ Ｌ １０５８－１９９５ Ｄ３法のカナノコにより１５時間テストした。
（３）捲縮率
以下の方法により捲縮率を測定した。

すなわち、供試フィラメント糸条を、周長が１．１２５ｍの検尺機のまわりに巻きつけて、乾繊度が３３３３ｄｔｅｘのかせを調製する。

前記かせを、スケール板の吊り釘に懸垂して、その下部分に６ｇの初荷重を付加し、さらに６００ｇの荷重を付加したときのかせの長さＬ０を測定する。その後、直ちに、前記かせから荷重を除き、スケール板の吊り釘から外し、このかせを沸騰水中に３０分間浸漬して、捲縮を発現させる。沸騰水処理後のかせを沸騰水から取り出し、かせに含まれる水分をろ紙により吸収除去し、室温において２４時間風乾する。この風乾されたかせを、スケール板の吊り釘に懸垂し、その下部分に、６００ｇの荷重をかけ、１ 分後にかせの長さＬ１ａを測定し、その後かせから荷重を外し、１分後にかせの長さＬ２ａを測定する。供試フィラメント糸条の捲縮率（ＣＰ）を、下記式により算出する。
ＣＰ（％）＝（（Ｌ１ａ－Ｌ２ａ）／Ｌ０）×１００
（４）インターレース度
交絡糸を８．８２ｍＮ×表示テックス（０．１ｇ／ｄｅ）の荷重下で１ｍの長さをとり、除重後、室温で２４時放縮後の結節点の数を読み取り、個／ｍで表示する。
（５）複合糸における、非引き揃え部および引き揃え部の比率
布帛から複合糸（２０ｃｍ）を１０本抜き出し、複合糸（２０ｃｍ）に対するそれぞれの比率を算出し、１０本の平均を求めた。
（６）スパン調外観
試験者の目視判定により「〇」（優れている。）、「△」（普通である。）、「×」（劣っている。）の３段階でスパン調外観を評価した。

［実施例１～５、比較例１～２］
特開２０００－２３４２３２号公報の実施例１に記載の方法に従い、表１に示すような、紡績糸なみの太さ斑を有し単繊維間にもランダムな太さ斑をもった、非捲縮のシックアンドシンヤーンを得た。また、実施例１～５では、表１に示すような仮撚捲縮加工糸を常法により得た。なお、表１の中で、「ＦＤ」はケミカルリサイクルされたフルダルポリエステル、「ＳＤ」はケミカルリサイクルされたセミダルポリエステル、「ＣＤ」はケミカルリサイクルされたカチオン可染性ポリエステルを示す。また、例えば「４４Ｔ３６」は総繊度４４ｄｔｅｘ、フィラメント数３６本を意味する。

次いで、実施例１～５では、シックアンドシンヤーンと仮撚捲縮加工糸とを引き揃えてインターレース加工を施し、シックアンドシンヤーンと捲縮糸が交絡する、またはシックアンドシンヤーンが芯に位置し捲縮糸が鞘に位置する非引き揃え部と、シックアンドシンヤーンと捲縮糸が引き揃え状になった引き揃え部とが混在している複合糸を得た。次いで、表１に示すように丸編機を用いて編物を得た。

実施例１において、非引き揃え部７４％、引き揃え部２６％であった。実施例１～５および比較例１～２の評価結果を表１に示す。

本発明によれば、コットン調外観、風合いおよび抗スナッギング性に優れ、好ましくは防透性および吸水速乾性にも優れる複合糸、および布帛および繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。

Claims (7)

1. シックアンドシンヤーンと捲縮糸とを含む複合糸を含む布帛であり、
   前記シックアンドシンヤーンが非捲縮糸であり、
   複合糸が、前記シックアンドシンヤーンを複合糸重量対比３０～８５重量％の範囲内で含み、
   複合糸において、シックアンドシンヤーンと捲縮糸が交絡する、またはシックアンドシンヤーンが芯に位置し捲縮糸が鞘に位置する非引き揃え部と、シックアンドシンヤーンと捲縮糸が引き揃え状になった引き揃え部とが混在しており、
   前記シックアンドシンヤーンおよび捲縮糸において、艶消し剤の含有率が０．１質量％以上であり、
   かつ布帛が、３５～１００コース／２．５４ｃｍかつ３０～１００ウエール／２．５４ｃｍの密度を有する編物であり、
   前記シックアンドシンヤーンおよび捲縮糸が、ケミカルまたはマテリアルリサイクルされたポリエステル繊維からなり、
   ＪＩＳ Ｌ １０５８－１９９５ Ｄ３法のカナノコにより１５時間テストして、抗スナッギング性が３級以上であることを特徴とする布帛を用いてなる、
   スポーツウエアー、アウターウエアー、インナーウエアー、紳士衣料、および婦人衣料からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
2. 複合糸において交絡の個数１２０個／ｍ以下でインターレース加工が施されている、請求項１に記載の繊維製品。
3. 複合糸において、複合糸の長さに対し、非引き揃え部４０～９５％である、請求項１または請求項２に記載の繊維製品。
4. 複合糸において、複合糸の長さに対し、引き揃え部分５～４０％である、請求項１または請求項２に記載の繊維製品。
5. 前記シックアンドシンヤーンの単繊維繊度が１．０ｄｔｅｘ以上である、請求項１～４のいずれかに記載の繊維製品。
6. 前記捲縮糸の単繊維繊度が１．５ｄｔｅｘ以下である、請求項１～５のいずれかに記載の繊維製品。
7. 前記シックアンドシンヤーンおよび／または捲縮糸が、カチオン可染性ポリエステルからなる、請求項１～６のいずれかに記載の繊維製品。