以下、実施形態による作動状態診断装置を、電車、気動車、客車等の鉄道車両に搭載した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ説明する。なお、図面の流れ図は、各ステップに「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。また、図1、図9および図10では、図面の左側(車両の長さ方向の一側)を鉄道車両の進行方向の前側とし、図面の右側(車両の長さ方向の他側)を鉄道車両の進行方向の後側として説明する。しかし、図面の右側を前側とし、図面の左側を後側としてもよい。
図1ないし図4は、第1の実施形態を示している。図1において、鉄道車両1(以下、車両1という)は、例えば乗客、乗務員等の乗員が乗車する車体2と、車体2の下側に設けられた前側の台車3Aおよび後側の台車3Bとを備えている。これら2つの台車3A,3Bは、車体2の前側(車体2の長さ方向の一側で図1の左側)と後側(車体2の長さ方向の他側で図1の右側)とに離間して配置されている。これにより、車両1の車体2は、一対の台車3A,3B上に設置されている。なお、図1では、図面が複雑になることを避けるため、1両の車両1、即ち、1両編成の列車を示している。しかし、一般的には、複数の車両1を連結した列車、即ち、複数の車両1により編成された列車で運行される。
台車3A,3Bには、車軸5,5の長さ方向の両端側(即ち、車体2の幅方向の両端側)にそれぞれ車輪4,4を設けてなる輪軸6,6が、前後方向に離間してそれぞれ2個ずつ取付けられている。これにより、各台車3A,3Bには、それぞれ4個の車輪4,4が設けられている。車両1は、各車輪4,4が左右のレールR(図1に一方のみ図示)上を回転することにより、レールRに沿って走行する。なお、車体2の幅方向となる左右方向は、進行方向に対面した状態を基準としている。即ち、左右方向は、車体2の幅方向(車軸5,5の軸方向)に対応し、例えば、図1では紙面に直交する表裏方向の表側を左とし、裏側を右としている。
車両1の車体2と各台車3A,3Bとの間には、それぞれの台車3A,3B上で車体2を弾性的に支持する複数の空気ばね7A,7Bと、各空気ばね7A,7Bと並列関係をなすように配置された複数のダンパ8A,8Bとが設けられている。空気ばね7A,7Bは、「枕ばね」または「懸架ばね」とも呼ばれ、「ばね上質量」となる車体2等と「ばね間質量」となる台車3A,3B等との間に設けられる「二次ばね」に対応する。即ち、空気ばね7A,7Bは、車体2と台車3A,3Bとの間に設けられるばね手段を構成している。なお、「一次ばね」は、台車3A,3Bに設けられる軸ばね(図示せず)、即ち、「ばね下質量」となる車輪4,4(輪軸6,6)と「ばね間質量」となる台車3A,3Bの台車枠との間に設けられる軸ばねに対応する。空気ばね7A,7Bは、例えば、各台車3A,3Bの左右両側にそれぞれ1個ずつ設けられている。即ち、空気ばね7A,7Bは、例えば、1台車当たり2個、1車両当り4個設けられている。
緩衝器としてのダンパ8A,8Bは、車両1の車体2と台車3A,3Bとの間に配置されている。ダンパ8A,8Bは、例えば、ストローク速度によって減衰力が変化するコンベンショナルダンパ(パッシブダンパ)として構成された油圧緩衝器である。ダンパ8A,8Bは、空気ばね7A,7Bと共に、車体2と台車3A,3Bとの間で上下方向の振動を緩衝(減衰)するサスペンションを構成している。即ち、上下動ダンパとなるダンパ8A,8Bは、台車3A,3Bに対する車体2の上下方向の振動に対して、振動を低減させるような減衰力を発生する。これにより、ダンパ8A,8Bは、車体2の上下方向の振動を低減(抑制)する。ダンパ8A,8Bは、例えば、空気ばね7A,7Bに対してそれぞれ並列に配置されており、各台車3A,3Bの左右両側にそれぞれ1個ずつ設けられている。即ち、ダンパ8A,8Bは、1台車当たり2個、1車両当り4個設けられている。
圧力センサ9A,9Bは、空気ばね7A,7Bにそれぞれ設けられている。圧力センサ9A,9Bは、空気ばね7A,7Bの圧力(内圧)を検出する。圧力センサ9A,9Bで測定された圧力値は、例えば、空気ばね7A,7Bの制御に用いられる。このため、圧力センサ9A,9Bは、図示しない制御装置、例えば、空気ばね7A,7Bの制御用の制御装置または上位の制御装置に接続されている。また、圧力センサ9A,9Bで測定された圧力値は、後述するようにダンパ8A,8Bの作動状態の診断に用いられる。このため、圧力センサ9A,9Bは、図示しない制御装置および車内通信回線13を介して診断装置12に接続されている。即ち、圧力センサ9A,9Bで測定された圧力に対応する信号は、図示しない制御装置および車内通信回線13を介して診断装置12に出力される。これにより、圧力センサ9A,9Bは、空気ばね7A,7Bに負荷される圧力値を測定(検出)し、その圧力値に対応する信号を診断装置12に出力する圧力測定手段を構成している。
図2に示すように、車両1には、圧力センサ9A,9Bの他、位置センサ10が設けられている。位置センサ10は、車両1の走行位置(現在位置)を取得する。位置センサ10は、例えば、GPS等の衛星測位システム(SPNT:Satellite positioning navigation and timing system)の航法衛星からの信号を受信する受信機を含んで構成されている。位置センサ10は、図示しない制御装置、例えば、上位の制御装置と接続されている。後述するように、位置センサ10で取得された位置情報は、ダンパ8A,8Bの作動状態の診断に用いられる。このため、位置センサ10は、図示しない制御装置および車内通信回線13を介して診断装置12に接続されている。即ち、位置センサ10で取得された位置情報に対応する信号は、図示しない制御装置および車内通信回線13を介して診断装置12に出力される。
これにより、位置センサ10は、台車3A,3Bの位置情報を車両1の走行位置として取得し、その位置に対応する信号を診断装置12に出力する位置検出手段を構成している。なお、車両1の走行位置(台車3A,3Bの位置)は、位置センサ10に代えて、例えば、自動列車停止装置、自動列車制御装置、信号保安装置等として用いられる鉄道信号システムから取得してもよい。即ち、位置検出手段は、鉄道信号システムにより構成してもよい。この場合は、車両1に搭載された鉄道信号システム用の制御装置が位置検出手段に相当する。
ところで、鉄道車両の乗り心地向上のため、台車と車体との間に制振装置が配置されている(例えば、特許文献1-4)。制振装置は、上下方向または左右方向の振動抑制を狙ったものであり、例えば、振動状況に応じて減衰力を切換える減衰力調整式緩衝器(セミアクティブダンパ)を用いたもの、能動的に制御力を発生して振動を抑える制御アクチュエータ(フルアクティブダンパ)を用いたもの等がある。このような制振装置は、乗員・乗客の乗り心地の向上に寄与するため、鉄道車両の運転前または運転中に異常を診断できることが望まれる。
即ち、鉄道車両の高速化、高付加価値化に伴い、車体振動を低減させる技術が開発されている。その中で、油圧を用いた減衰力調整式緩衝器(可変減衰型緩衝器)の異常(故障)を診断する技術が知られている。鉄道車両の異常を診断する場合、軌道の異常、台車の異常、緩衝器の異常を切り分けることが好ましい。例えば、特許文献2には、軌道と台車の異常を検出する技術が記載されている。具体的には、複数の台車に設けられた加速度センサにより台車の加速度(振動値)を検出し、複数の輪軸に設けられた加速度センサにより輪軸の加速度(振動値)を検出し、軌道異常と台車異常とを検出する。
特許文献3には、鉄道車両を停止状態で加振して車両の各機器(台車枠、輪軸、アクチュエータ等)の異常を診断する技術が記載されている。さらに、特許文献4には、上下方向の加速度とピッチング方向の加速度とを検出し、上下並進とピッチングとの位相差から緩衝器の異常を検出する技術が記載されている。しかし、台車と車体との間に設けられた緩衝器の異常を高精度に検出するためには、既存のセンサだけでなく、例えば輪軸の振動を検出するセンサ等の追加のセンサが必要になる可能性がある。これにより、追加コストが発生することに加えて、システム規模が大きくなる可能性がある。
一方、特許文献5には、車両情報(センシング情報)をデータベースに保存し、データベースに保存された正常データ(過去の正常と判定されたセンシング情報)と鉄道車両で取得したデータ(現在のセンシング情報)とを比較し、異常を判定する技術が記載されている。しかし、この技術の場合は、データベースに正常データが保存されていなければ、異常であるか否かを判定することができない可能性がある。例えば、初めての状況下または初めての環境下等、対応する正常データがない場合には、異常を判定できない可能性がある。このため、データベースに格納された正常データと比較するためには、膨大な正常データの取得が必要になると考えられる。この場合、鉄道車両は、時間、曜日、季節によって乗車率が大きく異なり、悪天候による速度制限、事故による列車遅延、振替輸送等も考慮する必要がある。
より詳しく説明すると、鉄道車両の走行速度に規定はあるが、車両毎に乗車人員が異なり、同一のデータを比較することは困難である。例えば、朝・夕方のラッシュ時間帯と、早朝・深夜とでは、走行速度、乗車人員が大きく異なる。また、例えば、事故、突発的な天候不良等により、振替輸送、運休、速度制限がされた場合も、同一のデータを比較することは困難になる。これにより、異常の判定の精度を十分に確保できない可能性がある。
これに対して、例えば、「鉄道車両をモデル化した車両モデル」と「鉄道車両が走行する軌道の情報(軌道情報)」とを用いて緩衝器の作動状態を診断(緩衝器の異常を判定)することが考えられる。この場合に、例えば、複数の鉄道車両のそれぞれに診断に用いる軌道情報および車両モデルを格納する構成とし、この軌道情報と車両モデルとを用いて診断を行うことが考えられる。しかし、この構成の場合は、軌道の保線作業等により軌道情報に変更があったときに、鉄道車両毎に軌道情報を更新する必要があり、この更新作業が面倒になる可能性がある。また、このような構成の場合は、鉄道車両毎に、即ち、鉄道車両単体で異常を判定することになる。このため、例えば、ダンパ異常と判定された地点において、他の鉄道車両でも同様にダンパ異常と判定されていた場合には、軌道の異常である可能性が考えられるが、この情報を共有できず、軌道の異常の判定精度を十分に確保できない可能性がある。
そこで、第1の実施形態の作動状態診断装置11は、追加のセンサおよび膨大なデータを必要とせずに、既存のセンサを用いて高精度に異常を判定(診断)することができる構成としている。以下、第1の実施形態の作動状態診断装置11について説明する。
作動状態診断装置11は、コンベンショナルダンパであるダンパ8A,8Bの作動状態を診断する。作動状態診断装置11は、前述の圧力センサ9A,9Bおよび位置センサ10に加えて、車両1内で診断の演算処理を行う車内演算処理装置としての診断装置12と、通信ユニット20(送信ユニット20A、受信ユニット20B)と、車両1外で診断装置12と協働して診断の演算処理を行う車外演算処理装置としてのクラウド部21とを備えている。診断装置12は、圧力センサ9A,9Bおよび位置センサ10と共に車両1に配置されており、クラウド部21は、車両1から離れた位置に配置されている。診断装置12には、圧力センサ9A,9Bからの空気ばね7A,7Bの圧力および位置センサ10からの車両1の走行位置(現在位置)が、車内通信回線13を介してリアルタイムで入力される。
このために、診断装置12は、上位の制御装置(図示せず)と車内通信回線13を介して接続されている。また、診断装置12は、後述するようにクラウド部21と情報(データ)の送受信を行うため、送信ユニット20Aおよび受信ユニット20Bを備えた通信ユニット20にも接続されている。これにより、診断装置12には、車内通信回線13を介して車両1の車両情報(即ち、空気ばね7A,7Bの圧力、走行位置を含む車両情報)が上位信号として入力される。また、診断装置12には、受信ユニット20Bおよび車内通信回線13を介してクラウド部21からの情報(後述の空気ばね変位推定値)も入力される。また、診断装置12は、車内通信回線13および送信ユニット20Aを介してクラウド部21に情報(後述の現在位置および質量変化分)を出力する。なお、圧力センサ9A,9Bと位置センサ10と通信ユニット20とを診断装置12に直接接続する構成としてもよい。
診断装置12は、車両1の予め決められた位置(例えば、車体2のほぼ中央となる位置等)に設置されている。診断装置12は、例えばマイクロコンピュータを含んで構成されている。診断装置12は、ROM,RAM,不揮発性メモリ等からなる記憶部としてのメモリ12Aを有している。メモリ12Aには、例えば、後述の図3に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、ダンパ8A,8Bの作動状態の診断に用いる処理プログラムが格納(記憶)されている。また、メモリ12Aには、作動状態の診断に用いる基準値(例えば、基準圧力)、判定値(判定基準、閾値)も格納されている。
また、メモリ12Aには、空気ばね7A,7Bの圧力、車両1の走行位置がリアルタイムで格納される。この場合、後述の図2に示すように、メモリ12Aは、車両1からクラウド部21に送信する情報(データ)を一時保管するデータ保存部としての送信データ一時保存部12A1(図2)を備えている。後述するように、送信データ一時保存部12A1には、空気ばね7A,7Bの圧力値に関する情報となる車体2の質量変化分と車両1の位置情報となる現在位置(走行位置)とが入力される。これにより、メモリ12A(送信データ一時保存部12A1)は、「圧力センサ9A,9Bから出力された空気ばね7A,7Bの圧力値に関する情報」と「位置センサ10から出力された位置情報(車両1の走行位置)」とを一時保管するメモリ装置を構成している。
一方、クラウド部21は、例えば、鉄道会社の管理センタ(データセンタ)に設けられた管理サーバ23と、車両1と管理サーバ23との間でデータ(情報)の送受信を行う通信ネットワーク22とを含んで構成されている。通信ネットワーク22は、例えば、鉄道会社の専用回線、公衆回線、インターネット回線、光回線、電話回線、有線回線、無線回線、衛星回線、移動体回線(携帯電話回線)等の各種の通信設備および各種コンピュータ設備を備えたコンピュータネットワークに相当する。通信ネットワーク22は、車両1の通信ユニット20とデータ(情報)の送受信を行う車外側の受信ユニット22Aおよび送信ユニット22Bを含んで構成されている。管理サーバ23は、例えば、サーバコンピュータ、ホストコンピュータ、メインフレーム、汎用コンピュータ等の大型コンピュータにより構成されている。
管理サーバ23は、HDD(ハードディスクドライブ)等の大容量記憶媒体からなりデータベース(DB)を構成する記憶装置(図示せず)を備えている。管理サーバ23の記憶装置には、例えば、後述の図4に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、ダンパ8A,8Bの作動状態の診断に用いる処理プログラムが格納(記憶)されている。また、管理サーバ23の記憶装置には、特許文献1に記載されているような鉄道車両の状態の算出に用いる状態方程式等の車両モデルが格納されている。さらに、管理サーバ23の記憶装置には、車両1の走行位置からその走行位置の軌道(線路)の上下変位(高さ位置)を得るための情報(データ)、即ち、走行位置とこの走行位置に対応する左右の軌道の上下変位との関係がマップ(左右各輪の軌道MAP)として格納されている。この情報(軌道情報)は、例えば軌道の点検作業、保線作業、変更作業等が行われたときに最新の情報に書き換えることができる。
診断装置12は、車両1の走行中に、圧力センサ9A,9Bからの圧力値の信号と、位置センサ10からの走行位置の信号とをリアルタイムで取得する。なお、走行位置については、鉄道信号システムからの走行位置の信号を用いてもよい。診断装置12は、これらの信号から、クラウド部21(より具体的には管理サーバ23)と協働して、ダンパ8A,8Bの異常を判定する。即ち、診断装置12およびクラウド部21(管理サーバ23)は、空気ばね7A,7Bの圧力値と車両1の走行位置とに基づいて内部で演算を行い、ダンパ8A,8Bの作動状態を診断する処理を行う。
この場合、診断装置12は、空気ばね7A,7Bの圧力値から空気ばね7A,7Bの上下変位を算出する。また、診断装置12は、空気ばね7A,7Bの圧力値から車体2の質量変化分を算出し、「車両1の位置情報」と「車体2の質量変化分」とをクラウド部21に送信する。クラウド部21(管理サーバ23)は、「位置情報から得られる軌道の上下変位(軌道の情報)」と「車体2の質量変化分」とから「鉄道車両モデル」を用いて空気ばね7A,7Bの上下変位を推定する。クラウド部21(管理サーバ23)は、空気ばね7A,7Bの上下変位の推定値を診断装置12に送信する。診断装置12は、車両1内で算出された空気ばね7A,7Bの上下変位の算出値と車両1外のクラウド部21(管理サーバ23)で推定された空気ばね7A,7Bの上下変位の推定値とを比較し、ダンパ8A,8Bの異常を判定する。
即ち、第1の実施形態では、診断装置12は、車両1内の各種機器にリアルタイムで配信される空気ばね7A,7Bの圧力センサ値と空気ばね7A,7Bの受圧面積とばね定数とから、空気ばね7A,7Bの変位を算出値(変位算出値)として演算する。また、診断装置12は、空気ばね7A,7Bの圧力センサ値を基に、基準圧力を引いた車両質量変化分を演算する。診断装置12は、車両1内の各種機器にリアルタイムで配信される車両1の現在位置と共に、車両質量変化分をメモリ12A(送信データ一時保存部12A1)で一時保存する。
診断装置12は、クラウド部21との通信が正常なときに、メモリ12A(送信データ一時保存部12A1)に一時保存した車両質量変化分と現在位置とをクラウド部21に送信する。クラウド部21は、診断装置12から車両質量変化分と現在位置とを受信する。クラウド部21の管理サーバ23は、「受信した位置情報と管理サーバ23に格納されている軌道情報とから得られる軌道の上下変位」と「受信した車両質量変化分」とから、車両1の車両モデルを用いて空気ばね7A,7Bの変位を推定値(変位推定値)として演算する。クラウド部21(管理サーバ23)は、演算結果である推定値を診断装置12に送信する。診断装置12は、診断装置12で算出された空気ばね7A,7Bの変位の算出値とクラウド部21から受信した空気ばね7A,7Bの変位の推定値とを比較し、ダンパ8A,8Bの異常を判定する。
このような判定を行うために、図2に示すように、診断装置12は、送信データ一時保存部12A1と、異常診断部14とを備えている。また、診断装置12は、クラウド部21との間でデータ(情報)の送受信を行うことができるように車両1に配置された通信ユニット20(送信ユニット20A,受信ユニット20B)と接続されている。一方、車両1外に配置されたクラウド部21は、通信ネットワーク22(受信ユニット22A、送信ユニット22B)と管理サーバ23とを備えている。
診断装置12の異常診断部14は、基準圧力出力部15と、減算部16と、ばね手段変位算出装置を構成するばね変位算出部17と、ばね反力算出部18と、質量変化分算出部19と、緩衝器異常判定装置としてのダンパ異常判定部24とを備えている。
基準圧力出力部15は、メモリ12Aに予め記憶された空気ばね7A,7Bの基準圧力P0[Pa]を減算部16に出力する。減算部16には、圧力センサ9A,9Bから空気ばね7A,7Bの圧力(例えば、4個の空気ばね7A,7Bのそれぞれの圧力)が入力され、基準圧力出力部15から基準圧力(例えば、4個の空気ばね7A,7Bのそれぞれの基準圧力)が入力される。減算部16は、圧力センサ9A,9Bで測定(検出)された空気ばね7A,7Bの圧力P[Pa](即ち、リアルタイムの圧力P)から基準圧力P0を減算することにより、基準値である基準圧力P0からの差分圧力ΔPを求める。即ち、減算部16は、次の数1式の演算を行う。
減算部16は、算出した差分圧力ΔP(例えば、4個の空気ばね7A,7Bの差分圧力ΔP)をばね変位算出部17とばね反力算出部18とに出力する。ばね変位算出部17には、減算部16から差分圧力ΔPが入力される。ばね変位算出部17は、圧力センサ9A,9Bから出力された空気ばね7A,7Bの圧力値(より具体的には、差分圧力ΔP)を用いて空気ばね7A,7Bの上下変位を算出し、その算出値をダンパ異常判定部24に出力する。この場合、ばね変位算出部17は、空気ばね7A,7Bの差分圧力ΔPと受圧面積A[m2]との乗算値を空気ばね定数K[N/m]で除算することにより空気ばね変位ΔX[m]を求める。即ち、ばね変位算出部17は、次の数2式の演算を行う。
ばね変位算出部17は、算出した空気ばね変位ΔX(例えば、4個の空気ばね7A,7Bのそれぞれの空気ばね変位ΔX)を、空気ばね7A,7Bの上下変位の算出値としてダンパ異常判定部24に出力する。ばね反力算出部18には、減算部16から差分圧力ΔPが入力される。ばね反力算出部18は、圧力センサ9A,9Bから出力された空気ばね7A,7Bの圧力値(より具体的には、差分圧力ΔP)を用いて空気ばね7A,7Bの上下方向の反力を算出し、その算出値を質量変化分算出部19に出力する。この場合、ばね反力算出部18は、差分圧力ΔPと受圧面積Aとを乗算することにより空気ばね反力ΔF[N]を求める。即ち、ばね反力算出部18は、次の数3式の演算を行う。
ばね反力算出部18は、算出した空気ばね反力ΔF(例えば、4個の空気ばね7A,7Bのそれぞれの空気ばね反力ΔF)を、空気ばね7A,7Bの圧力値Pに関する第1情報として質量変化分算出部19に出力する。質量変化分算出部19には、ばね反力算出部18から空気ばね反力ΔFが入力される。質量変化分算出部19は、ばね反力算出部18から出力された空気ばね7A,7Bの圧力値Pに関する第1情報(空気ばね反力ΔF)を用いて質量変化分ΔMを算出し、その算出値を送信データ一時保存部12A1に出力する。この場合、質量変化分算出部19は、空気ばね反力ΔFを重力加速度gで除算することにより基準値からの車体2の質量変化分ΔMを求める。即ち、質量変化分算出部19は、次の数4式の演算を行う。
質量変化分算出部19は、算出した質量変化分ΔM(例えば、4個の空気ばね7A,7Bのそれぞれの空気ばねの質量変化分ΔM)を、空気ばね7A,7Bの圧力値Pに関する第2情報として送信データ一時保存部12A1に出力する。送信データ一時保存部12A1には、質量変化分算出部19から質量変化分ΔMが入力される。また、送信データ一時保存部12A1には、位置センサ10から出力された車両1の位置情報(現在位置)が入力される。送信データ一時保存部12A1は、質量変化分ΔMと位置情報とを一時保管(一時保存)する。送信データ一時保存部12A1は、クラウド部21との通信が正常なときに、質量変化分ΔMと位置情報とを送信ユニット20Aに出力する。
送信ユニット20Aは、受信ユニット20Bと共に通信ユニット20を構成している。通信ユニット20は、車両1に配置されている。通信ユニット20は、例えば、車両1内の診断装置12と車両1外のクラウド部21との間で無線による情報(データ)の送受信を行う。送信ユニット20Aは、送信データ一時保存部12A1に一時保管された「圧力値Pに関する情報(質量変化分ΔM)」と「位置情報(現在位置L)」とを車両1外、即ち、クラウド部21に送信する。
クラウド部21の通信ネットワーク22は、受信ユニット22Aおよび送信ユニット22Bを含んで構成されている。クラウド部21側の受信ユニット22Aには、車両1の送信ユニット20Aから出力された圧力値Pに関する情報(質量変化分ΔM)および位置情報(現在位置L)が入力される。圧力値Pに関する情報(質量変化分ΔM)および位置情報(現在位置L)は、通信ネットワーク22を介して管理サーバ23に入力される。管理サーバ23は、ばね手段変位推定装置としてのばね変位推定部23Aを備えている。
ばね変位推定部23Aには、車両1内の診断装置12から「車体2の質量変化分ΔM」と「車両1の位置情報」とが入力される。ばね変位推定部23Aは、車両1外に配置されている。ばね変位推定部23Aは、空気ばね7A,7Bの上下変位の推定値の演算に先立って、位置センサ10から取得された車両1の現在位置Lからその位置の軌道の上下変位を求める。具体的には、ばね変位推定部23Aは、車両1の現在位置Lから、管理サーバ23の記憶装置内に格納されている左右各輪(車輪4)の軌道MAP(軌道情報)に基づいて、「車両1の前車軸位置(例えば、進行方向の前側の台車3Aの位置)の軌道の上下変位Sf(左前軌道上下変位Sfl、右前軌道上下変位Sfr)」と「後車軸位置(例えば、進行方向の後側の台車3Bの位置)の軌道の上下変位Sr(左後軌道上下変位Srl、右後軌道上下変位Srr)」とを取得する。
ここで、ばね変位推定部23Aは、軌道MAP(軌道情報)を呼び出すときに、車両1が走行する路線が単線であれば、データ(情報)をそのまま読み込むことができる。しかし、ばね変位推定部23Aは、路線が複線であれば、現在位置Lを微分して電車の進行方向を演算し、進行方向によって軌道情報を上り線と下り線とで分けることが好ましい。即ち、管理サーバ23の記憶装置には、上り線の軌道情報と下り線の軌道情報とを格納し、そのときの進行方向に応じた軌道情報を用いることが好ましい。この理由は、車両1の軌道は、上り線と下り線とで完全に同一でなく、例えば、上り線と下り線とで分岐路の位置や構造が異なる場合があるためである。さらに、列車の種別によっては、例えば、同じ上り線でも、待避線を通る場合と通過線を通る場合とがあるため、位置情報と速度とから普通列車か優等列車(快速、急行、準急、特急)かを切り分け、それに応じた軌道情報を管理サーバ23の記憶装置に格納してもよい。
いずれにしても、ばね変位推定部23Aは、車両1の前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)」と後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)」を取得する。この場合、車両1の前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)は、軌道MAP(軌道情報)に基づいて取得し、後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)は、位置情報(現在位置L)から算出される速度値(走行速度V)を用いて取得(算出)することができる。即ち、ばね変位推定部23Aは、車両1の車軸間距離D[m](例えば、前側の台車3Aと後側の台車3Bとの間の距離)を走行速度V[m/s]で除算することにより、前車軸位置と後車軸位置との間の遅れ時間τを求める。ばね変位推定部23Aは、前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)と遅れ時間τとから後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)を算出する。
ばね変位推定部23Aは、「前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)および後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)」と「車体2の質量変化分ΔM」とを入力とし、車両モデルにて空気ばね7A,7Bの上下変位を演算により推定する。ばね変位推定部23A、その推定値を空気ばね変位推定値ΔXc(例えば、4個の空気ばね7A,7Bのそれぞれの空気ばね変位推定値ΔXc)としてダンパ異常判定部24に出力する。
即ち、ばね変位推定部23Aは、「車両1をモデル化した鉄道車両モデル」と「車両1の位置情報(より具体的には、位置情報から得られる軌道の上下変位Sf,Sr)」と「空気ばね7A,7Bの圧力値P(より具体的には、圧力値Pから算出される質量変化分ΔM)」とを用いて空気ばね7A,7Bの上下変位を推定し、送信ユニット22Bに出力する。より詳しくは、ばね変位推定部23Aは、「鉄道車両モデル」と「車両1側の送信ユニット20Aから送信された位置情報(上下変位Sf、Sr)」と「車両1側の送信ユニット20Aから送信された圧力値Pに関する第2情報(質量変化分ΔM)」とから、空気ばね7A,7Bの上下変位を演算により推定する。ばね変位推定部23Aは、推定された空気ばね7A,7Bの上下変位、即ち、空気ばね7A,7Bの上下変位の推定値である空気ばね変位推定値ΔXcを、クラウド部21側の送信ユニット22B、車両1側の受信ユニット20Bを介して異常診断部14のダンパ異常判定部24に出力する。
ここで、鉄道車両モデルは、例えば、特許文献1に記載されたような「車両モデル」を用いることができる。即ち、ばね変位推定部23Aは、特許文献1の段落[0036]以降および図面の図3に記載されたような鉄道車両モデル(状態方程式)を用いて空気ばね7A,7Bの上下変位を推定(空気ばね変位推定値ΔXcを演算)することができる。なお、ばね変位推定部23Aは、特許文献1以外の鉄道車両モデル(状態方程式)を用いてもよい。例えば、空気ばね7A,7Bの上下変位の推定値をより精度よく求めることができる車両モデル(状態方程式)、換言すれば、車両1の構造により対応した車両モデル(状態方程式)を用いることができる。
クラウド部21側の送信ユニット22Bには、ばね変位推定部23Aから空気ばね変位推定値ΔXcが入力される。送信ユニット22Bは、ばね変位推定部23Aから出力された空気ばね7A,7Bの上下変位の推定値である空気ばね変位推定値ΔXcを車両1側の受信ユニット20Bに送信する。受信ユニット20Bは、クラウド部21のばね変位推定部23Aから通信ネットワーク22(送信ユニット22B)を介して出力された空気ばね7A,7Bの上下変位の推定値(空気ばね変位推定値ΔXc)を車両1で受信する。受信ユニット20Bは、ばね変位推定部23Aから出力された空気ばね変位推定値ΔXcを異常診断部14のダンパ異常判定部24に出力する。
ダンパ異常判定部24には、ばね変位算出部17から空気ばね変位ΔXが入力され、クラウド部21のばね変位推定部23Aから車両1側の受信ユニット20Bを介して空気ばね変位推定値ΔXcが入力される。ダンパ異常判定部24は、空気ばね変位ΔXと空気ばね変位推定値ΔXcとを比較し、ダンパ8A,8Bが正常か異常かを判定する。即ち、ダンパ異常判定部24は、ばね変位算出部17から出力された空気ばね7A,7Bの上下変位の算出値である空気ばね変位ΔXと、受信ユニット20Bで受信された空気ばね7A,7Bの上下変位の推定値である空気ばね変位推定値ΔXcとを比較し、異常を判定する。ダンパ異常判定部24は、例えば、空気ばね変位ΔXと空気ばね変位推定値ΔXcとの差分値が、予め設定された閾値X1以上である場合に、ダンパ8A,8Bが異常であると判定することができる。閾値X1は、ダンパ8A,8Bが正常か異常かを判定するための判定基準となる閾値であり、メモリ12Aに予め記憶しておく。閾値X1は、例えば、計算、実験、シミュレーション等により予め求めることができ、精度のよい判定を行うことができる値として設定する。
ダンパ異常判定部24は、ダンパ8A,8Bが正常であるか否かの判定結果、即ち、上下動ダンパ異常検出結果を、診断装置12の診断情報として上位の制御装置に出力(通知)する。これにより、上位の制御装置は、上下動ダンパ異常検出結果(ダンパ8A,8Bが正常であるか否か)を取得することができる。上位の制御装置は、例えば、異常である旨の判定結果を取得した場合、車両1の運転室に設けられたモニタ等に警告の表示をすることにより運転手に報知する。なお、ダンパ異常判定部24は、空気ばね変位ΔXと空気ばね変位推定値ΔXcとの差分値が閾値X1以上と判定されたときに、ダンパ異常と軌道異常との切り分けを行ってもよい。例えば、異常判定する区間を長く取り、走行路線中の特定区間のみ異常(差分値が閾値X1以上)の場合は軌道異常と判定し、走行路線中の全体にわたり異常(差分値が閾値X1以上)の場合はダンパ異常と判定してもよい。
第1の実施形態による車両1および車両1に搭載された作動状態診断装置11は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
車両1は、レールR(軌道)に沿って、例えば図1の左側に向けて走行する。車両1が走行しているときに、例えばロール(横揺れ)またはピッチ(前後方向の揺れ)等の振動が発生すると、ダンパ8A,8Bは、このときの上,下方向の振動を低減させるような減衰力を発生する。これにより、車体2の上下方向の振動を低減(抑制)することができる。また、車両1の走行中、診断装置12には、上位の制御装置から車内通信回線13を介して車両1の車両情報、即ち、空気ばね7A,7Bの圧力値Pおよび車両1の現在位置Lが上位信号として入力される。診断装置12およびクラウド部21は、リアルタイムで取得した圧力値Pと現在位置Lとに基づいて、ダンパ8A,8Bの作動状態を診断する。即ち、診断装置12は、クラウド部21と協働して車両1の走行中にダンパ8A,8Bの異常を判定する。
図3の流れ図は、診断装置12で行われる処理を示している。図3の処理は、所定の制御周期(例えば、10msec)で繰り返し実行される。図4の流れ図は、クラウド部21(管理サーバ23)で行われる処理を示している。図4の処理も、所定の制御周期(例えば、10msec)で繰り返し実行される。図3中「DB(データベース)」は、クラウド部21(管理サーバ23)に対応する(図7、図12、図15、図18も同様)。
先ず、診断装置12で行われる処理について、図3を参照しつつ説明する。図3の処理が開始されると、診断装置12は、S1で、上位信号から情報を取得する。即ち、S1では、図示しない上位の制御装置から車内通信回線13を介して車両1の車両情報、具体的には、車両1の位置情報(現在位置L)、空気ばね7A,7Bの内圧である圧力値Pを取得する。また、S1では、取得した車両情報(圧力値P)に基づいて「質量変化分ΔM」と「空気ばね変位ΔX」とを演算する。
S2では、内部メモリである診断装置12のメモリ12A(送信データ一時保存部12A1)に送信情報(送信データ)を保存する。即ち、S2では、クラウド部21に送信する送信情報(現在位置L、質量変化分ΔM)を送信データ一時保存部12A1に一時保管する。S2に続くS3では、通信異常が発生しているか否か、即ち、通信ユニット20が正常か否かを判定する。換言すれば、S3では、通信状況が正常か否かを判定する。この判定は、テスト用の信号(テストデータ)を用いて行うことができる。例えば、テスト用の信号を診断装置12からクラウド部21(管理サーバ23)に送信する。クラウド部21(管理サーバ23)は、受信したテスト用の信号を診断装置12に返信(送信)する。診断装置12は、送信したテスト用の信号とクラウド部21から受信した信号とを比較し、これらが同一の場合に正常と判定し、これらが異なる場合に異常と判定することができる。また、例えば、クラウド部21から診断装置12に送信するデータ(情報)の中に、診断装置12から受信したデータ(そのままのデータ)も含ませ、このデータを診断装置12で比較することにより正常か異常かを判定してもよい。即ち、通信ユニット20が正常か否かの判定は、上記に限定されず、各種の通信異常の判定処理を用いることができる。
S3で「NO」、即ち、通信ユニット20が異常であると判定された場合は、S14に進む。S14では、送信データ一時保存部12A1に一時保存されたデータ量(保存サイズ)が閾値F1以上であるか否かを判定する。即ち、送信データ一時保存部12A1に一時保存されたデータ(送信情報)が通信異常により送信できずに増大した場合は、長時間にわたり通信異常が継続しており、通信異常の可能性が高い。そこで、S14では、送信データ一時保存部12A1に一時保存されたデータ量、即ち、送信できずに送信データ一時保存部12A1に蓄積されたデータ量(情報量)が閾値F1以上であるか否かを判定することにより、通信異常であるか否か確定する。閾値F1は、通信異常か否かを適切に判定(確定)できる判定値として予め設定しておく。
S14で「NO」、即ち、データ量が閾値F1よりも小さいと判定された場合は、スタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。一方、S14で「YES」、即ち、データ量が閾値F1以上であると判定された場合は、S15に進み、通信異常であると判定(確定)する。S15に続くS16では、診断装置12から「通信異常」の信号を車内通信回線13を介して上位の制御装置に出力(通知)し、エンド(リターン)する。即ち、エンドを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。
一方、S3で「YES」、即ち、通信ユニット20が正常であると判定された場合は、S4に進む。S4では、送信データ一時保存部12A1に一時保存された送信情報(現在位置L、質量変化分ΔM)をクラウド部21の管理サーバ23(DB:データベース)に送信する。S5では、クラウド部21(管理サーバ23)から空気ばね変位推定値ΔXcを受信する。即ち、S5では、図4に示す処理によりクラウド部21(管理サーバ23)で演算された空気ばね変位推定値ΔXcを受信する。
S6では、ダンパ8A,8Bが正常であるか否かを判定する。この場合、S6では、クラウド部21(管理サーバ23)で演算された空気ばね変位推定値ΔXcとS1で演算された空気ばね変位ΔXとを比較する。即ち、S6では、例えば、空気ばね変位推定値ΔXcと空気ばね変位ΔXとの差分値が閾値X1以上であるか否かを判定する。S6で「NO」、即ち、空気ばね変位推定値ΔXcと空気ばね変位ΔXとの差分値が閾値X1よりも小さいと判定された場合は、S7に進む。S7では、ダンパ8A,8Bが正常であると判定し、S8に進む。S8では、ダンパ異常判定部24から診断情報として「ダンパ正常」の信号を上位の制御装置に出力(通知)し、エンド(リターン)する。
一方、S6で「YES」、即ち、空気ばね変位推定値ΔXcと空気ばね変位ΔXとの差分値が閾値X1以上であると判定された場合は、S9に進む。S9では、ダンパ異常と軌道異常との切り分けを行う。ダンパ異常と軌道異常との切り分けは、例えば、異常判定する区間を長く取り、走行路線中の特定区間(短い区間)のみ異常(差分値が閾値X1以上)の場合は軌道異常と判定し、走行路線中の全体にわたり異常(差分値が閾値X1以上)の場合はダンパ異常と判定することができる。このために、S9では、異常が走行路線の全体にわたって検出されたか否かを判定する。S9で「YES」、即ち、異常が走行路線の全体にわたって検出されたと判定された場合は、S10に進む。S9で「NO」、即ち、異常が走行路線の特定区間でのみ検出されたと判定された場合は、S12に進む。
S10では、ダンパ8A,8Bが異常であると判定し、S11に進む。S11では、ダンパ異常判定部24から診断情報として「ダンパ異常」の信号を上位の制御装置に出力(通知)し、エンド(リターン)する。S12では、軌道(レールR)が異常であると判定し、S13に進む。S13では、ダンパ異常判定部24から診断情報として「軌道異常」の信号を上位の制御装置に出力(通知)し、エンド(リターン)する。なお、S8の「ダンパ正常」の通知は、省略してもよい。即ち、ダンパ異常判定部24は、「ダンパ8A,8Bが異常である」または「軌道が異常である」と判定した場合のみ、診断情報として異常の信号(ダンパ異常、軌道異常)を上位の制御装置に出力する構成としてもよい。
また、S6の処理、即ち、ダンパ異常判定部24で空気ばね変位ΔXと空気ばね変位推定値ΔXcとを比較するときは、リアルタイムで常時比較してもよく、また、予め設定した時間(規定時間)内の平均値を比較してもよい。さらに、ダンパ異常判定部24は、空気ばね変位ΔXと空気ばね変位推定値ΔXcとの差の積算値が規定値以上になった場合に、異常と判定してもよい。即ち、異常判定(作動状態の診断)に関する数値処理については、上述した処理に限らない。
また、ダンパ異常と軌道異常との切り分けについては、例えば、クラウド部21(管理サーバ23)にて判定してもよい。この場合は、例えば、診断装置12からクラウド部21(管理サーバ23)に判定結果、即ち、異常(差分値が閾値X1以上)が発生した区間の情報を送信する。クラウド部21(管理サーバ23)は、他の鉄道車両の判定結果と当該車両の判定結果とを比較し、複数の車両で特定の区間のみ異常結果となる場合に軌道異常と判定することができる。クラウド部21は、軌道異常と判定した場合、その旨を車両1の診断装置12に送信する。
また、例えば、S6で全ての空気ばね7A,7Bの空気ばね変位推定値ΔXcと空気ばね変位ΔXとの差分値が閾値X1以上であると判定された場合を考える。この場合は、ダンパ8A,8Bの全て(4本)が同時に異常状態になったとも考えられるが、このような異常状態になる可能性は低い。そこで、このような場合には、車体2の軌道異常と判定してもよい。例えば、このような判定を行う処理を、図3のS6の処理の後に加えてもよい。いずれにしても、第1の実施形態では、車両1が走行しているときに、上位信号として車両1に常時流れている情報(位置情報、圧力情報)に基づいて、ダンパ8A,8Bの異常判定(作動状態診断)をリアルタイムで高精度に行うことができる。
次に、クラウド部21で行われる処理について、図4を参照しつつ説明する。図4の処理が開始されると、クラウド部21は、S21で、車両1から送信情報(現在位置L、質量変化分ΔM)を受信したか否かを判定する。S21で「YES」、即ち、送信情報(送信データ)を受信したと判定された場合は、S22に進む。S21で「NO」、即ち、送信情報を受信していないと判定された場合は、S22およびS23を介することなく、エンド(リターン)する。即ち、エンドを介してスタートに戻り、S21以降の処理を繰り返す。
S22では、鉄道車両モデルを基に空気ばね変位推定値ΔXcを演算する。即ち、S22では、S21で受信した送信情報(現在位置L、質量変化分ΔM)から「前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)」と「後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)」を求め、鉄道車両モデルを基に空気ばね変位推定値ΔXcを演算する。S23では、S22で演算した空気ばね変位推定値ΔXcを車両1に送信し、エンド(リターン)する。
このような第1の実施形態では、追加の測定手段(センサ)を必要とせず、車両1のダンパ異常と軌道異常とを判定することができる。また、演算負荷の高い計算を車両1外のクラウド部21(管理サーバ23)で行うことで、車両1に搭載する診断装置12の演算負荷を下げ、診断装置12の小型化が可能となる。さらに、第1の実施形態では、クラウド部21(管理サーバ23)と診断装置12との間の通信は、車体2の質量変化分ΔMと現在位置Lのみであり、少ない通信負荷で異常判定が可能となる。そして、車両1に搭載した診断装置12でダンパ異常、通信異常、軌道異常の切り分けを行い、診断装置12から上位の制御装置に通知することで、精度の高い情報を直ちに乗務員に通知し、車両1の運行への影響を最小限とすることができる。さらに、クラウド部21を用いることで、他の列車の走行記録との比較や、過去の情報との比較、最新版へのデータ更新をすることもできる。また、車両1と軌道状態の変化を記録し、メンテナンス時期の推定をすることもできる。
以上のように、第1の実施形態によれば、「空気ばね7A,7Bの上下変位の算出値である空気ばね変位ΔX」と「空気ばね7A,7Bの上下変位の推定値である空気ばね変位推定値ΔXc」とを比較し、異常を判定する。この場合、ばね変位算出部17は、既存の圧力センサ9A,9Bにより測定された圧力値Pを用いて空気ばね変位ΔXを算出することができる。また、ばね変位推定部23Aは、既存の圧力センサ9A,9Bにより測定された圧力値Pと既存の設備である位置センサ10から取得された車両1の位置情報とを用いて空気ばね変位推定値ΔXcを推定することができる。さらに、ばね変位推定部23Aは、位置情報から得られるその位置の軌道情報(軌道の上下変位)から鉄道車両モデルを用いて空気ばね変位推定値ΔXcを推定することができる。このため、膨大な正常データ(センシング情報)を準備しなくても、空気ばね変位推定値ΔXcの精度を確保することができる。この場合、位置情報は、車両1に配置された既存の位置センサ10により取得される。これにより、センサの追加およびデータが膨大となることを抑制しつつ、異常の判定の精度を向上できる。しかも、ばね変位推定部23Aは、車両1外に配置されているため、複数の鉄道車両の空気ばね7A,7Bの上下変位を共通の軌道情報を用いて共通のばね変位推定部23Aにより推定することもできる。これにより、例えば複数の鉄道車両のそれぞれにばね手段変位推定装置を配置する場合と比較して、軌道の保線作業等により軌道情報に変更があったときに、その軌道情報の更新作業を容易に行うことができる(鉄道車両毎に更新作業を行わなくてすむ)。
なお、第1の実施形態では、ダンパ8A,8Bの異常判定の演算処理を行う診断装置12を上位の制御装置と別に設けた場合を例に挙げて説明したが、診断装置12を上位の制御装置に組み込んでもよい。即ち、緩衝器の異常判定は、この判定を行う専用の演算処理装置(マイクロコンピュータ)を備える構成としてもよいし、他の制御処理を行う演算処理装置(マイクロコンピュータ)に内蔵してもよい。
第1の実施形態では、ばね変位推定部23Aは、車両1の前側の台車3Aに対応する位置(前車軸位置)の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)と後側の台車3Bに対応する位置(後車軸位置)の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)とを用いて空気ばね変位推定値ΔXcを推定する構成とした場合を例に挙げて説明した。この場合、第1の実施形態では、位置センサ10の位置情報(現在位置L)から算出した速度値(走行速度V)を用いて、後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)を算出する。しかし、これに限らず、例えば、図5に示す変形例のように、車速センサ25から出力された速度値(走行速度V)を用いて、後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)を算出する構成としてもよい。
即ち、図5に示す変形例では、車両1に車速センサ25が設けられている。車速センサ25は、車両1の走行速度(車速)を検出する。車速センサ25は、例えば、図示しない上位の制御装置および車内通信回線13を介して診断装置12に接続されている。車速センサ25で測定された車速に対応する信号は、車内通信回線13を介して診断装置12に出力される。これにより、車速センサ25は、車両1の速度値を測定(検出)し、その速度値に対応する信号を診断装置12に出力する速度測定手段を構成している。
診断装置12の送信データ一時保存部12A1には、質量変化分算出部19から質量変化分ΔMが入力され、位置センサ10から車両1の位置情報(現在位置)が入力され、車速センサ25から車両1の速度値が入力される。送信データ一時保存部12A1は、質量変化分ΔMと位置情報と速度値とを一時保管する。送信ユニット20Aは、送信データ一時保存部12A1に一時保管された「質量変化分ΔM」と「車両1の位置情報」と「車両1の速度値」を車両1外、即ち、クラウド部21に送信する。クラウド部21(管理サーバ23)のばね変位推定部23Aは、車速センサ25から出力された速度値(走行速度V)を用いて後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)を算出する。このような変形例によれば、第1の実施形態と同様に、車両1の前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)と後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)とを用いて空気ばね変位推定値ΔXcを推定することができる。このため、第1の実施形態と同様に、空気ばね変位推定値ΔXcの推定精度を向上できる。
なお、第1の実施形態および変形例では、位置情報(現在位置L)と速度値(走行速度V)とを用いて進行方向前側の車軸(前側の台車3A)に対応する位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)と進行方向後側の車軸(後側の台車3B)に対応する位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)とを取得する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、速度値を用いずに軌道の上下変位を取得する構成としてもよい。即ち、鉄道車両の現在の位置(位置情報)と鉄道車両が走行している路線の軌道情報(軌道MAP)と鉄道車両の寸法とから進行方向前側の車軸(前側の台車)に対応する位置の軌道の上下変位と進行方向後側の車軸(後側の台車)に対応する位置の軌道の上下変位とを取得してもよい。
次に、図6および図7は、第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、鉄道車両側に車速センサを設けると共に、鉄道車両側の送信ユニットから送信された情報が正常な値であるか否かを判定する受信データ異常判定部を鉄道車両外(クラウド部側)に備える構成としたことにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態および変形例と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
前述の第1の実施形態では、車両1の診断装置12がリアルタイムで入手したデータ(位置情報、空気ばね7A,7Bの圧力に関する情報)をクラウド部21(管理サーバ23)に送信する。クラウド部21(管理サーバ23)は、送信されたデータを用いて演算を行い、その演算結果となる推定値(空気ばね変位推定値ΔXc)を車両1の診断装置12に送信する。診断装置12は、実データとなる算出値(空気ばね変位ΔX)とクラウド部21(管理サーバ23)から受信した推定値(空気ばね変位推定値ΔXc)とを比較することにより、ダンパ8A,8Bの異常判定を行う。しかし、車両1の診断装置12からクラウド部21(管理サーバ23)へのデータ(情報)の送信が適切にできなかった場合(例えば、受信データに大きなノイズが重畳した場合)、クラウド部21(管理サーバ23)での演算結果に誤りが生じ、結果としてダンパ8A,8Bが正常にもかかわらず異常と誤判定する可能性がある。
そこで、第2の実施形態では、クラウド部21の管理サーバ23は、受信データ異常判定部26を有している。受信データ異常判定部26は、車両1の送信ユニット20Aから送信された情報がダンパ異常判定部24に入力されるのに先立って、送信ユニット20Aから送信された情報(質量変化分ΔM、位置情報、速度値)が正常な値であるか否かを判定する。即ち、受信データ異常判定部26には、車両1内の診断装置12からデータ(質量変化分ΔM、位置情報、速度値)が入力される。受信データ異常判定部26は、車両1の診断装置12からのデータを受信したときに、正しいデータを受信したか否かを判定(確認)する。判定方法は、例えば、予め閾値を設定し、受信データが閾値範囲内であれば正常と判定することができる。閾値は、正しいデータであるか否かを適切に判定できる判定として設定しておく。また、例えば、受信データを車両1の診断装置12に一度返信し、診断装置12と管理サーバ23とで送受信データの整合性を確認してもよい。受信データ異常判定部26は、正しいデータを受信したと判定した場合は、診断装置12からのデータ(質量変化分ΔM、位置情報、速度値)をばね変位推定部23Aに出力する。受信データ異常判定部26は、正しいデータを受信していないと判定した場合は、受信データ異常の信号を送信ユニット22Bに出力する。受信データ異常の信号は、送信ユニット22B、車両1側の受信ユニット20Bを介して診断装置12に入力される。診断装置12は、通信異常の情報(受信データ異常の信号)を上位の制御装置に出力(通知)する。
図7の流れ図は、診断装置12で行われる処理を示しており、図8の流れ図は、クラウド部21(管理サーバ23)で行われる処理を示している。なお、図7および図8中の各処理で、前述の第1の実施形態の図3および図4に示した処理と同様の処理については、同じステップ番号を付して、その説明を省略する。
まず、クラウド部21(管理サーバ23)で行われる処理について、図8を参照しつつ説明する。図8のS21で「YES」と判定されると、S41に進む。S41では、診断装置12からのデータ(質量変化分ΔM、位置情報、速度値)が正常か否かを判定する。S41で「YES」、即ち、診断装置12からのデータが正常と判定された場合は、S22に進む。一方、S41で「NO」、即ち、診断装置12からのデータが正常でないと判定された場合は、S42に進む。S42では、車両1の診断装置12に通信異常の情報(受信データ異常の信号)を送信する。ここで、通信異常の送信方法は、例えば、管理サーバ23から診断装置12にデータを送信するときのビットを1つ増やして通信正常または通信異常の信号を送信することができる。また、例えば、空気ばね変位推定値ΔXcを本来であれば物理的に発生しないダンパ8A,8Bの数値、例えば、ダンパ8A,8Bが延び切ったときの値以上の数値、または、ダンパ8A,8Bが縮み切った値ときの値以下の数値を、診断装置12に送信してもよい。
次に、診断装置12で行われる処理について、図7を参照しつつ説明する。図7のS4に続くS31では、クラウド部21(管理サーバ23)から通信異常の情報(受信データ異常の信号)を受信したか否かを判定する。S31で「NO」、即ち、通信異常の情報を受信していないと判定された場合は、S5に進む。一方、S31で「YES」、即ち、通信異常の情報を受信したと判定された場合は、S15に進む。これにより、例えば、診断装置12で正常にデータ(車両情報)を取得しているにもかかわらず、診断装置12とクラウド部21(管理サーバ23)との間の通信異常によってクラウド部21(管理サーバ23)で誤ったデータをもとに演算が行われることを抑制できる。また、診断装置12は、クラウド部21(管理サーバ23)から送信された誤ったデータによる演算結果を用いて異常の判定が行われることを抑制できる。これにより、異常の判定、即ち、ダンパ異常と軌道異常と通信異常との切り分けをより精度よく行うことができる。
第2の実施形態は、上述の如き受信データ異常判定部26により通信異常を判定するもので、その基本的作用については、第1の実施形態および変形例によるものと格別差異はない。特に、第2の実施形態によれば、送信ユニット20Aからクラウド部21に送信された情報(データ)が通信異常により正常な値でないときに、正常でない値に基づいて空気ばね変位推定値ΔXcの演算(推定)が行われることを抑制できる。これにより、この面からも、異常の判定の精度を向上できる。
次に、図9ないし図13は、第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、台車と車輪との間の緩衝器を減衰力調整式ダンパ(セミアクティブダンパ)とすると共に、減衰力調整式ダンパの減衰力を制御する制御装置で作動状態の診断(異常判定処理)を行う構成としたことにある。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
車両1の車体2と台車3A,3Bとの間には、緩衝器としてのダンパ31A-31Dが配置されている。ダンパ31A-31Dは、それぞれ減衰力の調整が可能な減衰力調整式ダンパ(セミアクティブダンパ)であり、台車3A,3Bの振動を抑制する。この場合、ダンパ31A-31Dは、例えば、ソレノイドバルブ等の制御バルブ37A-37Dを備えている。ダンパ31A-31Dは、制御装置34からの電力(駆動電流)の供給により制御バルブ37A-37Dの開弁圧が調整されることにより、減衰特性をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)へと連続的に調整することができる。
なお、ダンパ31A-31Dは、減衰特性を連続的に調整するものに限らず、2段階または複数段階に調整可能なものであってもよい。また、ダンパ31A-31Dは、電圧や電流に応じて減衰力を調整する減衰力調整式緩衝器(例えば、電気粘性流体、磁性流体等の機能性流体を封入した緩衝器)であってもよい。即ち、ダンパ31A-31Dは、同じピストン速度において減衰力を可変に調節(増減)することができる各種の減衰力調整式緩衝器を用いることができる。図10に示すように、ダンパ31A-31Dは、1つの台車3A,3Bに対して2軸配置され、1台の車両1(2つの台車3A,3B)に対して4軸配置される。即ち、上下動ダンパとなるダンパ31A-31Dは、第1の実施形態のダンパ8A,8Bと同様に、空気ばね7A-7Dと並列に配置されている。
また、図10に示すように、車体2の4隅、即ち、車体2の前後方向と左右方向とに離間した4個所位置には、それぞれの位置で車体2の上下方向の加速度(振動)を測定する合計4個の加速度センサ32A-32Dが設けられている。加速度センサ32A-32Dは、車両1の異なる複数個所にそれぞれ搭載されて車両1の挙動(より具体的には、車体2の振動状態)を検出するセンサ(挙動センサ)である。加速度センサ32A-32Dは、例えば圧電式、サーボ式、ピエゾ抵抗式等のアナログ式加速度センサ等、各種の加速度センサを用いることができる。
加速度センサ32A-32Dで測定された加速度(上下加速度)は、ダンパ31A-31Dの制御とダンパ31A-31Dの作動状態の診断とに用いられる。このために、加速度センサ32A-32Dは、制御装置34に接続されている。加速度センサ32A-32Dは、車体2の上下加速度を測定し、その加速度に対応する信号を制御装置34に出力する車体加速度測定手段を構成している。なお、加速度センサ32A-32Dは、車体2の前部左側、前部右側、後部左側、後部右側に限らず、例えば車体2の前部中央、中央部左側、中央部右側、後部中央に配置する等、車体2上のセンサ配置はいかなる形をとっても良い。また、加速度センサ32A-32Dの個数も4個に限らず、測定・制御の目的に合わせて自由に選んでよい。例えば、車体2に2個、3個、または5個以上設けてもよい。
次に、各ダンパ31A-31Dの減衰力を可変に制御(調整)する制御装置34について説明する。
制御装置34は、車両1の予め決められた位置(例えば、車体2のほぼ中央となる位置等)に設置されている。制御装置34は、例えばマイクロコンピュータ、駆動回路を含んで構成されている。制御装置34の入力側は、加速度センサ32A-32Dに接続されている。制御装置34の出力側は、ダンパ31A-31D(より具体的には、各制御バルブ37A-37D)に接続されている。制御装置34は、ROM,RAM,不揮発性メモリ等からなる記憶部としてのメモリ34Aを有している。メモリ34Aには、例えば、ダンパ31A-31Dの減衰力の制御を行う処理プログラムが格納されている。また、制御装置34は、車内通信回線13を介して上位の制御装置(図示せず)と接続されている。制御装置34には、上位の制御装置から車内通信回線13を介して車両1の車両情報(例えば、車両の現在位置L等)が上位信号として入力される。なお、加速度センサ32A-32Dを上位の制御装置に接続し、上位信号として上下加速度も制御装置34に入力される構成としてもよい。
制御装置34は、加速度センサ32A-32Dから得られるセンサ信号と車内通信回線13を介して得られる上位信号とに基づいて内部で演算を行い、各ダンパ31A-31D(より具体的には、各制御バルブ37A-37D)に指令信号となる駆動電流を出力する。即ち、制御装置34は、サンプリング時間毎に加速度センサ32A-32Dからの検出信号等を読込みつつ、所定の制御則(制振制御ロジック)に従って各ダンパ31A-31Dで発生すべき減衰力に対応する駆動電流を演算する。この上で、制御装置34は、駆動電流を制御バルブ37A-37Dに個別に出力し、ダンパ31A-31D毎の発生力を可変に制御する。なお、各ダンパ31A-31Dの制御則としては、例えば、スカイフック制御則、LQG制御則またはH∞制御則等を用いることができる。
次に、各ダンパ31A-31Dの作動状態を診断する作動状態診断装置33について、図11を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態の作動状態診断装置11と相違する部分を主として説明し、同様の部分については詳しい説明を省略する。
第3の実施形態の作動状態診断装置33は、セミアクティブダンパであるダンパ31A-31Dの作動状態を診断する。作動状態診断装置33は、圧力センサ9A-9Dと、位置センサ10と、加速度センサ32A-32Dと、車両1内で診断の演算処理を行う車内演算処理装置としての制御装置34と、通信ユニット20(送信ユニット20A、受信ユニット20B)と、車両1外で制御装置34と協働して診断の演算処理を行う車外演算処理装置としてのクラウド部21とを備えている。制御装置34は、ダンパ31A-31Dの減衰力の制御の演算処理を行う制御装置だけでなく、ダンパ31A-31Dの作動状態の診断の演算処理を行う診断装置も兼ねている。このため、制御装置34のメモリ34Aには、ダンパ31A-31Dの減衰力の制御に用いる処理プログラムの他、後述の図12に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、ダンパ31A-31Dの作動状態の診断に用いる処理プログラムも格納されている。また、制御装置34のメモリ34Aには、前述の第1の実施形態と同様に、作動状態の診断に用いる基準値、判定値等が格納されている。また、メモリ34Aは、第1の実施形態と同様に、送信データ一時保存部34A1を備えている。
制御装置34には、圧力センサ9A-9Dからの空気ばね7A-7Dの圧力、および、位置センサ10からの車両1の走行位置(現在位置)が車内通信回線13を介してリアルタイムで入力される。これに加えて、制御装置34には、加速度センサ32A-32Dからの車体2の上下加速度もリアルタイムで入力される。即ち、制御装置34は、車両1の走行中に、圧力センサ9A-9Dからの圧力値の信号と、位置センサ10からの走行位置の信号と、加速度センサ32A-32Dからの上下加速度の信号とをリアルタイムで取得する。制御装置34は、これらの信号から、クラウド部21(管理サーバ23)と協働して、ダンパ31A-31Dの異常を判定する。即ち、制御装置34およびクラウド部21(管理サーバ23)は、空気ばね7A-7Dの圧力値と車両1の走行位置と車体2の上下加速度とに基づいて内部で演算を行い、ダンパ31A-31Dの作動状態を診断する処理を行う。
この場合、制御装置34は、「車両1の位置情報」と「車体2の質量変化分」とをクラウド部21に送信する。クラウド部21(管理サーバ23)は、「位置情報から得られる軌道の上下変位(軌道の情報)」と「車体2の質量変化分」とから「鉄道車両モデル」を用いて車体2の上下加速度を推定する。クラウド部21(管理サーバ23)は、車体2の上下加速度の推定値を制御装置34に送信する。制御装置34は、車両1内の加速度センサ32A-32Dで測定された車体2の上下加速度の測定値と車両1外のクラウド部21(管理サーバ23)で推定された車体2の上下加速度の推定値とを比較し、ダンパ31A-31Dの異常を判定する。
即ち、第3の実施形態では、制御装置34は、車両1内の各種機器にリアルタイムで配信される空気ばね7A-7Dの圧力センサ値を基に、基準圧力を引いた車両質量変化分を演算する。制御装置34は、車両1内の各種機器にリアルタイムで配信される車両1の現在位置と共に、車両質量変化分をメモリ34A(送信データ一時保存部34A1)で一時保存する。制御装置34は、クラウド部21との通信が正常なときに、一時保存した車両質量変化分と現在位置とをクラウド部21に送信する。クラウド部21は、制御装置34から車両質量変化分と現在位置とを受信する。クラウド部21の管理サーバ23は、「受信した位置情報と管理サーバ23に格納されている軌道情報とから得られる軌道の上下変位」と「受信した車両質量変化分」とから、車両1の車両モデルを用いて車体2の上下加速度を推定値(加速度推定値)として演算する。クラウド部21(管理サーバ23)は、演算結果である推定値を制御装置34に送信する。制御装置34は、加速度センサ32A-32Dで測定された車体2の上下加速度の測定値(加速度測定値)とクラウド部21から受信した車体2の上下加速度の推定値とを比較し、ダンパ31A-31Dの異常を判定する。
このために、図11に示すように、制御装置34の異常診断部14は、基準圧力出力部15と、減算部16と、ばね反力算出部18と、質量変化分算出部19と、緩衝器異常判定装置としてのダンパ異常判定部36とを備えている。一方、クラウド部21の管理サーバ23は、車体加速度推定装置としての加速度推定部35を備えている。
加速度推定部35は、車両1外に配置されている。加速度推定部35には、車両1内の制御装置34から「車体2の質量変化分ΔM」と「車両1の位置情報」とが入力される。制御装置34は、第1の実施形態のばね変位推定部23Aと同様に、車両1の現在位置Lから、管理サーバ23の記憶装置内に格納されている左右各輪(車輪4)の軌道MAP(軌道情報)に基づいて、前車軸位置の軌道の上下変位Sfと後車軸位置の軌道の上下変位Srとを取得する。加速度推定部35は、車体2の質量変化分ΔMと前車軸位置の軌道の上下変位Sfと後車軸位置の軌道の上下変位Srを入力とし、車両モデルにて車体2の上下加速度を演算により推定する。加速度推定部35は、その推定値を車体上下加速度推定値Gcとしてクラウド部21側から車両1側の異常診断部14のダンパ異常判定部36に出力する。
即ち、加速度推定部35は、「車両1をモデル化した鉄道車両モデル」と「車両1の位置情報(より具体的には、位置情報から得られる軌道の上下変位Sf,Sr)」と「空気ばね7A,7Bの圧力値P(より具体的には、圧力値Pから算出される質量変化分ΔM)」とを用いて車体2の上下加速度を推定し、送信ユニット22Bに出力する。より詳しくは、加速度推定部35は、「鉄道車両モデル」と「車両1側の送信ユニット20Aから送信された位置情報から得られる軌道の上下変位Sf、Sr」と「車両1側の送信ユニット20Aから送信された圧力値Pに関する第2情報(質量変化分ΔM)」とから、車体2の上下加速度を演算により推定する。加速度推定部35は、推定された車体2の上下加速度、即ち、車体2の上下加速度の推定値である車体上下加速度推定値Gcを、クラウド部21側の送信ユニット22B、車両1側の受信ユニット20Bを介して制御装置34のダンパ異常判定部36に出力する。
ここで、鉄道車両モデルは、例えば、特許文献1に記載されたような「車両モデル」を用いることができる。即ち、加速度推定部35は、特許文献1の段落[0036]以降および図面の図3に記載されたような鉄道車両モデル(状態方程式)を用いて車体2の上下加速度を推定(車体上下加速度推定値Gcを演算)することができる。なお、加速度推定部35は、特許文献1以外の鉄道車両モデル(状態方程式)を用いてもよい。例えば、車体2の上下加速度の推定値をより精度よく求めることができる車両モデル(状態方程式)、換言すれば、車両1の構造により対応した車両モデル(状態方程式)を用いることができる。
クラウド部21側の送信ユニット22Bには、加速度推定部35から車体上下加速度推定値Gcが入力される。送信ユニット22Bは、加速度推定部35から出力された車体2の上下加速度の推定値である車体上下加速度推定値Gcを車両1側の受信ユニット20Bに送信する。受信ユニット20Bは、クラウド部21の加速度推定部35から通信ネットワーク22(送信ユニット22B)を介して出力された車体2の上下加速度の推定値(車体上下加速度推定値Gc)を車両1で受信する。受信ユニット20Bは、加速度推定部35から出力された車体上下加速度推定値Gcを異常診断部14のダンパ異常判定部36に出力する。
ダンパ異常判定部36には、車両1内の加速度センサ32A-32Dにより測定された車体2の上下加速度の測定値、即ち、実上下加速度Grが入力される。また、ダンパ異常判定部36には、車両1外、即ち、クラウド部21(管理サーバ23)の加速度推定部35から車両1側の受信ユニット20Bを介して車体上下加速度推定値Gcが入力される。ダンパ異常判定部36は、実上下加速度Grと車体上下加速度推定値Gcとを比較し、ダンパ31A-31Dが正常か異常かを判定する。即ち、ダンパ異常判定部36は、加速度センサ32A-32Dから出力された車体2の上下加速度の測定値である実上下加速度Grと、受信ユニット20Bで受信された車体2の上下加速度の推定値である車体上下加速度推定値Gcとを比較し、異常を判定する。ダンパ異常判定部36は、例えば、実上下加速度Grと車体上下加速度推定値Gcとの差分値が、予め設定された閾値G1以上である場合に、ダンパ31A-31Dが異常であると判定することができる。閾値G1は、ダンパ31A-31Dが正常か異常かを精度よく判定できるように、計算、実験、シミュレーション等により予め求めておく。ダンパ異常判定部36は、ダンパ31A-31Dが正常であるか否かの判定結果、即ち、上下動ダンパ異常検出結果を、制御装置34の診断情報として上位の制御装置に出力する。これにより、上位の制御装置は、上下動ダンパ異常検出結果(ダンパ31A-31Dが正常であるか否か)を取得することができる。
図12の流れ図は、制御装置34で行われる処理を示しており、図13の流れ図は、クラウド部21(管理サーバ23)で行われる処理を示している。なお、図12および図13中の各処理で、前述の第1の実施形態の図3および図4に示した処理と同様の処理については、同じステップ番号を付して、その説明を省略する。
まず、クラウド部21(管理サーバ23)で行われる処理について、図13を参照しつつ説明する。図13のS21で「YES」と判定されると、S61に進む。S61では、鉄道車両モデルを基に車体上下加速度推定値Gcを演算する。即ち、S61では、S21で受信した送信情報(現在位置L、質量変化分ΔM)から「前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)」と「後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)」を求め、鉄道車両モデルを基に車体上下加速度推定値Gcを演算する。S62では、S61で演算した車体上下加速度推定値Gcを車両1に送信し、エンド(リターン)する。
次に、制御装置34で行われる処理について、図12を参照しつつ説明する。図12のS4に続くS51では、クラウド部21(管理サーバ23)から車体上下加速度推定値Gcを受信する。即ち、S51では、図13に示す処理によりクラウド部21(管理サーバ23)で演算された車体上下加速度推定値Gcを受信する。S52では、加速度センサ32A-32Dで測定された実上下加速度Grを取得する。S53では、ダンパ8A,8Bが正常であるか否かを判定する。この場合、S53では、クラウド部21(管理サーバ23)で演算された車体上下加速度推定値GcとS52で取得された実上下加速度Grとを比較する。即ち、S53では、例えば、車体上下加速度推定値Gcと実上下加速度Grとの差分値が閾値G1以上であるか否かを判定する。S53で「NO」、即ち、車体上下加速度推定値Gcと実上下加速度Grとの差分値が閾値G1よりも小さいと判定された場合は、S7に進む。一方、S53で「YES」、即ち、車体上下加速度推定値Gcと実上下加速度Grとの差分値が閾値G1以上であると判定された場合は、S9に進む。
なお、S53の処理、即ち、ダンパ異常判定部36で車体上下加速度推定値Gcと実上下加速度Grとを比較するときは、リアルタイムで常時比較してもよく、また、予め設定した時間(規定時間)内の平均値を比較してもよい。さらに、ダンパ異常判定部36は、車体上下加速度推定値Gcと実上下加速度Grとの差の積算値が規定値以上になった場合に、異常と判定してもよい。即ち、異常判定(作動状態の診断)に関する数値処理については、加速度値の平均化処理や実効値処理、差分値の積算等、上述した処理に限らない。
また、ダンパ異常と軌道異常との切り分けについては、例えば、クラウド部21(管理サーバ23)にて判定してもよい。この場合は、例えば、制御装置34からクラウド部21(管理サーバ23)に判定結果、即ち、異常(差分値が閾値G1以上)が発生した区間の情報を送信する。クラウド部21(管理サーバ23)は、他の鉄道車両の判定結果と当該車両の判定結果とを比較し、複数の車両で特定の区間のみ異常結果となる場合に軌道異常と判定することができる。クラウド部21は、軌道異常と判定した場合、その旨を車両1の制御装置34に送信する。
また、例えば、ダンパ31A-31Dの全て(4本)が同時に異常であると判定された場合は、このような異常状態の可能性は低いため、車体2の軌道異常と判定してもよい。いずれにしても、第3の実施形態では、車両1が走行しているときに、上位信号として車両1に常時流れている情報(位置情報、圧力情報)とダンパ31A-31Dの制振制御用に必要な加速度の情報とに基づいて、ダンパ31A-31Dの異常判定(作動状態診断)をリアルタイムで高精度に行うことができる。
第3の実施形態は、上述の如き制御装置34およびクラウド部21(管理サーバ23)によりダンパ31A-31Dの異常を判定するもので、その基本的作用については、第1の実施形態によるものと格別差異はない。特に、第3の実施形態によれば、「車体2の上下加速度の測定値である実上下加速度Gr」と「車体2の上下加速度の推定値である車体上下加速度推定値Gc」とを比較し、異常を判定する。この場合、車体2の上下加速度の測定値は、既存の加速度センサ32A-32Dから出力された測定値を用いることができる。また、加速度推定部35は、既存の圧力センサ9A-9Dにより測定された圧力値Pと既存の設備である位置センサ10から取得された車両1の位置情報とを用いて車体上下加速度推定値Gcを推定することができる。さらに、加速度推定部35は、位置情報から得られるその位置の軌道の情報(軌道の上下変位Sf,Sr)から鉄道車両モデルを用いて車体上下加速度推定値Gcを推定することができる。このため、膨大な正常データ(センシング情報)を準備しなくても、車体上下加速度推定値Gcの精度を確保することができる。この場合、位置情報は、車両1に配置された既存の位置センサ10により取得される。これにより、センサの追加およびデータが膨大となることを抑制しつつ、異常の判定の精度を向上できる。しかも、加速度推定部35は、車両1外に配置されているため、複数の鉄道車両の空気ばね7A-7Dの上下変位を共通の軌道情報を用いて共通の加速度推定部35により推定することもできる。これにより、例えば複数の車両1のそれぞれに加速度推定部35を配置する場合と比較して、軌道の保線作業等により軌道情報に変更があったときに、その軌道情報の更新作業を容易に行うことができる(車両1毎に更新作業を行わなくてすむ)。
なお、第3の実施形態では、加速度推定部35は、第1の実施形態と同様に、位置センサ10の位置情報(現在位置L)から算出した速度値(走行速度V)を用いて、後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)を算出する。しかし、これに限らず、前述の変形例のように、車両1側に車速センサ25(図5参照)を設け、この車速センサ25から出力された速度値(走行速度V)を用いて、クラウド部21(加速度推定部35)で後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)を算出する構成としてもよい。
第3の実施形態では、ダンパ31A-31Dの減衰力の制御を行う制御装置34でダンパ31A-31Dの異常判定の演算処理も行う構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、緩衝器の減衰力の制御の演算処理を行う制御装置と緩衝器の異常判定の演算処理を行う制御装置とを別々に設けてもよい。
次に、図14ないし図16は、第4の実施形態を示している。第4の実施形態の特徴は、鉄道車両側に車速センサを設けると共に、ばね手段の上下変位の推定値と車体の上下加速度の推定値との両方を用いて異常を判定する構成としたことにある。なお、第4の実施形態では、第1の実施形態、変形例および第3の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
第4の実施形態の作動状態診断装置33は、第3の実施形態と同様に、セミアクティブダンパであるダンパ31A-31Dの作動状態を診断する。なお、第1の実施形態のように、コンベンショナルダンパであるダンパ8A,8Bが搭載された車両1でも、車両1に加速度センサ32A-32Dを設けることにより、ダンパ8A,8Bの作動状態を診断することもできる。第4の実施形態では、変形例と同様に、車両1に車速センサ25が設けられている。制御装置34の送信データ一時保存部34A1には、質量変化分算出部19から質量変化分ΔMが入力され、位置センサ10から車両1の位置情報(現在位置)が入力され、車速センサ25から車両1の速度値が入力される。送信データ一時保存部34A1は、質量変化分ΔMと位置情報と速度値とを一時保管する。送信ユニット20Aは、送信データ一時保存部34A1に一時保管された「質量変化分ΔM」と「車両1の位置情報」と「車両1の速度値」を車両1外、即ち、クラウド部21に送信する。
クラウド部21の管理サーバ23は、ばね変位推定部23Aと、加速度推定部35とを備えている。ばね変位推定部23Aは、クラウド部21の送信ユニット22Bに空気ばね変位推定値ΔXcを出力し、加速度推定部35は、クラウド部21の送信ユニット22Bに車体上下加速度推定値Gcを出力する。即ち、クラウド部21の管理サーバ23は、車両1の制御装置34に、クラウド部21の送信ユニット22Bおよび車両1側の受信ユニット20Bを介して空気ばね変位推定値ΔXcおよび車体上下加速度推定値Gcを出力する。空気ばね変位推定値ΔXcおよび車体上下加速度推定値Gcは、異常診断部14のダンパ異常判定部41に入力される。
ダンパ異常判定部41には、ばね変位算出部17から空気ばね変位ΔXが入力され、クラウド部21のばね変位推定部23Aから空気ばね変位推定値ΔXcが入力される。また、ダンパ異常判定部41には、車両1内の加速度センサ32A-32Dから車体2の上下加速度の測定値である実上下加速度Grが入力され、クラウド部21の加速度推定部35から車体上下加速度推定値Gcが入力される。ダンパ異常判定部41は、空気ばね変位ΔXと空気ばね変位推定値ΔXcとを比較し、かつ、実上下加速度Grと車体上下加速度推定値Gcとを比較することにより、ダンパ31A-31Dが正常か異常かを判定する。
図15の流れ図は、制御装置34で行われる処理を示しており、図16の流れ図は、クラウド部21(管理サーバ23)で行われる処理を示している。なお、図15および図16中の各処理で、前述の第1の実施形態の図3および図4に示した処理、および、第3の実施形態の図12および図13に示した処理と同様の処理については、同じステップ番号を付して、その説明を省略する。
まず、クラウド部21(管理サーバ23)で行われる処理について、図16を参照しつつ説明する。図16のS21で「YES」と判定されると、S81に進む。S81では、鉄道車両モデルを基に空気ばね変位推定値ΔXcを演算し、かつ、鉄道車両モデルを基に車体上下加速度推定値Gcを演算する。S82では、S81で演算した空気ばね変位推定値ΔXcおよび車体上下加速度推定値Gcを車両1に送信し、エンド(リターン)する。
次に、制御装置34で行われる処理について、図15を参照しつつ説明する。図15のS4に続くS71では、クラウド部21(管理サーバ23)から車体上下加速度推定値Gcおよび空気ばね変位推定値ΔXcを受信する。即ち、S71では、図16に示す処理によりクラウド部21(管理サーバ23)で演算された空気ばね変位推定値ΔXcおよび車体上下加速度推定値Gcを受信する。S52に続くS72では、異常を判定する。この場合、S72では、ばね変位推定部23Aで演算された空気ばね変位推定値ΔXcとばね変位算出部17で算出された空気ばね変位ΔXとを比較し、かつ、加速度推定部35で演算された車体上下加速度推定値Gcと加速度センサ32A-32Dで測定された実上下加速度Grとを比較する。S72で、空気ばね変位推定値ΔXcと空気ばね変位ΔXとの差分値が閾値X1以上である、または、車体上下加速度推定値Gcと実上下加速度Grとの差分値が閾値G1以上であると判定された場合は、S9に進む。
第4の実施形態は、上述の如き制御装置34およびクラウド部21(管理サーバ23)によりダンパ31A-31Dの異常を判定するもので、その基本的作用については、第3の実施形態によるものと格別差異はない。特に、第3の実施形態によれば、空気ばね変位推定値ΔXcと車体上下加速度推定値Gcとの両方を用いて異常の判定を行うため、判定精度をより向上できる。
次に、図17ないし図19は、第5の実施形態を示している。第5の実施形態の特徴は、鉄道車両側に車速センサを設けると共に、ばね手段の上下変位の推定値と車体の上下加速度の推定値との両方を用いて異常を判定し、さらに、受信データ異常判定部を鉄道車両外(クラウド部側)に備える構成としたことにある。換言すれば、第5の実施形態は、第4の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせた構成に対応する。なお、第5の実施形態では、第4の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
第5の実施形態では、クラウド部21の管理サーバ23は、第2の実施形態と同様に、受信データ異常判定部51を有している。受信データ異常判定部51は、車両1の送信ユニット20Aから送信された情報がばね変位推定部23Aおよび加速度推定部35に入力されるのに先立って、送信ユニット20Aから送信された情報(質量変化分ΔM、位置情報、速度値)が正常な値であるか否かを判定する。即ち、受信データ異常判定部51には、車両1内の制御装置34からデータ(質量変化分ΔM、位置情報、速度値)が入力される。受信データ異常判定部51は、車両1の制御装置34からのデータを受信したときに、正しいデータを受信したか否かを判定(確認)する。受信データ異常判定部51は、正しいデータを受信したと判定した場合は、制御装置34からのデータ(質量変化分ΔM、位置情報、速度値)をばね変位推定部23Aおよび加速度推定部35に出力する。受信データ異常判定部51は、正しいデータを受信していないと判定した場合は、受信データ異常の信号を送信ユニット22Bに出力する。受信データ異常の信号は、送信ユニット22B、車両1側の受信ユニット20Bを介して制御装置34に入力される。
図18の流れ図は、制御装置34で行われる処理を示しており、図19の流れ図は、クラウド部21(管理サーバ23)で行われる処理を示している。なお、図18および図19中の各処理で、前述の第4の実施形態の図15および図16に示した処理と同様の処理については、同じステップ番号を付して、その説明を省略する。
まず、クラウド部21(管理サーバ23)で行われる処理について、図19を参照しつつ説明する。図19のS21で「YES」と判定されると、S41に進む。S41では、第2の実施形態のS41と同様に、制御装置34からのデータ(質量変化分ΔM、位置情報、速度値)が正常か否かを判定する。S41で「YES」、即ち、制御装置34からのデータが正常と判定された場合は、S81に進む。一方、S41で「NO」、即ち、制御装置34からのデータが正常でないと判定された場合は、S42に進む。S42では、車両1の制御装置34に通信異常の情報(受信データ異常の信号)を送信する。
次に、制御装置34で行われる処理について、図18を参照しつつ説明する。図18のS4に続くS31では、第2の実施形態のS31と同様に、クラウド部21(管理サーバ23)から通信異常の情報(受信データ異常の信号)を受信したか否かを判定する。S31で「NO」、即ち、通信異常の情報を受信していないと判定された場合は、S71に進む。一方、S31で「YES」、即ち、通信異常の情報を受信したと判定された場合は、S15に進む。
第5の実施形態は、上述の如き受信データ異常判定部51により通信異常を判定するもので、その基本的作用については、第4の実施形態およびに第2の実施形態よるものと格別差異はない。即ち、第5の実施形態によれば、送信ユニットから送信された情報が通信異常により正常な値でないときに、正常でない値に基づいて空気ばね変位推定値ΔXcの演算(推定)および車体上下加速度推定値Gcの演算(推定)が行われることを抑制できる。これにより、この面からも、異常の判定の精度を向上できる。
なお、第1の実施形態では、車両1の走行中にリアルタイムで常時異常判定を行う構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、車両1が予め設定した走行区間(L1とL2との間)を走行しているときに、異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。また、例えば、車両1が予め設定した走行速度(V1とV2との間)で走行しているときに、異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。また、例えば、予め設定した時間(t1とt2との間)に異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。また、例えば、空気ばね7A,7Bの圧力Pが予め設定した範囲内(P1<P<P2)であるときの推定値(空気ばね変位推定値ΔXc、車体上下加速度推定値Gc)を用いて異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。また、車両1の進行方向に応じて、例えば車両1が上り線(外回り線)を走行しているときに、または、下り線(内回り線)を走行しているときに、異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。これらのことは、第2ないし第5の実施形態および変形例についても同様である。
第1の実施形態では、診断装置12のメモリ12A(送信データ一時保存部12A1)に一時保管される圧力値Pに関する情報(即ち、送信ユニット20Aを介してクラウド部21に送信される圧力値Pに関する情報)を車体2の質量変化分ΔMとした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、メモリ装置に一時保管される圧力値に関する情報(即ち、車体側の送信ユニットから送信される圧力値に関する情報)は、空気ばねの圧力値、差分圧力、または、空気ばね反力でもよい。このことは、第2ないし第5の実施形態および変形例についても同様である。即ち、圧力値に関する情報は、圧力値そのものでもよいし、圧力値に基づいて必要な演算を行った演算値(差分圧力、空気ばね反力、質量変化分)でもよい。ばね手段変位推定装置および/または車体加速度推定装置は、送信ユニットから送信された圧力値に関する情報に基づいて必要な演算を行うことができる。
第1の実施形態では、ダンパ8A,8Bを車体2と台車3A,3Bとの間で上下方向に配置した場合、即ち、ダンパ8A,8Bが上下動ダンパの場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、緩衝器は、車体と台車との間で左右方向に配置した左右動ダンパ、車体と台車との間で前後方向(進行方向)に配置したヨーダンパ等、車体と台車との間に配置される各種の緩衝器を用いることができる。このことは、第2ないし第5の実施形態および変形例についても同様である。
第1の実施形態では、車体2と台車3A,3Bとの間に設けられるばね手段を空気ばね7A-7Dとした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ばね手段は、コイルばね等、空気ばね以外のばね手段(各種のばね、弾性部材)を用いてもよい。例えば、ばね手段がコイルばねの場合は、ばね手段に負荷される圧力値(応力値)は、ロードセンサ(歪センサ、歪ゲージ)等の圧力測定手段を用いることができる。このことは、第2ないし第5の実施形態および変形例についても同様である。
第3の実施形態では、加速度センサ32A-32Dを車体2に設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、加速度センサを台車に設けてもよい。また、加速度センサを車体と台車との両方に設ける構成としてもよい。このことは、第4および第5の実施形態についても同様である。
第1の実施形態では、車両1に位置センサ10を設け、車両1から送信ユニット20Aを介して位置情報を車両1外のクラウド部21に送信する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、クラウド部21(ばね変位推定部23A)は車両1外に配置された信号システムから位置情報を取得する構成としてよい。このことは、第2ないし第5の実施形態および変形例についても同様である。即ち、ばね手段変位推定装置および/または車体加速度推定装置は、位置情報を鉄道車両外から取得してもよい。
さらに、各実施形態および各変形例は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
以上説明した実施形態に基づく作動状態診断装置として、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、鉄道車両の車体と台車との間に配置される緩衝器の作動状態診断装置であって、前記車体と前記台車との間に設けられるばね手段に負荷される圧力値を測定し出力する圧力測定手段と、前記圧力測定手段から出力された前記ばね手段の前記圧力値を用いて前記ばね手段の上下変位を算出し出力するばね手段変位算出装置と、前記圧力測定手段から出力された前記ばね手段の前記圧力値に関する情報を一時保管するメモリ装置と、前記メモリ装置に一時保管された前記圧力値に関する情報を前記鉄道車両外に送信する送信ユニットと、前記鉄道車両外に配置され、前記鉄道車両をモデル化した鉄道車両モデルと前記鉄道車両の前記位置情報と前記送信ユニットから送信された前記ばね手段の前記圧力値に関する情報とを用いて前記ばね手段の上下変位を推定し出力するばね手段変位推定装置と、前記ばね手段変位推定装置から出力された前記ばね手段の上下変位の推定値を前記鉄道車両で受信する受信ユニットと、前記ばね手段変位算出装置から出力された前記ばね手段の上下変位の算出値と前記受信ユニットで受信された前記ばね手段の上下変位の推定値とを比較し、異常を判定する緩衝器異常判定装置と、を有する。
この第1の態様によれば、緩衝器異常判定装置は、ばね手段変位算出装置から出力されたばね手段の上下変位の算出値と受信ユニットで受信されたばね手段の上下変位の推定値とを比較し、異常を判定する。この場合、ばね手段変位算出装置は、既存の圧力測定手段により測定された圧力値を用いてばね手段の上下変位を算出することができる。また、ばね手段変位推定装置は、既存の圧力測定手段により測定された圧力値と既存の設備から取得された鉄道車両の位置情報とを用いてばね手段の上下変位を推定することができる。さらに、ばね手段変位推定装置は、位置情報から得られるその位置の軌道情報(軌道の上下変位)から鉄道車両モデルを用いてばね手段の上下変位を推定することができる。このため、膨大な正常データ(センシング情報)を準備しなくても、ばね手段の上下変位の推定値の精度を確保することができる。これにより、測定手段(センサ)の追加およびデータが膨大となることを抑制しつつ、異常の判定の精度を向上できる。しかも、ばね手段変位推定装置は、鉄道車両外に配置されているため、複数の鉄道車両のばね手段の上下変位を共通の軌道情報を用いて共通のばね手段変位推定装置により推定することもできる。これにより、例えば複数の鉄道車両のそれぞれにばね手段変位推定装置を配置する場合と比較して、軌道の保線作業等により軌道情報に変更があったときに、その軌道情報の更新作業を容易に行うことができる(鉄道車両毎に更新作業を行わなくてすむ)。
第2の態様としては、第1の態様において、前記鉄道車両には、前記鉄道車両の前記位置情報を取得し出力する位置検出手段が配置されており、前記メモリ装置には、前記圧力測定手段から出力された前記ばね手段の前記圧力値に関する情報と前記位置検出手段から出力された前記位置情報とが一時保管され、前記送信ユニットは、前記メモリ装置に一時保管された前記圧力値に関する情報と前記位置情報とを前記鉄道車両外に送信し、前記ばね手段変位推定装置は、前記鉄道車両モデルと前記送信ユニットから送信された前記ばね手段の前記圧力値に関する情報と前記位置情報とを用いて前記ばね手段の上下変位を推定する。この第2の態様によれば、ばね手段変位推定装置は、鉄道車両に配置された既存の位置検出手段により取得される位置情報を用いてその位置の軌道情報(軌道の上下変位)を得ることができる。
第3の態様としては、第1または第2の態様において、前記鉄道車両外には、前記送信ユニットから送信された情報が前記ばね手段変位推定装置に入力されるのに先立って、前記送信ユニットから送信された情報が正常な値であるか否かを判定する受信データ異常判定部をさらに有する。この第3の態様によれば、送信ユニットから送信された情報が通信異常により正常な値でないときに、正常でない値に基づいてばね手段の上下変位の推定が行われることを抑制できる。これにより、この面からも、異常の判定の精度を向上できる。
第4の態様としては、鉄道車両の車体と台車との間に配置される緩衝器の作動状態診断装置であって、前記車体の上下加速度を測定し出力する車体加速度測定手段と、前記車体と前記台車との間に設けられるばね手段に負荷される圧力値を測定し出力する圧力測定手段と、前記圧力測定手段から出力された前記ばね手段の前記圧力値に関する情報を一時保管するメモリ装置と、前記メモリ装置に一時保管された前記圧力値に関する情報を前記鉄道車両外に送信する送信ユニットと、前記鉄道車両外に配置され、前記鉄道車両をモデル化した鉄道車両モデルと前記鉄道車両の位置情報と前記送信ユニットから送信された前記ばね手段の前記圧力値に関する情報とを用いて前記車体の上下加速度を推定し出力する車体加速度推定装置と、前記車体加速度測定手段から出力された前記車体の上下加速度の測定値と受信ユニットで受信された前記車体の上下加速度の推定値とを比較し、異常を判定する緩衝器異常判定装置と、を有する。
この第4の態様によれば、緩衝器異常判定装置は、車体加速度測定手段から出力された車体の上下加速度の測定値と受信ユニットで受信された車体の上下加速度の推定値とを比較し、異常を判定する。この場合、車体の上下加速度の測定値は、既存の車体加速度測定手段から出力された測定値を用いることができる。また、車体加速度推定装置は、既存の圧力測定手段により測定された圧力値と既存の設備から取得された鉄道車両の位置情報とを用いて車体の上下加速度を推定することができる。さらに、車体加速度推定装置は、位置情報から得られるその位置の軌道情報(軌道の上下変位)から鉄道車両モデルを用いて車体の上下加速度を推定することができる。このため、膨大な正常データ(センシング情報)を準備しなくても、車体の上下加速度の推定値の精度を確保することができる。これにより、測定手段(センサ)の追加およびデータが膨大となることを抑制しつつ、異常の判定の精度を向上できる。しかも、車体加速度推定装置は、鉄道車両外に配置されているため、複数の鉄道車両の上下加速度を共通の軌道情報を用いて共通の車体加速度推定装置により推定することもできる。これにより、例えば複数の鉄道車両のそれぞれに車体加速度推定装置を配置する場合と比較して、軌道の保線作業等により軌道情報に変更があったときに、その軌道情報の更新作業を容易に行うことができる(鉄道車両毎に更新作業を行わなくてすむ)。
第5の態様としては、第4の態様において、前記鉄道車両には、前記鉄道車両の前記位置情報を取得し出力する位置検出手段が配置されており、前記メモリ装置には、前記圧力測定手段から出力された前記ばね手段の前記圧力値に関する情報と前記位置検出手段から出力された前記位置情報とが一時保管され、前記送信ユニットは、前記メモリ装置に一時保管された前記圧力値に関する情報と前記位置情報とを前記鉄道車両外に送信し、前記車体加速度推定装置は、前記鉄道車両モデルと前記送信ユニットから送信された前記ばね手段の前記圧力値に関する情報と前記位置情報とを用いて前記車体の上下加速度を推定する。この第5の態様によれば、車体加速度推定装置は、鉄道車両に配置された既存の位置検出手段により取得される位置情報を用いてその位置の軌道情報(軌道の上下変位)を得ることができる。
第6の態様としては、第4または第5の態様において、前記鉄道車両外には、前記送信ユニットから送信された情報が前記ばね手段変位推定装置に入力されるのに先立って、前記送信ユニットから送信された情報が正常な値であるか否かを判定する受信データ異常判定部をさらに有する。この第6の態様によれば、送信ユニットから送信された情報が通信異常により正常な値でないときに、正常でない値に基づいて車体の上下加速度の推定が行われることを抑制できる。これにより、この面からも、異常の判定の精度を向上できる。