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JP7204041B2 - 作動状態診断装置 - Google Patents

作動状態診断装置 Download PDF

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JP7204041B2
JP7204041B2 JP2022500372A JP2022500372A JP7204041B2 JP 7204041 B2 JP7204041 B2 JP 7204041B2 JP 2022500372 A JP2022500372 A JP 2022500372A JP 2022500372 A JP2022500372 A JP 2022500372A JP 7204041 B2 JP7204041 B2 JP 7204041B2
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Description

本開示は、例えば、鉄道車両の車体と台車との間に配置される緩衝器の診断を行う作動状態診断装置に関する。
鉄道車両の乗り心地の向上のために、台車と車体との間に緩衝器を配置した車両が知られている。例えば、特許文献1には、鉄道車両の車体と台車との間に緩衝器としてのヨーダンパを配置し、台車の振動を抑制しつつ車体の曲げ振動を抑制する技術が記載されている。
緩衝器は、乗員・乗客の乗り心地の向上に寄与するため、鉄道車両の運転前または運転中に異常を診断できることが望まれる。例えば、特許文献2には、台車の振動と輪軸の振動との両方を検出し、台車の振動値と輪軸の振動値とに基づいて軌道異常と台車異常とを検出する技術が記載されている。特許文献3には、鉄道車両を停止状態で加振して異常を診断する技術が記載されている。特許文献4には、上下方向の加速度とピッチング方向の加速度とを検出し、上下並進とピッチングとの位相差から緩衝器の異常を検出する技術が記載されている。
特開2014-198522号公報 特開2004-170080号公報(特許第3779258号公報) 特開2019-27874号公報 特開2012-111480号公報(特許第5662298号公報)
従来技術の場合、緩衝器の異常を高精度に判定するためには、既存のセンサだけでなく追加のセンサが必要になる可能性がある。
本発明の一実施形態の目的は、センサ(測定手段)の追加を抑制しつつ異常の判定の精度を向上できる作動状態診断装置を提供することにある。
本発明の一実施形態による作動状態診断装置は、鉄道車両の車体と台車との間に配置される緩衝器の作動状態診断装置であって、前記台車の位置情報を取得し出力する位置検出部と、前記車体と前記台車との間に設けられるばね機構に負荷される圧力値を測定し出力する圧力測定部と、前記圧力測定部から出力された前記ばね機構の前記圧力値を用いて、前記ばね機構の上下変位を算出し出力するばね機構変位算出部と、前記鉄道車両に配置され、前記鉄道車両をモデル化した鉄道車両モデルと前記位置情報と前記ばね機構の前記圧力値とを用いて、前記ばね機構の上下変位を推定し出力するばね機構変位推定部と、前記ばね機構変位算出部から出力された前記ばね機構の上下変位の算出値と前記ばね機構変位推定部から出力された前記ばね機構の上下変位の推定値とを比較し、前記緩衝器の異常を判定する緩衝器異常判定部と、を有する。
また、本発明の一実施形態による作動状態診断装置は、鉄道車両の車体と台車との間に配置される緩衝器の作動状態診断装置であって、前記車体の上下加速度を測定し出力する車体加速度測定部と、前記台車の位置情報を取得し出力する位置検出部と、前記車体と前記台車との間に設けられるばね機構に負荷される圧力値を測定し出力する圧力測定部と、前記鉄道車両に配置され、前記鉄道車両をモデル化した鉄道車両モデルと前記位置情報と前記ばね機構の前記圧力値とを用いて、前記車体の上下加速度を推定し出力する車体加速度推定部と、前記車体加速度測定部から出力された前記車体の上下加速度の測定値と前記車体加速度推定部から出力された前記車体の上下加速度の推定値とを比較し、前記緩衝器の異常を判定する緩衝器異常判定部と、を有する。
本発明の一実施形態によれば、測定手段(センサ)の追加を抑制しつつ異常の判定の精度を向上できる。
第1の実施形態による作動状態診断装置および緩衝器(コンベンショナルダンパ)が搭載された鉄道車両を概略的に示す側面図。 図1中の診断装置を示すブロック図。 図1中の診断装置の制御処理を示す流れ図。 第1の変形例による診断装置の制御処理を示す流れ図。 第2の変形例による診断装置の制御処理を示す流れ図。 第3の変形例による診断装置の制御処理を示す流れ図。 第4の変形例による診断装置の制御処理を示す流れ図。 第5の変形例による診断装置の制御処理を示す流れ図。 第6の変形例による診断装置の制御処理を示す流れ図。 第2の実施形態による作動状態診断装置および緩衝器(セミアクティブダンパ)が搭載された鉄道車両を概略的に示す側面図。 図10中の車体、台車、緩衝器、加速度センサ等の位置関係を概略的に示す平面図。 図10中の制御装置を示すブロック図。 図10中の制御装置の制御処理を示す流れ図。 第7の変形例による制御装置の制御処理を示す流れ図。 第8の変形例による制御装置の制御処理を示す流れ図。 第9の変形例による制御装置の制御処理を示す流れ図。 第10の変形例による制御装置の制御処理を示す流れ図。 第11の変形例による制御装置の制御処理を示す流れ図。 第12の変形例による制御装置の制御処理を示す流れ図。
以下、実施形態による作動状態診断装置を、電車、気動車、客車等の鉄道車両に搭載した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ説明する。なお、図面の流れ図は、各ステップに「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。また、図1、図10および図11では、図面の左側(車両の長さ方向の一側)を鉄道車両の進行方向の前側とし、図面の右側(車両の長さ方向の他側)を鉄道車両の進行方向の後側として説明する。しかし、図面の右側を前側とし、図面の左側を後側としてもよい。
図1ないし図3は、第1の実施形態を示している。図1において、鉄道車両1(以下、車両1という)は、例えば乗客、乗務員等の乗員が乗車する車体2と、車体2の下側に設けられた前側の台車3Aおよび後側の台車3Bとを備えている。これら2つの台車3A,3Bは、車体2の前側(車体2の長さ方向の一側で図1の左側)と後側(車体2の長さ方向の他側で図1の右側)とに離間して配置されている。これにより、車両1の車体2は、一対の台車3A,3B上に設置されている。なお、図1では、図面が複雑になることを避けるため、1両の車両1、即ち、1両編成の列車を示している。しかし、一般的には、複数の車両1を連結した列車、即ち、複数の車両1により編成された列車で運行される。
台車3A,3Bには、車軸5,5の長さ方向の両端側(即ち、車体2の幅方向の両端側)にそれぞれ車輪4,4を設けてなる輪軸6,6が、前後方向に離間してそれぞれ2個ずつ取付けられている。これにより、各台車3A,3Bには、それぞれ4個の車輪4,4が設けられている。車両1は、各車輪4,4が左右のレールR(図1に一方のみ図示)上を回転することにより、レールRに沿って走行する。なお、車体2の幅方向となる左右方向は、進行方向に対面した状態を基準としている。即ち、左右方向は、車体2の幅方向(車軸5,5の軸方向)に対応し、例えば、図1では紙面に直交する表裏方向の表側を左とし、裏側を右としている。
車両1の車体2と各台車3A,3Bとの間には、それぞれの台車3A,3B上で車体2を弾性的に支持する複数の空気ばね7A,7Bと、各空気ばね7A,7Bと並列関係をなすように配置された複数のダンパ8A,8Bとが設けられている。空気ばね7A,7Bは、「枕ばね」または「懸架ばね」とも呼ばれ、「ばね上質量」となる車体2等と「ばね間質量」となる台車3A,3B等との間に設けられる「二次ばね」に対応する。即ち、空気ばね7A,7Bは、車体2と台車3A,3Bとの間に設けられるばね機構を構成している。なお、「一次ばね」は、台車3A,3Bに設けられる軸ばね(図示せず)、即ち、「ばね下質量」となる車輪4,4(輪軸6,6)と「ばね間質量」となる台車3A,3Bの台車枠との間に設けられる軸ばねに対応する。空気ばね7A,7Bは、例えば、各台車3A,3Bの左右両側にそれぞれ1個ずつ設けられている。即ち、空気ばね7A,7Bは、例えば、1台車当たり2個、1車両当り4個設けられている。
緩衝器としてのダンパ8A,8Bは、車両1の車体2と台車3A,3Bとの間に配置されている。ダンパ8A,8Bは、例えば、ストローク速度によって減衰力が変化するコンベンショナルダンパ(パッシブダンパ)として構成された油圧緩衝器である。ダンパ8A,8Bは、空気ばね7A,7Bと共に、車体2と台車3A,3Bとの間で上下方向の振動を緩衝(減衰)するサスペンションを構成している。即ち、上下動ダンパとなるダンパ8A,8Bは、台車3A,3Bに対する車体2の上下方向の振動に対して、振動を低減させるような減衰力を発生する。これにより、ダンパ8A,8Bは、車体2の上下方向の振動を低減(抑制)する。ダンパ8A,8Bは、例えば、空気ばね7A,7Bに対してそれぞれ並列に配置されており、各台車3A,3Bの左右両側にそれぞれ1個ずつ設けられている。即ち、ダンパ8A,8Bは、1台車当たり2個、1車両当り4個設けられている。
圧力センサ9A,9Bは、空気ばね7A,7Bにそれぞれ設けられている。圧力センサ9A,9Bは、空気ばね7A,7Bの圧力(内圧)を検出する。圧力センサ9A,9Bで測定された圧力値は、例えば、空気ばね7A,7Bの制御に用いられる。このため、圧力センサ9A,9Bは、図示しない制御装置、例えば、空気ばね7A,7Bの制御用の制御装置または上位の制御装置に接続されている。また、圧力センサ9A,9Bで測定された圧力値は、後述するようにダンパ8A,8Bの作動状態の診断に用いられる。このため、圧力センサ9A,9Bは、図示しない制御装置および通信回線14を介して診断装置13に接続されている。即ち、圧力センサ9A,9Bで測定された圧力に対応する信号は、図示しない制御装置および通信回線14を介して診断装置13に出力される。これにより、圧力センサ9A,9Bは、空気ばね7A,7Bに負荷される圧力値を測定(検出)し、その圧力値に対応する信号を診断装置13に出力する圧力測定部を構成している。
図2に示すように、車両1には、圧力センサ9A,9Bの他、車速センサ10および位置センサ11が設けられている。車速センサ10は、車両1の走行速度(車速)を検出する。車速センサ10は、図示しない制御装置、例えば、上位の制御装置と接続されている。後述するように、車速センサ10で測定された速度値は、ダンパ8A,8Bの作動状態の診断に用いられる。このため、車速センサ10は、図示しない制御装置および通信回線14を介して診断装置13に接続されている。即ち、車速センサ10で測定された車速に対応する信号は、図示しない制御装置および通信回線14を介して診断装置13に出力される。これにより、車速センサ10は、車両1の速度値を測定(検出)し、その速度値に対応する信号を診断装置13に出力する速度測定部を構成している。
位置センサ11は、車両1の走行位置(現在位置)を取得する。位置センサ11は、例えば、GPS等の衛星測位システム(SPNT:Satellite positioning navigation and timing system)の航法衛星からの信号を受信する受信機を含んで構成されている。位置センサ11は、図示しない制御装置、例えば、上位の制御装置と接続されている。後述するように、位置センサ11で取得された位置情報は、ダンパ8A,8Bの作動状態の診断に用いられる。このため、位置センサ11は、図示しない制御装置および通信回線14を介して診断装置13に接続されている。即ち、位置センサ11で取得された位置情報に対応する信号は、図示しない制御装置および通信回線14を介して診断装置13に出力される。
これにより、位置センサ11は、台車3A,3Bの位置情報を車両1の走行位置として取得し、その位置に対応する信号を診断装置13に出力する位置検出部を構成している。なお、車両1の走行位置(台車3A,3Bの位置)は、位置センサ11に代えて、例えば、自動列車停止装置、自動列車制御装置、信号保安装置等として用いられる鉄道信号システムから取得してもよい。即ち、位置検出部は、鉄道信号システムにより構成してもよい。同様に、速度測定部も、鉄道信号システムで車速を検出できる場合は、鉄道信号システムにより構成してもよい。これらの場合は、車両1に搭載された鉄道信号システム用の制御装置が位置検出部および/または速度測定部に相当する。
ところで、鉄道車両の乗り心地向上のため、台車と車体との間に制振装置が配置されている(例えば、特許文献1-4)。制振装置は、上下方向または左右方向の振動抑制を狙ったものであり、例えば、振動状況に応じて減衰力を切換える減衰力調整式緩衝器(セミアクティブダンパ)を用いたもの、能動的に制御力を発生して振動を抑える制御アクチュエータ(フルアクティブダンパ)を用いたもの等がある。このような制振装置は、乗員・乗客の乗り心地の向上に寄与するため、鉄道車両の運転前または運転中に異常を診断できることが望まれる。
即ち、鉄道車両の高速化や高付加価値化に伴い、車体振動を低減させる技術が開発されている。その中で、油圧を用いた減衰力調整式緩衝器(可変減衰型緩衝器)の異常(故障)を診断する技術が知られている。鉄道車両の異常を診断する場合、軌道の異常、台車の異常、緩衝器の異常を切り分けることが好ましい。例えば、特許文献2には、軌道と台車の異常を検出する技術が記載されている。具体的には、複数の台車に設けられた加速度センサにより台車の加速度(振動値)を検出し、複数の輪軸に設けられた加速度センサにより輪軸の加速度(振動値)を検出し、軌道異常と台車異常とを検出する。
特許文献3には、鉄道車両を停止状態で加振して車両の各機器(台車枠、輪軸、アクチュエータ等)の異常を診断する技術が記載されている。さらに、特許文献4には、上下方向の加速度とピッチング方向の加速度とを検出し、上下並進とピッチングとの位相差から緩衝器の異常を検出する技術が記載されている。しかし、台車と車体との間に設けられた緩衝器の異常を高精度に検出するためには、既存のセンサだけでなく、例えば輪軸の振動を検出するセンサ等の追加のセンサが必要になる可能性がある。これにより、追加コストが発生することに加えて、システム規模が大きくなる可能性がある。
これに対して、第1の実施形態の作動状態診断装置12は、追加のセンサを必要とせずに、既存のセンサを用いて高精度に異常を判定(診断)することができる。以下、第1の実施形態の作動状態診断装置12について説明する。
作動状態診断装置12は、コンベンショナルダンパであるダンパ8A,8Bの作動状態を診断する。作動状態診断装置12は、前述の圧力センサ9A,9Bと、車速センサ10と、位置センサ11とに加えて、診断の演算処理を行う演算処理装置としての診断装置13を備えている。診断装置13は、車両1に設けられている。診断装置13には、圧力センサ9A,9Bからの空気ばね7A,7Bの圧力、車速センサ10からの車両1の走行速度(車速)、および、位置センサ11からの車両1の走行位置(現在位置)が、通信回線14を介してリアルタイムで入力される。このために、診断装置13は、上位の制御装置(図示せず)と通信回線14を介して接続されている。これにより、診断装置13には、通信回線14を介して車両1の車両情報(即ち、空気ばね7A,7Bの圧力、車両1の走行速度、走行位置を含む車両情報)が上位信号として入力される。なお、圧力センサ9A,9Bと車速センサ10と位置センサ11とを診断装置13に直接接続する構成としてもよい。
診断装置13は、車両1の予め決められた位置(例えば、車体2のほぼ中央となる位置等)に設置されている。診断装置13は、例えばマイクロコンピュータを含んで構成されている。診断装置13は、ROM,RAM,不揮発性メモリ等からなる記憶部としてのメモリ13Aを有している。メモリ13Aには、例えば、後述の図3に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、ダンパ8A,8Bの作動状態の診断に用いる処理プログラムが格納(記憶)されている。また、メモリ13Aには、作動状態の診断に用いる基準値(例えば、基準圧力)、判定値(判定基準、閾値)に加えて、特許文献1に記載されているような鉄道車両の状態の算出に用いる状態方程式等の車両モデルも格納されている。
また、メモリ13Aには、空気ばね7A,7Bの圧力、車両1の走行速度、走行位置がリアルタイムで格納される。さらに、メモリ13Aには、走行位置からその走行位置の軌道(線路)の上下変位(高さ位置)を得るための情報(データ)、即ち、走行位置とこの走行位置に対応する左右の軌道の上下変位との関係がマップ(左右各輪の軌道MAP)として格納されている。この情報(軌道情報)は、例えば軌道の点検作業、保線作業、変更作業等が行われたときに最新の情報に書き換えることができる。
診断装置13は、車両1の走行中に、圧力センサ9A,9Bからの圧力値の信号と、車速センサ10からの車速の信号と、位置センサ11からの走行位置の信号とをリアルタイムで取得する。なお、車速および/または走行位置については、鉄道信号システムからの車速の信号および/または走行位置の信号を用いてもよい。診断装置13は、これらの信号に基づいてダンパ8A,8Bの異常を判定する。具体的には、診断装置13は、空気ばね7A,7Bの圧力値と車両1の車速と走行位置とに基づいて内部で演算を行い、ダンパ8A,8Bの作動状態を診断する処理を行う。
この場合、診断装置13は、空気ばね7A,7Bの圧力値から空気ばね7A,7Bの上下変位を算出する。これに加えて、診断装置13は、「位置情報から得られる軌道の上下変位」と「空気ばね7A,7Bの圧力値から算出される空気ばね反力の質量変化分」とから「鉄道車両モデル」を用いて空気ばね7A,7Bの上下変位を推定する。そして、診断装置13は、空気ばね7A,7Bの上下変位の算出値と推定値とを比較し、ダンパ8A,8Bの異常を判定する。即ち、第1の実施形態では、車両1内の各種機器に配信される車両1の走行速度、現在位置、空気ばね7A,7Bの圧力センサ値を基に、車両1の車両モデルを用いて空気ばね7A,7Bの変位を推定値(変位推定値)として演算する。これと共に、空気ばね7A,7Bの圧力センサ値と受圧面積とばね定数とから、空気ばね7A,7Bの変位を算出値(変位算出値)として演算する。そして、これら推定値と算出値とを比較し、ダンパ8A,8Bの異常を判定する。
このために、図2に示すように、診断装置13は、基準圧力出力部15と、減算部16と、ばね機構変位算出部を構成するばね変位算出部17と、ばね反力算出部18と、質量変化分算出部19と、前車軸位置の軌道上下変位算出部20と、遅れ時間算出部21と、後車軸位置の軌道上下変位算出部22と、ばね機構変位推定部としてのばね変位推定部23と、緩衝器異常判定部としてのダンパ異常判定部24とを備えている。
基準圧力出力部15は、メモリ13Aに予め記憶された空気ばね7A,7Bの基準圧力P0[Pa]を減算部16に出力する。減算部16には、圧力センサ9A,9Bから空気ばね7A,7Bの圧力(例えば、4個の空気ばね7A,7Bのそれぞれの圧力)が入力され、基準圧力出力部15から基準圧力(例えば、4個の空気ばね7A,7Bのそれぞれの基準圧力)が入力される。減算部16は、圧力センサ9A,9Bで測定(検出)された空気ばね7A,7Bの圧力P[Pa](即ち、リアルタイムの圧力P)から基準圧力P0を減算することにより、基準値である基準圧力P0からの差分圧力ΔPを求める。即ち、減算部16は、次の数1式の演算を行う。
Figure 0007204041000001
減算部16は、算出した差分圧力ΔP(例えば、4個の空気ばね7A,7Bの差分圧力ΔP)をばね変位算出部17とばね反力算出部18とに出力する。ばね変位算出部17には、減算部16から差分圧力ΔPが入力される。ばね変位算出部17は、圧力センサ9A,9Bから出力された空気ばね7A,7Bの圧力値(より具体的には、差分圧力ΔP)を用いて空気ばね7A,7Bの上下変位を算出し、その算出値をダンパ異常判定部24に出力する。この場合、ばね変位算出部17は、空気ばね7A,7Bの差分圧力ΔPと受圧面積A[m2]との乗算値を空気ばね定数K[N/m]で除算することにより空気ばね変位ΔX[m]を求める。即ち、ばね変位算出部17は、次の数2式の演算を行う。
Figure 0007204041000002
ばね変位算出部17は、算出した空気ばね変位ΔX(例えば、4個の空気ばね7A,7Bのそれぞれの空気ばね変位ΔX)を、空気ばね7A,7Bの上下変位の算出値としてダンパ異常判定部24に出力する。ばね反力算出部18には、減算部16から差分圧力ΔPが入力される。ばね反力算出部18は、圧力センサ9A,9Bから出力された空気ばね7A,7Bの圧力値(より具体的には、差分圧力ΔP)を用いて空気ばね7A,7Bの上下方向の反力を算出し、その算出値を質量変化分算出部19に出力する。この場合、ばね反力算出部18は、差分圧力ΔPと受圧面積Aとを乗算することにより空気ばね反力ΔF[N]を求める。即ち、ばね反力算出部18は、次の数3式の演算を行う。
Figure 0007204041000003
ばね反力算出部18は、算出した空気ばね反力ΔF(例えば、4個の空気ばね7A,7Bのそれぞれの空気ばね反力ΔF)を、空気ばね7A,7Bの圧力値Pに関する第1情報として質量変化分算出部19に出力する。質量変化分算出部19には、ばね反力算出部18から空気ばね反力ΔFが入力される。質量変化分算出部19は、ばね反力算出部18から出力された空気ばね7A,7Bの圧力値Pに関する第1情報(空気ばね反力ΔF)を用いて質量変化分ΔMを算出し、その算出値をばね変位推定部23に出力する。この場合、質量変化分算出部19は、空気ばね反力ΔFを重力加速度gで除算することにより基準値からの車体2の質量変化分ΔMを求める。即ち、質量変化分算出部19は、次の数4式の演算を行う。
Figure 0007204041000004
質量変化分算出部19は、算出した質量変化分ΔM(例えば、4個の空気ばね7A,7Bのそれぞれの空気ばねの質量変化分ΔM)を、空気ばね7A,7Bの圧力値Pに関する第2情報としてばね変位推定部23に出力する。軌道上下変位算出部20には、位置センサ11から出力された車両1の現在位置Lが入力される。軌道上下変位算出部20は、車両1の現在位置Lからその位置の軌道の上下変位を求める。具体的には、軌道上下変位算出部20は、車両1の現在位置Lから、診断装置13のメモリ13A内に格納されている左右各輪(車輪4)の軌道MAP(軌道情報)に基づいて、前車軸位置(例えば、進行方向の前側の台車3Aの位置)の軌道の上下変位Sf(左前軌道上下変位Sfl、右前軌道上下変位Sfr)を取得する。軌道上下変位算出部20は、取得した前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)を、後車軸位置(例えば、進行方向の後側の台車3Bの位置)の軌道の上下変位Sr(左後軌道上下変位Srl、右後軌道上下変位Srr)を算出する軌道上下変位算出部22に出力する。また、軌道上下変位算出部20は、前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)を、ばね変位推定部23に出力する。
ここで、軌道上下変位算出部20は、軌道MAP(軌道情報)を呼び出すときに、車両1が走行する路線が単線であれば、データ(情報)をそのまま読み込むことができる。しかし、軌道上下変位算出部20は、路線が複線であれば、現在位置Lを微分して電車の進行方向を演算し、進行方向によって軌道情報を上り線と下り線とで分けることが好ましい。即ち、メモリ13Aには、上り線の軌道情報と下り線の軌道情報とを格納し、そのときの進行方向に応じた軌道情報を用いることが好ましい。この理由は、車両1の軌道は、上り線と下り線とで完全に同一でなく、例えば、上り線と下り線とで分岐路の位置や構造が異なる場合があるためである。さらに、列車の種別によっては、例えば、同じ上り線でも、待避線を通る場合と通過線を通る場合とがあるため、位置情報と速度とから普通列車か優等列車(快速、急行、準急、特急)かを切り分け、それに応じた軌道情報をメモリ13Aに格納してもよい。
遅れ時間算出部21には、車速センサ10で測定された車両1の走行速度V[m/s](即ち、リアルタイムの走行速度V)が入力される。遅れ時間算出部21は、走行速度Vと車両1の車軸間距離D[m](例えば、前側の台車3Aと後側の台車3Bとの間の距離)とから前車軸位置と後車軸位置との間の遅れ時間τを求める。即ち、遅れ時間算出部21は、車両1の車軸間距離D[m]を走行速度Vで除算することにより遅れ時間τを求める。遅れ時間算出部21は、求めた遅れ時間τを後車軸位置の軌道上下変位算出部22に出力する。
後車軸位置の軌道上下変位算出部22には、前車軸位置の軌道上下変位算出部20から前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)が入力され、遅れ時間算出部21から遅れ時間τが入力される。後車軸位置の軌道上下変位算出部22は、前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)と遅れ時間τとから後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)を算出する。軌道上下変位算出部22は、算出した後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)をばね変位推定部23に出力する。
ばね変位推定部23は、ばね変位算出部17、ダンパ異常判定部24等と共に、車両1に配置されている。ばね変位推定部23には、質量変化分算出部19から「車体2の質量変化分ΔM」が入力され、軌道上下変位算出部20から「前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)」が入力され、軌道上下変位算出部22から「後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)」が入力される。ばね変位推定部23は、車体2の質量変化分ΔMと前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)と後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)を入力とし、車両モデルにて空気ばね7A,7Bの上下変位を演算により推定する。ばね変位推定部23、その推定値を空気ばね変位推定値ΔXc(例えば、4個の空気ばね7A,7Bのそれぞれの空気ばね変位推定値ΔXc)としてダンパ異常判定部24に出力する。
即ち、ばね変位推定部23は、「車両1をモデル化した鉄道車両モデル」と「位置センサ11から出力された位置情報(より具体的には、位置情報から得られる軌道の上下変位Sf,Sr)」と「空気ばね7A,7Bの圧力値P(より具体的には、圧力値Pから算出される質量変化分ΔM)」とを用いて空気ばね7A,7Bの上下変位を推定し、ダンパ異常判定部24に出力する。より詳しくは、ばね変位推定部23は、「鉄道車両モデル」と「車速センサ10から出力された車両1の速度値と位置情報とから得られる軌道の上下変位Sf、Sr」と「圧力値Pに関する第2情報(質量変化分ΔM)」とから、空気ばね7A,7Bの上下変位を演算により推定する。ばね変位推定部23は、推定された空気ばね7A,7Bの上下変位、即ち、空気ばね7A,7Bの上下変位の推定値である空気ばね変位推定値ΔXcを、ダンパ異常判定部24に出力する。
ここで、鉄道車両モデルは、例えば、特許文献1に記載されたような「車両モデル」を用いることができる。即ち、ばね変位推定部23は、特許文献1の段落[0036]以降および図面の図3に記載されたような鉄道車両モデル(状態方程式)を用いて空気ばね7A,7Bの上下変位を推定(空気ばね変位推定値ΔXcを演算)することができる。なお、ばね変位推定部23は、特許文献1以外の鉄道車両モデル(状態方程式)を用いてもよい。例えば、空気ばね7A,7Bの上下変位の推定値をより精度よく求めることができる車両モデル(状態方程式)、換言すれば、車両1の構造により対応した車両モデル(状態方程式)を用いることができる。
ダンパ異常判定部24には、ばね変位算出部17から空気ばね変位ΔXが入力され、ばね変位推定部23から空気ばね変位推定値ΔXcが入力される。ダンパ異常判定部24は、空気ばね変位ΔXと空気ばね変位推定値ΔXcとを比較し、ダンパ8A,8Bが正常か異常かを判定する。即ち、ダンパ異常判定部24は、ばね変位算出部17から出力された空気ばね7A,7Bの上下変位の算出値である空気ばね変位ΔXと、ばね変位推定部23から出力された空気ばね7A,7Bの上下変位の推定値である空気ばね変位推定値ΔXcとを比較し、異常を判定する。ダンパ異常判定部24は、例えば、空気ばね変位ΔXと空気ばね変位推定値ΔXcとの差分値が、予め設定された閾値X1以上である場合に、ダンパ8A,8Bが異常であると判定することができる。閾値X1は、ダンパ8A,8Bが正常か異常かを判定するための判定基準となる閾値であり、メモリ13Aに予め記憶しておく。閾値X1は、例えば、計算、実験、シミュレーション等により予め求めることができ、精度のよい判定を行うことができる値として設定する。ダンパ異常判定部24は、ダンパ8A,8Bが正常であるか否かの判定結果、即ち、上下動ダンパ異常検出結果を、診断装置13の診断情報として上位の制御装置に出力(通知)する。これにより、上位の制御装置は、上下動ダンパ異常検出結果(ダンパ8A,8Bが正常であるか否か)を取得することができる。上位の制御装置は、例えば、異常である旨の判定結果を取得した場合、車両1の運転室に設けられたモニタ等に警告の表示をすることにより運転手に報知する。
第1の実施形態による車両1および車両1に搭載された作動状態診断装置12は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
車両1は、レールR(軌道)に沿って、例えば図1の左側に向けて走行する。車両1が走行しているときに、例えばロール(横揺れ)またはピッチ(前後方向の揺れ)等の振動が発生すると、ダンパ8A,8Bは、このときの上,下方向の振動を低減させるような減衰力を発生する。これにより、車体2の上下方向の振動を低減(抑制)することができる。また、車両1の走行中、診断装置13には、上位の制御装置から通信回線14を介して車両1の車両情報、即ち、空気ばね7A,7Bの圧力値P、車両1の現在位置Lおよび走行速度Vが上位信号として入力される。診断装置13は、リアルタイムで取得した圧力値Pと現在位置Lと走行速度Vとに基づいて、ダンパ8A,8Bの作動状態を診断する。即ち、診断装置13は、車両1の走行中にダンパ8A,8Bの異常を判定する。
図3の流れ図は、診断装置13で行われる診断処理(異常の判定処理)を示している。図3の処理は、診断装置13が起動した後、所定の制御周期(例えば、10msec)で繰り返し実行される。
図3の処理が開始されると、診断装置13は、S1で、上位信号から情報を取得する。即ち、S1では、図示しない上位の制御装置から通信回線14を介して車両1の車両情報、具体的には、車両1の位置情報(現在位置L)、車両1の速度値(走行速度V)、空気ばね7A,7Bの内圧である圧力値Pを取得する。S2では、S1で取得した車両情報(現在位置L、走行速度V、圧力値P)から「前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)」と「後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)」と「質量変化分ΔM」とを求め、鉄道車両モデルを基に空気ばね変位推定値ΔXcを演算する。S3では、S1で取得した車両情報(圧力値P)から空気ばね変位ΔXを演算する。
S4では、ダンパ8A,8Bが正常であるか否かを判定する。この場合、S4では、S2で演算された空気ばね変位推定値ΔXcとS3で演算した空気ばね変位ΔXとを比較する。即ち、S4では、例えば、空気ばね変位推定値ΔXcと空気ばね変位ΔXとの差分値が閾値X1以上であるか否かを判定する。S4で「NO」、即ち、空気ばね変位推定値ΔXcと空気ばね変位ΔXとの差分値が閾値X1よりも小さいと判定された場合は、S5に進む。一方、S4で「YES」、即ち、空気ばね変位推定値ΔXcと空気ばね変位ΔXとの差分値が閾値X1以上であると判定された場合は、S7に進む。
S5では、ダンパ8A,8Bが正常であると判定し、S6に進む。S6では、ダンパ異常判定部24から診断情報として「ダンパ正常」の信号を上位の制御装置に出力(通知)し、エンド(リターン)する。即ち、エンドを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。これに対して、S7では、ダンパ8A,8Bが異常であると判定し、S8に進む。S8では、ダンパ異常判定部24から診断情報として「ダンパ異常」の信号を上位の制御装置に出力(通知)し、エンド(リターン)する。なお、S6の「ダンパ正常」の通知は、運転中の通知と兼ねてもよく、省略してもよい。即ち、ダンパ異常判定部24は、ダンパ8A,8Bが異常であると判定した場合のみ、診断情報として「ダンパ異常」の信号を上位の制御装置に出力する構成としてもよい。
なお、S4の処理、即ち、ダンパ異常判定部24で空気ばね変位ΔXと空気ばね変位推定値ΔXcとを比較するときは、リアルタイムで常時比較してもよく、また、予め設定した時間(規定時間)内の平均値を比較してもよい。さらに、ダンパ異常判定部24は、空気ばね変位ΔXと空気ばね変位推定値ΔXcとの差の積算値が規定値以上になった場合に、異常と判定してもよい。即ち、異常判定(作動状態の診断)に関する数値処理については、上述した処理に限らない。
また、例えば、S4で全ての空気ばね7A,7Bの空気ばね変位推定値ΔXcと空気ばね変位ΔXとの差分値が閾値X1以上であると判定された場合を考える。この場合は、ダンパ8A,8Bの全て(4本)が同時に異常状態になったとも考えられるが、このような異常状態になる可能性は低い。そこで、このような場合には、軌道異常と判定してもよい。例えば、このような判定を行う処理を、図3のS4の処理の後に加えてもよい。さらに、ダンパ異常判定部24は、空気ばね変位ΔXと空気ばね変位推定値ΔXcとの差分値が閾値X1以上と判定されたときに、例えば、異常判定する区間を長く取り、走行路線中の特定区間(短い区間)のみ異常(差分値が閾値X1以上)の場合は軌道異常と判定し、走行路線中の全体にわたり異常(差分値が閾値X1以上)の場合はダンパ異常と判定してもよい。即ち、軌道異常とダンパ異常との切り分けを行ってもよい。いずれにしても、第1の実施形態では、車両1が走行しているときに、上位信号として車両1に常時流れている情報に基づいて、ダンパ8A,8Bの異常判定(作動状態診断)をリアルタイムで高精度に行うことができる。
以上のように、第1の実施形態によれば、「空気ばね7A,7Bの上下変位の算出値である空気ばね変位ΔX」と「空気ばね7A,7Bの上下変位の推定値である空気ばね変位推定値ΔXc」とを比較し、異常を判定する。この場合、ばね変位算出部17は、既存の圧力センサ9A,9Bにより測定された圧力値Pを用いて空気ばね変位ΔXを算出できる。また、ばね変位推定部23は、既存の圧力センサ9A,9Bにより測定された圧力値Pと既存の位置センサ11により取得される位置情報とを用いて空気ばね変位推定値ΔXcを推定することができる。さらに、ばね変位推定部23は、位置情報から得られるその位置の軌道の情報(軌道の上下変位Sf,Sr)から鉄道車両モデルを用いて空気ばね変位推定値ΔXcを推定することができるため、この推定の精度を向上できる。これにより、追加のセンサが必要になることを抑制しつつ異常の判定の精度を向上できる。
第1の実施形態によれば、ばね変位推定部23は、「鉄道車両モデル」と「車速センサ10から出力された速度値と既存の位置センサ11により取得される位置情報とから得られる軌道の上下変位Sf,Sr」と「圧力値Pに関する情報である車体2の質量変化分ΔM」とから空気ばね変位推定値ΔXcを推定する。このため、ばね変位推定部23は、進行方向前側の車軸(前側の台車3A)に対応する位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)と進行方向後側の車軸(後側の台車3B)に対応する位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)とを用いて空気ばね変位推定値ΔXcを推定できる。これにより、ばね変位推定部23の推定精度をより向上できる。
なお、第1の実施形態では、車速センサ10から出力された速度値(走行速度V)を用いて、進行方向後側の車軸(後側の台車3B)に対応する位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)を算出する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、車速センサ10を省略し、位置センサ11の位置情報(現在位置L)から算出された速度値(走行速度V)を用いて、進行方向後側の車軸(後側の台車3B)に対応する位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)を算出してもよい。
即ち、ばね機構変位推定部は、「鉄道車両モデル」と「位置情報から算出された鉄道車両の速度値と位置情報とから得られる軌道の上下変位」と「圧力値に関する情報」とからばね機構の上下変位を推定してもよい。この場合も、ばね機構変位推定部は、進行方向前側の車軸に対応する位置の軌道の上下変位と進行方向後側の車軸に対応する位置の軌道の上下変位とを用いてばね機構の上下変位を推定できる。このため、この場合も、ばね機構変位推定部の推定精度をより向上できる。
第1の実施形態では、位置情報(現在位置L)と速度値(走行速度V)とを用いて進行方向前側の車軸(前側の台車3A)に対応する位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)と進行方向後側の車軸(後側の台車3B)に対応する位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)とを取得する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、速度値を用いずに軌道の上下変位を取得する構成としてもよい。即ち、鉄道車両の現在の位置(位置情報)と鉄道車両が走行している路線の軌道情報(軌道MAP)と鉄道車両の寸法とから進行方向前側の車軸(前側の台車)に対応する位置の軌道の上下変位と進行方向後側の車軸(後側の台車)に対応する位置の軌道の上下変位とを取得してもよい。
第1の実施形態では、ダンパ8A,8Bの異常判定の演算処理を行う診断装置13を上位の制御装置と別に設けた場合を例に挙げて説明したが、診断装置13を上位の制御装置に組み込んでもよい。即ち、緩衝器の異常判定は、この判定を行う専用の演算処理装置(マイクロコンピュータ)を備える構成としてもよいし、他の制御処理を行う演算処理装置(マイクロコンピュータ)に内蔵してもよい。
第1の実施形態では、診断装置13により車両1の走行中にリアルタイムで常時異常判定を行うことができる。しかし、診断装置13の鉄道車両モデルに基づく演算機能(推定機能)は、車両1の走行速度Vや軌道条件(現在位置L)によって誤差が大きくなる(空気ばね変位推定値ΔXcの精度が低くなる)可能性がある。そこで、図4に示す第1の変形例のように、車両1が予め設定した走行区間(L1とL2との間)を予め設定した走行速度(V1とV2との間)で走行しているときに、異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。
即ち、第1の変形例では、診断装置13は、位置情報(現在位置L)が予め定められた範囲内(L1<L<L2)であり、かつ、速度値(走行速度V)が予め定められた範囲内(V1<V<V2)であるときの空気ばね変位推定値ΔXcを用いてダンパ8A,8Bの作動状態を診断する。このために、第1の変形例では、第1の実施形態の図3のS1とS2の間にS21およびS22の処理を追加している。即ち、第1の変形例では、図4に示すように、S1とS2との間でS21とS22の処理を行う。この場合、S1に続くS21では、S1で取得した現在位置L(位置情報)が所定の範囲内、例えば、所定値L1から所定値L2の間(L1<L<L2)であるか否かを判定する。S21で「YES」と判定された場合はS22に進み、S21で「NO」と判定された場合はS1に戻る。S22では、S1で取得した走行速度V(速度値)が所定の範囲内、例えば、所定値V1から所定値V2の間(V1<V<V2)であるか否かを判定する。S22で「YES」と判定された場合はS2以降の処理(異常判定処理)に進み、S22で「NO」と判定された場合はS1に戻る。
このように、第1の変形例では、異常判定する区間および走行速度が設定されている。このため、例えば、速度(所定値V1,V2)を適切に設定することにより、朝または夕方の通勤時のように、車両1の前後に別の車両が詰まっており通常よりも車両1の走行速度Vが遅い状態では、異常判定を中止することができる。また、区間(所定値L1,L2)を適切に設定することで、例えば、分岐器前後等の軌道が著しく悪い区間(異常判定に適していない場所)での空気ばね変位推定値ΔXcを除外し、直線水平区間等の軌道が著しく良い区間(異常判定に適している場所)での空気ばね変位推定値ΔXcを採用することができる。これにより、異常判定の精度を高めることができる。即ち、このような第1の変形例によれば、位置情報が予め定められた範囲内であるときの空気ばね変位推定値ΔXcを用いてダンパ8A,8Bの作動状態を診断できる。このため、直線区間等の軌道が安定する走行区間の空気ばね変位推定値ΔXcを用いてダンパ8A,8Bの作動状態を診断することができる。これにより、この面からも異常の判定の精度を向上できる。なお、S21またはS22のいずれか一方を省略してもよい。
第1の実施形態では、診断装置13により車両1の走行中にリアルタイムで常時異常判定を行うことができる。しかし、車両1の走行条件や車体2の積載条件によって誤差が大きくなる可能性がある。そこで、図5に示す第2の変形例のように、予め設定した時間(t1とt2との間)に異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。即ち、第2の変形例では、診断装置13は、現在時刻が予め定められた範囲内(t1<t<t2)であるときの空気ばね変位推定値ΔXcを用いてダンパ8A,8Bの作動状態を診断する。このために、第2の変形例では、第1の実施形態の図3のS1とS2の間にS31およびS32の処理を追加している。即ち、第2の変形例では、図5に示すように、S1とS2との間でS31とS32の処理を行う。この場合、S1に続くS31では、現在時刻tを取得する。S31に続くS32では、S31で取得した現在時刻tが所定の範囲内、例えば、時刻t1と時刻t2との間(t1<t<t2)であるか否かを判定する。S32で「YES」と判定された場合はS2以降の処理(異常判定処理)に進み、S32で「NO」と判定された場合はS1に戻る。
このように、第2の変形例では、異常判定する時刻が設定されている。このため、時刻t1,t2を適切に設定することで、例えば、早朝、深夜または日中等、車両1の走行条件が比較的一定の条件を選んで異常判定をすることができる。これにより、異常判定の精度を高めることができる。即ち、このような第2の変形例によれば、現在時刻が予め定められた範囲内であるときの空気ばね変位推定値ΔXcを用いてダンパ8A,8Bの作動状態を診断できる。このため、早朝、深夜または日中等の車両1の走行条件が比較的一定となる時刻の空気ばね変位推定値ΔXcを用いてダンパ8A,8Bの作動状態を診断することができる。これにより、この面からも異常の判定の精度を向上できる。
また、図6は、第3の変形例を示している。第3の変形例は、第1の変形例と第2の変形例とを組み合わせている。即ち、第3の変形例では、車両1が予め設定した走行区間(L1とL2との間)を予め設定した走行速度(V1とV2との間)で走行しており、かつ、予め設定した時間(t1とt2との間)であるときに、異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。これにより、異常判定の精度をより高めることができる。
第1の実施形態および第1ないし第3の変形例では、空気ばね7A,7Bの圧力(内圧)の値と関係なく異常判定を行う場合を例に挙げて説明した。ここで、車両1は、通常、乗員乗客の数に合わせて空気ばね7A,7Bの内圧を調整し、車高を一定に保っている。しかし、例えば、空気ばね7A,7Bの空気が漏れた場合、または、車体傾斜のために空気ばね7A,7Bの内圧を上げている場合は、推定の演算精度が低下し、誤判定する可能性がある。そこで、図7に示す第4の変形例のように、空気ばね7A,7Bの圧力が予め設定した範囲(P1とP2との間)のときに、異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。
即ち、第4の変形例では、診断装置13は、空気ばね7A,7Bの圧力Pが予め設定した範囲内(P1<P<P2)であるときの空気ばね変位推定値ΔXcを用いてダンパ8A,8Bの作動状態を診断する。このために、第4の変形例では、図6に示す第3の変形例のS32の処理の後にS41の処理を追加している。即ち、第4の変形例では、図7に示すように、S32とS2との間でS41の処理を行う。この場合、S32に続くS41では、S1で取得した空気ばね7A,7Bの圧力値Pが圧力値P1とP2との間(P1<P<P2)であるか否かを判定する。S41で「YES」と判定された場合はS2以降の処理(異常判定処理)に進み、S41で「NO」と判定された場合はS1に戻る。このように、第4の変形例では、異常判定する圧力が設定されている。このため、圧力値P1,P2を適切に設定することで、空気ばね7A,7Bの内圧が異常なとき(例えば、内圧変化が大きいとき)の推定値に基づく誤判定を抑制できる。これにより、異常判定の精度を高めることができる。
第1の実施形態および第1ないし第4の変形例では、車両1の進行方向と関係なく異常判定を行う場合を例に挙げて説明した。しかし、車両1は、「上り線と下り線」または「外回り線と内回り線」で軌道状態やポイントの有無が異なり、同一の閾値では推定の演算精度が低下し、誤判定する可能性がある。そこで、図8に示す第5の変形例のように、車両1が上り線を走行しているときに、異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。また、図9に示す第6の変形例のように、車両1が下り線を走行しているときに、異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。車両1の進行方向は、例えば、位置情報から判定することができる。これにより、位置情報から車両1の進行方向に応じた軌道の上下変位を用いてダンパ8A,8Bの作動状態を診断することができる。
図8に示す第5の変形例では、図7に示す第4の変形例の処理の途中にS51の処理を追加している。S51では、進行方向が上りであるか否かを判定する。図9に示す第6の変形例では、図8に示す第5の変形例のS21,S22,S32,S41、S51の処理をS61,S62,S63,S64,S65に変更している。即ち、第6の変形例では、上り線と下り線とで現在位置や走行速度などの閾値(L3,L4,V3,V4,t3,t4)を変えている。しかし、全てを変える必要はなく、例えば時刻や速度などは同一としてもよい。また、上り線と下り線以外にも、外回り線と内回り線等、鉄道車両の走行に合せた進行方向を選択してもよい。このような変形例では、「上り線と下り線」または「外回り線と内回り線」による走行条件の差も含めて、演算精度の高い走行区間、走行条件を選ぶことができる。これにより、異常判定の精度を向上できる。
次に、図10ないし図13は、第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、台車と車輪との間の緩衝器を減衰力調整式ダンパ(セミアクティブダンパ)とすると共に、減衰力調整式ダンパの減衰力を制御する制御装置で作動状態の診断(異常判定処理)を行う構成としたことにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
車両1の車体2と台車3A,3Bとの間には、緩衝器としてのダンパ31A-31Dが配置されている。ダンパ31A-31Dは、それぞれ減衰力の調整が可能な減衰力調整式ダンパ(セミアクティブダンパ)であり、台車3A,3Bの振動を抑制する。この場合、ダンパ31A-31Dは、例えば、ソレノイドバルブ等の制御バルブ37A-37Dを備えている。ダンパ31A-31Dは、制御装置34からの電力(駆動電流)の供給により制御バルブ37A-37Dの開弁圧が調整されることにより、減衰特性をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)へと連続的に調整することができる。
なお、ダンパ31A-31Dは、減衰特性を連続的に調整するものに限らず、2段階または複数段階に調整可能なものであってもよい。また、ダンパ31A-31Dは、電圧や電流に応じて減衰力を調整する減衰力調整式緩衝器(例えば、電気粘性流体、磁性流体等の機能性流体を封入した緩衝器)であってもよい。即ち、ダンパ31A-31Dは、同じピストン速度において減衰力を可変に調節(増減)することができる各種の減衰力調整式緩衝器を用いることができる。図11に示すように、ダンパ31A-31Dは、1つの台車3A,3Bに対して2軸配置され、1台の車両1(2つの台車3A,3B)に対して4軸配置される。即ち、上下動ダンパとなるダンパ31A-31Dは、第1の実施形態のダンパ8A,8Bと同様に、空気ばね7A-7Dと並列に配置されている。
また、図11に示すように、車体2の4隅、即ち、車体2の前後方向と左右方向とに離間した4個所位置には、それぞれの位置で車体2の上下方向の加速度(振動)を測定する合計4個の加速度センサ32A-32Dが設けられている。加速度センサ32A-32Dは、車両1の異なる複数個所にそれぞれ搭載されて車両1の挙動(より具体的には、車体2の振動状態)を検出するセンサ(挙動センサ)である。加速度センサ32A-32Dは、例えば圧電式、サーボ式、ピエゾ抵抗式等のアナログ式加速度センサ等、各種の加速度センサを用いることができる。
加速度センサ32A-32Dで測定された加速度(上下加速度)は、ダンパ31A-31Dの制御とダンパ31A-31Dの作動状態の診断とに用いられる。このために、加速度センサ32A-32Dは、制御装置34に接続されている。加速度センサ32A-32Dは、車体2の上下加速度を測定し、その加速度に対応する信号を制御装置34に出力する車体加速度測定部を構成している。なお、加速度センサ32A-32Dは、車体2の前部左側、前部右側、後部左側、後部右側に限らず、例えば車体2の前部中央、中央部左側、中央部右側、後部中央に配置する等、車体2上のセンサ配置はいかなる形をとっても良い。また、加速度センサ32A-32Dの個数も4個に限らず、測定・制御の目的に合わせて自由に選んでよい。例えば、車体2に2個、3個、または5個以上設けてもよい。
次に、各ダンパ31A-31Dの減衰力を可変に制御(調整)する制御装置34について説明する。
制御装置34は、車両1の予め決められた位置(例えば、車体2のほぼ中央となる位置等)に設置されている。制御装置34は、例えばマイクロコンピュータ、駆動回路を含んで構成されている。制御装置34の入力側は、加速度センサ32A-32Dに接続されている。制御装置34の出力側は、ダンパ31A-31D(より具体的には、各制御バルブ37A-37D)に接続されている。制御装置34は、ROM,RAM,不揮発性メモリ等からなる記憶部としてのメモリ34Aを有している。メモリ34Aには、例えば、ダンパ31A-31Dの減衰力の制御を行う処理プログラムが格納されている。また、制御装置34は、通信回線14を介して上位の制御装置(図示せず)と接続されている。制御装置34には、上位の制御装置から通信回線14を介して車両1の車両情報(例えば、車両の現在位置L、走行速度V等)が上位信号として入力される。なお、加速度センサ32A-32Dを上位の制御装置に接続し、上位信号として上下加速度も制御装置34に入力される構成としてもよい。
制御装置34は、加速度センサ32A-32Dから得られるセンサ信号と通信回線14を介して得られる上位信号とに基づいて内部で演算を行い、各ダンパ31A-31D(より具体的には、各制御バルブ37A-37D)に指令信号となる駆動電流を出力する。即ち、制御装置34は、サンプリング時間毎に加速度センサ32A-32Dからの検出信号等を読込みつつ、所定の制御則(制振制御ロジック)に従って各ダンパ31A-31Dで発生すべき減衰力に対応する駆動電流を演算する。この上で、制御装置34は、駆動電流を制御バルブ37A-37Dに個別に出力し、ダンパ31A-31D毎の発生力を可変に制御する。なお、各ダンパ31A-31Dの制御則としては、例えば、スカイフック制御則、LQG制御則またはH∞制御則等を用いることができる。
次に、各ダンパ31A-31Dの作動状態を診断する作動状態診断装置33について、図12を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態の作動状態診断装置12と相違する部分を主として説明し、同様の部分については詳しい説明を省略する。
第2の実施形態の作動状態診断装置33は、セミアクティブダンパであるダンパ31A-31Dの作動状態を診断する。作動状態診断装置33は、圧力センサ9A-9Dと、車速センサ10と、位置センサ11と、加速度センサ32A-32Dと、診断の演算処理を行う演算処理装置としての制御装置34とを備えている。制御装置34は、ダンパ31A-31Dの減衰力の制御の演算処理を行う制御装置だけでなく、ダンパ31A-31Dの作動状態の診断(異常判定)の演算処理を行う診断装置も兼ねている。このため、制御装置34のメモリ34Aには、ダンパ31A-31Dの減衰力の制御に用いる処理プログラムの他、後述の図13に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、ダンパ31A-31Dの作動状態の診断に用いる処理プログラムも格納されている。また、制御装置34のメモリ34Aには、前述の第1の実施形態と同様に、作動状態の診断に用いる基準値、判定値、車両モデル、軌道情報(左右各輪の軌道MAP)等が格納されている。
制御装置34には、圧力センサ9A-9Dからの空気ばね7A-7Dの圧力、車速センサ10からの車両1の走行速度(車速)、および、位置センサ11からの車両1の走行位置(現在位置)が通信回線14を介してリアルタイムで入力される。これに加えて、制御装置34には、加速度センサ32A-32Dからの車体2の上下加速度もリアルタイムで入力される。即ち、制御装置34は、車両1の走行中に、圧力センサ9A-9Dからの圧力値の信号と、車速センサ10からの車速の信号と、位置センサ11からの走行位置の信号と、加速度センサ32A-32Dからの上下加速度の信号とをリアルタイムで取得する。制御装置34は、これらの信号に基づいてダンパ31A-31Dの異常を判定する。具体的には、制御装置34は、空気ばね7A-7Dの圧力値と車両1の車速と走行位置と車体2の上下加速度とに基づいて内部で演算を行い、ダンパ31A-31Dの作動状態を診断する処理を行う。
この場合、制御装置34は、「位置情報から得られる軌道の上下変位」と「空気ばね7A-7Dの圧力値から算出される空気ばね反力の質量変化分」とから「鉄道車両モデル」を用いて車体2の上下加速度を推定する。そして、制御装置34は、この上下加速度の推定値と加速度センサ32A-32Dで測定された上下加速度の測定値とを比較し、ダンパ31A-31Dの異常を判定する。即ち、第2の実施形態では、車両1内の各種機器に配信される車両1の走行速度、現在位置、空気ばね7A-7Dの圧力センサ値を基に、車両1の車両モデルを用いて車体2の上下加速度を推定値(加速度推定値)として演算する。そして、この推定値と、ダンパ31A-31Dの減衰力の制御に用いられる加速度センサ32A-32Dの測定値とを比較し、ダンパ31A-31Dの異常を判定する。
このために、図12に示すように、制御装置34は、基準圧力出力部15と、減算部16と、ばね反力算出部18と、質量変化分算出部19と、前車軸位置の軌道上下変位算出部20と、遅れ時間算出部21と、後車軸位置の軌道上下変位算出部22と、車体加速度推定部としての加速度推定部35と、緩衝器異常判定部としてのダンパ異常判定部36とを備えている。
加速度推定部35は、ダンパ異常判定部36等と共に、車両1に配置されている。加速度推定部35には、質量変化分算出部19から「車体2の質量変化分ΔM」が入力され、軌道上下変位算出部20から「前車軸位置の軌道の上下変位Sf」が入力され、軌道上下変位算出部22から「後車軸位置の軌道の上下変位Sr」が入力される。加速度推定部35は、車体2の質量変化分ΔMと前車軸位置の軌道の上下変位Sfと後車軸位置の軌道の上下変位Srを入力とし、車両モデルにて車体2の上下加速度を演算により推定する。加速度推定部35は、その推定値を車体上下加速度推定値Gcとしてダンパ異常判定部36に出力する。
即ち、加速度推定部35は、「車両1をモデル化した鉄道車両モデル」と「位置センサ11から出力された位置情報(より具体的には、位置情報から得られる軌道の上下変位Sf,Sr)」と「空気ばね7A,7Bの圧力値P(より具体的には、圧力値Pから算出される質量変化分ΔM)」とを用いて車体2の上下加速度を推定し、ダンパ異常判定部36に出力する。より詳しくは、加速度推定部35は、「鉄道車両モデル」と「車速センサ10から出力された車両1の速度値と位置情報とから得られる軌道の上下変位Sf、Sr」と「圧力値Pに関する第2情報(質量変化分ΔM)」とから、車体2の上下加速度を演算により推定する。加速度推定部35は、推定された車体2の上下加速度、即ち、車体2の上下加速度の推定値である車体上下加速度推定値Gcを、ダンパ異常判定部36に出力する。
ここで、鉄道車両モデルは、例えば、特許文献1に記載されたような「車両モデル」を用いることができる。即ち、加速度推定部35は、特許文献1の段落[0036]以降および図面の図3に記載されたような鉄道車両モデル(状態方程式)を用いて車体2の上下加速度を推定(車体上下加速度推定値Gcを演算)することができる。なお、加速度推定部35は、特許文献1以外の鉄道車両モデル(状態方程式)を用いてもよい。例えば、車体2の上下加速度の推定値をより精度よく求めることができる車両モデル(状態方程式)、換言すれば、車両1の構造により対応した車両モデル(状態方程式)を用いることができる。
ダンパ異常判定部36には、加速度センサ32A-32Dにより測定された車体2の上下加速度の測定値、即ち、実上下加速度Grが入力される。また、ダンパ異常判定部36には、加速度推定部35から車体上下加速度推定値Gcが入力される。ダンパ異常判定部36は、実上下加速度Grと車体上下加速度推定値Gcとを比較し、ダンパ31A-31Dが正常か異常かを判定する。即ち、ダンパ異常判定部36は、加速度センサ32A-32Dから出力された車体2の上下加速度の測定値である実上下加速度Grと、加速度推定部35から出力された車体2の上下加速度の推定値である車体上下加速度推定値Gcとを比較し、異常を判定する。ダンパ異常判定部36は、例えば、実上下加速度Grと車体上下加速度推定値Gcとの差分値が、予め設定された閾値G1以上である場合に、ダンパ31A-31Dが異常であると判定することができる。閾値G1は、ダンパ31A-31Dが正常か異常かを精度よく判定できるように、計算、実験、シミュレーション等により予め求めておく。ダンパ異常判定部36は、ダンパ31A-31Dが正常であるか否かの判定結果、即ち、上下動ダンパ異常検出結果を、制御装置34の診断情報として上位の制御装置に出力する。これにより、上位の制御装置は、上下動ダンパ異常検出結果(ダンパ31A-31Dが正常であるか否か)を取得することができる。
図13の流れ図は、制御装置34で行われる診断処理(異常の判定処理)を示している。図13の処理は、制御装置34が起動した後、所定の制御周期(例えば、10msec)で繰り返し実行される。なお、図13中の各処理で、前述の第1の実施形態の図3に示した処理と同様の処理については、同じステップ番号を付して、その説明を省略する。
図13の処理が開始されると、制御装置34は、S11で、上位信号から情報、即ち、車両1の位置情報(現在位置L)と車両1の速度値(走行速度V)と空気ばね7A,7Bの内圧である圧力値Pとを取得する。S12では、S11で取得した車両情報(現在位置L、走行速度V、圧力値P)から「前車軸位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)」と「後車軸位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)」と「質量変化分ΔM」とを求め、鉄道車両モデルを基に車体上下加速度推定値Gcを演算する。S13では、加速度センサ32A-32Dで測定された実上下加速度Grを取得する。
S14では、ダンパ31A-31Dが正常であるか否かを判定する。この場合、S14では、S2で演算された車体上下加速度推定値GcとS13で取得した実上下加速度Grとを比較する。即ち、S14では、例えば、車体上下加速度推定値Gcと実上下加速度Grとの差分値が閾値G1以上であるか否かを判定する。S14で「NO」、即ち、車体上下加速度推定値Gcと実上下加速度Grとの差分値が閾値G1よりも小さいと判定された場合は、S5に進む。一方、S14で「YES」、即ち、車体上下加速度推定値Gcと実上下加速度Grとの差分値が閾値G1以上であると判定された場合は、S7に進む。
なお、S14の処理、即ち、ダンパ異常判定部36で車体上下加速度推定値Gcと実上下加速度Grとを比較するときは、リアルタイムで常時比較してもよく、また、予め設定した時間(規定時間)内の平均値を比較してもよい。さらに、ダンパ異常判定部36は、車体上下加速度推定値Gcと実上下加速度Grとの差の積算値が規定値以上になった場合に、異常と判定してもよい。即ち、異常判定(作動状態の診断)に関する数値処理については、加速度値の平均化処理や実効値処理、差分値の積算等、上述した処理に限らない。また、例えば、ダンパ31A-31Dの全て(4本)が同時に異常であると判定された場合は、このような異常状態の可能性は低いため、車体2の軌道異常と判定してもよい。さらに、ダンパ異常判定部36は、車体上下加速度推定値Gcと実上下加速度Grとの差分値が閾値G1以上と判定されたときに、例えば、異常判定する区間を長く取り、走行路線中の特定区間(短い区間)のみ異常(差分値が閾値G1以上)の場合は軌道異常と判定し、走行路線中の全体にわたり異常(差分値が閾値G1以上)の場合はダンパ異常と判定してもよい。即ち、軌道異常とダンパ異常との切り分けを行ってもよい。いずれにしても、第2の実施形態では、車両1が走行しているときに、上位信号として車両1に常時流れている情報とダンパ31A-31Dの制振制御用に必要な加速度の情報とに基づいて、ダンパ31A-31Dの異常判定(作動状態診断)をリアルタイムで高精度に行うことができる。
第2の実施形態は、上述の如き制御装置34によりダンパ31A-31Dの異常を判定するもので、その基本的作用については、第1の実施形態によるものと格別差異はない。特に、第2の実施形態によれば、「車体2の上下加速度の測定値である実上下加速度Gr」と「車体2の上下加速度の推定値である車体上下加速度推定値Gc」とを比較し、異常を判定する。この場合、車体2の上下加速度の測定値は、既存の加速度センサ32A-32Dから出力された測定値を用いることができる。また、加速度推定部35は、既存の圧力センサ9A,9Bにより測定された圧力値Pと既存の位置センサ11により取得される位置情報とを用いて車体上下加速度推定値Gcを推定することができる。さらに、加速度推定部35は、位置情報から得られるその位置の軌道の情報(軌道の上下変位Sf,Sr)から鉄道車両モデルを用いて車体上下加速度推定値Gcを推定することができるため、この推定の精度を向上できる。これにより、追加のセンサが必要になることを抑制しつつ異常の判定の精度を向上できる。
第2の実施形態によれば、加速度推定部35は、「鉄道車両モデル」と「車速センサ10から出力された速度値と既存の位置センサ11により取得される位置情報とから得られる軌道の上下変位Sf,Sr」と「圧力値Pに関する情報である車体2の質量変化分ΔM」とから車体上下加速度推定値Gcを推定する。このため、加速度推定部35は、進行方向前側の車軸(前側の台車3A)に対応する位置の軌道の上下変位Sf(Sfl、Sfr)と進行方向後側の車軸(後側の台車3B)に対応する位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)とを用いて車体上下加速度推定値Gcを推定できる。これにより、加速度推定部35の推定精度をより向上できる。
なお、第2の実施形態では、車速センサ10から出力された速度値(走行速度V)を用いて、進行方向後側の車軸(後側の台車3B)に対応する位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)を算出する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、車速センサ10を省略し、位置センサ11の位置情報(現在位置L)から算出された速度値(走行速度V)を用いて、進行方向後側の車軸(後側の台車3B)に対応する位置の軌道の上下変位Sr(Srl、Srr)を算出してもよい。
即ち、車体加速度推定部は、「鉄道車両モデル」と「位置情報から算出された鉄道車両の速度値と位置情報とから得られる軌道の上下変位」と「圧力値に関する情報」とから車体の上下加速度を推定してもよい。また、速度値を用いずに軌道の上下変位を取得する構成としてもよい。
第2の実施形態では、ダンパ31A-31Dの減衰力の制御を行う制御装置34でダンパ31A-31Dの異常判定の演算処理も行う構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、緩衝器の減衰力の制御の演算処理を行う制御装置と緩衝器の異常判定の演算処理を行う制御装置とを別々に設けてもよい。
また、例えば、図14に示す第7の変形例のように、車両1が予め設定した走行区間(L1とL2との間)を予め設定した走行速度(V1とV2との間)で走行しているときに、異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。即ち、第7の変形例では、制御装置34は、位置情報(現在位置L)が予め定められた範囲内(L1<L<L2)であり、かつ、速度値(走行速度V)が予め定められた範囲内(V1<V<V2)であるときの車体上下加速度推定値Gcを用いてダンパ31A-31Dの作動状態を診断する。このために、第7の変形例では、第2の実施形態の図13のS11とS12との間にS21およびS22の処理を追加している。S21およびS22の処理については、前述の第1の変形例と同様であるため、これ以上の説明は省略する。
また、例えば、図15に示す第8の変形例のように、予め設定した時間(t1とt2との間)に異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。即ち、第8の変形例では、制御装置34は、現在時刻が予め定められた範囲内(t1<t<t2)であるときの車体上下加速度推定値Gcを用いてダンパ31A-31Dの作動状態を診断する。このために、第8の変形例では、図15に示すように、第2の実施形態の図13のS11とS12との間にS31およびS32の処理を追加している。S31およびS32の処理については、前述の第2の変形例と同様であるため、これ以上の説明は省略する。
また、例えば、図16に示す第9の変形例のように、第7の変形例と第8の変形例とを組み合わせてもよい。また、図17に示す第10の変形例のように、空気ばね7A,7Bの圧力が予め設定した範囲(P1とP2との間)のときに、異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。即ち、第10の変形例では、制御装置34は、空気ばね7A,7Bの圧力Pが予め設定した範囲内(P1<P<P2)であるときの車体上下加速度推定値Gcを用いてダンパ31A-31Dの作動状態を診断する。このために、第10の変形例では、図16に示す第9の変形例のS32の処理の後にS41の処理を追加している。S41の処理については、前述の第4の変形例と同様であるため、これ以上の説明は省略する。
さらに、図18に示す第11の変形例のように、車両1が上り線を走行しているときに、異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。第11の変形例では、図17に示す第10の変形例の処理の途中にS51の処理を追加している。S51の処理については、前述の第5の変形例と同様であるため、これ以上の説明は省略する。また、図19に示す第12の変形例のように、車両1が下り線を走行しているときに、異常判定(作動状態診断)を行う構成としてもよい。第12の変形例では、図18に示す第11の変形例のS21,S22,S32,S41、S51の処理をS61,S62,S63,S64,S65に変更している。これにより、第12の変形例では、上り線と下り線とで現在位置や走行速度などの閾値(L3,L4,V3,V4,t3,t4)を変えているが、全てを変える必要はなく、例えば時刻や速度などは同一としてもよい。
第1の実施形態では、ダンパ8A,8Bを車体2と台車3A,3Bとの間で上下方向に配置した場合、即ち、ダンパ8A,8Bが上下動ダンパの場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、緩衝器は、車体と台車との間で左右方向に配置した左右動ダンパ、車体と台車との間で前後方向(進行方向)に配置したヨーダンパ等、車体と台車との間に配置される各種の緩衝器を用いることができる。このことは、第2の実施形態および第1変形例ないし第12変形例についても同様である。
第1の実施形態および第2の実施形態では、車体2と台車3A,3Bとの間に設けられるばね機構を空気ばね7A-7Dとした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ばね機構は、コイルばね等、空気ばね以外のばね機構(各種のばね、弾性部材)を用いてもよい。例えば、ばね機構がコイルばねの場合は、ばね機構に負荷される圧力値(応力値)は、ロードセンサ(歪センサ、歪ゲージ)等の圧力測定部を用いることができる。このことは、第1変形例ないし第12変形例についても同様である。
第2の実施形態では、加速度センサ32A-32Dを車体2に設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、加速度センサを台車に設けてもよい。また、加速度センサを車体と台車との両方に設ける構成としてもよい。
第2の実施形態では、車体2の上下加速度(実上下加速度Gr、車体上下加速度推定値Gc)を用いて異常を判定する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第2の実施形態のような「車体の上下加速度(測定値、推定値)」と第1実施形態のような「空気ばねの上下変位(算出値、推定値)」との両方を用いて異常を判定する構成としてもよい。このことは、第7の変形例ないし第12の変形例についても同様である。また、第1の実施形態および第1の変形例ないし第6の変形例についても、例えば、コンベンショナルダンパが搭載された車両に車体加速度測定部(加速度センサ)を設けることにより、車体の上下加速度を用いて異常を判定する構成としてもよく、車体の上下加速度と空気ばねの上下変位との両方を用いて異常を判定する構成としてもよい。
さらに、各実施形態および各変形例は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
以上説明した実施形態に基づく作動状態診断装置として、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、鉄道車両の車体と台車との間に配置される緩衝器の作動状態診断装置であって、前記台車の位置情報を取得し出力する位置検出部と、前記車体と前記台車との間に設けられるばね機構に負荷される圧力値を測定し出力する圧力測定部と、前記圧力測定部から出力された前記ばね機構の前記圧力値を用いて、前記ばね機構の上下変位を算出し出力するばね機構変位算出部と、前記鉄道車両に配置され、前記鉄道車両をモデル化した鉄道車両モデルと前記位置情報と前記ばね機構の前記圧力値とを用いて、前記ばね機構の上下変位を推定し出力するばね機構変位推定部と、前記ばね機構変位算出部から出力された前記ばね機構の上下変位の算出値と前記ばね機構変位推定部から出力された前記ばね機構の上下変位の推定値とを比較し、前記緩衝器の異常を判定する緩衝器異常判定部と、を有する。
この第1の態様によれば、緩衝器異常判定部は、ばね機構変位算出部から出力されたばね機構の上下変位の算出値とばね機構変位推定部から出力されたばね機構の上下変位の推定値とを比較し、異常を判定する。この場合、ばね機構変位算出部は、既存の圧力測定部により測定された圧力値を用いてばね機構の上下変位を算出することができる。また、ばね機構変位推定部は、既存の圧力測定部により測定された圧力値と既存の位置検出部により取得される位置情報とを用いてばね機構の上下変位を推定することができる。さらに、ばね機構変位推定部は、位置情報から得られるその位置の軌道の情報(軌道の上下変位)から鉄道車両モデルを用いてばね機構の上下変位を推定することができるため、ばね機構の上下変位の推定値の精度を向上することができる。これにより、測定手段(センサ)の追加を抑制しつつ異常の判定の精度を向上できる。
第2の態様としては、第1の態様において、前記ばね機構変位推定部は、前記鉄道車両モデルと、前記位置情報から算出された前記鉄道車両の速度値と前記位置情報とから得られる軌道の上下変位と、前記圧力値に関する情報と、から前記ばね機構の上下変位を推定する。この第2の態様によれば、ばね機構変位推定部は、位置情報から算出された速度値と位置情報とから進行方向前側の車軸(前車軸)に対応する位置の軌道の上下変位と進行方向後側の車軸(後車軸)に対応する位置の軌道の上下変位とを用いてばね機構の上下変位を推定することができる。これにより、ばね機構変位推定部によるばね機構の上下変位の推定値の精度をより向上することができる。
第3の態様としては、第1の態様において、前記鉄道車両の速度値を測定し出力する速度測定部をさらに有し、前記ばね機構変位推定部は、前記鉄道車両モデルと、前記速度測定部から出力された前記速度値と前記位置情報とから得られる軌道の上下変位と、前記圧力値に関する情報と、から前記ばね機構の上下変位を推定する。この第3の態様によれば、ばね機構変位推定部は、既存の速度測定部により測定された速度値と位置情報とから進行方向前側の車軸(前車軸)に対応する位置の軌道の上下変位と進行方向後側の車軸(後車軸)に対応する位置の軌道の上下変位とを用いてばね機構の上下変位を推定することができる。これにより、ばね機構変位推定部によるばね機構の上下変位の推定値の精度をより向上することができる。
第4の態様としては、鉄道車両の車体と台車との間に配置される緩衝器の作動状態診断装置であって、前記車体の上下加速度を測定し出力する車体加速度測定部と、前記台車の位置情報を取得し出力する位置検出部と、前記車体と前記台車との間に設けられるばね機構に負荷される圧力値を測定し出力する圧力測定部と、前記鉄道車両に配置され、前記鉄道車両をモデル化した鉄道車両モデルと前記位置情報と前記ばね機構の前記圧力値とを用いて、前記車体の上下加速度を推定し出力する車体加速度推定部と、前記車体加速度測定部から出力された前記車体の上下加速度の測定値と前記車体加速度推定部から出力された前記車体の上下加速度の推定値とを比較し、前記緩衝器の異常を判定する緩衝器異常判定部と、を有する。
この第4の態様によれば、緩衝器異常判定部は、車体加速度測定部から出力された車体の上下加速度の測定値と車体加速度推定部から出力された車体の上下加速度の推定値とを比較し、異常を判定する。この場合、車体の上下加速度の測定値は、既存の車体加速度測定部から出力された測定値を用いることができる。また、車体加速度推定部は、既存の圧力測定部により測定された圧力値と既存の位置検出部により取得される位置情報とを用いて車体の上下加速度を推定することができる。さらに、車体加速度推定部は、位置情報から得られるその位置の軌道の情報(軌道の上下変位)から鉄道車両モデルを用いて車体の上下加速度を推定することができるため、車体の上下加速度の推定値の精度を向上することができる。これにより、測定手段(センサ)の追加を抑制しつつ異常の判定の精度を向上できる。
第5の態様としては、第4の態様において、前記車体加速度推定部は、前記鉄道車両モデルと、前記位置情報から算出された前記鉄道車両の速度値と前記位置情報とから得られる軌道の上下変位と、前記圧力値に関する情報と、から前記車体の上下加速度を推定する。この第5の態様によれば、車体加速度推定部は、位置情報から算出された速度値と位置情報とから進行方向前側の車軸(前車軸)に対応する位置の軌道の上下変位と進行方向後側の車軸(後車軸)に対応する位置の軌道の上下変位とを用いて車体の上下加速度を推定することができる。これにより、車体加速度推定部による車体の上下加速度の推定値の精度をより向上することができる。
第6の態様としては、第4の態様において、前記鉄道車両の速度値を測定し出力する速度測定部をさらに有し、前記車体加速度推定部は、前記鉄道車両モデルと、前記速度測定部から出力された前記速度値と前記位置情報とから得られる軌道の上下変位と、前記圧力値に関する情報と、から前記車体の上下加速度を推定する。この第6の態様によれば、車体加速度推定部は、既存の速度測定部により測定された速度値と位置情報とから進行方向前側の車軸(前車軸)に対応する位置の軌道の上下変位と進行方向後側の車軸(後車軸)に対応する位置の軌道の上下変位とを用いて車体の上下加速度を推定することができる。これにより、車体加速度推定部による車体の上下加速度の推定値の精度をより向上することができる。
第7の態様としては、第1ないし第6の態様のいずれかにおいて、現在時刻が予め定められた範囲内であるときの前記推定値を用いて、前記緩衝器の作動状態を診断する。この第7の態様によれば、例えば、早朝、深夜または日中等の鉄道車両の走行条件が比較的一定となる時刻の推定値を用いて緩衝器の作動状態を診断することができる。これにより、この面からも異常の判定の精度を向上できる。
第8の態様としては、第1ないし第6の態様のいずれかにおいて、前記位置情報が予め定められた範囲内であるときの前記推定値を用いて、前記緩衝器の作動状態を診断する。この第8の態様によれば、直線区間等の軌道が安定する走行区間の推定値を用いて緩衝器の作動状態を診断することができる。これにより、この面からも異常の判定の精度を向上できる。
第9の態様としては、第1ないし第6の態様のいずれかにおいて、前記位置情報から得られる、前記鉄道車両の進行方向に応じた軌道情報を用いて前記緩衝器の作動状態を診断する。この第9の態様によれば、鉄道車両の進行方向が上り、下り、外回り、または、内回りであるかに応じた軌道情報を用いて推定を行うことができる。これにより、この面からも異常の判定の精度を向上できる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
本願は、2020年2月10日付出願の日本国特許出願第2020-020837号に基づく優先権を主張する。2020年2月10日付出願の日本国特許出願第2020-020837号の明細書、特許請求の範囲、図面、および要約書を含む全開示内容は、参照により本願に全体として組み込まれる。
1 車両(鉄道車両) 2 車体 3A,3B 台車 7A-7D 空気ばね(ばね機構) 8A,8B,31A-31D ダンパ(緩衝器) 9A-9D 圧力センサ(圧力測定部) 10 車速センサ(速度測定部) 11 位置センサ(位置検出部) 12,33 作動状態診断装置 17 ばね変位算出部(ばね機構変位算出部) 23 ばね変位推定部(ばね機構変位推定部) 24,36 ダンパ異常判定部(緩衝器異常判定部) 32A-32D 加速度センサ(車体加速度測定部) 35 加速度推定部(車体加速度推定部) ΔF 空気ばね反力(情報) Gc 車体上下加速度推定値(推定値) Gr 実上下加速度(測定値) L 現在位置(位置情報) ΔM 質量変化分(情報) P 圧力値 V 走行速度(速度値) ΔX 空気ばね変位(算出値) ΔXc 空気ばね変位推定値(推定値)

Claims (9)

  1. 鉄道車両の車体と台車との間に配置される緩衝器の作動状態診断装置であって、
    前記台車の位置情報を取得し出力する位置検出部と、
    前記車体と前記台車との間に設けられるばね機構に負荷される圧力値を測定し出力する圧力測定部と、
    前記圧力測定部から出力された前記ばね機構の前記圧力値を用いて、前記ばね機構の上下変位を算出し出力するばね機構変位算出部と、
    前記鉄道車両に配置され、前記鉄道車両をモデル化した鉄道車両モデルと前記位置情報と前記ばね機構の前記圧力値とを用いて、前記ばね機構の上下変位を推定し出力するばね機構変位推定部と、
    前記ばね機構変位算出部から出力された前記ばね機構の上下変位の算出値と前記ばね機構変位推定部から出力された前記ばね機構の上下変位の推定値とを比較し、前記緩衝器の異常を判定する緩衝器異常判定部と、
    を有する作動状態診断装置。
  2. 請求項1に記載の作動状態診断装置であって、
    前記ばね機構変位推定部は、前記鉄道車両モデルと、前記位置情報から算出された前記鉄道車両の速度値と前記位置情報とから得られる軌道の上下変位と、前記圧力値に関する情報と、から前記ばね機構の上下変位を推定する作動状態診断装置。
  3. 請求項1に記載の作動状態診断装置であって、
    前記鉄道車両の速度値を測定し出力する速度測定部をさらに有し、
    前記ばね機構変位推定部は、前記鉄道車両モデルと、前記速度測定部から出力された前記速度値と前記位置情報とから得られる軌道の上下変位と、前記圧力値に関する情報と、から前記ばね機構の上下変位を推定する作動状態診断装置。
  4. 鉄道車両の車体と台車との間に配置される緩衝器の作動状態診断装置であって、
    前記車体の上下加速度を測定し出力する車体加速度測定部と、
    前記台車の位置情報を取得し出力する位置検出部と、
    前記車体と前記台車との間に設けられるばね機構に負荷される圧力値を測定し出力する圧力測定部と、
    前記鉄道車両に配置され、前記鉄道車両をモデル化した鉄道車両モデルと前記位置情報と前記ばね機構の前記圧力値とを用いて、前記車体の上下加速度を推定し出力する車体加速度推定部と、
    前記車体加速度測定部から出力された前記車体の上下加速度の測定値と前記車体加速度推定部から出力された前記車体の上下加速度の推定値とを比較し、前記緩衝器の異常を判定する緩衝器異常判定部と、
    を有する作動状態診断装置。
  5. 請求項4に記載の作動状態診断装置であって、
    前記車体加速度推定部は、前記鉄道車両モデルと、前記位置情報から算出された前記鉄道車両の速度値と前記位置情報とから得られる軌道の上下変位と、前記圧力値に関する情報と、から前記車体の上下加速度を推定する作動状態診断装置。
  6. 請求項4に記載の作動状態診断装置であって、
    前記鉄道車両の速度値を測定し出力する速度測定部をさらに有し、
    前記車体加速度推定部は、前記鉄道車両モデルと、前記速度測定部から出力された前記速度値と前記位置情報とから得られる軌道の上下変位と、前記圧力値に関する情報と、から前記車体の上下加速度を推定する作動状態診断装置。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載の作動状態診断装置であって、
    現在時刻が予め定められた範囲内であるときの前記推定値を用いて、前記緩衝器の作動状態を診断する作動状態診断装置。
  8. 請求項1ないし6のいずれかに記載の作動状態診断装置であって、
    前記位置情報が予め定められた範囲内であるときの前記推定値を用いて、前記緩衝器の作動状態を診断する作動状態診断装置。
  9. 請求項1ないし6のいずれかに記載の作動状態診断装置であって、
    前記位置情報から得られる、前記鉄道車両の進行方向に応じた軌道の上下変位を用いて、前記緩衝器の作動状態を診断する作動状態診断装置。
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