JP7272140B2 - リチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法、並びに、リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、該二次粒子は、前記凝集した一次粒子により形成された外殻部と、該外殻部の内側に存在し、前記凝集した一次粒子により形成され、かつ、前記外殻部と電気的に導通する凝集部と、および、該凝集部の中に分散して存在する空間部とを備えた多孔質構造を有している、母材であるリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物に、該複合酸化物の総質量に対して0.4質量%を超えて、5質量%以下の範囲にある量のタングステン化合物を混合して、混合物を得る乾式混合工程(第1の混合工程)、
前記混合物に、前記タングステン化合物中のWに対するLiのモル比が1.2以上となる量のリチウム化合物と、前記混合物の総質量に対して2質量%~30質量%の範囲にある量の水とからなる、リチウム化合物水溶液を噴霧して該混合物をさらに混合するリチウム化合物水溶液噴霧混合工程(第2の混合工程)、および、
前記混合物を500℃以下の温度で熱処理して、該混合物を乾燥させ、前記一次粒子の表面にWおよびLiを含む化合物の被覆が存在する、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物を得る乾燥工程、
を備えることを特徴とする。
本発明の第1の態様は、リチウムイオン二次電池用正極活物質(以下、「正極活物質」という)、すなわち、多孔質構造の二次粒子により構成され、タングステン酸リチウムなどのWおよびLiを含む化合物の微粒子および/または被膜からなる被覆が、二次粒子の少なくとも表面に存在する、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物(以下、「複合酸化物」という)に関する。
本発明の正極活物質は、遷移金属として、少なくともニッケル、マンガン、およびコバルトを含有する、三元系である。この正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成される。本発明の正極活物質では、図2に示すように、二次粒子は、凝集した一次粒子からなる外殻部1と、外殻部1の内側に存在し、外殻部1と同様に凝集した一次粒子からなり、かつ、外殻部1と電気的に導通する凝集部2、および、外殻部1の内側で凝集部2の間に分散して存在する空間部3とを備えた多孔質構造を有している。
本発明の正極活物質では、図2に示すように、母材となる多孔質構造を有する複合酸化物の二次粒子の少なくとも表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子4および/または被膜5からなる被覆が存在する。
本発明の正極活物質は、少なくともニッケル、マンガン、およびコバルトを含有する三元系の組成を有する、リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなり、上述したWおよびLiを含む化合物の微粒子および/または被膜からなる被覆が二次粒子の少なくとも表面に存在する構造を有する限り、その組成が制限されることはない。
本発明の正極活物質は、平均粒径MVが、3μm~10μの範囲、好ましくは4μm~9μmの範囲、より好ましくは4μm~8μmの範囲となるように調整される。正極活物質の平均粒径がこのような範囲にあれば、この正極活物質を用いた二次電池の単位体積あたりの電池容量を増加させることができるばかりでなく、安全性や出力特性も改善することができる。これに対して、平均粒径MVが3μm未満では、この正極活物質の充填性が低下し、単位体積あたりの電池容量を増加させることができない。一方、平均粒径MVが10μmを超えると、この正極活物質の反応面積が低下し、非水電解質との界面が減少するため、出力特性を改善することが困難となる。
本発明の正極活物質は、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径MV〕が、0.70以下、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.55以下であり、きわめて粒度分布が狭い二次粒子により構成される。このような正極活物質は、微細粒子や粗大粒子の割合が少なく、これを用いた二次電池は、安全性、サイクル特性および出力特性が優れたものとなる。
本発明の正極活物質において、外殻部および凝集部を構成する一次粒子は、平均粒径が0.02μm~0.3μmの範囲にある大きさで形成される。一次粒子の大きさは、二次粒子を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などにより、その断面観察が可能な状態とした後、その断面について、FE-SEMなどのSEMを用いて観察し、二次粒子の断面に存在する10個以上の一次粒子の最大外径(長軸径)を測定し、その平均値を求めることにより得られる。一次粒子の平均粒径が0.02μmを下回ると、脆弱になり十分な電池性能が得られないという問題が生じうる。一方、一次粒子の平均粒径が0.3μmを上回ると、粒子内の固体内拡散距離が長くなり、十分な電池性能が得られないという問題が生じうる。本発明の正極活物質では、個々の一次粒子は、概ね均一な組成を有する。
二次粒子を構成する外殻部は、一次粒子の凝集体によって構成される。外殻部の厚さは、0.1μm~1.0μmの範囲にあることが好ましい。外殻部の厚さが0.1μm未満では、二次粒子の強度が十分に担保されない。一方、外殻部の厚さが1.0μmを超えると、内部に適切な大きさの空間部および凝集部が形成されない、二次粒子の内部に非水電解質が十分に浸透しないといった問題を生じうる。外殻部の厚さは、好ましくは0.1μm~0.5μmの範囲にあり、より好ましくは0.12μm~0.3μmの範囲にある。外殻部の厚さも、FE-SEMなどのSEMの断面観察により、10個以上の二次粒子について外殻部の厚さを測定することにより得られる。
携帯電子機器の使用時間や電気自動車の走行距離を伸ばすために、二次電池の高容量化は重要な課題となっている。一方、二次電池の電極の厚さは、電池全体のパッキングや電子伝導性の問題から数μm程度とすることが要求される。このため、正極活物質として高容量のものを使用するばかりでなく、正極活物質の充填性を高め、二次電池全体としての高容量化を図ることが必要となる。
本発明の正極活物質は、二次粒子の内部に形成された空間部の存在により比表面積を向上させている点に特徴がある。本発明における正極活物質の比表面積としては、たとえば窒素ガス吸着によるBET法により測定したBET比表面積が用いられる。本発明の正極活物質において、上述の二次粒子の構造が維持される限り、BET比表面積は可能な限り大きいことが好ましい。BET比表面積が大きくなるほど非水電解質との接触面積が大きく、これを用いた二次電池の出力特性を大幅に改善することができるためである。具体的には、本発明の正極活物質のBET比表面積は、2.0m2/g~5.0m2/gの範囲にあることが好ましい。正極活物質の比表面積が2.0m2/g未満では、この正極活物質を正極材料として二次電池を構成した場合に、非水電解質との反応面積を十分に確保することができず、出力特性を十分に向上させることが困難となる。BET比表面積は、2.5m2/g~5.0m2/gの範囲にあることがより好ましく、3.0m2/g~6.0m2/gの範囲にあることがさらに好ましい。
本発明の第2の態様は、リチウムイオン二次電池用正極活物質、すなわち、WおよびLiを含む化合物の微粒子および/または被膜が二次粒子の少なくとも表面に存在する、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物の製造方法に関する。
前記混合物に、前記タングステン化合物中のWに対するLiのモル比が1.2以上となる量のリチウム化合物と、前記混合物の総質量に対して2質量%~30質量%の範囲にある量の水とからなる、リチウム化合物水溶液を噴霧して該混合物をさらに混合するリチウム化合物水溶液噴霧混合工程(第2の混合工程)、および、
前記混合物を500℃以下の温度で熱処理して、該混合物を乾燥させ、前記一次粒子の表面にWおよびLiを含む化合物の微粒子が存在する、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物を得る乾燥工程、
を備えることを特徴とする。
第1の混合工程は、複合酸化物と、タングステン化合物とを乾式混合して、複合酸化物の二次粒子を構成する一次粒子の表面にタングステン化合物を分散させる工程である。最初に、これらの粉末同士を乾式混合することより、複合酸化物中に、タングステン化合物をより均一に分散させることができる。
第2の混合工程は、得られた複合酸化物とタングステン化合物との混合物に、従来の水に代替して、リチウム化合物水溶液を噴霧して混合する工程である。これにより、複合酸化物の総質量に対して0.4質量%を超える、好ましく0.7質量%以上の添加量のタングステン化合物が存在する混合物において、タングステン化合物の添加量に対して十分な量のリチウム化合物が、第1の混合工程である乾式混合工程および第2の混合工程であるリチウム化合物水溶液噴霧混合工程を通じて供給される。このため、水の存在下、複合酸化物の一次粒子の表面に遊離した水酸化リチウムなどの余剰リチウムと酸化タングステンなどのタングステン化合物との中和反応を、より均一かつ十分に進めることが可能となる。特に、タングステン化合物の平均粒径d50を、70μm以下、具体的には0.1μm~70μmの範囲に規制することと組み合わせることにより、未反応のタングステン化合物の残留量をほぼゼロとする、あるいは、ほぼゼロに近づけることが可能となる。
14LiOH・H2O+7WO3→7(Li2WO4)・4(H2O)+17H2O
複合酸化物とタングステン化合物との混合物に、リチウム化合物水溶液を噴霧することより得られた混合物を乾燥して、WおよびLiを含む化合物被覆複合酸化物を得る工程である。
本発明では、リチウム化合物水溶液噴霧混合工程の後であって、乾燥工程の前に、混合物を、30℃~80℃の範囲にある温度で加熱しつつ、1時間~2時間の範囲にある時間で静置する、静置工程を備えることが好ましい。
リチウム化合物水溶液噴霧混合工程の後、あるいは、静置工程を設けた場合にはこの静置工程の後であって、乾燥工程の前に、混合物を、5m/秒~10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、5分~60分の範囲の時間で混合する、追加的混合工程(第3の混合工程)を設けることが好ましい。
本発明の製造方法を適用することにより、WおよびLiを含む化合物被覆前の複合酸化物を構成する二次粒子の平均粒径MVに対する、WおよびLiを含む化合物被覆後の正極活物質を構成する二次粒子の平均粒径MVの比率は、90%以上となる。この比率は、95%以上であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法では、母材として、多孔質構造で三元系の複合酸化物、すなわち、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、該二次粒子は、前記凝集した一次粒子により形成された外殻部と、該外殻部の内側に存在し、前記凝集した一次粒子により形成され、かつ、前記外殻部と電気的に導通する凝集部と、および、該凝集部の中に分散して存在する空間部とを備えた多孔質構造を有している、三元系の複合酸化物を用いる点に特徴があるが、この複合酸化物の製造方法について限定されることはない。
このような多孔質構造の複合酸化物の粒子構造は、前駆体であるニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物(以下、「複合水酸化物」という)の粒子構造を引き継ぐ。この粒子構造を有する複合水酸化物は、以下のような晶析反応により製造することが好ましい。
複合水酸化物は、反応槽内に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給することで反応水溶液を形成し、晶析反応によって、得られる。
核生成工程では、はじめに、この工程における原料となる遷移金属の化合物を水に溶解し、原料水溶液を調製する。同時に、反応槽内に、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給および混合して、液温25℃基準で測定するpH値が12.0~14.0、アンモニウムイオン濃度が3g/L~25g/Lである反応前水溶液を調製する。なお、反応前水溶液のpH値はpH計により、アンモニウムイオン濃度はイオンメータにより測定することができる。
核生成工程終了後、反応槽内の核生成用水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5~12.0に調整し、粒子成長工程における反応水溶液である粒子成長用水溶液を形成する。pH値は、アルカリ水溶液の供給を停止することでも調整可能であるが、粒度分布の狭い複合水酸化物の二次粒子を得るためには、一旦、すべての水溶液の供給を停止してpH値を調整することが好ましい。具体的には、すべての水溶液の供給を停止した後、核生成用水溶液に、原料となる金属化合物を構成する酸と同種の無機酸を供給することにより、pH値を調整することが好ましい。
複合水酸化物の二次粒子の粒径は、粒子成長工程や核生成工程の時間、核生成用水溶液や粒子成長用水溶液のpH値や、原料水溶液の供給量により制御することができる。たとえば、核生成工程を高いpH値で行うことにより、または、粒子生成工程の時間を長くすることにより、供給する原料水溶液に含まれる金属化合物の量を増やし、核の生成量を増加させ、得られる複合水酸化物の二次粒子の粒径を小さくすることができる。反対に、核生成工程における核の生成量を抑制することで、得られる複合水酸化物の二次粒子の粒径を大きくすることができる。
本発明の複合水酸化物の製造方法では、核生成用水溶液とは別に、粒子成長工程に適したpH値およびアンモニウムイオン濃度に調整された成分調整用水溶液を用意し、この成分調整用水溶液に、核生成工程後の核生成用水溶液、好ましくは核生成工程後の核生成用水溶液から液体成分の一部を除去したものを添加および混合して、これを粒子成長用水溶液として、粒子成長工程を行ってもよい。
a)原料水溶液
本発明においては、原料水溶液中に含まれる金属元素の比率が、概ね、得られる複合水酸化物の組成比となる。
反応水溶液中のpH値を調整するアルカリ水溶液は、特に制限されることはなく、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。なお、アルカリ金属水酸化物を、直接、反応水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度を、好ましくは20質量%~50質量%、より好ましくは20質量%~30質量%とする。
アンモニウムイオン供給体を含む水溶液も、特に制限されることはなく、たとえば、アンモニア水、または、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、もしくは、フッ化アンモニウムなどの水溶液を使用することができる。
本発明の複合水酸化物の製造方法においては、反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を、核生成工程においては12.0~14.0の範囲に、粒子成長工程においては10.5~12.0の範囲に制御することが必要となる。なお、いずれの工程においても、晶析反応中のpH値の変動幅は、±0.2以内に制御することが好ましい。pH値の変動幅が大きい場合には、核生成量と粒子成長の割合が一定とならず、粒度分布の狭い複合水酸化物の二次粒子を得ることが困難となる。なお、反応水溶液のpH値はpH計により測定することができる。
a)非酸化性雰囲気
本発明の製造方法においては、複合水酸化物の二次粒子の中心部、高密度層、および外殻層を形成する段階における反応雰囲気は、非酸化性雰囲気である。具体的には、不活性ガスなどの非酸化性ガスを導入することにより、反応雰囲気中における酸素濃度が、2容量%以下、好ましくは1容量%以下である非酸化性雰囲気となるように、酸素と不活性ガスの混合雰囲気に制御する。
一方、複合水酸化物の二次粒子の第1の低密度層および第2の低密度層を形成する段階では、反応雰囲気を、酸化性雰囲気に制御する。具体的には、反応雰囲気中における酸素濃度が、2容量%を超えて5容量%以下となるように、好ましくは3容量%以上となるように制御する。反応雰囲気中の酸素濃度をこのような範囲に制御することにより、粒子成長が抑制され、微細一次粒子の平均粒径が0.02μm~0.3μmの範囲となるため、中心部、高密度層、および外殻層と十分な密度差を有する第1の低密度層および第2の低密度層を形成することができる。反応雰囲気中における酸素濃度が、5容量%を超えると、少なくともニッケル、マンガン、およびコバルトを含有する組成の三元系の複合水酸化物では、微細一次粒子の平均粒径が0.02μm未満となって、高密度層および外殻層に吸収される微細一次粒子の総量が不十分となって、このような複合水酸化物を前駆体として得られたリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物において、その粒子強度の向上が十分に図られない。一方、反応雰囲気中における酸素濃度が2容量以下であると、微細一次粒子の平均粒径が0.3μmを超えてしまい、中心部、高密度層および外殻層を構成する板状一次粒子と、第1の低密度層および第2の低密度層を構成する微細一次粒子との間でその粒径の差が小さくなりすぎて、低密度層の収縮による、空間部の形成が不十分となるおそれがある。
粒子成長段階の第1段階(初期段階)における非酸化雰囲気による晶析反応は、粒子成長工程時間の全体に対して、好ましくは8%~20%の範囲、より好ましくは10%~18%の範囲とする。
複数の板状一次粒子および該板状一次粒子よりも小さな微細一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、
前記二次粒子は、主として前記板状一次粒子が凝集して形成された中心部と、該中心部の外側に、主として前記微細一次粒子が凝集して形成された第1の低密度層と、第1の低密度層の外側に、主として前記板状一次粒子が凝集して形成された高密度層と、該高密度層の外側に、主として前記微細一次粒子が凝集して形成された第2の低密度層と、第2の低密度層の外側に、主として前記板状一次粒子が凝集して形成された外殻層とを備え、および、
タップ密度が、0.95g/cm3以上であり、
前記二次粒子の平均粒径MVが、3μm~12μmの範囲にあり、かつ、前記二次粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径MV〕が、0.65以下である、
複合水酸化物が得られる。
母材である複合酸化物は、前記複合水酸化物とリチウム化合物を混合して、リチウム混合物を形成する混合工程と、前記混合工程で形成された前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気中、650℃~920℃の範囲にある温度で焼成する焼成工程により得られる。
任意的な工程であり、リチウム化合物との混合の前に複合水酸化物を熱処理粒子(余剰水分を除去された複合水酸化物、および/または、酸化物に転換された複合酸化物)とする。
混合工程は、複合水酸化物または熱処理粒子に、リチウム化合物を混合して、リチウム混合物を得る工程である。
リチウム化合物として、水酸化リチウムや炭酸リチウムを使用する場合には、混合工程後、焼成工程の前に、リチウム混合物を、後述する焼成温度よりも低温、かつ、350℃~800℃、好ましくは450℃~780℃で仮焼する仮焼工程を行ってもよい。これにより、複合水酸化物または熱処理粒子中に、リチウムを十分に拡散させることができ、より均一なリチウム複合酸化物を得ることができる。
焼成工程は、混合工程で得られたリチウム混合物を所定条件の下で焼成し、複合水酸化物または熱処理粒子中にリチウムを拡散させて、リチウム複合酸化物を得る工程である。
リチウム混合物の焼成温度は、650℃~920℃とすることが必要となる。焼成温度が650℃未満では、複合水酸化物または熱処理粒子中にリチウムが十分に拡散せず、余剰のリチウムや未反応の複合水酸化物または熱処理粒子が残存したり、得られる正極活物質の結晶性が不十分なものとなったりする。一方、焼成温度が920℃を超えると、正極活物質の二次粒子中の気孔が潰れてしまう可能性があり、また、正極活物質の二次粒子間が激しく焼結し、異常粒成長が引き起こされ、不定形な粗大粒子の割合が増加することとなる。二次粒子を構成する凝集部および空間部をそれぞれ適切な大きさの範囲内に制御する観点からは、リチウム混合物の焼成温度を700℃~920℃とすることが好ましく、750℃~900℃とすることがより好ましい。
焼成時間のうち、上述した焼成温度での保持時間は、少なくとも2時間とすることが好ましく、4時間~24時間とすることがより好ましい。焼成温度における保持時間が2時間未満では、複合水酸化物または熱処理粒子中にリチウムが十分に拡散せず、余剰のリチウムや未反応の複合水酸化物または熱処理粒子が残存したり、得られる正極活物質の結晶性が不十分なものとなったりするおそれがある。
焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が18容量%~100容量%の雰囲気とすることがより好ましく、上記酸素濃度の酸素と不活性ガスの混合雰囲気(大気または酸素気流)とすることが特に好ましい。酸素濃度が18容量%未満では、正極活物質の結晶性が不十分なものとなるおそれがある。
焼成工程によって得られた複合酸化物を構成する二次粒子は、凝集または軽度の焼結が生じている場合に、凝集体または焼結体を解砕する任意的な工程である。これによって、得られる正極活物質の平均粒径や粒度分布を好適な範囲に調整することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、セパレータ、および非水電解質などの構成部材を備える、一般的な非水電解質二次電池と同様の構成を採ることができる。あるいは、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、および固体電解質などの構成部材を備える、一般的な固体電解質二次電池と同様の構成を採ることができる。すなわち、本発明は、リチウムイオンの脱離および挿入により、充放電を行う二次電池であれば、非水電解液二次電池から全固体リチウム二次電池まで広く適用可能である。なお、以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本発明は、本明細書に記載されている実施形態に基づいて、種々の変更、改良を施した形態のリチウムイオン二次電池に適用することが可能である。
a)正極
上述した正極活物質を用いて、たとえば、以下のようにしてリチウムイオン二次電池の正極を作製する。
負極には、金属リチウムやリチウム合金などを使用することができる。また、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合剤を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用することができる。
セパレータは、非水電解質二次電池において、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、非水電解質を保持する機能を有する。このようなセパレータとしては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることができるが、上記機能を有するものであれば、特に限定されることはない。
非水電解質二次電池に用いられる非水電解質には、支持塩であるリチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液などが用いられる。
リチウムイオン二次電池の構成は、特に限定されず、非水電解質二次電池における、正極、負極、セパレータ、非水電解質などからなる構成や、固体電解質二次電池における、正極、負極、固体電解質などからなる構成を採りうる。また、二次電池の形状は、特に限定されず、円筒形や積層形など、種々の形状に採ることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、上述したように、本発明のWおよびLiを含む化合物の被覆がより均一に二次粒子の少なくとも表面に存在する、多孔質構造で三元系の正極活物質を正極材料として用いているため、容量特性、出力特性、およびサイクル特性に優れる。したがって、従来のWおよびLiを含む化合物の被覆を備えない多孔質構造で三元系の正極活物質、WおよびLiを含む化合物の被覆を備えながら、多孔質構造を有しない三元系の正極活物質、あるいは、WおよびLiを含む化合物の被覆を備えた、多孔質構造ではあるが、被覆が均一に形成されていない、三元系の正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池との比較において、より低抵抗で高出力という電池特性を発揮することが可能である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、上述のように、容量特性、出力特性、およびサイクル特性に優れており、これらの特性が高いレベルで要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末、デジタルカメラなど)の電源に好適に利用することができる。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、小型化および高出力化が可能であるばかりでなく、安全性および耐久性にも優れており、高価な保護回路を簡略することができるため、搭載スペースに制約を受ける電気自動車などの輸送用機器の電源としても好適に利用することができる。
a)複合水酸化物の製造
[核生成工程]
はじめに、反応槽内に、水を14L入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。この際、反応槽内に窒素ガスを30分間流通させ、反応雰囲気を、酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とした。続いて、反応槽内に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量供給し、pH値が、液温25℃基準で12.6、アンモニウムイオン濃度が10g/Lとなるように調整することで反応前水溶液を形成した。
核生成終了後、すべての水溶液の供給を一旦停止するとともに、硫酸を加えて、pH値が、液温25℃基準で11.2となるように調整することで、粒子成長用水溶液を形成した。pH値が所定の値になったことを確認した後、核生成工程と同様の115ml/分と一定の割合で、原料水溶液を供給し、核生成工程で生成した核(粒子)を成長させた。
[組成]
ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPE-9000)を用いた分析により、この複合水酸化物の組成は、一般式:Ni0.33Mn0.33Co0.33(OH)2で表されるものであることが確認された。
複合水酸化物の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ(日本電子株式会社製、IB-19530CP)加工によって断面観察可能な状態とした上で、10個以上の複合水酸化物の二次粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM:日本電子株式会社製、JSM-6360LA)により観察した。この結果、この複合水酸化物は、板状一次粒子が凝集して形成された中心部を有し、中心部の外側に、微細一次粒子が凝集して形成された第1の低密度層と、板状一次粒子が凝集して形成された高密度層と、微細一次粒子が凝集して形成された第2の低密度層と、板状一次粒子が凝集して形成された外殻層からなり、また、中心部、高密度層、および外殻層を構成する板状一次粒子の一部は、相互に連結していることが確認された。二次粒子の断面に存在する10個以上の微細一次粒子および板状一次粒子の最大外径(長軸径)を測定し、その平均値を求め、この値を、この二次粒子における微細一次粒子または板状一次粒子の粒径とし、次に、10個以上の二次粒子について、同様に微細一次粒子および板状一次粒子の粒径を求め、これらの二次粒子について得られた粒径の平均を求めた。板状一次粒子の平均粒径は、0.53μmであり、微細一次粒子の平均粒径は、0.09μmであった。
レーザ光回折散乱式粒度分析計(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3300EXII)を用いて、複合水酸化物の二次粒子の平均粒径MVを測定するとともに、d10およびd90を測定し、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径MV〕を算出した。この結果、平均粒径MVは、5.5μmであり、〔(d90-d10)/平均粒径MV〕は0.50であることが確認された。
タッピングマシン(株式会社蔵持科学器械製作所製、KRS-406)によりタップ密度を測定した。この結果、タップ密度は1.05g/cm3であることが確認された。
上述のようにして得られた複合水酸化物を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中、120℃で12時間熱処理した後(熱処理工程)、Li/Meが1.10となるように、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて水酸化リチウムと十分に混合し、リチウム混合物を得た(混合工程)。
[組成]
ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPE-9000)を用いた分析により、この複合酸化物の組成は、一般式:Li1.10Ni0.33Mn0.33Co0.33O2で表されるものであることが確認された。
複合酸化物の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ(日本電子株式会社製、IB-19530CP)加工によって断面観察可能な状態とした上で、SEM(FE-SEM:日本電子株式会社製、JSM-6360LA)により観察した。この結果、この複合酸化物は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、この二次粒子は、外殻部と、外殻部の内側に分散して存在し、外殻部と電気的に導通する凝集部と、および、外殻部の内側で凝集部の間に存在する、一次粒子の存在しない気孔構造からなる空間部とを備えていることが確認された。また、上記SEM観察から得た、任意の10個以上の二次粒子を含む断面画像の観察から、二次粒子の外殻部の平均厚さは、0.3μmであった。
レーザ光回折散乱式粒度分析計(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3300EXII)を用いて、複合酸化物の二次粒子の平均粒径MVを測定するとともに、d10およびd90を測定し、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径MV〕を算出した。この結果、平均粒径MVは、5.0μmであり、〔(d90-d10)/平均粒径MV〕は0.42であることが確認された。
流動方式ガス吸着法比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、マックソーブ1200シリーズ)によりBET比表面積を、タッピングマシン(株式会社蔵持科学器械製作所製、KRS-406)によりタップ密度を、微小粒子圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCTM-500)により粒子強度を、それぞれ測定した。この結果、BET比表面積は3.0m2/gであり、タップ密度は1.4g/cm3であり、粒子強度は27MPaであることが確認された。
タングステン化合物として、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3300EXII)を用いて計測した平均粒径d50が40μmである酸化タングステン(WO3)を用いた。
[平均粒径MVおよび粒度分布]
レーザ光回折散乱式粒度分析計(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3300EXII)を用いて、正極活物質の平均粒径MVを測定するとともに、d10およびd90を測定し、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径MV〕を算出した。この結果、平均粒径MVは、4.8μm(WおよびLiを含む化合物被覆前の複合酸化物の平均粒径MVに対する比率:96%)であり、〔(d90-d10)/平均粒径MV〕は0.42であることが確認された。
流動方式ガス吸着法比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、マックソーブ1200シリーズ)によりBET比表面積を、タッピングマシン(株式会社蔵持科学器械製作所製、KRS-406)によりタップ密度を、それぞれ測定した。この結果、BET比表面積は3.2m2/gであり、タップ密度は1.4g/cm3であることが確認された。
得られた正極活物質の組成をICP発光分析法により分析したところ、W含有量はNi、Mn、およびCoの原子数の合計に対して0.35原子%の組成であることを確認した。
X線回折(XRD)装置(スペクトリス株式会社製、X‘Pert PRO)を用いた単色粉末XRD分析の結果から、二次粒子の表面にあるWおよびLiを含む化合物の被覆は、タングステン酸リチウムの水和物(7Li2WO4・4H2O)からなることを確認した。また、酸化タングステン(WO3)のピークは確認されなかった。
図5に示すような2032型コイン電池を作成した。具体的には、上述のようにして得られた正極活物質:52.5mgと、アセチレンブラック:15mgと、PTEE:7.5mgを混合し、100MPaの圧力で、直径11mm、厚さ100μmにプレス成形した後、真空乾燥機中、120℃で12時間乾燥することにより、正極11を作製した。
[正極界面抵抗]
正極界面抵抗の測定は、インピーダンス測定法を用い、2032型コイン電池を充電電位4.4Vで充電し、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用することで、図6に示すナイキストプロットを得た。図6に示すナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および、正極抵抗(界面抵抗)とその容量を示す特性曲線の和として表されているため、このナイキストプロットに基づき、図6に示す等価回路を用いてフィッティング計算して、正極界面抵抗の値を算出した。なお、正極界面抵抗については、後述する比較例2の正極活物質を基準とし、これに対する抵抗減少率を示す。その結果、正極界面抵抗は、比較例2に対して0.68倍まで減少していた。
2032型コイン電池を作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2として、カットオフ電圧が4.3Vとなるまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量を測定する充放電試験を行なって、初期放電容量を求めた。さらに、充電と放電を繰り返し100回行い、初期放電容量に対する2回目の放電容量の比率を放電容量維持率とした。その結果、放電容量維持率は、89%であった。
水酸化リチウム水溶液における水酸化リチウムの量を、酸化タングステンのW量に対して、Liのモル比が5となる量としたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得て、その評価を行った。
水酸化リチウム水溶液における水酸化リチウムの量を、酸化タングステンのW量に対して、Liのモル比が8となる量としたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得て、その評価を行った。
追加的混合工程を設けずに、静置工程後に、混合物の乾燥を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得て、その評価を行った。
静置工程を設けずに、リチウム化合物水溶液噴霧混合工程後に、さらに追加的混合工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得て、その評価を行った。
静置工程および追加的混合工程を設けずに、リチウム化合物水溶液噴霧混合工程後に、混合物の乾燥を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得て、その評価を行った。
タングステン化合物として、レーザ光回折散乱式粒度分析計を用いた平均粒径d50が50μmである酸化タングステンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得て、その評価を行った。
複合酸化物含まれるNi、Mn、およびCoの原子数の合計に対して、1.9原子%となるW量の酸化タングステン(複合酸化物に対して5.0質量%)を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得て、その評価を行った。
タングステン化合物として、レーザ光回折散乱式粒度分析計を用いた平均粒径d50が80μmである酸化タングステンを用いたこと、および、リチウム化合物水溶液噴霧混合工程において、水酸化リチウムを添加することなく、第1の混合工程において得られた混合物に対して10質量%の量の純水を平均粒径100μm以下の霧状態で、第1の混合工程で得られた混合物に対して、8m/秒の周速で混合物を攪拌しながら、10分間、噴霧して、噴霧完了後、8m/秒の周速で5分間、混合を継続し、その後、混合物を静置することなく乾燥工程に供したこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得て、その評価を行った。
リチウム化合物水溶液噴霧混合工程において、水酸化リチウムを添加することなく、第1の混合工程において得られた混合物に対して35質量%の量の純水を平均粒径100μm以下の霧状態で、第1の混合工程で得られた混合物に対して、8m/秒の周速で混合物を攪拌しながら、10分間、噴霧して、噴霧完了後、10m/秒の周速で5分間、混合を継続し、その後、混合物を静置することなく乾燥工程に供したこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得て、その評価を行った。
実施例1における母材にWおよびLiを含む化合物被覆を施す工程を省略し、母材の複合酸化物を正極活物質として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得て、その評価を行った。
2 凝集部
3 空間部
4 WおよびLiを含む化合物の微粒子
5 WおよびLiを含む化合物の被膜
11 正極(評価用電極)
12 負極
13 セパレータ
14 ガスケット
15 正極缶
16 負極缶
Claims (20)
- 複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、前記二次粒子の少なくとも表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子および/または被膜からなる被覆が存在する、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池用正極活物質であって、
前記二次粒子は、前記凝集した一次粒子により形成された外殻部と、該外殻部の内側に存在し、前記凝集した一次粒子により形成され、かつ、前記外殻部と電気的に導通する凝集部と、および、該凝集部の中に分散して存在する空間部とを備え、
X線光電子分光法による前記二次粒子の表面分析により得られたXPSスペクトルに基づく、前記二次粒子の表面に存在するWおよびLiを含む化合物の被覆率が、5%~80%の範囲にあることを特徴とする、
リチウムイオン二次電池用正極活物質。 - 前記微粒子の大きさは、5nm~400nmの範囲にあり、および、前記被膜の厚さは、1nm~200nmの範囲にある、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記二次粒子の平均粒径MVは、3μm~10μmの範囲にあり、かつ、前記二次粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径MV〕は、0.70以下である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記二次粒子の外殻部の厚さは、0.1μm~1.0μmの範囲にある、請求項1~3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記正極活物質のタップ密度は、1.0g/cm3~1.8g/cm3の範囲にある、請求項1~4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記正極活物質のBET比表面積は、2.0m2/g~5.0m2/gの範囲にある、請求項1~5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 一般式(A):Li1+uNixMnyCozWsMtO2(-0.05≦u≦0.50、x+y+z+s+t=1、0.3≦x≦0.7、0.15≦y≦0.4、0.15≦z≦0.4、0.001≦s≦0.03、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、六方晶層状岩塩構造の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなる、請求項1~6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、該二次粒子は、前記凝集した一次粒子により形成された外殻部と、該外殻部の内側に存在し、前記凝集した一次粒子により形成され、かつ、前記外殻部と電気的に導通する凝集部と、および、該凝集部の中に分散して存在する空間部とを備えた多孔質構造を有している、母材であるリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物に、該複合酸化物の総質量に対して0.4質量%を超えて、5質量%以下の範囲にある量のタングステン化合物を混合して、混合物を得る乾式混合工程、
前記混合物に、前記タングステン化合物中のWに対するLiのモル比が1.2以上となる量のリチウム化合物と、前記混合物の総質量に対して2質量%~30質量%の範囲にある量の水とからなる、リチウム化合物水溶液を噴霧して該混合物をさらに混合するリチウム化合物水溶液噴霧混合工程、および、
前記混合物を500℃以下の温度で熱処理して、該混合物を乾燥させ、前記一次粒子の表面にWおよびLiを含む化合物の微粒子および/または被膜からなる被覆が存在する、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物を得る乾燥工程、
を備える、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。 - 前記タングステン化合物の混合量は、前記複合酸化物の総質量に対して0.7質量%以上である、請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記タングステン化合物は、酸化タングステンである、請求項8または9に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記タングステン化合物の平均粒径d50は0.1μm~70μmの範囲にある、請求項8~10のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記リチウム化合物水溶液において、前記リチウム化合物は、前記タングステン化合物中のWに対するLiのモル比が1.2~10の範囲となる量で含まれる、請求項8~11のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記リチウム化合物水溶液において、前記水は、前記混合物の総質量に対して5質量%~25質量%の範囲となる量で含まれる、請求項8~12のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記リチウム化合物は、水酸化リチウムである、請求項8~13のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記乾式混合工程を、5m/秒~10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、5分~60分の範囲の時間で行う、請求項8~14のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記リチウム化合物水溶液噴霧混合工程において、5m/秒~10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、50ml/分~100ml/分の範囲にある噴霧速度でリチウム化合物水溶液噴霧を行い、その後、5m/秒~10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、5分~60分の範囲の時間で混合を継続する、請求項8~15のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記リチウム化合物水溶液噴霧混合工程の後であって、前記乾燥工程の前に、前記混合物を、50℃~80℃の範囲にある温度で加熱しつつ、1.5時間~2時間の範囲にある時間で静置する、静置工程を備える、請求項8~16のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記リチウム化合物水溶液噴霧混合工程あるいは前記静置工程の後であって、前記乾燥工程の前に、前記混合物を、5m/秒~10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、5分~ 60分の範囲の時間で混合する、追加的混合工程を備える、請求項8~17のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記リチウムイオン二次電池用正極活物質は、一般式(A):Li1+uNixMnyCozWsMtO2(-0.05≦u≦0.50、x+y+z+s+t=1、0.3≦x≦0.7、0.15≦y≦0.4、0.15≦z≦0.4、0.001≦s≦0.03、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、六方晶層状岩塩構造の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなる、請求項8~18のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 正極、負極、セパレータ、および非水電解質を備え、あるいは、正極、負極、および固体電解質を備え、前記正極に用いられる正極活物質として、請求項1~7のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質が用いられている、リチウムイオン二次電池。
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