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JP7230562B2 - Ni含有低合金鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

Ni含有低合金鋼の連続鋳造方法 Download PDF

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JP7230562B2 JP2019023825A JP2019023825A JP7230562B2 JP 7230562 B2 JP7230562 B2 JP 7230562B2 JP 2019023825 A JP2019023825 A JP 2019023825A JP 2019023825 A JP2019023825 A JP 2019023825A JP 7230562 B2 JP7230562 B2 JP 7230562B2
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Description

本願はNi含有低合金鋼の連続鋳造方法等を開示する。
近年、機械構造用合金鋼などの製品において、Nb、V、Niなどの合金元素を含有させる、あるいはC、Nを富化するなどの手段によって機械的性質の改善を図ろうとする試みが広く行われている。これらを含有する合金鋼を湾曲型または垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて鋳造する場合、いわゆる横割れや横ひび割れと呼ばれる割れが鋳片の表面に発生しやすい。この割れは、連続鋳造機の矯正点において鋳片の曲げが矯正される際に、鋳片の表面に作用する応力が鋼に固有の限界応力を超えるために発生する。特に、上記の合金鋼においては、鋳型から引き抜かれた後の二次冷却過程において、オーステナイト粒界にAlNやNbCなどの窒化物や炭化物が析出しやすい。これらの析出物が析出したオーステナイト粒界は、鋳片に応力が作用した場合に割れの起点となりやすい。
また、矯正の際に鋳片の表面割れが起こる原因の1つに、鋳造ままのγ粒が製品段階と比較して極めて大きいため、応力が脆弱部に集中しやすいということが挙げられる。そこで、鋳型の直下から一定温度以下まで鋳片表面を強く冷却し、続いて一定温度以上に復熱させ、表層のオーステナイト粒を微細化してから矯正する技術が提案されている。
たとえば、特許文献1には、鋳片の表面をその温度がAr3以上の温度域からAr1以下の温度域になるまで300℃/s以上の冷却速度で冷却し、その後、再び鋳片の表面温度をAr3以上の温度域まで復熱させることを特徴とする連続鋳造鋳片の表面割れ防止方法が提案されている、
特許文献2には、連続鋳造の鋳型直下から矯正点の手前の冷却過程において、鋼の連続冷却変態線図でのベイナイト、フェライトあるいはパーライト変態開始温度を下回る温度まで鋳片の表層部を冷却し、次いでAc3以上の温度まで3℃/s以上50℃/s以下の昇温速度にて復熱させる、もしくはAr3-100℃を下回る温度まで鋳片の表層部を冷却し、次いでAc3以上の温度まで1.4℃/s以下の昇温速度にて復熱させることを特徴とする鋼の連続鋳造方法が提案されている。
特許文献3には、連続鋳造の鋳型直下において鋼の連続冷却変態線図におけるフェライト-パーライト変態終了温度未満かつベイナイト変態開始温度を超える温度域までの鋳片の表層部を冷却し、その後、前記連続冷却変態線図におけるフェライト-パーライト変態のノーズを通る一定速度の冷却曲線と交差するまで、フェライト-パーライト変態終了温度未満かつベイナイト変態開始温度を超える温度域に保持することを特徴とする連続鋳造方法が提案されている。
特許4923650号公報 特許5928413号公報 特許5884479号公報
特許文献1~3に開示された技術はいずれも、鋼の相変態を利用して結晶粒を微細化し、矯正点における延性を改善させることを目的とした技術であるが、鋼の組成によっては2次冷却帯に相当する冷却速度においてフェライト-パーライト変態せずAr3を定義できない、すなわち上記技術では十分な表面割れの抑制指針が得られない鋼種も実際に生産されている。そのような鋼種として、例えば、Ni含有低合金鋼が挙げられる。Ni含有低合金鋼の連続鋳造において鋳片の矯正を行う際に発生する鋳片表面の横割れやひび割れを安定して抑制することが可能な新たな技術が必要である。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、質量%で、C:0.1~0.4%、Si:0.01~0.5%、Mn:0.3~1.4%、Cr:0.8~2.0%、Mo:0.6%以下、Ni:0.5~2.0%の組成を有する鋼の鋳片を、矯正点を有する連続鋳造機を用いて連続的に鋳造する方法であって、鋳型の直下から前記矯正点に至る前において、前記鋳片の表面温度が350~475℃の間にある時間をT(s)、600~675℃にある時間をT(s)として、下記式(a)で定められるT(s)が60以上となるように前記鋳片を冷却し、次いで前記矯正点に至る前までに、前記鋳片の表面温度をAc3以上の温度域まで復熱させることを特徴とする、Ni含有低合金鋼の連続鋳造方法を開示する。
=T+T×0.04×[Ni]-2.32 ・・・(a)
ただし、T ≧35
(式(a)において[Ni]は鋼におけるNiの濃度(質量%)である。)
本開示のNi含有低合金鋼の連続鋳造方法において、前記鋳片は、質量%で、Al:0.1%以下、Ti:0.1%以下、V:0.4%以下、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下、Nb:0.05%以下、B:0.004%以下、N:0.025%以下の組成を有していてもよい。
本開示の方法によれば、連続鋳造時に鋳片の矯正を行う際に発生する、鋳片の表面の横割れや横ひび割れを安定して抑制することができる。そのため、本開示の方法で製造した鋳片を熱間圧延することにより、表面割れ等の発生が抑制された鋼板や鋼片を得ることができる。
本開示の鋼の連続鋳造方法にて採用される連続鋳造機の一例を説明するための概略図である。 炭素鋼のTTT線図の一例を示す図である。 低炭合金鋼(JIS:SCM420)のTTT線図の一例を示す図である。 、Tについて補足説明するための図である。 モデル実験により得られた鋳片表層組織の状態を示す図である。 鋼種N05について、変態点記録測定装置(フォーマスター装置)で付した熱処理パターンと、得られた組織との関係を示す図である。 鋼種N10について、変態点記録測定装置(フォーマスター装置)で付した熱処理パターンと、得られた組織との関係を示す図である。 鋼種N20について、変態点記録測定装置(フォーマスター装置)で付した熱処理パターンと、得られた組織との関係を示す図である。
図1を参照しつつ本開示のNi含有低合金鋼の連続鋳造方法について説明する。図1においては分かり易さのため冷却スプレーノズル等を省略して示している。冷却スプレーノズルは、例えば、鋳型10の直下から矯正点20に至る前までの間のサポートロール間に備えられ、鋳片1の両面側から冷却水を噴射し得る。図1においては垂直曲げ型の連続鋳造機100を例示したが、本開示の連続鋳造方法は矯正点を有するいずれの連続鋳造機を用いた場合にも適用可能である。例えば、湾曲型の連続鋳造機を用いてもよい。尚、「矯正点」とは、鋳片1の鋳造方向を湾曲から水平方向に矯正するために歪を加える点をいう。なお、矯正は複数個所で行ってもよい。鋳型10、矯正点20等を備える連続鋳造機100の構成そのものについては従来公知の構成と同様とすればよいことから、ここでは詳細な説明を省略する。
図1に示すように、本開示のNi含有低合金鋼の連続鋳造方法は、質量%で、C:0.1~0.4%、Si:0.01~0.5%、Mn:0.3~1.4%、Cr:0.8~2.0%、Mo:0.6%以下、Ni:0.5~2.0%の組成を有する鋼の鋳片1を、矯正点20を有する連続鋳造機100を用いて連続的に鋳造する方法であって、鋳型10の直下から矯正点20に至る前において、鋳片1の表面温度が350~475℃の間にある時間をT(s)、600~675℃にある時間をT(s)として、下記式(a)で定められるT(s)が60以上となるように鋳片1を冷却し、次いで矯正点20に至る前までに、鋳片1の表面温度をAc3以上の温度域まで復熱させることを特徴とする。
=T+T×0.04×[Ni]-2.32 ・・・(a)
(式(a)において[Ni]は鋼におけるNiの濃度(質量%)である。)
1.鋼種
本開示の連続鋳造方法において、鋳造対象となる鋼にはFe以外にC、Si、Mn、Cr及びNiが必須で含まれる。また、任意成分として、例えば、Mo、Al、Ti、V、Ca、Mg、REM、Nb、B及びNから選ばれる少なくとも1つが含まれていてもよい。また、不可避不純物として、例えば、PやSが含まれていてもよい。
1.1 C
Cは鋼の静的強度だけでなく、疲労強度、靭性、延性に影響する最も基本的な元素である。Cが0.1質量%未満では静的強度および疲労強度が不十分である。よって下限を0.1質量%以上とする。また、0.4質量%を超えると靭性が劣化する。よって上限を0.4質量%以下とする。
1.2 Si
SiはCに次いで固溶強化能が大きい重要な元素である。Siが0.01質量%未満では十分な強度を得ることができない。よって下限を0.01質量%以上とする。また、0.5質量%を超えると靭性や加工性を著しく劣化させる。よって上限を0.5質量%以下とする。
1.3 Mn
Mnは焼入れ性を向上させ、冷却速度が不十分な場合でも部品の内部まで硬度を確保するのに重要な元素である。Mnが0.3質量%未満では必要な強度が確保できない。よって下限を0.3質量%以上とする。また、1.4質量%を超えると靭性および加工性が劣化する。よって上限を1.4質量%以下とする。
1.4 Cr
CrはMnと同様、鋼の焼入れ性を向上する有用な元素であり、低合金鋼を構成する重要な元素の1つである。0.8質量%未満ではこの効果が十分得られない。よって下限を0.8質量%以上とする。また、2.0質量%を超えると効果がほぼ飽和し、コストの増大を招く。よって上限を2.0質量%以下とする。
1.5 Mo
Moはその炭窒化物を微細に析出させることにより、焼戻し時に鋼を硬化させる、いわゆる2次硬化を起こす元素であり、疲労強度の改善にも有効である。また、焼入れ性向上効果も大きい。しかし1.5質量%を超えると焼入れ熱処理時に未溶解の炭化物が残存しやすくなり、靭性を劣化させる虞がある。靭性の劣化を十分に抑制するためには、上限を0.6質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されないが、0質量%以上、好ましくは0.004質量%以上とする。
1.6 Ni
Niは強度及び靭性の確保に有効であり、焼入れ性の向上効果も大きい。Niの量を0.5質量%以上とすることで、この効果が一層顕著となる。一方、2.0質量%を超えると効果が飽和して、コストの増大を招く。よって上限を2.0質量%以下とする。
1.7 Al
Alは脱酸目的で最も広く用いられる元素であり、またAlNを生成して結晶粒の粗大化を抑制する効果がある。しかし、0.1質量%を超えると、Alの凝集合に伴い鋳造中にノズル詰まりが発生したり、鋼中に残存するAlが性能を劣化させたりするなどの不具合が生じる虞がある。よって上限を0.1質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されないが、0質量%以上、好ましくは0.016質量%以上とする。
1.8 Ti
TiはAlと同様に窒化物を生成し得る元素であり、熱的安定性に優れ、より高温まで結晶粒粗大化抑制効果を持続させる。ただし、0.1質量%を超えるとTiNが粗大に成長しやすくなり、疲労強度を低下させる虞がある。よって上限を0.1質量%以下とする。下限は特に限定されないが、0質量%以上、好ましくは0.002質量%以上とする。
1.9 V
VはTi及びAlと同様に窒化物を生成し得る元素であり、強度改善のために用いられる。しかし、0.4質量%を超えるとVNが粗大に成長しやすくなり、疲労強度を低下させる虞がある。よって上限を0.4質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、0.002質量%以上とした場合に強度改善の効果が得られ易い。
1.10 Ca
CaはAlを改質し、酸化物系介在物の粗大化を抑制する効果がある。しかし、0.01質量%を超えるとCaO-Alを主成分とする却って粗大な酸化物系介在物を形成し、疲労破壊の基点となる虞がある。よって上限を0.01質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、0.0002質量%以上とした場合に酸化物粗大化を抑制する効果が得られ易い。
1.11 Mg
MgはCa同様、Alを改質し、酸化物系介在物の粗大化を抑制する効果がある。また、硫化物系介在物にも作用し、アスペクト比を低下させる効果がある。しかし、0.01質量%を超えるとMgOを主成分とする粗大なクラスター状酸化物系介在物を形成し、疲労破壊の基点となる虞がある。よって上限を0.01質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、0.0002質量%以上とした場合に酸化物系介在物の粗大化を抑制する効果等が得られ易い。
1.12 REM
REMもまたAlを改質し、酸化物系介在物の粗大化を抑制する効果がある。しかし、0.01質量%を超えると鋼の清浄性を低下させ、母材の靭性を劣化させる虞がある。よって上限を0.01質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、0.0002質量%以上とした場合に酸化物系介在物の粗大化を抑制する効果等が得られ易い。なお、ここでREMとはLaやCe等の希土類元素を表すが、そのうちの任意の1種類、あるいは2種類以上のREMを用いることができる。
1.13 Nb
Nbは強度および靭性の改善に効果がある。しかし、0.05質量%を超えると効果が飽和する。Nbの含有量をあまりに多くし過ぎると、鋳造時に割れが発生する虞もある。よって上限を0.05質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、0.001質量%以上とした場合に強度改善効果や靭性改善効果が得られ易い。
1.14 B
Bは少量で大きな焼入れ性向上効果がある。しかし、0.004質量%を超えると効果が飽和する。Bの含有量をあまりに多くし過ぎると、鋳造時に割れが発生する虞もある。よって上限を0.004質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、0.0002質量%以上とした場合に焼入れ性向上効果が得られ易い。
1.15 N
NはTiN、AlN等の窒化物を生成し、結晶粒粗大化抑制効果を発現させる。しかし、0.025質量%を超えると窒化物の粗大化を招き、疲労強度を低下させる虞がある。また、熱間延性を低下させ、鋳造時あるいは圧延時に表面疵の要因となる虞がある。よって上限を0.025質量%以下とすることが好ましい。鋼材清浄性の観点から、0.02質量%以下とするとより好ましい。下限は特に限定されないが、0質量%以上、好ましくは0.0036質量%以上とする。
2.鋳片1の2次冷却
図1に示すように、本開示の連続鋳造方法においては、上記組成を有する鋼の鋳片1を鋳型10から連続的に引き抜き、鋳型10の直下から矯正点20に至るまでに、鋳片1の表面に冷却水を噴射する等して鋳片1の2次冷却を行う。ここで、本開示の連続鋳造方法においては、鋳型10の直下から矯正点20に至る前において、鋳片1の表面温度が350~475℃の間にある時間をT(s)、600~675℃にある時間をT(s)として、上記式(a)で定められるT(s)が60以上となるように鋳片1を冷却することが重要である。
鋼の連続鋳造においては、粗大な鋳造組織のオーステナイト(もしくは旧オーステナイト)粒界に沿って鋳片の表面割れが発生し易い。これは、温度降下に伴って介在物あるいは軟質なフェライトがオーステナイト(もしくは旧オーステナイト)粒界上に優先的に生成することに起因する。これを防止するために、鋳型直下の2次冷却帯において鋳片の冷却を行うことで、鋳片表層の組織をフェライト-パーライトあるいはベイナイトに変態させ、その後にAc3以上まで復熱させて逆変態させることにより、鋳片表層のオーステナイト組織を微細化させる技術が開発されてきた。
例えば前述した特許文献1にあるとおり、鋳片表層組織をフェライト-パーライトあるいはベイナイトに変態させる(以後必要に応じてオーステナイトの分解と称する)ことを目的として、2次冷却帯における冷却目標温度としてAr1、あるいは特定の温度が提案されてきた。しかし、上記技術は主に炭素鋼を企図して提案されたものである。Cr等を所定量含有する低合金鋼は炭素鋼と比較してフェライト-パーライト変態が遅れる傾向があるため、上記技術では鋳片割れを十分に抑制できないという課題が存在する。
当該課題についてTTT線図を用いて詳しく説明する。図2に炭素鋼のTTT線図の例を、図3に低炭合金鋼(JIS:SCM420)のTTT線図の例を示す。炭素鋼のTTT線図は700℃以下の温度域でのフェライト-パーライト変態が短時間で進行するのに対し、低炭合金鋼のTTT線図は温度により変態の進行が大きく変化する。低炭合金鋼においては、含有するCrやMoの影響によりフェライト-パーライト変態が起こりづらいことが知られており、特に500~600℃においてはベイナイト変態も遅滞するためこのような形状となる。すなわち、例えば炭素鋼においてオーステナイトの分解が迅速に進む温度域であっても鋼種によっては分解が十分に進まないことが一般的に起こり得る。よって、鋼の連続鋳造時に、鋳型直下の2次冷却帯において鋳片を急冷、復熱することにより鋳片表層のオーステナイト組織を微細化して矯正点での割れを回避するためには、鋳造する鋼種の金属学的性質に応じた冷却方法を採用することが必要不可欠である。
一方、TTT線図は様々なデータブックが知られているが、そのほとんどは図2および図3に示すように、オーステナイト化温度1000℃以下によるものである。鋳片冷却中の変態挙動はオーステナイト粒径に大きく依存するため、これらのデータブックをそのまま利用することはできない。本発明者らは上記の組成を有する低合金鋼の変態挙動を踏まえて鋭意研究を進めた結果、2次冷却帯において上記式(a)で定められるT(s)を60以上とすることで、上記の組成を有するNi含有低合金鋼の鋳片表層組織を効果的に変態させることができることを知見した。
尚、本開示の連続鋳造方法においては、Tの温度範囲下限を350℃としているが、鋼種によってはこの温度がマルテンサイト変態開始温度を下回り、組織の一部あるいは全部がマルテンサイトになることも考えられる。しかしながら、その場合でも逆変態後には表層組織の微細化が可能であり、所望の効果を得ることが可能である。
実機の連続鋳造機内においては、鋳片1が鋳型10の直下から矯正点20に至る前までの間において、鋳片1の表面の温度が350~475℃、600~675℃の領域を複数回通過することもあり得る。この場合は、T、Tはそれぞれの温度領域を通過した時間の和で表される。例えば図4に示すような熱履歴において、T、Tは以下の式(b)、(c)で求めることができる。
=t-t・・・(b)
=(t-t)+(t-t) ・・・(c)
2次冷却帯において鋳片1を冷却する方法としては、上述した冷却スプレーノズルを用いて冷却水を噴射する方法のほか、気流を用いる方法、特別な冷却設備を備えず放冷する方法等いずれも有効である。さらに、これらを組み合わせて冷却する方法でも構わない。鋳片1の冷却速度は特に限定されるものではなく、いずれの冷却速度であっても所望の効果が発揮される。
3.鋳片1の復熱
本開示の連続鋳造方法において、2次冷却帯でオーステナイトを分解した後は、矯正点20に至る迄に鋳片1の表面温度をAc3以上の温度に復熱させる。この復熱は、鋳片1の表層組織を微細なオーステナイト組織にする、いわゆる逆変態組織を得るために必須である。復熱温度がAc3に満たない場合、逆変態が起こらない場所が残存する。このような組織は矯正歪に対して割れを呈しやすい鋳造まま組織の影響を有するため、Ac3以上にまで復熱させ、オーステナイト単相組織とすることが割れ発生抑制に有効である。尚、矯正点20に至る迄に鋳片1の表面温度を一旦Ac3以上にまで復熱していれば、その後は鋳片1の表面の熱間延性が高く保たれるため、矯正点20において温度が低下しても表面割れは問題とはならない。
Ac3まで復熱させることにより、鋳片1の表層組織は改質され、適正な2次冷却と組み合わせて表面割れの少ない鋳片を得ることができる。鋳片1内の表面温度や組織のバラつきを一層抑える観点からは、復熱後の最高温度をAc3+30℃以上とすることが好ましい。また、復熱温度が高すぎるとオーステナイト結晶粒が再び粗大化する虞があることから、1200℃以下とすることが好ましい。
尚、Ac3は、変態点記録測定装置(フォーマスター装置)等を用いて測定することができる。或いは、先行文献(邦武立郎: 熱処理, 43, p. 100(2003))で提案されている以下の式(d)を用いてAc3を特定することもできる。
Ac3=(32[Si]+17[Mo])-(231[C]+20[Mn]+40[Cu]+18[Ni]+15[Cr])+912 ・・・(d)
(式(d)中の[Si]、[Mo]、[C]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]は、それぞれの成分の濃度(質量%)を表す。)
鋳片1表面の復熱は、鋳片1の内部から伝わる熱量が鋳片1の表面から放出される熱量を上回ることによっておこる現象である。鋳片1の表面の復熱は、2次冷却帯の冷却を緩和させることで比較的簡単に行うことができる。或いは、鋳造ラインの周囲に熱源や高周波誘導加熱設備を配し、表面を加熱してもよい。鋳片1の復熱速度(昇温速度)は特に限定されるものではなく、いずれの復熱速度であっても所望の効果が発揮される。
以下に示す実施例は、本開示の鋼の連続鋳造方法の一例を示したものである。本開示の鋼の連続鋳造方法は以下に示す例に限定されるものではない。
1.モデル実験1
2次冷却および復熱による鋳片表層組織微細化効果を十分得るための条件を解明するために、変態点記録測定装置(フォーマスター装置)を用いたモデル実験を実施した。
下記表1に示す鋼組成を有するサンプルを1400℃まで加熱し、平均粒径1.5mm以上のオーステナイト組織とした後、ヘリウムガス気流中で350~750℃の種々の温度まで急冷した。急冷したサンプルを30~20000秒間等温保持した後、910℃まで20℃/sで再加熱し、組織を全量オーステナイトとしてから0.2℃/sで室温まで冷却した。得られたサンプルの断面はナイタール液で腐食、SEMで観察した。
Figure 0007230562000001
観察例を図5に示す。急冷および温度保持によってオーステナイトが分解していたと推定されるサンプルでは図5左の写真Aのように、粗大な旧オーステナイト粒界は見られず、フェライトが多数分散する形態となった(以下、この組織を「組織A」と称する)。一方、オーステナイトが分解していないと推定されるサンプルでは図5右の写真Bのように、分散したフェライトのみならず旧オーステナイト粒界上にフェライトはほとんど見られなかった(以下、この組織を「組織B」と称する)。
鋼種N05、N10、N20のそれぞれについて、変態点記録測定装置(フォーマスター装置)で付した熱処理パターンと、得られた組織との関係を図6、7、8に示す。350~475℃においては、サンプル内全面に組織Aを得るための保持時間が短く、いずれも60秒以下であった。一方、500~700℃においては組織Aが得られる保持時間が鋼種により大きく異なった。この温度域においても組織Aは得られるものの、350~475℃の5~125倍の保持時間が必要であった。
2.モデル実験2
上記のモデル実験から、粗大なオーステナイトの分解が比較的迅速に進む温度領域は、350~475℃および600~675℃の2領域であると考えられ、それらの温度域ではそれぞれベイナイト(マルテンサイトを含む可能性あり)、フェライトおよびパーライトが生成していると推定される。本発明者らは上記実験に引き続き、実際の連続鋳造機にて鋳片表層がこれら2つの温度域を両方跨ぐ際の変態挙動を把握すべく、以下の実験を実施した。
上記モデル実験と同様のサンプルを1400℃まで加熱し、平均粒径1.5mm以上のオーステナイト組織とした後、ヘリウムガス気流中で425℃まで急冷し、15秒又は45秒等温保持した。引き続き625℃まで20℃/sで加熱し、40~5400秒等温保持した。その後、さらに910℃まで10℃/sで再加熱し、組織を全量オーステナイトとしてから0.2℃/sで室温まで冷却した。得られたサンプルの断面はナイタール液で腐食、SEMで観察した。
熱処理パターンと得られた組織の関係を下記表2に示す。下記表2において「×」は全面が組織Bであったことを意味し、「△」は組織Aと組織Bとが混在していたことを意味し、「○」は全面が組織Aであったことを意味する。
Figure 0007230562000002
表2に示す結果から明らかなように、425℃で45秒保持したサンプルは続く625℃での保持が鋼種N05で80秒以上、鋼種N20で1800秒以上で全面組織Aを呈したのに対し、425℃で15秒保持したサンプルは続く625℃での保持が鋼種N05で240秒、鋼種N20では5400秒を要した。この時、粗大なオーステナイトは425℃保持中にベイナイトに、625℃保持中にはこの時点で未変態のオーステナイトがフェライト-パーライトにそれぞれ変態していると推定される。すなわち、ベイナイト変態量とフェライトーパーライト変態量の和が変態前のオーステナイト量と釣り合った時点でオーステナイトの分解が完了し、続く910℃までの復熱を介して徐冷中に組織Aを呈すると考えられる。
以上の結果より、全面組織Aを呈するための条件として、以下の式(a)で示されるTが60秒以上であることが見いだされた。
=T+T×0.04×[Ni]-2.32 ・・・(a)
(式(a)において、T:試料が350℃以上475℃以下にある時間、T:試料が600℃以上675℃以下にある時間であり、[Ni]は鋼におけるNiの濃度(質量%)である。)
上記関係式は他のNi含有低合金鋼を用いて実施した実験においても成立することが確認されている。すなわち、質量%で、C:0.1~0.4%、Si:0.01~0.5%、Mn:0.3~1.4%、Cr:0.8~2.0%、Mo:0.6%以下、Ni:0.5~2.0%の組成を有する鋼を鋳造対象とした場合、上記式(a)を満たすように鋳片の2次冷却を行うことで、鋳片表層組織の微細化が可能であり、矯正点における鋳片表面割れを抑制することができる。
尚、上記式(a)で示されるとおり、Ni含有量が高い鋼においては、600~675℃の温度域のみでオーステナイトの分解を行おうとすると非常に長い時間を要する。すなわち、このような鋼種を製造する際は生産性の観点から350~475℃の温度域を重視することが望ましいといえる。
3.実機試験
転炉-LFプロセスにて下記表3に示す組成の溶鋼を溶製し、曲率半径12.0mの湾曲型連鋳機において、220mm×256mmのサイズの鋳片を鋳造した。鋳造速度は1.0~1.6m/minである。鋳型から引き抜いた鋳片は鋳型直下に設置したゾーン長さ1mのスプレー急冷装置にて急冷した。ゾーン通過後は通常の2次冷却スプレーの水量を調整し、復熱を制御した。鋳片はガス切断機にて5.0±0.2mの長さに切断後、表面の観察に供した。
Figure 0007230562000003
なお、鋳片表面の温度は伝熱凝固計算により算出した鋳片L面中心の温度である。伝熱凝固計算により算出した温度は、連続鋳造機内に設置した鋳片表面温度系のデータと比較により十分高い精度であることを検証した。また、復熱後最高到達温度の目標となるAc3の値は上記式(d)で特定した。
得られた鋼片の表面割れを目視観察した。冷却ゾーンにおいて鋳片表層温度が350~475℃、475~600℃、600~675℃の間にあった時間、および復熱が始まってから矯正点に至るまでの最高温度と併せて調査結果を下記表4に示す。下記表4において、表面割れの評価は、割れがないものを「○」、割れの深さがいずれも0.5mm未満かつ割れの数が鋳片1本当たり10箇所以下であったものを「△」、いずれにも該当しないものを「×」として表した。
Figure 0007230562000004
実施例1~3、参考例4、実施例5~9については、いずれも割れ発生のない良好な表面品位の鋳片が得られた。一方、比較例1~9のように式(a)で表されるTAを60秒未満とした場合や、比較例10~13のように復熱が始まってから矯正点に至るまでの最高温度がAc3未満であった場合、いずれも鋳片表面に割れを呈した。
1 鋳片
10 鋳型
20 矯正点
100 連続鋳造機

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.1~0.4%、Si:0.01~0.5%、Mn:0.3~1.4%、Cr:0.8~2.0%、Mo:0.6%以下、Ni:0.5~2.0%の組成を有する鋼の鋳片を、矯正点を有する連続鋳造機を用いて連続的に鋳造する方法であって、
    鋳型の直下から前記矯正点に至る前において、前記鋳片の表面温度が350~475℃の間にある時間をT(s)、600~675℃にある時間をT(s)として、下記式(a)で定められるT(s)が60以上となるように前記鋳片を冷却し、
    次いで前記矯正点に至る前までに、前記鋳片の表面温度をAc3以上の温度域まで復熱させることを特徴とする、
    Ni含有低合金鋼の連続鋳造方法。
    =T+T×0.04×[Ni]-2.32 ・・・(a)
    ただし、T ≧35
    (式(a)において[Ni]は鋼におけるNiの濃度(質量%)である。)
  2. 前記鋳片は、質量%で、Al:0.1%以下、Ti:0.1%以下、V:0.4%以下、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下、Nb:0.05%以下、B:0.004%以下、N:0.025%以下の組成を有する、
    請求項1に記載のNi含有低合金鋼の連続鋳造方法。
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