以下、図面を参照しながら、X線CT装置の実施形態について詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係るX線CT装置の一構成例を示すブロック図である。図1に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。
図2は、架台装置10のX線検出器の一構成例を示すブロック図である。また、図3はX線CT装置1のコンソール装置40の処理回路45のプロセッサによる実現機能例を説明するためのブロック図である。
図1に示すように、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸または寝台装置30の天板33の長手方向をz軸方向、z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をx軸方向、z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をy軸方向とそれぞれ定義するものとする。
X線CT装置1には、X線管と検出器とが一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本実施形態へ適用可能である。以下の説明では、本実施形態に係るX線CT装置1として第3世代のRotate/Rotate-Typeを採用する場合の例を示す。
架台装置10は、X線管11、X線検出器12、撮影領域が内在する開口部19を有する回転フレーム13、高電圧装置14、制御装置15、ウェッジ16、コリメータ17、およびデータ収集回路(DAS:Data Acquisition System)18を有する。
X線管11は、高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。
なお、本実施形態においては、一管球型のX線CT装置にも、X線管と検出器との複数のペアを回転リングに搭載した、いわゆる多管球型のX線CT装置にも適用可能である。また、X線を発生させるハードウェアはX線管11に限られない。たとえば、X線管11に代えて、電子銃から発生した電子ビームを集束させるフォーカスコイルと、電磁偏向させる偏向コイルと、被検体Pの半周を囲い偏向した電子ビームが衝突することによってX線を発生させるターゲットリングとを含む第5世代方式を用いてX線を発生させることにしても構わない。
X線検出器12は、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をDAS18へと出力する。X線検出器12は、X線管11の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。また、X線検出器12は、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数(たとえば320列など)配列された構造を有する。
また、X線検出器12は、たとえば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータまたは2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、たとえば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。
なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
また、図2に示すように、X線検出器12は、複数のX線検出素子121からなる検出素子群12aと、スイッチ回路12bと、スイッチ制御回路12cとを有する。
スイッチ回路12bは、各X線検出素子121からデータを取り出すか否かを、少なくともスライス方向の列ごとに切り替え可能に構成される。スイッチ回路12bは、いわゆるアクティブマトリクス方式のようにX線検出素子121ごとにその近傍に設けられたスイッチ素子であってもよいし、X線検出素子121から離れた位置に設けられてもよい。
スイッチ制御回路12cは、処理回路45に制御されて、データを読み出すX線検出素子121を切り替えるようスイッチ回路12bを制御する。具体的には、スイッチ制御回路12cは、処理回路45から指定されたスライス方向の列に属するX線検出素子121からのみデータを取り出し、指定されていないスライス方向の列に属するX線検出素子121からのデータを取り出さないように、スイッチ回路12bを制御する。
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、後述する制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12に加えて、高電圧装置14やDAS18をさらに備えて支持する。なお、DAS18が生成した検出データは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置10の非回転部分(たとえば固定フレーム、図示せず)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分への検出データの送信方法は、光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。また、図示しない固定フレームは回転フレーム13を回転可能に支持するフレームである。
高電圧装置14は、変圧器(トランス)および整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム側に設けられても構わない。
制御装置15は、制御基板に設けられたプロセッサと、記憶回路と、モータおよびアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、コンソール装置40または架台装置10に取り付けられた後述する入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10および寝台装置30の制御を行う機能を有する。たとえば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御、ならびに寝台装置30および天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられても構わない。
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線があらかじめ定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。たとえば、ウェッジ16(ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter))は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。コリメータ17は、X線可動絞りの一例である。
図3に示すように、X線管11、ウェッジ16、およびコリメータ17は、保持装置20に保持される。保持装置20は、X線管11、ウェッジ16、およびコリメータ17のX線検出器12に対する角度を一体的に変更可能なように、回転フレーム13に取り付けられる。保持装置20は、保持装置駆動機構21に制御されて、X線検出器12に対するX線管11の管軸の角度を変更する。このとき、保持装置20は、SIDを所定の距離に固定しつつX線検出器12に対するX線管11の管軸の角度を変更してもよい。また、保持装置20は、X線管11とコリメータ17の相対位置や相対角度を可変に保持してもよい。
また、コリメータ17は、コリメータ駆動機構22に制御されて、X線の照射範囲を変更する。
DAS18(Data Acquisition System)は、X線検出器12の各X線検出素子121から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をアナログデジタル変換(AD変換)するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS18は、X線検出素子121からデータを受けるIV変換器やAD変換器などの信号処理回路を備えた複数の信号処理基板(以下、AD変換基板という)により構成された変換基板群を有する。DAS18が生成した検出データは、コンソール装置40へと転送される。DAS18は、データ収集部の一例である。
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。
基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(y方向)に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を天板33の長軸方向(z方向)に移動するモータあるいはアクチュエータである。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。
なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向(z方向)に移動してもよい。また、寝台駆動装置32は、寝台装置30の基台31ごと移動させてもよい。本発明を立位CTに応用可能な場合は、天板33に相当する患者移動機構を移動する方式であってもよい。
また、ヘリカルスキャン撮影や位置決め等のためのスキャノ撮影、多列検出器を利用したボリュームスキャンを複数の位置で行ういわゆるワイドボリュームスキャン撮影等、架台装置10の撮影系と天板33の位置関係の相対的な変更をともなう撮影を実行する場合は、当該位置関係の相対的な変更は天板33の駆動によって行われてもよいし、架台装置10の固定フレームの走行によって行われてもよく、またそれらの複合によって行われてもよい。
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、ネットワーク接続回路44と、処理回路45とを有する。なお、コンソール装置40が単一のコンソールにて全ての機能を実行するものとして以下説明するが、これらの機能は複数のコンソールが実行してもよい。
メモリ41は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。また、メモリ41は、たとえば、投影データや再構成画像データ、あらかじめ取得した被検体Pのボリュームデータなどを記憶する。被検体Pのボリュームデータは、X線CT装置1によって撮影されて生成されたものであってもよいし、他のモダリティで生成されて、ネットワークを介して当該他のモダリティから直接または画像サーバ等を介して間接的に取得されたものであってもよい。
なお、X線CT装置1が生成した投影データや再構成画像データは、メモリ41に記憶されてもよいし、ネットワークを介してX線CT装置1と接続可能なクラウドサーバ等の他の電子機器が、X線CT装置1からの保存要求を受けて記憶してもよい。同様に、メモリ41の記録媒体内のプログラムおよびテーブルなどのデータの一部または全部は、ネットワークを介した通信によりダウンロードされてもよいし、光ディスクなどの可搬型記憶媒体を介してメモリ41に与えられてもよい。
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。たとえば、ディスプレイ42は、処理回路45によって生成された医用画像(CT画像)や、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。たとえば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等である。
入力インターフェース43は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路45に出力する。たとえば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等をユーザから受け付ける。たとえば、入力インターフェース43は、トラックボール、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行なうタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、および音声入力回路等により実現される。
ネットワーク接続回路44は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続回路44は、この各種プロトコルに従ってX線CT装置1と画像サーバ等の他の機器とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続などを適用することができる。ここで電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線の病院基幹LAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。
処理回路45は、メモリ41に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、画像生成用に架台装置10からデータ出力させる検出器列を穿刺針の先端の位置に基づいて制限するための処理を実行するプロセッサである。処理回路45はまた、X線CT装置1の全体の動作を制御するプロセッサである。
続いて、処理回路45のプロセッサによる実現機能例について説明する。
図3に示すように、処理回路45のプロセッサは、スキャン制御機能451、先端位置検出機能452、検出器列特定機能453、傾き制御機能454、絞り制御機能455、および画像生成機能456を実現する。これらの各機能はそれぞれプログラムの形態でメモリ41に記憶されている。
スキャン制御機能451は、架台装置10を制御して、撮影プロトコルに従って撮影を実行させる。
先端位置検出機能452は、被検体P内に刺入される穿刺針51の先端52の位置を検出する。先端位置検出機能452は、検出部の一例である。
検出器列特定機能453は、先端位置検出機能452により検出された先端52の位置に基づいて、X線検出器12のスライス方向の列数(たとえば320列など)よりも少ない所定列数(たとえば4列など)の検出器列を特定する。以下、検出器列特定機能453により特定された検出器列を特定列61、それ以外の検出器列を対象外列62という。検出器列特定機能453は、特定部の一例である。
また、検出器列特定機能453は、架台装置10からコンソール装置40に対して、特定列61に属するX線検出素子121のX線検出素子121の出力データのみを転送させ、対象外列62に属するX線検出素子121の出力データは転送させないことが好ましい。架台装置10からコンソール装置40に対して特定列61に属するX線検出素子121のX線検出素子121の出力データのみを転送させることにより、画像生成に係る処理負担を大幅に低減することができ、画像生成のリアルタイム性を向上させることができる。
傾き制御機能454は、X線管11によるX線の照射主軸が特定列61に向くように、特定列61の位置に応じて、X線検出器12に対するX線管11の角度を変更するよう保持装置駆動機構21を介して保持装置20を制御する。傾き制御機能454は、傾き制御部の一例である。
絞り制御機能455は、特定列61にのみX線管11からX線が照射されるように、特定列61の位置に応じて、コリメータ駆動機構22を介してコリメータ17を制御する。絞り制御機能455は、絞り制御部の一例である。
画像生成機能456は、特定列61に属するX線検出素子121が出力したデータに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能456は、X線管11を回転させながら撮影を行うことで特定列61に属するX線検出素子121が出力したデータに基づいて再構成処理を行うことにより、穿刺針51の先端52を含む被検体Pの断層像を生成してディスプレイ42に表示させる。また、画像生成機能456は、X線管11を固定して撮影を行うことで特定列61に属するX線検出素子121が出力したデータに基づいて、投影画像を生成してディスプレイ42に表示させてもよい。特定列61にもとづく投影画像は、幅が狭い画像ではあるものの穿刺針51の先端52の確認には有用である。
次に、本実施形態に係るX線CT装置1の動作の一例について説明する。
図4は、コンソール装置40の処理回路45のプロセッサにより、画像生成用に架台装置10からデータ出力させる検出器列を穿刺針51の先端52の位置に基づいて制限する際の概略的な手順の一例を示すフローチャートである。図4において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
また、図5は、被検体Pの左側側面から穿刺針51の先端52の位置と特定列61との位置関係の一例を示す説明図である。また、図6は、図5に示す位置関係を被検体Pの上面から見た場合の例を示す説明図である。
図4に示す手順は、CT透視の開始が指示されてスタートとなる。
まず、ステップS1において、先端位置検出機能452は、被検体P内に刺入される穿刺針51の先端52の位置を検出する(図5、図6参照)。
穿刺針51の先端52の位置検出方法としては、2台の光学カメラを用いる方法(たとえば特開2017-086819号公報参照)、超音波診断装置と超音波診断装置で撮影可能な穿刺針を用いる方法、CT値にもとづいてCT透視像から検出する方法、磁気センサなどの位置センサを用いる方法など、従来各種のものが知られており、これらのうち任意のものを使用することが可能である。また、これらの方法の複数を利用し、結果の平均位置を用いてもよい。また、先端位置検出機能452は、これらの方法によって、穿刺針51の先端52の位置のみならず、穿刺針51の全体の位置を検出することが可能である。また、先端位置検出機能452は、少なくとも2つの時点での先端52の位置にもとづいて、先端52の移動向き(刺入角度)および移動速度を容易に求めることができる。
次に、ステップS2において、検出器列特定機能453は、先端位置検出機能452により検出された先端52の位置に基づいて、先端52の位置に対応する検出器列を特定列61として特定する。この結果、特定列61以外の検出器列である対象外列62も付随的に決定される。
たとえば、検出器列特定機能453は、X線管11の焦点と、先端52とを結んだ仮想直線71と交わるスライス方向検出器列を特定列61とするとよい。このとき、検出器列特定機能453は、さらに、この特定列61の両側に連続する検出器列を特定列61とする。
このとき、両側とも同数の検出器列を特定列61に設定してもよい。たとえば特定列61として特定する所定列数が5列のとき、先端52が移動していく側に2列、反対側に2列、仮想直線71と交わる検出器列の1列の計5列としてもよい。また、穿刺針51が移動していく側をより危険な領域とみなして広い表示領域を確保するように、先端52が移動していく側のほうが反対側よりも多くなるように特定列61を設定してもよい。この場合、たとえば特定列61のとして特定する所定列数が8列であれば、先端52が移動していく側に5列、反対側に2列、仮想直線71と交わる検出器列の1列の計8列とするとよい。
次に、ステップS3において、画像生成機能456は、特定列61に属するX線検出素子121が出力したデータに基づいて穿刺針51の先端52の位置を含む断層像または透視画像をリアルタイムに生成し、ディスプレイ42に表示させる。
このとき、画像生成機能456は、特定列61に属するX線検出素子121が出力したデータのみを受け取る一方、対象外列62に属するX線検出素子121の出力データは受け取らないことが好ましい。そこで、検出器列特定機能453は、架台装置10からコンソール装置40に対して、特定列61に属するX線検出素子121のX線検出素子121の出力データのみを転送させ、対象外列62に属するX線検出素子121の出力データは転送させないよう、架台装置10を制御するとよい。
この制限方法には3通りある。第1の制限方法は、スイッチ制御回路12cを制御することにより、検出素子群12aからの出力を制限する方法である。第1の制限方法では、検出器列特定機能453は、特定列61に属するX線検出素子121のX線検出素子121の出力データのみを取り出すように、スイッチ制御回路12cを介してスイッチ回路12bを制御する。
第2の制限方法は、DAS18を構成する変換基板群のうち、特定列61に対応するAD変換基板のみを動作させる方法である。変換基板群の各AD変換基板は、通常の起動状態、待機状態、停止状態のいずれかの動作状態で動作するよう、これらの状態間遷移を検出器列特定機能453に制御される。通常の起動状態は、X線検出素子121の出力信号にアナログデジタル変換(AD変換)動作を施す動作および処理後の信号を出力する動作などをおこなう状態である。待機状態は、少なくとも処理後の信号を出力する動作を停止する状態である。休止状態は、給電が停止されて全ての動作が停止する状態である。第2の制限方法では、検出器列特定機能453は、特定列61に対応するAD変換基板のみを通常の起動状態とし、それ以外のAD変換基板を待機状態または停止状態とする。なお、特定列61に属するX線検出素子121と対象外列62に属するX線検出素子121の両方に兼用されるAD変換基板がある場合は、当該基板は特定列61に対応するAD変換基板として通常の起動状態とする。
第3の制限方法は、第1の制限方法と第2の制限方法を組み合わせた方法である。第3の制限方法では、検出器列特定機能453は、特定列61に属するX線検出素子121のX線検出素子121の出力データのみを取り出すように、スイッチ制御回路12cを介してスイッチ回路12bを制御するとともに、特定列61に対応するAD変換基板のみを通常の起動状態としつつそれ以外のAD変換基板を待機状態または停止状態とする。
第1~第3の制限方法のいずれかの方法によって架台装置10から画像生成機能456に与えられたデータに基づいて、画像生成機能456は、特定列61に属するX線検出素子121が出力したデータのみに基づいて穿刺針51の先端52の位置を含む断層像または透視画像をリアルタイムに生成する。なお、第2の制限方法を用いた場合であってAD変換基板のそれぞれに複数のX線検出素子121が割り当てられている場合には対象外列62に属するX線検出素子121の出力データが画像生成機能456に与えられることがあるが、この場合でも、画像生成機能456は、特定列61に属するX線検出素子121が出力したデータのみに基づいて穿刺針51の先端52の位置を含む断層像または透視画像をリアルタイムに生成する。
そして、ユーザにより入力インターフェース43を介してCT透視撮影の終了指示があった場合などCT透視を終了すべき場合は(ステップS4のYES)、一連の手順は終了となる。
一方、CT透視を続行すべき場合は(ステップS4のNO)、ステップS1に戻り、先端位置検出機能452によって再び穿刺針51の先端52の位置が検出される。
以上の手順により、画像生成用に架台装置10からデータ出力させる検出器列を穿刺針51の先端52の位置に基づいて制限することができる。
なお、図4の処理が繰り返されるタイミング(2回目以降のステップS1が実行されるタイミング)は、あらかじめ設定されたフレームレートごとであってもよいし、先端位置検出機能452が穿刺針51の移動を検出するごとであってもよい。
本実施形態に係るX線CT装置1は、CT透視におけるリアルタイムな画像生成に用いられる必要最小限なデータのみを架台装置10からコンソール装置40に対して転送させることができる。このため、画像生成に係る処理負担を大幅に低減することができ、画像生成のリアルタイム性を向上させることができる。また、非常に低い通信データ量によって、あたかも大量な通信データ量を必要とするボリュームデータにもとづいて移動する先端52の位置に応じた断層像をめくっていくような画像を、容易にユーザに提供することができる。
また、図5および図6に示すように、X線検出器12のスライス方向の最大列数(たとえば320列など)の幅の範囲内であれば、天板33を動かすことなく、CT透視でリアルタイムに生成される薄い断層像に常に穿刺針51の先端52の画像を含ませることができる。このため、天板33を移動させることで穿刺針51の先端52の位置に断層像を追従させる場合に比べ、ユーザ操作が不要であるためにユーザの負担が大幅に低減可能であるとともに、穿刺針51の刺入中に被検体Pを動かすことによる危険を未然に防ぐことができる。
なお、本実施形態に係るX線CT装置1は、図4の手順のように穿刺針51の先端52の位置に追従するように画像を生成する追従モードと、追従を行わない通常モードと、のいずれで動作するかを選択可能であってもよい。この場合、たとえばモード切替ボタン等の指示受付用のソフトキーをディスプレイ42に表示させ、このキーに対する入力によってモードを切り替えてもよい。この場合、たとえばユーザは、手技の開始前には通常モードで穿刺針51を操作し、薄い断層像内に先端52が入ったことを確認してから、追従モードに変更して手技を開始し、図4の手順がスタートとなってもよい。また、この場合、通常モードにおいて生成される断層像に対応する検出器列は、たとえばあらかじめ撮影された広範囲のスキャノ像にもとづいて入力インターフェース43を介してユーザにより設定されてもよい。
図7は、図6に示す例において、特定列61の位置に応じてX線の照射範囲11aおよびX線の照射主軸11bを変更する場合の例を示す説明図である。
X線の照射範囲11aおよびX線の照射主軸11bの少なくとも一方は、特定列61の位置に応じて変更されてもよい。図7には、X線の照射範囲11aおよびX線の照射主軸11bの両者が特定列61の位置に応じて変更される場合の例を示した。
上述の通り、本実施形態に係る画像生成機能456は特定列61に属するX線検出素子121が出力したデータのみにもとづいて画像を生成する。このため、対象外列62に照射されるX線は無駄であり、被検体Pに余計な被ばくを強いることになるといえる。そこで、絞り制御機能455は、特定列61にのみX線管11からX線が照射されるように、特定列61の位置に応じて、コリメータ駆動機構22を介してコリメータ17を制御するとよい。
また、特定列61は、穿刺針51の先端52の移動とともに変わっていく。一般に、X線検出器12の位置のうち、X線管11の焦点の中心に正対する位置に比べ、X線管11の中心の正面の位置から離れた位置では、画像の歪みが大きくなってしまうことが知られている。そこで、傾き制御機能454は、X線管11によるX線の照射主軸11bが特定列61に向くように、特定列61の位置に応じて、X線検出器12に対するX線管11の角度を変更するよう保持装置駆動機構21を介して保持装置20を制御するとよい。このとき、X線の照射主軸11bが特定列61の中心に向くことが好ましいが、保持装置20の可動域の限界によってそれが難しい場合は、X線の照射主軸11bが特定列61の中心にできるだけ近づくように保持装置20を傾けるとよい。
図8(a)は画像生成機能456によってリアルタイムに生成される画像のディスプレイ42への表示例を示す説明図であり、(b)は他の例を示す説明図である。
図8(a)および(b)には、画像生成機能456が再構成処理によって被検体Pのアキシャル断層像81をリアルタイムに表示させる場合の例を示した。アキシャル断層像81には、穿刺針51の先端52の画像が含まれる。
被検体Pのアキシャル断層像81をリアルタイムに表示させる場合、図8(a)に示すようにアキシャル断層像81のみを表示させてもよい。
また、図8(b)に示すように、アキシャル断層像81を1画像とする直交3断面像をディスプレイ42に表示してもよい。直交3断面像を表示させる場合は、画像生成機能456は、あらかじめ取得した被検体Pのボリュームデータにもとづいて、アキシャル断層像81に対応するサジタル断層像91とコロナル断層像92を生成する。ディスプレイ42に表示されるアキシャル断層像81は、リアルタイムに更新されていく。一方サジタル断層像91とコロナル断層像92は、初期画像のままとしてもよいし、先端52の移動に応じて変わったアキシャル断層像81に対応する画像となるように、画像生成機能456がボリュームデータを再度レンダリング処理することで更新されてもよい。
図9は、図8(b)に示す例において、サジタル断層像91とコロナル断層像92に対してさらに穿刺針51の先端52の推定位置を示す画像52aを重畳する場合の例を示す説明図である。
あらかじめ取得した被検体Pのボリュームデータから生成されるサジタル断層像91とコロナル断層像92には、穿刺針51とその先端52の画像は含まれない(図8(b)参照)。そこで、画像生成機能456は、先端位置検出機能452により検出された先端52の位置に基づいて、サジタル断層像91とコロナル断層像92のそれぞれにおける穿刺針51の先端52の位置を推定して、先端52の推定位置を示す画像52aをサジタル断層像91とコロナル断層像92のそれぞれに重畳するとよい(図9参照)。また、先端位置検出機能452から穿刺針51の全体の位置が与えられる場合は、画像生成機能456は、サジタル断層像91とコロナル断層像92のそれぞれにおける穿刺針51の全体の位置を推定して、穿刺針51の全体の推定位置を示す画像51aをサジタル断層像91とコロナル断層像92のそれぞれに重畳してもよい。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、画像生成用に架台装置10からデータ出力させる検出器列を穿刺針51の先端52の位置に基づいて制限することができる。
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびFPGA)等の回路を意味するものとする。プロセッサは、記憶媒体に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶媒体は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶媒体が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。