実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。図1において、試料、例えばマスクに形成されたパターンの欠陥を検査する検査装置100は、光学画像取得機構150、及び制御系回路160(制御部)を備えている。
光学画像取得機構150は、光源103、照明光学系170、移動可能に配置されたXYθテーブル102、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105(センサの一例)、センサ回路106、ストライプパターンメモリ123、及びレーザ測長システム122を有している。XYθテーブル102上には、試料101が配置されている。試料101として、例えば、ウェハにパターンを転写する露光用のフォトマスクが含まれる。また、このフォトマスクには、検査対象となる複数の図形パターンによって構成されたパターンが形成されている。試料101は、例えば、パターン形成面を下側に向けてXYθテーブル102に配置される。また、試料101には、回路を構成するメインパターン(実回路パターン)の他に、メインパターンよりも線幅が細い、メインパターンの形成を補助する補助パターン(SRAFパターン、及び/或いはOPCパターン)が形成されている。
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、展開回路111、参照回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、係数演算回路140、学習点領域データ作成回路142、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレシキブルディスク装置(FD)116、CRT117、パターンモニタ118、及びプリンタ119に接続されている。また、センサ回路106は、ストライプパターンメモリ123に接続され、ストライプパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。XYθテーブル102は、ステージの一例となる。
検査装置100では、光源103、XYθテーブル102、照明光学系170、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105、及びセンサ回路106により高倍率の検査光学系が構成されている。また、XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下にテーブル制御回路114により駆動される。X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、Xモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。XYθテーブル102は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、XYθテーブル102上に配置された試料101の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。
被検査試料101のパターン形成の基となる設計パターンデータ(描画データ)が検査装置100の外部から入力され、磁気ディスク装置109に格納される。
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成部分について記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
図2は、実施の形態1における学習点領域データ作成回路の内部構成を示すブロック図である。図2において、学習点領域データ作成回路142内には、磁気ディスク装置等の記憶装置73,75,76,79,80,81,87、学習点設定部70、フレーム選択部71、設計画像作成部72、分割部74、抽出部77、抽出部78、差分演算部82、判定部83、周波数データ変換部84、バンドデータ抽出部85、逆変換部86、差分演算部88、抽出部89、抽出部90、及び選択部91が配置される。学習点設定部70、フレーム選択部71、設計画像作成部72、分割部74、抽出部77、抽出部78、差分演算部82、判定部83、周波数データ変換部84、バンドデータ抽出部85、逆変換部86、差分演算部88、抽出部89、抽出部90、及び選択部91といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。学習点設定部70、フレーム選択部71、設計画像作成部72、分割部74、抽出部77、抽出部78、差分演算部82、判定部83、周波数データ変換部84、バンドデータ抽出部85、逆変換部86、差分演算部88、抽出部89、抽出部90、及び選択部91に入出力される情報および演算中の情報は図示しないメモリにその都度格納される。
図3は、実施の形態1における検査領域を説明するための概念図である。試料101の検査領域10(検査領域全体)は、図3に示すように、例えばY方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ20に仮想的に分割される。そして、検査装置100では、検査ストライプ20毎に画像(ストライプ領域画像)を取得していく。検査ストライプ20の各々に対して、レーザ光を用いて、当該ストライプ領域の長手方向(X方向)に向かって当該ストライプ領域内に配置される図形パターンの画像を撮像する。XYθテーブル102の移動によってフォトダイオードアレイ105が相対的にX方向に連続移動しながら光学画像が取得される。フォトダイオードアレイ105では、図3に示されるようなスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。言い換えれば、センサの一例となるフォトダイオードアレイ105は、XYθテーブル102(ステージ)と相対移動しながら、検査光を用いて試料101に形成されたパターンの光学画像を撮像する。実施の形態1では、1つの検査ストライプ20における光学画像を撮像した後、Y方向に次の検査ストライプ20の位置まで移動して今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。すなわち、往路と復路で逆方向に向かうフォワード(FWD)-バックフォワード(BWD)の方向で撮像を繰り返す。
ここで、撮像の方向は、フォワード(FWD)-バックフォワード(BWD)の繰り返しに限るものではない。一方の方向から撮像してもよい。例えば、FWD-FWDの繰り返しでもよい。或いは、BWD-BWDの繰り返しでもよい。
ここで、試料101から撮像される光学画像の画素データは、撮像に使用される光学系の解像特性等によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続変化するアナログ状態にあるため、画像強度(濃淡値)がデジタル値の後述する展開画像(設計画像)とは異なっている。そのため、展開画像にフィルタ処理を施して、測定画像データに近づけた上で比較処理を実施する。そのためには、試料101の検査処理の実施に先だって、まずかかるフィルタ処理を行うためのフィルタ関数の係数を演算する必要がある。しかし、リソグラフィマージンの向上や近接効果による寸法誤差の補正を行うべく配置したウェハ上には解像されない補助パターン(SRAFパターン、及び/或いはOPCパターン)は、回路を構成するメインパターン(複数の図形パターン)に比べて、参照画像を作成した場合における一致度が低くなる傾向にある。その結果、試料101のパターン欠陥検査において、出来の良い補助パターンについても欠陥と判定される疑似欠陥を発生させてしまうという問題があった。そのため、出来の良い補助パターンについては欠陥と判定されない参照画像を作成することが求められている。しかし、従来の手法では、設計データから展開画像から参照画像を作成するためのフィルタ関数の係数を求める際に用いる学習パターンを確率的に抽出するために、一致度が低くなる個所の選択が困難であった。そこで、実施の形態1では、一致度が低くなる個所が、学習パターン(学習点)に確実に含まれるように抽出する。
図4は、実施の形態1におけるパターン検査方法の要部工程の一部を示すフローチャート図である。実施の形態1におけるパターン検査方法の要部工程のうち、図4に示す一連の工程は、参照画像作成用のフィルタ関数の係数演算方法の工程を含む。図4において、実施の形態1におけるパターン検査方法の要部工程の一部は、学習点設定工程(S102)と、フレーム選択工程(S104)と、設計画像作成工程(S106)と、ストライプ画像取得工程(S108)と、フレーム分割工程(S110)と、学習点領域設計画像抽出工程(S112)と、学習点領域光学画像抽出工程(S114)と、フィルタ係数演算工程(S116)と、参照画像作成工程(S118)と、差分演算工程(S120)と、判定工程(S122)と、周波数データ変換工程(S124)と、バンドデータ抽出工程(S126)と、逆変換工程(S128)と、学習点領域設計画像抽出工程(S132)と、学習点領域光学画像抽出工程(S134)と、差分演算工程(S136)と、選択工程(S138)と、いう一連の工程を実施する。
学習点設定工程(S102)として、学習点設定部70は、設計データから展開画像から参照画像を作成するためのフィルタ関数の係数を求める際に用いる学習パターンを抽出するための学習点を設定する。
図5は、実施の形態1における学習点の一例を示す図である。図5(a)の例では、パターンエッジを学習点の一例として示している。図5(b)の例では、パターンコーナー部を学習点の一例として示している。ここでは、パターンサイズについては設定していない。
フレーム選択工程(S104)として、フレーム選択部71は、試料101の検査領域10の中から学習点を含む学習点領域を抽出するフレーム領域30を選択する。フレーム領域30の選択は、任意に行われても良い。或いは、ユーザが、試料101に形成されたパターンレイアウトの中から、メインパターンと共に補助パターンが配置される大まかな領域を指定して、フレーム選択部71は、指定された大まかな領域の中からフレーム領域30を任意に選択しても良い。或いは、ユーザが、試料101に形成されたパターンレイアウトの中から、メインパターンと共に補助パターンが配置されるフレーム領域30を指定して、フレーム選択部71は、指定されたフレーム領域30を選択しても良い。ここで、フレーム領域30は、図3に示すように、検査ストライプ20をx方向に所定のサイズ(例えば、スキャン幅Wと同じ幅)で分割した領域である。例えば、1024×1024画素(或いは、例えば、512×512画素)の領域に相当する。実施の形態1において、フレーム選択部71は、数個(例えば、3~7個)のフレーム領域30を選択する。
設計画像作成工程(S106)として、設計画像作成部72は、選択されたフレーム領域30の設計画像を作成するように展開回路111を制御する。展開回路111(設計画像作成部の一例)は、被検査試料101のパターン形成の基となる設計パターンデータに基づいて画像展開して設計画像(展開画像)を作成する。具体的には、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して設計データを読み出し、選択されたフレーム領域30の設計データに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換(画像展開)して設計画像(展開画像)を作成する。
ここで、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、及び辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データ(ベクトルデータ)が格納されている。
かかる図形データとなる設計パターンの情報が展開回路111に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計画像データを展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/28(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、画素毎に8ビットの占有率データの設計画像を作成する。設計画像は、その位置を示すデータと共に学習点領域データ作成回路142に送られる。学習点領域データ作成回路142内に出力された設計画像(展開画像)のデータは、記憶装置76に格納される。
ストライプ画像取得工程(S108)として、光学画像取得機構150は、パターン形成された被検査試料101の光学画像を取得する。ここでは、制御計算機110による制御のもと光学画像取得機構150は、試料101となるフォトマスクの検査領域10のうち、選択されたフレーム領域30を含む検査ストライプ20の光学画像を取得する。具体的には、以下のように動作する。
まず、選択されたフレーム領域30を含む検査ストライプ20が撮像可能な位置にXYθテーブル102を移動させる。試料101に形成されたパターンには、適切な光源103から、検査光となる紫外域以下の波長のレーザ光(例えば、DUV光)が照明光学系170を介して照射される。試料101を透過した光は拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105(センサの一例)に光学像として結像し、入射する。フォトダイオードアレイ105として、例えば、TDI(タイム・ディレイ・インテグレーション)センサ等を用いると好適である。
フォトダイオードアレイ105上に結像されたパターンの像は、フォトダイオードアレイ105の各受光素子によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログ・デジタル)変換される。そして、ストライプパターンメモリ123に、測定対象の検査ストライプ20の画素データが格納される。かかる画素データ(ストライプ領域画像)を撮像する際、フォトダイオードアレイ105のダイナミックレンジは、例えば、照明光の光量が60%入射する場合を最大階調とするダイナミックレンジを用いる。その後、ストライプ領域画像は、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータと共に学習点領域データ作成回路142に送られる。測定データ(画素データ)は例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。学習点領域データ作成回路142内に出力されたストライプ領域画像(ストライプデータ)は、記憶装置73に格納される。
フレーム分割工程(S110)として、分割部74は、記憶装置73からストライプ領域画像を読み出し、ストライプ領域画像を分割することによって、選択されたフレーム領域30のフレーム画像を切り出す。生成されたフレーム画像は、記憶装置75に格納される。
学習点領域設計画像抽出工程(S112)として、抽出部77は、記憶装置76から選択されたフレーム領域30の設計画像を読み出し、設計画像の中から学習点領域設計画像を抽出する。
図6は、実施の形態1における学習点領域画像の一例を示す図である。図6において、選択されたフレーム領域30の設計画像の中から、設定された学習点を探索する。そして、探索された学習点を含む学習点領域32の学習点領域設計画像を抽出する。学習点領域32は、探索された学習点を中心とするL1×L1のサイズで構成される。例えば、31画素×31画素の領域で構成される。L2×L2(例えば、1024×1024画素)のサイズのフレーム領域30の設計画像の中から、L1×L1(例えば、31×31画素)のサイズの学習点領域32の学習点領域設計画像を抽出する。設定された学習点の内容によるが、上述したように、学習点としてパターンエッジ個所やコーナー個所を設定する場合、1つの設計画像の中から例えば数1000個所の学習点領域32の学習点領域設計画像を抽出する。抽出された学習点領域設計画像は、記憶装置79に格納される。
学習点領域光学画像抽出工程(S114)として、抽出部78は、記憶装置75から選択されたフレーム領域30のフレーム画像(光学画像)を読み出し、フレーム画像の中から学習点領域光学画像を抽出する。具体的には、抽出部78は、選択されたフレーム領域30のフレーム画像(光学画像)の中から、抽出された学習点領域設計画像に対応する学習点領域32の学習点領域光学画像を抽出する。学習点領域設計画像と同様、1つのフレーム画像の中から例えば数1000個所の学習点領域32の学習点領域光学画像を抽出する。抽出された学習点領域光学画像は、記憶装置80に格納される。
ここで、上述したように、学習点として、パターン形状のうちの特徴部分が設定されるも、パターンのサイズが設定される訳ではないので、抽出される学習点領域設計画像及び学習点領域光学画像内のパターンが、メインパターンなのか、補助パターンなのかはわからない。よって、一致度が低くなる傾向のある補助パターンが都合よく選択されたかどうかはこの時点ではわからない。
フィルタ係数演算工程(S116)として、係数演算回路140(係数演算部)は、記憶装置79から学習点領域設計画像を読み出し、記憶装置80から学習点領域光学画像を読み出す。そして、係数演算回路140は、学習点領域設計画像(設計画像の一部)と学習点領域光学画像(光学画像の一部)とを用いて、設計画像をフィルタ処理するためのフィルタ関数の係数を演算する。
図7は、実施の形態1におけるフィルタ関数の係数を演算する手法の一例を説明するための図である。例えば、図7(a)に示すように、学習点領域32の画素数よりも少ない(2k+1)×(2k+1)個の要素で構成される未知の係数行列a(m,n)(係数の一例)を求める。例えば、31×31画素で構成される学習点領域32の画像に対して、15×15の係数行列a(m,n)を求める。学習点領域設計画像の注目画素d(i,j)を中心にして、(2k+1)×(2k+1)画素の画素と係数行列a(m,n)との積の和が注目画素d(i,j)に対応する学習点領域光学画像の注目画素r(i,j)により近づく係数行列a(m,n)を求める。かかる関係式(1)を以下に示す。
図7(b)に示すように、注目画素を学習点領域32内で移動させながら、その都度、関係式(1)を演算する。そして、学習点領域32内のすべての画素についてそれぞれ得られた、未知の係数行列a(m,n)を用いて定義された関係式(1)を最も満足させる係数行列a(m,n)を求める。係数行列a(m,n)の要素数(2k+1)×(2k+1)は、適宜設定すればよい。少ないと精度が劣化し、多すぎると演算時間が長くなる。また、注目画素が学習点領域32内を移動する際、端部に近いと端部側の周囲の画素が必要分存在しない場合もあるが、かかる場合には値が得られる周囲画素及び画素数Nで演算すればよい。なお、学習点領域32は、学習点を中心にして領域構成されているので、学習点が端部にはならないように構成されている。上述したように、学習点領域設計画像は、1つの設定画像から例えば数1000個所抽出されるので、かかる場合には数1000個に学習点領域設計画像の画素数を乗じた値の数の関係式(1)を最も満足させる係数行列a(m,n)を求めることになる。
以上のようにして得られた係数行列a(m,n)(係数の一例)は参照回路112に出力され、フィルタ関数の係数として設定される。次に、得られた係数行列a(m,n)(係数の一例)が、適正かどうかを確認する。
参照画像作成工程(S118)として、参照回路112(参照画像作成部)は、得られた係数行列a(m,n)を用いて、設計画像をフィルタ処理して参照画像を作成する。使用する設計画像は、学習点領域設計画像の抽出に使用した画像を流用すればよい。使用する設計画像は、1つであってもよいし、複数であっても構わない。
図8は、実施の形態1におけるフィルタ処理を説明するための図である。センサ回路106から得られた光学画像としての測定データは、拡大光学系104の解像特性やフォトダイオードアレイ105のアパーチャ効果等によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続変化するアナログ状態にあるため、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである基準設計画像データにもフィルタ処理を施すことにより、測定データに合わせることができる。このようにしてフレーム画像(光学画像)と比較する参照画像を作成する。作成された参照画像は学習点領域データ作成回路142に出力され、学習点領域データ作成回路142内に出力された参照画像は、記憶装置81に格納される。
差分演算工程(S120)として、差分演算部82は、作成された参照画像内のパターン全体と、対応するフレーム画像内のパターン全体との一致度を演算する。具体的には、差分演算部82は、記憶装置81から参照画像を読み出し、記憶装置75から対応するフレーム画像を読み出す。そして、差分演算部82は、参照画像の各画素値と、フレーム画像のそれぞれ対応する画素値との差分を演算する。
判定工程(S122)として、判定部83は、演算されたすべての画素の差分値のうち、最大値を示す最大差分値が閾値Thより大きいかどうかを判定する。最大差分値が閾値Thより大きくない場合には、適正な係数として、そのまま使用される。かかる場合には、抽出された学習点領域設計画像に、メインパターンの他、一致度が低くなる補助パターンが偶然にも含まれていたことになる。最大差分値が閾値Thより大きい場合には、一致度が低くなる補助パターンを含む学習点領域設計画像が抽出されなかったことになる。そこで、実施の形態1では、一致度が低くなる個所が、学習パターン(学習点)に確実に含まれるように抽出する。
周波数データ変換工程(S124)として、周波数データ変換部84(変換部)は、設計画像を周波数データに変換する。使用する設計画像は、学習点領域設計画像の抽出に使用した画像を流用すればよい。使用する設計画像は、1つであってもよいし、複数であっても構わない。周波数データ変換部84は、設計画像のデータに対してフーリエ変換処理を行うことによって設計画像を周波数データに変換する。設計画像は、たとえばパターンの長さが定義できる空間領域内の画像である。かかる空間領域内の画像に対して、周波数領域への変換を行う。
図9は、実施の形態1における周波数データ変換の仕方を説明するための図である。図9の例では、設計画像内にサイズの異なる複数の図形パターンが配置される。図9の例では、便宜上、数個の図形パターンしか示されていないが、実際には、通常、多数の図形パターンが配置されている。かかる設計画像に対して、例えば画素単位でy方向に移動した各位置でx方向に走査した値にフーリエ変換を行う。同様に、例えば画素単位でx方向に移動した各位置でy方向に走査した値にフーリエ変換を行う。かかる処理により、例えば長さを変換した周波数の関数(スペクトル)を演算する。
図10は、実施の形態1における周波数とスペクトル強度との関係の一例を示す図である。図10において、縦軸にスペクトル強度を示し、横軸に周波数を示す。複数の図形パターンが配置された設計画像を周波数データに変換すると、図10に示すように、低周波数側から高周波数側に向かって徐々にスペクトル強度が小さくなり、収束する。その他、図示は省略するが、スペクトル強度が小さくなる過程で、複数の小さなピークが発生する場合もある。図10に示す周波数とスペクトル強度との関係において、周波数帯(バンド)毎に示されるスペクトル強度にはそれぞれ特徴がある。言い換えれば、周波数帯(バンド)毎に示されるスペクトル強度に対応する図形パターンはそのサイズが異なる。よって、メインパターンとは異なり、ウェハへのパターン転写の際、解像されない程度のサイズに形成される補助パターンは、特定の周波数帯(バンド)に示されるスペクトル強度に対応する。
バンドデータ抽出工程(S126)として、バンドデータ抽出部85(抽出部)は、周波数データのうち、一部の周波数帯Δのデータを抽出する。バンドデータ抽出部85は、一部の周波数帯のデータとして、メインパターン(実回路パターン)よりも線幅が細い、メインパターンの形成を補助する補助パターンに対応する周波数帯のデータを抽出する。言い換えれば、一致度が低くなる補助パターンに対応する周波数帯(バンド)Δのデータを抽出する。例えば、F3の周波数帯のデータを抽出する。補助パターンのサイズに対応する周波数帯がいずれの帯域なのかは予めシミュレーション等により求めておけばよい。図10に示すF1~F5の各周波数帯Δの幅は、例えば数10Hz程度(例えば50Hz)に設定すると好適である。また、抽出対象となる周波数帯(バンド)は、1つ周波数帯に限るものではなく、複数の周波数帯であっても構わない。なお、メインパターンは、低周波数の帯域に対応すると想定されるが、高周波数の帯域にも、メインパターンに対応する周波数のn倍高調波(nは2以上の整数)が含まれる場合があるので、これらを含む帯域(例えば、図10に示すF1及びF5)は、抽出対象から外すと好適である。
逆変換工程(S128)として、逆変換部86は、抽出された一部の周波数帯のデータを逆変換して、空間領域画像を生成する。逆変換部86は、設計画像の周波数データに対してフーリエ変換処理の逆変換処理を行うことによって周波数領域から空間領域の画像に変換する。変換された空間領域画像は記憶装置87に格納される。
図11は、実施の形態1における一部の周波数帯のデータから得られる空間領域画像の一例を示す図である。ここでは、便宜上、設計画像と同様のサイズに設定されると好適である。一部の周波数帯のデータから得られる図形パターンは、解像されない程度のサイズに形成される補助パターンを含む、メインパターンに対してサイズが小さい図形パターンになるので、空間領域画像は、かかるサイズが小さい図形パターンにより構成されることになる。
学習点領域設計画像抽出工程(S132)として、抽出部89は、記憶装置87から逆変換により生成された空間領域画像を読み出す。そして、抽出部89は、空間領域画像の中から設定された学習点を探索する。そして、探索された学習点を含む学習点領域32の学習点領域設計画像を抽出する。学習点領域32は、探索された学習点を中心とするL1×L1のサイズで構成される。例えば、31画素×31画素の領域で構成される。抽出の仕方は学習点領域設計画像抽出工程(S112)と同様で構わない。ここでは、一致度が低くなる補助パターンが選択的に配置された空間領域画像の中から学習点領域設計画像を抽出する。よって、一致度が低くなる補助パターンを含む学習点領域設計画像を選択的に抽出することができる。空間領域画像内に補助パターンが複数配置されている場合、複数の学習点領域設計画像が抽出され得る。
学習点領域光学画像抽出工程(S134)として、抽出部90は、当該空間領域画像に対応するフレーム画像(光学画像)の中から、空間領域画像から抽出された学習点領域設計画像に対応する学習点領域32の学習点領域光学画像を抽出する。複数の学習点領域設計画像が抽出される場合、同様に複数の学習点領域光学画像が抽出されることは言うまでもない。
差分演算工程(S136)として、差分演算部88は、抽出された一部の周波数帯のデータに対応する空間領域画像から抽出された学習点領域に対応する学習点領域設計画像の各画素値と学習点領域光学画像のそれぞれ対応する画素値との差分を演算する。
選択工程(S138)として、選択部91は、空間領域画像から抽出された学習点領域に対応する少なくとも1つの学習点領域設計画像の中から、学習点領域設計画像と学習点領域光学画像との各画素値の差分値の最大値が閾値Thを超える学習点領域設計画像を選択する。選択された学習点領域設計画像は、記憶装置79に格納される。同様に、選択された学習点領域設計画像に対応する学習点領域光学画像は、記憶装置80に格納される。もしも、差分値の最大値が閾値Thを超える学習点領域設計画像が抽出されていない場合には、選択対象なしと判定すればよい。空間領域画像から抽出された学習点領域に対応する設計画像と光学画像を比較することで一致度が低い(差分が大きい)SRAFやOPC部分を選択的に学習点領域に追加できる。
そして、フィルタ係数演算工程(S116)に戻り、係数演算回路140(係数演算部)は、空間領域画像の少なくとも一部と、フレーム画像(光学画像)の対応する一部と、設計画像の対応する一部とを用いて、設計画像をフィルタ処理するためのフィルタ関数の係数を演算する。具体的には、係数演算回路140は、新たに抽出された補助パターンを含む学習点領域設計画像(設計画像の一部)が追加された複数の学習点領域設計画像(設計画像の一部)と、新たに抽出された補助パターンを含む学習点領域光学画像(光学画像の一部)が追加された複数の学習点領域光学画像(光学画像の一部)とを用いて、設計画像をフィルタ処理するためのフィルタ関数の係数を演算する。フィルタ関数の係数の演算は設計画像と対応する光学画像で行い、逆変換した空間領域画像はその補助に使う。特定周波数帯を逆変換することで、SRAFやOPCを強調した空間領域画像が生成でき、空間領域画像から学習点領域を抽出して対応する光学画像と設計画像を使って係数を求める。
そして、判定工程(S122)において最大差分値が閾値Thより大きくなくなるまでフィルタ係数演算工程(S116)から学習点領域光学画像抽出工程(S134)までの各工程を繰り返す。或いは、予め設定した最大繰り返し回数まで繰り返す。繰り返すことで、フィルタ係数の最適化をさらに進めることができる。
以上のように、実施の形態1によれば、一致度が低くなる補助パターンが、フィルタ係数演算のための学習点として確実に含まれるようにできる。その結果、得られるフィルタ係数の精度を向上できる。
図12は、実施の形態1における比較回路の内部構成の一例を示す構成図である。図12において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,52,56、フレーム分割部54、位置合わせ部58、及び比較処理部59が配置されている。フレーム分割部54、位置合わせ部58、及び比較処理部59といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。フレーム分割部54、位置合わせ部58、及び比較処理部59に入出力される情報および演算中の情報は図示しないメモリにその都度格納される。
図13は、実施の形態1におけるパターン検査方法の要部工程の残部を示すフローチャート図である。実施の形態1におけるパターン検査方法の要部工程のうち、図4に示す一連の工程に続く工程を示している。図13において、実施の形態1におけるパターン検査方法の要部工程の残部は、光学画像取得工程(S202)と、フレーム分割工程(S204)と、展開画像作成工程(S206)と、参照画像作成工程(S208)と、位置合わせ工程(S210)と、比較工程(S212)と、いう一連の工程を実施する。
光学画像取得工程(S202)として、光学画像取得機構150は、試料101となるフォトマスクの光学画像を取得する。ストライプ画像の取得方法は、上述した内容と同様である。但し、ここでは、図3に示すように順にストライプ画像を取得していく。そして、検査ストライプ20毎にストライプパターンメモリ123に画素データが格納される。その後、ストライプ領域画像は、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータと共に比較回路108に送られる。測定データ(画素データ)は例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。比較回路108内に出力されたストライプ領域画像は、記憶装置50に格納される。
フレーム分割工程(S204)として、比較回路108内では、フレーム分割部54が、検査ストライプ20毎にx方向に所定のサイズ(例えば、スキャン幅Wと同じ幅)で、ストライプ領域画像(光学画像)をフレーム領域30毎の複数のフレーム画像(光学画像)に分割する。例えば、1024×1024画素(或いは、例えば、512×512画素)のフレーム画像に分割する。言い換えれば、検査ストライプ20毎のストライプ領域画像をそれぞれ検査ストライプ20の幅と同様の幅、例えば、スキャン幅Wで複数のフレーム画像(光学画像)に分割する。かかる処理により、複数のフレーム領域30に応じた複数のフレーム画像(光学画像)が取得される。複数のフレーム画像は、記憶装置56に格納される。以上により、検査のために比較される一方の画像(測定された画像)データが生成される。
展開画像作成工程(S206)として、展開回路111(設計画像作成部)は、被検査試料101のパターン形成の基となる設計パターンデータに基づいて画像展開して設計画像(展開画像)を作成する。具体的には、展開回路111は、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して設計データを読み出し、読み出された設計データに定義された各フレーム領域の各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。そして、画素毎に8ビットの占有率データの設計画像を作成する。設計画像(展開画像)のデータ(イメージデータ)は参照回路112に出力される。
参照画像作成工程(S208)として、参照回路112(参照画像作成部)は、演算されたフィルタ係数が定義されたフィルタ関数を用いて、複数のフレーム領域30(小領域)の複数のフレーム画像(光学画像)のいずれかと対比するための複数の参照画像を作成する。言い換えれば、設定された係数行列a(i,j)(フィルタ係数の一例)を用いて、各フレーム領域30の設計画像(展開画像)をフィルタ処理して参照画像を作成する。作成された各フレーム領域30の参照画像は比較回路108に出力され、比較回路108内に出力された参照画像は、記憶装置52に格納される。
位置合わせ工程(S210)として、位置合わせ部62は、比較対象となるフレーム画像(光学画像)を記憶装置56から読み出し、同様に比較対象となる参照画像を記憶装置52から読み出す。そして、所定のアルゴリズムで位置合わせを行う。例えば、最小2乗法を用いて位置合わせを行う。
比較工程(S212)として、比較処理部59(比較部)は、複数のフレーム領域30(小領域)のフレーム領域毎に、当該フレーム領域30のフレーム画像(光学画像)と当該フレーム画像に対応する参照画像とを画素毎に比較して、パターンの欠陥を検査する。比較処理部59は、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。判定条件としては、例えば、所定のアルゴリズムに従って画素毎に両者を比較し、欠陥の有無を判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置(FD)116、CRT117、若しくはパターンモニタ118に出力される。或いはプリンタ119から出力されればよい。
以上のように、実施の形態1では、フィルタ係数の最適値(或いは、従来の手法よりも適した値)を求めることができ、フィルタ処理の精度を向上させることができる。よって、高精度な参照画像を作成できる。これにより、一致度が低くなる補助パターンのうち、出来の良い補助パターンについては欠陥と判定されない、或いは判定される可能性を低減させた参照画像を作成できる。その結果、高精度なパターン欠陥検査ができ、検査精度を向上させることができる。
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、実施の形態では、照明光学系170として、透過光を用いた透過照明光学系を示したが、これに限るものではない。例えば、反射光を用いた反射照明光学系であってもよい。或いは、透過照明光学系と反射照明光学系とを組み合わせて、透過光と反射光を同時に用いてもよい。
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、検査装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置、及びパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。