以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、後述する凸部30(図1参照)を除いてタイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向において凸部30を除いてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。また、以下の説明では、タイヤ子午断面とは、タイヤ回転軸を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。
図1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の要部を示すタイヤ子午断面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向、つまり車両装着時の方向が指定されている。即ち、図1に示す空気入りタイヤ1は、車両装着時に車両の内側に向く側が車両装着方向内側となり、車両装着時に車両の外側に向く側が車両装着方向外側となる。なお、車両装着方向内側及び車両装着方向外側の指定は、車両に装着した場合に限らない。例えば、リム組みした場合に、タイヤ幅方向において、車両の内側及び外側に対するリムの向きが決まっているため、空気入りタイヤ1は、リム組みした場合、タイヤ幅方向において、車両装着方向内側及び車両装着方向外側に対する向きが指定される。また、空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向を示す装着方向表示部(図示省略)を有する。装着方向表示部は、例えば、タイヤのサイドウォール部4に付されたマークや凹凸によって構成される。例えば、ECER30(欧州経済委員会規則第30条)が、車両装着状態にて車両装着方向外側となるサイドウォール部4に装着方向表示部を設けることを義務付けている。また、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、主に乗用車に用いられる空気入りタイヤ1になっている。
本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4及びビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8と、インナーライナ9とを備えている。
トレッド部2は、タイヤ子午断面で見た場合に、タイヤ径方向の最も外側となる部分にタイヤ周方向に延在して環状に形成されており、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その外周表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面は、主に走行時に路面と接触し得る面である接地面10として形成され、接地面10には、タイヤ周方向に延びる周方向溝16や、タイヤ幅方向に延びるラグ溝17等の溝が複数形成されている。また、トレッド部2は、ゴム組成物であるトレッドゴム18を有している。トレッドゴム18は、互いに物性が異なる複数のゴム組成物がタイヤ径方向に積層されていてもよい。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、ショルダー部3のタイヤ径方向内側に位置しており、タイヤ幅方向における両側に一対が配設されている。即ち、一対のサイドウォール部4は、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に配設されており、換言すると、サイドウォール部4は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されている。このように形成されるサイドウォール部4は、タイヤ子午断面で見た場合に、タイヤ幅方向外側に凸となる方向に湾曲しており、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出する部分になっている。
また、ビード部5は、一対のサイドウォール部4のそれぞれのタイヤ径方向内側に配設されており、サイドウォール部4と同様に、一対がタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側に配設されている。また、各ビード部5は、ビードコア11を有している。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。
これらのサイドウォール部4とビード部5とは、タイヤ幅方向における両側に位置するタイヤサイド部20に含まれている。本実施形態1において、タイヤサイド部20とは、トレッドゴム18におけるタイヤ径方向内側の位置と、ビード部5の内周面におけるタイヤ幅方向外側の端部であるビードヒール5bとの間の領域をいう。即ち、タイヤサイド部20は、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に一対が配設されており、一対のビード部5は、タイヤサイド部20のそれぞれのタイヤ径方向内側に配設されている。
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア11でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、且つ、タイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示省略)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、例えば、ポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
詳しくは、カーカス層6は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部5のうち、一方のビード部5から他方のビード部5にかけて配設されており、カーカス層6の両端部付近は、ビードコア11を包み込むようにビード部5でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。このため、カーカス層6は、一対のビード部5間に架け渡されるカーカス本体部6aと、ビード部5においてビードコア11の周縁に沿って屈曲しながら折り返されてビードコア11のタイヤ径方向における外側端部の位置からカーカス本体部6aに接触しながらタイヤ径方向外側に向かって延在する折り返し部6bとを有している。このうち、折り返し部6bは、カーカス本体部6aから連続して形成され、ビード部5におけるビードコア11が配設されている位置で、ビードコア11の周縁に沿ってタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されている。
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト7a,7bを積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト7a,7bは、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20°~30°)で複数並設されたコード(図示省略)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、例えば、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維からなる。また、重なり合うベルト7a,7bは、互いのコードが交差するように配置されている。
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示省略)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、例えば、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維からなり、コードの角度はタイヤ周方向に対して±5°の範囲内になっている。本実施形態1では、ベルト補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向における全体を覆うように配設されるベルトカバー8aと、ベルトカバー8aのタイヤ径方向外側におけるベルト層7のタイヤ幅方向端部付近のみに配設されるエッジカバー8bとの2層が積層されている。ベルト補強層8は、これ以外の構成でもよく、ベルト層7全体を覆うように配設されるベルトカバー8aのみや、ベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように配設されるエッジカバー8bのみで構成されていてもよい。ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なって配設されていればよい。これらのように構成されるベルト補強層8は、例えば幅が10mm程度の帯状のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けることにより配設されている。
インナーライナ9は、カーカス層6の内方側、或いは、カーカス層6の、空気入りタイヤ1における内部側に、カーカス層6に沿って配設されている。インナーライナ9は、タイヤ内腔面に配置されてカーカス層6を覆う空気透過防止層であり、カーカス層6の露出による酸化を抑制し、また、タイヤに充填された空気の洩れを防止する。また、インナーライナ9は、例えば、ブチルゴムを主成分とするゴム組成物、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂中にエラストマー成分をブレンドした熱可塑性エラストマー組成物などから構成される。また、インナーライナ9は、タイゴム(図示省略)を介してカーカス層6に接着されており、空気入りタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内面を形成している。
さらに、タイヤサイド部20には、サイド補強ゴム25が配設されている。サイド補強ゴム25は、タイヤサイド部20の内部に設けられるゴム部材になっており、タイヤ内表面やタイヤ外表面には露出することなく配設されている。詳しくは、サイド補強ゴム25は、主にカーカス層6におけるタイヤサイド部20に位置する部分のタイヤ幅方向内側に位置しており、タイヤサイド部20においてカーカス層6とインナーライナ9との間に配置され、タイヤ子午断面における形状が、タイヤ幅方向外側に凸となる三日月形状に形成されている。
三日月形状に形成されるサイド補強ゴム25は、タイヤ径方向外側の端部が、トレッド部2におけるベルト層7のタイヤ径方向内側に位置しており、サイド補強ゴム25とベルト層7とは、所定の範囲内のラップ量で、一部がタイヤ径方向に重なって配設されている。このように配設されるサイド補強ゴム25は、サイドウォール部4を形成するサイドゴム4aや、ビード部5に配設されるリムクッションゴム19よりも、強度が高いゴム材料により形成されている。具体的には、JIS K6253に準拠したJIS-A硬度により示されるゴム硬さが、サイドゴム4aやリムクッションゴム19のゴム硬さよりも、サイド補強ゴム25のゴム硬さの方が硬くなっている。サイド補強ゴム25のゴム硬さは、例えば、65以上85以下の範囲内になっている。
また、サイド補強ゴム25は、100%伸長時のモジュラスが、5.0MPa以上12.0MPa以下の範囲内になっている。この場合における100%伸長時のモジュラスは、JIS K6251(3号ダンベル使用)に準拠した23℃での引張り試験により測定され、100%伸長時の引張り応力を示す。本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、このようにタイヤサイド部20に比較的強度が高いサイド補強ゴム25が配設されることにより、パンク等によって内圧が低下した状態でも走行可能な、いわゆるランフラットタイヤとして構成されている。
また、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1には、タイヤサイド部20の表面であるタイヤサイド面21に、複数の凸部30が形成されている。複数の凸部30は、それぞれタイヤサイド面21から突出してタイヤサイド面21に沿って延在して形成されている。凸部30は、タイヤ幅方向両側に位置するタイヤサイド部20のうち、車両装着方向外側のタイヤサイド部20に形成されている。凸部30は、タイヤサイド面21の模様、文字、凹凸等を除いた基準面から突出する凸部になっている。
複数の凸部30は、それぞれタイヤサイド面21におけるタイヤ最大幅位置Wをタイヤ径方向に跨いで形成されている。タイヤ最大幅位置Wは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みして、正規内圧を充填して、空気入りタイヤ1に荷重を加えない無負荷状態のときの、タイヤサイド面21から突出する模様や文字等の構造物を除いたタイヤ幅方向における寸法が最大となる位置のタイヤ径方向における位置である。なお、リムを保護するリムプロテクトバー(タイヤ周方向に沿って設けられてタイヤ幅方向外側に突出するもの)が設けられたタイヤにおいては、当該リムプロテクトバーの位置が、タイヤ幅方向における寸法が最大となる位置となるが、本実施形態1で定義するタイヤ最大幅位置Wは、リムプロテクトバーは除外する。
ここでいう正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
タイヤ最大幅位置Wをタイヤ径方向に跨いで形成される凸部30は、タイヤ径方向における両端部31同士のタイヤ径方向における距離Lcが、ビード部5のタイヤ径方向内側の端部からタイヤ最大幅位置Wまでのタイヤ径方向における高さHの、0.2倍以上1.0倍以下の範囲内になっている。この場合におけるビード部5のタイヤ径方向内側の端部は、ビード部5が有するビードトウ5aになっている。つまり、ビード部5の内周面は、タイヤ幅方向内側の端部であるビードトウ5a側から、タイヤ幅方向外側の端部であるビードヒール5b側に向かうに従って、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に向かう方向にタイヤ回転軸に対して傾斜しているため、ビード部5のタイヤ径方向内側の端部は、ビードトウ5aの位置になっている。
また、凸部30のタイヤ径方向における両端部31同士のタイヤ径方向における距離Lcは、凸部30のタイヤ径方向外側の端部である外側端部31oから、タイヤ径方向内側の端部である内側端部31iまでのタイヤ径方向における距離Lcになっている。即ち、凸部30のタイヤ径方向における両端部31同士のタイヤ径方向における距離Lcは、換言すると、凸部30のタイヤ径方向における長さLcになっている。
なお、凸部30のタイヤ径方向における両端部31同士のタイヤ径方向における距離Lcは、ビードトウ5aからタイヤ最大幅位置Wまでのタイヤ径方向における高さHの0.2倍以上0.9倍以下の範囲内であるのが好ましい。
図2は、図1のA-A矢視図である。タイヤサイド部20のタイヤサイド面21に形成される複数の凸部30は、それぞれタイヤ径方向に沿って延びて形成されている。また、複数の凸部30は、互いにほぼ同一の形状で、タイヤ周方向に等間隔で不連続に配置されており、タイヤ径方向における位置も、複数の凸部30で互いにほぼ同じ位置に配置されている。複数の凸部30は、このようにタイヤ周方向に等間隔で配置され、各凸部30がタイヤ径方向に沿って延びて形成されることにより、複数の凸部30はタイヤ回転軸を中心とする放射状に設けられている。
図3は、図1に示す凸部30の詳細図である。凸部30は、凸部30の延在方向における位置、即ち、凸部30のタイヤ径方向における位置によって、タイヤサイド面21からの高さHcが変化している。詳しくは、凸部30は、外側端部31oと内側端部31iとの間に、タイヤサイド面21からの高さHcの変化の度合いが変化する高さ変化部32が2箇所形成されている。このうち、外側端部31o寄りの高さ変化部32と、外側端部31oとの間の部分は、外側端部31oから高さ変化部32に向かうに従って、タイヤサイド面21からの高さHcが高くなっている。同様に、内側端部31i寄りの高さ変化部32と、内側端部31iとの間の部分も、内側端部31iから高さ変化部32に向かうに従って、タイヤサイド面21からの高さHcが高くなっている。
一方、2箇所の高さ変化部32同士の間の部分は、タイヤサイド面21からの高さHcの変化が少なく、タイヤサイド面21からの高さHcがほぼ一定になっている。凸部30は、外側端部31oや内側端部31iから、高さ変化部32に向かうに従って、タイヤサイド面21からの高さHcが高くなっているため、タイヤサイド面21からの高さHcは、2箇所の高さ変化部32同士の間に位置する部分での高さが、最も高くなっている。また、凸部30は、2箇所の高さ変化部32同士の間の部分は、タイヤサイド面21からの高さHcがほぼ一定になっているため、2箇所の高さ変化部32同士の間の部分は、最大高さ領域33として形成されている。
図4は、図3のB-B矢視図になっている。凸部30は、凸部30の延在方向における位置によって、厚さTcも変化している。詳しくは、凸部30は、外側端部31oと内側端部31iとの間に、厚さTcの変化する度合いが変化する厚さ変化部34が2箇所形成されている。2箇所の厚さ変化部34は、凸部30の延在方向における位置が、2箇所の高さ変化部32と同じ位置になっている。つまり、外側端部31o寄りの厚さ変化部34と、外側端部31o寄りの高さ変化部32とは、凸部30の延在方向における位置が同じ位置になっており、内側端部31i寄りの厚さ変化部34と、内側端部31i寄りの高さ変化部32とは、凸部30の延在方向における位置が同じ位置になっている。
また、凸部30における外側端部31o寄りの厚さ変化部34と、外側端部31oとの間の部分は、外側端部31oから厚さ変化部34に向かうに従って、厚さTcが厚くなっている。同様に、内側端部31i寄りの厚さ変化部34と、内側端部31iとの間の部分も、内側端部31iから厚さ変化部34に向かうに従って、厚さTcが厚くなっている。
一方、2箇所の厚さ変化部34同士の間の部分は、厚さTcの変化が少なく、凸部30の厚さTcがほぼ一定になっている。凸部30は、外側端部31oや内側端部31iから、厚さ変化部34に向かうに従って厚さTcが厚くなっているため、凸部30の厚さTcは、2箇所の厚さ変化部34同士の間に位置する部分での厚さが、最も厚くなっている。また、凸部30は、2箇所の厚さ変化部34同士の間の部分は、厚さTcがほぼ一定になっているため、2箇所の厚さ変化部34同士の間の部分は、最大厚さ領域35として形成されている。凸部30は、この最大厚さ領域35に位置する部分の厚さTcが最も厚くなっており、最大厚さ領域35に位置する部分の厚さTcは、1.5mm以上10mm以下の範囲内になっている。即ち、凸部30は、最大厚さが1.5mm以上10mm以下の範囲内になっている。
また、凸部30は、ビード部5のタイヤ径方向内側の端部であるビードトウ5aから凸部30において最大厚さとなる位置である最大厚さ位置36までのタイヤ径方向における距離Hm(図1参照)が、ビードトウ5aからタイヤ最大幅位置Wまでのタイヤ径方向における高さH(図1参照)の0.4倍以上1.2倍以下の範囲内になっている。なお、凸部30は、最大厚さ領域35に位置する部分で、厚さTcが最も厚くなっているが、最大厚さ領域35は凸部30の延在方向に所定の長さを有しているため、本実施形態1では、凸部30の延在方向における最大厚さ領域35の中央位置を、最大厚さ位置36とする。また、ビードトウ5aから凸部30の最大厚さ位置36までのタイヤ径方向における距離Hmは、ビードトウ5aからタイヤ最大幅位置Wまでのタイヤ径方向における高さHの0.7倍以上1.0倍以下の範囲内であるのが好ましい。
また、凸部30が有する最大厚さ領域35は、凸部30の延在方向における両端側が、2箇所の厚さ変化部34によって区画されるが、厚さ変化部34は、最大高さ領域33(図3参照)を区画する2箇所の高さ変化部32と、凸部30の延在方向における位置が同じ位置になっている。これにより、最大厚さ領域35と最大高さ領域33とは、凸部30の延在方向における位置が同じ位置になっている。このため、凸部30は、タイヤサイド面21からの高さHcが最大高さとなる位置で、厚さがほぼ最大厚さになっている。
より具体的には、タイヤサイド面21からの高さHcが最大高さとなる最大高さ領域33(図3参照)は、凸部30の延在方向に所定の長さで形成されるため、凸部30は、タイヤサイド面21からの高さが最大高さとなる位置での厚さTc(図4参照)が、凸部30の最大厚さの0.7倍以上1.0倍以下の範囲内になっている。即ち、最大高さ領域33(図3参照)と凸部30の延在方向における位置が同じ位置になる最大厚さ領域35(図4参照)は、いずれの部分も厚さTcが、最大厚さ位置36(図4参照)での厚さTcの0.7倍以上1.0倍以下の範囲内になっている。これにより、凸部30は、最大高さ領域33に位置する部分の厚さTcが、ほぼ最大厚さになっている。
図5は、図1に示すビードコア11の詳細図である。ビードコア11は、タイヤ周方向に巻き回された少なくとも1本のビードワイヤ12からなり、ビードワイヤ12の複数の周回部分がタイヤ幅方向に並ぶ少なくとも1つの列とタイヤ径方向に重なる複数の層を形成している。なお、ビードコア11は、タイヤ子午断面においてビードワイヤ12の複数の周回部分が列と層を形成していれば、単一のビードワイヤ12を連続的に巻き回した、いわゆる一本巻き構造であってもよく、複数本のビードワイヤ12を引き揃えた状態で巻き回した、いわゆる層巻き構造であってもよい。
このようにタイヤ周方向に巻き回されることによりビードコア11を形成するビードワイヤ12は、平均直径が、0.8mm以上1.8mm以下の範囲内になっている。なお、ビードワイヤ12の平均直径は、1.0mm以上1.6mm以下の範囲内であるのが好ましく、1.1mm以上1.5mm以下の範囲内であるのがより好ましい。また、ビードワイヤ12の総面積(各ビードコア11のタイヤ子午断面に含まれるビードワイヤ12の周回部分の断面積の総和)は、10mm2以上50mm2以下の範囲内であるのが好ましく、15mm2以上48mm2以下の範囲内であるのがより好ましく、20mm2以上45mm2以下の範囲内であるのがさらに好ましい。
本実施形態1では、ビードコア11は、タイヤ径方向最内側から順に3列の周回部分を含む層、4列の周回部分を含む層、3列の周回部分を含む層、2列の周回部分を含む層、1列の周回部分を含む層の計5層が積層された構造を有する。なお、以降の説明では、この構造を「3+4+3+2+1構造」という。同様に、以降の説明では、ビードワイヤ12の積層構造を、各層に含まれる列の数をタイヤ径方向最内側の層から順に「+」で繋いだ同様の形式で表現する。さらに、本実施形態1では、ビードコア11は、ビードワイヤ12が俵積み状に積層されている。なお、「俵積み」とは、互いに接している3つの周回部分の中心が略正三角形を形成する積み方であり、六方充填配置と称されることもある充填率の高い積層構造である。
これらのように形成されるビードコア11は、複数の層のうち、含まれる列の数が最大となる層の幅W0と、タイヤ径方向最内側の層の幅W1と、タイヤ径方向最外側の層の幅W2とが、W1>W2、且つ、W2≦(0.5×W0)の関係を満たしている。この場合における幅W0、W1、W2は、いずれも各層のタイヤ幅方向両側の周回部分のタイヤ幅方向外側端間のタイヤ幅方向に沿った長さである。
また、ビードコア11が有する複数の層のうち、含まれる列の数が最大となる層、即ち、タイヤ幅方向における幅が最大幅となる層は、ビードコア11のタイヤ径方向中心位置よりもタイヤ径方向内側に位置している。つまり、ビードコア11は、タイヤ幅方向における幅が最大幅となる部分がタイヤ径方向中心位置よりもタイヤ径方向内側に位置しており、この最大幅となる部分からタイヤ径方向外側に向かって、タイヤ幅方向における幅が狭くなって形成されている。換言すると、ビードコア11は、タイヤ幅方向における幅が最大幅となる部分からタイヤ径方向外側に向かって、タイヤ幅方向における幅がタイヤ径方向最内側の層の幅W1よりも小さくなるように先細る形状で形成されている。なお、以降の説明では、ビードコア11のこのような形状を「外径側楔形状」という場合がある。
また、ビードコア11は、タイヤ子午断面においてビードワイヤ12の複数の周回部分の共通接線によって形成された多角形をビードワイヤ12の外郭形状13としたとき、外郭形状13のタイヤ径方向内側の辺の両端に位置する角部の内角α,βが、α>90°、且つ、β>90°の関係を満たしている。なお、外郭形状13のタイヤ径方向内側の辺の両端に位置する角部の内角α,βは、100°≦α≦150°、且つ、100°≦β≦150°の関係を満たすのが好ましい。また、本実施形態1では、ビードコア11は、ビードワイヤ12の積層構造が、3+4+3+2+1構造であるため、外郭形状13は略五角形の形状になっている。
また、ビードコア11は、外郭形状13の周長L0と、外郭形状13のタイヤ径方向内側の辺の長さL1と、外郭形状13のタイヤ径方向内側の辺に連なるビードトウ5a側の傾斜した辺の長さL2とが、0.25≦{(L1+L2)/L0}≦0.40の関係を満たしている。さらに、ビードコア11は、これらの長さL1と、長さL2と、外郭形状13のタイヤ径方向内側の辺に連なるビードヒール5b側の傾斜した辺の長さL3とが、1.0≦{(L1+L2)/(2×L3)}≦2.5の関係を満たしている。
なお、この場合における長さL2は、外郭形状13を構成する複数の辺のうち、タイヤ径方向内側の辺のタイヤ幅方向内側に位置して、当該タイヤ径方向内側の辺のタイヤ幅方向内側の端部に接続される辺の長さになっている。また、長さL3は、外郭形状13を構成する複数の辺のうち、タイヤ径方向内側の辺のタイヤ幅方向外側に位置して、当該タイヤ径方向内側の辺のタイヤ幅方向外側の端部に接続される辺の長さになっている。また、周長L0と、長さL1と、長さL2とは、0.28≦{(L1+L2)/L0}≦0.36の関係を満たすのが好ましく、長さL1と、長さL2と、長さL3とは、1.1≦{(L1+L2)/(2×L3)}≦2.0の関係を満たすのが好ましい。
また、外郭形状13のタイヤ径方向内側の辺に連なるビードトウ5a側の傾斜した辺の長さL2は、1.5mm以上8mm以下の範囲内であるのが好ましく、2mm以上5mm以下の範囲内であるのがより好ましい。また、外郭形状13のタイヤ径方向内側の辺の長さL1は、2mm以上10mm以下の範囲内であるのが好ましく、2.5mm以上7mm以下であるのがより好ましい。
ビード部5では、カーカス層6はビードコア11の周縁に沿って屈曲しながら折り返されるが、ビードコア11は、外径側楔形状で形成されるため、カーカス層6は、タイヤ子午断面におけるビードコア11の形状である外径側楔形状に沿って屈曲する。つまり、ビードコア11は、タイヤ子午断面における形状が略五角形になっているため、ビードコア11の周縁に沿って延在するカーカス層6も、略五角形状に屈曲しながら延在する。さらに、カーカス層6の折り返し部6bにおける、ビードコア11のタイヤ径方向外側端よりもタイヤ径方向外側の部分は、カーカス層6のカーカス本体部6aに接触しながら、カーカス層6のカーカス本体部6aに沿ってタイヤ径方向外側に向かって延在している。このため、ビード部5には、カーカス層6のカーカス本体部6aと折り返し部6bとによって、ビードコア11を囲む閉鎖領域が形成されている。
カーカス層6のカーカス本体部6aと折り返し部6bとによって形成された閉鎖領域には、実質的にビードコア11のみが存在している。このため、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1には、従来の空気入りタイヤで用いられるようなビードフィラーまたはそれに類するタイヤ構成部材(ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されてカーカス層6のカーカス本体部6aと折り返し部6bとによって包み込まれてビード部5からサイドウォール部4にかけての剛性を高める部材)は配置されない。即ち、空気入りタイヤ1では、閉鎖領域には、ビードワイヤ12を被覆するインシュレーションゴムや、ビードコア11とカーカス層6との間に形成される僅かな隙間を埋めるゴムは存在しているが、従来の空気入りタイヤのような大きな体積を有するビードフィラーは用いられていない。本実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、タイヤ子午断面における閉鎖領域の面積Aに対する、閉鎖領域内に存在するゴムの総面積aの比率(a/A×100%)を閉鎖領域のゴム占有率とすると、ゴム占有率は、0.1%以上15%以下の範囲内になっている。
本実施形態1に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、ビード部5にリムホイールを嵌合することによってリムホイールに空気入りタイヤ1をリム組みし、内部に空気を充填してインフレートした状態で車両に装着する。その際に、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向が指定されているため、指定されている方向で車両に装着する。即ち、サイドウォール部4に付された装着方向表示部によって指定されている方向で車両に装着する。具体的には、タイヤ幅方向両側に位置するタイヤサイド部20のうち、凸部30が形成される側のタイヤサイド部20が車両装着方向外側に位置する向きで車両に装着する。
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、接地面10のうち下方に位置して路面に対向する部分が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。車両は、接地面10と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。例えば、空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主に接地面10と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、接地面10と路面との間の水が、接地面10に形成される周方向溝16やラグ溝17等の溝に入り込み、これらの溝で接地面10と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、接地面10は路面に接地し易くなり、接地面10と路面との間の摩擦力により、車両は所望の走行をすることが可能になる。
空気入りタイヤ1を装着した車両の走行時は、これらのように空気入りタイヤ1の接地面10と路面との間に発生する摩擦力により、車両は走行することが可能となるが、車両の走行時は、空気入りタイヤ1の各部には、様々な方向の荷重が作用する。空気入りタイヤ1に作用する荷重は、内部に充填された空気の圧力や、空気入りタイヤ1の骨格として設けられるカーカス層6等によって受ける。例えば、車両の重量や路面の凹凸によって、トレッド部2とビード部5との間でタイヤ径方向に作用する荷重は、主に、空気入りタイヤ1の内部に充填された空気の圧力で受けたり、サイドウォール部4等が撓んだりしながら受ける。即ち、空気入りタイヤ1の内部に充填された空気は、空気入りタイヤ1を内部から外側方向に押し広げようとする力として作用する。車両の走行時には、空気入りタイヤ1は、このように内部に充填された空気による、内部から外側方向への付勢力によって大きな荷重を受けたり、サイドウォール部4等が適度に撓んだりしながら走行することにより、車両は乗り心地を確保しつつ走行することが可能になっている。
ここで、空気入りタイヤ1は、例えば接地面10に異物が刺さってパンクする等により、内部の空気が漏出する場合がある。内部の空気が漏出すると、空気圧が低下し、空気入りタイヤ1の内部から外側方向への空気による付勢力が低減するため、車両の走行時における荷重を、内部の空気圧によって受けることが困難になる。この場合、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、空気圧によって受けることが困難になった荷重の一部を、タイヤサイド部20に設けられるサイド補強ゴム25によって受けることが可能になっている。つまり、サイド補強ゴム25は、サイドウォール部4を形成するサイドゴム4aよりも強度が高いゴム材料により形成されているため、サイドウォール部4等のタイヤサイド部20に対してタイヤ径方向の大きな荷重が作用した場合でも、サイド補強ゴム25は、タイヤサイド部20のタイヤ径方向の変形を抑えることが可能になっている。
一方で、タイヤサイド部20にサイド補強ゴム25が設けられた場合、タイヤサイド部20の質量が大きくなるため、これに伴い、空気入りタイヤ1全体の質量が大きくなる。空気入りタイヤ1の質量が大きくなると、車両走行時における乗心地が悪化したり、燃費が悪化したりする等の悪影響が発生し易くなる。このため、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、ビード部5にビードフィラーを配置せず、ビードフィラーを省略することにより、サイド補強ゴム25を設けつつ空気入りタイヤ1の質量の軽減を図っている。これにより、空気入りタイヤ1の質量が増加することに起因する性能の悪化を抑制している。
しかし、ビードフィラーを省略すると、タイヤサイド部20におけるビード部5付近の剛性が低下するため、操縦安定性が低下し易くなる。また、ビード部5付近の剛性が低下するため、内圧が低下した状態での走行である、いわゆるランフラット走行時に、サイド補強ゴム25への負荷が大きくなり過ぎる虞があり、サイド補強ゴム25やその周囲の部材に故障が発生し易くなる虞がある。このため、ランフラット走行時における耐久性が低下し易くなる虞がある。
これに対し、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、タイヤサイド部20に、タイヤサイド面21から突出する凸部30が設けられている。これにより、ビードフィラーを省略することに伴うビード部5付近の剛性の低下を、凸部30によって補うことができるため、タイヤサイド部20の剛性を確保することができ、操縦安定性の低下を抑制することができる。また、タイヤサイド部20に凸部30を設けることによってタイヤサイド部20の剛性を確保することができるため、ランフラット走行時におけるサイド補強ゴム25への負荷を低減することができ、ランフラット走行時における耐久性の低下を抑制することができる。
さらに、凸部30は、最大厚さが1.5mm以上であるため、タイヤサイド部20の剛性をより確実に確保することができる。つまり、凸部30の最大厚さが1.5mm未満である場合は、凸部30の最大厚さが薄過ぎるため、凸部30自体の剛性を確保するのが困難になり、タイヤサイド部20の剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、操縦安定性の低下を抑制したり、ランフラット走行時における耐久性の低下を抑制したりし難くなる虞がある。これに対し、凸部30の最大厚さが、1.5mm以上である場合は、タイヤサイド部20の剛性をより確実に確保することができ、操縦安定性の低下を抑制したり、ランフラット走行時における耐久性の低下を抑制したりすることができる。
また、凸部30は、タイヤサイド面21からの高さHcが最大高さとなる位置での厚さTcが、最大厚さの0.7倍以上1.0倍以下の範囲内であるため、凸部30において剛性を確保し易い位置での剛性を、効果的に確保することができる。つまり、凸部30における、高さHcが最大高さとなる位置付近は、凸部30の延在方向における単位長さあたりの体積が大きくなる位置であり、凸部30の剛性を確保し易い位置であるが、この位置での厚さTcが最大厚さの0.7倍未満である場合は、高さHcが最大高さとなる位置付近の剛性を効果的に確保し難くなる虞がある。
これに対し、凸部30における、高さHcが最大高さとなる位置での厚さTcが、最大厚さの0.7倍以上1.0倍以下の範囲内である場合は、凸部30において剛性を確保し易い位置での剛性を、効果的に確保することができる。これにより、タイヤサイド部20の剛性をより確実に確保することができ、操縦安定性の低下を抑制したり、ランフラット走行時における耐久性の低下を抑制したりすることができる。これらの結果、耐久性の低下を抑制しつつ、質量を軽減することができる。
また、凸部30は、外側端部31oから内側端部31iまでのタイヤ径方向における距離Lcが、ビードトウ5aからタイヤ最大幅位置Wまでのタイヤ径方向における高さHの0.2倍以上1.0倍以下の範囲内であるため、凸部30の表面積を確保することによって凸部30での放熱性を確保しつつ、凸部30の質量が大きくなり過ぎることを抑制することができる。つまり、凸部30の外側端部31oから内側端部31iまでの距離Lcが、ビードトウ5aからタイヤ最大幅位置Wまでの高さHの0.2倍未満である場合は、凸部30の両端部31同士のタイヤ径方向における距離Lcが短過ぎるため、凸部30の表面積が小さくなり過ぎる虞がある。この場合、凸部30での放熱性が低下するため、耐久性を確保し難くなる虞がある。ここで、凸部30での放熱性と耐久性との関係について説明すると、ランフラット走行時は、正規内圧が充填された状態での走行時よりも、タイヤサイド部20の撓みが大きくなるため、タイヤサイド部20は発熱し易くなる。タイヤサイド部20を構成するサイドゴム4aやサイド補強ゴム25等のゴム部材は、温度が高くなると破断し易くなるため、タイヤサイド部20が発熱することによって温度が高くなると、タイヤサイド部20は耐久性が低下し易くなる。
一方で、凸部30はタイヤサイド面21から突出して形成されるため、実質的にタイヤサイド面21の表面積を大きくすることができ、タイヤサイド部20が発熱した際における熱を、凸部30から放熱することが可能になっている。これにより、タイヤサイド部20を構成する部材の温度が高くなり過ぎることを抑制することができ、温度が高くなることによって破断し易くなることを抑制することができるため、タイヤサイド部20の耐久性を確保し易くなる。しかし、凸部30の両端部31同士のタイヤ径方向における距離Lcが短過ぎることにより、凸部30の表面積が小さくなり過ぎる場合は、タイヤサイド部20が発熱した際における熱を、凸部30から効果的に放熱するのが困難になる虞がある。この場合、タイヤサイド部20を構成する部材の温度が高くなり過ぎることを抑制し難くなるため、タイヤサイド部20の耐久性を確保し難くなる虞がある。
また、凸部30の外側端部31oから内側端部31iまでの距離Lcが、ビードトウ5aからタイヤ最大幅位置Wまでの高さHの1.0倍より大きい場合は、凸部30の両端部31同士のタイヤ径方向における距離Lcが長過ぎるため、凸部30の質量が大きくなり過ぎる虞がある。この場合、ビードフィラーを省略することによって空気入りタイヤ1の質量の軽減を図っても、凸部30の質量が大きくなるため、空気入りタイヤ1の質量の軽減し難くなる虞がある。
これに対し、凸部30の外側端部31oから内側端部31iまでの距離Lcが、ビードトウ5aからタイヤ最大幅位置Wまでの高さHの0.2倍以上1.0倍以下の範囲内である場合は、凸部30の表面積を確保することによって凸部30での放熱性を確保しつつ、凸部30の質量が大きくなり過ぎることを抑制することができる。これにより、タイヤサイド部20を構成する部材の温度が高くなり過ぎることをより確実に抑制して、タイヤサイド部20の耐久性をより確実に確保することができる。この結果、より確実に、耐久性の低下を抑制しつつ質量を軽減することができる。
また、凸部30は、ビードトウ5aから最大厚さ位置36までのタイヤ径方向における距離Hmが、ビードトウ5aからタイヤ最大幅位置Wまでのタイヤ径方向における高さHの0.4倍以上1.2倍以下の範囲内となる位置に配置されるため、タイヤサイド部20の剛性をより効果的に確保することができる。つまり、ビードトウ5aから最大厚さ位置36までのタイヤ径方向における距離Hmが、ビードトウ5aからタイヤ最大幅位置Wまでのタイヤ径方向における高さHの0.4倍未満である場合は、ビードトウ5aから凸部30の最大厚さ位置36までのタイヤ径方向における距離Hmが小さ過ぎるため、タイヤサイド部20の剛性を適切に確保するのが困難になる虞がある。即ち、タイヤサイド部20は、荷重が作用した際には、タイヤ最大幅位置W付近で最も撓み易くなるため、タイヤサイド部20の剛性を確保する際には、タイヤ最大幅位置W付近の剛性を確保するのが効果的になっている。しかし、ビードトウ5aから最大厚さ位置36までの距離Hmが、ビードトウ5aからタイヤ最大幅位置Wまでの高さHの0.4倍未満である場合は、凸部30の最大厚さ位置36が、タイヤ最大幅位置Wよりも大幅にタイヤ径方向内側に位置し過ぎる虞がある。この場合、タイヤサイド部20におけるタイヤ最大幅位置W付近の剛性を、凸部30によって確保し難くなるため、タイヤサイド部20の剛性を、凸部30によって効果的に確保するのが困難になる虞がある。
また、ビードトウ5aから最大厚さ位置36までのタイヤ径方向における距離Hmが、ビードトウ5aからタイヤ最大幅位置Wまでのタイヤ径方向における高さHの1.2倍より大きい場合は、ビードトウ5aから凸部30の最大厚さ位置36までのタイヤ径方向における距離Hmが大き過ぎるため、タイヤサイド部20の剛性を適切に確保するのが困難になる虞がある。即ち、ビードトウ5aから凸部30の最大厚さ位置36までの距離Hmが大き過ぎる場合は、凸部30の最大厚さ位置36が、タイヤ最大幅位置Wよりも大幅にタイヤ径方向外側に位置し過ぎる虞がある。この場合も、凸部30の最大厚さ位置36が、タイヤ最大幅位置Wよりも大幅にタイヤ径方向内側に位置し過ぎる場合と同様に、タイヤサイド部20におけるタイヤ最大幅位置W付近の剛性を、凸部30によって確保し難くなるため、タイヤサイド部20の剛性を、凸部30によって効果的に確保するのが困難になる虞がある。
これに対し、ビードトウ5aから凸部30の最大厚さ位置36までの距離Hmが、ビードトウ5aからタイヤ最大幅位置Wまでの高さHの0.4倍以上1.2倍以下の範囲内となるように凸部30を形成した場合は、タイヤサイド部20におけるタイヤ最大幅位置W付近の剛性を、より確実に確保することができる。これにより、タイヤサイド部20の剛性を、凸部30によってより効果的に確保することができ、タイヤサイド部20の耐久性をより確実に確保することができる。この結果、より確実に耐久性の低下を抑制することができる。
また、ビードコア11は、ビードワイヤ12をタイヤ周方向に巻き回すことにより形成される複数の層のうち、含まれる列の数が最大となる層の幅W0とタイヤ径方向最内側の層の幅W1とタイヤ径方向最外側の層の幅W2とが、W1>W2、且つ、W2≦(0.5×W0)の関係を満たすため、リム組み時におけるリム外れを抑制することができる。つまり、W1≦W2であったり、W2>(0.5×W0)であったりする場合は、ビードコア11のタイヤ径方向外側の端部の幅が大きくなり過ぎるため、ビード部5における、ビードコア11のタイヤ径方向外側の端部付近の剛性が高くなり過ぎる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1をリム組みした際において、ビード部5のタイヤ径方向におけるビードコア11のタイヤ径方向外側の端部付近の位置とリムフランジとが当接する部位を支点とした回転力が発生した際に、この回転力に起因するリム外れを抑制することが難しくなり、耐リム外れ性が低下する虞がある。
これに対し、ビードコア11に形成される複数の層が、W1>W2、且つ、W2≦(0.5×W0)の関係を満たす場合には、ビード部5における、ビードコア11のタイヤ径方向外側の端部付近の剛性が高くなり過ぎることを抑制することができる。これにより、ビード部5のタイヤ径方向におけるビードコア11のタイヤ径方向外側の端部付近の位置とリムフランジとが当接する部位を支点とした回転力による、リム外れを抑制することができる。この結果、耐リム外れ性を確保することができる。
また、ビードコア11は、外郭形状13のタイヤ径方向内側の辺の両端に位置する角部の内角α,βが、α>90°、且つ、β>90°の関係を満たすため、ビードコア11の形状を良好に維持することができる。つまり、ビードコア11の外郭形状13の内角α,βが、α≦90°であったり、β≦90°であったりする場合は、ビードワイヤ12の総巻き数を減らすのが困難になり、ビードコア11の質量を低減するのが困難になる虞がある。また、ビードコア11の外郭形状13の内角α,βが、α≦90°であったり、β≦90°であったりする場合は、外郭形状13のタイヤ径方向内側の辺の両端に位置するビードワイヤ12が、空気入りタイヤ1の製造時における加硫成形時に、ゴムの流れの影響を受け易くなる虞がある。この場合、加硫成形後のビードコア11の形状を良好に維持するのが困難になり、ビードコア11のタイヤ径方向最内側の層のビードワイヤ12の巻き数を保持し難くなる虞がある。
これに対し、ビードコア11の外郭形状13の内角α,βが、α>90°、且つ、β>90°の関係を満たす場合は、ビードワイヤ12の総巻き数を減らすことにより、ビードコア11の質量を低減すると共に、加硫成形時における、ビードワイヤ12に対するゴムの流れの影響を抑制することができる。これにより、空気入りタイヤ1の質量をより確実の軽減しつつ、ビードコア11のタイヤ径方向最内側の層のビードワイヤ12の巻き数を、より確実に保持することができる。この結果、より確実に質量を軽減しつつ、耐リム外れ性を確保することができる。
また、ビードコア11は、外郭形状13の周長L0と、長さL1と、長さL2と、長さ3とが、0.25≦{(L1+L2)/L0}≦0.40、且つ、1.0≦{(L1+L2)/(2×L3)}≦2.5の関係を満たすため、ビードコア11の形状を、耐リム外れ性を確保しつつ質量を軽減することのできる形状にすることができる。つまり、ビードコア11の外郭形状13の周長L0と、長さL1と、長さL2と、長さ3とが、0.25>{(L1+L2)/L0}であったり、1.0>{(L1+L2)/(2×L3)}であったりする場合は、外郭形状13の長さL1や長さL2が短過ぎるため、耐リム外れ性を確保するのが困難になる虞がある。即ち、ビードコア11における、外郭形状13のタイヤ径方向内側の辺に相当する位置と、外郭形状13のタイヤ径方向内側の辺に連なる辺に相当する位置は、ランフラット走行時の耐リム外れ性に対する寄与が大きいため、これらの辺の長さL1、L2が短過ぎる場合は、ランフラット走行時の耐リム外れ性を確保するのが困難になる虞がある。また、ビードコア11の外郭形状13の周長L0と、長さL1と、長さL2と、長さ3とが、{(L1+L2)/L0}>0.40であったり、{(L1+L2)/(2×L3)}>2.5であったりする場合は、外郭形状13の長さL1や長さL2が長過ぎるため、ビードコア11の質量が大き過ぎる虞がある。この場合、ビードフィラーを省略しても、空気入りタイヤ1の質量を軽減するのが困難になる虞がある。
これに対し、ビードコア11の外郭形状13の周長L0と、長さL1と、長さL2と、長さ3とが、0.25≦{(L1+L2)/L0}≦0.40、且つ、1.0≦{(L1+L2)/(2×L3)}≦2.5の関係を満たす場合には、ビードコア11の形状を、質量を軽減しつつ耐リム外れ性を確保することができる形状にすることができ、特に、ランフラット走行時の耐リム外れ性を確保することができる。この結果、より確実に質量を軽減しつつ、耐リム外れ性を確保することができる。
また、ビードコア11は、ビードワイヤ12の平均直径が、0.8mm以上1.8mm以下の範囲内であるため、ビードコア11の質量が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、より確実にビードコア11での拘束力を確保することができる。つまり、ビードワイヤ12の平均直径が、0.8mm未満である場合は、ビードワイヤ12の平均直径が細過ぎるため、ビードワイヤ12の剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、ビードコア11での拘束力を確保し難くなり、耐リム外れ性を確保するのが困難になる虞がある。また、ビードワイヤ12の平均直径が、1.8mmより大きい場合は、ビードワイヤ12の平均直径が太過ぎるため、ビードコア11の質量が大きくなり過ぎる虞があり、空気入りタイヤ1の質量を軽減するのが困難になる虞がある。
これに対し、ビードワイヤ12の平均直径が、0.8mm以上1.8mm以下の範囲内である場合は、ビードコア11の質量が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、ビードワイヤ12の剛性を確保することにより、より確実にビードコア11での拘束力を確保することができる。この結果、より確実に質量を軽減しつつ、耐リム外れ性を確保することができる。
[実施形態2]
実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1と略同様の構成であるが、凸部30がタイヤ径方向に対してタイヤ周方向に傾斜している点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
図6は、実施形態2に係る空気入りタイヤ1のタイヤサイド面21を示す要部平面図である。実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1と同様に、ビード部5にはビードフィラーが設けられておらず、タイヤサイド部20にサイド補強ゴム25が配設され、タイヤサイド部20には、タイヤサイド面21から突出してタイヤサイド面21に沿って延在する凸部30が複数形成されている。また、実施形態2では、タイヤサイド部20に形成される凸部30は、タイヤ径方向に対してタイヤ周方向に傾斜している。このため、各凸部30は、外側端部31oと内側端部31iとのタイヤ周方向における位置が、それぞれ異なっている。
また、1つのタイヤサイド面21に形成される複数の凸部30は、タイヤ径方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が、タイヤ周方向に並んで配設される複数の凸部30において交互に配設されており、タイヤ周方向に隣り合う凸部30同士で、傾斜方向が互いに反対方向になっている。このため、1つのタイヤサイド面21に形成される複数の凸部30は、タイヤ周方向に隣り合う凸部30同士がハの字状に配置されている。換言すると、1つのタイヤサイド面21に形成される複数の凸部30は、タイヤ周方向における所定の方向に向かう際におけるタイヤ径方向への傾斜方向が、タイヤ周方向に隣り合う凸部30同士で、互いに反対方向になっている。
これらのように構成される本実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1と同様に、ビード部5はビードフィラーが省略され、また、タイヤサイド部20には凸部30が形成されているため、耐久性の低下を抑制しつつ、質量を軽減することができる。
また、凸部30は、タイヤ径方向に対してタイヤ周方向に傾斜しているため、外側端部31oと内側端部31iとのタイヤ径方向における距離を大きくすることなく、凸部30の延在方向における長さを長くすることができる。これにより、凸部30の表面積を大きくすることができるため、タイヤサイド面21付近を流れる空気と凸部30との間での熱交換を、効率良く行うことができる。従って、凸部30での放熱性を向上させることができ、タイヤサイド部20を構成する部材の温度が高くなり過ぎることを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に耐久性を向上させることができる。
[実施形態3]
実施形態3に係る空気入りタイヤ1は、実施形態2に係る空気入りタイヤ1と略同様の構成であるが、凸部30が全て同じ方向に傾斜している点に特徴がある。他の構成は実施形態2と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
図7は、実施形態3に係る空気入りタイヤ1のタイヤサイド面21を示す要部平面図である。実施形態3に係る空気入りタイヤ1は、実施形態2に係る空気入りタイヤ1と同様に、ビード部5にはビードフィラーが設けられておらず、タイヤサイド部20にサイド補強ゴム25が配設され、タイヤサイド部20には、タイヤサイド面21から突出してタイヤサイド面21に沿って延在する凸部30が複数形成されている。また、凸部30は、タイヤ径方向に対してタイヤ周方向に傾斜している。
また、実施形態3に係る空気入りタイヤ1は、車両装着時での回転方向が指定された空気入りタイヤ1になっており、即ち、車両の前進時において回転軸を中心に指定された回転方向に回転するように車両に装着される空気入りタイヤ1になっている。このため、実施形態3に係る空気入りタイヤ1は、回転方向を示す回転方向表示部(図示省略)を有する。回転方向表示部は、例えば、タイヤのサイドウォール部4に付されたマークや凹凸によって構成される。以下の説明では、タイヤ回転方向における先着側とは、空気入りタイヤ1を指定方向に回転させた際における回転方向側であり、空気入りタイヤ1を車両に装着して指定方向に回転させて走行する場合において、先に路面に接地したり先に路面から離れたりする側である。また、タイヤ回転方向における後着側とは、空気入りタイヤ1を指定方向に回転させた際における回転方向の反対側であり、空気入りタイヤ1を車両に装着して指定方向に回転させて走行する場合において、先着側に位置する部分の後に路面に接地したり、先着側に位置する部分の後に路面から離れたりする側である。
本実施形態3に係る空気入りタイヤ1は、このように車両装着時での回転方向が指定された空気入りタイヤ1になっているが、タイヤサイド部20に形成される複数の凸部30は、タイヤ周方向における所定の方向に向かう際におけるタイヤ径方向への傾斜方向が、全て同じ方向となって傾斜している。具体的には、凸部30は、空気入りタイヤ1の回転方向における先着側から後着側に向かうに従って、タイヤ径方向における内側から外側に向かう方向にタイヤ周方向に対して傾斜している。このため、各凸部30は、外側端部31oよりも内側端部31iの方が、タイヤ回転方向における先着側に位置している。
実施形態3に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、車両装着時における回転方向が、指定されている方向になる向きで車両に装着する。即ち、サイドウォール部4に付された回転方向表示部によって指定されている方向で車両に装着する。本実施形態3に係る空気入りタイヤ1は、実施形態2に係る空気入りタイヤ1と同様に、ビード部5はビードフィラーが省略され、また、タイヤサイド部20には凸部30が形成されているため、耐久性の低下を抑制しつつ、質量を軽減することができる。
また、凸部30は、空気入りタイヤ1の回転方向における先着側から後着側に向かうに従って、タイヤ径方向における内側から外側に向かう方向にタイヤ周方向に対して傾斜しているため、より確実に放熱性を向上させることができる。つまり、凸部30の傾斜方向が、回転方向における先着側から後着側に向かうに従ってタイヤ径方向における内側から外側に向かう方向に傾斜することにより、空気入りタイヤ1の回転時にタイヤサイド面21付近を流れる空気は、凸部30によってタイヤ径方向における内側から外側に向かう方向に、流れる向きを変更させられる。このため、凸部30で熱交換を行うことによって温度が高くなった空気は、効率よくタイヤ径方向外側に向かって排出される。これにより、凸部30は、タイヤサイド面21付近を流れる空気との間でより効率良く熱交換を行うことができ、より確実に放熱性を向上させることができる。従って、タイヤサイド部20を構成する部材の温度が高くなり過ぎることを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に耐久性を向上させることができる。
[実施形態4]
実施形態4に係る空気入りタイヤ1は、実施形態3に係る空気入りタイヤ1と略同様の構成であるが、凸部30が屈曲部40を有している点に特徴がある。他の構成は実施形態3と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
図8は、実施形態4に係る空気入りタイヤ1のタイヤサイド面21を示す要部平面図である。図9は、図8のC部詳細図である。実施形態4に係る空気入りタイヤ1は、実施形態3に係る空気入りタイヤ1と同様に、ビード部5にはビードフィラーが設けられておらず、タイヤサイド部20にサイド補強ゴム25が配設され、タイヤサイド部20には、タイヤサイド面21から突出してタイヤサイド面21に沿って延在する凸部30が複数形成されている。また、実施形態4に係る空気入りタイヤ1は、実施形態3に係る空気入りタイヤ1と同様に、車両装着時での回転方向が指定されており、凸部30は、回転方向における先着側から後着側に向かうに従って、タイヤ径方向における内側から外側に向かう方向にタイヤ周方向に対して傾斜している。
また、凸部30は、凸部30が延在する方向が変化する位置である屈曲部40を少なくとも1箇所有しており、各凸部30は、屈曲部40を複数有している。1つの凸部30が有する屈曲部40の数は、2箇所以上4箇所以下の範囲内であるのが好ましい。また、各凸部30は、屈曲部40によって区画される延在部50を複数有している。この場合における延在部50は、単一円弧状、または単一直線状の形状でそれぞれタイヤサイド面21に沿って延在して形成されている。また、ここでいう単一円弧状は、延在部50が湾曲して形成している際に、曲率半径が最も大きい位置と最も小さい位置とのそれぞれの曲率半径同士の相対的な割合の差が、200%以下である形状をいう。また、単一直線状は、延在部50の延在方向の変化が5°以下である形状をいう。また、屈曲部40によって区画される2つの延在部50が共に単一円弧状である場合は、変曲点の位置が屈曲部40になり、延在部50同士が、曲率半径が極小の円弧によって接続される場合は、曲率半径が極小の円弧が形成される範囲が屈曲部40になる。
本実施形態4では、各凸部30は、屈曲部40を2箇所有しており、2箇所の屈曲部40によって延在部50を3箇所有している。即ち、凸部30は、第一延在部51と第二延在部52と第三延在部53との3つの延在部50を有している。このうち、第一延在部51は、1つの凸部30が有する複数の延在部50のうち、長さが最も長い延在部50になっており、即ち、第一延在部51は、長さが第二延在部52及び第三延在部53よりも長くなっている。また、第二延在部52は、屈曲部40を介して第一延在部51から連続する延在部50になっている。また、第三延在部53は、第二延在部52の延在方向における第一延在部51が位置する側の反対側に位置し、屈曲部40を介して第二延在部52から連続する延在部50になっている。つまり、複数の延在部50のうち、第一延在部51と第三延在部53とは、第一延在部51や第三延在部53の延在方向における一方の端部側のみが屈曲部40によって区画されており、第二延在部52は、第二延在部52の延在方向における両端部が屈曲部40によって区画されている。
また、第一延在部51は、複数の延在部50の中で最もタイヤ径方向外側に配置されており、凸部30は、第一延在部51側から第三延在部53側に向かうに従って、タイヤ径方向外側からタイヤ径内側に向かう方向に、タイヤ周方向に対して傾斜している。このため、第二延在部52は、第一延在部51よりもタイヤ径方向内側に配置され、第三延在部53は、第二延在部52よりもタイヤ径方向内側に配置されている。
また、複数の凸部30は、タイヤ周方向における所定の方向に向かう際におけるタイヤ径方向への傾斜方向が、全て同じ方向となって傾斜しているため、複数の凸部30が有する複数の第一延在部51も、タイヤ周方向に対するタイヤ径方向への傾斜の方向が、全て同じ方向になっている。具体的には、第一延在部51は、空気入りタイヤ1の回転方向における先着側から後着側に向かうに従って、タイヤ径方向における内側から外側に向かう方向にタイヤ周方向に対して傾斜している。また、第二延在部52及び第三延在部53も同様に、空気入りタイヤ1の回転方向における先着側から後着側に向かうに従って、タイヤ径方向における内側から外側に向かう方向にタイヤ周方向に対して傾斜している。
また、凸部30が有する複数の延在部50のうち、第二延在部52は、タイヤ周方向に対するタイヤ径方向への傾きが、第一延在部51のタイヤ周方向に対するタイヤ径方向への傾きよりも大きくなっている。また、第二延在部52は、第三延在部53よりも、タイヤ周方向に対するタイヤ径方向への傾きが大きくなっている。つまり、第一延在部51と第二延在部52と第三延在部53とは、タイヤ周方向における所定の方向に向かう際におけるタイヤ径方向への傾斜方向が同じ方向となって傾斜しつつ、タイヤ周方向に対するタイヤ径方向へ傾きは、第二延在部52が最も大きくなっている。タイヤ周方向に対するタイヤ径方向への傾きが最も大きい第二延在部52は、タイヤサイド面21におけるタイヤ最大幅位置W(図1参照)をタイヤ径方向に跨ぐ位置に配置されている。
これらのように形成される凸部30は、凸部30の延在方向における両端部31のうち、互いに異なる端部31をそれぞれ通りタイヤ径方向に延びる2本の凸部端部位置線Pc同士のタイヤ周方向における相対的な角度Rc、即ち、2本の凸部端部位置線Pcでなす角度Rcが、タイヤ周方向における一周の角度2πの6%以上50%以下の範囲内になっている。つまり、1つのタイヤサイド部20に複数配設される凸部30は、それぞれ角度Rcが、タイヤ周方向における一周の角度2πの6%以上50%以下の範囲内でタイヤ周方向に延在している。このように規定される角度Rcは、1つの凸部30が配置される範囲のタイヤ周方向における角度になっており、即ち、凸部30のタイヤ周方向における延在角度になっている。
なお、凸部30は、タイヤ周方向における一周の角度2πに対する角度Rcが、好ましくは8%以上40%以下の範囲内であるのが良く、さらに好ましくは、10%以上30%以下の範囲内であるのが良い。
また、第一延在部51は、第一延在部51の延在方向における両端部51aのうち、互いに異なる端部51aをそれぞれ通りタイヤ径方向に延びる2本の第一延在部端部位置線Pe同士のタイヤ周方向における相対的な角度Re、即ち、2本の第一延在部端部位置線Peでなす角度Reが、角度Rcに対して、0.60≦(Re/Rc)≦0.90の範囲内となって形成されている。この角度Reは、1つの第一延在部51が配置される範囲のタイヤ周方向における角度になっており、つまり、第一延在部51のタイヤ周方向における延在角度になっている。なお、凸部30の角度Rcに対する第一延在部51の角度Reは、0.70≦(Re/Rc)≦0.85の範囲内であるのが好ましい。
このように形成される第一延在部51は、第一延在部51の延在方向における長さが、第二延在部52の延在方向における第二延在部52の長さの1.5倍以上30倍以下の範囲内になっている。さらに、第一延在部51の延在方向における第一延在部51の長さは、第三延在部53の延在方向における第三延在部53の長さの、1.2倍以上25倍以下の範囲内になっている。なお、第一延在部51の長さは、第二延在部52の長さの3倍以上20倍以下の範囲内であるのが好ましく、5倍以上15倍以下の範囲内であるのがより好ましい。また、第一延在部51の長さは、第三延在部53の長さの2倍以上20倍以下の範囲内であるのが好ましく、3倍以上15倍以下の範囲内であるのがより好ましい。
また、凸部30は、凸部30の平面視における厚さや、タイヤサイド面21からの高さが、延在部50ごとに異なっている。即ち、凸部30は、第一延在部51と第二延在部52と第三延在部53とで、厚さや高さが異なっている。本実施形態4では、第二延在部52の平均の厚さが、第一延在部51の平均の厚さや、第三延在部53の平均の厚さよりも厚くなっており、第二延在部52の平均の高さも、第一延在部51の平均の高さや、第三延在部53の平均の高さよりも高くなっている。
また、第二延在部52は、最大厚さが第一延在部51及び第三延在部53よりも厚くなっている。詳しくは、第二延在部52は、最大厚さが、第一延在部51の最大厚さの1.5倍以上5倍以下の範囲内になっている。また、第二延在部52は、第三延在部53に対しても、最大厚さが第三延在部53の最大厚さより厚くなっている。このため、凸部30は、凸部30において最大厚さとなる部分が、第二延在部52に位置している。また、凸部30の最大厚さは、1.5mm以上10mm以下の範囲内であるのが好ましく、2.0mm以上10以下の範囲内であるのがより好ましい。
なお、凸部30におけるタイヤサイド面21に接続される部分、即ち、凸部30の付け根部分が、応力集中の低減や製造上の都合で、円弧状、或いは面取り状に形成されている場合は、凸部30の厚さは、円弧状や面取り状の部分も含むのが好ましい。
凸部30は、高さが延在部50ごとに異なっているため、換言すると、タイヤサイド面21からの高さが凸部30の位置によって異なっており、タイヤサイド面21からの高さや、高さの変化の仕方が、延在部50ごとに異なっている。例えば、第一延在部51は、タイヤサイド面21からの高さが、第二延在部52が位置する側から、第二延在部52が位置する側の反対側に位置する端部51aに向かうに従って低くなっている。このように形成される第一延在部51は、第二延在部52よりもタイヤ径方向外側に配置され、タイヤ周方向に対してタイヤ径方向に傾いているため、第一延在部51は、タイヤ径方向外側に向かうに従ってタイヤサイド面21からの高さが低くなっており、タイヤサイド面21からの高さが、タイヤ径方向外側の端部51aの位置で最も低くなっている。
また、第三延在部53も第一延在部51と同様に、タイヤサイド面21からの高さが、第二延在部52が位置する側から、第二延在部52が位置する側の反対側に位置する端部に向かうに従って低くなっている。このように形成される第三延在部53は、第二延在部52よりもタイヤ径方向内側に配置され、タイヤ周方向に対してタイヤ径方向に傾いているため、第三延在部53は、タイヤ径方向内側に向かうに従ってタイヤサイド面21からの高が低くなっており、タイヤサイド面21からの高さが、タイヤ径方向内側の端部の位置で最も低くなっている。
本実施形態4に係る空気入りタイヤ1は、これらのように凸部30が屈曲部40を少なくとも1箇所有し、複数の延在部50を有するため、より確実に凸部30での放熱性を向上させたり、タイヤサイド部20の剛性を確保したりすることができる。つまり、凸部30は、屈曲部40を有することにより、複数の延在部50が形成されるため、延在部50ごとにタイヤ周方向やタイヤ径方向に対する傾きを異ならせることができる。これにより、延在部50の傾きを、タイヤサイド部20におけるタイヤ径方向における位置ごとに、放熱性を重視した角度にしたり、タイヤサイド部20の剛性の確保を重視した角度にしたりすることができる。従って、タイヤサイド部20を構成する部材の温度が高くなり過ぎることをより確実に抑制すると共に、タイヤサイド部20の剛性を、凸部30によってより効果的に確保することができる。この結果、より確実に耐久性の低下を抑制することができる。
また、凸部30は、第二延在部52のタイヤ周方向に対するタイヤ径方向への傾きが、第一延在部51及び第三延在部53よりも大きいため、より確実にタイヤサイド部20の剛性を確保することができる。つまり、第二延在部52は、タイヤ径方向における位置が、第一延在部51と第三延在部53との間に位置しており、タイヤサイド面21におけるタイヤ最大幅位置Wをタイヤ径方向に跨ぐ位置に配置されている。即ち、第二延在部52は、タイヤサイド部20において最も撓み易い位置に配置されている。このため、第二延在部52のタイヤ周方向に対するタイヤ径方向への傾きを、第一延在部51及び第三延在部53よりも大きくすることにより、タイヤサイド部20において最も撓み易い位置の剛性を、より確実に向上させることができる。これにより、タイヤサイド部20の剛性をより確実に確保することができ、操縦安定性の低下を抑制したり、ランフラット走行時における耐久性の低下を抑制したりすることができる。この結果、より確実に耐久性の低下を抑制することができる。
また、凸部30は、第一延在部51の長さが、第二延在部52及び第三延在部53よりも長いため、凸部30での放熱性をより確実に向上させることができる。つまり、空気入りタイヤ1の回転時は、タイヤ径方向外側に向かうに従って周速が速くなるため、タイヤサイド面21と周囲の空気との相対速度の差も、タイヤ径方向外側に向かって大きくなる。このため、最もタイヤ径方向外側に配置される第一延在部51の長さを最も長くすることにより、周速が速く、効率よく熱交換を行うことが可能な領域での、タイヤサイド面21付近を流れる空気と凸部30との間での熱交換を、効率良く行うことができる。従って、凸部30での放熱性をより確実に向上させることができ、タイヤサイド部20を構成する部材の温度が高くなり過ぎることを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に耐久性を向上させることができる。
また、凸部30は、第二延在部52の最大厚さが、第一延在部51の最大厚さや第三延在部53の最大厚さよりも厚いため、より確実にタイヤサイド部20の剛性を確保することができる。つまり、タイヤサイド部20において最も撓み易い位置に配置される第二延在部52の最大厚さを、第一延在部51及び第三延在部53よりも厚くすることにより、タイヤサイド部20において最も撓み易い位置の剛性を、より確実に向上させることができる。これにより、タイヤサイド部20の剛性をより確実に確保することができ、操縦安定性の低下を抑制したり、ランフラット走行時における耐久性の低下を抑制したりすることができる。この結果、より確実に耐久性の低下を抑制することができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態1~4に係る空気入りタイヤ1では、ビードコア11のビードワイヤ12は、積層構造が3+4+3+2+1構造になっているが、ビードワイヤ12は、これ以外の構造で積層されていてもよい。図10は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、ビードワイヤ12の積層構造の変形例についての説明図である。ビードコア11のビードワイヤ12の積層構造は、例えば、図10(a)に示すように、俵積みの4+5+4+3+2+1構造であってもよく、図10(b)に示すように、俵積みの3+4+3+2構造であってもよく、図10(c)に示すように、俵積みの3+4+4+3+2+1構造であってもよい。また、ビードワイヤ12の積層構造は、俵積み以外の部分を有していてもよく、例えば、図10(d)に示すように、タイヤ径方向内側から2番目の層とそのタイヤ径方向外側に隣接する層とが俵積みではなく直列積み(タイヤ径方向に隣接する周回部分同士がタイヤ幅方向に垂直に積層される積み方)になった3+4+4+3+2+1構造であってもよい。
図10(a)~図10(d)に示す積層構造は、いずれも少なくとも一部が俵積み状に積層されるため、全体が直列積みで積層された構造のビードワイヤ12よりも、ビードワイヤ12を密に配してビードワイヤ12の充填率を高めることができる。これにより、ビード部5の剛性や耐圧性能を良好に確保して走行性能を維持しながら、空気入りタイヤ1の質量を軽減し、これらの性能をバランスよく発揮することができる。
なお、これらのように、ビードワイヤ12の積層構造が実施形態1とは異なる構造である場合でも、幅W0、W1、W2が実施形態1に示す関係を満たすのが好ましく、周長L0、長さL1、L2も、実施形態1に示す関係を満たすのが好ましい。幅W0、W1、W2、周長L0、長さL1、L2が、実施形態1に示す関係を満たしていれば、ビードワイヤ12の積層構造は問わない。
また、上述した実施形態4に係る空気入りタイヤ1では、各凸部30は、屈曲部40を2箇所有しているが、1つの凸部30が有する屈曲部40は、2箇所以外であってもよい。屈曲部40の数に関わらず、凸部30に屈曲部40が形成されることにより、凸部30に複数の延在部50を設けることができ、延在部50ごとに傾きを異ならせることができるため、凸部30によってより確実に耐久性の低下を抑制することができる。
また、上述した実施形態1~4に係る空気入りタイヤ1では、凸部30は、車両装着方向外側のタイヤサイド部20に形成されているが、凸部30は、車両装着方向内側のタイヤサイド部20にも形成されていてもよく、即ち、凸部30は、タイヤ幅方向両側のタイヤサイド部20のタイヤサイド面21に形成されていてもよい。タイヤ幅方向両側のタイヤサイド面21に凸部30を形成することにより、タイヤ幅方向両側のタイヤサイド部20で凸部30によって放熱を行うことができると共に、タイヤ幅方向両側のタイヤサイド部20の剛性を確保することができる。これにより、より確実に耐久性の低下を抑制することができる。
また、凸部30は、車両装着方向内側のタイヤサイド面21のみに形成されていてもよい。車両装着方向内側のタイヤサイド面21は、車両の外側に面していないため、車両の外部からは視認し難くなっている。このため、車両装着方向内側のタイヤサイド面21に凸部30を形成した場合は、凸部30も視認し難くなる。これにより、車両装着方向内側のタイヤサイド面21に凸部30を形成することにより、車両の外観に影響を与えることなく、耐久性の低下を抑制しつつ質量を軽減することができる。
これらのように、凸部30を設けるタイヤサイド部20によって、得られる副次的な効果が異なるため、凸部30は、空気入りタイヤ1や車両の使用態様に応じて、タイヤ幅方向における両側に位置するタイヤサイド部20のうち、少なくとも一方のタイヤサイド部20に形成されていればよい。
[実施例]
図11A~図11Cは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入り入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能評価試験について説明する。性能評価試験は、質量と、耐久性と、耐リム外れ性の試験について行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが205/55R16サイズの空気入りタイヤ1を用いて行った。各試験項目の評価方法は、質量については、試験タイヤのそれぞれの質量を測定し、測定した質量を、後述する従来例を100とする指数で表示した。空気入りタイヤ1の質量は、この数値が小さいほどタイヤ1本当たりの質量が軽く、軽量化の点で優れていることを示している。
また、耐久性は、試験タイヤをリムサイズ16×6.5JのJATMA標準のリムホイールにリム組みし、空気圧を0kPaにした状態で排気量が2000ccの試験車両に試験タイヤを装着して80km/hの速度でテストコースを走行し、テストドライバーがタイヤ故障による異常振動を感じて走行を中止するまでの距離を測定した。耐久性は、測定した距離を、後述する従来例を100とする指数で示した。この数値が大きいほどランフラット走行時における耐久性に優れ、ランフラット走行性能が高いことを示している。
また、耐リム外れ性は、試験タイヤをリムサイズ16×6.5JのJATMA標準のリムホイールにリム組みし、空気圧を0kPaにした状態で排気量が2000ccの試験車両に試験タイヤを装着してJターン評価を実施し、徐々に速度を上げてリム外れが発生した速度を測定した。耐リム外れ性は、測定した速度を、後述する従来例を100とする指数で示した。この数値が大きいほどリム外れが発生し難く、耐リム外れ性に優れていることを示している。
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1~6、9、11~15と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例1、2と、参考例10との16種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例の空気入りタイヤは、ビードフィラーを有しており、タイヤサイド部20には凸部30が形成されていない。また、比較例1の空気入りタイヤは、ビードフィラーを有しておらず、タイヤサイド部20に凸部30が形成されているものの、凸部30の最大厚さが1mmになっている。また、比較例2の空気入りタイヤは、ビードフィラーを有しておらず、タイヤサイド部20に凸部30が形成されているものの、タイヤ子午断面におけるビードコア11の形状が外径側楔形状(外側楔)になっておらず、ビードコア11の形状は四角形になっている。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1~6、9、11~15は、全て、ビードフィラーを有しておらず、タイヤサイド部20に凸部30が形成されており、凸部30の最大厚さは1.5mm以上になっており、ビードコア11の形状が外径側楔形状になっている。さらに、実施例1~6、9、11~15と、参考例10に係る空気入りタイヤ1は、凸部30の屈曲部40の数や、凸部30のタイヤ径方向における長さLc、凸部30の最大厚さ位置36のタイヤ径方向における位置、第一延在部51と第三延在部53とのタイヤ径方向への傾きに対する第二延在部52のタイヤ径方向への傾きの大きさ、第二延在部52の長さと第三延在部53の長さに対する第一延在部51の長さ、第一延在部51の最大厚さと第三延在部53の最大厚さに対する第二延在部52の最大厚さ、ビードコア11の外郭形状13の内角α,β、ビードコア11の外郭形状13の周長L0、長さL1,L2,L3の{(L1+L2)/L0}と{(L1+L2)/(2×L3)}、ビードワイヤ12の平均直径等が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、図11A~図11Cに示すように、実施例1~6、9、11~15に係る空気入りタイヤ1は、従来例に対して、質量を軽減することができると共に、耐久性の低下も抑制することができることが分かった。つまり、実施例1~6、9、11~15に係る空気入りタイヤ1は、耐久性の低下を抑制しつつ質量を軽減することができる。