以下、図面に基づいて、本発明に係る収穫機の実施形態を、図1乃至図3に示される普通型コンバインに適用した場合について説明する。なお、この実施形態で、機体の前後方向を定義するときは、作業状態における機体進行方向に沿って定義し、機体の左右方向を定義するときは、機体進行方向視で見た状態で左右を定義する。すなわち、図1乃至図3に符号(F)で示す方向が機体前側、図1及び図2に符号(B)で示す方向が機体後側である。図3に符号(L)で示す方向が機体左側、図3に符号(R)で示す方向が機体右側である。
〔全体構成〕
図1乃至図3に示されるように、コンバインに、刈取搬送部1(刈取部)と、キャビン2と、運転部3と、脱穀装置4と、穀粒タンク5と、エンジン6と、左右一対の前車輪8,8と、左右一対の後車輪9,9と、が備えられている。刈取搬送部1は圃場の農作物を刈り取って後方に搬送する。農作物は、例えば稲等の植立穀稈であるが、大豆やトウモロコシ等であっても良い。運転部3はキャビン2に覆われている。脱穀装置4は、刈取搬送部1によって刈り取られた収穫物を脱穀処理する。収穫物は、例えば刈取穀稈である。穀粒タンク5は、脱穀装置4における脱穀処理によって得られた穀粒を貯留する。後車輪9は操向操作可能に構成されている。前車輪8は操向不能に構成され、かつ、エンジン6の動力に基づいて回転駆動される。穀粒タンク5の機体左方にスクリューコンベア式の穀粒排出装置18が備えられ、穀粒排出装置18は穀粒タンク5に貯留された穀粒を機体外部に搬送する。脱穀装置4よりも機体右側に燃料タンク7が備えられ、燃料タンク7はエンジン6に燃料を供給する。
刈取搬送部1は、機体の前部において、昇降用アクチュエータとしての刈取昇降シリンダ10により横向き支点Q周りで駆動昇降自在に支持されている。刈取搬送部1は、植立する作物を刈り取り、刈り取った作物を刈幅方向の中央部に寄せ集める刈取ヘッダ11と、刈り取られて中央に寄せ集められた作物を機体後方の脱穀装置4に向けて搬送するフィーダ12とを備えている。
刈取ヘッダ11には、刈取対象となる農作物の穂先側を後方に向けて掻込む回転リール13、作物の株元を切断して刈り取るバリカン型の刈刃14、刈り取った収穫物を刈幅方向の中央部に寄せ集める横送りオーガ15等が備えられている。
フィーダ12の筒状ケース内部に、前後の輪体にわたって左右一対の無端回動チェーンが巻回張設され、各無端回動チェーンにわたり複数の係止搬送体を架設した搬送コンベア16が備えられている。搬送コンベア16は、刈取ヘッダ11から受け渡された作物を後方に向けて搬送するように構成されている。
脱穀装置4は、機体左右中央箇所の低い位置にあり、脱穀装置4の上方における機体前側に穀粒タンク5が位置し、脱穀装置4の上方における機体後側にエンジン6が位置する。つまり、脱穀装置4と穀粒タンク5とが上下に並んで備えられ、穀粒タンク5とエンジン6とが前後に並んで備えられている。脱穀装置4の左右両側における外方側が外装カバー17によって覆われている。穀粒タンク5は前後方向、即ち側面視においても下窄まり状に形成され、穀粒タンク5の底部に横送り排出スクリュー5Aが機体横向きに設けられている。
穀粒タンク5の左下の側部に穀粒排出装置18の基端部が支持されている。穀粒排出装置18は基端部から長手方向に沿って筒状に形成され、穀粒排出装置18の遊端部に排出部18Cが設けられている。油圧シリンダ19の伸縮動作によって穀粒排出装置18の基端部が回動し、穀粒排出装置18の遊端側が旋回する。油圧シリンダ19が伸長動作すると、穀粒排出装置18の遊端側が機体横外方へ張り出し、油圧シリンダ19が収縮動作すると、穀粒排出装置18の遊端側は脱穀装置4と穀粒タンク5との間に収納される。収納状態において、排出部18Cは機体後部に位置し、遊端側ほど上方に位置するように穀粒排出装置18は傾斜する。また、使用状態において、排出部18Cは機体左外方に位置し、先端側ほど機体から離れる側、かつ、先端側ほど上側に位置するように穀粒排出装置18は傾斜する。
穀粒排出装置18の内部に排出コンベア18Aが設けられている。穀粒排出装置18の基端部において、横送り排出スクリュー5Aと排出コンベア18Aとがユニバーサルジョイント(不図示)を介して連接され、穀粒排出装置18の使用状態において横送り排出スクリュー5Aと排出コンベア18Aとは一体的に回転する。
図1、図2、図4及び図5に示されるように、機体下部には、機体前後方向に延びる左右一対の主フレーム20が備えられている。左右の主フレーム20は機体全体を支持する。左右の主フレーム20は、断面形状が略C形のチャンネル材にて構成され、機体前部から機体後部に亘って前後方向に長く設けられている。左右の主フレーム20よりも低い位置に左右の前車輪8の前車軸8aと、左右の後車輪9の後車軸9aと、が備えられている。左右の前車輪8及び左右の後車輪9は、左右の主フレーム20夫々の機体左右方向外方側に位置する状態で備えられ、左右の主フレーム20は左右の前車輪8及び左右の後車輪9に支持されている。
脱穀装置4に扱部21と選別処理部22とが備えられている。扱部21は扱胴21A(図6参照)と受網(図示せず)とを有し、フィーダ12から搬送されてくる収穫物が、扱部21に投入されて脱穀処理が行われる。
選別処理部22は扱部21よりも下側の箇所に備えられている。図4及び図6に示されるように、選別処理部22に、一番物回収スクリュー28と、二番物回収スクリュー29と、揺動選別装置32と、送風装置33と、が備えられている。受網から漏下した扱き処理物は、送風装置33による選別風を受けながら、揺動選別装置32によって揺動移送され、穀粒と、枝付き籾等の二番物と、排ワラ屑と、等に選別される。一番物回収スクリュー28及び二番物回収スクリュー29は選別処理部22の底部に備えられ、二番物回収スクリュー29は一番物回収スクリュー28よりも機体後側に設けられている。
図2、図3及び図5に示されるように、脱穀装置4の機体右方に隣接して、搬送装置としての揚穀装置24と、スクリューコンベア式の二番物還元装置25とが備えられている。揚穀装置24は、脱穀装置4の下部から立ち上がり、穀粒を揚送して穀粒タンク5へ搬送する。揚穀装置24は、バケットコンベア式の第一揚穀装置24Aと、スクリューコンベア式の第二揚穀装置24Bと、を有する。選別処理部22にて選別された穀粒は、一番物回収スクリュー28によって第一揚穀装置24Aへ送り出される。そして穀粒は、第一揚穀装置24Aによって上方へ揚送された後、第二揚穀装置24Bへ受け渡されて斜前方へ揚送され、穀粒タンク5内に貯留される。選別処理部22にて得られた二番物は、二番物回収スクリュー29によって二番物還元装置25へ送り出される。二番物還元装置25の内部にスクリューコンベアが設けられ、二番物は二番物還元装置25によって脱穀装置4の投入口(不図示)に還元される。このため、二番物還元装置25は選別処理部22の底部と脱穀装置4の前部とに亘って、揚穀装置24と交差する状態で斜め上がりに傾斜して、脱穀処理によって得られた二番物を脱穀装置4の投入口に還元する。二番物還元装置25は、第一揚穀装置24Aよりも機体内側寄りに位置し、前後方向視において、第一揚穀装置24Aと機体右側の側壁26との間に位置する。排ワラ屑等は、脱穀装置4の機体後部側に細断処理装置23を介して外方に排出される。
図4及び図5に扱部21おける機体左右の側壁26が示されている。側壁26よりも機体横外側の箇所に、前後方向に間隔をあけて複数の角筒状の縦フレーム30が備えられている。側壁26の前端部に前縦フレーム30Fが備えられている。
〔伝動構造〕
エンジン6の動力を脱穀装置4や刈取搬送部1等へ伝達するための伝動構造に関する説明が、以下に記載される。図4及び図6に示されるように、エンジン6に出力軸35が設けられている。エンジン6の出力軸35は、機体横方向に沿い、かつ、機体左側方に向けて突出する。出力軸35と扱胴駆動軸36との夫々のプーリに亘って第一伝動ベルト37が巻回され、出力軸35とカウンタ軸55との夫々のプーリに亘って第二伝動ベルト38が巻回されている。これにより、出力軸35は、扱胴駆動軸36とカウンタ軸55との夫々をベルト駆動可能に構成されている。
まず、扱胴駆動軸36より先における動力の伝達に関する説明が、以下に記載されている。図4及び図6に示されるように、扱胴駆動軸36は脱穀装置4の後方に隣接して備えられ、扱胴駆動軸36に扱胴変速装置39が連結され、扱胴変速装置39は扱胴駆動軸36と連動する。扱胴変速装置39は、脱穀装置4の後方における細断処理装置23の上方箇所における扱胴21Aの回転軸芯上に備えられ、ベルト駆動によって扱胴駆動軸36に伝達された動力を上下二段階に変速して扱胴21Aに伝達する。
細断処理装置23に細断処理用伝動機構40が備えられ、細断処理用伝動機構40は扱胴駆動軸36の伝達動力によってベルト駆動される。また、選別処理部22に脱穀用入力軸41が備えられ、扱胴駆動軸36の伝達動力が第三伝動ベルト42を介して脱穀用入力軸41に伝達される。このように、出力軸35から扱胴駆動軸36へ伝達される動力は、扱胴21Aと選別処理部22と細断処理装置23とに分岐伝達される。
揺動選別装置32に動力を伝達する機構として、チェーン伝動機構43が備えられている。チェーン伝動機構43と脱穀用入力軸41との夫々のスプロケットに亘って無端回動チェーンが巻回され、脱穀用入力軸41の伝達動力が当該無端回動チェーンを介して揺動選別装置32に伝達される。
脱穀用入力軸41の伝達動力は第四伝動ベルト45を介して脱穀用中継軸44に伝達され、一番物回収スクリュー28と二番物回収スクリュー29と送風装置33との夫々に対して、脱穀用中継軸44から動力が伝達される。送風装置33は脱穀用中継軸44の伝達動力によってベルト駆動される。脱穀用中継軸44と、一番物回収スクリュー28と、二番物回収スクリュー29と、に亘ってスクリュー用伝動ベルト46が巻回され、一番物回収スクリュー28と二番物回収スクリュー29とはスクリュー用伝動ベルト46を介して一体的にベルト駆動される。また、一番物回収スクリュー28に伝達された動力は、一番物回収スクリュー28を介して揚穀装置24にも伝達される。
脱穀用中継軸44の伝達動力は刈取用伝動ベルト48を介して刈取入力軸47に伝達される。刈取入力軸47は、フィーダ12の駆動軸として機能するものであり、フィーダ12の搬送ケースから左側外方に突出する状態で備えられている。刈取用伝動ベルト48は、脱穀用中継軸44から前方に向けて略水平姿勢で延びる状態で備えられている。
図7に示されるように、刈取入力軸47の伝達動力は、フィーダ12の左側部よりも外側に沿って前後方向に延びる伝動チェーン50により刈取ヘッダ11(図1参照)の後部に備えられた刈取中継軸49に伝達される。刈取中継軸49の伝達動力は、リール用チェーン51及びリール用伝動ベルト52を介して回転リール13に伝達され、オーガ用チェーン53を介して横送りオーガ15に伝達され、刈刃用ベルト54を介して刈刃14に伝達される。
以上の説明から明らかなように、選別処理部22における複数の被駆動装置に扱胴駆動軸36からの動力を伝達する脱穀用動力伝達系が、脱穀装置4よりも左側の領域に纏めて配備されている。また、回転リール13、刈刃14、及び、横送りオーガ15に刈取入力軸47からの動力を伝達する刈取用動力伝達系が、刈取搬送部1のうち左側部の領域に纏めて配備されている。
続いて、カウンタ軸55より先における動力の伝達に関する説明が、以下に記載されている。図5及び図6に示されるように、エンジン6からの動力が第二伝動ベルト38を介してカウンタ軸55に伝達され、カウンタ軸55に伝達された動力は、穀粒排出装置18と走行駆動装置Aとの夫々に分岐伝達される。カウンタ軸55は、脱穀装置4よりも上側の箇所に、脱穀装置4に左右幅に亘って機体横向きに回転可能に設けられている。つまり、穀粒排出装置18及び走行駆動装置Aにエンジン6からの動力を伝達するための伝達系統は、エンジン6に対して機体右側に配備される。
カウンタ軸55の伝達動力は排出用伝動ベルト56を介して横送り排出スクリュー5Aに伝達される。排出用伝動ベルト56は、前方に向けて略水平姿勢で延びる状態で備えられている。扱部21の前部における右横側部に隣接して走行用中継軸57が設けられ、カウンタ軸55の伝達動力が走行用伝動ベルト58を介して走行用中継軸57に伝達される。走行用伝動ベルト58は、カウンタ軸55から前下がり方向に向けて傾斜姿勢で延びる状態で備えられている。走行駆動装置Aは、機体下部における穀粒タンク5の下方位置に備えられており、走行用伝動ベルト59は、走行用中継軸57から下方に向けて略垂直姿勢で延びる状態で備えられている。
詳細な説明は省略するが、走行駆動装置Aは、運転部3に備えられた図示しない変速操作具や旋回操作具等の運転操作に基づいて、左右の前車輪8,8を運転操作に適した速度で駆動するように構成されている。直進するときは左右の前車輪8,8を等速または略等速とし、旋回するときは左右の前車輪8,8に速度差をつけるように、走行駆動装置Aは駆動する。
〔クラッチについて〕
図4及び図5に示されるように、穀粒の収穫に関する作業を行う作業装置に動力を伝達可能なクラッチとして、排出クラッチ60と、刈取クラッチ61と、脱穀クラッチ62と、が備えられている。これらのクラッチは、上述の動力伝達系統に介在する。排出クラッチ60は排出用伝動ベルト56に隣接して配置され、排出用伝動ベルト56と係合可能なベルトテンショナーである。刈取クラッチ61は刈取用伝動ベルト48に隣接して配置され、刈取用伝動ベルト48と係合可能なベルトテンショナーである。脱穀クラッチ62は第一伝動ベルト37に隣接して配置され、第一伝動ベルト37と係合可能なベルトテンショナーである。これらのクラッチは伝達状態と非伝達状態とに切換可能なように構成されている。なお、本実施形態において、「伝達状態」とは、クラッチが当該作業装置に動力を伝達する状態を意味し、「非伝達状態」とは、クラッチが当該作業装置に動力を伝達しない状態を意味する。
図8に示されるように、穀粒タンク5の底部後側に後側傾斜部5bが形成され、後側傾斜部5bの右側部に支持ステー5Cが設けられている。支持ステー5Cに機体横向きの支持軸5dが備えられ、排出クラッチ60は支持軸5dを軸芯に上下揺動可能に支持される。
排出クラッチ60は揺動アーム60Aを有し、揺動アーム60Aの長手方向における後端部が支持軸5dに支持される。このため、揺動アーム60Aの後端部が揺動基端部であり、揺動アーム60Aの前端部が遊端部である。揺動アーム60Aの遊端部に係合ローラ60Bが回転可能に連結され、排出クラッチ60のうち係合ローラ60Bが排出用伝動ベルト56と係合する。
排出クラッチ60は排出用伝動ベルト56よりも上側の箇所に位置し、排出クラッチ60が下方向に揺動すると、係合ローラ60Bと排出用伝動ベルト56とが係合して、排出用伝動ベルト56に張力が掛かる。これにより、排出クラッチ60は伝達状態になる。
排出クラッチ60は操作バネ63と支持バネ64との夫々に連結されている。操作バネ63及び支持バネ64の夫々は長手方向に沿って延びるコイルバネを有し、操作バネ63が排出クラッチ60の下方に設けられ、支持バネ64が排出クラッチ60の上方に設けられている。操作バネ63及び支持バネ64の夫々の長手方向両端部はU字状のフックとなるように形成されている。
揺動アーム60Aの長手方向中央部に、操作バネ63を取り付けるための取付部60Cが溶接固定され、取付部60Cは揺動アーム60Aに対して上向きに突出する。取付部60Cの上端部に取付ピン60Dが機体右外方へ突出するように設けられている。取付ピン60Dに操作バネ63の上端部が鉤掛けられ、操作バネ63の上端部が取付ピン60Dから抜けないように、機体右外方から留め座金60Eが取付ピン60Dに外嵌する。操作バネ63の下端部は、後述する排出用連係ワイヤ72の一端と連結されている。
揺動アーム60Aの長手方向中央部のうち、取付部60Cよりも係合ローラ60Bの位置する側にフック孔60fが形成されている。穀粒タンク5のうち、機体右側の底部に下窄み状の右側傾斜部5eが形成され、右側傾斜部5eに支持バネ64を支持するための支持ステー5Fが設けられている。支持ステー5Fは、右側傾斜部5eに溶接固定された一端側平坦面と、右側傾斜部5eから離れる側に延出する他端側平坦面と、によって断面視でL字状に形成されている。支持バネ64の上端部と連結するための支持突出部5Gが支持ステー5Fに連結され、支持突出部5Gは平坦面を有する長方形に形成されている。支持突出部5Gの二辺が、支持ステー5Fの一端側平坦面及び他端側平坦面の夫々と垂直となるように、支持突出部5Gは支持ステー5Fに溶接固定されている。支持突出部5Gに支持フック孔5hが形成されている。支持バネ64の上端部が支持フック孔5hに鉤掛けられ、支持バネ64の下端部がフック孔60fに鉤掛けられる。
操作バネ63に引張力が作用しない場合、支持バネ64の付勢力によって上方向に揺動するように、排出クラッチ60は付勢されている。このため、操作バネ63に引張力が作用しない場合、係合ローラ60Bと排出用伝動ベルト56とは係合せず、排出クラッチ60は非伝達状態になる。
図9に示されるように、脱穀装置4における機体左側の側壁26のうち、刈取用伝動ベルト48の近傍箇所に、刈取クラッチ61を揺動可能に支持するための支持突出軸26Aが備えられている。支持突出軸26Aは側壁26から機体横向きに突出し、刈取クラッチ61は支持突出軸26Aを軸芯に揺動可能に支持される。この状態で刈取クラッチ61は刈取用伝動ベルト48よりも上側の箇所に位置する。
刈取クラッチ61は刈取用シーソーアーム61Aを有し、刈取用シーソーアーム61Aの長手方向中央部が支持突出軸26Aに支持される。刈取用シーソーアーム61Aの長手方向における後端部に係合ローラ61Bが回転可能に連結され、刈取クラッチ61のうち係合ローラ61Bが刈取用伝動ベルト48と係合する。刈取用シーソーアーム61Aの揺動軸芯は刈取用シーソーアーム61Aの長手方向における中央領域に位置する。このため、刈取用シーソーアーム61Aのうち、支持突出軸26Aよりも機体後側の領域である後側領域61Rが下方向に揺動すると、刈取用シーソーアーム61Aにおける支持突出軸26Aよりも機体前側の領域である前側領域61Fが上方向に揺動する。後側領域61Rが下方向に揺動すると、刈取用伝動ベルト48と係合ローラ61Bとが係合し、刈取用伝動ベルト48に張力が掛かる。これにより、刈取クラッチ61は伝達状態になる。なお、前側領域61Fが下方向に揺動すると、後側領域61Rが上方向に揺動し、刈取用伝動ベルト48と係合ローラ61Bとの係合状態が解除されて、刈取クラッチ61は非伝達状態になる。
刈取クラッチ61は操作バネ65と支持バネ66との夫々に連結されている。操作バネ65及び支持バネ66の夫々は長手方向に沿って延びるコイルバネを有し、操作バネ65が刈取クラッチ61の上方に設けられ、支持バネ66が刈取クラッチ61の下方に設けられている。操作バネ65及び支持バネ66の夫々の上下両端部はU字状のフックとなるように形成されている。
刈取用シーソーアーム61Aの長手方向における前端部に支持バネ66を取り付けるための支持フック孔61dが形成され、支持フック孔61dに支持バネ66の上端部が鉤掛けられる。また、刈取用シーソーアーム61Aの長手方向における支持突出軸26Aの支持箇所と支持フック孔61dとの間の箇所に、操作バネ65を取り付けるための操作フック孔61cが形成され、操作フック孔61cに操作バネ65の下端部が鉤掛けられる。操作バネ65の上端部は、後述する刈取用連係ワイヤ73と連結されている。
主フレーム20の断面形状は略C形に形成されている。主フレーム20の前後方向に沿って、複数の補強部材20Aが等間隔に設けられている。補強部材20Aは、断面視で略C形の主フレーム20によって囲まれた内側領域に位置し、主フレーム20の上下箇所が補強部材20Aによって支持されている。複数の補強部材20Aのうち、支持フック孔61dの近傍に位置する補強部材20Aに、支持ステー67がボルト固定されている。支持ステー67は、補強部材20Aにボルト固定された一端部と、機体横外方へ突出する他端部と、によって平面視でL字状に形成されている。この他端部に支持フック孔67Aが形成され、支持フック孔67Aに支持バネ66の下端部が鉤掛けられる。
操作バネ65に引張力が作用していない状態で、支持バネ66の付勢力によって、前側領域61Fが下方向へ揺動するように、刈取クラッチ61は付勢されている。このため、操作バネ65に引張力が作用しない場合には、係合ローラ61Bと刈取用伝動ベルト48とは係合せず、刈取クラッチ61は非伝達状態になる。
図10に示されるように、エンジン6を載置支持するためのエンジンマウントフレーム68が、脱穀装置4の上方に備えられている。エンジンマウントフレーム68の機体左方に出力軸35が突出するとともに、第一伝動ベルト37と第二伝動ベルト38との夫々が出力軸35のプーリに巻回されている。第一伝動ベルト37と第二伝動ベルト38との夫々は、平面視で前後方向に沿って延びている。エンジンマウントフレーム68の左側部うち出力軸35の下方箇所に、脱穀クラッチ62を揺動可能に支持するための支持突出軸68Aが備えられている。支持突出軸68Aはエンジンマウントフレーム68の左側部から機体左方へ突出し、脱穀クラッチ62は支持突出軸68Aを軸芯に揺動可能に支持される。この状態で脱穀クラッチ62は第一伝動ベルト37よりも下側の箇所に位置する。
脱穀クラッチ62は脱穀用シーソーアーム62Aを有し、脱穀用シーソーアーム62Aの長手方向中央領域のうち機体前側寄りの箇所が支持突出軸68Aに支持される。脱穀用シーソーアーム62Aの長手方向における後端部に係合ローラ62Bが回転可能に連結され、脱穀クラッチ62のうち係合ローラ62Bが第一伝動ベルト37と係合する。脱穀用シーソーアーム62Aの揺動軸芯は脱穀用シーソーアーム62Aの長手方向における中央領域に位置する。このため、脱穀用シーソーアーム62Aのうち、支持突出軸68Aよりも機体後側の領域である後側領域62Rが下方向に揺動すると、脱穀用シーソーアーム62Aにおける支持突出軸68Aよりも機体前側の領域である前側領域62Fが上方向に揺動する。後側領域62Rが上方向に揺動すると、第一伝動ベルト37と係合ローラ62Bとが係合し、第一伝動ベルト37に張力が掛かる。これにより、脱穀クラッチ62は伝達状態になる。なお、前側領域62Fが上方向に揺動すると、後側領域62Rが下方向に揺動し、第一伝動ベルト37と係合ローラ62Bとの係合状態が解除されて、脱穀クラッチ62は非伝達状態になる。
脱穀用シーソーアーム62Aの長手方向における前端部に、操作バネ部材69が揺動可能に連結されている。第一伝動ベルト37は、脱穀装置4や刈取搬送部1等の複数の作業装置に動力を伝達するため、第一伝動ベルト37に滑りが発生しないように張力を高めに設定する必要がある。このため、操作バネ部材69は、操作バネ63や操作バネ65よりも高剛性に構成されている。
図10及び図11に示されるように、操作バネ部材69に、揺動連結部69Aと、引張ロッド部69Bと、圧縮バネ部69Cと、が備えられている。揺動連結部69Aの上端部にボス穴部69dが形成されている。脱穀用シーソーアーム62Aの前端部に操作バネ部材69を取り付けるためのピン孔62cが形成されている。ピン孔62cとボス穴部69dとにピン69iが挿通され、脱穀用シーソーアーム62Aの前端部と操作バネ部材69の上端部とがピン連結される。このため、揺動連結部69Aはピン69iを軸芯に揺動し、揺動連結部69Aの上端部が揺動基端部となる。
揺動連結部69Aは正面視または背面視においてL字状に形成されている。揺動連結部69Aの基端側は上下方向に延び、揺動連結部69Aの遊端側に遊端箇所69gが形成されている。遊端箇所69gは揺動連結部69Aの基端側に対して機体横内方に屈曲する。
この遊端箇所69gに挿通孔69eが形成され、挿通孔69eに引張ロッド部69Bが挿通される。また、揺動連結部69Aにおけるボス穴部69dと挿通孔69eとに亘ってフランジ69fが形成され、このフランジ69fが形成された箇所は断面視でT字状に形成されている。これにより、揺動連結部69Aの剛性は高められている。
挿通孔69eに引張ロッド部69Bが挿通された状態で、遊端箇所69gよりも上側に圧縮バネ部69Cが設けられている。圧縮バネ部69Cは、伸縮可能なコイルバネであって、引張ロッド部69Bに外嵌する。遊端箇所69gは、圧縮バネ部69Cのコイル径よりも大きな面積を有し、圧縮バネ部69Cの圧縮による押圧力を受け止められるように構成されている。
圧縮バネ部69Cの上方に平座金69Hが設けられ、平座金69Hは引張ロッド部69Bに外嵌する。平座金69Hは圧縮バネ部69Cのコイル径よりも大きな直径を有する。
引張ロッド部69Bの上端部に螺旋溝が形成され、この螺旋溝にナット69Iが締め付けられている。この状態で平座金69Hはナット69Iと当接し、平座金69Hは引張ロッド部69Bに対して抜け止めされている。これにより、圧縮バネ部69Cは上下方向において遊端箇所69gと平座金69Hとに挟まれている。なお、平座金69Hはナット69Iとは一体的に構成されても良い。また、ナット69Iは一つであっても良いし、例えばダブルナットのように複数であっても良い。
引張ロッド部69Bの下端部は、後述する脱穀用連係ワイヤ76の一端と連結されている。脱穀クラッチ62は、引張ロッド部69Bに下方向の引張力が作用することによって、伝達状態になるように構成されている。引張ロッド部69Bが下方向に引っ張られると、圧縮バネ部69Cに対する押圧力が、引張ロッド部69Bから平座金69Hを介して作用する。このとき、圧縮バネ部69Cは遊端箇所69gと平座金69Hとに挟まれているため、平座金69Hの変位に伴って圧縮バネ部69Cが圧縮する。そして、遊端箇所69gにも下方向の力が圧縮バネ部69Cを介して作用し、圧縮バネ部69Cの圧縮による付勢力によって揺動連結部69Aが下方向に変位し、脱穀用シーソーアーム62Aの前側領域62Fが下方向に揺動する。これにより、後側領域62Rが上方向に揺動し、第一伝動ベルト37と係合ローラ62Bとが係合し、脱穀クラッチ62は伝達状態になる。
脱穀用シーソーアーム62Aが前後方向に沿う状態で、脱穀クラッチ62の重心は支持突出軸68Aよりも機体後側に位置するため、引張ロッド部69Bに引張力が作用していない状態で、後側領域62Rは、自重によって下方向に揺動する。このため、引張ロッド部69Bに引張力が作用しない場合には、第一伝動ベルト37と係合ローラ62Bとが係合せず、脱穀クラッチ62は非伝達状態になる。
〔クラッチ操作ユニット等の配置について〕
上述したクラッチは、以下に記載されるクラッチ操作ユニット70によって操作可能なように構成されている。図12及び図13に示されるように、第一揚穀装置24Aの長手方向中央部が支持部材71によって脱穀装置4の側部、即ち側壁26に支持されている。
支持部材71は、搬送装置としての揚穀装置24を脱穀装置4に支持するように構成され、機体横方向に延びる上下一対の横フレーム71A,71Aと、横フレーム71A,71Aの夫々を連結する縦フレーム71Bと、を有する。図4を用いて説明した複数の縦フレーム30のうち、側面視で第一揚穀装置24Aの前方に隣接する縦フレーム30に上下一対の取付ブラケット30A,30Aが設けられ、取付ブラケット30Aに横フレーム71Aの機体横内側端部がボルト固定されている。
横フレーム71Aは取付ブラケット30Aから機体横向きに延出し、横フレーム71Aにおける機体横外方の延出端部は、機体後方に突出する部分を有する。この横フレーム71Aの延出端部から後方に突出する部分と、第一揚穀装置24Aの前端壁部24fと、がボルト固定されている。このように、支持部材71の両端部が、搬送装置としての第一揚穀装置24Aの長手方向中央部と、脱穀装置4の側部と、の夫々に連結されている。縦フレーム71Bは、横フレーム71A,71Aの夫々の延出端部のうち、屈曲箇所よりも機体内側の箇所で、横フレーム71A,71Aの夫々と連結する。
図12に示されるように、第一揚穀装置24Aの内部に、無端回動式のバケットコンベア24Cが設けられている。バケットコンベア24Cは、一番物回収スクリュー28(図4及び図6参照)と第二揚穀装置24B(図5参照)とに亘って上下方向に沿って巻回されている。図12において、バケットコンベア24Cのうち、機体後側(紙面左側)の箇所が矢印UPで示され、この箇所がバケットコンベア24Cにおける上り側箇所である。
この上り側箇所が上方向へ回動することによって、穀粒が一番物回収スクリュー28から第二揚穀装置24Bへ搬送される。また、図12において、バケットコンベア24Cのうち、機体前側(紙面右側)の箇所が矢印DOWNで示され、この箇所がバケットコンベア24Cにおける下り側箇所である。この下り側箇所が、穀粒を搬送し終えた後に下方向へ回動することによって、第二揚穀装置24Bの位置する箇所から一番物回収スクリュー28の位置する箇所へ戻される。
バケットコンベア24Cのうち、下り側箇所の張力は、上り側箇所の張力よりも小さい。つまり、バケットコンベア24Cのうち、上り側箇所は張り側であり、下り側箇所は緩み側である。このため、下り側箇所、即ち緩み側には機体横方向や機体前後方向の振動が生じやすい。このことから、第一揚穀装置24Aの壁部のうち、バケットコンベア24Cの緩み側の位置する箇所は、張り側の位置する箇所よりも、バケットコンベア24Cとの当接や摺接の頻度が多い。したがって、第一揚穀装置24Aの壁部のうち、バケットコンベア24Cの緩み側に対応する箇所の強度は、張り側に対応する箇所の強度よりも高くなるように構成されている。具体的には、第一揚穀装置24Aの壁部のうち、前端壁部24f及び前端壁部24fの周辺は、バケットコンベア24Cの緩み側に対応する箇所であり、この箇所が補強されている。補強方法として、厚めの板金を採用したり、複数枚の板金を重ねたり、耐摩耗性を有する素材を採用したりするなどの方法が可能である。
このように、第一揚穀装置24Aの壁部のうち、前端壁部24fが補強された構成であるため、横フレーム71A,71Aの延出端部は前端壁部24fに連結されることによって、第一揚穀装置24Aは脱穀装置4にしっかりと支持される。これにより、搬送装置としての揚穀装置24は、バケットコンベア24Cの緩み側に対応する箇所として補強された前端壁部24fで脱穀装置4に強固に支持される。
上下一対の横フレーム71A,71Aのうち、下側の横フレーム71Aに載置フレーム71Cが設けられている。載置フレーム71Cは、前後向きの支持部71dと、ブレース構造として機能するブレース部71eと、載置台71fと、を有する。下側の横フレーム71Aにおける左右中央部の上面に支持部71dが溶接固定されている。下側の横フレーム71Aのうち、支持部71dの真下に位置する箇所にブレース部71eの一端部が溶接固定されている。ブレース部71eは、支持部71dの真下から前上がりに傾斜しながら延出し、この延出端部が支持部71dの前部に溶接固定されている。
支持部71dの上面に載置台71fが溶接固定され、載置台71fの上面にクラッチ操作ユニット70がボルト固定される。これにより、クラッチ操作ユニット70は、上下一対の横フレーム71A,71Aの間に位置する状態で、支持部材71に支持されている。
二番物還元装置25は、前後方向視において支持部材71の両端部の間に位置し、クラッチ操作ユニット70は、搬送装置としての揚穀装置24と二番物還元装置25との交差部分から斜め上がりに傾斜する部分の上方に設けられている。本実施形態では、クラッチ操作ユニット70は、排出クラッチ60(図5参照)と刈取クラッチ61(図4参照)との夫々を伝達状態と非伝達状態とに切換える切換動作が可能なように構成されている。
図12及び図13に示されるように、縦フレーム71Bにバルブユニット77が支持されている。バルブユニット77は、機体に備えられた油圧装置に対する作動油の給排をコントロールする。油圧装置として、例えば、エンジン6(図5参照)におけるラジエータ冷却ファン6F(図5参照)の回転方向を切換えるものや、作用油を冷却するためのオイルクーラ6C(図5参照)への給排経路を切換えるもの等がある。このバルブユニット77に二つの油路78,78が接続され、油路78,78の夫々は給路と排路とに分けられる。
図3、図4及び図16に示されるように、脱穀装置4に対して機体左側、即ちクラッチ操作ユニット70の位置する側と反対側に、クラッチ操作ユニット70とは別に脱穀クラッチ操作ユニット74(別のクラッチ操作ユニット)が備えられている。脱穀装置4に対して機体左側における複数の縦フレーム30のうち、第二伝動ベルト38の下方に位置する縦フレーム30に、載置フレーム75が溶接固定されている。載置フレーム75は、前後向きの支持部75aと、ブレース構造として機能するブレース部75bと、載置台75cと、を有する。縦フレーム30の上部寄り箇所の後面に支持部75aが溶接固定されている。縦フレーム30の上下中央箇所に、ブレース部75bの一端部が溶接固定されている。ブレース部75bは、支持部75aの真下から後上がりに傾斜しながら延出し、この延出端部が支持部75aの先端寄り箇所に溶接固定されている。支持部75aの上面に載置台75cが溶接固定され、載置台75cの上面に脱穀クラッチ操作ユニット74がボルト固定される。
図4に示されるように、脱穀装置4における機体左側の側壁26の一部として、複数の蓋部26Bが設けられている。蓋部26Bの夫々は、扱胴21A(図6参照)を含む扱部21のメンテナンスをできるように着脱可能に構成されている。脱穀クラッチ操作ユニット74は、蓋部26Bの上方に設けられ、側面視で蓋部26Bと重複しないように設けられている。これにより、作業者は、脱穀クラッチ操作ユニット74に邪魔されることなく蓋部26Bを着脱し、扱部21をメンテナンスできる。
〔クラッチ操作ユニットの構造について〕
図14及び図15に示されるように、クラッチ操作ユニット70に、第一操作部材70Aと、第二操作部材70Bと、第一被操作部材70Cと、第二被操作部材70Dと、が備えられ、これらがユニット収納ケース70Lの内側に収納されている。第一操作部材70A及び第二操作部材70Bの夫々は、周部にカムを有し、回動軸芯P1回りに回動駆動する。図14において、第二被操作部材70Dは第一被操作部材70Cよりも奥側に配置され、側面視で第一被操作部材70Cと第二被操作部材70Dとが重複する。ユニット収納ケース70Lの外側に位置する状態で、モータユニット70Eがユニット収納ケース70Lに支持されている。第一操作部材70Aと第二操作部材70Bとの夫々は、回動支軸70Fに対して相対回動不能に連結されることによって、回動支軸70Fの回動軸芯P1回りに一体的に回動可能なように構成されている。第一被操作部材70Cと第二被操作部材70Dとの夫々の下端部が、一体的に揺動することなく各別に揺動可能なように、揺動支軸70Gに支持されている。このため、第一被操作部材70Cと第二被操作部材70Dとの夫々は、揺動支軸70Gの揺動軸芯P2回りに揺動可能なように構成されている。回動軸芯P1と揺動軸芯P2とは夫々平行であって、揺動軸芯P2は回動軸芯P1よりも下側に位置する。
揺動軸芯P2よりも下側に係止部70Vが設けられ、第一被操作部材70Cと第二被操作部材70Dとの夫々の下端部のうち、揺動軸芯P2よりも下側の箇所が係止部70Vと当接可能に構成されている。即ち、第一被操作部材70Cと第二被操作部材70Dとの夫々の下端部と、係止部70Vと、が当接すると、第一被操作部材70Cと第二被操作部材70Dとの夫々は、図14における側面視で時計回りの方向に揺動できなくなる。このように、係止部70Vは第一被操作部材70Cと第二被操作部材70Dとの夫々の揺動範囲を規制する。
第一被操作部材70Cの遊端部に排出用連係ワイヤ72の一端部が連結されている。ユニット収納ケース70Lのうち、回動軸芯P1を挟んで揺動軸芯P2の位置する側と反対側に、三か所の開口部70p,70p,70pが横並びの状態で形成されている。排出用連係ワイヤ72は開口部70pを貫通してクラッチ操作ユニット70の外側に配線され、排出用連係ワイヤ72の他端部は操作バネ63の下端部と連結されている(図8参照)。
操作バネ63は、排出クラッチ60を上下揺動可能なように、取付ピン60Dに鉤掛けられている。このため、第一被操作部材70Cの遊端部は、支持バネ64の付勢力によって排出用連係ワイヤ72を介して回動軸芯P1の位置する側に引っ張られる。この状態で、第一操作部材70Aと第一被操作部材70Cとが当接しなければ、第一被操作部材70Cは、係止部70Vによって係止されるまで、回動軸芯P1の位置する側に揺動する。
図9、図14及び図15に示されるように、第二被操作部材70Dの遊端部に刈取用連係ワイヤ73の一端部が連結されている。刈取用連係ワイヤ73は開口部70pを貫通してクラッチ操作ユニット70の外側に配線され、刈取用連係ワイヤ73の他端部は操作バネ65の上端部と連結されている。操作バネ65は、刈取クラッチ61を上下揺動可能なように、操作フック孔61cに鉤掛けられている。このため、第二被操作部材70Dの遊端部は、支持バネ66の付勢力によって刈取用連係ワイヤ73を介して回動軸芯P1の位置する側に引っ張られる。この状態で、第二操作部材70Bと第二被操作部材70Dとが当接しなければ、第二被操作部材70Dは、係止部70Vによって係止されるまで、回動軸芯P1の位置する側に揺動する。
第一操作部材70Aは、回動軸芯P1を挟んで両側の夫々に円弧状のカムを有する。即ち、一方側の周部に円弧状の第一当接部70hが形成され、他方側の周部に円弧状の第二当接部70iが形成されている。第一当接部70hと第二当接部70iとの夫々は、例えば回動軸芯P1を中心に30度から45度程度の角度に亘る円弧状に形成され、かつ、回動軸芯P1を中心に同一円弧上に形成されている。この角度は適宜変更可能である。第一操作部材70Aにおける周部うち、第一当接部70h及び第二当接部70i以外の箇所は、第一当接部70h及び第二当接部70iに対応する円弧よりも内側に位置するように形成されている。この内側の周部のうち、第一被操作部材70Cと当接可能な箇所に、第一内側カム部70rと第二内側カム部70sとが形成されている。第一内側カム部70rは第一当接部70hと隣接し、第二内側カム部70sは第二当接部70iと隣接する。
第二操作部材70Bに、カムとして円弧状の当接部70jが形成されている。当接部70jは第二当接部70iと同一円弧上に重複するように形成され、かつ、当接部70jの円弧は第二当接部70iの円弧よりも長く形成されている。当接部70jの円弧の両端は、第二当接部70iの円弧の両端よりも外側に位置し、当接部70jの円弧の範囲内に第二当接部70iの円弧の範囲が全て重複する。また、第二操作部材70Bにおける当接部70jと同一円弧上に歯部70qが形成され、当接部70jと歯部70qとは円弧上で互いに隣接する。第二操作部材70Bの周部うち、当接部70j及び歯部70q以外の箇所は、この円弧よりも内側に位置するように形成されている。この内側の周部のうち、当接部70jに対して歯部70qの位置する側と反対側に隣接する箇所は、第二被操作部材70Dと当接可能な箇所であって、この箇所に内側カム部70tが形成されている。
第一被操作部材70Cにおける長手方向中央領域に、ローラ式のカムフォロア70kが、揺動軸芯P2と平行な軸芯回りに回動可能に設けられている。カムフォロア70kと第一操作部材70Aの周部とが対向するように第一被操作部材70Cが配置されている。また、第二被操作部材70Dにおける長手方向中央領域に、ローラ式のカムフォロア70kが、揺動軸芯P2と平行な軸芯回りに回動可能に設けられている。カムフォロア70kと第二操作部材70Bの周部とが対向するように第二被操作部材70Dが配置されている。
モータユニット70Eは、回動軸芯P1を挟んで揺動軸芯P2の位置する側と反対側の箇所に設けられている。また、ユニット収納ケース70Lの前端部にリレー回路70Mが設けられ、リレー回路70Mは機体の制御用マイコン(不図示)からの制御信号に基づいてモータユニット70Eを回動操作する。リレー回路70Mはモータユニット70Eよりも機体前側の箇所に位置する。詳述はしないが、モータユニット70Eには周知のブレーキ機構が備えられている。リレー回路70Mの信号に基づいて、モータユニット70Eの回動時にブレーキ信号が解除されることによってブレーキが開放され、モータユニット70Eは回動可能となる。また、モータユニット70Eの停止時に、リレー回路70Mの信号に基づいてブレーキ信号が出力されてブレーキが掛かり、モータユニット70Eの回動が拘束される。
ユニット収納ケース70Lのうち、モータユニット70Eの出力軸に対応する箇所に貫通孔が形成され、モータユニット70Eの出力軸は、この貫通孔を貫通してユニット収納ケース70Lの内部に突出する。図14及び図15において、モータユニット70Eの出力軸は回動軸芯P3で示されている。回動軸芯P1と回動軸芯P3とは夫々平行となっている。モータユニット70Eの出力軸の先端部は第二操作部材70Bの周部と隣接し、この出力軸の先端部に回動ギア70nが設けられている。回動ギア70nは、モータの動力によって回動軸芯P3周りに回動可能なように構成されている。回動ギア70nと歯部70qとが噛合するため、回動ギア70nの回動に伴って、第一操作部材70Aと第二操作部材70Bとが一体的に回動する。第一操作部材70Aと第二操作部材70Bと回動支軸70Fとの一体的な回動の角度が、ポテンショメータ70Uによって検出される。
第一操作部材70Aが回動して、第一当接部70hまたは第二当接部70iが第一被操作部材70Cの揺動範囲に入ると、第一当接部70hまたは第二当接部70iと、第一被操作部材70Cのカムフォロア70kと、が当接する。そして、第一当接部70hまたは第二当接部70iがカムフォロア70kを押圧する状態で、第一被操作部材70Cが揺動軸芯P2回りに、図14の紙面上で反時計回りの方向に揺動する。
図14の紙面上で、第一被操作部材70Cが反時計回りの方向に揺動すると、図8に示される操作バネ63の下端部が排出用連係ワイヤ72を介して下方向に変位する。このため、操作バネ63に引張力が作用し、排出クラッチ60は支持バネ64の付勢力に抗して下方向に揺動し、係合ローラ60Bと排出用伝動ベルト56とが係合する。つまり、第一被操作部材70Cが第一操作部材70Aの位置する側と反対側に揺動すると、操作バネ63に引張力が作用して、排出クラッチ60は伝達状態になる。
第二操作部材70Bが回動して、当接部70jが第二被操作部材70Dの揺動範囲に入ると、当接部70jと、第二被操作部材70Dのカムフォロア70kと、が当接する。そして、当接部70jがカムフォロア70kを押圧する状態で、第二被操作部材70Dが揺動軸芯P2回りに、図14の紙面上で反時計回りの方向に揺動する。第二被操作部材70Dが回動軸芯P1の位置する側と反対側に揺動すると、図9に示される操作バネ65の上端部が刈取用連係ワイヤ73を介して上方向に変位する。このため、操作バネ65に引張力が作用し、刈取クラッチ61の後側領域61Rは支持バネ66の付勢力に抗して下方向に揺動し、係合ローラ61Bと刈取用伝動ベルト48とが係合する。つまり、第二被操作部材70Dが第二操作部材70Bの位置する側と反対側に揺動すると、操作バネ65に引張力が作用して、刈取クラッチ61は伝達状態になる。
このように、クラッチ操作ユニット70は、排出クラッチ60と刈取クラッチ61との夫々と各別に連係され、排出クラッチ60に対する切換動作、及び、刈取クラッチ61に対する切換動作が可能なように構成されている。換言すると、クラッチ操作ユニット70は、回動動作によって排出クラッチ60及び刈取クラッチ61を各別に伝達状態と非伝達状態とに切換操作する。
図16及び図17に示されるように、脱穀クラッチ操作ユニット74に、周部にカムを有する脱穀クラッチ用操作部材74Aと、脱穀クラッチ用被操作部材74Bと、が備えられ、これらがユニット収納ケース74Fの内側に収納されている。ユニット収納ケース74Fの外側に位置する状態で、モータユニット74Cがユニット収納ケース74Fに支持されている。脱穀クラッチ用操作部材74Aは、回動支軸74Dの回動軸芯P4回りに一体的に回動可能なように、回動支軸74Dに連結されている。脱穀クラッチ用被操作部材74Bが、揺動支軸74Eに支持されて、揺動支軸74Eの揺動軸芯P5回りに揺動可能なように構成されている。回動軸芯P4と揺動軸芯P5とは夫々平行であって、揺動軸芯P5は回動軸芯P4よりも下側に位置する。脱穀クラッチ用操作部材74Aの周部にカムとしての当接部74gが形成されている。脱穀クラッチ用被操作部材74Bにおける長手方向中央領域に、ローラ式のカムフォロア74hが、揺動軸芯P5と平行な軸芯回りに回動可能に設けられている。カムフォロア74hと脱穀クラッチ用操作部材74Aの周部とが対向するように脱穀クラッチ用被操作部材74Bが配置される。
揺動軸芯P5よりも下側に係止部74Mが設けられ、脱穀クラッチ用被操作部材74Bの下端部のうち、揺動軸芯P5よりも下側の箇所が係止部74Mと当接可能に構成されている。係止部74Mは脱穀クラッチ用被操作部材74Bの揺動範囲を規制する。即ち、脱穀クラッチ用被操作部材74Bの下端部と、係止部74Mと、が当接すると、脱穀クラッチ用被操作部材74Bは、図16の側面視において時計回りの方向に揺動できなくなる。
この状態で脱穀クラッチ用被操作部材74Bの揺動状態が保持される。
脱穀クラッチ用被操作部材74Bの遊端部に脱穀用連係ワイヤ76の一端部が連結されている。ユニット収納ケース74Fのうち、回動軸芯P4を挟んで揺動軸芯P5の位置する側と反対側に、三か所の開口部74k,74k,74kが横並びの状態で形成されている。脱穀用連係ワイヤ76は開口部74kを貫通して脱穀クラッチ操作ユニット74の外側に配線され、脱穀用連係ワイヤ76の他端部は、操作バネ部材69における引張ロッド部69Bの下端部と連結されている。
操作バネ部材69は、脱穀用シーソーアーム62Aのピン孔62c(図10参照)にピン連結される。このため、脱穀クラッチ62の自重によって前側領域62Fが上方向に揺動し、脱穀クラッチ用被操作部材74Bの遊端部は脱穀用連係ワイヤ76を介して回動軸芯P4の位置する側へ引っ張られる。この状態で、脱穀クラッチ用操作部材74Aと脱穀クラッチ用被操作部材74Bとが当接しなければ、脱穀クラッチ用被操作部材74Bは、係止部74Mによって係止されるまで、図16の紙面上で時計回りの方向に揺動する。
モータユニット74Cは、回動軸芯P4を挟んで揺動軸芯P5の位置する側と反対側の箇所に設けられている。また、ユニット収納ケース70Lの後端部にリレー回路74Nが設けられ、リレー回路74Nは機体の制御用マイコン(不図示)からの制御信号に基づいてモータユニット74Cを回動操作する。リレー回路74Nはモータユニット74Cよりも機体後側の箇所に位置する。詳述はしないが、モータユニット74Cには周知のブレーキ機構が備えられている。リレー回路74Nの信号に基づいて、モータユニット74Cの回動時にブレーキ信号が解除されることによってブレーキが開放され、モータユニット74Cは回動可能となる。また、モータユニット74Cの停止時に、リレー回路74Nの信号に基づいてブレーキ信号が出力されてブレーキが掛かり、モータユニット74Cの回動が拘束される。
ユニット収納ケース74Fのうち、モータユニット74Cの出力軸に対応する箇所に貫通孔が形成され、モータユニット74Cの出力軸は、この貫通孔を貫通してユニット収納ケース74Fの内部に突出する。図16及び図17において、モータユニット74Cの出力軸は回動軸芯P6で示され、回動軸芯P4と回動軸芯P6とは夫々平行となっている。
モータユニット74Cの出力軸の先端部は脱穀クラッチ用操作部材74Aの周部と隣接し、この出力軸の先端部に回動ギア74iが設けられている。回動ギア74iは、モータの動力によって回動軸芯P6周りに回動可能なように構成されている。そして、脱穀クラッチ用操作部材74Aの周部に、回動ギア74iと噛合可能な歯部74jが形成され、回動ギア74iの回動に伴って、脱穀クラッチ用操作部材74Aが回動する。脱穀クラッチ用操作部材74Aと回動支軸74Dとの一体的な回動の角度が、ポテンショメータ74Lによって検出される。
脱穀クラッチ用操作部材74Aが回動して、当接部74gが脱穀クラッチ用被操作部材74Bの揺動範囲に入ると、当接部74gと、脱穀クラッチ用被操作部材74Bのカムフォロア74hと、が当接する。そして、当接部74gがカムフォロア74hを押圧する状態で、脱穀クラッチ用被操作部材74Bが揺動軸芯P5回りに、図16の紙面上で反時計回りの方向に揺動する。
図16の紙面上で、脱穀クラッチ用被操作部材74Bが反時計回りの方向に揺動すると、引張ロッド部69Bの下端部が脱穀用連係ワイヤ76を介して下方向に変位する。このため、引張ロッド部69Bに引張力が作用し、この引張力が圧縮バネ部69C(図11参照)と揺動連結部69A(図11参照)とを介して脱穀用シーソーアーム62Aに伝達する。そして、後側領域62Rが上方向に揺動して、係合ローラ62Bと第一伝動ベルト37とが係合する。つまり、脱穀クラッチ用被操作部材74Bが脱穀クラッチ用操作部材74Aの位置する側と反対側に揺動すると、引張ロッド部69Bに引張力が作用して、脱穀クラッチ62は伝達状態になる。
このように、脱穀クラッチ操作ユニット74は、脱穀クラッチ62と連係され、脱穀クラッチ62を伝達状態と非伝達状態とに切換える切換動作が可能なように構成されている。また、クラッチ操作ユニット70は脱穀装置4に対して機体左右一方側に設けられ、かつ、脱穀クラッチ操作ユニット74は脱穀装置4に対して機体左右他方側に設けられている。
〔クラッチ操作ユニットの回動動作について〕
上述のように、第一操作部材70Aと第二操作部材70Bとの夫々は、回動軸芯P1回りに一体的に回動可能なように構成されている。図18に示されるように、第一操作部材70A及び第二操作部材70Bの回動動作の範囲として、中立位置Nと、第一回動範囲A1と、第二回動範囲A2と、第三回動範囲A3と、が設けられている。第一回動範囲A1と第二回動範囲A2とが、中立位置Nに対して左右に振り分けられている。第三回動範囲A3は、中立位置Nから時計回りの回動範囲において、中立位置Nと第二回動範囲A2との間に位置する。
図18に示された中立位置Nの範囲内で、回動ギア70nと、第二操作部材70Bの歯部70qと、が噛合すると、第一操作部材70A及び第二操作部材70Bの状態は、第一操作部材70Aと第一被操作部材70Cとが当接せず、かつ、第二操作部材70Bと第二被操作部材70Dとが当接しない状態である。この状態で、排出クラッチ60と刈取クラッチ61とは、何れも非伝達状態で保持される。このように、クラッチ操作ユニット70は、排出クラッチ60と刈取クラッチ61との両方を非伝達状態にする状態を現出可能に構成されている。この状態を「中立状態」と称する。中立位置Nは中立状態を現出する。
第一回動範囲A1は後述の第一状態を現出する。第二回動範囲A2は後述の第二状態を現出する。第三回動範囲A3は後述の第三状態を現出する。なお、本実施形態では、中立位置Nから左右に中立状態を現出する範囲、即ち中立回動範囲が存在する。
以下、第一操作部材70A及び第二操作部材70Bの回動について、「時計回り」及び「反時計回り」という記載は、図18乃至図23に示された第一操作部材70A及び第二操作部材70Bの視点に基づく回動方向を意味する。
この中立位置Nから、第一操作部材70A及び第二操作部材70Bが一方側、即ち反時計回りの方向に回動すると、図19に示されるように、回動ギア70nと歯部70qとの噛合箇所が、中立位置Nの範囲(中立回動範囲)から第一回動範囲A1に移行する。このとき、第一操作部材70Aの第一内側カム部70rと、第一被操作部材70Cのカムフォロア70kと、が当接する。第一内側カム部70rは第一当接部70hに接近する箇所ほど回動軸芯P1から離れるように傾斜する。第一内側カム部70rとカムフォロア70kとが当接した状態で、第一操作部材70Aが反時計回りの方向に回動すると、第一内側カム部70rからカムフォロア70kに対して押圧力が作用する。このため、第一被操作部材70Cは、第一操作部材70Aの位置する側と反対側に揺動する。そして、第一操作部材70Aが反時計回りの方向に更に回動すると、図20に示されるように、第一内側カム部70rとカムフォロア70kとが当接する状態から、第一当接部70hとカムフォロア70kとが当接する状態に移行する。第一当接部70hは回動軸芯P1を中心に円弧状に形成されているため、第一操作部材70Aが反時計回りの方向に更に回動しても、第一被操作部材70Cはこれ以上揺動しない。そして、第一当接部70hとカムフォロア70kとが当接した状態で、第一被操作部材70Cは揺動後の状態に保持される。
第一被操作部材70Cの遊端部に排出用連係ワイヤ72(図8参照、以下同じ)が連結されているため、第一被操作部材70Cの揺動に伴って、排出用連係ワイヤ72が操作バネ63(図8参照、以下同じ)を引っ張り、排出クラッチ60(図8参照、以下同じ)は非伝達状態から伝達状態に切換えられる。
一方、第二操作部材70Bのうち、第一当接部70h及び第一内側カム部70rと対応する箇所は、第一内側カム部70rよりも内側に窪むように形成されている。このため、回動ギア70nと歯部70qとが第一回動範囲A1で噛合する場合、第一回動範囲A1に亘って第二操作部材70Bと第二被操作部材70Dとが当接しない。このことから、第二被操作部材70Dは、第二操作部材70Bに押圧されないため、揺動せずにそのまま位置保持される。この状態で刈取用連係ワイヤ73(図9参照、以下同じ)は変位せず、操作バネ65は刈取用連係ワイヤ73に引っ張られないため、刈取クラッチ61(図9参照、以下同じ)の非伝達状態は保持される。
このように、クラッチ操作ユニット70は、中立位置Nから反時計回りに回動することによって排出クラッチ60を伝達状態に切換えるとともに刈取クラッチ61を非伝達状態に保持する状態を現出可能に構成されている。この状態を「第一状態」と称する。要するに、回動ギア70nと歯部70qとが第一回動範囲A1で噛合すると、クラッチ操作ユニット70は第一状態を現出する。
中立位置Nから、第一操作部材70A及び第二操作部材70Bが他方側、即ち時計回りの方向に回動すると、回動ギア70nと歯部70qとの噛合箇所が、図21に示されるように、中立位置Nの範囲(中立回動範囲)から第三回動範囲A3に移行する。このとき、第二操作部材70Bの内側カム部70tと、第二被操作部材70Dのカムフォロア70kと、が当接する。内側カム部70tは当接部70jに接近する箇所ほど回動軸芯P1から離れるように傾斜する。内側カム部70tとカムフォロア70kとが当接した状態で、第二操作部材70Bが時計回りの方向に回動すると、内側カム部70tからカムフォロア70kに対して押圧力が作用する。このため、第二被操作部材70Dは、第二操作部材70Bの位置する側と反対側に揺動する。そして、第二操作部材70Bが時計回りの方向に更に回動すると、内側カム部70tとカムフォロア70kとが当接する状態から、当接部70jとカムフォロア70kとが当接する状態に移行する。当接部70jは回動軸芯P1を中心に円弧状に形成されているため、第二操作部材70Bが、時計回りの方向に更に回動しても、第二被操作部材70Dはこれ以上揺動しない。そして、当接部70jとカムフォロア70kとが当接した状態で、第二被操作部材70Dは揺動後の状態に保持される。
図18及び図21に示されるように、第一操作部材70Aが中立位置Nから時計回りの方向に回動するほど、第一操作部材70Aの第二内側カム部70sと、第一被操作部材70Cのカムフォロア70kと、の離間距離は短くなる。しかし、当該噛合箇所が第三回動範囲A3である場合、第二内側カム部70sとカムフォロア70kとは当接せず、第一被操作部材70Cは、第一操作部材70Aに押圧されないため、揺動せずにそのまま位置保持される。この状態で排出用連係ワイヤ72は変位せず、操作バネ63は排出用連係ワイヤ72に引っ張られないため、排出クラッチ60の非伝達状態は保持される。
図21及び図22に示されるように、第一操作部材70A及び第二操作部材70Bが、時計回りの方向に更に回動すると、回動ギア70nと歯部70qとの噛合箇所が、第三回動範囲A3から第二回動範囲A2に移行する。このとき、第一操作部材70Aの第二内側カム部70sと、第一被操作部材70Cのカムフォロア70kと、が当接する。第二内側カム部70sは第二当接部70iに接近する箇所ほど回動軸芯P1から離れるように傾斜する。第二内側カム部70sとカムフォロア70kとが当接した状態で、第一操作部材70Aが時計回りの方向に回動すると、第二内側カム部70sからカムフォロア70kに対して押圧力が作用する。このため、図22及び図23に示されるように、第一被操作部材70Cは、第一操作部材70Aの位置する側と反対側に揺動する。そして、第一操作部材70Aが時計回りの方向に更に回動すると、図23に示されるように、第二内側カム部70sとカムフォロア70kとが当接する状態から、第二当接部70iとカムフォロア70kとが当接する状態に移行する。第二当接部70iは回動軸芯P1を中心に円弧状に形成されているため、第一操作部材70Aが時計回りの方向に更に回動しても、第一被操作部材70Cはこれ以上揺動しない。そして、第二当接部70iとカムフォロア70kとが当接した状態で、第一被操作部材70Cは揺動後の状態に保持される。もちろん、第二回動範囲A2に亘って、第二操作部材70Bの当接部70jと、第二被操作部材70Dのカムフォロア70kと、の当接状態は、そのまま保持されるとともに、第二被操作部材70Dは揺動後の状態に保持される。第一被操作部材70Cの揺動に伴って、排出用連係ワイヤ72が操作バネ63を引っ張り、排出クラッチ60は非伝達状態から伝達状態に切換えられる。
このように、第一操作部材70Aは、中立状態から一方側への回動動作によって第一被操作部材70Cと当接可能な第一当接部70hと、中立状態から他方側への回動動作によって第一被操作部材70Cと当接可能な第二当接部70iと、を有する。第一操作部材70Aが中立位置Nから一方側に回動すると、第二当接部70iと第一被操作部材70Cとが当接することなく第一当接部70hが第一被操作部材70Cを押圧する。また、第一操作部材70Aが中立位置Nから他方側に回動すると、第一当接部70hと第一被操作部材70Cとが当接することなく第二当接部70iが第一被操作部材70Cを押圧する。そして、第一当接部70hまたは第二当接部70iの押圧によって第一被操作部材70Cが操作されて、排出クラッチ60が伝達状態に操作される。
以上の構成によって、クラッチ操作ユニット70は、中立位置Nから時計回りに回動することによって排出クラッチ60を伝達状態に切換えるとともに刈取クラッチ61を伝達状態に切換える状態を現出可能に構成されている。この状態を「第二状態」と称する。要するに、回動ギア70nと歯部70qとが第二回動範囲A2で噛合すると、クラッチ操作ユニット70は第二状態を現出する。また、クラッチ操作ユニット70は、中立位置Nから時計回りの方向に回動することによって排出クラッチ60を非伝達状態に保持するとともに刈取クラッチ61を伝達状態に切換える状態を現出可能に構成されている。この状態を「第三状態」と称する。要するに、回動ギア70nと歯部70qとが第三回動範囲A3で噛合すると、クラッチ操作ユニット70は第三状態を現出する。そして、クラッチ操作ユニット70は、中立位置Nから時計回り方向における回動動作の変化によって第二状態と第三状態とを各別に現出可能に構成されている。
加えて、クラッチ操作ユニット70が中立位置Nから時計回り方向に回動すると、先に第三状態が現出され、続いて第二状態が現出される構成によって、刈取クラッチ61が先に伝達状態に切換えられ、続いて排出クラッチ60が伝達状態に切換えられる。これにより、穀粒排出装置18(図1参照)による穀粒の排出が開始される前に、刈取搬送部1(図1参照)による収穫作業が開始され、穀粒の収穫に関する作業が行われるとともに、穀粒排出装置18は穀粒タンク5(図1参照)から穀粒を好適に排出可能となる。また、クラッチ操作ユニット70が第二状態から反時計回り方向に回動すると、先に第三状態が現出され、続いて中立状態が現出される構成によって、排出クラッチ60が先に非伝達状態に切換えられ、続いて刈取クラッチ61が非伝達状態に切換えられる。これにより、刈取搬送部1による収穫作業が停止する前に、穀粒排出装置18による穀粒の排出が停止する。
第一操作部材70A及び第二操作部材70Bが反時計回りの方向に回動すると、第二操作部材70Bと第二被操作部材70Dとが当接することなく第一当接部70hが第一被操作部材70Cを押圧することによって、第一状態が現出される。また、第一操作部材70A及び第二操作部材70Bが時計回りの方向に回動すると、第二操作部材70Bが第二被操作部材70Dを押圧するとともに第二当接部70iが第一被操作部材70Cを押圧することによって、第二状態が現出される。
〔走行用伝動ベルトに対するベルトテンション機構〕
図24及び図25に示されるように、走行用伝動ベルト58,59の夫々は、走行用ベルトテンション機構80,80によって、常に張力を掛けられている。前縦フレーム30F(図4参照、以下同じ)の上端部に上側揺動軸芯フレーム30Xが溶接固定され、上側揺動軸芯フレーム30Xは、走行用中継軸57の上方に位置する状態で、前縦フレーム30Fよりも機体横外方へ突出する。走行用伝動ベルト58に対する走行用ベルトテンション機構80は上側揺動軸芯フレーム30Xに揺動可能に支持される。前縦フレーム30Fの前方に位置する状態、かつ、上側揺動軸芯フレーム30Xの下方に位置する状態で、ステー30Sが機体右側の側壁26(図4参照)に支持される。ステー30Sから、走行用中継軸57と下側揺動軸芯フレーム30Yとが機体横外方へ突出する。下側揺動軸芯フレーム30Yは走行用中継軸57よりも機体前側に位置する。走行用伝動ベルト59に対する走行用ベルトテンション機構80は下側揺動軸芯フレーム30Yに揺動可能に支持される。なお、図25には、走行用ベルトテンション機構80が上側揺動軸芯フレーム30Xに支持される状態が示されているが、図25における上側揺動軸芯フレーム30Xは、下側揺動軸芯フレーム30Yであっても良い。
走行用ベルトテンション機構80は、走行ベルト用揺動アーム80Aと、走行ベルト用係合ローラ80Bと、付勢部材81と、を有する。走行ベルト用揺動アーム80Aの長手方向における基端部が上側揺動軸芯フレーム30Xまたは下側揺動軸芯フレーム30Yに支持される。走行ベルト用揺動アーム80Aの長手方向における遊端部に走行ベルト用係合ローラ80Bが回転可能に連結され、走行ベルト用係合ローラ80Bが走行用伝動ベルト58,59の何れか一方と係合する。
走行ベルト用揺動アーム80Aの長手方向中央箇所のうち、走行ベルト用係合ローラ80Bの位置する側寄りの箇所に走行ベルト用支持軸部80Cが走行ベルト用揺動アーム80Aに溶接固定され、走行ベルト用支持軸部80Cは走行ベルト用揺動アーム80Aから機体横外方へ突出する。この走行ベルト用支持軸部80Cに付勢部材81が揺動可能に連結されている。
付勢部材81の構成は、上述した操作バネ部材69と同じであって、付勢部材81に、揺動連結部81Aと、引張ロッド部81Bと、圧縮バネ部81Cと、が備えられている。
揺動連結部81Aの上端部にボス穴部81dが形成され、ボス穴部81dが走行ベルト用支持軸部80Cに外嵌する。揺動連結部81Aは走行ベルト用支持軸部80Cを軸芯に揺動する。
揺動連結部81Aは正面視または背面視においてL字状に形成されている。揺動連結部81Aの基端側は上下方向に延び、揺動連結部81Aの先端側は機体横外方に屈曲する。
この先端側の先端箇所81gに挿通孔部81eが形成され、挿通孔部81eに引張ロッド部81Bが挿通される。圧縮バネ部81Cは引張ロッド部81Bに外嵌し、圧縮バネ部81Cの上方に平座金81Hが設けられ、平座金81Hは圧縮バネ部81Cのコイル径よりも大きな直径を有する。引張ロッド部81Bのうち、圧縮バネ部81C及び平座金81Hの位置する側の端部に螺旋溝が形成され、この螺旋溝にナット81Iが締められている。
この状態で平座金81Hはナット81Iと当接し、平座金81Hは引張ロッド部81Bに対して抜け止めされている。これにより、圧縮バネ部81Cは上下方向において先端箇所81gと平座金81Hとに挟まれている。引張ロッド部81Bに締められるナット81Iは一つであっても良いし、例えばダブルナットのように複数であっても良い。
走行用中継軸57の後下方に支持ステー30Tが備えられ、引張ロッド部81Bのうち、圧縮バネ部81C及び平座金81Hの位置する側と反対側の端部が支持ステー30Tに支持固定される。これにより、走行用伝動ベルト58,59の夫々に張力が掛かるとともに、走行用伝動ベルト58,59の夫々における振動や衝撃が、夫々の圧縮バネ部81C,81Cによって吸収される。走行用伝動ベルト58,59の夫々に対する走行用ベルトテンション機構80は、機体右側の前車輪8の近傍に位置し、かつ、前車輪8よりも機体横内方に位置する。このため、走行用ベルトテンション機構80のメンテナンス作業は煩わしいものとなり、走行用ベルトテンション機構80はメンテナンスフリーであることが望ましい。特に、ナット81Iには、例えばハードロックナット(登録商標)のような緩み難いものが用いられる。また、ナット81Iに対応するワッシャー(不図示)にも、例えばウェッジロックワッシャーのような緩み難いものが用いられても良い。つまり、ナット81I及び当該ワッシャーの一方または両方に、緩み難いものが用いられる。
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
(1)上述の実施形態において、クラッチとしてベルトテンションクラッチが例示されたが、クラッチはベルトテンションクラッチに限定されず、咬み合いクラッチや摩擦クラッチであっても良い。
(2)上述の実施形態に示された扱胴21Aの回転軸芯は機体前後方向に沿い、脱穀装置4における収穫物の搬送方向は機体前後方向に沿っているが、この実施形態に限定されない。例えば、扱胴21Aの回転軸芯が機体横方向に沿い、脱穀装置4における収穫物の搬送方向が機体横方向に沿うものであっても良い。
(3)上述の実施形態において、脱穀装置4と穀粒タンク5とが上下に並んで備えられているが、脱穀装置4と穀粒タンク5とが機体横方向に並んで備えられる構成であっても良い。この場合、クラッチ操作ユニット70は、平面視において脱穀装置4と穀粒タンク5との間に設けられる構成であっても良い。
(4)上述の実施形態において、上下一対の横フレーム71A,71Aのうち、下側の横フレーム71Aにクラッチ操作ユニット70が支持されているが、クラッチ操作ユニット70は上側の横フレーム71Aに支持される構成であっても良い。要するに、搬送装置としての揚穀装置24を脱穀装置4に支持する支持部材71が備えられ、クラッチ操作ユニット70は支持部材71に支持されていれば良い。
(5)上述の実施形態における二番物還元装置25は、揚穀装置24と交差するが、揚穀装置24と二番物還元装置25とが交差しない構成であっても良い。また、クラッチ操作ユニット70は二番物還元装置25の下方に設けられる構成であっても良い。
(6)上述の実施形態において、バルブユニット77が支持部材71に支持されているが、バルブユニット77が支持部材71に支持されない構成であっても良い。
(7)上述の実施形態において、別のクラッチ操作ユニットとして脱穀クラッチ操作ユニット74が設けられ、脱穀クラッチ操作ユニット74は脱穀クラッチ62に対する切換動作を行うが、この実施形態に限定されない。例えば、脱穀クラッチ操作ユニット74が設けられない構成であっても良い。この場合、クラッチ操作ユニット70は、排出クラッチ60と刈取クラッチ61と脱穀クラッチ62とに対する切換動作を各別に行う構成であっても良い。
(8)上述した実施形態において、図12に示されるように、搬送装置としての揚穀装置24は、バケットコンベア24Cの緩み側に対応する箇所として補強された前端壁部24fで脱穀装置4に強固に支持される構成となっているが、この実施形態に限定されない。
例えば、図12に示された構成以外に、バケットコンベア24Cの張り側が機体前側で、バケットコンベア24Cの緩み側が機体後側である場合、第一揚穀装置24Aの壁部のうち、機体後側の壁部が補強される構成であっても良い。この状態で、横フレーム71A,71Aの延出端部が、第一揚穀装置24Aの機体後側の壁部と連結される構成であっても良い。つまり、搬送装置としての揚穀装置24は、揚穀装置24の壁部のうち、バケットコンベア24Cの緩み側に対応する箇所において補強された壁部で脱穀装置に強固に支持される構成であっても良い。
(9)上述した実施形態において、収穫機として普通型コンバインが示されたが、収穫機は自脱型のコンバインであっても良い。
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。
また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。