以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、本発明に係る椅子の部品の取付構造,取付方法の実施形態の一例がオフィスなどで使用され得る事務用回転椅子の背凭れに備えられるランバーサポート部の押出部材のアウターシェルへの取り付けにおいて用いられている場合を例に挙げる。
図1乃至図34に、本発明が適用された椅子の実施形態の一例を示す。尚、本明細書において、前後左右の方向は着座者を中心に定められており、「前あるいは前方」とは肘掛け,座及び背凭れのそれぞれにおいて椅子及び当該椅子の座に座った着座者にとっての前あるいは前向きであり、「後あるいは後方」とは同様に椅子及び着座者にとっての後あるいは後向きである。また、前後方向と水平面内において直交する方向が肘掛け,座及び背凭れのそれぞれにおいて着座者にとっての左右方向であり、椅子の幅方向である。さらに、「上」及び「下」は肘掛け,座及び背凭れのそれぞれにおいて椅子及び着座者にとっての上及び下であり、鉛直面内の上と下である。
本実施形態の椅子の部品の取付構造,取付方法が適用されている椅子は、例えばキャスターを有する脚1と、該脚1に支えられるメインフレーム(図11参照)2と、該メインフレームに対して揺動自在に連結されたシンクロフレーム(図11参照)3と、メインフレーム2とシンクロフレーム3との間で支持される座4と、シンクロフレーム3に支持される背フレーム(図10参照)5と、該背フレーム5及びシンクロフレーム3に支持される背凭れ6と、座4に取り付けられる可動肘7とを有する。
この椅子のロッキング機構は、例えば図11に示すように、脚1の上端部に取り付けられるメインフレーム2と、該メインフレーム2の上方に配置されて当該メインフレーム2に対して前後動と傾動とを可能にするように取り付けられている座(主に座アウターシェルを指す)4と、メインフレーム1に対して揺動可能に連結支持されて座4の後端と回動可能に連結されると共に背凭れ6の下端部が連結されるシンクロフレーム3と、メインフレーム2とシンクロフレーム3との間に介在されるロック機構付きシンクロガススプリング(以下、単にシンクロガススプリングと呼ぶ)8と、シンクロフレーム3に揺動可能に連結支持され背凭れ6の上部が引っ掛けられる背フレーム5とで構成されている。尚、メインフレームとシンクロフレームの前端との間には、図示していない反力機構例えば圧縮コイルばねが備えられる。
また、本実施形態の場合、背フレーム5はシンクロフレーム3の後端に前後方向に揺動可能に連結されると共に、メインフレームとシンクロフレームの前端との間に図示していない圧縮コイルばねから成る反力機構が備えられ、メインフレームの後端側とシンクロフレームの中程との間にはシンクロガススプリング8が取付けられる一方、メインフレーム2の前端の軸とシンクロフレーム3の軸との間で座4の前端と後端とがそれぞれ回転自在に支持されると共にシンクロフレーム3の後端に背フレーム5が前後方向にチルト可能に固定され、背凭れ6と座4とがシンクロロッキング可能でかつ任意の位置で固定可能に支持されると共に傾動に対して反発力を与えて初期位置に戻す力が常時付勢されている。また、本実施形態の場合、シンクロフレーム3と背フレーム5の下端との間にはチルトばね機構9が組み込まれ、背凭れ6だけが背フレーム5と共に傾くチルト機能が備えられている。尚、座4は、本実施形態の場合、図示していないが、着座者の体重を均等に支持する構造部材としてのばね性を有するインナーシェルと、その上に載せられるウレタンフォームなどのクッション材と、クッション材とインナーシェルとをくるむ張地と、それらを受け止めてメインフレームに取り付けられるアウターシェル(座受けに相当)とで構成され、アウターシェルに肘掛け7が例えばビス止めにより固定されている。
本実施形態において椅子のオプション部材とは、椅子の背や座などの椅子の一部に取り付けられる支持部材と、該支持部材に対してスライド可能であり、上面に使用面を備える可動部材とを有するものである。そして、支持部材と可動部材とは支持部材に対して可動部材が摺動可能に備えられると共に、支持部材と可動部材との間の互いの摺動面の少なくとも一方が球面あるいは曲面から成り、球面あるいは曲面の上を他方の摺動面が移動するように可動部材をスライド可能に支持するスライド機構を備え、可動部材のスライド動作にしたがい可動部材の上面の傾きを変化させる球面滑りを構成し、可動部材が支持部材に対してスライドすることによって可動部材の使用面の傾きを変化させるように設けられている。
(オプション部材取付構造及び椅子の可動肘のスライド構造)
図2~図9に、本発明の椅子のオプション部材の実施形態の一例として可動肘のスライド構造に適用した例を示す。
本実施形態の肘掛けは、椅子本体側に固定される支持部材たる肘支柱11の上の肘当て受部12に、可動部材たる肘当て13が摺動可能なスライド構造を有する。即ち、肘当て受部12と肘当て13との間に、肘当て受部12に対し球面上若しくは曲面上を移動するように肘当て13をスライド可能に支持する球面滑りを構成するスライド機構14を備え、肘当て13のスライド動作にしたがい、肘当て13の使用面(以下肘当て上面24あるいは単に上面24と呼ぶ)の鉛直角度(以下、肘当ての上面角度θと呼ぶ)を変化させるようにしたものである。尚、本明細書において、オプション部材の使用面の傾き(所謂、上面の鉛直角)とは、オプション部材の上面(着座者の体の一部例えば腕や肘などが当たる面)が基準となる平面例えば摺動部を構成する球面あるいは曲面の曲率中心を通過する鉛直軸と球面あるいは曲面とが交わる極を通る接平面(水平面)を基準として上下に測った角度であり、高低角と同義であって、上は仰角、下は俯角とする。
本実施形態の可動肘は、高さ調節機能を有する例であって、例えば肘当て13を支える肘当て受部12の高さが調節できる支柱構造とされている。即ち、肘支柱11は、椅子本体側に固定される支柱本体21と、支柱本体21に昇降自在に収納される昇降フレーム22とで構成され、支柱本体21と昇降フレーム22との間に跨がるように組み込まれる係止レバー23の働きによって支柱本体21と昇降フレーム22とが相互に連結される係合状態(固定状態)と分離されて昇降可能な状態(解除状態)とに切り替え可能な構造とされている。昇降フレーム22の上端には、肘当て13を支えるに十分な広さに拡張された台座部(例えば図7や図8に示すような楕円形状の台座部22a)を含む肘当て受部12が備えられている。勿論、肘支柱11が伸縮する仕組み、即ち肘掛けの高さ調節を可能とする仕組みは、肘当て13の高さ位置を着座者の体格や好みなどに合わせて調節することができるようにする上で好ましいが、必ずしも必要なものではない。したがって、肘当て受部12は、場合によっては支柱本体21に一体成形された構造であっても良い。
本実施形態の肘掛け7は、主に座4の裏面側例えば座裏カバーや座を構成する座板シェルあるいは座を脚部に取り付けるための座受け部材(図示省略)に固定されるものとして構成されたものであり、L形の支柱本体21と、該支柱本体21の立ち上がり部21aに昇降自在に収納される昇降フレーム22と、昇降フレーム22の上端に形成される肘当て受部12との間で摺動部(球面滑り)を構成する肘当て13とで構成されている。そして、支柱本体21は基端部21bが図示していない座板シェルなどにボルトなどの締結具で固定され、上端部となる肘当て受部12が着座者の肘付近に位置するように例えば肘当て受部12が座の側縁とほぼ平行に配置させて椅子本体に組み付けられる。尚、本実施形態では、肘支柱11は、座の底面に取り付けられることによって、背のロッキング動作に伴い回動しない固定フレームとして設置されている。しかし、場合によっては背(図示省略)に取り付けられ、あるいは背のロッキング動作に伴って傾動する部材に取り付けられることもある。
スライド機構14は、本実施形態の場合、例えば図3に示すように、肘当て受部12の上面即ち下スライダパーツ15の摺動面40dと、肘当て13の下面即ち上スライダパーツ16の摺動面40u並びにこれらを摺動可能に連結する連結手段とで構成されている。連結手段としては、本実施形態の場合、運動軌跡を定めるガイド溝19,20並びに該ガイド溝19,20を貫通して下スライダパーツ15と上スライダパーツ16とを摺動可能に連結する軸例えばねじ17,18との組み合わせで構成されており、例えば下スライダパーツ15のガイド溝(以下、第2のガイド溝20と呼ぶ)を貫通して一方の軸(以下、可動軸17と呼ぶ)が肘当て13に固定され、他方の軸(以下、固定軸18と呼ぶ)が上スライダパーツ16のガイド溝(以下、第1のガイド溝19と呼ぶ)を貫通して肘当て受部12のタッピンねじ用ボス22cにねじ込まれることで固定されている。ここで、可動軸17,固定軸18の締結方向は、スライド機構14の球面若しくは曲面の曲率中心に向かって締結されていることが好ましい。この場合、スライド時のこじれの発生が起き難い。
ガイド溝は、本実施形態の場合、例えば図4及び図6に示すように、肘当て13の下面即ち上スライダパーツ16と肘当て受部12の上面即ち下スライダパーツ15とに分けて互いに独立させて形成されている。下スライダパーツ15の第2のガイド溝20は、例えば肘当て13の前半部を案内するものであり、図6に示すように、椅子の幅方向内側に向けて変位する円弧状に形成されることにより、軌道の途中で肘当て13の前半部を椅子の幅方向内側に向けて変位させながら再び椅子の幅方向外側に向けて変位させて、前端では後端位置よりも僅かに内側に入った位置へと案内する。他方、上スライダパーツ16の第1のガイド溝19は、例えば肘当て13の後半部を案内するものであり、本実施形態の場合、第2のガイド溝20と同様に、椅子の幅方向内側に向けて変位する円弧状に形成されることにより、軌道の途中で肘当て13の後半部を椅子の幅方向内側に向けて変位させながら再び椅子の幅方向外側に向けて変位させて、前端では後端位置よりも僅かに内側に入った位置へと案内する。したがって、肘当て13は、図9に示すように、第1のガイド溝19と第2のガイド溝20との協働によって、蛇行するように前後動する。
ここで、本実施形態のガイド機構は、上スライダパーツ16に一方のガイド溝19を、下スライダパーツ15に他方のガイド溝20をそれぞれ分けて構成する一方、肘当て受部12の側に上スライダパーツ16のガイド溝19内を相対移動する固定軸18を備え、可動部材である肘当て13側に下スライダパーツ15のガイド溝20内を移動する(肘当てと共に移動する)可動軸17を備え、2本のガイド溝19,20内を2軸17,18が相対移動することによって肘当て13に動きが与えられる構造とされている。複数のガイド溝19,20を上下に重なる2つのパーツ15,16に分けて設ける事によって、ガイド溝と軸の配置スペースが大きく採れない限りあるスペースの肘当て受部、肘支持部上面であっても、複数の溝を設けることで各パーツ15,16毎の構造強度の低下を防ぐと共に複数のガイド溝19,20が重なる(干渉する)ように組み合わることを可能とする。したがって、肘当て13の動きに対する制限が少なくなり(換言すれば、単調さがなくなり、複雑な軌跡を描かせることも可能となる)、特徴的な軌道を描かせることができる。尚、本実施形態においては、複数のガイド溝として2本のガイド溝を採用した例を挙げて説明しているが、これに特に限られるものではなく、必要に応じて3本以上のガイド溝を3パーツ以上の部材に分けて構成するようにしても良い。
複数のガイド溝19,20を分散する構造は、上述の球面上を動く肘掛け構造には特に限定されない。例えば、平坦なスライド面上を動く肘掛け構造にも適用できることは言うまでもない。さらに、本実施形態では、第1のガイド溝19と第2のガイド溝20は共に円弧状であるが、この溝形状の組み合わせに限られず、一方若しくは双方のガイド溝、例えば第1のガイド溝19を直線的な形態にしても良いし、図示していない形状例えば双曲線状や、折れ線状、S字形やL形、T形、Y形、V形、J形などの様々な非直線的あるいは非曲線的な形状の組み合わせであっても良い。
また、上スライダパーツ16と下スライダパーツ15とに分けて備えられる複数のガイド溝19,20は、少なくともスライド方向の前側と後側とを支持するものであり、前方に配置されるガイド溝20が下スライダパーツ15に、後方に配置されるガイド溝19が上スライダパーツ16に配置されていることが好ましい。この場合には、下スライダパーツ15の第2のガイド溝20は肘当て受部12の内側の空間に収まり、かつ上スライダパーツ16で覆われて外に露出しない。他方、上スライダパーツ16の第1のガイド溝19は肘当て受部12の後方に設けられているので、着座者が肘当て13の前部を掴んで肘当て13を引き下げる操作の際に、肘当て受部12の前に溝の一部が露出することがないので、あるいは露出したとしても指先が届く範囲に存在することが少ない。依って、肘当て13を肘当て受部12の前方に迫り出させるように移動させても、肘当て13の前部に指がかけられた姿勢を採っても指挟みなどの事故を起こすことがない。
肘当て13は、例えば、上スライダパーツ16とその上を覆うパッド25及び該パッド25に固定されるインナーシェル27とで構成されている。ここで、インナーシェル27には、例えば縦断面形状L形の爪が備えられ、上スライダパーツ16の係合用の孔と係合させることで、パッド25と上スライダパーツ16とを固定させる構造とされているが、場合によっては省略しても良い。また、図中の符号43は上スライダパーツ16とその上を覆うパッド25に貼り付けられたインナーシェル27とを連結するための締結用ビスを通すための孔、44は可動軸17のねじ部を通過させる孔である。
ここで、肘当て13の上面24は、特定の形状や角度であることに限定されるものではなく、平坦面(水平面は勿論のこと傾斜面も含む)若しくは平面に近似する大きな曲率半径の球面または湾曲面あるいは挟角が優弧を成す水平面と傾斜面との2辺が連続的に形成されている屈曲面などの適宜形態を必要に応じて採ることができるが、本実施形態の場合には摺動部の球面と曲率中心を同じくする球面で形成されている(例えば、図3に例示する)。この場合には、肘当て13の上面24が着座者の前腕形状にフィットするようにして支え得るので面圧の集中が起き難くい。
下スライダパーツ15は、本実施形態の場合、図6及び図7に示すように、第2のガイド溝20を形成するガイド部材35と、第2のガイド溝20の周囲を包囲して上スライダパーツ16と摺接する摺動面を形成する摺動部材36との2部材で構成されている。ガイド部材35は、第2のガイド溝20と複数のばか孔33とを備え、第2のガイド溝20の縁30が突堤状に形成されると共にその周辺に配置されたばか孔33を区画する部位との間を互いにリブ29で連結して1つのプレートとされている。他方、摺動部材36は、ガイド部材35の第2のガイド溝20の縁(突堤部分)30と同じ高さ若しくは僅かに高くなって、第2のガイド溝20並びにばか孔33の周囲を包囲し、上スライダパーツ16と摺接するものである。即ち、下スライダパーツ15の摺動面40dは、主に摺動部材36によって形成される。このガイド部材35と摺動部材36とは、摺動部材36の孔42にガイド部材35の第2のガイド溝20の突堤状の縁30を貫通させるように、側方の開口から摺動部材36の係止レバー抑えばね部32の上の空間にガイド部材35を差し込むように組み合わせて肘当て受部12の台座部22aに収容され、ビス止めによって固定される。組み合わされたガイド部材35と摺動部材36とは、台座部22aの内方のリブ29によって構成されている段部22bに嵌め込まれて固定され、昇降フレーム22の頂部に一体化されて肘当て受部12を構成している。このガイド部材35と摺動部材36とで、球面若しくは曲面の下スライダパーツ15の摺動面40dが構成される。尚、図中の符号41は昇降フレーム台座部22aの後端の固定軸18をねじ込むボス22Cを通過させる孔であり、固定軸18を支えるボス22Cの周りを摺動部材36の一部で囲むように設けられている。また、符号42はガイド部材の第2のガイド溝20を区画する突堤状の縁30を貫通させる孔である。32は台座部22aに回転自在に支承される係止レバー23の回動軸を抑える係止レバー抑えばね部である。
尚、下スライダパーツ15は、2部材に分けて構成する実施形態に限られず、例えば図8に示すように、上に凸の緩やかな球面を成す所謂球冠から成る一部材で構成しても良い。肘当て受部12の台座部22aの段部22bに嵌め込まれてねじ止めにより固定され、昇降フレーム22の頂部の一体化されて肘当て受部12を構成している。勿論、予め台座部22aと一体成形することにより肘当て受部12を構成するようにしても良い。また、本実施形態にかかるスライド機構は、肘当て受部及び肘当ての一部を構成する独立した部品の上スライダパーツと下スライダパーツとで成り立っているが、これに特に限定されるものではなく、例えば図示していないが、肘当て受部の上面と肘当ての下面とで構成するようにしても良い。
摺動部を構成する素材としては、肘当て13あるいは肘当て受部12の相対的な摺動を滑らかにする材質例えばPTFE(テフロン(登録商標))、MCナイロン、POM、超高分子量ポリエチレン、PET、PEEK、PPS、POM-HL(摺動グレード)あるいはこれら樹脂材料でコーティングした金属プレートなどの使用が好ましい。例えば、図8に示す例の肘当て受部12の場合には、前述の摺動性に優れる材料のプレートから成る下スライダパーツ15を、昇降フレーム22の頂部の台座部22aの段部(凹部)22bに嵌合させて止着することで摺動面が形成されている。例えば、昇降フレーム22の台座部22aの内部に設けられているタッピンねじ用ボス22cに対して、下スライダパーツ15を貫通させてタッピンねじ(図示省略)をねじ込むことで、台座部22aの段部22bに嵌め込まれる下スライダパーツ15を固定して肘当て受部12を構成している。
本実施形態の場合、スライド機構14は、上スライダパーツ16と下スライダパーツ15とが同じ曲率の球面、即ち凹面から成る上スライダパーツ16と凸面から成る下スライダパーツ15とで形成され、少なくとも互いに摺動する面・ガイドになっているところが球面で互いに密着させるように組み合わされることによって、肘当て13が球面上を滑って移動する球面滑り構造とされている。この場合、上下のパーツ15,16を締結するねじの間隔が変動しないため、肘当て13のスライドに伴ってがたつきが生じない利点がある。
また、本実施形態のスライド機構14は、肘当て受部12の上面即ち下スライダパーツ15の表面と肘当て13の下面即ち上スライダパーツ16の表面の双方をいずれも同一曲率半径の球面(所謂球冠)としているが、これに特に限られず、互いに曲率の異なる球面としても良いし、場合によってはスライド機構14を構成する摺動面の少なくとも一方が球面あるいは曲面であれば、例えば肘当て受部12の上面を球面とすれば、肘当て13の下面は平坦な面として接平面として摺接させるようにしても良い。勿論、場合によっては、可動部材側の摺動面を球面あるいは曲面として、支持部材側の摺動面を非球面例えば平坦な面としても良い。即ち、肘当て13の下面たる上スライダパーツ16は、肘当て受部12の上面たる下スライダパーツ15の全面において常時密着して摺接する必要はなく、部分的に肘当て受部12の上面と接触する摺動部を構成するようにしても良い。例えば、肘当て受部12の上面の曲率半径に対して肘当て13の下面の曲率半径を小さくしても良い。この場合においても、肘当て13は肘当て受部12の下スライダパーツ15の上を前後方向にスライドして位置をずらすと共に、肘当て13の上面角度を変更することができる。
肘当て受部12の上面である下スライダパーツ15が球面である本実施形態の場合には、可動肘のスライド方向は、特定の方向に限定されるものではなく、前後・左右・斜め方向を含めた全方位(即ち、360°)に設定可能であるが、本実施形態の場合、前後方向に設定されている。そして、可動肘のスライド機構は、常に、肘当ての移動と同時に傾きの方向即ち肘当て上面角度θが変化するものである。具体的には、肘当てのスライドに伴ってスライドの前後で肘当て上面角度θが変化するとは、一方のストローク端での上面角度θの大きさに対して他方のストローク端での上面角度θが小さくなることを意味するものであり、一実施形態としてほぼ0°であることを挙げているが、これに特に限られるものではなく、一方のストローク端での上面角度θが大きく傾斜した場合に比べて他方のストローク端での上面角度θが小さいことを総括する意味として使用されている。例えば、本実施形態では、肘当て13は最前部にあるときには肘当て上面角度θがほぼ0°(厳密な意味での平坦面の水平状態に限らず、球面あるいは仮想球面の曲率中心を通る鉛直軸と水平面とが直交する状態(図2(A)の状態)を含む)であり、後部側にスライドするに従い肘当て13の上面角度θの俯角の度合いが増大して後傾する構造とされている(図2(A),(B)参照)。つまり、可動部材である肘当て13が前端位置にあるときに水平状態、後方にスライドするに従い後傾状態となる。勿論、スライド機構14のスライド構造は、上述のものに特に限られず、例えば肘当て13が最後部にあるときに肘当て13の上面角度θが水平となり、肘当て13が前部側に向けてスライドするに従い肘当て13の上面角度θが前傾する(俯角となる)ようにしても良いし、さらには肘当て13が前後方向のスライド範囲の中央位置にあるときに肘当ての上面角度が水平あるいはほぼ水平であり(図2(A)の状態)、肘当て13が前後どちらかにスライドするに従い肘当て13の上面角度が前後どちらかに傾斜するようにしても良い。
可動肘のスライド方向は、上述の椅子の前後方向に限られず、任意の方向に設定可能である。例えば肘当て受部12が座の側縁と交わる方向に配置されるように支柱本体21に設けてスライド方向を斜め方向(前後方向と左右方向の間の方向)とし、肘当て13が前斜め方向にスライドするに従い前傾し、あるいは後斜め方向にスライドするに従い後傾するように設けることもできる。また、肘当て受部12が座の前縁とほぼ平行に配置されるように支柱本体21に設けてスライド方向を左右方向とし、肘当て13が一方の移動端にあるときの上面角度θの大きさに対して他方の移動端での上面角度θが小さくなる、あるいはその逆に小さな上面角度θから大きな上面角度θへと肘当てが傾きを変化させるものとすることができる。例えば、スライド範囲の中央の位置で肘当て13の上面角度θが水平であって、肘当て13が左右いずれかの他方の移動端にスライドするのに従い肘当て上面角度が左右どちらかに傾斜するようにしても良い。また、斜め方向あるいは左右方向にスライドさせる場合に、肘当て13がスライド範囲の中央位置にあるときに肘当て13の上面角度θが前後あるいは左右どちらかに傾斜しており、肘当て13が前後あるいは左右のいずれかにスライドするのに従い上面角度θが水平となるようにしても良い。
つまり、可動肘は、斜め前後あるいは左若しくは右に傾くものであり、いろいろな姿勢変更・肘当て面の角度変更のうちの1つとして、前述の椅子の背凭れに凭れたときに、肘当てを後方へスライドさせることで後方に傾斜(後端側下がるように傾く)する肘掛けの実施形態もある。可動肘のスライド方向に拘わらず、肘当てをスライドさせる過程において肘当て13の上面角度θが変化するものであれば良い。勿論、曲面の場合においても、前後方向(曲面の周方向)のみならず、斜め方向にも設定できる。つまり、本発明の椅子の可動肘のスライド機構は、常に、肘当ての移動と同時に傾きの方向が変化するものである。
さらには、球面あるいは曲面の曲率中心を通る鉛直軸Vと球面あるいは曲面との交点(本明細書では、極26あるいは頂点と呼ぶ)の位置は、本実施形態の場合、支持部材即ち肘支柱11の中心部即ち支柱本体21の中心を通過する鉛直軸上とされているが、これに特に限られるものではなく、例えば肘当て受部12の最前部若しくは最後部寄りの位置、あるいはこれらの間の任意の位置であっても良いし、場合によっては肘当て受部12の外に設定されても良い。つまり、球面の極あるいは曲面の頂点が必ずしも肘当て受部の中心部である必要はない。
尚、第1及び第2のガイド溝19,20は、肘当て13の動きを所望とする移動方向・移動軌跡に拘束できるものであれば良く、図示の実施形態のものに特に限られるものではない。例えば、直線的な2本のガイド溝が前後に並べて設けられ、かつ各ガイド溝19,20を貫通する可動軸17及び固定軸18によって肘当て受部12に対して肘当て13を摺動可能に連結させる構造としても良い。この場合には、肘当て13は前後方向に直動する。
肘当て受部12及び肘当て13の相対向する面(摺動面)のいずれか一方若しくは双方には、肘当て13を任意の方向に移動させるための一対のガイド溝19,20が、他方にはガイド溝19,20内を貫通して相対向する面同士を摺動可能に連結すると共に相対的に移動可能とする摺動子としての軸17,18が備えられている。尚、本実施形態では、ガイド溝19,20とそれに嵌合する摺動子となる軸17,18とをそれぞれ2つの相対向する摺動面を構成する部材のそれぞれに分けて配置させているが、これに特に限られるものではなく、一方に一対のガイド溝19,20を、他方に一対の摺動子たる軸17,18をそれぞれ配置するようにしても良いし、1本のガイド溝に少なくとも2本の摺動子たる軸をスライド方向に離間させて摺動させるような配置しても良い。尚、本実施形態では、一対のガイド溝19,20は、それぞれ始端(後側)よりも終端(前側)の方が幅方向内側に僅かに例えば10mm程度シフトしている。これによって肘当ての前後方向への移動に際し、移動開始時と移動終了時とで肘当ての位置が幅方向にもシフトすることとなる。
可動軸17は、本実施形態の場合、頭部にフランジ17aを備えるフランジ付きねじであり、上スライダパーツ16のほぼ中央に形成されたボス部28の六角穴31に嵌め込まれたナット34にねじ込まれ、上下のスライダパーツ15,16を締め付けること無く、摺動可能に連結する。また、可動軸17のフランジ17aは第2のガイド溝20の裏面側の縁部分(つまり、段部20a)に係合することで、摺動可能に連結されている。他方、固定軸18は、例えば頭部側にローラーホイール37を介してOリング38が備えられ、Oリング38の部分が第1のガイド溝19の縁部分(つまり、段部19a)に引っ掛かけられることで、ローラーホイール37を含むOリング38が転動することで第1のガイド溝19ひいては上スライダパーツ16が摺動するように支持される。固定軸18は、先端のタッピンねじ部を、上スライダパーツ16の第1のガイド溝19並びに下スライダパーツ15の摺動部材の孔41を貫通させて肘当て受部12のタッピンねじ用ボス22cにねじ込ませることで固定される。本実施形態の場合、第1ガイド溝19及び第2のガイド溝20の縁には、ローラーホイール37を含むOリング38あるいはフランジ17aが収められるレール状の段部19a,20aが形成されている。したがって、各軸17,18は、ガイド溝19,20を貫通した状態でOリング38あるいはフランジ17aが段部19a,20aに引っ掛かることで上下のスライダパーツ15,16を互いに摺動可能に連結し、肘当て受部12と肘当て13との間に適宜摩擦を発生させて肘当て13にある程度の力がかかったときにのみ移動し得るように締結している。尚、固定軸18の頭部のローラーホイール37を含むOリング38は滑らかな動きを可能としているが、これに代えてフランジ構造としても良い。
以上のように構成される椅子の可動肘のスライド構造は、例えば次のようにして組み立てられる。
まず、昇降フレーム台座部22aに下スライダパーツ(摺動部材36、ガイド部材35)15をねじ止めにより固定する。本実施形態の場合、摺動部材36とガイド部材35とから成る下スライダパーツ15は、予め組み合わせた状態で肘当て受部12の台座部22aの内側の段部22bで構成される内部空間(凹所)に載置してから、例えばねじ止めによって固定される。
次いで、上スライダパーツ16の孔44から可動軸17のねじ部を挿入してボス部38の六角穴31に収められたナット34にねじ込み、上スライダパーツ16に可動軸17をねじ止めする。上スライダパーツ16から突出する可動軸17の下端のフランジ17aを下スライダパーツ15のガイド溝20の後端(つまり、固定軸18側の端部)の貫入孔39を通してガイド溝20を貫通させる位置、即ちガイド部材35の下にまで通してから、前方にスライドさせる。これによって、可動軸17の下端のフランジ17aの部分がガイド溝20の下でガイド溝20の縁・段部20aに引っ掛けられて軸方向へは係合することとなる。可動軸17のフランジ17aがガイド溝20の幅より広いので抜けない。
その後、上スライダパーツ16を、ガイド溝19と(昇降フレーム台座部22aの後端の)タッピンねじ用ボス22cを合わせる位置に置く。そして、ガイド溝19の上にホイール(Oリング38は周囲についている)37を置いてから、固定軸18を上から通してホイール37、ガイド溝19を貫通させてタッピンねじ用ボス22cにねじ止めする。最後に、インナーシェル27を含むパッド25を上スライダパーツ16の上から被せ、孔43にてねじ止めする。
以上のようにして、下スライダパーツ15と上スライダパーツ16とを組み合わせた後は、肘当て13が前端位置から後端位置までスライドしたとしても、可動軸17は貫入孔39まで移動することができないので、ガイド溝20から抜けることがない。即ち、また、上方から各種パーツを載せ置く方法により肘掛を造ることができるので、組み立てが簡易になる。
以上のように構成された可動肘によれば、肘当て受部12の上面即ち下スライダパーツ15の上を滑らせるように肘当て13を前後方向にスライドさせることで、肘当て13の上面角度θが同時に変化させられる。つまり、本実施形態の可動肘は、常に、肘当て13の移動と同時に傾きの方向が変化するものであり、肘当て13を前後方向にスライドさせるという1動作で、肘当て13の位置の変更と上面角度θの変更とが同時に実現される。そして、この変化量は、例えば図2の実施形態の場合、一方のストローク端に達した時に最小化し、他方のストロークエンドに達した時には最大化する。即ち、前端位置まで肘当て13が押し出されると(例えば、図2(A)の状態)、肘当て13は肘当て受部12の球面(即ち、下スライダパーツ15)の曲率中心を通過する鉛直線Vと肘当て13の上面24とが交わる極16を境として、前方と後方で等分に肘当て13が配置され、平面に近似した極めて緩やかな球面が前後に均等に展開された状態となって全体的にはほぼ水平といえる姿勢に保たれる。他方、肘当て13が後端位置まで引き込まれると(図2(B)の状態)、肘当て13は肘当て受部12の球面の曲率中心を通過する鉛直線Vと肘当て13の上面24とが交わる極16を境として、肘当て13の大部分が極16から離れる方向後方に配置されるため、肘当て13の上面24の後傾度合いが増加されて大きく後傾する姿勢(俯角を採る姿勢)に保たれる。即ち、肘当て13は、下スライダパーツ15の球面の上を滑ってゆく過程で傾き、位置移動しながら上面角度を後傾させている。
したがって、肘当て13が前端位置まで押し出された図2(A)の状態では、例えば肘支柱11の中央部を境に前後方向に同じ傾きを以て緩やかに湾曲した面を形成した肘当て13の上面24で、作業姿勢にある着座者の前腕が全面的に支えられて、肩にかかる腕の重さが軽減される。依って、手と手首を僅かに浮かせた状態で前腕部の大部分をほぼ水平に保って支持されることで、着座者の前腕をキーボード操作やマウス操作などの作業に適した姿勢に保たれる。他方、着座者が背凭れに凭れて背凭れが後傾したときにも、肘当て13が後端位置まで引き込まれると(図2(B)の状態)、肘当て13の位置が後方へスライドすると同時に後傾度合いを増して(肘当て13の上面の大部分が後傾し)リクライニング姿勢に移行する着座者に追従するので、肘当て13が着座者の前腕から離れることなく支持し続けるので、安楽な姿勢が採れる。
このように、肘当て13が意図的に移動させられることによって、あるいは腕の動きに追従することによって、球面上を移動することで、肘当ての上面角度θが次第に変化するので、着座者にとって作業時と安息時とを問わず、楽な姿勢を保ち続けることができる。
なお、上述の椅子のオプション部材の形態は好適な一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では前後方向にスライドする肘当ての例を挙げて本発明を主に説明したが、これに特に限られるものではなく、椅子の他のオプション部材例えばメモ台などにも適用できることは言うまでもない。
オプション部材が椅子のメモ台の場合においても肘掛けの場合と同様に、前後方向のみならず左右方向にも斜め方向にもスライド方向を設定することは可能である。この場合にも、各々のスライド方向においてメモ台のスライドで位置と姿勢即ちメモ台上面(使用面)の角度とを同時に変化させることができる。例えば、図1に示すように、肘掛けの支持構造の一部例えば上スライダパーツ16の上を覆うパッド25に代えて、メモ台10を組み込んだメモ台部材を搭載すれば、メモ台を前後方向へスライドさせると同時に、メモ台の使用面たるメモ台上面はメモ台が前方にスライドするに従い前傾し若しくは後方にスライドするに従い後傾し、あるいはその逆に前傾若しくは後傾状態から水平に起こさせることができる。
また、椅子の座の左側方に支持部材を取付て球面滑りを構成する摺動面を有する部分を椅子の左右方向に配置してメモ台を左右方向へスライド可能にすると、可動部材たるメモ台の使用面たるメモ台上面はメモ台が右方にスライドするに従い右傾し(即ち、左右方向の内側に移動させたときにメモ台面が内に傾き)若しくは左方にスライドするに従い左傾し(即ち、左右方向の外側に移動させたときにメモ台面が外に傾き)、あるいはその逆に左傾若しくは右傾状態から水平に起こさせることができるものである。
勿論、椅子の座や背などの椅子の一部に取り付けられてメモ台をスライド可能に支持する支持部材の、上述の肘掛けの実施形態における肘当て受部に相当する部分、即ち球面滑りを構成する摺動面を有する部分を斜めに配置することによって、斜め方向(前後方向と左右方向の間の方向)にスライドさせることも可能である。このメモ台の実施形態の場合にも、メモ台上面は必ずしもスライドに伴って水平状態から傾斜状態あるいはその逆に姿勢を変化させることに限定されず、上面角度θの大小即ち傾斜の緩急の範囲内で変化させるようにしても良い。
また、メモ台の姿勢の変化は、スライドの両端でのものに限られず、メモ台がスライド範囲の中央位置にあるときには上面角度θが水平あるいは小さい状態に保たれ、メモ台が左右あるいは前後若しくは斜め前後のどちらかにスライドするのに従いメモ台が傾斜するようにしても良い。つまり、メモ台のスライド方向に拘わらず、メモ台をスライドさせると、メモ台の移動と同時にメモ台上面の傾きの大きさが変化するものである。勿論、曲面の場合においても、前後方向(曲面の周方向)のみならず、斜め方向にも設定できる。
また、上述の実施形態では、肘当て受部12の下スライダパーツ15と肘当て13の上スライダパーツ16とを第1及び第2のガイド溝19,20と一対の軸17,18とで摺動可能に機械的に連結支持したガイド手段と連結手段とを兼用するものであるが、これに特に限られるものではなく、連結手段とガイド手段とを分離して独立させた構成としても良いし、場合によっては、非機械的連結手段例えばサマリウムコバルト磁石やネオジム磁石などの高保持力の磁石の吸着力で2部材を相互に移動可能に連結させるようにしても良い。この場合には、ガイド溝が必要なく、磁石で吸着される位置で固定される。
また、上述の実施形態では概ね水平面に沿って往復動する可動部材の例を挙げて主に説明したが、これに特に限られるものではなく、場合によっては任意の角度例えば斜面あるいは鉛直面に沿って可動部材がスライドする椅子のオプション部材に適用することも可能である。
また、上述の実施形態では、摺動部を構成する下スライダパーツ15と上スライダパーツ16との摺動面は球面とし、任意の方向即ち前後並びに左右方向にスライド可能としているが、これに特に限られるものでは無く、前後方向のアーチ、あるいは左右方向のアーチなどの所謂曲面であっても良い。このことは、椅子の他のオプション部材例えばメモ台などにも適用されることは言うまでもない。
(ばね支持構造)
また、図10~図16にばね支持構造の一実施形態を示す。このばね支持構造は、チルト機構に適用されたものであり、シンクロフレーム3と背フレーム5との間に組み込まれ、背フレーム5を前方へ向けて常時付勢するようにばね力が付与されている。背フレーム5は、シンクロフレーム3の後端部の背フレーム取付座54に揺動自在に連結軸65で連結されており、一定範囲内で揺動自在に支持されている。
ここで、シンクロフレーム3は、本実施形態の場合、図11及び図12に示すように、構造物としての機械的剛性特に捻り剛性などを高めると共にシンクロガススプリング8を内側に収容するため、例えば弓形の左右一対のプレート50の後端を曲げ板材53で連結する一方、前端側を揺動軸65と連結ピン64で連結すると共に中程を回動軸63で連結することにより、底の無い箱形の枠状に形成されている。そして、例えばT形に展開された後端部の立ち上がり部で左右一対の背フレーム取付座54が形成されている。また、この背フレーム取付座54の間には、背凭れ6の下端部のシンクロフレーム取付座130を取り付けるための背受け座51が曲げ板材53の一部で形成されている。この背受け座51は、背アウターシェル90のシンクロフレーム取付座130と適合する角度及び形状の座面、例えば平坦面に形成され、シンクロフレーム取付座130に開けられた締結ボルトを通すための孔144と対応する位置・間隔でねじ孔61が設けられている。本実施形態の場合には、背受け座51の裏面側にナットが溶接付などによって固着されることによってねじ孔61が構成されている。
さらに、本実施形態のシンクロフレーム3には、背受け座51の前方に背受け座51と直交する面内に展開された平板部52が補強のために備えられている。この平板部52には、ロック機構付きシンクロガススプリング8の操作機構67と干渉しないように、シンクロガススプリング8の操作機構67が収容されるスペース59が設けられている。また、チルトばね機構9を装備するためのスペース60が空けられている。そして、シンクロガススプリング8が装着されるスペース59とチルトばね機構9の装着スペース60との間には残される帯状の橋梁部56によって左右のプレート50が連結されている。橋梁部56は、チルトばね機構9の一方のばねマウント即ち第1のばねマウント45を支持する一方のばねマウント受部(以下、第1のばねマウント受部46と呼ぶ)として利用されるものであり、ばね力が作用する方向と直交する端面57と、ばね力の作用方向に沿う2つの平面57aとを有する平板部である。尚、図中の符号66はシンクロガススプリング8の操作機構67を取り付ける軸である。
他方、背フレーム5には、下端アーム部68の中央部分にばねマウント受部49が設けられている。このばねマウント受部49は、例えば、半円状の凸部若しくは凸部であり、凹部132の突き当たりとなる壁面133に形成されている。また、背フレーム5の下端アーム部68には、前方に向けて突出しかつシンクロフレーム3の下を横切って外側にはみ出る爪部69が備えられている。この爪部69は、背フレーム5が前傾するときにシンクロフレーム3の背フレーム取付座54の下端の爪部55に引っ掛かり、後傾するときにはシンクロフレーム3の背フレーム取付座54の近傍のフレーム50の下縁に引っ掛かって後傾位置を規制する。つまり、背フレーム5はチルト動作の範囲が背フレーム取付座54の下端の爪部55とシンクロフレーム3との係合により規制される。
チルトばね機構9は、本実施形態の場合、1本の圧縮コイルばね47と、その両端に配置される一対のばねマウント45,46とで構成され、両端のばねマウント45,46を介在させてシンクロフレーム3の後部と背フレーム5の下端アーム部68との間に装着されている。
一方のばねマウント(以下、第1のばねマウント45と呼ぶ)は、例えば図15及び図16に示すように、シンクロフレーム3の板材の一部例えば橋梁部56に嵌合するスリット溝73を有し、反対側にはばね47を嵌め込む軸部70を有する。この第1のばねマウント45は、軸部45の周囲にはばね47を受け支える座71と円弧状の周壁部76を有し、ばね47を受け支える。本実施形態の場合、部品の軽量化と肉厚を均一にしてひけの発生を防ぐため、軸部70は中をくりぬいた中空軸とされている。この第1のばねマウント45は、シンクロフレーム3の橋梁部56を利用して固定するものであり、即ち橋梁部56を第1のばねマウント受部48として利用するものであり、橋梁部56の肉厚よりも僅かに広いスリット溝73を有する。このスリット溝73を橋梁部56に嵌合させることで、ばねにかかる力を橋梁部56の板厚と直交する方向に作用させるため、二次断面係数が大きくなる。尚、本実施形態では、橋梁部56を利用して固定するようにしているが、これに特に限られるものではなく、ばね力が作用する方向と直交する端面57と、作用方向に沿う2つの平面57aとを有する平板部を有していれば、上述の橋梁部56に限られず、シンクロフレーム3の他の箇所あるいはメインフレーム2であっても、その平板部をマウント受部として利用することが可能である。
本実施形態の場合、第1のばねマウント45のスリット溝73は、平板材・橋梁部56を挟み込む一対のフランジ72と、該フランジ72の間で橋梁部56の端面57と当接してばねにかかる力を受け止める受圧面74とを有し、かつ一対のフランジ72の間の間隔が橋梁部56の板厚よりも僅かに広くがたつきが生ずる程度であることが好ましい。これによって、第1と第2のばねマウント45,46間に摺動軸が存在しなくとも、ばね47の円弧運動をある程度吸収しつつばね47の座屈を防ぐ構造とすることができる。また、第1のばねマウント45は、図示するように、フランジ72の部分がコ形に形成されて、受圧面74と該受圧面74と直交する2つの側面75とを含む3面を有していることが好ましい。そして、橋梁部56(即ち第1のばねマウント受部48)も同様に、第1のばねマウント45の受圧面74と対向する端面57とその両端でそれぞれ直交する2つの側面58との合計3面を有していることが好ましい。これによって、第1のばねマウント45と橋梁部56とは、ばね力が付与される方向と、それに直交する2つの辺との3辺に同時に当接すると共に3面で挟持されるため、上下方向のみならず左右方向にも、ある程度の遊びをもってその動きを規制することができるため、第1と第2のばねマウント45,46間に摺動軸が存在しなくとも、より一層、ばね47の円弧運動をある程度吸収しつつばねの座屈を防ぐ構造とすることができる。尚、フランジ72と座71との間には補強のためのリブが設けられている。
他方のばねマウント(以下、第2のばねマウント46と呼ぶ)は、例えば図15及び図16に示すように、背フレーム5の下端アーム部68に設けられているばねマウント受部(以下、第2のばねマウント受部49と呼ぶ)に嵌合する半円状の凹部77を後面側に備えると共に、前面側にばねを嵌め込む軸部78を有する。本実施形態の場合、第2のばねマウント46は、軸部78と凹部77とこれらの境界でばねを受け支える矩形状の座部79とを有している。第2のばねマウント受部49は、第2のばねマウント46の凹部77と嵌合する凸部を少なくとも有していれば足りるが、本実施形態の場合には、図13に示すように、背フレーム5の下端アーム部68の凹部132の突き当たりとなる壁面133に、半円状の凸部49が左右に振り分けて配置されるように形成されており、凹部132の側壁面で第2のばねマウント46の左右方向の位置ずれが規制されるように設けられている。したがって、背フレーム5の下端アーム部68の第2のばねマウント受部49の凸部と第2のばねマウント46の後側の凹部77を嵌合させることで、左右方向への移動は規制されると共に上下方向に揺動可能に支持される。
また、第2のばねマウント46及び第2のばねマウント受部49は、上述の凹凸の組み合わせに限定されず、例えば凹凸の組み合わせを逆にしても良いし、半球状の凸部と凹部の組み合わせとしても良いし、場合によっては図示していないが軸部としても良い。さらには、場合によっては、第2のばねマウントの凹部に代えてフックとしても良い。いずれにしても、第1のばねマウント45と第1のばねマウント受部48との組み合わせを少なくとも一方に有していれば、ばね47の円弧運動をある程度抑制するため、双方のばねマウント45,46の間に摺動軸・ピンが存在しなくともばね47の座屈が抑えられる。
上述の実施形態にかかるばね支持構造によれば、第1のばねマウント45の一対のフランジ72の間のスリット溝73に平板部例えば橋梁部56を緩く挟むように保持することで第1のばねマウント45そのものの実質的な回転を防ぐことができるので、ばね47の座屈を防ぐ摺動軸・ピンも省ける。つまり、ばね47を支える部品を両端のばねマウント45,46だけの2点とすることができるので部品点数を削減できる。しかも、シンクロフレーム3の平板部例えば橋梁部56の板厚方向と直交する方向に力がかかるように(幅方向を縦に)使うので断面係数が大きくなり、強度的にも強くなる。
なお、上述のばね支持構造の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態は、ばね支持構造をチルト機構に適用した例を挙げて主に説明したが、これに特に限定されるものではなく、1つの軸で相互に揺動可能に連結された2部材の間に掛け渡されて2部材の間にばね力を付与するばね機構であれば、その他のばね支持構造例えば反力機構のばね支持構造などにも適用できることは言うまでもない。この場合においても、メインフレーム2とシンクロフレーム3との間に配置されるばね機構の一方のばねマウントが平板部と嵌合するブロックであれば、ある程度の回転を許容しながらもばねの座屈を押さえることができるので、ばねマウントの間の摺動軸・ピンを省くことができる。しかも、一方のばねマウント受部を平板材の一部を利用して構成することができるので、ばねマウントを受け止める連結軸などを省略することができる。これによるコストダウンも可能となる。さらに、他方のばねマウントが球面あるいは曲面の凸部又は凹部と嵌合する凹部または凸部を有するブロックとすることにより、一層の構造簡略化に効果がある。
また、上述の実施形態では、第1のばねマウント45は、第1のばねマウント受部48の3面57,58を同時に拘束する形態とされているが、これに特にかぎられるものではなく、場合によってはばねの圧縮力が付与される方向に対向する正面とだけ当接する構造としても良い。この場合、他の手段で第1のばねマウント45が左右方向に位置ずれを引き起こさないようにすることが好ましい。
さらに、上述の実施形態では、第1のばねマウント受部48として、シンクロフレーム3の平板部53の一部である橋梁部56を利用しているが、これに特に限られず、例えばパイプのような円筒部材の一部を利用することも可能である。パイプに2つの平面、より好ましくは互いに平行な2平面を形成して、第1のばねマウントの一対のフランジ72の間のスリット溝73で挟み込むようにしても良い。換言すれば、ばねマウントとばねマウント受部のうち少なくとも一方は、ばね力が作用する方向と直交する面と、ばね力の作用方向に沿う2つの平面とを有する第1のマウント受部と、第1のばねマウント受部の平面を挟み込む一対のフランジと、該フランジの間で第1のマウント受部と当接してばねにかかる力を受け止める受圧面とを有し、かつ一対のフランジの間の間隔が平面間の間隔よりも広いスリットを備える第1のばねマウントとで構成するようにしても良い。
(背凭れチルト機構)
図17~図21に、背凭れチルト機構の実施形態の一例を示す。この実施形態にかかる背凭れチルト機構は、シンクロフレーム3と該シンクロフレーム3に揺動自在に取り付けられた背フレーム5とで背凭れ6の下端部と上部とを支持するものである。具体的には、例えば、背凭れ6の下端部のシンクロフレーム取付座130をシンクロフレーム3の背受け座51に固定する一方、背凭れの背面上部に設けたポケット部135を背フレーム5の前面の係止部材134に引っ掛けるようにして支持されている。このため、背凭れ6は、背フレーム5の傾倒時に背凭れ6の上方部位のポケット部135と背フレーム5の係止部材134との間に係合部材134の一部がポケット部135の一部に当接するまでの間で滑りを起こして相対的な移動を可能とするため、チルトが許容される。尚、本実施形態では、シンクロフレーム3と背フレーム5とで所謂背支桿が構成され、シンクロフレーム3が下部背支桿に、背フレーム5が上部背支桿に相当する。
背フレーム5は、例えばガラス繊維入りポリプロピレンなどの樹脂成形品から成り、その下部がシンクロフレーム3の後端部の背フレーム取付座54の孔62を貫通する連結軸65で揺動自在に連結されると共に、シンクロフレーム3との間に介在されるチルト機構のばね47によって前傾させる方向即ち着座者に対して背凭れ6を押し戻す方向に付勢されている。
背フレーム5の前面(即ち背アウターシェル90と対向する面)の上部には、前方へ突出する軸部134aと左右方向に張り出す張り出し部134bとを有するT字形の爪(以下、T形係止部材134と呼ぶ)が備えられている。このT形係止部材134は、背アウターシェル90の背面のポケット部135に嵌合されるものであり、嵌合された後は前後方向には離脱し得ないように機能する。このT形係止部材134は、ポケット部135に対して上下方向(抜き差し方向)には引っ掛からず、前後方向(抜き差し方向と直交する方向)にはポケット部135の底部137あるいは周縁部136の張り出し部に係合して、背凭れ6が背フレーム5から離脱しないように設けられている。尚、T形係止部材134は、中央の軸部134aに意図的に凹部134cを形成する、いわゆる肉抜き(肉盗みともいう)を施して肉厚が一定に形成されるようにしている。つまり、射出成形時に背フレーム5の背面側にひけが発生しないように配慮されている。しかも、特許文献1記載の背凭れチルト機構は、部品点数が多いため、厚みのある構成となってしまい、すっきりとした外観が得がたいものであるが、本実施形態によれば部品点数も少なく薄形とできるので、すっきりした外観が得られる。
他方、背凭れ6は、特定の構造並びに形状に限定されるものではないが、本実施形態の場合には、例えば背フレーム5に支持される合成樹脂製の背アウターシェル90と、この背アウターシェル90に取り付けられる合成樹脂製の背インナーシェル80とで構成される。背インナーシェル80は、例えば前面側にウレタンフォームなどのクッション材を配置してから張地で覆われ、裏面側に回された張地の縁をステープル止めなどで固定されることで纏まった1つの部品として構成される。背アウターシェル90は、ある程度の可撓性と背を支える構造物としての剛性を備える樹脂材で構成されており、背インナーシェル80を取り付けることで、背凭れ面・身体支持面を構成するように設けられている。この背インナーシェル80と背アウターシェル90とは爪とクリップで着脱可能に接合することにより、一体化されている。
背アウターシェル90には、背フレーム5の前側に突出するT形係止部材134を下から差し込むように嵌合させるための下向きのポケット部135がスライド型を使った射出成形によって一体的に成形されている。このポケット部135は、例えば、T形係止部材134の背面側を支える逆U形の周縁部136と、周縁部136よりも内側に占位してT形係止部材134の前面側を支えるI形の底部137とで構成され、逆U形の周縁部136とI形の底部137との間でT形係止部材134を嵌合する空間が形成されている。本実施形態の背アウターシェル90の場合、ポケット部135を射出成形するためのスライド型を抜くための空間が必要であることから、底部137は抜きで囲われたI形を成している。つまり、ポケット部135は、背アウターシェルの射出成形時に、逆U形の周縁部136とそれらの間のI形の底部137との間に前後方向に段差を設けることによって、T形係止部材134を嵌入させるための空間を形成するようにしている。尚、ポケット部135の底部には、T形係止部材134の動きを滑らかにするため、僅かに周辺の面よりも高くなったレール状の突部138が形成されて接触面積が少なくされている。
ポケット部135の入り口付近には、T形係止部材134の抜け止めのための引っ掛かりとなる係止爪139が形成されている。この係止爪139は、前後方向に撓むものであり、背面側に突出する返し部分(逆鉤)140を有し、ポケット部135のT形係止部材134を収容するための内部空間の入り口を狭める。そして、T形係止部材134を挿入する際には、テーパー面141が当接することで前方の空所へ押し込まれることにより引っ掛からないが、引き抜く際には上側の返し面(返し部分)140にT形係止部材134が突き当たることで抜け止めとして機能する。
本実施形態における背凭れ6は、例えば側面視において前方に向けて凸となる形状(すなわち、くの字状)に形成されると共に、平面視において後方に向けて凸となるように湾曲した形状をなしている。そして、背アウターシェル90の下端部のシンクロフレーム取付座130がシンクロフレーム3にねじ131で止め付けられると共に、上部のポケット部135が背フレーム5のT形係止部材134に引っ掛けられることで、両接続部の間の部位が側面視において背凭れと離間するように支持される。また、本実施形態では、背アウターシェル90の下部のシンクロフレーム取付座130はシンクロフレーム3の後端の背受け座51のねじ孔61にビス止めされる一方、上部のポケット部135が背フレーム5のT形係止部材134に引っ掛けられているだけなので、背フレーム5がシンクロフレーム3に対して傾く(チルトする)ことで、背フレーム5のT形係止部材134と背凭れのポケット部135との間でずれ・滑りが生じることとなる。そこで、ポケット部135の奥、即ち背フレーム5のT形係止部材134の上端面が突き当たる部分には、樹脂製スプリング142が備えられ、突き当たり時の衝撃力・衝突音を緩和するように設けられている。この樹脂製スプリング142は、例えば図21に示すように、輪っかを押しつぶしたような形状を成し、上面側に返しを有する取付用爪143を備えている。この樹脂製スプリング142は、図22に示すように、ポケット部135の奥つまり背フレームのチルト動作時に相対的に上昇する係合部材134の一部が当接しようとするポケット部135の一部(天井となる上辺)の凹部145に取付用爪143を嵌合させることで背フレーム5に固定されている。樹脂製スプリング142は、凹部145に取付用爪143の返しが引っ掛かることで、故意に取り外そうとしない限り脱落することはないように設けられている。
また、ポケット部135の内面とT形係止部材134との間には、これらが擦れることによってポケット部135の内部に粉塵が発生しないようにグリースが塗布されることがある。この場合においても、樹脂製スプリング142は取付用爪143の返し部分で背アウターシェル90に引っ掛かっているので、グリース塗布の影響で脱落することはない。
背アウターシェル90はシンクロフレーム取付座130をシンクロフレーム3にねじ止めし、上部のポケット部135を背フレーム5のT形係止部材134に差し込むように嵌め込んで引っ掛けることで固定している。したがって、背凭れ6を前側に引っ張って引き抜こうとすると(あるいは無意識に取り外そうとする力がかかる場合)、T形係止部材134に引っ掛かる方向となるため、背凭れ6は背フレーム5から引き離すことはできない。他方、背凭れ6を手順にしたがって真上に引っ張って引き抜くと(意図的に取り外そうとする力をかける場合)、背フレーム5のT形係止部材134に背アウターシェル90が引っ掛からないため、背凭れ6は背フレーム5から引き離すことができる。
なお、上述の背凭れチルト機構の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態の背凭れチルト機構は、背フレーム5の前面にT形係止部材134、背凭れ6の背面側にポケット部135を形成しているが、場合によっては背フレーム5の前面にポケット部135、背凭れ6の背面側にT形係止部材134を形成するようにしても良い。また、背凭れは、クッションを張地でくるんだ構造の例を挙げて説明したが、これに特に限定されるものではなく、背枠にメッシュ状の張地を張り詰めたり、樹脂により網目状に形成された部位に背凭れ面を有したいわゆる樹脂メッシュタイプのものであってもよい。さらに、背凭れの支持体は、種々の形状や構造のものが考えられ、本実施形態に示されるようなシェル状のものに限定されるものではない。例えば、支持体は、フレームを主体に構成されたものであってもよい。
(シェルの係合構造)
背凭れ6は、樹脂によって形成されるアウターシェル90と、樹脂によって形成されてアウターシェル90の前側に配設されるインナーシェル80とを有する(図24)。なお、図示していないが、インナーシェル80の前面には背クッションが取り付けられて配設されると共に表皮材で覆われる。
アウターシェル90は、着座者の背を支持し得る程度の大きさを有した樹脂性の部材であり、図に示す例では、側面視においては前方に向けて凸となる形状(即ち、く字形)且つ平面視においては後方に向けて凸となるように湾曲した形状に形成される。
インナーシェル80は、樹脂製の部材であり、アウターシェル90と近似した凹凸/湾曲形状に形成される。
アウターシェル90は、当該アウターシェル90へとインナーシェル80を取り付けるための構造として、上端寄りの部位に複数の係止片92を備え、また、下端寄りの部位に複数の係合凹部93が形成される。
インナーシェル80は、当該インナーシェル80をアウターシェル90へと取り付けるための構造として、アウターシェル90の係止片92が差し入れられて係合する係止孔83が、上端寄りの部位の前記係止片92それぞれと対向する位置に形成され、また、アウターシェル90の係合凹部93へと差し込まれて係合する係合凸部85を、下端寄りの部位の前記係合凹部93それぞれと対向する位置に備える。
アウターシェル90の係止片92は、鉤形の形状を成し、アウターシェル90の前面から前方へと突出して形成される。
係止片92は、アウターシェル90の前面から前向きに張り出す接合部92aと、当該接合部92aの前端部から上向きに延出する係止爪部92bとを有する。
図に示す例では、アウターシェル90の上端寄りの部位に、左右方向において相互に離間して並ぶ四つの係止片92が設けられる。
左右方向において相互に離間して並ぶ四つの係止片92のうち、左右両端の二つはインナーシェル80側の係止孔83へと差し入れられて係合した後の抜け止めの機能が特に強化された屈曲係止片92X,92Xとして形成されて設けられ、また、これら屈曲係止片92X,92X同士の間に挟まれる二つは湾曲係止片92Y,92Yとして形成されて設けられる。
屈曲係止片92Xは、接合部92aの下面と係止爪部92bの前面との連接部が角部92cを成すように形成され、すなわち、接合部92aの下面の先端部が、湾曲する形状ではなく、屈曲する形状に形成される(図25)。
インナーシェル80の上側は、当該インナーシェル80の上端寄りの部分がアウターシェル90の係止片92の上方から下ろされながら当該係止片92を係止孔83へと進入させてからアウターシェル90の側へと押され、係止片92の係止爪部92bをインナーシェル80の前面側に露出させると共に係止片92の接合部92aを係止孔83内に位置させた状態で、アウターシェル90へと取り付けられる。
係止片92が係止孔83へと差し入れられて係止爪部92bがインナーシェル80の前面側に露出している状態で、係止爪部92bの後面により、インナーシェル80の係止孔83の上縁を形作る(別言すると、係止孔83の上方の)係止部87が押さえ付けられるように保持される。
このとき、屈曲係止片92Xは接合部92aの下面と係止爪部92bの前面との連接部が角部92cを成して接合部92aの下面の先端部が屈曲する形状であるようにすることによって接合部92aの下面の前方への張り出し寸法が十分に確保されると共に係止孔83の下端縁83aに対して前後方向で係り合うようになるので、インナーシェル80の上側部分(特に、係止孔83の周辺部分)が前方へと引っ張られて係止孔83の下端縁83aが前方へと多少ずれても、当該係止孔83の下端縁83aが屈曲係止片92Xの接合部92a前端部の角部92cを越え難い。これにより、係止孔83が屈曲係止片92Xから外れ難くなり(言い換えると、屈曲係止片92Xが係止孔83から抜け難くなり)、延いてはインナーシェル80の上側部分がアウターシェル90から外れ難くなる。
特に、アウターシェル90の上縁よりもインナーシェル80の上縁の方が高くなるようにインナーシェル80がデザインされて形成されることも考えられ、そのような場合にはインナーシェル80の上端部分に手が掛けられ易くインナーシェル80の上端部分のみが掴まれて(即ち、アウターシェル90の上縁は掴まれることなく)前方へと引っ張られる(或いは、前方へと押される)ことも想定されるのに対し、係止孔83から外れ難い/抜け難いという効果を発揮し得る屈曲係止片92Xの構造は有用である。
なお、インナーシェル80の係止孔83は、アウターシェル90の屈曲係止片92Xから、簡単には外れないものの、相応の力で引っ張られる場合には外れる。
屈曲係止片92Xが差し入れられて係合している係止孔83の周辺部分が引っ張られると、屈曲係止片92Xの接合部92aの下面に対して係止孔83の下端縁83aが摺動し、相応の力で更に引っ張られると下端縁83aが角部92cを乗り越え、係止孔83が屈曲係止片92Xから外れる。
一方、湾曲係止片92Yは、接合部92aの下面と係止爪部92bの前面との連接部が湾曲部92dを成すように形成され、すなわち、接合部92aの下面の先端部が、屈曲する形状ではなく、湾曲する形状に形成される(図26)。なお、湾曲係止片92Yは、接合部92aの下面と係止爪部92bの前面との連接部が斜面を成すように形成され、すなわち、接合部92aの下面の先端部が斜面状に形成されるようにしても良い。
湾曲係止片92Yでは、接合部92aの下面と係止爪部92bの前面との連接部が湾曲部92dを成して接合部92aの下面の先端部が湾曲する形状であるようにすることにより、インナーシェル80の上側部分(特に、係止孔83の周辺部分)が前方へと引っ張られて係止孔83の下端縁83aが前方へとずれた際に、当該係止孔83の下端縁83aが湾曲係止片92Yの接合部92a前端部の湾曲部92dを越え易い。これにより、係止孔83が湾曲係止片92Yから外れ易くなり(言い換えると、湾曲係止片92Yが係止孔83から抜け易くなり)、延いてはインナーシェル80の上側部分がアウターシェル90から外れ易くなる。
図に示す例では係止片92全体としては四つ設けられて左右両端の二つが屈曲係止片92Xであると共に残りの二つが湾曲係止片92Yであるようにしているが、係止片92全体としての個数や屈曲係止片92Xと湾曲係止片92Yとのそれぞれの個数や配置の仕方は、図に示す例に限定されるものではなく、例えばインナーシェル80とアウターシェル90との係合力が確保され得ることが考慮されるなどした上で、適当な個数や配置の仕方が適宜設定される。
屈曲係止片92Xと湾曲係止片92Yとが適当に配設されることにより、インナーシェル80とアウターシェル90との結合力が適切に確保された上で、部品の交換やメンテナンスなどのためにアウターシェル90からインナーシェル80が取り外される場合に、余計な手間が掛かることを回避して作業の省力化・効率化が図られ、また、取り外しの際に部品が破損してしまって代替品への交換や修理などが必要になってしまうという問題の回避が図られる。すなわち、着脱自在であり尚且つ簡単には外れ難い係わり合い/連結が実現される。
そして、本実施形態の椅子の部品の係合構造は、アウターシェル90に係合凹部93が設けられ、インナーシェル80に係合凹部93と着脱可能に弾性変形して係合する係合凸部85が設けられ、インナーシェル80に係合凸部85と係合凹部93とが係合している状態における係合凹部93に対する係合凸部85の転回を低減する若しくは抑制する転回抑制部86が設けられるようにしている。
インナーシェル80の係合凸部85は、インナーシェル80と一体のものとして(したがって、樹脂によって形成されるものとして)、インナーシェル80の後面から後方へと突出して形成される。
係合凸部85は、インナーシェル80の後面から張り出す一対の接合支持部85a,85aと、これら一対の接合支持部85a,85aそれぞれの後端部と連接する一対の引掛け部85b,85bと、これら一対の引掛け部85b,85bのそれぞれの後端部と連接する一対の傾斜部85c,85cとを有する(図27)。
一対の接合支持部85a,85aは、インナーシェル80の後面から後ろ向きに相互に離間しつつ対向して張り出す態様で形成される。
一対の引掛け部85b,85bは、それぞれ、一対の接合支持部85a,85a各々の後端部から、他方の接合支持部85aから離れるように傾斜して後ろ向きに延出する態様で形成される。
一対の傾斜部85c,85cは、それぞれ、一対の引掛け部85b,85b各々の後端部から、他方の引掛け部85bへと近づくように傾斜して後ろ向きに延出し、これら一対の傾斜部85c,85cの後端部同士が接合する態様で形成される。
図に示す例の係合凸部85は、上述の構成により、断面視において、家形、或いは矢印形を成すものとして形成される。
図に示す例では、インナーシェル80の下端寄りの部位に、左右方向において相互に離間して並ぶ三つの係合凸部85が設けられる。なお、係合凸部85の個数は、図に示す例に限定されるものではなく、例えばインナーシェル80とアウターシェル90との係合力が確保され得ることが考慮されるなどした上で、適当な個数に適宜設定される。
図に示す例では、左右方向において相互に離間して並ぶ三つの係合凸部85に関し、左右両端の係合凸部85,85と真ん中の係合凸部85とでは形成方向が異なる。具体的には、一対の接合支持部85a,85a、引掛け部85b,85b、及び傾斜部85c,85cのそれぞれが対向する方向であって係合凸部85として弾性変形する方向が、左右両端の係合凸部85,85は上下方向であるのに対し、真ん中の係合凸部85は左右方向である。
係合凸部85の形成方向は、インナーシェル80へと与えられる外力に対して複数の係合凸部85が全体として強固に対応し得るように調整されたり、インナーシェル80の部位によって与えられる外力の方向が想定されて考慮されて調整されたりするようにしても良い。なお、複数の係合凸部85の形成方向が全て同じでも良い。
アウターシェル90の係合凹部93は、アウターシェル90と一体のものとして(したがって、樹脂によって形成されるものとして)、アウターシェル90の前面側に形成される。
係合凹部93は、インナーシェル80の係合凸部85が差し込まれて引掛け部85bが引っ掛かって係合するように構成される。
係合凹部93は、アウターシェル90の前面から張り出す一対の張出部93a,93aと、これら一対の張出部93a,93aそれぞれの前端部に設けられる一対の爪部93b,93bとを有する(図27)。
一対の張出部93a,93aは、アウターシェル90の前面から前向きに相互に離間しつつ対向して張り出す態様で形成される。
一対の爪部93b,93bは、それぞれ、一対の張出部93a,93a各々の前端部から、他方の張出部93aへと向けて屈曲する態様で形成される。
一対の爪部93b,93b同士は離間し、これら一対の爪部93b,93b同士の間は係合凹部93としての開口部となり、係合凹部93は前方への、すなわちインナーシェル80へと向けての開口を有するものとして形成される。
インナーシェル80の下側は、当該インナーシェル80の下端寄りの部分がアウターシェル90の係合凹部93の前方から押されながら当該係合凹部93へと係合凸部85を進入させ、係合凸部85の一対の傾斜部85c,85cを係合凹部93の一対の張出部93a,93a同士の間に位置させ且つ係合凸部85の一対の接合支持部85a,85aを係合凹部93の一対の爪部93b,93b同士の間に位置させると共に係合凸部85の一対の引掛け部85b,85bを係合凹部93の一対の爪部93b,93b各々の内方縁へとそれぞれ引っ掛けさせて係合させた状態で、アウターシェル90へと取り付けられる。
係合凸部85が係合凹部93へと進入する際には、係合凸部85の一対の傾斜部85c,85cを係合凹部93の開口部を形作る一対の爪部93b,93bそれぞれの内方縁に対して摺動させながら、相互に離間しつつ対向する一対の接合支持部85a,85a、引掛け部85b,85b、及び傾斜部85c,85cのそれぞれが対向する方向において係合凸部85として弾性変形することにより、傾斜部85cと共に爪部93bを乗り越えて引掛け部85bが一対の張出部93a,93a同士の間へと入り込む。
ここで、係合凸部85は、一対の接合支持部85a,85a、引掛け部85b,85b、及び傾斜部85c,85cのそれぞれが対向する方向(「弾性変形方向」と呼ぶ)と直交する方向に沿って引っ張られる場合には係合凹部93に対して強い係合力を発揮し得る(図28)のに対し、当該係合凸部85の周囲のインナーシェル80がまくられる/めくられるような外力が働いて係合凹部93に対して転回する場合には係合凹部93から外れ易く、特に、当該係合凸部85の周囲のインナーシェル80が弾性変形方向に沿ってまくられる/めくられる(図で示すと、図29の紙面に沿ってまくられる/めくられる)ような外力が働いて係合凹部93に対して転回する場合には係合凹部93から外れ易い。
すなわち、係合凸部85と係合凹部93との係わり合い/連結について、インナーシェル80の下端側の部分(特に、係合凸部85の周辺部分)が前後方向に沿って前向きに引っ張られる場合には、強い係合力を発揮して係合凸部85が係合凹部93から簡単には外れない。
一方で、インナーシェル80の下端側の部分(特に、左右両端の係合凸部85の周辺部分)が前後方向鉛直面に沿ってまくり上げられるように前向きから上向き若しくは下向きへと引っ張られる場合には、弾性変形方向が上下方向である左右両端の係合凸部85(図24)が係合凹部93から外れ易い。
また、インナーシェル80の下端側の部分(特に、真ん中の係合凸部85の周辺部分)が前後方向水平面に沿ってめくられるように前向きから左向き若しくは右向きへと引っ張られる場合には、弾性変形方向が左右方向である真ん中の係合凸部85(図24)が係合凹部93から外れ易い。
そこで、係合凸部85と係合凹部93とが係合している状態における係合凹部93に対する係合凸部85の転回を低減する若しくは抑制するため、インナーシェル80の後面の各係合凸部85の隣接/近傍位置に、転回抑制部86が形成される。
転回抑制部86は、係合凸部85と係合凹部93とが係合している状態における係合凹部93に対する係合凸部85の転回を低減したり抑制したりし得るものであれば、特定の態様に限定されるものではなく、例えば、アウターシェル90に対するインナーシェル80の変位の支障になったり、インナーシェル80のうちの特に係合凸部85及び当該係合凸部85の周辺部分の変形を抑止したりする態様が挙げられる。
転回抑制部86は、インナーシェル80の係合凸部85や当該係合凸部85の周辺部分が変位したり変形したりしようとする際に当該転回抑制部86がアウターシェル90の前面に当接することにより、インナーシェル80の係合凸部85やその周辺部分が変位したり変形したりすることを妨げることを企図して設けられるものであっても良い。
転回抑制部86は、あるいは、当該転回抑制部86が設けられることによってインナーシェル80の剛性が高められることにより、係合凸部85やその周辺部分のインナーシェル80が変形することを妨げることを企図して設けられるものであっても良い。
具体的には例えば、図に示す例のようにインナーシェル80の後面の係合凸部85の周辺位置にアウターシェル90の前面へと向けて突出する壁状の突部が設けられるようにしても良く、或いは、係合凸部85の周辺部分のインナーシェル80の厚みが厚くされたり、係合凸部85の周辺位置に補強部材が取り付けられたりするようにしても良い。
インナーシェル80に対してどのような方向から外力が与えられたとしても係合凸部85の転回を効果的に抑制するため、転回抑制部86が壁状の突部として設けられる場合には当該転回抑制部86としての壁状の突部は係合凸部85を取り囲む四角形状(具体的には、背面視において四角形状)の凸部として形成されて設けられることが好ましく、また、インナーシェル80が厚くされて転回抑制部86とされる場合には係合凸部85が形成されている位置を含む四角形状(具体的には、背面視/正面視において四角形状)の範囲が厚くされることが好ましく、また、転回抑制部86として補強部材が取り付けられる場合には当該転回抑制部86としての補強部材は係合凸部85を取り囲む四角形状(具体的には、背面視において四角形状)に取り付けられることが好ましい。
ただし、転回抑制部86としての壁状の突部は、全ての辺が途切れること無く完全な四角形状の凸部として形成されなくても良く、すなわち、部分的に途切れる凸部として形成されても良い。また、転回抑制部86としてインナーシェル80が厚くされる範囲は、四角形状の全面に亙って漏れ無く厚くされなくても良く、すなわち、厚くされていない部分が含まれるようにしても良い。また、転回抑制部86としての補強部材は、全ての辺が途切れること無く完全な四角形状を成すように取り付けられなくても良く、すなわち、断続的に取り付けられても良い。
係合凸部85は、上述したように、特に、当該係合凸部85の周囲のインナーシェル80が弾性変形方向に沿ってまくられる/めくられる(図で示すと、図29の紙面に沿ってまくられる/めくられる)ような外力が働いて係合凹部93に対して転回する場合に係合凹部93から外れ易い。このため、係合凸部85の弾性変形方向に沿う転回を低減したり抑制したりするため、インナーシェル80の係合凸部85の周辺部分の、当該係合凸部85の弾性変形方向に沿う変位や変形を低減したり抑制したりすることが効果的である。
そこで、転回抑制部86が壁状の突部として設けられる場合は、係合凸部85の弾性変形方向に沿う壁状の突部として形成されて設けられたり、インナーシェル80が弾性変形方向に沿ってまくられ/めくられようとする際にアウターシェル90の前面へと当接し得る態様で形成されて設けられたりすることが好ましい。
図に示す例では、壁状の突部として左右両端の係合凸部85に対して設けられている転回抑制部86のうち、左右両端の係合凸部85の弾性変形方向(即ち、上下方向)と直交する方向(即ち、左右方向)に沿って設けられる壁状の突部86aはインナーシェル80が弾性変形方向に沿ってまくり上げられようとする際にアウターシェル90の前面と当接することによって係合凸部85の転回を抑制し、また、左右両端の係合凸部85の弾性変形方向(即ち、上下方向)に沿って設けられる壁状の突部86bはインナーシェル80が弾性変形方向に沿ってまくり上げられようとする際にインナーシェル80の剛性強化を発揮すると共にアウターシェル90の前面と当接することによって係合凸部85の転回を抑制する。
図に示す例では、また、壁状の突部として真ん中の係合凸部85に対して設けられている転回抑制部86のうち、真ん中の係合凸部85の弾性変形方向(即ち、左右方向)に沿って設けられる壁状の突部86cはインナーシェル80が弾性変形方向に沿ってめくられようとする際にインナーシェル80の剛性強化を発揮すると共にアウターシェル90の前面と当接することによって係合凸部85の転回を抑制し、また、真ん中の係合凸部85の弾性変形方向(即ち、左右方向)と直交する方向(即ち、上下方向)に沿って設けられる壁状の突部86dはインナーシェル80が弾性変形方向に沿ってめくられようとする際にアウターシェル90の前面と当接することによって係合凸部85の転回を抑制する。
転回抑制部86は、インナーシェル80がまくられる/めくられる外力が加えられる箇所と、係合凸部85と係合凹部93とが係合する位置と、を結ぶ線上に設けられることが好ましいとも言える。例えば図に示す例において、インナーシェル80の下端からまくり上げられようとする外力が左右両端の係合凸部85と係合凹部93との係合位置の下方に加えられる場合の、左右両端の係合凸部85及び係合凹部93の上方に設けられる壁状の突部86aが該当する。インナーシェル80をまくる/めくる力の作用点とインナーシェル80の係合位置とを結ぶ線上に壁状の突部86aが設けられることにより、インナーシェル80がまくられ/めくられようとする際に壁状の突部86dがアウターシェル90の前面と当接して係合凸部85の転回が抑制され、係合凸部85が係合凹部93から抜けて外れてしまうことが効果的に防止される。
また、インナーシェル80が厚くされて転回抑制部86とされる場合は、係合凸部85の弾性変形方向に沿って帯状に厚くされることが好ましい。
また、転回抑制部86として補強部材が取り付けられる場合は、係合凸部85の弾性変形方向に沿って補強部材が取り付けられることが好ましい。
なお、転回抑制部86の態様の例として挙げた壁状の突部の形成,部材の厚みの増加,及び補強部材の取り付けは、これらのうちのいずれか一つが用いられるようにしても良く、或いは、これらのうちの複数が組み合わされて用いられるようにしても良い。
また、図に示す例では係合凸部85がインナーシェル80の側に設けられると共に係合凹部93がアウターシェル90の側に設けられた上で転回抑制部86がインナーシェル80の側のみに設けられるようにしているが、係合凸部85及び係合凹部93並びに転回抑制部86の配設のされ方は図に示す例には限定されない。付け加えると、図に示す例のように係合凸部85が設けられている側のみに転回抑制部86が設けられるようにする配設のされ方にも限定されない。
具体的には例えば、あくまで例として挙げると、係合凸部85がインナーシェル80に設けられると共に係合凹部93がアウターシェル90に設けられた上で、転回抑制部(86)がアウターシェル90に設けられるようにしても良い。なお、インナーシェル80がまくられ/めくられることによる係合凹部93に対する係合凸部85の転回を低減・抑制するためにアウターシェル90に設けられる転回抑制部(86)の態様としては、インナーシェル80が変位したり変形したりしようとする際に転回抑制部(86)がインナーシェル80の後面に当接することによってインナーシェル80が変位したり変形したりすることを妨げるものが挙げられる。
また、係合凸部(85)がアウターシェル90に設けられると共に係合凹部(93)がインナーシェル80に設けられた上で、転回抑制部(86)がアウターシェル90とインナーシェル80とのうちの少なくとも一方に設けられるようにしても良い。この場合も、インナーシェル80がまくられる/めくられると、係合凹部(93)が係合凸部(85)に対して動くことにより、係合凹部(93)に対して係合凸部(85)が転回することになる。このため、インナーシェル80に転回抑制部86が設けられたり、アウターシェル90に転回抑制部(86)が設けられたりする。なお、インナーシェル80がまくられ/めくられて係合凹部(93)が係合凸部(85)に対して動くことによる係合凹部(93)に対する係合凸部(85)の転回を低減・抑制するためにアウターシェル90に設けられる転回抑制部(86)の態様としては、インナーシェル80が変位したり変形したりしようとする際に転回抑制部(86)がインナーシェル80の後面に当接することによってインナーシェル80が変位したり変形したりすることを妨げるものが挙げられる。
また、係合凸部(85)及び係合凹部(93)がアウターシェル90に設けられると共に係合凸部(85)及び係合凹部(93)がインナーシェル80に設けられた上で、転回抑制部86がアウターシェル90とインナーシェル80とのうちの少なくとも一方に設けられるようにしても良い。
なお、インナーシェル80の係合凸部85は、アウターシェル90の係合凹部93から、簡単には外れないものの、相応の力で引っ張られる場合には外れる。
係合凹部93へと差し込まれて係合している係合凸部85が引き抜かれる際には、係合凸部85の一対の引掛け部85b,85bを係合凹部93の開口部を形作る一対の爪部93b,93bそれぞれの内方縁に対して摺動させながら、相互に離間しつつ対向する一対の接合支持部85a,85a、引掛け部85b,85b、及び傾斜部85c,85cのそれぞれが対向する方向(即ち、弾性変形方向)において係合凸部85として弾性変形することにより、引掛け部85bが爪部93bを乗り越えて傾斜部85cと共に係合凹部93から引き抜かれる。
係合凸部85及び係合凹部93並びに転回抑制部86により、インナーシェル80とアウターシェル90との結合力が適切に確保された上で、部品の交換やメンテナンスなどの必要に応じてアウターシェル90からインナーシェル80が取り外されることが可能であり、また、取り外しの際に部品が破損してしまって代替品への交換や修理などが必要になってしまうという問題の回避が図られる。すなわち、着脱自在であり尚且つ簡単には外れ難い係わり合い/連結が実現される。
以上のように構成された椅子の部品の係合構造や椅子によれば、インナーシェル80の係合凸部85が弾性変形してアウターシェル90の係合凹部93と係合するようにしているので着脱可能な構造として構成することができ、尚且つ、係合凹部93に係合している状態の係合凸部85の転回を低減したり抑制したりする転回抑制部86が設けられるようにしているので、係合凹部93に係合している状態の係合凸部85の変位や変形であって係合凸部85と係合凹部93との係合にとって不適当な係合凸部85の変位や変形を抑制することができる。このため、係合凸部85が変位したり変形したりして係合凹部93との係合が不意に外れてしまうことを防止することが可能であり、係合構造としての有用性や信頼性の向上を図ることが可能になると共に係合構造が適用された背凭れ延いては椅子の安全性や使用の快適性の向上を図ることが可能になる。
なお、椅子の部品の係合構造に関する上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態では椅子の部品の係合構造の実施形態の一例が図1などに全体構造を示す椅子の背凭れ6の組み立てに適用されている場合を例に挙げて説明したが、上述の係合構造の要点が適用され得る背凭れや椅子は実施形態として図に示される背凭れ6や椅子に限られるものではなく、さらに言えば、上述の係合構造の要点の適用対象は背凭れ(具体的には、インナーシェル80とアウターシェル90との係わり合い/連結)に限られるものではなく、背凭れ(具体的には、背凭れを構成するインナーシェル80やアウターシェル90)以外の種々の部品や部材の係合,取り付け,及び嵌め合わせに上述の係合構造の要点は適用され得る。またさらに言えば、上述の係合構造の要点の適用対象は椅子に限られるものではなく、様々な家具を構成する種々の部品や部材の係合,取り付け,及び嵌め合わせに上述の係合構造の要点は適用され得る。
上記も踏まえ、上述の椅子の部品の係合構造の要点は下記のように整理される。まず、アウターシェル90は第一の部品,インナーシェル80は第二の部品,アウターシェル90の係合凹部は凹部,インナーシェル80の係合凸部85は凸部,及びインナーシェル80の転回抑制部86は転回抑制部としてそれぞれ一般化される。なお、前記における「第一の部品」や「第二の部品」には、椅子全体の構成において部品と位置づけられるものや相手方の部品との関係において部品に相当するものだけでなく、椅子全体の構成において部材に位置づけられ得るものや相手方の部品/部材との関係において部材に相当し得るものも含む。
そして、上述の椅子の部品の係合構造の要点は、第一の部品と第二の部品との係合構造であり、第一の部品に凹部が設けられ、第二の部品に凹部と着脱可能に弾性変形して係合する凸部が設けられ、第一の部品と第二の部品とのうちの少なくとも一方に凸部と凹部とが係合している状態における凹部に対する凸部の転回を低減する若しくは抑制する転回抑制部が設けられるものであると整理される。なお、上記の構成において、第一の部品及び第二の部品は樹脂製であることが考えられ、特に第二の部品の凸部は樹脂製であることが考えられる。
(ランバーサポート部の取付構造)
背凭れ6は、アウターシェル90に対して相対移動可能に取り付けられる左右一対の押出部材100L,100Rと、これら左右一対の押出部材100L,100Rの前側に配設されて着座者の腰部を支持するランバーサポータ81と、当該ランバーサポータ81を支持するためにインナーシェル80とランバーサポータ81との間に介在するように設けられる連結部材82とを有する(図24)。
左右一対の押出部材100L,100R(即ち、左の押出部材100L及び右の押出部材100R)は、それぞれ、中央寄り位置P1と左右側端寄り位置P2との間で左右方向に沿ってスライド移動可能な仕組みとして構成される。
アウターシェル90は、着座者の背を支持すると共に、左右一対の押出部材100L,100Rを移動可能に支持する押出部材支持体を構成する(言い換えると、押出部材の支持体として機能する)。
インナーシェル80は、ランバーサポータ81を保持するランバーサポータ保持体を構成する(言い換えると、ランバーサポータ保持体として機能する)。
ランバーサポータ81は、樹脂によって大凡板状に形成され、連結部材82を介してインナーシェル80に保持される。
ランバーサポータ81は、左右方向にスライド移動し得る押出部材100L,100Rによって後方から押し出されることにより、ほぼ全体、すなわち直接的に押し出される部位及びその周囲の部位が前後方向に移動し得るように構成される。
連結部材82は、インナーシェル80に対してランバーサポータ81が前後動可能であるように支持するためにインナーシェル80とランバーサポータ81との間に介在して両者を連結するものである。
図に示す例では、ランバーサポータ81の上端側と下端側とのそれぞれに於いて左右一で合計四つの連結部材82がインナーシェル80とランバーサポータ81との間に介在して設けられる。
図に示す例では、インナーシェル80,ランバーサポータ81,及び連結部材82は、樹脂によって一体に形成される。
左右一対の押出部材100L,100Rは、これら左右一対の押出部材100L,100Rを支持する支持体であるアウターシェル90に対して左右方向に沿ってスライド移動可能に取り付けられる。
左右一対の押出部材100L,100Rは、これら左右一対の押出部材100L,100Rの前側に設けられるランバーサポータ81を後方から直接的に押圧するようにしている。これにより、左右一対の押出部材100L,100Rとランバーサポータ81とを主体にして、着座者の腰部を押し出して支持し得るランバーサポート部が構成される。
上記のランバーサポート部によるランバーサポート度合い、すなわち着座者の腰部に対する押し出し(言い換えると、着座者の腰部への押し当て)の程度は、左右一対の押出部材100L,100Rの左右方向における位置が変えられることによって任意に調節され得る。
アウターシェル90には、ランバーサポート部に関連する構造として、側面視(即ち、く字形)において前方に屈曲している部位に、正面視及び背面視において上下方向において離間して左右方向に沿って相互に平行に設けられる上下一対の(即ち、二本の)スリット91U,91L(即ち、上側のスリット91U及び下側のスリット91L)が形成される。
アウターシェル90と左右一対の押出部材100L,100Rとは、アウターシェル90に形成される上下一対のスリット91U,91Lによって案内されて左右一対の押出部材100L,100Rが相互に独立して左右方向に沿って移動し得るように構成される。
左右一対の押出部材100L,100Rは、上下一対のスリット91U,91Lと係合し、これらスリット91U,91L同士の間の帯状部分94に跨るように取り付けられる。
インナーシェル80には、ランバーサポート部に関連する構造として、着座者の腰部に対応する位置に大凡矩形状の開口部84が形成される
開口部84は、正面視/背面視において、各々が左右側端寄り位置P2,P2に位置する左右一対の押出部材100L,100Rが当該開口部84内に含まれ得る寸法の左右方向における開口長さを有し、また、各々が中央寄り位置P1と左右側端寄り位置P2との間を移動する左右一対の押出部材100L,100Rがどこに位置しても当該開口部84内に必ず含まれ得る寸法の上下方向における開口高さを有するものとして形成される。
そして、開口部84内に連結部材82を介してランバーサポータ81が配設される。これにより、インナーシェル80側のランバーサポータ81は、アウターシェル90側に取り付けられる左右一対の押出部材100L,100Rと前後方向において当接し得る部分に配設される。
そして、本実施形態の椅子の部品の取付構造は、押出部材100L,100Rをアウターシェル90に取り付ける構造であり、アウターシェル90が、一対のスリット91U,91Lに挟まれる帯状部分94を有し、押出部材100L,100Rが、アウターシェル90の後側に配設される操作部110とアウターシェル90の前側に配設される押出部120とから構成され、操作部110が、当該操作部110と押出部120とを結合する一対の連結部113U,113Lを有し、操作部110の一対の連結部113U,113Lのそれぞれが、押出部120へと向けて張り出してスリット91U,91Lを貫通する摺動部114と当該摺動部114から横嵌込部115を介在させて延出し且つスリット91U,91Lの幅よりも大きい縦嵌込部116とを有し、スリット91U,91Lの長手方向において対向して当該スリット91Uを形作る一対の縁部91aと縁部94aとが段違いにずれ且つ当該スリット91Lを形作る一対の縁部91bと縁部94bとが段違いにずれてこれら縁部91a,94aの段差の間及び縁部91b,94bの段差の間を横嵌込部115及び縦嵌込部116がそれぞれ通過可能であるように帯状部分94が撓むようにしている。
また、本実施形態の椅子の部品の取付方法は、押出部材100L,100Rをアウターシェル90に取り付ける方法であり、アウターシェル90が、一対のスリット91U,91Lに挟まれる帯状部分94を有し、押出部材100L,100Rが、アウターシェル90の後側に配設される操作部110とアウターシェル90の前側に配設される押出部120とから構成され、操作部110が、当該操作部110と押出部120とを結合する一対の連結部113U,113Lを有し、操作部110の一対の連結部113U,113Lのそれぞれが、押出部120へと向けて張り出してスリット91U,91Lを貫通する摺動部114と当該摺動部114から横嵌込部115を介在させて延出し且つスリット91U,91Lの幅よりも大きい縦嵌込部116とを有し、帯状部分94を撓ませることでスリット91U,91Lの長手方向において対向して当該スリット91Uを形作る一対の縁部91aと縁部94aとを段違いにずらし且つ当該スリット91Lを形作る一対の縁部91bと縁部94bとを段違いにずらしてこれら縁部91a,94aの段差の間及び縁部91b,94bの段差の間を横嵌込部115及び縦嵌込部116をそれぞれ通過させるようにしている。
左の押出部材100L及び右の押出部材100Rは、樹脂製の部材であり、左右方向に沿うスリット91U,91Lに沿ってスライド移動すると共にランバーサポータ81を後方から押圧するものとして機能する。
左右の押出部材100L,100Rは、それぞれ、アウターシェル90の後側に位置する操作部110と、アウターシェル90の前側に位置する押出部120とを有する(図30)。
操作部110は、上下方向に沿って後ろ向きに突出する把手部分111と、当該把手部分111の前端から左右両方向へと延出する当接部分112と、当該当接部分112の前面に設けられる上下一対の連結部113U,113Lとを有する(図31)。
把手部分111,当接部分112,及び上下一対の連結部113U,113Lは樹脂によって一体に形成される。
当接部分112は、背面視/正面視において大凡D字形に形成され、アウターシェル90の後面に沿うように配設される。
把手部分111は、当接部分112の後面から後ろ向きに突出し、左右の板面が鉛直方向に概ね沿う大凡半楕円形状に形成される。
操作部110は、着座者が左右の押出部材100L,100Rを操作する際に把持する把持部としての機能を奏し得るように構成される。着座者は、操作部110(具体的には、把手部111)を把持してスライド操作することにより、押出部120の左右方向における位置を任意に変更することができる。
上下一対の連結部113U,113L(即ち、上側の連結部113U及び下側の連結部113L)は、操作部110と押出部120とを連結するための構造であり、当接部分112の前面側に、上下方向において相互に離間する上下一対のものとして、前方へと(即ち、アウターシェル90や押出部120に向けて)突出する態様で設けられる。
上下一対の連結部113U,113Lは、それぞれ、当接部分112の前面と連接する摺動部114と、当該摺動部114の前端と連接する横嵌込部115と、当該横嵌込部115の左右端と連接する左右一対の縦嵌込部116,116とを有する。ただし、連結部113U,113Lの形状は、図に示す例に限定されるものではなく、多様な形態があり得る。
摺動部114は、当接部分112の前面から前向きに張り出し、上下の板面が水平方向に沿う板状に形成される。
上下一対の連結部113U,113L各々の摺動部114は、これら上下の摺動部114,114の上下方向における離間の程度/寸法がアウターシェル90に設けられる上下一対のスリット91U,91Lの上下方向における離間の程度/寸法と同じになるように調節され、上下一対のスリット91U,91Lのそれぞれを貫通する位置に配されて形成される。
横嵌込部115は、摺動部114の前端から左右方向に沿って延出し、上下の板面が水平方向に沿う板状に形成される。上側の連結部113Uの横嵌込部の符号を115uとし、下側の連結部113Lの横嵌込部の符号を115lとする。
上側の連結部113Uの左右一対の縦嵌込部116u,116uは、横嵌込部115uの上面の左右両端のそれぞれから上向きに相互に離間しつつ対向して張り出し、左右の板面が鉛直方向に沿う、左右一対の突出片として設けられる。
下側の連結部113Lの左右一対の縦嵌込部116l,116lは、横嵌込部115lの下面の左右両端のそれぞれから下向きに相互に離間しつつ対向して張り出し、左右の板面が鉛直方向に沿う、左右一対の突出片として設けられる。
押出部120は、後ろ向きに開口する上下一対の嵌合凹部121U,121Lと、後ろ向きに張り出す上下一対の係止爪126U,126Lとを有する(図32)。
押出部120は、正面視/背面視において大凡矩形状に形成され、アウターシェル90の前面に沿うように配設される。
上下一対の嵌合凹部121U,121L(即ち、上側の嵌合凹部121U及び下側の嵌合凹部121L)は、操作部110と押出部120とを連結するための構造であり、押出部120の後面側に、上下方向において相互に離間する上下一対のものとして、後ろ向きに(即ち、アウターシェル90や操作部110に向けて)開口する態様で形成される。
上側の嵌合凹部121Uは、左右方向に沿って形成されて操作部110の上側の連結部113Uの横嵌込部115uが入り込む横方向凹部122uと、当該横方向凹部122uの左右両端のそれぞれから上向きに相互に離間しつつ対向して形成されて操作部110の上側の連結部113Uの左右一対の縦嵌込部116u,116uが入り込む左右一対の縦方向凹部123u,123uとを有する。
下側の嵌合凹部121Lは、左右方向に沿って形成されて操作部110の下側の連結部113Lの横嵌込部115lが入り込む横方向凹部122lと、当該横方向凹部122lの左右両端のそれぞれから下向きに相互に離間しつつ対向して形成されて操作部110の下側の連結部113Lの左右一対の縦嵌込部116l,116lが入り込む左右一対の縦方向凹部123l,123lとを有する。
上下一対の係止爪126U,126L(即ち、上側の係止爪126U及び下側の係止爪126L)は、操作部110と押出部120との連結状態を維持するための構造であり、押出部120の後面側に、上下方向において相互に離間する上下一対のものとして、後ろ向きに(即ち、アウターシェル90や操作部110に向けて)張り出す態様で形成される。
上側の係止爪126Uは、上側の横方向凹部122uの上側に隣接する位置に、後ろ向きに張り出す態様で設けられる。
上側の係止爪126Uは、後端に、下向きに突出する爪部126aを有する。
下側の係止爪126Lは、下側の横方向凹部122lの下側に隣接する位置に、後ろ向きに張り出す態様で設けられる。
下側の係止爪126Lは、後端に、上向きに突出する爪部126bを有する。
アウターシェル90の後ろ側に配設される操作部110とアウターシェル90の前側に配設される押出部120とは、操作部110の上下一対の連結部113U,113L各々の摺動部114,114がアウターシェル90に形成される上下一対のスリット91U,91Lをそれぞれ貫通する(言い換えると、アウターシェル90の前側と後ろ側とに跨がるように上下一対のスリット91U,91L内に位置する)と共に、操作部110の上下一対の連結部113U,113L各々の横嵌込部115及び左右一対の縦嵌込部116,116が押出部120の上下一対の嵌合凹部121U,121Lへとそれぞれ嵌め込まれた状態で組み合わされてアウターシェル90に対して取り付けられる。
上側の連結部113Uの横嵌込部115u及び左右一対の縦嵌込部116u,116uが上側の嵌合凹部121Uの横方向凹部122u及び左右一対の縦方向凹部123u,123uへと嵌め込まれると、押出部120の上側の係止爪126U(特に、下向きに突出する爪部126a)が操作部110の上側の横嵌込部115uの上面側後端部に形成された係止凹部117uに係止し、上側の連結部113Uと上側の嵌合凹部121Uとの嵌合状態が維持される(図32)。
また、下側の連結部113Lの横嵌込部115l及び左右一対の縦嵌込部116l,116lが下側の嵌合凹部121Lの横方向凹部122l及び左右一対の縦方向凹部123l,123lへと嵌め込まれると、押出部120の下側の係止爪126L(特に、上向きに突出する爪部126b)が操作部110の下側の横嵌込部115lの下面側後端部に形成された係止凹部117lに係止し、下側の連結部113Lと下側の嵌合凹部121Lとの嵌合状態が維持される(図32)。
これにより、操作部110と押出部120とが組み合わされて連結されてアウターシェル90へと取り付けられた状態が維持される。したがって、上述の構成によれば、ビスなどの追加的な他の部材が用いられることなく、操作部110と押出部120とが組み合わされて取り付けられる。
なお、図に示す例では上下一対の係止凹部117u,117lがどちらも操作部110に設けられると共に上下一対の係止爪126U,126Lがどちらも押出部120に設けられるようにしているが、上下一対の係止凹部117u,117lに相当する構造のうちの少なくとも一方が押出部120に設けられるようにしたり上下一対の係止爪126U,126Lに相当する構造のうちの少なくとも一方が操作部110に設けられるようにしたりしても良い。
操作部110と押出部120とが組み合わされて連結されてアウターシェル90へと取り付けられた状態では、上側の連結部113Uの摺動部114と下側の連結部113Lの摺動部114との間に、前後方向において操作部110と押出部120とによって挟まれる態様で、アウターシェル90の帯状部分94が位置することになる。
そして、操作部110と押出部120とが組み合わされてアウターシェル90へと取り付けられた状態で、上下の摺動部114,114が上下一対のスリット91U,91Lによってそれぞれ案内されると共に帯状部分94を操作部110(具体的には、当接部分112)と押出部120とによって前後方向において挟みつつ(図33)、左右の押出部材100L,100Rが左右方向に沿ってスライド移動する。
ここで、スリット91U,91Lの上下方向における幅に対して操作部110の連結部113U,113L(図に示す例では特に、左右一対の縦嵌込部116,116)の寸法が大きい場合、上下の連結部113U,113L各々が上下のスリット91U,91Lをそれぞれ通過することができない。
そこで、上下一対のスリット91U,91Lに挟まれる帯状部分94を前方へと撓ませることにより、帯状部分94の上端縁94aと上側のスリット91Uの上縁を形作るアウターシェル90側の上縁91aとの間に隙間Guが作り出されると共に帯状部分94の下端縁94bと下側のスリット91Lの下縁を形作るアウターシェル90側の下縁91bとの間に隙間Glが作り出されるようにする(図34)。
上述のように帯状部分94を撓ませることにより、上下のスリット91U,91Lの長手方向において対向して当該スリット91Uを形作る一対の縁部91a(上縁91a)と縁部94a(上端縁94a)とが段違いにずれると共に当該スリット91Lを形作る一対の縁部91b(下縁91b)と縁部94b(下端縁94b)とが段違いにずれ、これら縁部91a,94aの段差の間及び縁部91b,94bの段差の間の間隙として、上下の隙間Gu,Gl(即ち、上側の隙間Gu,下側の隙間Gl)が作り出される。
そして、帯状部分94が撓んで上下のスリット91U,91Lを形作る一対の縁部が段違いにずれて作り出される上下の隙間Gu,Glであれば、操作部110の上下の連結部113U,113L(図に示す例では特に、左右一対の縦嵌込部116,116)を通過させることができる。
例えば、帯状部分94を前方へと撓ませた状態で、操作部110の上下の連結部113U,113Lの側を帯状部分94へと向け且つ上下の連結部113U,113Lが並ぶ方向(即ち、操作部110にとっての上下方向)を帯状部分94の長手方向(別言すると、上下のスリット91U,91Lに沿う方向)に沿わせた姿勢で上下の連結部113U,113Lを帯状部分94の後面に接触させ、その姿勢から上下の連結部113U,113Lが並ぶ方向(操作部110にとっての上下方向)が帯状部分94の長手方向(上下のスリット91U,91Lに沿う方向)に対して直交するように帯状部分94の後面に上下の連結部113U,113Lを接触させつつ操作部110を回転させる。これにより、左右一対の縦嵌込部116,116を、上下の隙間Gu,Glをそれぞれ通過させることができる。その後、帯状部分94の撓みが解放されると、上下一対の連結部113U,113L各々の摺動部114,114が上下一対のスリット91U,91Lをそれぞれ貫通すると共に左右一対の縦嵌込部116,116がアウターシェル90の前面側へと露出した状態で、操作部110がアウターシェル90と係合する(言い換えると、操作部110がアウターシェル90へと取り付けられる)。
上述の構成によれば、スリットの幅よりも大きい寸法を有し且つ一対のスリット同士の間の空間/構造(図に示す例では、帯状部分94)に対して外側へと突出する一対の構造を有する連結構造/係合構造を、スリットを通過させて取り付ける/係合させることができる。
なお、図に示す例では、アウターシェル90は、平面視において後方に向けて凸となるように湾曲した形状、言い換えると、上下一対のスリット91U,91Lが形成されている方向に沿って湾曲した形状に形成されている。このため、帯状部分94を前方へと撓ませることによって隙間Gu,Glが作り出され易い。ただし、隙間が作り出される部材が湾曲した形状であることは必須の構成ではなく、図に示す例における帯状部分94に相当する弾性変形部との間にスリットが形成されている主部材(アウターシェル90の本体部)に対して前記弾性変形部が撓むことによってスリットを形作る一対の縁部が段違いにずれて隙間Gu,Gl(即ち、主部材の縁と弾性変形部の縁との間の間隙)が作り出されれば良い。
また、図に示す例に基づく上述の説明では左右方向に沿って形成されるスリット91U,91Lに対して押出部材100L,100Rが取り付けられるようにしているが、一対のスリットが形成される方向は、左右方向に限定されるものではなく、上下方向でも構わないし、いずれかに傾斜している方向でも構わない。
また、図に示す例では、操作部110の上下一対の連結部113U,113Lのそれぞれに、左右方向において相互に離間して左右方向に沿って並ぶ一対の縦嵌込部116,116が設けられるようにしている。そして、これら上下それぞれの左右一対の縦嵌込部116,116は、上下一対のスリット91U,91Lを通過した上でこれらスリット91U,91Lに対して直交する方向で配置される。このため、操作部110は、上下一対のスリット91U,91Lに対して直交する方向で配置される上下の左右一対の縦嵌込部116,116によってスリット91U,91Lに対して係合することができ、且つ、相互に離間する左右一対の縦嵌込部116,116によって安定した姿勢でスリット91U,91Lに係合した状態で左右にスライドすることができる。したがって、図に示す例ではランバーサポータ81を押し出すために操作部110に加えて押出部120が組み合わされて押出部材100L,100Rが構成されるようにしているが、スリット91U,91Lと係合したりスライドしたりするためには押出部120に相当する部品は必ずしも必要ではなく、操作部110のみがスリット91U,91Lと係合する構成として利用することも可能になる
以上のように構成された椅子の部品の取付構造,取付方法や椅子によれば、アウターシェル90の帯状部分94が弾性変形することによって上下一対のスリット91U,91Lそれぞれ形作る一対の縁部を段違いにずらして操作部110の上下の連結部113U,113L(図に示す例では特に、左右一対の縦嵌込部116,116)を通過させるようにしているので、操作部110と押出部120とを連結するための連結部113U,113L(図に示す例では特に、左右一対の縦嵌込部116,116)の寸法よりもスリット91U,91Lの幅が狭くても連結部113U,113L(図に示す例では特に、左右一対の縦嵌込部116,116)を通過させることができる。このため、取付構造や取付方法としての有用性や汎用性の向上を図ることが可能になる。
特に、上述の構成を備える操作部110と押出部120とによれば、これら操作部110と押出部120とが組み合わされて取り付けられるためにこれらに指し渡されるビスを用いる必要がないので、スリット91U,91Lの上下方向幅をビスが貫通できるほど大きくする必要がない。このため、摺動部114としての強度が確保され得る範囲で摺動部114の上下方向における厚みを薄くすることが可能であり、摺動部114を薄くすることに対応させてスリット91U,91Lそれぞれを細く(別言すると、スリット91U,91Lの上下方向幅を狭く)することが可能になる。これにより、例えば指や衣類が巻き込まれてしまう事態を防止したり、見栄えを良くしたりすることも可能になる。
なお、椅子の部品の取付構造,取付方法に関する上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態では椅子の部品の取付構造,取付方法の実施形態の一例が図1などに全体構造を示す椅子の背凭れ6に備えられるランバーサポート部の左右一対の押出部材100L,100Rのアウターシェル90への取り付けに適用されている場合を例に挙げて説明したが、上述の取付構造や取付方法の要点が適用され得る背凭れや椅子は実施形態として図に示される背凭れ6や椅子に限られるものではなく、さらに言えば、上述の取付構造や取付方法の要点の適用対象は背凭れを構成するアウターシェルへの押出部材の取り付けに限られるものではなく、背凭れを構成するアウターシェルへの押出部材の取り付け以外の種々の部品・部材の様々な部品・部材への取り付けに上述の取付構造や取付方法の要点は適用され得る。またさらに言えば、上述の取付構造や取付方法の要点の適用対象は椅子に限られるものではなく、様々な家具を構成する種々の部品・部材の様々な部品・部材への取り付けに上述の取付構造や取付方法の要点は適用され得る。
上記も踏まえ、上述の椅子の部品の取付構造や取付方法の要点は下記のように整理される。まず、アウターシェル90は第二の部品,アウターシェル90の帯状部分94は弾性変形部,押出部材100L/100Rは第一の部品,押出部材100L/100Rの操作部110は第1部品,押出部材100L/100Rの押出部120は第2部品,上下一対の連結部113U・113Lは一対の連結部,連結部113U・113Lの摺動部114は貫通部,及び連結部113U・113Lの縦嵌込部116u・116lは突部若しくは片部としてそれぞれ一般化される。なお、前記における「第一の部品」や「第二の部品」には、椅子全体の構成において部品と位置づけられるものや相手方の部品との関係において部品に相当するものだけでなく、椅子全体の構成において部材に位置づけられ得るものや相手方の部品/部材との関係において部材に相当し得るものも含む。
そして、上述の椅子の部品の取付構造の要点は、第一の部品を第二の部品に取り付ける構造であり、第二の部品が、一対のスリットに挟まれる弾性変形部を有し、第一の部品が、第二の部品の一方の側に配設される第1部品と第二の部品の他方の側に配設される第2部品とから構成され、第1部品が、第1部品と第2部品とを結合する一対の連結部を有し、第1部品の一対の連結部のそれぞれが、第2部品へと向けて張り出してスリットを貫通する貫通部と当該貫通部から延出し且つスリットの幅よりも大きい突部若しくは片部とを有し、スリットの長手方向において対向して当該スリットを形作る一対の縁部が段違いにずれてこれら縁部の段差の間を突部若しくは片部が通過可能であるように弾性変形部が撓むものであると整理される。
また、上述の椅子の部品の取付方法の要点は、第一の部品を第二の部品に取り付ける方法であり、第二の部品が、一対のスリットに挟まれる弾性変形部を有し、第一の部品が、第二の部品の一方の側に配設される第1部品と第二の部品の他方の側に配設される第2部品とから構成され、第1部品が、当該第1部品と第2部品とを結合する一対の連結部を有し、第1部品の一対の連結部のそれぞれが、第2部品へと向けて張り出してスリットを貫通する貫通部と当該貫通部から延出し且つスリットの幅よりも大きい突部若しくは片部とを有し、弾性変形部を撓ませることでスリットの長手方向において対向して当該スリットを形作る一対の縁部を段違いにずらしてこれら縁部の段差の間突部若しくは片部を通過させるものである整理される。
さらに、上述したように上述の実施形態における操作部110に相当する部品のみが用いられて上下の連結部113U,113Lの縦嵌込部116u,116lがスリットを形作る縁部へと係合するようにしても良い。
この場合には、上述の椅子の部品の取付構造の要点は、第一の部品を第二の部品に取り付ける構造であり、第二の部品が、一対のスリットに挟まれる弾性変形部を有し、第一の部品が、一対のスリットのそれぞれを貫通する一対の貫通部とこれら貫通部各々から延出し且つスリットの幅よりも大きい突部若しくは片部とを有し、スリットの長手方向において対向して当該スリットを形作る一対の縁部が段違いにずれてこれら縁部の段差の間を突部若しくは片部が通過可能であるように弾性変形部が撓み、縁部の段差の間を通過した突部若しくは片部が弾性変形部の撓みが解放された後のスリットを形作る縁部に係合するものであると整理される。
また、上述の椅子の部品の取付方法の要点は、第一の部品を第二の部品に取り付ける方法であり、第二の部品が、一対のスリットに挟まれる弾性変形部を有し、部品が、一対のスリットのそれぞれを貫通する一対の貫通部とこれら貫通部各々から延出し且つスリットの幅よりも大きい突部若しくは片部とを有し、弾性変形部を撓ませることでスリットの長手方向において対向して当該スリットを形作る一対の縁部を段違いにずらしてこれら縁部の段差の間を突部若しくは片部を通過させるものであると整理される。
なお、上記の構成において、第一の部品及び第二の部品は樹脂製であることが考えられ、特に第二の部品は樹脂製であることが考えられる(即ち、第一の部品は樹脂製でなくても構わない)。