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JP7042583B2 - 光学フィルム製造用原反フィルム及びそれを用いた光学フィルムの製造方法 - Google Patents

光学フィルム製造用原反フィルム及びそれを用いた光学フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、分子量分布が狭いポリビニルアルコールを含む、光学フィルム製造用原反フィルム及びそれを用いた光学フィルムの製造方法に関する。
光の透過及び遮蔽機能を有する偏光板は、光の偏光状態を変化させる液晶と共に液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。多くの偏光板は偏光フィルムの表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどの保護膜が貼り合わされた構造を有しており、偏光フィルムとしてはポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある)フィルムを一軸延伸してなるマトリックスにヨウ素系色素(I3-やI5-等)や二色性有機染料といった二色性色素が吸着しているものが主流となっている。
LCDは、電卓及び腕時計などの小型機器、スマートフォン、ノートパソコン、液晶モニター、液晶プロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、屋内外で用いられる計測機器など広範囲で用いられている。近年、これらの機器には表示品質の向上が求められている。これに伴い、偏光フィルムに対しても高性能化が求められており、具体的には、偏光度、透過度などの光学性能に優れる偏光フィルムが求められている。
偏光フィルムの光学性能を向上させる方法として、分子量が高いPVAを用いる方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、分子量の上昇に伴って、成形性が低下するため、分子量が高いPVAを用いてフィルムを工業的に生産することが困難であった。
偏光フィルムの高機能化を目指した技術開発が進められており、以下のような光学フィルム製造用原反フィルムが報告されている。特許文献2には、カルボン酸基やω-ヒドロキシ-α-オレフィン基などの親水性の官能基を0.01~1モル%含有するPVAからなる偏光膜の原反用PVAフィルムが記載されている。特許文献2には、当該PVAフィルムは、延伸・配向処理性及び二色性物質の吸着処理性に優れていたと記載されている。特許文献3には、PVA樹脂を製膜してなる光学用PVAフィルムであって、PVA樹脂が、PVA樹脂(X)及び側鎖に1,2-ジオール結合を含有するPVA樹脂(Y)からなる光学用PVAフィルムが記載されている。特許文献3には、当該PVAフィルムは、光学性能及び延伸性に優れると記載されている。しかしながら、得られる偏光フィルムの光学性能を高めるため、特許文献2及び3に記載されたフィルムに用いられるPVAの分子量を高めた場合、成形性が不十分になることがあった。
ところで、近年、いわゆるリビングラジカル重合技術の進歩により、酢酸ビニルのラジカル重合反応を制御する方法がいくつか提案されてきた。例えば、ラジカル重合開始剤と特定の制御剤の存在下で酢酸ビニルのラジカル重合反応を行うことによって、分子量分布が狭く、かつ高分子量のポリ酢酸ビニルを得る方法が提案されている。このような重合反応においては、ポリ酢酸ビニルの分子鎖の生長ラジカル末端が制御剤と共有結合してドーマント種を形成し、当該ドーマント種とそれが解離して生じるラジカル種との間で平衡を形成しながら重合が進行する。このような重合反応は制御ラジカル重合と呼ばれる。
特許文献4には、ラジカル重合開始剤とヨウ素化合物からなる制御剤の存在下で酢酸ビニルのラジカル重合反応を行うことによって、数平均分子量(Mn)が92,000で、分子量分布(Mw/Mn)が1.57のポリ酢酸ビニルを合成し、それをけん化してPVAを製造した例が報告されている。しかしながら、ヨウ素化合物を制御剤に用いた重合方法においては、ポリ酢酸ビニルの重合末端にアルデヒド基が形成されることが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。このようなアルデヒド基を末端に有するポリ酢酸ビニルをけん化した場合、複数の炭素-炭素二重結合が共役した共役ポリエン構造が形成され、着色の著しいPVAが得られることが知られている。このように着色したPVAからなるフィルムは光学フィルムとして適さない。
また最近、有機コバルト錯体を制御剤とする制御ラジカル重合によって、ポリ酢酸ビニルを合成する手法が提案されている。この重合反応においては、ポリ酢酸ビニルの分子鎖の生長ラジカル末端が有機コバルト錯体のコバルト原子と共有結合してドーマント種を形成し、当該ドーマント種とそれが解離して生じるラジカル種との間で平衡を形成しながら重合が進行する。例えば非特許文献2には、コバルト(II)アセチルアセトナートの存在下に酢酸ビニルを重合させることによって、数平均分子量(Mn)が99,000で、分子量分布(Mw/Mn)が1.33のポリ酢酸ビニルを合成した例が報告されている。
非特許文献3には、コバルト(II)アセチルアセトナートの存在下に酢酸ビニルを重合させて得られたポリ酢酸ビニル鎖を、1-プロパンチオールで処理することが記載されている。当該ポリ酢酸ビニル鎖は末端にコバルト(III)錯体が結合したドーマント種を形成しているが、当該ドーマント種が開裂して形成される末端ラジカルが1-プロパンチオールと反応することによって、ポリ酢酸ビニル鎖からコバルト錯体を切り離すことができる。ドーマント種を形成しているポリ酢酸ビニルは緑色であるが、切り離されたコバルト錯体を析出させた後にセライト濾過して取り除くことによって、着色の低減されたポリ酢酸ビニルが得られたことが記載されている。また、1-プロパンチオールの代わりに、安定ラジカル化合物であるTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)を用いることによって、末端ラジカルにTEMPOを結合させてラジカルを捕捉することもできる。この場合にも、コバルト錯体を酸性アルミナで濾過して取り除くことで、無色のポリ酢酸ビニルが得られたことが記載されている。
このように、非特許文献3に記載された方法によれば着色の低減されたポリ酢酸ビニルを得ることができるとされている。しかしながら、こうして得られたポリ酢酸ビニルをけん化してPVAを得ることについては、非特許文献3には記載されていない。本発明者らが実験したところ、非特許文献3で得られたポリ酢酸ビニルをけん化して得られたPVAは着色してしまうことがわかった。
特開平1-105204号公報 特開平8-201626号公報 特開2009-24076号公報 特開平11-147914号公報
Controlled/Living Radical Polymerization of Vinyl Acetate by Degenerative Transfer with Alkyl Iodides, Macromolecules, 2003, vol.36, p9346-9354 Highly Efficient Cobalt-Mediated Radical Polymerization of Vinyl Acetate, Angewandte Chemie International Edition, 2005, vol.44, p1101-1104 Synthesis of End-Functional Poly(vinyl acetate) by Cobalt-Mediated Radical Polymerization, Macromolecules, 2005, vol.38, p5452-5458
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、成形性に優れ、なおかつ優れた光学性能を有する光学フィルムを得ることができる原反フィルムを提供することを目的とする。また、このような原反フィルムを用いた光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題は、重量平均分子量(Mw)が100,000~1,000,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.95であり、けん化度が80~99.99mol%であるPVAを含む、光学フィルム製造用原反フィルムを提供することによって解決される。
前記原反フィルムの厚みが1~75μmであることが好ましい。また、前記原反フィルムのb値が0.35以下であることも好ましい。
前記光学フィルム製造用原反フィルムが偏光フィルム製造用原反フィルムであることが好ましい。
前記光学フィルム製造用原反フィルムを一軸延伸する工程を有する光学フィルムの製造方法が本発明の好適な実施態様である。前記偏光フィルム製造用原反フィルムを、二色性色素で染色する工程及び一軸延伸する工程を有する偏光フィルムの製造方法が本発明のより好適な実施態様である。
本発明の原反フィルムによれば、成形性の低下を抑制しつつ、得られる光学フィルムの光学性能を高めることができる。
実施例1~3及び比較例1~3の偏光フィルムについて、重量平均分子量(Mw)を横軸に、二色性比を縦軸にプロットした図である。 実施例1~3及び比較例1~3の偏光フィルムについて、収縮応力を横軸に、二色性比を縦軸にプロットした図である。
本発明の光学フィルム製造用原反フィルムは、重量平均分子量(Mw)が100,000~1,000,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.95であり、けん化度が80~99.99mol%であるPVAを含むものである。
前記PVAの重量平均分子量(Mw)は100,000~1,000,000である。当該重量平均分子量(Mw)が100,000以上であることにより、優れた光学性能を有する光学フィルムが得られる。前記重量平均分子量(Mw)は150,000以上が好適であり、200,000以上がより好適であり、250,000以上がさらに好適であり、300,000以上が特に好適である。一方、前記重量平均分子量(Mw)が1,000,000以下であることにより、原反フィルムの成形性が良好となる。前記重量平均分子量(Mw)は800,000以下が好適であり、500,000以下がより好適である。本発明における重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される。当該測定において、標準物質としてポリメチルメタクリレートが用いられる。また、移動相としてHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)が用いられ、カラムとしてHFIP用のカラムが用いられる。具体的には、実施例に記載された方法により、本発明におけるGPC法による測定が行われる。
前記PVAの分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.95である必要がある。このように、分子量分布(Mw/Mn)が狭いPVAを用いることにより、驚くべきことに得られる光学フィルムの光学性能が、重量平均分子量(Mw)が同じであるPVAを用いて得られる従来の光学フィルムと比較して、顕著に向上する。したがって、成形性の低下を抑制しつつ、得られる光学フィルムの光学性能を高めることができる。前記分子量分布(Mw/Mn)は、1.8以下が好ましい。
前記PVAのけん化度は80~99.99mol%である。けん化度が80mol%以上であることにより、光学性能及び耐久性に優れた光学フィルムが得られる。けん化度は、好適には95mol%以上であり、より好適には98mol%以上であり、さらに好適には99mol%以上であり、特に好適には99.2mol%以上である。一方、けん化度が99.99mol%を超えると、PVAの製造が困難となるおそれがある。けん化度は、好適には99.95mol%以下である。なお、本明細書におけるPVAのけん化度とは、PVAが有する、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。PVAのけん化度はJIS K6726-1994の記載に準じて測定することができる。
前記PVA中の全単量体単位に対する、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位の合計量は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上が特に好ましく、100モル%であってもよい。
前記PVA中の1,2-グリコール結合の含有量が0.7~1.5mol%であることが好ましい。1,2-グリコール結合の含有量が1.5mol%以下であることにより、得られる光学フィルムの光学性能がさらに向上する。1,2-グリコール結合の含有量は、1.4mol%以下であることがより好ましい。一方、1,2-グリコール結合の含有量が0.7mol%未満の場合、水溶性が低下して取扱いにくくなるおそれがある。1,2-グリコール結合の含有量は、1mol%以上であることがより好ましい。
前記PVAの好適な製造方法は、ラジカル開始剤及び有機コバルト錯体の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル単量体を重合させる重合工程;前記重合工程の後に、下記式(I)で表される重合停止剤又はプロトン供与性重合停止剤を添加することによって前記重合を停止させてポリビニルエステルを得る停止工程;及び前記停止工程で得られたポリビニルエステルをけん化してPVAを得るけん化工程;を有する。当該方法によれば、分子量分布が狭く、重量平均分子量が高く、しかも色相が良好であるPVAが得られる。以下、その製造方法を詳細に説明する。
Figure 0007042583000001
(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族基を表し、Rは水素原子、炭素数1~20のアルキル基、または置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族基を表す。)
まず、重合工程について説明する。重合工程では、ラジカル開始剤及び有機コバルト錯体の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル単量体を重合させる。制御ラジカル重合とは、生長ラジカル末端(活性種)が制御剤と結合した共有結合種(ドーマント種)との平衡状態におかれて反応が進行する重合反応のことである。制御ラジカル重合を行うことによって、副反応が抑制されるため、重量平均分子量(Mw)が高く、かつ分子量分布(Mw/Mn)が狭いポリビニルエステルを得ることができる。前記製造方法では、制御剤として有機コバルト錯体が用いられる。
前記製造方法で用いられるビニルエステル単量体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的観点から酢酸ビニルが好ましく用いられる。
製造されるポリビニルエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、ビニルエステル単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を含んでいてもよい。エチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和カルボン酸、その塩、そのモノまたはジアルキルエステルまたはその無水物;アクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド;メタクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、2-メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド;N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル-(3-アクリルアミド-3-ジメチルプロピル)-アンモニウムクロリド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。共重合させるエチレン性不飽和単量体の炭素数は特に限定されないが、炭素数が2~20であることが好ましい。
ビニルエステル単量体の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒で重合する塊状重合法あるいは種々の有機溶媒中で重合する溶液重合法が通常採用される。分子量分布の狭い重合体を得るためには、連鎖移動等の副反応を起こすおそれのある溶媒や分散媒を使用しない塊状重合法が好ましい。一方、反応液の粘度調整や、重合速度の制御等の面からは、溶液重合が好ましい場合もある。溶液重合時に溶媒として使用される有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール等の低級アルコール;等が挙げられる。これらのうち、連鎖移動を防ぐためには、エステルや芳香族炭化水素が好ましく用いられる。溶媒の使用量は、目的とするPVAの重量平均分子量に合わせ、反応溶液の粘度を考慮して決定すればよい。例えば、質量比(溶媒/単量体)が0.01~10の範囲から選択される。質量比(溶媒/単量体)は好適には0.1以上であり、好適には5以下である。
重合工程で使用されるラジカル開始剤としては、従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等が適宜選ばれる。アゾ系開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、過酸化物系開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカネート、α-クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、ジイソブチリルパーオキシド;2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート等が挙げられる。さらには、上記開始剤に過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等を組み合わせて開始剤とすることができる。また、レドックス系開始剤としては、上記の過酸化物と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L-アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。開始剤の使用量は、重合触媒により異なり一概には決められず、重合速度に応じて任意に選択される。
重合工程で制御剤として使用される有機コバルト錯体は、2価のコバルト原子と有機配位子を含むものであればよい。好適な有機コバルト錯体としては、例えばコバルト(II)アセチルアセトナート[Co(acac)]、コバルト(II)ポルフィリン錯体等が挙げられる。中でも、製造コストの観点からコバルト(II)アセチルアセトナートが好適である。
前記制御ラジカル重合では、理論上は、添加する有機コバルト錯体一分子から一つのポリビニルエステル鎖が生成する。したがって、反応液に添加される有機コバルト錯体の量は、目的とする重合平均分子量と重合率とを考慮して決定される。通常、ビニルエステル単量体100molに対して、0.001~1molの有機コバルト錯体を使用することが好ましい。
前記制御ラジカル重合に用いられるラジカル開始剤のモル数は有機コバルト錯体のモル数の1倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましい。一方、発生するラジカルのモル数が有機コバルト錯体のモル数よりも多くなりすぎると、制御されないラジカル重合の割合が増えるので分子量分布が広がってしまう。用いられるラジカル開始剤のモル数は有機コバルト錯体のモル数の10倍以下であることが好ましく、6倍以下であることがより好ましい。
ドーマント種が生成されて、ポリビニルエステルの高重合度化を制御できる方法であれば、ラジカル開始剤、有機コバルト錯体及びビニルエステル単量体の混合方法は、特に限定されない。例えば、ラジカル開始剤及び有機コバルト錯体を混合した後に、得られた混合物とビニルエステル単量体を混合する方法、ラジカル開始剤、有機コバルト錯体及びビニルエステル単量体を一度に混合する方法、有機コバルト錯体とビニルエステル単量体を混合した後に、得られた混合物とラジカル開始剤を混合する方法などが挙げられる。また、ラジカル開始剤、有機コバルト錯体、ビニルエステル単量体は分割して混合してもよい。例えば、ラジカル開始剤及び有機コバルト錯体と、ビニルエステル単量体の一部を混合することにより、有機コバルト(III)錯体が短鎖のポリビニルエステル末端と共有結合したドーマント種を生成させた後に、当該ドーマント種とビニルエステル単量体の残部を混合して高重合度化させる方法等が挙げられる。なお、当該ドーマント種をマクロ開始剤として単離してから、ビニルエステル単量体の残部と混合して高重合度化させてもよい。
重合温度は、例えば0℃~80℃が好ましい。重合温度が0℃未満の場合は重合速度が不十分となり、生産性が低下する傾向にある。この点からは重合温度は10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。一方、重合温度が80℃を超えると得られるポリビニルエステルの分子量分布が広くなる傾向にある。この点からは重合温度は65℃以下がより好ましく、50℃以下がさらに好ましい。ビニルエステル単量体の重合工程に要する時間は、通常3~50時間である。
前記重合工程において目的とする重合率になったところで、上記式(I)で表される重合停止剤又はプロトン供与性重合停止剤を添加することによって重合反応を停止させる。
上記式(I)で表される重合停止剤としては、1,1-ジフェニルエチレン、スチレン、α-メチルスチレン及び4-tert-ブチルスチレン等が挙げられる。
プロトン供与性重合停止剤はポリ酢酸ビニル鎖の末端のラジカルに対してプロトンラジカルを提供できる重合停止剤であって、60℃での酢酸ビニルに対する連鎖移動定数が0.1以上であることが好ましい。例えば、ソルビン酸等が挙げられる。また、金属-水素結合を有する有機金属化合物等を用いることもできる。
添加される重合停止剤のモル数は、添加された有機コバルト錯体1molに対して、1~100molであることが好ましい。前記重合停止剤のモル数が少なすぎると、ポリマー末端のラジカルを十分に捕捉できず、得られるPVAの色調が悪化するおそれがある。そのため、前記重合停止剤のモル数は、有機コバルト錯体1molに対して、3mol以上であることがより好ましい。一方、前記重合停止剤のモル数が多すぎると生産コストが上昇するおそれがある。前記重合停止剤のモル数は、有機コバルト錯体1molに対して、50mol以下であることがより好ましい。
停止工程における反応液の温度は、上記式(I)で表される重合停止剤がポリ酢酸ビニル鎖の末端のラジカルと反応できる温度又はプロトン供与性重合停止剤がポリ酢酸ビニル鎖の末端のラジカルに対してプロトンラジカルを提供できる温度であればよく、0~80℃であることが好ましい。反応液の温度が0℃未満の場合は停止工程に時間がかかり過ぎて生産性が低下する。この点からは停止工程における反応液の温度は10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。一方、反応液の温度が80℃を超えると、不必要な酢酸ビニルの重合が進行して分子量分布(Mw/Mn)が大きくなる傾向にある。この点から上記温度は70℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましい。停止工程に要する時間は、通常、10分~5時間である。
停止工程の後、得られたポリビニルエステル溶液を、水溶性配位子を含む水溶液に接触させて、前記ポリビニルエステル溶液からコバルト錯体を抽出除去する抽出工程を行うことが好ましい。このように、ポリビニルエステル溶液中に含まれるコバルト錯体を予め除去してからけん化工程を行うことによって、色相がよく、ゲル化しにくいPVAを得ることができる。具体的には、相互に溶解しない前記水溶液と前記ポリビニルエステル溶液とを、両者の界面の面積が大きくなるように激しく撹拌してから静置し、油層と水層に分離した後で水層を除く操作を行えばよい。この操作は複数回繰り返してもよい。
抽出工程に用いられる水溶性配位子は、25℃におけるpKaが0~12の酸であることが好ましい。pKaが0未満の強酸を用いた場合、コバルト錯体を効率的に抽出することが困難であり、pKaは2以上であることが好ましい。またpKaが12を超える弱酸を用いた場合にもコバルト錯体を効率的に抽出することが困難であり、pKaは7以下であることが好ましい。前記酸が多価の酸である場合には、第一解離定数(pKa1)が上記範囲であることが必要である。pKaが0~12の酸がカルボン酸またはリン酸(pKa1は2.1)であることが好ましく、カルボン酸であることがより好ましい。中でも酢酸(pKaは4.76)であることが特に好ましい。
水溶性配位子を含む水溶液のpHは、0~5であることが好ましい。pHはより好適には1以上であり、さらに好適には1.5以上である。pHはより好適には4以下であり、さらに好適には3以下である。
けん化工程では、停止工程で得られたポリビニルエステルをけん化してPVAを得る。このとき、停止工程の後に抽出工程を行なってから、けん化工程を行なってもよい。
けん化工程では、前述の方法で製造されたポリビニルエステルをアルコールまたは含水アルコールに溶解した状態でけん化してPVAを得る。けん化反応に使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられ、メタノールが特に好適に使用される。けん化反応に使用されるアルコールは、アセトン、酢酸メチルや酢酸エチル等のエステル、トルエン等の溶剤を含有していてもよい。けん化反応に用いられる触媒としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムメチラート等のアルカリ触媒、あるいは鉱酸等の酸触媒が挙げられる。けん化反応の温度については、例えば20~60℃の範囲が適当である。けん化反応の進行に伴って、ゲル状生成物が析出してくる場合には、その時点で生成物を粉砕し、洗浄後、乾燥することにより、PVAが得られる。
こうして得られたPVAを用いて本発明の原反フィルムが製造される。当該原反フィルムの製造方法は特に限定されず、製膜後のフィルムの厚み及び幅がより均一になる製造方法を好ましく採用することができ、例えば、上記したPVA、及び必要に応じてさらに、後述する可塑剤、添加剤及び界面活性剤などのうちの1種または2種以上が液体媒体中に溶解した製膜原液や、PVA及び必要に応じてさらに、可塑剤、添加剤、界面活性剤及び液体媒体などのうちの1種または2種以上を含み、PVAが溶融している製膜原液を用いて製造することができる。当該製膜原液が可塑剤、添加剤及び界面活性剤の少なくとも1種を含有する場合には、それらの成分が均一に混合されていることが好ましい。
製膜原液の調製に使用される上記液体媒体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。そのうちでも、環境に与える負荷や回収性の点から水が好ましい。
製膜原液の揮発分率(製膜時に揮発や蒸発によって除去される液体媒体などの揮発性成分の製膜原液中における含有割合)は、製膜方法、製膜条件などによっても異なるが、一般的には、50~95質量%の範囲内であることが好ましく、55~90質量%の範囲内であることがより好ましく、60~85質量%の範囲内であることがさらに好ましい。製膜原液の揮発分率が50質量%以上であることにより、製膜原液の粘度が高くなり過ぎず、製膜原液調製時の濾過や脱泡が円滑に行われ、異物や欠点の少ないフィルムの製造が容易になる。一方、製膜原液の揮発分率が95質量%以下であることにより、製膜原液の濃度が低くなり過ぎず、工業的なフィルムの製造が容易になる。
製膜原液は界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤を含むことにより、製膜性が向上してフィルムの厚み斑の発生が抑制されると共に、製膜に使用する金属ロールやベルトからのフィルムの剥離が容易になる。界面活性剤を含む製膜原液から原反フィルムを製造した場合には、当該フィルム中には界面活性剤が含有され得る。上記の界面活性剤の種類は特に限定されないが、金属ロールやベルトからの剥離性の観点などから、アニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、オクチルサルフェート等の硫酸エステル型;ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型などが好適である。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型などが好適である。
これらの界面活性剤は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
製膜原液が界面活性剤を含む場合、その含有量は、製膜原液に含まれるPVA100質量部に対して、0.01~0.5質量部の範囲内であることが好ましく、0.02~0.3質量部の範囲内であることがより好ましく、0.05~0.1質量部の範囲内であることが特に好ましい。当該含有量が0.01質量部以上であることにより製膜性及び剥離性がより向上する。一方、当該含有量が0.5質量部以下であることにより、界面活性剤が原反フィルムの表面にブリードアウトしてブロッキングが生じ、取り扱い性が低下することを抑制することができる。
上記した製膜原液を用いて原反フィルムを製膜する際の製膜方法としては、例えば、キャスト製膜法、押出製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法などが挙げられる。これらの製膜方法は1種のみを採用しても2種以上を組み合わせて採用してもよい。これらの製膜方法の中でもキャスト製膜法、押出製膜法が、厚み及び幅が均一で物性の良好な原反フィルムが得られることから好ましい。製膜された原反フィルムには必要に応じて乾燥や熱処理を行うことができる。
本発明の原反フィルムの具体的な製造方法の例としては、例えば、T型スリットダイ、ホッパープレート、I-ダイ、リップコーターダイ等を用いて、上記の製膜原液を最上流側に位置する回転する加熱した第1ロール(あるいはベルト)の周面上に均一に吐出または流延し、この第1ロール(あるいはベルト)の周面上に吐出または流延された膜の一方の面から揮発性成分を蒸発させて乾燥し、続いてその下流側に配置した1個または複数個の回転する加熱したロールの周面上でさらに乾燥するか、または熱風乾燥装置の中を通過させてさらに乾燥した後、巻き取り装置により巻き取る方法を工業的に好ましく採用することができる。加熱したロールによる乾燥と熱風乾燥装置による乾燥とは、適宜組み合わせて実施してもよい。
本発明の原反フィルムは、上記のPVAの他に可塑剤を含むことができる。好ましい可塑剤としては多価アルコールが挙げられ、具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。さらにこれらの可塑剤の1種または2種以上を含むことができる。これらの中でも、延伸性の向上効果の点からグリセリンが好ましい。
本発明の原反フィルムにおける可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましい。当該含有量が1質量部以上であることによりフィルムの延伸性がより向上する。当該含有量は、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。一方、前記含有量が20質量部以下であることにより、フィルムが柔軟になり過ぎて取り扱い性が低下するのを抑制することができる。前記含有量が17質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。
本発明の原反フィルムには、さらに、充填剤、銅化合物などの加工安定剤、耐候性安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、他の熱可塑性樹脂、潤滑剤、香料、消泡剤、消臭剤、増量剤、剥離剤、離型剤、補強剤、架橋剤、防かび剤、防腐剤、結晶化速度遅延剤などの添加剤を、必要に応じて適宜配合できる。
本発明の原反フィルムにおけるPVA及び可塑剤の合計の占める割合は、原反フィルムの質量に基づいて、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
本発明の原反フィルムの厚みは特に制限されないが、一般的には1~75μm、さらには5~60μm、特に10~45μmであることが好ましい。当該厚みが薄すぎると、偏光フィルムを製造するための一軸延伸処理時に、延伸切れが発生しやすくなる傾向がある。また、当該厚みが厚すぎると、偏光フィルムを製造するための一軸延伸時に延伸斑が発生しやすくなる。ここでいう厚みは、多層フィルムの場合にはPVA層の厚みのことをいう。
原反フィルムは、単層フィルムであってもよいし、PVA層と基材樹脂層を有する多層フィルムを用いてもよい。単層フィルムの場合には、ハンドリング性を確保するために、フィルムの厚みが20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。一方、多層フィルムの場合には、PVA層の厚みを20μm以下にすることもできるし、15μm以下にすることもできる。多層フィルムにおける基材樹脂層の厚みは、通常20~500μmである。
原反フィルムとして、PVA層と基材樹脂層を有する多層フィルムを用いる場合、基材樹脂は、PVAとともに一軸延伸できるものでなければならない。ポリエステルやポリオレフィン樹脂などを用いることができる。なかでも、非晶ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートや、それにイソフタル酸や1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの共重合成分を共重合した非晶ポリエステル樹脂が好適に用いられる。PVA溶液を基材樹脂フィルムに塗布することによって多層フィルムを製造することが好ましい。このとき、PVA層と基材樹脂層の間の接着性を改善するために、基材樹脂フィルムの表面を改質したり、両層間に接着剤層を形成したりしてもよい。
本発明の原反フィルムのb値が0.35以下であることが好ましい。このようなb値の低い原反フィルムを用いることにより、光学性能に優れた光学フィルムが得られる。上述した製造方法により得られたPVAを用いて原反フィルムを製造することにより、分子量分布が狭く、かつb値の低い原反フィルムを製造することができる。原反フィルムのb値は0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。原反フィルムのb値は実施例に記載された方法により測定される。
本発明の原反フィルムの幅は特に制限されず、その用途などに応じて決めることができる。近年、液晶テレビや液晶モニターの大画面化が進行している点から原反フィルムの幅を3m以上にしておくと、これらを最終製品とする用途に好適である。一方、原反フィルムの幅があまりに大きすぎると実用化されている装置で光学フィルムを製造する場合に一軸延伸自体を均一に行うことが困難になりやすいなどの問題が生じる場合があることから、原反フィルムの幅は7m以下であることが好ましい。
こうして得られる本発明の原反フィルムによれば、成形性の低下を抑制しつつ、得られる光学フィルムの光学性能を高めることができる。したがって、当該原反フィルムは光学フィルムの製造に好適に用いられる。このような光学フィルムとしては、例えば、偏光フィルムや位相差フィルムなどが挙げられ、偏光フィルムであることが好ましい。
前記原反フィルムを一軸延伸する工程を有する光学フィルムの製造方法が本発明の好適な実施態様である。そして、前記原反フィルムを、二色性色素で染色する工程(染色工程)及び一軸延伸する工程(延伸工程)を有する偏光フィルムの製造方法が本発明のより好適な実施態様である。
前記原反フィルムを用いて偏光フィルムの製造するためのより具体的な方法としては、原反フィルムを、染色する染色工程、一軸延伸する延伸工程、及び必要に応じてさらに、膨潤させる膨潤工程、架橋させる架橋工程、固定処理する固定処理工程、洗浄する洗浄工程、乾燥させる乾燥工程、熱処理する熱処理工程などを有する方法が挙げられる。この場合、膨潤工程、染色工程、架橋工程、延伸工程、固定処理工程などの各工程の順序は特に制限されず、1つまたは2つ以上の工程を同時に行うこともできる。また、各工程の1つまたは2つ以上を2回またはそれ以上行うこともできる。
膨潤工程は、PVAフィルム(原反フィルム)を水に浸漬することにより行うことができる。水に浸漬する際の水の温度としては、20~50℃の範囲内であることが好ましく、22~45℃の範囲内であることがより好ましく、25~43℃の範囲内であることがさらに好ましい。また、水に浸漬する時間としては、例えば、0.1~5分間の範囲内であることが好ましく、0.5~3分間の範囲内であることがより好ましい。なお、水に浸漬する際の水は純水に限定されず、各種成分が溶解した水溶液であってもよいし、水と水性媒体との混合物であってもよい。
染色工程は、PVAフィルムに対して二色性色素を接触させることにより行うことができる。二色性色素としてはヨウ素系色素を用いるのが一般的である。染色の時期としては、一軸延伸前、一軸延伸時、一軸延伸後のいずれの段階であってもよい。染色はPVAフィルムを染色浴であるヨウ素-ヨウ化カリウムを含有する溶液(特に水溶液)中に浸漬させることにより行うのが一般的であり、本発明においてもこのような染色方法が好適に採用される。染色浴におけるヨウ素の濃度は0.01~0.5質量%の範囲内であることが好ましく、ヨウ化カリウムの濃度は0.01~10質量%の範囲内であることが好ましい。また、染色浴の温度は20~50℃、特に25~40℃とすることが好ましい。好適な染色時間は0.2~5分である。
PVAフィルムを架橋させる架橋工程を行うことにより、高温で湿式延伸する際にPVAが水へ溶出するのをより効果的に防止することができる。この観点から架橋工程は染色工程の後であって延伸工程の前に行うのが好ましい。架橋工程は、架橋剤を含む水溶液にPVAフィルムを浸漬することにより行うことができる。当該架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を使用することができる。架橋剤を含む水溶液における架橋剤の濃度は1~15質量%の範囲内であることが好ましく、1.5~7質量%の範囲内であることがより好ましく、2~6質量%の範囲内であることがさらに好ましい。架橋剤の濃度が1~15質量%の範囲内にあることで十分な延伸性を維持することができる。架橋剤を含む水溶液はヨウ化カリウム等を含有してもよい。架橋剤を含む水溶液の温度は、20~60℃の範囲内、特に25~55℃の範囲内とすることが好ましい。当該温度を20~60℃の範囲内にすることで効率良く架橋することができる。
PVAフィルムを一軸延伸する延伸工程は、湿式延伸法または乾式延伸法のいずれで行ってもよい。湿式延伸法の場合は、ホウ酸を含む水溶液中で行うこともできるし、上記した染色浴中や後述する固定処理浴中で行うこともできる。また乾式延伸法の場合は、室温のまま延伸を行ってもよいし、加熱しながら延伸してもよいし、吸水後のPVAフィルムを用いて空気中で行うこともできる。これらの中でも、幅方向に均一に延伸することができることから湿式延伸法が好ましく、ホウ酸を含む水溶液中で一軸延伸するのがより好ましい。ホウ酸水溶液中におけるホウ酸の濃度は0.5~6.0質量%の範囲内であることが好ましく、1.0~5.0質量%の範囲内であることがより好ましく、1.5~4.0質量%の範囲内であることが特に好ましい。また、ホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有してもよく、ヨウ化カリウムの濃度は0.01~10質量%の範囲内にすることが好ましい。一軸延伸における延伸温度は、30~90℃の範囲内であることが好ましく、40~80℃の範囲内であることがより好ましく、50~70℃の範囲内であることが特に好ましい。
また、一軸延伸における延伸倍率(原反フィルムからの全延伸倍率)は、得られる偏光フィルムの偏光性能の点から5倍以上であることが好ましく、5.5倍以上であることがより好ましい。延伸倍率の上限は特に制限されないが、延伸倍率は8倍以下であることが好ましい。
長尺のPVAフィルムを一軸延伸する場合における一軸延伸の方向に特に制限はなく、長尺方向への一軸延伸や横一軸延伸を採用することができるが、偏光性能に優れる偏光フィルムが得られることから長尺方向への一軸延伸が好ましい。長尺方向への一軸延伸は、互いに平行な複数のロールを備える延伸装置を使用して、各ロール間の周速を変えることにより行うことができる。一方、横一軸延伸はテンター型延伸機を用いて行うことができる。
偏光フィルムの製造にあたっては、PVAフィルムへの二色性色素(ヨウ素系色素等)の吸着を強固にするために、延伸工程の後に固定処理工程を行うことができる。固定処理に使用する固定処理浴としては、ホウ酸、硼砂等のホウ素化合物の1種または2種以上を含む水溶液を使用することができる。また、必要に応じて、固定処理浴中にヨウ素化合物や金属化合物を添加してもよい。固定処理浴におけるホウ素化合物の濃度は、一般に2~15質量%、特に3~10質量%程度であることが好ましい。当該濃度を2~15質量%の範囲内にすることで二色性色素の吸着をより強固にすることができる。固定処理浴の温度は、15~60℃、特に25~40℃であることが好ましい。
洗浄工程は、蒸留水、純水、水溶液等にPVAフィルムを浸漬して行われることが一般的である。このとき、偏光性能向上の点からヨウ化カリウム等のヨウ化物を助剤として含有する水溶液を用いることが好ましく、当該ヨウ化物の濃度は0.5~10質量%とすることが好ましい。また、洗浄処理における水溶液の温度は一般的に5~50℃であり、10~45℃が好ましく、15~40℃がさらに好ましい。経済的な観点から水溶液の温度が低すぎることは好ましくなく、水溶液の温度が高すぎると偏光性能が低下することがある。
乾燥工程の条件は特に制限されないが、30~150℃の範囲内、特に50~130℃の範囲内の温度でPVAフィルムの乾燥を行うことが好ましい。30~150℃の範囲内の温度で乾燥することで寸法安定性に優れる偏光フィルムが得られやすい。
こうして得られる偏光フィルムの二色性比(R)が100以上であることが好ましい。本発明の原反フィルムを用いることにより、このような高い二色性比(R)を有する偏光フィルムを生産性良く製造することができる。二色性比(R)は150以上がより好ましく、190以上がさらに好ましい。偏光フィルムの二色性比(R)の算出方法は以下のとおりである。まず、表面反射を排除した透過率(T’)と単体透過率(T)の関係は式(1)で示される。このとき、PVAの屈折率は1.5であるとし、表面での反射率は4%であるとした。透過率(T’)と偏光度(V)と二色性比(R)との関係は式(2)で示される。したがって、単体透過率(T)および偏光度(V)を計測した上で、それらの値を用いて式(1)及び(2)を解くことで偏光フィルムの二色性比(R)を算出することができる。
T’=T/(1-0.04) (1)
R={-ln[T’(1-V)]}/{-ln[T’(1+V)]} (2)
以上のようにして得られた偏光フィルムは、通常、その両面または片面に、光学的に透明で且つ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせて偏光板にして使用される。保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが使用される。また、貼り合わせのための接着剤としては、PVA系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリレート系紫外線硬化型接着剤などを挙げることができる。
上記のようにして得られた偏光板は、アクリル系等の粘着剤をコートした後、ガラス基板に貼り合わせてLCDの部品として使用することができる。同時に位相差フィルムや視野角向上フィルム、輝度向上フィルム等と貼り合わせてもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。各測定及び評価の方法は以下のとおりである。
[重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定]
東ソー株式会社製サイズ排除高速液体クロマトグラフィー装置「HLC-8320GPC」を用い、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。測定条件は以下の通りである。
カラム:東ソー株式会社製HFIP系カラム「GMHHR-H(S)」2本直列接続
標準試料:ポリメチルメタクリレート
溶媒及び移動相:トリフルオロ酢酸ナトリウム-HFIP溶液(濃度20mM)
流量:0.2mL/min
温度:40℃
試料溶液濃度:0.1wt%(開口径0.45μmフィルターでろ過)
注入量:10μL
検出器:RI
[1,2-グリコール結合量(mol%)の測定]
90℃で減圧乾燥を2日間行ったPVAを、DMSO-dに溶解し、トリフルオロ酢酸を数滴加えた試料を調製し測定に供した。日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMBDA 500」を用い、80℃でH-NMR測定を行った。ポリビニルアルコール中の残存アセチル基量からけん化度が99.9mol%以上であることを確認した後に、1,2-グリコール結合量の測定に供した。ビニルアルコール単位のメチン由来のピークは3.2~4.0ppm(積分値A)、1,2-グリコール結合の1つのメチン由来のピークは3.25ppm(積分値B)に帰属され、次式で1,2-グリコール結合含有量を算出できる。
1,2-グリコール結合量(mol%)=(B/A)×100
[PVAフィルムの軟化点]
測定対象となるPVAフィルムの軟化点を、第一理化株式会社製自動軟化点測定装置「EX-820」を使用して測定した。具体的には、PVAフィルムから3cm角のサイズの正方形のサンプルを切り出し、このサンプルを中央に直径1cmの円形の穴のあいた厚み1mmで3cm角のステンレス板と中央に1cm×2cmの長方形の穴のあいた厚み1mmで3cm角のステンレス板との間に挟み、円形の穴のあいたステンレス板の方を上面にして架台に設置して、円形の穴の中央に位置するフィルム上にJIS B 1501:2009に定める鋼球(呼び:3/8(直径9.525mm)、等級:G60、質量:3.5g±0.05g)を載せた。続いて25℃の蒸留水を750mL入れ、毎分5℃で昇温し、フィルムが架台から25mmの位置まで降下したときの温度をPVAフィルムの軟化点とした。
[PVAフィルムの色相の評価]
以下の実施例及び比較例で得られたPVAフィルムから、3cm×2.5cmの長方形のサンプルを採取し、積分球付き分光光度計(日立日テクノロジーズ製「U-4100」)を用いて、JIS Z 8722(物体色の測定方法)に準拠し、C光源、2°視野の可視光領域の視感度補正を行った上で、b値を測定した。
[偏光フィルムの光学特性]
以下の実施例及び比較例で得られた偏光フィルムの幅方向の中央部から、偏光フィルムの長さ方向に4cmの長方形のサンプルを採取し、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製「V7100」)を用いて、JIS Z 8722(物体色の測定方法)に準拠し、C光源、2°視野の可視光領域の視感度補正を行った上で、単体透過率(T)および偏光度(V)を測定した。
こうして得られたTおよびVの値から以下の式(1)及び(2)を解くことで偏光膜の二色性比(R)を算出した。ここで、PVAの屈折率は1.5であるとし、表面での反射率は4%であるとした。
T’=T/(1-0.04) (1)
R={-ln[T’(1-V)]}/{-ln[T’(1+V)]} (2)
[偏光フィルムの収縮応力]
収縮応力は島津製作所製の恒温槽付きオートグラフAG-Xとビデオ式伸び計TR V
iewX120Sを用いて測定した。測定には20℃/20%RHで18時間調湿した偏光フィルムを使用した。オートグラフAG-Xの恒温槽を20℃にした後、偏光フィルム(長さ方向15cm、幅方向1.5cm)をチャック(チャック間隔5cm)に取り付け、引張り開始と同時に、80℃へ恒温槽の昇温を開始した。偏光フィルムを1mm/minの速さで引張り、張力が2Nに到達した時点で引張りを停止し、その状態で4時間後までの張力を測定した。このとき、熱膨張によってチャック間の距離が変わるため、チャックに標線シールを貼り、ビデオ式伸び計TR ViewX120Sを用いてチャックに貼り付けた標線シールが動いた分だけチャック間の距離を修正できるようにして測定を行った。なお、4時間後の張力の測定値から初期張力2Nを差し引いた値を偏光フィルムの収縮力とし、その値をサンプル断面積で除した値を収縮応力(MPa)と定義した。
合成例1
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル100質量部、有機コバルト錯体としてコバルト(II)アセチルアセトナート0.04質量部を仕込み、窒素バブリングをしながら30分間反応器内を不活性ガス置換した。水浴を加熱して反応器の昇温を開始し、内温が40℃となったところで、ラジカル開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)を0.13質量部添加して2時間撹拌し、降温し内温を30℃に維持して重合を開始させた。適宜サンプリングを行い、その固形分濃度から重合の進行を確認し、酢酸ビニルの転化率が20%に到達したところで重合停止剤として1,1-ジフェニルエチレン0.13質量部を添加し、30℃で撹拌した。重合開始後から目標転化率に至るまでに3時間を要した。重合停止剤を添加してから、さらに濃度25質量%の酢酸水溶液92質量部を添加し、5分攪拌した後、30分静置し二層に分離し、水層を除去した。以上の分液操作を計3回繰り返した後に、酢酸水溶液を脱イオン水に変えて同様の分液操作を計3回繰り返した。その後反応器に真空ラインに接続し、残留する酢酸ビニルをメタノールとともに30℃で減圧留去した。反応器内を目視で確認しながら、粘度が上昇したところで適宜メタノールを添加しながら留去を続け、ポリ酢酸ビニルの20質量%メタノール溶液を得た。次に、上記と同様の反応器に、得られたポリ酢酸ビニルの20質量%メタノール溶液100質量部とメタノール20質量部を添加し溶解した後、水浴を加熱して内温が40℃になるまで加熱撹拌した。ここに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)13.3質量部(水酸化ナトリウムとして1.9質量部)を添加して、40℃でけん化を行った。生成したゲル化物を粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で放置して1時間けん化を進行させた。得られたけん化物にさらに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)1.9質量部を添加し、65℃の加熱還流下でさらに1時間けん化反応を追い込んだ。その後、酢酸メチル30質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別することによって固体を得て、これにメタノール75質量部を加えて1時間加熱還流した。その後、遠心脱水して得られた固体を真空乾燥機にて40℃で24時間乾燥させ、目的のPVAを得た。得られたPVAの重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、けん化度、1,2-グリコール結合量を表1に示す。
合成例2
コバルト(II)アセチルアセトナートを0.02質量部、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)を0.07質量部とした以外は合成例1と同様にして重合を実施した。酢酸ビニルの転化率が20%に到達したところで重合停止剤として1,1-ジフェニルエチレン0.07質量部を添加し、30℃で撹拌した。重合開始後から目標転化率に至るまでに3時間を要した。以後は合成例1と同様にして、後処理及びけん化反応を実施し、目的のPVAを得た。得られたPVAの重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、けん化度、1,2-グリコール結合量を表1に示す。
合成例3
コバルト(II)アセチルアセトナートを0.02質量部、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)を0.07質量部とした以外は合成例1と同様にして重合を実施した。酢酸ビニルの転化率が36%に到達したところで重合停止剤として1,1-ジフェニルエチレン0.07質量部を添加し、30℃で撹拌した。重合開始後から目標転化率に至るまでに5時間を要した。以後は合成例1と同様にして、後処理及びけん化反応を実施し、目的のPVAを得た。得られたPVAの重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、けん化度、1,2-グリコール結合量を表1に示す。
合成例4
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル100質量部、メタノール39質量部を仕込み、窒素バブリングをしながら30分間反応器内を不活性ガス置換した。水浴を加熱して反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.02質量部添加し重合を開始した。適宜サンプリングを行い、その固形分濃度から重合の進行を確認し、酢酸ビニルの転化率が37%に到達したところで重合停止剤として濃度1質量%ヒドロキノンメタノール溶液2.4質量部を添加し、30℃まで冷却して重合を停止した。重合開始後から目標転化率に至るまでに3時間を要した。真空ラインに接続し、残留する酢酸ビニルをメタノールとともに30℃で減圧留去した。反応器内を目視で確認しながら、粘度が上昇したところで適宜メタノールを添加しながら留去を続け、ポリ酢酸ビニルの20質量%メタノール溶液を得た。以後は合成例1と同様にして、後処理及びけん化反応を実施し、目的のPVAを得た。得られたPVAの重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、けん化度、1,2-グリコール結合量を表1に示す。
合成例5
メタノールを22質量部、アゾビスイソブチロニトリルを0.01質量部とした以外は合成例1と同様にして酢酸ビニルの重合を実施した。酢酸ビニルの転化率が30%に到達したところで重合停止剤として濃度1質量%ヒドロキノンメタノール溶液1.3質量部を添加し、30℃まで冷却して重合を停止した。重合開始後から目標転化率に至るまでに2.5時間を要した。以後は合成例4と同様にして、目的のPVAを得た。得られたPVAの重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、けん化度、1,2-グリコール結合量を表1に示す。
合成例6
メタノールを10質量部、アゾビスイソブチロニトリルを0.005質量部とした以外は合成例1と同様にして重合を実施した。酢酸ビニルの転化率が23%に到達したところで重合停止剤として濃度1質量%ヒドロキノンメタノール溶液0.6質量部を添加し、30℃まで冷却して重合を停止した。重合開始後から目標転化率に至るまでに3時間を要した。以後は合成例4と同様にして目的のPVAを得た。得られたPVAの重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、けん化度、1,2-グリコール結合量を表1に示す。
合成例7
合成例1と同様にして重合を実施した。酢酸ビニルの転化率が20%に到達したところで重合停止剤としてTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)0.11質量部を添加し、30℃で撹拌した。重合開始後から目標転化率に至るまでに3時間を要した。以後は合成例1と同様にして、後処理及びけん化反応を実施し、目的のPVAを得た。得られたPVAの重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、けん化度、1,2-グリコール結合量を表1に示す。
実施例1
合成例1で得られたPVA100質量部、可塑剤としてグリセリン10質量部、及び界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム0.1質量部を含み、PVA含有率が11.5質量%である水溶液を製膜原液として用いて、これを80℃の金属ロール上で乾燥し、得られたフィルムを熱風乾燥機中で90℃の温度で10分間熱処理をすることにより軟化点を65.5℃に調整して、厚みが45μmのPVAフィルムを作製した。得られたPVAフィルムのb値を上述した方法により測定した。結果を表1に示す。
こうして得られたPVAフィルムの幅方向中央部から、幅5cm×長さ5cmの範囲が一軸延伸できるように幅5cm×長さ9cmのサンプルをカットした。このサンプルを40℃の純水に60秒間浸漬しつつ2.0倍に長さ方向に一軸延伸して、膨潤処理した。続いてヨウ素0.04質量%及びヨウ化カリウム4.0質量%を含有する水溶液(染色処理浴)(温度32℃)に120秒間浸漬しつつ1.25倍(全体で2.5倍)に長さ方向に一軸延伸してヨウ素を吸着させた。次いで、ホウ酸2.6質量%を含有する水溶液(ホウ酸架橋処理浴)(温度50℃)に120秒浸漬しつつ1.44倍(全体で3.6倍)に長さ方向に一軸延伸した。さらにホウ酸を2.8質量%及びヨウ化カリウムを5質量%の割合で含有する57℃の水溶液(一軸延伸処理浴)に浸漬しつつ、全体で6.0倍まで長さ方向に一軸延伸した。その後、ホウ酸を1.5質量%およびヨウ化カリウムを5質量%の濃度で含有する温度22℃のヨウ化カリウム水溶液(洗浄浴)中に5秒間浸漬することによりフィルムを洗浄した。最後に80℃で4分間乾燥して偏光フィルムを製造した。
得られた偏光フィルムを用いて上記した方法により、単体透過率(T)および偏光度(V)を測定し二色性比(R)を求めた。また、偏光フィルムの収縮応力を測定した。結果を表1に示す。
実施例2、3及び比較例1~3
合成例2~6で得られたPVAを用い、PVAフィルムの厚みが45μm、軟化点が65.5℃になるように、製膜原液のPVA含有率及び熱処理温度を調整した以外は実施例1と同様にしてPVAフィルムの作製及び評価を行った。得られたPVAフィルムを用いて、実施例1と同様にして偏光フィルムの製造及び評価を行った。結果を表1に示す。
参考例1
合成例7で得られたPVAを用い、PVAフィルムの厚みが45μm、軟化点が65.5℃になるように、製膜原液のPVA含有率及び熱処理温度を調整した以外は実施例1と同様にしてPVAフィルムの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0007042583000002
図1は、実施例1~3及び比較例1~3の偏光フィルムについて、重量平均分子量(Mw)を横軸に、二色性比を縦軸にプロットした図であり、図2は、これらの偏光フィルムについて、収縮応力を横軸に、二色性比を縦軸にプロットした図である。図1に示されるように、重量平均分子量(Mw)がほぼ同じであるPVAを用いて得られた偏光フィルムを比較した場合、PVAの分子量分布(Mw/Mn)が狭いもの(実施例1~3)が、PVAの分子量分布(Mw/Mn)が広いもの(比較例1~3)よりも優れた二色性比を有していた。偏光フィルムの収縮応力に関して、一般的に、二色性比が高くなるにつれて、収縮応力も高くなる傾向がある。図2に示されるように、実施例1~3及び比較例1~3の偏光フィルムでもこのような傾向が見られた。このとき、分子量分布(Mw/Mn)の違いによる顕著な差は見られなかった。以上のとおり、PVAの分子量分布(Mw/Mn)を狭くすることによって、成形性の低下を抑えつつ、光学性能を向上させることができることが確認された。

Claims (4)

  1. 重量平均分子量(Mw)が100,000~1,000,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.95であり、けん化度が80~99.99mol%であるポリビニルアルコールを含み、b値が0.35以下である原反フィルムを、二色性色素で染色する工程及び一軸延伸する工程を行うことにより得られ、二色性比(R)が100以上である、偏光フィルム
  2. 前記原反フィルムの厚みが1~75μmである、請求項1に記載の偏光フィルム
  3. 前記原反フィルムがさらに可塑剤を、前記ポリビニルアルコール100質量部に対して、1~20質量部含有する、請求項1又は2に記載の偏光フィルム
  4. 前記原反フィルムを、二色性色素で染色する工程及び一軸延伸する工程を有する、請求項1~3のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
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