JP7013832B2 - 塗布液、当該塗布液を用いたインクジェット用インク、封止膜及び封止膜の形成方法 - Google Patents
塗布液、当該塗布液を用いたインクジェット用インク、封止膜及び封止膜の形成方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP7013832B2 JP7013832B2 JP2017238206A JP2017238206A JP7013832B2 JP 7013832 B2 JP7013832 B2 JP 7013832B2 JP 2017238206 A JP2017238206 A JP 2017238206A JP 2017238206 A JP2017238206 A JP 2017238206A JP 7013832 B2 JP7013832 B2 JP 7013832B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- film
- polysilazane
- coating liquid
- layer
- coating
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Electroluminescent Light Sources (AREA)
Description
特許文献1では、無機膜で封止し、特許文献2では、ガラス基板で封止している。
しかしながら、特許文献1では、有機EL素子の作製を真空下で行い、その後、ポリシラザン溶液の塗布及び乾燥を大気圧下で行い、さらに、無機膜による封止を真空下で行っているため、これらの工程が煩雑である。
また、特許文献2の技術では、ガラス基板を用いているため、フレキシブルデバイスに適用することができない。特許文献3の技術では、封止していないため、デシカント機能を維持することはできない。
このようなSiOxNy組成を有する膜を形成するためには、加水分解反応を抑制した上で、光反応を進行させる必要がある。ポリシラザンは大気中に存在する水分レベルで容易に加水分解し、シラノール(SiOH)を多く含むシリカ(SiOx)膜に転化してしまうためである。この加水分解を抑制するために、ポリシラザン膜のエネルギー線照射による改質処理は、低湿度下で行う必要がある。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.ポリシラザンを含有する塗布液であって、
前記ポリシラザンと、前記ポリシラザンの一部に酸素原子が導入され、シリコン(Si)原子に対する酸素(O)原子の原子組成比の値(O/Si)が、0.02~0.21の範囲内である酸化ポリシラザンと、を含有することを特徴とする塗布液。
前記塗布液の膜を形成する工程を有することを特徴とする封止膜の形成方法。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明の塗布液に含まれる酸化ポリシラザンの割合は、Si原子に対するO原子の原子組成比の値(O/Si)で求められ、本発明においては、原子組成比の値(O/Si)が、0.01~1の範囲内である。
原子組成比の値(O/Si)を、0.01~1の範囲内とすることで、僅かに酸化が進行したポリシラザン塗布液とすることができ、当該塗布液を、窒素雰囲気下(低酸素・低湿度下)で塗布、乾燥及び改質処理までの全てのプロセスを連続して行うことで、所望のSiOxNy組成の封止膜が得られる。そして、得られた封止膜は、適度に酸化され、かつ、封止膜中に窒素原子が存在していることから、高い耐酸化性を有し、かつ、酸化の余地が残されていることからデシカント機能も有する封止膜とすることができる。したがって、高い封止性能を有し、有機EL素子等のダークスポットの抑制につながる。
なお、上記のような塗布液の膜(塗布液を塗布してなる塗布膜。以下、単に「塗布膜」ともいう。)が、適度に酸化されている状態で改質処理を行う必要があるのは、エネルギー線照射前に分子内に酸素源を導入しておくことで、エネルギー線照射時に起こる結合開裂→再結合で、塗布膜の内部まで分子内に酸素原子が導入され、塗布膜の耐酸化性が向上するためである。酸化が進行していないポリシラザン塗布膜の状態で、窒素雰囲気下にてエネルギー線照射を行っても、酸化は塗布膜のごく表層部でしか進行しないため、所望の膜厚を有する所望のSiOxNy組成の膜は得られない。
本発明の実施態様としては、前記原子組成比の値(O/Si)が、0.05~0.5の範囲内であることが、塗布液が適度に酸化され、所望のSiOxNy組成を有することが
できる点で好ましい。
本発明の封止膜は、前記塗布液の膜を改質処理してなることを特徴とする。
前記塗布液の膜を形成する工程は、窒素雰囲気下にて行うことが好ましい。窒素雰囲気下で行うことによって、酸素及び水蒸気を実質的に含まない雰囲気下とすることができるため、酸素及び水蒸気にセンシティブな素子の封止に適した工程となり、また、塗布液の膜を得る際に過剰な酸素が導入されるのを防ぐことができる。
本発明の塗布液は、ポリシラザンを含有する塗布液であって、前記ポリシラザンと、前記ポリシラザンの一部に酸素原子が導入され、シリコン(Si)原子に対する酸素(O)原子の原子組成比の値(O/Si)が、0.02~0.21の範囲内である酸化ポリシラザンと、を含有することを特徴とする。
本発明のポリシラザン塗布液に含まれる酸化ポリシラザンの割合は、実質、酸素及び水分が存在しない窒素雰囲気下にて、塗布及び乾燥して得られたポリシラザン塗布膜のXPS分析(X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy))によって算出することができる。
本発明のポリシラザン塗布液を窒素雰囲気下にて塗布、乾燥することで、塗布、乾燥中に膜内に導入されるような、酸素源に成り得る物質はないと考えられるため、このように形成した塗布膜中の酸素原子組成比を求めれば、すなわち、これが塗布液中に存在した酸素原子組成比を求めたことと同義となる。ただし、塗布膜を分析装置に導入するまでの経路で酸素源に成り得る物質に暴露されないよう注意する必要がある。
以下、XPS分析法について説明する。
本発明に係る塗布膜の厚さ方向における元素濃度分布(以下、デプスプロファイルという。)は、具体的には、ケイ素(Si)、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)分布曲線等を、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、塗布膜の表面より内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。
このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:atom%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は前記塗布膜の厚さ方向における表面からの距離におおむね相関することから、「塗布膜の厚さ方向における塗布膜の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される封止膜の表面からの距離を採用することができる。
また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar+)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO2熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
・分析装置:アルバック・ファイ社製 Quantera SXM
・X線源:単色化Al-Kα
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:SiO2換算スパッタ厚さで、所定の厚さ間隔で測定を繰り返し、深さ方向のデプスプロファイルを求める。この厚さ間隔は、1nmとした(深さ方向に1nmごとのデータが得られる)。
本発明における原子組成比の値(O/Si)は、深さ方向のデプスプロファイルから、表層から20nm程度、膜厚方向内側に入った位置からO/Siが測定誤差を考慮した上でほぼ一定値を示す領域の平均値から求めることができる。
有機溶媒としては、ポリシラザンを溶解できるものであれば特に制限されないが、ポリシラザンと容易に反応してしまう水及び反応性基(例えば、ヒドロキシ基、又はアミン基等)を含まず、ポリシラザンに対して不活性の有機溶剤が好ましく、非プロトン性の有機溶剤がより好ましい。具体的には、溶剤としては、非プロトン性溶剤;例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターペン等の、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒;塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類:例えば、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、モノ-及びポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類)などを挙げることができる。上記溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度等の目的にあわせて選択され、単独で使用されても又は2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、ポリシラザンが有機溶媒に溶解したポリシラザン原溶液は、無触媒であってもよいし、触媒を含んでいてもよい。
触媒としては、塩基性触媒が好ましく、特に、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3-モルホリノプロピルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン等のアミン触媒、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒、N-複素環式化合物が挙げられる。これらのうち、アミン触媒を用いることが好ましい。この際添加する触媒の濃度としては、ケイ素化合物を基準としたとき、好ましくは0.1~5質量%の範囲内、より好ましくは0.5~2質量%の範囲内である。触媒添加量をこの範囲とすることで、反応の急激な進行による過剰なシラノール形成及び膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けることができる。また、これらの触媒を添加することで、より微量の水分量でポリシラザンの酸化を進行する。
ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120-20、NAX120-20、NL120-20などが挙げられる。
粘度の測定は、市販されている回転式や振動式の粘度計によって行うことができる。
揮発性増粘剤としては、塗布液の膜形成を阻害しない程度の揮発性を有し、20℃における粘度が概ね1mPa・s以上の液状化合物、又は、混合することで1mPa・s以上の粘度となるような液状混合物であれば特に制限されないが、前述したポリシラザン溶液に用いられる有機溶媒及びポリシラザンとの相溶性があり、ポリシラザンとの反応性を有さないような非プロトン性で、水の溶解度が低い非水溶性の揮発性オイルやグリコールエーテルが好ましい。
具体的には、揮発性オイルとしては、例えば、テレピン、ペトロール、ミネラルスピリット、α-ピネン、イソパラフィン、揮発性シリコーンオイルなど、グリコールエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられ、中でも、ジエチレングリコールジブチルエーテルや、揮発性シリコーンオイルなどの適度な粘度と揮発性と非水溶性を有する化合物は、希釈溶剤と兼用することができる点で好ましい。
Mwが、3000以上のポリシラザン又は酸化ポリシラザンとしては、例えば、特許5172867に記載の方法を参考にして、重量平均分子量Mwが3000以上の高分子量成分のみを有するポリシラザンを得ることができる。
含水量が上記範囲である希釈溶媒を適量添加することで、ごく微量の水分が導入され、極めて早い加水分解反応が起こり、ポリシラザンの一部に酸素原子が導入された酸化ポリシラザンが形成され、原子組成比の値(O/Si)が上記範囲内の本発明のポリシラザン塗布液とされる。
また、本発明における酸化剤を適量添加することで、ポリシラザンの一部に酸素原子が導入された酸化ポリシラザンが形成され、水分の場合と同様、本発明のポリシラザン塗布液が得られる。
本発明に係る酸化剤としては、酸素原子を含む活性置換基がポリシラザンと反応し、酸素原子がポリシラザン分子内に導入される材料であれば特に限定されないが、ヒドロキシ基を有する低分子化合物が好ましく、例えば、メタノール、エタノール、フェノールなどのアルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノ置換エーテル、ジエチレングリコールモノ置換エーテルなどの残ヒドロキシ基を有するエチレングリコール類などが挙げられる。
ただし、ポリシラザンに導入される置換基内に炭素原子が過剰に存在すると、後工程のポリシラザン改質時に改質阻害要因となり得るため、例えば、メタノールやエタノールなどの低分子化合物がより好ましい。これらの有機化合物からなる酸化剤を用いる方法は、含水した有機溶媒を用いる方法と比較して、添加量を調整することで望みの酸化度を有する酸化ポリシラザンが得られる点でより好ましい。
また、含水量の調整は、含水量に応じて、湿度50~80%環境下に一定時間暴露することで調整することができる。
なお、含水量は、カールフィッシャー水分測定装置を用いたカールフィッシャー滴定法により求めることができる。
が好ましい。
含水した希釈溶媒、又は、本発明に係る酸化剤、及び揮発性増粘剤の添加中から添加後にかけて撹拌することが、均一な酸化反応を進行させる点で好ましく、さらに、加熱撹拌することが、酸化反応が促進する点で好ましい。加熱温度としては、希釈溶媒の沸点以下であることが好ましく、50~120℃の範囲内がより好ましい。加熱手段や撹拌手段としては特に制限はなく、溶液を加熱、撹拌するための一般的な方法を適用することができるが、加熱する場合は、間接的に溶液の入った容器や釜を温めることで液を加熱する方法が好ましい。また、撹拌の場合は、撹拌羽を取り付けたシャフトをモーターにより回転させる方法、液が少量であれば撹拌子とスターラーを用いて撹拌する方法などが適用できる。
また、塗布液を安定化(脱泡)させるために、加熱、撹拌又は超音波分散させることが
好ましい。
溶存ガス量の測定方法は、例えば、塗布液を加熱、撹拌又は超音波分散後に発生したガスを捕集し、GC/MS及び検出したいガスに適した検出器を組み合わせることで、ガスの同定及び定量が可能となる。また、ポリシラザンの酸化反応で発生し塗布液への溶存が懸念されるガスとしては、アンモニアガス、シランガスであることが分かっているため、対象となるガスに応じたガス検知管やガス検知器を用いて発生量を定量し、その総量を溶存ガス量として推算することも可能である。
本発明のインクジェット用インクは、上記本発明の塗布液を用いたことを特徴とする。すなわち、本発明のインクジェット用インクは、上記塗布液に由来することを特徴とする。
本発明の封止膜は、上記本発明の塗布液を塗布してなる塗布膜を改質処理してなることを特徴とする。
本発明の封止膜の形成方法は、前記塗布液を塗布して塗布膜を得る工程を有することを特徴とする。
前記塗布膜を得る工程は、例えば、グローブボックス内といった窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
インクジェット方式は、大別するとドロップオンデマンド方式とコンティニュアス方式二つに分けられ、どちらも使用することができる。ドロップオンデマンド方式としては、電気-機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気-熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)等がある。インクジェットヘッドのコストや生産性の観点からは、電気-機械変換方式、又は電気-熱変換方式のヘッドを用いることが好ましい。なお、インクジェット方式により、液滴(例えば、塗布液)を滴下させる方法を「インクジェット法」と呼ぶ場合がある。
乾燥工程も、窒素雰囲気下にて行うことが好ましい。乾燥方法については、従来公知である特開2014-151571号公報の段落「0058」~「0064」、特開2011-183773号公報の段落「0052」~「0056」等を参照して採用することができる。
改質処理とは、ポリシラザンの酸化ケイ素又は酸窒化ケイ素への転化反応をいう。改質処理も、同様に、グローブボックス内といった窒素雰囲気下や減圧下で行う。
本発明における改質処理は、ポリシラザンの転化反応に基づく公知の方法を選ぶことができる。本発明においては、低温で転化反応が可能なプラズマやオゾンや紫外線を使う転化反応が好ましい。プラズマやオゾンは従来公知の方法を用いることができる。本発明においては、上記塗布膜を設け、波長200nm以下の真空紫外光(VUVともいう。)を照射して改質処理することにより、本発明の封止膜を形成することが好ましい。
当該封止膜のうち、膜全体が改質された膜であってもよいが、改質処理された改質膜の厚さは、1~50nmの範囲内が好ましく、1~30nmの範囲内がさらに好ましい。
また、封止膜は1層でも2層以上の積層で設けてもよい。積層する場合は、1層ごとに改質処理工程を有することが好ましい。特に、膜厚を300nmより厚くする場合は、2層以上の積層で設けることが、膜の耐久性の観点から好ましい。
ただし、ポリシラザン改質時のエネルギー線によるダメージから有機EL素子を保護する目的で、ポリシラザン封止層を形成する前の有機EL素子上に別途、無機膜、有機膜、有機無機ハイブリッド膜、あるいは、それらの積層膜からなる保護層を設けてもよい。積層膜を設ける場合は、同一種類の膜の積層でも、又は、例えば、無機膜と有機膜など異なる種類の膜の積層でもよい。無機膜はCVDやPVDなどの蒸着や、スパッタなどの気相法で設けてもよく、また、無機膜又は有機無機ハイブリッド膜は、ポリシラザンなどの無機あるいは有機無機前駆体材料を用いて塗布法により形成してもよい。具体的な材料としては、無機膜は金属や金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物などを含む膜が挙げられ、有機膜や有機無機ハイブリッド膜はUV硬化樹脂や熱硬化樹脂及びそれらとの無機ハイブリッド材料などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の封止膜においては、前駆体としてポリシラザン、特に好ましくはパーヒドロポリシラザンを用いて形成することが好ましい態様であるが、最終完成物である封止膜が、ポリシラザンにより形成された膜であることは、下記の方法により分析することにより実証することができる。
y=0.8-x/3、x≧0、y≧0、
元の組成がSiN0.8Hwの場合、パーヒドロポリシラザンから塗布形成された膜の厚さ方向の組成分布をXPSにより分析した場合、厚さ方向の各測定点でのいずれの組成も上記式にあてはまることになる(数%の誤差は存在する)。
本発明の封止膜は、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化する機能性素子に対して好ましく適用できる。
本発明に係る機能性素子の例としては、有機EL素子、液晶表示素子(LCD)、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、有機EL素子又は太陽電池が好ましく、有機EL素子が特に好ましい。
本発明に係る電子デバイスは、例えば、下記(I)~(IV)の構成例が挙げられる。
(I)基材(バリアーフィルム)/有機EL素子/ポリシラザン封止膜
(II)基材(バリアーフィルム)/有機EL素子/無機層/ポリシラザン封止膜
(III)基材(バリアーフィルム)/有機EL素子/平坦化層/ポリシラザン封止膜
(IV)基材(バリアーフィルム)/有機EL素子/無機層/平坦化層/ポリシラザン封止膜
以下、各構成要素について説明する。
本発明に係る基材としては、具体的には、ガラス又は樹脂フィルムの適用が好ましく、フレキシブル性を要求される場合は、樹脂フィルムであることが好ましい。
また、透明であっても不透明であってもよい。基板側から光を取り出す、いわゆるボトムエミッション型の場合には、基材は透明であることが好ましい。
該基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。すなわち、これらの用途に本発明の封止膜を用いる場合、基材は、150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、基材の線膨張係数が100ppm/Kを超えると、前記のような温度の工程に流す際に基板寸法が安定せず、熱膨張及び収縮に伴い、遮断性性能が劣化する不都合や、又は熱工程に耐えられないという不具合が生じやすくなる。15ppm/K未満では、フィルムがガラスのように割れてしまいフレキシビリティが劣化する場合がある。
基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001-150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF-PC:特開2000-227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP-PC:特開2000-227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002-80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(括弧内温度はTgを示す)。
本発明に係る有機EL素子は、ボトムエミッション型、すなわち、透明基材側から光を取り出すようにしたものであってもよい。
ボトムエミッション型は、具体的には、透明基材上に、カソードとなる透明電極、発光機能層、アノードとなる対向電極をこの順で積層することにより構成されている。
また、本発明に係る有機EL素子は、トップエミッション型、すなわち、基材とは逆のカソードとなる透明電極側から光を取り出すようにしたものであってもよい。
トップエミッション型は、具体的には、基材側にアノードとなる対向電極を設け、この表面に発光機能層、カソードとなる透明電極を順に積層した構成である。
(i)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔注入輸送層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔注入輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層/
陰極
(iv)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(v)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
さらに、有機EL素子は、非発光性の中間層を有していても良い。中間層は電荷発生層であっても良く、マルチフォトンユニット構成であっても良い。
本発明に適用可能な有機EL素子の概要については、例えば、特開2013-157634号公報、特開2013-168552号公報、特開2013-177361号公報、特開2013-187211号公報、特開2013-191644号公報、特開2013-191804号公報、特開2013-225678号公報、特開2013-235994号公報、特開2013-243234号公報、特開2013-243236号公報、特開2013-242366号公報、特開2013-243371号公報、特開2013-245179号公報、特開2014-003249号公報、特開2014-003299号公報、特開2014-013910号公報、特開2014-017493号公報、特開2014-017494号公報等に記載されている構成を挙げることができる。
無機層としては、例えば、窒化ケイ素(SiN)、一酸化ケイ素や二酸化ケイ素等の無機材料を含有する。
具体的には、前記無機材料をスパッタリング法(例えば、マグネトロンカソードスパッタリング、平板マグネトロンスパッタリング、二極AC平板マグネトロンスパッタリング、二極AC回転マグネトロンスパッタリングなど、反応性スパッタ法を含む。)、蒸着法(例えば、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンビーム蒸着、プラズマ支援蒸着など)、熱CVD法、触媒化学気相成長法(Cat-CVD)、容量結合プラズマCVD法(CCP-CVD)、光CVD法、プラズマCVD法(PE-CVD)、エピタキシャル成長法、原子層成長法等の化学蒸着法等によって層形成することが好ましい。中でも、CVD法により成膜した窒化ケイ素膜が好ましい。
無機層の厚さは、例えば、10~1000nmの範囲内であることが好ましく、100~500nmの範囲内であることがより好ましい。
平坦化層としては、例えば、有機ポリシロキサンなどの有機無機ハイブリッド塗布膜や、アクリル樹脂などのUV硬化樹脂膜などが好ましく用いられる。
平坦化層に用いられる樹脂としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコーン樹脂、及びアルキルチタネート等を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明で用いられる重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を末端又は側鎖に有する化合物、又はエポキシ又はオキセタンを末端又は側鎖に有する化合物である。これらのうち、エチレン性不飽和結合を末端又は側鎖に有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和結合を末端又は側鎖に有する化合物の例としては、(メタ)アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物、スチレン系化合物、無水マレイン酸等が挙げられ、(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。(メタ)アクリレート系化合物としては、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましい。スチレン系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4-ヒドロキシスチレン、4-カルボキシスチレン等が好ましい。
本発明で用いられるシランカップリング剤は、例えば、ハロゲン含有シランカップリング剤(2-クロロエチルトリメトキシシラン,2-クロロエチルトリエトキシシラン,3-クロロプロピルトリメトキシシラン,3-クロロプロピルトリエトキシシランなど)、エポキシ基含有シランカップリング剤[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなど]、アミノ基含有シランカップリング剤(2-アミノエチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-[N-(2-アミノエチル)アミノ]エチルトリメトキシシラン、3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン、3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピル メチルジメトキシシランなど)、メルカプト基含有シランカップリング剤(2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランなど)、ビニル基含有シランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなど)、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤(2-メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2-メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2-アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなど)などを挙げることができる。これらの中では、(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤((メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤)が好ましく用いられる。
本発明における重合性組成物は、通常、重合開始剤を含む。重合開始剤を用いる場合、その含有量は、重合に関与する化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5~2モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはBASFジャパン社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)等が挙げられる。
また、前述した無機層又は平坦化層を本発明のポリシラザンから形成した封止膜の上に保護層として設けることもできる。このように保護層を設けることで、湿熱などの環境要因やキズ、屈曲時などの物理的要因を含む外的要因から封止膜を保護できるため、封止膜の耐久性を向上させることができる。
<基材の準備>
有機EL素子の作製に用いる基材としては、有機EL素子を設ける側の面にガスバリアー層を有するガスバリアーフィルムを用いた。
具体的には、両面に易接着処理された厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムロール(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(U48))(以下、「樹脂基材」ともいう。)の両面にクリアハードコート層を設け、続いて一方の面にガスバリアー層を設けることでガスバリアーフィルムを作製した。
具体的には、まず、両面に易接着処理された厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムロール(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(U48))(以下、「樹脂基材」ともいう。)のガスバリアー層を形成する面とは反対の面に、ロール・to・ロール方式により、厚さ0.5μmのアンチブロック機能を有するクリアハードコート層を形成した。すなわち、UV硬化型樹脂(アイカアイトロン工業株式会社製、品番:Z-731L)を乾燥層厚が0.5μmになるように樹脂基材上に塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cm2の条件で硬化を行った。
次に、樹脂基材のガスバリアー層を形成する側の面に、厚さ2μmのクリアハードコート層を以下のようにして形成した。
JSR株式会社製、UV硬化型樹脂オプスター(登録商標)Z7527を、乾燥層厚が2μmになるように樹脂基材に塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cm2の条件で硬化を行った。このようにして、両面にクリアハードコート層が設けられた樹脂基材ロールを得た。
続いて、以下のようにして、一方の面にガスバリアー層を設けることで本発明に用いるガスバリアーフィルムを作製した。
(第1ガスバリアー層の形成(CVD法))
特開2015-131473号公報の実施例に記載のCVD成膜装置を用い、a4の条件を用いて、前記樹脂基材ロールの厚さ2μmのクリアハードコート層を形成した面に、第1ガスバリアー層を形成した。
(第2ガスバリアー層の形成(塗布改質法))
第2ガスバリアー層の形成には、第1ガスバリアー層を形成した前記樹脂基材ロールからシートを切り出して用いた。切り出したシートの第1ガスバリアー層の上に、下記のようにして第2ガスバリアー層を形成した。
具体的には、パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120-20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120-20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに、乾燥層厚調整のため、ジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。
そして、前記切り出したシートの第1ガスバリアー層が形成された表面上に、スピンコート法により上記塗布液を乾燥層厚が250nmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥した。
次いで、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを有する真空紫外光照射装置を用い、照射エネルギー6J/cm2の条件で真空紫外光照射処理を行った。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。この操作をもう一度繰り返し、塗布改質法によるガスバリアー層を2層形成した。
このようにして作製したガスバリアー層を有する基材を50mm×50mmのサイズに切り出し、これをガスバリアーフィルム基材として、下記に示すような方法で、トップエミッション型の有機EL素子を作製した。
上記のようにして作製したガスバリアーフィルム基材のガスバリアー層を設けた面上に、陰極、取り出し配線、有機機能層、陽極を順次形成した。各層は、基材の中央部に30mm×30mmの発光領域が得られる形状で形成した。
具体的には、下記のような層構成にて電極及び有機機能層を設けた。
陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極(基材側)
まず、陰極として厚さ100nmのアルミニウム層をスパッタ法により形成し、パターニングすることで、取り出し配線を含むアルミニウム層からなる陰極を形成した。
続いて、有機機能層として、アルミニウム層上に電子注入層(フッ化カリウム、厚さ1nm)/電子輸送層(アルミニウムキノレート(Alq3)、厚さ20nm)/発光層(DPVBi)、(厚さ30nm)/電子阻止層(BAlq、厚さ10nm)/正孔注入・正孔輸送層(α-NPD(4,4′-ビス〔N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ〕ビフェニル)、厚さ20nm)を、この順に形成し、陽極として、厚さ100nmのITO層をスパッタ法により形成した。
(ポリシラザン塗布液1の調製)
パーヒドロポリシラザン(PHPS)20質量%のジブチルエーテル(DBE)溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120-20)を、含水量が50ppmのジブチルエーテル(DBE)でパーヒドロポリシラザン濃度が10質量%になるように希釈後、1時間撹拌することで、本発明のポリシラザン塗布液1を調製した。
含水量は、カールフィッシャー水分測定装置を用いたカールフィッシャー滴定法により求めた。
ポリシラザン塗布液1の調製において、含水量が100ppmのジブチルエーテルを希釈溶媒として用いた以外は、ポリシラザン塗布液1と同様にして、ポリシラザン塗布液2を調製した。
ポリシラザン塗布液1の調製において、含水量が10ppmの脱水ジブチルエーテルを希釈溶媒として用い、かつ、酸化剤として、エタノール(EtOH)を塗布液に対して1質量%になるように添加した以外は、ポリシラザン塗布液1と同様にして、ポリシラザン塗布液3を調製した。
ポリシラザン塗布液3の調製において、酸化剤として、エチレングリコールモノフェニルエーテル(EGMPE)を用い、塗布液に対して2.5質量%になるように添加した以外は、ポリシラザン塗布液3と同様にして、ポリシラザン塗布液4を調製した。
ポリシラザン塗布液3の調製において、エタノール(EtOH)を塗布液に対して8質量%になるように添加した以外は、ポリシラザン塗布液3と同様にして、ポリシラザン塗布液5を調製した。
ポリシラザン塗布液4の調製において、含水量が50ppmのジエチレングリコール
ジブチルエーテル(DEGDBE)を揮発性増粘剤を兼ねた希釈溶媒として用いた以外は
、ポリシラザン塗布液4と同様にして、ポリシラザン塗布液6を調製した。
ポリシラザン塗布液1の調製において、含水量が50ppmのジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)を揮発性増粘剤を兼ねた希釈溶媒として用いた以外は、ポリシラザン塗布液1と同様にして、ポリシラザン塗布液7を調製した。
ポリシラザン塗布液1の調製において、GPC(Gel Permeation Chromatography ゲル
浸透クロマトグラフィー)ポリスチレン換算から求めたポリシラザンの重量平均分子量が
30000であるポリシラザンの20質量%ジブチルエーテル溶液を用いた以外は、ポリシラザン塗布液1と同様にして、ポリシラザン塗布液8を調製した。
ポリシラザン塗布液1の調製において、含水量が10ppmの脱水ジブチルエーテルを
希釈溶媒として用いた以外は、ポリシラザン塗布液1と同様にして、ポリシラザン塗布液
9を調製した。
ポリシラザン塗布液3の調製において、エタノール(EtOH)を塗布液に対して10質量%になるように添加した以外は、ポリシラザン塗布液3と同様にして、ポリシラザン塗布液10を調製した。
作製した有機EL素子上に、調製したポリシラザン塗布液1~10を用いて、それぞれ封止膜1~10を形成した。
各有機EL素子において、30mm×30mmの発光領域が全て覆われるように、36mm×36mmの範囲にポリシラザン塗布液を下記の方法にて塗布することで、ポリシラザン封止膜を形成した。
具体的には、まず、ポリシラザン塗布液が塗布される領域以外の部分をマスクし、グローブボックス内の窒素雰囲気下にて、スピンコート法により各塗布液を孔径0.2μmメンブランフィルターにて濾過後、乾燥膜厚が300nmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥することで、ポリシラザン乾燥膜を形成した。各塗布液は調液後、グローブボックス内で一晩放置してから用いた。
引き続き、同窒素雰囲気下にて、下記のようにポリシラザン乾燥膜に真空紫外線を照射することで、ポリシラザンが改質されたポリシラザン封止膜を形成した。
具体的には、波長172nmのXeエキシマランプを用いて、照射エネルギー5.0J/cm2の条件で真空紫外線照射処理を行った。真空紫外線照射中、試料を設置するステージ温度を80℃とした。
<有機EL素子評価用サンプルの作製>
(保護フィルムの貼合)
ガスバリアーフィルム基材の2μmのクリアハードコート層を形成した側の面に、接着層を形成し、保護フィルムとした。保護フィルムのサイズは、有機EL素子と貼合した際に電極接点部分を覆わないサイズとした。
封止膜を形成した有機EL素子をグローブボックス内に取り出し、事前にグローブボックス内で乾燥させておいた保護フィルムを、接着層面と、有機EL素子の封止膜面とが接するように配置し、真空ラミネートにより接着した。このようにして、有機EL素子評価用サンプルを得た。
上記評価用サンプルを、直径75mmの金属製ローラーの周囲に巻き付かせて、高温高湿下(温度85℃、相対湿度85%)の恒温恒湿槽に放置し加速劣化試験(「加速試験」ともいう。)を行った。一定時間ごとに恒温恒湿槽から各有機EL素子を取り出して室温下で発光させ、85℃85%での加速劣化時のダークスポット(DS)の有無を確認した。この作業を、発光領域内におけるダークスポット面積比率が1%に到達するまで続け、恒温恒湿槽に放置してからダークスポット面積比率が1%に到達するまでの時間を、封止性能として評価した。到達時間が長いほど、封止性能が高いことを示している。
・評価基準
ランク4:500時間経過でダークスポット面積比率が1%に到達
ランク3:100時間経過でダークスポット面積比率が1%に到達
ランク2:20時間経過でダークスポット面積比率が1%に到達
ランク1:開始数時間でダークスポット面積比率が1%に到達
上記で調製した各ポリシラザン塗布液をインクジェットで吐出し、その吐出性を確認し
た。各塗布液は調液後、グローブボックス内で一晩放置した後、孔径0.2μmメンブラ
ンフィルターにて濾過してから用いた。本発明の塗布液は、いずれもインクジェットにて
吐出することができた。特に、粘度を1~20mPa/spに調整した塗布液1~2及び
塗布液6~8は、吐出位置、塗布膜の大きさ及び形状の点で安定して吐出することができた。
Claims (10)
- ポリシラザンを含有する塗布液であって、
前記ポリシラザンと、前記ポリシラザンの一部に酸素原子が導入され、シリコン(Si)原子に対する酸素(O)原子の原子組成比の値(O/Si)が、0.02~0.21の範囲内である酸化ポリシラザンと、を含有することを特徴とする塗布液。 - 粘度が、20℃において1~20mPa・sの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の塗布液。
- 揮発性増粘剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塗布液。
- 重量平均分子量Mwが3000以上の、ポリシラザン又は酸化ポリシラザンを、全ポリシラザンに対して、50質量%以上含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の塗布液。
- 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の塗布液を用いたことを特徴とするインクジェット用インク。
- 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の塗布液の膜を改質処理してなることを特徴とする封止膜。
- 請求項6に記載の封止膜を形成する封止膜の形成方法であって、
前記塗布液の膜を形成する工程を有することを特徴とする封止膜の形成方法。 - 前記塗布液の膜を形成する工程は、窒素雰囲気下にて行うことを特徴とする請求項7に記載の封止膜の形成方法。
- 前記塗布液の膜を形成する工程後、形成された前記塗布液の膜を、窒素雰囲気下にて真
空紫外線照射して改質処理する工程を有することを特徴とする請求項8に記載の封止膜の形成方法。 - 前記塗布液の膜を形成する工程が、インクジェット法を用いて行うことを特徴とする請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載の封止膜の形成方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017157721 | 2017-08-18 | ||
JP2017157721 | 2017-08-18 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019036517A JP2019036517A (ja) | 2019-03-07 |
JP7013832B2 true JP7013832B2 (ja) | 2022-02-01 |
Family
ID=65637677
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017238206A Active JP7013832B2 (ja) | 2017-08-18 | 2017-12-13 | 塗布液、当該塗布液を用いたインクジェット用インク、封止膜及び封止膜の形成方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7013832B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114830825A (zh) * | 2019-12-17 | 2022-07-29 | 柯尼卡美能达株式会社 | 电子器件密封层形成用的墨组合物、电子器件密封层形成方法及电子器件密封层 |
Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001058484A (ja) | 2000-01-01 | 2001-03-06 | Ikegami Masahisa | 名 刺 |
JP2001308090A (ja) | 2000-04-25 | 2001-11-02 | Tonengeneral Sekiyu Kk | 微細溝をシリカ質材料で埋封する方法及びシリカ質膜付き基材 |
US20140293156A1 (en) | 2013-03-28 | 2014-10-02 | Lg Display Co., Ltd. | Conductive coating composition and display device including the same |
WO2014188981A1 (ja) | 2013-05-21 | 2014-11-27 | コニカミノルタ株式会社 | ガスバリア性フィルム |
JP2016521405A (ja) | 2013-04-10 | 2016-07-21 | コーロン インダストリーズ インク | ポリイミドカバー基板 |
JP2016145647A (ja) | 2013-05-27 | 2016-08-12 | コニカミノルタ株式会社 | 乾燥装置及び乾燥方法 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3212400B2 (ja) * | 1993-02-19 | 2001-09-25 | 東燃ゼネラル石油株式会社 | セラミックコーティング用組成物及びコーティング方法 |
EP2627941A1 (en) * | 2010-10-12 | 2013-08-21 | Seaone AG | Methods for storage and transportation of natural gas in liquid solvents |
-
2017
- 2017-12-13 JP JP2017238206A patent/JP7013832B2/ja active Active
Patent Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001058484A (ja) | 2000-01-01 | 2001-03-06 | Ikegami Masahisa | 名 刺 |
JP2001308090A (ja) | 2000-04-25 | 2001-11-02 | Tonengeneral Sekiyu Kk | 微細溝をシリカ質材料で埋封する方法及びシリカ質膜付き基材 |
US20140293156A1 (en) | 2013-03-28 | 2014-10-02 | Lg Display Co., Ltd. | Conductive coating composition and display device including the same |
JP2016521405A (ja) | 2013-04-10 | 2016-07-21 | コーロン インダストリーズ インク | ポリイミドカバー基板 |
WO2014188981A1 (ja) | 2013-05-21 | 2014-11-27 | コニカミノルタ株式会社 | ガスバリア性フィルム |
JP2016145647A (ja) | 2013-05-27 | 2016-08-12 | コニカミノルタ株式会社 | 乾燥装置及び乾燥方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2019036517A (ja) | 2019-03-07 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6504284B2 (ja) | ガスバリア性フィルム、その製造方法、およびこれを用いた電子デバイス | |
JP5888329B2 (ja) | ガスバリア性フィルム、ガスバリア性フィルムの製造方法、および電子デバイス | |
US20150364720A1 (en) | Gas barrier film | |
WO2013011872A1 (ja) | ガスバリア性フィルム及びその製造方法 | |
JP6252493B2 (ja) | ガスバリア性フィルム | |
JP5958346B2 (ja) | ガスバリア積層体の製造方法 | |
EP2660042A1 (en) | Method for manufacturing gas-barrier film, gas-barrier film, and electronic device | |
WO2015020011A1 (ja) | ガスバリア性フィルム | |
US20160153089A1 (en) | Gas barrier film, method for producing the same, and electronic device using the same | |
WO2014163062A1 (ja) | ガスバリアー性フィルムの製造方法、ガスバリアー性フィルム及び電子デバイス | |
KR20160127079A (ko) | 가스 배리어성 필름 및 그 제조 방법과, 이것을 사용한 전자 디바이스 및 그 제조 방법 | |
KR101881244B1 (ko) | 가스 배리어성 필름 및 그것을 사용한 전자 디바이스 | |
JP6354756B2 (ja) | ガスバリア性フィルムおよび電子デバイス | |
JPWO2014178332A1 (ja) | ガスバリア性フィルムおよびその製造方法 | |
WO2012067186A1 (ja) | ガスバリア性フィルムの製造方法、及びガスバリア性フィルム | |
JP7013832B2 (ja) | 塗布液、当該塗布液を用いたインクジェット用インク、封止膜及び封止膜の形成方法 | |
JP2014240051A (ja) | ガスバリアーフィルム、ガスバリアーフィルムの製造方法及びガスバリアーフィルムの製造装置 | |
JP2014240462A (ja) | ガスバリアーフィルム、ガスバリアーフィルムの製造方法及びガスバリアーフィルムの製造装置 | |
WO2014178254A1 (ja) | 封止フィルム、その製造方法及び封止フィルムで封止された機能素子 | |
WO2015119260A1 (ja) | 変性ポリシラザン、当該変性ポリシラザンを含む塗布液および当該塗布液を用いて製造されるガスバリア性フィルム | |
JP2012076403A (ja) | バリア性フィルム及び有機電子デバイス | |
JPWO2015083706A1 (ja) | ガスバリア性フィルム及びその製造方法 | |
JPWO2015029732A1 (ja) | ガスバリアフィルムおよびガスバリアフィルムの製造方法 | |
WO2015146886A1 (ja) | ガスバリア性フィルムおよびその製造方法、ならびにこれを用いた電子デバイス | |
JP6295865B2 (ja) | ガスバリア性フィルム |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20200928 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20210520 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20210601 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20210727 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20211102 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20211202 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20211221 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20220103 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7013832 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |