以下に、本発明の実施の形態にかかる送信装置、通信システムおよび送信プリコーディング方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる通信システムの構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の通信システムは、基地局1と、複数の端末2−1〜2−mと、制御局3と、を備える。端末2−1〜2−mは、ユーザ端末である。mは、2以上の整数である。以下、端末2−1〜2−mをユーザと呼ぶこともある。また、端末2−1〜2−mを区別せずに示す場合は、端末2と記載する。基地局1は、複数のアンテナ15−1〜15−Tを備え、端末2−1〜2−mは、1本以上のアンテナ21を備える。端末2と基地局1とは、無線通信による双方向通信を行う。また、制御局3は、基地局1に接続されている。制御局3は、m台を超える通信候補端末から、通信対象となるm台の端末を選択するスケジューリングを実施する。以降説明する本発明の実施の形態では、制御局3でスケジューリングが実施され、端末2−1〜2−mが通信対象として選択され、その選択情報が基地局1へ通知される場合を例に挙げて説明する。制御局3と基地局1とは通信回線で接続されているが、制御局3と基地局1との間も無線通信を行うようにしてもよい。
本実施の形態では、ダウンリンク通信について説明する。ダウンリンク通信とは、基地局1から端末2への通信のことである。したがって、基地局1は送信装置であり、端末2が受信装置である。本実施の形態の通信システムでは、ダウンリンク通信では、MU−MIMO方式を用いるとし、基地局1は、複数のアンテナから送信する送信信号に対してプリコーディングを実施して、複数の端末2を指向する送信ビームを形成することが可能である。なお、基地局1と端末2とは、端末2が送信装置で、基地局1が受信装置となる通信、すなわち、アップリンク通信を行ってもよい。アップリンクの通信方法はどのような通信方式であってもよい。
ここで、まず、本実施の形態における用語について説明する。以下では、物理的な送信アンテナおよび受信アンテナを「アンテナ」と呼び、1つの装置が備える複数のアンテナの配列、すなわち、アンテナ群を「アレー」と呼ぶ。あるいはアレーに対応する複数の信号配列も、便宜上単にアレーと呼ぶことがある。また、複数の送信アンテナの配列を「送信アレー」と呼び、複数の受信アンテナの配列を「受信アレー」と呼ぶ。送信アレーまたは受信アレーへの重みを示す行列であるウェイト行列を乗積した場合に観測される実効的なアンテナの数を「ブランチ」と呼ぶ。受信側のブランチである受信ブランチの数は、受信装置である端末2にパラレルに送信されるデータの数であり、端末2において乗積するウェイト行列である受信ウェイト行列の行数である。送信側のブランチである送信ブランチの数は、送信装置である基地局1において乗積するウェイト行列である送信ウェイト行列、すなわち送信プリコーディングの列数である。
端末2が備えるアンテナ21の数に制約は無く、端末2ごとにアンテナ数が異なる場合や、端末2ごとに受信ブランチ数が異なる場合にも、本発明は適用可能である。ただし、説明を簡易にするため、以下の説明では、端末2が備えるアンテナ21の数は、端末によらず、R(Rは1以上の整数)本であるとする。また、端末2では、受信アレーに対しNw(Nw≦R)個のウェイト行列を乗積するとする。したがって、送信装置である基地局1から観測される端末2あたりの受信ブランチ数は、端末2に依らず、Nw本である。これにより、全端末分のブランチ数である総受信ブランチ数Nw,totalは、Nw,total=Σk=1 m(Nw)=m×Nwとなる。ここで、受信アレーに適用するウェイトはプリコーディング行列の算出において仮定されるものであって、任意のウェイトが適用可能である。例えば、Nw=Rの場合のウェイトは単位行列であっても良く、あるいは、伝送路行列の固有ベクトル行列であっても良く、受信ウェイト行列にどのような行列を用いてもよい。なお、以下の説明では、基地局1のアンテナ数Tおよび端末2の受信ブランチ数NwはT≧Nw,total=m×Nwの関係を満たすものとする。
本実施の形態では、計m台の端末2を、C個(C≦m)のグループ(以降、ユーザクラスタ、あるいは単にクラスタと呼ぶ)に分割するものとする。以降で説明する本実施の形態では、説明を簡易にするため、ユーザクラスタに含まれる端末数は全ユーザクラスタで同一であるものとし、ユーザクラスタに含まれる端末2の端末数をpとする。すなわち、m=p×Cを満たすものとする。しかしながら、これに限らず、ユーザクラスタに含まれる端末数はユーザクラスタ毎に異なっていても良い。
次に、MU−MIMO方式を採用する本実施の形態の通信システムにおけるダウンリンク通信を数式によりモデル化する。端末2−i(i=1,…,m)に送信する送信信号ベクトルをsi(t)とし、端末2−iに対する電力配分を示す行列である送信電力配分行列をPiとし、端末2−iに対応するプリコーディング行列すなわちビーム形成行列をBiとする。また、基地局1のアンテナから端末2−iのアンテナ21までのR行T列の真の伝送路行列をHハットiとし、端末2−iのNw行R列の受信ウェイト行列をWiとし、端末2−iの受信ウェイト乗積前の真の受信信号ベクトルをyi(t)とする。さらに、端末2−iの受信ウェイト乗積後の受信信号ベクトルをri(t)とし、基地局1のアンテナ15から端末2−iのアンテナ21までの伝送路における真の受信熱雑音ベクトルをnハットi(t)とする。このとき、本実施の形態の通信システムを数式によりモデル化したシステムモデルは、以下の式(1)で定義することができる。
更に、受信ウェイト行列Wiと真の伝送路行列Hハットiとを乗積したNw行T列の行列を新たな伝送路行列Hiとし、真の受信熱雑音ベクトルnハットi(t)と受信ウェイト行列Wiとを乗積したNw次ベクトルを、新たな受信熱雑音ベクトルni(t)とすると、システムモデルは以下の式(2)で表すことができる。
上記式(2)は、以下の式(3)のように表現することができる。
ここで、Hバーは、受信ウェイトの乗積後の基地局1のアンテナから全端末2の全ブランチまでの伝送路を示すNw,total行T列のシステム伝送路行列であり、Bバーは、基地局1における全端末2に対するT行Nst列のシステムプリコーディング行列である。Pバーは全端末2への送信電力配分を定めた行列であるシステム送信電力行列であり、sバー(t)は、全端末2に対する送信信号を示すNst次のシステム送信ベクトルであり、nバー(t)は受信ウェイト乗積後の全端末2に対する雑音ベクトルであるNw,total次のシステム雑音ベクトルである。以下の式(4)に示すように、HバーとBバーとの積は、送信ビーム形成による実効的なシステム伝送路行列Hバーeと捉えることができる。
式(4)で示した実効的なシステム伝送路行列Hバーeにおいて、ブロック対角項、すなわち、HiBiの成分のみを残し、これら以外の成分である非ブロック対角項を零行列Oとするプリコーディング行列を用いるプリコーディング手法が、BD法である。BD法は、送信信号の送信先となる1つ以上の端末以外の他の端末に対してはヌルを向ける、すなわち、当該他の端末における受信電力を閾値以下にするような指向性を形成するように、ビーム空間を形成するプリコーディング手法である。これにより、送信信号の送信先の端末における受信電力は閾値より大きく、他の端末における受信電力は閾値以下となる。本実施の形態では、以下で詳細に説明するように、複数ユーザをグルーピングしたユーザクラスタを疑似的なユーザ(疑似ユーザ)として扱い、疑似ユーザに対してBD法を適用する。これにより、疑似ユーザ間の干渉、すなわち、ユーザクラスタ間干渉(IUCI:Inter-User-Cluster Interference)を消去することができ、MU−MIMOダウンリンク全体を各ユーザクラスタ内の小規模なMU−MIMOダウンリンク問題に細分化することができる。
次に、本実施の形態において実施する外的プリコーディング処理について説明する。以下に説明するプリコーディング処理は、OFDMやシングルキャリアブロック伝送においては離散周波数毎に独立して実施してもよく、周波数によらず帯域全体で一括して実施してもよい。
以下に示す外的プリコーディング行列算出の過程では、ダウンリンク方向の伝送路行列の情報、すなわち、伝送路情報が必要となる。プリコーダが伝送路行列を取得する方法には、特に制約は無いが、例えば、これはダウンリンクとアップリンクとで異なる周波数で通信が行われる周波数分割複信(FDD:Frequency Division Duplex)を採用する通信システムである場合には、端末2から受信した、端末2において推定した伝送路情報を用いる。ダウンリンクとアップリンクとが時間分割複信(TDD:Time Division Duplex)により行われる通信システムである場合は、送受の可逆性を利用することができる。このため、この場合は、端末2から受信した信号に基づいて、アップリンク方向の伝送路を推定し、推定した伝送路をダウンリンクの伝送路情報として用いることができる。伝送路推定の方法は、上述した通り、どのような方法を用いてもよく、例えば、パイロット信号を用いた推定方法を用いることができる。
例として、端末2の端末数m=16、各端末2の受信ブランチ数Nw=2、基地局1の送信アンテナ数T=32、ユーザクラスタ数C=4、クラスタ内端末数p=4の場合について、実効的なシステム伝送路行列のイメージを例示して説明する。端末2−1〜2−4をクラスタ1、端末2−5〜2−8をクラスタ2、端末2−9〜2−12をクラスタ3、端末2−13〜2−16をクラスタ4として、グルーピングして、それぞれ疑似ユーザ1〜4とし、疑似ユーザ1〜4に対してBD法を適用する。これにより、送信信号の送信先のクラスタに含まれる端末2における受信電力は閾値より大きく、他のクラスタに含まれる端末2における受信電力は閾値以下となる。各疑似ユーザの受信ブランチ数はp×Nw=8であるため、得られる各疑似ユーザ1〜4のプリコーディング行列は32行8列の行列となる。これを外的プリコーディング行列と呼ぶ。クラスタjに対応する外的プリコーディング行列をBojとすると、システム伝送路行列と外的プリコーディング行列を掛け合わせた実効的なシステム伝送路行列は図2のようになる。すなわち、IUCIを抑圧することができる。
外的プリコーディングにより、ユーザクラスタ間の空間直交は実現されるが、ユーザクラスタ内のIUIは依然として残っている。ここでは例としてクラスタ1を取り上げる。クラスタ1には、端末2−1〜2−4が含まれており、各端末2−1〜2−4に対応する実効的な伝送路行列はH1Bo1、H2Bo1、H3Bo1、H4Bo1である。これらを新たな伝送路行列として捉え、これらを用いて4ユーザ間のIUIを解決する内的プリコーディングを行う。内的プリコーディングには、従来より開示されているMU−MIMO用プリコーディング技術が適用可能であり、BD法に代表される線形プリコーディングや、THP法やVP法に代表されるNLP法が適用可能である。また、ユーザクラスタ毎に異なる内的プリコーディング法を適用することも可能である。ここでは簡単のため、内的プリコーディングとしてBD法を適用した場合を例示する。BD法で算出される端末2−1〜2−4向けの8行2列の内的プリコーディング行列をそれぞれBi1-1〜Bi1-4とすると、外的プリコーディングと内的プリコーディングを適用した実効的な伝送路行列は図3のようになる。すなわち、各端末2−1〜2−4に対応する実効的な伝送路行列は、それぞれ、H1Bo1Bi1-1、H2Bo1Bi1-2、H3Bo1Bi1-3、H4Bo1Bi1-4である。これにより、ユーザクラスタ1内のIUIを抑圧することができる。
上述の内的プリコーディングをユーザクラスタ2、3、4にも同様に適用すると、結果として図4に示すような全端末2が空間直交するMU−MIMO環境を実現できる。ここで、端末2−1向けのプリコーディング行列はB1=Bo1Bi1-1、端末2−2向けはB2=Bo1Bi1-2、端末2−3向けはB3=Bo1Bi1-3、端末2−4向けはB4=Bo1Bi1-4である。また、端末2−5については、ユーザクラスタ2に含まれるため、端末2−5向けのプリコーディング行列はB5=Bo2Bi2-1となり、同様に、端末2−6向けはB6=Bo2Bi2-2となる。このように、図4では、外的プリコーディング行列と内的プリコーディング行列をまとめて一括表記している。上述の例におけるシステムプリコーディング行列Bバーは、B1〜B16を列方向に並べたT行(m×Nw)列行列となる。上述の例では内的プリコーディングにもBD法を用いているため、結果としてMU−MIMOシステム全体にBD法を適用したときと同様の環境が実現される。
以上、本発明の実施の形態にかかる送信プリコーディング方法の原理を説明した。本発明は、外的プリコーディングとして、ユーザクラスタ単位に、BD法を適用することで、IUCIを抑圧するものである。上述の説明では、実効的な伝送路空間を分割するプロセスを説明する都合上、始めに外的プリコーディングを説明し、次に内的プリコーディングを説明したが、実際の送信信号処理の手順は、始めに内的プリコーディングを実施し、次に外的プリコーディングを実施する。また、上述の説明では、説明を簡易にするため、送信電力配分を定めたシステム送信電力行列Pバーを省略して説明したが、電力配分はプリコーディング実施の各端末2向けの信号に適用しても良く、内的プリコーディング行列及び外的プリコーディング行列に電力配分を含めても良い。また、上記の例では、内的プリコーディングとしてBD法、すなわち線形プリコーディングを用いる例を示したが、これに限らず、伝送路行列と外的プリコーディングを掛け合わせた行列を新たな伝送路行列と捉えることで、内的プリコーディングとしてTHP法やVP法に代表されるNLP法も適用することが可能である。
次に、具体的な構成例を用いて本実施の形態を説明する。図5は、本実施の形態の基地局1の構成例を示す図である。基地局1は、一次変調部11−1〜11−m、プリコーダ部12、オーダリング部13、送信波形整形部14−1〜14−T、アンテナ15−1〜15−Tおよび受信機16を備える。一次変調部11−i(i=1,…,m)は、少なくとも端末2の個数と同じ個数だけ設けられている。各一次変調部11−iは、各端末2−iに送信する送信信号に対して一次変調を行い、一次変調した送信信号をプリコーダ部12へ出力する。一次変調部11−iが行う一次変調は、例えば、チャネル符号化、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)シンボル等の一次変調シンボルへのマッピングを含む。また、シングルキャリアブロック伝送方式を用いる際には、一次変調部11−iが行う一次変調は、離散フーリエ変換処理も含む。一次変調部11−1〜11−mは、受信装置である端末2ごとに、端末2へ送信する送信信号を生成する信号生成部である。
プリコーダ部12は、一次変調部11−1〜11−mで生成された送信信号に対して、ユーザクラスタリング、すなわち信号の並び替えとグルーピングを行った上で、ユーザクラスタ毎に内的プリコーディングを施し、その後、全ユーザクラスタの信号に対して外的プリコーディングを施し、プリコーディング適用後の全送信信号を多重した信号を送信波形整形部14−1〜14−Tに出力する。
図6はプリコーダ部12の内部構成を示す図である。プリコーダ部12は、ユーザクラスタリング部121と、内的プリコーダ部122−1〜122−Cと、外的プリコーダ部123と、多重部124と、外的プリコーディング算出部125と、内的プリコーディング算出部126と、から構成される。
これらの各構成について、具体的に説明する。
ユーザクラスタリング部121は、一次変調部11−1〜11−mから出力される一次変調後の各ユーザの送信信号に対して、オーダリング部13で決定されるユーザオーダリング情報に従って、信号の並び順を変更し、内的プリコーダ部122−1〜122−Cへ出力する。このとき、並び順変更後の送信信号をs121−1−1、s121−1−2、…、s121−1−p、s121−2−1、s121−2−2、…、s121−2−p、…、s121−C−1、s121−C−2、…、s121−C−pとすると、並び順変更後の送信信号は、順にp個毎に、ユーザクラスタ1、ユーザクラスタ2、…、ユーザクラスタCに割り当てられ、ユーザクラスタj(j=1、…、C)の信号は、内的プリコーダ部122−jにそれぞれ出力される。なお、pは1以上の整数である。
内的プリコーダ部122−1〜122−Cでは、各疑似ユーザ1〜C、すなわち、それぞれ、p個の端末分の信号群が入力され、端末間のIUIを解決する処理を行う。後述する次段の外的プリコーダ部123によりユーザクラスタ間の直交変換は実現されるが、ユーザクラスタ内のIUIは残っている。この問題の解決には、従来より開示されているMU−MIMO用プリコーディング技術が適用可能であり、BD法に代表される線形プリコーディングや、THP法やVP法に代表されるNLP法が適用可能である。内的プリコーダ部122−1〜122−Cでは、いずれかの方法を内的プリコーディングとして用い、入力信号に適用する。このとき必要となる外的プリコーディングの適用を仮定した実効的な伝送路行列、及び、内的プリコーディング行列の情報は、内的プリコーディング算出部126から供給される。IUIを解消された各信号は外的プリコーダ部123へ出力される。
外的プリコーダ部123では、入力されるp個ずつの疑似ユーザ信号に対して外的プリコーディング行列を乗積する。外的プリコーディング行列の情報は、外的プリコーディング算出部125から供給される。外的プリコーディングによりIUCIを解消された各信号は多重部124へ出力される。
多重部124では、入力されるm(=p×C)台の端末分の内的プリコーディング及び外的プリコーディング適用後の信号を全て加算し、送信波形整形部14−1〜14−Tへ出力する。
外的プリコーディング算出部125では、疑似ユーザ、すなわち、ユーザクラスタC個に対してBD法を適用し、外的プリコーディング行列を算出する。算出に用いる端末m台分の基地局−端末間の伝送路情報と電力配分情報とユーザオーダリング情報はオーダリング部13から供給される。BD法による算出では、各疑似ユーザの伝送路を(p×Nw)行T列の行列として扱う。疑似ユーザに対するBD法適用により、疑似ユーザ間、すなわちユーザクラスタ間でのIUCIは抑圧され、C個のユーザクラスタは互いに直交する空間を形成できる。算出された外的プリコーディング行列の情報は外的プリコーダ部123へ入力される。
内的プリコーディング算出部126では、各ユーザクラスタのIUIを解決するための内的プリコーディング行列を算出する。算出に用いる各ユーザクラスタの外的プリコーディング行列の情報は外的プリコーディング算出部125から供給され、基地局−端末間の伝送路情報と電力配分情報とユーザオーダリング情報はオーダリング部13から供給される。内的プリコーディング算出部126では、各ユーザクラスタについて、いずれかのMU−MIMO用プリコーディングを適用し、内的プリコーディング行列を算出する。算出された内的プリコーディング行列の情報は内的プリコーダ部122−1〜122−Cへ入力される。算出された行列を用いて内的プリコーダ部122−1〜122−Cにおいて内的プリコーディングを実施することで、各ユーザクラスタ内のp台の端末間のIUIは解消される。
オーダリング部13は、プリコーダ部12に対しプリコーディングにおける端末2の順序付けと、C個のユーザクラスタの構成(すなわち、各ユーザクラスタに含まれる端末の決定)と、端末2への電力配分とを決定し指示する。併せて、プリコーダ部12に対し、全端末2についての基地局−端末間の伝送路行列情報を供給する。
送信波形整形部14−1〜14−Tは、プリコーダ部12によるプリコーディング後の信号に対し、それぞれ二次変調、デジタルアナログ(D/A)変換、ベースバンド周波数から無線周波数への変換等を行い、処理後の信号をそれぞれアンテナ15−1〜15−Tを介して送信する。二次変調は、例えば、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)等のマルチキャリア方式を適用する場合にはマルチキャリア変調であり、シングルキャリアブロック伝送等のシングルキャリア方式を適用する場合にはシングルキャリア変調である。二次変調の変調方式に制約はなく、上述したOFDM、シングルキャリアブロック伝送以外の変調を行ってもよい。送信波形整形部14−1〜14−Tは、OFDM、シングルキャリアブロック伝送等のブロック伝送を適用する場合には、例えば、D/A変換前に離散逆フーリエ変換およびCP(Cyclic Prefix)付加処理を行う。なお、ブロック伝送とは、OFDM、シングルキャリアブロック伝送に代表されるように離散フーリエ変換処理およびCP付加により信号をブロック化する方式のことを示す。送信波形整形部14−1〜14−Tにおける信号処理は、デジタル処理であっても良くアナログ処理であっても良い。なお、一次変調部11−1〜11−mからプリコーダ部12へ入力される送信信号は、式(3)におけるsバー(t)に対応し、プリコーダ部12から送信波形整形部14−1〜14−Tへ出力される出力信号は、式(3)におけるBバー×Pバー×sバー(t)に対応する。ただし、内的プリコーダ部122−1〜122−CのいずれかにおいてNLP法が適用された場合は、信号sバー(t)に非線形処理が施されるため、プリコーダ部12から出力される信号は必ずしもBバー×Pバー×sバー(t)のような線形モデルで表現できるわけではない。
プリコーダ部12によるプリコーディングが実施されることにより、複数の送信アンテナであるアンテナ15−1〜15−Tは、複数の端末2のそれぞれに向けた複数の信号送信が可能である。
受信機16は、端末2からアンテナ15−1〜15−Tを経由して受信した受信信号に対して受信処理を実施する。なお、ここでは、アンテナ15−1〜15−Tが送受信アンテナである例を示しているが、アンテナ15−1〜15−Tを送信アンテナとしてのみ用いることとし、T個の受信アンテナをアンテナ15−1〜15−Tとは別に備えてもよい。ただし、プリコーダ部12のプリコーディング行列の算出において、基地局1が、アップリンクの伝送路の推定結果をダウンリンクの伝送路情報として用いる場合には、アンテナ15−1〜15−Tは送受信アンテナである必要があり、受信機16は、アンテナ15−1〜15−Tから受信した受信信号に基づいて伝送路の推定を行う。伝送路の推定方法はどのような方法を用いてもよく、例えば、既知信号であるパイロット信号を用いた推定方法等を用いることができる。具体的には、端末2の複数アンテナ間で直交するパイロット信号を端末2から送信し、基地局1の受信機16では直交パイロットに従って端末2の各アンテナを識別して伝送路を推定することができる。また、プリコーディング行列の算出において、基地局1が、端末2から受信した伝送路情報を用いる場合には、受信機16は、受信した伝送路情報をオーダリング部13を経由してプリコーダ部12へ供給する。
図7は、本実施の形態の端末2の構成例を示す図である。図7に示すように、各端末2は、アンテナ21−1〜21−R、受信波形整形部22−1〜22−R、デコーダ部23、復調部24および送信機25を備える。
受信波形整形部22−1〜22−Rは、それぞれアンテナ21−1〜21−Rにより受信された受信信号に対して、無線周波数からベースバンド周波数へ変換する処理、アナログデジタル(A/D)変換、及び、信号フィルタ処理等の受信波形整形処理を行い、処理後の受信信号をデコーダ部23へ出力する。信号フィルタ処理は、例えば所望の周波数帯域の信号を抽出する処理である。また、ブロック伝送方式を適用する場合、受信波形整形部22−1〜22−Rは、CP除去処理と離散フーリエ変換処理も実施する。
デコーダ部23は、受信波形整形部22−1〜22−Rから入力される受信信号に対して、所望の信号、すなわち、自端末宛ての信号を抽出するための処理を行い、処理後の信号を復調部24へ出力する。なお、この「自端末宛ての信号を抽出するための処理」を、MIMOデコード処理と呼び、これについては後述する。デコーダ部23は、基地局1から受信した信号から、所望信号を抽出するデコーダである。デコーダ部23は、MIMOデコード処理の過程で、伝送路の推定処理を実施する。
復調部24は、デコーダ部23から出力される信号に対して、デマッピング処理及びチャネル復号処理等の復調処理を行い、基地局1から送信された信号を復元する。また、シングルキャリアブロック伝送方式を適用する場合は、復調部24は、周波数歪みを補償する等化処理と離散逆フーリエ変換処理とを実施する。また、基地局1の内的プリコーディングとしてTHP法を用いる場合は、復調部24のデマッピング処理の前にmodulo演算を行い、内的プリコーディングとしてVP法を用いる場合は、復調部24のデマッピング処理の前に摂動ベクトル減算処理を行う。受信波形整形部22−1〜22−Rにおける信号処理はデジタル処理であっても良くアナログ処理であっても良い。
送信機25は、送信信号を生成してアンテナ21−1〜21−Rから基地局1へ送信する。なお、ここでは、アンテナ21−1〜21−Rが送受信アンテナである例を示しているが、送信アンテナをアンテナ21−1〜21−Rとは別に備えてもよい。ただし、基地局でのプリコーディング行列の算出において、基地局1が、端末2から受信した伝送路情報を用いる場合には、送信機25は、デコーダ部23から、デコーダ部23が推定した伝送路の情報である伝送路情報を取得し、伝送路情報を基地局1へ送信する。また、基地局1でのプリコーディング行列の算出において、基地局1が、アップリンクの伝送路の推定結果をダウンリンクの伝送路情報として用いる場合には、アンテナ21−1〜21−Rは送受信アンテナであり、送信機25は、アンテナ21−1〜21−Rから送信信号を送信する。
次に、本実施の形態の基地局1および端末2のハードウェア構成について説明する。図5に示した基地局1を構成する各構成要素は、それぞれを電子回路およびアンテナ等のハードウェアとして実現できる。一次変調部11−1〜11−mは、マッパまたはモジュレータであり、一次変調に離散フーリエ変換処理を含む場合には、離散フーリエ変換処理回路が追加される。プリコーダ部12は、プリコーディングを実施する処理回路であり、オーダリング部13は、オーダリングを行う処理回路である。送信波形整形部14−1〜14−Tは、送信波形整形回路であり、具体的には、D/Aコンバータ、フィルタ、周波数コンバータ等で構成される。また、送信波形整形部14−1〜14−TがCP付加、逆離散フーリエ変換処理を行う場合には、送信波形整形部14−1〜14−Tは、CP付加回路、逆離散フーリエ変換処理回路を備える。
プリコーダ部12及びオーダリング部13を実現する処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリとメモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)とを備える制御回路であってもよい。ここで、メモリとは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disk)等が該当する。
プリコーダ部12及びオーダリング部13が、専用のハードウェアで実現される場合、これらは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものである。処理回路が専用のハードウェアで実現される構成される場合、この処理回路は、例えば図8に示す処理回路500である。
プリコーダ部12及びオーダリング部13がCPUを備える制御回路で実現される場合、この制御回路は例えば図9に示す構成の制御回路400である。図9に示すように制御回路400は、CPUであるプロセッサ401と、メモリ402とを備える。プリコーダ部12及びオーダリング部13が、図9に示すように制御回路400により実現される場合、プロセッサ401がメモリ402に記憶された、プリコーダ部12及びオーダリング部13のそれぞれの処理に対応するプログラムを読み出して実行することにより実現される。また、メモリ402は、プロセッサ401が実施する各処理における一時メモリとしても使用される。
また、一次変調部11−1〜11−mおよび送信波形整形部14−1〜14−Tのうちの少なくとも一部が、上記のプリコーダ部12及びオーダリング部13と同様に、専用のハードウェアである処理回路または制御回路400により実現されてもよい。
図7に示した端末2を構成する各構成要素は、それぞれを電子回路およびアンテナ等のハードウェアとして実現できる。受信波形整形部22−1〜22−Rは、受信波形整形回路であり、具体的には、A/Dコンバータ、フィルタ、周波数コンバータ等で構成される。また、受信波形整形部22−1〜22−RがCP除去、離散フーリエ変換処理を行う場合には、受信波形整形部22−1〜22−Rは、CP除去回路、離散フーリエ変換処理回路を備える。デコーダ部23は、処理回路であり、復調部24は、デモジュレータまたはデマッパである。復調部24が等化処理、離散逆フーリエ変換処理等を行う場合には、復調部24は、等化器、逆離散フーリエ変換回路等を含む。
デコーダ部23を実現する処理回路は、専用のハードウェアで実現されてもよく、上述した図9に示すような制御回路400により実現されてもよい。デコーダ部23が図9に示すような制御回路400により実現される場合、プロセッサ401がメモリ402に記憶された、デコーダ部23の処理に対応するプログラムを読み出して実行することにより実現される。また、受信波形整形部22−1〜22−Rおよび復調部24のうちの少なくとも一部が、上記のデコーダ部23と同様に、専用のハードウェアである処理回路または制御回路400により実現されてもよい。
図10は、本実施の形態のプリコーダ部12における処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、プリコーダ部12は、オーダリング部13により決定された順序及びユーザクラスタ構成に従って、全ユーザクラスタの外的プリコーディング行列を算出する(ステップS12−1)。これは外的プリコーディング算出部125の処理に相当する。次に、ステップS12−1で求めた外的プリコーディング行列とオーダリング部13から入力された伝送路行列とに基づき、ユーザクラスタ毎の内的プリコーディング行列を算出する(ステップ12−2)。これは内的プリコーディング算出部126の処理に相当する。外的プリコーディング行列と内的プリコーディング行列とが算出された後、オーダリング部13より通知されるユーザオーダリング情報に従って、ユーザクラスタ1〜Cを構成するように全端末2の送信信号を並び替える(ステップS12−3)。これはユーザクラスタリング部121の処理に相当する。並び替えた信号に対し、ユーザクラスタ毎に内的プリコーディングを実施する(ステップS12−4)。これは内的プリコーダ部122−1〜122−Cの処理に相当する。内的プリコーディングにより各ユーザクラスタ内のIUIが解消された信号に対し、外的プリコーディングを実施する(ステップS12−5)。これは外的プリコーダ部123の処理に相当する。最後に、全端末2のプリコーディング適用後の信号を足し合わせる(ステップS12−6)。これは多重部124の処理に相当する。
次に、オーダリング部13の処理について説明する。プリコーダ部12においてユーザクラスタリングを行うために、オーダリング部13はユーザクラスタ構成と端末2の並び順を決定する。以降、ユーザクラスタ構成と端末2の並び順を決定することをユーザオーダリングと呼び、ユーザクラスタ構成と端末2の並び順に関する情報をユーザオーダリング情報と呼ぶ。また、オーダリング部13は、各端末2への電力配分を決定する。
図11は、本実施の形態のオーダリング部13の処理手順の一例を示すフローチャートである。オーダリング部13は、後述のいずれか方法により、端末2のユーザクラスタ構成を決定し(ステップS13−1)、ユーザクラスタ内の端末2の順序を決定する(ステップS13−2)。オーダリング部13は、決定したユーザオーダリング情報をプリコーダ部12へ通知する。ユーザクラスタ構成を決定する方法としては、例えば隣接端末同士の地理的位置、特に基地局1から見た方位角が近い端末同士または異なる端末同士をグルーピングする、あるいは、基地局1からの距離が近い端末同士または距離が遠い端末同士をグルーピングする、あるいは、隣接端末同士の伝送路行列の相関、すなわち、前述した端末間の伝送路行列の相互相関行列の対角項の大きさが高い端末同士または低い端末同士をグルーピングする、あるいは、要求される伝送速度が同等の端末同士または異なる端末同士をグルーピングする、あるいは移動速度が同等の端末同士または異なる端末同士をグルーピングする、などが挙げられるが、これらに限定されない。ユーザクラスタ内の端末2の順序を決定する方法としては、例えば、各端末2の伝送路利得(伝送路行列のフロベニウスノルムの二乗)の大きい順または小さい順とする、あるいは、各基地局1と端末2との間の伝送路行列が持つ非負固有値あるいは非負特異値の大きい順または小さい順とする、あるいは、隣接端末同士の地理的位置、例えば基地局1から見た方位角が近くなるようにまたは遠くなるように順序付けする、あるいは、基地局1からの距離が近くなるようにまたは遠くなるように順序付けする、あるいは、隣接端末同士の伝送路行列の相関、すなわち、前述した端末間の伝送路行列の相互相関行列の対角項の大きさが、高くなるようにまたは低くなるように順序付けする、などが挙げられるが、これらに限定されない。
オーダリング部13は、端末2の電力配分を決定する(ステップS13−3)。オーダリング部13は、電力配分の結果、すなわち各端末2に配分された電力をプリコーダ部12へ通知する。このとき、電力配分情報と併せて、ユーザオーダリングを適用した、すなわち決定した端末の並び順にしたがった基地局‐端末2間の伝送路情報もプリコーダ部12へ通知する。電力配分は、例えば、端末2の伝送路利得に基づき注水定理に従って実施する、または全端末2の受信品質を均質化するよう、すなわち、伝送路利得と配分した電力との積が全端末2の間で同等の値となるよう配分する、などが挙げられるが、これらに限定されない。なお、上記のステップS13−1〜S13−2と、ステップS13−3の順番は逆でもよい。すなわち、ステップS13−3、S13−1、S13−2の順に実施しても良い。
次に、端末2のデコーダ部23における処理を説明する。ここでは、上述した本実施の形態のシステムプリコーディング行列、すなわち、B1〜Bmを列方向に並べたT行(m×Nw)列の行列を用いて基地局1により形成されたビームを受信する受信装置である端末2で観測される伝送路成分を考える。IUIは送信基地局におけるプリコーディングにより全て解決されるため、端末2−iで観測される実効的な伝送路行列のうち、所望成分、すなわち、HiBiを用いてMIMOデコード処理を実施すれば良い。
端末2のデコーダ部23は、受信信号ri(t)に基づいて、端末2−iに宛てて送信された送信信号si(t)を検出する。受信信号ri(t)からの送信信号si(t)の検出は、一般的なMIMOデコード処理により実現可能である。例えば、「T. Ohgane, T. Nishimura, and Y. Ogawa、「Applications of Space Division Multiplexing and Those Performance in a MIMO Channel」、IEICE Trans. Commun.、vol. E88-B、no. 5、pp. 1843-1851、May 2005.」に記載されているように、ZF(Zero-Forcing)、最小平均二乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error)基準に代表される線形検出法を適用可能である。または、最尤推定または干渉キャンセラ(IC:Interference Canceller)に代表される非線形検出法も適用可能であり、どのようなMIMOデコード処理を用いてもよい。なお、デコーダ部23が行うMIMOデコード処理は、信号処理は、受信ウェイト乗積後のri(t)へ実施する替わりに、受信ウェイト乗積前のyi(t)に対して実施してもよい。この場合の、MIMOデコード処理も一般的なMIMOデコード処理と同様である。
上記の説明では、基地局1のアンテナ数Tおよび端末2の受信ブランチ数は、T≧Nw,total−Nw=(m−1)×Nwの関係を満たすものとしたが、端末2が備えるアンテナの数に制約は無く、端末2ごとにアンテナ数が異なる場合や、端末2ごとに受信ブランチ数が異なる場合にも本発明は適用可能である。端末2−jのアンテナ数NR,jとブランチ数Nw,jはNR,j≧Nw,jの関係を満たし、所望端末2−iに対するIUI端末を端末2−jとすると、基地局1とどの所望端末2の関係においてもT≧(Σk=1 m(Nw,k))を満たしていれば本発明を適用可能である。
また、上記の説明では、図1に示すようにスケジューリングを実施する制御局3が基地局1とは独立に存在する形態を例示したが、これに限らず、同一の装置内に制御局3と基地局1が存在していても良い。
また、上記の図5では、オーダリング部13を備える例を示したが、オーダリング部13を備えずに、図12に示す構成としてもよい。図12は、オーダリング部13を備えない基地局1aの構成例を示す図である。図12では、図5の基地局1と同様の機能を有する構成要素については、図5と同一の符号を付している。このことからもわかるように、図12と図5との違いは、図12においては、オーダリング部13が設けられていない点と、図5のプリコーダ部12の代わりにプリコーダ部12aが設けられている点であり、他の構成については同じである。図12に示す基地局1aでは、オーダリング部13による並び替えは行われないが、プリコーダ部12aが、上述したユーザクラスタ構成及びクラスタ内端末並び順決定によりユーザクラスタリングを実施することができる。すなわち、オーダリング部13の機能がプリコーダ部12aに含まれている。従って、図12に示す基地局1aにおいても、図5の基地局1による外的プリコーディングと同様に直交したユーザクラスタを形成することができる。
また、上記の図6では、内的プリコーダ部122−1〜122−Cと外的プリコーダ部123が独立してプリコーディングを実施する例を示したが、これに限らず、図13に示すように、内的プリコーディングと外的プリコーディングを一括して実施する構成としても良い。図13は、内的プリコーディングと外的プリコーディングとを一括して実施する一括プリコーダ部127を備えるプリコーダ部12bの構成例を示す図である。図13では、図6のプリコーダ部12と同様の機能を有する構成要素については、図6と同一の符号を付している。このことからもわかるように、図6と図13との違いは、図13においては、図6の内的プリコーダ部122−1〜122−Cと外的プリコーダ部123との代わりに、一括プリコーダ部127が設けられている点と、図6の内的プリコーディング算出部126の代わりに、一括プリコーディング算出部128が設けられている点である。他の構成については、図6と図13は同じである。図13に示すプリコーダ部12bでは、一括プリコーダ部127において、上述の内的プリコーディングと外的プリコーディングを一括して行う一括プリコーディングを実施する。一括プリコーディングは、一括プリコーディング算出部128から供給されるプリコーディング行列を用いる。一括プリコーディング算出部128では、外的プリコーディング算出部125から入力される外的プリコーディング行列に基づき内的プリコーディング行列を算出し、外的プリコーディング行列と内的プリコーディング行列を掛け合わせた行列、すなわち、システムプリコーディング行列Bバーを求め、一括プリコーダ部127に出力する。図13に示すプリコーダ部12bにおいても、図6のプリコーダ部12と同様のプリコーディングを実現することができる。
以上のように、本実施の形態では、基地局1が、複数の端末2をグルーピングしたユーザクラスタを疑似ユーザとして扱い、疑似ユーザに対してBD法を適用する外的プリコーディングを実施することにより、IUCIを解消することができる。本実施の形態によれば、ユーザクラスタに対するBD法により求めた送信プリコーディングを行うことで、複数のユーザクラスタを空間的に直交分離することができ、これにより、MU−MIMOダウンリンク全体を各ユーザクラスタ毎の小規模なMU−MIMOダウンリンク問題に細分化することができる。これにより、ユーザ数が多い場合においても、装置規模が大きくなることもなく、且つ、スケジューリングが複雑化することもなく、簡易に、MU−MIMOダウンリンクの課題を解決することができるという効果が得られる。
実施の形態2.
図14は、本発明にかかる実施の形態2の通信システムの構成例を示す図である。但し、図14では、端末2の図示を省略している。図14に示すように、本実施の形態における通信システムは、制御局3aと、複数の基地局1b−1〜1b−qとを備えている。基地局1b−1〜1b−qは、制御局3aにより制御される。qは2以上の整数である。上記の実施の形態1では、基地局1が搭載するアンテナ15−1〜15−Tによりビームを形成する例を説明した。これに限らず、T本のアンテナが複数の基地局に分散して搭載されている場合にも、実施の形態1と同様のシステムプリコーディング行列を用いることができる。従って、本実施の形態では、T本のアンテナが複数の基地局に分散して搭載されている場合について説明する。なお、基地局1b−1〜1b−qを区別せずに示す場合は、基地局1bと記載する。本実施の形態では、基地局1b−1〜1b−qが有するアンテナの数の総数がTであるとする。また、実施の形態1と同様に、制御局3aは、m台を超える通信候補端末から通信対象となるm台の端末を選択するスケジューリングを実施するものとし、以降説明する実施の形態では、制御局3aでスケジューリングが実施され、端末2−1〜2−mが通信対象として選択されたものとする。
図14に示すように、制御局3aは、プリコーダ算出部31、オーダリング部32および送受信機33を備える。プリコーダ算出部31は、実施の形態1のプリコーダ部12bにおける外的プリコーディング算出部125と一括プリコーディング算出部128の処理を合わせて実施することと同様の処理を実施する。すなわち、プリコーダ算出部31は、基地局1b−1〜1b−qが送信する送信信号の送信先となる端末2について複数のユーザクラスタにグルーピングした上で、IUCIをBD法により解決する外的プリコーディング行列と、各ユーザクラスタ内のIUIを解決するための内的プリコーディングと、を算出し、外的プリコーディング行列と内的プリコーディング行列を掛け合わせたシステムプリコーディング行列を求め、送受信機33に出力する。ただし、システムプリコーディング行列の算出に用いる伝送路情報については、送受信機33経由で基地局1b−1〜1b−qから受信する。基地局1b−1〜1b−qが伝送路情報を取得する方法は、実施の形態1と同様である。オーダリング部32は、実施の形態1のオーダリング部13と同様の処理を実施する。送受信機33は、基地局1b−1〜1b−qから受信した信号の受信処理と、基地局1b−1〜1b−qへ送信する信号に対する送信処理とを行う。送受信機33は、プリコーダ算出部31により算出されたプリコーディング行列であるシステムプリコーディング行列とオーダリング部32により算出されたユーザオーダリング情報と電力配分情報とを基地局1b−1〜1b−qへそれぞれ送信する。基地局1b−1〜1b−qは各々が1本以上の送信アンテナを備える。
図15は、本実施の形態の基地局1bの構成例を示す図である。図15に示すように、基地局1bは、実施の形態1の基地局1に送受信機17を追加し、プリコーダ部12bの替わりにプリコーダ部12cを備える以外は、実施の形態1の基地局1aと同様である。ただし、送信波形整形部およびアンテナの数は、それぞれD個である。Dは1以上の整数である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
送受信機17は、制御局3aから受信した信号の受信処理と、制御局3aへ送信する信号に対する送信処理とを行う。送受信機17は、伝送路情報を受信機16から取得し制御局3へ送信する。また、送受信機17は、制御局3aから受信したシステムプリコーディング行列情報、伝送路行列情報、ユーザオーダリング情報および電力配分情報をプリコーダ部12cへ出力する。プリコーダ部12cは、送受信機17から受け取った電力配分に基づいて生成した電力配分行列Piを乗積し、さらに送受信機17から受け取ったシステムプリコーディング行列Bバーを一次変調部11−1〜11−mから出力される送信信号に乗積して、乗積結果を送信波形整形部14−1〜14−Dへ出力する。プリコーダ部12cでは、線形プリコーディングだけでなく、システムプリコーディング行列と伝送路行列を用いて送信信号にNLP法を適用しても良い。
次に、制御局3aおよび基地局1bのハードウェア構成について説明する。基地局1bの構成要素のうち実施の形態1と同様の構成要素は、実施の形態1で述べたハードウェア構成により実現することができる。制御局3aのプリコーダ算出部31およびオーダリング部32は、処理回路である。プリコーダ算出部31、およびオーダリング部32は、実施の形態1のプリコーダ部12、12a、12bおよびオーダリング部13を実現する処理回路と同様に、専用のハードウェアであっても、メモリとメモリに格納されるプログラムを実行するCPUを備える制御回路であってもよい。プリコーダ算出部31およびオーダリング部32を実現する制御回路は、例えば、図9に示した制御回路400である。また、プリコーダ部12cも処理回路であり、この処理回路も専用のハードウェアであっても、メモリとメモリに格納されるプログラムを実行するCPUを備える制御回路であってもよい。プリコーダ部12aを実現する制御回路は、例えば、図9に示した制御回路400である。
制御局3aの送受信機33は、送信機および受信機で構成される。基地局1bの送受信機17も、送信機および受信機で構成される。
以上のように、本実施の形態では、制御局3aが実施の形態1と同様のシステムプリコーディング行列Bバーを算出し、基地局1bへシステムプリコーディング行列Bバーと伝送路行列とユーザオーダリング情報および電力配分情報を通知するようにした。このため、複数の基地局1bを備える場合にも、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、上記の実施の形態1,2で示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。