JP6876265B2 - ガスバリア性フィルム - Google Patents
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Description
ガスバリア層は一般に、フィルムや紙等の基材上に、スパッタリング法や蒸着法、ウェットコーティング法や印刷法等により設けられている。
また、ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属からなる金属箔や金属蒸着膜、金属酸化物の蒸着膜、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の水溶性高分子、ガスバリア性ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂からなる樹脂膜、前記水溶性高分子と無機層状鉱物との複合膜等が用いられている(例えば、特許文献1〜6参照)。
非塩素系のポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の水溶性高分子からなる樹脂膜は、低湿度雰囲気では高いガスバリア性を示すものの、ガスバリア性に湿度依存性があり、湿度の上昇とともにガスバリア性が大きく低下する欠点がある。
ポリ塩化ビニリデンおよび水溶性高分子以外の他の樹脂からなる樹脂膜は、ポリ塩化ビニリデンからなる樹脂膜や、低湿度雰囲気での水溶性高分子からなる樹脂膜と比較すると、ガスバリア性が劣っている。
水溶性高分子と無機層状鉱物との複合膜は、水溶性高分子からなる樹脂膜に比べて湿度依存性は改善するものの、その効果は充分ではなく、また、基材との密着性が低下する問題がある。
また、これらの樹脂膜や複合膜は、酸素ガスに対してはバリア性を発揮するものの、水蒸気に対するバリア性は充分ではない。
金属箔や金属蒸着膜は、酸素および水蒸気の両方に対して優れたバリア性を発揮する。しかし、不透明であるため、内容物を確認することができない問題がある。
酸化ケイ素等の金属酸化物の蒸着膜は、酸素および水蒸気の両方に対して優れたバリア性を発揮し、また透明である。しかし、伸縮性に劣るため、数%の伸びでクラックが生じてガスバリア性が低下する問題がある。
しかし、上記のような技術を用いたガスバリア性フィルムであっても、ガスバリア性や延伸処理後のガスバリア性には更なる改善の余地がある。
<1>樹脂基材と、蒸着膜層と、前記蒸着膜層の前記樹脂基材とは反対側に設けられた被覆層とを備え、
前記被覆層が、コーティング剤から形成された層であり、前記コーティング剤が、酸基含有ポリウレタン樹脂およびポリアミン化合物を含む水性ポリウレタン樹脂(A)と、水溶性高分子(B)とを含み、前記水性ポリウレタン樹脂(A)と前記水溶性高分子(B)との固形分での質量比が85/15〜10/90であり、
前記被覆層の厚みが100nm以上であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
<2>前記樹脂基材が、ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂のいずれか一方または両方を含む<1>に記載のガスバリア性フィルム。
<3>前記樹脂基材と前記蒸着膜層との間に下地層をさらに備え、
前記下地層が、ポリオール、有機ケイ素化合物または/および前記有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物、ポリウレタン樹脂、前記ポリオールと前記有機ケイ素化合物との反応生成物、ならびに前記ポリオールと前記有機ケイ素化合物とイソシアネート化合物との反応生成物からなる群から選ばれる少なくとも一種の有機高分子材料を含む<1>または<2>に記載のガスバリア性フィルム。
<4>前記コーティング剤が無機層状鉱物(C)をさらに含む<1>〜<3>のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
<5>前記無機層状鉱物(C)が水膨潤性合成雲母を含む<4>に記載のガスバリア性フィルム。
<6>前記コーティング剤がシランカップリング剤(D)をさらに含む<1>〜<5>のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
<7>前記被覆層の厚みが100nm〜1400nmである<1>〜<6>のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
図1は、本発明のガスバリア性フィルムの第一実施形態を模式的に示す断面図である。
本実施形態のガスバリア性フィルム10は、樹脂基材1と、蒸着膜層2と、蒸着膜層2の樹脂基材側とは反対側に設けられた被覆層3とを備える。つまり樹脂基材1と蒸着膜層2と被覆層3とがこの順に積層している。
樹脂基材1を構成する樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタナート(PEN)等のポリエステル;ポリスチレン;66−ナイロン等のポリアミド;ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、およびポリイミド等のエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。これらの樹脂の1種を単独でまたは2種以上をブレンドしてフィルム状に加工した樹脂フィルムを樹脂基材1として使用できる。樹脂フィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよい。樹脂フィルムとしては、二軸方向に延伸された二軸延伸フィルムが好ましい。
樹脂基材1は、1層の樹脂層(例えば樹脂フィルム)からなるものでもよく、2層以上の樹脂層(例えば樹脂フィルム)が積層したものであってもよい。
樹脂基材1の好ましい他の例は、ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂のいずれか一方または両方を含む樹脂基材である。この樹脂基材は、機械的強度が高く、寸法安定性が良い。そのため、この樹脂基材を用いたガスバリア性フィルムは、延伸等の力学的要因によるガスバリア性の低下がより抑制されたものとなる。
樹脂基材1としては、二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムおよび二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムのいずれか一方または両方を有する樹脂基材が特に好ましい。
樹脂基材1の厚みは、特に制限されず、例えば、3〜200μmであってもよく、6〜30μmであってもよい。樹脂基材1の厚みは、用途または求められる特性に応じて調整してもよい。
樹脂基材1の表面は、薬品処理、溶剤処理、コロナ処理、プラズマ処理およびオゾン処理からなる群から選ばれる少なくとも一つの処理が施されていてもよい。
蒸着膜層2は、典型的には、金属酸化物からなる。金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等が挙げられる。蒸着膜層2は、単一の金属酸化物からなる層であってもよく、2種類以上の金属酸化物の組み合わせからなる層であってもよい。
蒸着膜層2における酸化ケイ素の含有量は、例えば、蒸着膜層2の総質量に対し、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
被覆層3は、特定のコーティング剤から形成された層である。
蒸着膜層2は、金属酸化物を含むため、柔軟性が低い。柔軟性の高い被覆層3が蒸着膜層2の樹脂基材1とは反対側に設けられていることで、例えばガスバリア性フィルムの延伸等の力学的要因により蒸着膜層2がダメージを受けてガスバリア性が劣化することを抑制できる。そのためガスバリア性フィルム10の後加工適性が高く、包装袋に製袋する等の後加工を行ったときにガスバリア性が低下しにくい。
前記コーティング剤は、無機層状鉱物(C)をさらに含むことが好ましい。
前記コーティング剤は、シランカップリング剤(D)をさらに含むことが好ましい。
前記コーティング剤は、必要に応じて、ガスバリア性や積層フィルムとしての強度を損なわない範囲で、水性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)、無機層状鉱物(C)およびシランカップリング剤(D)以外の他の成分をさらに含んでもよい。
水性ポリウレタン樹脂(A)は、酸基含有ポリウレタン樹脂およびポリアミン化合物を含む。
水性ポリウレタン樹脂(A)は、被覆層3に柔軟性と、ガスバリア性、特に酸素バリア性を付与するために用いられる。水性ポリウレタン樹脂(A)では、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と、架橋剤としてのポリアミン化合物とを結合させることにより、ガスバリア性を発現させている。
酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基とポリアミン化合物との結合は、イオン結合(例えば、カルボキシル基と第3級アミノ基とのイオン結合等)であってもよく、共有結合(例えば、アミド結合等)であってもよい。
酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基は、水性ポリウレタン樹脂(A)を構成するポリアミン化合物のアミノ基(第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基等)と結合可能である。
酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。酸基は、通常、中和剤(塩基)により中和可能であり、塩基と塩を形成していてもよい。
酸基は、酸基含有ポリウレタン樹脂の末端に位置してもよく側鎖に位置してもよいが、少なくとも側鎖に位置していることが好ましい。
酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、JIS K 0070に準じた方法により測定される。
ウレタン基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレタン基の分子量(59g/当量)の割合を意味する。ウレア基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレア基の分子量(一級アミノ基(アミノ基):58g/当量、二級アミノ基(イミノ基):57g/当量)の割合を意味する。なお、酸基含有ポリウレタン樹脂として2種以上の混合物を用いる場合、ウレタン基濃度およびウレア基濃度は反応成分の仕込みベース、すなわち、各成分の使用割合をベースとして算出できる。
酸基含有ポリウレタン樹脂の構成単位における炭化水素環で構成された単位の割合は、通常、全構成単位の合計に対し、10〜70質量%であり、好ましくは15〜65質量%であり、より好ましくは20〜60質量%である。炭化水素環で構成された単位の割合が前記範囲の下限値未満であると、被覆層3のガスバリア性が不充分になるおそれがある。炭化水素環で構成された単位の割合が前記範囲の上限値超であると、被覆層3が剛直で脆くなるおそれがある。
酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度が100℃未満であると、被覆層3のガスバリア性が不充分になるおそれがある。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、典型的には、200℃以下、さらには180℃以下、さらには150℃以下程度である。上記各項目の好ましい範囲を満たす酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度が上記の上限値よりも高くなることは実質的に可能性が低い。
したがって、酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、100〜200℃が好ましく、110〜180℃がより好ましく、120〜150℃がさらに好ましい。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
塩基性窒素原子は、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と結合し得る窒素原子であり、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基等のアミノ基における窒素原子が挙げられる。
ポリアミン化合物としては、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と結合し、ガスバリア性を向上できるものであれば特に限定されるものではなく、2以上の塩基性窒素原子を有する種々の化合物を用いることができる。
ポリアミン化合物としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基および第3級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ基を2以上有するポリアミン化合物が好ましい。
なお、ポリアミン化合物に該当するシランカップリング剤は、シランカップリング剤(D)には該当しないものとする。
ポリアミン化合物のアミン価は、以下の方法により測定される。
試料を0.5〜2g精秤する(試料量Sg)。精秤した試料にエタノール30gを加え溶解させる。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え0.2mol/Lのエタノール性塩酸溶液(力価f)で滴定を行なう。溶液の色が緑から黄の間の色に変化した点を終点とし、このときの滴定量(AmL)を用い以下の計算式1を用いアミン価を求める。
計算式1:アミン価=A×f×0.2×56.108/S〔mgKOH/g〕
水性媒体としては、水、水溶性または親水性の有機溶剤、またはこれらの混合物が挙げられる。水溶性または親水性の有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;セロソルブ類;カルビトール類;アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。
水性媒体としては、水または水を主成分として含むものが好ましい。水性媒体中の水の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
水性媒体は、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基を中和する中和剤(塩基)を含んでもよく、含まなくてもよい。通常は中和剤が含まれる。
平均粒子径は、固形分濃度が0.03〜0.3質量%の状態で(水で希釈して)濃厚系粒径アナライザー(大塚電子社製 FPAR−10)にて計測される値である。
水性ポリウレタン樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、アセトン法、プレポリマー法等の、通常のポリウレタン樹脂の水性化技術が用いられる。ウレタン化反応では、必要に応じてアミン系触媒、錫系触媒、鉛系触媒等のウレタン化触媒を用いてもよい。
例えば、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類等の不活性有機溶媒中において、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、必要に応じて、ポリオール成分および鎖伸長剤成分のうち少なくとも1つと、を反応させることにより、酸基含有ポリウレタン樹脂を調製できる。より具体的には、不活性有機溶媒(特に、親水性または水溶性の有機溶媒)中、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、ポリオール成分と、を反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを生成し、中和剤で中和して水性媒体に溶解または分散させた後、鎖伸長剤成分を添加して反応させ、有機溶媒を除去することにより、酸基含有ポリウレタン樹脂の水性分散体を調製できる。
このようにして得られた酸基含有ポリウレタン樹脂の水性分散体にポリアミン化合物を添加し、必要に応じて加熱することにより、水分散体の形態の水性ポリウレタン樹脂(A)を調製できる。加熱する場合、加熱温度は、30〜60℃が好ましい。
「水溶性高分子」とは、水に溶解可能な高分子を指す。ここでいう溶解とは、溶質である高分子が溶媒である水に分子鎖レベルで分散して均一系をなしている状態を指す。より詳しくは、高分子鎖の分子鎖間の分子間力にくらべ水分子との分子間力が強くなり高分子鎖の絡み合いが解かれ、水に均一に分散している状態を指す。
水溶性高分子(B)は、特に被覆層3の柔軟性を向上し、後加工によるガスバリア性の劣化を抑えるために用いられる。
水溶性高分子(B)は、皮膜凝集強度を考慮すると、重合度が200以上であることが好ましい。
コーティング剤に含まれる水溶性高分子(B)は1種でもよく2種以上でもよい。
ポリビニルアルコール樹脂は、鹸化度や重合度が高い程、吸湿膨潤性が低くなり高いガスバリア性を発揮する。ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度が95%未満では、充分なガスバリア性が得られないおそれがある。ポリビニルアルコール樹脂の重合度が300未満では、ガスバリア性や皮膜凝集強度の低下を招くおそれがある。ポリビニルアルコール樹脂の重合度が2000を超えると、コーティング剤の粘度が上がり、他の成分と均一に混合することが難しく、ガスバリア性や密着強度の低下といった不具合を招くおそれがある。
「無機層状鉱物」とは、極薄の単位結晶層が重なって1つの層状粒子を形成している無機化合物を指す。無機層状鉱物(C)は、被覆層3にさらなる酸素バリア性と水蒸気バリア性を付与する目的で用いられる。
無機層状鉱物(C)としては、水中で膨潤および/またはへき開する化合物が好ましく、水への膨潤性を有する粘土化合物が特に好ましい。より具体的には、無機層状鉱物(C)は、極薄の単位結晶層間に水を配位し、吸収および/または膨潤する性質を有する粘土化合物であることが好ましい。かかる粘土化合物は、一般には、Si4+がO2−に対して配位して四面体構造を構成する層と、Al3+、Mg2+、Fe2+、Fe3+等がO2−およびOH−に対して配位して八面体構造を構成する層とが、1対1あるいは2対1で結合し、積み重なって層状構造を形成する化合物である。この粘土化合物は、天然の化合物であっても、合成された化合物であってもよい。
これらの無機層状鉱物(C)の中でも、モンモリロナイト等のスメクタイト族粘土鉱物、水膨潤性雲母等のマイカ族粘土鉱物が好ましい。
無機層状鉱物(C)の厚みは、500nm以下であることが好ましい。厚みが前記上限値以下であれば、被覆層3中で無機層状鉱物(C)が均一に整列しやすくなり、ガスバリア性、膜凝集強度が高いものとなる。無機層状鉱物(C)の厚みは、原子間力顕微鏡(AFM)により測定される。
したがって、無機層状鉱物(C)は、平均粒径が10μm以下で、厚みが500nm以下であることが特に好ましい。
水膨潤性合成雲母の含有量は、例えば、無機層状鉱物(C)の総質量に対し、50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。
シランカップリング剤(D)としては、一般的に用いられているものを使用でき、例えばケイ素原子に結合したアルコキシ基と有機反応基とを有する化合物が挙げられる。
シランカップリング剤(D)のアルコキシ基は加水分解してシラノール基を生成し、無機化合物との反応、吸着等の相互作用効果を発揮し、コーティング剤から形成される被覆層3の凝集強度の向上に寄与する。
特にコーティング剤が無機層状鉱物(C)およびシランカップリング剤(D)の両方を含む場合、無機層状鉱物(C)とシランカップリング剤(D)とが相互作用することで、コーティング剤から形成される被覆層3の凝集強度の向上効果が優れる。
有機反応基としては、例えばアミノ基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基、イソシアヌレート基等を有するものが挙げられる。(メタ)アクリル基は、アクリル基およびメタアクリル基の両方を示す。
アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
シランカップリング剤(D)としては、エポキシ基を有するものが好ましい。エポキシ基は、水性ポリウレタン樹脂(A)や水溶性高分子(B)が持つ水酸基と良好な反応性を持つため、被覆層3のガスバリア性をさらに向上できる。
他の成分としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、界面活性剤等の添加剤が挙げられる。
コーティング剤中、水性ポリウレタン樹脂(A)と水溶性高分子(B)との固形分での質量比(水性ポリウレタン樹脂(A)/水溶性高分子(B))は、85/15〜10/90であり、75/25〜20/80であることが好ましく、70/30〜25/75であることが特に好ましい。
水性ポリウレタン樹脂(A)/水溶性高分子(B)が前記範囲内であることで、ムラなくコーティング剤を塗工することができ、ガスバリア性や柔軟性に優れた被覆層3を形成することができる。水性ポリウレタン樹脂(A)/水溶性高分子(B)が85/15となるよりも水性ポリウレタン樹脂(A)の含有量が多い場合、塗工時にムラが発生するおそれがある。塗工時のムラは、外観の悪化やガスバリア性の低下につながる。水性ポリウレタン樹脂(A)/水溶性高分子(B)が10/90となるよりも水性ポリウレタン樹脂(A)の含有量が少ない場合、酸素バリア性が不充分になるおそれがある。
被覆層3の厚みが前記下限値以上であれば、充分なガスバリア性、延伸耐性が得られやすい。被覆層3の厚みが前記範囲の上限値以下であれば、延伸処理等の後加工に適しており、また、乾燥負荷や製造コストを抑制できる。
被覆層3の厚みが前記下限値未満の場合、ガスバリア性フィルムの酸素ガスバリア性が劣る。被覆層3の厚みが前記範囲の上限値を超えると、延伸処理によるガスバリア性の劣化が大きくなるおそれがある。また、厚みを厚くするために必要なコストも増大し、乾燥や成膜性に劣る。
被覆層3の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定される。
ガスバリア性フィルム10は、例えば、
樹脂基材1の一方の面上に蒸着膜層2を形成する工程と、
前記蒸着膜層2の樹脂基材1とは反対の面に、前記コーティング剤を塗布してコーティング剤からなる塗膜を形成し、その塗膜を乾燥して被覆層3を形成する工程と、
を有する製造方法により製造できる。
被覆層3を形成するコーティング剤は、水性ポリウレタン樹脂(A)および水溶性高分子(B)、必要に応じて無機層状鉱物(C)、シランカップリング剤(D)、他の成分、さらなる水性媒体等を混合することにより調製できる。各成分の混合順序は特に限定されない。シランカップリング剤(D)は、他成分と一緒に混合してもよく、予めシランカップリング剤(D)以外の成分が混合された混合物に、樹脂基材1へ塗工する直前に添加してもよい。
コーティング剤からなる塗膜の乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。該塗膜の乾燥温度は、例えば50〜200℃とすることができる。乾燥時間は、塗膜の厚さ、乾燥温度等によっても異なるが、例えば1秒〜5分間とすることができる。
ガスバリア性フィルム10にあっては、樹脂基材1と、蒸着膜層2と、蒸着膜層2の樹脂基材1とは反対側に設けられた被覆層3とを備え、被覆層が、水性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)を含み、水性ポリウレタン樹脂(A)と水溶性高分子(B)の固形分での質量比が85/15〜10/90であるコーティング剤から形成された層であるため、ガスバリア性に優れ、また、延伸等力学的要因によるガスバリア性の劣化が小さい。そのため、包装袋にしたときに、内容物の劣化を充分に抑制できる。また、後加工や長距離運送等で包装袋に力が加わってもガスバリア性の劣化が小さい。
図2は、本発明のガスバリア性フィルムの第二実施形態を模式的に示す断面図である。
本実施形態のガスバリア性フィルム20は、樹脂基材1と、蒸着膜層2と、樹脂基材1と蒸着膜層2との間に設けられた下地層4と、蒸着膜層2の樹脂基材1側とは反対側に設けられた被覆層3とを備える。つまり樹脂基材1と下地層4と蒸着膜層2と被覆層3とがこの順に積層している。なお、本実施形態では、既出の構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
ガスバリア性フィルム20は、樹脂基材1と蒸着膜層2との間に下地層4をさらに備える以外は、第一実施形態のガスバリア性フィルムと同様である。
下地層4は、プライマー層と呼ばれることもある。
下地層4は、典型的には、有機高分子材料を含む層であり、有機高分子材料を主成分として含むことが好ましい。下地層4における有機高分子材料の含有量は、例えば、下地層4の総質量に対し、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。
前記ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリビニルアルコール、ポリエステルポリオール、およびポリウレタンポリオール等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
アクリルポリオールは、ヒドロキシル基を有するアクリル酸誘導体モノマーに基づく構成単位を有する重合体である。アクリルポリオールは、ヒドロキシル基を有するアクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるものであってもよく、ヒドロキシル基を有するアクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーを共重合させて得られるものであってもよい。ヒドロキシル基を有するアクリル酸誘導体モノマーとしては、例えばヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。ヒドロキシル基を有するアクリル酸誘導体モノマーと共重合させるモノマーとしては、例えばエチルメタクリレート等のヒドロキシル基を有しないアクリル酸誘導体モノマー、スチレン等が挙げられる。
加水分解性基としては、例えば炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシアルキルオキシ基等が挙げられる。
非加水分解性の有機基としては、例えばアルキル基、ビニル基、γ−クロロプロピル基、グリシドオキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−アクリロキシプロピル基、アミノプロピル基、イソシアネートプロピル基等が挙げられる。
前記有機ケイ素化合物は、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応性がある点で、非加水分解性の有機基として少なくとも、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選ばれる官能基を含む有機基を有することが好ましい。
ポリオールとしては、前記と同様のものが挙げられる。
イソシアネート化合物は、ポリオールと反応して生じるウレタン結合により樹脂基材1と蒸着膜層2との密着性を高める作用を有する。すなわち、イソシアネート化合物は、架橋剤または硬化剤として機能する。イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系のトルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)等の、イソシアネート基を2以上有するモノマー類、これらの重合体およびこれらの誘導体等が挙げられる。前記のイソシアネート化合物は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ポリオールと前記イソシアネート化合物との比率(質量比)(ポリオール/イソシアネート化合物)は、1/3〜20/1であることが好ましく、1/2〜10/1であることがより好ましい。
前記ポリオールと前記有機ケイ素化合物とイソシアネート化合物との反応生成物において、イソシアネート化合物としては、前記と同様のものが挙げられる。
下地層4における有機高分子材料(I)の含有量は、下地層4の総質量に対し、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
下地層4の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM )により測定される。
この形態のガスバリア性フィルムにおいては、水蒸気バリア性の観点では、樹脂基材1が二軸延伸ポリプロピレンフィルムを有する樹脂基材であることが好ましい。機械的強度、寸法安定性の観点では、樹脂基材1がポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂のいずれか一方または両方を含む樹脂基材であることが好ましく、二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムおよび二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムのいずれか一方または両方を有する樹脂基材であることが特に好ましい。
ガスバリア性フィルム20は、例えば、
樹脂基材1の一方の面上に、有機高分子材料またはその前駆体および液状媒体を含む下地剤を塗布して下地剤からなる塗膜を形成し、その塗膜を乾燥して下地層4を形成する工程と、
前記下地層4の樹脂基材1とは反対側の面に、蒸着膜層2を形成する工程と、
前記蒸着膜層2の下地層4とは反対の面に、前記コーティング剤を塗布してコーティング剤からなる塗膜を形成し、その塗膜を乾燥して被覆層3を形成する工程と、
を有する製造方法により製造できる。
前記有機ケイ素化合物の加水分解物は、公知の方法により得ることができ、典型的には、酸またはアルカリ触媒とアルコールと水とを用いて行われる。加水分解が制御しやすい点では、酸触媒を用いることが好ましい。このとき、加水分解をさらに制御するために、一般的に知られている触媒等を添加してもよい。
液状媒体としては、水、有機溶剤、それらの混合物等が挙げられる。
下地剤は、有機高分子材料以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分としては前記と同様のものが挙げられる。
下地剤は、液状媒体中に前記の各成分を任意の割合で配合することにより調製できる。
下地剤からなる塗膜の乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。該塗膜の乾燥温度は、例えば50〜200℃とすることができる。乾燥時間は、塗膜の厚さ、乾燥温度等によっても異なるが、例えば1秒〜5分間とすることができる。
蒸着膜層2の形成方法、被膜層3の形成方法は前記と同様である。
ガスバリア性フィルム20にあっては、第一実施形態のガスバリア性フィルム10と同様に、樹脂基材1と、蒸着膜層2と、蒸着膜層2の樹脂基材1とは反対側に設けられた被覆層3とを備えるため、ガスバリア性に優れ、また、延伸等力学的要因によるガスバリア性の劣化が小さい。そのため、包装袋にしたときに、内容物の劣化を充分に抑制できる。
また、ガスバリア性フィルム20にあっては、樹脂基材1と蒸着膜層2との間に下地層4をさらに備えるため、樹脂基材1と蒸着膜層2との間の密着性がより良好であり、樹脂基材1がフィラーを含有して表面に凹凸を有したりうねりを有したりしていても、延伸等の力学的要因によるガスバリア性が低下しにくい。
例えば、樹脂基材の両面に、下地層、蒸着膜層および被覆層を設けてもよい。
本発明のガスバリア性フィルムは、必要に応じて、印刷層、アンカーコート層、オーバーコート層、遮光層、接着剤層、ヒートシール可能な熱融着層、その他の機能層等をさらに有していてもよい。
本発明のガスバリア性フィルムがヒートシール可能な熱融着層を有する場合、この熱融着層は、ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の最表層に配置される。ガスバリア性フィルムが熱融着層を有することにより、ガスバリア性フィルムが、熱シールによって密封可能なものとなる。
熱融着層としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル強重合、エチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
熱融着層は、例えば、樹脂基材の片面または両面に下地層、蒸着膜層および被覆層を順次形成した積層体の片面または両面に、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系等の公知の接着剤を用いて、公知のドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法等により積層することができる。
以下の各例で用いた材料を以下に示す。
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETと記載する。):市販品(東レ製、商品名:P−60、厚み:12μm)。
二軸延伸ナイロンフィルム(以下Nyと記載する。):市販品(ユニチカ製、商品面:エンブレム(登録商標)ONM、厚み;15μm)。
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下OPPと記載する。):市販品(AJプラスト製、商品名:PJ201、厚み:20μm)。
「水性ポリウレタン樹脂(A)」
(A1):酸基含有ポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂の水性分散体、三井化学社製の水性ポリウレタンディスパージョン「タケラック(登録商標)WPB−341」、固形分30質量%。
(B1):鹸化度98〜99%、重合度500のポリビニルアルコール(商品名:ポバールPVA−105、クラレ社製)。
(C1):水膨潤性合成雲母(商品名:ソマシフ(登録商標)MEB−3、コープケミカル社製)、平均粒径2.0μm。
(C2):モンモリロナイト(商品名:クニピア(登録商標)−F、クニミネ工業社製)、平均粒径0.5μm。
(D1):3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE−403、信越シリコーン社製)。
アクリルポリオール:ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メチルメタクリレート(MMA)およびn−ブチルメタクリレート(BMA)を、各単量体の割合がモル比で15/65/20になるようにブロック共重合させて作製した共重合体。質量平均分子量(Mw)=10000。
γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン:商品名KBE−9007、信越化学工業社製。
脂肪族系キシリレンジイソシアネート:商品名D−110N、三井化学社製。
電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属ケイ素、一酸化ケイ素および二酸化ケイ素の2種以上を含む混合材料を蒸発させて、PETの上に厚み20nmの酸化ケイ素からなる蒸着膜層を形成した。
前記蒸着膜層の上にグラビアコート法によって前記コーティング剤を塗布し、乾燥して、表1に示す厚みの被覆層を形成した。これによって実施例1〜5のガスバリア性フィルムを得た。
実施例1と同様の方法でPET上に蒸着膜層を形成した。
表1に示す種類と配合比率(質量%)で、水性ポリウレタン樹脂(A)と水溶性高分子(B)とを配合し、次いで、無機層状鉱物(C)を添加し、その後、全水性媒体中の10質量%がイソプロパノールであり、固形分濃度が8.2質量%となるように、イオン交換水とイソプロパノールで希釈して、被覆層形成用のコーティング剤を調製した。
前記蒸着膜層の上にグラビアコート法によって前記コーティング剤を塗布し、乾燥して、表1に示す厚みの被覆層を得た。これによって実施例6〜7のガスバリア性フィルムを得た。
実施例1と同様の方法でPET上に蒸着膜層を形成した。
表1に示す種類と配合比率(質量%)で、水性ポリウレタン樹脂(A)と水溶性高分子(B)とを配合し、次いで、無機層状鉱物(C)を添加し、その後、全水性媒体中の10質量%がイソプロパノールであり、固形分濃度が8.2質量%となるように、イオン交換水とイソプロパノールで希釈した。得られた希釈物に、表1に示す種類と配合比率(質量%)でシランカップリング剤(D)を添加して、被覆層形成用のコーティング剤を調製した。
前記蒸着膜層の上にグラビアコート法によって前記コーティング剤を塗布し、乾燥して、表1に示す厚みの被覆層を得た。これによって実施例8〜14のガスバリア性フィルムを得た。
希釈溶剤(酢酸エチル)に、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、アクリルポリオール、脂肪族系キシリレンジイソシアネートを11:53:37の質量比で配合して、下地剤(固形分濃度2質量%)を調製した。
樹脂基材として準備したPETの一方面上に、下地剤をグラビアコート法によって塗布し、乾燥して下地層を形成した。下地層の厚みは60〜70nmであった。
その後、実施例15では、下地層以外は実施例1と同様にして蒸着膜層および被覆層を形成してガスバリア性フィルムを得た。実施例16では、下地層以外は実施例8と同様にして蒸着膜層および被覆層を形成してガスバリア性フィルムを得た。
樹脂基材としてOPPを使用した以外は、実施例17は実施例15と同様にして、実施例18は実施例16と同様にして、下地層、蒸着膜層および被覆層を形成してガスバリア性フィルムを得た。
樹脂基材としてNyを使用した以外は実施例8と同様にして、蒸着膜層および被覆層を形成してガスバリア性フィルムを得た。
PETの一方面上に、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属アルミニウムを蒸発させるとともに酸素ガスを導入して、樹脂基材の上に厚み20nmの酸化アルミニウムからなる蒸着膜層を形成した。
その後、実施例20では、蒸着膜層以外は実施例1と同様にして被覆層を形成してガスバリア性フィルムを得た。実施例21では、蒸着膜層以外は実施例8と同様にして被覆層を形成してガスバリア性フィルムを得た。
実施例1と同様の方法で蒸着膜層を形成し、被覆層は形成せずに比較例1のガスバリア性フィルムを作製した。
実施例1と同様の方法で蒸着膜層を形成した。
水に、表2に示す種類で、水溶性高分子(B)、無機層状鉱物(C)、テトラエトキシシラン(TEOS)、シランカップリング剤(D)の4成分を、35:3:57:5の質量比で配合して、被覆層形成用のコーティング剤を調製した。
前記蒸着膜層の上にグラビアコート法によって前記コーティング剤を塗布し、乾燥して、表1に示す厚みの被覆層を形成した。これによって比較例2〜3のガスバリア性フィルムを得た。
実施例1と同様の方法で蒸着膜層を形成した。
表2に示す種類と配合比率(質量%)で、水性ポリウレタン樹脂(A)と水溶性高分子(B)とを配合し、その後、全水性媒体中の10質量%がイソプロパノールであり、固形分濃度が8.2質量%となるように、イオン交換水とイソプロパノールで希釈して、被覆層形成用のコーティング剤を調製した。
前記蒸着膜層の上にグラビアコート法によって前記コーティング剤を塗布し、乾燥して被覆層を得た。これによって比較例4〜5のガスバリア性フィルムを得た。
実施例1と同様の方法で蒸着膜層を形成した。
表2に示す種類の水性ポリウレタン樹脂(A)を、全水性媒体中の10質量%がイソプロパノールであり、固形分濃度が8.2質量%となるように、イオン交換水とイソプロパノールで希釈して、被覆層形成用のコーティング剤を調製した。
前記蒸着膜層の上にグラビアコート法によって前記コーティング剤を塗布し、乾燥して被覆層を得た。これによって比較例6のガスバリア性フィルムを得た。
実施例1と同様の方法で蒸着膜層を形成した。
表2に示す種類の水溶性高分子(B)を、全水性媒体中の10質量%がイソプロパノールであり、固形分濃度が8.2質量%となるように、イオン交換水とイソプロパノールで希釈して、被覆層形成用のコーティング剤を調製した。
前記蒸着膜層の上にグラビアコート法によって前記コーティング剤を塗布し、乾燥して被覆層を得た。これによって比較例7のガスバリア性フィルムを得た。
被覆層の厚みを50nmとした以外は実施例8と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
蒸着膜層を形成しなかったこと以外は、比較例9は実施例1と、比較例10は実施例8とそれぞれ同様の方法で樹脂基材上に下地層および被覆層を形成した。これによって比較例9〜10のガスバリア性フィルムを得た。
(1)酸素ガスバリア性:
実施例1〜21および比較例1〜10で得たガスバリア性フィルムについて、酸素透過度測定装置(商品名:OXTRAN−2/20、MOCON社製)を用いて、30℃、70%RHの雰囲気下、酸素透過度(cm3/(m2・day・MPa))を測定した。結果を「原紙OTR」として表1〜2に示す。
実施例1〜21および比較例1〜10で得たガスバリア性フィルムについて、水蒸気透過度測定装置(商品名:PERMATRAN−W−3/33、MOCON社製)を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下、水蒸気透過度(cm3/(m2・day))を測定した。結果を「原紙WVTR」として表1〜2に示す。
実施例1〜21および比較例1〜10で得たガスバリア性フィルムを、樹脂基材のTD方向の幅130mm×MD方向の幅260mmの枚葉に切り取った。これを、引張試験機テンシロンにより、6mm/分の速度でMD方向に2.5%延伸した。延伸した状態で1分間保持したのち開放した。その後、前記と同様の装置、条件で酸素ガスバリア性、水蒸気ガスバリア性を評価した。それぞれの結果を「延伸OTR」、「延伸WVTR」として表1〜2に示す。
実施例1〜21および比較例1〜10で得たガスバリア性フィルムの被覆層側に、ドライラミネーション加工により、ポリエステルウレタン系接着剤(商品名:タケラックA−969、タケネートA−5、三井化学社製)を介して、厚み30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:CPP GLC、三井化学東セロ社製)をラミネートし、40℃にて48時間養生し、積層フィルムを得た。
この積層フィルムを15mm幅の短冊状にカットし、引張試験機テンシロンにより、ガスバリア性フィルムを、未延伸ポリプロピレンフィルムから、300mm/分の速度で90°剥離させて、ラミネート強度(N/15mm)を測定した。結果を表1〜2に示す。
「(A)/(B)」は、水性ポリウレタン樹脂(A)と水溶性高分子(B)との固形分での質量比(水性ポリウレタン樹脂(A)/水溶性高分子(B))を示す。
原紙OTRおよび延伸OTRの単位はcm3/(m2・day・MPa)、原紙WVTRおよび延伸WVTRの単位はcm3/(m2・day)、ラミネート強度の単位はN/15mmである。
上記の中でも、実施例15〜16のガスバリア性フィルムは、PETを樹脂基材として使用しており、下地層を備えているため、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性に優れ、これらのガスバリア性が延伸後も特に充分に保持されていた。
比較例1のガスバリア性フィルムは、被覆層が存在しないため、ガスバリア性、力学的要因に対する耐性が共に劣っていた。比較例2〜7のガスバリア性フィルムは、被覆層を形成する材料の水性ポリウレタン樹脂(A)と水溶性高分子(B)の質量比が85/15〜10/90の範囲を外れていたため、ガスバリア性、力学的要因に対する耐性のいずれかが劣っていた。比較例8のガスバリア性フィルムは被覆層の厚みが100nm未満であるため、被覆層本来の性能が発揮されず、ガスバリア性が劣っていた。比較例9〜10のガスバリア性フィルムは、蒸着膜層を有さないため、ガスバリア性、力学的要因に対する耐性が劣っていた。
2 蒸着膜層
3 被覆層
4 下地層
10 ガスバリア性フィルム
20 ガスバリア性フィルム
Claims (6)
- 樹脂基材と、蒸着膜層と、前記蒸着膜層の前記樹脂基材とは反対側に設けられた被覆層とを備え、
前記被覆層が、コーティング剤から形成された層であり、
前記コーティング剤が、酸基含有ポリウレタン樹脂およびポリアミン化合物を含む水性ポリウレタン樹脂(A)と、水溶性高分子(B)とを含み、
前記水性ポリウレタン樹脂(A)と前記水溶性高分子(B)との固形分での質量比が85/15〜10/90であり、
前記コーティング剤は、シランカップリング剤(D)を含まないか又は前記シランカップリング剤(D)を10質量%以下で含み、かつ、前記シランカップリング剤以外の金属アルコキシドおよびその加水分解縮合物のいずれをも含まず、
前記被覆層の厚みが100nm以上であることを特徴とするガスバリア性フィルム。 - 前記樹脂基材が、ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂のいずれか一方または両方を含む請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記樹脂基材と前記蒸着膜層との間に下地層をさらに備え、
前記下地層が、ポリオール、有機ケイ素化合物または/および前記有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物、ポリウレタン樹脂、前記ポリオールと前記有機ケイ素化合物との反応生成物、ならびに前記ポリオールと前記有機ケイ素化合物とイソシアネート化合物との反応生成物からなる群から選ばれる少なくとも一種の有機高分子材料を含む請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。 - 前記コーティング剤が無機層状鉱物(C)をさらに含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記無機層状鉱物(C)が水膨潤性合成雲母を含む請求項4に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記被覆層の厚みが100nm〜1400nmである請求項1〜5のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
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