以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る伝送装置1及び光モジュール2の構成を示す模式図である。伝送装置1は、プリント回路基板11を備えている。また、光モジュール2は、プリント回路基板21を備えている。当該実施形態に係るプリント回路基板は、これらプリント回路基板11,21のいずれか又は両方である。
伝送装置1は、IC12をさらに備える。伝送装置1は、例えば、大容量のルータやスイッチである。伝送装置1は、例えば交換機の機能を有しており、基地局などに配置される。伝送装置1は、光モジュール2より受信用のデータ(受信用の電気信号)を取得し、IC12などを用いて、どこへ何のデータを送信するかを判断し、送信用のデータ(送信用の電気信号)を生成し、プリント回路基板11を介して、該当する光モジュール2へそのデータを伝達する。
光モジュール2は、送信機能及び受信機能を有するトランシーバであり、電気信号を光信号に変換して光ファイバ3Aへ送信する光送信器部23Aと、光ファイバ3Bを介して受信する光信号を電気信号に変換する光受信器部23Bと、を含んでいる。プリント回路基板21と、光送信器部23A及び光受信器部23Bとは、それぞれフレキシブル基板22A,22Bを介して接続されている。プリント回路基板21より電気信号がフレキシブル基板22Aを介して光送信器部23Aへ伝送され、光受信器部23Bより電気信号がフレキシブル基板22Bを介してプリント回路基板21へ伝送される。光モジュール2と伝送装置1とは電気コネクタ5を介して接続される。光素子は、光信号又は電気信号のうち一方から他方へ変換する素子である。電気信号を光信号へ変換する光素子が発光素子であり、光信号を電気信号へ変換する光素子が受光素子である。光送信器部23Aは、1又は複数(ここでは、4個)の発光素子を含み、光受信器部23Bは1又は複数(ここでは4個)の受光素子を含んでいる。
当該実施形態に係る伝送システムは、2個以上の伝送装置1と2個以上の光モジュール2と、1個以上の光ファイバ3を含む。各伝送装置1に、1個以上の光モジュール2が接続される。2個の伝送装置1にそれぞれ接続される光モジュール2の間を、光ファイバ3(例えば、光ファイバ3A)が接続している。一方の伝送装置1が生成した送信用のデータが接続される光モジュール2によって光信号に変換され、かかる光信号を光ファイバ3へ送信される。光ファイバ3上を伝送する光信号は、他方の伝送装置1に接続される光モジュール2によって受信され、光モジュール2が光信号を電気信号へ変換し、受信用のデータとして当該他方の伝送装置1へ伝送する。
当該実施形態に係る伝送装置1及び光モジュール2は、ビットレートが100Gbit/s級の高速の光ファイバ伝送に対応しており、近年のブロードバンドネットワークの普及と高速化の要請を満たしている。また、当該実施形態に係る光モジュール2は、小型化・低コスト化の要請を満たす光送受信機(光トランシーバモジュール)である。現在、イーサネット(登録商標)系のMSA(Multi Source Agreement)が主導となっており、当該実施形態に係る光モジュール2は、例えばQSFP28,CFP4とのMSA規格に基づいている。かかる規格では、ケース体積の縮小化・部品数の削減化が進んでいる。また、かかる規格における伝送方式は、4波長の波長多重方式である。光送信器部23Aには、それぞれの波長に対応した4個の発光素子(例えば半導体レーザ素子)が用いられている。光モジュールに備えられるプリント回路基板には、送信用が4チャネル、受信用が4チャネルの差動伝送線路が配置される。そのシリアルデータの電気信号の仕様はOIF CEI−28Gに基づいており、各々のチャネルを伝送する電気信号のビットレートは25Gbit/s乃至28Gbit/sのいずれかである。4個の半導体レーザ素子はチャネルごとにドライバ回路により変調駆動される。
半導体レーザ素子として、直接変調型DFB−LD素子(分布帰還型レーザ:Distributed Feedback Laser)を用いるのが、低コスト化と長距離ファイバ伝送特性の点で好適である。ただし、変調駆動電流が比較的大きいため、ドライバ回路の終端抵抗を一般的なインピーダンスの値である50Ωよりさらに低減させることで、低電圧化、低消費電力化に対応している。現状、直接変調型DFB−LD素子用の駆動IC(ドライバIC)は、ドライバ回路の終端抵抗を25Ωとした特殊仕様のICを用いることが標準的になっている。これに伴い、ドライバ出力端子と半導体レーザ素子とを接続する差動伝送線路は差動インピーダンスを50Ωと、これもまた特殊仕様にする必要がある。
さらに、DFB−LD素子の動作時における直列抵抗成分は、約10Ωと非常に低いため、駆動ICから出力された差動信号はDFB−LD素子で十分な吸収(終端)が出来ず、比較的多くの信号成分がDFB−LD素子で反射し、差動伝送線路を介してドライバ回路の終端抵抗で吸収される。差動伝送線路の途中に、不整合箇所がある場合、DFB−LD素子と不整合箇所との間で多重反射が生じ、光変調信号の品位に著しい劣化が引き起こされる。よって、差動伝送線路は、低インピーダンス(50Ω)であるとともに、反射量が少ないことが望ましい。発明者らの検討によれば、差動伝送線路の差動反射係数SDD11,SDD22を必要とされる周波数範囲内で−20dB以下にすれば、DFB−LD素子から出力される光変調信号の品位を十分良好に保つことが可能であるという知見を得ている。周波数範囲は電気信号のビットレートに対応し、例えば28Gbit/sのビットレートの場合、周波数範囲の上限を28GHzとすれば好適である。周波数範囲の下限は、DCカット用容量の必要性によるが、0または数10kHzとすれば好適である。
当該実施形態に係るプリント回路基板31は、積層方向に延伸する積層方向差動伝送線路32と、該基板の上表面側に配置されるとともに、積層方向差動伝送線路32と電気的に接続される、第1差動伝送線路33(図示せず)と、該基板の下表面側に配置されるとともに、積層方向差動伝送線路32と電気的に接続される、第2差動伝送線路34(図示せず)と、を備えている。ここで、第1差動伝送線路33及び第2差動伝送線路34は、マイクロストリップ線路である。当該実施形態に係るプリント回路基板31に配置される差動伝送線路の主な特徴は、積層方向差動伝送線路32の構造にあり、積層方向差動伝送線路32の差動インピーダンスを50Ωとすることが出来ている。なお、プリント回路基板31が有する上表面及び下表面とは、プリント回路基板が有する2つの表面のうち、一方を上表面と、他方を下表面とそれぞれ便宜上呼んでいる。この場合、下表面から上表面を向く方向は、積層方向上向きとなる。反対に、該一方を下表面、該他方を上表面としてもよいのは言うまでもない。この場合、積層方向上向きも反対の向きで定義される。
図2は、当該実施形態に係るプリント回路基板31の構造の一部を示す模式斜視図である。図2は、積層方向差動伝送線路32の構造を模式的に表している。積層方向差動伝送線路32は、差動信号ビア対101(図示せず)と、複数の導体板対102(図示せず)と、複数の接地ビア103(図示せず)と、を含んでいる。差動信号ビア対101は、ともに積層方向に延伸する第1信号ビア111Aと第2信号ビア111Bと、を含んでいる。第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bは、ともに穴(ホール)の内壁に金属メッキを施したビアホール(バイアホール)であり、その断面は円形状を有している。複数の導体板対102それぞれは、第1導体板と、第2導体板と、を含んでいる。第1導体板と第2導体板とは、同一層上にあって互いに離間して配置される。第1導体板は、第1信号ビア111Aの周縁から基板平面方向を外方へ広がり、第2導体板は、第2信号ビア111Bの周縁から基板平面方向を外方へ広がる。複数の導体板対102は、第1導体板対115(第1導体板115A及び第2導体板115B)と、第2導体板対116(第1導体板116A及び第2導体板116B)と、1以上の層間導体板対117(ここでは、6対の第1導体板117A及び第2導体板117B)と、を含んでいる。図2に示す通り、複数の導体板対102は、積層方向に沿って、互いに離間して並んでいる。複数の接地ビア103は、4本の接地ビア118A,118B,118C,118Dを含んでいる。複数の接地ビア103それぞれは、差動信号ビア対101と同様に、ビアホールである。複数の接地ビア103は、差動信号ビア対101を内側に囲うように並んで配置されており、さらに、複数の導体板対102も内側に囲うように並んで配置されている。
図3A及び図3Bは、当該実施形態に係るプリント回路基板31の構造の一部の平面を示す模式図である。図3Cは、当該実施形態に係るプリント回路基板31の一部の断面を示す模式図である。図3Cに、図3AのIIIC−IIIC線による断面が示されている。当該実施形態に係るプリント回路基板31は、それぞれ誘電体層を介して複数の配線層が形成される多層構造(ここでは、10層)のプリント回路基板である。ここでは、10層の配線層は、プリント回路基板31の上表面側から下表面側へ(すなわち、積層方向の上側から下側へ)順に、L1、L2、・・・、L10として、図3Cに明示されている。
第1差動伝送線路33は、マイクロストリップ線路である。第1差動伝送線路33は、差動信号ビア対101とそれぞれ接して接続される、第1ストリップ導体対104(図示せず)と、差動信号ビア対101を内側に囲う第1貫通穴119を有する、第1接地導体層126(図3B参照)と、を含んでいる。第1ストリップ導体対104は、上表面側にある配線層である第1層(ここでは、層L1)に配置される。図3Aに示す通り、第1ストリップ導体対104は1対の導体であり、1対の導体のうち、一方は、ストリップ導体121Aと接続部122Aとを含んでおり、他方は、ストリップ導体121Bと接続部122Bとを含んでいる。第1接地導体層126は、第1層(層L1)より積層方向下側にある第2層(層L2)上に配置される。第1ストリップ導体対104(層L1)を覆って、ソルダーレジスト層125が配置され、第1ストリップ導体対104(層L1)と第1接地導体層126(層L2)との間には、誘電体層127が配置される。なお、プリント回路基板31の上表面に、ソルダーレジスト層125が配置されているが、多層構造が有する複数の配線層のどこに形成されているかという観点で、第1差動伝送線路33はプリント回路基板31の上表面に形成されているとしてよい。
第2差動伝送線路34は、マイクロストリップ線路である。第2差動伝送線路34は、差動信号ビア対101とそれぞれ接して接続される、第2ストリップ導体対105(図示せず)と、差動信号ビア対101を内側に囲う第2貫通穴129を有する、第2接地導体層136と、を含んでいる。第2ストリップ導体対105は1対の導体であり、1対の導体のうち、一方は、ストリップ導体131A(図示せず)と接続部132A(図示せず)とを含んでおり、他方は、ストリップ導体131B(図示せず)と接続部132B(図示せず)とを含んでいる。第2接地導体層136は、第2層(層L2)より積層方向下側にある第3層(層L9)上に配置される。第2ストリップ導体対105は、第3層(層L9)より積層方向下側にある第4層(層L10)に配置される。第2ストリップ導体対105(層L10)の下側に、ソルダーレジスト層125が配置され、第2ストリップ導体対105(層L10)と第2接地導体層136(層L9)との間には、誘電体層127が配置される。なお、第1差動伝送線路33と同様に、第2差動伝送線路34はプリント回路基板31の下表面に形成されているとしてよい。
図3Aは第1層(層L1)の配線パタンを示している。ストリップ導体121Aと接続部122Aとは接触して配置されており、一体の導体を構成している。同様に、ストリップ導体121Bと接続部122Bとは接触して配置されており、一体の導体を構成している。ストリップ導体121A,121Bはそれぞれ、ストリップ導体幅Wを有し、ストリップ導体121A,121Bの内縁間の距離がストリップ導体間隔Gとなるよう、互いに離間している。ストリップ導体121A,121Bは、接続部122A,122Bより外方(図3Aの上向き)へ、それぞれストリップ導体幅Wで、互いにストリップ導体間隔Gで離間し平行して直線状に延伸している。ここで、ストリップ導体幅Wは0.30mmであり、ストリップ導体間隔Gは0.20mmである。ソルダーレジスト層125のうち、第1ストリップ導体対104の上面に配置される部分の厚み(第1ストリップ導体対104の上面から外気までの距離)は40μmであり、比誘電率4.4の誘電体が用いられる。第1層(層L1)と第2層(層L2)との層間距離(誘電体層127のうち、第1ストリップ導体対104の下面と第1接地導体層126の上面との間に配置される部分の厚み)は65μmであり、誘電体層127には、比誘電率3.5の誘電体が用いられる。かかる構成により、第1差動伝送線路の差動インピーダンスは実質的に50Ωとなっている。なお、ストリップ導体121A,121Bは、図3Aの縦方向を直線状に延伸している。プリント回路基板31の上表面に、電気部品が実装されるなど、回路設計により、ストリップ導体121A,121Bは図3Aの外方において屈曲などしていてもいいのは言うまでもない。第2差動伝送線路34についても同様である。
接続部122A,122Bは、ストリップ導体121A,121Bと、第1信号ビア111A及び第2信号ビア111B(差動信号ビア対101)と、をそれぞれ電気的に接続する。接続部122Aは、第1信号ビア111Aに接続するためのランド部123Aと、第1オープンスタブ部124Aと、を含んでおり、接続部122Bは、第2信号ビア111Bに接続するためのランド部123Bと、第1オープンスタブ部124Bと、を含んでいる。接続部122A,122Bは、並んで延伸するストリップ導体121A,121Bに対して、それぞれ外側へ広がる第1オープンスタブ部124A,124Bを有するとともに、第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bそれぞれの周縁すべてに接触して電気的に接続するランド部123A,123Bを有する。
前述の通り、第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bそれぞれの断面は円形状を有しており、円形状の直径は0.1mmである。それゆえ、平面視して、第1信号ビア111Aの円形状の中心は第1信号ビア111Aの重心G0と一致しており、第2信号ビア111Bの円形状の中心は第2信号ビア111Bの重心G0と一致している。なお、第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bはビアホールであり、金属メッキにより形成される薄膜の中空円柱である。第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bの中心間距離Pitch(重心間距離)は、1.0mmであり、ランド部123A,123Bは、第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bそれぞれの周縁から基板平面を外方へ広がる形状をしており、ランド部123A,123Bの外形の一部(図3Aの下側)は円弧となっている。また、第1接地導体層126は第1貫通穴119を有しており、不要なインピーダンス上昇を抑制するために、オープンスタブ回路として機能する第1オープンスタブ部124A,124Bが配置される。第1オープンスタブ部124A,124Bは、ストリップ導体121A,121Bの延伸方向に対して、外側に向けて延伸しており、第1オープンスタブ部124A,124Bの延伸方向は、ストリップ導体121A,121Bの延伸方向に対して垂直である。第1オープンスタブ部124A,124Bのオープンスタブ導体幅Ws及びオープンスタブ導体長Lsは、電磁界解析計算などによって求めることが出来、当該実施形態では、オープンスタブ導体幅Wsは0.25mmであり、オープンスタブ導体長Lsは0.605mmである。
図3Bは第2層(層L2)の配線パタンを示している。第1接地導体層126は、第1貫通穴119を有している。第1接地導体層126は、平面視して、第1貫通穴119を除いて、広く広がる平面層となっている。しかしながら、第1差動伝送線路33を構成するためには、第1接地導体層126が配置される領域は、平面視して、(第1貫通穴119を除いて)第1ストリップ導体対104と対向する領域と、かかる領域の外側へ広がる領域とを少なくとも含んでいればよい。ここで、中心線CL1,CL2を定義する。平面視して、第1信号ビア111Aの中心と第2信号ビア111Bの中心とを結ぶ線分を中心線CL1とする。中心線CL1は、第1信号ビア111Aの重心と第2信号ビア111Bの重心とを結ぶ重心線分と一致している。また、重心線分の垂直二等分線を中心線CL2とする。
第1導体板対115(第1導体板115A及び第2導体板115B)は、第1接地導体層126と同一層(層L2)上であって、第1貫通穴119の内側に、第1接地導体層126と離間して配置されている。第1貫通穴119の内側であって、第1導体板対115が配置されない領域には、誘電体層127が配置されており、第1導体板対115(第1導体板115A及び第2導体板115B)は、第1接地導体層126と電気的に分離されている。また、第1導体板115A及び第2導体板115Bは、互いに電気的に分離されている。第1貫通穴119は、アンチパッドと呼ばれる開口部であり、第1貫通穴119の形状は、第1信号ビア111Aの中心及び第2信号ビア111Bの中心それぞれを中心として外方(中心線CL1の両側)に広がる直径0.8mmの2つの半円と、該2つの半円とを結ぶ長方形と、を接続した形状である。該長方形の縦方向は中心線CL2の方向であり、縦の長さは半円の直径である0.8mmである。該長方形の横方向は中心線CL1の方向であり、横の長さは中心間距離Pitchであり、ここでは1.0mmである。第1貫通穴119は、第1導体板対115(導体板115A,115B)の外形との間隔を0.175mmとしている。ただし、導体板115A,115Bそれぞれの外形のうち、互いに対向している部分(図3Bに示す互いに対向して中心線CL2の方向に延びる部分)を除いている。
図3Cに示す通り、複数の導体板対102のうち、第1導体板対115(第1導体板115A及び第2導体板115B)が第2層(層L2)に配置され、第2導体板対116(第1導体板116A及び第2導体板116B)が第3層(層L9)に配置され、1以上の層間導体板対117(6対の第1導体板117A及び第2導体板117B)が、第2層と第3層の間にある複数の配線層(ここでは、層L3から層L8)にそれぞれ配置される。複数の導体板対102それぞれは、平面視して、同じ形状を有しているのが望ましく、当該実施形態に係る複数の導体板対102それぞれは、平面視して同じ形状を有している。
ここで、中心線CL3,CL4を定義する。複数の配線層それぞれにおける第1信号ビア111Aの中心を貫く直線を中心線CL3とする。同様に、複数の配線層それぞれにおける第2信号ビア111Bの中心を貫く直線を中心線CL4とする。以下、第1導体板対115(第1導体板115A及び第2導体板115B)の形状について説明するが、他の導体板対の形状についても同様である。
第1導体板115Aは、第1信号ビア111Aの周縁から基板平面方向を外方へ広がるフィン形状を有する小片配線である。第2導体板115Bは、第2信号ビア111Bの周縁から基板平面方向を外方へ広がるフィン形状を有する小片配線である。第1導体板115A及び第2導体板115Bそれぞれの外形は、第1信号ビア111Aの中心及び第2信号ビア111Bの中心それぞれを中心として外方(中心線CL1の両側)へ広がる直径を0.45mmとする2つの半円と、該2つの半円とを結ぶ長方形と、を接続した形状を、中心線CL2を中心線として間隔Gap0.1mmで分割した形状である。第1貫通穴119と同様に、該長方形の縦方向は中心線CL2の方向であり、縦の長さは半円の直径である0.45mmである。該長方形の横方向は中心線CL1の方向であり、横の長さは中心間距離Pitchとなる1.0mmである。すなわち、第1導体板115Aの外形は、直径を0.45mmとする半円と、縦が0.45mm横が0.45mmの正方形と、を接続した形状であり、第2導体板115Bの外形は、中心線CL2に対して、第1導体板115Aの外形を線対称で移動させた形状である。
第1導体板115Aの外形及び第2導体板115Bの外形それぞれの重心G1が、図3Bに示されている。なお、第1信号ビア111A(第2信号ビア111B)は、第1導体板115A(第2導体板115B)の外形より内側に完全に含まれている。すなわち、第1導体板115A(第2導体板115B)は、第1信号ビア111A(第2信号ビア111B)の周縁から基板平面方向(層L2の平面方向)をすべて(360°)の外方へ広がって形成されている。それにより、第1導体板115A(第2導体板115B)は、第1信号ビア111A(第2信号ビア111B)より、中心線CL2に向けてより内側にも延びており、間隔Gapは、第1信号ビア111Aと第2信号ビア111Bとの最小距離(Pitch−D)より小さくなっている。なお、第2層(層L2)における第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bの直径Dはともに0.2mmである。
差動伝送線路の特性を向上させるために、第1導体板115Aの外形と第2導体板115Bの外形それぞれは、重心線分(中心線CL1)に対して、線対称となっているのが望ましいが、実質的に線対称となっていればよい。この場合、第1導体板115Aの外形と第2導体板115Bの外形それぞれの重心は、中心線CL1上に位置する。また、差動伝送線路の特性を向上させるために、第1導体板115Aの外形と第2導体板115Bの外形とは、垂直二等分線(中心線CL2)に対して、線対称となっているのが望ましいが、実質的に線対称となっていればよい。
第2差動伝送線路34に備えられる、第2ストリップ導体対105及び第2接地導体層136は、積層方向差動伝送線路32の積層方向の中点を貫く基板平面における中心線CL1に対して、第1ストリップ導体対104及び第1接地導体層126を180°回転移動させたものと一致する。ここで、積層方向差動伝送線路32の積層方向の中点とは、第1層と第4層との層間を2分する平面(又は、第2層と第3層との層間を2分する平面)における中心線CL1である。
第3層(ここでは層L9)に配置される第2接地導体層136の形状は図3Bに示す第2層(ここでは層L2)に配置される第1接地導体層126の形状と同じであり、第2貫通穴129の形状は図3Bに示す第1貫通穴119の形状と同じである。また、前述の通り、同一層(ここでは層L9)上に配置される第2導体板対116(第1導体板116A及び第2導体板116B)の形状は、第1導体板対115(第1導体板115A及び第2導体板115B)の形状と同じである。
複数の接地ビア103は、第1接地導体層126及び第2接地導体層136とそれぞれ接触して電気的に接続される。前述の通り、複数の接地ビア103は、差動信号ビア対101及び複数の導体板対102を内側に囲うように並んで配置されており、当該実施形態に係る複数の接地ビア103は、長方形(矩形)の頂点にそれぞれその中心が位置する4本の接地ビア118A,118B,118C,118Dである。接地ビアと信号ビアとの距離は、適用する基板製造プロセスの設計ルール内で、なるべく小さくするのが望ましい。該長方形では、縦(中心線CL2に沿う辺)の長さが1.23mmであり、横(中心線CL1に沿う辺)の長さが1.525mmである。
第4層(ここでは層L10)に配置される第2ストリップ導体対105の形状は、図3Aに示す第1層(ここでは層L1)に配置される第1ストリップ導体対104の形状を、IIIC−IIIC線に対して線対称に移動させたものである。なお、IIIC−IIIC線は、第1信号ビア111Aの中心及び第2信号ビア111Bの中心を貫いている。第2ストリップ導体対105に含まれるストリップ導体131Aの形状及び接続部132Aの形状は、図3Aに示すストリップ導体121Aの形状及び接続部122Aの形状にそれぞれ対応している。同様に、第2ストリップ導体対105に含まれるストリップ導体131B及び接続部132Bそれぞれの形状は、図3Aに示すストリップ導体121B及び接続部122Bの形状にそれぞれ対応している。接続部132A,132Bはそれぞれランド部133A,133B(ともに図示せず)と、第2オープンスタブ部134A,134B(ともに図示せず)を含んでいる。ランド部133A(133B)の形状及び第2オープンスタブ部134A(134B)の形状は、図3Aに示すランド部123A(123B)の形状及び第1オープンスタブ部124A(124B)の形状にそれぞれ対応している。よって、第1差動伝送線路33と第2差動伝送線路34とは、平面視して、図3A及び図3Bの縦方向に直線状に延伸している。
1以上の層間導体板対117(ここでは、6対の第1導体板117A及び第2導体板117B)が、第2層(層L2)と第3層(層L9)との間に、配置されている(層L3〜層L8)。1以上の層間導体板対117それぞれの第1導体板117Aの外形及び第2導体板117Bの外形は、第1導体板対115の第1導体板115Aの外形及び第2導体板115Bの外形と、平面視して、それぞれ一致している。
当該実施形態に係るプリント回路基板31の特徴は、積層方向差動伝送線路32の構造にある。複数の導体板対102それぞれにおいて、重心線分の垂直二等分線(中心線CL2)に対して、第1導体板の外形の重心G1は第1信号ビア111Aの重心G0よりも内側に位置し、第2導体板の外形の重心G1は第2信号ビア111Bの重心G0よりも内側に位置することにある。複数の導体板対102それぞれがかかる構成を有することにより、積層方向差動伝送線路32が差動信号ビア対101(第1信号ビア111A及び第2信号ビア111B)のみで構成される場合に比べて、積層方向差動伝送線路32の差動インピーダンスをより低いものとすることが出来る。
複数の導体板対102それぞれにおいて、重心線分(中心線CL1)に対する第1導体板の外形の幅(中心線CL2に沿う長さ)は、重心線分(中心線CL1)に沿って、外方から内方へ、同じか広がっているのが望ましい。同様に、第2導体板の外形の幅は、重心線分に沿って、外方から内方へ、同じか広がっているのが望ましい。すなわち、第1導体板(第2導体板)の外形の幅の外方から内方への変化分は0以上である。当該実施形態において、第1導体板(第2導体板)の外形の幅は、外方から内方へ、半円部分を0から徐々に広がり(単調増加)、さらに、長方形部分において一定(同じ)となっている。複数の導体板対102それぞれがかかる外形を有することにより、限られた領域に配置される第1導体板の外形の重心G1及び第2導体板の外形の重心G1を、第1信号ビア111Aの重心G0及び第2信号ビア111Bの重心G0より、それぞれ容易に内側へ位置させることが出来る。また、重心G1と重心G0との距離を容易に大きくすることが出来る。
複数の導体板対102それぞれにおいて、第1導体板と第2導体板とは、垂直二等分線(中心線CL2)を鋏んで互いに対向し、第1導体板の外形と第2導体板の外形とは、対向する部分において、垂直二等分線(中心線CL2)に沿って延伸するのが、さらに望ましい。前述の通り、当該実施形態において、第1の導体板対115において、第1導体板115Aの外形は内側に正方形(又は長方形)状を含み、第2導体板115Bの外形は内側に正方形(又は長方形)状を含んでいる。第1導体板115Aは、当該正方形状の中心線CL2を望む辺にて、中心線CL2を鋏んで、第2導体板115Bの当該正方形状の中心線CL2を望む辺に対して対向しており、当該2本の辺は、間隔Gapで互いに平行に、垂直二等分線(中心線CL2)に沿って直線状に延伸している。複数の導体板対102それぞれがかかる形状を有することにより、限られた領域に配置される第1導体板の外形の重心G1及び第2導体板の外形の重心G1を、さらに内側へ位置させることが出来る。ここで、第1導体板115Aの外形と第2導体板115Bの外形とが互いに対向する直線部分の長さWfは、0.45mmである。
当該実施形態において、複数の導体板対102それぞれの第1導体板の外形及び第2導体板の外形は対称性が高く、第1導体板の外形の重心G1及び第2導体板の外形の重心G1は、ともに中心線CL1上に位置しているのが望ましいが、これに限定されることはない。第1導体板の外形の重心G1及び第2導体板の外形の重心G1が、中心線CL1上に位置していない場合であっても、中心線CL1を座標軸として、中心線CL1に沿う位置が、第1信号ビア111A(第2信号ビア111B)の重心G0より、内側にあればよい。
以下に、当該実施形態に係るプリント回路基板31の製造方法を、主に図3Cに示す断面を示す模式図を用いて説明する。前述の通り、プリント回路基板31は多層構造(ここでは、10層)のプリント回路基板であり、例えばビルドアップ工法により、プリント回路基板31を作製することが出来る。第1に、誘電体層138を間に挟みながら、第2層(ここでは、層L2)から第3層(ここでは、層L9)までの配線層(導体層)を、逐次、パタニングしてウエハース状に積層し、硬化させる。10層の配線層それぞれには銅箔を用いるが、銅箔に限定されることはない。配線層として用いるにふさわしい材質であれば、他の金属であっても、金属以外の物質であってもよい。誘電体層138を、ガラス布基材とエポキシ樹脂からなる材料(ガラスエポキシ樹脂)を用いて形成し、ここでは、その材料の比誘電率を3.5とする。なお、本明細書において、同一層上に配置されるとは、多層構造の複数の配線層のうち、同一の配線層に属することを指す。配線層をパタニングすることにより、例えば、第2層(層L2)において、第1接地導体層126と、第1導体板115Aと、第2導体板115Bとが、同一層上に配置される。
第2に、差動信号ビア対101(第1信号ビア111A及び第2信号ビア111B)、及び複数の接地ビア103(4本の接地ビア118A,118B,118C,118D)が形成される位置に、ドリルにより垂直に直径D0.2mmの円形のドリル穴を穿ち、ドリル穴の側面に銅メッキを施すことでビアホール(バイアホール)を形成する。これらの円筒状の銅からなる6本のビアの内部には樹脂139を封入し、差動信号ビア対101のためのビアホールの上下には銅メッキにより蓋を形成する。なお、ここでは、銅メッキを施すことによりビアホールを形成しているが、銅メッキに限定されることはなく、他の金属のメッキであってもよい。
第3に、第2層(層L2)及び第3層(層L9)のそれぞれ外側(図3Cの上側及び下側)に、誘電体層127を形成し、誘電体層127を間に挟んで、第1層(層L1)及び第4層(層L10)をそれぞれ形成する。第2層(層L2)及び第3層(層L9)において、配線層が形成されない領域を埋め込むよう、誘電体層127が配置される。誘電体層127を、ガラス布基材とエポキシ樹脂からなる材料(ガラスエポキシ樹脂)を用いて形成し、ここでは、その材料の比誘電率を3.5とし、誘電体層127の厚さをそれぞれ65μmとする。差動信号ビア対101(第1信号ビア111A及び第2信号ビア111B)が形成される位置に、レーザにより垂直に直径0.1mmの円形の(微細な)レーザ穴を穿ち、レーザ穴の側面に銅メッキを施すことでビアホール(バイアホール)を形成する。すなわち、レーザビアを形成する。レーザビアにより、差動信号ビア対101において、第1層(層L1)と第2層(層L2)との層間接続、及び第4層(層L10)と第3層(層L9)との層間接続が、それぞれなされる。なお、当該実施形態に係る第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bは、層L2から層L9は、ドリルによるビア(ホールの直径Dは0.2mm)であり、層L1から層L2、及び層L9から層L10は、レーザビア(ホールの直径は0.1mm)である。また、ドリルによるビアとレーザビアとの間は、銅メッキにより蓋がされている。
プリント回路基板31の厚さは、約1mmとするのが好適である。複数の配線層(層L1〜層L10)それぞれの導体(配線)の厚さは、適用する基板製造プロセスに依るが、18μm〜37μmとするのが好適である。上表面側及び下表面側それぞれのソルダーレジスト層125を、回路パタンを保護するために、膜状となるように塗布することにより形成する。ソルダーレジスト層125を、熱硬化性エポキシ樹脂インクを用いて形成するのが好適であり、ソルダーレジスト層125(の膜)の厚さは30μm〜50μmとするのが好適である。以上の製造行程により、当該実施形態に係るプリント回路基板31が作製される。
図4A及び図4Bは、当該実施形態に係るプリント回路基板31に備えられる差動伝送線路の特性を示す図である。図4Aは、三次元電磁界解析を利用したTDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射率測定)法によって求められる差動モードにおけるインピーダンスプロファイルのグラフである。プリント回路基板31の上表面及び下表面にそれぞれ配置される第1差動伝送線路33及び第2差動伝送線路34の差動インピーダンスがともに50Ωであるのに対して、当該実施形態に係る差動伝送線路は積層方向差動伝送線路32を含んでいるが、積層方向差動伝送線路32によるインピーダンスの変動はほとんど生じていないことを示している。
図4Bは、Sパラメータ解析によって求められる差動反射特性及び差動通過特性の周波数特性のグラフを示す。周波数範囲0Hz〜35GHzという広い範囲において、差動反射係数SDD11,SDD22は−20dB以下の値を示し、十分な特性を得ることが出来ている。さらに、周波数範囲0Hz〜26.5GHzにおいては、差動反射係数SDD11,SDD22は−30dB以下の値に保たれており、極めて低い反射量を持つ構造が実現されることが示されている。また、差動通過特性SDD21の変化も小さいことが示されている。よって、当該実施形態に係る差動伝送線路は、積層方向差動伝送線路32においても、差動インピーダンスを50Ωに近い値にすることが実現出来ている。
図5A及び図5Bは、当該実施形態に係る光モジュール2の構成を示す斜視模式図である。図5Aは光モジュール2の外観図を、図5Bは光モジュール2のうち内部に搭載される主要部品を、それぞれ示している。前述の通り、光モジュール2は、ビットレートが100Gbit/s級の光送受信機であり、ここでは、QSFP28とのMSA規格に基づいている。図5Aに示すように、光モジュール2は、ケース61と、ラッチ62と、プルタブ63と、プリント回路基板21と。を含んでいる。プリント回路基板21は、当該実施形態に係るプリント回路基板31によって構成される。これら主要部品が、光モジュール2の外形を構成する。ケース61は、亜鉛などの金属を用いてダイカストすることにより、成型加工して形成される。ラッチ62は、ステンレスなどの金属を用いて板金加工して形成される。プルタブ63は、熱可塑性エラストマーを用いて射出成形して形成される。以上の各部品をこれらの方法によりそれぞれ形成するのが、低コスト化の点で好適である。
次に、図5Bを用いて、光モジュール2のケース61の内部に搭載される主要部品について説明する。図1に示す通り、光モジュール2は、プリント回路基板21と、フレキシブル基板22A,22Bと、光送信器部23Aと、光受信器部23Bと、を含んでいる。光送信器部23Aは、それぞれの波長に対応する4個のTO−CAN型TOSA65A,65B,65C,65Dを含んでいる。フレキシブル基板22Aは、4個のサブフレキシブル基板66A,66B,66C,66Dを含んで構成される。各TO−CAN型TOSAの直径サイズは、ここでは3.8mmである。各TO−CAN型TOSAに、1個の半導体レーザ素子が搭載される。ここで、半導体レーザ素子は、直接変調型のDFB−LD素子が用いられている。4個のTO−CAN型TOSAが上下2列に並んで配置されており、上段2個のTO−CAN型TOSA65A,65Bは、サブフレキシブルプリント基板66A,66Bをそれぞれ介して、プリント回路基板21の上表面(図5Bに示す上側の表面)に接続される。下段2個のTO−CAN型TOSA65C,65Dは、サブフレキシブルプリント基板66C,66Dをそれぞれ介して、プリント回路基板21の下表面(上表面とは反対側の表面)に接続される。かかる構成により、QSFP28とのMSA規格のケース61の内部の空間に実装が可能となる。
図5Bに示す通り、プリント回路基板21の上表面に、2個のIC68,69が搭載されている。IC68は、送信側用の4チャネルのCDR回路と4チャネルのドライバ回路を集積化した駆動ICである。IC68の4チャネル分のドライバ出力端子(ドライバ差動端子)のうち、2チャンネル分のドライバ出力端子は、プリント回路基板21の上表面に配置される2チャネル分の差動伝送線路それぞれの一端に接続され、該2チャネル分の差動伝送線路の他端は、サブフレキシブルプリント基板66A,66Bそれぞれの一端に接続される。サブフレキシブルプリント基板66A,66Bの他端は、上段2個のTO−CAN型TOSA65A,65Bそれぞれの信号入力端子に接続される。よって、IC68の該2チャネル分のドライバ出力端子より出力される出力信号は、該2チャネル分の差動伝送線路、及びサブフレキシブルプリント基板66A,66Bをそれぞれ伝搬し、上段2個のTO−CAN型TOSA65A,65Bの信号入力端子へそれぞれ入力される。なお、該2チャネル分の差動伝送線路の差動モードにおける特性インピーダンスは40Ω〜60Ωの範囲にあるのが望ましく、50Ωであるのがさらに望ましい。
IC68の4チャネル分のドライバ出力端子のうち、他の2チャンネル分のドライバ出力端子は、当該実施形態に係る2チャンネル分の差動伝送線路それぞれの一端に接続される。当該実施形態に係る差動伝送線路は、前述の通り、第1差動伝送線路33と、積層方向差動伝送線路32と、第2差動伝送線路34と、を含む。すなわち、当該実施形態に係る差動伝送線路の一端(第1差動伝送線路33の端)はプリント回路基板21の上表面に配置され、当該実施形態に係る差動伝送線路の他端(第2差動伝送線路34の端)は下表面に配置され、プリント回路基板21の下表面に配置される接続端子(差動端子)を介して、サブフレキシブルプリント基板66C,66Dそれぞれの一端に、接続される。サブフレキシブルプリント基板66C,66Dの他端は、下段2個のTO−CAN型TOSA65C,65Dそれぞれの信号入力端子に接続される。よって、IC68の該他の2チャネル分のドライバ出力端子より出力される出力信号は、当該実施形態に係る該2チャネル分の差動伝送線路(該他の2チャネル分の差動伝送線路)、及びサブフレキシブルプリント基板66C,66Dをそれぞれ伝搬し、下段2個のTO−CAN型TOSA65C,65Dの信号入力端子へそれぞれ入力される。光モジュール2の光送信器部23Aは、4個のTO−CAN型TOSA65A,65B,65C,65Dそれぞれの出力側に接続される光合波器(図示せず)をさらに備える。4個のTO−CAN型TOSA65A,65B,65C,65Dそれぞれが出力する光変調信号を光合波器は合波して、波長多重光変調信号を、接続される光ファイバ3Aへ出力する。なお、当該実施形態に係る該2チャネル分の差動伝送線路の差動モードにおける特性インピーダンスも40Ω〜60Ωの範囲にあるのが望ましく、50Ωであるのがさらに望ましい。光モジュール2の光送信側をこのような構成にすることにより、下段2個のTO−CAN型TOSA65C,65Dに内蔵されるDFB−LD素子から出力される光変調信号の品位を十分良好に保つことが出来る。
当該実施形態に係る光モジュール2は、プリント回路基板21の上表面に配置され、ドライバ差動端子(ドライバ出力端子)を有する送信用駆動IC(IC68)を含み、光モジュール2の光送信器部23Aは複数の直接変調型半導体レーザ素子(特に、直接変調型のDFB−LD素子)を含んでいる。複数の直接変調型半導体レーザ素子のうち少なくとも1の直接変調型半導体レーザ素子は、フレキシブル基板22Aなどを介して、プリント回路基板21の下表面に配置される差動端子と電気的に接続される。第1差動伝送線路33は、送信用駆動ICのドライバ差動端子と電気的に接続され、第2差動伝送線路34は、プリント回路基板21の下表面に配置される差動端子と電気的に接続される。これにより、送信用駆動ICと直接変調型半導体レーザ素子とが、当該実施形態に係る差動伝送線路を介して、電気的に接続されることとなる。当該実施形態において、直接変調型半導体レーザ素子は直接変調型のDFB−LD素子としたが、これに限定されることなく、他の半導体レーザ素子であってもよい。また、発光素子は、直接変調型半導体レーザ素子に限定されることはなく、他の半導体レーザ素子であってもよいし、他の発光素子であってもよい。
光モジュール2の光受信器部23Bは、4個の受光素子が内蔵される4チャネルROSA67を含んでいる。ここで、受光素子はPD(Photo Diode)素子である。4チャネルROSA67は、フレキシブル基板22Bの一端に接続される。フレキシブル基板22Bの他端は、プリント回路基板31の上表面に配置される4チャネル分の差動伝送線路それぞれの一端に接続され、該4チャネル分の差動伝送線路の他端は、IC69の4チャネル分のCDR信号入力端子に接続される。IC68は、受信側用の4チャネルのCDR回路を集積化したICであり、プリント回路基板31の上表面に配置される。4チャネルROSA67の出力信号は、フレキシブルプリント基板22Bに配置された4チャネル分の差動線路、及びプリント回路基板31の上表面に配置される4チャネル分の差動伝送線路を介して、IC69のCDR信号入力端子へそれぞれ入力される。該4チャネル分の差動伝送線路の差動モードにおける特性インピーダンスは通常100Ωのものを用いる。
現在、実現されている主な光モジュール(光送受信機)では、ケース体積の縮小化に対応するために、送信系を4個の半導体レーザ及び光マルチプレクサを含む光学系を集積した1個の4チャネルTOSAと、4個のドライバ回路及び4個のCDR回路を集積化した1個の駆動ICと、を含んで構成することにより、実装面積を縮小する工夫がなされている。4チャネルTOSAは、パッケージとして金属と多層セラミックからなる気密パッケージを必要とするため、比較的高価であり、光モジュールの価格低減が困難である。一方、SFP+,XFPとのMSA規格の10Gbit/s級の光モジュールでは、価格低減が進み、成熟期のほとんどの製品においてはパッケージにTO−CAN構造を用い、1個の半導体レーザを搭載した廉価なTOSAを適用している。100Gbit/s級の光モジュールにおいても、価格低減の可能なTO−CAN型TOSAの適用が光モジュールを低コスト化する上で非常に望ましい。
当該実施形態に係る光モジュール2では、図5Bに示す通り、4個のTO−CAN型TOSAが上下2列に並んで配置されている。かかる配置とすることにより、QSFP28とのMSA規格のケース61の内部に実装することが可能となる。前述の通り、IC68の出力端子と4個のTO−CAN型TOSA65A,65B,65C,65Dとをそれぞれ接続する差動伝送線路のうち、半数の差動伝送線路は、積層方向に延伸する積層方向差動伝送線路を含むこととなる。差動インピーダンスを40Ω〜60Ω、望ましくは50Ωという低インピーダンスの差動伝送線路を、信号の反射量を極めて低く抑えながら接続し、光変調出力の品位を十分良好に保つ構造を提供することが可能であり、低コスト化と高密度化・小型化に適した光モジュールを実現することが出来、当該実施形態に係るプリント回路基板31は好適である。
また、QSFP28とのMSA規格では、光モジュールの外部接続用端子は、プリント回路基板の上表面に送信用の2チャネルと受信用の2チャネルの端子が、プリント回路基板の下表面に送信用の2チャネルと受信用の2チャネルの端子が、それぞれ配置される仕様になっている。プリント回路基板の高密度化に対応するために、4チャネル用の4個のCDR回路を集積したICを用いるのが望まれる。この場合、送信用IC(CDR回路)の入力端子と外部接続用端子とを接続する差動伝送線路、及び受信用IC(CDR回路)の出力端子と外部接続用端子とを接続する差動伝送線路のうち、半数の差動伝送線路は、積層方向に延伸する積層方向差動伝送線路を含むこととなり、当該実施形態に係るプリント回路基板31は好適である。
当該実施形態に係るプリント回路基板31において、複数の接地ビア103(4本の接地ビア118A,118B,118C,118D)が、差動信号ビア対101を内側に囲うように並んで配置されていることにより、差動信号ビア対101に起因する不要電磁波の発生を十分低く抑える事が出来、信号ビアを有する複数のチャネル間のクロストークを抑制することが出来る。よって、プリント回路基板上に信号ビアを有する複数のチャネルが配置されている場合、当該実施形態に係るプリント回路基板31は、チャネル間クロストークに起因したドライバ出力信号の品位劣化を抑制することが出来、光送信器部23Aから出力される光変調信号の品位を十分良好に保つことが可能である。特に、DFB−LD素子を発光素子として用いる場合に、当該実施形態に係るプリント回路基板31は顕著な効果を奏する。
当該実施形態に係るプリント回路基板31は、現在広く普及している低コストで量産性に優れた多層構造のプリント回路基板作成技術を用いて、作製されている。複数の導体板対102それぞれの第1導体板及び第2導体板は、差動信号ビア対101の周縁より外方へ広がる形状を有しているので、ドリルの外径及び精度に鑑みても、歩留まりよくドリルによって穴を形成することが出来る。層2〜層9の間の差動信号ビア対101をドリルによって形成することにより、作製行程の簡素化、短時間化、低コスト化を実現する。
当該実施形態において、誘電体層127,138を比誘電率3.5のガラス布基材とエポキシ樹脂からなる材料としたが、これに限定されることはなく、比誘電率の値もこれに限定されることはない。例えば、代表的で比較的安価なFR4やFR5を材料として用いて、比誘電率を4.0〜4.8としてもよい。また、高周波における損失をより低減する目的で、ガラス布基材とPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる材料を用いて、比誘電率は2.0〜2.3としてもよい。
当該実施形態に係るプリント回路基板31において、複数の導体板対102それぞれの形状(配線パタン形状)を同一形状としている。同一形状とすることにより、設計パラメータを少なくして設計を容易にするという観点で望ましいが、同一形状のものに限定されなくてもよい。複数の導体板対102それぞれの第1導体板及び第2導体板が、上述の条件を満たしていれば、層ごとに異なる形状としてもよい。
発明者らは、当該実施形態に係るプリント回路基板31の積層方向差動伝送線路32のメカニズムについて考察しており、以下にそのメカニズムについて説明する。まず、一定の断面形状と無限大の長さを持つ、理想的な差動ビア構造について、インピーダンスの低減に有効な形状について検討する。なお、理想的な差動ビア構造において、差動ビアは1対の導体柱である。しかしながら、差動伝送線路を伝送する信号が、10GHz〜25GHzといった範囲の周波数成分において、電磁波が浸透する厚さ(表皮厚)はビアホールの厚みより一般に十分に薄いので、導体柱とビアホールとの間に実質的な特性差はない。
図20Aは、比較例1に係る差動ビア構造の断面図であり、図20Bは、比較例1に係る差動ビア構造の特性インピーダンスZdiffを示す図である。比較例1に係る差動ビア構造の断面は円形状を有し、2つのビアの円形の直径DV(Diameter of via)が等しい。2つのビアの最短距離が間隔Gapである。図20Bは、比較例1に係る差動ビア構造の差動モードにおける特性インピーダンスZdiffの計算結果であり、間隔Gapが0.1mm、0.2mm、0.3mmの場合について、異なる直径DVにおける特性インピーダンスZdiffがそれぞれ示されている。比較例1に係る差動ビア構造は、一般的なドリルビアに対応しており、ここで、ビアは理想的な金属(良導体)、ビアの周辺は比誘電率3.5の誘電体と、周囲に接地導体はないと仮定している。特性インピーダンスZdiffの値は電磁界解析ツールにより算出している。
比較例1に係る差動ビア構造の特性インピーダンスZdiffを低減させるには、図20Bに示す通り、ビアの間隔Gapを縮小させる方法と、2つのビアの直径DVを拡大させる方法と、が考えられる。特性インピーダンスZdiffを50Ωとするには、例えば、間隔Gapを0.2mm、ビアの直径DVを0.6mmとすればよい。しかしながら、ビアの直径DVを0.6mmまで拡大するには、比較的大きな面積が必要となり、高密度化が難しいことがわかる。ビアの間隔Gapをさらに低減出来れば、計算上は、より小さな直径DVのビアで50Ωの特性インピーダンスZdiffが得られる。しかしながら、プリント回路基板の作製工程おいては、ドリル加工により間隔を充填するガラス布基材とエポキシ樹脂からなる材料が容易に破断されるため、間隔Gapのさらなる縮小は現実的ではなく、非常に困難である。また、図20Bに示す曲線の傾きが緩やかであり、ビアの直径DVを拡大させても、特性インピーダンスZdiffの変化量が小さい。50Ωよりさらに低いインピーダンス、例えば特性インピーダンスZdiffを40Ωとするには、ビアの直径DVを0.9mm以上とする必要があり、比較例1に係る差動ビア構造で低インピーダンスとするのは難しい。
図21Aは、比較例2に係る差動ビア構造の断面図であり、図21Bは、比較例2に係る差動ビア構造の特性インピーダンスZdiffを示す図である。差動ビア構造の断面形状を工夫することにより、低インピーダンスを実現出来るか、検討する。ビオ−サバールの法則の示す概念的な方向性を考察すると、以下のいずれかが必要である。(1)導体断面(平均半径)を大きくして、自己インダクタンスを低減させる。(2)導体断面の幾何学重心の距離を小さくして、相互インダクタンスを増加させる。この指針(2)に沿うのであれば、2つのビアが互いに対向する部分は、互いに平行に延びる直線とした方が有利であろうことがわかる。図21Aに示す通り、比較例2に係る差動ビア構造は、ビアの断面を半円形状としている。2つのビアは、半円の直径部分で互いに対向している。図21Bは、比較例2に係る差動ビア構造の差動モードにおける特性インピーダンスZdiffの計算結果であり、間隔Gapが0.1mm、0.2mm、0.3mmの場合について、異なる直径DVにおける特性インピーダンスZdiffがそれぞれ示されている。
特性インピーダンスZdiffを50Ωとするには、例えば、間隔Gapを0.2mm、ビアの半円の直径DS(Diameter of via)を0.42mmとすればよい。比較例2に係る差動ビア構造は、比較例1に比べて、全体のサイズを小型にすることが出来る。また、図21Bに示す曲線の傾きが、図20Bに示す曲線の傾きと比べて大きくなり、ビアの半円の直径DSを拡大する場合に、特性インピーダンスZdiffの変化量が大きくなる。例えば、特性インピーダンスZdiffを40Ωとするには、ビアの半円の直径DSを0.6mmに拡大すればよい。このように、互いに対向する部分を、互いに平行に延伸する直線とすることが、差動ビア構造の小型化、実装の高密度化に有利に働く。
なお、図20Aに示す比較例1に係る差動ビア構造は、平行二線式線路(Parallel Line)として、特性インピーダンスを求める近似式が広く知られている。しかしながら、比較例1において、低インピーダンスに適した構造を求める場合、図20Bに示す領域において近似式の仮定が成り立たないサイズとなる。近似式を用いた場合には誤差が大きくなるため注意が必要である。特性インピーダンスの算出には電磁界解析ツールを用いるのが適切である。
比較例1及び比較例2に係る差動ビア構造の検討を踏まえて、断面形状の構造の違いを、実際のプリント回路基板上の第1差動伝送線路(上表面側)と第2差動伝送線路(下表面側)とを接続する積層方向差動伝送線路において比較した結果を、以下に説明する。当該実施形態に係るプリント回路基板31と同様に、第1差動伝送線路は第1層及び第2層に配置され、第2差動伝送線路は第3層及び第4層に配置される。第1差動伝送線路は、第1ストリップ導体対(第1層)と、第1貫通穴219を有する第1接地導体層(第2層)と、を含んでいる。同様に、第2差動伝送線路は、第2ストリップ導体対(第4層)と、第2貫通穴を有する第2接地導体層(第3層)と、を含んでいる。第1差動伝送線路及び第2差動伝送線路それぞれの差動インピーダンスは50Ωである。
図22Aは、比較例1に係るプリント回路基板49の構造の一部の平面を示す模式図である。図22B及び図22Cは、比較例1に係るプリント回路基板49に備えられる差動伝送線路の特性を示す図である。積層方向差動伝送線路は、差動信号ビア対(第1信号ビア211A及び第2信号ビア211B)と、4本の接地ビアと、を含んでいる。第1信号ビア211A及び第2信号ビア211Bは、通常のドリルビアにより形成され、2つのビアの断面は直径DV0.20mmの円形状を有している。差動信号ビア対の間隔Gapは、通常利用されるプリント回路基板製造業者の製造ルールに基づいた最小距離とし、間隔Gapを0.41mmをしている。第1ストリップ導体対は、ストリップ導体221A,221Bと、差動信号ビア対にそれぞれ接続するランド部223A,223Bと、を含んでいる。第1ストリップ導体対を覆ってソルダーレジスト層225が配置される。
図22Bは、三次元電磁界解析を利用したTDR法によって求められる差動モードにおけるインピーダンスプロファイルのグラフである。プリント回路基板49の上表面と下表面とに配置される第1差動伝送線路及び第2差動伝送線路それぞれの差動インピーダンスが50Ωであるのに対して、積層方向差動伝送線路を配置したことによるインピーダンスの変動が大きく、高インピーダンスとなっていることが示される。図22Cは、Sパラメータ解析によって求められる差動反射特性及び差動通過特性の周波数特性のグラフを示す。差動反射係数SDD11,SDD22が−20dB以下の値を示すのは、周波数範囲0Hz〜3GHzという極めて狭い範囲であり、十分な特性を得ることは出来ない。周波数11GHz以上では差動反射係数SDD11,SDD22は−10dB以上の値に劣化している。ビアの円形の直径DVを増加させても、差動信号ビア対の面積が増加するばかりで、インピーダンスの低減は十分に得られなかった。
図23A及び図23Bは、比較例2に係るプリント回路基板50の構造の一部の平面を示す模式図である。図23C及び図23Dは、比較例2に係るプリント回路基板50に備えられる差動伝送線路の特性を示す図である。積層方向差動伝送線路は、差動信号ビア対と、4本の接地ビア218A,218B,218C,218Dと、を含んでいる。比較例1と異なり、差動信号ビア対のうち、第2層と第3層との間は、1対の導体柱(導体柱215A,215B)が配置されており、第1層と第2層との間は、第1信号ビア211A及び第2信号ビア211Bが配置されている。第1信号ビア211A及び第2信号ビア211Bの直径Dは0.1mmである。第3層と第4層との間についても同様である。1対の導体柱の断面形状は、当該実施形態に係る複数の導体板対102の形状と共通している。図23Bに示す通り、1対の導体柱(導体柱215A,215B)それぞれの形状は、中心を0.61mm離して、外方(図23Bの横方向の両側)へ広がる直径0.45mmとする2つの半円と、該2つの半円とを結ぶ長方形と、を接続した形状を、間隔Gapで分割した形状である。第1ストリップ導体対は、ストリップ導体221A,221Bと、差動信号ビア対にそれぞれ接続するランド部223A,223Bと、第1オープンスタブ部224A,224Bを含んでいる。
図23C及び図23Dは、比較例2に係るプリント回路基板50に備えられる差動伝送線路の特性を示す図であり、ともに、三次元電磁界解析を利用したTDR法によって求められる差動モードにおけるインピーダンスプロファイルのグラフである。図23Cは間隔Gapを0.24mmとした場合について、図23Dは間隔Gapを0.10mmとした場合について、それぞれ示している。図23Cが示す通り、間隔Gapが0.24mmの場合、差動伝送線路が積層方向差動伝送線路を含むことによるインピーダンスの変動はほとんどなく、良好な特性が得られている。また、図23Dが示す通り、間隔Gapを0.10mmまで縮小させる場合には、積層方向差動伝送線路におけるインピーダンスを50Ωよりさらに低減させることが出来る。差動信号ビアがかかる断面形状の導体柱を含むことにより、積層方向差動伝送線路の小型化、実装の高密度化に有利に働く。しかし、かかる構造をプリント回路基板に適用する技術は、現在は存在しておらず、実現には時間と投資が必要であるともに、製造コストに関しても低コスト化の見通しは得られていない。
発明者らは、これらの検討に基づき、比較例1に係る積層方向差動伝送線路と、比較例2に係る積層方向差動伝送線路とを組み合わせ、当該実施形態にかかる積層方向差動伝送線路32の差動信号ビア対101と複数の導体板対102とに想到している。図22Bに示す高インピーダンス特性と、図23Dに示す低インピーダンス特性とを相殺させることにより、差動インピーダンスを50Ωに整合させることを見出している。前述の通り、複数の導体板対102は、現在広く普及している低コストで量産性に優れた多層構造のプリント回路基板作成技術を用いて形成され、差動信号ビア対101(の層L2〜層L9の部分)はドリルによって形成される。
複数の導体板対102それぞれの第1導体板の外形及び第2導体板の外形は、第1信号ビア111Aの周縁及び第2信号ビア111Bの周縁より外方にあり、第1導体板及び第2導体板それぞれの自己インダクタンスLへの寄与は小さい。相互インダクタンスMは近似的には重心間の距離によって決定される。第1導体板の重心及び第2導体板の重心がそれぞれ、第1信号ビア111Aの重心G0及び第2信号ビア111Bの重心G0より、中心線CL2に対してそれぞれ内側に位置することにより、相互インダクタンスMは複数の導体板対102に起因して増加する。よって、複数の導体板対102を配置しない場合と比べて、当該実施形態に係る積層方向差動伝送線路32において、数式1に示す合成インダクタンス2L−Mが減少し、差動インピーダンスを低減させることが出来る。また、第1導体板と第2導体板とが、中心線CL2を鋏んで互いに対向する部分の間隔Gapを縮小させ、対向する部分の長さWfをより大きくすることにより、差動インピーダンスを低減させることが出来る。
複数の導体板対102それぞれの第1導体板の形状及び第2導体板の形状は、第1信号ビア111Aの周縁及び第2信号ビア111Bの周縁それぞれと、第1導体板の外形及び第2導体板の外形それぞれと、の間の領域である。相互インダクタンスMを近似的に決定する第1導体板の重心及び第2導体板の重心は、第1導体板の外形の重心G1及び第2導体板の外形の重心G1とは、厳密にはそれぞれ異なっている。しかしながら、第1導体板の外形の重心G1及び第2導体板の外形の重心G1がそれぞれ、第1信号ビア111Aの重心G0及び第2信号ビア111Bの重心G0より、中心線CL2に対してそれぞれ内側に位置する場合は、必ず、第1導体板の重心及び第2導体板の重心はそれぞれ、第1信号ビア111Aの重心G0及び第2信号ビア111Bの重心G0より、中心線CL2に対してそれぞれ内側に位置する。また、かかる場合、第1導体板のうち、第1信号ビア111Aの重心G0を貫くとともに中心線CL2と並行に延伸する直線に対して、内側にある領域の面積が外側にある領域の面積より大きい。第2導体板のうち、第2信号ビア111Bの重心G0を貫くとともに中心線CL2と並行に延伸する直線に対して、内側にある領域の面積が外側にある領域の面積より大きい。
[第2の実施形態]
図6A及び図6Bは、本発明の第2の実施形態に係るプリント回路基板42の構造の一部の平面を示す模式図である。当該実施形態に係るプリント回路基板42に備えられる差動伝送線路の形状や寸法が第1の実施形態と異なる以外は、当該実施形態に係るプリント回路基板42は、第1の実施形態に係るプリント回路基板31と同じ構造をしている。当該実施形態に係る光モジュール2は、プリント回路基板42によって、プリント回路基板21を構成するものである。図6Bに示す間隔Gapを増減させることにより、所望の差動インピーダンスに調整することが出来、ここでは、少なくとも差動インピーダンスの値を50Ωから60Ωの範囲の差動伝送線路に対応して良好な特性の接続を実現することを示す。なお、当該実施形態に係る差動伝送線路の差動インピーダンスは60Ωである。
図6Aは、図3Aに対応しており、第1層(層L1)の配線パタンを示している。図6Bは、図3Bに対応しており、第2層(層L2)の配線パタンを示している。ストリップ導体幅Wを0.218mmと、ストリップ導体間隔Gを0.20mmとすることにより、第1差動伝送線路33及び第2差動伝送線路34それぞれの差動インピーダンスを60Ωにする。なお、オープンスタブ導体幅Wsは0.25mmであり、オープンスタブ導体長Lsは0.587mmである。間隔Gapを0.24mmまで増加させることにより、積層方向差動伝送線路32の差動インピーダンスを60Ωにすることが出来る。
図7A及び図7Bは、当該実施形態に係るプリント回路基板42に備えられる差動伝送線路の特性を示す図である。図7Aは、三次元電磁界解析を利用したTDR法によって求められる差動モードにおけるインピーダンスプロファイルのグラフである。プリント回路基板42の上表面及び下表面にそれぞれ配置される第1差動伝送線路33及び第2差動伝送線路34の差動インピーダンスがともに60Ωであるのに対して、当該実施形態に係る差動伝送線路は積層方向差動伝送線路32を含んでいるが、積層方向差動伝送線路32によるインピーダンスの変動はほとんど生じていないことを示している。
図7Bは、Sパラメータ解析によって求められる差動反射特性及び差動通過特性の周波数特性のグラフを示す。周波数範囲0Hz〜35GHzという広い範囲において、差動反射係数SDD11,SDD22は−20dB以下の値を示し、十分な特性を得ることが出来ている。さらに、周波数範囲0Hz〜31GHzにおいては、差動反射係数SDD11,SDD22は−30dB以下の値に保たれており、極めて低い反射量を持つ構造が実現されることが示されている。また、差動通過特性SDD21の変化も小さいことが示されている。よって、当該実施形態に係る差動伝送線路は、積層方向差動伝送線路32においても、差動インピーダンスを60Ωに近い値にすることが実現出来ている。
当該実施形態に係るプリント回路基板42において、間隔Gapを0.24mmまで広げたことにより、複数の導体板対102それぞれの第1導体板の重心G1及び第2導体板の重心G1が、第1の実施形態と比べて、中心線CL2に対してより外方(図6Bの左右両側)へ移動している。複数の導体板対102に起因する相互インダクタンスMが減少し、数式1に示す合成インダクタンス2L−Mが増加し、差動インピーダンスが60Ωへ増加したものと考えられる。
当該実施形態に係るプリント回路基板42は、ドライバ回路の終端抵抗を30Ωとするドライバ出力端子と発光素子とを接続する差動伝送線路を有する場合に、光変調信号の品位を十分良好に保つことが出来、好適である。特に、DFB−LD素子を発光素子として用いる場合に、顕著な効果を奏する。当該実施形態において、差動伝送線路の差動インピーダンスの値を60Ωとしているが、これに限定されることはなく、間隔Gapの値を0.10mm〜0.24mmの範囲で調整することにより、積層方向差動伝送線路のインピーダンスの値を少なくとも50Ω〜60Ωの範囲で変化させることが出来る。
[第3の実施形態]
図8A及び図8Bは、本発明の第3の実施形態に係るプリント回路基板43の構造の一部の平面を示す模式図である。図8Cは、当該実施形態に係るプリント回路基板43の一部の断面を示す模式図である。図8Cに、図8AのVIIIC−VIIIC線による断面が示されている。当該実施形態に係るプリント回路基板43に備えられる差動伝送線路のうち、複数の導体板対102それぞれの形状が第1の実施形態と異なっており、それに伴って、第1ストリップ導体対104及び第2ストリップ導体対105の形状と、第1貫通穴119及び第2貫通穴129の形状と、が第1の実施形態と異なっている以外は、当該実施形態に係るプリント回路基板43は、第1の実施形態に係るプリント回路基板31と同じ構造をしている。当該実施形態に係る光モジュール2は、プリント回路基板43によって、プリント回路基板21を構成するものである。なお、当該実施形態に係る差動伝送線路の差動インピーダンスは50Ωである。
図8Aは、図3Aに対応しており、第1層(層L1)の配線パタンを示している。図8Bは、図3Bに対応しており、第2層(層L2)の配線パタンを示している。図8Cは、図3Cに対応しており、断面構造を示している。図8Bに示す通り、第1導体板115A及び第2導体板115Bそれぞれの外形は、直径1.06mmの円形状を、中心線CL2を中心線として間隔Gap0.22mmで分割した形状とする。なお、第1の実施形態と同様に、第2層(層L2)における第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bの直径Dはともに0.2mmである。また、後述する通り、第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bの中心間距離Pitchは0.61mmであり、間隔Gapは、第1信号ビア111Aと第2信号ビア111Bとの最小距離(Pitch−D)より小さくなっている。
複数の導体板対102それぞれにおいて、中心線CL2に対して、第1導体板の外形の重心G1は第1信号ビア111Aの重心G0よりも内側に位置し、第2導体板の外形の重心G1は第2信号ビア111Bの重心G0よりも内側に位置している。第1導体板(第2導体板)の外形の幅は、外方から内方へ、0から徐々に広がっている(単調増加)。第1導体板と第2導体板とは、中心線CL2を鋏んで互いに対向し、第1導体板の外形と第2導体板とは、対向する部分において、垂直二等分線(中心線CL2)に沿って直線状に延伸している。第1導体板115Aと第2導体板115Bとが互いに対向する直線部分の長さWfは1.037mmである。当該実施形態において、長さWfを1.037mmと、第1の実施形態と比べて大幅に増加させており、間隔Gapは0.22mmと拡大しているにもかかわらず、差動インピーダンスを50Ωとすることが出来ている。
第1貫通穴119の形状は、中心線CL1と中心線CL2との交点を中心とする直径1.41mmの円形状である。第1導体板対115(導体板115A,115B)の外形との間隔を0.175mmとしている。
図8Aに示す通り、第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bの中心間距離Pitchが、第1の実施形態と異なり、0.61mmである。それに伴って、ランド部123A,123Bの配置が異なっているが、それ以外の第1差動伝送線路33の構成は第1の実施形態と同じである。すなわち、ストリップ導体121A,121Bのストリップ導体幅Wは0.30mmであり、ストリップ導体間隔Gは0.20mmである。第1オープンスタブ部124A,124Bのオープンスタブ導体幅Wsは0.25mmであり、オープンスタブ導体長Lsは0.605mmである。誘電体層127及びソルダーレジスト層125についても、第1の実施形態と同じである。なお、第1層(層L1)における第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bの直径はともに0.1mmである。第2差動伝送線路34についても同様であり、第1差動伝送線路33及び第2差動伝送線路はともに、差動インピーダンスが50Ωである。
以上、当該実施形態に係るプリント回路基板43に備えられる差動伝送線路について説明した。当該実施形態に係るプリント回路基板43の製造方法は、上記寸法が異なることを除いて、第1の実施形態に係るプリント回路基板31の製造方法と同じである。
図9A及び図9Bは、当該実施形態に係るプリント回路基板43に備えられる差動伝送線路の特性を示す図である。図9Aは、三次元電磁界解析を利用したTDR法によって求められる差動モードにおけるインピーダンスプロファイルのグラフである。第1の実施形態と同様に、第1差動伝送線路33及び第2差動伝送線路34の差動インピーダンスがともに50Ωであるのに対して、当該実施形態に係る差動伝送線路は積層方向差動伝送線路32を含んでいるが、積層方向差動伝送線路32によるインピーダンスの変動はほとんど生じていないことを示している。
図9Bは、Sパラメータ解析によって求められる差動反射特性及び差動通過特性の周波数特性のグラフを示す。周波数範囲0Hz〜32GHzという広い範囲において、差動反射係数SDD11,SDD22は−20dB以下の値を示し、十分な特性を得ることが出来ている。さらに、周波数範囲0Hz〜29.4GHzにおいては、差動反射係数SDD11,SDD22は−30dB以下の値に保たれており、極めて低い反射量を持つ構造が実現されることが示されている。また、差動通過特性SDD21の変化も小さいことが示されている。よって、当該実施形態に係るプリント回路基板43は、第1の実施形態と同様に、格別な効果を奏している。
[第4の実施形態]
図10A及び図10Bは、本発明の第4の実施形態に係るプリント回路基板44の構造の一部の平面を示す模式図である。当該実施形態に係るプリント回路基板44に備えられる差動伝送線路の寸法が第3の実施形態と異なる以外は、当該実施形態に係るプリント回路基板44は、第3の実施形態に係るプリント回路基板43と同じ構造をしている。当該実施形態に係る光モジュール2は、プリント回路基板44によって、プリント回路基板21を構成するものである。図10Bに示す間隔Gapを増減させることにより、所望の差動インピーダンスに調整することが出来、ここでは、少なくとも差動インピーダンスの値を40Ωから50Ωの範囲の差動伝送線路に対応して良好な特性の接続を実現することを示す。なお、当該実施形態に係る差動伝送線路の差動インピーダンスは40Ωである。
図10Aは、図8Aに対応しており、第1層(層L1)の配線パタンを示している。図10Bは、図8Bに対応しており、第2層(層L2)の配線パタンを示している。ストリップ導体幅Wを0.415mmと、ストリップ導体間隔Gを0.20mmとすることにより、第1差動伝送線路33及び第2差動伝送線路34それぞれの差動インピーダンスを40Ωにする。なお、オープンスタブ導体幅Wsは0.365mmであり、オープンスタブ導体長Lsは0.59mmである。間隔Gapを0.12mmまで縮小させる。また、間隔Gapが狭まったことにより、第1ストリップ導体対104のランド部123A,123Bの設計自由度も高まり、広い領域を確保出来る。第2差動伝送線路34の第2ストリップ導体対105のランド部133A,133Bについても同様である。よって、第1層(層L1)から第4層(層L10)に至るビアをすべてドリルにより形成することが出来る。また、第1層(層L1)と第2層(層L2)との間、及び第3層(層L9)及び第4層(層L10)の間に配置される差動信号ビア対101(第1信号ビア111A及び第2信号ビア11B)の直径を広げることが出来る。よって、積層方向差動伝送線路32の差動インピーダンスを40Ωにすることが出来る。
当該実施形態に係るプリント回路基板44の製造方法は、以下の点で第1の実施形態と異なるが、それ以外は、第1の実施形態に係るプリント回路基板31の製造方法と同じである。第2層(層L2)から第3層(層L9)までの配線層を形成した後に、複数の接地ビア103のみを形成する。そして、誘電体層127を間に挟んで、第1層(層L1)及び第4層(層L10)を形成した後に、第1層(層L1)から第4層(層L10)に至るまで、差動信号ビア対101(第1信号ビア111A及び第2信号ビア111B)が形成される位置に、ドリルにより垂直に直径D0.2mmの円形の穴を穿ち、その穴の側面に銅メッキを施すことでビアホール(バイアホール)を形成する。
図11A及び図11Bは、当該実施形態に係るプリント回路基板44に備えられる差動伝送線路の特性を示す図である。図11Aは、三次元電磁界解析を利用したTDR法によって求められる差動モードにおけるインピーダンスプロファイルのグラフである。第1差動伝送線路33及び第2差動伝送線路34の差動インピーダンスがともに40Ωであるのに対して、当該実施形態に係る差動伝送線路は積層方向差動伝送線路32を含んでいるが、積層方向差動伝送線路32によるインピーダンスの変動はほとんど生じていないことを示している。
図11Bは、Sパラメータ解析によって求められる差動反射特性及び差動通過特性の周波数特性のグラフを示す。周波数範囲0Hz〜27.4GHzという広い範囲において、差動反射係数SDD11,SDD22は−20dB以下の値を示し、十分な特性を得ることが出来ている。さらに、周波数範囲0Hz〜25.8GHzにおいては、差動反射係数SDD11,SDD22は−30dB以下の値に保たれており、極めて低い反射量を持つ構造が実現されることが示されている。また、差動通過特性SDD21の変化も小さいことが示されている。よって、当該実施形態に係る差動伝送線路は、積層方向差動伝送線路32においても、差動インピーダンスを40Ωに近い値にすることが実現出来ている。
当該実施形態に係るプリント回路基板44において、間隔Gapを0.12mmまで狭めたことにより、複数の導体板対102それぞれの第1導体板の重心G1及び第2導体板の重心G1が、第1の実施形態と比べて、中心線CL2に対してより内側(図10Bの中心側)へ移動している。複数の導体板対102に起因する相互インダクタンスMが増加している。また、第1層(層L1)と第2層(層L2)との間、及び第3層(層L9)及び第4層(層L10)の間に配置される差動信号ビア対101(第1信号ビア111A及び第2信号ビア111B)の直径を広げることにより、差動信号ビア対101に起因する自己インダクタンスLが減少している。数式1に示す合成インダクタンス2L−Mが減少し、差動インピーダンスが40Ωへ減少したものと考えられる。
当該実施形態に係るプリント回路基板44は、ドライバ回路の終端抵抗を20Ωとするドライバ出力端子と発光素子とを接続する差動伝送線路を有する場合に、光変調信号の品位を十分良好に保つことが出来、好適である。特に、DFB−LD素子を発光素子として用いる場合に、顕著な効果を奏する。当該実施形態において、差動伝送線路の差動インピーダンスの値を40Ωとしているが、これに限定されることはなく、間隔Gapの値を0.12mm〜0.22mmの範囲で調整することにより、積層方向差動伝送線路のインピーダンスの値を少なくとも40Ω〜50Ωの範囲で変化させることが出来る。
[第5の実施形態]
第1乃至第4の実施形態において、複数の導体板対102は、第2層(層L2)に配置される第1導体板対115及び第3層(層L9)に配置される第2導体板対116に加えて、6対の層間導体板対117(層L3〜層L8)を含んでいるが、層間導体板対117の数はこれに限定されることはなく、少なくとも1対の層間導体板対117を含んでいればよい。本発明の第5の実施形態に係るプリント回路基板45は、第1導体板対115及び第2導体板対116に加えて、1対の層間導体板対117を含んでおり、それに伴って、複数の導体板対102それぞれの形状と差動信号ビア対101の形状とが第3の実施形態と異なっているが、それ以外については、当該実施形態に係るプリント回路基板45は、第3の実施形態に係るプリント回路基板43と同じ構造をしている。当該実施形態に係る光モジュール2は、プリント回路基板45によって、プリント回路基板21を構成するものである。なお、当該実施形態に係る差動伝送線路の差動インピーダンスは50Ωである。
図12Aは、当該実施形態に係るプリント回路基板45の構造の一部の平面を示す模式図である。図12Bは、当該実施形態に係るプリント回路基板45の一部の断面を示す模式図である。第1層の配線パタンは、図8Aと一致しており、記載していない。図12Aは、図8Bに対応しており、第2層の配線パタンを示している。図12Bに、図8AのVIIIC−VIIIC線による断面を示しており、図8Cに対応しており、断面構造を示している。
図12Aに示す通り、第3の実施形態と同様に、第1導体板115A及び第2導体板115Bそれぞれの外形は、直径1.06mmの円形状を分割した形状であるが、間隔Gapを0.14mmとしている。また、第2層から第3層に至る第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bの直径Dを0.30mmとしている。図12Bに示す通り、複数の導体板対102は、第2層に配置される第1導体板対115(第1導体板115A及び第2導体板115B)と、第3層に配置される第2導体板対116(第1導体板116A及び第2導体板116B)と、第2層と第3層との間に配置される1の層間導体板対117(第1導体板117A及び第2導体板117B)である。なお、第1差動伝送線路33及び第2差動伝送線路34それぞれの差動インピーダンスは50Ωであり、第1ストリップ導体対104及び第2ストリップ導体対105の形状は、前述の通り、第3の実施形態と同じである。
図13A及び図13Bは、当該実施形態に係るプリント回路基板45に備えられる差動伝送線路の特性を示す図である。図13Aは、三次元電磁界解析を利用したTDR法によって求められる差動モードにおけるインピーダンスプロファイルのグラフである。第3の実施形態と同様に、第1差動伝送線路33及び第2差動伝送線路34の差動インピーダンスがともに50Ωであるのに対して、当該実施形態に係る差動伝送線路は積層方向差動伝送線路32を含んでいるが、積層方向差動伝送線路32によるインピーダンスの変動はほとんど生じていないことを示している。
図13Bは、Sパラメータ解析によって求められる差動反射特性及び差動通過特性の周波数特性のグラフを示す。周波数範囲0Hz〜31.4GHzという広い範囲において、差動反射係数SDD11,SDD22は−20dB以下の値を示し、十分な特性を得ることが出来ている。さらに、周波数範囲0Hz〜22.4GHzにおいては、差動反射係数SDD11,SDD22は−30dB以下の値に保たれており、極めて低い反射量を持つ構造が実現されることが示されている。また、差動通過特性SDD21の変化も小さいことが示されている。よって、当該実施形態に係るプリント回路基板45は、第3の実施形態と同様に、格別な効果を奏している。
当該実施形態に係るプリント回路基板45において、第2層から第3層に至る第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bの直径Dを0.30mmに増加し、差動信号ビア対101に起因する自己インダクタンスLが減少している。また、間隔Gapを0.14mmまで狭めたことにより、複数の導体板対102それぞれの第1導体板の重心G1及び第2導体板の重心G1が、第3の実施形態と比べて、中心線CL2に対してより内側(図12Bの中心側)へ移動している。1対の導体板対当たり起因する相互インダクタンスMが増加している。かかる寄与が、複数の導体板対102の数を減少したことによる合成インダクタンスの増加と相殺することにより、少ない数の複数の導体板対102にもかかわらず、差動インピーダンスを50Ωとすることが出来る。
当該実施形態において、層間導体板対117の数を1と出来ており、第1層乃至第4層と、層間導体板対117が配置されるさらなる1層とで、5層の多層構造を有するプリント回路基板により、差動伝送線路を実現することが出来るので、作製行程の簡素化、短時間化、低コスト化を実現する。層間導体板対117の数は1又は6に限定されることはなく、間隔Gapの値を0.12mm〜0.22mmの範囲で調整し、第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bの直径Dを0.20〜0.30mmの範囲で調整することにより、層間導体板対117の数を少なくとも1〜6の範囲で変化させることが出来る。
[第6の実施形態]
第1乃至第5の実施形態に係る第1差動伝送線路33において、第1接地導体層126は第1貫通穴119(開口部)を有しており、積層方向差動伝送線路32との接続部分において、第1貫通穴119に起因してインピーダンスが上昇している。かかるインピーダンス上昇を抑制するために、第1ストリップ導体対104は、第1オープンスタブ部124A,124Bを含んでいる。第2差動伝送線路34についても同様であり、第2ストリップ導体対105は、第2オープンスタブ部134A,134Bを含んでいる。しかしながら、第1貫通穴119(第2貫通穴129)に起因するインピーダンス上昇を抑制する手法は、オープンスタブ(オープンスタブ回路)に限定されるものではない。本発明の第6の実施形態に係るプリント回路基板46は、オープンスタブを有することなく、不要なインピーダンス上昇を抑制する構造を有する。
図14A及び図14Bは、当該実施形態に係るプリント回路基板46の構造の一部の平面を示す模式図である。当該実施形態に係るプリント回路基板46に備えられる差動伝送線路の寸法が第1の実施形態と異なる以外は、当該実施形態に係るプリント回路基板46は、第1の実施形態に係るプリント回路基板31と同じ構造をしている。当該実施形態に係る光モジュール2は、プリント回路基板46によって、プリント回路基板21を構成するものである。なお、当該実施形態に係る差動伝送線路の差動インピーダンスは50Ωである。
当該実施形態に係るプリント回路基板46の主な特徴は、第1ストリップ導体対104の接続部122A,122Bの形状にある。第1乃至第5の実施形態において、接続部122A,122Bは、第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bに、それぞれ電気的に接続させることのみを目的に配置されるランド部123A,123Bを含んでいる。これに対して、当該実施形態において、接続部122A,122Bは、ランド部123A,123Bの代わりに、導体板部151A,151Bをそれぞれ含んでいる。導体板部151A,151Bは、第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bそれぞれとの電気的な接続に加えて、インピーダンス上昇を抑制している。導体板部151A,151Bは、平面視して、第1導体板対115(第1導体板115A及び第2導体板115B)すべてと重畳しており、導体板部151A,151Bは、平面視して、第1導体板対115を内側に含んでいる。かかる構成により、第1ストリップ導体対104は、第1オープンスタブ部124A,124Bを含むことなく、インピーダンス上昇を抑制することが出来る。第2ストリップ導体対105についても同様であり、接続部132A,132Bは、ランド部133A,133Bの代わりに、導体板部152A,152B(ともに図示せず)をそれぞれ含んでいる。導体板部152A,152Bの形状は、導体板部151A,151Bと同じである。導体板部152A,152Bは、平面視して、第2導体板対116(第1導体板116A及び第2導体板116B)すべてと重畳しており、導体板部152A,152Bは、平面視して、第2導体板対116を内側に含んでいる。
図14Aは、図3Aに対応しており、第1層の配線パタンを示している。図14Bは、図3Bに対応しており、第2層の配線パタンを示している。第1の実施形態と異なり、第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bの中心間距離Pitchを0.61mmとしている。これに伴って、第1貫通穴119(及び第2貫通穴129)の形状と、複数の導体板対102それぞれの形状とが、第1の実施形態と異なっている。図14Bに示す間隔Gapを0.14mmとしている。
図14Bに示す第1導体板115Aの形状及び第2導体板115Bの形状は、中心間距離Pitchと間隔Gapとにおいて、第1の実施形態と異なっている。すなわち、第1導体板115A及び第2導体板115Bそれぞれの半円の直径は0.45mmであり、第1導体板115Aと第2導体板115Bとが互いに対向する直線部分の長さWfは、0.45mmである。第1導体板115Aの外形は、直径を0.45mmとする半円と、縦が0.45mm横が0.235mmの長方形と、を接続した形状であり、第2導体板115Bの外形は、中心線CL2に対して、第1導体板115Aの形状を線対称で移動させた形状である。なお、第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bの直径は第1の実施形態と同じであり、第1層(層L1)における直径は0.10mmであり、第2層(層L2)における直径Dは0.20mmである。
第1貫通穴119の形状は、中心間距離Pitchを0.61mmとするのに伴って、第1の実施形態と異なっている。第1貫通穴119の形状は、直径0.8mmの2つの半円と、該2つの半円とを結ぶ長方形と、を接続した形状である。横の長さは中心間距離Pitchであり、ここでは0.61mmである。第1貫通穴119は、第1導体板対115(導体板115A,115B)の外形との間隔を0.175mmとしている。
図14Aに示す導体板部151A,151Bは、平面視して、図14Bに示す第1導体板対115(第1導体板115A及び第2導体板115B)を外方へ少し拡大した形状となっている。導体板部151A,151Bの形状は、電磁界解析計算などによって求めることが出来る。ここでは、導体板部151A,151Bが互いに対向する直線部分の間隔(間隔Gapに相当)は、第1導体板対115と同様に、0.14mmとする。すなわち、導体板部151A,151Bは、第1導体板115A及び第2導体板115Bと比べて、対向する部分で一致している。すなわち、導体板部151A,151Bが、平面視して、第1導体板対115を内側に含むとは、平面視して、第1導体板対115の一部が導体板部151A,151Bの外側へはみ出ていなければよい。導体板部151A,151Bの外形の一部が、第1導体板対115の外形の一部と一致している場合を含んでいてもよい。そして、当該対抗する部分以外の部分において、拡大幅を0.13mmとしている。すなわち、導体板部151Aの外形は、直径を0.71mmとする半円と、縦が0.71mm横が0.235mmの長方形と、を接続した形状であり、導体板部151Bの形状は、中心線CL2に対して、導体板部151Aの形状を線対称で移動させた形状である。
よって、平面視すると、導体板部151A,151Bは、第1貫通穴119の内側に含まれる(言い換えれば、導体板部151A,151Bは第1接地導体層126と重畳する部分がない)とともに、第1導体板115A及び第2導体板115Bは、導体板部151A,151Bに含まれている。
なお、導体板部151A,151Bの重心も、平面視して、差動信号ビア対101それぞれの重心より、それぞれ内側にあるのが、インピーダンス整合の観点からは望ましい。導体板部151A,151Bは、第1差動伝送線路33と積層方向差動伝送線路32との接続部分における、第1貫通穴119に起因するインピーダンス上昇を抑制するために配置されるものであり、かかるインピーダンス上昇を抑制するために、導体板部151A,151Bの重心は、平面視して、差動信号ビア対101それぞれの重心より、それぞれ内側に必ずしもある必要はない。
図15A及び図15Bは、当該実施形態に係るプリント回路基板46に備えられる差動伝送線路の特性を示す図である。図15Aは、三次元電磁界解析を利用したTDR法によって求められる差動モードにおけるインピーダンスプロファイルのグラフである。第1の実施形態と同様に、第1差動伝送線路33及び第2差動伝送線路34の差動インピーダンスがともに50Ωであるのに対して、当該実施形態に係る差動伝送線路は積層方向差動伝送線路32を含んでいるにもかかわらず、インピーダンスの変動が+1Ωほどに抑制されており、積層方向差動伝送線路32によるインピーダンスの変動は比較的小さいことを示している。
図15Bは、Sパラメータ解析によって求められる差動反射特性及び差動通過特性の周波数特性のグラフを示す。周波数範囲0Hz〜35GHzにおいては、差動反射係数SDD11,SDD22は−30dB以下の値に保たれており、極めて低い反射量を持つ構造が実現されることが示されている。また、差動通過特性SDD21の変化も小さいことが示されている。よって、当該実施形態に係るプリント回路基板46は、第1の実施形態と同様に、格別な効果を奏している。
当該実施形態に係るプリント回路基板46では、オープンスタブを備えることなく、第1差動伝送線路33(又は第2差動伝送線路34)と積層方向差動伝送線路32との接続部分におけるインピーダンス抑制が出来ており、第1ストリップ導体対104(又は第2ストリップ導体対105)の設計自由度を高め、より高密度化を実現することが出来る。
[第7の実施形態]
第1乃至第5の実施形態に係る第1差動伝送線路33において、第1オープンスタブ部124A,124B(第2オープンスタブ部134A,134B)の延伸方向は、ストリップ導体121A,121B(ストリップ導体131A,131B)の延伸方向に対して垂直としているが、これに限定されることはない。本発明の第7の実施形態に係るプリント回路基板47において、第1オープンスタブ部124A,124B(第2オープンスタブ部134A,134B)は、ストリップ導体121A,121B(ストリップ導体131A,131B)の延伸方向と45°をなす方向へ延伸している。
図16は、当該実施形態に係るプリント回路基板47の構造の一部の平面を示す模式図である。当該実施形態に係るプリント回路基板47に備えられる差動伝送線路の寸法が第1の実施形態と異なる以外は、当該実施形態に係るプリント回路基板47は、第1の実施形態に係るプリント回路基板31と同じ構造をしている。当該実施形態に係る光モジュール2は、プリント回路基板47によって、プリント回路基板21を構成するものである。なお、当該実施形態に係る差動伝送線路の差動インピーダンスは50Ωである。
当該実施形態に係るプリント回路基板47の主な特徴は、第1ストリップ導体対104の第1オープンスタブ部124A,124Bの形状にあり、第1オープンスタブ部124A,124Bの延伸方向は、ストリップ導体121A,121Bの延伸方向と、それぞれ45°の角度をなしている。なお、第2ストリップ導体対105についても同様であり、第2オープンスタブ部134A,134Bの延伸方向は、ストリップ導体131A,131Bの延伸方向と、それぞれ45°の角度をなしている。
図16は、図3Aに対応しており、第1層の配線パタンを示している。第2層の配線パタンは、Gapが0.10mmである点が異なっているが、それ以外において図14Bと一致しているので、記載していない。第1の実施形態と異なり、また第6の実施形態と同様に、中心間距離Pitchは0.61mmであり、これに伴って、第1貫通穴119(及び第2貫通穴129)の形状は、第6の実施形態と同じである。また、第2層の配線パタンにおいて間隔Gapは0.10mmであり、第1導体板115Aの外形は、直径を0.45mmとする半円と、縦が0.45mm横が0.255mmの長方形と、を接続した形状であり、第2導体板115Bの外形は、中心線CL2に対して、第1導体板115Aの外形を線対称で移動させた形状である。なお、第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bの直径は第1の実施形態と同じであり、第1層(層L1)における直径は0.10mmであり、第2層(層L2)における直径Dは0.20mmである。
図16に示す通り、中心間距離Pitchが第1の実施形態と異なることにより、ランド部123A,123Bの配置が第1の実施形態と異なっている。また、前述の通り、第1オープンスタブ部124A,124Bの延伸方向が第1の実施形態と異なっている。図16に示す通り、第1オープンスタブ部124A,124Bのオープンスタブ導体長LS2を、一端から差動信号ビア対の信号ビアの中心までの距離と定義し、オープンスタブ導体幅Ws2を、第1オープンスタブ部124A,124Bが延伸する部分の幅と定義する。第1オープンスタブ部124A,124Bのオープンスタブ導体幅Ws2及びオープンスタブ導体長LS2は電磁界解析計算などによって求めることが出来る。ここでは、オープンスタブ導体幅Ws2は0.15mmであり、オープンスタブ導体長LS2は0.65mmである。
図17A及び図17Bは、当該実施形態に係るプリント回路基板47に備えられる差動伝送線路の特性を示す図である。図17Aは、三次元電磁界解析を利用したTDR法によって求められる差動モードにおけるインピーダンスプロファイルのグラフである。第1の実施形態と同様に、第1差動伝送線路33及び第2差動伝送線路34の差動インピーダンスがともに50Ωであるのに対して、当該実施形態に係る差動伝送線路は積層方向差動伝送線路32を含んでいるが、積層方向差動伝送線路32によるインピーダンスの変動はほとんど生じていないことを示している。
図17Bは、Sパラメータ解析によって求められる差動反射特性及び差動通過特性の周波数特性のグラフを示す。周波数範囲0Hz〜35GHzにおいては、差動反射係数SDD11,SDD22は−30dB以下の値に保たれており、極めて低い反射量を持つ構造が実現されることが示されている。また、差動通過特性SDD21の変化も小さいことが示されている。よって、当該実施形態に係るプリント回路基板47は、第1の実施形態と同様に、格別な効果を奏している。
当該実施形態に係るプリント回路基板47では、第1オープンスタブ部124A,124B(第2オープンスタブ部134A,134B)を、ストリップ導体121A,121B(ストリップ導体131A,131B)それぞれの中心線により近づけて配置することが出来ており、第1ストリップ導体対104(又は第2ストリップ導体対105)の設計自由度を高め、より高密度化を実現することが出来る。なお、当該実施形態において、第1オープンスタブ部124A,124B(第2オープンスタブ部134A,134B)の延伸方向とストリップ導体121A,121B(ストリップ導体131A,131B)の延伸方向とのなす角度を45°としたが、それ以外の角度で交差していてもよいのは言うまでもない。
[第8の実施形態]
第1乃至第7の実施形態に係る積層方向差動伝送線路32において、複数の導体板対102それぞれの第1導体板の外形と第2導体板の外形とは、対向する部分において、中心線CL2に沿って直線状に延伸している。第1導体板の外形と第2導体板の外形とは、各配線層を逐次パタンニングすることにより形成される。かかる対向する部分の形状(外形)を、パタンニング以外の手段、例えば、ドリル加工やルータ加工により形成してもよい。本発明の第8の実施形態に係るプリント回路基板48では、複数の導体板対102それぞれにおいて、第1導体板と第2導体板とが互いに対向する部分を、ドリル加工により形成している。
図18は、当該実施形態に係るプリント回路基板48の構造の一部の平面を示す模式図である。当該実施形態に係るプリント回路基板48に備えられる複数の導体板対102の形状が第1の実施形態と異なる以外は、当該実施形態に係るプリント回路基板48は、第1の実施形態に係るプリント回路基板31と同じ構造をしている。当該実施形態に係る光モジュール2は、プリント回路基板48によって、プリント回路基板21を構成するものである。なお、当該実施形態に係る差動伝送線路の差動インピーダンスは50Ωである。
当該実施形態に係るプリント回路基板48の主な特徴は、複数の導体板対102それぞれの第1導体板及び第2導体板の形状にある。第1層の配線パタンは、図3Aと一致しており、記載していない。すなわち、当該実施形態に係る第1ストリップ導体対104の形状は、第1の実施形態に係る第1ストリップ導体対104と同じである。第1信号ビア111A及び第2信号ビア111Bの中心間距離Pitchは1.0mmである。
図18は、図3Bに対応しており、第2層の配線パタンを示している。第1貫通穴119の形状は、図3Bに示す第1貫通穴119の形状と同じである。第1導体板115A及び第2導体板115Bそれぞれの外形は、図3Bと異なっている。第1導体板115A及び第2導体板115Bそれぞれの外形は、第1信号ビア111Aの中心及び第2信号ビア111Bの中心それぞれを中心として外方(中心線CL1の両側)へ広がる直径を0.45mmとする2つの半円と、該2つの半円とを結ぶ長方形と、を接続した形状を、中心線CL2を中心線として、複数のドリル穴で分割した形状である。1つのドリル穴は、直径0.15mmのドリルによって除去された穴であり、複数のドリル穴は、ドリル間隔Pdrill(ドリル中心間距離)で、順に並んでおり、ここで、ドリル間隔Pdrillは0.10mmである。複数のドリル穴の内部には、樹脂139が封入されている。
第1導体板115A及び第2導体板115Bとは、中心線CL2を鋏んで互いに対向している。それゆえ、第1導体板の外形と第2導体板の外形とは、対向する部分において、中心線CL2に沿って延伸する。第1導体板115Aと第2導体板115Bとが互いに対向する部分の長さWfは、0.45mmである。対向する部分は、複数のドリル穴によって鋸歯状(ギザギザ状)に中心線CL2に沿って延伸している。また、対向する部分は厳密には直線状ではないものの、対向する部分の間隔の平均値(第1の実施形態の間隔Gapに相当)は0.15mmに近く、近似的に直線状に延伸しているとみなすことが出来る。
当該実施形態に係るプリント回路基板48の製造方法は、以下の点で第1の実施形態と異なるが、それ以外は、第1の実施形態に係るプリント回路基板31の製造方法と同じである。第2層(層L2)から第3層(層L9)までの配線層を形成した際に、複数の導体板対102それぞれのための配線層の形状は、2つの半円と、該2つの半円とを結ぶ長方形と、を接続した形状とする。そして、差動信号ビア対101及び複数の接地ビア103のためのビアを形成した後に、複数の導体板対102ための配線層を、中心線CL2に沿って、直径0.15mmのドリルにより複数のドリル穴をドリル間隔Pdrill0.10mmで穿つ。そして、差動信号ビア対101及び複数の接地ビア103のためのビアとともに、複数のドリル穴の内部に樹脂139を封入する。
図19A及び図19Bは、当該実施形態に係るプリント回路基板48に備えられる差動伝送線路の特性を示す図である。図19Aは、三次元電磁界解析を利用したTDR法によって求められる差動モードにおけるインピーダンスプロファイルのグラフである。第1の実施形態と同様に、第1差動伝送線路33及び第2差動伝送線路34の差動インピーダンスがともに50Ωであるのに対して、当該実施形態に係る差動伝送線路は積層方向差動伝送線路32を含んでいるにもかかわらず、インピーダンスの変動が+1Ωほどに抑制されており、積層方向差動伝送線路32によるインピーダンスの変動は比較的小さいことを示している。
図19Bは、Sパラメータ解析によって求められる差動反射特性及び差動通過特性の周波数特性のグラフを示す。周波数範囲0Hz〜35GHzという広い範囲において、差動反射係数SDD11,SDD22は−20dB以下の値を示し、十分な特性を得ることが出来ている。さらに、周波数範囲0Hz〜32GHzにおいては、差動反射係数SDD11,SDD22は−30dB以下の値に保たれており、極めて低い反射量を持つ構造が実現されることが示されている。また、差動通過特性SDD21の変化も小さいことが示されている。よって、当該実施形態に係るプリント回路基48は、第1の実施形態と同様に、格別な効果を奏している。
複数の導体板対102それぞれの第1導体板と第2導体板とが対向する部分を、ドリル加工により形成することにより、平面視して、対向する部分の位置の変動を第2層(層L2)から第3層(層L9)に至るまで抑制することが出来ている。基板製造工程において、基板平面方向にパタンずれが生じる場合にも、積層方向差動伝送線路32による特性劣化を抑制することが出来る。なお、対向する部分はルータ加工によって形成されてもよいのは言うまでもない。
当該実施形態に係るプリント回路基板48では、直径0.15mmのドリルをドリル間隔Pdrill0.10mmで複数の穴を穿っているが、これに限定されることはない。例えば、ドリル間隔Pdrilを0.125mm〜0.075mmの範囲で調整することにより、積層方向差動伝送線路32の差動インピーダンスを47Ω〜53Ωの範囲で調整することが出来る。
以上、本発明の実施形態に係るプリント回路基板、及び光モジュールについて説明した。本発明は上記実施形態に限定されることはなく、積層方向差動伝送線路を含む差動伝送線路構造に広く適用することが出来る。本発明に係るプリント回路基板は、光モジュールに備えられるプリント回路基板に限定されることはなく、伝送装置に備えられるプリント回路基板(図1に示すプリント回路基板11)であってもよいし、他の装置に備えられるプリント回路基板であってもよい。いずれの装置に備えられるプリント回路基板であっても、内部を積層方向に貫く差動伝送線路(積層方向差動伝送線路)を含む差動伝送線路に広く適用することが出来る。
また、本発明の実施形態に係るプリント回路基板は、各チャネルを通じて伝送されるデジタル電気信号のビットレートが25Gbit/s乃至28Gbit/sのいずれかとなるに好適だが、ビットレートはこれらに限定されることはなく、これらと異なる範囲のビットレートのデジタル電気信号を伝送する場合であってもよい。本発明の実施形態に係るプリント回路基板のチャネル(差動伝送線路)を伝送する電気信号は、二値変調のデジタル信号としているが、これに限定されることはなく、多値変調されるデジタル信号であってもよい。この場合は、ビットレートをシンボルレート(又は変調レート)に、単位”bit/s”を単位”baud”に読み替えればよい。
また、本発明の実施形態に係るプリント回路基板では、第1差動伝送線路33と第2差動伝送線路34の構成を同じとしている。設計パラメータを少なくして設計を容易にするという観点又は差動伝送線路の特性向上の観点で望ましいが、これに限定されることはなく、第1差動伝送線路33と第2差動伝送線路34は、マイクロストリップ線路であって、積層方向差動伝送線路に接続出来る構成であれば、それぞれ別々の構成が用いられても良い。
本発明の実施形態に係るプリント回路基板では、第1差動伝送線路33が上表面に、第2差動伝送線路34が下表面に配置され、第1ストリップ導体対104及び第2ストリップ導体対105を覆ってソルダーレジスト層125が配置されるのみである。しかし、これに限定されることなく、第1差動伝送線路33の上側、又は第2差動伝送線路34の下側に、さらなる層(配線層を含む)が配置されていてもよい。