本発明のエステル化合物の製造方法は、モノリス状有機多孔質カチオン交換体の存在下、カルボン酸とアルコールとを、溶媒中で反応させて、エステル化合物を得るエステル化合物の製造方法であって、
該モノリス状有機多孔質カチオン交換体、該カルボン酸、該アルコール及び該溶媒を接触させるときに、該モノリス状有機多孔質カチオン交換体への該カルボン酸、該アルコール及び該溶媒の接触順を、該モノリス状有機多孔質カチオン交換体に、該溶媒が接触する前に、該アルコールが接触することがない接触順にすること、
を特徴とするエステル化合物の製造方法である。
本発明のエステル化合物の製造方法は、酸触媒として、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を用いて、カルボン酸とアルコールとを溶媒中で反応させて、エステル化合物を得るエステル化合物の製造方法である。
本発明のエステル化合物の製造方法に係るカルボン酸は、特に制限されず、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、芳香族カルボン酸、ヒドロキシ酸等が挙げられる。また、本発明のエステル化合物の製造方法に係るカルボン酸は、分子中の一部が、ハロゲン、シアノ基、アルコキシ基、フェニル基等で置換されたものであってもよい。また、本発明のエステル化合物の製造方法に係るカルボン酸は、一価のカルボン酸、二価のカルボン酸、三価以上の多価カルボン酸のいずれでもよい。本発明のエステル化合物の製造方法に係るカルボン酸は、これらのうちの1種単独であっても又は2種以上の組み合わせであってもよい。本発明のエステル化合物の製造方法に係るカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナンチン酸、カプリル酸、オクタン酸、デカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、安息香酸、フタル酸、4−シアノ安息香酸、4−エトキシ安息香酸、4−t−ブチル安息香酸、4−フェニル安息香酸、桂皮酸、ジヒドロ桂皮酸、フェニルプロピオリック酸、6−フェニルヘキサン酸、ジフェニル酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられる。
本発明のエステル化合物の製造方法に係るアルコールとしては、特に制限されず、飽和アルコール、不飽和アルコール、芳香族アルコール等が挙げられる。また、本発明のエステル化合物の製造方法に係るアルコールは、分子中の一部が、ハロゲン、シアノ基、メトキシ基等で置換されたものであってもよい。また、本発明のエステル化合物の製造方法に係るアルコールは、一価のアルコール、二価のアルコール、三価以上の多価アルコールのいずれでもよい。本発明のエステル化合物の製造方法に係るアルコールは、これらのうちの1種単独であっても又は2種以上の組み合わせであってもよい。本発明のエステル化合物の製造方法に係るアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、アリルアルコール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール等が挙げられる。
本発明のエステル化合物の製造方法に係る溶媒は、エステル化反応において不活性な溶媒、つまり、カルボン酸、アルコール及び酸触媒であるモノリス状有機多孔質カチオン交換体に対して、不活性な溶媒である。そして、本発明のエステル化合物の製造方法に係る溶媒としては、エステル化反応において不活性な溶媒であれば、特に制限されず、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の鎖状又は環状の飽和エーテル、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどが挙げられる。これらのうち、本発明のエステル化合物の製造方法に係る溶媒としては、トルエン、ヘキサン、ヘプタンが好ましい。本発明のエステル化合物の製造方法に係る溶媒は、これらのうちの1種単独であっても又は2種以上の組み合わせであってもよい。
本発明のエステル化合物の製造方法に係るモノリス状有機多孔質カチオン交換体は、モノリス状有機多孔質体にカチオン交換基が導入されている多孔質体である。モノリス状有機多孔質カチオン交換体に係るモノリス状有機多孔質体は、骨格が有機ポリマーにより形成されており、骨格間に反応液の流路となる連通孔を多数有する多孔質体である。そして、モノリス状有機多孔質カチオン交換体は、このモノリス状有機多孔質体の骨格中にカチオン交換基が均一に分布するように導入されている多孔質体である。なお、本明細書中、「モノリス状有機多孔質体」を単に「モノリス」と、「モノリス状有機多孔質カチオン交換体」を単に「モノリスカチオン交換体」とも言い、また、第2のモノリスの製造における中間体(第2のモノリスの前駆体)である「モノリス状有機多孔質中間体(2)」を単に「モノリス中間体(2)」とも言う。
本発明のエステル化合物の製造方法に係るモノリスカチオン交換体は、モノリスにカチオン交換基を導入することで得られるものであり、その構造は、連続骨格相と連続空孔相からなる有機多孔質体であって、連続骨格の厚みは1〜100μm、連続空孔の平均直径は1〜1000μm、全細孔容積は0.5〜50mL/gである。
モノリスカチオン交換体の乾燥状態での連続骨格の厚みは1〜100μmである。モノリスカチオン交換体の連続骨格の厚みが、1μm未満であると、体積当りのカチオン交換容量が低下するといった欠点のほか、機械的強度が低下して、特に高流速で通液した際にモノリスカチオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、反応液とモノリスカチオン交換体との接触効率が低下し、触媒活性が低下するため好ましくない。一方、モノリスカチオン交換体の連続骨格の厚みが、100μmを越えると、骨格が太くなり過ぎ、基質の拡散に時間を要するようになって触媒活性が低下するため好ましくない。なお、連続骨格の厚みは、SEM観察により決定される。
モノリスカチオン交換体の乾燥状態での連続空孔の平均直径は、1〜1000μmである。モノリスカチオン交換体の連続空孔の平均直径が、1μm未満であると、モノリスカチオン交換体内部への基質や溶媒の拡散性が低くなるため好ましくない。一方、モノリスカチオン交換体の連続空孔の平均直径が、1000μmを超えると、反応液とモノリスカチオン交換体との接触が不十分となり、触媒活性が低下するため好ましくない。なお、モノリスカチオン交換体の乾燥状態での連続空孔の平均直径は、水銀圧入法により測定され、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値を指す。
モノリスカチオン交換体の乾燥状態での全細孔容積は0.5〜50mL/gである。モノリスカチオン交換体の全細孔容積が、0.5mL/g未満であると、基質や溶媒の接触効率が低くなるため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過液量が小さくなり、処理量が低下してしまうため好ましくない。一方、モノリスカチオン交換体の全細孔容積が、50mL/gを超えると、体積当りのカチオン交換容量が低下し、触媒活性が低下するため好ましくない。また、機械的強度が低下して、特に高速で通液した際にモノリスカチオン交換体が大きく変形し、通液時の圧力損失が急上昇してしまうため好ましくない。なお、全細孔容積は、水銀圧入法で測定される。
このようなモノリスカチオン交換体の構造例としては、特開2002−306976号公報や特開2009−62512号公報に開示されている連続気泡構造や、特開2009−67982号公報に開示されている共連続構造や、特開2009−7550号公報に開示されている粒子凝集型構造や、特開2009−108294号公報に開示されている粒子複合型構造等が挙げられる。
モノリスカチオン交換体の乾燥状態での重量当りのカチオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。モノリスカチオン交換体の乾燥状態でのカチオン交換容量が、1mg当量/g未満では、触媒活性点が少なく触媒活性が低くなるため好ましくなく、一方、6mg当量/gを超えると、カチオン交換基導入反応が過酷な条件となり、モノリスの酸化劣化が著しく進んでしまうため好ましくない。なお、カチオン交換基が骨格表面のみに導入された多孔質体のカチオン交換容量は、多孔質体やカチオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
モノリスカチオン交換体において、導入されているカチオン交換基は、モノリスの表面のみならず、モノリスの骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「カチオン交換基が均一に分布している」とは、カチオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。カチオン交換基の分布状況は、EPMAを用いることで簡単に確認される。また、カチオン交換基が、モノリスの表面のみならず、モノリスの骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
モノリスカチオン交換体に導入されているカチオン交換基としては、スルホン酸基、カルボキシル基、イミノ二酢酸基、リン酸基、リン酸エステル基等が挙げられる。
モノリスカチオン交換体において、連続骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.1〜30モル%、好適には0.1〜20モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.1モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、30モル%を越えると、カチオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続構造形成の容易さ、カチオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
<モノリス状有機多孔質カチオン交換体の形態例>
モノリスカチオン交換体の形態例としては、以下に示す第1のモノリスカチオン交換体や第2のモノリスカチオン交換体が挙げられる。また、カチオン交換基が導入されるモノリスの形態例としては、以下に示す第1のモノリスや第2のモノリスが挙げられる。
<第1のモノリス及び第1のモノリスカチオン交換体の説明>
本発明のエステル化合物の製造方法において、酸触媒である第1のモノリスカチオン交換体は、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に平均直径が乾燥状態で1〜1000μmの共通の開口(メソポア)を有する連続気泡構造を有し、乾燥状態での全細孔容積が1〜50mL/gであり、カチオン交換基を有しており、カチオン交換基が均一に分布しており、乾燥状態の重量当りのカチオン交換容量が1〜6mg当量/gであるモノリスカチオン交換体である。また、第1のモノリスは、カチオン交換基が導入される前のモノリスであり、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に平均直径が乾燥状態で1〜1000μmの共通の開口(メソポア)を有する連続気泡構造を有し、乾燥状態での全細孔容積が1〜50mL/gである有機多孔質体である。
第1のモノリスカチオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が乾燥状態で平均直径1〜1000μm、好ましくは10〜200μm、特に好ましくは20〜100μmの共通の開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体であり、その大部分がオープンポア構造のものである。オープンポア構造は、液体を流せば該マクロポアと該メソポアで形成される気泡内が流路となる。マクロポアとマクロポアの重なりは、1個のマクロポアで1〜12個、多くのものは3〜10個である。図1には、第1のモノリスカチオン交換体の形態例の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示すが、図1に示す第1のモノリスカチオン交換体は、多数の気泡状のマクロポアを有しており、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が共通の開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体となっており、その大部分がオープンポア構造である。メソポアの乾燥状態での平均直径が1μm未満であると、モノリスカチオン交換体内部への基質や溶媒の拡散性が低くなるため好ましくなく、メソポアの乾燥状態での平均直径が1000μmを越えると、反応液とモノリスカチオン交換体との接触が不十分となり、触媒活性が低下してしまうため好ましくない。第1のモノリスカチオン交換体の構造が上記のような連続気泡構造となることにより、マクロポア群やメソポア群を均一に形成できると共に、特開平8−252579号公報等に記載されるような粒子凝集型多孔質体に比べて、細孔容積や比表面積を格段に大きくすることができる。
なお、本発明では、乾燥状態の第1のモノリスの開口の平均直径、乾燥状態の第1のモノリスカチオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定され、水銀圧入法により得られる細孔分布曲線の極大値を指す。
第1のモノリスカチオン交換体の乾燥状態での重量当りの全細孔容積は、1〜50mL/g、好適には2〜30mL/gである。全細孔容積が1mL/g未満であると、基質や溶媒の接触効率が低くなるため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が50mL/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通液した際にモノリスカチオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、反応液とモノリスカチオン交換体との接触効率が低下するため、触媒効果も低下してしまうため好ましくない。全細孔容積は、従来の粒子状多孔質カチオン交換樹脂では、せいぜい0.1〜0.9ml/gであるから、それを越える従来には無い1〜50ml/gの高細孔容積、高比表面積のものが使用できる。
第1のモノリスカチオン交換体において、骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、10モル%を越えると、カチオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。
第1のモノリスカチオン交換体の骨格を構成する有機ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記有機ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、カチオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
第1のモノリスカチオン交換体に導入されているカチオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等が挙げられる。第1のモノリスカチオン交換体に導入されているカチオン交換基は、第2のモノリスカチオンにおいても同様である。
第1のモノリスカチオン交換体において(第2のモノリスカチオン交換体においても同じ)、導入されているカチオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「カチオン交換基が均一に分布している」とは、カチオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。カチオン交換基の分布状況は、EPMAを用いることで確認される。また、カチオン交換基が、モノリスの表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
第1のモノリスカチオン交換体の乾燥状態での重量当りのカチオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。乾燥状態での重量当りのカチオン交換容量が、上記範囲にあることにより、触媒内部のpHなど触媒活性点の周りの環境を変えることができ、これにより触媒活性が高くなる。なお、カチオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のカチオン交換容量は、多孔質体やカチオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
<第1のモノリス及び第1のモノリスカチオン交換体の製造方法>
第1のモノリスの製造方法としては、特に制限されないが、特開2002−306976号公報記載の方法に準じた、製造方法の一例を以下示す。すなわち、第1のモノリスは、カチオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び必要に応じて重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを得、これを重合させてモノリスを形成することにより得られる。このような、第1のモノリスの製造方法は、モノリスの多孔構造の制御が容易である点で、好ましい。
第1のモノリスの製造で用いられるカチオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、カルボン酸基、スルホン酸基等のカチオン交換基及び四級アンモニウム基等のアニオン交換基のいずれも含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーを指すものである。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、本発明においては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%とすることが、後の工程でカチオン交換基を定量的に導入し、かつ、実用的に十分な機械的強度を確保できる点で好ましい。
第1のモノリスの製造で用いられる界面活性剤は、カチオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非カチオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰カチオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽カチオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は一種単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。また、必ずしも必須ではないが、モノリスの気泡形状やサイズを制御するために、メタノール、ステアリルアルコール等のアルコール;ステアリン酸等のカルボン酸;オクタン、ドデカン、トルエン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルを系内に共存させることもできる。
また、第1のモノリスの製造において、重合によりモノリスを形成する際、必要に応じて用いられる重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。ただし、場合によっては、重合開始剤を添加しなくても加熱のみや光照射のみで重合が進行する系もあるため、そのような系では重合開始剤の添加は不要である。
第1のモノリスの製造において、カチオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーや、被処理物を混合容器に入れ、該混合容器を傾斜させた状態で公転軸の周りに公転させながら自転させることで、被処理物を攪拌混合する、所謂遊星式攪拌装置等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。これらの混合装置のうち、遊星式攪拌装置はW/Oエマルジョン中の水滴を均一に生成させることができ、その平均径を幅広い範囲で任意に設定できるため、好ましく用いられる。
第1のモノリスの製造において、このようにして得られた油中水滴型エマルジョンを重合させる重合条件は、モノマーの種類、開始剤系により様々な条件が選択できる。例えば、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間、加熱重合させればよく、開始剤として過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、0〜30℃で1〜48時間重合させればよい。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノール等の溶剤でソックスレー抽出し、未反応モノマーと残留界面活性剤を除去して第1のモノリスを得る。
第1のモノリスカチオン交換体の製造方法としては、特に制限されず、上記第1のモノリスの製造方法において、カチオン交換基を含まないモノマーに代えて、カチオン交換基を含むモノマー、例えば、上記カチオン交換基を含まない油溶性モノマーに、カルボン酸基、スルホン酸基等のカチオン交換基が導入されているモノマーを用いて重合させ、一段階でモノリスカチオン交換体にする方法、カチオン交換基を含まないモノマーを用いて重合させ第1のモノリスを形成し、次いで、カチオン交換基を導入する方法などが挙げられる。これらの方法のうち、カチオン交換基を含まないモノマーを用いて重合させ第1のモノリスを形成し、次いで、カチオン交換基を導入する方法は、モノリスカチオン交換体の多孔構造の制御が容易であり、カチオン交換基の定量的導入も可能であるため好ましい。
第1のモノリスにカチオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、モノリスがスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法;モノリスに均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部に導入し、スチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、クロロ硫酸を用いてスチレン−ジビニルベンゼン共重合体にスルホン酸を導入する方法が、カチオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するカチオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基が挙げられる。
<第2のモノリス及び第2のモノリスカチオン交換体の説明>
本発明のエステル化合物の製造方法において、酸触媒である第2のモノリスカチオン交換体は、全構成単位中、架橋構造単位を0.1〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが乾燥状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で10〜200μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、乾燥状態での全細孔容積が0.5〜10mL/gであり、カチオン交換基を有しており、乾燥状態での重量当りのカチオン交換容量が1〜6mg当量/gであり、カチオン交換基が有機多孔質カチオン交換体中に均一に分布しているモノリスカチオン交換体である。また、第2のモノリスは、カチオン交換基が導入される前のモノリスであり、全構成単位中、架橋構造単位を0.1〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが乾燥状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で10〜200μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、乾燥状態での全細孔容積が0.5〜10mL/gである有機多孔質体である。
第2のモノリスカチオン交換体は、平均太さが乾燥状態で1〜60μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で10〜200μm、好ましくは15〜180μm、特に好ましくは20〜150μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体である。図2には、第2のモノリスカチオン交換体の形態例のSEM写真を示し、図3には、第2のモノリスカチオン交換体の共連続構造の模式図を示す。共連続構造は図3の模式図に示すように、連続する骨格相1と連続する空孔相2とが絡み合ってそれぞれが共に3次元的に連続する構造10である。この連続した空孔2は、従来の連続気泡型モノリスや粒子凝集型モノリスに比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがない。また、骨格が太いため機械的強度が高い。
三次元的に連続した空孔の平均直径が乾燥状態で10μm未満であると、基質や溶媒が拡散し難くなるため好ましくなく、200μmを超えると、反応液とモノリスカチオン交換体との接触が不十分となり、その結果、触媒活性が不十分となるため好ましくない。また、骨格の平均太さが乾燥状態で1μm未満であると、イオン交換容量が低くなるため、また、機械的強度が低くなるため好ましくない。更に、反応液とモノリスカチオン交換体との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくない。一方、骨格の太さが60μmを越えると、骨格が太くなり過ぎ、溶媒、基質の拡散が不均一になるため好ましくない。
乾燥状態の第2のモノリスの開口の平均直径、乾燥状態の第2のモノリスカチオン交換体の開口の平均直径及び以下に述べる第2のモノリスの製造のI工程で得られる、乾燥状態の第2のモノリス中間体(2)の開口の平均直径は、水銀圧入法により求められ、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値を指す。また、第2のモノリスカチオン交換体の骨格の乾燥状態での平均太さは、乾燥状態の第2のモノリスカチオン交換体のSEM観察により求められる。具体的には、乾燥状態の第2のモノリスカチオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、それらの平均値を平均太さとする。なお、骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
また、第2のモノリスカチオン交換体の乾燥状態での重量当りの全細孔容積は、0.5〜10mL/gである。全細孔容積が0.5mL/g未満であると、基質や溶媒の接触効率が低くなるため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過量が小さくなり、処理量が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が10ml/gを超えると、反応液とモノリスカチオン交換体との接触効率が低下するため、触媒効率も低下してしまうため好ましくない。三次元的に連続した空孔の大きさ及び全細孔容積が上記範囲にあれば、反応液との接触が極めて均一で接触面積も大きくなる。
第2のモノリスカチオン交換体において、骨格を構成する材料は、全構成単位中、0.1〜5モル%、好ましくは0.5〜3.0モル%の架橋構造単位を含んでいる芳香族ビニルポリマーであり疎水性である。架橋構造単位が0.1モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、多孔質体の構造が共連続構造から逸脱しやすくなる。芳香族ビニルポリマーの種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、共連続構造形成の容易さ、カチオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
第2のモノリスカチオン交換体に導入されているカチオン交換基は、第1のモノリスカチオン交換体に導入されているカチオン交換基と同様である。
第2のモノリスカチオン交換体において、導入されたカチオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。
第2のモノリスカチオン交換体は、乾燥状態での重量当りのカチオン交換容量が1〜6mg当量/gのカチオン交換容量を有する。第2のモノリスカチオン交換体は、三次元的に連続した空孔の連続性や均一性が高いため、基質や溶媒が均一に拡散する。そのため、反応の進行が速い。重量当りのカチオン交換容量が上記範囲にあることにより、触媒内部のpHなど触媒活性点の周りの環境を変えることができ、これにより触媒活性が高くなる。
<第2のモノリス及び第2のモノリスイニオン交換体の製造方法>
第2のモノリスは、カチオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が16mL/gを超え、30mL/g以下の連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体(以下、モノリス中間体(2)とも記載する。)を得るI工程、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つI工程で得られたモノリス中間体(2)の存在下に重合を行い、共連続構造体である有機多孔質体である第2のモノリスを得るIII工程、を行うことにより得られる。
第2のモノリスの製造方法に係るI工程において、モノリス中間体(2)を得るI工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行えばよい。
すなわち、第2のモノリスの製造方法に係るI工程において、カチオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、三級アミノ基、四級アンモニウム基等のカチオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーの中で、好適なものとしては、芳香族ビニルモノマーであり、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%とすることが、共連続構造の形成に有利となるため好ましい。
第2のモノリスの製造方法に係るI工程で用いられる界面活性剤は、カチオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非カチオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰カチオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽カチオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は一種単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
また、第2のモノリスの製造方法に係るI工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱又は光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
第2のモノリスの製造方法に係るI工程において、カチオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
第2のモノリスの製造方法に係るI工程で得られるモノリス中間体(2)は、架橋構造を有する有機ポリマー材料、好適には芳香族ビニルポリマーである。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.1〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。一方、5モル%を超えると、モノリスの構造が共連続構造を逸脱し易くなるため好ましくない。特に、全細孔容積が16〜20ml/gの場合には、共連続構造を形成させるため、架橋構造単位は3モル%未満とすることが好ましい。
第2のモノリスの製造方法に係るI工程において、モノリス中間体(2)のポリマー材料の種類は、第1のモノリスのポリマー材料と同じものが挙げられる。
第2のモノリスの製造方法に係るI工程で得られるモノリス中間体(2)の乾燥状態での重量当りの全細孔容積は、16mL/gを超え、30mL/g以下、好適には16mL/gを超え、25mL/g以下である。すなわち、このモノリス中間体(2)は、基本的には連続マクロポア構造ではあるが、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)が格段に大きいため、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に限りなく近い構造を有している。図4には、モノリス中間体(2)の形態例のSEM写真を示すが、棒状に近い骨格を有している。これを重合系に共存させると、モノリス中間体(2)の構造を型として共連続構造の多孔質体が形成される。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が共連続構造から連続マクロポア構造に変化してしまうため好ましくなく、一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの機械的強度が低下したり、カチオン交換基を導入する場合は、体積当たりのカチオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体(2)の全細孔容積を上記範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:20〜1:40とすればよい。
また、第2のモノリスの製造方法に係るI工程で得られるモノリス中間体(2)は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で5〜100μmである。開口の平均直径が乾燥状態で5μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、100μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、反応液とモノリスカチオン交換体との接触が不十分となり、その結果、触媒活性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体(2)は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
第2のモノリスの製造方法に係るII工程は、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
第2のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性の芳香族ビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体(2)と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好適に用いられる芳香族ビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等である。
第2のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる芳香族ビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体(2)に対して、重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍である。芳香族ビニルモノマー添加量がモノリス中間体(2)に対して5倍未満であると、棒状骨格を太くできず、また、カチオン交換基を導入する場合、カチオン交換基導入後の体積当りのカチオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、連続空孔の径が小さくなり、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
第2のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量(全油溶性モノマー)に対して0.3〜5モル%、特に0.3〜3モル%である。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、多過ぎると、カチオン交換基を導入する場合、カチオン交換基の定量的導入が困難になる場合があるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体(2)の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、また、カチオン交換基を導入する場合、カチオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
第2のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、芳香族ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記芳香族ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱して芳香族ビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が第2のモノリスの範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
第2のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる重合開始剤は、熱又は光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
第2のモノリスの製造方法に係るIII工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体(2)の存在下に重合を行い、該モノリス中間体(2)の連続マクロポア構造を共連続構造に変化させ、共連続構造モノリスである第2のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体(2)は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体(2)不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、第2のモノリスのように上記重合系に特定の連続マクロポア構造のモノリス中間体(2)を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の共連続構造を持つ第2のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体(2)が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に全細孔容積が大きな多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行し、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に変化して共連続構造を有する第2のモノリスが形成されると考えられる。
第2のモノリスの製造方法において、反応容器の内容積は、モノリス中間体(2)を反応容器中に存在させる大きさのものであれば特に制限されず、反応容器内にモノリス中間体(2)を載置した際、平面視でモノリスの周りに隙間ができるもの、反応容器内にモノリス中間体(2)が隙間無く入るもののいずれであってもよい。このうち、重合後の骨太のモノリスが容器内壁から押圧を受けることなく、反応容器内に隙間無く入るものが、モノリスに歪が生じることもなく、反応原料などの無駄がなく効率的である。なお、反応容器の内容積が大きく、重合後のモノリスの周りに隙間が存在する場合であっても、ビニルモノマーや架橋剤は、モノリス中間体(2)に吸着、分配されるため、反応容器内の隙間部分に粒子凝集構造物が生成することはない。
第2のモノリスの製造方法に係るIII工程において、反応容器中、モノリス中間体(2)は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体(2)の配合比は、前述の如く、モノリス中間体(2)に対して、ビニルモノマーの添加量が重量で3〜50倍、好ましくは4〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な開口径を有しつつ、骨太の骨格を有する第2のモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中のビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体(2)の骨格内で重合が進行する。
第2のモノリスの製造方法に係るIII工程において、反応容器中、モノリス中間体(2)は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体(2)の配合比は、前述の如く、モノリス中間体(2)に対して、芳香族ビニルモノマーの添加量が重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な大きさの空孔が三次元的に連続し、且つ骨太の骨格が3次元的に連続する共連続構造の第2のモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中の芳香族ビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体(2)の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体(2)の骨格内で重合が進行する。
第2のモノリスの製造方法に係るIII工程の重合条件は、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件が選択される。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。加熱重合により、モノリス中間体(2)の骨格に吸着、分配したビニルモノマーと架橋剤が骨格内で重合し、骨格を太らせる。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出して第2のモノリスを得る。
第2のモノリスカチオン交換体は、III工程で得られた第2のモノリスにカチオン交換基を導入するIV工程を行うことにより得られる。
第2のモノリスにカチオン交換基を導入する方法は、第1のモノリスにカチオン交換基を導入する方法と同様である。
第2のモノリス及び第2のモノリスカチオン交換体は、3次元的に連続する空孔の大きさが格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。また、第2のモノリスカチオン交換体は、骨格が太いため、乾燥状態での体積当りのカチオン交換容量を大きくでき、更に、反応液を低圧、大流量で長期間通液することが可能である。
本発明のエステル化合物の製造方法に係るモノリス状有機多孔質カチオン交換体は、水分平衡状態において、自身の質量(乾燥状態の質量)の70〜90%の水を含むことができる。ところが、モノリス状有機多孔質カチオン交換体が多量の水を含んでいると、エステル化反応が起こり難くなるため、エステル化反応に用いられるモノリス状有機多孔質カチオン交換体(反応前のモノリス状有機多孔質カチオン交換体)は、水の含有量が少ないほど、エステル化率が高くなる点で好ましい。そして、エステル化反応に用いられるモノリス状有機多孔質カチオン交換体の含水量は、エステル化率が高くなる点で、好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。モノリス状有機多孔質カチオン交換体から水を除去する方法としては、カチオン交換基が分解しない程度の温度、例えば、120℃以下、好ましくは60〜110℃で加熱乾燥する方法、減圧乾燥する方法、モノリス状有機多孔質カチオン体をエーテル等の有機溶媒に浸漬し、モノリス状有機多孔質カチオン交換体中の水を有機溶媒で置換した後、乾燥する方法、複数種類の有機溶媒を用いて、繰り返し、モノリス状有機多孔質カチオン交換体中の水を有機溶媒で置換する方法等が挙げられる。
そして、本発明のエステル化合物の製造方法では、モノリス状有機多孔質カチオン交換体、カルボン酸、アルコール及び溶媒を接触させるときに、モノリス状有機多孔質カチオン交換体へのカルボン酸、アルコール及び溶媒の接触順を、モノリス状有機多孔質カチオン交換体に、溶媒が接触する前に、アルコールが接触することがない接触順にする。なお、本発明のエステル化合物の製造方法では、カルボン酸のモノリス状有機多孔質カチオン交換体への接触時期は、特に制限されず、モノリス状有機多孔質カチオン交換体への接触時期が、溶媒の接触より先であってもよいし、溶媒の接触と同時であってもよいし、溶媒の接触より後且つアルコールの接触より先であってもよいし、溶媒の接触より後且つアルコールの接触と同時であってもよいし、アルコールの接触より後であってもよい。
モノリス状有機多孔質カチオン交換体に、溶媒が接触する前に、アルコールが接触することがない接触順にするとは、例えば、モノリス状有機多孔質カチオン交換体に、先に溶媒を接触させてから、アルコールに接触させる接触順、あるいは、モノリス状有機多孔質カチオン交換体に、溶媒及びアルコールの混合物を接触させることにより、モノリス状有機多孔質カチオン交換体に、溶媒及びアルコールを同時に接触させる接触順である。なお、これらの接触順において、カルボン酸のモノリス状有機多孔質カチオン交換体への接触時期は、特に制限されない。
モノリス状有機多孔質カチオン交換体、カルボン酸、アルコール及び溶媒を接触させるときに、モノリス状有機多孔質カチオン交換体へのカルボン酸、アルコール及び溶媒の接触順を、モノリス状有機多孔質カチオン交換体に、溶媒が接触する前に、アルコールが接触することがない接触順の形態例としては、以下の接触順が挙げられる。以下では、反応容器に加えていく順序を矢印の順で示す。なお、反応容器に加える順序は以下に制限されるものではなく、モノリス状有機多孔質カチオン交換体へのカルボン酸、アルコール及び溶媒の接触順が、モノリス状有機多孔質カチオン交換体に、溶媒が接触する前に、アルコールが接触することがない接触順であればよい。
<モノリスカチオン交換体を一番始めに反応容器に加える場合>
・モノリスカチオン交換体→カルボン酸→溶媒→アルコール
・モノリスカチオン交換体→溶媒→カルボン酸→アルコール
・モノリスカチオン交換体→溶媒→アルコール→カルボン酸
・モノリスカチオン交換体→溶媒とカルボン酸の混合液→アルコール
・モノリスカチオン交換体→カルボン酸→溶媒とアルコールの混合液
・モノリスカチオン交換体→溶媒とアルコールの混合液→カルボン酸
・モノリスカチオン交換体→溶媒とアルコールとカルボン酸の混合液
<溶媒とカルボン酸の混合液を一番始めに反応容器に加える場合>
・溶媒とカルボン酸の混合液→モノリスカチオン交換体→アルコール
<溶媒を一番始めに反応容器に加える場合>
・溶媒→カルボン酸→モノリスカチオン交換体→アルコール
・溶媒→モノリスカチオン交換体→カルボン酸→アルコール
・溶媒→モノリスカチオン交換体→アルコール→カルボン酸
<カルボン酸を一番始めに反応容器に加える場合>
・カルボン酸→モノリスカチオン交換体→溶媒→アルコール
・カルボン酸→溶媒→モノリスカチオン交換体→アルコール
・カルボン酸→モノリスカチオン交換体→溶媒とアルコールの混合液
また、モノリスカチオン交換体をカラムに充填し、先に、溶媒を通液してから、カルボン酸、アルコール及び溶媒の混合液を通液することにより、モノリス状有機多孔質カチオン交換体に、溶媒が接触する前に、アルコールが接触することがない接触順で、モノリス状有機多孔質カチオン交換体へのカルボン酸、アルコール及び溶媒の接触を行うことができる。
本発明のエステル化合物の製造方法において、カルボン酸とアルコールの割合であるが、カルボキシル基及びヒドロキシル基の当量換算で、カルボキシル基とヒドロキシル基が当量となる割合か、あるいは、カルボキシル基に対してヒドロキシル基が過剰となる割合又はヒドロキシル基に対してカルボキシル基が過剰となる割合である。更に、具体的には、カルボン酸とアルコールの割合は、カルボキシル基に対するヒドロキシル基の当量比(ヒドロキシル基当量/カルボキシル基当量)が、0.05〜20となる混合割合が好ましく、0.1〜10となる混合割合が特に好ましい。
本発明のエステル化合物の製造方法において、モノリス状有機多孔質カチオン交換体の量は、特に制限されないが、カルボン酸のカルボキシル基及びモノリス状有機多孔質カチオン交換体中のカチオン交換基の当量換算で、モノリス状有機多孔質カチオン交換体に対するカルボン酸のカルボキシル基の当量比(カルボキシル基当量/カチオン交換基当量)が、0.1〜100となる混合割合が好ましく、0.5〜50となる割合が特に好ましい。
本発明のエステル化合物の製造方法において、溶媒の使用量は、特に制限されないが、好ましくはモノリス状有機多孔質カチオン交換体の質量の3〜100倍、特に好ましくはモノリス状有機多孔質カチオン交換体の質量の5〜50倍である。
本発明のエステル化合物の製造方法では、モノリス状有機多孔質カチオン交換体に、カルボン酸、アルコール及び溶媒を接触させた後、又はモノリス状有機多孔質カチオン交換体に、先に溶媒を接触させた後、カルボン酸及びアルコールを接触させながら、カルボン酸とアルコールを反応させて、エステル化反応を行い、エステル化合物を得る。エステル化反応の際の反応温度は、特に制限されないが、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは50〜90℃である。また、エステル化反応の際の反応時間は、反応原料の量、反応温度等により適宜選択されるが、好ましくは0.1〜48時間、特に好ましくは0.5〜24時間である。
このようにして、本発明のエステル化合物の製造方法を行うことにより、エステル化合物を得ることができる。
本発明のエステル化合物の製造方法は、モノリス状有機多孔質カチオン体に溶媒を接触させる前に、モノリス状有機多孔質カチオン交換体とアルコールを混合して、エステル化を行うエステル化合物の製造方法に比べ、エステル化率が高くなる。本発明のエステル化合物の製造方法では、モノリス状有機多孔質カチオン体に対し、先に溶媒を接触させて又はアルコールと同時に溶媒を接触させて、モノリス状有機多孔質カチオン体の骨格中に溶媒を取り込ませることにより、アルコールがモノリス状有機多孔質カチオン交換体に接触するときに、アルコールがモノリス状有機多孔質カチオン交換体に取り込まれて、エステル化反応に用いられるアルコールが減少するのを防ぐことができる。そのため、本発明のエステル化合物の製造方法では、エステル化率が高くなる。
また、本発明のエステル化合物の製造方法を行った後、反応系に、更に、アルコールを混合して、再び、エステル化反応を行うことができる。その際のアルコールの混合量は、本発明のエステル化合物の製造方法を行う前のカルボン酸のカルボキシル基の当量に対する本発明のエステル化合物の製造方法を行った後に更に混合するアルコールのヒドロキシル基の当量比(ヒドロキシル基当量/カルボキシル基当量)が、1〜20となる混合量が好ましく、1〜10となる混合量が特に好ましい。また、その際のエステル化反応の反応温度及び反応時間は、本発明のエステル化合物の製造方法におけるエステル化反応の反応温度及び反応時間と同様である。
(実施例)
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
(参考例1)第1のモノリスカチオン交換体の製造
(第1のモノリスの製造)
スチレン19.24g、ジビニルベンゼン1.01g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)2.25g及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.05gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリスを製造した。このようにして得られた第1のモノリスAの内部構造をSEMにより観察した。その結果、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は13.2μm、全細孔容積は8.4mL/gであった。
(第1のモノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造した第1のモノリスAをカラム状反応器に入れ、クロロスルホン酸500gとジクロロメタン4Lからなる溶液を通液して、20℃、3時間反応させた。反応終了後、系内にメタノールを添加し、未反応のクロロスルホン酸を失活させ、更にメタノールで洗浄して生成物を取り出した。最後に純水で洗浄して、第1のモノリスカチオン交換体Aを得た。
得られた第1のモノリスカチオン交換体Aのカチオン交換容量は、乾燥状態で4.8mg当量/gであり、スルホン酸基が定量的に導入されていることを確認した。また、水銀圧入法による測定から求めた、当該モノリスカチオン交換体の三次元的に連続した空孔の乾燥状態での平均直径は13.4μm、乾燥状態での全細孔容積は8.5mL/gであった。
次いで、第1のモノリスカチオン交換体A中のスルホン酸基の分布状態を確認するため、EPMAにより硫黄の分布状態を観察した。骨格断面における硫黄の分布状態は、硫黄はモノリスカチオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、スルホン酸基がモノリスカチオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
(参考例2)第2のモノリスカチオン交換体の製造
(モノリス中間体(2)の製造(I工程))
スチレン9.28g、ジビニルベンゼン0.19g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)0.50gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.25gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体(2)Bを製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察した。その結果、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は40μm、全細孔容積は18.2mL/gであった。
(第2のモノリスの製造)
次いで、スチレン216.6g、ジビニルベンゼン4.4g、1-デカノール220g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下50℃で24時間重合させた。重合終了後内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、減圧乾燥し(III工程)、第2のモノリスBを得た。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.2モル%含有した第2のモノリスB(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した。その結果、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の平均太さは20μmであった。また、水銀圧入法により測定した、当該モノリスの三次元的に連続した空孔の平均直径は70μm、全細孔容積は4.4mL/gであった。なお、空孔の平均直径は、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値である。
(第2のモノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスをカラム状反応器に入れ、クロロスルホン酸500gとジクロロメタン4Lからなる溶液を通液して、20℃、3時間反応させた。反応終了後、系内にメタノールを添加し、未反応のクロロスルホン酸を失活させ、更にメタノールで洗浄して生成物を取り出した。最後に純水で洗浄して、第2のモノリスカチオン交換体Bを得た。
得られたモノリスカチオン交換体のカチオン交換容量は、乾燥状態で4.7mg当量/gであり、スルホン酸基が定量的に導入されていることを確認した。また、第2のモノリスカチオン交換体Bの内部構造をSEMにより観察したところ、当該モノリスカチオン交換体は骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した乾燥状態での骨格の平均太さは20μmであり、水銀圧入法による測定から求めた、当該モノリスカチオン交換体の三次元的に連続した空孔の乾燥状態での平均直径は70μm、乾燥状態での全細孔容積は4.4mL/gであった。
次いで、第2のモノリスカチオン交換体B中のスルホン酸基の分布状態を確認するため、EPMAにより硫黄の分布状態を観察した。硫黄はモノリスカチオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、スルホン酸基がモノリスカチオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
(実施例1)
上記のようにして得た第2のモノリスカチオン交換体Bを大過剰のエーテルに接触させた後、室温にて、減圧乾燥した。
次いで、反応容器に、安息香酸0.5ミリモルと、安息香酸と同重量の乾燥後の第2のモノリスカチオン交換体B 61mgを加え、トルエン0.5mLを加えた。このとき、モノリス状有機多孔質カチオン交換体に対するカルボン酸の当量比(カルボキシル基当量/カチオン交換基当量)は1.7であった。
次いで、反応容器に、メタノールを、安息香酸に対する当量比で、5倍当量分加え、更に、トルエンを0.5mL加えた。
次いで、反応容器を60℃で24時間加熱して、反応を行った。
反応終了後、エステル化合物の生成量を分析したところ、エステル化率は98%であった。
(比較例1)
上記のようにして得た第2のモノリスカチオン交換体Bを大過剰のエーテルに接触させた後、室温にて、減圧乾燥した。
次いで、反応容器に、安息香酸0.5ミリモルを加え、次いで、安息香酸と同重量の乾燥後の第2のモノリスカチオン交換体B 61mgを加え、次いで、安息香酸に対する当量比で、5倍当量分のメタノールを加え、撹拌した。次いで、トルエンを1mL加えた。このとき、モノリス状有機多孔質カチオン交換体に対するカルボン酸の当量比(カルボキシル基当量/カチオン交換基当量)は1.7であった。
次いで、反応容器を60℃で24時間加熱して、反応を行った。
反応終了後、エステル化合物の生成量を分析したところ、エステル化率は87%であった。
(実施例2)
安息香酸0.5ミリモルに代えて、4−シアノ安息香酸0.5ミリモルとし、メタノール5当量分に代えて、メタノール10当量分とすること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、エステル化率は95%であった。
(比較例2)
安息香酸0.5ミリモルに代えて、4−シアノ安息香酸0.5ミリモルとし、4−シアノ安息香酸と同重量の乾燥後の第2のモノリスカチオン交換体B 73mgを加えたことと、メタノール5当量分に代えて、メタノール10当量分とすること以外は、比較例1と同様に行った。その結果、エステル化率は84%であった。
(実施例3)
安息香酸0.5ミリモルに代えて、4−エトキシ安息香酸0.5ミリモルとし、4−エトキシ安息香酸と同重量の乾燥後の第2のモノリスカチオン交換体B 83mgを加えたことと、メタノール5当量分に代えて、メタノール10当量分とすること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、エステル化率は68%であった。
(実施例4)
安息香酸0.5ミリモルに代えて、4−エトキシ安息香酸0.5ミリモルとし、4−エトキシ安息香酸と同重量の乾燥後の第2のモノリスカチオン交換体B 83mgを加えたこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果、エステル化率は42%であった。
(比較例3)
安息香酸0.5ミリモルに代えて、4−エトキシ安息香酸0.5ミリモルとし、4−エトキシ安息香酸と同重量の乾燥後の第2のモノリスカチオン交換体B 83mgを加えたことすること以外は、比較例1と同様に行った。その結果、エステル化率は15%であった。
(実施例5)
安息香酸0.5ミリモルに代えて、4−t−ブチル安息香酸0.5ミリモルとし、4−t−ブチル安息香酸と同重量の乾燥後の第2のモノリスカチオン交換体B 89mgを加えたことと、メタノール5当量分に代えて、メタノール10当量分とすること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、エステル化率は79%であった。
(実施例6)
安息香酸0.5ミリモルに代えて、4−t−ブチル安息香酸0.5ミリモルとし、4−t−ブチル安息香酸と同重量の乾燥後の第2のモノリスカチオン交換体B 89mgを加えたこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果、エステル化率は56%であった。
(比較例4)
安息香酸0.5ミリモルに代えて、4−t−ブチル安息香酸0.5ミリモルとし、4−t−ブチル安息香酸と同重量の乾燥後の第2のモノリスカチオン交換体B 89mgを加えたこと以外は、比較例1と同様に行った。その結果、エステル化率は20%であった。
1)カルボキシル基の当量数に対するヒドロキシル基の当量数