本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒は、非粒子状有機多孔質イオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子が担持されている白金族金属担持接触水素化還元触媒であり、
該非粒子状有機多孔質イオン交換体は、連続骨格相と連続空孔相からなり、連続骨格の厚みは1〜100μm、連続空孔の平均直径は1〜1000μm、全細孔容積は0.5〜50ml/gであり、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量は1〜6mg当量/gであり、
イオン交換基が該有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、該白金族金属の担持量が、乾燥状態で0.004〜20重量%であること、
を特徴とする白金族金属担持接触水素化還元触媒である。
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒において、白金族金属が担持されている担体は、非粒状有機多孔質イオン交換体であるが、この非粒状有機多孔質イオン交換体とは、モノリス状有機多孔質イオン交換体である。モノリス状有機多孔質体は、骨格が有機ポリマーにより形成されており、骨格間に反応液の流路となる連通孔を多数有する多孔質体である。そして、モノリス状有機多孔質イオン交換体は、このモノリス状有機多孔質体の骨格中にイオン交換基が均一に分布するように導入されている多孔質体である。なお、本明細書中、「モノリス状有機多孔質体」を単に「モノリス」と、「モノリス状有機多孔質イオン交換体」を単に「モノリスイオン交換体」とも言い、また、モノリスの製造における中間体(前駆体)である「モノリス状有機多孔質中間体」を単に「モノリス中間体」とも言う。
モノリスイオン交換体は、モノリスにイオン交換基を導入することで得られるものであり、その構造は、連続骨格相と連続空孔相からなる有機多孔質体であって、連続骨格の厚みは1〜100μm、連続空孔の平均直径は1〜1000μm、全細孔容積は0.5〜50ml/gである。
モノリスイオン交換体の乾燥状態での連続骨格の厚みは1〜100μmである。モノリスイオン交換体の連続骨格の厚みが、1μm未満であると、体積当りのイオン交換容量が低下するといった欠点のほか、機械的強度が低下して、特に高流速で通液した際にモノリスイオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、反応液とモノリスイオン交換体との接触効率が低下し、触媒活性が低下するため好ましくない。一方、モノリスイオン交換体の連続骨格の厚みが、100μmを越えると、骨格が太くなり過ぎ、基質の拡散に時間を要するようになって触媒活性が低下するため好ましくない。なお、連続骨格の厚みは、SEM観察により決定される。
モノリスイオン交換体の乾燥状態での連続空孔の平均直径は、1〜1000μmである。モノリスイオン交換体の連続空孔の平均直径が、1μm未満であると通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、モノリスイオン交換体の連続空孔の平均直径が、1000μmを超えると、反応液とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、触媒活性が低下するため好ましくない。なお、モノリスイオン交換体の乾燥状態での連続空孔の平均直径は、水銀圧入法により求められ、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値を指す。
モノリスイオン交換体の乾燥状態での全細孔容積は0.5〜50ml/gである。モノリスイオン交換体の全細孔容積が、0.5ml/g未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過液量が小さくなり、処理量が低下してしまうため好ましくない。一方、モノリスイオン交換体の全細孔容積が、50ml/gを超えると、体積当りのイオン交換容量が低下し、白金族金属ナノ粒子の担持量も低下し触媒活性が低下するため好ましくない。また、機械的強度が低下して、特に高速で通液した際にモノリスイオン交換体が大きく変形し、通液時の圧力損失が急上昇してしまうため好ましくない。更に、反応液とモノリスイオン交換体との接触効率が低下するため、触媒活性の低下が顕著になる。なお、全細孔容積は、水銀圧入法で測定される。
このようなモノリスイオン交換体の構造例としては、特開2002−306976号公報や特開2009−62512号公報に開示されている連続気泡構造や、特開2009−67982号公報に開示されている共連続構造や、特開2009−7550号公報に開示されている粒子凝集型構造や、特開2009−108294号公報に開示されている粒子複合型構造等が挙げられる。
モノリスイオン交換体の乾燥状態での重量当りのイオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。モノリスイオン交換体の乾燥状態でのイオン交換容量が、1mg当量/g未満では、担持できる白金族金属量が少なくなってしまうため好ましくなく、一方、6mg当量/gを超えると、イオン交換基導入反応が過酷な条件となり、モノリスの酸化劣化が著しく進んでしまうため好ましくない。モノリスイオン交換体がモノリスアニオン交換体の場合は、モノリスアニオン交換体には、アニオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのアニオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。また、モノリスイオン交換体がモノリスカチオン交換体の場合は、モノリスカチオン交換体には、カチオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのカチオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。なお、イオン交換基が骨格表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
モノリスイオン交換体において、導入されているイオン交換基は、モノリスの表面のみならず、モノリスの骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「イオン交換基が均一に分布している」とは、イオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。イオン交換基の分布状況は、EPMAを用いることで簡単に確認される。また、イオン交換基が、モノリスの表面のみならず、モノリスの骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
モノリスイオン交換体に導入されているイオン交換基は、カチオン交換基又はアニオン交換基である。カチオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等が挙げられる。アニオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
モノリスイオン交換体において、連続骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.1〜30モル%、好適には0.1〜20モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.1モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、30モル%を越えると、イオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続構造形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
<モノリス状有機多孔質体及びモノリス状有機多孔質イオン交換体の形態例>
モノリスの形態例としては、以下に示す第1のモノリス〜第5のモノリスが挙げられる。また、モノリスイオン交換体としては、以下に示す第1のモノリスイオン交換体〜第5のモノリスイオン交換体が挙げられる。
<第1のモノリス及び第1のモノリスイオン交換体の説明>
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒において、白金族金属粒子の担体となる第1のモノリスイオン交換体は、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に平均直径が乾燥状態で1〜1000μmの共通の開口(メソポア)を有する連続気泡構造を有し、乾燥状態での全細孔容積が1〜50ml/gであり、イオン交換基を有しており、イオン交換基が均一に分布しており、乾燥状態の重量当りのイオン交換容量が1〜6mg当量/gであるモノリスイオン交換体である。また、第1のモノリスは、イオン交換基が導入される前のモノリスであり、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に平均直径が乾燥状態で1〜1000μmの共通の開口(メソポア)を有する連続気泡構造を有し、乾燥状態での全細孔容積が1〜50ml/gである有機多孔質体である。
第1のモノリスイオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が乾燥状態で平均直径1〜1000μm、好ましくは10〜200μm、特に好ましくは20〜100μmの共通の開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体であり、その大部分がオープンポア構造のものである。オープンポア構造は、水を流せば該マクロポアと該メソポアで形成される気泡内が流路となる。マクロポアとマクロポアの重なりは、1個のマクロポアで1〜12個、多くのものは3〜10個である。図1には、第1のモノリスイオン交換体の形態例の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示すが、図1に示す第1のモノリスイオン交換体は、多数の気泡状のマクロポアを有しており、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が共通の開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体となっており、その大部分がオープンポア構造である。メソポアの乾燥状態での平均直径が1μm未満であると、通液時の圧力損失が著しく大きくなってしまうため好ましくなく、メソポアの乾燥状態での平均直径が1000μmを越えると、反応液とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、触媒活性が低下してしまうため好ましくない。第1のモノリスイオン交換体の構造が上記のような連続気泡構造となることにより、マクロポア群やメソポア群を均一に形成できると共に、特開平8−252579号公報等に記載されるような粒子凝集型多孔質体に比べて、細孔容積や比表面積を格段に大きくすることができる。
なお、本発明では、乾燥状態の第1のモノリスの開口の平均直径、乾燥状態の第1のモノリスイオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により得られる細孔分布曲線の極大値を指すものである。
第1のモノリスイオン交換体の乾燥状態での重量当りの全細孔容積は、1〜50ml/g、好適には2〜30ml/gである。全細孔容積が1ml/g未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過液量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が50ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通液した際にモノリスイオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、反応液とモノリスイオン交換体およびそれに担持された白金族金属粒子との接触効率が低下するため、触媒効果も低下してしまうため好ましくない。全細孔容積は、従来の粒子状多孔質イオン交換樹脂では、せいぜい0.1〜0.9ml/gであるから、それを越える従来には無い1〜50ml/gの高細孔容積、高比表面積のものが使用できる。
第1のモノリスイオン交換体において、骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、10モル%を越えると、イオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。
第1のモノリスイオン交換体の骨格を構成する有機ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記有機ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
第1のモノリスイオン交換体に導入されているイオン交換基は、第2のモノリスイオン交換体〜第5のモノリスイオン交換体においても同様である。イオン交換基は、カチオン交換基又はアニオン交換基であり、カチオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等が挙げられ、また、アニオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
第1のモノリスイオン交換体において(第2のモノリスイオン交換体〜第5のモノリスイオン交換体においても同じ)、導入されているイオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「イオン交換基が均一に分布している」とは、イオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。イオン交換基の分布状況は、EPMAを用いることで確認される。また、イオン交換基が、モノリスの表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
第1のモノリスイオン交換体の乾燥状態での重量当りのイオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が、上記範囲にあることにより、触媒内部のpHなど触媒活性点の周りの環境を変えることができ、これにより触媒活性が高くなる。第1のモノリスイオン交換体がモノリスアニオン交換体の場合は、第1のモノリスアニオン交換体には、アニオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのアニオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。また、第1のモノリスイオン交換体がモノリスカチオン交換体の場合は、第1のモノリスカチオン交換体には、カチオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのカチオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。なお、イオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
<第1のモノリス及び第1のモノリスイオン交換体の製造方法>
第1のモノリスの製造方法としては、特に制限されないが、特開2002−306976号公報記載の方法に準じた、製造方法の一例を以下示す。すなわち、第1のモノリスは、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び必要に応じて重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを得、これを重合させてモノリスを形成することにより得られる。このような、第1のモノリスの製造方法は、モノリスの多孔構造の制御が容易である点で、好ましい。
第1のモノリスの製造で用いられるイオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、カルボン酸基、スルホン酸基等のイオン交換基及び四級アンモニウム基等のアニオン交換基のいずれも含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーを指すものである。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、本発明においては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%とすることが、後の工程でイオン交換基を定量的に導入し、かつ、実用的に十分な機械的強度を確保できる点で好ましい。
第1のモノリスの製造で用いられる界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は一種単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。また、必ずしも必須ではないが、モノリスの気泡形状やサイズを制御するために、メタノール、ステアリルアルコール等のアルコール;ステアリン酸等のカルボン酸;オクタン、ドデカン、トルエン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルを系内に共存させることもできる。
また、第1のモノリスの製造において、重合によりモノリスを形成する際、必要に応じて用いられる重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。ただし、場合によっては、重合開始剤を添加しなくても加熱のみや光照射のみで重合が進行する系もあるため、そのような系では重合開始剤の添加は不要である。
第1のモノリスの製造において、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーや、被処理物を混合容器に入れ、該混合容器を傾斜させた状態で公転軸の周りに公転させながら自転させることで、被処理物を攪拌混合する、所謂遊星式攪拌装置等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。これらの混合装置のうち、遊星式攪拌装置はW/Oエマルジョン中の水滴を均一に生成させることがで
き、その平均径を幅広い範囲で任意に設定できるため、好ましく用いられる。
第1のモノリスの製造において、このようにして得られた油中水滴型エマルジョンを重合させる重合条件は、モノマーの種類、開始剤系により様々な条件が選択できる。例えば、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間、加熱重合させればよく、開始剤として過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、0〜30℃で1〜48時間重合させればよい。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノール等の溶剤でソックスレー抽出し、未反応モノマーと残留界面活性剤を除去して第1のモノリスを得る。
第1のモノリスイオン交換体の製造方法としては、特に制限されず、上記第1のモノリスの製造方法において、イオン交換基を含まないモノマーに代えて、イオン交換基を含むモノマー、例えば、上記イオン交換基を含まない油溶性モノマーに、カルボン酸基、スルホン酸基等のイオン交換基が導入されているモノマーを用いて重合させ、一段階でモノリスイオン交換体にする方法、イオン交換基を含まないモノマーを用いて重合させ第1のモノリスを形成し、次いで、イオン交換基を導入する方法などが挙げられる。これらの方法のうち、イオン交換基を含まないモノマーを用いて重合させ第1のモノリスを形成し、次いで、イオン交換基を導入する方法は、モノリスイオン交換体の多孔構造の制御が容易であり、イオン交換基の定量的導入も可能であるため好ましい。
第1のモノリスにイオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、四級アンモニウム基を導入する方法としては、モノリスがスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させ導入する方法;モノリスをクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させ導入する方法;モノリスにラジカル開始基や連鎖移動基を導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、四級アンモニウム基を導入する方法としては、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法やクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合によりモノリスを製造し、三級アミンと反応させる方法が、イオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するアニオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。また、例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、モノリスがスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法;モノリスに均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部に導入し、スチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、クロロ硫酸を用いてスチレン−ジビニルベンゼン共重合体にスルホン酸を導入する方法が、イオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するカチオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基が挙げられる。
<第2のモノリス及び第2のモノリスイオン交換体の説明>
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒において、白金族金属粒子の担体となる第2のモノリスイオン交換体は、粒子凝集型モノリスであり、平均粒子径が乾燥状態で1〜50μmの有機ポリマー粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成し、その骨格間に平均直径が乾燥状態で20〜100μmの三次元的に連続した空孔を有し、乾燥状態での全細孔容積が1〜10ml/gである有機多孔質体であり、イオン交換基を有しており、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が1〜6mg当量/gであり、イオン交換基が該有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しているモノリスイオン交換体である。また、第2のモノリスは、イオン交換基が導入される前のモノリスであり、粒子凝集型モノリスであり、平均粒子径が乾燥状態で1〜50μmの有機ポリマー粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成し、その骨格間に平均直径が乾燥状態で20〜100μmの三次元的に連続した空孔を有し、乾燥状態での全細孔容積が1〜10ml/gである有機多孔質体である有機多孔質体である。
第2モノリスイオン交換体の基本構造は、架橋構造単位を有する平均粒子径が乾燥状態で1〜50μm、好ましくは1〜30μmの有機ポリマー粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成し、その骨格間に平均直径が乾燥状態で20〜100μm、好ましくは20〜90μmの三次元的に連続した空孔を有する粒子凝集型構造であり、当該三次元的に連続した空孔が液体や気体の流路となる。図2には、第2のモノリスイオン交換体の形態例のSEM写真を示すが、図2に示す第2のモノリスイオン交換体は、有機ポリマー粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成し、その骨格間に三次元的に連続した空孔を有する粒子凝集型構造である。有機ポリマー粒子の平均粒子径が乾燥状態で1μm未満であると、骨格間の連続した空孔の平均直径が乾燥状態で20μm未満と小さくなってしまうため好ましくなく、50μmを超えると、反応液とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、触媒活性が低下してしまうため好ましくない。また、骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径が乾燥状態で20μm未満であると、反応液を透過させた際の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、一方、100μmを越えると、反応液とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、触媒活性が低下してしまうため好ましくない。
なお、第2のモノリス及び第2のモノリスイオン交換体の骨格部分を構成する有機ポリマー粒子の乾燥状態での平均粒子径は、SEMを用いることで簡便に測定される。具体的には、乾燥状態の第2のモノリスイオン交換体の断面の任意に抽出した部分のSEM写真を撮り、そのSEM写真中の全粒子の有機ポリマー粒子の直径を測定して、乾燥状態の第2のモノリスイオン交換体中の有機ポリマー粒子の平均粒子径を求める。
また、乾燥状態の第2のモノリスの骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径又は乾燥状態の第2のモノリスイオン交換体の骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の平均直径は、水銀圧入法により求められ、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値を指す。
第2のモノリスイオン交換体の乾燥状態での重量当りの全細孔容積は、1〜10ml/gである。全細孔容積が1ml/g未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が10ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通液した際にモノリスイオン交換体が大きく変形してしまう点で、好ましくない。
第2のモノリスイオン交換体において、骨格部分の材料は、架橋構造単位を有する有機ポリマー材料である。すなわち、該有機ポリマー材料は、ビニルモノマーからなる構成単位と、分子中に2個以上のビニル基を有する架橋剤構造単位とを有するものであり、該ポリマー材料は、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、1〜5モル%、好適には1〜4モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が1モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、上記骨格間に三次元的に連続して存在する空孔径が小さくなってしまい、圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
第2のモノリスイオン交換体の骨格を構成するポリマー材料の種類は、特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルベンジルクロライド等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー;スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、粒子凝集構造の形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
第2のモノリスイオン交換体に導入されているイオン交換基は、第1のモノリスイオン交換体に導入されているイオン交換基と同様である。
第2のモノリスイオン交換体において、導入されたイオン交換基は、第1のモノリスイオン交換体と同様に、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。
第2のモノリスイオン交換体のイオン交換容量は、乾燥状態での重量当り1〜6mg当量/gである。第2のモノリスイオン交換体は、圧力損失を低く押さえたままで重量当りのイオン交換容量を格段に大きくすることができる。乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が、上記範囲にあることにより、触媒内部のpHなど触媒活性点の周りの環境を変えることができ、これにより触媒活性が高くなる。第2のモノリスイオン交換体がモノリスアニオン交換体の場合は、第2のモノリスアニオン交換体には、アニオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのアニオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。また、第2のモノリスイオン交換体がモノリスカチオン交換体の場合は、第2のモノリスカチオン交換体には、カチオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのカチオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。
<第2のモノリス及び第2のモノリスイオン交換体の製造方法>
第2のモノリスの製造方法としては、ビニルモノマー、特定量の架橋剤、有機溶媒および重合開始剤とを混合し、静置状態でこれを重合させることにより、第2のモノリスを得る方法が挙げられる。
第2のモノリスの製造に用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のモノマーであれば、特に制限はない。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用される。好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマーである。
第2のモノリスの製造に用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好ましい。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用される。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する架橋剤の使用量({架橋剤/(ビニルモノマー+架橋剤)}×100)は、1〜5モル%、好ましくは1〜4モル%である。架橋剤の使用量は得られるモノリスの多孔構造に大きな影響を与え、架橋剤の使用量が5モル%を超えると、骨格間に形成される連続空孔の大きさが小さくなってしまうため好ましくない。一方、架橋剤使用量が1モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足し、通液時に大きく変形したり、モノリスの破壊を招いたりするため好ましくない。
第2のモノリスの製造に用いられる有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル類;ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類等が挙げられる。これらのうち、アルコール類が、静置重合により粒子凝集構造が形成されやすくなると共に、三次元的に連続した空孔が大きくなるため好ましい。また、ベンゼンやトルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用される。
第2のモノリスの製造に用いられる重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好ましい。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する重合開始剤の使用量({重合開始剤/(ビニルモノマー+架橋剤)}×100)は、約0.01〜5モル%である。
第2のモノリスの製造においては、重合条件として、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件を選択することができる。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出して第2のモノリスを得る。
第2のモノリスの製造において、有機溶媒に溶解したビニルモノマーの重合が早く進む条件で行えば、平均粒子径1μmに近い有機ポリマー粒子が沈降し凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成させることができる。ビニルモノマーの重合が早く進む条件とは、ビニルモノマー、架橋剤、重合開始剤及び重合温度などにより異なり一概には決定できないものの、架橋剤を増やす、モノマー濃度を高くする、温度を高くするなどである。このような重合条件を加味して、平均粒子径1〜50μmの有機ポリマー粒子を凝集させる重合条件を適宜決定すればよい。また、その骨格間に平均直径が20〜100μmの三次元的に連続した空孔を形成するには、前述の如く、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する架橋剤の使用量を特定量とすればよい。また、モノリスの全細孔容積を1〜5ml/gとするには、ビニルモノマー、架橋剤、重合開始剤及び重合温度などにより異なり一概には決定できないものの、概ね有機溶媒、モノマー及び架橋剤の合計使用量に対する有機溶媒使用量({有機溶媒/(有機溶媒+モノマー+架橋剤)}×100)が、30〜80重量%、好適には40〜70重量%のような条件で重合すればよい。
第2のモノリスイオン交換体の製造方法としては、上記の第2のモノリスの製造方法において、イオン交換基を含むモノマー、例えば、イオン交換基を含まないビニルモノマーに、カルボン酸基、スルホン酸基等のイオン交換基が導入されているモノマーを用いて重合させ、一段階でモノリスイオン交換体にする方法、イオン交換基を含まないビニルモノマーを用いて重合させ第2のモノリスを形成し、次いで、イオン交換基を導入する方法などが挙げられる。
第2のモノリスにイオン交換基を導入する方法は、第1のモノリスにイオン交換基を導入する方法と同様である。
<第3のモノリス及び第3のモノリスイオン交換体の説明>
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒において、白金族金属粒子の担体となる第3のモノリスイオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が乾燥状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、乾燥状態での全細孔容積が0.5〜10ml/gであり、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%であり、イオン交換基を有しており、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が1〜6mg当量/gであり、イオン交換基が有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しているモノリスイオン交換体である。また、第3のモノリスは、イオン交換基が導入される前のモノリスであり、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が乾燥状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、乾燥状態での全細孔容積が0.5〜10ml/gであり、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%である有機多孔質体である有機多孔質体である。
第3のモノリスイオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が乾燥状態で平均直径30〜300μm、好ましくは30〜200μm、特に好ましくは40〜100μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体である。図3には、第3のモノリスイオン交換体の形態例のSEM写真を示すが、図3に示す第3のモノリスイオン交換体は、多数の気泡状のマクロポアを有しており、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が共通の開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体となっており、その大部分がオープンポア構造である。乾燥状態での開口の平均直径が30μm未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、乾燥状態での開口の平均直径が大き過ぎると、反応液とモノリスイオン交換体および担持された白金族金属粒子との接触が不十分となり、その結果、触媒活性が低下してしまうため好ましくない。
なお、乾燥状態の第3のモノリスの開口の平均直径、乾燥状態の第3のモノリスイオン交換体の開口の平均直径及び、以下に述べる第3のモノリスの製造のI工程で得られる、乾燥状態の第3のモノリス中間体(3)の開口の平均直径は、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値を指す。
第3のモノリスイオン交換体では、連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25〜50%、好ましくは25〜45%である。断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25%未満であると、細い骨格となり、機械的強度が低下して、特に高流速で通液液した際にモノリスイオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、反応液とモノリスイオン交換体およびそれに担持された白金族金属粒子との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくなく、50%を超えると、骨格が太くなり過ぎ、通液時の圧力損失が増大するため好ましくない。
SEM画像を得るための条件は、切断面の断面に表れる骨格部が鮮明に表れる条件であればよく、例えば倍率100〜600、写真領域が約150mm×100mmである。SEM観察は、主観を排除した第3のモノリスイオン交換体の任意の切断面の任意の箇所で撮影された切断箇所や撮影箇所が異なる3枚以上、好ましくは5枚以上の画像で行うのがよい。切断される第3のモノリスイオン交換体は、電子顕微鏡に供するため、乾燥状態のものである。SEM画像における切断面の骨格部を図3及び図4を参照して説明する。また、図4は、図3のSEM写真の断面として表れる骨格部を転写したものである。図3及び図4中、概ね不定形状で且つ断面で表れるものは本発明の「断面に表れる骨格部(符号12)」であり、図3に表れる円形の孔は開口(メソポア)であり、また、比較的大きな曲率や曲面のものはマクロポア(図4中の符号13)である。図4の断面に表れる骨格部面積は、矩形状画像領域11中、28%である。このように、骨格部は明確に判断できる。
SEM画像において、切断面の断面に表れる骨格部の面積の測定方法としては、特に制限されず、当該骨格部を公知のコンピューター処理などを行い特定した後、コンピューターなどによる自動計算又は手動計算による算出方法が挙げられる。手動計算としては、不定形状物を、四角形、三角形、円形又は台形などの集合物に置き換え、それらを積層して面積を求める方法が挙げられる。
また、第3のモノリスイオン交換体の乾燥状態での重量当りの全細孔容積は、0.5〜10ml/g、好ましくは0.8〜8ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過流体量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が10ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通液した際にモノリスイオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、反応液とモノリスイオン交換体およびそれに担持された白金族金属粒子との接触効率が低下するため、触媒効果も低下してしまうため好ましくない。
第3のモノリスイオン交換体において、骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、10モル%を越えると、イオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。
第3のモノリスイオン交換体の骨格を構成するポリマー材料の種類は、特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、イオン交換基を導入する場合は、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
第3のモノリスイオン交換体に導入されているイオン交換基は、第1のモノリスイオン交換体に導入されているイオン交換基と同様である。
第3のモノリスイオン交換体において、導入されたイオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。
第3のモノリスイオン交換体は、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が1〜6mg当量/gである。第3のモノリスイオン交換体は、開口径を更に大きくすると共に、連続マクロポア構造体の骨格を太くする(骨格の壁部を厚くする)ことができるため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのイオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が、上記範囲にあることにより、触媒内部のpHなど触媒活性点の周りの環境を変えることができ、これにより触媒活性が高くなる。第3のモノリスイオン交換体がモノリスアニオン交換体の場合は、第3のモノリスアニオン交換体には、アニオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのアニオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。また、第3のモノリスイオン交換体がモノリスカチオン交換体の場合は、第3のモノリスカチオン交換体には、カチオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのカチオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。
<第3のモノリス及び第3のモノリスイオン交換体の製造方法>
第3のモノリスは、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体(以下、モノリス中間体(3)とも記載する。)を得るI工程、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体(3)の存在下に重合を行い、モノリス中間体(3)の骨格より太い骨格を有する第3のモノリスを得るIII工程、を行うことにより得られる。
第3のモノリスの製造方法において、I工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行えばよい。
第3のモノリスの製造方法に係るI工程のモノリス中間体(3)の製造において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの好適なものとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%とすることが、イオン交換基を導入する場合に、イオン交換基量を定量的に導入できるため好ましい。
第3のモノリスの製造方法に係るI工程で用いられる界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は一種単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
また、第3のモノリスの製造方法に係るI工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
第3のモノリスの製造方法に係るI工程において、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
第3のモノリスの製造方法に係るI工程で得られるモノリス中間体(3)は、連続マクロポア構造を有する。これを重合系に共存させると、モノリス中間体(3)の構造を型として骨太の骨格を有する多孔構造が形成される。また、モノリス中間体(3)は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。特に、全細孔容積が10〜16ml/gと大きい場合には、連続マクロポア構造を維持するため、架橋構造単位を2モル%以上含有していることが好ましい。一方、10モル%を越えると、イオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。
第3のモノリスの製造方法に係るI工程において、モノリス中間体(3)のポリマー材料の種類としては、特に制限はなく、前述の第1のモノリスのポリマー材料と同じものが挙げられる。これにより、モノリス中間体(3)の骨格に同様のポリマーを形成して、骨格を太らせ均一な骨格構造の第3のモノリスを得ることができる。
第3のモノリスの製造方法に係るI工程で得られるモノリス中間体(3)の乾燥状態での重量当りの全細孔容積は、5〜16ml/g、好適には6〜16ml/gである。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの全細孔容積が小さくなりすぎ、流体透過時の圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が連続マクロポア構造から逸脱するため好ましくない。モノリス中間体(3)の全細孔容積を上記数値範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:5〜1:20とすればよい。
また、第3のモノリスの製造方法に係るI工程で得られるモノリス中間体(3)は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で20〜200μmである。乾燥状態での開口の平均直径が20μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、200μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、反応液とモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、触媒活性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体(3)は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
第3のモノリスの製造方法に係るII工程は、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
第3のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体(3)と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等の芳香族ビニルモノマーである。
第3のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられるビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体(3)に対して、重量で3〜50倍、好ましくは4〜40倍である。ビニルモノマー添加量がモノリス中間体に対して3倍未満であると、生成したモノリスの骨格(モノリス骨格の壁部の厚み)を太くできず、また、イオン交換基を導入する場合、導入後の体積当りのイオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、開口径が小さくなり、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
第3のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して0.3〜10モル%、特に0.3〜5モル%であることが好ましい。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくない。一方、10モル%を越えると、イオン交換基の導入量が減少してしまう場合があるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体(3)の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、イオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
第3のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱してビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が第3のモノリスの範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
第3のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる重合開始剤としては、熱又は光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
第3のモノリスの製造方法に係るIII工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体(3)の存在下に重合を行い、該モノリス中間体(3)の骨格より太い骨格を有する第3のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体(3)は、第3のモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っており、上記重合系に連続マクロポア構造のモノリス中間体(3)を存在させると、第3のモノリスが得られる。
第3のモノリスの製造方法において、反応容器の内容積は、モノリス中間体(3)を反応容器中に存在させる大きさのものであれば特に制限されず、反応容器内にモノリス中間体(3)を載置した際、平面視でモノリスの周りに隙間ができるもの、反応容器内にモノリス中間体(3)が隙間無く入るもののいずれであってもよい。このうち、重合後の骨太のモノリスが容器内壁から押圧を受けることなく、反応容器内に隙間無く入るものが、モノリスに歪が生じることもなく、反応原料などの無駄がなく効率的である。なお、反応容器の内容積が大きく、重合後のモノリスの周りに隙間が存在する場合であっても、ビニルモノマーや架橋剤は、モノリス中間体(3)に吸着、分配されるため、反応容器内の隙間部分に粒子凝集構造物が生成することはない。
第3のモノリスの製造方法に係るIII工程において、反応容器中、モノリス中間体(3)は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体(3)の配合比は、前述の如く、モノリス中間体(3)に対して、ビニルモノマーの添加量が重量で3〜50倍、好ましくは4〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な開口径を有しつつ、骨太の骨格を有する第3のモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中のビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体(3)の骨格内で重合が進行する。
第3のモノリスの製造方法に係るIII工程において、重合条件は、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件が選択される。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。加熱重合により、モノリス中間体(3)の骨格に吸着、分配したビニルモノマーと架橋剤が骨格内で重合し、骨格を太らせる。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出して第3のモノリスを得る。
第3のモノリスイオン交換体は、III工程で得られた骨太の有機多孔質体である第3のモノリスにイオン交換基を導入するIV工程、を行うことにより得られる。
第3のモノリスにイオン交換基を導入する方法は、第1のモノリスにイオン交換基を導入する方法と同様である。
第3のモノリス及び第3のモノリスイオン交換体は、開口径が格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。
<第4のモノリス及び第4のモノリスイオン交換体の説明>
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒において、白金族金属粒子の担体となる第4のモノリスイオン交換体は、全構成単位中、架橋構造単位を0.1〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが乾燥状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で10〜200μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、乾燥状態での全細孔容積が0.5〜10ml/gであり、イオン交換基を有しており、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が1〜6mg当量/gであり、イオン交換基が有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しているモノリスイオン交換体である。また、第4のモノリスは、イオン交換基が導入される前のモノリスであり、全構成単位中、架橋構造単位を0.1〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが乾燥状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で10〜200μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、乾燥状態での全細孔容積が0.5〜10ml/gである有機多孔質体である。
第4のモノリスイオン交換体は、平均太さが乾燥状態で1〜60μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で10〜200μm、好ましくは15〜180μm、特に好ましくは20〜150μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体である。図5には、第4のモノリスイオン交換体の形態例のSEM写真を示し、図6には、第4のモノリスイオン交換体の共連続構造の模式図を示す。共連続構造は図6の模式図に示すように、連続する骨格相1と連続する空孔相2とが絡み合ってそれぞれが共に3次元的に連続する構造10である。この連続した空孔2は、従来の連続気泡型モノリスや粒子凝集型モノリスに比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがない。また、骨格が太いため機械的強度が高い。
三次元的に連続した空孔の平均直径が乾燥状態で10μm未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、200μmを超えると、反応液とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、触媒活性が不十分となるため好ましくない。また、骨格の平均太さが乾燥状態で1μm未満であると、高流速で通液した際にモノリスイオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、反応液とモノリスイオン交換体との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくない。一方、骨格の太さが60μmを越えると、骨格が太くなり過ぎ、通液時の圧力損失が増大するため好ましくない。
乾燥状態の第4のモノリスの開口の平均直径、乾燥状態の第4のモノリスイオン交換体の開口の平均直径及び以下に述べる第4のモノリスの製造のI工程で得られる、乾燥状態の第4のモノリス中間体(4)の開口の平均直径は、水銀圧入法により得られる細孔分布曲線の極大値を指す。また、第4のモノリスイオン交換体の骨格の乾燥状態での平均太さは、乾燥状態の第4のモノリスイオン交換体のSEM観察により求められる。具体的には、乾燥状態の第4のモノリスイオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、それらの平均値を平均太さとする。なお、骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
また、第4のモノリスイオン交換体の乾燥状態での重量当りの全細孔容積は、0.5〜10ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過液量が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が10ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通液した際にモノリスイオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、反応液とモノリスイオン交換体との接触効率が低下するため、触媒効率も低下してしまうため好ましくない。三次元的に連続した空孔の大きさ及び全細孔容積が上記範囲にあれば、反応液との接触が極めて均一で接触面積も大きく、かつ低圧力損失下での通液が可能となる。
第4のモノリスイオン交換体において、骨格を構成する材料は、全構成単位中、0.1〜5モル%、好ましくは0.5〜3.0モル%の架橋構造単位を含んでいる芳香族ビニルポリマーであり疎水性である。架橋構造単位が0.1モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、多孔質体の構造が共連続構造から逸脱しやすくなる。芳香族ビニルポリマーの種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、共連続構造形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
第4のモノリスイオン交換体に導入されているイオン交換基は、第1のモノリスイオン交換体に導入されているイオン交換基と同様である。
第4のモノリスイオン交換体において、導入されたイオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。
第4のモノリスイオン交換体は、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が1〜6mg当量/gのイオン交換容量を有する。第4のモノリスイオン交換体は、三次元的に連続した空孔の連続性や均一性が高いため、全細孔容積を低下させても圧力損失はさほど増加しない。そのため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのイオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。重量当りのイオン交換容量が上記範囲にあることにより、触媒内部のpHなど触媒活性点の周りの環境を変えることができ、これにより触媒活性が高くなる。第4のモノリスイオン交換体がモノリスアニオン交換体の場合は、第4のモノリスアニオン交換体には、アニオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのアニオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。また、第4のモノリスイオン交換体がモノリスカチオン交換体の場合は、第4のモノリスカチオン交換体には、カチオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのカチオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。
<第4のモノリス及び第4のモノリスイニオン交換体の製造方法>
第4のモノリスは、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が16ml/gを超え、30ml/g以下の連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体(以下、モノリス中間体(4)とも記載する。)を得るI工程、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つI工程で得られたモノリス中間体(4)の存在下に重合を行い、共連続構造体である有機多孔質体である第4のモノリスを得るIII工程、を行うことにより得られる。
第4のモノリスの製造方法に係るI工程において、モノリス中間体(4)を得るI工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行えばよい。
すなわち、第4のモノリスの製造方法に係るI工程において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、三級アミノ基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーの中で、好適なものとしては、芳香族ビニルモノマーであり、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%とすることが、共連続構造の形成に有利となるため好ましい。
第4のモノリスの製造方法に係るI工程で用いられる界面活性剤は、第3のモノリスの製造方法に係るI工程で用いられる界面活性剤と同様であり、その説明を省略する。
また、第4のモノリスの製造方法に係るI工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱又は光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
第4のモノリスの製造方法に係るI工程において、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、第3のモノリスの製造方法に係るI工程における混合方法と同様であり、その説明を省略する。
第4のモノリスの製造方法に係るI工程で得られるモノリス中間体(4)は、架橋構造を有する有機ポリマー材料、好適には芳香族ビニルポリマーである。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.1〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。一方、5モル%を超えると、モノリスの構造が共連続構造を逸脱し易くなるため好ましくない。特に、全細孔容積が16〜20ml/gの場合には、共連続構造を形成させるため、架橋構造単位は3モル%未満とすることが好ましい。
第4のモノリスの製造方法に係るI工程において、モノリス中間体(4)のポリマー材料の種類は、第3のモノリスの製造方法に係るモノリス中間体(4)のポリマー材料の種類と同様であり、その説明を省略する。
第4のモノリスの製造方法に係るI工程で得られるモノリス中間体(4)の乾燥状態での重量当りの全細孔容積は、16ml/gを超え、30ml/g以下、好適には16ml/gを超え、25ml/g以下である。すなわち、このモノリス中間体(4)は、基本的には連続マクロポア構造ではあるが、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)が格段に大きいため、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に限りなく近い構造を有している。図7には、モノリス中間体(4)の形態例のSEM写真を示すが、棒状に近い骨格を有している。これを重合系に共存させると、モノリス中間体(4)の構造を型として共連続構造の多孔質体が形成される。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が共連続構造から連続マクロポア構造に変化してしまうため好ましくなく、一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの機械的強度が低下したり、イオン交換基を導入する場合は、体積当たりのイオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体(4)の全細孔容積を上記範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:20〜1:40とすればよい。
また、第4のモノリスの製造方法に係るI工程で得られるモノリス中間体(4)は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で5〜100μmである。開口の平均直径が乾燥状態で5μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、100μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、反応液とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、触媒活性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体(4)は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
第4のモノリスの製造方法に係るII工程は、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
第4のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性の芳香族ビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体(4)と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好適に用いられる芳香族ビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等である。
第4のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる芳香族ビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体(4)に対して、重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍である。芳香族ビニルモノマー添加量がモノリス中間体(4)に対して5倍未満であると、棒状骨格を太くできず、また、イオン交換基を導入する場合、イオン交換基導入後の体積当りのイオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、連続空孔の径が小さくなり、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
第4のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量(全油溶性モノマー)に対して0.3〜5モル%、特に0.3〜3モル%である。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、多過ぎると、イオン交換基を導入する場合、イオン交換基の定量的導入が困難になる場合があるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体(4)の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、また、イオン交換基を導入する場合、イオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
第4のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、芳香族ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記芳香族ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱して芳香族ビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が第4のモノリスの範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
第4のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる重合開始剤は、第3のモノリスの製造方法に係るII工程で用いる重合開始剤と同様であり、その説明を省略する。
第4のモノリスの製造方法に係るIII工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体(4)の存在下に重合を行い、該モノリス中間体(4)の連続マクロポア構造を共連続構造に変化させ、共連続構造モノリスである第4のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体(4)は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体(4)不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、第4のモノリスのように上記重合系に特定の連続マクロポア構造のモノリス中間体(4)を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の共連続構造を持つ第4のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体(4)が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に全細孔容積が大きな多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行し、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に変化して共連続構造を有する第4のモノリスが形成されると考えられる。
第4のモノリスの製造方法において、反応容器の内容積は、第3のモノリスの製造方法に係る反応容器の内容積の説明と同様であり、その説明を省略する。
第4のモノリスの製造方法に係るIII工程において、反応容器中、モノリス中間体(4)は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体(4)の配合比は、前述の如く、モノリス中間体(4)に対して、芳香族ビニルモノマーの添加量が重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な大きさの空孔が三次元的に連続し、且つ骨太の骨格が3次元的に連続する共連続構造の第4のモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中の芳香族ビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体(4)の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体(4)の骨格内で重合が進行する。
第4のモノリスの製造方法に係るIII工程の重合条件は、第3のモノリスの製造方法に係るIII工程の重合条件の説明と同様であり、その説明を省略する。III工程を行うことにより、第4のモノリスが得られる。
第4のモノリスイオン交換体は、III工程で得られた第4のモノリスにイオン交換基を導入するIV工程を行うことにより得られる。
第4のモノリスにイオン交換基を導入する方法は、第1のモノリスにイオン交換基を導入する方法と同様である。
第4のモノリス及び第4のモノリスイオン交換体は、3次元的に連続する空孔の大きさが格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。また、第4のモノリスイオン交換体は、骨格が太いため、乾燥状態での体積当りのイオン交換容量を大きくでき、更に、反応液を低圧、大流量で長期間通液することが可能である。
<第5のモノリス及び第5のモノリスイオン交換体の説明>
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒において、白金族金属粒子の担体となる第5のモノリスイオン交換体は、連続骨格相と連続空孔相からなる有機多孔質体と、該有機多孔質体の骨格表面に固着する乾燥状態で直径4〜40μmの多数の粒子体又は該有機多孔質体の骨格表面上に形成される大きさが乾燥状態で4〜40μmの多数の突起体との複合構造体であって、乾燥状態での孔の平均直径が10〜200μm、乾燥状態での全細孔容積が0.5〜10ml/gであり、イオン交換基を有しており、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が1〜6mg当量/gであり、イオン交換基が有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しているモノリスイオン交換体である。また、第5のモノリスは、イオン交換基が導入される前のモノリスであり、連続骨格相と連続空孔相からなる有機多孔質体と、該有機多孔質体の骨格表面に固着する乾燥状態で直径4〜40μmの多数の粒子体又は該有機多孔質体の骨格表面上に形成される大きさが乾燥状態で4〜40μmの多数の突起体との複合構造体であって、乾燥状態での孔の平均直径が10〜200μm、乾燥状態での全細孔容積が0.5〜10ml/gである有機多孔質体である。
第5のモノリスイオン交換体は、連続骨格相と連続空孔相からなる有機多孔質体と、該有機多孔質体の骨格表面に固着する乾燥状態で直径4〜40μmの多数の粒子体又は該有機多孔質体の骨格表面上に形成される大きさが乾燥状態で4〜40μmの多数の突起体との複合構造体である。なお、本明細書中、「粒子体」及び「突起体」を併せて「粒子体等」と言うことがある。
第5のモノリスイオン交換体の連続骨格相と連続空孔相は、SEM画像により観察される。第5のモノリスイオン交換体の基本構造としては、連続マクロポア構造及び共連続構造が挙げられる。第5のモノリスイオン交換体の骨格相は、柱状の連続体、凹状の壁面の連続体あるいはこれらの複合体として表れるもので、粒子状や突起状とは明らかに相違する形状のものである。
第5のモノリスイオン交換体の好ましい構造としては、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が乾燥状態で平均直径10〜120μmの開口となる連続マクロポア構造体(以下、「第5−1のモノリスイオン交換体」とも言う。)、及び乾燥状態で平均太さが0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に乾燥状態で平均直径が8〜80μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体(以下、「第5−2のモノリスイオン交換体」とも言う。)が挙げられる。また、第5のモノリスとしては、第5−1のモノリスイオン交換体において、イオン交換基が導入される前のモノリス(以下、「第5−1のモノリス」とも言う。)、及び第5−2のモノリスイオン交換体において、イオン交換基が導入される前のモノリス(以下、「第5−2のモノリス」とも言う。)が好ましい。
第5−1のモノリスイオン交換体の場合、第5−1のモノリスイオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が乾燥状態で平均直径20〜150μm、好ましくは30〜150μm、特に好ましくは35〜150μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体であり、該マクロポアと該開口(メソポア)で形成される気泡内が流路となる。連続マクロポア構造は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。第5−1のモノリスイオン交換体の乾燥状態での開口の平均直径が20μm未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、また、乾燥状態での開口の平均直径が150μmを超えると、反応液とモノリスイオン交換体および担持された白金族金属粒子との接触が不十分となり、その結果、触媒活性が低下してしまうため好ましくない。
なお、乾燥状態の第5のモノリスの開口の平均直径、乾燥状態の第5のモノリスイオン交換体の開口の平均直径及び以下に述べる第5のモノリスの製造のI工程で得られる、乾燥状態のモノリス中間体(5)の開口の平均直径は、水銀圧入法により得られる細孔分布曲線の極大値を指す。
第5−2のモノリスイオン交換体の場合、第5−2のモノリスイオン交換体は、乾燥状態で平均太さが1〜50μm、好ましくは5〜50μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に乾燥状態での平均直径が10〜100μm、好ましくは10〜90μmの三次元的に連続した空孔を有する共連続構造である。第5−2のモノリスイオン交換体の三次元的に連続した空孔の乾燥状態での平均直径が10μm未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、また、100μmを超えると、反応液とモノリスイオン交換体および担持された白金族金属粒子との接触が不十分となり、その結果、触媒活性が低下してしまうため好ましくない。また、第5−2のモノリスイオン交換体の骨格の平均太さが乾燥状態で1μm未満であると、機械的強度が低下して、特に高流速で通液した際にモノリスイオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。一方、第5−2のモノリスイオン交換体の骨格の平均太さが乾燥状態で50μmを越えると、骨格が太くなり過ぎ、通液時の圧力損失が増大するため好ましくない。
また、第5−2のモノリスイオン交換体の骨格の乾燥状態での平均太さは、乾燥状態の第5−2のモノリスイオン交換体のSEM観察により求められる。具体的には、乾燥状態の第5−2のモノリスイオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、それらの平均値を平均太さとする。なお、骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
第5のモノリスイオン交換体の孔の乾燥状態での平均直径は、10〜200μmである。第5−1のモノリスイオン交換体の場合、第5−1のモノリスイオン交換体の乾燥状態での孔径の好ましい値は30〜150μmであり、また、第5−2のモノリスイオン交換体の場合、第5−2のモノリスイオン交換体の乾燥状態での孔径の好ましい値は10〜90μmである。
第5のモノリスイオン交換体において、乾燥状態での粒子体の直径及び突起体の大きさは、4〜40μm、好ましくは4〜30μm、特に好ましくは4〜20μmである。なお、本発明において、粒子体及び突起体は、共に骨格表面に突起状に観察されるものであり、粒状に観察されるものを粒子体と称し、粒状とは言えない突起状のものを突起体と称する。図8に、突起体の模式的な断面図を示す。図8中の(A)〜(E)に示すように、骨格表面21から突き出している突起状のものが突起体22であり、突起体22には、(A)に示す突起体22aのように粒状に近い形状のもの、(B)に示す突起体22bのように半球状のもの、(C)に示す突起体22cのように骨格表面の盛り上がりのようなもの等が挙げられる。また、他には、突起体22には、(D)に示す突起体22dのように、骨格表面21の平面方向よりも、骨格表面21に対して垂直方向の方が長い形状のものや、(E)に示す突起体22eのように、複数の方向に突起した形状のものもある。また、突起体の大きさは、SEM観察したときのSEM画像で判断され、個々の突起体のSEM画像での幅が最も大きくなる部分の長さを指す。また、図9に、第5のモノリスイオン交換体の形態例のSEM写真を示すが、有機多孔質体の骨格表面に多数の突起体が形成されている。
第5のモノリスイオン交換体において、全粒子体等中、乾燥状態で4〜40μmの粒子体等が占める割合は70%以上、好ましくは80%以上である。なお、全粒子体等中の乾燥状態で4〜40μmの粒子体等が占める割合は、全粒子体等の個数に占める乾燥状態で4〜40μmの粒子体等の個数割合を指す。また、骨格相の表面は全粒子体等により40%以上、好ましくは50%以上被覆されている。なお、全粒子体等による骨格層の表面の被覆割合は、SEMにより表面観察にしたときのSEM画像上の面積割合、つまり、表面を平面視したときの面積割合を指す。壁面や骨格を被覆している粒子の大きさが上記範囲を逸脱すると、流体とモノリスイオン交換体の骨格表面及び骨格内部との接触効率を改善する効果が小さくなり易い。なお、全粒子体等とは、乾燥状態で4〜40μmの粒子体等以外の大きさの範囲の粒子体及び突起体も全て含めた、骨格層の表面に形成されている全ての粒子体及び突起体を指す。
第5のモノリスイオン交換体の骨格表面に付着した粒子体等の乾燥状態での直径又は大きさは、乾燥状態の第5のモノリスイオン交換体のSEM画像の観察により得られる粒子体等の直径又は大きさである。そして、乾燥状態の第5のモノリスイオン交換体のSEM画像中に観察される全ての粒子体等の直径又は大きさを測定して、その値を基に、1視野のSEM画像中の全粒子体等の乾燥状態での直径又は大きさを算出する。この乾燥状態の第5のモノリスイオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、全視野において、SEM画像中の全粒子体等の乾燥状態での直径又は大きさを算出して、直径又は大きさが4〜40μmにある粒子体等が観察されるか否かを確認し、全視野において確認された場合、第5のモノリスイオン交換体の骨格表面上に、直径又は大きさが乾燥状態で4〜40μmにある粒子体等が形成されていると判断する。また、上記に従って1視野毎にSEM画像中の全粒子体等の乾燥状態での直径又は大きさを算出し、各視野毎に、全粒子体等に占める乾燥状態で4〜40μmの粒子体等の割合を求め、全視野において、全粒子体等中の乾燥状態で4〜40μmの粒子体等が占める割合が70%以上であった場合には、第5のモノリスイオン交換体の骨格表面に形成されている全粒子体等中、乾燥状態で4〜40μmの粒子体等が占める割合は70%以上であると判断する。また、上記に従って1視野毎にSEM画像中の全粒子体等による骨格層の表面の被覆割合を求め、全視野において、全粒子体等による骨格層の表面の被覆割合が40%以上であった場合には、第5のモノリスイオン交換体の骨格層の表面が全粒子体等により被覆されている割合が40%以上であると判断する。
第5のモノリスイオン交換体において、粒子体等による骨格相表面の被覆率が40%未満であると、反応液とモノリスイオン交換体の骨格内部及び骨格表面との接触効率を改善する効果が小さくなり易い。上記粒子体等による被覆率の測定方法としては、第5のモノリスイオン交換体のSEM画像による画像解析方法が挙げられる。
第5のモノリスイオン交換体の乾燥状態での重量当たりの全細孔容積は、0.5〜10ml/g、好ましくは0.8〜8ml/gである。モノリスイオン交換体の全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過流体量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、モノリスイオン交換体の全細孔容積が10ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通液した際にモノリスイオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、反応液とモノリスイオン交換体およびそれに担持された白金族金属粒子との接触効率が低下するため、触媒効果も低下してしまうため好ましくない。
第5のモノリスイオン交換体において、連続空孔構造の骨格相を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、10モル%を越えると、イオン交換基を導入する場合、イオン交換基の導入が困難となり、導入量が減少してしまう場合があるため好ましくない。
第5のモノリスの製造で用いられるポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続空孔構造形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸及びアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
第5のモノリスイオン交換体において、有機多孔質体の骨格相を構成する材料と骨格相の表面に形成される粒子体等とは、同じ組織が連続した同一材料のもの、同じではない組織が連続する互いが異なる材料のものなどが挙げられる。同じではない組織が連続する互いが異なる材料のものとしては、ビニルモノマーの種類が互いに異なる材料の場合、ビニルモノマーや架橋剤の種類は同じであっても互いの配合割合が異なる材料の場合などが挙げられる。
第5のモノリスイオン交換体に導入されているイオン交換基は、第1のモノリスイオン交換体に導入されているイオン交換基と同様である。
第5のモノリスイオン交換体において、導入されたイオン交換基は、有機多孔質体の表面のみならず、有機多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。イオン交換基が、第5のモノリスイオン交換体の表面のみならず、骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
第5のモノリスイオン交換体は、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が1〜6mg当量/g、好ましくは2〜5mg当量/gのイオン交換容量を有する。第5のモノリスイオン交換体の重量当りのイオン交換容量が上記範囲にあることにより、触媒内部のpHなど触媒活性点の周りの環境を変えることができ、これにより触媒活性が高くなる。第5のモノリスイオン交換体がモノリスアニオン交換体の場合は、第5のモノリスアニオン交換体には、アニオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのアニオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。また、第5のモノリスイオン交換体がモノリスカチオン交換体の場合は、第5のモノリスカチオン交換体には、カチオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのカチオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。
第5のモノリスイオン交換体は、その厚みは1mm以上であり、膜状の多孔質体とは区別される。厚みが1mm未満であると、多孔質体1つ当たりのイオン交換容量が極端に低くなるため好ましくない。第5のモノリスイオン交換体の厚みは、好ましくは3〜1000mmである。また、第5のモノリスイオン交換体は、骨格の基本構造が連続空孔構造であるため、機械的強度が高い。
<第5のモノリス及び第5のモノリスイオン交換体の製造方法>
第5のモノリスは、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルションを調製し、次いで油中水滴型エマルションを重合させて全細孔容積が5〜30ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体(以下、モノリス中間体(5)とも記載する。)を得るI工程、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体(5)の存在下に重合を行い、複合構造を有する複合モノリスである第5のモノリスを得るIII工程、を行うことにより得られる。
第5のモノリスの製造方法に係るI工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
第5のモノリスの製造方法に係るI工程のモノリス中間体(5)の製造において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、三級アミノ基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの好適なものとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%とすることが、後の工程でイオン交換基を導入する場合、イオン交換基量を定量的に導入できるため好ましい。
第5のモノリスの製造方法に係るI工程で用いられる界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルションを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は一種単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルションとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルションを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルション粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
また、第5のモノリスの製造方法に係るI工程では、油中水滴型エマルション形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱又は光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
第5のモノリスの製造方法に係るI工程において、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤を混合し、油中水滴型エマルションを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルションを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルション粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルション粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
第5のモノリスの製造方法に係るI工程で得られるモノリス中間体(5)は、連続マクロポア構造を有する。これを重合系に共存させると、そのモノリス中間体(5)の構造を鋳型として連続マクロポア構造の骨格相の表面に粒子体等が形成したり、共連続構造の骨格相の表面に粒子体等が形成したりする。また、モノリス中間体(5)は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。一方、10モル%を越えると、多孔質体の柔軟性が失われたり、また、イオン交換基を導入する場合、イオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。
第5のモノリスの製造方法に係るI工程において、モノリス中間体(5)のポリマー材料の種類としては、特に制限はなく、前述の第5のモノリスのポリマー材料と同じものが挙げられる。これにより、モノリス中間体(5)の骨格に同様のポリマーを形成して、複合構造のモノリスである第5のモノリスを得ることができる。
第5のモノリスの製造方法に係るI工程で得られるモノリス中間体(5)の乾燥状態での重量当たりの全細孔容積は、5〜30ml/g、好適には6〜28ml/gである。モノリス中間体の全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの全細孔容積が小さくなりすぎ、流体透過時の圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、モノリス中間体の全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が不均一になりやすく、場合によっては構造崩壊を引き起こすため好ましくない。モノリス中間体(5)の全細孔容積を上記数値範囲とするには、モノマーと水の比(重量)を、概ね1:5〜1:35とすればよい。
第5のモノリスの製造方法に係るI工程において、このモノマーと水との比を、概ね1:5〜1:20とすれば、モノリス中間体(5)の全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のものが得られ、III工程を経て得られるモノリスは第5−1のモノリスとなる。また、配合比率を、概ね1:20〜1:35とすれば、モノリス中間体(5)の全細孔容積が16ml/gを超え、30ml/g以下の連続マクロポア構造のものが得られ、III工程を経て得られるモノリスは第5−2のモノリスとなる。
また、第5のモノリスの製造方法に係るI工程で得られるモノリス中間体(5)は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の乾燥状態での平均直径が20〜200μmである。モノリス中間体の乾燥状態での開口の平均直径が20μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、モノリス中間体の乾燥状態での開口の平均直径が200μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなり過ぎ、反応液とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、触媒活性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体(5)は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
第5のモノリスの製造方法に係るII工程は、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する第2架橋剤、ビニルモノマーや第2架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
第5のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のビニルモノマーであれば、特に制限はない。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等の芳香族ビニルモノマーである。
第5のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられるビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体(5)に対して、重量で3〜50倍、好ましくは4〜40倍である。ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して3倍未満であると、生成したモノリスの骨格に粒子体等を形成できず、また、イオン交換基を導入する場合、イオン交換基導入後の体積当りのイオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、開口径が小さくなり、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
第5のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤の使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して0.3〜20モル%、特に0.3〜10モル%であることが好ましい。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくない。一方、20モル%を越えると、モノリスの脆化が進行して柔軟性が失われる、また、イオン交換基を導入する場合、イオン交換基の導入量が減少してしまう場合があるため好ましくない。
第5のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記ビニルモノマーの濃度が5〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱してビニルモノマー濃度が5重量%未満となると、重合速度が低下してしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
第5のモノリスの製造方法に係るII工程で用いられる重合開始剤としては、熱又は光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
第5のモノリスの製造方法に係るIII工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つI工程で得られたモノリス中間体(5)の存在下、重合を行い、第5のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体(5)は、第5のモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体(5)不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明のように上記重合系に連続マクロポア構造のモノリス中間体(5)を存在させると、重合後の複合モノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造ではなく、上述の特定の骨格構造を有する第5のモノリスが得られる。反応容器の内容積は、モノリス中間体(5)を反応容器中に存在させる大きさのものであれば特に制限されず、反応容器内にモノリス中間体(5)を載置した際、平面視でモノリスの周りに隙間ができるもの、反応容器内にモノリス中間体(5)が隙間無く入るもののいずれであってもよい。このうち、重合後の第5のモノリスが容器内壁から押圧を受けることなく、反応容器内に隙間無く入るものが、第5のモノリスに歪が生じることもなく、反応原料などの無駄がなく効率的である。なお、反応容器の内容積が大きく、重合後の第5のモノリスの周りに隙間が存在する場合であっても、ビニルモノマーや架橋剤は、モノリス中間体(5)に吸着、分配されるため、反応容器内の隙間部分に粒子凝集構造物が生成することはない。
第5のモノリスの製造方法に係るIII工程において、反応容器中、モノリス中間体(5)は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体(5)の配合比は、前述の如く、モノリス中間体(5)に対して、ビニルモノマーの添加量が重量で3〜50倍、好ましくは4〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な開口径を有しつつ、特定の骨格を有する複合モノリスである第5のモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中のビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体(5)の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体(5)の骨格内で重合が進行する。
第5のモノリスの製造方法に係るIII工程において、重合条件は、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件が選択できる。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、20〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。加熱重合により、モノリス中間体(5)の骨格に吸着、分配したビニルモノマーと架橋剤が該骨格内で重合し、該特定の骨格構造を形成させる。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出して特定骨格構造の複合モノリスである第5のモノリスを得る。
上述の第5のモノリスを製造する際に、下記(1)〜(5)の条件のうち、少なくとも一つを満たす条件下でII工程又はIII工程行うと、第5モノリスの特徴的な構造である、骨格表面に粒子体等が形成されたモノリスを製造することができる。
(1)III工程における重合温度が、重合開始剤の10時間半減温度より、少なくとも5℃低い温度である。
(2)II工程で用いる架橋剤のモル%が、I工程で用いる架橋剤のモル%の2倍以上である。
(3)II工程で用いるビニルモノマーが、I工程で用いた油溶性モノマーとは異なる構造のビニルモノマーである。
(4)II工程で用いる有機溶媒が、分子量200以上のポリエーテルである。
(5)II工程で用いるビニルモノマーの濃度が、II工程の混合物中、30重量%以下である。
(上記(1)の説明)
10時間半減温度は重合開始剤の特性値であり、使用する重合開始剤が決まれば10時間半減温度を知ることができる。また、所望の10時間半減温度があれば、それに該当する重合開始剤を選択することができる。III工程において、重合温度を低下させることで、重合速度が低下し、骨格相の表面に粒子体等を形成させることができる。その理由は、モノリス中間体の骨格相の内部でのモノマー濃度低下が緩やかとなり、液相部からモノリス中間体へのモノマー分配速度が低下するため、余剰のモノマーがモノリス中間体の骨格層の表面近傍で濃縮され、その場で重合したためと考えられる。
第5のモノリスの製造方法に係るIII工程において、好ましい重合温度は、用いる重合開始剤の10時間半減温度より少なくとも10℃低い温度である。重合温度の下限値は特に限定されないが、温度が低下するほど重合速度が低下し、重合時間が実用上許容できないほど長くなってしまうため、重合温度を10時間半減温度に対して5〜20℃低い範囲に設定することが好ましい。
(上記(2)の説明)
第5のモノリスの製造方法に係るII工程で用いる架橋剤のモル%を、I工程で用いる架橋剤のモル%の2倍以上に設定して重合すると、複合構造を有するモノリスが得られる。その理由は、モノリス中間体と含浸重合によって生成したポリマーとの相溶性が低下し相分離が進行するため、含浸重合によって生成したポリマーはモノリス中間体の骨格相の表面近傍に排除され、骨格相表面に粒子体等の凹凸を形成したものと考えられる。なお、架橋剤のモル%は、架橋密度モル%であって、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する架橋剤量(モル%)を言う。
第5のモノリスの製造方法に係るII工程で用いる架橋剤モル%の上限は特に制限されないが、架橋剤モル%が著しく大きくなると、重合後のモノリスにクラックが発生する、モノリスの脆化が進行して柔軟性が失われる、また、イオン交換基を導入する場合、イオン交換基の導入量が減少してしまう場合があるといった問題点が生じるため好ましくない。好ましい架橋剤モル%の倍数は2倍〜10倍である。一方、I工程で用いる架橋剤モル%をII工程で用いられる架橋剤モル%に対して2倍以上に設定しても、骨格相表面への粒子体等の形成は起こらず、第5のモノリスは得られなかった。
(上記(3)の説明)
第5のモノリスの製造方法に係るII工程で用いるビニルモノマーが、I工程で用いた油溶性モノマーとは異なる構造のビニルモノマーであると、第5のモノリスが得られる。例えば、スチレンとビニルベンジルクロライドのように、ビニルモノマーの構造が僅かでも異なると、骨格相表面に粒子体等が形成された複合モノリスが生成する。一般に、僅かでも構造が異なる二種類のモノマーから得られる二種類のホモポリマーは互いに相溶しない。したがって、I工程で用いたモノリス中間体形成に用いたモノマーとは異なる構造のモノマーをII工程で用いてIII工程で重合を行うと、II工程で用いたモノマーはモノリス中間体に均一に分配や含浸がされるものの、重合が進行してポリマーが生成すると、生成したポリマーはモノリス中間体とは相溶しないため、相分離が進行し、生成したポリマーはモノリス中間体の骨格相の表面近傍に排除され、骨格相の表面に粒子体等の凹凸を形成したものと考えられる。
(上記(4)の説明)
第5のモノリスの製造方法に係るII工程で用いる有機溶媒が、分子量200以上のポリエーテルであると、第5のモノリスが得られる。ポリエーテルはモノリス中間体との親和性が比較的高く、特に低分子量の環状ポリエーテルはポリスチレンの良溶媒、低分子量の鎖状ポリエーテルは良溶媒ではないがかなりの親和性を有している。しかし、ポリエーテルの分子量が大きくなると、モノリス中間体との親和性は劇的に低下し、モノリス中間体とほとんど親和性を示さなくなる。このような親和性に乏しい溶媒を有機溶媒に用いると、モノマーのモノリス中間体の骨格内部への拡散が阻害され、その結果、モノマーはモノリス中間体の骨格の表面近傍のみで重合するため、骨格相表面に粒子体等が形成され骨格表面に凹凸を形成したものと考えられる。
第5のモノリスの製造方法に係るII工程で用いるポリエーテルの分子量は、200以上であれば上限に特に制約はないが、あまりに高分子量であると、II工程で調製される混合物の粘度が高くなり、モノリス中間体内部への含浸が困難になるため好ましくない。好ましいポリエーテルの分子量は200〜100000、特に好ましくは200〜10000である。また、ポリエーテルの末端構造は、未修飾の水酸基であっても、メチル基やエチル基等のアルキル基でエーテル化されていてもよいし、酢酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸等でエステル化されていてもよい。
(上記(5)の説明)
第5のモノリスの製造方法に係るII工程で用いるビニルモノマーの濃度が、II工程中の混合物中、30重量%以下であると、第5のモノリスが得られる。II工程でモノマー濃度を低下させることで、重合速度が低下し、前記(1)と同様の理由で、骨格相表面に粒子体等が形成でき、骨格相表面に凹凸を形成されることができる。モノマー濃度の下限値は特に限定されないが、モノマー濃度が低下するほど重合速度が低下し、重合時間が実用上許容できないほど長くなってしまうため、モノマー濃度は10〜30重量%に設定することが好ましい。
このようにして得られる第5のモノリスの好ましい構造としては、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が乾燥状態で平均直径10〜120μmの開口となる連続マクロポア構造体(「第5−1のモノリス」)及び乾燥状態での平均太さが0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に乾燥状態での直径が8〜80μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体(「第5−2のモノリス」)が挙げられる。
第5のモノリスが第5−1のモノリスの場合、第5−1のモノリスは、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が乾燥状態で平均直径10〜120μm、好ましくは20〜120μm、特に好ましくは25〜120μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体であり、マクロポアと該開口(メソポア)で形成される気泡内が流路となる。連続マクロポア構造は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。第5−1のモノリスの乾燥状態での開口の平均直径が10μm未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、また、乾燥状態での開口の平均直径が120μmを超えると、反応液とモノリスイオン交換体および担持された白金族金属粒子との接触が不十分となり、その結果、触媒活性が低下してしまうため好ましくない。
第5−2のモノリスの場合、第5−2のモノリスは、乾燥状態での平均太さが0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に乾燥状態での平均直径が8〜80μmの三次元的に連続した空孔を有する共連続構造である。第5−2のモノリスの三次元的に連続した空孔の乾燥状態での平均直径が8μm未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、また、80μmを超えると、反応液とモノリス又はモノリスイオン交換体および担持された白金族金属粒子との接触が不十分となり、その結果、触媒活性が低下してしまうため好ましくない。また、第5−2のモノリスの骨格の乾燥状態での平均太さが0.8μm未満であると、イオン交換基を導入する場合、モノリスイオン交換体の体積当りのイオン交換容量が低下するといった欠点のほか、機械的強度が低下して、特に高流速で通液した際にモノリス又はモノリスイオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。一方、骨格の乾燥状態での平均太さが80μmを越えると、通液時の圧力損失が増大するため好ましくない。
第5のモノリスイオン交換体は、III工程で得られた第5のモノリスにイオン交換基を導入するIV工程、を行うことにより得られる。
第5のモノリスにイオン交換基を導入する方法は、第1のモノリスにイオン交換基を導入する方法と同様である。
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒は、連続骨格相と連続空孔相からなり、連続骨格の厚みは1〜100μm、連続空孔の平均直径は1〜1000μm、全細孔容積は0.5〜50ml/gであり、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量は1〜6mg当量/gであり、イオン交換基が該有機多孔質イオン交換体中に均一に分布している上記非粒子状有機多孔質イオン交換体(上記モノリス状有機多孔質イオン交換体)に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属粒子が、担持されている白金族金属担持接触水素化還元触媒であり、該白金族金属粒子の担持量が、乾燥状態で0.004〜20重量%である。
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒は、上記モノリス状有機多孔質イオン交換体、例えば、第1のモノリスイオン交換体〜第5のモノリスイオン交換体のいずれかに、平均粒子径が1〜100nmの白金族金属粒子が担持された白金族金属担持触媒である。
白金族金属とは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金である。これらの白金族金属は、一種類を単独で用いても、二種類以上の金属を組み合わせて用いても良く、更に、二種類以上の金属を合金として用いても良い。これらの中で、白金、パラジウム、白金/パラジウム合金は触媒活性が高く、好適に用いられる。
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒に担持されている白金族金属粒子の平均粒子径は、1〜100nmであり、好ましくは1〜50nm、更に好ましくは1〜20nmである。平均粒子径が1nm未満であると、白金族金属粒子が担体から脱離する可能性が高くなるため好ましくなく、一方、平均粒子径が100nmを超えると、金属の単位質量当たりの表面積が少なくなり触媒効果が効率的に得られなくなるため好ましくない。なお、本発明において、白金族金属粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)分析により得られるTEM画像を、画像解析することにより求められる。具体的には、先ず、白金族金属担持触媒の表面を、TEM分析する。次いで、得られたTEM画像において、粒子数が200個以上となる一視野を任意に選択し、その視野のTEM画像を画像解析して、視野中の全粒子の粒子径を測定する。なお、一視野に担持されている白金族金属粒子の数が200個に満たない場合は、2以上の視野を任意に選択して、選択した2以上の視野中の全粒子について、粒子径の測定を行う。次いで、白金族金属粒子の平均粒子径を、次式「白金族金属粒子の平均粒子径(nm)=測定した全粒子の粒子径の合計(nm)/測定した粒子の個数(個)」にて算出する。
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒中の白金族金属粒子の担持量((白金族金属粒子/乾燥状態の白金族金属担持触媒)×100)は、0.004〜20重量%、好ましくは0.005〜15重量%である。白金族金属粒子の担持量が0.004重量%未満であると、触媒活性が不十分になるため好ましくない。一方、白金族金属粒子の担時量が20重量%を超えると、水中への金属溶出が認められるようになるため好ましくない。
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒は、不均一系触媒の存在下、反応基質と水素源とを接触させることにより、反応基質の接触水素化還元を行う接触水素化還元反応において、該不均一系触媒として用いられる。なお、反応基質及び水素源については、後述する通りである。
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒の製造方法には特に制約はなく、公知の方法により、モノリスイオン交換体に、白金族金属のナノ粒子を担持させることにより、白金族金属担持接触水素化還元触媒が得られる。例えば、乾燥状態のモノリスイオン交換体を酢酸パラジウム等の白金族金属化合物のメタノール溶液に浸漬し、パラジウムイオンをイオン交換によりモノリスイオン交換体に吸着させ、次いで、還元剤と接触させてパラジウム金属ナノ粒子をモノリスイオン交換体に担持する方法や、モノリスイオン交換体をテトラアンミンパラジウム錯体等の白金族金属化合物の水溶液に浸漬し、パラジウムイオンをイオン交換によりモノリスイオン交換体に吸着させ、次いで、還元剤と接触させてパラジウム金属ナノ粒子をモノリスイオン交換体に担持する方法等が挙げられる。
モノリスイオン交換体へのパラジウムイオンの導入やパラジウム金属ナノ粒子の担持は、回分式でも流通式でもよく、特に制限はない。
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒の製造方法に用いられる白金族金属化合物としては有機塩/無機塩いずれでもよく、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、有機酸塩、無機錯塩等を用いることができる。白金族金属化合物の具体例としては、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム塩化物、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、塩化白金、テトラアンミン白金塩化物、テトラアンミン白金硝酸塩、クロロトリアンミン白金塩化物、ヘキサアンミン白金塩化物、ヘキサアンミン白金硫酸塩、クロロペンタアンミン白金塩化物、シス-テトラクロロジアンミン白金塩化物、トランス-テトラクロロジアンミン白金塩化物、塩化ロジウム、酢酸ロジウム、ヘキサアンミンロジウム塩化物、ヘキサアンミンロジウム臭化物、ヘキサアンミンロジウム硫酸塩、ペンタアンミンアクアロジウム塩化物、ペンタアンミンアクアロジウム硝酸塩、シス-ジクロロテトラアンミンロジウム塩化物、トランス-ジクロロテトラアンミンロジウム塩化物、塩化ルテニウム、ヘキサアンミンルテニウム塩化物、ヘキサアンミンルテニウム臭化物、ヘキサアンミンルテニウムヨウ化物、クロロペンタアンミンルテニウム塩化物、シス-ジクロロテトラアンミンルテニウム塩化物、トランス-ジクロロテトラアンミンロジウム塩化物、塩化イリジウム(III)、塩化イリジウム(IV)、ヘキサアンミンイリジウム塩化物、ヘキサアンミンイリジウム硝酸塩、クロロペンタアンミンイリジウム塩化物、クロロペンタアンミンイリジウム臭化物、ヘキサアンミンオスミウム塩化物、ヘキサアンミンオスミウム臭化物、ヘキサアンミンオスミウムヨウ化物等が挙げられる。これらの化合物の使用量は、金属換算で担体であるモノリスイオン交換体に対して0.005〜30重量%である。
白金族金属化合物は、通常、溶媒に溶解させて用いられる。溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;アセトニトリル等の二トリル;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミドやそれらの混合物が用いられる。また、白金族金属化合物の溶媒への溶解性を高めるため、塩酸、硫酸、硝酸等の酸や、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の塩基を添加しても良い。
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒の製造方法に用いられる還元剤にも特に制約はなく、水素、一酸化炭素、エチレン等の還元性ガス;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール;ギ酸、ギ酸アンモニウム、シュウ酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム等のカルボン酸やその塩;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド;ヒドラジン、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン、ブチルヒドラジン、アリルヒドラジン、フェニルヒドラジン等のヒドラジン;次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等の次亜リン段塩;水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。
還元反応の反応条件についても特に制限はないが、通常、−20℃から150℃にて、1分から20時間反応を行い、白金族金属化合物を0価白金族金属に還元する。
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒において、白金族金属ナノ粒子の担体であるモノリスイオン交換体のイオン形に特に制限はなく、モノリスカチオン交換体の場合、対イオンがナトリウムイオンやカルシウムイオン等に置換された塩形でも良いし、対イオンが水素イオンである再生形であってもよく、また、モノリスアニオン交換体の場合、対イオンが塩化物イオンや硝酸イオン等に置換された塩形でも良いし、対イオンが水酸化物イオンである再生形であってもよい。
本発明の接触水素化還元方法は、白金族金属担持接触水素化還元触媒の存在下、反応基質と水素源とを接触させることにより、該反応基質の接触水素化還元を行う接触水素化還元方法であり、
該白金族金属担持接触水素化還元触媒が、非粒子状有機多孔質イオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子が担持されている白金族金属担持触媒であり、該非粒子状有機多孔質イオン交換体は、連続骨格相と連続空孔相からなり、連続骨格の厚みは1〜100μm、連続空孔の平均直径は1〜1000μm、全細孔容積は0.5〜50ml/gであり、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量は1〜6mg当量/gであり、イオン交換基が該有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、該白金族金属の担持量が、乾燥状態で0.004〜20重量%であること、
を特徴とする接触水素化還元方法である。
つまり、本発明の接触水素化還元方法は、前記本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒の存在下、反応基質と水素源とを接触させることにより、該反応基質を水素化する接触水素化還元方法である。
水素源としては、水素、一酸化炭素、エチレン等の還元性ガス;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;ヒドラジン、メチルヒドラジン、アリルヒドラジン、フェニルヒドラジン等のヒドラジン及びその誘導体とそれらの塩;ギ酸、酢酸、シュウ酸等のカルボン酸及びその塩;次亜リン酸及びその塩等が挙げられる。これら水素源のうち、水素やヒドラジンが好ましく用いられる。
水素源の使用量は、反応基質に対して1〜100倍モルが好ましい。
水素源の反応系への導入方法については特に制限はなく、水素源が水素の場合、水素を常圧もしくは加圧状態で反応系に導入すればよい。また、水素源がヒドラジンの場合は、水溶液として反応系に導入することが好ましい。
反応基質は、水素化される官能基又は部位を有する化合物であり、特に制限はないが、例えば、炭素−炭素二重結合や三重結合のような不飽和結合を有する化合物、芳香族ニトロ化合物のようなニトロ基を有する化合物、芳香族ベンジルエステルのようなエステル基を有する化合物、カルボニル基を有する化合物等が挙げられる。更に具体的には、反応基質としては、芳香族ニトロ化合物、芳香族ベンジルエステル化合物、芳香族ベンジルエーテル化合物、芳香族ハロゲン化物、N−ベンジルオキシカルボニル基を有する化合物、アルキン、アルケン等が好ましい例として挙げられる。これらの化合物は、接触水素化還元反応によりそれぞれ芳香族アミノ化合物、カルボキシル基を有する化合物、水酸基を有する化合物、芳香族炭化水素化合物、アミノ基を有する化合物、アルカンに変換される。
本発明の接触水素化還元方法において、本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒の使用量は、反応基質1モルに対し、担持されている白金族金属換算で、0.0001〜1モルである。
本発明の接触水素化還元方法においては、反応基質、本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒、水素源の他に、溶媒を用いることができる。溶媒の具体例としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;アセトニトリル、ブチロニトリル等の二トリル;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステルが挙げられる。これら溶媒は、単独で用いても二種類以上を混合して用いても良い。また、用いる溶媒やその組み合わせを選択することで、接触還元反応の選択性をコントロールすることも可能である。
本発明の接触水素化還元方法における反応条件は、特に制限はないが、好ましい反応温度は、−20℃〜200℃、特に好ましくは10〜100℃である。また、好ましい反応時間は、1分〜48時間、特に好ましくは5分〜24時間である。好ましい反応圧力は、常圧〜10MPa、特に好ましくは常圧〜5MPaである。
本発明の白金族金属担持触媒を用いる水素化還元反応としては、例えば、ニトロ基のアミノ基への還元、アジド基のアミノ基への還元、炭素−炭素二重結合の還元、炭素−炭素三重結合の還元、ベンジル保護基等のヒドロキシル基又はカルボキシル基の保護基の脱離、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)等のアミノ基の保護基の脱離、エポキシドのアルコールへの還元、芳香族ケトンのアルコールへの還元と脱酸素化反応などが挙げられる。
また、本発明の接触水素化還元方法の好ましい形態例としては、前記本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒が充填された円筒状の反応容器に、反応基質と水素源とを連続的に供給することにより、該白金族金属担持接触水素化還元触媒の存在下で、該反応基質と該水素源とを連続的に接触させて、該反応基質の接触水素化還元を行う接触水素化還元方法(以下、本発明の接触水素化還元方法(固定床連続流通式)とも記載する。)が挙げられる。
このような本発明の接触水素化還元方法(固定床連続流通式)を行うための反応装置のフロー図を、図22に示す。図22中、接触水素化還元装置50は、本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒が充填された円筒状の反応容器51と、反応基質53が入れられる反応基質容器54と、反応基質53を反応容器51に供給するための反応基質供給ポンプ55と、反応基質55に水素源52を混合するためのミキサー56と、反応容器51から排出される反応液59を入れるための反応液受器57と、反応基質容器54と反応容器51とを繋ぎ、途中に反応基質供給ポンプ55及びミキサー56が設置されている反応基質供給管60と、ミキサー56に繋がる水素源供給管62と、反応容器51と反応液受器57とを繋ぎ、途中に切り替え弁58が付設されている反応液排出管64と、切り替え弁58で反応液排出管64から分岐し、反応基質容器54に繋がる循環管65と、からなる。また、反応容器51には、必要に応じて、反応容器51内を加熱するための加熱手段が取り付けられる。
そして、接触水素化還元装置50では、反応基質53が反応基質供給ポンプ55により、反応基質容器54から反応容器51に向けて連続的に供給される。そのとき、反応基質供給管60の途中に設置されているミキサー56で、水素源供給管62から連続的に供給される水素源52が、反応基質53に混合される。そして、反応基質53と水素源52との混合物である反応原料が反応容器51に供給される。反応容器51内に供給された反応原料は、反応容器51内に充填されている本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒内を、詳細には有機多孔質体の連続空孔内を通過する。このことにより、本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒の存在下で、反応基質と水素源とが連続的に接触されて、反応基質の接触水素化還元が行われる。次いで、接触水素化還元が行われた後の反応液59は、反応液排出管64を経て、反応液受器57に送られる。あるいは、接触水素化還元が行われた後の反応液59は、反応液排出管64から分岐している循環管65を経て、反応基質容器53に返送される。なお、反応液59の反応液受器57への送液と反応基質容器53への返送との切り替えは、切り替え弁58によって行われる。また、反応液59の反応液受器57への送液と反応基質容器53への返送との切り替えを行うことにより、本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒の層に、1回だけ通液して反応させることも、触媒層に2回以上通液して反応させることもできる。
本発明の接触水素化還元方法(固定床連続流通式)における反応条件は、特に制限はないが、好ましい反応温度は、−20℃〜200℃、特に好ましくは10〜100℃である。好ましい反応圧力は、常圧〜10MPa、特に好ましくは常圧〜5MPaである。また、本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒は、反応原料である反応基質及び水素源との接触効率が高いので、固定床連続流通式で接触水素化還元反応を行う場合に、通液速度を速くしても反応を十分に行わせることができる。そのため、空間速度(SV)を高くすることができる。本発明の接触水素化還元方法(固定床連続流通式)における空間速度(SV)は、好ましくは0.1〜10000h−1、特に好ましくは1〜1000h−1である。
本発明の反応装置において、反応容器の大きさ、触媒充填層の厚み、溶媒と基質の流速、水素流速、水素圧力、溶媒の種類、溶液や水素の流通の方向(上向き又は下向き)等は、反応の種類又は反応条件に応じて、適宜選択される。
本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒は、従来の白金族金属担持接触水素化還元触媒に比べ、反応速度が速く、触媒活性が高い。また、触媒が反応溶媒に溶解している均一系の有機反応では、反応場を塩基性にするためには、反応溶媒を塩基性にしなければならない。それに対して、本発明の白金族金属担持接触水素化還元触媒を用いると、反応溶媒は中性のままで、反応場となる担体内部を塩基性とすることができる。
(実施例)
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
(参考例1)モノリスカチオン交換体の製造
(モノリス中間体の製造(I工程))
スチレン9.28g、ジビニルベンゼン0.19g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)0.50gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.25gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察した。SEM画像を図10に示すが、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は40μm、全細孔容積は18.2ml/gであった。
(モノリスの製造)
次いで、スチレン216.6g、ジビニルベンゼン4.4g、1-デカノール220g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下50℃で24時間重合させた。重合終了後内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、減圧乾燥した(III工程)。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.2モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図11に示す。図11から明らかなように、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の平均太さは20μmであった。また、水銀圧入法により測定した、当該モノリスの三次元的に連続した空孔の平均直径は70μm、全細孔容積は4.4ml/gであった。なお、空孔の平均直径は、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値である。
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスをカラム状反応器に入れ、クロロスルホン酸500gとジクロロメタン4Lからなる溶液を通液して、20℃、3時間反応させた。反応終了後、系内にメタノールを添加し、未反応のクロロスルホン酸を失活させ、更にメタノールで洗浄して生成物を取り出した。最後に純水で洗浄して、モノリスカチオン交換体を得た。
得られたモノリスカチオン交換体のカチオン交換容量は、乾燥状態で4.7mg当量/gであり、スルホン酸基が定量的に導入されていることを確認した。また、図11から明らかなように、当該モノリスカチオン交換体は骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した乾燥状態での骨格の平均太さは20μmであり、水銀圧入法による測定から求めた、当該モノリスカチオン交換体の三次元的に連続した空孔の乾燥状態での平均直径は70μm、乾燥状態での全細孔容積は4.4ml/gであった。
次いで、モノリスカチオン交換体中のスルホン酸基の分布状態を確認するため、EPMAにより硫黄の分布状態を観察した。モノリスカチオン交換体の表面における硫黄の分布状態を図12に、骨格断面における硫黄の分布状態を図13に示すが、硫黄はモノリスカチオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、スルホン酸基がモノリスカチオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
(実施例1)白金族金属担持接触水素化還元触媒の調製
参考例1のモノリスカチオン交換体を減圧乾燥し、乾燥後のモノリスカチオン交換体をナイフで刻んで3mm程度の小片とした。この小片1.5gをメタノール30mlに分散させ、更に酢酸パラジウム160mgを加え、室温にて6日間攪拌し、モノリスカチオン交換体にパラジウムイオンを担持させた。次いで、固液分離してモノリスカチオン交換体を取り出し、純水50mlに分散させ、ヒドラジン一水和物10ミリモルを加え還元を行った。モノリスカチオン交換体にパラジウムイオンを担持させた状態では黄色であった試料が還元後に黒色に変色したことから、パラジウムナノ粒子の生成が示唆された。還元後の試料は、数回純水で洗浄した後、減圧乾燥により乾燥させた。
パラジウムの担持量をICP発光分光分析法で求めたところ、パラジウム担持量は4.0重量%であった。モノリスカチオン交換体に担持されたパラジウムの分布状態を確認するため、EPMAによりパラジウムの分布状態を観察した。モノリスカチオン交換体の骨格断面におけるパラジウムの分布状態を図14に示すが、パラジウムはモノリスカチオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも分布しており、内部の方か濃度が若干高いものの、比較的均一に分布していることが確認できた。また、担持されたパラジウム粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図15に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、10nmであった。
(参考例2)モノリスアニオン交換体の製造
(モノリスアニオン交換体の製造)
参考例1で製造したモノリスをカラム状反応器に入れ、クロロスルホン酸1600gと四塩化スズ400g、ジメトキシメタン2500mlからなる溶液を循環・通液して、30℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、クロロメチル化モノリスをTHF/水=2/1の混合溶媒で洗浄し、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリスにTHF1600mlとトリメチルアミン30%水溶液1400mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノールで洗浄し、次いで純水で洗浄してモノリスアニオン交換体を得た。
得られたモノリスアニオン交換体のアニオン交換容量は、乾燥状態で4.2mg当量/gであり、四級アンモニウム基が定量的に導入されていることを確認した。また、SEM画像から測定した乾燥状態での骨格の平均太さは20μmであり、水銀圧入法による測定から求めた、当該モノリスアニオン交換体の三次元的に連続した空孔の乾燥状態での平均直径は70μm、乾燥状態での全細孔容積は4.4ml/gであった。
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、モノリスアニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。モノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を図16に、骨格断面における塩化物イオンの分布状態を図17に示すが、塩化物イオンはモノリスアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
(実施例2)白金族金属担持接触水素化還元触媒の製造
参考例2のモノリスアニオン交換体をCl形にイオン交換した後、乾燥状態で円柱状に切り出し、減圧乾燥した。乾燥後のモノリスアニオン交換体の重量は、1.2gであった。この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を、塩化パラジウム100mgを溶解した希塩酸に24時間浸漬し、塩化パラジウム酸形にイオン交換した。浸漬終了後、モノリスアニオン交換体を純水で数回洗浄し、ヒドラジン水溶液中に24時間浸漬して還元処理を行った。塩化パラジウム酸形モノリスアニオン交換体が茶色であったのに対し、還元処理終了後のモノリスアニオン交換体は黒色に着色しており、パラジウムナノ粒子の生成が示唆された。還元後の試料は、数回純水で洗浄した後、減圧乾燥により乾燥させた。
パラジウムの担持量をICP発光分光分析法で求めたところ、パラジウム担持量は3.9重量%であった。モノリスアニオン交換体に担持されたパラジウムの分布状態を確認するため、EPMAによりパラジウムの分布状態を観察した。モノリスアニオン交換体の骨格断面におけるパラジウムの分布状態を図18に示すが、パラジウムはモノリスアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも分布しており、内部の方か濃度が若干高いものの、比較的均一に分布していることが確認できた。また、担持されたパラジウム粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図19に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、8nmであった。
(実施例3)4-ニトロフェニルアセトニトリルの接触水素化還元反応
実施例2で調製したパラジウム担持触媒を用いて、4-ニトロフェニルアセトニトリルの接触水素化還元反応を行った。4-ニトロフェニルアセトニトリル81.1mg(0.5ミリモル)をメタノール1ml中に加え、次いで実施例2で調製したパラジウム担持触媒13.6mg(パラジウムは反応基質(4-ニトロフェニルアセトニトリル)に対し1モル%)を加え、水素をバルーンから供給しつつ室温で6時間反応させた。反応生成物は4-アミノアセトニトリルであり、その収率は95%であった。このことから、本触媒は、二トリルを還元させることなく芳香族ニトロ基を定量的に還元できることがわかる。
(参考例3)イオン交換基が導入されていないモノリスを担体に用いた白金族金属担持触媒の調製
参考例1で製造したカチオン交換基を導入する前のモノリスを減圧乾燥し、ナイフで刻んで3mm程度の小片とした。この小片2.0gをメタノール40mlに分散させ、更に酢酸パラジウム210mgを加え、室温にて6日間攪拌した。反応後、試料が還元後に黒色に変色したことから、パラジウムナノ粒子の生成が示唆された。得られた試料は、数回純水で洗浄した後、減圧乾燥により乾燥させた。パラジウムの担持量をICP発光分光分析法で求めたところ、パラジウム担持量は3.8重量%であった。
(比較例1)
実施例2で調製したパラジウム担持触媒に代えて参考例3で調製したパラジウム担持触媒11.1mg(パラジウムは反応基質に対し1モル%)を用いたこと以外は、実施例3と同様の反応を行った。実施例3においては、6時間の反応で収率は95%に達したのに対し、参考例3の触媒(担体としてイオン交換基を有しないモノリスを使用)を用いた場合では、24時間反応させても4-アミノアセトニトリルの収率は9%であった。
(実施例4)4-ニトロ安息香酸メチルの接触水素化還元反応
4-ニトロフェニルアセトニトリルの代わりに4-ニトロ安息香酸メチル90.6mg(0.5ミリモル)を用いたことと反応時間を4時間としたことを除いて、実施例3と同様の条件で接触水素化還元反応を行った。反応生成物は4-アミノ安息香酸メチルであり、その収率は99%であった。このことから、本触媒は、エステルを保持したままで芳香族ニトロ基を定量的に還元できることがわかる。
(実施例5)4-ニトロアニソールの接触水素化還元反応
4-ニトロフェニルアセトニトリルの代わりに4-ニトロアニソール76.6mg(0.5ミリモル)を用いたことと反応時間を4時間としたことを除いて、実施例3と同様の条件で接触水素化還元反応を行った。反応生成物は4-アミノアニソールであり、その収率は97%であった。このことから、本触媒は、エーテルを保持したままで芳香族ニトロ基を定量的に還元できることがわかる。
(実施例6)3-ニトロ-1-ブロモベンゼンの接触水素化還元反応
4-ニトロフェニルアセトニトリルの代わりに3-ニトロ-1-ブロモベンゼン101mg(0.5ミリモル)を用いたこと、溶媒として重メタノール1mlを用いたこと、トリエチルアミン76.2μl(0.55ミリモル、反応基質に対して1.1倍モル)、反応時間を24時間としたことを除いて、実施例3と同様の条件で接触水素化還元反応を行った。反応生成物はアニリンであり、転化率は100%であった。このことから、本触媒は芳香族ニトロ基を定量的に還元するとともに、芳香族ハロゲン化物の脱ハロゲン化も達成できることがわかる。
(実施例7)4-ニトロ安息香酸ナトリウムの接触水素化還元反応
実施例2で調製したパラジウム担持触媒に代えて実施例1で調製したパラジウム担持触媒10.6mg(パラジウムは反応基質に対し1モル%)を用いたこと、4-ニトロフェニルアセトニトリルの代わりに4-ニトロ安息香酸ナトリウム94.5mg(0.5ミリモル)を用いたこと、溶媒として水1mlを用いたこと、反応時間を8時間としたことを除いて、実施例3と同様の条件で接触水素化還元反応を行った。反応生成物は4-アミノ安息香酸ナトリウムであり、その収率は100%であった。このことから、触媒の担体がモノリスカチオン交換体である場合も、芳香族ニトロ基を定量的に還元できることがわかる。
(実施例8)桂皮酸ベンジルの接触水素化還元反応
4-ニトロフェニルアセトニトリルの代わりに桂皮酸ベンジル119mg(0.5ミリモル)を用いたことと反応時間を24時間としたことを除いて、実施例3と同様の条件で接触水素化還元反応を行った。反応生成物は3-フェニルプロピオン酸であり、収率は100%であった。本触媒を用いることで、アルケンを定量的に還元するとともに、ベンジルエステルの水素化分解も定量的に進行した。
(実施例9)桂皮酸ベンジルの接触水素化還元反応
実施例2で調製したパラジウム担持触媒に代えて実施例1で調製したパラジウム担持触媒10.6mg(パラジウムは反応基質に対し1モル%)を用いたことと溶媒に酢酸エチル1mlを用いたことを除いて、実施例8と同様の条件で接触水素化還元反応を行った。反応生成物は3-フェニルプロピオン酸ベンジルであり、収率は99%であった。本条件下では、ベンジルエステルを残したままで、アルケンが定量的に還元された。
(実施例10)3’-アリル-4’-ヒドロキシアセトフェノンの接触水素化還元反応
4-ニトロフェニルアセトニトリルの代わりに3’-アリル-4’-ヒドロキシアセトフェノン88.1mg(0.5ミリモル)を用いたことと反応時間を24時間としたことを除いて、実施例3と同様の条件で接触水素化還元反応を行った。反応生成物は3’-プロピル-4’-ヒドロキシアセトフェノンであり、収率は100%であった。本触媒を用いることで、芳香族カルボニル基を残したままアルケンを定量的に還元することができた。
(実施例11)N-Cbz-4-アミノエチニルベンゼンの接触水素化還元反応
4-ニトロフェニルアセトニトリルの代わりにN-Cbz-4-アミノエチニルベンゼン62.8mg(0.25ミリモル)を用いたことと、実施例2で調製したパラジウム担持触媒に代えて実施例1で調製したパラジウム担持触媒5.3mg(パラジウムは反応基質に対し1モル%)を用いたことを除いて、実施例3と同様の条件で接触水素化還元反応を行った。反応生成物はN-Cbz-4-アミノエチルベンゼンであり、収率は86%であった。本触媒を用いることで、ベンジルオキシカルボニル基を残したまま、アルキンの還元が定量的に進行した。
(実施例12)ジフェニルアセチレンの接触水素化還元反応
4-ニトロフェニルアセトニトリルの代わりにジフェニルアセチレン89.1mg(0.5ミリモル)を用いたことと反応時間を3時間としたことを除いて、実施例3と同様の条件で接触水素化還元反応を行った。反応生成物は1,2−ジフェニルエタンであり、収率は100%であった。本触媒を用いることで、アルキンが定量的に還元されることがわかる。
(実施例13)4-ベンジルオキシ-安息香酸ベンジルの接触水素化還元反応
4-ニトロフェニルアセトニトリルの代わりに4-ベンジルオキシ-安息香酸ベンジル159mg(0.5ミリモル)を用いたことと、反応時間を24時間としたことを除いて、実施例3と同様の条件で接触水素化還元反応を行った。反応生成物は4-ヒドロキシ安息香酸であり、収率は100%であった。本触媒を用いることで、ベンジルエーテルとベンジルエステルの水素化分解が定量的に進行した。
(実施例14)白金族金属担持接触水素化還元触媒の製造
参考例1で製造したモノリスカチオン交換体を乾燥状態で円柱状に切り出し、減圧乾燥した。乾燥後のモノリスカチオン交換体の重量は、1.4gであった。この乾燥状態のモノリスカチオン交換体を、塩化テトラアンミン白金水和物110mgを溶解したアンモニア水に24時間浸漬し、テトラアンミン白金イオン形にイオン交換した。浸漬終了後、モノリスカチオン交換体を純水で数回洗浄し、ヒドラジン水溶液中に24時間浸漬して還元処理を行った。テトラアンミン白金イオン形モノリスカチオン交換体が白色であったのに対し、還元処理終了後のモノリスカチオン交換体は黒色に着色しており、白金ナノ粒子の生成が示唆された。還元後の試料は、数回純水で洗浄した後、減圧乾燥により乾燥させた。
白金の担持量をICP発光分光分析法で求めたところ、白金担持量は3.7重量%であった。担持された白金粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図20に示す。白金ナノ粒子の平均粒子径は、10nmであった。
(実施例15)4-ニトロ安息香酸ナトリウムの接触水素化還元反応
実施例14で調製した白金担持触媒を用いて、実施例7と同様に4-ニトロ安息香酸ナトリウムの接触水素化還元反応を行った。4-ニトロ安息香酸ナトリウム94.5mg(0.5ミリモル)を水1ml中に加え、次いで実施例14で調製した白金担持触媒26.3mg(白金は反応基質(4-ニトロ安息香酸ナトリウム)に対し1モル%)を加え、水素をバルーンから供給しつつ室温で7時間反応させた。反応生成物は4-アミノ安息香酸ナトリウムであり、その収率は100%であった。このことから、本触媒は、芳香族ニトロ基を定量的に還元することがわかる。
(実施例16)白金族金属担持接触水素化還元触媒
参考例2で製造したモノリスアニオン交換体を乾燥状態で円柱状に切り出し、減圧乾燥した。乾燥後のモノリスアニオン交換体の重量は、1.4gであった。この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を、塩化白金酸6水和物160mgを溶解した希塩酸水溶液に24時間浸漬し、塩化白金酸イオン形にイオン交換した。浸漬終了後、モノリスアニオン交換体を純水で数回洗浄し、ヒドラジン水溶液中に24時間浸漬して還元処理を行った。塩化白金酸イオン形モノリスアニオン交換体が橙色であったのに対し、還元処理終了後のモノリスアニオン交換体は黒色に着色しており、白金ナノ粒子の生成が示唆された。還元後の試料は、数回純水で洗浄した後、減圧乾燥により乾燥させた。
白金の担持量をICP発光分光分析法で求めたところ、白金担持量は4.0重量%であった。担持された白金粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図21に示す。白金ナノ粒子の平均粒子径は、10nmであった。
(実施例17)4-ニトロフェニルアセトニトリルの接触水素化還元反応
実施例2で調製したパラジウム担持触媒に代えて実施例16で調製した白金担持触媒24.4mg(白金は反応基質に対し1モル%)を用いたこと以外は、実施例3と同様の反応を行った。反応生成物は4-アミノアセトニトリルであり、その収率は90%であった。
(実施例18)固定床連続流通式
酢酸パラジウムの使用量を変える以外は、実施例1と同様の方法で、参考例1のモノリスカチオン交換体に、パラジウムを担持し、パラジウム担持量が4.5重量%の白金族金属担持接触水素化還元触媒を作製した。
次いで、図22に示す接触水素化還元装置50の反応容器51に、上記で調製した白金族金属担持接触水素化還元触媒(Pd担持量:4.5重量%)を充填した(切り出した触媒の大きさ:直径4.8mm×長さ30mm(メタノール浸漬時)、反応容器51の内径:4.6mm、触媒層の厚み:30mm)。
次いで、反応液の全量が反応液受器57に送液されるように切り替え弁58を切り替え、反応容器51内の温度を25℃にして、反応容器51に、ジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(25℃)を0.5ml/分の流速で、水素ガスを10ml/分の流速で供給して、接触水素化還元反応を行った。このとき、SV=60h−1であった。また、反応基質溶液と触媒層が接触している時間は、合計で1分であった。
転化率は97%であり、反応生成物は1,2−ジフェニルエタンとcis−スチルベンであり、1,2−ジフェニルエタンとcis−スチルベンの割合はそれぞれ77%、23%であった。
(実施例19)固定床連続流通式
反応容器51内の温度を25℃にすることに代えて、反応容器51内の温度を40℃にすること、及びジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(25℃)に代えて、ジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(40℃)とすること以外は、実施例18と同様にして行った。
転化率は100%であり、反応生成物は1,2−ジフェニルエタンであり、1,2−ジフェニルエタンの収率は96%であった。
(実施例20)固定床連続流通式
反応容器51内の温度を25℃にすることに代えて、反応容器51内の温度を40℃にすること、及びジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(25℃)に代えて、4−アジド安息香酸エチル1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(40℃)とすること以外は、実施例18と同様にして行った。
転化率は100%であり、反応生成物は4−アミノ安息香酸エチルであり、4−アミノ安息香酸エチルの収率は78%であった。
(実施例21−1)固定床連続流通式(1パス)
反応容器51内の温度を25℃にすることに代えて、反応容器51内の温度を40℃にすること、及びジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(25℃)に代えて、2−アセチルナフタレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(40℃)とすること以外は、実施例18と同様にして行った。
転化率は84%であり、反応生成物は1−(2−ナフチル)エタノールと2−エチルナフタレンであり、反応後回収物中に含まれる2−アセチルナフタレン、1−(2−ナフチル)エタノール、2−エチルナフタレンの全収率は98%であり、それぞれの割合は16%、21%、63%であった。
(実施例21−2)固定床連続流通式(2パス)
反応液の全量が反応液受器57に送液されるように切り替え弁58を切り替えることに代えて、1回目は反応液の全量が反応基質容器54に返送されるように切り替え弁58を切り替え且つ2回目は全量が反応液受器57に送液されるように切り替え弁58を切り替えること、反応容器51内の温度を25℃にすることに代えて、反応容器51内の温度を40℃にすること、及びジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(25℃)に代えて、2−アセチルナフタレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(40℃)とすること以外は、実施例18と同様にして行った。なお、反応基質を2回触媒層に通液しているので、反応基質溶液と触媒層が接触している時間は、合計で2分であった。
転化率は92%であり、反応生成物は1−(2−ナフチル)エタノールと2−エチルナフタレンであり、反応後回収物中に含まれる2−アセチルナフタレン、1−(2−ナフチル)エタノール、2−エチルナフタレンの全収率は97%であり、それぞれの割合は8%、11%、81%であった。
(実施例21−3)固定床連続流通式(3パス)
反応液の全量が反応液受器57に送液されるように切り替え弁58を切り替えることに代えて、1回目及び2回目は反応液の全量が反応基質容器54に返送されるように切り替え弁58を切り替え且つ3回目は全量が反応液受器57に送液されるように切り替え弁58を切り替えること、反応容器51内の温度を25℃にすることに代えて、反応容器51内の温度を40℃にすること、及びジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(25℃)に代えて、2−アセチルナフタレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(40℃)とすること以外は、実施例18と同様にして行った。なお、反応基質を3回触媒層に通液しているので、反応基質溶液と触媒層が接触している時間は、合計で3分であった。
転化率は100%であり、反応生成物は2−エチルナフタレンであり、2−エチルナフタレンの収率は88%であった。
(実施例22)固定床連続流通式
ジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(25℃)に代えて、桂皮酸ベンジル1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(25℃)とすること以外は、実施例18と同様にして行った。
転化率は100%であり、反応生成物は3−フェニルプロピオン酸ベンジルと3−フェニルプロピオン酸であり、反応後回収物中に含まれる3−フェニルプロピオン酸ベンジルと3−フェニルプロピオン酸の割合はそれぞれ91%、9%であった。
(実施例23)バッチ式
酢酸パラジウムの使用量を変える以外は、実施例1と同様の方法で、参考例1のモノリスカチオン交換体に、パラジウムを担持し、パラジウム担持量が5.0重量%の白金族金属担持接触水素化還元触媒を作製した。
次いで、ジフェニルアセチレン0.25mmolをメタノール1mlに溶解させた溶液に、反応基質に対しパラジウムが1mol%となる量の、上記で調製した白金族金属担持接触水素化還元触媒(Pd担持量:5.0重量%)を加え、水素ガスをバルーンから供給しつつ40℃で1時間反応させた。
転化率は100%であり、反応生成物は1,2−ジフェニルエタンであり、1,2−ジフェニルエタンの収率は100%であった。
(実施例24)バッチ式
ジフェニルアセチレン0.25mmolをメタノール1mlに溶解させた溶液に代えて、4−アジド安息香酸エチルをメタノール1mlに溶解させた溶液とすること、及び反応時間を1時間とすることに代えて、反応時間を40分とすること以外は、実施例23と同様の方法で行った。
転化率は100%であり、反応生成物は4−アミノ安息香酸エチルであり、4−アミノ安息香酸エチルの収率は100%であった。
(実施例25)バッチ式
ジフェニルアセチレン0.25mmolをメタノール1mlに溶解させた溶液に代えて、2−アセチルナフタレンをメタノール1mlに溶解させた溶液とすること、及び反応時間を1時間とすることに代えて、反応時間を16時間とすること以外は、実施例23と同様の方法で行った。
反応回収物は1−(2−ナフチル)エタノールと2−エチルナフタレンであり、全収率は96%であった。1−(2−ナフチル)エタノールと2−エチルナフタレンの割合はそれぞれ2%、98%であった。
(実施例26)バッチ式
ジフェニルアセチレン0.25mmolをメタノール1mlに溶解させた溶液に代えて、桂皮酸ベンジルをメタノール1mlに溶解させた溶液とすること、及び反応時間を1時間とすることに代えて、反応時間を24時間とすること以外は、実施例23と同様の方法で行った。
反応回収物はフェニルプロピオン酸メチルとフェニルプロピオン酸であり、全収率は95%であった。フェニルプロピオン酸メチルとフェニルプロピオン酸の割合はそれぞれ80%、20%であった。
(実施例27)固定床連続流通式(1パス)
酢酸パラジウムに変えて塩化パラジウムを用い、塩化パラジウムの使用量を変える以外は、実施例2と同様の方法で、参考例2のモノリスアニオン交換体に、パラジウムを担持し、パラジウム担持量が4.8重量%の白金族金属担持接触水素化還元触媒を作製した。
次いで、図22に示す接触水素化還元装置50の反応容器51に、上記で調製した白金族金属担持接触水素化還元触媒(Pd担持量:4.8重量%)を充填した(切り出した触媒の大きさ:直径4.8mm×長さ30mm(メタノール浸漬時)、反応容器51の内径:4.6mm、触媒層の厚み:30mm)。
次いで、反応液の全量が反応液受器57に送液されるように切り替え弁58を切り替え、反応容器51内の温度を40℃にして、反応容器51に、ジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(40℃)を0.5ml/分の流速で、水素ガスを10ml/分の流速で供給した。このとき、SV=60h−1であった。また、反応基質溶液と触媒層が接触している時間は、合計で1分であった。
転化率は100%であり、反応生成物は1,2−ジフェニルエタンとcis−スチルベンであり全収率は89%であった。反応後回収物中に含まれる1,2−ジフェニルエタンとcis−スチルベンの割合はそれぞれ82%、18%であった。
(実施例28)固定床連続流通式(2パス)
反応液の全量が反応液受器57に送液されるように切り替え弁58を切り替えることに代えて、1回目は反応液の全量が反応基質容器54に返送されるように切り替え弁58を切り替え且つ2回目は全量が反応液受器57に送液されるように切り替え弁58を切り替えること、反応容器51内の温度を40℃にすることに代えて、反応容器51内の温度を25℃にすること、及びジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(40℃)に代えて、ジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(25℃)とすること以外は、実施例27と同様にして行った。なお、反応基質を2回触媒層に通液しているので、反応基質溶液と触媒層が接触している時間は、合計で2分であった。
転化率は100%であり、反応生成物は1,2−ジフェニルエタンであり、1,2−ジフェニルエタンの収率は96%であった。
(実施例29)固定床連続流通式(1パス)
ジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(40℃)に代えて、4−アジド安息香酸エチル1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(40℃)とすること以外は、実施例27と同様にして行った。
転化率は100%であり、反応生成物は4−アミノ安息香酸エチルであり、4−アミノ安息香酸エチルの収率は92%であった。
(実施例30)固定床連続流通式(1パス)
ジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(40℃)に代えて、4−ニトロ安息香酸メチル0.05molをメタノール20mlに溶解させた溶液(40℃)とすること以外は、実施例27と同様にして行った。
転化率は100%であり、反応生成物は4−アミノ安息香酸メチルであり、4−アミノ安息香酸メチルの収率は99%であった。
(実施例31−1)固定床連続流通式(1パス)
反応容器51内の温度を40℃にすることに代えて、反応容器51内の温度を25℃にすること、及びジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(40℃)に代えて、4−ニトロベンゾニトリル1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(25℃)とすること以外は、実施例27と同様にして行った。
転化率は48%であり、反応生成物は4−アミノベンゾニトリルであり、反応後回収物中に含まれる4−ニトロベンゾニトリルと4−アミノベンゾニトリルの全収率は97%であり4−ニトロベンゾニトリルと4−アミノベンゾニトリルの割合はそれぞれ52%と47%であった。
(実施例31−2)固定床連続流通式(2パス)
反応容器51内の温度を40℃にすることに代えて、反応容器51内の温度を25℃にすること、及びジフェニルアセチレン1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(40℃)に代えて、4−ニトロベンゾニトリル1mmolをメタノール20mlに溶解させた溶液(25℃)とすること以外は、実施例28と同様にして行った。
転化率は100%であり、反応生成物は4−アミノベンゾニトリルであり、4−アミノベンゾニトリルの収率は91%であった。
(実施例32)バッチ式
酢酸パラジウムに変えて塩化パラジウムを用い、塩化パラジウムの使用量を変える以外は、実施例2と同様の方法で、参考例2のモノリスアニオン交換体に、パラジウムを担持し、パラジウム担持量が3.9重量%の白金族金属担持接触水素化還元触媒を作製した。
次いで、ジフェニルアセチレン0.25mmolをメタノール1mlに溶解させた溶液に、反応基質に対しパラジウムが1mol%となる量の、上記で調製した白金族金属担持接触水素化還元触媒(Pd担持量:3.9重量%)を加え、水素ガスをバルーンから供給しつつ40℃で0.5時間反応させた。
転化率は100%であり、反応生成物は1,2−ジフェニルエタンであり、1,2−ジフェニルエタンの収率は100%であった。
(実施例33)バッチ式
ジフェニルアセチレン0.25mmolをメタノール1mlに溶解させた溶液に代えて、4−アジド安息香酸エチルをメタノール1mlに溶解させた溶液とすること以外は、実施例32と同様の方法で行った。
転化率は100%であり、反応生成物は4−アミノ安息香酸エチルであり、4−アミノ安息香酸エチルの収率は98%であった。
(実施例34)バッチ式
ジフェニルアセチレン0.25mmolをメタノール1mlに溶解させた溶液に代えて、4−ニトロベンゾニトリルをメタノール1mlに溶解させた溶液とすること、反応温度を40℃とすることに代えて、反応温度を25℃とすること、及び反応時間を0.5時間とすることに代えて、反応時間を6時間とすること以外は、実施例32と同様の方法で行った。
転化率は100%であり、反応生成物は4−アミノベンゾニトリルであり、4−アミノベンゾニトリルの収率は95%であった。