JP6722004B2 - 溶射用材料、溶射皮膜および溶射皮膜付部材 - Google Patents
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Description
このような状況に鑑み、本発明は、耐プラズマエロージョン性がさらに向上された溶射皮膜を形成し得る溶射用材料を提供することを目的とする。また、この溶射用材料を用いて形成される溶射皮膜および溶射皮膜付部材を提供することを他の目的とする。
本発明者らの検討によると、希土類元素酸化物を実質的に含まず、希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を上記の範囲で含む溶射用材料は、例えば、酸化イットリウムからなる溶射皮膜に比べて耐プラズマエロージョン性に優れた溶射皮膜を形成し得ることが判明した。これにより、ハロゲン系プラズマに対する耐プラズマエロージョン性がより一層高められた溶射皮膜を形成し得る溶射用材料が実現される。
ここに開示される溶射用材料は希土類元素酸化物を含まないことで、上記のとおり、形成される溶射皮膜の耐プラズマエロージョン性を高めるようにしている。したがって、溶射皮膜中に存在することで耐プラズマエロージョン性を低下させ得る希土類元素のフッ化物については、上記割合までの含有が許容され得る。そして、溶射用材料中には、希土類元素のフッ化物が実質的に含まれない形態であることで、形成される溶射皮膜の耐プラズマエロージョン性をさらに高めることができて好適である。
溶射用材料中の希土類元素オキシハロゲン化物におけるハロゲン元素の割合を増大させることで、ハロゲン系プラズマに対する耐性がより一層高められるために好適である。また、溶射用材料中の希土類元素オキシハロゲン化物における酸素の割合を減少させることで、溶射皮膜中に希土類元素酸化物が形成され難くなるために好適である。そしてこれらがバランスよく調整されることで、気孔率が低くかつビッカース硬度の高い溶射皮膜が得られるために好ましい。
かかる構成によると、溶射皮膜は希土類元素のフッ化物の含有割合が低減されていることから、耐プラズマエロージョン性が確実に向上されたものとして提供される。
ここに開示される溶射用材料は、(1)構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)が、77質量%以上の割合で含まれ、(2)この希土類元素の酸化物を実質的に含まないことにより特徴づけられている。
例えば、希土類元素に対するハロゲン元素のモル比(X/RE)は特に制限されない。好適な一例として、モル比(X/RE)は、例えば1であっても良く、1より大きいことが好ましい。具体的には、例えば、1.1以上であるのがより好ましく、例えば1.2以上、さらには1.3以上であることが望ましい。モル比(X/RE)の上限については特に制限されず、例えば、3以下とすることができる。なかでも、希土類元素に対するハロゲン元素のモル比(X/RE)は、より好ましくは2以下であり、さらには1.4以下(1.4未満)であるのがより一層好ましい。モル比(X/RE)のより好適な一例として、1.3以上1.39以下(例えば1.32以上1.36以下)とすることが例示される。このように、希土類元素に対するハロゲン元素の割合が高いことで、ハロゲン系プラズマに対する耐性が高くなるために好ましい。
好適な一形態として、希土類元素がイットリウム(Y)であり、ハロゲン元素がフッ素(F)であり、希土類元素オキシハロゲン化物がイットリウムオキシフッ化物(Y−O−F)である場合について説明する。かかるイットリウムオキシフッ化物としては、例えば、熱力学的に安定で、イットリウムと酸素とハロゲン元素との比が1:1:1の化学組成がYOFとして表される化合物であって良い。また、熱力学的に比較的安定で、一般式;Y1O1−nF1+2n(式中、nは、例えば、0.12≦n≦0.22を満たす。)で表されるY5O4F7,Y6O5F8,Y7O6F9,Y17O14F23等であってよい。とくに、モル比(O/RE)および(X/RE)が上記のより好適な範囲にあるY6O5F8,Y17O14F23等は、耐プラズマエロージョン特性に優れ、より緻密で高硬度な溶射皮膜を形成し得るために好ましい。
このような希土類元素オキシハロゲン化物は、上記のいずれか1種の単一相から構成されていても良いし、いずれか2種以上の相が組み合わされた混相,固溶体,化合物のいずれか又はこれらの混合等により構成されていてもよい。
以上の希土類元素オキシハロゲン化物についてのモル比(X/RE)およびモル比(O/RE)は、例えば、X線回折分析により同定された希土類元素オキシハロゲン化物の組成に基づいて、算出することができる。
そして、例えば、溶射用材料中に希土類元素オキシハロゲン化物が1種類存在し、かつ残りがYF3の場合は、溶射用材料の酸素含有量を例えば酸素・窒素・水素分析装置(例えば、LECO社製,ONH836)によって測定し、得られた酸素濃度から希土類元素オキシハロゲン化物の含有量を定量することができる。
希土類元素オキシハロゲン化物が2種類以上存在したり、又は酸化イットリウム等の酸素を含む化合物が混在したりする場合は、例えば各化合物の割合を検量線法により定量することができる。具体的には、それぞれの化合物の含有割合を変化させたサンプルを数種類準備し、それぞれのサンプルについてX線回折分析を行い、メインピーク強度と各化合物の含有量との関係を示す検量線を作成する。そしてこの検量線を元に、測定したい溶射用材料のXRDの希土類元素オキシハロゲン化物のメインピーク強度から含有量を定量する。
溶射用材料に含まれる希土類元素の酸化物は、溶射によって溶射皮膜中にそのまま希土類元素酸化物として存在し得る。例えば、溶射用材料に含まれる酸化イットリウムは、溶射によって溶射皮膜中にそのまま酸化イットリウムとして存在し得る。この希土類元素酸化物(例えば酸化イットリウム)は、希土類元素オキシハロゲン化物に比べてプラズマ耐性が低い。そのため、この希土類元素酸化物が含まれた部分はプラズマ環境に晒されたときに脆い変質層を生じやすく、変質層は微細な粒子となって脱離しやすい。そして、この微細な粒子がパーティクルとして半導体基盤上に堆積する虞がある。したがって、ここに開示される溶射用材料においては、パーティクル源となり得る希土類元素酸化物の含有を排除するようにしている。
なお、本発明の溶射用材料は、このように希土類元素オキシハロゲン化物を高い割合で含むことにより、パーティクル源となり難い他の物質を含むことが許容される。
以上の溶射用材料を溶射することで、溶射皮膜を形成することができる。この溶射皮膜は、基材の表面に備えられていることで、溶射皮膜付部材等として提供される。以下、かかる溶射皮膜付部材と、溶射皮膜とについて説明する。
(基材)
ここに開示される溶射皮膜付部材において、溶射皮膜が形成される基材については特に限定されない。例えば、かかる溶射用材料の溶射に供して所望の耐性を備え得る材料からなる基材であれば、その材質や形状等は特に制限されない。かかる基材を構成する材料としては、例えば、各種の金属,半金属およびそれらの合金を含む金属材料や、各種の無機材料等が挙げられる。具体的には、金属材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄鋼、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、金、銀、ビスマス、マンガン、亜鉛、亜鉛合金等の金属材料;シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge)等のIV族半導体、セレン化亜鉛(ZnSe),硫化カドミウム(CdS),酸化亜鉛(ZnO)等のII-VI族化合物半導体、ガリウムヒ素(GaAs),リン化インジウム(InP),窒化ガリウム(GaN)等のIII-V族化合物半導体、炭化ケイ素(SiC)、シリコンゲルマニウム(SiGe)等のIV族化合物半導体、銅・インジウム・セレン(CuInSe2)などカルコパイライト系半導体等の半金属材料;などが例示される。無機材料としては、フッ化カルシウム(CaF),石英(SiO2)の基板材料,アルミナ(Al2O3),ジルコニア(ZrO2)等の酸化物セラミックス、窒化ケイ素(Si3N4),窒化ホウ素(BN),窒化チタン(TiN)等の窒化物セラミックス、炭化ケイ素(SiC),タングステンカーバイド(WC)等の炭化物系セラミックス等が例示される。これらの材料は、いずれか1種が基材を構成していてもよく、2種以上が複合化されて基材を構成していてもよい。なかでも、汎用されている金属材料のうち比較的熱膨張係数の大きい、各種SUS材(いわゆるステンレス鋼であり得る。)等に代表される鉄鋼、インコネル等に代表される耐熱合金、インバー,コバール等に代表される低膨張合金、ハステロイ等に代表される耐食合金、軽量構造材等として有用な1000シリーズ〜7000シリーズアルミニウム合金等に代表されるアルミニウム合金等からなる基材が好適例として挙げられる。かかる基材は、例えば、半導体デバイス製造装置を構成する部材であって、反応性の高い酸素ガスプラズマやハロゲンガスプラズマに晒される部材であってよい。なお、例えば、上述の炭化ケイ素(SiC)等は、便宜上、化合物半導体や無機材料等として異なるカテゴリーに分類され得るが、同一の材料である。
ここに開示される溶射皮膜は、上記の溶射用材料が、例えば任意の基材の表面に溶射されることにより形成される。したがって、かかる溶射皮膜は、例えば、構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とする皮膜として構成される。
ここで「主成分」とは、溶射皮膜を構成する構成成分のうち、最も含有量が多い成分であることを意味している。具体的には、例えば、当該成分が溶射皮膜全体の50質量%以上を占めることを意味し、好ましくは75質量%以上、例えば80質量%以上を占めるものであってよい。かかる希土類元素オキシハロゲン化物については、上記の溶射用材料におけるのと同様であるため詳細な説明は省略する。
詳細な機構は明らかではないが、希土類元素オキシハロゲン化物は、耐プラズマエロージョン性、特にハロゲン系プラズマに対する耐エロージョン特性に優れる。したがって、希土類元素オキシハロゲン化物を主成分とする溶射皮膜は、極めて耐プラズマエロージョン性に優れたものであり得る。
これに対して、ここに開示される溶射皮膜は、希土類元素フッ化物を実質的に含有しない。したがって、プラズマに晒された場合のパーティグルの発生が抑制され、耐プラズマエロージョン性により一層優れたものであり得る。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様については、かかるパーティクル発生数が、15個/cm2以下程度に抑えられるものとして認識することができる。例えば、下記で規定される条件により発生されるパーティクル発生数を15個/cm2以下とすることができる。このような構成により、耐プラズマエロージョン性が確実に向上された溶射皮膜が実現されるために好ましい。
平行平板型プラズマエッチング装置の、上部電極に70mm×50mmの溶射皮膜を設置する。また、ステージに直径300mmのプラズマ処理対象の基板を設置する。そして、まず、溶射皮膜の長期使用後の状態を模すために、2000枚の基板(シリコンウェハ)に対してプラズマドライエッチング処理を施す、延べ100時間のダミーランを行う。プラズマ発生条件は、圧力:13.3Pa(100mTorr),エッチングガス:アルゴン,四フッ化炭素および酸素の混合ガス、印加電圧:13.56MHz,4000Wとする。その後、ステージに計測モニター用の基板(シリコンウェハ)を設置し、上記と同じ条件で30秒間プラズマを発生させる。そして、上記のプラズマ処理前後で、計測モニター用の基板の上に堆積した直径0.06μm以上のパーティクルの数をカウントする。このとき、カウントしたパーティクルの数を基板の面積で除した値をパーティクル発生数(個/cm2)として評価に用いてもよい。なお、このとき、エッチングガスはアルゴンと四フッ化炭素と酸素とを含む混合ガスとする。また、エッチングガスの流量は、例えば、1L/分とする。
なお、上記の溶射皮膜は、ここに開示される溶射用材料を公知の溶射方法に基づく溶射装置に供することで形成することができる。この溶射用材料を好適に溶射する溶射方法は特に制限されない。例えば、好適には、プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法、フレーム溶射法、爆発溶射法、エアロゾルデポジション法等の溶射方法を採用することが例示される。溶射皮膜の特性は、溶射方法およびその溶射条件にある程度依存することがあり得る。しかしながら、いずれの溶射方法および溶射条件を採用した場合であっても、ここに開示される溶射用材料を用いることで、その他の溶射材料を用いた場合と比較して、耐プラズマエロージョン性に優れた溶射皮膜を形成することが可能となる。
No.1の溶射用材料として、半導体デバイス製造装置内の部材の保護皮膜として一般に用いられている酸化イットリウムの粉末を用意した。また、粉末状のイットリウム含有化合物およびフッ素含有化合物を適宜混合して焼成することで、No.2〜7の粉末状の溶射用材料を得た。これらの溶射用材料の物性を調べ、下記の表1に示した。
表1中の「各結晶相の割合」の欄は、各溶射用材料について検出された4種の結晶相の総量を100質量%としたときの、各結晶相の質量割合を、X線回折メインピーク相対強度と、酸素量および窒素量とから算出した結果を示している。
上記実施形態1で用意したNo.1〜7の溶射用材料に加え、No.8〜11の溶射用材料として、4通りの組成のイットリウムオキシフッ化物からなる粒子を新たに用意した。そして、これらNo.8〜11の溶射用材料についてX線回折分析を行ったところ、得られたX線回折スペクトルにおいてY2O3およびYF3に由来する回折ピークはいずれも検出されず、これらの溶射用材料が、順に、YOF、Y7O6F9、Y6O5F8、Y5O4F7の略単相からなることが確認された。参考のために、No.8およびNo.11の溶射用材料について得られたX線回折スペクトルを図1(a)および(b)に順に示した。
すなわち、まず、被溶射材である基材としては、アルミニウム合金(Al6061)からなる板材(70mm×50mm×2.3mm)を用意し、褐色アルミナ研削材(A#40)によるブラスト処理を施して用いた。プラズマ溶射には、市販のプラズマ溶射装置(Praxair Surface Technologies社製,SG−100)を用いて行った。プラズマ発生条件は、プラズマ作動ガスとしてアルゴンガス50psi(0.34MPa)とヘリウムガス50psi(0.34MPa)とを用い、電圧37.0V,電流900Aの条件でプラズマを発生させた。なお、溶射装置への溶射用材料の供給には、粉末供給機(Praxair Surface Technologies社製,Model1264型)を用い、溶射用材料を溶射装置に20g/minの速度で供給し、厚さ200μmの溶射皮膜を形成した。なお、溶射ガンの移動速度は24m/min、溶射距離は90mmとした。
表2中の「溶射皮膜のXRD検出相」の欄は、各溶射皮膜についてX線回折分析をした結果、検出された結晶相を示している。表2中、“Y6O5F8”は化学組成がY6O5F8で表されるイットリウムオキシフッ化物からなる相を、“Y7O6F9”は化学組成がY7O6F9で表されるイットリウムオキシフッ化物からなる相を示し、その他は表1と共通である。なお、参考までに、Y6O5F8のメインピークは28.139°に、Y7O6F9は28.137°に検出される。
具体的には、本例では、用意した溶射皮膜付部材の皮膜表面を鏡面研磨したのち、溶射皮膜の四隅をマスキングテープでマスクすることで、10mm×10mmの溶射皮膜が露出した試験片を用意した。そしてこの試験片を半導体デバイス製造装置の上部電極に設置し、チャンバー内の圧力を13.3Paに保ちながら、四フッ化炭素と酸素とを所定の割合で含むエッチングガスを1L/分の流量で供給し、13.56MHzで700Wの高周波電力をトータルで1時間印加することで、試験片をプラズマに暴露させた。その後、チャンバー内にAirを供給し、プラズマ暴露後の試験片の溶射皮膜に対して、周波数22Hz、出力400Wの超音波を30秒間印加することで溶射皮膜からパーティクルをたたき出し、Air中のパーティクルをカウンターにて計測した。パーティクルの測定には、パーティクルカウンター(PMS社製、LASAIR)を用い、直径100nm以上のパーティクルの総数を測定した。その結果を、100%イットリアからなるNo.1の溶射皮膜についてのパーティクル総数を100(基準)としたときの相対値として算出することで評価した。
表2のNo.1の結果から明らかなように、Y2O3(酸化イットリウム)のみからなる溶射用材料を溶射して形成される溶射膜は、本質的にY2O3のみから構成され、溶射においてY2O3の更なる酸化分解等は見られないことがわかった。
また、No.2〜4の結果から、フッ化イットリウム(YF3)を含む溶射用材料は、溶射により一部が酸化されて、溶射皮膜中にイットリウムオキシフッ化物を形成することがわかった。なお、溶射用材料中のYF3の割合が比較的多い場合は、形成されるイットリウムオキシフッ化物の化学組成は溶射用材料中に共存するイットリウムオキシフッ化物の組成(この例ではY5O4F7)に一致するが、No.4にみられるように、溶射用材料中のYF3の割合が少なくなりYF3の酸化度合いが強まると、溶射皮膜中に酸素含有割合のより高いイットリウムオキシフッ化物(この例ではY6O5F8やYOF)が形成されることがわかった。
一方で、No.8〜11の結果によると、溶射用材料中のイットリウムオキシフッ化物のうちでも、YOFよりも酸素含有割合の少ないY7O6F9,Y6O5F8およびY5O4F7等は、溶射による酸化で、まずはより安定なYOF相へと変化し、Y2O3が直接形成されることはないことがわかった。すなわち、YOFよりも酸素含有割合の少ないイットリウムオキシフッ化物を溶射用材料として用いることで、溶射皮膜中のY2O3の形成を抑制できることが確認できた。
溶射皮膜の特性については、No.1のY2O3のみから構成される溶射皮膜のプラズマ環境下でのパーティクル発生数が(E)100(基準)であり、シリコンウェハ上のパーティクル数は凡そ500〜1000個/枚程度にまで達した。なお、計測されたパーティクルのうち、凡そ90%以上が直径0.06μm以上0.2μm未満の範囲のこれまで管理されていなかった極微小なパーティクルであった。一般に、イットリア系の溶射皮膜は、アルミナ系の溶射皮膜等と比べて耐プラズマエロージョン性に優れることが知られているが、この実施形態においては、Y2O3からなる溶射皮膜について最もパーティクル数が多く、全ての溶射皮膜中で最もプラズマ耐性に劣る結果であった。
No.5〜8の結果からは、パーティクル数は溶射皮膜中のY2O3の割合が低下するほど減少する傾向が見られた。
なお、溶射用材料としてY7O6F9およびY6O5F8を用いて形成されたNo.9および10の溶射皮膜は、パーティクル数が(A)1未満と、溶射用材料としてY5O4F7を用いて形成されたNo.11の溶射用被膜よりも、さらに耐プラズマエロージョン特性に優れていることがわかった。気孔率の観点からは、No.11の溶射用被膜がさらに好ましいといえる。
表2に示されるように、パーティクル数〔2〕の評価結果は、パーティクル数〔1〕の評価結果と概ね対応することがわかった。パーティクル数〔2〕では、No.8の100%YOFからなる溶射材料から得た溶射皮膜についてのみ、より微細なパーティクルの発生割合がCからDへと若干増大したことが確認された。しかしながら、Y2O3のみからなるNo.1の溶射皮膜と比較して、その他の溶射皮膜については、相対的にパーティクルが大幅に減少し、特に、19〜60nmの微細なパーティクルの発生も少量に抑制されていることがわかった。19nm以上のパーティクルとは、現段階で計測可能な最も小さいパーティクルの大きさであり、このような微細なパーティクルがほぼゼロに近いという結果であった。これにより、ここに開示される溶射用材料の溶射物である溶射皮膜は、パーティクルの検出下限の精度を高めても、依然として高い耐プラズマエロージョン性を示すことが確認された。
表2に示されるように、パーティクル数〔3〕の評価結果は、パーティクル数〔2〕の評価結果とよく対応することがわかった。しかしながら、パーティクル数〔3〕で検出するパーティクルは100nm以上の比較的粗大な粒子であり、A〜Dの臨界値もEに近い評価となるように区分けされている。つまり、パーティクル数〔3〕によると、超音波の衝撃によってより粗大なパーティクルをより多く発生させ、検出することができる。このことから、パーティクル数〔3〕によると、ハロゲン系プラズマの照射により直接発生されたパーティクルに加えて、実際には発生していないがその後にパーティクルとなり得るパーティクル発生源をも、評価できるといえる。このパーティクル発生源とは、ハロゲン系プラズマの照射により変質した溶射皮膜(変質層)であって、その後のプラズマエッチングによりパーティクルとなり得る部分であると考えられる。このことから、ハロゲン系プラズマに晒された溶射皮膜に超音波を照射することで、溶射皮膜の耐プラズマエロージョン性をより精度よく評価することができるといえる。また、パーティクル数〔3〕によると、例えば、シリコンウェハを2000枚よりも大量に処理したときの、溶射皮膜に由来するパーティクル発生状況を予測することができるといえる。そして、表2の結果から、例えば、No.6〜8の溶射皮膜については、ハロゲン系プラズマに晒されたときのパーティクルの発生がより高度に抑制されていることが確認できた。
Claims (9)
- 構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)が、全体の77質量%以上の割合で含まれ、
前記希土類元素オキシハロゲン化物において、
前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.1以上であり、
前記希土類元素に対する前記酸素のモル比(O/RE)は、0.9以下であり、
前記希土類元素の酸化物を実質的に含まない、溶射用材料。 - さらに、前記希土類元素のフッ化物が、全体の23質量%以下の割合で含まれている、請求項1に記載の溶射用材料。
- 前記希土類元素のハロゲン化物を実質的に含まない、請求項1に記載の溶射用材料。
- 前記希土類元素がイットリウムであり、前記ハロゲン元素がフッ素であり、前記希土類元素オキシハロゲン化物がイットリウムオキシフッ化物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶射用材料。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶射用材料を基材の表面に溶射して、溶射皮膜を形成する方法。
- 構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、
前記希土類元素のフッ化物を実質的に含まず、
前記希土類元素オキシハロゲン化物として、
前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.1以上であ
る希土類元素オキシハロゲン化物を含む、溶射皮膜。 - 前記希土類元素の酸化物を実質的に含まない、請求項6に記載の溶射皮膜。
- 前記希土類元素がイットリウムであり、前記ハロゲン元素がフッ素であり、前記希土類元素オキシハロゲン化物がイットリウムオキシフッ化物である、請求項6または7に記載の溶射皮膜。
- 基材の表面に、請求項6〜8のいずれか1項に記載の溶射皮膜が備えられている、溶射皮膜付部材。
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