(第1実施形態)
図1〜図4を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、車両走行用の駆動力を電動モータから得る電気自動車に搭載される車両用空調装置1に適用されている。エジェクタ式冷凍サイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内に送風される送風空気の温度を調整する機能を果たす。従って、エジェクタ式冷凍サイクル10の温度調整対象流体は、送風空気である。
本実施形態の車両用空調装置1では、冷房モードの運転、暖房モードの運転、除湿暖房モードの運転を切り替えることができる。冷房モードは、送風空気を冷却して車室内を冷房する運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内を加熱する運転モードである。除湿暖房モードは、冷却して除湿された送風空気を再加熱して車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
さらに、エジェクタ式冷凍サイクル10は、車両用空調装置1の運転モードに応じて、冷房モードの冷媒回路、暖房モードの冷媒回路、および除湿暖房モードの冷媒回路を切り替えることができる。なお、図1では、冷房モードの冷媒回路における冷媒の流れを白抜き矢印で示し、暖房モードの冷媒回路における冷媒の流れを黒塗り矢印で示し、除湿暖房モードの冷媒回路における冷媒の流れを斜線ハッチング付き矢印で示している。
また、エジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。この冷媒には、圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
まず、図1の全体構成図を用いて、エジェクタ式冷凍サイクル10を構成する各構成機器について説明する。
圧縮機11は、エジェクタ式冷凍サイクル10において、冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機11は、車両ボンネット内に配置されている。本実施形態では、圧縮機11として、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機を採用している。圧縮機11は、後述する空調制御装置40から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
圧縮機11の吐出口には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と後述する吸引側蒸発器17および流出側蒸発器18を通過後の送風空気とを熱交換させて、高圧冷媒を熱源として送風空気を加熱する放熱器である。室内凝縮器12は、後述する室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されている。
室内凝縮器12の冷媒出口には、互いに連通する3つの流入出口を有する第1三方継手13aの流入口側が接続されている。このような三方継手としては、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたもの等を採用することができる。
三方継手は、3つの流入出口のうち、1つを流入口とし、残余の2つを流出口として用いることで、冷媒の流れを分岐する分岐部として機能させることができる。また、三方継手は、3つの流入出口のうち、2つを流入口とし、残余の1つを流出口として用いることで、2つの冷媒の流れを合流させる合流部として機能させることができる。
さらに、エジェクタ式冷凍サイクル10は、後述するように、第2〜第4三方継手13b〜13dを備えている。これらの第2〜第4三方継手13b〜13dの基本的構成は、第1三方継手13aと同様である。
第1三方継手13aの一方の流出口には、暖房用膨張弁14aを介して、第2三方継手13bの一方の流入口側が接続されている。第1三方継手13aの他方の流出口には、第1開閉弁15aを介して、第2三方継手13bの他方の流入口側が接続されている。第2三方継手13bの流出口には、室外熱交換器16の冷媒入口側が接続されている。
暖房用膨張弁14aは、少なくとも暖房モード時に、室内凝縮器12から流出した高圧冷媒を減圧させる高段側減圧部であるとともに、室内凝縮器12から流出する冷媒の流量を調整する高段側流量調整部である。
具体的には、暖房用膨張弁14aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータ(具体的には、ステッピングモータ)とを有して構成される電気式の可変絞り機構である。暖房用膨張弁14aは、空調制御装置40から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。暖房用膨張弁14aは、弁開度を全閉とすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
さらに、エジェクタ式冷凍サイクル10は、後述するように、冷房用膨張弁14bを備えている。冷房用膨張弁14bの基本的構成は、暖房用膨張弁14aと同様である。冷房用膨張弁14bは、弁開度を全開にすることによって冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能を有している。
第1開閉弁15aは、第1三方継手13aの他方の流出口と第2三方継手13bの他方の流入口とを接続する迂回通路を開閉する電磁弁である。第1開閉弁15aは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。さらに、エジェクタ式冷凍サイクル10は、後述するように、第2開閉弁15bを備えている。第2開閉弁15bの基本的構成は、第1開閉弁15aと同様である。
ここで、冷媒が第1開閉弁15aを流通する際に生じる圧力損失は、冷媒が暖房用膨張弁14aを流通する際に生じる圧力損失と比較して極めて小さい。このため、第1開閉弁15aが開いている際には、室内凝縮器12から第1三方継手13aへ流入した冷媒は、殆ど暖房用膨張弁14a側へ流出することなく、第1開閉弁15a側へ流出する。
室外熱交換器16は、第2三方継手13bから流出した冷媒と外気ファン16aから送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器16は、車両ボンネット内の前方側に配置されている。
室外熱交換器16は、少なくとも冷房モード時には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能し、少なくとも暖房モード時には、暖房用膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。外気ファン16aは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される電動送風機である。
室外熱交換器16の冷媒出口には、第3三方継手13cの流入口側が接続されている。第3三方継手13cの一方の流出口には、冷房用膨張弁14bの入口側が接続されている。第3三方継手13cの他方の流出口には、第2開閉弁15bを介して、第4三方継手13dの一方の流入口側が接続されている。
冷房用膨張弁14bは、エジェクタモジュール20のモジュール入口21aへ流入する冷媒を減圧させる低段側減圧部であるとともに、エジェクタモジュール20のモジュール入口21aへ流入する冷媒の流量を調整する低段側流量調整部である。
エジェクタモジュール20は、図1の破線で囲まれたサイクル構成機器を一体化(換言すると、モジュール化)させたものである。より具体的には、エジェクタモジュール20は、分岐部24、エジェクタ25、可変絞り機構26、バイパス通路20e、モジュール開閉弁27等を一体化させたものである。
分岐部24は、室外熱交換器16から流出した冷媒(より具体的には、冷房用膨張弁14bから流出した冷媒)の流れを分岐する部位である。そして、分岐部24では、分岐された一方の冷媒をエジェクタ25のノズル部51側へ流出させ、分岐された他方の冷媒を可変絞り機構26の入口側へ流出させる。
エジェクタ25は、分岐部24にて分岐された一方の冷媒を減圧させて噴射するノズル部51を有し、冷媒減圧装置としての機能を果たす。さらに、エジェクタ25は、ノズル部51から噴射された噴射冷媒の吸引作用によって、外部から冷媒を吸引して循環させる冷媒循環装置としての機能を果たす。より具体的には、本実施形態のエジェクタ25は、後述する吸引側蒸発器17から流出した冷媒を吸引する。
これに加えて、エジェクタ25は、ノズル部51から噴射された噴射冷媒と外部から吸引した吸引冷媒との混合冷媒の運動エネルギを圧力エネルギに変換することによって、混合冷媒を昇圧させるエネルギ変換装置としての機能を果たす。
可変絞り機構26は、分岐部24にて分岐された他方の冷媒を減圧させる冷媒減圧装置である。バイパス通路20eは、室外熱交換器16から流出した冷媒(より具体的には、冷房用膨張弁14bから流出した冷媒)を、可変絞り機構26を迂回させて可変絞り機構26の下流側へ導く冷媒通路である。モジュール開閉弁27は、バイパス通路20eを開閉する開閉機構である。
エジェクタモジュール20の詳細構成については、図2、図3を用いて説明する。なお、図2、図3における上下の各矢印は、エジェクタ式冷凍サイクル10を車両用空調装置に搭載した状態における上下の各方向を示している。このことは、以下の図面でも同様である。また、図2は、図3のII−II断面図であり、図3は、図2の矢印III方向の矢視図である。
なお、図示の簡略化および説明の明確化のため、図1の全体構成図に示したエジェクタモジュール20における冷媒流れ方向と、図2に示したエジェクタモジュール20における冷媒流れ方向は、異なる方向となっている。
エジェクタモジュール20のボデー部21は、金属製(本実施形態では、アルミニウム製)の複数の構成部材を組み合わせることによって形成されている。ボデー部21は、エジェクタモジュール20の外殻を形成するとともに、内部にエジェクタ25、可変絞り機構26等を収容するハウジングとしての機能を果たす。ボデー部21は、樹脂にて形成されていてもよい。
ボデー部21の内部には、複数の冷媒通路20a〜20e、空間20f等が形成されている。さらに、ボデー部21の外表面には、モジュール入口21a、冷媒吸引口21b、エジェクタ側出口21c、絞り側出口21d、低圧入口21e、モジュール出口21fといった複数の冷媒出入口が開口している。
モジュール入口21aは、室外熱交換器16から流出した冷媒(より具体的には、冷房用膨張弁14bから流出した冷媒)をエジェクタモジュール20の内部へ流入させる冷媒入口である。従って、モジュール入口21aは、分岐部24の冷媒入口側に連通している。
冷媒吸引口21bは、吸引側蒸発器17から流出した冷媒を吸引する冷媒入口である。冷媒吸引口21bから吸引された吸引冷媒は、エジェクタ25のノズル部51から噴射された噴射冷媒と合流する。冷媒吸引口21bから吸引された吸引冷媒を流通させて、噴射冷媒と合流させる冷媒通路は、吸引側通路20bである。
エジェクタ側出口21cは、エジェクタ25のディフューザ部52の冷媒流れ最下流部に設けられており、ディフューザ部52にて昇圧された冷媒を流出側蒸発器18の入口側へ流出させる冷媒出口である。絞り側出口21dは、可変絞り機構26にて減圧された冷媒を、吸引側蒸発器17の入口側へ流出させる冷媒出口である。
低圧入口21eは、流出側蒸発器18から流出した冷媒を流入させる冷媒入口である。モジュール出口21fは、低圧入口21eから流入した冷媒を、圧縮機11の吸入口側(より具体的には、第4三方継手13dの他方の流入口側)へ流出させる冷媒出口である。低圧入口21eからモジュール出口21fへ至る冷媒通路は、流出側通路20cである。
さらに、モジュール入口21aとモジュール出口21fは、図2に示すように、同一平面上で同一方向に開口している。冷媒吸引口21b、エジェクタ側出口21c、絞り側出口21d、および低圧入口21eは、図2、図3に示すように、同一平面上で同一方向に開口している。ここで、冷媒出入口が同一方向に開口しているとは、冷媒の流入出方向が一致していることを意味している。
次に、エジェクタ25は、ノズル部51、ボデー部21に形成された冷媒吸引口21b、吸引側通路20b、ディフューザ部52等によって構成されている。
ノズル部51は、内部に形成された冷媒通路にて冷媒を等エントロピ的に減圧させて噴射するものである。ノズル部51は、冷媒の流れ方向に向かって先細る略円筒状の金属(本実施形態では、ステンレス合金または真鍮)で形成されている。ノズル部51は、圧入等の手段によりボデー部21に固定されている。
ノズル部51は、通路断面積が変化しない固定ノズル部である。ノズル部51の内部に形成された冷媒通路には、冷媒通路面積が最も縮小した喉部が形成され、この喉部から冷媒を噴射する冷媒噴射口へ向かって冷媒通路面積が徐々に拡大する末広部が設けられている。つまり、ノズル部51は、ラバールノズルとして構成されている。
さらに、本実施形態では、ノズル部51として、エジェクタ式冷凍サイクル10の通常運転時に、冷媒噴射口から噴射される噴射冷媒の流速が音速以上となるように設定されたものが採用されている。もちろん、ノズル部51を先細ノズルで構成してもよい。
ディフューザ部52は、混合冷媒を昇圧させる昇圧部である。ディフューザ部52の内部に形成された冷媒通路は、通路断面積が冷媒流れ下流側に向かって徐々に拡大する略円錐台形状に形成されている。ディフューザ部52では、このような通路形状によって、ディフューザ部52を流通する混合冷媒の運動エネルギを圧力エネルギに変換することができる。
本実施形態のディフューザ部52は、ボデー部21に一体的に形成されている。もちろん、ディフューザ部52をボデー部21と別部材で形成し、圧入等の手段によってボデー部21に固定してもよい。
また、ボデー部21のノズル部51の冷媒流れ上流部には、気液分離空間20fが形成されている。気液分離空間20fは、回転体形状に形成されている。気液分離空間20fでは、内部へ流入した冷媒に中心軸回りの旋回流を生じさせ、遠心力の作用によって冷媒の気液を分離する気液分離部を構成している。気液分離空間20fの中心軸およびディフューザ部52の中心軸は、ノズル部51の中心軸CL1と同軸上に配置されている。
気液分離空間20fの外周側には、ボデー部21に形成された分岐通路20dが接続されている。分岐通路20dは、気液分離空間20fの外周側の冷媒を可変絞り機構26の入口側へ導く冷媒通路である。
このため、気液分離空間20fで分離された冷媒のうち主に気相冷媒、換言すると、気液分離空間20fの中心軸側の比較的乾き度の高い冷媒は、エジェクタ25のノズル部51へ流入する。一方、気液分離空間20fで分離された冷媒のうち主に液相冷媒、換言すると、気液分離空間20fの外周側の比較的乾き度の低い冷媒は、分岐通路20dを介して可変絞り機構26へ流入する。従って、本実施形態の分岐部24は、気液分離空間20fの内部に形成されている。
次に、可変絞り機構26は、絞り通路20a、絞り弁61、減圧側駆動機構62等によって構成されている。
絞り通路20aは、分岐部24にて分岐された他方の冷媒を減圧させる減圧部である。絞り通路20aは、円柱形状や円錐台形状等の回転体形状に形成されている。本実施形態の減圧部は、ボデー部21と一体的に形成されている。もちろん、減圧部として、ボデー部21に対して別部材で形成されたオリフィスを採用して、圧入等の手段によってボデー部21に固定してもよい。
絞り弁61は、球状に形成されており、絞り通路20aの中心軸方向に変位することによって、絞り通路20aの通路断面積(すなわち、絞り開度)を変化させる減圧側弁体部である。さらに、絞り弁61を絞り通路20aの出口部に当接させることによって、絞り通路20aを閉塞させることもできる。
減圧側駆動機構62は、絞り弁61を絞り通路20aの中心軸方向に変位させる減圧側駆動部である。減圧側駆動機構62は、機械的機構で構成されている。
より具体的には、減圧側駆動機構62は、減圧側感温部62aを備えている。減圧側感温部62aは、吸引側蒸発器17から流出した冷媒の温度および圧力に応じて変形する減圧側変形部材であるダイヤフラム62bを有している。そして、減圧側駆動機構62では、ダイヤフラム62bの変形を絞り弁61に伝達することによって、絞り弁61を変位させる。
ダイヤフラム62bは、減圧側感温部62aにおいて、温度変化に伴って圧力変化する感温媒体が封入される封入空間62cを区画形成している。本実施形態では、感温媒体として、エジェクタ式冷凍サイクル10を循環する冷媒を主成分とするものを採用している。
減圧側感温部62aは、ボデー部21内の吸引側通路20bに連通する空間に配置されている。このため、封入空間62c内の感温媒体の圧力は、吸引側通路20bを流通する低圧冷媒(すなわち、吸引側蒸発器17から流出した冷媒)の温度に応じて変化する。そして、ダイヤフラム62bは、吸引側通路20bを流通する低圧冷媒の圧力と封入空間62c内の感温媒体の圧力との圧力差に応じて変形する。
このため、ダイヤフラム62bは弾性に富み、かつ耐圧性および気密性に優れる材質で形成されていることが望ましい。そこで、本実施形態では、ダイヤフラム62bとして、ステンレス(具体的には、SUS304)製の円形状の金属薄板を採用している。さらに、減圧側駆動機構62では、ダイヤフラム62bの変位が作動棒63を介して絞り弁61に伝達される。作動棒63は、絞り弁61の変位方向に延びる円柱状に形成されている。
本実施形態の減圧側感温部62aでは、吸引側通路20bを流通する低圧冷媒の温度(過熱度)が上昇すると、封入空間62c内の感温媒体の圧力が上昇し、封入空間62c内の感温媒体の圧力から吸引側通路20bを流通する低圧冷媒の圧力の圧力差が大きくなる。これにより、ダイヤフラム62bが変形すると、絞り弁61が絞り通路20aの絞り開度を拡大させる側に変位する。
一方、吸引側通路20bを流通する低圧冷媒の温度(過熱度)が低下すると、封入空間62c内の感温媒体の圧力が低下し、封入空間62c内の感温媒体の圧力から吸引側通路20bを流通する低圧冷媒の圧力の圧力差が小さくなる。これにより、ダイヤフラム62bが変形すると、絞り弁61が絞り通路20aの絞り開度を縮小させる側に変位する。
つまり、減圧側駆動機構62は、吸引側蒸発器17から流出した冷媒の過熱度に応じて、絞り弁61を変位させることができる。そこで、本実施形態の減圧側駆動機構62は、吸引側蒸発器17の出口側冷媒の過熱度が予め定めた減圧側基準過熱度(具体的には、0℃)に近づくように絞り弁61を変位させる。
すなわち、本実施形態の減圧側駆動機構62は、吸引側蒸発器17の出口側冷媒が飽和気相冷媒となるように絞り弁61を変位させる。なお、減圧側基準過熱度は、絞り弁61に荷重をかける弾性部材であるコイルバネの荷重を変化させることによって、調整することができる。
ここで、減圧側駆動機構62が、絞り弁61を変位させる変位方向の中心軸を減圧側中心軸CL2と定義すると、減圧側中心軸CL2は、絞り通路20aの中心軸、作動棒63の中心軸と一致している。
さらに、本実施形態のエジェクタモジュール20では、ノズル部51の中心軸CL1と減圧側中心軸CL2がねじれの位置関係となっている。そして、減圧側中心軸CL2の方向から見たときに、減圧側駆動機構62とノズル部51の中心軸CL1が重合するように、エジェクタ25と可変絞り機構26とを近接配置している。
なお、ねじれの位置関係とは、2本の直線が平行ではなく、かつ、交わらないように配置された位置関係を意味している。さらに、本実施形態では、ノズル部51の中心軸CL1と減圧側中心軸CL2がなす角度、すなわち、ノズル部51の中心軸CL1のベクトルと減圧側中心軸CL2のベクトルがなす角度が、90°となっている。
バイパス通路20eは、モジュール入口21aと絞り側出口21dとを連通させるように形成されている。つまり、本実施形態のバイパス通路20eは、気液分離空間20fの上流側の冷媒を、分岐部24および可変絞り機構26を迂回させて、絞り側出口21dへ導くように形成されている。
モジュール開閉弁27は、弁体部27aを変位させることによって、バイパス通路20eを開閉する電磁弁である。モジュール開閉弁27は、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
さらに、本実施形態では、バイパス通路20eの最小通路断面積A1が、可変絞り機構26の最大通路断面積A2以上であって、最大通路断面積A2よりも充分に大きく設定されている。このため、モジュール入口21aから流入した冷媒がバイパス通路20eを流通する際に生じる圧力損失は、モジュール入口21aから流入した冷媒が可変絞り機構26を流通する際に生じる圧力損失と比較して極めて小さい。
従って、モジュール開閉弁27がバイパス通路20eを開くと、モジュール入口21aから流入した冷媒は、殆ど気液分離空間20f側へ流入することなく、バイパス通路20e側へ流出する。
ここで、バイパス通路20eの最小通路断面積A1とは、モジュール入口21aから絞り側出口21dへ至るバイパス通路20eのうち、最も通路断面積が小さい部位の通路断面積である。本実施形態では、図2に示すように、モジュール開閉弁27の通路断面積が最小通路断面積A1となっている。また、可変絞り機構26が絞り開度を全開とした際の最大通路断面積とは、減圧側駆動機構62が絞り弁61を絞り通路20aから最も離れる側に変位させた際の絞り通路20aの通路断面積を意味している。
次に、流出側蒸発器18は、送風機18aから車室内へ向けて送風された送風空気とエジェクタモジュール20のエジェクタ側出口21cから流出した低圧冷媒とを熱交換させ、この低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する吸熱用熱交換器である。流出側蒸発器18は、図1に示すように、吸引側蒸発器17とともに室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されている。
流出側蒸発器18の冷媒出口には、エジェクタモジュール20の低圧入口21e側が接続されている。このため、流出側蒸発器18から流出した冷媒は、流出側通路20cを介して圧縮機11の吸入口側(より具体的には、第4三方継手13dの他方の流入口側)へ流出する。送風機18aは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される電動送風機である。
吸引側蒸発器17は、流出側蒸発器18を通過した送風空気とエジェクタモジュール20の絞り側出口21dから流出した低圧冷媒とを熱交換させ、この低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する吸熱用熱交換器である。吸引側蒸発器17の冷媒出口には、エジェクタモジュール20の冷媒吸引口21b側が接続されている。
さらに、本実施形態の吸引側蒸発器17および流出側蒸発器18は、蒸発器ユニットとして一体的に構成されている。具体的には、吸引側蒸発器17および流出側蒸発器18は、いずれも冷媒を流通させる複数本のチューブと、この複数のチューブの両端側に配置されてチューブを流通する冷媒の集合あるいは分配を行う一対の集合分配用タンクとを有する、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器で構成されている。
そして、吸引側蒸発器17および流出側蒸発器18の集合分配用タンクを同一部材にて形成することによって、吸引側蒸発器17および流出側蒸発器18を一体化させている。この際、本実施形態では、流出側蒸発器18が吸引側蒸発器17に対して送風空気流れ上流側に配置されている。このため、送風空気は、図1の破線矢印に示すように、流出側蒸発器18→吸引側蒸発器17の順に流れる。
また、図1に示すように、第4三方継手13dの流出口には、アキュムレータ19の入口側が接続されている。アキュムレータ19は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ19の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(すなわち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。室内空調ユニット30は、エジェクタ式冷凍サイクル10によって温度調整された送風空気を車室内の適切な箇所へ吹き出すための空気通路を形成するものである。
室内空調ユニット30は、図1に示すように、その外殻を形成するケーシング31の内部に形成される空気通路に、送風機18a、流出側蒸発器18、吸引側蒸発器17、室内凝縮器12等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成するもので、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31の送風空気流れ最上流側には、ケーシング31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33は、ケーシング31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させることができる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、送風機18aが配置されている。送風機18aの送風空気流れ下流側には、流出側蒸発器18、吸引側蒸発器17、および室内凝縮器12が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。つまり、流出側蒸発器18および吸引側蒸発器17は、室内凝縮器12に対して、送風空気流れ上流側に配置されている。
また、ケーシング31内には、流出側蒸発器18および吸引側蒸発器17を通過した送風空気を、室内凝縮器12を迂回させて下流側へ流す冷風バイパス通路35が形成されている。
流出側蒸発器18および吸引側蒸発器17の送風空気流れ下流側であって、かつ、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側には、流出側蒸発器18および吸引側蒸発器17を通過後の送風空気のうち、室内凝縮器12を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。
室内凝縮器12の送風空気流れ下流側には、室内凝縮器12にて加熱された送風空気と冷風バイパス通路35を通過して室内凝縮器12にて加熱されていない送風空気とを混合させる混合空間が設けられている。さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間にて混合された送風空気(空調風)を、車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。
この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、エアミックスドア34が、室内凝縮器12を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度も調整される。
エアミックスドア34は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス開口穴の開口面積を調整するフェイスドア、フット開口穴の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ開口穴の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、空調風が吹き出される吹出口を切り替える吹出モード切替装置を構成するものである。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
次に、本実施形態の電気制御部の概要について説明する。空調制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器11、14a、14b、15a、15b、16a、18a、27等の作動を制御する。
また、空調制御装置40の入力側には、図4のブロック図に示すように、内気温センサ41、外気温センサ42、日射センサ43、高圧センサ44、蒸発器温度センサ45、空調風温度センサ46等の空調制御用のセンサ群が接続されている。空調制御装置40には、これらの空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ41は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ42は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ43は、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。高圧センサ44は、圧縮機11の吐出口側から暖房用膨張弁14aの入口側へ至る冷媒流路における冷媒の高圧圧力Pdを検出する高圧圧力検出部である。
蒸発器温度センサ45は、吸引側蒸発器17における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。空調風温度センサ46は、混合空間から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
さらに、空調制御装置40の入力側には、図4に示すように、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル50が接続され、この操作パネル50に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
操作パネル50に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の自動制御運転を設定あるいは解除するオートスイッチ、車室内の冷房を行うことを要求する冷房スイッチ、送風機18aの風量をマニュアル設定する風量設定スイッチ、車室内の目標温度Tsetを設定する温度設定スイッチ等がある。
なお、本実施形態の空調制御装置40は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、空調制御装置40のうち、圧縮機11の作動を制御する構成は、吐出能力制御部40aである。モジュール開閉弁27の作動を制御する構成は、開閉機構制御部40bである。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、車室内の冷房、暖房、および除湿暖房を行うことができる。これに応じて、エジェクタ式冷凍サイクル10では、冷房モードの運転、暖房モードの運転、および除湿暖房モードの運転を切り替える。各運転モードは、空調制御プログラムが実行されることによって切り替えられる。
空調制御プログラムは、操作パネル50のオートスイッチが投入(ON)された際に実行される。空調制御プログラムでは、車室内の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、車室内に吹き出される送風空気(空調風)の目標温度である。
目標吹出温度TAOは、内気温センサ41によって検出された内気温Tr、外気温センサ42によって検出された外気温Tam、日射センサ43によって検出された日射量As、および操作パネル50の温度設定スイッチによって設定された設定温度Tsetを用いて算定される。
そして、オートスイッチが投入(ON)された状態で、冷房スイッチが投入(ON)されると冷房モードが実行される。冷房スイッチが解除(OFF)されている際であって、目標吹出温度TAOが予め定めた基準暖房温度α以上となっている場合には、暖房モードが実行される。冷房スイッチが解除(OFF)されている際であって、目標吹出温度TAOが基準暖房温度αよりも低くなっている場合には、除湿暖房モードの運転が実行される。以下に各運転モードについて説明する。
(a)冷房モード
冷房モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁14aを全閉状態とし、冷房用膨張弁14bを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とし、第1開閉弁15aを開き、第2開閉弁15bを閉じ、モジュール開閉弁27を閉じる。
これにより、冷房モードでは、図1の白抜き矢印に示すように、冷媒が、圧縮機11の吐出口(→室内凝縮器12)→第1開閉弁15a→室外熱交換器16→冷房用膨張弁14b→エジェクタモジュール20のモジュール入口21a→エジェクタモジュール20のエジェクタ側出口21c→流出側蒸発器18→エジェクタモジュール20の流出側通路20c→アキュムレータ19→圧縮機11の吸入口の順に循環するとともに、エジェクタモジュール20の絞り側出口21d→吸引側蒸発器17→エジェクタモジュール20の冷媒吸引口21bの順に流れるエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶されている制御マップを参照して、吸引側蒸発器17から吹き出される送風空気の目標蒸発器温度TEOを決定する。そして、蒸発器温度センサ45によって検出された蒸発器温度Tefinが目標蒸発器温度TEOに近づくように圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号を決定する。
この制御マップでは、目標吹出温度TAOの低下に伴って、目標蒸発器温度TEOを低下させるように決定する。さらに、目標蒸発器温度TEOは、流出側蒸発器18および吸引側蒸発器17の着霜を抑制可能な範囲(具体的には、1℃以上)の値に決定される。
また、空調制御装置40は、高圧センサ44によって検出された高圧圧力Pdに基づいて、予め空調制御装置40に記憶されている制御マップを参照して、冷房時目標過冷却度を決定する。そして、冷房用膨張弁14bへ流入する冷媒の過冷却度が、冷房時目標過冷却度に近づくように、冷房用膨張弁14bへ出力される制御パルスを決定する。冷房時目標過冷却度は、冷房モード時に、エジェクタ式冷凍サイクル10のCOPが略最大値となるように設定された値である。
また、空調制御装置40は、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の通風路を全閉とし、冷風バイパス通路35側の通風路を全開とするように、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータに出力する制御信号を決定する。
そして、上記の如く決定された制御信号等を各種制御対象機器へ出力する。その後、車両用空調装置1の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、検出信号および操作信号の読み込み→各種制御対象機器の作動状態の決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。なお、このような制御ルーチンの繰り返しは、他の運転モード時にも同様に行われる。
従って、冷房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、室内凝縮器12へ流入する。冷房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の通風路を全閉としているので、室内凝縮器12へ流入した高圧冷媒は、送風空気に放熱することなく、室内凝縮器12から流出する。
室内凝縮器12から流出した高圧冷媒は、暖房用膨張弁14aが全閉状態となり、かつ、第1開閉弁15aが開いているので、暖房用膨張弁14aにて減圧されることなく、室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した高圧冷媒は、外気ファン16aによって送風された外気と熱交換し、放熱して凝縮する。室外熱交換器16にて凝縮した冷媒は、第2開閉弁15bが閉じているので、冷房用膨張弁14bへ流入して減圧される。
冷房用膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒は、エジェクタモジュール20のモジュール入口21aへ流入する。モジュール入口21aへ流入した冷媒は、モジュール開閉弁27が閉じているので、エジェクタモジュール20の気液分離空間20fへ流入して気液分離される。気液分離空間20fにて分離された冷媒の流れは、気液分離空間20fによって形成される分岐部24にて分岐される。
気液分離空間20fにて分離された主に気相冷媒(より詳細には、比較的乾き度の高い冷媒)である一方の冷媒は、エジェクタ25のノズル部51へ流入して等エントロピ的に減圧されて噴射される。そして、この噴射冷媒の吸引作用によって、吸引側蒸発器17から流出した冷媒が、エジェクタモジュール20の冷媒吸引口21bから吸引される。
ノズル部51から噴射された噴射冷媒、および冷媒吸引口21bから吸引された吸引冷媒は、エジェクタ25のディフューザ部52へ流入する。ディフューザ部52では、冷媒通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の圧力が上昇する。ディフューザ部52にて昇圧された冷媒は、流出側蒸発器18へ流入する。
流出側蒸発器18へ流入した冷媒は、送風機18aによって送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、送風機18aによって送風された送風空気が冷却される。流出側蒸発器18から流出した冷媒は、エジェクタモジュール20の流出側通路20cを介して、アキュムレータ19へ流入して気液分離される。アキュムレータ19にて分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
一方、気液分離空間20fにて分離された主に液相冷媒(より詳細には、比較的乾き度の低い冷媒)である他方の冷媒は、可変絞り機構26へ流入して減圧される。この際、可変絞り機構26の絞り開度は、吸引側蒸発器17の出口側冷媒の過熱度が減圧側基準過熱度に近づくように調整される。
可変絞り機構26にて減圧された冷媒は、吸引側蒸発器17へ流入する。吸引側蒸発器17へ流入した冷媒は、流出側蒸発器18通過後の送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、流出側蒸発器18通過後の送風空気がさらに冷却される。吸引側蒸発器17から流出した冷媒は、冷媒吸引口21bから吸引される。
以上の如く、冷房モードでは、流出側蒸発器18および吸引側蒸発器17の双方にて送風空気を冷却することができる。そして、冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を実現することができる。
この際、エジェクタ式冷凍サイクル10では、流出側蒸発器18下流側の冷媒、すなわちエジェクタ25のディフューザ部52にて昇圧された冷媒を圧縮機11へ吸入させることができる。従って、エジェクタ式冷凍サイクル10では、蒸発器における冷媒蒸発圧力と圧縮機吸入冷媒の圧力が同等となる通常の冷凍サイクル装置よりも、圧縮機11の消費動力を低減させて、サイクルのCOPを向上させることができる。
さらに、本実施形態のエジェクタモジュール20は、可変絞り機構26を備えているので、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて、可変絞り機構26の絞り開度を変化させることができる。そして、負荷変動に応じて、分岐部24からノズル部51へ流入する冷媒流量、および可変絞り機構26へ流入する冷媒流量を適切に調整することができる。
その結果、冷房モードのエジェクタ式冷凍サイクル10では、負荷変動によらず、上述したCOP向上効果を得ることができる。
また、エジェクタ式冷凍サイクル10では、流出側蒸発器18における冷媒蒸発圧力をディフューザ部52にて昇圧された冷媒圧力とし、吸引側蒸発器17における冷媒蒸発圧力をノズル部51にて減圧された直後の低い冷媒圧力とすることができる。従って、各蒸発器における冷媒蒸発温度と送風空気との温度差を確保して、送風空気を効率的に冷却することができる。
(b)暖房モード
暖房モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、第1開閉弁15aを閉じ、第2開閉弁15bを開く。
これにより、暖房モードでは、図1の黒塗り矢印に示すように、冷媒が、圧縮機11の吐出口→室内凝縮器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→第2開閉弁15b→アキュムレータ19→圧縮機11の吸入口の順に循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶されている制御マップを参照して、室内凝縮器12における目標凝縮圧力PCOを決定する。そして、高圧圧力Pdが目標凝縮圧力PCOに近づくように圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号を決定する。この制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標凝縮圧力PCOを上昇させるように決定する。
また、空調制御装置40は、高圧圧力Pdに基づいて、予め空調制御装置40に記憶されている制御マップを参照して、暖房時目標過冷却度を決定する。そして、暖房用膨張弁14aへ流入する冷媒の過冷却度が、暖房時目標過冷却度に近づくように、暖房用膨張弁14aへ出力される制御パルスを決定する。暖房時目標過冷却度は、暖房モード時に、エジェクタ式冷凍サイクル10のCOPが略最大値となるように設定された値である。
また、空調制御装置40は、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の通風路を全開とし、冷風バイパス通路35側の通風路を全閉とするように、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータに出力する制御信号を決定する。
従って、暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、室内凝縮器12へ流入する。暖房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の通風路を全開としているので、室内凝縮器12へ流入した高圧冷媒は、送風空気に放熱して凝縮する。これにより、送風空気が加熱される。
室内凝縮器12から流出した高圧冷媒は、第1開閉弁15aが閉じているので、暖房用膨張弁14aへ流入して減圧される。暖房用膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒は、室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した低圧冷媒は、外気ファン16aによって送風された外気から吸熱して蒸発する。
室外熱交換器16から流出した冷媒は、冷房用膨張弁14bが全閉状態となり、かつ、第2開閉弁15bが開いているので、第2開閉弁15bを介して、アキュムレータ19へ流入して気液分離される。アキュムレータ19にて分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
以上の如く、暖房モードでは、室内凝縮器12にて送風空気を加熱することができる。そして、冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を実現することができる。
(c)除湿暖房モード
除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを絞り状態とし、第1開閉弁15aを閉じ、第2開閉弁15bを閉じ、モジュール開閉弁27を開く。
これにより、除湿暖房モードでは、図1の斜線ハッチング付き矢印に示すように、圧縮機11の吐出口→室内凝縮器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→冷房用膨張弁14b→エジェクタモジュール20のモジュール入口21a→バイパス通路20e→エジェクタモジュール20の絞り側出口21d→吸引側蒸発器17→エジェクタ25→流出側蒸発器18→エジェクタモジュール20の流出側通路20c→アキュムレータ19→圧縮機11の吸入口の順に循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、除湿暖房モードでは、室内凝縮器12、室外熱交換器16、吸引側蒸発器17、流出側蒸発器18が、冷媒流れに対して、この順に直列的に接続される冷媒回路に切り替えられる。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、冷房モードと同様に、圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号を決定する。
また、空調制御装置40は、目標吹出温度TAOおよび外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置40に記憶されている制御マップを参照して、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bへ出力する制御パルスを決定する。
この制御マップでは、空調風温度センサ46によって検出された送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、目標吹出温度TAOの上昇および外気温Tamの低下に伴って、暖房用膨張弁14aの絞り開度を縮小させ、冷房用膨張弁14bの絞り開度を増加させるように制御パルスを決定する。
また、空調制御装置40は、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の通風路を全開とし、冷風バイパス通路35側の通風路を全閉とするように、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータに出力する制御信号を決定する。
従って、除湿暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、室内凝縮器12へ流入する。除湿暖房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の通風路を全開としているので、室内凝縮器12へ流入した高圧冷媒は、流出側蒸発器18および吸引側蒸発器17を通過後の送風空気と熱交換して放熱する。これにより、送風空気が加熱される。
室内凝縮器12から流出した高圧冷媒は、第1開閉弁15aが閉じているので、暖房用膨張弁14aへ流入して減圧される。暖房用膨張弁14aにて減圧された冷媒は、室外熱交換器16へ流入する。
この際、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、室外熱交換器16は、冷媒の有する熱を外気に放熱させる放熱器として機能する。一方、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、室外熱交換器16は、外気の有する熱を吸熱させて蒸発させる蒸発器として機能する。
さらに、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、空調制御装置40が目標吹出温度TAOの上昇および外気温Tamの低下に伴って、室外熱交換器16の冷媒の飽和温度を低下させることによって、室外熱交換器16における冷媒の放熱量を減少させることができる。これにより、室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させて送風空気の加熱能力を向上させることができる。
一方、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、空調制御装置40が目標吹出温度TAOの上昇および外気温Tamの低下に伴って、室外熱交換器16の冷媒の飽和温度を低下させることによって、室外熱交換器16における冷媒の吸熱量を増加させることができる。これにより、室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させて送風空気の加熱能力を向上させることができる。
室外熱交換器16から流出した冷媒は、冷房用膨張弁14bへ流入して減圧される。冷房用膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒は、エジェクタモジュール20のモジュール入口21aへ流入する。モジュール入口21aへ流入した冷媒は、モジュール開閉弁27が開いているので、殆ど全ての流量がバイパス通路20eを介して、絞り側出口21dから流出する。
絞り側出口21dから流出した冷媒は、吸引側蒸発器17へ流入する。吸引側蒸発器17から流出した冷媒は、エジェクタモジュール20の冷媒吸引口21bへ流入する。冷媒吸引口21bへ流入した冷媒は、エジェクタモジュール20の吸引側通路20bおよびディフューザ部52を介して、エジェクタ側出口21cから流出する。
エジェクタ側出口21cから流出した冷媒は、流出側蒸発器18へ流入する。流出側蒸発器18から流出した冷媒は、エジェクタモジュール20の低圧入口21eへ流入する。低圧入口21eへ流入した冷媒は、エジェクタモジュール20の流出側通路20cを介して、モジュール出口21fから流出する。
従って、冷房用膨張弁14bから流出した冷媒は、エジェクタモジュール20を介して、吸引側蒸発器17→流出側蒸発器18の順に流れる。そして、吸引側蒸発器17および流出側蒸発器18を通過する際に、送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内凝縮器12通過前の送風空気が冷却されて除湿される。
モジュール出口21fから流出した冷媒は、アキュムレータ19へ流入して気液分離される。アキュムレータ19にて分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
以上の如く、除湿暖房モードでは、吸引側蒸発器17および流出側蒸発器18にて送風空気を冷却して除湿し、除湿された送風空気を室内凝縮器12にて再加熱することができる。そして、再加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を実現することができる。
ところで、除湿暖房モードのエジェクタ式冷凍サイクル10では、目標吹出温度TAOの上昇および外気温Tamの低下に伴って、暖房用膨張弁14aの絞り開度を縮小させ、冷房用膨張弁14bの絞り開度を増加させている。
つまり、除湿暖房モードのエジェクタ式冷凍サイクル10では、要求される送風空気の加熱能力(すなわち、暖房能力)の増加に伴って、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度を低下させている。より具体的には、室外熱交換器16が蒸発器として機能する際には、冷媒蒸発温度を低下させている。
さらに、除湿暖房モードのエジェクタ式冷凍サイクル10では、室外熱交換器16、吸引側蒸発器17、流出側蒸発器18が、冷媒流れに対して、この順に直列的に接続される冷媒回路に切り替えられる。このため、除湿暖房モード時に、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度を、吸引側蒸発器17あるいは流出側蒸発器18における冷媒蒸発温度よりも低下させることはできない。
従って、エジェクタ式冷凍サイクル10において、除湿暖房モード時の送風空気の加熱能力を最大とするためには、冷房用膨張弁14bを全開として、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度を、吸引側蒸発器17および流出側蒸発器18の冷媒蒸発温度に近づけることが有効である。
これに対して、本実施形態のエジェクタモジュール20では、除湿暖房モード時に、モジュール開閉弁27がバイパス通路20eを開くので、冷房用膨張弁14bから流出した冷媒を、エジェクタ25のノズル部51および可変絞り機構26を迂回させて、吸引側蒸発器17および流出側蒸発器18へ流入させることができる。
従って、室外熱交換器16から流出した冷媒が、エジェクタ25のノズル部51および可変絞り機構26を流通する際の圧力損失によって、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度が吸引側蒸発器17あるいは流出側蒸発器18における冷媒蒸発温度よりも上昇してしまうことを抑制することができる。つまり、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度を、吸引側蒸発器17および流出側蒸発器18における冷媒蒸発温度に効果的に近づけることができる。
その結果、除湿暖房モードのエジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒がエジェクタ25のノズル部51および可変絞り機構26を流通する際の圧力損失によって、室外熱交換器16における冷媒の吸熱量が減少してしまうことを抑制して、送風空気の温度調整能力(具体的には、送風空気の加熱能力)が低下してしまうことを抑制することができる。
すなわち、本実施形態のエジェクタモジュール20によれば、エジェクタ式冷凍サイクル10の温度調整能力の低下を抑制すること、および負荷変動によらずCOP向上効果を充分に得ることができる。
さらに、本実施形態のエジェクタモジュール20では、複数のサイクル構成機構をモジュール化させているので、これらのサイクル構成機器をエジェクタ式冷凍サイクル10として組み付ける際に組付性を向上させることができる。換言すると、エジェクタ式冷凍サイクル10の生産性を向上させることができる。
また、本実施形態のエジェクタモジュール20では、減圧側中心軸CL2方向から見たときに、減圧側駆動機構62とノズル部の中心軸CL1が重合配置されている。これによれば、比較的体格が大きくなりやすい減圧側駆動機構62を有する可変絞り機構26とエジェクタ25とを近接配置することができ、エジェクタモジュール20全体としての大型化を抑制することができる。
また、本実施形態のエジェクタモジュール20では、パイパス通路20eの最小通路断面積A1が、可変絞り機構26の最大通路断面積A2以上に設定されている。これによれば、冷媒がパイパス通路20eを流通する際に生じる圧力損失を充分に低減させることができ、除湿暖房モードに送風空気の加熱能力が低下してしまうことを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態のエジェクタモジュール20のボデー部21には、気液分離空間20fが形成されている。そして、冷房モード時に、気液分離空間20fにて分離された主に気相冷媒をエジェクタ25のノズル部51へ流入させている。これによれば、ノズル部51におけるエネルギ変換効率(すなわち、ノズル効率)を向上させることができ、より一層、サイクルのCOPを向上させることができる。
さらに、冷房モード時に、気液分離空間20fにて分離された主に液相冷媒を可変絞り機構26を介して吸引側蒸発器17へ流入させている。これによれば、流出側蒸発器18よりも冷媒蒸発温度が低くなる吸引側蒸発器17へ充分な冷媒を供給することができ、吸引側蒸発器17にて充分な送風空気の冷却能力を発揮させることができる。
また、本実施形態のエジェクタモジュール20のバイパス通路20eは、気液分離空間20fの上流側の冷媒を絞り側出口21d側へ導くように形成されている。これによれば、モジュール開閉弁27がパイパス通路20eを開いた際に、気液分離空間20fにて生じる圧力損失の影響等によって、送風空気の温度調整能力が低下してしまうことも抑制することができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図5に示すように、エジェクタモジュール20の構成を変更した例を説明する。なお、図5は、第1実施形態で説明した図2に対応する図面である。図5では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
本実施形態のエジェクタモジュール20のバイパス通路20eは、気液分離空間20fの下流側と絞り側出口21dとを連通させるように形成されている。つまり、本実施形態のバイパス通路20eは、分岐通路20dの途中の部位と絞り通路20aの出口側とを接続するように形成されている。換言すると、本実施形態のバイパス通路20eは、分岐部24の下流側の冷媒を、可変絞り機構26を迂回させて、絞り側出口21dへ導くように形成されている。
さらに、本実施形態では、分岐通路20dのうち、少なくともバイパス通路20eよりも上流側の部位の通路断面積A3が、バイパス通路20eの最小通路断面積A1と同等、あるいは、最小通路断面積A1以上の値に設定されている。このため、気液分離空間20fから流出した冷媒が分岐通路20dの上流部およびバイパス通路20eを流通する際に生じる圧力損失は、気液分離空間20fから流出した冷媒がエジェクタ25のノズル部51を流通する際に生じる圧力損失と比較して極めて小さい。
従って、モジュール開閉弁27がバイパス通路20eを開くと、気液分離空間20fへ流入した冷媒は、気液分離空間20fへ流入した冷媒は、殆どノズル部51側へ流出することなく、バイパス通路20e側へ流出する。
その他のエジェクタモジュール20およびエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10においても、第1実施形態と同様に、冷房モードでは、負荷変動によらずCOP向上効果を得ることができ、除湿暖房モードでは、送風空気の温度調整能力(具体的には、送風空気の加熱能力)が低下してしまうことを抑制することができる。
さらに、本実施形態のエジェクタモジュール20では、バイパス通路20eの上流側の部位を、分岐通路20dの上流側の部位と共用化しているので、エジェクタモジュール20の小型化を図ることができる。
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図6に示すように、エジェクタモジュール20の構成を変更した例を説明する。本実施形態のエジェクタモジュール20は、エジェクタ式冷凍サイクル10の構成機器のうち、分岐部24、エジェクタ25、可変絞り機構26、バイパス通路20e、モジュール開閉弁27に加えて、冷房用膨張弁14bを一体化させたものである。
さらに、本実施形態のエジェクタモジュール20のバイパス通路20eは、冷房用膨張弁14bの上流側と絞り側出口21dとを連通させるように形成されている。つまり、本実施形態のバイパス通路20eは、冷房用膨張弁14bの上流側の冷媒を、冷房用膨張弁14b、分岐部24、および可変絞り機構26を迂回させて、絞り側出口21dへ導くように形成されている。
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、除湿暖房モード時に、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、第1開閉弁15aを閉じ、第2開閉弁15bを閉じ、モジュール開閉弁27を開く。そして、室外熱交換器16が蒸発器として機能するように、第1実施形態と同様に、暖房用膨張弁14aの絞り開度を調整する。
その他のエジェクタモジュール20およびエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10においても、第1実施形態と同様に、冷房モードでは、負荷変動によらずCOP向上効果を得ることができ、除湿暖房モードでは、送風空気の温度調整能力(具体的には、送風空気の加熱能力)が低下してしまうことを抑制することができる。
さらに、本実施形態のエジェクタモジュール20では、冷房用膨張弁14bが一体化されているので、より一層、エジェクタ式冷凍サイクル10全体としての生産性の向上を図ることができる。
また、本実施形態のエジェクタモジュール20のバイパス通路20eは、冷房用膨張弁14bの上流側の冷媒を、絞り側出口21dへ導くように形成されている。
これによれば、除湿暖房モード時に、冷房用膨張弁14bを全閉状態とすることで、室外熱交換器16から流出した冷媒の全流量を吸引側蒸発器17および流出側蒸発器18の順に流すことができる。従って、除湿暖房モード時に、吸引側蒸発器17および流出側蒸発器18の冷却能力の低下を抑制することができる。
(第4実施形態)
本実施形態では、第3実施形態に対して、図7に示すように、モジュール開閉弁27と冷房用膨張弁14bを一体化させた例を説明する。
具体的には、本実施形態では、モジュール開閉弁27の弁体部27aと冷房用膨張弁14bの弁体141を、共通する電動アクチュエータであるステッピングモータ142で変位させている。冷房用膨張弁14bの弁体141は、ステッピングモータ142に直接連結されて、冷房用膨張弁14bの絞り開度を変化させる。
弁体部27aは、コイルバネ27bからモジュール開閉弁27(すなわち、バイパス通路20eを閉じる側の荷重を受けている。そして、ステッピングモータ142が冷房用膨張弁14bの弁体141を全開位置からさらに開く側に変位させると、モジュール開閉弁27の弁体部27aが弁体141とともに変位して、モジュール開閉弁27を開く。
その他のエジェクタモジュール20およびエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、エジェクタ式冷凍サイクル10においても、冷房モードでは、負荷変動によらずCOP向上効果を得ることができ、除湿暖房モードでは、送風空気の温度調整能力(具体的には、送風空気の加熱能力)が低下してしまうことを抑制することができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、本実施形態のエジェクタモジュール20では、モジュール開閉弁27の弁体部27aと冷房用膨張弁14bの弁体141を、共通するステッピングモータ142で変位させている。従って、モジュール開閉弁27および冷房用膨張弁14bを開閉するための制御が容易となる。
また、本実施形態のエジェクタモジュール20では、ステッピングモータ142が冷房用膨張弁14bの絞り開度を全開とした後、モジュール開閉弁27の開度を徐々に増加させる。このため、開閉弁等によってモジュール開閉弁27を急激に開く場合に対して、モジュール開閉弁27を開いた際の水撃作用の影響を小さくすることができ、騒音や振動の発生を抑制することができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
上述の各実施形態では、本発明に係るエジェクタモジュール20を車両に搭載されるエジェクタ式冷凍サイクル10に適用した例を説明したが、エジェクタモジュール20の適用はこれに限定されない。例えば、定置型の空調装置、冷温保存庫等に用いられるエジェクタ式冷凍サイクルに適用してもよい。
また、エジェクタ式冷凍サイクル10を構成する各構成機器は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
例えば、上述の実施形態では、圧縮機11として、電動圧縮機を採用した例を説明したが、圧縮機11として、プーリ、ベルト等を介して車両走行用エンジンから伝達される回転駆動力によって駆動されるエンジン駆動式の圧縮機を採用してもよい。さらに、エンジン駆動式の圧縮機としては、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整可能な可変容量型圧縮機、あるいは電磁クラッチの断続により圧縮機の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整可能な固定容量型圧縮機を採用することができる。
また、上述の実施形態では、暖房用膨張弁14aおよび第1開閉弁15aを採用した例を説明したが、暖房用膨張弁14aとして、弁開度を全開にすることで冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能を有するものを採用してもよい。これによれば、第1開閉弁15a、第1、第2三方継手13a、13bを廃止することができる。
また、上述の実施形態では、エジェクタ25のノズル部51として冷媒通路断面積が一定の固定ノズル部を採用した例を説明したが、ノズル部51として冷媒通路断面積を変更可能に構成された可変ノズル部を採用してもよい。このような可変ノズル部としては、ノズル部の内部に配置されてノズル部の冷媒通路面積を調整するニードル弁、このニードル弁をノズル部の軸方向に変位させる電動式の駆動部を有するものを採用すればよい。
さらに、可変ノズル部として、冷媒通路を閉塞する全閉機能を有するものを採用することが望ましい。そして、モジュール開閉弁27がバイパス通路20eを開いた際に、可変ノズル部を全閉状態とすることで、室外熱交換器16から流出した冷媒の全流量をバイパス通路へ流入させやすい。
また、上述の実施形態では、減圧側駆動部として機械的機構によって絞り弁61を変位させる減圧側駆動機構62を採用した例を説明したが、減圧側駆動部として電動アクチュエータ(例えば、ステッピングモータ、ソレノイド)を採用してもよい。
また、上述の実施形態では、冷媒としてR134aを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R1234yf、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用してもよい。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。さらに、冷媒として二酸化炭素を採用して、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成してもよい。