以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1〜5には、本発明の1実施形態としての医療用弁10が示されている。この医療用弁10は、流体流路の開口部分を構成する開口部材としてのハウジング12に対して、スリット14が形成された略ディスク状の弾性弁体16が装着された構造とされており、この弾性弁体16のスリット14に対して雄コネクタが繰り返し挿抜可能とされている。なお、以下の説明において、上下方向および軸方向の外内方向とは、何れも図2中の上下方向をいう。
より詳細には、ハウジング12は、全体として略筒形状とされており、何れも略筒形状とされた外側保持部18と内側保持部20とハウジング本体22とからなる3つの部材の組合せ構造をもって構成されている。即ち、本実施形態では、ハウジング本体22の上方に内側保持部20が非接着で組み付けられると共に、内側保持部20の外周側に外側保持部18が重ね合わされて、ハウジング本体22と外側保持部18とが固着されることにより、ハウジング12が構成されている。
ハウジング本体22は、軸方向で上下に延びる中央筒状部24の外周側に周壁部26が設けられて、それぞれの上端部分が上底部28で連結されることにより構成されている。この中央筒状部24の軸方向寸法は周壁部26の軸方向寸法より大きくされており、周壁部26の内部において、中央筒状部24が周壁部26よりも下方へ突出している。
さらに、上底部28の上面における径方向中間部分には、周方向の全周に亘って延びる円環形状の固定用溝30が形成されており、上底部28の上面に開口している。そして、固定用溝30の外周側の壁部が、外側保持部18と内側保持部20をそれぞれハウジング本体22に対して径方向で位置決めする環状の支持壁32とされている。なお、固定用溝30の内外両壁の対向内面には所定の傾斜角度が付されており、固定用溝30の断面形状が開口方向に向かって次第に拡径されている。
更にまた、支持壁32の上面には、上方に向かって突出する溶着用突部34が一体形成されている。なお、かかる溶着用突部34は、外側保持部18とハウジング本体22との組付けの際に超音波で溶融されることから、製品状態では実質的に消失しているが、図4では、説明および理解を容易とするために、溶着用突部34を破線で仮想的に図示している。また、かかる溶着用突部34は、外側保持部18側から、ハウジング本体22の支持壁32に重ね合わされるように設けられてもよい。
また、周壁部26の上端近くの外周面には、軸直角方向に広がる円環形状の段差面36が形成されている一方、段差面36よりも下側には、軸方向に延びる凹部38が、周方向の全周に亘って複数形成されている。これら複数個の凹部38で外周面に凹凸が付されることにより、使用者が医療用弁10におけるハウジング本体22の外周面を容易に把持できるようにされている。一方、周壁部26の内周面には、ロック溝40が形成されており、医療用弁10に対して下方からルアーロック式のコネクタ等を接続することができるようにされている。
上記の如き構造とされたハウジング本体22の上方において、外側保持部18が外周側に組み付けられる一方、内側保持部20が内周側に組み付けられる。
外側保持部18は、下方の大径筒部42と上方の小径筒部44とが径方向に広がる段差状の環状肩部46で一体的に接続された構造とされている。換言すれば、外側保持部18の軸方向中間部分には環状肩部46が設けられており、この環状肩部46よりも上側が小径筒部44とされている一方、下側が大径筒部42とされている。なお、後述の説明から理解されるように、本実施形態では、外側保持部18における小径筒部44および環状肩部46により弾性弁体16を内側保持部20との間で支持していると共に、大径筒部42により外側支持部18がハウジング本体22に対して補助的に固定されるようになっている。
ここにおいて、小径筒部44の内周面および外周面は、軸方向外方に行くに従って次第に小径となるテーパ形状とされている。そして、小径筒部44の内径寸法が最大となる基端部分(最下部)では、その内径寸法が固定用溝30の外周側壁の開口径よりも小さく且つ固定用溝30の内周側壁の開口径よりも大きくされている。一方、小径筒部44の内径寸法が最小となる先端部分(最上部)では、その内径寸法が弾性弁体16の外径寸法と略等しいか僅かに大きくされている。
さらに、外側保持部18における小径筒部44の先端部分は内周側へ屈曲状に広がる円環状の先端壁部48とされていると共に、先端壁部48の内周縁部には、軸方向内方に折り返されるようにして下方へ延びる外側の爪部としての外側係合爪50が形成されている。なお、本実施形態では、外側係合爪50が周方向の全周に亘る円環形状で形成されており、外側係合爪50の外周側には、径方向で所定幅をもって周方向に延びる外側保持溝52が、軸方向下方に開口する円環状溝として形成されている。
なお、小径筒部44の外周面には、例えばルアーロックコネクタの雌ねじ部が螺合する雄ねじ部54が形成されている。雄ねじ部54は、例えばISO594で規定された、ルアーロックコネクタの雌ねじ部との接続が可能な二条ねじとされる。
また、外側保持部18の外径寸法は、本実施形態のような雄ねじ部54を形成しない場合には、小径筒部44の外径が6.0〜7.0mmの範囲内で設定されることが好ましく、本実施形態のように雄ねじ部54を形成する場合には、ねじ山を含んだ小径筒部44の外径が7.2〜8.0mmの範囲内で設定されることが好ましい。
さらに、外側保持部18の環状肩部46における下面には、下方に開口する嵌合溝56が形成されている。また、環状肩部46下面の内周縁部には、軸方向下方に突出する係止凸部58が形成されている。特に本実施形態では、嵌合溝56が周方向の全周に延びる環状溝とされていると共に、係止凸部58も周方向の全周に延びる環状凸部とされている。
一方、内側保持部20は、全体として軸方向の内方から外方に行くに従って小径となるテーパ筒形状とされており、内側保持部20の下端部は一定の厚さ寸法(図4中の上下方向)で外周側に延び出す環状基端部60とされている。この環状基端部60は、ハウジング本体22の固定用溝30に嵌まり込む大きさと形状を有していると共に、軸方向厚さ寸法が固定用溝30の深さ寸法よりも小さくされている。
また、内側保持部20の軸方向上側部分には、雁首状の屈曲断面で内周側へ狭まった環状の受座部62が形成されている。また、受座部62の内周縁部には、軸方向上方に向かって突出した環状の、内側の爪部としての内側係合爪64が形成されている。なお、内側係合爪64の先端は、その内面が内周側に凸となる湾曲断面形状とされており、かかる湾曲断面形状は、例えば略一定の曲率半径を有することが好ましい。
かかる構造とされた外側保持部18および内側保持部20がハウジング本体22に対して組み付けられることにより、ハウジング12が構成されている。即ち、ハウジング本体22における固定用溝30の底面に、環状基端部60を含む内側保持部20の軸方向内方の端面が重ね合わされることで、内側保持部20がハウジング本体22に対して支持されている。
そして、かかる内側保持部20に対して外側保持部18が外周側から覆うように設けられる。その際、嵌合溝56の底面が、小径筒部44の軸方向基端側の端面として、ハウジング本体22の支持壁32の上面に重ね合わされて支持されている。そして、支持壁32の上面に設けられた溶着用突部34を超音波で溶融させることにより、外側保持部18とハウジング本体22とが固着されるようになっている。
また、かかる組付け時には、外側保持部18の軸方向上端は内側保持部20の軸方向上端よりも、軸方向上方に位置している。更に、外側保持部18の軸方向下端は、ハウジング本体22の段差面36に対して軸方向で僅かな離隔距離をもって重ね合わされている。
上記の如き外側保持部18と内側保持部20とハウジング本体22との組付け時には、固定用溝30の開口部分に対して外側保持部18における小径筒部44の軸方向内方の端部が嵌まり込んで、固定用溝30の外周側の壁面に嵌合されている。これにより、本実施形態では、固定用溝30に対して、内側保持部20と外側保持部18の各軸方向内方の端部が嵌まり込んでおり、それによって、内側保持部20と外側保持部18がハウジング本体22に対して径方向で位置決めされている。
また、かかる組付け時には、内側保持部20の受座部62は、外側係合爪50の先端壁部48に対して軸方向で略対向して配置されている。そして、内側保持部20の内側係合爪64が、外側保持部18の外側係合爪50と、軸方向で隙間を隔てて対向位置されている。これら内側係合爪64と外側係合爪50は、軸方向の投影で互いに少なくとも一部が重なり合うことが望ましく、好適には、径方向の半分以上の領域において軸方向の投影で互いに重なり合うようにされる。特に本実施形態では、外側係合爪50の内周端(径方向内側端部)の軸方向延長線上に、内側係合爪64の内面である湾曲面が位置するようにされている。
また、内側保持部20の外径寸法は外側保持部18の内径寸法よりも小さくされており、図4等に示されるように、外側保持部18と内側保持部20との間の装着用スペースに弾性弁体16が装着される。
かかる弾性弁体16は略ディスク形状とされており、中央部分66にスリット14が形成されている。また、弾性弁体16の外周部分には軸方向内外に突出する筒状保持部68が設けられており、筒状保持部68の外周面が外側保持部18の内周面に重ね合わせられている一方、筒状保持部68の内周面が内側保持部20の外周面に重ね合わせられている。更に、中央部分66と筒状保持部68とが周方向の全周に亘って延びる環状連結部70で接続されていることにより、弾性弁体16は一体成形品として形成されている。換言すれば、弾性弁体16の外周部分において、筒状保持部68が環状連結部70の外周側に形成されている。
なお、図4に示される雄コネクタの未挿入状態では、弾性弁体16における中央部分66の上端面とハウジング12の上端面が同一平面状に位置するようにされている。また、本実施形態では、スリット14は、弾性弁体16の厚さ方向に貫通する直線状とされているが、中央から放射状に延びる3本以上のスリットなどでも良い。
この環状連結部70は、弾性弁体16の中央部分66よりも厚さ寸法を小さくすることにより形成されており、即ち弾性弁体16における軸方向外面側および内面側の外周部分には、それぞれ周方向の全周に亘って延びる溝状の外側環状溝72および内側環状溝74が形成されている。これら両環状溝72,74により弾性弁体16の外周部分には括れが形成されており、この括れ部分、即ち両環状溝72,74の底部の軸方向間が薄肉部としての環状連結部70とされている。
なお、両環状溝72,74の形状はそれぞれ、外側係合爪50および内側係合爪64に略対応するものとされて、それら外内の係合爪50,64が嵌め込まれ得るようになっている。また、内側環状溝74の内周側には所定の径方向幅寸法で周方向に連続して延びる環状凹溝76が設けられており、これら内側環状溝74と環状凹溝76とが径方向で連続して形成されている。
そして、環状連結部70の外周側に接続される筒状保持部68は、外側保持部18と内側保持部20との間の装着用スペースに対応した形状とされている。即ち、本実施形態では、環状連結部70から軸方向外方に突出する上方支持部78と軸方向内方に突出する下方支持部80を含んで、筒状保持部68が構成されている。
要するに、上方支持部78は所定の軸方向寸法をもって環状連結部70から上方に突出していると共に、径方向幅寸法が外側保持溝52における径方向幅寸法と略同じか僅かに大きくされている。また、上方支持部78の内周面形状が外側係合爪50の外周面形状に略対応している一方、上方支持部78の外周面形状が小径筒部44の内周面形状に略対応している。更に、下方支持部80は所定の軸方向寸法をもって環状連結部70から下方に突出しており、本実施形態では、ハウジング12と弾性弁体16との組付時において、外側保持部18の環状肩部46よりも下方となる位置まで突出している。そして、下方支持部80の内周面形状が内側保持部20の外周面形状に略対応している一方、下方支持部80の外周面形状が小径筒部44の内周面形状に対応している。これにより、下方支持部80の内外周面が内側保持部20と外側保持部18における小径筒部44との間で厚さ方向となる径方向で挟まれて支持されている。
また、下方支持部80は突出方向基端側(図4中の上方)よりも突出方向先端側(図4中の下方)の径寸法が大きくされており、突出先端部分(軸方向最下端)には、外周側に広がる径方向突出部としてのフランジ状部82が一体形成されている。このフランジ状部82の径方向幅寸法は内側保持部20の環状基端部60の上面における径方向幅寸法と略等しくされている。更に、フランジ状部82の上面には、外側保持部18の係止凸部58に対応した位置と大きさで、周方向の全周に亘って延びる上側係止凹部84が形成されており、この上側係止凹部84の外周側が軸方向外方に向かって突出する係止突部86とされている。更にまた、フランジ状部82の下面には、周方向の全周に亘って延びる下側係止凹部88が形成されており、例えば環状基端部60の上面に下側係止凹部88と対応する凸部が設けられることにより、内側保持部20上での弾性弁体16の位置決め効果が発揮される他、これらの凹凸部の摩擦に基づく弾性弁体16の脱落防止効果が発揮され得る。
なお、本実施形態のハウジング12を構成する外側保持部18、内側保持部20、ハウジング本体22のそれぞれは、弾性弁体16を確実に保持し得る強度を有する材料から形成されることが好ましく、熱可塑性樹脂が好適に採用される。また、弾性弁体16は弾性を有する材料から形成されており、気密性や再封止性を考慮して、イソプレンゴムやシリコーンゴム等の合成ゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマー等が好適に採用される。
また、弾性弁体16において、上方支持部78の上端部における外径寸法は、好適には5.0〜6.5mmの範囲内で設定される。当該寸法が5.0mmよりも小さいと、外径が略4.0mmに統一された標準的なルアーロックコネクタのルアーチップの挿入が困難になるおそれがある一方、当該寸法が6.5mmよりも大きいと、医療用弁10の外径が大きくなって、標準的なルアーロックコネクタの雌ねじ部との接続が困難となるおそれがあるからである。
また、弾性弁体16の中央部分66の厚さ寸法は、好適には、1.0〜3.0mmの範囲内で設定される。中央部分66の厚さ寸法が1.0mmよりも小さいと、シリンジ先端部等の雄コネクタの挿入時におけるシール性が不十分となるおそれがある一方、厚さ寸法が3.0mmよりも大きいと、雄コネクタの挿入抵抗が大きくなって、挿入操作が難しくなるおそれがあるからである。
ここにおいて、弾性弁体16の下面には周方向の全周に亘って、所定の径方向幅寸法をもって連続して延びる周溝90が形成されている。この周溝90はスリット14と環状連結部70との径方向間に設けられていると共に、周溝90の底面92は環状連結部70の下面よりも上方に位置している。本実施形態では、この周溝90は円環状の凹溝とされている。また、かかる周溝90は、環状凹溝76の内周側端部から形成されており、環状凹溝76の内周側壁面と周溝90の内周側壁面94とが同一平面として形成されている。更に、周溝90の外周側壁面96は、軸方向外方になるにつれて内周側に直線状に傾斜する傾斜面とされている。これにより、本実施形態では、周溝90の外周側壁面96と外側環状溝72との間において、周溝90の外周側の壁部である溝外周壁98が環状連結部70から連続的に形成されている。
そして、上記の如き形状とされた弾性弁体16がハウジング12に組み付けられることにより、本実施形態の医療用弁10が構成されている。即ち、ハウジング本体22の開口側端部に形成される固定用溝30に内側保持部20の環状基端部60が嵌め入れられることにより非接着で組み付けられて、径方向で位置決めされる。そして、環状基端部60の上面に対して弾性弁体16のフランジ状部82が重ね合わされると共に、内側保持部20の内側係合爪64が弾性弁体16の内側環状溝74に食い込むように押し入れられる。
かかる状態において、軸方向外方から外側保持部18が重ね合わされて、必要に応じて外側保持部18がハウジング本体22に対して軸方向で押し付けられる。これにより、外側保持部18の外側保持溝52に筒状保持部68の上方支持部78が押し入れられて支持されると共に、弾性弁体16の外側環状溝72に対して外側保持部18の外側係合爪50が食い込むように押し入れられる。なお、弾性弁体16の外内面に外内環状溝72,74が形成されていることから弾性弁体16と外内保持部18,20とが容易に位置決めされて、精度良く組み付けられる。
また、ハウジング本体22の上底部28の支持壁32に突設された溶着用突部34に対して、外側保持部18の環状肩部46が当接状態で重ね合わされる。そして、かかる溶着用突部34の当接部位を軸方向で押し付けながら超音波溶着装置のホーンを当てて溶着用突部34に超音波エネルギーを集中的に作用させることで溶着用突部34とその当接部位を溶融させ、実質的に溶着用突部34を溶融消失させてハウジング本体22の上底部28に外側保持部18の環状肩部46が重ね合わされた状態で固着を完了する。なお、超音波溶着に際して、ハウジング本体22と外側保持部18との軸方向の位置決めは、溶着用突部34の溶融消失に伴って、支持壁32と環状肩部46との当接面積が急激に増大したりすることなどによって規定され得る。
その結果、超音波溶着が完了した製品状態では、環状肩部46に設けられた嵌合溝56の上底面と支持壁32の上面とが略当接した状態とされる。また、弾性弁体16に設けられた上側係止凹部84に対して外側保持部18の内面に設けられた係止凸部58が嵌め入れられて係止されると共に、弾性弁体16の係止突部86がハウジング本体22の固定用溝30に嵌め入れられて支持壁32の内周面に係止される。
なお、嵌合溝56の上底面と支持壁32の上面との固着は、上述の如き溶着用突部34を利用した超音波溶着が好適に採用されるが、例えば溶着用突部を用いない接着等であってもよい。
また、外側保持部18をハウジング本体22に対して軸方向に押し付けて固着することにより、外側保持部18の軸方向内方に位置する内側保持部20が、ハウジング本体22や外側保持部18等の何れに対しても接着等されない非固着で外れ止め支持されて固定的に組み付けられている。
さらに、筒状保持部68の下方支持部80が外側保持部18と内側保持部20との間に挟まれて支持されている。そして、フランジ状部82の上側係止凹部84に対して外側保持部18の係止凸部58が嵌め入れられると共に、ハウジング本体22に対して外側保持部18を軸方向外方から押し付けて固着することにより、弾性弁体16のフランジ状部82が、外側保持部18と内側保持部20の環状基端部60との軸方向間で挟まれて支持されている。即ち、本実施形態では、ハウジング12に対して弾性弁体16が非接着とされつつ、径方向および軸方向で位置決め固定されており、筒状保持部68が外側保持部18と内側保持部20との間で保持されることにより、弾性弁体16の外周部分がハウジング12に支持されている。
かかる弾性弁体16のハウジング12への組付け状態において、弾性弁体16の下面に設けられた周溝90の底面92は、内側係合爪64の先端よりも軸方向外側、特に、本実施形態では、外側係合爪50の先端よりも軸方向外側に位置している。
ここで、組付け状態での弾性弁体16において、周溝90の内壁面から外側係合爪50までの距離B(図5参照)、即ち溝外周壁98の肉厚寸法Bが外内環状溝72,74間の肉厚寸法A(図5参照)、即ち環状連結部70の軸方向寸法Aよりも大きくされている。本実施形態では、周溝90の底面92が外側係合爪50の先端よりも軸方向外側に位置していることから、周溝90の内壁面から外側係合爪50までの距離Bは、周溝90の外周側壁面96から外側係合爪50までの距離とされる。このように、肉厚寸法Bを肉厚寸法Aよりも大きくすることで、雄コネクタを医療用弁10から離脱させた後における弾性復元作用による弾性弁体16の元の形状への戻り性を良好にすることができる。また、このことから、本発明において前記第2の態様に記載された薄肉部(環状連結部70)の肉厚寸法は、弾性弁体16をハウジング12へ組み付けて内外の係合爪64,50で挟んだ状態での肉厚寸法として把握される。
なお、本実施形態では、組付け状態における溝外周壁98の肉厚寸法Bが環状連結部70の軸方向寸法Aよりも大きくされているが、これらの寸法の大きさは何等限定されるものではない。即ち、後述するように、雄コネクタの挿入時において、弾性弁体16に発生する引張応力や歪が環状連結部70のみに集中することを軽減または回避して、溝外周壁98においても引張応力や歪が分散して発生させられるという作用が発揮される程度に厚さ寸法が設定されることが好適である。具体的には、例えば溝外周壁98の肉厚寸法Bは、外内環状溝72,74間の肉厚寸法Aの、50%〜200%とされることが好適であり、より好ましくは80%〜150%とされる。周溝90の内壁面から外側係合爪50までの距離Bの大きさが上記範囲とされることにより、後述する弾性弁体16のハウジング12からの脱落防止効果が安定して発揮され得る。
さらに、図6には、上記の如き構造とされた医療用弁10に対して、雄コネクタとしてのシリンジ100の先端部分が挿入された状態が示されている。即ち、弾性弁体16に対してシリンジ100の先端部分を挿入することにより、弾性弁体16の中央部分66が軸方向内方へ押し込まれて弾性変形させられると共に、スリット14が開放される。これにより、シリンジ100の内部から医療用弁10の内部を経て、図示しないカテーテル等から人体内部へ至る流体流路102が連通状態とされる。換言すれば、流体流路102の開口部分を構成するハウジング12に装着された弾性弁体16にシリンジ100が挿入されることにより、スリット14が開放されて、流体流路102が連通状態とされる。なお、図6中では、シリンジ100がルアーロックタイプとされて、シリンジ100に設けられた雌ねじ部104がハウジング12に設けられた雄ねじ部54と螺合するようになっている。尤も、かかるシリンジはスリップロックタイプとされてもよい。
ここにおいて、弾性弁体16の中央部分66には、肉厚寸法が小さくされた溝外周壁98が形成されていることから、弾性弁体16の中央部分66が弾性変形する際には、シリンジ100の押込力に従い、溝外周壁98が下方に向かって優先的に弾性変形するようになっている。また、周溝90が形成されることにより、弾性弁体16における周溝90の上方に位置する部分の肉厚寸法が小さくされて、当該部分の弾性変形が容易に惹起される一方、弾性弁体16における周溝90よりも内周側の部分は、相対的に弾性変形が生じにくい。これにより、弾性弁体16に対してシリンジ100の先端部分が挿入される際には、図6に示されるように、弾性弁体16の中央部分66が、周溝90の内周側壁面94と外周側壁面96とが相互に離隔すると共に、溝外周壁98と周溝90の上方に位置する部分が下方に弾性変形する一方、周壁90よりも内周側の部分が下方にスライド移動するように弾性変形するようになっている。
そして、図7に示すように、医療用弁10に対してシリンジ100を更に深く挿入することにより、弾性弁体の16の中央部分66が内側保持部20とシリンジ100との間に入り込むように変形することで、医療用弁10へのシリンジ100の挿入操作が完了する。
このように、本実施形態の医療用弁10では、弾性弁体16の中央部分66に優先的に弾性変形する部分を環状連結部70から連続的に広い領域に亘って設けることにより、シリンジ100の挿入抵抗が低減されて、より小さい押込力をもってシリンジ100が挿入され得ることから、シリンジ100の挿入時において、弾性弁体16のハウジング12からの脱落が効果的に防止され得る。それに加えて、小さい押込力をもってシリンジ100が挿入され得ることから、環状連結部70および筒状保持部68に及ぼされる引張力を小さくすることができて、ハウジング12による弾性弁体16の保持状態が安定して維持され得る。
また、環状連結部70の肉厚寸法Aと溝外周壁98の肉厚寸法Bとを略等しくすることで、シリンジ100の押込力に伴う応力や歪を環状連結部70と溝外周壁98とに略等しく分散させることができる。これにより、環状連結部70に引っ張られる方向の負荷が集中して筒状保持部68が外内の係合爪50,64間から抜け落ちること等に伴う弾性弁体16の脱落が一層効果的に防止され得る。また、肉厚寸法Bを肉厚寸法Aよりも大きくすることで、シリンジ100の押込力に伴う応力や歪みを従来よりも低減させることができると共に、シリンジ100を医療用弁10から離脱させた後における弾性復元作用による弾性弁体16の戻り性を良好にすることができる。
特に、上記の如き優先的に弾性変形しやすく、且つ環状連結部70に及ぼされる引張応力や歪が分散され得る部分を新たに設けるのではなく、弾性弁体16の下面に周溝90を形成することで、当該周溝90の溝外周壁98を優先的に弾性変形しやすく、且つ引張応力や歪が分散して及ぼされる部分として効率的に利用できることから、弾性弁体のサイズを大きくすることなく、弾性弁体16の脱落防止が実現され得る。
また、本実施形態では、周溝90の外周側壁面96が傾斜面とされていることから、溝外周壁98の長さを大きく確保することができて、環状連結部70に及ぼされる引張力を一層小さくすることができる。それ故、弾性弁体16がハウジング12から脱落するおそれがより一層低減され得る。
さらに、本実施形態では、周溝90が、ディスク状の弾性弁体16に対応する円環形状で設けられることから、上記の如き弾性弁体16の弾性変形が周方向の全周に亘って安定して実現されて、シリンジ100の挿入抵抗が一層低減され得る。
また、本実施形態では、内側係合爪64の先端部内周面が内方に凸の湾曲断面とされており、溝外周壁98の内方基端面と内側係合爪64の先端部内周面とが斜め上方に広がる傾斜面で重ね合わされている。これにより、弾性弁体16と内側保持部20との組み付けに際しての位置決め精度の向上等が図られ得る。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されることなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良などを加えた態様で実施され得るものであり、また、そのような実施態様も、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも本発明の範囲内に含まれる。
例えば、前記実施形態では、筒状保持部68の下方支持部80は、外側保持部18の環状肩部46よりも下方まで延び出していたが、かかる態様に限定されるものではない。即ち、下方支持部80は、弾性弁体16のハウジング12への組付け状態において、環状連結部70よりも下方まで延びていればよい。これにより、筒状保持部68の軸方向寸法が、外内の係合爪50,64の対向距離よりも大きくされることから、弾性弁体16へのシリンジ100挿入時において、弾性弁体16のハウジング12からの脱落防止効果が十分に発揮され得る。
尤も、弾性弁体16のハウジング12への組付け前の状態では、筒状保持部の軸方向寸法は環状連結部と等しくされていてもよい。即ち、弾性弁体16のハウジング12への組付けに際して、環状連結部が外内係合爪50,64により軸方向で圧縮されることにより、筒状保持部の軸方向寸法が環状連結部の軸方向寸法より大きくなるようにしてもよい。即ち、本発明において、弾性弁体16の外内面に設けられる外内環状溝72,74は必須ではない。
また、前記実施形態では、周溝90の底面92が外側係合爪50の先端よりも軸方向外方に位置していたが、周溝90の底面92は、環状連結部70の下面よりも上方にあればよく、外側係合爪50の先端より上方まで至っていなくてもよい。
さらに、筒状保持部68における下方支持部80の形状は何等限定されるものではないが、例えば下方支持部80の軸方向中間部分の内周面は、内径寸法が略一定とされたストレート形状とされると共に、下方支持部80の下端部分の内面に周方向の全周または部分的に内周側に突出するリブを設けて、筒状保持部68における上方支持部78の外径寸法に比べて下方支持部80の内径寸法が小さくされることが好ましい。これにより、弾性弁体16の製造時において、筒状保持部68の下方側開口部に弾性弁体16の上端部が入り込み、複数の弾性弁体が積み重なって取り扱いが面倒になるといった不具合が回避され得る。
更にまた、前記実施形態では、周溝90の内周側壁面94は環状凹溝76の内周側壁面と同一平面となるように形成されていたが、周溝90の内周側壁面94は、環状凹溝76の内周側壁面よりも内周側または外周側に設けられてもよい。なお、前記実施形態では、周溝90は、内側環状溝74と環状凹溝76と連通して設けられていたが、これらとは独立して設けられてもよい。尤も、本発明において、環状凹溝76は必須なものではない。
さらに、例えば、環状凹溝76を径方向所定幅で形成して、該環状凹溝76の底面の内周部分に開口するように周溝90を形成する一方、環状凹溝76の外周部分の底壁部によって、内外の爪部64,50で挟持される薄肉部70を構成することも可能である。その際、環状凹溝76の外周部分の底面に開口するように内側環状溝74を形成しても良いが、内側環状溝74は必ずしも設ける必要はない。即ち、環状凹溝76の外周部分の平坦な底面に対して爪部64を押し当てて、環状凹溝76の底壁部を弾性変形させることで、爪部64が食い込んだようにして実質的に内側環状溝74への係止状態と同様な挟持作用を実現することも可能である。
また、周溝は、ディスク状の弾性弁体の外形状に対応して、円環形状とされることが好適であるが、周方向に延びていればよく、例えば平面視において楕円形状や多角形状等とされていてもよい。
さらに、前記実施形態では、周溝90は所定の径方向幅寸法を有していたが、周溝は、径方向幅寸法が略0とされた切込状のスリットとされてもよい。なお、周溝としてスリットを採用する場合には、スリットを軸方向に対して傾斜して形成することにより、スリットの外周側壁面を傾斜面とすることが可能である。このようなスリットは、例えば弾性弁体の成形後にカッターナイフなどを差し入れて切れ込みを入れることによって形成することができる。
また、ハウジング12の形状は何等限定されるものではなく、例えば前記実施形態では、内側保持部20とハウジング本体22が別部品とされていたが、一体として形成されてもよい。更に、例えば特開2010−148757号公報に記載の医療用弁のように、内側の係止突部(70)を備える筒状口体(40)の上方開口部に対して係止突部(80)を備える環状リング(42)が固着されることでハウジングが構成されるようになっていてもよい。
さらに、前記実施形態では、周溝90の外周側壁面96は軸方向に対して一定の傾斜角で傾斜する直線状の傾斜面とされていたが、傾斜角が変化するようになっていてもよく、例えば周溝の外周側壁面が屈曲面や湾曲面により構成されていてもよい。
なお、前記実施形態では、外内の係合爪50,64および外内の環状溝72,74は、周方向の全周に亘って環状に形成されていたが、例えば外内の係合爪は周方向で断続的に形成されていてもよいし、周上において係合爪の高さを段階的に又は連続的に変化させることも可能である。また、外内の環状溝も、外内の係合爪の位置と大きさに対応する等して断続的に形成されてもよい。
また、前記実施形態では、周溝90は周方向で全周に亘って連続して延びる環状溝とされていたが、かかる態様に限定されない。即ち、弾性弁体の内側面に設けられる周溝は周方向で断続的に設けられてもよい。なお、弾性弁体に、前記実施形態の如きスリットが設けられる場合には、スリットの延びる方向に応じて弾性弁体の外周部分における変形態様が異なる。従って、例えば前記実施形態の如きスリットが一文字状とされる場合には、スリットの延びる方向と直交する方向の両側における外周部分に、それぞれ周方向で半周以下の長さで延びる周溝が設けられることが好適である。これにより、周溝の無い従来構造の弾性弁体では変形歪が大きくなり易かったスリット直交方向両側部分において、周溝の形成により変形部分の有効長が大きくされて容易に変形が許容されることで、挿入抵抗の軽減や耐久性の向上等が図られ得る。尤も、本発明では、弾性弁体において、スリット直交方向両側部分に加えて又は代えて、スリット両端の外周側に位置する部分をそれぞれ周方向で半周以下の長さで延びる周溝を設けることも可能である。
また、弾性弁体に設けられるスリットとしては一文字状の他、十文字状や放射状等の態様も採用可能である。これらの場合にも、周上で異なる弾性弁体の変形態様を考慮して、周上の所定位置を部分的に延びる周溝を形成してもよい。更にまた、周溝の深さや開口幅等の断面形状を、弾性弁体の外周部分の変形態様が周方向で異なることを考慮して適宜に変化させることも可能である。
本発明はもともと以下に記載の発明を含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
(i) 液体弁体の外周部分に形成された薄肉部が該開口部材の内側と外側の爪部で挟まれると共に、該弾性弁体の該薄肉部よりも外周側が該開口部材で保持されることにより、該弾性弁体の外周部分が該開口部材で支持されて、該弾性弁体の中央部分に設けられたスリットに雄コネクタを繰り返し挿抜可能とされた医療用弁において、前記薄肉部が、前記中央部分の外周側において前記弾性弁体の軸方向で該中央部分と重なる位置に設けられていると共に、該弾性弁体の内側面における該薄肉部の内周側を周方向に延びる周溝が、該薄肉部の底面より大きな深さで形成されていることを特徴とする医療用弁、
(ii) 前記弾性弁体における前記周溝の外周側の壁部の肉厚寸法が、前記薄肉部の肉厚寸法より厚くされている(i)に記載の医療用弁、
(iii) 前記周溝の外周側の壁面が内方に向かって拡開する方向に傾斜している(i)又は(ii)に記載の医療用弁、
(iv) 前記周溝が前記薄肉部に沿って周方向で円周状に延びている(i)〜(iii)の何れかに記載の医療用弁、
(v) 前記周溝が切込状のスリットとされている(i)〜(iv)の何れかに記載の医療用弁、
(vi)前記弾性弁体には外周部分の内側と外側の両面をそれぞれ周方向に延びる内外の環状溝が形成されて、これら内外の環状溝の底部間に前記薄肉部が形成されており、前記開口部材の前記内側と外側の各爪部が該各環状溝に嵌め入れられている(i)〜(v)の何れかに記載の医療用弁、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、弾性弁体の内側面において周方向に延びる周溝が設けられることにより、周溝の外周側には、当該周溝が設けられない場合と比較して相対的に薄肉とされる部分が形成される。それ故、弾性弁体のスリットに対して雄コネクタを挿入する際には、かかる周溝の外周側部分が優先的に弾性変形される。特に、かかる周溝が、弾性弁体の外周部分に形成された薄肉部の底面より大きな深さで形成されていることから、周溝の外周側部分の長さひいては弾性変形量が有利に確保されると共に、雄コネクタ挿入時には周溝も広がる方向に弾性変形することで、雄コネクタ挿入時の抵抗が軽減される。その結果、雄コネクタを弾性弁体へ容易に挿入することが可能になると共に、開口部材で保持された弾性弁体における爪部よりも外周側の部分が内周側へ抜け落ちてしまう等の脱落の不具合も効果的に防止される。特に、上記の如き周溝が設けられていない従来構造の医療用弁では、雄コネクタの押込力が弾性弁体の薄肉部に集中的に及ぼされて、薄肉部よりも外周側の部分が強く引っ張られることで開口部材の内外の爪部間から内周側へ抜け落ちるおそれがあった。これに対して、本態様の医療用弁では、弾性弁体に周溝を形成して弾性変形が容易に許容される部分を設けたことにより、薄肉部に及ぼされる押込力を分散状に軽減することができて、開口部材による弾性弁体の外周部分の保持状態が安定して維持されることから、開口部材からの弾性弁体の脱落が効果的に防止され得る。なお、本発明において、弾性弁体の内側面に設けられる周溝は、周方向の全周に亘って連続して環状に延びる環状溝である必要はなく、周方向で断続的に設けられてもよい。
上記(ii)に記載の発明では、周溝の外周側の端部の肉厚寸法が、薄肉部の肉厚寸法より厚くされていることから、雄コネクタを離脱させた際の弾性弁体による弾性復元作用を安定して発揮させることができる。これにより、スリットを一層確実に閉鎖することができて、医療用弁を含んで構成される液体流路が更に速やかに遮断され得る。
上記(iii)に記載の発明では、周溝の外周側の壁面が軸方向に対して傾斜していることから、弾性弁体において弾性変形が生じ易い周溝の外周側の部位の実質的な長さをより大きく確保することができる。
上記(iv)に記載の発明では、周溝を薄肉部に沿って周方向で円周状に形成したことで、弾性弁体において周溝の外周側の壁部から薄肉部に至る部分の形状を周方向の全周に亘って略一定にすることができる。これにより、雄コネクタの挿入時に、周溝の外周側の壁部や薄肉部に発生する応力や歪が、周方向の全周に亘って略均一に分散されることとなり、開口部材による弾性弁体の保持状態の更なる安定化も図られ得る。
上記(v)に記載の発明では、例えばサイズの小さい医療用弁などにおいても周溝を容易に精度良く形成することができて、上記の如き効果が安定して発揮され得る。
上記(vi)に記載の発明では、弾性弁体の内外の環状溝への開口部材の内外の爪部の嵌め込みによって、開口部材に対する弾性弁体の位置決めを一層容易に且つ確実に行うことが可能になる。
なお、上記(i)〜(vi)に記載の発明に従う構造とされた医療用弁では、弾性弁体の内側面に対して周溝を設けたことにより、雄コネクタの挿入に際しての弾性変形が容易に許容される部分を薄肉部の内周側に形成することができる。そして、この弾性変形が容易に許容される部分を設けたことで、雄コネクタの挿入に際して薄肉部に及ぼされる引張力を分散的に軽減して、開口部材からの弾性弁体の脱落を効果的に防止することが可能になる。