本実施形態のコーティング剤は、(A)ポリイソシアネート(以下、(A)成分という場合もある)、(B)下記一般式(1−1)で表される化合物(以下、(B)成分という場合もある)、及び、(C)ヒドロキシ基を少なくとも2個有するポリシロキサン(以下、(C)成分という場合もある)、を反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、(D1)炭素数2〜13のジオール化合物(以下、(D1)成分という場合もある)、(D2)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物(以下、(D2)成分という場合もある)、及び(D3)下記一般式(2)で表されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(以下、(D3)成分という場合もある)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、(D)成分という場合もある)と、を反応させて得られる硬化性樹脂を含有する。
[式(1−1)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
21及びR
22はそれぞれ独立に単結合又はエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Xは下記一般式(1−2)で表される2価の基を表し、
{式(1−2)中、A
11及びA
12はそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R
31及びR
32はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基又はハロゲノ基を表し、R
4は単結合、−CR
5 2−(ただし、R
5は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基を表す)で表される基又は−SO
2−を表し、b1及びb2はそれぞれ独立に0〜2の整数を表し、c1及びc2はそれぞれ独立に0〜10の整数を表す。}
aは1〜10の整数を表す。]
なお、本明細書において、式(1−1)及び式(1−2)中、aが2以上の場合、複数あるA11、A12、R31、R32及びR4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、b1が2である場合、複数あるR31はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、b2が2である場合、複数あるR32はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
[式(2)中、R
5は水素原子又はメチル基を表し、R
6は炭素数2〜10のアルキレン基を表す。]
(A)成分としては、2個以上のイソシアネート基を有する化合物を用いることができ、例えば、ジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネート、ジイソシアネートの二量体もしくは三量体などの変性ポリイソシアネートが挙げられる。
ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
トリイソシアネート、テトライソシアネートとしては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)−チオフォスファート等が挙げられる。
ジイソシアネートから誘導される変性ポリイソシアネートとしては、2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビウレット構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、ウレトジオン構造、アロファネート構造、三量体構造などを有するポリイソシアネート、トリメチロールプロパンの脂肪族イソシアネートのアダクト体、ポリメリックMDIなどが挙げられる。
(A)成分は、形成される樹脂硬化膜の着色がより抑えられ、自己修復性がより優れるという観点から、ジイソシアネートが好ましく、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートがより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート及び1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンがさらに好ましい。
ポリイソシアネートは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分は、上記一般式(1−1)で表される化合物であるが、一般式(1−1)中のR11及びR12は、コーティング剤の低粘度化による加工性向上(特には、基材等への塗布における操作性向上)という観点から、水素原子が好ましい。
一般式(1−1)中のR21及びR22は、形成される樹脂硬化膜の自己修復性及び耐熱性がより優れるという観点から、単結合が好ましい。
R21又はR22がエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜12のアルキレン基である場合、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、−(CH2)2−O−CH2−等が挙げられる。
一般式(1−2)中のA11及びA12は、形成される樹脂硬化膜の自己修復性及び耐熱性がより優れるという観点から、エチレン基及びプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
一般式(1−2)中のc1及びc2は、形成される樹脂硬化膜の自己修復性及び耐熱性がより優れるという観点から、0〜4が好ましく、0〜2がより好ましい。
一般式(1−2)中のR31及びR32は、形成される樹脂硬化膜の自己修復性及び耐熱性がより優れるという観点から、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
一般式(1−2)中のb1及びb2は、形成される樹脂硬化膜の自己修復性及び耐熱性がより優れるという観点から、0が好ましい。
一般式(1−2)中のR4は、形成される樹脂硬化膜の自己修復性及び耐熱性がより優れるという観点から、−CR5 2−で表される基が好ましく、R5としては水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(1−1)中のaは、形成される樹脂硬化膜の自己修復性及び耐熱性がより優れるという観点から、1〜6が好ましく、1〜3がより好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、例えば下記一般式(3)で表される化合物と、末端不飽和カルボン酸との反応により得ることができる。
[式(3)中、X及びaは、上記一般式(1−1)におけるX及びaと同義である。]
一般式(3)で表される化合物は、例えば、ビスフェノール系化合物又はビフェニル系化合物と、エピクロロヒドリンとの反応により得ることができる。ビスフェノール系化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、それらのベンゼン環にハロゲノ基が置換されたもの、それらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。ビフェニル系化合物としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル等が挙げられる。
末端不飽和カルボン酸としては、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
[式(4)中、R
7は上記一般式(1−1)におけるR
11及びR
12と同義であり、R
8は上記一般式(1−2)におけるR
21及びR
22と同義である。]
式(4)で表される化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、3−アリルオキシプロピオン酸等が挙げられる。これらの中でも、コーティング剤の低粘度化と、形成される樹脂硬化膜の自己修復性及び耐熱性とを高水準で両立する観点から、アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
(C)成分としては、コーティング剤の低粘度化と、形成される樹脂硬化膜の耐熱性とを高水準で両立する観点から、下記一般式(5)で表される化合物が好ましい。
[式(5)中、A
21及びA
22はそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基を表し、d1及びd2はそれぞれ独立に0〜25の整数を表し、R
81及びR
82はそれぞれ独立に単結合又は炭素数1〜6のアルキレン基を表し、eは10〜500の整数を表す。]
A21及びA22としては、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、コーティング剤の低粘度化と、形成される樹脂硬化膜の耐熱性とを高水準で両立する観点から、エチレン基が好ましい。
式(5)中のd1及びd2は、コーティング剤の低粘度化と、形成される樹脂硬化膜の耐熱性とを高水準で両立する観点から、0(即ち−(A21O)−及び−(OA22)−が単結合)〜15が好ましく、0〜10がより好ましい。
式(5)中のR81及びR82は、コーティング剤の低粘度化と、形成される樹脂硬化膜の耐熱性とを高水準で両立する観点から、単結合又は炭素数1〜3のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基がより好ましい。
R81及びR82が炭素数1〜6のアルキレン基である場合、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基等が挙げられる。
式(5)中のeは、コーティング剤の低粘度化と、形成される樹脂硬化膜の耐熱性とを高水準で両立する観点から、15〜100が好ましく、15〜50がより好ましい。
(D)成分は、(D1)炭素数2〜13のジオール化合物、(D2)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物、及び(D3)上記一般式(2)で表されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
(D1)成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のアルカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のエーテル基を有するジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のシクロアルカンジオールが挙げられる。形成される樹脂硬化膜の自己修復性がより優れるという観点から、アルカンジオール及びエーテル基を有するジオールが好ましく、炭素数2〜6のアルカンジオールがより好ましい。
(D2)成分におけるアニオン性親水基としては、カルボキシ基(−COOH)、カルボキシレート基(−COO−)、スルホ基(−SO3H)、スルホネート基(−SO3 −)が挙げられる。得られる硬化性樹脂のアルコール、ケトン及びアセテート等の親水性溶媒や水等への乳化性がより優れるという観点から、カルボキシ基、カルボキシレート基が好ましい。
(D2)成分としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロールペンタン酸及びそれらの塩等の炭素数3〜8のカルボキシル基及び/又はカルボキシレート基含有化合物、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5−[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のジカルボン酸及びそれらの塩と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の低分子量ポリオールとを反応させて得られるスルホ基及び/又はスルホネート基含有ポリエステルポリオールが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、カルボキシル基を有するジオールと、芳香族ジカルボン酸、脂肪酸ジカルボン酸等とを反応させて得られるペンダント型カルボキシル基を有するポリエステルポリオール又はその塩も(D2)成分として挙げられる。更に、前記の反応の際にカルボキシル基を有さないジオールをさらに混合して反応させて得られたものであってもよい。得られる硬化性樹脂の上記親水性溶媒や水等への乳化性がより優れるという観点から、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸が好ましい。
(D3)成分としては、形成される樹脂硬化膜の自己修復性がより優れるという観点から、一般式(2)におけるR5が水素原子であることが好ましい。
一般式(2)におけるR6は、炭素数2〜10のアルキレン基が直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基等が挙げられる。形成される樹脂硬化膜の自己修復性がより優れるという観点から、R6は、炭素数は2〜6のアルキレン基が好ましい。このようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート等が挙げられる。
(D)成分は、形成される樹脂硬化膜の自己修復性がより優れるという観点から、少なくとも(D1)炭素数2〜13のジオール化合物を含むことが好ましい。また、得られる硬化性樹脂の上記親水性溶媒や水等への乳化性がより優れるという観点から、少なくとも(D2)アニオン性親水基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物を含むことが好ましい。
本実施形態のコーティング剤は、上記(A)成分、上記(B)成分、及び上記(C)成分を反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、上記(D)成分とを反応させる工程を備える製造方法によって得ることができる。
本実施形態の方法では、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを得、次にイソシアネート基末端プレポリマーに上述した(D)成分を反応させることができる。
イソシアネート基末端プレポリマーを製造する際、(A)成分、(B)成分及び(C)成分は、(B)成分及び(C)成分に由来するヒドロキシ基の数に対し、(A)成分に由来するイソシアネート基の数が過剰となるような配合量で反応させることが好ましい。
形成される樹脂硬化膜の自己修復性がより優れるという観点から、(A)成分、(B)成分及び(C)成分は、(A)成分に由来するイソシアネート基と(B)成分及び(C)成分に由来するヒドロキシ基とのモル比が、イソシアネート基:ヒドロキシ基=100:50〜100:95となるように反応させることが好ましく、100:70〜100:90となるように反応させることがより好ましい。
(B)成分及び(C)成分の配合比率は、コーティング剤の低粘度化と、形成される樹脂硬化膜の自己修復性とを高水準で両立する観点から、モル比で(B)成分:(C)成分=1:9〜9:1が好ましく、3:7〜8:2がより好ましく、5:5〜7:3がさらに好ましい。
反応温度としては40〜150℃が好適であり、必要に応じて触媒を添加してもよい。触媒としては、例えば、カルボン酸の金属塩(カリウム、錫、ビスマス等)が挙げられ、具体的にはジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。触媒の配合量としては、反応物(例えば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分)の合計質量に対して0.001〜0.1質量%が好適であり、0.005〜0.03質量%がより好適である。また、反応中又は反応終了後に、イソシアネート基と反応しない有機溶剤や希釈剤等を添加することができる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を使用することができる。
希釈剤としては、例えば、炭素数1〜12のアルコール又は多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸アミド等のエチレン性不飽和単量体が挙げられる。中でも前記エステル又はスチレンが好ましい。
次に、上記の反応で得られたイソシアネート基末端プレポリマーに(D)成分を反応させることができる。(D)成分は、(D1)成分〜(D3)成分をそれぞれ単独で使用してもよく2種又は3種を併用してもよい。また、(D1)成分〜(D3)成分のそれぞれにおいて、複数の化合物を併用することもできる。形成される樹脂硬化膜の自己修復性がより優れるという観点から、(D1)成分を使用することが好ましい。また、得られる硬化性樹脂の上記親水性溶媒や水等への乳化性がより優れるという観点から、(D2)成分を使用することが好ましい。
(D)成分における(D1)成分〜(D3)成分の配合量については、形成される樹脂硬化膜の自己修復性がより優れるという観点から、(D)成分の総モル数に対し、(D1)成分は50〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましく、(D2)成分は0〜50モル%が好ましく、0〜20モル%がより好ましく、(D3)成分は0〜50モル%が好ましく、0〜20モル%がより好ましい。また、(D2)成分を配合する場合は、得られる硬化性樹脂の上記親水性溶媒や水等への乳化性がより優れるという観点から、得られる硬化性樹脂に対しアニオン性親水基が0.05〜5.0質量%の量で含まれるよう調整することが好ましく、0.1〜3.0質量%の量で含まれるよう調整することがより好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲でイソシアネート基末端プレポリマーに低分子量化合物を反応させてもよい。低分子量化合物としては、分子量が400以下のものが好ましく、300以下のものがより好ましい。このような低分子量化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上の低分子量アルコール、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の低分子量ポリアミン等が挙げられる。
上記の場合の(D)成分及び低分子量化合物の配合量としては、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基が残留しない量が好ましい。例えば、イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の量を滴定などの手法で測定し、(D)成分及び低分子量化合物中のイソシアネート基と反応し得る基の量が、測定されたイソシアネート基の量と当量以上、好ましくは当量超1.2倍当量以下となるように(D)成分及び低分子量化合物の配合量を設定することができる。
イソシアネート基末端プレポリマーと(D)成分及び必要に応じて低分子量化合物との反応は、例えば、20〜100℃の温度で行うことでき、イソシアネート基が残留しなくなるまで続けることが好ましい。イソシアネート基の残留は、滴定やIRにおけるイソシアネート基由来のピーク観測により確認することができる。
硬化性樹脂の重量平均分子量としては、例えば、3000〜150000が挙げられ、取り扱い性がより優れるという観点から、5000〜80000が好ましい。硬化性樹脂の平均分子量は、例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の使用量のモル比を調整することによって調整することができる。なお、硬化性樹脂の平均分子量は、例えばゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリエチレングリコール換算法又はポリスチレン換算法により求めることができる。
本実施形態のコーティング剤は、上述した反応により得られる硬化性樹脂(以下、本実施形態の硬化性樹脂という場合もある)を含有する。コーティング剤における本実施形態の硬化性樹脂の含有量は、用途により適宜調整され得るが、例えば、コーティング剤全量を基準として、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、85質量%以上が更に好ましい。
本実施形態のコーティング剤においては、上述した反応により得られる硬化性樹脂をそのままコーティング剤としてもよいし、他の成分を配合してコーティング剤としてもよい。他の成分としては、コーティング剤の用途によっても異なるが、例えば、重合開始剤、光増感剤、硬化促進剤、粘度を調整するための有機溶媒、及び反応性希釈剤等が挙げられる。本実施形態のコーティング剤は重合開始剤を含有することが好ましい。なお、重合開始剤、光増感剤、硬化促進剤等の硬化性樹脂の重合反応を促進する成分は、本実施形態のコーティング剤の貯蔵安定性が低下することによるポットライフの発生を防止できるとの観点から、コーティング剤を基材等に塗布する直前に配合されることが好適である。
重合開始剤は硬化性樹脂の重合反応を促進するために含有される。重合開始剤としては、熱重合開始剤、及び光によりラジカルを発生する光重合開始剤が挙げられる。耐熱性の低い基材(例えば、プラスチックフィルム等)にも使用可能であるという観点から、光重合開始剤を用いることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ベンゾイルメチルエーテル、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、アセトフェノン、プロピオンフェノン、キサントン、ベンゾイルぎ酸メチル、ベンジル、ナフトキノン、4−メチルアセトフェノン、アントラキノン、過安息香酸t−ブチル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、3,6−ビス(2−モルホリノイソブチル)−9−ブチルカルバゾール、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、チオキサントン誘導体等が挙げられる。中でも、硬化速度の観点から、ベンゾフェノン、ベンゾイルぎ酸メチル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンが好ましい。これらの光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。本実施形態においては、さらに光増感剤を併用することができる。光増感剤としては、例えば、モノ、ジ又はトリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸アルキル(アルキル基の炭素数1〜3)、4−ジメチルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
熱重合開始剤としては、公知の有機過酸化物及びアゾ化合物等が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド(クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド(ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシエステル(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)、パーオキシジカーボネート、カリウムパーサルフェート、過酸化水素等が挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチル)プロピオネート、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタ酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、及び2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔2−(1−ヒドロキシブチル)〕−プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕等が挙げられる。これらの中でも、硬化速度の観点から2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)及びジメチル2,2’−アゾビス(2−メチル)プロピオネートが好ましい。これらの熱重合開始剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
コーティング剤における重合開始剤の含有量としては、本実施形態の硬化性樹脂100質量部に対し、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリン及びアセチルアセトンが挙げられる。
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸ブチル、メトキシプロパノール、メトキシプロピルアセテート、メトブタ(3−メトキシブタノール)、酢酸3−メトキシブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
反応性希釈剤としては、例えば、スチレンモノマー類、ジエン類、アクリルモノマー類、ビニル化合物、不飽和ジカルボン酸ジエステル、イミド化合物等が挙げられる。
スチレンモノマー類としては、スチレン、アルキル、ニトロ、シアノ、ハロゲン等で置換されたスチレン誘導体、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
ジエン類としては、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
アクリルモノマー類としては、炭素数1〜18の分岐又は直鎖のアルキル基を有するアクリル酸、炭素数5〜10の二環系炭化水素基を有するアクリル酸、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を有するアクリル酸、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を有するアクリル酸のアルキレンオキサイド付加物、ベンジルアルコール(又はそのアルキレンオキサイド(1〜5モル)付加物)のアクリル酸エステル、アクリル酸アリル、アクリル酸プロパギル、アクリル酸ピペロニル、アクリル酸サリチル、アクリル酸フリル、アクリル酸フルフリル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ピラニル、アクリル酸フェネチル、アクリル酸クレジル、アクリル酸トリフェニルメチル、アクリル酸クミル、アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジアクリル酸トリシクロデカンジオール、トリメチロールプロパン(又はそのアルキレンオキサイド(1〜15モル)付加物)のトリアクリル酸エステル、ペンタエリスリトール(又はそのアルキレンオキサイド(1〜15モル)付加物)のトリアクリル酸エステル、ペンタエリスリトール(又はそのアルキレンオキサイド(1〜20モル)付加物)のテトラアクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパン(又はそのアルキレンオキサイド(1〜20モル)付加物)のテトラアクリル酸エステル、ジペンタエリスリトール(又はそのアルキレンオキサイド(1〜30モル)付加物)のヘキサアクリル酸エステル、アクリル酸−1,1,1−トリフルオロエチル、アクリル酸パーフルオルエチル、アクリル酸パーフルオロ−n−プロピル、アクリル酸パーフルオロ−i−プロピル等のアクリル酸エステル類;アクリル酸アミド、アクリル酸N,N−ジメチルアミド、アクリル酸N,N−ジエチルアミド、アクリル酸N,N−ジプロピルアミド、アクリル酸N,N−ジ−i−プロピルアミド、アクリル酸アントラセニルアミド等のアクリル酸アミド;アクリル酸アニリド、アクリロイルニトリル、アクロレイン等が挙げられる。
ビニル化合物としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等が挙げられる。
イミド化合物としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミドなどのモノマレイミド化合物、N−アクリロイルフタルイミド等が挙げられる。
中でも、本実施形態の硬化性樹脂との相容性、蒸気圧、皮膚刺激、樹脂組成物の低粘度化の観点から、ベンジルアルコール(又はそのアルキレンオキサイド(1〜5モル)付加物)のアクリル酸エステル、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジアクリル酸トリシクロデカンジオール、トリメチロールプロパン(又はそのアルキレンオキサイド(1〜15モル)付加物)のトリアクリル酸エステル、ペンタエリスリトール(又はそのアルキレンオキサイド(1〜15モル)付加物)のトリアクリル酸エステル、ペンタエリスリトール(又はそのアルキレンオキサイド(1〜20モル)付加物)のテトラアクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパン(又はそのアルキレンオキサイド(1〜20モル)付加物)のテトラアクリル酸エステル、ジペンタエリスリトール(又はそのアルキレンオキサイド(1〜30モル)付加物)のヘキサアクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
反応性希釈剤は1種を単独で用いてもよいし2種以上を混合して使用することもできる。
本実施形態のコーティング剤には、用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で上述した成分以外の添加剤を含有させてもよい。このような添加剤としては、例えば、レベリング剤、可塑剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘性制御剤等が挙げられる。
本実施形態のコーティング剤は、20℃における粘度が、1000mPa・s未満であることが好ましく、800mPa・s以下であることがより好ましく、500mPa・s以下であることが更に好ましい。なお、上記粘度は、B型粘度計(4号ローター、60rpm)を用いて測定された値を意味する。本実施形態においては、コーティング剤における本実施形態の硬化性樹脂の含有量が、コーティング剤全量を基準として、30質量%以上である場合に、上記粘度条件を満たしていることが好ましい。
本実施形態のコーティング剤は、例えば、透明性が求められるカラーフィルターなどの光学材料の保護層形成用コーティング剤、自動車のボディに塗工するクリア塗料、プラスチックフィルムの表面保護用のトップコート剤、プラスチック部品保護用コート剤、プラスチックフィルムにトップコートして真空成形などの熱成形やインモールド成形に用いられるコート剤として用いることができる。
次に、本発明に係る樹脂硬化膜について説明する。本発明に係る樹脂硬化膜は、上記本実施形態のコーティング剤を硬化させて得られるものであり、例えば、コーティング剤中の硬化性樹脂をラジカル重合反応により硬化させることにより形成することができる。
本実施形態の樹脂硬化膜は、基材上に設けられた上記本実施形態のコーティング剤の塗膜を硬化することにより形成できる。
基材は特に限定されず、例えば自動車等の金属製品、フィルムや成型品などのプラスチック製品、光学材料などのガラス製品、家具などの木材製品、紙などが挙げられる。また、樹脂硬化膜の基材への密着性を高めるために基材に予め下塗り層等を設けてもよい。
コーティング剤の塗膜は、本実施形態のコーティング剤を基材等に塗布することにより得ることができる。塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法、はけ塗り、スプレー法(吹き付け)、ディップコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、バーコート法、ダイコート法等、公知の方法が挙げられる。また、塗布後、必要に応じて乾燥処理を施してもよい。乾燥条件としては特に限定されず、コーティング剤に含まれる有機溶媒の種類や量等に応じて適宜選択され得るが、例えば60〜200℃で1〜60分間という条件が挙げられる。
塗膜の厚みとしては、樹脂硬化膜の用途によって異なり特に限定されないが、例えば、形成される樹脂硬化膜の厚みが1〜100μmとなるように設定することができ、3〜40μmとなるように設定することが好適である。
コーティング剤の塗膜を硬化させる方法としては、特に制限されず、常温常圧で該塗膜を放置し硬化させてもよいし、該塗膜に対し加熱や加圧、活性エネルギー線照射等を施し硬化させてもよい。硬化時間がより短いという観点から、加熱や加圧、活性エネルギー線照射等を施すことが好ましく、耐熱性の低い基材にも適用できるという観点からは、活性エネルギー線照射を施すことが好ましい。本実施形態においては、例えば、コーティング剤中の硬化性樹脂をラジカル重合反応により硬化させることにより、樹脂硬化膜を形成してもよい。
活性エネルギー線としては、可視光、赤外線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等が挙げられる。中でも、安全性や反応効率の観点から、紫外線及び電子線が好ましい。
活性エネルギー線の照射条件は、活性エネルギー線の種類により適宜選択することができるが、例えば、紫外線の好ましい照射条件として、照度1〜1000mW/cm2、照射量としては0.1〜10000mJ/cm2が挙げられる。
活性エネルギー線の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプなどのランプ光源、アルゴンイオンレーザーやヘリウムネオンレーザーなどのパルス、連続のレーザー光源、LED光源などを用いることができる。
加熱する場合の温度は、基材やコーティング剤中の重合開始剤の種類等により適宜調整され得るが、40〜200℃が挙げられる。
本発明に係る積層体は、基材と、基材上に設けられた上記本実施形態の樹脂硬化膜とを備える。基材は、上述したものが挙げられる。
本実施形態の樹脂硬化膜は、基材上に設けられたコーティング層に含まれる態様で設けられていてもよい。本実施形態の積層体においては、本実施形態の樹脂硬化膜が含まれるコーティング層が基材上に配置されていてもよいし、基材とコーティング層との間に他の層が配置されていてもよい。
本実施形態の樹脂硬化膜の厚みとしては用途によって異なり特に限定されないが、例えば、1〜100μmが好適であり、3〜40μmがより好適である。
以下に、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
<コーティング剤及び樹脂硬化膜の製造>
(実施例1)
撹拌機、温度計、還流冷却器、空気ガス導入管及び滴下ロートを備えた反応容器に、下記式(i)で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物を680質量部(2モル)、付加反応触媒としてトリフェニルホスフィンを5質量部、及びラジカル重合禁止剤としてメチルヒドロキノンを1質量部、加えた。ここに、アクリル酸を296質量部(4.1モル)滴下し、110℃で反応させ、下記式(ii)で表される化合物B−1を得た。
式(ii)で表される化合物B−1を22.6質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートを7.9質量部、イソホロンジイソシアネートを10.4質量部、下記式(5−1)で表される両末端にヒドロキシ基を有するポリジメチルシロキサン(重量平均分子量2000)(以下、「水酸基両末端ポリシロキサン(分子量2000)」という)を56質量部、メチルエチルケトンを100質量部、ウレタン反応触媒(日東化成(株)社製、製品名:ネオスタンU−600(ビスマス系触媒))を0.1質量部、及びラジカル重合禁止剤(メチルヒドロキノン)を0.1質量部混合し、80℃にて反応させ、1,4ブタンジオールを1.8質量部添加し、イソシアネート基が無くなるまで反応させ、硬化性樹脂のメチルエチルケトン溶液を得た。得られたメチルエチルケトン溶液5gをシャーレに取り、これを105℃の乾燥機中に3時間放置した後の残分から、メチルエチルケトン溶液の硬化性樹脂濃度を算出すると、50質量%であった。
[式(iii)中、e1は18〜28の整数を表す。]
上記で得られた溶液に、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを、硬化性樹脂40質量部に対して、2質量部となる割合で混合し、コーティング剤を得た。
得られたコーティング剤をポリエステルフィルム上にアプリケーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥させ、膜厚が約100μmである塗膜を形成した。次に、塗膜に紫外線(UVC波)を照射量500mJ/cm2で照射して樹脂硬化膜を得た。
(実施例2〜11、及び比較例1〜7)
原料組成を表1〜5のように替えたこと以外は実施例1と同様にして、コーティング剤及び樹脂硬化膜を得た。
なお、表中の下記表記について以下に説明する。
「B−2」:以下の手順で製造された下記式(v)で表される化合物である。
撹拌機、温度計、還流冷却器、空気ガス導入管及び滴下ロートを備えた反応容器に、下記式(iv)で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物を1816質量部、付加反応触媒としてトリフェニルホスフィンを10質量部、及びラジカル重合禁止剤としてメチルヒドロキノンを2質量部、加えた。ここに、アクリル酸を296質量部滴下し、110℃で反応させ、下記式(v)で表される化合物B−2を得た。
「水酸基両末端ポリシロキサン(分子量3200)」:下記式(5−2)で表される両末端にヒドロキシ基を有するポリジメチルシロキサン(重量平均分子量3200)である。
[式(vi)中、e2は28〜38の整数を表す。]
「水酸基両末端ポリシロキサン−2(分子量3200)」:下記一般式(5−3)で表される両末端にヒドロキシ基を有するポリジメチルシロキサン(重量平均分子量3200)である。
[式(5−3)中、e3は23〜33の整数を表す。]
「B’」:下記式(vii)で表される化合物である。
「PCD(分子量2000)」:ポリカーボネートジオール(数平均分子量2000)(旭ケミカルズ(株)社製、デュラノール T6002)である。
「PPG(分子量2000)」:ポリプロピレングリコール(重量平均分子量2000)である。
「PTG(分子量2000)」:ポリテトラメチレングリコール(重量平均分子量2000)である。
[粘度]
実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂のメチルエチルケトン溶液(硬化性樹脂の固形分濃度が50質量%)について、該溶液を20℃とし、B型粘度計(4号ローター、60rpm)を用いて粘度の測定を行った。その結果を表1〜4に示す。粘度が1000mPa・sを超えると取り扱いが困難となる。
[自己修復性の評価]
実施例及び比較例で得られた樹脂硬化物に対し、真鍮ブラシにて荷重100g/cm2で同じ場所を一方向に3回、擦過処理を行った。擦過処理前と擦過処理後1日静置した後とで、擦過処理した場所のヘイズ値を全自動直読ヘイズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機(株)社製)を用いて測定し、ヘイズ値の差を算出した。その結果を表1〜4に示す。差が4.5以下であれば自己修復性が優れることを示す。
なお、実施例の樹脂硬化物においては擦過処理後3分間で擦過処理による傷が目視では確認できない程、修復したが、比較例の硬化物においては擦過処理後、ヘイズ値測定が可能となる程度に傷が修復するまでに1日を要するものがあったため、擦過処理後、1日の静置時間を設けた。
[耐熱性の評価]
実施例及び比較例で得られたコーティング剤をポリプロピレンフィルムに一滴落とし、80℃で10分間乾燥させた後、紫外線(UVC波)を照射量500mJ/cm2で照射し樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物について示差熱重量分析を行った。測定方法は、空気を50ml/分で注入しながら、10℃/minの昇温速度にて室温から400℃まで昇温したときの樹脂硬化物の質量減量を測定し、質量が90質量%となる温度を測定した。その結果を表1〜4に示す。温度が270℃以上であれば耐熱性が優れることを示す。
表1〜3に示されるように、実施例1〜11のコーティング剤は、硬化性樹脂の含有濃度が50質量%であっても粘度が十分に低く、取り扱い性に優れており、なおかつ自己修復性及び耐熱性に優れた樹脂硬化膜を形成することができることが確認された。一方、比較例においては、コーティング剤が十分に低い粘度を有すること、並びに形成される樹脂硬化膜が優れた自己修復性及び耐熱性を有することを、同時に達成することができない。