JP6698466B2 - 鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造 - Google Patents

Description

本発明は、鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造に関する。

従来、鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造において、例えば特許文献１に開示されたものがある。これは、前方から後方に向けて、モータのハウジングと、減速機のハウジングと、伝動アームと、後部駆動装置とをこの順に結合したものである。例えば、減速機のハウジングは、モータのハウジングの後面に結合されている。伝動アームの前端部は、固定用ボルトによって減速機のハウジングに固定されている。伝動アームの後端部は、固定用ボルトによって後部駆動装置のハウジングに固定されている。

特開２００４−２１００７２号公報

しかしながら、モータのハウジングと、減速機のハウジングと、伝動アームと、後部駆動装置とのそれぞれが結合された構成であると、後輪からの荷重によって、微小ではあるが減速機のハウジングが変形する可能性があった。そのため、減速機の作動に少なからず障害が発生する可能性があった。したがって、パワーユニット部分の高い剛性を確保する上で改善の余地があった。

そこで本発明は、スイングアームに取り付けられた電動機と減速機構とを備えた鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造において、パワーユニット部分の高い剛性を確保することを目的とする。

上記課題の解決手段として、請求項１に記載した発明は、ピボット部（２２ａ）で車体フレーム（５）に回動可能に支持されるとともに、前記ピボット部（２２ａ）から後方に延びて後輪（４）を回転可能に支持するスイングアーム（２１）と、前記スイングアーム（２１）に取り付けられるとともに、前記後輪（４）を駆動する電動機（１１）と、前記電動機（１１）の出力を減速して前記後輪（４）に伝達する減速機構（１２）と、を備えた鞍乗り型電動車両（１）のスイングアーム構造（２０）において、前記スイングアーム（２１）とは別体に設けられるとともに、前記スイングアーム（２１）に取り付けられたハウジング（４０）を更に備え、前記減速機構（１２）と前記ハウジング（４０）とは、前記減速機構（１２）を前記ハウジング（４０）に取り付けて一体化した減速機構ユニット（１２Ｕ）とされており、前記電動機（１１）は、前記後輪（４）よりも前方に配置されていることを特徴とする。
請求項２に記載した発明は、前記電動機（１１）と前記減速機構ユニット（１２Ｕ）とは、前記減速機構（１２）とともに前記電動機（１１）を前記ハウジング（４０）に取り付けて一体化した駆動ユニット（１０）とされていることを特徴とする。
請求項３に記載した発明は、前記駆動ユニット（１０）は、前記スイングアーム（２１）に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
請求項４に記載した発明は、前記駆動ユニット（１０）は、前記ピボット部（２２ａ）から後輪支持機構（３０）に向けて延びる前記スイングアーム（２１）のアーム部（２４）よりも前方に配置されていることを特徴とする。
請求項５に記載した発明は、前記駆動ユニット（１０）は、前記スイングアーム（２１）に収容して取り付けられており、前記スイングアーム（２１）の上面には、前記駆動ユニット（１０）を収容するための開口（２３ａ）を開閉可能なリッド（２５）が設けられていることを特徴とする。
請求項６に記載した発明は、前記減速機構（１２）から前記後輪へ力を伝達するドライブシャフト（２８）を更に備え、前記スイングアーム（２１）は、前記ドライブシャフト（２８）を挿通するアーム部（２４）を備えることを特徴とする。
請求項７に記載した発明は、前記アーム部（２４）の長手方向と交差する断面は、閉じた環状をなしていることを特徴とする。
請求項８に記載した発明は、前記電動機（１１）の回転軸線（１１Ｃ）は、車両前後方向に延びていることを特徴とする。
請求項９に記載した発明は、前記電動機（１１）の回転軸線（１１Ｃ）は、車幅方向の中心に配置されていることを特徴とする。
請求項１０に記載した発明は、側面視で、前記ピボット部（２２ａ）と前記後輪（４）の車軸（４ａ）とを通る直線をスイングアーム中心線（２１Ｃ）としたとき、側面視で、前記電動機（１１）の回転軸線（１１Ｃ）は、前記スイングアーム中心線（２１Ｃ）と重なることを特徴とする。

請求項１に記載した発明によれば、減速機構とハウジングとが減速機構をハウジングに取り付けて一体化した減速機構ユニットとされていることで、適度な撓みが必要なスイングアーム部分と、駆動系回転軸の安定化のために高剛性が必要なパワーユニット部分とを別体構造とすることができる。そのため、スイングアーム部分の剛性とパワーユニット部分の剛性とを別々に設定することができる。したがって、パワーユニット部分の高い剛性を確保することができる。加えて、スイングアーム部分には適度な撓みを持たせることができるため、パワーユニット部分とスイングアーム部分とでそれぞれ必要な剛性を確保することができる。加えて、ハウジング内に作動油を満たしている場合であっても、減速機構ユニットは、走行時の路面入力等による後輪からの荷重によってスイングアーム部分の変形の影響を受けにくい。そのため、作動油が車外に漏れ出ることを回避し、オイルシール性を確保することができる。加えて、車両組立時において、先に減速機構ユニットを組み立てておくことによって、車両での組立を容易に行うことができる。加えて、減速機構ユニットがスイングアームに着脱可能に取り付けられている場合には、完成車のメンテナンス時において、スイングアームを分解せずに減速機構ユニットのみを取り外すことができるため、作業を容易に行うことができる。加えて、電動機が後輪よりも前方に配置されていることで、電動機がピボット部の近傍に配置されるため、足回り部品のピボット部回りの慣性質量を小さくすることができる。そのため、リヤサスペンションの作動性を向上することができる。加えて、電動機が車両の中心近傍に配置されるため、重量配分に有利となる。加えて、後輪の車幅方向側方のファイナルギヤケースを小型化することができる。これにより、バンク時にファイナルギヤケースが接地し難くなるため、バンク角を向上することができる。
請求項２に記載した発明によれば、電動機と減速機構ユニットとが減速機構とともに電動機をハウジングに取り付けて一体化した駆動ユニットとされていることで、駆動ユニットは、走行時の路面入力等による後輪からの荷重によってスイングアーム部分の変形の影響を受けにくい。加えて、車両組立時において、先に駆動ユニットを組み立てておくことによって、車両での組立を容易に行うことができる。
請求項３に記載した発明によれば、駆動ユニットがスイングアームに着脱可能に取り付けられていることで、完成車のメンテナンス時において、スイングアームを分解せずに駆動ユニットのみを取り外すことができるため、作業を容易に行うことができる。
請求項４に記載した発明によれば、駆動ユニットがピボット部から後輪支持機構に向けて延びるスイングアームのアーム部よりも前方に配置されていることで、駆動ユニットがスイングアーム前側の断面積が大きい部分に配置されるため、駆動ユニットがアーム部よりも後方に配置された場合と比較して、スイングアームの剛性への悪影響を少なくすることができる。
請求項５に記載した発明によれば、スイングアームには駆動ユニットを収容するための開口を開閉可能なリッドが設けられていることで、リッドを開閉することによって完成車でのメンテナンス作業を容易に行うことができる。加えて、ハウジング内に作動油を満たしている場合であっても、メンテナンスのためにリッドを開けても作動油が車外にこぼれることを回避することができる。
請求項６に記載した発明によれば、スイングアームがドライブシャフトを挿通するアーム部を備えることで、アーム部に適度な撓みを持たせることができるため、パワーユニット部分とアーム部とでそれぞれ必要な剛性を確保することができる。
請求項７に記載した発明によれば、アーム部の長手方向と交差する断面が閉じた環状をなしていることで、走行時の路面入力等による後輪からの荷重によってアーム部が変形しても、一様な変形を生じさせることができる。したがって、アーム部の剛性を適切に設定することにより、操安性を安定して調整することができる。
請求項８に記載した発明によれば、電動機の回転軸線が車両前後方向に延びていることで、電動機からドライブシャフトまで回転方向を変更せずに電動機の出力を伝達することができる。
請求項９に記載した発明によれば、電動機の回転軸線が車幅方向の中心に配置されていることで、車幅方向の重量配分が良好となる。
請求項１０に記載した発明によれば、側面視で電動機の回転軸線がスイングアーム中心線と重なることで、電動機を含む懸架系の重心位置がスイングアーム中心線上に配置されるため、懸架系の作動性を向上することができる。加えて、電動機が上下方向に膨出することが抑制されるため、スイングアームを小型化することができる。

実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。 実施形態に係るスイングアーム構造の左側面図である。 実施形態に係るスイングアーム構造を右上後方から見た斜視図である。 図２のＩＶ−ＩＶ断面を含む図である。

以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印ＦＲ、車両左方を示す矢印ＬＨ、及び車両上方を示す矢印ＵＰが示されている。

＜車両全体＞
図１は、鞍乗り型電動車両の一例としての自動二輪車１を示す。図１を参照し、自動二輪車１は、ハンドル２によって操向される前輪３と、電動機１１（図４参照）を含む駆動ユニット１０によって駆動される後輪４とを備える。以下、自動二輪車１を単に「車両」ということがある。

ハンドル２及び前輪３を含むステアリング系部品は、車体フレーム５前端部に形成されたヘッドパイプ５ａに操向可能に枢支されている。ヘッドパイプ５ａには、ハンドル２に接続された不図示のハンドル操向軸が挿通されている。車体フレーム５の後部には、駆動ユニット１０が取り付けられたスイングアーム２１がピボット軸２２を中心に上下に揺動可能に枢支されている。スイングアーム２１の前部と車体フレーム５の後部との間には、リヤサスペンション６が介装されている。

例えば、車体フレーム５は、複数種の鋼材を溶接等により一体に結合して形成されている。車体フレーム５は、ヘッドパイプ５ａの上下中央部から後下方に延びた後に下方に屈曲して延びる左右一対のメインフレーム５ｂと、ヘッドパイプ５ａの下部から下側ほど後方に位置するようにやや傾斜して下方に延びた後に後方に屈曲して延びて左右メインフレーム５ｂの後下部に連結された左右一対のロアフレーム５ｃと、左右メインフレーム５ｂ同士及び左右ロアフレーム５ｃ同士を連結するように車幅方向に延びる不図示のクロスメンバと、を備えている。

車体フレーム５は、車体カバー７で覆われている。車体カバー７は、車体フレーム５の上部を覆うアッパーカウル７ａと、車体フレーム５の前部側方を覆うフロントサイドカウル７ｂと、車体フレーム５の下部を覆うアンダーカウル７ｃと、車体フレーム５の後部を覆うリヤカウル７ｄと、を備えている。なお、図中符号８は乗員が着座するシート、図中符号９は後輪４の前上部を覆うリヤフェンダをそれぞれ示す。

本実施形態では、水素と酸素との化学反応によって化学エネルギーを電気エネルギーに交換する発電システムを採用している。図示はしないが、車体フレーム５には、燃料電池スタック、水素タンク、水素供給システム、バッテリ、インバータ、電気の流れを制御するＰＤＵ（Ｐｏｗｅｒ Ｄｒｉｖｅ Ｕｎｉｔ）、車両の各要素を制御するＶＣＵ（Ｖｅｈｉｃｌｅ Ｃｏｎｔｒｏｌ Ｕｎｉｔ）などが取り付けられている。

水素供給システムは、水素タンクに蓄えられた水素を燃料電池スタックに供給する。燃料電池スタックは、供給された水素と、外気中の酸素とによって電気を発生させる。この電気は、バッテリの充電に供されるとともに、インバータ及び不図示の電装品に供給される。インバータは、燃料電池スタック及びバッテリの少なくとも一方から供給された直流電力から交流電力を電気的に生成する。電動機１１は、インバータで生成された交流電力によって回転駆動し、後輪４を駆動する。

＜スイングアーム構造＞
図２に示すように、スイングアーム構造２０は、ピボット部２２ａ（図３参照）で車体フレーム５（図１参照）に回動可能に支持されるとともに、ピボット部２２ａから後方に延びて後輪４を回転可能に支持するスイングアーム２１と、スイングアーム２１に取り付けられるとともに、後輪４を駆動する電動機１１（図４参照）と、電動機１１の出力を減速して後輪４に伝達する減速機構１２（図４参照）と、後輪４の車軸４ａ（以下、「後輪車軸４ａ」という。）を回転可能に支持する後輪支持機構３０と、スイングアーム２１とは別体に設けられるとともに、スイングアーム２１に取り付けられたハウジング４０（図３参照）と、減速機構１２から後輪４へ力を伝達するドライブシャフト２８と、を備えている。

図３に示すように、減速機構１２（図４参照）とハウジング４０とは、減速機構１２をハウジング４０に取り付けて一体化した減速機構ユニット１２Ｕとされている。さらに、電動機１１と減速機構ユニット１２Ｕとは、減速機構１２とともに電動機１１をハウジング４０に取り付けて一体化した駆動ユニット１０とされている。

＜スイングアーム＞
図４に示すように、スイングアーム２１は、後輪４の前方に配置されるとともに、駆動ユニット１０を収容するための開口２３ａを有するユニット収容部２３と、後輪４の左側方に配置されるとともに、ドライブシャフト２８を挿通するアーム部２４と、を備えている。なお、ユニット収容部２３とアーム部２４とは、同一の部材で一体に形成されている。図中符号２８Ｃは、ドライブシャフト２８の中心軸線であるシャフト軸線を示す。

ユニット収容部２３の開口２３ａは、上方に開口している。ユニット収容部２３の前端部には、車幅方向に延びる筒状をなすピボット部２２ａが設けられている。図４の断面視で、ユニット収容部２３は、ピボット部２２ａから後方に延びた後に左側方に屈曲したＬ字の箱状をなしている。図４の断面視で、ユニット収容部２３の後壁のうち後輪４のタイヤと対向する部分は、タイヤの外形に沿う弧状をなしている。なお、図中符号２２Ｃは、ピボット部２２ａの中心軸線であるピボット軸線を示す。

アーム部２４は、前後に延びる筒状をなしている。アーム部２４は、ピボット部２２ａ（具体的には、ピボット部２２ａの後方のユニット収容部２３）から後輪支持機構３０に向けて延びている。図４の断面視で、アーム部２４の車幅方向内側部のうち後輪４のタイヤと対向する部分は、タイヤの外形に沿うとともに、ユニット収容部２３の後壁に滑らかに連なる弧状をなしている。図４の断面視で、アーム部２４の車幅方向外側部は、車幅方向内側部の形状と対称をなすとともに、ユニット収容部２３の後壁に滑らかに連なる弧状をなしている。アーム部２４の長手方向と直交（交差）する断面は、閉じた環状をなしている。

図２に示すように、スイングアーム２１の上面には、ユニット収容部２３の開口２３ａ（図３参照）を開閉可能なリッド２５が設けられている。リッド２５は、ユニット収容部２３の開口形成部２３ｂ（側壁部）に複数（図２では４本のみ図示）のボルト２６で取り付けられている。開口形成部２３ｂには、ボルト２６が螺着される複数（例えば本実施形態では１２個）のネジ孔２３ｃ（図３参照）が形成されている。なお、図中符号２７は、リヤサスペンション６の下端部を回動可能に支持するリヤサスペンション下支持部を示す。

＜電動機＞
電動機１１は、後輪よりも前方に配置されている。電動機１１は、インナーロータ形式のモータである。図４に示すように、電動機１１は、インナーロータ１３と、ハウジング４０に支持されたステータ１４と、を備えている。電動機１１の回転軸線（以下「モータ軸線１１Ｃ」という。）は、車両前後方向に延びている。モータ軸線１１Ｃは、車幅方向の中心に配置されている。

インナーロータ１３は、筒状のインナーロータ本体１３ａと、インナーロータ本体１３ａの外周面に設けられたマグネット１３ｂと、を備えている。インナーロータ本体１３ａの内周面は、モータ軸線１１Ｃを形成するモータ出力軸１５とスプライン結合されている。

ステータ１４は、環状のステータヨーク１４ａと、ステータヨーク１４ａに接合され且つモータ軸線１１Ｃに対して放射状に設けられた複数のティース１４ｂと、ティース１４ｂに導線を巻き掛けたコイル１４ｃと、を備えている。ステータヨーク１４ａは、ハウジング４０に複数（図４では１つのみ図示）のボルト１６ａで固定されている。電動機１１は、ステータヨーク１４ａの外周面をユニット収容部２３内に露出させた状態で、ハウジング４０に支持されている。なお、図中符号１６は、電動機１１の前方を覆うカップ状のモータカバーを示す。

モータカバー１６の径方向中央部には、モータ出力軸１５の一端部（前端部）を回転可能に支持する軸受１６ｂが設けられている。ハウジング４０の後壁には、モータ出力軸１５の他端部（後端部）を回転可能に支持する軸受１６ｃが設けられている。

図２の側面視で、ピボット軸線２２Ｃ（図３に示すピボット部２２ａ）と後輪車軸４ａの中心軸線４Ｃ（後輪車軸４ａ）とを通る直線を「スイングアーム中心線２１Ｃ」とする。図２の側面視で、モータ軸線１１Ｃは、スイングアーム中心線２１Ｃと重なっている。

＜減速機構＞
図４に示すように、減速機構１２は、インナーロータ１３よりも後方であって後輪４よりも前方に配置されている。減速機構１２は、モータ出力軸１５の後端部に一体に設けられたピニオン１５ａと、ピニオン１５ａに噛合する第一減速ギヤ１７と、第一減速ギヤ１７に噛合する第二減速ギヤ１８と、第二減速ギヤ１８とともに回転する軸支部１９と、を備えている。ピニオン１５ａ、第一減速ギヤ１７及び第二減速ギヤ１８は、車幅方向内側から車幅方向外側（左側方）に向けてこの順に並んで配置されている。

第一減速ギヤ１７は、モータ出力軸１５及びドライブシャフト２８と平行な軸線１７Ｃを有するギヤ軸１７ａを備えている。ギヤ軸１７ａの前後端部は、ハウジング４０に設けられた軸受１７ｂ，１７ｄによってそれぞれ回転可能に支持されている。

軸支部１９は、ドライブシャフト２８と同軸に配置されている。軸支部１９の後部は、筒状をなしている。軸支部１９の後部の内周面は、ドライブシャフト２８の前端部とスプライン結合されている。軸支部１９の前端部及び後部は、ハウジング４０に設けられた軸受１９ｂ，１９ｄによってそれぞれ回転可能に支持されている。

＜後輪支持機構＞
図４に示すように、後輪支持機構３０は、後輪４の左側方に配置されている。後輪支持機構３０は、ドライブシャフト２８の後端部が結合された前端部を有する第三減速ギヤ３１と、第三減速ギヤ３１に噛合するファイナルギヤ３２と、第三減速ギヤ３１及びファイナルギヤ３２を収容するファイナルギヤケース３３と、を備えている。

第三減速ギヤ３１は、ドライブシャフト２８と同軸のギヤ軸３１ａを備えている。ギヤ軸３１ａの前端部には、筒状をなすドライブシャフト２８の後端部の内周面がスプライン結合されている。ギヤ軸３１ａの後部には、ファイナルギヤ３２と噛合する傘歯車３１ｂが設けられている。ギヤ軸３１ａの前後中央部は、ファイナルギヤケース３３に設けられた軸受３４によって回転可能に支持されている。

ファイナルギヤ３２は、後輪車軸４ａと同軸の筒状をなすギヤ軸３２ａと、第三減速ギヤ３１と噛合する傘歯車３２ｂと、を備えている。ギヤ軸３２ａの内周面は、後輪車軸４ａの外周面とスプライン結合されている。ギヤ軸３２ａの車幅方向内側部及び車幅方向外側部は、ファイナルギヤケース３３に設けられた軸受３５，３６によって回転可能に支持されている。

かかる構成により、モータ出力軸１５の回転は所定の減速比にて減速され、後輪車軸４ａに伝達される。
なお、図中符号３７は、後輪車軸４ａとファイナルギヤケース３３との間に介装された軸受を示す。図中符号３８は、アーム部２４の後端部をファイナルギヤケース３３の前端部に締結固定するボルトを示す。

＜ハウジング＞
図３に示すように、ハウジング４０は、減速機構１２の前部を収容する第一ハウジング半体４１と、減速機構１２の後部を収容するとともに、第一ハウジング半体４１に結合された第二ハウジング半体４２と、を備えている。

第一ハウジング半体４１には、第一ハウジング半体４１の車幅方向内側から前方に突出してステータ１４を支持するステータ支持部４１ａが設けられている。第一ハウジング半体４１の上部には、上下に開口する端子接続部４１ｂが形成されている。例えば、端子接続部４１ｂには、電動機１１への電力を供給する配線の端子（不図示）などが接続される。
第二ハウジング半体４２は、第一ハウジング半体４１に複数（図３では４本のみ図示）のボルト４３で固定されている。

＜駆動ユニット＞
駆動ユニット１０は、スイングアーム２１のアーム部２４よりも前方に配置されている。駆動ユニット１０は、スイングアーム２１に収容して取り付けられている。駆動ユニット１０は、スイングアーム２１に着脱可能に取り付けられている。駆動ユニット１０は、ハウジング４０に複数（図４では４本のみ図示）のボルト４４が挿通されてユニット収容部２３に締結されることによってスイングアーム２１に取り付けられている。

例えば、ユニット収容部２３の開口形成部２３ｂにボルト締結されたリッド２５（図２参照）を取り外してユニット収容部２３の開口２３ａを開放し、ユニット収容部２３に締結されたボルト４４を外し、かつドライブシャフト２８の結合を解除することによって、駆動ユニット１０をスイングアーム２１から取り外すことができる。なお、図中符号２３ｓは、ユニット収容部２３の内壁と駆動ユニット１０との間に形成された隙間を示す。

＜減速機構ユニット＞
減速機構ユニット１２Ｕは、スイングアーム２１に着脱可能に取り付けられている。例えば、駆動ユニット１０をスイングアーム２１から取り外した状態で、ステータヨーク１４ａとともにハウジング４０にボルト締結されたモータカバー１６を取り外し、かつハウジング４０から電動機１１を取り外すことによって、減速機構ユニット１２Ｕをスイングアーム２１から取り外すことができる。

以上説明したように、上記実施形態は、ピボット部２２ａで車体フレーム５に回動可能に支持されるとともに、ピボット部２２ａから後方に延びて後輪４を回転可能に支持するスイングアーム２１と、スイングアーム２１に取り付けられるとともに、後輪４を駆動する電動機１１と、電動機１１の出力を減速して後輪４に伝達する減速機構１２と、を備えた自動二輪車１のスイングアーム構造２０において、スイングアーム２１とは別体に設けられるとともに、スイングアーム２１に取り付けられたハウジング４０を更に備え、減速機構１２とハウジング４０とは、減速機構１２をハウジング４０に取り付けて一体化した減速機構ユニット１２Ｕとされたものである。
この構成によれば、減速機構１２とハウジング４０とが減速機構１２をハウジング４０に取り付けて一体化した減速機構ユニット１２Ｕとされていることで、適度な撓みが必要なスイングアーム部分（すなわちアーム部２４）と、駆動系回転軸の安定化のために高剛性が必要なパワーユニット部分（すなわち駆動ユニット１０）とを別体構造とすることができる。そのため、スイングアーム部分の剛性とパワーユニット部分の剛性とを別々に設定することができる。したがって、パワーユニット部分の高い剛性を確保することができる。加えて、スイングアーム部分には適度な撓みを持たせることができるため、パワーユニット部分とスイングアーム部分とでそれぞれ必要な剛性を確保することができる。加えて、ハウジング４０内に作動油を満たしている場合であっても、減速機構ユニット１２Ｕは、走行時の路面入力等による後輪４からの荷重によってスイングアーム部分の変形の影響を受けにくい。そのため、作動油が車外に漏れ出ることを回避し、オイルシール性を確保することができる。加えて、車両組立時において、先に減速機構ユニット１２Ｕを組み立てておくことによって、車両での組立を容易に行うことができる。加えて、減速機構ユニット１２Ｕがスイングアーム２１に着脱可能に取り付けられていることで、完成車のメンテナンス時において、スイングアーム２１を分解せずに減速機構ユニット１２Ｕのみを取り外すことができるため、作業を容易に行うことができる。

また、上記実施形態では、電動機１１が後輪４よりも前方に配置されていることで、電動機１１がピボット部２２ａの近傍に配置されるため、足回り部品のピボット部２２ａ回りの慣性質量を小さくすることができる。そのため、リヤサスペンション６の作動性を向上することができる。加えて、電動機１１が車両の中心近傍に配置されるため、重量配分に有利となる。加えて、後輪４の車幅方向側方のファイナルギヤケース３３を小型化することができる。これにより、バンク時にファイナルギヤケース３３が接地し難くなるため、バンク角を向上することができる。

また、上記実施形態では、電動機１１と減速機構ユニット１２Ｕとが減速機構１２とともに電動機１１をハウジング４０に取り付けて一体化した駆動ユニット１０とされていることで、駆動ユニット１０は、走行時の路面入力等による後輪４からの荷重によってスイングアーム部分の変形の影響を受けにくい。加えて、車両組立時において、先に駆動ユニット１０を組み立てておくことによって、車両での組立を容易に行うことができる。

また、上記実施形態では、駆動ユニット１０がスイングアーム２１に着脱可能に取り付けられていることで、完成車のメンテナンス時において、スイングアーム２１を分解せずに駆動ユニット１０のみを取り外すことができるため、作業を容易に行うことができる。

また、上記実施形態では、駆動ユニット１０がピボット部２２ａから後輪支持機構３０に向けて延びるスイングアーム２１のアーム部２４よりも前方に配置されていることで、駆動ユニット１０がスイングアーム２１前側の断面積が大きい部分に配置されるため、駆動ユニット１０がアーム部２４よりも後方に配置された場合と比較して、スイングアーム２１の剛性への悪影響を少なくすることができる。

また、上記実施形態では、スイングアーム２１の上面には駆動ユニット１０を収容するための開口２３ａを開閉可能なリッド２５が設けられていることで、リッド２５を開閉することによって完成車でのメンテナンス作業を容易に行うことができる。加えて、ハウジング４０内に作動油を満たしている場合であっても、メンテナンスのためにリッド２５を開けても作動油が車外にこぼれることを回避することができる。

また、上記実施形態では、スイングアーム２１がドライブシャフト２８を挿通するアーム部２４を備えることで、アーム部２４に適度な撓みを持たせることができるため、パワーユニット部分とアーム部２４とでそれぞれ必要な剛性を確保することができる。

また、上記実施形態では、アーム部２４の長手方向と交差する断面が閉じた環状をなしていることで、走行時の路面入力等による後輪４からの荷重によってアーム部２４が変形しても、一様な変形を生じさせることができる。したがって、アーム部２４の剛性を適切に設定することにより、操安性を安定して調整することができる。

また、上記実施形態では、モータ軸線１１Ｃが車両前後方向に延びていることで、電動機１１からドライブシャフト２８まで回転方向を変更せずに電動機１１の出力を伝達することができる。

また、上記実施形態では、モータ軸線１１Ｃが車幅方向の中心に配置されていることで、車幅方向の重量配分が良好となる。

また、上記実施形態では、側面視でモータ軸線１１Ｃがスイングアーム中心線２１Ｃと重なることで、電動機１１を含む懸架系の重心位置がスイングアーム中心線２１Ｃ上に配置されるため、懸架系の作動性を向上することができる。加えて、電動機１１が上下方向に膨出することが抑制されるため、スイングアーム２１を小型化することができる。

なお、上記実施形態では、鞍乗り型電動車両の一例として電動機１１を含む駆動ユニット１０を備えた自動二輪車１を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、車体側にエンジンを搭載した鞍乗り型ハイブリッド車両であってもよい。

また、上記実施形態では、スイングアーム２１のアーム部２４が後輪４の車幅方向一側方のみ（左側方のみ）に配置された片持ち式スイングアームを例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、スイングアームのアーム部が後輪の車幅方向両側方に配置された両持ち式スイングアームであってもよい。

なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、前記鞍乗り型電動車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車（原動機付自転車及びスクータ型車両を含む）のみならず、三輪（前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む）又は四輪の車両も含まれる。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。

１ 自動二輪車（鞍乗り型電動車両）
４ 後輪
５ 車体フレーム
１０ 駆動ユニット
１１ 電動機
１１Ｃ モータ軸線（電動機の回転軸線）
１２ 減速機構
１２Ｕ 減速機構ユニット
２０ スイングアーム構造
２１ スイングアーム
２１Ｃ スイングアーム中心線
２２ａ ピボット部
２３ａ 開口
２４ アーム部
２５ リッド
２８ ドライブシャフト
３０ 後輪支持機構
４０ ハウジング

Claims (10)

1. ピボット部（２２ａ）で車体フレーム（５）に回動可能に支持されるとともに、前記ピボット部（２２ａ）から後方に延びて後輪（４）を回転可能に支持するスイングアーム（２１）と、
   前記スイングアーム（２１）に取り付けられるとともに、前記後輪（４）を駆動する電動機（１１）と、
   前記電動機（１１）の出力を減速して前記後輪（４）に伝達する減速機構（１２）と、を備えた鞍乗り型電動車両（１）のスイングアーム構造（２０）において、
   前記スイングアーム（２１）とは別体に設けられるとともに、前記スイングアーム（２１）に取り付けられたハウジング（４０）を更に備え、
   前記減速機構（１２）と前記ハウジング（４０）とは、前記減速機構（１２）を前記ハウジング（４０）に取り付けて一体化した減速機構ユニット（１２Ｕ）とされており、
   前記電動機（１１）は、前記後輪（４）よりも前方に配置されていることを特徴とする鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造。
2. 前記電動機（１１）と前記減速機構ユニット（１２Ｕ）とは、前記減速機構（１２）とともに前記電動機（１１）を前記ハウジング（４０）に取り付けて一体化した駆動ユニット（１０）とされていることを特徴とする請求項１に記載の鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造。
3. 前記駆動ユニット（１０）は、前記スイングアーム（２１）に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項２に記載の鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造。
4. 前記駆動ユニット（１０）は、前記ピボット部（２２ａ）から後輪支持機構（３０）に向けて延びる前記スイングアーム（２１）のアーム部（２４）よりも前方に配置されていることを特徴とする請求項２又は３に記載の鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造。
5. 前記駆動ユニット（１０）は、前記スイングアーム（２１）に収容して取り付けられており、
   前記スイングアーム（２１）の上面には、前記駆動ユニット（１０）を収容するための開口（２３ａ）を開閉可能なリッド（２５）が設けられていることを特徴とする請求項２から４の何れか一項に記載の鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造。
6. 前記減速機構（１２）から前記後輪へ力を伝達するドライブシャフト（２８）を更に備え、
   前記スイングアーム（２１）は、前記ドライブシャフト（２８）を挿通するアーム部（２４）を備えることを特徴とする請求項１から５の何れか一項に記載の鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造。
7. 前記アーム部（２４）の長手方向と交差する断面は、閉じた環状をなしていることを特徴とする請求項６に記載の鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造。
8. 前記電動機（１１）の回転軸線（１１Ｃ）は、車両前後方向に延びていることを特徴とする請求項１から７の何れか一項に記載の鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造。
9. 前記電動機（１１）の回転軸線（１１Ｃ）は、車幅方向の中心に配置されていることを特徴とする請求項１から８の何れか一項に記載の鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造。
10. 側面視で、前記ピボット部（２２ａ）と前記後輪（４）の車軸（４ａ）とを通る直線をスイングアーム中心線（２１Ｃ）としたとき、
    側面視で、前記電動機（１１）の回転軸線（１１Ｃ）は、前記スイングアーム中心線（２１Ｃ）と重なることを特徴とする請求項１から９の何れか一項に記載の鞍乗り型電動車両のスイングアーム構造。

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