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JP6664755B1 - 角膜内皮細胞を保存するための方法および容器 - Google Patents

角膜内皮細胞を保存するための方法および容器 Download PDF

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Abstract

【課題】高い細胞生存率で角膜内皮細胞を保存する方法を提供すること。【解決手段】本発明は、角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞を保存する方法であって、底面積が少なくとも約0.7cm2の容器に該角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞を保存する工程を含む方法を提供する。本発明によれば、角膜内皮細胞を高い細胞生存率で保存することが可能である。また、このようにして保存された角膜内皮細胞は、正常な角膜内皮細胞の機能を有しており、また、角膜内皮疾患等の治療用細胞として使用可能である。【選択図】なし

Description

本発明は、角膜内皮細胞を保存するための技術に関する。
視覚情報は、眼球の最前面の透明な組織である角膜から取り入れられた光が、網膜に達して網膜の神経細胞を興奮させ、発生した電気信号が視神経を経由して大脳の視覚野に伝達することで認識される。良好な視力を得るためには、角膜が透明であることが必要である。角膜の透明性は、角膜内皮細胞のポンプ機能とバリア機能により、含水率が一定に保たれることにより保持される。
ヒトの角膜内皮細胞は、出生時には1平方ミリメートル当たり約3000個の密度で存在しているが、再生する能力が限られているために重度な障害をうけると機能を維持できず角膜の透明性が失われる。角膜内皮変性症や種々の原因による角膜内皮の機能不全によって生じる水疱性角膜症では、角膜が浮腫と混濁を生じ、著しい視力低下をきたす。現在、水疱性角膜症に対しては、ドナー角膜を用いた他家角膜移植が行われている。しかしながら、手術侵襲、拒絶反応、ドナー不足など現在の角膜移植には多くの解決課題が存在する。
これらの課題を克服するために、近年、角膜内皮疾患に対する治療として、侵襲性の低い細胞移植治療が開発されている(非特許文献1)。角膜内皮細胞の培養は困難であり、通常の方法では増殖しない(非特許文献2および3)、線維芽細胞化する(非特許文献4)、細胞老化する(非特許文献5)などの問題があり、角膜内皮細胞の培養方法はさかんに研究されており、実際に臨床応用が可能となった(非特許文献1)。
Kinoshita S, Koizumi N, Ueno M, et al. Injection of cultured cells with a ROCK inhibitor for bullous keratopathy. N Engl J Med 2018;378:995-1003. Okumura N, Ueno M, Koizumi N, et al. Enhancement on primate corneal endothelial cell survival in vitro by a ROCK inhibitor. Invest Ophthalmol Vis Sci 2009;50:3680-3687. Nakahara M, Okumura N, Kay EP, et al. Corneal endothelial expansion promoted by human bone marrow mesenchymal stem cell-derived conditioned medium. PLoS One 2013;8:e69009. Okumura N, Kay EP, Nakahara M, Hamuro J, Kinoshita S, Koizumi N. Inhibition of TGF-beta Signaling Enables Human Corneal Endothelial Cell Expansion In Vitro for Use in Regenerative Medicine. PLoS One 2013;8:e58000. Hongo A, Okumura N, Nakahara M, Kay EP, Koizumi N. The Effect of a p38 Mitogen-Activated Protein Kinase Inhibitor on Cellular Senescence of Cultivated Human Corneal Endothelial Cells. Invest Ophthalmol Vis Sci 2017;58:3325-3334.
本発明者らは、鋭意工夫した結果、角膜内皮細胞を高い生存率で保存する方法を見出すに至った。具体的には、本発明者らは、角膜内皮細胞を特定の底面積を有する容器中で保存することで、高い生存率が維持されることを見出した。このようにして保存された角膜内皮細胞は、正常な角膜内皮細胞の機能を有しており、また、治療用細胞として使用可能であった。
したがって、本発明は以下を提供する。
(項目1)
角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞を保存する方法であって、底面積が少なくとも約0.7cmの容器に該角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞を保存する工程を含む、方法。
(項目2)
前記細胞の保存のための液体の液面が約0.75mm以上である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記容器の底面積が、約0.7〜約4cmである、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記容器の底面積が、約1.5〜約3cmである、項目1〜3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記容器の底面積が、約1.8〜約2cmである、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記容器は、接着培養のための表面処理がされていない、項目1〜5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記容器は、低接着表面容器または表面非処理容器である、項目1〜6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記容器は、ポリスチレン、ポリプロピレン、またはガラスでできている、項目1〜7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記容器は、24ウェルプレート、バイアル瓶、シリンジ、ディッシュからなる群より選択される、項目1〜8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記細胞の保存が、約12℃〜約42℃の温度で行われる、項目1〜9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記細胞の保存が、約17℃〜約39℃の温度で行われる、項目1〜10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記細胞の保存が、約27℃〜約37℃の温度で行われる、項目1〜11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記細胞の保存が、約37℃の温度で行われる、項目1〜12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞を保存するための容器であって、底面積が少なくとも約0.7cmである、容器。
(項目15)
前記容器は、液面の高さが、約0.75mm以上とすることを許容する構造を有する、項目14に記載の容器。
(項目16)
角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞を保存するための容器であって、底面積が約0.7〜約4cmである、項目14または15に記載の容器。
(項目17)
前記容器の底面積が、約1.5〜約3cmである、項目14〜16のいずれか一項に記載の容器。
(項目18)
前記容器の底面積が、約1.8〜約2cmである、項目14〜17のいずれか一項に記載の容器。
(項目19)
前記容器は、接着培養の表面処理がされていない、項目14〜18のいずれか一項に記載の容器。
(項目20)
前記容器は、低接着表面容器または表面非処理容器である、項目14〜19のいずれか一項に記載の容器。
(項目21)
前記容器は、ポリスチレン、ポリプロピレン、またはガラスでできている、項目14〜20のいずれか一項に記載の容器。
(項目22)
前記容器は、24ウェルプレート、バイアル瓶、シリンジ、またはディッシュからなる群より選択される、項目14〜21のいずれか一項に記載の容器。
(項目23)
項目1〜13のいずれか一項に記載の方法により保存された角膜内皮細胞または角膜内皮様細胞。
(項目24)
項目23に記載の角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞を含む、角膜内皮の障害、疾患または症状を処置または予防するための組成物。
(項目25)
ROCK阻害剤をさらに含む、項目24に記載の組成物。
(項目26)
前記組成物は、ROCK阻害剤と組み合わせて投与されることを特徴とする、項目25に記載の組成物。
(項目27)
前記ROCK阻害剤は、Y−27632である、項目25または26に記載の組成物。(項目28)
(A)角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞と、(B)該角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞を保存するための容器とを備える、細胞含有容器であって、底面積が少なくとも約0.7cmである、細胞含有容器。
(項目29)
項目15〜22のいずれかまたは複数に記載の特徴をさらに含む、項目28に記載の細胞含有容器。
(項目30)
ROCK阻害剤をさらに含む、項目28または29に記載の細胞含有容器。
本発明において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
本発明によれば、角膜内皮細胞を高い細胞生存率で保存することが可能である。また、このようにして保存された角膜内皮細胞は、正常な角膜内皮細胞の機能を有しており、また、角膜内皮疾患等の治療用細胞として使用可能である。
図1Aは、角膜内皮細胞の保存の例示的な手順の概略を示す。図1Bは、24ウェルプレート(細胞培養プレート)、24ウェルプレート(超低接着)、48ウェルプレート(懸濁培養)および96ウェルプレート(超低接着)において角膜内皮細胞を保存した後、穏やかなピペッティングで細胞が回収された各プレートの位相差顕微鏡画像を示す。 図2Aは、24ウェルプレート(超低接着)、48ウェルプレート(懸濁培養)、96ウェルプレート(超低接着、平底)、96ウェルプレート(超低接着、丸底)、15mlコニカルチューブ(超低接着)および2mlクライオチューブにおいて保存した角膜内皮細胞の生細胞と死細胞の割合を示す。図2Bは、24ウェルプレート(超低接着)において37℃、24ウェルプレート(超低接着)において4℃、24ウェルプレート(細胞培養プレート)において37℃で保存した角膜内皮細胞の生細胞と死細胞の割合を示す。図2Cは、24ウェルプレート(超低接着)、24ウェルプレート(非処理)および10mlガラスバイアルチューブにおいて保存した角膜内皮細胞の生細胞と死細胞の割合を示す。図2Dは、24ウェルプレート(超低接着)において、保存液の量300μl、1000μl、1500μlおよび2500μlで保存した角膜内皮細胞の生細胞と死細胞の割合を示す。バーの白の部分が死細胞、黒の部分が生細胞を示す。図2Eは、24ウェルプレート(超低接着)において保存した角膜内皮細胞を培養プレートに播種した3時間後および2週間後の位相差顕微鏡画像を示す。 図3Aは、24ウェルプレート(超低接着)において保存した角膜内皮細胞が前房に注入されたウサギモデルにおける細隙灯画像を示す。図3Aは、左から注入後1日目、7日目および14日目の画像を示し、上から対照眼(細胞注入なし)、24時間保存細胞注入眼、48時間保存細胞注入眼および72時間保存細胞注入眼を示す。図3Bは、注入後14日目のシャインプルーフ画像を示す。 図4Aは、24ウェルプレート(超低接着)において保存した角膜内皮細胞が前房に注入されたウサギモデルにおいて、注入後14日目にPentacamTMで取得した角膜厚のカラーマップを示す。図4Bは、保存した角膜内皮細胞の注入後の中央角膜厚のグラフを示す。図4Cは、保存した角膜内皮細胞の注入後の角膜体積のグラフを示す。図4Dは、保存した角膜内皮細胞の注入後14日目の眼の細胞密度のグラフを示す。図4Eは、免疫蛍光染色されたウサギ角膜の蛍光顕微鏡画像を示す。青はDAPI染色(細胞核)を示す。緑は、左からそれぞれNa/K−ATPase、ZO−1、N−カドヘリンを示す。 図5は、1mlのシリンジに培養した角膜内皮細胞を50万個を300μlの細胞保存液に懸濁して、保存している状態を示す。 図6は、1mlのシリンジに角膜内皮細胞を72時間保存した後の位相差顕微鏡写真を示す。細胞がシリンジの側面に沈殿している。 図7は、1mlのシリンジに角膜内皮細胞を72時間保存した後に、軽くタッピングした後の位相差顕微鏡写真を示す。細胞がシリンジの側面より浮き上がっている。 図8は、1mlのシリンジに角膜内皮細胞を72時間保存した後に、軽くタッピングし、シリンジを細胞保存液にて優しく洗浄した後の位相差顕微鏡写真を示す。細胞のシリンジの側面への接着を認めない。 図9は、12℃、17℃、22℃、27℃、32℃、35℃、37℃、39℃、および42℃で保存した角膜内皮細胞の生細胞と死細胞の割合を示す。バーの白の部分が死細胞、黒の部分が生細胞を示す。 図10は、(1)バイアル瓶(株式会社マルエム、大阪、0501−02)、(2)バイアル瓶(2ml、直径16mm、高さ33mm、IRAS処理、岩田硝子工業株式会社、大阪、lot:181024)、および(3)バイアル瓶(2ml、直径16mm、高さ33mm、IRAS処理およびシリカコート加工(SiO2コーティング)、岩田硝子工業株式会社、大阪、lot:181102)の写真を示す。 図11は、(1)バイアル瓶(株式会社マルエム、大阪、0501−02)、(2)バイアル瓶(2ml、直径16mm、高さ33mm、IRAS処理、岩田硝子工業株式会社、大阪)、および(3)バイアル瓶(2ml、直径16mm、高さ33mm、IRAS処理およびシリカコート加工(SiO2コーティング)、岩田硝子工業株式会社、大阪)において保存した角膜内皮細胞の生細胞と死細胞の割合を示す。バーの白の部分が死細胞、黒の部分が生細胞を示す。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。本明細書において、「約」とは、後に続く値の±10%を意味する。
(定義)
本明細書において、「角膜内皮細胞」とは当該分野で用いられる通常の意味で用いられる。角膜とは、眼を構成する層状の組織の一つであり透明であり、最も外界に近い部分に位置する。角膜は、ヒトでは外側(体表面)から順に5層でできているとされ、外側から角膜上皮、ボーマン膜、固有層、デスメ膜(角膜内皮基底膜)、および角膜内皮で構成される。特に、特定しない限り、上皮および内皮以外の部分は「角膜実質」とまとめて称することがあり、本明細書でもそのように称する。本明細書において「HCEC」(human
corneal endothelial cells)とは、ヒト角膜内皮細胞の略称である。
本明細書において、「角膜内皮様細胞」とは、幹細胞から分化した細胞、例えばiPS細胞等から分化した細胞であって、角膜内皮細胞と実質的な同一の機能を有する細胞を指す。幹細胞、例えば、ES細胞、iPS細胞等から角膜内皮様細胞へと分化させる方法は、当該分野で周知である(McCabe et al., PLoS One. 2015 Dec 21;10(12):e0145266; Ali et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2018 May 1;59(6):2437−2444)。典型的な例において、簡潔には、細胞解離バッファー(Life Technologies)を使用して、0日目に1:12希釈でiPS細胞を35mmマトリゲルコーティングプレート(Corning)に播種する(80%コンフルエントプレートを12個のプレートに分ける)。iPS細胞を4日間培地(mTeSR1;STEMCELL Technologies Inc.)中で増殖させる。4日目に、mTeSR1培地を、80%DMEM−F12(Life Technologies)、20%KSR(Life Technologies)、1%非必須アミノ酸(Life Technologies)、1mM L−グルタミン(STEMCELL Technologies,inc.)、0.1mM β−メルカプトエタノール(MilliporeSigma)、および8ng/mL βFGF(MilliporeSigma)の基本培地中に、500ng/mLヒト組換えNoggin(R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)および10μMのSB431542(MilliporeSigma)を含むSmad阻害剤培地で置換する。6日目に、Smad阻害剤培地を、80%DMEM−F12(Life Technologies)、20%KSR(Life Technologies)、1%非必須アミノ酸(Life Technologies)、1mM L−グルタミン(STEMCELL Technologies,inc.)、0.1mM β−メルカプトエタノール(MilliporeSigma)、および8ng/mL βFGF(MilliporeSigma)の基本培地中に、0.1× B27サプリメント(Life Technologies)、10ng/mL組換えヒト血小板由来増殖因子−BB(PDGF−BB;PeproTech,Rocky Hill,NJ,USA)および10ng/mL組換えヒトDickkopf関連タンパク質−2(DKK−2;R&D Systems)を含む角膜培地で置換する。7日目に、分化中のCECを、新しいマトリゲールコーティングプレート(35mm)に移し、さらに13日間角膜培地中で増殖させる。分化したCECを20日目に回収する。上記例は典型的な例であって、当業者は、当該分野で周知の他の方法(Fukuta et al., PLoS One. 2014 Dec 2;9(12):e112291; Hayashi et al., Nature. 2016 Mar 17;531(7594):376−80)も使用し得る。また、当業者であれば、当該分野で周知の方法の条件を適宜調節して、角膜内皮様細胞を作製することができる。
「角膜内皮細胞」および「角膜内皮様細胞」は、磁性体(例えば、鉄)を含んでいてもよい。例えば、磁性物質を含む角膜内皮細胞を前房内に注入した場合、磁力により角膜の内側(例えば、デスメ膜)に引き付け接着を促すことが可能である(Patel et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2009 May;50(5):2123-31;Mimura et al., Exp Eye Res. 2003 Jun;76(6):745-51;およびMimura et al., Exp Eye Res. 2005 Feb;80(2):149-57)。「磁性体」とは、磁場により磁化される物質を指し、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、フェライトなどが挙げられる。
本明細書において、「接着培養」とは、細胞を容器に接着させて培養することをいう。接着培養用の容器としては、例えば、細胞培養(TC:tissue culture)処理がされているものが挙げられる。
本明細書において、「低接着」とは、細胞の培養または保存の際に細胞が容器に接着することがほとんどないことを指す。低接着表面容器は、例えば、表面がハイドロゲルでコーティング(例えば、共有結合により)、および/またはシリカ(SiO)コーティングされている。他の例としては、表面がIRAS処理されたガラス容器が挙げられる。IRAS処理されたバイアル瓶は、岩田硝子工業株式会社(大阪)より利用可能である。IRAS処理によって、ホウケイ酸ガラスからのアルカリの溶出が抑制される。低接着表面容器は、懸濁(浮遊)培養用の容器として市販されている場合もあり、懸濁(浮遊)培養用の容器は、細胞が容器に接着しないような表面処理がされている限り、本明細書において、低接着表面容器とみなされる。
本明細書において、「表面非処理」とは、表面処理がされていないことを指し、「表面非処理容器」は、低接着表面容器と同様に細胞が容器に接着することなく細胞を培養または保存することができる容器を指す。表面非処理容器は、懸濁(浮遊)培養用の容器として市販されている場合もあり、懸濁(浮遊)培養用の容器は、表面処理がされておらず、細胞が容器に接着することなく細胞を培養または保存することができる限り、表面非処理容器とみなされる。
本明細書において、細胞の「保存」とは、細胞を増殖させることなく、細胞の機能を維持しつつ溶液中に維持することを指し、細胞を増殖させることを目的とする「培養」とは異なる。
本明細書において「細胞含有容器」とは、細胞(代表的には、角膜内皮細胞又は角膜内皮様細胞)を含有する容器をいい、代表的には、本明細書で開示される特徴を有する。
(好ましい実施形態)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。これらの実施形態について、当業者は適宜、任意の実施形態を組み合わせ得る。
(保存方法)
一態様において、本発明は、角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞を保存する方法であって、特定の底面積を有する容器に該角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞を保存する工程を含む、方法を提供する。本発明の方法で使用される容器の底面積は、少なくとも約0.7cmであり得、通常、約0.7〜約4cmであり得る。理論に束縛されることを望まないが、0.7cmよりも底面積が小さい容器(例えば、12ウェルプレート)の場合は、高い細胞生存率が達成されず、4cmよりも底面積が大きい容器(例えば、48ウェルプレート)の場合、角膜内皮細胞注入療法に使用され得る細胞懸濁液または細胞の保存のための液体(例えば、約300μl)を容器に入れると液面が低くなりすぎるため保存に適さない。ある実施形態では、細胞の保存のための液体の液面が約0.5mm以上、約0.6mm以上、約0.7mm以上、約0.75mm以上、約0.8mm以上、約0.9mm以上、約1.0mm以上、約1.2mm以上、約1.4mm以上、約1.6mm以上、約1.8mm以上、約2mm以上であることが好ましい。ある実施形態では、細胞の保存のための液体の液面が約1.0mm以下、約1.5mm以下、約1.8mm以下、約2mm以下、約3mm以下、約4mm以下、約5mm以下、約6mm以下、約7mm以下、約8mm以下、約9mm以下、約10mm以下、約15mm以下、約20mm以下などであり得る。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される容器の底面積は、約0.7〜約3.5cm、約0.7〜約3cm、約0.7〜約2.5cm、約0.7〜約2.0cm、約1〜約4cm、約1〜約3.5cm、約1〜約3cm、約1〜約2.5cm、約1〜約2cm、約1.5〜約3cm、約1.5〜約4cm、約1.6〜約2.2m、または約1.8〜約2mであり得る。保存される角膜内皮細胞の懸濁液の量が、角膜内皮細胞注入療法で使用され得る量よりも多い場合は、容器の底面積の上限は特に限定されず、例えば、底面積の範囲において、上限として約4.5cm、約5cm、約5.5cm、約6cm、約7cm、約8cm、約9cm、約10cm、約15cm、約20cm、約25cm、約30cm、約40cm、約50cm、約60cm、約70cm、約80cm、約90cm、約100cmとすることができる。容器の底面積は、好ましくは約1.5〜約3cmであり、より好ましくは、約2cmである。特定の実施形態では、容器の底面積は約1.88cmである。
本発明の方法は、保存開始時点から高い細胞数および高い細胞生存率を維持しつつ角膜内皮細胞を保存することを可能にする。例えば、本発明の方法は、保存開始時点の全細胞を100%とすると、少なくとも保存後の総細胞数が約30%以上かつ生細胞比(生細胞/生細胞+死細胞)が約70%以上、好ましくは、保存後の総細胞数が約50%以上かつ生細胞比が約80%以上、最も好ましくは、保存後の総細胞数が70%以上かつ生細胞比が約90%以上での角膜内皮細胞を達成し得る。特定の実施形態において、本発明の方法は、細胞生存率(保存開始時点の全細胞と比較した場合の生細胞数の割合)が、好ましくは約30%以上、より好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約80%以上、最も好ましくは約90%以上である。さらなる特定の実施形態では、上記細胞生存率に加えて、生細胞比(生細胞/生細胞+死細胞)が、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、最も好ましくは約90%以上である。
底面積は、容器の底面と称される面の面積を指す。本発明の方法は、シリンジを横に倒した状態で保存することも企図するが、そのような場合、容器の底面積は、細胞懸濁液が接触する円筒曲面の下半分の面の面積とする。
保存の際の温度は、約10℃〜約50℃の範囲内であり得る。高すぎても低すぎても細胞生存率が低下してしまうためである。当業者であれば、保存の際の好適な温度を適切に決定することが可能である。いくつかの実施形態において、保存の際の温度は、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、約40℃、約41℃、約42℃、約43℃、約44℃、約45℃、約46℃、約47℃、約48℃、約49℃、または約50℃であり得る。好ましい保存の際の温度範囲は、好ましくは約12℃〜約42℃であり、より好ましくは約17℃〜約39℃であり、さらに好ましくは約27℃〜約37℃である。好ましい実施形態では、保存の際の温度は、室温または約37℃であり得る。最も好ましい実施形態では、保存の際の温度は約37℃であり得る。
角膜内皮細胞は、哺乳動物(ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、サル等)に由来する細胞であり得るが、霊長類由来が好ましく、特にヒト由来が好ましい。
いくつかの実施形態において、容器は、接着培養のための表面処理がされていない。いくつかの実施形態において、容器は、低接着表面容器または表面非処理容器である。いくつかの実施形態において、容器は、ポリスチレン、ポリプロピレン、またはガラスでできている。具体的な実施形態において、容器としては、例えば、24ウェルプレート、バイアル瓶、シリンジ、およびディッシュが挙げられるがこれらに限定されない。
前記容器は、細胞接着が生じることなく保存が可能である限り、酸素透過性の材料でできていてもよく、そうでなくてもよい。酸素透過性の材料としては、例えば、ポリエチレンの他、酸素を透過する任意の材料が挙げられる。また、酸素を透過しない材料を、当該分野で周知の方法により酸素を透過するように加工することも可能である。
角膜内皮細胞または角膜内皮様細胞の保存溶液は、当該分野で使用される周知の保存溶液を使用してよい。使用され得る保存液としては、例えば、OptiMEM−I(登録商標)(Thermo Fisher Scientific)、MEM、DMEM、M199、角膜内皮細胞保存液(本明細書で使用される保存液、Generation and Feasibility Assessment of a New Vehicle for Cell−Based Therapy for Treating Corneal Endothelial Dysfunction. Okumura N, Kakutani K, Inoue R, Matsumoto D, Shimada T, Nakahara M, Kiyanagi Y, Itoh T, Koizumi N.PLoS One. 2016 Jun 29;11(6):e0158427. doi: 10.1371/journal.pone.0158427. eCollection 2016.PMID: 27355373)などが挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、保存の際の液量は、例えば、その後の細胞注入に適切な量である約300μlであり得るが、目的に応じて適宜変更可能である。例えば、保存の際の液量は、約100μl、約200μl、約300μl、約400μl、約500μl、約600μl、約700μl、約800μl、約900μl、約1ml、約2ml、約3ml、約4ml、約5ml、約6ml、約7ml、約8ml、約9ml、または約10mlであり得る。液量の範囲は、上記数値を適宜組み合わせることができる。
(容器)
別の態様において、本発明は、角膜内皮細胞または角膜内皮様細胞を保存するための容器であって、特定の底面積を有する容器を提供する。容器の具体的な特徴は、上記、特に(保存方法)に具体的に記載される任意の実施形態を採用することができる。
(容器)
別の態様において、本発明は、角膜内皮細胞または角膜内皮様細胞と、角膜内皮細胞または角膜内皮様細胞を保存するための容器とを含む細胞含有容器でであって、ここで使用される容器は、特定の底面積を有する容器を提供する。容器の具体的な特徴は、上記、特に(保存方法)に具体的に記載される任意の実施形態を採用することができる。いくつかの実施形態において、本発明の容器内には、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤が含まれ得る。ここで使用されるROCK阻害剤は、本明細書に記載される任意の実施形態でありうる。
(角膜内皮細胞)
別の態様において、本発明は、上記方法により保存された角膜内皮細胞または角膜内皮様細胞を提供する。さらなる態様において、本発明は、上記方法により保存された角膜内皮細胞または角膜内皮様細胞を含む、角膜内皮の障害、疾患または症状を処置または予防するための組成物を提供する。
いくつかの実施形態において、角膜内皮の障害、疾患または症状は、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜移植後障害、角膜内皮炎、外傷、眼科手術、眼科レーザー手術後の障害、加齢、後部多形性角膜ジストロフィ(PPD)、先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ(CHED)、特発性角膜内皮障害、およびサイトメガロウイルス角膜内皮炎からなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤を含んでもよいし、ROCK阻害剤と組み合わせて投与されてもよい。ROCK阻害剤としては、下記文献:米国特許4678783号、特許第3421217号、国際公開第95/28387、国際公開99/20620、国際公開99/61403、国際公開02/076976、国際公開02/076977、国際公開第2002/083175、国際公開02/100833、国際公開03/059913、国際公開03/062227、国際公開2004/009555、国際公開2004/022541、国際公開2004/108724、国際公開2005/003101、国際公開2005/039564、国際公開2005/034866、国際公開2005/037197、国際公開2005/037198、国際公開2005/035501、国際公開2005/035503、国際公開2005/035506、国際公開2005/080394、国際公開2005/103050、国際公開2006/057270、国際公開2007/026664などに開示された化合物があげられる。かかる化合物は、それぞれ開示された文献に記載の方法により製造することができる。具体例として、1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジンまたはその塩(たとえば、ファスジル(1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン))、(+)−トランス−4−(1−アミノエチル)−1−(4−ピリジルカルバモイル)シクロヘキサン((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド)またはその塩(たとえば、Y−27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド2塩酸塩1水和物)など)などがあげられ、これらの化合物は、市販品(和光純薬株式会社、旭化成ファーマ等)を好適に用いることもできる。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。本実施例において用いられる各種試薬は、具体的に示したもののほか、Sigma−Aldrich、BASFジャパン株式会社などから入手されるものも用いることができることが理解される。ヒト組織は、ヘルシンキ宣言の倫理規定に基づき扱われた。ヒトドナー角膜は、SightLifeTM(Seattle,WA)から提供された。研究目的のための目の寄贈については、故人ドナーの近親者から書面による同意書を得た後、その州の統一死体提供法(UAGA)の基準のもと角膜を採取した。ウサギでの実験は、同志社大学動物実験等委員会により承認された指針に基づき実施された(承認番号A18003)。
(実施例1:細胞保存における容器の材質およびサイズのスクリーニング)
(材料および方法)
(角膜内皮細胞の培養)
疾患を患う40歳以上のドナーから5個のヒトドナー角膜を得た。すべての角膜は、使用前に14日以内の間4℃でOptisol(Chiron Vision、Irvine、CA)において保存された。ヒト角膜内皮細胞(HCEC)は、以下に従って培養された。簡潔には、角膜内皮を含むデスメ膜をドナー角膜から機械的に剥離し、12時間37℃で1mg/mLのコラゲナーゼA(Roche Applied Science、Penzberg、Germany)においてインキュベートすることにより消化した。HCECをOptiMEM−I(Life Technologies Corp.、Carlsbad、CA)で洗浄後、ラミニンE8フラグメント(iMatrix−511;ニッピ株式会社、東京)でコーティングされた48ウェルプレートの一つのウェルに播種した。
培地は、以下に従って調製した。簡潔には、8%ウシ胎児血清(FBS)、5ng/mL上皮増殖因子(EGF;Thermo Fisher Scientific)、20μg/mLアスコルビン酸(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)、200mg/L塩化カルシウム、0.08%コンドロイチン硫酸(Sigma−Aldrich)、および50μg/mLゲンタマイシン(Thermo Fisher Scientific)で補充されたOptiMEM−IをNIH−3T3と共に24時間馴化した。馴化した培地をその後回収し、0.22μmのフィルタユニット(EMD Millipore Corporation、Billerica、MA)を介してフィルタリングし、HCECの培地として使用した。
5%COを含む加湿雰囲気下においてHCECを37℃で培養し、培地を週3回交換した。HCECの継代培養においては、細胞をTrypLE(商標) Select Enzyme(10X)(Thermo Fisher Scientific)で5分間37℃でトリプシン化し、1:2の割合で播種した。本試験では5代から9代継代培養されたHCECを使用した。
HCECを、Ca2+やMg2+を含まないリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、TrypLE(商標) Select Enzyme(10X)で15分間37℃でトリプシン化した。細胞を培養プレートから回収した後、2回洗浄し、280Gで3分間遠心分離し、OptiMEM−Iに懸濁した。HCECを上述の無血清培養液(株式会社細胞科学研究所(宮城)により提供された細胞療法培養液)において1.0×10個/300μlの細胞密度で72時間4℃か37℃で細胞懸濁の形態で保存した。HCEC保存のためのサイズおよび材質をスクリーニングするために以下の細胞培養プレート、試験管、およびバイアルが使用された:24ウェルプレート(超低接着)(Corning Inc.Corning、New York)、24ウェルプレート(細胞培養)(Corning Inc.Corning)、24−ウェルプレート(非処理)(AGCテクノグラス株式会社、静岡)、48ウェルプレート(懸濁培養)(住友ベークライト株式会社)、96ウェルプレート(超低接着、丸底)(Corning Inc)、96ウェルプレート(超低接着、平底)(Corning Inc.)、15mlコニカルチューブ(超低接着)(住友ベークライト株式会社、東京)、2mlクライオバイアル(Corning
Inc.Corning)、および10mlガラスバイアル瓶(株式会社マルエム、大阪)(表1)。

HCECを72時間の保存後、細胞培養プレート、試験管、またはバイアルから緩やかにピペッティングで回収し、3分間280Gで遠心分離し、1.0×10個/600μlの細胞密度で細胞療法用培養液に再懸濁した。死細胞を0.5%トリパンブルー染色液(ナカライテスク、京都)で染色することにより細胞生存率を算出した。対照として、TrypLE(商標)Select Enzyme(10X)でのトリプシン化により回収したHCECを3分間280Gで遠心分離し、細胞療法用培養液において再懸濁した。その後、細胞懸濁の態様での保存することなく細胞生存率を即座に評価した。
(結果)
(細胞懸濁形態保存条件の細胞生存率に対する影響)
HCECを72時間CTVにおいて細胞懸濁形態で1.0×10個/300μlの細胞密度で保存し、細胞を緩やかなピペッティングで採取し、細胞生存率を評価した(図1A)。位相差画像は、接着培養用プレートの80から90%の領域が、細胞回収するための緩やかなピペッティング後にHCECで覆われていたことを示した。一方、懸濁細胞培養用24ウェルプレート、48ウェルプレート、および96ウェルプレートのいずれにおいても細胞はほぼ観察されなかった(図1B)。接着培養のための表面処理は細胞懸濁の形態としてHCEC保存に適用不可能であったため、本実施例では市販の培養プレートおよび試験管のサイズおよび形状の細胞生存率に対する影響を評価した。トリプシン化され培養プレートから採取された直後の対照において生存細胞と死細胞の割合は90.3%と9.7%であり、24ウェルプレート(超低接着)で保存された細胞においては82.6%と10.1%(保存された元の細胞数に対して)であった。しかし、生存細胞の割合は、48ウェルプレート(懸濁培養)、96ウェルプレート(超低接着、平底)、96ウェルプレート(超低接着、丸底)、15mlコニカルチューブ(超低接着)、および2mlクライオバイアル(p<0.01)の対照と比較して顕著に減少していた(図2A)。おそらく培養プレートまたは試験管の底または壁への細胞接着のため48ウェルプレート(懸濁培養)、15mlコニカルチューブ(超低接着)、および2mlクライオバイアルにおける保存後には、採取された細胞数が顕著に減少していた。筆者らはさらに温度の細胞生存率に対する影響を評価し、95.1%の細胞が37℃で生存したが、大量の細胞が死滅したため4℃での24ウェルプレート(超低接着)における保存後細胞はほぼ採取されなかったことを示した(図2B)。他の培養プレートまたは試験管も接着培養のための表面処理を施すことなく評価した。24ウェルプレートでの超低接着と同様に、非処理24ウェルプレートおよび10mlガラスバイアル管(24ウェルプレート(約1.9cm)と同様に底面積は約2.7cm)では90%以上の細胞生存率を維持した(図2C).中間体積は細胞の生存率を顕著に変動させなかった(図2D)。
24ウェルプレート(超低接着)において細胞懸濁の形態で保存されたHCECKを72時間37℃で保存した後培養プレート上に播種した。代表的な位相差画像においては、保存されたHCECが、対照と同様に、3時間の播種後に明らかな細胞死を伴わすに培養プレート上に付着したことを示していた。2週間後、保存されたHCECは、対象と同様な多角形状の単層シート様構造を形成していた(図2E)。
(実施例2:ウサギ角膜内皮代償不全モデルへのRCECの注入)
(材料および方法)
(ウサギCEC培養)
本実施例では、フナコシ株式会社(東京)から購入したウサギの眼を10個使用した。ウサギCEC(RCEC)を上述のように培養した。簡潔には、RCECを含む剥離デスメ膜を37℃で15分間0.6U/mLAccutase(ナカライテスク、京都)においてインキュベートし、回収したRCECをFNC Coating Mix(登録商標)(Athena Environmental Sciences,Inc.、Baltimore、MD)でコーティングした培養プレートに播種した。RCECを、10%ウシ胎児血清(FBS)、50U/mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシン、および2ng/mL線維芽細胞増殖因子2(Life Technologies Corp.)で補充したダルベッコ改変イーグル培地(Life Technologies Corp.、Carlsbad, CA)において培養した。1代から3代の継代培養を経た培養RCECを使用した。
(ウサギ角膜内皮代償不全モデルへのRCECの注入)
12匹の日本白色種(Japanese White Rabit)の右眼を試験に使用し、左眼は盲目を避けるために使用しなかった。ウサギ角膜内皮代償不全モデルは上述のように作製した。簡潔には、前房を深くするためにレンズを一週間前に除去し、角膜内皮を20Gシリコンニードル(ソフトテーパードニードル、株式会社イナミ、東京)を使用して機械的に取り除いた。デスメ膜から角膜内皮が完全に剥離したことを0.1%トリパンブルー染色液でデスメ膜を染色することにより確認した。
培養RCECをPBSで洗浄し、37℃で5分間0.05%Trypsin−EDTA(Life Technologies)でトリプシン化し、その後培地で中和した。RCECを三回洗浄し、24ウェルプレート(超低接着)において1.0×10個/300μlのCTVの細胞密度で細胞懸濁の形態で保存した。24、48、または72時間の保存後、ウサギの眼に注入するためのRCEC(1.0×10個/600μlのCTV、100μMのY−27632)を調製するために、RCEC(1.0×10個/300μlのCTV)をROCK阻害剤(200μMのY−27632(和光純薬株式会社)/300μlのCTV)と緩やかに混合した。26Gの注射器を使用することにより角膜内皮代償不全モデルの前房に合計5.0×10のRCECと共に100μMのY−27632を含む300μlのCTVを注入した。ウサギを全身麻酔下で内皮表面を下にした状態で3時間維持した。対照として、角膜内皮代償不全モデルの前房にY−27632(最終濃度:100μM)を含むCTVを注入した。各グループ(対照、24時間、48時間、および72時間の細胞保存)につき3匹のウサギの眼を使用した。
眼の前方部を14日間細隙灯試験により評価した。シャインプルーフ画像をPentacam(登録商標)(OCULUS Optikgerate GmbH,Wetzlar,ドイツ)で取得し、角膜の7mm径での体積もシャインプルーフ画像を使用して測定した。角膜の中央厚を超音波パキメータ(SP−2000;トーメー、名古屋)を使用して測定した。角膜厚は重篤な浮腫により測定不可能であったため、機器の最大読取値である1200μmとみなした。
(免疫蛍光およびアクチン染色)
ウサギ角膜を採取し、室温で10分間4%ホルムアルデヒドで固定化した。検体を45分間37℃で1%ウシ血清アルブミンとともにインキュベートし、Na/K−ATPaseに対する抗体(1:300、Upstate Biotechnology、Lake Placid、NY)、ZO−1(1:300、Life Technologies Corp.、Carlsbad、CA)、N−カドレリン(1:300、BD Biosciences、San Jose、CA))とともに4℃で一晩インキュベートした。PBSで検体を3回洗浄後、検体をAlexa Fluor(登録商標)488標識ヤギ抗マウス(1:1000、Life Technologies)とともに室温で60分間インキュベートした。インキュベートした検体に対し、Alexa Fluor(登録商標)488標識ファロイジン(1:400、Life Technologies)で60分間室温でアクチン染色を施した。細胞核は、DAPI(同仁化学研究所、熊本)で染色した。検体は蛍光顕微鏡で観察した(TCS SP2 AOBS;Leica Microsystems、Wetzlarドイツ)。
(統計分析)
複数サンプル群の比較における統計的有意性(p値)はクラスカル−ウォリス検定により算定した。結果は平均値±標準偏差として表されている。0.05未満のp値を統計的有意な値とした。
(結果)
(ウサギモデルにおける細胞療法のための保存RCECの実施可能性)
培養RCECを採取し37℃で24時間、48時間、または72時間24ウェルプレート(超低接着)において細胞培養形態で保存した。ウサギモデルへの注入前にY−27632をRCECに追加し、ウサギ角膜内皮代償不全モデルの前房に注入した。細隙灯試験では、24、48、または72時間の保存後にRCECを注入した眼においては、いずれも角膜が7日以内に透明性を呈することを示していた(図3A)。対照眼では全て角膜内皮代償不全のために角膜が不透明であった。シャインプルーフ画像においては、24、48、及び72時間保存したRCECを注入することによって、解剖学上正常な角膜が成功裏に再生することを示すが、対照眼では重篤な角膜浮腫を呈していた(図3B)。
Pentacam(商標)で取得した角膜厚のカラーマップは、24及び48時間保存したRCECが、その注入の14日後に、角膜の中心から外周部で正常な角膜厚を再生したことを示している。一方、72時間保存されたRCECを注入した眼は、細隙灯試験での観察では角膜が透明であったが、厚みが増していた(図3Aおよび4A)。超音波パキメータでは、24及び48時間保存したRCECを注入した眼において10日後に中心の角膜厚が約400μm(正常範囲)になったことを示した。しかし、72時間保存したRCECを注入した眼では、24または48時間保存したRCECを注入した眼より中心角膜厚の減少が少なく、14日間を通して顕著に高かった(p<0.01)(図4B)。中心の角膜厚と同様に、シャインプルーフ画像で特定された角膜体積は、72時間保存したRCECを注入した眼よりも24または48時間保存したRCECを注入した眼において低かった(図4C)。アクチン及びDAPIにより評価した再生角膜内皮の細胞密度は、24時間保存したRCECを注入した眼においては2465個/mmであり、48時間保存したRCECを注入した眼においては2368個/mmであった。しかし、72時間保存したRCECを注入した眼の細胞密度は1548個/mmであり、24または48保存したRCECを注入した眼のものよりも顕著に低い値を示した(p<0.05)(図4D)。
免疫蛍光染色は、機能関連マーカーNa/K−ATPase(ポンプ機能のマーカー)、ZO−1(密集結合のマーカー)、およびN−カドヘリン(接着結合のマーカー)が、24,48、及び72時間保存したRCECを注入した眼におけるすべての再生CECの側膜に発現することを実証した。アクチン染色により再生角膜内皮が多角形単層シート状構造を形成することを示した。一方、対照眼においては、角膜内皮代償不全により、線維化を伴う機能関連マーカーを発現しない細胞がほとんど見られなかった(図4E)。
(実施例3:1mlシリンジを用いた角膜内皮細胞の保存)
(材料および方法)
HCECを72時間CTVにおいて細胞懸濁形態で1.0×10個/300μlの細胞密度で1mlシリンジ(ディスポーザブルシリンジ、届出番号:08B2X10007000001、ミサワ医科工業株式会社、茨城県)に保存した。シリンジを横向きに静置し、72時間37℃にて保存した。保存後、シリンジを指先で揺すり、26G針にて細胞をシリンジ外へ出したのちに、細胞の生存率を評価した。保存中の細胞のシリンジ内面への接着の有無を評価するために、保存後、シリンジを指先で揺すり、細胞をシリンジから取り出したのちに、シリンジ内面を細胞保存液で軽く洗浄したあとのシリンジ内面の状態を観察した。
(底面積の計算)
各実験において液量は300μlで一定とし、ピストンの位置を調節することで、底面積を調節した。使用した1mlシリンジの内径は6mmである。シリンジの先端から10mmの位置にピストンの先端(ゴムの部分)を配置して、シリンジを横に倒した場合、底面積は、本明細書の定義に従い、(6×3.14÷2)×10=94.2mm=0.942cmとなる。このときの空気の量は約0μlである。
シリンジの先端から20mmの位置にピストンの先端(ゴムの部分)を配置して、シリンジを横に倒した場合、底面積は、本明細書の定義に従い、(6×3.14÷2)×20=188.4mm=1.884cmとなる。このときの空気の量は約300μlである。
シリンジの先端から20mmの位置にピストンの先端(ゴムの部分)を配置して、シリンジを縦にした場合、底面積は、6×6×3.14≒28mm≒約0.28cmとなる。
(結果)
1mlのシリンジに培養した角膜内皮細胞を50万個を300μlの細胞保存液に懸濁して、保存した(図5)。シリンジに角膜内皮細胞を72時間保存したところ、細胞のシリンジの側面への沈殿が観察された(図5下左)。軽くタッピングしたところ細胞がシリンジの側面より浮き上がっており、細胞が保存中にシリンジ内面に接着していないことを示す(図5下中)。72時間保存した後に、軽くタッピングし、シリンジを細胞保存液にて優しく洗浄したところ、細胞のシリンジの側面への接着を認めなかった(図5下右)。
シリンジ内で72時間保存後の生存細胞率は、保存開始時点の全細胞を100%とすると(生細胞率:90.3%、死細胞率:9.7%)に対して、生細胞率:70.9%、死細胞率:8.2%となり約90%の細胞が生存しており、保存開始時点と同等であった(図6)。一方、シリンジ内に細胞を保存するときに、空気を入れてシリンジを横にすることで、シリンジ内の底面積を約2cmとしたときに細胞の回収数が高かったが、空気を含まずシリンジ内の底面積を約1cmとしたときに細胞の回収数が半分程度に低下した。同様にシリンジ内に空気を入れた状態でシリンジを立てると底面積は約0.28cmとなるが、細胞の回収数が著しく低下した(図7)。これらのことから、シリンジ内での細胞保存においても底面積が約2cm程度であることが細胞の回収率、生存率を高くすることが示された。
(実施例4:細胞保存における至適温度の詳細な検討)
(材料および方法)
(角膜内皮細胞の培養)
疾患を患う40歳以上のドナーから5個のヒトドナー角膜を得た。すべての角膜は、使用前に14日以内の間4℃でOptisol(Chiron Vision、Irvine、CA)において保存された。ヒト角膜内皮細胞(HCEC)は、以下に従って培養された。簡潔には、角膜内皮を含むデスメ膜をドナー角膜から機械的に剥離し、12時間37℃で1mg/mLのコラゲナーゼA(Roche Applied Science、Penzberg、Germany)においてインキュベートすることにより消化した。HCECをOptiMEM−I(Life Technologies Corp.、Carlsbad、CA)で洗浄後、ラミニンE8フラグメント(iMatrix−511;ニッピ株式会社、東京)でコーティングされた48ウェルプレートの一つのウェルに播種した。
培地は、以下に従って調製した。簡潔には、8%ウシ胎児血清(FBS)、5ng/mL上皮増殖因子(EGF;Thermo Fisher Scientific)、20μg/mLアスコルビン酸(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)、200mg/L塩化カルシウム、0.08%コンドロイチン硫酸(Sigma−Aldrich)、および50μg/mLゲンタマイシン(Thermo Fisher Scientific)で補充されたOptiMEM−IをNIH−3T3と共に24時間馴化した。馴化した培地をその後回収し、0.22μmのフィルタユニット(EMD Millipore Corporation、Billerica、MA)を介してフィルタリングし、HCECの培地として使用した。
5%COを含む加湿雰囲気下においてHCECを37℃で培養し、培地を週3回交換した。HCECの継代培養においては、細胞をTrypLE(商標) Select Enzyme(10X)(Thermo Fisher Scientific)で5分間37℃でトリプシン化し、1:2の割合で播種した。本試験では5代から9代継代培養されたHCECを使用した。
HCECを、Ca2+やMg2+を含まないリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、TrypLE(商標) Select Enzyme(10X)で15分間37℃でトリプシン処理した。細胞を培養プレートから回収した後、2回洗浄し、280Gで3分間遠心分離し、OptiMEM−Iに懸濁した。HCECを上述の無血清培養液(株式会社細胞科学研究所(宮城)により提供された細胞療法培養液)において1.0×10個/300μlの細胞密度で24−ウェルプレート(非処理)(AGCテクノグラス株式会社、静岡)に72時間細胞懸濁の形態で保存した。HCEC保存のための至適温度を検討するために12℃、17℃、22℃、27℃、32℃、35℃、37℃、39℃、42℃の9つの温度条件で保存した。
HCECを72時間の保存後、細胞培養プレートから緩やかにピペッティングで回収し、3分間280Gで遠心分離し、1.0×10個/600μlの細胞密度で細胞療法用培養液に再懸濁した。死細胞を0.5%トリパンブルー染色液(ナカライテスク、京都)で染色することにより細胞生存率を算出した。対照として、TrypLE(商標)Select Enzyme(10X)でのトリプシン化により回収したHCECを3分間280Gで遠心分離し、細胞療法用培養液において再懸濁した。その後、細胞懸濁の態様での保存することなく細胞生存率を即座に評価した。
(結果)
(細胞懸濁形態保存における温度条件の細胞生存率に対する影響)
HCECを72時間CTVにおいて細胞懸濁形態で1.0×10個/300μlの細胞密度で保存し、細胞を緩やかなピペッティングで採取し、細胞生存率を評価した(図9)。
9つの温度条件において37℃での保存が最も生細胞率が高く、72時間保存後の生存細胞率は、保存開始時点の全細胞を100%とすると、生細胞率:92.4%、死細胞率:7.6%に対して、生細胞率:95.4%、死細胞率:4.9%となり、保存開始時点と同等の細胞生存率を示した。また37℃より低い温度条件下では、温度の低下に比例して生細胞率も低下し、12℃、17℃、22℃での保存においては保存開始時点の生細胞率と比べて有意に低い生細胞率を示したが、30%以上の生存率を維持した。39℃、42℃の条件でも、温度の上昇に比例して生細胞率が低下し、保存開始時点の生細胞率と比べて有意に低い生細胞率を示したが、30%以上の生存率を維持した。このように、30%以上の生存率を維持することができる12℃〜42℃の範囲で保存することが好ましく、60%以上の生存率を維持することができる17℃〜39℃で保存することがより好ましく、80%以上の生存率を維持することができる27℃〜37℃で保存することがさらに好ましく、対照と同等の90%以上の生存率を維持することができる37℃で保存することが最も好ましい。
(実施例5:ガラス製バイアル瓶を用いた細胞保存の検討)
(材料および方法)
HCECを72時間CTVにおいて細胞懸濁形態で1.0×10個/300μlの細胞密度でガラス製バイアル瓶に保存した。以下の3つのガラス製バイアル瓶を使用した:通常のガラス表面であるバイアル瓶(株式会社マルエム、大阪、0501−02)、および低吸着処理(IRAS処理)のなされたバイアル瓶(岩田硝子工業株式会社、大阪、lot:181024)、シリカによる表面処理(IRAS処理およびSiOコーティング)のなされたバイアル瓶(岩田硝子工業株式会社、大阪、lot:181102)(図10)。これらのバイアル瓶の底面積は、約2cmである。
72時間保存後、バイアル瓶から緩やかにピペッティングで回収し、3分間280Gで遠心分離し、1.0×10個/600μlの細胞密度で細胞療法用培養液に再懸濁した。死細胞を0.5%トリパンブルー染色液(ナカライテスク、京都)で染色することにより細胞生存率を算出した。対照として、TrypLE(商標)Select Enzyme(10X)でのトリプシン化により回収したHCECを3分間280Gで遠心分離し、細胞療法用培養液において再懸濁した。その後、細胞懸濁の態様での保存することなく細胞生存率を即座に評価した。
(結果)
HCECを72時間CTVにおいて細胞懸濁形態で1.0×10個/300μlの細胞密度で保存し、細胞を緩やかなピペッティングで採取し、細胞生存率を評価した(図11)。
バイアル瓶(株式会社マルエム、大阪、0501-02)においては、バイアル瓶への細胞の接着が見られた。一方で、バイアル瓶(岩田硝子工業株式会社、大阪、181024)、バイアル瓶(岩田硝子工業株式会社、大阪、181102)においては、バイアル瓶への細胞の接着はなく、緩やかなピペッティングで回収が可能であった。保存開始時点の全細胞を100%とすると、コントロールでは生細胞率:92.4%、死細胞率:7.6%に対して、バイアル瓶(株式会社マルエム、大阪、0501−02)に保存した細胞は、生細胞率:38.9%、死細胞率:7.4%となり、保存開始時点の生細胞数と比べて有意に低い生細胞数を示した。バイアル瓶(岩田硝子工業株式会社、大阪、181024)に保存した細胞は、生細胞率:90.7%、死細胞率:7.8%、バイアル瓶(岩田硝子工業株式会社、大阪、181102)に保存した細胞は、生細胞率:84.6%、死細胞率:8.4%となり、保存開始時点と同等の細胞生存率を示した。このように、いずれのガラス製バイアル瓶も、30%の細胞生存率を示したが、低接着の表面処理がされているものがより高い細胞生存率を示した。
(実施例6:細胞含有製品の製造例および運搬例)
ドナー角膜より培養した角膜内皮細胞または、iPS細胞、ES細胞、神経堤細胞などから分化させた角膜内皮細胞または角膜内皮細胞と同様の機能を有する細胞を、酵素処理により培養皿より回収する。回収した細胞を、300μlの細胞注入用溶液に対して、例えば約50万個から約100万個の割合で懸濁し、約500μlから約800μlの細胞懸濁液を、バイアル瓶(岩田硝子工業株式会社、大阪、lot:181024)またはバイアル瓶(岩田硝子工業株式会社、大阪、lot:181102)に保存する。バイアル瓶はゴム栓およびアルミニウムにて密閉する(一次容器)。バイアル瓶はさらに密封性、防漏性が担保された二次容器に収納する。二次容器は、37℃に維持されたインキュベーターで保存する。二次容器を外部衝撃を吸収する外装容器に収納し、37℃に維持された状態で医療機関に輸送する。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
角膜内皮細胞の保存方法が提供される。本発明によれば、角膜内皮細胞を高い細胞生存率で保存することが可能である。このようにして保存された角膜内皮細胞は、正常な角膜内皮細胞の機能を有しており、また、角膜内皮疾患等の治療用細胞として使用可能であるため、製薬等の分野において利用可能である。

Claims (12)

  1. 角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞を細胞注入療法に使用され得る細胞懸濁状態で保存する方法であって、底面積が少なくとも約0.7cmの容器に該角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞を保存する工程を含み、該細胞の保存のための液体の液面の高さが約0.75mm以上であり、該角膜内皮細胞および/または角膜内皮様細胞が、約24〜72時間保存される、方法。
  2. 前記容器の底面積が、約0.7〜約4cmである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記容器の底面積が、約1.5〜約3cmである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記容器の底面積が、約1.8〜約2cmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記容器は、接着培養のための表面処理がされていない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記容器は、低接着表面容器または表面非処理容器である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記容器は、ポリスチレン、ポリプロピレン、またはガラスでできている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記容器は、24ウェルプレート、バイアル瓶、シリンジ、ディッシュからなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記細胞の保存が、約12℃〜約42℃の温度で行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記細胞の保存が、約17℃〜約39℃の温度で行われる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記細胞の保存が、約27℃〜約37℃の温度で行われる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記細胞の保存が、約37℃の温度で行われる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
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