以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。ここで、車体の上下前後左右は自動二輪車に乗車した乗員の目線に基づき規定されるものとする。
図1は本発明の一実施形態に係る自動二輪車の全体構成を概略的に示す。自動二輪車11は車体フレーム12を備える。車体フレーム12の前端でヘッドパイプ13にはフロントフォーク14が操向可能に支持される。フロントフォーク14には車軸15回りで回転自在に前輪WFが支持される。フロントフォーク14にはヘッドパイプ13の上側でハンドルバー16が結合される。車体フレーム12の後側でピボットフレーム17にはスイングアーム18が車幅方向に水平に延びる支軸19回りで揺動自在に支持される。スイングアーム18の後端には車軸21回りで回転自在に後輪WRが支持される。
前輪WFおよび後輪WRの間で車体フレーム12には内燃機関23が搭載される。内燃機関23は、クランクケース24と、クランクケース24に結合されてクランクケース24から上方に延びるシリンダーブロック25と、シリンダーブロック25に結合されるシリンダーヘッド26と、シリンダーヘッド26に結合されるヘッドカバー27とを備える。クランクケース24には、後輪WRの車軸21に平行に延びる回転軸線Rx回りで回転自在に(後述される)クランクシャフトが支持される。クランクシャフトの回転運動は動力伝達装置(図示されず)を経て後輪WRに伝達される。クランクケース24には、前方に2つ、後方に2つのエンジンハンガー29が形成される。前方および後方でそれぞれエンジンハンガー29は上下に配列される。クランクケース24はエンジンハンガー29で車体フレーム12に連結され固定される。
内燃機関23の上方で車体フレーム12には燃料タンク31が搭載される。燃料タンク31の後方で車体フレーム12には乗員シート32が搭載される。燃料タンク31から内燃機関23の燃料噴射装置に燃料は供給される。自動二輪車11の運転にあたって乗員は乗員シート32を跨ぐ。
図2に示されるように、内燃機関23は、シリンダーブロック25に組み込まれるピストン33を備える。ピストン33は、前傾するシリンダー軸線を有してシリンダーブロック25内に区画されるシリンダー34に収容される。ここでは、シリンダーブロック25には単一のピストン33を受け入れる単一のシリンダー34が形成される。ピストン33とシリンダーヘッド26との間に燃焼室35が区画される。シリンダーヘッド26には吸気弁や排気弁、動弁機構が支持される。ヘッドカバー27は動弁機構を覆う。
ピストン33にはコンロッド36の小端部が連結される。コンロッド36の大端部はクランクケース24内のクランクシャフト37に連結される。ピストン33の軸方向の線形運動はコンロッド36の働きでクランクシャフト37の回転運動に変換される。
内燃機関23は、回転軸線Rxに同軸にクランクシャフト37に結合されて、回転軸線Rx周りに環状に等間隔に1列に配列される複数のリラクター38aを有するパルサーリング38と、リラクター38aの環状軌道に向き合わせられてパルサーリング38の動きに応じてパルス信号を生成するパルサーセンサー39とを備える。パルサーリング38は炭素鋼その他の鋼材(磁性体)から形成される。リラクター38aは、後述されるようにリラクター欠如域を除き、例えば中心角10度ごとに配置される。パルサーリング38の詳細は後述される。パルサーセンサー39は、例えばGMRといった磁気抵抗効果素子を用いた回転センサーで構成される。
パルサーセンサー39は、クランクケース24に穿たれるセンサー孔41に外側から差し込まれてクランクケース24に取り付けられる。パルサーセンサー39は、地面に直交する車両上下方向に対して傾斜する姿勢で保持される。ここでは、パルサーセンサー39は、シリンダーブロック25の後方でクランクケース24の上側に配置される。
パルサーセンサー39は、磁性体を検知する先端でクランク室24aに臨む。パルサーセンサー39では最も感度の高い検出軸線39aが回転軸線Rxを指向する。パルサーセンサー39は、リラクター38aの軌道上で検出される磁性体の有無に応じて電気信号を出力する。パルサーセンサー39は、クランクシャフト37の角位置を特定するパルス信号を出力する。
図3に示されるように、クランクシャフト37は、第1軸受42aでクランクケース24の第1半体43aに回転自在に連結されるジャーナル44aを区画する第1軸45aを有し、第1軸45aに同軸の円板形状の第1クランクウエブ46と、第2軸受42bでクランクケース24の第2半体43bに回転自在に連結されるジャーナル44bを区画する第2軸45bを有し、第2軸45bに同軸の円板形状の第2クランクウエブ47と、回転軸線Rx上に同軸に第1軸45aおよび第2軸45bを配置しつつ第1クランクウエブ46および第2クランクウエブ47を相互に連結し、回転軸線Rxから偏心した位置で回転軸線Rxに平行に延びるクランクピン48とを備える。クランクピン48には、第1軸45aおよび第2軸45bの軸心に平行な回転軸線回りで回転自在にコンロッド36の大端部が連結される。第1半体43aと第2半体43bとは協働で第1クランクウエブ46および第2クランクウエブ47を収容するクランク室24aを区画する。
第1軸受42aおよび第2軸受42bはそれぞれボールベアリングで構成される。したがって、個々の軸受42a、42bは、クランクケース24に固定される環状の外輪部材51aと、クランクシャフト37の第1軸45aおよび第2軸45bに結合されて、対応する外輪部材51aに対して相対回転する内輪部材51bと、外輪部材51aおよび内輪部材51bの間に保持されて外輪部材51aおよび内輪部材51bに転がり接触する複数のボール51cとを備える。第1軸45aおよび第2軸45bは対応の内輪部材51bに嵌め込まれる。圧入されればよい。クランクケース24の第1半体43aには、第1軸受42aの外輪部材51aを受け入れる金属製の第1ブッシュ52が埋め込まれる。クランクケース24の第2半体43bには、第2軸受42bの外輪部材51aを受け入れる金属製の第2ブッシュ53が埋め込まれる。外輪部材51aは対応の第1ブッシュ52または第2ブッシュ53に嵌め込まれればよい。外輪部材51aの外側面は第1半体43aおよび第2半体43bでそれぞれ覆われる。内輪部材51bの外側面は第1半体43aおよび第2半体43bからそれぞれ離隔する。外輪部材51aの内側面は第1クランクウエブ46および第2クランクウエブ47に間隔をおいて向き合う。
第1クランクウエブ46には、第1面54aから第1面54aの裏側の第2面54bに貫通するピン孔55が区画される。ピン孔55は第1軸45aの軸心に平行な軸心を有する円柱体の空間で形成される。ピン孔55にクランクピン48は嵌め込まれる。クランクピン48はピン孔55に圧入されればよい。第1クランクウエブ46は、例えば炭素鋼といった磁性体素材から鍛造加工され、図2に示されるように、回転軸線Rxに同軸の円筒面で仕切られる外周面46aを有する。ここでは、第1クランクウエブ46の外周面46aは周方向に連続して途切れない円筒面を形成する。
第1クランクウエブ46の第1面54aには第1軸45aの軸心に直交する仮想平面内で広がる平坦面56が形成される。平坦面56は、少なくとも第1軸42の外周に沿って環状に延びる。平坦面56にはパルサーリング38が重ねられる。パルサーリング38は、第1クランクウエブ46の外周面46aよりも小径であって軸方向から第1クランクウエブ46に重ねられる環状体38bを有する。パルサーリング38のリラクター38aは、環状体38bから放射方向に延びて第1クランクウエブ46の外周面46aよりも突出する。
図4に示されるように、パルサーリング38の環状体38bには、等間隔の規定位置にリラクター38aを欠損するリラクター欠如域57が設定される。リラクター欠如域57では、等間隔の間隔どおりにリラクター38aが存在せず、リラクター欠如域57を挟んで隣接するリラクター38aの間隔は等間隔の間隔の整数倍に設定される。第1クランクウエブ46の外周面46aには、リラクター欠如域57に対応して、第1クランクウエブ46および環状体38bの合わせ面(平坦面56)に沿って径方向内方に窪んだ逃げ部58が設けられる。図2に示されるように、逃げ部58は、リラクター欠如域57を挟んで隣り合うリラクター38aの間で周方向に全域にわたって延びる凹部で形成される。凹部は環状体38bの外周に沿って仕切られる。第1クランクウエブ46の外周面46aからリラクター38aの先端までの突出量Pは凹部58の深さDよりも小さい。図5に示されるように、リラクター38aの歯の長さHは、第1クランクウエブ46の厚み方向に特定される凹部の奥行きGよりも小さい。
第2クランクウエブ47には、第1面59aから第1面59aの裏側の第2面59bに貫通するピン孔61が区画される。ピン孔61は第2軸45bの軸心に平行な軸心を有する円柱体の空間で形成される。ピン孔61にクランクピン48は嵌め込まれる。クランクピン48はピン孔61に圧入されればよい。第1クランクウエブ46の第2面54bと第2クランクウエブ47の第2面59bとが相互に向き合う。
第2クランクウエブ47の第1面59aには遠心オイルフィルター62が設置される。遠心オイルフィルター62は第1面59aの窪みに収容される。遠心オイルフィルター62は第2クランクウエブ47の回転中の遠心力に基づき潤滑油中の異物を濾過する。
第1クランクウエブ46の第2面54bにはクランクウエイト63aが一体に形成される。第1クランクウエブ46の重心は例えば第1軸45aの軸心回りでピン孔55の軸心から180度ずれた位置に位置する。同様に、第2クランクウエブ47の第2面59bにはクランクウエイト63bが一体に形成される。第2クランクウエブ47の重心は例えば第2軸45bの軸心回りでピン孔61の軸心から180度ずれた位置に位置する。クランクウエイト63a、62の働きで回転中のクランクシャフト37で回転むらは最小限に抑制される。
遠心オイルフィルター62の径方向外側でクランクケース24にはオイルジェット64が配置される。オイルジェット64はピストン33に向かってシリンダー34内で潤滑油を噴射する。オイルジェット64には、例えばクランクシャフト37の回転に連動するオイルポンプ(図示されず)から潤滑油が供給されることができる。
図4を併せて参照し、パルサーリング38の中央には、第1軸45aのジャーナル44aに嵌め合わせられる貫通孔65を区画し、第1軸45aの軸方向に出っ張る筒状の出っ張り66が形成される。貫通孔65の輪郭は第1軸45aに同心の円形に形成される。出っ張り66の端面66aでパルサーリング38は第1軸受42aの内輪部材51bに面で接触する。こうしてパルサーリング38は第1軸受42aの内輪部材51bと第1クランクウエブ46の平坦面56との間に挟まれる。パルサーリング38は第1軸受42aの内輪51bに押し当てられるものの、出っ張り66の働きでパルサーリング38の表面と第1軸受42aの外輪部材51aとの間に間隔が確保される。
パルサーリング38と第1クランクウエブ46との間には、クランクシャフト37の回転軸線Rx回りでパルサーリング38および第1クランクウエブ46の相対回転を阻止する係り止め機構67が形成される。係り止め機構67は、パルサーリング38に一体に形成されて、第1クランクウエブ46の第1面54aに重なる(または向き合う)表面から突き出る突出片68と、第1クランクウエブ46の平坦面56に形成されて、パルサーリング38の突出片68を受け入れる窪み69とを有する。ここでは、パルサーリング38は金属の板材からプレス加工で成型されることから、突出片68は板材から切り起こされる。突出片68の谷折り線はパルサーリング38の同心円に接する接線方向に延びる。したがって、突出片68は、板材でありながら、パルサーリング38の周方向からの荷重に高い剛性を示す。
窪み69は、突出片68の輪郭に接触する垂直面69aを有する。垂直面69aは第1軸45aの軸心に平行な平面に相当する。好ましくは、垂直面69aは第1軸45aの軸心を含む仮想平面内で広がる。こうして垂直面69aが第1クランクウエブ46の周方向に直交すれば、第1クランクウエブ46の周方向の荷重は分散して突出片68に伝達されることができる。
次に本実施形態に係る内燃機関23の作用を説明する。内燃機関23では燃焼に応じてクランクシャフト37は回転する。クランクシャフト37の回転中、パルサーリング38はクランクシャフト37と一体に回転する。燃焼時、クランクシャフト37では振動および撓みが生じる。振動および撓みは第1軸受42aおよび第2軸受42bで支持されることから、第1軸受42aに連結されるジャーナル44aでクランクシャフト37の振動および撓みは最小限に留められる。こうしてクランクシャフト37から発生する振動および撓みが抑制された状態でクランク角は検出されることができる。
クランク角の検出にあたってリラクター欠如域57以外では、リラクター38aは周方向に等間隔に配列されることから、第1クランクウエブ46の外周面46aはパルサーリング38の環状体38bよりも大径の円筒面で形成されるにも拘わらず、第1クランクウエブ46の外周面46aとリラクター38aとでパルサーセンサー39からの遠近に応じて周期的に磁性が変化することで、精度よくパルサーセンサー39でパルス信号は生成される。その一方で、リラクター欠如域57ではリラクター38aが存在せずに、リラクター38aの凹凸といった周期的変化が欠如することから、リラクター38aが等間隔に配列される領域に比べて磁性に基づくパルス信号に第1クランクウエブ46の外周面46aの影響が乗りやすい。このとき、逃げ部58では第1クランクウエブ46の外周面46aはパルサーセンサー39から遠ざかるので、第1クランクウエブ46の磁性の影響は回避される。こうして精度よくパルス信号は生成される。
本実施形態では、第1クランクウエブ46の外周面46aは周方向に連続して環状体38bよりも大径の円筒面を形成する。環状体38bは小径化されるので、環状体38bは軽量化されるとともに、限られたスペースに組み込まれるクランクウエブ46、47でも容易に適用される。また、リラクター38aは円板形状の第1クランクウエブ46から放射方向に突出することから、リラクター38aに基づき精度よくパルス信号は生成され、第1クランクウエブ46の全周にわたって逃げ部57が形成される必要はなく、第1クランクウエブ46の軸方向寸法(厚み)の増大は回避される。
本実施形態では、逃げ部58は、リラクター欠如域57を挟んで隣り合うリラクター38aの間で全域にわたって延びる凹部で形成される。したがって、簡単な構造で逃げ部57は形成される。凹部は環状体38bの外周に沿って仕切られる。こうして凹部の径方向の深さDは環状体38bの外周に沿って規定されるので、凹部の深さDは最小限に留められる。第1クランクウエブ46の重量バランスの変化は最小限に留められる。しかも、第1クランクウエブ46の外周面46aからリラクター38bの先端までの突出量Pは凹部の深さDよりも小さいことから、リラクター38aの突出量Pは最小限に抑えられ、内燃機関の大型化は回避される。加えて、リラクター38aの歯の長さHは、第1クランクウエブ46の厚み方向に特定される凹部の奥行きGよりも小さいことから、リラクター38aの歯の長さHは短く抑えられ、リラクター38aが径方向に大型化することは抑制される。
パルサーリング38は、第1軸受42aの内輪部材51bと第1クランクウエブ46との間に配置される。クランクシャフト37の軸方向にパルサーリング38の移動は第1軸受42aの内輪部材51bおよびクランクシャフト37の第1クランクウエブ46で規制される。パルサーリング38の取り付けにあたってパルサーリング38に固有の規制部品は改めて要求されない。部品点数の削減および組み立て作業工程の簡素化は実現される。
パルサーリング38と第1クランクウエブ46との間には、クランクシャフト37の回転軸線Rx回りでパルサーリング38およびクランクシャフト37の相対回転を阻止する係り止め機構67が形成される。係り止め機構67はクランクシャフト37の回転中にパルサーリング38およびクランクシャフト37の相対回転を阻止する。したがって、パルサーリング38は確実にクランクシャフト37の回転に同期する。パルサーリング38の動きは確実にクランクシャフト37の回転を反映する。
本実施形態では、クランクシャフト37のクランクは、第1軸受42aに回転軸線Rx回りで回転自在に支持される第1軸45aおよびクランクウエイト63aを有し、パルサーリング38を支持する第1クランクウエブ46と、第2軸受42bに回転軸線Rx回りで回転自在に支持される第2軸45bおよびクランクウエイト63bを有し、遠心オイルフィルター62を支持する第2クランクウエブ47と、クランクシャフト37の回転軸線Rxから変位した位置に配置されて、第1クランクウエブ46および第2クランクウエブ47を相互に連結するとともにコンロッド36に連結されるクランクピン48とを備える。パルサーリング38は第1クランクウエブ46に取り付けられる一方で、遠心オイルフィルター62は第2クランクウエブ47に取り付けられるので、部材レイアウトを複雑化することなく、第1クランクウエブ46にパルサーリング38を結合することができる。加えて、遠心オイルフィルター62を受ける第2クランクウエブ47とは別の第1クランクウエブ46に逃げ部58の凹部は設けられるので、凹部の配置にあたってクランクウエブ46、47の構造の複雑化は抑制される。
本実施形態に係る内燃機関23では、オイルジェット64は、第2クランクウエブ47の径方向外側に配置されて、シリンダー34内に潤滑油を噴射する。オイルジェット64に近い位置に配置される第2クランクウエブ47とは別の第1クランクウエブ46に逃げ部58の凹部は設けられるので、凹部の配置にあたって部材レイアウトの複雑化は抑制される。
内燃機関23では、パルサーセンサー39は、シリンダーブロック25の後方でクランクケース24の上側に取り付けられる。パルサーセンサー39は、クランクケース24から上方に延びるシリンダーブロック25の後方に配置されるので、パルサーセンサー39に保護カバーを設けることなく、パルサーセンサー39の前方を保護することができる。
前述のように、パルサーセンサー39は、クランクケース24に形成されるエンジンハンガー29同士の間に配置される。クランクケース24はエンジンハンガー29で車体フレーム12に固定されるので、パルサーセンサー39に保護カバーを設けることなく、パルサーセンサー39の前方および後方を保護することができる。
その他、図6に示されるように、パルサーセンサー39はクランクケース24の前壁に取り付けられてもよい。パルサーセンサー39は、地面に直交する車両上下方向に対して傾斜する姿勢で保持されればよい。前述と同様に、パルサーセンサー39の検出軸線39aはクランクシャフト37の回転軸線Rxを指向すればよい。クランクケース24の前方には他部品がほとんど存在せず、開放空間が確保されることから、パルサーセンサー39の取り付けにあたって他部材のレイアウトへの影響は抑制されることができる。図7に示されるように、パルサーセンサー39は、上下1対のエンジンハンガー29の間でクランクケース24の前壁に取り付けられてもよい。エンジンハンガー29には前方から車体フレーム12(ヘッドパイプ13から下方に延びるダウンフレーム)が結合されることから、パルサーセンサー39に専用の保護カバーを設けることなく、パルサーセンサー39の前方および後方を保護することができる。
図8に示されるように、内燃機関23にはドグクラッチ式の多段変速機(動力伝達装置)71が組み込まれる。多段変速機71はクランクシャフト37の軸心(回転軸線Rx)に平行な軸心を有するメインシャフト72およびカウンターシャフト73を備える。メインシャフト72およびカウンターシャフト73は、クランクケース24の第1半体43aおよび第2半体43bにそれぞれ嵌め込まれる軸受75、76で第1半体43aおよび第2半体43bに回転自在に支持される。メインシャフト72は一次減速機構77を通じてクランクシャフト37に接続される。一次減速機構77は、クランクシャフト37に固定される駆動ギア77aと、メインシャフト72上に相対回転自在に支持される被駆動ギア77bとを備える。被駆動ギア77bは駆動ギア77aに噛み合う。カウンターシャフト73には駆動スプロケット78が結合される。
メインシャフト72上には5つの駆動ギアが配置される。駆動ギアは軸受75の間で順番にロー駆動ギア79、4速駆動ギア81、3速駆動ギア82、5速駆動ギア83および2速駆動ギア84を含む。同様に、カウンターシャフト73上には軸受76の間で順番に5つの被駆動ギアが配置される。被駆動ギアはロー被駆動ギア85、4速被駆動ギア86、3速被駆動ギア87、5速被駆動ギア88および2速被駆動ギア89を含む。多段変速機71ではニュートラル状態、1速結合状態、2速結合状態、3速結合状態、4速結合状態および5速結合状態で結合状態が選択的に切り替えられる。多段変速機71の詳細は後述される。
内燃機関23には摩擦クラッチ91が組み込まれる。摩擦クラッチ91はクラッチアウター91aおよびクラッチハブ91bを備える。クラッチアウター91aに一次減速機構77の被駆動ギア77bは連結される。クラッチレバーの操作に応じて摩擦クラッチ91ではクラッチアウター91aおよびクラッチハブ91bの間で連結および切断が切り替えられる。
図9に示されるように、多段変速機71ではロー駆動ギア79はメインシャフト72に刻まれる。4速駆動ギア81はメインシャフト72に対して相対回転自在かつ軸方向変位不能にメインシャフト72に支持される。3速駆動ギア82は第1シフター92に一体化される。第1シフター92は、メインシャフト72に刻まれるスプライン72aに嵌め合わせられスプライン72a上に相対回転不能かつ軸方向変位自在に支持される。5速駆動ギア83はメインシャフト72に対して相対回転自在かつ軸方向変位不能にメインシャフト72に支持される。2速駆動ギア84はメインシャフト72に対して相対回転不能かつ軸方向変位不能にメインシャフト72に支持される。
4速駆動ギア81および3速駆動ギア82の間には第1嵌め合い機構93が構成される。第1嵌め合い機構93は、第1シフター92に形成される複数の駆動突部93aと、4速駆動ギア81に形成される複数の被駆動突部93bとを備える。第1シフター92がスプライン72a上で軸方向基準位置に位置すると、駆動突部93aの軌道は被駆動突部93bの軌道から離れる。このとき、4速駆動ギア81および第1シフター92の間ではメインシャフト72の軸心回りで相対回転は許容される。第1シフター92が軸方向基準位置から4速駆動ギア81に向かって第1距離で変位して第1作動位置に移動すると、駆動突部93aは4速駆動ギア81上で周方向に隣接する被駆動突部93b同士の間に入り込む。被駆動突部93bおよび駆動突部93aはメインシャフト72の軸心回りに相互に噛み合う。噛み合い時、4速駆動ギア81は第1シフター92を介してメインシャフト72に相対回転不能に結合される。
3速駆動ギア82および5速駆動ギア83の間には第2嵌め合い機構94が構成される。第2嵌め合い機構94は、第1シフター92に形成される複数の駆動突部94aと、5速駆動ギア83に形成される複数の被駆動突部94bとを備える。第1シフター92がスプライン72a上で軸方向基準位置に位置すると、駆動突部94aの軌道は被駆動突部94bの軌道から離れる。このとき、第1シフター92および5速駆動ギア83の間ではメインシャフト72の軸心回りで相対回転は許容される。第1シフター92が軸方向基準位置から5速駆動ギア84に向かって第2距離で変位して第2作動位置に移動すると、駆動突部94aは5速駆動ギア83上で周方向に隣接する被駆動突部94b同士の間に入り込む。駆動突部94aおよび被駆動突部94bはメインシャフト72の軸心回りに相互に噛み合う。噛み合い時、5速駆動ギア83は第1シフター92を介してメインシャフト72に相対回転不能に結合される。
ロー被駆動ギア85は相対回転自在かつ軸方向変位不能にカウンターシャフト73に支持される。ロー被駆動ギア85はメインシャフト72上のロー駆動ギア79に噛み合う。4速被駆動ギア86は第2シフター95に一体化される。第2シフター95は、カウンターシャフト73に刻まれる第1スプライン73aに嵌め合わせられ第1スプライン73a上に相対回転不能かつ軸方向変位自在に支持される。3速被駆動ギア87はカウンターシャフト73に対して相対回転自在かつ軸方向変位不能にカウンターシャフト73に支持される。5速被駆動ギア88は第3シフター96に一体化される。第3シフター96は、カウンターシャフト73に刻まれる第2スプライン73bに嵌め合わせられ第2スプライン73b上に相対回転不能かつ軸方向変位自在に支持される。2速被駆動ギア89は相対回転自在かつ軸方向変位不能にカウンターシャフト73に支持される。2速被駆動ギア89はメインシャフト72上の2速駆動ギア84に噛み合う。
ロー被駆動ギア85および4速被駆動ギア86の間には第3嵌め合い機構97が構成される。第3嵌め合い機構97は、第2シフター95に形成される複数の駆動突部97aと、ロー被駆動ギア85に形成される複数の被駆動突部97bとを備える。第2シフター95が第1スプライン73a上で軸方向基準位置に位置すると、駆動突部97aの軌道は被駆動突部97bの軌道から離れる。このとき、第2シフター95およびロー被駆動ギア85の間ではカウンターシャフト73の軸心回りで相対回転は許容される。第2シフター95が軸方向基準位置からロー被駆動ギア85に向かって第3距離で変位して第3作動位置に移動すると、駆動突部97aはロー被駆動ギア85上で周方向に隣接する被駆動突部97b同士の間に入り込む。駆動突部97aおよび被駆動突部97bはカウンターシャフト73の軸心回りに相互に噛み合う。噛み合い時、ロー被駆動ギア85は第2シフター95を介してカウンターシャフト73に相対回転不能に結合される。
4速被駆動ギア86および3速被駆動ギア87の間には第4嵌め合い機構98が構成される。第4嵌め合い機構98は、第2シフター95に形成される複数の駆動突部98aと、3速被駆動ギア87に形成される複数の被駆動突部98bとを備える。第2シフター95が第1スプライン73a上で軸方向基準位置に位置すると、駆動突部98aの軌道は被駆動突部98bの軌道から離れる。このとき、第2シフター95および3速被駆動ギア87の間ではカウンターシャフト73の軸心回りで相対回転は許容される。第2シフター95が軸方向基準位置から3速被駆動ギア87に向かって第4距離で変位して第4作動位置に移動すると、駆動突部98aは3速被駆動ギア87上で周方向に隣接する被駆動突部98b同士の間に入り込む。駆動突部98aおよび被駆動突部98bはカウンターシャフト73の軸心回りに相互に噛み合う。噛み合い時、3速被駆動ギア87は第2シフター95を介してカウンターシャフト73に相対回転不能に結合される。
5速被駆動ギア88および2速被駆動ギア89の間には第5嵌め合い機構99が構成される。第5嵌め合い機構99は、第3シフター96に形成される複数の駆動突部99aと、2速被駆動ギア89に形成される複数の被駆動突部99bとを備える。第3シフター96が第2スプライン73b上で軸方向基準位置に位置すると、駆動突部99aの軌道は被駆動突部99bの軌道から離れる。このとき、第3シフター96および2速被駆動ギア89の間ではカウンターシャフト73の軸心回りで相対回転は許容される。第3シフター96が軸方向基準位置から2速被駆動ギア89に向かって第5距離で変位して第5作動位置に移動すると、駆動突部99aは2速被駆動ギア89上で周方向に隣接する被駆動突部99b同士の間に入り込む。駆動突部99aおよび被駆動突部99bはカウンターシャフト73の軸心回りに相互に噛み合う。噛み合い時、2速被駆動ギア89は第3シフター96を介してカウンターシャフト73に相対回転不能に結合される。
本実施形態では駆動突部94a、97a、98a、99aや被駆動突部93bはメインシャフト72やカウンターシャフト73の軸方向に延びる突起であって、それらに個々に対応する被駆動突部94b、97b、98b、99bや駆動突部93aは突起を受け入れる係合孔または窪みの周壁で構成される。突起はメインシャフト72やカウンターシャフト73の回転方向に係合孔または窪みの周壁に面接触する。突起および係合孔(または窪み)にはそれぞれメインシャフト72またはカウンターシャフト73の軸心を含む仮想平面内で広がる接触面が区画されればよい。
メインシャフト72上で第1シフター92すなわち3速駆動ギア82が軸方向基準位置に位置し、カウンターシャフト73上で第2シフター95および第3シフター96(すなわち4速被駆動ギア86および5速被駆動ギア88)が軸方向基準位置に位置すると、メインシャフト72上の4速駆動ギア81はカウンターシャフト73上の4速被駆動ギア86に噛み合い、メインシャフト72上の3速駆動ギア82はカウンターシャフト73上の3速被駆動ギア87に噛み合い、メインシャフト72上の5速駆動ギア83はカウンターシャフト73上の5速被駆動ギア88に噛み合う。4速駆動ギア81および5速駆動ギア83はメインシャフト72に対して相対回転する。ロー被駆動ギア85、3速被駆動ギア87および2速被駆動ギア89はカウンターシャフト73に対して相対回転する。この状態ではメインシャフト72からカウンターシャフト73に回転力は伝達されない。多段変速機71ではニュートラル状態が確立される。
ニュートラル状態からカウンターシャフト73上で第2シフター95すなわち4速被駆動ギア86が軸方向基準位置から第3作動位置に移動すると、第3嵌め合い機構97で第2シフター95の駆動突部97aはロー被駆動ギア85の被駆動突部97bに噛み合う。ロー被駆動ギア85はカウンターシャフト73に結合される。ロー被駆動ギア85に伝達されるメインシャフト72の回転力はカウンターシャフト73を駆動する。こうして多段変速機71では1速が確立される。
ニュートラル状態からカウンターシャフト73上で第3シフター96すなわち5速被駆動ギア88が軸方向基準位置から第5作動位置に移動すると、第5嵌め合い機構99で第3シフター96の駆動突部99aは2速被駆動ギア89の被駆動突部99bに噛み合う。2速被駆動ギア89はカウンターシャフト73に結合される。2速被駆動ギア89に伝達されるメインシャフト72の回転力はカウンターシャフト73を駆動する。こうして多段変速機71では2速が確立される。
ニュートラル状態からカウンターシャフト73上で第2シフター95すなわち4速被駆動ギア86が軸方向基準位置から第4作動位置に移動すると、第4嵌め合い機構98で第2シフター95の駆動突部98aは3速被駆動ギア87の被駆動突部98bに噛み合う。3速被駆動ギア87はカウンターシャフト73に結合される。3速被駆動ギア87に伝達されるメインシャフト72の回転力はカウンターシャフト73を駆動する。こうして多段変速機71では3速が確立される。
ニュートラル状態からメインシャフト72上で第1シフター92すなわち3速駆動ギア82が軸方向基準位置から第1作動位置に移動すると、第1嵌め合い機構93で第1シフター92の駆動突部93aは4速駆動ギア81の被駆動突部93bに噛み合う。4速駆動ギア81はメインシャフト72に結合される。メインシャフト72の回転力は4速駆動ギア81に伝達される。メインシャフト72の4速駆動ギア81はカウンターシャフト73の4速被駆動ギア86に噛み合うことから、メインシャフト72の回転力はカウンターシャフト73を駆動する。こうして多段変速機71では4速が確立される。
ニュートラル状態からメインシャフト72上で第1シフター92すなわち3速駆動ギア82が軸方向基準位置から第2作動位置に移動すると、第2嵌め合い機構94で第1シフター92の駆動突部94aは5速駆動ギア83の被駆動突部94bに噛み合う。5速駆動ギア83はメインシャフト72に結合される。メインシャフト72の回転力は5速駆動ギア83に伝達される。メインシャフト72の5速駆動ギア83はカウンターシャフト73の5速被駆動ギア88に噛み合うことから、メインシャフト72の回転力はカウンターシャフト73を駆動する。こうして多段変速機71では5速が確立される。
図10に示されるように、多段変速機71にはシフト機構101が組み込まれる。シフト機構101はメインシャフト72の軸心に平行に延びる案内軸102を備える。案内軸102にはシフトフォーク103が軸方向に変位自在に支持される。シフトフォーク103は案内軸102の軸心に直交する方向に延びてメインシャフト72上の第1シフター92に連結される。
シフト機構101はシフトドラム104を備える。シフトドラム104は案内軸102の軸心に平行に延びる回転軸線Rx回りで回転自在に支持される。シフトドラム104の外周面にはカム溝105が刻まれる。カム溝105は回転角に応じてシフトドラム104の軸方向に変位する。カム溝105には、案内軸102の軸心に直交する方向にシフトフォーク103から突き出るピン106が挿入される。こうしてシフトドラム104の回転に応じて案内軸102に沿ってシフトフォーク103は移動する。シフトフォーク103の移動はメインシャフト72上で第1シフター92の移動を引き起こす。
図11に示されるように、同様なシフト機構はカウンターシャフト73上の第2シフター95および第3シフター96にも関連づけられる。シフト機構101は、カウンターシャフト73の軸心に平行に延びる案内軸107と、軸方向に変位自在に案内軸107に支持されて、カウンターシャフト73上の第2シフター95および第3シフター96にそれぞれ個別に連結される2つのシフトフォーク108、109とを備える。2つのシフトフォーク108、109は、シフトドラム104のカム溝105に挿入されるピンをそれぞれ有し、シフトドラム104の回転に応じて案内軸107に沿って移動する。
本実施形態では、パルサーリング38は、クランクシャフト37の回転軸線Rxの無限遠に位置する視点から観察される側面視で、多段変速機71のメインシャフト72上の4速駆動ギア81および5速駆動ギア83と干渉する。言い換えると、クランクシャフト37の回転軸線Rx上に中心軸を有してパルサーリング38の最外縁を仕切る仮想円筒面111の内側に5速駆動ギア83および4速駆動ギア81は進入する。しかも、パルサーリング38と駆動ギア81、83との干渉域、および、パルサーセンサー39は、クランクシャフト37の回転軸線Rxおよびカウンターシャフト73の回転軸線を含む仮想平面112と、クランクシャフト37の回転軸線Rxに平行であってシリンダー軸線Cを含む仮想平面113とでシリンダーブロック25の後方に仕切られる空間内に配置される。したがって、側面視の透視図では、クランクシャフト37の中心およびカウンターシャフト73の中心を含む直線とシリンダー軸線Cとでシリンダーブロック25の後方に仕切られる領域内にパルサーリング38と駆動ギア81、83との干渉域、および、パルサーセンサー39は位置する。
パルサーリング38と駆動ギア81、83との干渉域は、クランクシャフト37の回転軸線Rxおよびカウンターシャフト73の軸心を含む仮想平面112で分けられる一方の空間に配置され、当該仮想平面112で分けられる他方の空間に多段変速機71のシフトドラム104は配置される。言い換えると、側面視の透視図では、パルサーリング38と駆動ギア81、83との干渉域は、クランクシャフト37の中心およびカウンターシャフト73の中心を結ぶ直線の上側に位置し、シフトドラム104は、クランクシャフト37の中心およびカウンターシャフト73の中心を結ぶ直線の下側に位置する。パルサーセンサー39は、クランクシャフト37の回転軸線Rxおよびメインシャフト72の軸心を含む仮想平面114で分けられる一方の空間に配置され、当該仮想平面で分けられる他方の空間に多段変速機71のシフトドラム104は配置される。言い換えると、側面視の透視図では、パルサーセンサー39は、クランクシャフト37の中心およびメインシャフト72の中心を結ぶ直線の上側に位置し、シフトドラム104は、クランクシャフト37の中心およびメインシャフト72の中心を結ぶ直線の下側に位置する。また、パルサーリング38と駆動ギア81、83との干渉域、および、パルサーセンサー39は、重力方向に平行であってクランクシャフト37の回転軸線Rxを含む仮想垂直平面115の後方であって、重力方向に平行であってシフトドラム104の軸心を含む仮想垂直平面116の前方に配置される。言い換えると、側面視の透視図では、パルサーリング38と駆動ギア81、83との干渉域、および、パルサーセンサー39は、重力方向にクランクシャフト37の回転軸線Rxを貫通する直線の後方であって、重力方向にシフトドラム104の軸心を貫通する直線の前方に位置する。
変速機71のメインシャフト72は、クランクシャフト37の回転軸線Rxおよびカウンターシャフト73の軸心を含む仮想平面112と、クランクシャフト37の回転軸線Rxおよびパルサーセンサー39の検出軸線39aを含む仮想平面117で挟まれる空間内に配置される。すなわち、側面視の透視図で、メインシャフト72は、クランクシャフト37の中心およびカウンターシャフト73の中心を結ぶ直線とパルサーセンサー39の検出軸線39aとで挟まれる領域に位置する。パルサーリング38と駆動ギア81、83との干渉域は、同様に、クランクシャフト37の中心およびカウンターシャフト73の中心を結ぶ直線とパルサーセンサー39の軸線とで挟まれる領域に位置する。
内燃機関23の組み立てにあたって、クランクケース24の第2半体43bに、クランクシャフト37、変速機71のメインシャフト72およびカウンターシャフト73は組み付けられる。このとき、メインシャフト72に先立ってクランクシャフト37が軸受42bに圧入される場合には、クランクシャフト37にはパルサーリング38は取り付けられていない。メインシャフト72には第4駆動ギア81および第3駆動ギア(第1シフター92)が装着される一方で、第5駆動ギア83および第2駆動ギア84は取り付けられていない。カウンターシャフト73には全ての被駆動ギア85〜89が装着される。続いてクランクシャフト37にパルサーリング38は固定される。その後、メインシャフト72に5速駆動ギア83および2速駆動ギア84は装着される。
クランクシャフト37に先立ってメインシャフト72が軸受75に嵌め込まれる場合には、メインシャフトには第4駆動ギア81および第3駆動ギア(第1シフター92)が装着される一方で、第5駆動ギア83および第2駆動ギア84は取り付けられていない。それに続くクランクシャフト37の組み付けにあたってクランクシャフト37には予めパルサーリング38が固定されてもよい。クランクシャフト37の組み付け後にメインシャフト72に5速駆動ギア83および2速駆動ギア84は装着される。
内燃機関23では、前述のように突出片68および窪み69で構成される係り止め機構67に代えて、図12および図13に示されるように、第1クランクウエブ46から突出するノックピン121と、パルサーリング38に形成されて、第1クランクウエブ46にパルサーリング38が重ねられた際にノックピン121を受け入れる貫通孔122とを有する係り止め機構123が用いられてもよい。ノックピン121は、第1クランクウエブ46に形成されてクランクシャフト37の回転軸線Rxに平行な中心軸を有する円筒空間の嵌め穴124に圧入される大径部121aと、第1クランクウエブ46の表面から突出して、センサーリング38の貫通孔122に圧入される小径部124bとを有すればよい。ノックピン121は、クランクシャフト37の回転軸線Rx回りでパルサーリング38および第1クランクウエブ46の相対回転を阻止する。
図14および図15に示されるように、内燃機関23には、第1軸45aに同軸の円板形状の第1クランクウエブ46、および、第2軸45bに同軸の円板形状の第2クランクウエブ47に代えて、第1軸45aを有し、回転軸線Rxに同軸の円筒面から回転軸線Rxに向かって削ぎ落とされた幅狭域でクランクピン48を支持する第1クランクウエブ131、および、第2軸45bを有し、回転軸線Rxに同軸の円筒面から回転軸線Rxに向かって削ぎ落とされた幅狭域でクランクピン48を支持する第2クランクウエブ132が用いられてもよい。第1クランクウエブ131は、例えば、回転軸線Rx周りでクランクピン48から180度ずれた位置に、回転軸線Rxに同軸の円筒面で仕切られる外周面133aを有するクランクウエイト133を備える。クランクウエイト133の外周面133aは環状体38bよりも大径に形成され、パルサーリング38のリラクター38aは環状体38bから放射方向に延びてクランクウエイト133の外周面133aよりも突出する。第2クランクウエブ132は、同様に、回転軸線Rx周りでクランクピン48から180度ずれた位置に、回転軸線Rxに同軸の円筒面で仕切られる外周面134aを有するクランクウエイト134を備えればよい。
第1クランクウエブ131のクランクウエイト133には、リラクター欠如域57に対応して、第1クランクウエブ131および環状体38bの合わせ面に沿って径方向内方に窪んだ逃げ部58が設けられる。逃げ部58は、リラクター欠如域57を挟んで隣り合うリラクター38aの間で周方向に全域にわたって延びる凹部で形成される。凹部は環状体38bの外周に沿って仕切られる。クランクウエイト133の外周面133aからリラクター38aの先端までの突出量Pは凹部58の深さDよりも小さい。その他、第1クランクウエブ131の構成は前述の第1クランクウエブ46と同様に構成されればよい。