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JP6629065B2 - ポリアミド水性分散液 - Google Patents

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JP6629065B2 JP2015248671A JP2015248671A JP6629065B2 JP 6629065 B2 JP6629065 B2 JP 6629065B2 JP 2015248671 A JP2015248671 A JP 2015248671A JP 2015248671 A JP2015248671 A JP 2015248671A JP 6629065 B2 JP6629065 B2 JP 6629065B2
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Description

本発明はポリアミド水性分散液に関する。さらに詳しくは、ポリアミド等のマトリックス樹脂との接着性に優れた皮膜を形成できるポリアミド水性分散液に関する。
ポリアミドの水性分散液は、基材に対してポリアミドのコーティング塗膜を形成することにより、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性、耐磨耗性、気体遮断性、接着性等を付与することができることから、水性インキ、繊維処理剤、繊維目止め剤、ガラス繊維集束剤、紙処理剤、バインダー、潤滑剤、鋼板表面処理剤、表面改質剤、芯地接着剤等のホットメルト接着剤等に広く用いられている。
とりわけ、ポリアミドの水性分散液は、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂にした繊維複合材料において、マトリックス樹脂と繊維との接着性を高める目的で用いられている(特許文献1参照)。しかしながら、従来のポリアミド水性分散液を用いた場合、マトリックス樹脂と繊維との接着性が不足する場合がある。その原因としては、ポリアミド水性分散液の分散性や粘度などの経時安定性を高めるために各種の添加剤が用いられており、そのためマトリックス樹脂と繊維との親和性に悪影響を及ぼしていることが考えられる。
特開2014−105402号公報
本発明の目的は、ポリアミド樹脂等のマトリックス樹脂との密着性、接着性に優れる皮膜を形成できると共に、粘度と粒度分布の経時変化が少ない等、安定性に優れたポリアミド水性分散液を提供することにある。
本発明者は、上記した目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、水性媒体と、前記水性媒体中に分散されたポリアミドと、特定の界面活性剤とを含む、ポリアミド水性分散液が、経時安定性に優れるとともに、該水性分散液を用いて形成される皮膜が、ポリアミド樹脂等のマトリックス樹脂との接着性に優れていることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の項に記載の主題を包含する。
項1.水性媒体と、前記水性媒体中に分散されたポリアミドと、ポリカルボン酸系界面活性剤(但しポリアクリル酸アンモニウム塩を除く)とを含む、ポリアミド水性分散液。
項2a. ポリカルボン酸系界面活性剤が、下記式(1)及び/または下記式(2)で表される構造単位と、下記式(3)で表される構造単位を有する共重合体である、項1に記載のポリアミド水性分散液。
Figure 0006629065
(式中、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム基(−NH)、第1〜4級アンモニウム基、または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
Figure 0006629065
Figure 0006629065
(式中、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
項2b.ポリカルボン酸系界面活性剤が、式(4a)又は(4b)で表される構造単位を有する共重合体である、項2aに記載のポリアミド水性分散液。
Figure 0006629065
(式中、R及びRは前記に同じであり、R及びRは前記に同じであり、nは1〜10の整数を示す。)
Figure 0006629065
(式中、R及びRは前記に同じであり、nは1〜10の整数を示す。)
項3.ポリアミドが、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、6/66共重合ナイロン、6/610共重合ナイロン、6/11共重合ナイロン、6/12共重合ナイロン、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、6/66/610/11/12共重合ナイロン、ダイマー酸系ポリアミド、ナイロン系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である項1、2a又は2bに記載のポリアミド水性分散液。
項4.ポリアミド100質量部に対して、ポリカルボン酸系界面活性剤が0.02〜20質量部含まれる、項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド水性分散液。
項5.水性分散液中のポリアミドの平均粒子径が0.05〜20μmである項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド水性分散液。
項6.項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド水性分散液を含有する繊維処理剤。
項7a.項6に記載の繊維処理剤を用いて処理された繊維。
項7b.項6に記載の繊維処理剤に含まれる水以外の成分が付着した繊維。
項8.項7a又は7bに記載の繊維、及びマトリックス樹脂を含有する、繊維強化樹脂組成物。
項9.項8に記載の繊維強化樹脂組成物を含む複合化材料。
本発明のポリアミド水性分散液は、水性媒体中に分散されたポリアミドと、特定の界面活性剤を含んでいるため、経時安定性に優れるとともに、該水性分散液を用いて形成される皮膜が、ポリアミド樹脂等のマトリックス樹脂との接着性に優れている。
本発明のポリアミド水性分散液は、水性媒体と、前記水性媒体中に分散されたポリアミドと、特定のポリカルボン酸系界面活性剤を含んでいる。
本発明に用いられる水性媒体としては、水が好ましく、水道水、工業用水、イオン交換水、脱イオン水、純水などの各種の水を用いることができる。特に脱イオン水および純水が好ましい。また、水性媒体としては、本発明の目的が阻害されない範囲において、必要に応じて、水にpH調整剤、粘度調整剤、防かび剤等が適宜添加されたものであってもよい。
本発明に用いられるポリアミドとしては、公知のもの、又は公知の方法で製造されたものを用いることができる。市販されているものを用いてもよい。
より具体的には、本発明に用いられるポリアミドとしては、例えば、ジアミンとジカルボン酸との重縮合、ω−アミノ−ω′カルボン酸の重縮合、又は環状ラクタムの開環重合、等の方法で製造されたポリアミドが挙げられる。つまり、ジアミンとジカルボン酸とが重縮合したポリアミド、ω−アミノ−ω′カルボン酸が重縮合したポリアミド、環状ラクタムが開環重合したポリアミド、等が挙げられる。ここでの重縮合または開環重合の際に、重合調節剤として、ジカルボン酸またはモノカルボン酸を用いることができる。
なお、ジアミンとジカルボン酸とが重縮合したポリアミドは、換言すればジアミンとジカルボン酸をモノマー構造単位とするポリアミドであり、ω−アミノ−ω′カルボン酸が重縮合したポリアミドは、換言すればω−アミノ−ω′カルボン酸をモノマー構造単位とするポリアミドであり、環状ラクタムが開環重合したポリアミドは、換言すれば環状ラクタムをモノマー構造単位とするポリアミドである。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸、ダイマー酸(リノール酸やオレイン酸を主成分とする不飽和脂肪酸より合成される炭素数36の不飽和ジカルボン酸)等が挙げられる。
ω−アミノ−ω′カルボン酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
環状ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタムおよびω−ラウリルラクタム等が挙げられる。
前記重合調節剤として用いられるジカルボン酸としては、前記のポリアミドの製造に用いられるジカルボン酸と同様であり、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸、ダイマー酸等が挙げられる。また、モノカルボン酸としては、例えば、カプロン酸、ヘプタン酸、ノナン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸等が挙げられる。
本発明においては、ポリアミドの中でも、特に、−[NH(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CH10CO]−、−[NH(CH11CO]−、および−[NH(CHNHCO−D−CO]−(式中Dは炭素数34の不飽和炭化水素を示す)からなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上を構造単位とするポリアミドが、好ましく用いられる。
かかるポリアミドの例としては、ナイロンが挙げられ、具体的には、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、6/66共重合ナイロン、6/610共重合ナイロン、6/11共重合ナイロン、6/12共重合ナイロン、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、又は6/66/610/11/12共重合ナイロン等が例示される。なお、ここでの「/」は各ナイロンの共重合体であることを示すため用いた記号である。例えば、6/66共重合ナイロンは、6−ナイロンと66−ナイロンの共重合ナイロンを表す。
またさらに、本発明に用いられるポリアミドの例として、ダイマー酸系ポリアミドや、ポリアミドエラストマーも例示される。ポリアミドエラストマーとしては、具体的には、ナイロンとポリエステルとの共重合体、又はナイロンとポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体である、ポリアミドエラストマーが例示される。当該ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリプロピレンオキシドグリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ポリヘキサメチレンオキシドグリコール等が例示される。また、当該ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が例示される。
ポリアミドは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ポリアミドエラストマーは、特に限定されるものではないが、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含んでなるブロック共重合体が好ましい。特に、ポリアミド及びポリエーテルが共重合した構造を有するブロック共重合体が好ましく、なかでもポリアミド及びポリエーテルが共重合した構造からなるブロック共重合体が好ましい。ポリエーテルブロックの構成成分としては、例えば、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリプロピレンオキシドグリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ポリヘキサメチレンオキシドグリコール等のグリコール化合物並びにポリエーテルジアミン等のジアミン化合物等を挙げることができる。これらの構成成分は、2種以上のものが用いられてもよい。このようなポリアミドエラストマーとしては、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとの結合部の分子構造、すなわち結合形態が異なる数種類のもの、例えば、「(ポリアミドブロック)−CO−NH−(ポリエーテルブロック)」の結合形態を有するポリエーテルブロックアミド共重合体、「(ポリアミドブロック)−CO−O−(ポリエーテルブロック)」の結合形態を有するポリエーテルエステルブロックアミド共重合体等を挙げることができる。
ポリアミドエラストマーは、公知であるか、又は公知の方法により容易に製造することができる。例えば、ラクタム化合物、アミノカルボン酸化合物およびジアミン化合物のうちの少なくとも1種とジカルボン酸とを反応させて実質的に両末端がカルボキシル基であるポリアミドブロックを調製した後、このポリアミドブロックにポリエチレンオキシドグリコール等のグリコール化合物若しくはポリエーテルジアミン等のジアミン化合物を添加して加熱することで反応させる方法等を挙げることができる。また、市販品を購入して用いることもできる。市販品としては、例えば、宇部興産株式会社製ポリエーテルブロックアミド共重合体(商品名“UBESTAXPA9044X2”)、アルケマ社製ポリエーテルエステルブロックアミド共重合体(商品名“ペバックス2533SA01”)等を用いることができる。
なお、限定的な解釈を望むものではないが、ポリアミド系エラストマーが、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含んでなるブロック共重合体である場合、ポリアミドブロックを有する硬質高分子部位(ハードセグメントともいう)と、ポリエーテルブロックを有する軟質高分子部位(ソフトセグメントともいう)とが組み合わされた構造を有すると考えられる。当該硬質高分子部位は、結晶性で融点が高く、また、当該軟質高分子部位は、非晶性でガラス転移温度が低いと考えられる。
本発明に用いられるポリカルボン酸系界面活性剤としては、カルボン酸又はその誘導体が構造単位に含まれるており、その構造単位が繰り返す構造を有するポリマーを好ましく用いることができる。カルボン酸又はその誘導体が含まれる構造単位としては、下記式(1)及び/又は下記式(2)で表される構造単位が好ましく例示できる。但し、本発明においては、ポリカルボン酸系界面活性剤からポリアクリル酸アンモニウム塩は除かれる。
本発明に用いられるポリカルボン酸系界面活性剤としては、下記式(1)及び/または下記式(2)で表される構造単位と、下記式(3)で表される構造単位を有する共重合体がより好ましい。
Figure 0006629065
(式中、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム基(−NH)、第1〜4級アンモニウム基、または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
Figure 0006629065
Figure 0006629065
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
本明細書において、炭素数1〜8のアルキル基は、炭素数1、2、3、4、5、6又は7のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらに好ましい。また、当該アルキル基は直鎖状又は分岐鎖状であってよい。具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、1−エチルプロピル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、1,2,2−トリメチルプロピル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、イソヘキシル、3−メチルペンチル基等が例示される。
また、R及びRは、上述の通り同一であっても異なっていてもよい。R及びRは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム基(−NH)、第1〜4級アンモニウム基、または炭素数1〜8のアルキル基を示す。
アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等が好ましく例示でき、ナトリウム及びカリウムがより好ましく、ナトリウムがさらに好ましい。
第1級アンモニウム基としては、−NRで表される基において、R、R、及びRが水素原子を示しRが水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基を示す基であることが好ましい。
第2級アンモニウム基としては、−NRで表される基において、R及びRが水素原子を示しR及びRが同一又は異なって水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基を示す基であることが好ましい。
第3級アンモニウム基としては、−NRで表される基において、Rが水素原子を示し、R、R及びRが同一又は異なって水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基を示す基であることが好ましい。
第4級アンモニウム基としては、−NRで表される基において、R、R、R及びRが同一又は異なって水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基を示す基であることが好ましい。
第1〜4級アンモニウム基としては、上記−NRで表される基において、R、R、R及びRからなる群より選択される少なくとも1つの基が水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基を示す場合、当該炭素数1〜8のアルキル基は上記の通りであり、水酸基で置換されている場合には、当該アルキル基の末端炭素位で置換したものが好ましく、末端炭素位置のみで置換したものがより好ましい。水酸基で置換されている場合の水酸基置換数は例えば1、2又は3が挙げられ、1が好ましい。当該水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基としては、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシイソプロピル、ヒドロキシn−ブチル、ヒドロキシイソブチル等が例示できる。
より具体的には、第1〜4級アンモニウム基としては、メチルアンモニウム基(−NH3CH3)、ジエチルアンモニウム基(−NH2(CH2CH3)2)、トリエチルアンモニウム基(−NH(CH2CH3)3)、トリエタノールアンモニウム基(−NH(CH2CH2OH)3)、テトラエチルアンモニウム基(−N(CH2CH3))等が好ましく例示できる。
特に制限されないが、R及びRとしては、R及びRが両方ともアンモニウム基の場合、又は、Rがアンモニウム基でRが炭素数1〜8のアルキル基の場合、がより好ましい例として挙げられる。
式(1)で表される構造単位を与えるモノマー(すなわちモノマー構造単位)であるカルボン酸としては、具体的には、例えば、マレイン酸、マレイン酸塩、炭素数1〜8のアルキル基を有するマレイン酸モノエステル、炭素数1〜8のアルキル基を有するマレイン酸モノエステル塩、炭素数1〜8のアルキル基を有するマレイン酸ジエステル等が好ましく挙げられる。
また、R及びRは、上述の通り同一であっても異なっていてもよい。R及びRは、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。
は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれにあってもよいが、パラ位が好ましい。
特に制限されないが、R及びRとしては、R及びRが両方とも水素原子である場合がより好ましい例として挙げられる。
式(3)で表される構造単位を与えるモノマーとしては、例えば、スチレンや炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルスチレンが挙げられる。当該アルキルスチレンとしては、オルト置換スチレン、メタ置換スチレン、パラ置換スチレンが挙げられ、パラ置換スチレンが好ましい。
また、ポリカルボン酸系界面活性剤としては、式(3)で表される構造単位が連続して1〜10(1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)繰り返された構造と式(1)または式(2)で表される構造単位とが組み合わされた構造を単位として有するものがより好ましい一例としてあげられる。つまり、ポリカルボン酸系界面活性剤としては、下記式(4a)又は(4b)で表される構造単位を有する共重合体が好ましい一例として挙げられる。
Figure 0006629065
(式中、R及びRは前記に同じであり、R及びRは前記に同じであり、nは1〜10の整数を示す。)
Figure 0006629065
(式中、R及びRは前記に同じであり、nは1〜10の整数を示す。)
このようなポリカルボン酸系界面活性剤は、公知の化合物であるか、公知の方法により容易に製造することができる。
また、上記のようなポリカルボン酸系界面活性剤は、市販品を購入して使用することもできる。市販品としては、例えば、モノマー構造単位としてマレイン酸およびスチレンを有する共重合体であるDKSディスコートN−10およびDKSディスコートN−14(商品名、第一工業製薬株式会社製)、側鎖にポリオキシアルキレン基を有する無水マレイン酸/スチレン共重合体であるマリアリムHKM−50A(商品名、日油株式会社)、等が挙げられる。
ポリカルボン酸系界面活性剤は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、ポリカルボン酸系界面活性剤は塩である場合もあり、その場合にはポリアミド水性分散液中でイオン化していることがあり得る。本発明において、ポリカルボン酸系界面活性剤がポリアミド水性分散液に含まれるとは、そのようなイオン化している場合をも包含する意味合いである。
本発明におけるポリカルボン酸系界面活性剤の使用量(すなわち、ポリアミド水性分散液中の含有量)は、ポリアミド100質量部に対して、好ましくは0.02〜20質量部であり、より好ましくは0.05〜15質量部であり、さらに好ましくは、0.1〜10質量部であり、さらにより好ましくは0.5〜10質量部であり、特に好ましくは0.5〜5質量部である。ポリカルボン酸系界面活性剤の使用量が当該範囲内である場合、得られるポリアミド水性分散液の安定性、及び、当該分散液により処理して得られる繊維(束)とポリアミド樹脂等のマトリックス樹脂との接着性の両方がより良好となり得る。
本発明のポリアミド水性分散液を製造する方法としては、特に限定されない。例えば、ポリアミドが分散されてなる水性分散液(以下、ポリアミド水性分散液前駆体という)とポリカルボン酸系界面活性剤とを混合する工程を含む方法により製造することができる。また、ポリカルボン酸系界面活性剤を用いてポリアミドを乳化して水性分散液を得る工程を含む方法により製造することもできる。
ポリアミド水性分散液前駆体を製造する方法については、特に限定はなく、水性媒体中にポリアミドを均一に分散できる方法であればよい。
例えば、ポリアミドを、機械粉砕法、冷凍粉砕法、湿式粉砕法等の粉砕法により粉砕して得られるポリアミド粉体を水性媒体中に分散させる方法、ポリアミド中の末端カルボキシル基を、塩基性物質を用いて中和し、自己乳化させて、水性分散液を製造する方法、界面活性剤を用いてポリアミドを乳化し水性分散液を製造する方法、等が挙げられる。
以下に、代表的な製造例として、ポリアミド中の末端カルボキシル基を、塩基性物質を用いて中和し、自己乳化し、水性分散液を製造する方法について示す。
この製造方法では、例えば、容器内にポリアミド、塩基性物質および水性媒体を投入し、これらの混合液を調製する。
混合液の調製に用いる容器としては、ポリアミドが水性媒体中で軟化する温度以上の温度に加熱するための加熱手段と、内容物にせん断力を与えることのできる攪拌手段とを備えた、耐圧容器が好ましい。例えば、攪拌機付きの耐圧オートクレーブ等が好ましい。
次に、この容器内でポリアミド、塩基性物質および水性媒体を混合して混合液を得る。そして、当該混合液をポリアミドの軟化温度以上に加熱し攪拌して、乳化させ、乳濁液を得る。当該乳濁液を室温まで冷却すると、ポリアミド水性分散液前駆体が得られる。
水性媒体は、基本的には水であり、水道水、工業用水、イオン交換水、脱イオン水、純水などの各種の水を用いることができる。特に脱イオン水および純水が好ましい。また、当該水性媒体には、本発明の目的が阻害されない範囲において、必要に応じて、pH調整剤、粘度調整剤、防かび剤等が適宜添加されていてもよい。
塩基性物質としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物やアンモニア、アミン化合物等が挙げられる。塩基性物質は1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、これらの中でも、分散液の静置安定性が優れる観点から特に水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムが好適に用いられる。
塩基性物質の使用量は、得られる水性分散液の粘度の経時変化が少ない等、静置安定性に優れるという観点から、ポリアミドの末端カルボキシル基1モルあたり0.1〜2モルであることが好ましく、0.4〜1モルであることがより好ましい。
ポリアミドの使用量は、特に限定されるものではないが、得られるポリアミド水性分散液前駆体100質量部に対して0.1〜80質量部に設定するのが好ましく、20〜70質量部に設定するのがより好ましい。
また、本願発明の効果を損なわない限り、塩基性物質の代わりに、界面活性剤を用いて、ポリアミド水性分散液前駆体を得ることができる。また、塩基性物質と界面活性剤を併用してポリアミド水性分散液前駆体を得ることもできる。
ポリアミド水性分散液前駆体を得るために(つまり、ポリアミドを水性媒体へ分散させるために)使用される界面活性剤としては、上記ポリカルボン酸系界面活性剤を好ましく用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲において、アニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤を用いることもできる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族系ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ロジン酸塩および脂肪酸塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリグリセリンエステル等を挙げることができる。
これらの界面活性剤の中で、得られる水性分散液の安定性を高めるという観点から、ノニオン系界面活性剤が好適に用いられる。中でも、得られる水性分散液が耐熱性に優れ、高温で長時間加工しても分解しにくく、当該水性分散液で処理した繊維束とマトリックス樹脂との接着性が良好という点において、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンミリステルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、等)が好適に用いられる。
アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤の使用量は、両界面活性剤の合計が、ポリアミド100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは0.1〜8質量部が例示される。但し、これらの界面活性剤の使用は、得られる分散液で処理した繊維束とマトリックス樹脂との接着性に悪影響を及ぼすおそれもあるため、前記量を参考として、比較的多く使用することを避けつつ適宜設定することが望ましい。
なお、これらの界面活性剤は、製造過程において、ポリアミド水性分散液前駆体が得られた後に、さらに添加してもよい。
上記のようにして調製されたポリアミド水性分散液前駆体にポリカルボン酸系界面活性剤を混合することにより本発明のポリアミド水性分散液が得られる。ポリアミド水性分散液前駆体とポリカルボン酸系界面活性剤を混合する方法として特に限定されず、例えば、ポリアミド水性分散液前駆体とポリカルボン酸系界面活性剤を同一容器内に投入して、撹拌し、混合する方法などが挙げられる。
本発明のポリアミド水性分散液中のポリアミドの濃度(w/w%)は、0.1〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜60質量%であり、さらに好ましくは5〜50質量%である。ポリアミドの濃度が80質量%以下であれば、ポリアミド水性分散液の安定性がより向上し得る。また、当該濃度が0.1質量%以上であれば、繊維束へポリアミドをより付着させやすくなる。
本発明のポリアミド水性分散液において、分散されたポリアミド粒子の平均粒子径は、本発明の効果が得られる限り特に制限されないが、例えば好ましくは0.05〜20μm、0.1〜10μm、0.2〜5μm、0.25〜2.5μm、0.3〜1μm、又は0.4〜0.6μm等が例示できる。平均粒子径が0.05μm以上であれば、ポリアミド水性分散液の粘度が高くなりすぎる恐れがより少ない(粘度が高いと、移送時等、取扱いにくくなるほか、繊維束へ含浸させる際の作業性が悪くなる可能性がある)。また、20μm以下であれば、水性分散液の安定性がより向上し得る。また、繊維束に、より均一に含浸させやすくなる。なお、この平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定法によるものである。すなわち、ポリアミド水性分散液をレーザー回折式粒度分布測定装置にて測定した際に得られる値である。なお、直径1μmの球と同じ回折・散乱光のパターンを示す被測定粒子は、その形状に関わらず粒子径1μmとして算出をする。
なお、本発明のポリアミド水性分散液は、本発明の効果を損なわない限り、他の成分を含んでもよい。また、市販されているポリカルボン酸系界面活性剤、例えば上記DKSディスコートN−14には、有機溶媒が含まれている場合があり、かかるポリカルボン酸系界面活性剤を用いて得られる本発明のポリアミド水性分散液には、有機溶媒が含まれることとなるが、本発明の効果を損なわない限り特に問題ない。当該有機溶媒としては、例えばエチレングリコール、2−エチルヘキサノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等が例示される。
本発明はまた、上記で得られるポリアミド水性分散液を含有する繊維用処理剤を提供する。なお、当該ポリアミド水性分散液そのものを繊維用処理剤として用いることもできる。
本発明の繊維用処理剤は、繊維表面とのぬれ性が優れ、繊維に対して処理剤が均一に含浸しやすく、マトリックス樹脂と接着させた際、機械的特性に優れた複合体が得られるという特徴がある。
本発明の繊維用処理剤により処理される繊維としては、特に限定されない。有機繊維としては、植物や動物から得られる綿、麻、亜麻、黄麻、羊毛、カシミヤ等の天然繊維、有機化学物質を合成して得られるナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系合成繊維、ポリエステル系合成繊維、ポリアクリルニトリル系合成繊維、ポリビニルアルコール系合成繊維、ポリ塩化ビニル系合成繊維、ポリ塩化ビニリデン系合成繊維、ポリエチレン系合成繊維、ポリプロピレン系合成繊維、ポリウレタン系合成繊維等の合成繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維が使用でき、無機繊維としては、炭素繊維(例えば、アクリル繊維またはピッチなどを原料として、高温で炭化して製造できる)、ガラス繊維、金属繊維、岩石繊維など各種繊維が挙げられる。中でも、本発明の繊維用処理剤と相溶性が優れ、繊維に対して処理剤が均一に含浸しやすく、マトリックス樹脂と接着させた際、機械的特性に優れた複合体が得られるという観点から、炭素繊維に対して本発明の繊維用処理剤は良好に使用することができる。
炭素繊維の具体例としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ等、繊維状であれば種類は特に限らないが、安価なコストを実現できる点と炭素繊維を束ねてなる炭素繊維束から得られる成形体が良好な機械的特性を持つという点でポリアクリロニトリル系炭素繊維が好適に用いられる。
炭素繊維の形態についても、連続長繊維や連続長繊維をカットした短繊維、粉末状に粉砕したミルド糸等、いずれでも良い。これらは、織物、編み物、不織布等のシート状等に、用途や必要特性に応じて様々に選ぶことができる。
炭素繊維束は炭素繊維から構成される。炭素繊維束は、例えば、市販されているものを用いることができる。市販されている炭素繊維束は、毛羽立ちを押さえ作業性を改善するため、予め、エポキシ系化合物等によりサイジング処理が施されているものが通常であるが、本発明においては、これらのサイジング処理剤を溶剤洗浄、乾燥等により除去したものを用いてもよいし、市販されている炭素繊維束をそのまま用いることもできる。もちろん、サイジング処理が施されていない炭素繊維束も用いることができる。
繊維用処理剤を炭素繊維に付着させる方法としては、特に限定されないが、通常のサイジング処理、例えば、繊維用処理剤を炭素繊維束に滴下、散布する方法の他、ローラー浸漬法やローラー接触法等を適用して行うこともできる。繊維用処理剤の炭素繊維束への付着量の調整は、繊維用処理剤中のポリアミド濃度や界面活性剤濃度等を調整することによってもできる。また、絞りコントローラー等の通過工程の調整等によって調節することもできる。
繊維用処理剤を炭素繊維に付着させた後、続いて乾燥処理によって水分を除去することにより、本発明のポリアミド水性分散液を含む繊維用処理剤で処理された炭素繊維束が得られる。このときの乾燥処理の方法としては、特に限定されないが、例えば熱風、熱板、ローラー、赤外線ヒーター等の熱媒を用いる方法を選択することができる。
本発明の繊維用処理剤で処理された炭素繊維束は、マトリックス樹脂と混合して繊維強化樹脂組成物として用いることができる。ここで、マトリックス樹脂は熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のどちらにも特に限定されず、また、一緒に用いてもよいが、得られた成形品の機械的特性かつ成形効率の高いプレス成形または射出成形が可能である熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィンの他、スチレン系樹脂、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメチレンメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、フェノールフェノキシ樹脂、フッ素樹脂等が例示される。さらには、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、飽和ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジェン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、およびこれらの樹脂を2種類以上ブレンドしたものでもよい。なお、ここでの変性体とは、分子構造内のカルボキシル基等の反応性のある官能基を置換した構造を有する誘導体や、分子構造内にオキシエチレン基等のジオールを付加した構造を有する誘導体をいう。
本発明のポリアミド水性分散液は、マトリックス樹脂との接着性に優れる皮膜を繊維上に形成させることができる。マトリックス樹脂の中でも好ましい物はポリアミド樹脂であり、良好な成形体が得られる。
次に本発明における実施例、比較例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
水性ポリアミド水性分散液の製造
実施例1
直径50mmのタービン型撹拌羽根を備えた内容積1リットルの耐圧オートクレーブ中に、ポリアミドとして6/66/12共重合ナイロン(融点120℃、末端カルボキシル基158ミリモル/kg)240g、脱イオン水150gおよび10%水酸化ナトリウム水溶液10gを仕込み密閉した。次に、撹拌機を始動し、500rpmの回転数で撹拌しながらオートクレーブ内部を160℃まで昇温した。内温を160℃に保ちながらさらに30分間撹拌した後、冷却し、内温が95℃に到達した際に、スチレン−マレイン酸モノエステル共重合体アンモニウム塩の水性分散液(第一工業製薬株式会社製の商品名“ディスコートN−14”;固形分濃度29%)16gおよび脱イオン水198gを加えた。さらに、室温まで冷却し、ポリアミド水性分散液(実施例1)を得た。
この水性分散液中のポリアミドの平均粒子径を回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所、商品名“SALD−2300”)を用いて測定したところ、0.5μmであった。
実施例2
実施例1において、「ディスコートN−14」の使用量を12gとした以外は、実施例1と同様に操作し、ポリアミド水性分散体(実施例2)を得た。
実施例3
実施例1において、「ディスコートN−14」の使用量を24gとした以外は、実施例1と同様に操作し、ポリアミド水性分散体(実施例3)を得た。
実施例4
実施例1において、「ディスコートN−14」16gの代わりに、スチレン-マレイン酸共重合体アンモニウム塩の水性分散液(第一工業製薬株式会社製の商品名“ディスコートN-10”;固形分濃度30%)8gを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、ポリアミド水性分散体(実施例4)を得た。
実施例5
実施例1において、「ディスコートN-14」16gの代わりに、側鎖にポリオキシアルキレン基を有する無水マレイン酸/スチレン共重合体の水性分散液(日油株式会社製の商品名“マリアリムHKM-50A”;固形分濃度50%)7.2gを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、ポリアミド水性分散体(実施例5)を得た。
比較例1
実施例1において、「ディスコートN-14」16gの代わりに、エチレン-アクリル酸共重合体アンモニウム塩の水性分散液(住友精化株式会社製の商品名“ザイクセンAC”;固形分濃度29%))24.5gを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、ポリアミド水性分散体(比較例1)を得た。
比較例2
実施例1において、「ディスコートN-14」16gの代わりに、ポリアクリル酸アンモニウム塩の水性分散液(第一工業製薬株式会社製商品名“シャロールAH−103P”;固形分濃度44%)16.48gを用いた以外は、実施例1と同様に操作したが、ポリアミドが凝集し、分散液が得られなかった。
比較例3
実施例1において、「ディスコートN-14」16gを加えない以外は、実施例1と同様に操作したが、ポリアミドが凝集し、分散液が得られなかった。
ポリアミド水性分散液の安定性評価
上記のようにして得られた各ポリアミド水性分散液(実施例1〜5及び比較例1)を、25℃に設定した恒温機に1時間保持して、25℃で安定させた後、B型回転式粘度計(回転数60rpm、ローターはNo.2または3、測定温度25℃)を用い、粘度を測定した。また、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所、商品名“SALD−2300”)を用いて、実施例1と同様にして平均粒子径を測定した。
次に、40℃に設定した恒温機に2週間保存した後、同様に粘度と平均粒子径を測定し、増加率を算出することにより、それぞれのポリアミド水性分散液の静置安定性を評価した。
ここで、静置安定性評価の評価基準は以下のとおりである。
◎:粘度値、粒径値ともにほとんど変化していない。(ともに増加率10%未満程度)
○:粘度値は少し大きくなっているが(増加率20%未満程度)、粒径値はほとんど変化していない(増加率10%未満程度)。
△:粘度値、粒径値ともに少し大きくなっている。(粘度値増加率20%以上、粒径値増加率10%以上)
×:粘度値、粒径値ともに大幅に大きくなっている。(ともに増加率20%以上)
ポリアミド樹脂との相溶性の簡易評価
スライドグラス(松浪硝子工業株式会社製の品名“白縁磨No.2”:サイズ:76×26mm、厚み1.0〜1.2mm)を、固形分濃度20質量%に調整した各ポリアミド水性分散体(実施例1〜5及び比較例1)に浸漬後、熱風乾燥(100℃、5分)を行い、スライドグラス上に被膜を形成した。
得られた被膜上にナイロン6のペレット(東レ株式会社製の商品名“アミラン CM1017”、ペレット長2.40±0.04mm、質量0.013±0.001g)を4個均等に置いた後、熱風加熱(270℃、5分)を行い、試験体を作成した。
得られた試験体上のナイロン6のペレット長の最大値を計測し、加熱前ペレット長からの変化率の平均値を算出した。なお、ペレット長とは、ペレットの端から端までの長さである。ここで、相溶性の評価基準は以下の通りである。
◎:変化率160%以上
○:変化率150〜160%未満
△:変化率140〜150%未満
×:変化率140%未満
熱風加熱によりナイロン6ペレットが溶融し、ペレット長がより長くなっているものほどポリアミド皮膜との相溶性に優れているといえる。
以上の検討結果を、下記表1に示す。なお、表1記載の添加剤1はディスコートN−14であり、添加剤2はディスコートN−10、添加剤3はマリアリムHKM−50A、添加剤4はザイクセンAC、添加剤5はシャロールAH−103Pである。
Figure 0006629065
添加剤の「質量部」は、ポリアミドを100質量部とした際の、各添加剤の固形分の質量部を示す。
表1から実施例1〜5の各ポリアミド水性分散液は、静置安定性に優れ、ナイロン6樹脂とともに溶解させた際の相溶性が優れていることが分かった。
一方、ポリカルボン酸系界面活性剤以外の添加剤を使用したポリアミド水性分散液(比較例1)は、静置安定性は優れるが、ナイロン6樹脂とともに溶解させた際の相溶性が悪いことが分かった。また、ポリアクリル酸アンモニウム塩を使用した場合(比較例2)では分散液の安定性が非常に悪く、分散液を取得することができなかった。さらに、ポリカルボン酸系界面活性剤を加えない場合(比較例3)においても、分散液の安定性が非常に悪く、分散液を取得することができなかった。
以上の結果から、本発明のポリアミド水性分散体は、粘度と平均粒子径の経時変化が少なく、安定性に優れており、さらにポリアミド樹脂との相溶性に優れており、ポリアミド等のマトリックス樹脂との接着性を向上することが可能となることが確認できた。

Claims (9)

  1. 水性媒体と、前記水性媒体中に分散されたポリアミドと、ポリカルボン酸系界面活性剤とを含む、ポリアミド水性分散液であって、
    前記ポリカルボン酸系界面活性剤が、下記式(1)及び/または下記式(2)で表される構造単位と、下記式(3)で表される構造単位を有する共重合体である、ポリアミド水性分散液。
    Figure 0006629065
    (式中、R 及びR は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム基(−NH )、第1〜4級アンモニウム基、または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
    Figure 0006629065
    Figure 0006629065
    (式中、R 及びR は、それぞれ同一又は異なって、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
  2. ポリカルボン酸系界面活性剤が、式(4a)又は(4b)で表される構造単位を有する共重合体である、請求項1に記載のポリアミド水性分散液。
    Figure 0006629065
    (式中、R 及びR は前記に同じであり、R 及びR は前記に同じであり、nは1〜10の整数を示す。)
    Figure 0006629065
    (式中、R 及びR は前記に同じであり、nは1〜10の整数を示す。)
  3. ポリアミドが、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、6/66共重合ナイロン、6/610共重合ナイロン、6/11共重合ナイロン、6/12共重合ナイロン、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、6/66/610/11/12共重合ナイロン、ダイマー酸系ポリアミド、ナイロン系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載のポリアミド水性分散液。
  4. ポリアミド100質量部に対して、ポリカルボン酸系界面活性剤が0.02〜20質量部含まれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド水性分散液。
  5. 水性分散液中のポリアミドの平均粒子径が0.05〜20μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド水性分散液。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド水性分散液を含有する繊維処理剤。
  7. 請求項6に記載の繊維処理剤を用いて処理された繊維。
  8. 請求項7に記載の繊維、及びマトリックス樹脂を含有する、繊維強化樹脂組成物。
  9. 請求項8に記載の繊維強化樹脂組成物を含む複合化材料。
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