本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。また、本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。
また、本明細書中で「質量」との表現がある場合は、従来一般に重さの単位として慣用されている「重量」と読み替えても良い。
≪水硬性組成物≫
本発明の水硬性組成物は、ポゾラン反応誘発性物質、ポゾラン活性物質、プロトン非結合型カチオン性化合物を含む。本発明の水硬性組成物に含まれるポゾラン反応誘発性物質は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。本発明の水硬性組成物に含まれるポゾラン活性物質は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。本発明の水硬性組成物に含まれるプロトン非結合型カチオン性化合物は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
フライアッシュなどのポゾラン活性物質を、モルタルやコンクリートの混和剤として使用した場合、該ポゾラン活性物質に含まれるガラス状のシリカやアルミナが、セメントなどのポゾラン反応誘発性物質の水和によって生成される水酸化カルシウムと徐々に反応して、カルシウムシリケート水和物等を生成する。このような反応をポゾラン反応と呼び、生成された水和物は、セメントなどのポゾラン反応誘発性物質の水和生成物と類似した化合物となり、モルタルやコンクリートの耐久性や水密性を高め得る。
ポゾラン反応誘発性物質とは、水酸化カルシウム、水酸化カルシウム発生物質であり、具体的には、好ましくは、セメント、消石灰、生石灰、石膏から選ばれる少なくとも1種である。本発明の効果発現においては、ポゾラン反応誘発性物質として、特に好ましくは、セメントである。セメントとしては、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。
ポゾラン活性物質とは、シリカやアルミナを含む物質であり、具体的には、好ましくは、フライアッシュ、シリカヒューム、メタカオリン、高炉スラグから選ばれる少なくとも1種である。本発明の効果発現においては、ポゾラン活性物質として、特に好ましくは、フライアッシュである。
プロトン非結合型カチオン性化合物としては、カチオン元素に水素が結合していないカチオン性化合物であれば、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なプロトン非結合型カチオン性化合物を採用し得る。このようなプロトン非結合型カチオン性化合物としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩などの4級アンモニウム塩、トリアルキルオキソニウム塩などの3級オキソニウム塩、テトラアルキルホスホニウム塩などの4級ホスホニウム塩などが挙げられる。これらのプロトン非結合型カチオン性化合物の中でも、本発明の効果をより発現させ得る点において、好ましくは、4級アンモニウム塩化合物である。
4級アンモニウム塩化合物としては、好ましくは、一般式(a)で表される化合物、一般式(b)で表される化合物、一般式(c)で表される化合物、一般式(d)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である。
一般式(a)において、R1、R2、R3は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルケニル基、アリール基、炭素数1〜8のアルキル基で置換されたアリール基のいずれかを表し、好ましくは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子である。
一般式(a)において、R4、R5は、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基を表し、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
一般式(a)において、lは1以上の整数であり、一般式(a)で表される化合物の重量平均分子量が、好ましくは200〜100000であり、より好ましくは500〜50000であり、さらに好ましくは500〜10000である。
一般式(a)において、Z−は、ハロゲンイオン、COO−、OH−、AlCl4 −、NO2 −、NO3 −、BF4 −、PF6 −、AsF6 −、SbF6 −、NbF6 −、TaF6 −、p−CH3(C6H4)SO3 −、CH3SO3 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)3C−、C4F9SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、(CF3SO2)(CF3CO)N−、(CN)2N−のいずれかを表す。ハロゲンイオンとしては、具体的には、F−、Cl−、Br−、I−などが挙げられる。Z−としては、好ましくは、ハロゲンイオンである。
一般式(b)において、R6、R7は、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
一般式(b)において、mは1以上の整数であり、一般式(b)で表される化合物の重量平均分子量が、好ましくは1000〜1000000であり、より好ましくは5000〜500000であり、さらに好ましくは10000〜100000である。
一般式(b)において、Z−は、ハロゲンイオン、COO−、OH−、AlCl4 −、NO2 −、NO3 −、BF4 −、PF6 −、AsF6 −、SbF6 −、NbF6 −、TaF6 −、p−CH3(C6H4)SO3 −、CH3SO3 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)3C−、C4F9SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、(CF3SO2)(CF3CO)N−、(CN)2N−のいずれかを表す。ハロゲンイオンとしては、具体的には、F−、Cl−、Br−、I−などが挙げられる。Z−としては、好ましくは、ハロゲンイオンである。
一般式(c)において、R8は、水素原子、メチル基のいずれかを表す。
一般式(c)において、Yは、酸素原子、−NH−のいずれかを表す。
一般式(c)において、Xは、炭素数2〜6のアルキレン基を表す。
一般式(c)において、R9、R10、R11は、それぞれ、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルケニル基、アリール基、炭素数1〜8のアルキル基で置換されたアリール基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基、−CH2CH(R12)−(AO)pHのいずれかを表し、R12は、水素原子、メチル基のいずれかを表し、Aは、炭素数2〜3のアルキレン基を表す。一般式(c)において、R9、R10、R11は、それぞれ、好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のアルキル基で置換されたアリール基である。
一般式(c)において、nは1以上の整数であり、一般式(c)で表される化合物の重量平均分子量が、好ましくは1000〜500000であり、より好ましくは5000〜100000であり、さらに好ましくは5000〜50000である。
一般式(c)において、Z−は、ハロゲンイオン、COO−、OH−、AlCl4 −、NO2 −、NO3 −、BF4 −、PF6 −、AsF6 −、SbF6 −、NbF6 −、TaF6 −、p−CH3(C6H4)SO3 −、CH3SO3 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)3C−、C4F9SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、(CF3SO2)(CF3CO)N−、(CN)2N−のいずれかを表す。ハロゲンイオンとしては、具体的には、F−、Cl−、Br−、I−などが挙げられる。Z−としては、好ましくは、ハロゲンイオンである。
一般式(d)において、R13、R14、R15、R16は、それぞれ、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルケニル基、アリール基、炭素数1〜8のアルキル基で置換されたアリール基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基、−CH2CH(R12)−(AO)pHのいずれかを表し、R12は、水素原子、メチル基のいずれかを表し、Aは、炭素数2〜3のアルキレン基を表す。一般式(d)において、R13、R14、R15、R16は、それぞれ、好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のアルキル基で置換されたアリール基である。
一般式(d)において、Z−は、ハロゲンイオン、COO−、OH−、AlCl4 −、NO2 −、NO3 −、BF4 −、PF6 −、AsF6 −、SbF6 −、NbF6 −、TaF6 −、p−CH3(C6H4)SO3 −、CH3SO3 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)3C−、C4F9SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、(CF3SO2)(CF3CO)N−、(CN)2N−のいずれかを表す。ハロゲンイオンとしては、具体的には、F−、Cl−、Br−、I−などが挙げられる。Z−としては、好ましくは、ハロゲンイオンである。
本発明の水硬性組成物において、ポゾラン反応誘発性物質、ポゾラン活性物質、プロトン非結合型カチオン性化合物の合計量100重量部に対する、該ポゾラン反応誘発性物質の含有量は、好ましくは10質量部〜90質量部であり、より好ましくは20質量部〜80質量部であり、さらに好ましくは30質量部〜70質量部であり、特に好ましくは40質量部〜60質量部である。ポゾラン反応誘発性物質、ポゾラン活性物質、プロトン非結合型カチオン性化合物の合計量100重量部に対する、該ポゾラン反応誘発性物質の含有量を上記範囲内に調整することにより、硬化過程での発熱抑制を十分に行うことが可能となり、ひずみの少ない硬化物を得ることができると同時に、初期強度を向上させることができる。
本発明の水硬性組成物において、ポゾラン反応誘発性物質、ポゾラン活性物質、プロトン非結合型カチオン性化合物の合計量100重量部に対する、該ポゾラン活性物質の含有量は、好ましくは10質量部〜90質量部であり、より好ましくは20質量部〜80質量部であり、さらに好ましくは30質量部〜70質量部であり、特に好ましくは40質量部〜60質量部である。ポゾラン反応誘発性物質、ポゾラン活性物質、プロトン非結合型カチオン性化合物の合計量100重量部に対する、該ポゾラン活性物質の含有量を上記範囲内に調整することにより、硬化過程での発熱抑制を十分に行うことが可能となり、ひずみの少ない硬化物を得ることができると同時に、初期強度を向上させることができる。
本発明の水硬性組成物において、ポゾラン反応誘発性物質とポゾラン活性物質の質量比(ポゾラン反応誘発性物質/ポゾラン活性物質)は、好ましくは10/90〜90/10であり、より好ましくは20/80〜80/20であり、さらに好ましくは30/70〜70/30であり、特に好ましくは40/60〜60/40である。ポゾラン反応誘発性物質とポゾラン活性物質の質量比(ポゾラン反応誘発性物質/ポゾラン活性物質)を上記範囲内に調整することにより、硬化過程での発熱抑制を十分に行うことが可能となり、ひずみの少ない硬化物を得ることができると同時に、初期強度を向上させることができる。
本発明の水硬性組成物において、ポゾラン反応誘発性物質、ポゾラン活性物質、プロトン非結合型カチオン性化合物の合計量100重量部に対する、該プロトン非結合型カチオン性化合物の含有量は、好ましくは0.0001質量部〜5.0質量部であり、より好ましくは0.001質量部〜4.0質量部であり、さらに好ましくは0.01質量部〜2.0質量部であり、特に好ましくは0.05質量部〜1.0質量部である。ポゾラン反応誘発性物質、ポゾラン活性物質、プロトン非結合型カチオン性化合物の合計量100重量部に対する、該プロトン非結合型カチオン性化合物の含有量を上記範囲内に調整することにより、水硬性組成物を型枠に充填して硬化させる際、初期強度が十分に向上するので、脱型時間の遅延を抑制することができ、施工期間の延長を防ぐことができる。
本発明の水硬性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含んでいても良い。このようなその他の成分としては、例えば、水、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)などの任意の適切な骨材、水硬性材料分散剤、任意の適切な他のセメント添加剤(材)などが挙げられる。これらの中でも、本発明の水硬性組成物は、好ましくは、水、水硬性材料分散剤を含む。
骨材としては、例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、このような骨材として、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。骨材は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
水硬性材料分散剤としては、具体的には、好ましくは、ポリカルボン酸系共重合体、スルホン酸系分散剤から選ばれる少なくとも1種である。水硬性材料分散剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
本発明の水硬性組成物が水硬性材料分散剤を含む場合、本発明の水硬性組成物中の水硬性材料分散剤の含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、本発明の水硬性組成物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.02質量部〜5質量部であり、さらに好ましくは0.05質量部〜3質量部である。このような含有割合とすることにより、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記含有割合が0.01質量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10質量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
ポリカルボン酸系共重合体は、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含む。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)とは、具体的には、下記式で表される。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とは、具体的には、下記式で表される。
一般式(1)および一般式(I)中、R1およびR2は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1)および一般式(I)中、R3は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1〜30のアルケニル基、炭素原子数1〜30のアルキニル基、炭素原子数6〜30の芳香族基などが挙げられる。本発明の効果を一層発現させ得る点で、R3は、好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基である。
一般式(1)および一般式(I)中、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。また、AOが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、AOの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であっても良い。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましい。
一般式(1)および一般式(I)中、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜500であり、好ましくは2〜500であり、より好ましくは5〜500であり、さらに好ましくは10〜300であり、特に好ましくは15〜200であり、最も好ましくは20〜100である。
一般式(1)および一般式(I)中、xは0〜2の整数である。
一般式(1)および一般式(I)中、yは0または1である。y=0の場合、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、エーテル構造を有する単量体(不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a1))となる。y=1の場合、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、エステル構造を有する単量体(不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体(a1))となる。本発明の効果をより発現させ得る点で、y=0であることが好ましい。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)としては、例えば、炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコールなどの炭素数3〜20の不飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコールなどの炭素数3〜20の不飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;シクロヘキサノールなどの炭素数3〜20の脂環式アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;シクロヘキサノールなどの炭素数3〜20の脂環式アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数6〜20の芳香族アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数6〜20の芳香族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;などが挙げられる。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルコキシポリアルキレングリコール類のエステル;ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オールのいずれかにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物;であり、より好ましくは、3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物である。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
一般式(2)および一般式(II)中、R4〜R6は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CH2)zCOOM基を表す。−(CH2)zCOOM基は−COOX基または他の−(CH2)zCOOM基と無水物を形成していても良い。zは0〜2の整数である。
Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
Xは、水素原子、メチル基、エチル基、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体の無水物またはこれらの塩;などが挙げられる。ここでいう塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。有機アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩などが挙げられる。有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸であり、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは80質量%〜100質量%であり、特に好ましくは90質量%〜100質量%であり、最も好ましくは95質量%〜100質量%である。ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合を上記範囲内に調整すれば、少量の水でもより十分な流動性が発現できる水硬性組成物とすることができる。
ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合は、例えば、該ポリカルボン酸系共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる各種単量体の使用量に基づいて算出される該各種単量体由来の構造単位の含有割合をもって、ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合としても良い。すなわち、ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる全単量体成分中の、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)と不飽和カルボン酸系単量体(b)との合計の質量の含有割合を、ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合として扱って良い。
ポリカルボン酸系共重合体中には、構造単位(I)と構造単位(II)以外に、他の単量体(c)由来の構造単位(III)を含んでいても良い。
単量体(c)としては、単量体(a)、単量体(b)と共重合可能な単量体であれば、適宜選択して使用できる。単量体(c)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)の含有比率は、質量比(質量%)で、好ましくは、(I):(II)=55〜90:10〜45であり、より好ましくは、(I):(II)=70〜90:10〜30であり、さらに好ましくは、(I):(II)=75〜85:15〜25であり、特に好ましくは、(I):(II)=80〜85:15〜20である。
ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)と構造単位(III)の含有比率は、質量比(質量%)で、好ましくは、(I)/(II)/(III)=55〜90/10〜45/0〜35であり、より好ましくは、(I)/(II)/(III)=70〜90/10〜30/0〜20であり、さらに好ましくは、(I)/(II)/(III)=75〜85/15〜25/0〜10であり、特に好ましくは、(I)/(II)/(III)=80〜85/15〜20/0〜5である。
なお、ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位の含有比率を求める場合には、構造単位がカルボキシル基を有する場合には、それが完全に中和されたものとして計算を行う。
ポリカルボン酸系共重合体の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算による質量平均分子量(Mw)として、好ましくは1000〜500000であり、より好ましくは3000〜100000であり、さらに好ましくは5000〜50000であり、特に好ましくは5000〜15000である。ポリカルボン酸系共重合体の質量平均分子量(Mw)が上記範囲内に収まることより、少量の水でもより十分な流動性が発現できる水硬性組成物とすることができる。
ポリカルボン酸系共重合体は、任意の適切な方法によって製造し得る。ポリカルボン酸系共重合体は、好ましくは、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)と不飽和カルボン酸系単量体(b)とを含む単量体成分の重合を重合開始剤の存在下で行って製造し得る。
ポリカルボン酸系共重合体の製造に用い得る不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)、不飽和カルボン酸系単量体(b)、および、必要に応じて、他の単量体(c)の使用量は、ポリカルボン酸系共重合体を構成する全構造単位中の各単量体由来の構造単位の割合が前述したものとなるように、適宜調整すればよい。好ましくは、重合反応が定量的に進行するとして、前述したポリカルボン酸系共重合体を構成する全構造単位中の各単量体由来の構造単位の割合と同じ割合で、各単量体を用いれば良い。
不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、任意の適切な方法によって合成し得る。例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加することによって合成し得る。
単量体成分の重合は、任意の適切な方法で行い得る。例えば、溶液重合、塊状重合が挙げられる。溶液重合の方式としては、例えば、回分式、連続式が挙げられる。溶液重合で使用し得る溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等が挙げられる。
単量体成分の重合を行う場合は、重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2′−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤;等を使用し得る。これらの重合開始剤は、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。これらの併用形態の中でも、過酸化水素とL−アスコルビン酸(塩)等の促進剤との組み合わせが好ましい。これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物、またはケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合、または、塊状重合を行う場合には、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;などを用い得る。このような重合開始剤を用いる場合、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤または重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
単量体成分の重合の際の反応温度としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められる。このような反応温度としては、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上であり、また、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
単量体成分の反応容器への投入方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。このような投入方法としては、例えば、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割若しくは連続投入する方法、一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割若しくは連続投入する方法等が挙げられる。具体的には、単量体(a)の全量と単量体(b)の全量とを反応容器に連続投入する方法、単量体(a)の一部を反応容器に初期に投入し、単量体(a)の残りと単量体(b)の全量とを反応容器に連続投入する方法、単量体(a)の一部と単量体(b)の一部とを反応容器に初期に投入し、単量体(a)の残りと単量体(b)の残りとをそれぞれ反応容器に交互に数回に分けて分割投入する方法などが挙げられる。さらに、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えて、各単量体の単位時間あたりの投入質量比を連続的又は段階的に変化させることにより、構造単位(I)と構造単位(II)との比率が異なる2種以上の共重合体を重合反応中に同時に合成するようにしてもよい。なお、重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでも良く、反応容器へ滴下しても良く、また目的に応じてこれらを組み合わせても良い。
単量体成分の重合の際には、好ましくは、連鎖移動剤を用い得る。連鎖移動剤を用いると、得られる共重合体の分子量調整が容易となる。連鎖移動剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を用いても良い。
連鎖移動剤としては、任意の適切な連鎖移動剤を採用し得る。このような連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;などが挙げられる。
製造されたポリカルボン酸系共重合体は、そのままでも本発明の水硬性組成物に含まれ得るポリカルボン酸系共重合体として用いることもできるが、取り扱い性の観点から、ポリカルボン酸系共重合体の製造後の反応溶液のpHを5以上に調整しておくことが好ましい。しかしながら、重合率向上のため、pH5未満で重合を行い、重合後にpHを5以上に調整することが好ましい。pHの調整は、例えば、1価金属または2価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;などのアルカリ性物質を用いて行うことができる。
製造されたポリカルボン酸系共重合体は、製造によって得られた溶液に対して、必要に応じて、濃度調整を行うこともできる。
製造されたポリカルボン酸系共重合体は、溶液の形態でそのまま使用しても良いし、あるいは、カルシウム、マグネシウム等の2価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末等の無機粉体に担持して乾燥させたりすることにより粉体化して使用しても良い。
スルホン酸系分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の、芳香族アミノスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;ポリスチレンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;などが挙げられる。スルホン酸系分散剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
他のセメント添加剤(材)としては、例えば、以下の(1)〜(12)に例示するような他のセメント添加剤(材)が挙げられる。このような他のセメント添加剤(材)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
(1)水溶性高分子物質:メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類;ポリアクリルアミド等。
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)硬化遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸もしくはその塩;糖及び糖アルコール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸及びその誘導体等。
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂から得られる脂肪酸由来のアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)等のポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
(6)オキシアルキレン系以外の消泡剤:鉱油系、油脂系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系、アルコール系、アミド系、リン酸エステル系、金属石鹸系、シリコーン系等の消泡剤。
(7)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
(9)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(10)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(11)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
(12)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。
本発明の水硬性組成物において、その1m3あたりの単位水量および水/(フライアッシュ+セメント)比としては、任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が100kg/m3〜200kg/m3であり、水/(フライアッシュ+セメント)比(質量比)=0.1〜0.7であり、より好ましくは、単位水量が120kg/m3〜180kg/m3であり、水/(フライアッシュ+セメント)比(質量比)=0.3〜0.6である。
本発明の水硬性組成物は、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり得る。本発明のセメント組成物は、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効であり得る。
本発明の水硬性組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調整すれば良い。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
≪フライアッシュ含有水硬性組成物の初期強度向上方法、フライアッシュ含有水硬性組成物用添加剤≫
本発明のフライアッシュ含有水硬性組成物の初期強度向上方法は、フライアッシュ含有水硬性組成物の初期強度を向上させる方法であって、該フライアッシュ含有水硬性組成物に、水硬性材料分散剤と4級アンモニウム塩化合物を含む添加剤を添加する。このような方法により、フライアッシュ含有水硬性組成物の初期強度を向上させることができる。
フライアッシュ含有水硬性組成物は、好ましくは、フライアッシュ、セメント、水を含み、必要に応じて、骨材をさらに含む。
フライアッシュ含有水硬性組成物中の、フライアッシュとセメントの合計量に対するフライアッシュの含有割合は、質量割合で、好ましくは10%〜90%であり、より好ましくは20%〜80%であり、さらに好ましくは30%〜70%であり、特に好ましくは35%〜65%である。
フライアッシュ含有水硬性組成物の、その1m3あたりの単位水量および水/(フライアッシュ+セメント)比としては、任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が100kg/m3〜200kg/m3であり、水/(フライアッシュ+セメント)比(質量比)=0.1〜0.7であり、より好ましくは、単位水量が120kg/m3〜180kg/m3であり、水/(フライアッシュ+セメント)比(質量比)=0.3〜0.6である。
本発明のフライアッシュ含有水硬性組成物の初期強度向上方法においては、フライアッシュ含有水硬性組成物に、水硬性材料分散剤と4級アンモニウム塩化合物を含む添加剤を添加する。このような添加剤は、好ましくは、水硬性材料分散剤と4級アンモニウム塩化合物を含み、該4級アンモニウム塩化合物の含有割合が0.1質量%〜40質量%であり、このような添加剤は、本発明のフライアッシュ含有水硬性組成物用添加剤である。
すなわち、本発明のフライアッシュ含有水硬性組成物の初期強度向上方法においては、フライアッシュ含有水硬性組成物に、好ましくは、本発明のフライアッシュ含有水硬性組成物用添加剤を添加する。
水硬性材料分散剤と4級アンモニウム塩化合物を含む添加剤において、4級アンモニウム塩化合物の含有割合は、好ましくは0.1質量%〜40質量%であり、より好ましくは1.0質量%〜20質量%であり、さらに好ましくは2.0質量%〜15質量%であり、特に好ましくは5.0質量%〜10質量%である。水硬性材料分散剤と4級アンモニウム塩化合物を含む添加剤における4級アンモニウム塩化合物の含有割合を上記範囲内に調整することにより、フライアッシュ含有水硬性組成物の初期強度を効果的に向上させることができる。
水硬性材料分散剤と4級アンモニウム塩化合物を含む添加剤において、水硬性材料分散剤の含有割合は、好ましくは1質量%〜50質量%であり、より好ましくは5質量%〜40質量%であり、さらに好ましくは10質量%〜30質量%であり、特に好ましくは15質量%〜25質量%である。水硬性材料分散剤と4級アンモニウム塩化合物を含む添加剤における水硬性材料分散剤の含有割合を上記範囲内に調整することにより、フライアッシュ含有水硬性組成物の初期強度を効果的に向上させることができる。
水硬性材料分散剤と4級アンモニウム塩化合物を含む添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有し得る。
本発明のフライアッシュ含有水硬性組成物用添加剤において、4級アンモニウム塩化合物の含有割合は0.1質量%〜40質量%であり、好ましくは1.0質量%〜20質量%であり、より好ましくは2.0質量%〜15質量%であり、さらに好ましくは5.0質量%〜10質量%である。本発明のフライアッシュ含有水硬性組成物用添加剤における4級アンモニウム塩化合物の含有割合を上記範囲内に調整することにより、フライアッシュ含有水硬性組成物の初期強度を効果的に向上させることができる。
本発明のフライアッシュ含有水硬性組成物用添加剤において、水硬性材料分散剤の含有割合は、好ましくは1質量%〜50質量%であり、より好ましくは5質量%〜40質量%であり、さらに好ましくは10質量%〜30質量%であり、特に好ましくは15質量%〜25質量%である。本発明のフライアッシュ含有水硬性組成物用添加剤における水硬性材料分散剤の含有割合を上記範囲内に調整することにより、水硬性組成物の流動性を改善させることができ、且つ、フライアッシュ含有水硬性組成物の初期強度を効果的に向上させることができる。
本発明のフライアッシュ含有水硬性組成物用添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有し得る。
発明のフライアッシュ含有水硬性組成物の初期強度向上方法において、フライアッシュ含有水硬性組成物への、水硬性材料分散剤と4級アンモニウム塩化合物を含む添加剤の添加量は、フライアッシュとセメントの合計量に対して、質量割合で、好ましくは0.01%〜10%であり、より好ましくは0.05%〜5%であり、さらに好ましくは1.0%〜3%であり、特に好ましくは1.5%〜2.5%である。水硬性材料分散剤と4級アンモニウム塩化合物を含む添加剤のフライアッシュ含有水硬性組成物への添加量を上記範囲内に調整することにより、フライアッシュ含有水硬性組成物の初期強度を効果的に向上させることができる。
水硬性材料分散剤、4級アンモニウム塩化合物については、前述の説明を援用し得る。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は質量基準である。
<フロー値の測定>
JIS R−5201に規定のフロー試験測定方法に準じて、フロー値を測定した。
<圧縮強度の測定>
実施例、比較例で調整した水硬性組成物を、直径50mm、高さ100mmの円筒型に充填し、30℃で24時間放置した後に脱型し、圧縮強度測定用供試体を作製し、その圧縮強度を、土木学会基準JSCE−G 505−1999に準じて、圧縮試験機を用いて測定した。
〔製造例1〕:ポリカルボン酸系共重合体の製造
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水209.0gを仕込み、撹拌下に反応装置を窒素置換し、58℃に昇温した。次に、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシド(EO)を平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル(MBO−50)444.8gをイオン交換水111.2gで溶解させた水溶液と、アクリル酸85.2gをイオン交換水43.1gで希釈した水溶液とを5時間かけて滴下した。それと同時に、イオン交換水48.9gにL−アスコルビン酸0.94g及び3−メルカプトプロピオン酸8.0gを溶解させた水溶液並びにイオン交換水44.0gに過硫酸アンモニウム4.9gを溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、58℃にて1時間攪拌を続けて重合反応を終了し、質量平均分子量(Mw)が9200のポリカルボン酸系共重合体の水溶液を得た。
〔製造例2〕:モルタル配合
表1に示すように、水、セメント、フライアッシュ(FA)、砂を配合し、モルタルを調製した。
〔実施例1〕
表2に示すように、製造例2で得られた配合1のモルタル、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体、Mw=8000のポリ(2−ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロライド)を、モルタルミキサーに投入し、水硬性組成物(1)を得た。
結果を表2に示した。
また、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体、Mw=8000のジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物を、表2に示す配合割合で予め混合して添加剤(1)とし、モルタルミキサー中において、この添加剤(1)を、表2に示す配合割合で、製造例2で得られた配合1のモルタルに添加することによっても、水硬性組成物(1)が得られた。
〔実施例2〕
表2に示すように配合比率を変えた以外は、実施例1と同様に行い、水硬性組成物(2)を得た。また、添加剤(2)を得た。
結果を表2に示した。
〔実施例3〕
Mw=8000のジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物をMw=500のジメチルアミントリメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物に代え、表2に示すように配合比率を変えた以外は、実施例1と同様に行い、水硬性組成物(3)を得た。また、添加剤(3)を得た。
結果を表2に示した。
〔実施例4〕
表2に示すように、製造例2で得られた配合1のモルタル、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体、Mw=20000のジアリルジメチルアンモニウムクロライドの環化重合物を、モルタルミキサーに投入し、水硬性組成物(4)を得た。
結果を表2に示した。
また、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体、Mw=20000のジアリルジメチルアンモニウムクロライドの環化重合物を予め混合して添加剤(4)とし、モルタルミキサー中において、この添加剤(4)を、製造例2で得られた配合1のモルタルに添加することによっても、水硬性組成物(4)が得られた。
〔実施例5〕
表2に示すように、製造例2で得られた配合1のモルタル、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体、テトラメチルアンモニウムクロライドを、モルタルミキサーに投入し、水硬性組成物(5)を得た。
結果を表2に示した。
また、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体、テトラメチルアンモニウムクロライドを、表2に示す配合割合で予め混合して添加剤(5)とし、モルタルミキサー中において、この添加剤(5)を、表2に示す配合割合で、製造例2で得られた配合1のモルタルに添加することによっても、水硬性組成物(5)が得られた。
〔実施例6〕
テトラメチルアンモニウムクロライドをテトラエチルアンモニウムクロライドに代え、表2に示すように配合比率を変えた以外は、実施例5と同様に行い、水硬性組成物(6)を得た。また、添加剤(6)を得た。
結果を表2に示した。
〔実施例7〕
表2に示すように配合比率を変えた以外は、実施例6と同様に行い、水硬性組成物(7)を得た。また、添加剤(7)を得た。
結果を表2に示した。
〔実施例8〕
テトラエチルアンモニウムクロライドをテトラエチルアンモニウムブロミドに代えた以外は、実施例6と同様に行い、水硬性組成物(8)を得た。また、添加剤(8)を得た。
結果を表2に示した。
〔実施例9〕
テトラエチルアンモニウムクロライドをテトラエチルアンモニウムブロミドに代えた以外は、実施例7と同様に行い、水硬性組成物(9)を得た。また、添加剤(9)を得た。
結果を表2に示した。
〔比較例1〕
Mw=8000のジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物を用いなかった以外は、実施例1と同様に行い、水硬性組成物(C1)を得た。また、添加剤(C1)を得た。
結果を表2に示した。
〔比較例2〕
表2に示すように、製造例2で得られた配合2のモルタル、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体を、モルタルミキサーに投入し、水硬性組成物(C2)を得た。
結果を表2に示した。
また、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体を添加剤(C2)とし、モルタルミキサー中において、この添加剤(C2)を、表2に示す配合割合で、製造例2で得られた配合2のモルタルに添加することによっても、水硬性組成物(C2)が得られた。
〔比較例3〕
表2に示すように、製造例2で得られた配合2のモルタル、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体、Mw=8000のジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物を、モルタルミキサーに投入し、水硬性組成物(C3)を得た。
結果を表2に示した。
また、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体、Mw=8000のジメチルアミンエピクロルヒドリン縮合物を、表2に示す配合割合で予め混合して添加剤(C3)とし、モルタルミキサー中において、この添加剤(C3)を、表2に示す配合割合で、製造例2で得られた配合2のモルタルに添加することによっても、水硬性組成物(C3)が得られた。