以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る走行制御装置について説明する。図1は、本実施形態に係る走行制御装置を示す構成図である。本実施形態に係る走行制御装置100は、図1に示すように、道路検出装置110、障害物検出装置120、自車状態検出装置130、駆動装置140、操舵装置150、および制御装置160を備えている。
道路検出装置110は、自車両が走行する道路に関する各種データを検出する。たとえば、道路検出装置110は、自車両の進行方向前方を撮像するカメラや、自車両の地図上の走行位置を検出するナビゲーション装置などから構成することができる。たとえば、道路検出装置110を構成するカメラは、自車両の走行方向前方を撮像することで、自車両が走行する道路のレーンマークなどを撮像した撮像画像データを、自車両が走行する道路に関するデータとして制御装置160に出力することができる。
障害物検出装置120は、自車両の周辺に存在する障害物に関する各種データを検出する。たとえば、障害物検出装置120は、自車両の周囲を撮像するカメラ、レーザースキャナー、レーダーなどの1種類以上のセンサから構成することができる。障害物検出装置120を構成するカメラ、レーザースキャナー、レーダーなどは、自車両の周囲に存在する障害物の種別、形状、位置などを示す各種データを検出し、検出したデータを制御装置160に出力する。
自車状態検出装置130は、自車両の状態に関する各種データを検出する。たとえば、自車状態検出装置130は、自車両の車速を検出する車速センサ、操舵角を検出する舵角センサ、加速度を検出する加速度センサ、各種車載機器の操作状況を検出する車両コントローラ、自車両の位置や目的地を検出するナビゲーション装置などから構成することができる。自車状態検出装置130により検出された各種データは、自車両の状態を示すデータとして制御装置160に送信される。
駆動装置140は、走行駆動源である電動モータおよび/または内燃機関、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや自動変速機を含む動力伝達装置、および車輪を制動する制動装置などの駆動機構を備える。駆動装置140は、アクセル操作およびブレーキ操作による入力信号、制御装置160から取得した制御信号に基づいてこれら駆動機構の各制御信号を生成し、自車両の加減速を含む走行制御を実行する。駆動装置140に制御情報を送出することにより、自車両の加減速を含む走行制御を自動的に行うことができる。なお、ハイブリッド自動車の場合には、車両の走行状態に応じた電動モータと内燃機関とのそれぞれに出力するトルク配分も駆動装置140に送出される。
操舵装置150は、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられたモータなどのステアリングアクチュエータを備えている。操舵装置150は、ステアリング操作による入力信号に基づいて自車両の転回制御を実行する。また、制御装置160は、車両の各輪の制動量をコントロールすることにより、転回制御を実行することができる。この場合、制御装置160は、各輪の制動量を含む制御情報を操舵装置150へ送出することにより、自車両の転回制御を実行する。
制御装置160は、自車両の走行を制御するためのプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行することで、各機能を実行させる動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備えるコンピュータである。
制御装置160は、ROMに格納したプログラムをCPUにより実行することにより、道路情報を取得する道路情報取得機能と、障害物情報を取得する障害物情報取得機能と、自車情報を取得する自車情報取得機能と、目的地までの経路を探索する経路探索機能と、自車両と障害物との接近度合を算出する接近度合算出機能と、自車両の走行シーンを判定するシーン判定機能と、自車両の走行計画を作成する走行計画作成機能と、走行計画に基づいて自車両の走行を制御する走行制御機能と、を実現する。以下に、制御装置160が備える各機能について説明する。
制御装置160の道路情報取得機能は、道路検出装置110により検出された各種データに基づいて、自車両が走行する道路に関する道路情報を取得する。たとえば、道路情報取得機能は、道路検出装置110を構成するカメラが撮像した自車両の走行方向前方のレーンマークを含む道路の画像データを解析することで、自車両が走行する道路の種別、形状、領域などの道路情報を取得することができる。なお、道路情報取得機能による道路情報の取得は所定の間隔で繰り返し行われる。
制御装置160の障害物情報取得機能は、障害物検出装置120による検出データに基づいて、自車両の周辺に存在する障害物に関する障害物情報を取得する。たとえば、障害物情報取得機能は、障害物検出装置120を構成するカメラから自車両の周囲を撮像した画像データや、レーザースキャナー、レーダーなどの検出データに基づいて、自車両の周囲に存在する障害物の種別、形状、位置などの障害物情報を取得することができる。なお、障害物情報取得機能による障害物情報の取得は所定の間隔で繰り返し行われる。
制御装置160の自車情報取得機能は、自車状態検出装置130が検出した各種データに基づいて、自車両の状態に関する自車情報を取得する。たとえば、自車情報取得機能は、自車状態検出装置130を構成する車速センサが検出した自車両の車速、舵角センサが検出した自車両の操舵角、加速度センサが検出した加速度、車両コントローラが検出した車載機器の操作信号、ナビゲーション装置が検出した自車両の位置を示す各種データに基づいて、自車両の車速、操舵角、加速度、車載機器の操作状況、位置などの自車情報を取得することができる。なお、自車情報取得機能による自車情報の取得は所定の間隔で繰り返し行われる。
制御装置160の経路探索機能は、目的地までの走行経路を探索する。本実施形態では、ユーザがナビゲーション装置等を介して目的地を入力することができる。ユーザが目的地を入力した場合、経路探索機能は、制御装置160のROMに記憶された地図情報を参照し、ユーザが入力した目的地と、自車情報取得機能により取得された自車両の位置情報とに基づいて、目的地まで走行経路を探索し、自車両の走行経路として設定する。
制御装置160の接近度合算出機能は、自車両と障害物(たとえば、四輪車、二輪車、歩行者、壁、ガードレールなど)との接近度合を算出する。たとえば、接近度合算出機能は、自車両の位置P1および車速V1を含む自車情報と、障害物の位置P2を含む障害物情報とに基づいて、障害物の車速V3、自車両から障害物までの距離L、および、障害物に対する自車両の相対車速V2を算出する。さらに、接近度合算出機能は、算出した自車両から障害物までの距離Lおよび障害物に対する自車両の相対車速V2に基づいて、下記式(1),(2)に示すように、THW(Time-Headway)およびTTC(Time To Contact)を算出する。そして、接近度合算出機能は、算出したTHWおよびTTCに基づいて、下記式(3)に示すように、自車両と障害物との接近度合Dを算出することができる。なお、下記式(3)におけるαおよびβは所定の定数である。
THW=自車両から障害物までの距離L/自車両の車速V1 ・・・(1)
TTC=自車両から障害物までの距離L/障害物に対する自車両の相対車速V2 ・・・(2)
接近度合D=α/THW+β/TTC ・・・(3)
なお、自車両と障害物との接近度合Dは、運転者が、自車両が障害物に接近していると感じる程度を示す指標となり、接近度合Dが高いほど、運転者は自車両が障害物に接近していると感じると評価することができる。上記式(3)に示すように、THWが短いほど、または、TTCが短いほど、自車両が障害物に接近するまでの時間は短くなり、接近度合Dは高くなる。また、自車両と障害物との接近度合Dの算出方法は、上記式(3)に示す方法に限定されず、周知の方法を用いることもできる。さらに、本実施形態において、接近度合算出機能は、自車両と障害物との接近度合Dを繰り返し算出するが、自車両の周辺で移動障害物を検出した場合のみ接近度合Dを繰り返し算出する構成としてもよいし、あるいは、自車両が交差点を走行する場合のみ接近度合Dを繰り返し算出する構成としてもよい。
制御装置160のシーン判定機能は、自車両の走行シーンを判定する。たとえば、図2(A)に示す場面において、シーン判定機能は、道路情報、障害物情報、および自車情報に基づいて、自車両の前方の障害物が対向車両であり、かつ、自車両と対向車両とが交差点においてすれ違うと判断できるため、自車両の走行シーンは、自車両と対向車両とが交差点においてすれ違うシーンとであると判定することができる。また、図3(A)に示す場面において、シーン判定機能は、道路情報、障害物情報、および自車情報に基づいて、自車両が走行する道路が片側2車線以上の道路であり、自車両の前方の障害物が自車両の走行する車線に隣接する隣接車線を走行する先行車両であり、かつ、当該先行車両が自車両の走行車線に車線変更するものと判断できるため、自車両の走行シーンは、先行車両が自車両の走行車線に車線変更するシーンであると判定することができる。なお、図3(A)に示す場面において、シーン判定機能は、先行車両の方向指示器の点滅などを検出することで、先行車両が自車両の走行する車線に車線変更すると判断することができる。
さらに、シーン判定機能は、判定した自車両の走行シーンが、移動障害物に所定の行動を促すことで、自車両と移動障害物との接近を抑制することができる走行シーンであるか否かを判断する。たとえば、図2(A)に示す走行シーンでは、対向車両(移動障害物)が交差点を右折する可能性があり、対向車両を先に右折させることで、自車両と対向車両との接近を抑制することができる。また、図3(A)に示す走行シーンでは、先行車両(移動障害物)が自車線に車線変更する可能性があり、自車両と先行車両との車間距離を大きくとり、先行車両に車線変更させることで、自車両と先行車両との接近を抑制することができる。なお、本実施形態では、移動障害物に所定の行動を促すことで、自車両と移動障害物との接近を抑制することができる走行シーンの情報が、制御装置160のROMに予め記憶されている。そのため、シーン判定機能は、制御装置160のROMを参照して、自車両の走行シーンが、移動障害物に所定の行動を促すことで、自車両と移動障害物との接近を抑制することができる所定の走行シーンであるか否かを判定することができる。
制御装置160の走行計画作成機能は、自車両が走行する際の目標軌跡および目標速度を含む走行計画を作成する。具体的には、走行計画作成機能は、自車両が障害物(たとえば、四輪車、二輪車、歩行者、壁、ガードレールなど)に接近する可能性の高い領域を回避領域として設定し、回避領域を回避するための目標軌跡と目標速度とを、自車両の走行計画として作成する。
たとえば、走行計画作成機能は、回避領域を設定するために、接近度合算出機能により算出された自車両と障害物との接近度合を、障害物の基準位置における接近度合とし、障害物から離れるほど接近度合が小さくなるように、2次元平面上に接近度合を分布する。なお、走行計画作成機能は、障害物の種別(たとえば、四輪車、二輪車、歩行者、壁、ガードレールなど)や自車両と障害物との相対速度などに基づいて、2次元平面上に分布した各接近度合の大きさを補正することができる。たとえば、障害物が四輪自動車である場合には、障害物が歩行者または静止物である場合よりも、障害物の進行方向前方の接近度合を高くすることができる。また、自車両に対する障害物の相対速度が速いほど、障害物の進行方向前方の度合を高くすることもできる。そして、走行計画作成機能は、2次元平面上に分布した接近度合が所定値以上となる領域を回避領域として設定することができる。
そして、走行計画作成機能は、自車両が設定した回避領域を回避できるように、自車両が走行する目標軌跡と、目標軌跡上の各位置における目標速度および目標操舵角とを、走行計画として作成する。なお、自車両周辺の状況は刻々と変化するため、走行計画作成機能による自車両の走行計画の作成は、最新の道路情報、障害物情報、および自車情報に基づいて、所定間隔で繰り返し行われる。
さらに、本実施形態において、走行計画作成機能は、自車両の走行シーンが、移動障害物に所定の行動を促すことにより、自車両と移動障害物との接近を抑制することができる走行シーンである場合には、移動障害物に所定の行動を促すように、自車両の走行計画を作成する。なお、移動障害物に所定の行動を促すための走行計画の作成方法については後述する。
制御装置160の走行制御機能は、走行計画作成機能により作成された走行計画に基づいて、自車両の走行を制御する。具体的には、走行制御機能は、走行計画で決定された目標軌跡の各位置を目標車速および目標操舵角で走行するように、駆動装置140および操舵装置150の目標制御値を算出する。そして、走行制御機能は、算出した目標制御値を駆動装置140および操舵装置150に出力することで、自車両が目標軌跡を目標車速で走行するように、自車両の走行を制御することができる。
なお、走行計画作成機能は、最新の道路情報、障害物情報、自車情報に基づいて、走行計画を所定間隔で繰り返し作成している。そして、走行制御機能は、新たに走行計画が作成された場合には、新たに作成された走行計画に基づいて自車両の走行を制御する。これにより、移動障害物が新たに現れた場合でも、新たに現れた移動障害物を回避するように走行計画が作成され、この走行計画に基づいて、車速や操舵角などの制御が行われる。その結果、新たに移動障害物が現れた場合でも、移動障害物を適切に回避することができる。
次いで、図4を参照して、本実施形態に係る走行制御処理を説明する。図4は、本実施形態に係る走行制御処理を示すフローチャートである。
ステップS101では、制御装置160により、各種情報の取得が行われる。具体的には、制御装置160の自車情報取得機能により、自車状態検出装置130が検出した自車両の車速、操舵角、位置などの自車情報が取得される。また、制御装置160の障害物情報取得機能により、障害物検出装置120の検出結果が取得され、取得された障害物検出装置120の検出結果に基づいて、自車両の周辺に存在する障害物の形状、位置、自車両までの距離、自車両に対する相対速度などの障害物情報が取得される。さらに、制御装置160の道路情報取得機能により、道路検出装置110の検出結果が取得され、取得された道路検出装置110の検出結果に基づいて、自車両が走行する道路の道路情報が取得される。なお、障害物情報取得機能は、自車両の周囲に存在する障害物の形状や相対速度に基づいて、障害物が移動障害物であるか否かを判断し、障害物が移動障害物である場合には、移動障害物である旨の情報を障害物情報として取得することもできる。
ステップS102では、制御装置160の走行計画作成機能により、自車両と障害物とが接近する可能性の高い領域が回避領域として設定される。そして、ステップS103では、制御装置160の走行計画作成機能により、ステップS102で設定された回避領域に基づいて、自車両の走行計画の作成が行われる。たとえば、走行計画作成機能は、ステップS102で設定された回避領域を回避するように、目標軌跡および目標軌跡上の各位置における目標速度よび目標操舵角を、自車両の走行計画として決定する。
ステップS104では、制御装置160のシーン判定機能により、ステップS101で取得された道路情報、自車情報、および障害物情報に基づいて、自車両の走行シーンの判定が行われる。たとえば、図2(A)に示す場面において、シーン判定機能は、自車両の走行シーンを、自車両と対向車両とが交差点においてすれ違うシーンであると判定することができる。また、図3(A)に示す場面において、シーン判定機能は、自車両の走行シーンを、先行車両が自車両の走行車線に車線変更するシーンであると判定することができる。
ステップS105では、制御装置160の走行計画作成機能により、ステップS104で判定された走行シーンにおいて、自車両と移動障害物との接近度合が所定の第1閾値以上となる場合があるか否かの判断が行われる。たとえば、走行計画作成機能は、ステップS104で判定された走行シーンにおいて、移動障害物が移動する移動パターンを特定し、移動障害物が各移動パターンで移動した場合の、自車両と移動障害物との接近度合をシミュレーションにより算出する。そして、走行計画作成機能は、算出した各移動パターンにおける自車両と移動障害物との接近度合が、所定の第1閾値以上となる場合があるか否かを判定する。
たとえば、図2(A)に示す走行シーンにおいて、走行計画作成機能は、移動障害物である対向車両の移動パターンとして、対向車両がそのまま直進する移動パターンと、対向車両が右折する移動パターンの2つの移動パターンを特定することができる。そして、走行計画作成機能は、シミュレーションにより、対向車両がそのまま直進する移動パターン、および、対向車両が交差点を右折する移動パターンのそれぞれについて、自車両と対向車両との接近度合を予測する。そして、走行計画作成機能は、いずれか1つ以上の移動パターンにおいて、自車両と対向車両との接近度合が所定の第1閾値以上となる場合がある場合には、ステップS107に進み、一方、いずれの移動パターンにおいても、自車両と対向車両との接近度合が所定の第1閾値以上とならない場合には、ステップS106に進む。
また、図3(A)に示す走行シーンにおいて、走行計画作成機能は、移動障害物である先行車両の移動パターンとして、先行車両がそのまま車線変更せずに直進する移動パターンと、先行車両が自車両の車線に車線変更する移動パターンとを特定することができる。そして、走行計画作成機能は、シミュレーションにより、先行車両がそのまま車線変更せずに直進する移動パターン、および、先行車両が自車両の車線に車線変更する移動パターンのそれぞれについて、自車両と先行車両との接近度合を予測する。そして、走行計画作成機能は、いずれか1つ以上の移動パターンについて、自車両と先行車両との接近度合が所定の第1閾値以上となる場合がある場合には、ステップS107に進み、一方、いずれの移動パターンにおいても、自車両と先行車両との接近度合が所定の第1閾値以上とならない場合には、ステップS106に進む。
なお、走行計画作成機能は、移動障害物が移動可能な移動パターンを、走行シーンごとに、制御装置160のROMに予め記憶しておくことで、シーン判定機能により判定された走行シーンに基づいて、移動障害物が移動可能な移動パターンをROMから読み出し、特定することができる。また、走行計画作成機能は、接近度合算出機能により、自車両と移動障害物との接近度合を算出させることで、移動障害物が各移動パターンで移動した場合の、自車両と移動障害物との接近度合を予測することができる。
ステップS106では、制御装置160の走行制御機能により、ステップS103で作成された走行計画に基づいて、自車両の走行制御が行われる。具体的には、走行制御機能は、自車両が走行計画で決定された目標軌跡を目標速度で走行するように、目標軌跡上の各位置における目標速度および目標操舵角に対応する目標制御値を算出し、駆動装置140および操舵装置150に出力する。これにより、ステップS103で作成した走行計画の目標軌跡および目標速度で自車両を走行させることができる。
このように、自車両と移動障害物との接近度合が所定の第1閾値以上にならない走行シーンにおいては、移動障害物に所定の行動を促すのではなく、自車両が移動障害物を回避するように、自車両の走行を制御する。自車両と移動障害物との接近度合が第1閾値以上となる走行シーンでは、移動障害物に所定の行動を促さなくとも、自車両と移動障害物とが接近する可能性は低いためである。
一方、ステップS105において、自車両の走行シーンにおいて、自車両と移動障害物との接近度合が第1閾値以上となる場合があると判断された場合には、ステップS107に進む。ステップS107では、自車両と移動障害物との接近を抑制するために、移動障害物に所定の行動を促すように、自車両の走行を制御する制御処理が行われる。以下に、図5を参照して、ステップS107の制御処理について説明する。なお、図5は、ステップS107に係る制御処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS201では、制御装置160のシーン判定機能により、自車両の走行シーンが、移動障害物に所定の行動を促すことで、自車両と移動障害物との接近を抑制することができる走行シーンであるか否かの判断が行われる。たとえば、図2(A)に示す走行シーンでは、対向車両を先に右折させることで、自車両と対向車両との接近を抑制することができる。そのため、シーン判定機能は、自車両の走行シーンは、移動障害物(対向車両)に所定の行動(右折)を促すことで、自車両と移動障害物との接近を抑制することができる走行シーンであると判断することができる。また、図3(A)に示す走行シーンは、先行車両を先に車線変更させることで、自車両と先行車両との接近を抑制することができる走行シーンである。そのため、シーン判定機能は、自車両の走行シーンは、移動障害物(先行車両)に所定の行動(車線変更)を促すことで、自車両と移動障害物との接近を抑制することができる走行シーンであると判断することができる。
そして、自車両の走行シーンが、移動障害物に所定の行動を促すことで、自車両と移動障害物との接近を抑制することができる走行シーンであると判断された場合には、ステップS202に進み、一方、移動障害物に所定の行動を促すことで、自車両と移動障害物との接近を抑制することができる走行シーンではないと判断された場合には、ステップS208に進む。なお、ステップS208では、ステップS106と同様に、ステップS103で作成された走行計画に基づいて、自車両の走行制御が行われる。すなわち、移動障害物に所定の行動を促すのではなく、自車両が移動障害物を回避するように、自車両の走行が制御される。
ステップS202では、制御装置160の走行計画作成機能により、移動障害物に所定の行動を促すための走行計画の作成が行われる。たとえば、図2(A)に示す場面では、自車両の走行速度を減速することで、移動障害物である対向車両に右折を促すことができる。この場合、走行計画作成機能は、自車両の走行速度を減速するように、自車両の走行計画を作成することができる。また、図3(A)に示す場面では、自車両の走行速度を減速することで、移動障害物である先行車両の車線変更を促すことができる。この場合、走行計画作成機能は、自車両の走行速度を減速するように、自車両の走行計画を作成することができる。なお、制御装置160は、走行シーンごとに、移動障害物に所定の行動を促すための自車両の行動パターン(たとえば、図2(A)および図3(A)に示す場面例では減速を行うこと)をROMに予め記憶している。これにより、走行計画作成機能は、移動障害物に所定の行動を促すための走行計画を作成することができる。
ステップS203では、制御装置160の走行計画作成機能により、ステップS202で作成された走行計画を実行した場合の、自車両と他の移動障害物との接近度合の予測が行われる。たとえば、図2(A)に示す例では、移動障害物である対向車両に右折を促すために、自車両の走行速度を減速させる制御を行った場合に、自車両と後続車両(他の移動障害物)とが接近する可能性がある。また同様に、図3(A)に示す例においても、移動障害物である先行車両に車線変更を促すため、自車両の走行速度を減速させる制御を行った場合に、自車両と後続車両(他の移動障害物)とが接近する可能性がある。そこで、走行計画作成機能は、ステップS202で作成された走行計画を実行した場合の、自車両と他の移動障害物とが接近する接近度合を、シミュレーションにより予測する。
そして、ステップS204では、制御装置160の走行計画作成機能により、ステップS203における接近度合の予測結果に基づいて、ステップS202で作成された走行計画を実行した場合に、自車両と他の移動障害物との接近度合が所定の第2閾値以上となるか否かの判断が行われる。自車両と他の移動障害物との接近度合が所定の第2閾値以上となる場合には、ステップS208に進み、ステップS103で作成された走行計画に基づいて自車両の走行制御が行われる。すなわち、移動障害物に所定の行動を促すための制御は行わず、自車両が移動障害物を回避するように、自車両の走行を制御する処理が行われることとなる。一方、ステップS202で作成された走行計画を実行した場合に、自車両と他の移動障害物との接近度合が所定の第2閾値未満である場合には、ステップS205に進む。
ステップS205では、制御装置160の走行制御機能により、ステップS202で作成された走行計画に基づいて、自車両の走行制御が行われる。そして、ステップS206では、制御装置160の走行制御機能により、移動障害物が所定の行動を行ったか否かの判断が行われる。たとえば、図2(A)に示す場面例において、走行制御機能は、自車両が車速を低減する制御を行った結果、対向車両が右折を行ったか否かを判断する。また、図3(A)に示す場面例において、走行制御機能は、自車両が車速を低減する制御を行った結果、先行車両が車線変更を行ったか否かを判断する。移動障害物が所定の行動を行っていない場合には、ステップS208に進み、ステップS103で作成された走行計画に基づいて、自車両の走行が制御される。一方、移動障害物が所定の行動を行った場合には、ステップS207に進む。
ステップS207では、移動障害物が、自車両との接近を抑制するための行動を行っていると判断されているため、制御装置160の走行制御機能により、ステップS202で作成された走行計画に基づく自車両の走行制御が継続して実行される。これにより、たとえば、図2(A)に示す例では、対向車両を先に右折させることができ、対向車両が交差点を右折した後で、自車両に交差点を通過させることができる。また、図3(A)に示す例では、先行車両に先に車線変更を行わせることができ、車線変更した先行車両と一定の車間距離を保って走行を継続することが可能となる。
以上のように、本実施形態では、自車両の走行シーンが、移動障害物に所定の行動を促すことで、自車両と移動障害物との接近を抑制することができる所定の走行シーンであるか否かを判定する。そして、自車両の走行シーンが、自車両と移動障害物との接近を抑制することができる走行シーンである場合には、移動障害物に所定の行動を促すための走行計画を作成し、自車両の走行を制御する。これにより、本実施形態では、自車両と移動障害物とが接近してから移動障害物を回避するのではなく、自車両と移動障害物とが接近すること自体を有効に抑制することができるため、自車両を安全かつ適切に走行させることができる。
すなわち、従来では、図2(B)に示すように、対向車両が右折を行い、自車両と対向車両が接近した場合に、対向車両を回避するように自車両の走行を制御する。そのため、従来では、対向車両が右折を開始した後も、自車両が対向車両にある程度接近するまでは自車両は減速することなく走行を継続し、自車両が対向車両にある程度接近した場合に、自車両を急停止させる制御が行われる。これに対して、図2(A)に示すように、本実施形態では、対向車両に右折を促すために自車両の車速を予め減速することで、対向車両に先に右折を行わせることができる。その結果、自車両は、対向車両と接近することなく、交差点を走行することができる。
同様に、従来では、図3(B)に示すように、先行車両が車線変更を行い、自車両と先行車両とが接近した場合に、先行車両を回避するように自車両の走行を制御する。そのため、先行車両の車線変更が開始した後も、自車両が先行車両にある程度接近するまでは自車両は減速することなく走行を継続し、自車両が先行車両にある程度接近した場合に、自車両を急停止させる制御が行われる。これに対して、図3(A)に示すように、本実施形態では、先行車両に車線変更を促すために自車両の車速を予め減速することで、移動障害物である先行車両に先に車線変更を行わせることができる。その結果、自車両は、先行車両と一定の車間距離をおいて安全に走行することができる。
また、本実施形態では、自車両の走行シーンにおいて、移動障害物が移動する移動パターンを特定し、移動障害物が各移動パターンで移動した場合の、自車両と移動障害物との接近度合が所定の第1閾値以上となる場合に、移動障害物に所定の行動を促すように自車両の走行を制御する。これにより、本実施形態では、自車両と移動障害物とが接近する可能性がある場合にのみ、移動障害物に、自車両と接近しないような行動を促すことができる。
さらに、本実施形態では、移動障害物に所定の行動を促すように自車両の走行を制御した場合に、自車両と他の移動障害物とが接近する場合には、移動障害物に所定の行動を促すための制御は行わず、自車両と移動障害物とが接近した場合に自車両が移動障害物を回避するように自車両の走行を制御する処理が行われる。これにより、移動障害物に所定の行動を促すように自車両の走行を制御したことにより、自車両と他の移動障害物とが接近してしまうことを有効に防止することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
たとえば、上述した実施形態では、図2(A)および図3(A)に示すように、移動障害物に所定の行動を促すために、自車両の走行速度を減速させる構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、走行シーンによっては、移動障害物に所定の行動を促すために、自車両の加速や車線変更などを行う構成とすることもできる。
なお、上述した実施形態において、制御装置160の道路情報取得機能、障害物情報取得機能、および自車情報取得機能は本発明の取得手段に、制御装置160のシーン判定機能は本発明の判定手段に、制御装置160の走行計画作成機能および走行制御機能は本発明の制御手段に、制御装置160の接近度合算出機能は本発明の算出手段に、制御装置160のROMは本発明の記憶手段に、それぞれ相当する。