以下、本発明を、カードに文字や画像を印刷記録するとともに、カードに磁気的ないし電気的な情報記録を行うプリンタに適用した実施の形態について説明する。
<システム構成>
図1および図12に示すように、本実施形態のプリンタ1は印刷システム200の一部を構成している。すなわち、印刷システム200は、大別して、上位装置201(例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ)と、プリンタ1とで構成されている。
プリンタ1は、図示を省略したインターフェースを介して、上位装置201に接続されており、上位装置201からプリンタ1に印刷データ(または画像データ)や磁気的ないし電気的記録データ等を送信して、記録動作等を指示することが可能である。なお、プリンタ1は、オペパネ部(操作表示部)5を有しており(図12参照)、上位装置201からの記録動作指示の他、オペパネ部5からの記録動作指示も可能である。
上位装置201には、デジタルカメラやスキャナ等の画像入力装置204、上位装置201に命令やデータを入力するためのキーボードやマウス等の入力装置203、上位装置201によって生成されたデータ等の表示を行なう液晶ディスプレイ等のモニタ202が接続されている。
<プリンタ>
図2に示すように、プリンタ1はハウジング2を有しており、ハウジング2内に情報記録部Aと、印刷部Bと、媒体収容部Cと、収容部Dと、回動ユニットFとを備えている。
(情報記録部)
情報記録部Aは、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23と、接触式IC記録部27とで構成されている。
(媒体収容部)
媒体収容部Cは、複数枚のカードを立位姿勢で整列して収納しており、その先端には分離開口7が設けられており、ピックアップローラ19で最前列のカードから順次繰り出して供給する。
(回動ユニット)
繰り出されたブランクのカードCaは、搬入ローラ22で反転ユニットFに送られる。反転ユニットFはハウジング2に回動可能に軸支された回動フレーム80と、このフレームに支持された2つのローラ対20、21で構成されている。そして、ローラ対20、21は回動フレーム80に回転自在に軸支持されている。
反転ユニットFが回動する外周には、上述した磁気記録部24、非接触式IC記録部23および接触式IC記録部27が配置されている。そして、ローラ対20、21は、これらの情報記録部23、24、27のいずれかに向けてカードCaを搬送するための媒体搬送路65を形成し、これらの記録部でカードCaには磁気的若しくは電気的にデータが書き込まれる。
(印刷部)
印刷部Bは、カードCaの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成するもので、媒体搬送路65の延長上にカードCaを移送する媒体搬送経路P1が設けられている。また、媒体搬送経路P1にはカードCaを搬送する搬送ローラ29、30が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
印刷部Bはフィルム状媒体搬送機構を有しており、この搬送機構により搬送される転写フィルム46に対して、サーマルヘッド40で画像を形成する画像形成部B1と、続いてヒートローラ33により媒体搬送経路P1上のカードCaの表面に転写フィルム46に形成された画像を転写する転写部B2とを備えている。
印刷部Bの下流側には収容スタッカ60に印刷後のカードCaを移送する媒体搬送経路P2が設けられている。媒体搬送経路P2にはカードCaを搬送する搬送ローラ37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはデカール機構36が配置されており、搬送ローラ37、38間に保持されたカード中央部を押圧することにより、ヒートローラ33による熱転写で生じたカールを矯正する。このため、デカール機構36は図示しないカムを含む昇降機構により図2に示す上下方向に位置移動可能に構成されている。
(収容部)
収容部Dは、印刷部Bから送られたカードCaを収容スタッカ60に収容するように構成されている。収容スタッカ60は、昇降機構61にて図2で下方に移動するように構成されている。
(印刷部詳細)
次に、上述したプリンタ1の印刷部Bについて、さらに詳しく説明する。
転写フィルム46は、カードCaの幅方向より若干大きな幅を有する帯状を呈しており、上から順に、インクリボン41のインクを受容するインク受容層、インク受容層の表面を保護する透明の保護層、加熱によりインク受容層および保護層を一体に剥離を促進するための剥離層、基材(ベースフィルム)の順で積層されて形成されている。
転写フィルム46は、モータMr2、Mr4の駆動により転写フィルムカセット内の回転する巻取ロールと操出ロールにそれぞれ巻き取りないし繰り出される。すなわち、転写フィルムカセット内には、巻取ロールの中心に巻取スプール47、操出ロールの中心に供給スプール48が配されており、巻取スプール47には図示しないギアを介してモータMr2の回転駆動力が伝達され、供給スプール48には図示しないギアを介してモータMr4の回転駆動力が伝達される。
フィルム搬送ローラ49は、転写フィルム46を移送する主要な駆動ローラであり、このローラ49の駆動を制御することで転写フィルム46の搬送量および搬送停止位置が決まる。このフィルム搬送ローラ49は不図示のステッピングモータに連結されている。従って、不図示のステッピングモータへ出力されるパルス数を管理することにより、画像形成部B1におけるサーマルヘッド40による転写フィルム46への印刷開始位置や転写部B2におけるカードCaに対する転写フィルム46の転写位置が制御される。なお、フィルム搬送ローラ49の駆動時にモータMr2、Mr4も駆動するが、巻取スプール47、供給スプール48のいずれ一方から繰り出された転写フィルム46をいずれか他方で巻き取るためのものであって、転写フィルム46を搬送の主体となって駆動するものではない。なお、モータMr2およびモータMr4には正逆転可能なDCモータが用いられている。
フィルム搬送ローラ49の周面には、ピンチローラ32aとピンチローラ32bとが配置されている。ピンチローラ32a、32bは、図2に示されていないが、フィルム搬送ローラ49に対して進出および退避するよう移動可能に構成されており、図の状態はフィルム搬送ローラ49に進出して圧接することで転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付けている。これにより、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49の回転数に応じた距離の正確な搬送が行われる。
インクリボン41はインクリボンカセット42に収納され、このカセット42にインクリボン41を供給する供給スプール43とインクリボン41を巻き取る巻取スプール44との間で張架された状態で収容されており、巻取スプール44はモータMr1の駆動力で回転し、供給スプール43はモータMr3の駆動力で回転する。モータMr1およびモータMr3には正逆転可能なDCモータが用いられている。
インクリボン41は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)のインクパネルとBk(ブラック)インクパネルとを長手方向に面順次に繰り返すことで構成されている。なお、本実施形態では、YMCインクパネルに染料インクが用いられており、Bkインクパネルに顔料インクが用いられている。また、インクリボン41の終端部には、インクリボン41の使用限界を表すエンプティマークが付されている。図2に示すSe2は、このエンプティマークを検出するための透過型センサである。
プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは画像形成部B1を構成しており、プラテンローラ45に対向する位置にサーマルヘッド40が配置されている。サーマルヘッド40は主走査方向に列設された複数の加熱素子を有しており、これらの加熱素子はヘッドコントロール用IC(図示せず)により印刷データに従って選択的に加熱制御され、インクリボン41を介して転写フィルム46に画像を形成する。このとき、インクリボン41と転写フィルム46とは同速で搬送される。なお、冷却ファン39はサーマルヘッド40を冷却するためのものである。
転写フィルム46への印刷が終了したインクリボン41は、剥離コロ25と剥離部材28とで転写フィルム46から引き剥がされる。剥離部材28はインクリボンカセット42に固設されており、剥離コロ25は印刷時に剥離部材28に当接して両者で転写フィルム46とインクリボン41とを挟持することで剥離が行われる。そして、剥離されたインクリボン41はモータMr1の駆動力で巻取スプール44に巻き取られ、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49により、プラテンローラ31とヒートローラ33とを有する転写部B2まで搬送される。
転写部B2では、転写フィルム46はカードCaとともにヒートローラ33およびプラテンローラ31とで挟持されて、転写フィルム46上の画像がカード表面に転写される。このとき、転写フィルム46とカードCaとは同速で搬送される。なお、ヒートローラ33は、転写フィルム46を介してプラテンローラ31に圧接・離間するように昇降機構(不図示)に取り付けられている。
画像形成部B1の構成をその作用とともにさらに詳しく説明する。図3〜図5に示すように、ピンチローラ32a、32bはピンチローラ支持部材57の上端部と下端部にそれぞれ支持されており、ピンチローラ支持部材57はその中央部を挿通する支持シャフト58に回動自在に支持されている。支持シャフト58は、図10に示すように、両端部がピンチローラ支持部材57に形成された長穴76、77に架け渡されているとともに、中間部でブラケット50の固定部78にて固定されている。また、長穴76、77は支持シャフト58に対して水平方向および垂直方向に空間を持たせている。これにより、後述するフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32a、32bの調整が可能となる。
支持シャフト58にはバネ部材51(51a、51b)が装着されており、ピンチローラ支持部材57のピンチローラ32a、32bが装着される側の端部は、それぞれバネ部材51と接してそのバネ力によりフィルム搬送ローラ49の方向へ付勢されている。
ブラケット50は、カム受81でカム53のカム作動面と当接しており、駆動モータ54(図10参照)の駆動力で回動するカム軸82を支点とするカム53の矢印方向への回動に応じてフィルム搬送ローラ49に対して図で左右方向に移動するように構成されている。従って、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき(図4および図5)、ピンチローラ32a、32bはバネ部材51に抗して転写フィルム46を挟んでフィルム搬送ローラ49に圧接し、転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付ける。
このとき、ブラケット50の回動支点となる軸95から遠い位置にあるピンチローラ32bがまずフィルム搬送ローラ49を圧接し、続いてピンチローラ32aが圧接する。このように、回動支点である軸95をフィルム搬送ローラ49より上方に配置することで、ピンチローラ支持部材57は平行移動ではなく回動しながらフィルム搬送ローラ49と当接することになり、平行移動させるよりも幅方向のスペースが少なくてすむ利点がある。
また、ピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49へ圧接したときの圧接力は、バネ部材51により転写フィルム46の幅方向の対して均一となる。その際、ピンチローラ支持部材57の両側に長穴76、77が形成され支持シャフト58は固定部78で固定されているために、ピンチローラ支持部材57を3方向に調整することができ、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46はスキューを起こすことなく正しい姿勢にて搬送される。なお、ここで言う3方向の調整とは、(i)フィルム搬送ローラ49に対してピンチローラ32a、32bの軸方向の圧接力を均一にするために、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a、32bの軸の水平方向の平行度を調整すること、(ii)フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aの圧接力とフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32bの圧接力とを均一にするために、フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aとピンチローラ32bとの移動距離を調整すること、および(iii)フィルム進行方向に対してピンチローラ32a、32bの軸が垂直になるように、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a、32bの軸の垂直方向の平行度を調整することである。
さらに、ブラケット50には、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49に巻き付けられていない部分と当接する張力受け部材52とが設けられている。
張力受け部材52は、ピンチローラ32a、32bが転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に圧接した際に生じる転写フィルム46の張力により、ピンチローラ32a、32bがそれぞれバネ部材51の付勢力に抗してフィルム搬送ローラ49から退避するのを防止するために設けられている。このため、張力受け部材52は、ピンチローラ32a、32bより図で左の位置で転写フィルム46と当接するようブラケット50の回動側端部の先端に取り付けられている。図2は張力受け部材52が転写フィルム46と当接している状態を示している。
これにより、転写フィルム46の弾性から生じる張力は張力受け部材52を通してカム53にて直接受け止めることができる。従って、この張力によりピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49から退避してピンチローラ32a、23bの圧接力が弱まることが防止されるので、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49への密着した巻き付け状態が維持されて正確な搬送を行うことができる。
転写フィルム46の横幅方向に沿って配置されたプラテンローラ45は、図9に示すように、軸71を支点として回動自在な一対のプラテン支持部材72に支持されている。一対のプラテン支持部材72はプラテンローラ45の両端を支持している。プラテン支持部材72はそれぞれ、軸71を共通の回動軸とするブラケット50Aの端部にバネ部材99を介して接続されている。
ブラケット50Aは、基板87と、この基板87からのプラテン支持部材72の方向に折り曲げて形成されたカム受支持部85とを有しており、カム受支持部85でカム受84を保持している。基板87とカム受支持部85との間には、駆動モータ54にて駆動するカム軸83を支点に回動するカム53Aが配設されており、カム作動面とカム受84とが当接するよう構成されている。従って、カム53Aの回動によりブラケット50Aがサーマルヘッド40の方向へ進出すると、プラテン支持部材72も移動してプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接する。
このようにブラケット50Aとプラテン支持部材72との間にバネ部材99とカム53Aとを上下に配置することにより、このプラテン移動ユニットはブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔内に収めることができる。また、幅方向はプラテンローラ45の幅内に収めることができ省スペース化を図ることができる。
また、カム受支持部85は、プラテン支持部材72に形成した穿孔部72a、72b(図9参照)に嵌合しているため、カム受支持部85をプラテン支持部材72の方向に突設しても、ブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔が広がることがなく、その面でも省スペース化を図ることができる。
プラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接したとき、それぞれのプラテン支持部材72に接続されたバネ部材99は、それぞれ転写フィルム46の幅方向への圧接力が均一となるように作用する。このため、転写フィルム46がフィルム搬送ローラ49により搬送されるときスキュー(斜行)が防止され、転写フィルム46の印刷領域が幅方向にずれることがなくサーマルヘッド40による転写フィルム46への画像形成を正確に行うことができる。
ブラケット50Aの基板87には、剥離コロ25の両端を支持する一対の剥離コロ支持部材88がバネ部材97を介して設けられており、剥離コロ25は、ブラケット50Aがカム53Aの回動によりサーマルヘッド40に対し進出したとき、剥離部材28と当接して両者で挟持された転写フィルム46とインクリボン41とを剥離する。剥離コロ支持部材88もプラテン支持部材72と同様に剥離コロ25の両端にそれぞれ設けられており、剥離部材28に対する幅方向の圧接力が均一となるように構成されている。
ブラケット50Aの軸支59側の端部と反対側の端部には、張力受け部材52Aが設けられている。張力受け部材52Aは、プラテンローラ45と剥離コロ25とをサーマルヘッド40と剥離部材28とにそれぞれ圧接する際に生じる転写フィルム46の張力を吸収するように設けられている。バネ部材99とバネ部材97は、転写フィルム46の幅方向への圧接力を均一にするために設けられるが、逆にバネ部材99、97が転写フィルム46の張力に負けて転写フィルム46への圧接力が弱まってしまわないように、張力受け部材52Aにより転写フィルム46からの張力を受けている。なお、張力受け部材52Aも上述の張力受け部材52と同様にブラケット50Aに固定されているため、転写フィルム46の張力はブラケット50Aを介してカム53Aで受けることになるので、転写フィルム46の張力に負けることはない。これにより、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力および、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力が保たれるので、良好な印刷および剥離を行うことができる。また、フィルム搬送ローラ49の駆動時に転写フィルム46の搬送量に誤差を生じることがなく、印刷領域の長さ分が正確にサーマルヘッド40に搬送されて精度よく印刷できる。
カム53とカム53Aとは、ベルト98(図3参照)が張架されており同一の駆動モータ54により駆動される。
印刷部Bが図6に示す待機ポジションにあるときカム53およびカム53Aは図3に示す状態にあり、ピンチローラ32a、32bはフィルム搬送ローラ49に圧接しておらず、またプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接していない。換言すると、待機ポジションにあるときは、プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは両者が離間した離間位置に位置している。
そして、カム53およびカム53Aが連動して回転して図4に示す状態となると、印刷部Bは図7に示す印刷ポジションに移行する。その際、まずピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けるとともに、張力受け部材52は転写フィルム46と当接する。その後プラテンローラ45がサーマルヘッド40に圧接する。この印刷ポジションでは、プラテンローラ45がサーマルヘッド40に向けて移動して転写フィルム46とインクリボン41を挟み圧接して、剥離ローラ25が剥離部材28と接している。
この状態で、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46の搬送が開始されると、同時にインクリボン41もモータMr1の動作により巻取スプール44により巻き取られて同じ方向に搬送される。この搬送の間、転写フィルム46に設けた位置出し用マークがセンサSe1を通過して所定量移動し、転写フィルム46が印刷開始位置に到達した時点で、転写フィルム46の所定領域にサーマルヘッド40による印刷が行われる。特に印刷中は転写フィルム46の張力が大きくなるため、転写フィルム46の張力はフィルム搬送ローラ46からピンチローラ32a、32bを離間させる方向および、剥離部材28とサーマルヘッド40から剥離コロ25とプラテンローラ45とを離間させる方向に働く。しかし、上述したように、転写フィルム46の張力は張力受け部材52、52Aが受けているため、ピンチローラ32a、32bの圧接力が弱くなることがなく、正確なフィルム搬送を行うことができ、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力および、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力も弱くなることがないため、正確な印刷および剥離を行うことができる。印刷終了後のインクリボン41は転写フィルム46から引き剥がされて巻取スプール44に巻き取られる。
転写フィルム46の搬送による移動量、すなわち印刷が施される印刷領域の搬送方向の長さは、フィルム搬送ローラ49に設けられたエンコーダ(不図示)で検出され、それに応じてフィルム搬送ローラ49の回転が停止し、同時にモータMr1の動作による巻取スプール44による巻き取りも停止する。これにより、転写フィルム46の印刷領域への最初のインクパネルのインクによる印刷が終了する。
次に、カム53およびカム53Aが連動してさらに回転し図5に示す状態となると、印刷部Bは図8に示す搬送ポジションに移行して、プラテンローラ45はサーマルヘッド40から退避する方向に復帰する。この状態では依然として、ピンチローラ32a、32bはフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けて、張力受け部材52は転写フィルム46と接しており、フィルム搬送ローラ49の逆方向の回転により転写フィルム46は予め定められた印刷準備位置にまで逆搬送される。このときも転写フィルム46の移動量はフィルム搬送ローラ49の回転量によって把握されるが、印刷が施された所定領域の搬送方向の長さより若干長い分が逆搬送される。なお、インクリボン41もモータMr3により所定量巻き戻され、次に印刷するインクのインクパネルを初期位置(頭出し位置)に待機させる。
そして、カム53、53Aによる制御状態は再び図4に示す状態となって図7に示す印刷ポジションとなり、プラテンローラ45をサーマルヘッド40に圧接させ、フィルム搬送ローラ49が再び正方向への回転を行って転写フィルム46を印刷準備位置から印刷開始位置に移動させサーマルヘッド40に対する位置合わせ(頭出し)を行い、サーマルヘッド40で次のインクパネルのインクによる印刷が行われる。
このように、印刷ポジションと搬送ポジションでの動作は全てまたは所定のインクパネルのインクによる印刷が終了するまで繰り返される。そして、サーマルヘッド40による印刷が終了すると、転写フィルム46に画像形成された領域をヒートローラ33まで搬送するが、このときカム53および53Aは図3に示す状態に移動して、転写フィルム46への圧接を解除する。その後、巻取スプール47の駆動で転写フィルム46を搬送しながらカードCaへの転写が行われる。
このような印刷部Bは、3つのユニット90、91、92に分割されている。
図9に示すように、第1のユニット90は、ユニット枠体75にモータ54(図10参照)の駆動により回転する駆動軸70を装架しており、駆動軸70にフィルム搬送ローラ49を装着している。フィルム搬送ローラ49の下方には、ブラケット50Aと一対のプラテン支持部材72とが配置されており、これら部材はユニット枠体75の両側板に装架される軸71に回動自在に支持されている。
図9では、プラテン支持部材72に形成した穿孔部72a、72bからブラケット50Aの一部である一対のカム受支持部85が現れている。カム受支持部85は、その後方に配置される一対のカム受84を保持する。そして、カム受84のさらに後方には、ユニット枠体75を挿通しているカム軸83に装着されるカム53Aが配置されている。カム軸83はユニット枠体75の両側板に装架される。
上述したサーマルヘッド40は、転写フィルム46とインクリボン41の搬送パスを挟みプラテンローラ45と対向する位置に配置されている。図11に示すように、サーマルヘッド40、加熱に関する部材および冷却ファン39は第3のユニット92に一体化しており、第1のユニット90に対向して配置されている。
第1のユニット90は、移動可能なブラケット50Aにより、印刷動作で位置が変動するプラテンローラ45と剥離コロ25と張力受け部材52Aとを一括して保持することで、これら部材間の位置調整が不要となる。しかも、カム53の回動によりブラケット50Aを移動させることでこれら部材を所定の位置にまで移動させることができる。また、ブラケット50Aを設けたことで、固定のフィルム搬送ローラ49と同一のユニットに収納でき、転写フィルムを精度良く搬送しなければならないフィルム搬送ローラ49による搬送駆動部分と、プラテンローラ45による転写位置規制部分とが同じユニットに含まれるために両者間の位置調整が不要となる。
図10に示すように、第2のユニット91は、ユニット枠体55にカム53が装着されるカム軸82を挿通させて、カム軸82を駆動モータ54の出力軸に連結している。そして、第2のユニット91は、カム53と当接するようブラケット50をユニット枠体55に移動自在に支持しており、ブラケット50には、ピンチローラ支持部材57を回動自在に支持している支持シャフト58と張力受け部材52とが固設されている。
ピンチローラ支持部材57には、支持シャフト58にバネ部材51a、51bが取り付けられており、その端部をピンチローラ32a、32bを支持するピンチローラ支持部材57の両端にそれぞれ当接させて、フィルム搬送ローラ49の方向へ付勢している。ピンチローラ支持部材57は、長穴76、77に支持シャフト58が挿入されており、支持シャフト58は中央部でブラケット50に固定支持されている。
ブラケット50とピンチローラ支持部材57との間には、ピンチローラ支持部材57をブラケット50に向けて付勢するバネ89が設けられている。このバネ89によりピンチローラ支持部材57は第1のユニット90のフィルム搬送ローラ49から後退する方向に付勢されるため、転写フィルムカセットをプリンタ1にセットするときに第1のユニット90と第2のユニット91の間に転写フィルム46を容易に通すことができる。
第2のユニット91は、印刷動作に応じて位置が変動するピンチローラ32a、32bと張力受け部材52とをブラケット50Aで保持し、カム53の回動によりブラケット50Aを移動させることでピンチローラ32a、32bと張力受け部材52とを移動させるため、両者間の位置調整やピンチローラ32a、32bとフィルム搬送ローラ49との位置調整が簡略化される。このような第2のユニット91は、転写フィルム46を挟み第1のユニット90に対向して配置されている。
このようにユニット化することで第1のユニット90、第2のユニット91および第3のユニット92は、転写フィルム46やインクリボン41の各カセットと同様に、それぞれプリンタ1の本体から引き出すことも可能となる。従って、転写フィルム46やインクリボン41の消耗によるカセットの交換時にこれらユニット90、91、92も必要に応じてユニットを取り出しておけばカセット挿入時の転写フィルム46やインクリボン41を簡単に装置内に装架することができる。
上述したように、プラテンローラ45とブラケット50Aとカム53Aとプラテン支持部材72とを一体化した第1のユニット90と、ピンチローラ32a、32bとブラケット50とカム53とバネ部材51とを一体化した第2のユニット91とを組み合わせるとともに、サーマルヘッド40が取り付けられた第3のユニット92をプラテンローラ45に対向して配置して組み付けることで、プリンタの製造時における組み立てやメンテナンス時の調整を容易且つ正確に行うことができる。また、一体化したことで装置からの取り外しも容易に行え、プリンタとしての取扱い性が向上する。
次に、プリンタ1の制御および電気系統について説明する。図12に示すように、プリンタ1は、プリンタ1全体の動作制御を行う制御部100と、商用交流電源から各機構部および制御部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部120とを有している。
(制御部)
図12に示すように、制御部100は、プリンタ1の全体の制御処理を行うマイクロコンピュータ102(以下、マイコン102と略称する。)を備えている。マイコン102は、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、プリンタ1のプログラムや後述するパターンデータ等が記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAM、およびこれらを接続する内部バスで構成されている。
マイコン102には外部バスが接続されている。外部バスには、上位装置201との通信を行うための図示を省略したインターフェース、カードCaに印刷すべき印刷データやカードCaの磁気ストライプや収容ICに磁気的ないし電気的に記録すべき記録データ等を一時的に格納するバッファメモリ101が接続されている。
また、外部バスには、各種センサからの信号を制御するセンサ制御部103、各モータに駆動パルスや駆動電力を供給するモータドライバ等を含むアクチュエータ制御部104、サーマルヘッド40を構成する発熱素子への熱エネルギを制御するためのサーマルヘッド制御部105、オペパネ部5を制御するための操作表示制御部106、および上述した情報記録部Aが接続されている。
(電源部)
電源部120は、制御部100、サーマルヘッド40、ヒートローラ33、オペパネ部5および情報記録部A等に作動/駆動電源を供給している。
<プリンタの特色>
次に、本実施形態のプリンタ1の特色について説明する。なお、本発明の把握を容易にするために、本発明の範囲外の参考例と本発明の範囲内の実施例とを対比しつつ説明する。
(参考例)
制御部100が、インクリボン41と転写フィルム46とを同速で搬送して転写フィルム46の搬送方向と交差する幅方向両側において印刷画像より幅広のダミー画像を印刷画像の搬送方向後方に形成するように画像形成部B1を制御すれば、図13(A)に示すように、インクリボン41上では、転写フィルム46の印刷画像に対応する印刷領域Rtの搬送方向後端隅部で発生するシワWr1を、ダミー画像に対応するインクリボン41のダミー印刷領域Rdでのインクが抜けた弛みより影響を緩和して食い止める(次のMインクパネルへの伝達を防ぐ)とともに、ダミー印刷領域Rdは幅方向両側において印刷領域Rtより幅広であることからダミー印刷領域Rdの搬送方向後端隅部で発生するシワWr2自体は次のMインクパネルの印刷領域(図13(A)の破線で示す領域)には影響しないので、インクリボンのシワに起因する印刷品位の低下を防止することができる。なお、図13(A)では、Yインクパネルのうち転写フィルム46に画像が形成される(Yインクパネルが印刷に供される)最大領域を印刷領域Rtとして示し、ダミー印刷領域Rdが矩形状を呈するものとして示している(後述する図13(B)でも同じ。)。また、図13(A)ではYインクパネルを例示したが、他のM、C、Bkのインクパネルについても同様である(後述する図13(B)でも同じ。)。
(実施例)
ところが、上記参考例の場合には、1つのインクパネル内に印刷領域Rtとダミー印刷領域Rdとが設けられていることから、一画面(Y、M、C、Bkのインクパネル)分のインクリボンの長さが長くなり、インクリボンの大径化を招くおそれがあるため、改善の余地がある。この点を改善するため、実施例では、制御部100が、インクリボン41と転写フィルム46とを同速で搬送して転写フィルム46の搬送方向と交差する幅方向両側において印刷画像より幅広のダミー画像を印刷画像の搬送方向後方のインクパネルを跨ぐ位置に形成するように画像形成部B1を制御する。図13(B)に示すように、インクリボン41上では、参考例の場合と同様に、印刷領域Rtの搬送方向後端隅部で発生するシワWr1を、インクリボン41のダミー印刷領域Rdでのインクが抜けた弛みより影響を緩和して食い止めるとともに、ダミー印刷領域Rdは幅方向両側において印刷領域Rtより幅広であることからダミー印刷領域Rdの搬送方向後端隅部で発生するシワWr2自体は次のMインクパネルの印刷領域(図13(B)の破線で示す領域)には影響しないので、インクリボンのシワに起因する印刷品位の低下を防止することができる。
さらに、実施例では、インクパネルを跨ぐ位置をダミー印刷領域Rdとすることで、参考例より一画面分のインクリボンの長さを短くでき、インクリボンの大径化を防止することができる。図14(A)は参考例および実施例のインクパネルの一画面分の長さの差異を示したものであり、図14(B)は供給スプール43(図2参照)に捲回された参考例および実施例の新品のインクリボンの直径の差異を示したものである(φ1<φ2)。付言すれば、参考例および実施例に示すインクリボン41は500画面分のインクパネルを有しており、参考例および実施例の1インクパネルの長さの差は(参考例のインクパネルの横寸法112mm−実施例のインクパネルの横寸法98mm)=14mmであり(図15参照、なお、参考例および実施例のインクパネルの詳細については後述する。)、1画面での長さの差はその4倍の56mm、インクリボン全体での長さの差はその2000倍の28000mm(28m)となる。
また、本実施形態のプリンタ1の他の特色は、制御部100が、印刷画像とダミー画像とを一連の動作で形成するように画像形成部B1を制御することである。サーマルヘッド40をインクリボン41に圧接して連続的にインクリボン41の印刷領域Rtとダミー印刷領域Rdとに対して加熱素子を作動させることにより、転写フィルム46には一連の動作で印刷画像とダミー画像とが形成される。仮に、Mインクパネルに対する印刷領域への印刷直前にダミー印刷領域RdのYインクおよびMインクを用いて転写フィルム46にダミー画像を形成しても、既にYインクパネル印刷後の剥離動作や、後述する頭出し動作などで、インクリボン41が長い距離搬送されてしまっているため、段差起因のシワが発生してしまい、上述したシワ止めの効果は得られない。
さらに、本実施形態のプリンタ1の別の特色は、制御部100が、ダミー画像の領域内の画素の階調値が同一となるように(ダミー画像がいわゆるベタ画像となるように)画像形成部B1を制御することである。画素を同一階調値とすることにより、図13(B)で示したシワWr1を均等にインクが抜けたダミー印刷領域Rd内で食い止め、シワWr2をダミー印刷領域Rdの搬送方向後端隅部で確実に発生させてMインクパネルの印刷領域に波及させないためである。このような階調値としては特に制限はないが、シワWr1をダミー印刷領域Rdでインクが抜けた弛みより影響を緩和して食い止める効果を考慮すると、高階調値(例えば、256階調(0〜255の階調値)を用いる場合には127〜255の範囲の階調値)とすることが好ましい。
<インクリボン等の寸法>
次に、本発明の理解を促進するために、参考例および実施例で用いたインクリボン41、印刷領域Rt、ダミー印刷領域Rd等の各寸法について説明する。
参考例では、図15(A)に示すように、インクリボン41のY、M、C、Bkの各インクパネルの寸法は横(搬送方向の長さ)112mm、縦(搬送方向と交差する幅方向の長さ)60mm、各インクパネルの印刷領域Rtの寸法(印刷に供される最大寸法)は横86mm、縦55mm、ダミー印刷領域Rdの寸法は横5mm、縦58mm、各インクパネルの印刷領域Rtの後端からパネル後端までの長さは13mmに設定されており、各インクパネルの先端からダミー印刷領域Rdまでの長さは103mmに設定されている。印刷領域Rtは各インクパネルの中央に配置されており、各インクパネルの先端から印刷領域Rtの先端までおよび印刷領域Rtの後端からパネル後端までは13mmずつの間隔がある。この間隔の中央に5mm幅のダミー印刷領域Rdが形成される。
一方、実施例では、図15(B)に示すように、インクリボン41のY、M、C、Bkの各インクパネルの寸法は横98mm、縦60mm、各インクパネルの印刷領域Rtの寸法(印刷に供される最大寸法)は横86mm、縦55mm、ダミー印刷領域Rdの寸法は横5mm、縦58mm、各インクパネルの印刷領域Rtの後端からパネル後端までの長さは6mmに設定されており、各インクパネルの先端からダミー印刷領域Rdまでの長さは95.5mmに設定されている。印刷領域Rtは各インクパネルの中央に配置されており、各インクパネルの先端から印刷領域Rtの先端までおよび印刷領域Rtの後端からパネル後端までは6mmずつの間隔がある。インクパネルを跨ぐ位置の中央にダミー印刷領域Rdが形成される。このため、ダミー印刷領域Rdは2.5mmずつ隣接するインクパネル間に跨って形成されるとともに、隣接するインクパネルの境界線を中心に対称的な形状を呈する。また、参考例および実施例では、印刷領域Rt、ダミー印刷領域Rdの縦寸法がそれぞれ55mm、58mmであることから、ダミー印刷領域Rdの縦寸法は印刷領域Rtの縦寸法より縦方向(リンクリボン41の搬送方向と交差する幅方向)両側においてそれぞれ1.5mmずつ長くなる(幅広となる)。なお、参考例および実施例では、転写フィルム46の搬送方向と交差する幅方向の長さが60mm、カードCaは横85.6mm、縦54mmのものを用いた。
<動作>
次に、本実施形態のプリンタ1による印刷ルーチンについて、マイコン102のCPU(以下、単にCPUという。)を主体として説明する。なお、説明を簡単にするために、ROMに格納されたプログラム等をRAMに展開し、プリンタ1を構成する各部材をホーム(初期)位置に位置付ける初期設定処理が終了しており、上位装置201から印刷データ(Y、M、Cの色成分印刷データおよびBkの印刷データ)並びに磁気ないし電気的記録データ等を受信済みのものとして説明する。
(画像形成)
印刷ルーチンでは、まず、画像形成部B1において、転写フィルム46の所定領域に印刷画像(鏡像)およびその後方のインクパネルを跨ぐ位置にダミー画像を形成する画像形成処理が行われる。
すなわち、入力された(バッファメモリ101に格納された)Y、M、Cの色成分印刷データおよびBkの印刷データに従って、まず、転写フィルム46を上述した印刷開始位置に位置付けるとともに、インクリボン41のYインクパネルの頭出しを行い(図15(B)に示す「基準」位置を予め定められた位置まで搬送し)、転写フィルム46の背面側(画像形成面の反対面側)をプラテンローラ45で支持しつつインクリボン41と転写フィルム46とを同速で搬送して、インクリボン41に対して圧接されたサーマルヘッド41の加熱素子をYの印刷データに従って選択的に作動させることで転写フィルム46の所定領域にYインクの印刷画像を形成し、続けて、Yインクの印刷画像の搬送方向後方のインクパネルを跨ぐ位置に、サーマルヘッド41の加熱素子を作動させることで転写フィルム46の幅方向において印刷画像より幅広のダミー画像(本例では矩形状の二色色分けベタ画像)を形成する。なお、CPUは、サーマルヘッド制御部105を介して印刷データを1ラインごとにサーマルヘッド40に出力することで、主走査方向に列設された発熱素子を加熱制御する。
転写フィルム46上では、図15(B)に示すように、Yインクパネルの印刷領域RtのYインクによりYインクの印刷画像が形成され、YインクパネルとMインクパネルとに跨るダミー印刷領域RdのYインクおよびMインクによりダミー画像が形成される。なお、本実施形態では、ダミー画像の寸法、位置、階調値等のデフォルト値がROMに予め格納されており、CPUはこのデフォルト値に従ってインクリボン41のインクにより転写フィルム46上にダミー画像を形成するが、オペパネ部5または上位機器201からのオペレータによる手入力によりダミー画像の寸法、位置、階調値等が変更可能に構成されている。
転写フィルム46上にYインクによる印刷画像およびYインクおよびMインクによるダミー画像を形成して剥離コロ25と剥離部材28によりインクリボン41と転写フィルム46と剥離した後、転写フィルム46を上述した印刷準備位置まで逆搬送する。次に、転写フィルム46を印刷準備位置から印刷開始位置に移動させるとともに、インクリボン41のMインクパネルの頭出し(逆搬送を含む。)を行い、Yの印刷データによる印刷画像およびYインクおよびMインクによるダミー画像の形成の場合と同様に、転写フィルム46の所定領域にMの印刷データに従ってMインクの印刷画像を行い、続けて、Mインクの印刷画像の搬送方向後方のインクパネルを跨ぐ位置に、サーマルヘッド41の加熱素子を作動させることでMインクの印刷画像より幅広のMインクおよびCインクによるダミー画像を形成して、そのままインクリボン41と転写フィルム46とを剥離する。以下、同様に、Cの印刷データよる印刷画像およびダミー画像の形成と剥離、Bkの印刷データによる印刷画像およびダミー画像の形成と剥離とを行う。
この画像形成処理により、転写フィルム46の所定領域には、インクリボン41のY、M、CおよびBkインクによる印刷画像が重ねられカラー印刷画像(鏡像)が形成される。CPUは、転写フィルム46の所定領域に対し、Y、M、CおよびBkインクのそれぞれの印刷画像が重なるように、つまり、それぞれの印刷画像の印刷開始位置が同じとなるように、フィルム搬送ローラ49を駆動する不図示のステッピングモータを制御する。なお、本実施形態では、転写フィルム46の所定領域にカードCaの一面側の画像を形成した後、転写フィルム46の次の領域に他面側の画像を形成する。
(カード搬送)
この画像形成処理と並行して、CPUは、媒体収容部CからカードCaを繰り出し、受信した磁気ないし電気的記録データに基づいて、情報記録部Aを構成する磁気記録部24、非接触式IC記録部23、接触式IC記録部27のうちいずれかでカードCaの対する記録処理を行った後、カードCaを転写部B2に搬送する。
(転写)
次に、転写部B2において、カードCaに転写フィルム46に形成されたカラー印刷画像を転写する転写処理が行われる。CPUは、この転写処理において、カードCaと転写フィルム46の所定領域(または次の領域)に形成された画像とが同期して転写部B2に到着するように制御する。なお、CPUは、カードCaの一面に画像を転写した後、カードCaを回動ユニットF側に搬送してカードCaを180°回転させ、カードCaの他面に他面用の画像を転写するように制御する。
(カード排出)
次いで、デカール機構36でヒートローラ33による熱転写で生じたカードCaのカールを矯正した後、収容スタッカ60に向けてカードCaを排出して、印刷ルーチンを終了する。
<効果等>
次に、本実施形態のプリンタ1の効果等について説明する。
本実施形態のプリンタ1では、制御部100が、インクリボン41と転写フィルム46とを同速で搬送して転写フィルム46の幅方向両側において印刷画像より幅広のダミー画像を印刷画像の搬送方向後方のインクパネルを跨ぐ位置に形成するように画像形成部B1を制御する。このため、図13(B)に示したように、インクリボン41上では、転写フィルム46の印刷画像に対応する印刷領域Rtの搬送方向後端隅部で発生するシワWr1を、ダミー画像に対応するインクリボン41のダミー印刷領域Rdでのインクが抜けた弛みより影響を緩和して食い止めるとともに、ダミー印刷領域Rdは幅方向両側において印刷領域Rtより幅広であることからダミー印刷領域Rdの搬送方向後端隅部で発生するシワWr2自体は次のインクパネルの印刷領域には影響しないので、インクリボンのシワに起因する印刷品位の低下を防止することができる。
また、本実施形態のプリンタ1では、図14および図15で参考例と対比して示したように、インクパネルを跨ぐ位置をダミー印刷領域Rdとすることで、一画面分のインクリボンの長さを短くできインクリボン41のコストの低減化を図ることができるとともに、インクリボンの大径化を防止することができインクリボンカセット42の小型化、延いては、プリンタ1全体の小型化が可能となる。また、これに留まらず、参考例と対比して転写フィルム46の一画面分で使用する長さも短くなり、転写フィルム46のランニングコストの低減化も図ることができる。
また、本実施形態のプリンタ1では、制御部100が、印刷画像とダミー画像とを一連の動作で(連続的に)形成するように画像形成部B1を制御する。例えば、Mインクパネルに対する印刷領域Rtへの印刷直前にYインクおよびMインクによるダミー印刷領域Rdを用いて転写フィルム46にダミー画像を形成する場合には、既にYインクパネル印刷後の剥離動作や、頭出し動作などで、インクリボン41が長い距離搬送されてしまって段差起因のシワが発生するのに対し、印刷画像とダミー画像とを一連の動作で形成する場合には、上述したシワ止め効果を確実に発揮させることができる。
さらに、本実施形態のプリンタ1では、制御部100が、ダミー画像の領域内の画素の階調値が同一となるように画像形成部B1を制御する。このため、図13(B)で示したように、シワWr1を均等にインクが抜けたダミー印刷領域Rd内で食い止め、シワWr2をダミー印刷領域Rdの搬送方向後端隅部で確実に発生させて次のインクパネルの印刷領域に波及させないようにすることができる。
なお、本実施形態では、間接印刷方式のプリンタ1を例示したが、本発明は直接印刷方式のプリンタにも適用可能である。図16は、このような直接印刷方式を用いたプリンタの画像形成部の一例を示している。このプリンタの画像形成部は、複数の加熱素子が配設されたサーマルヘッド40とサーマルヘッド40に対向配置されたプラテンローラ45Aとを有しており、カードCaの背面側をプラテンローラ45Aで支持しつつインクリボン41とカードCaとを同速で搬送してカードCaの画像形成面側にインクリボン41の各インクによる画像を直接形成する。
ここで着目すべき点は、上記実施形態のように媒体として転写フィルム46を用いる場合にはダミー画像を転写フィルム46で受ける(ダミー画像を転写フィルム46に形成する)ことができるが、直接転写方式の場合には、ダミー画像(ダミー印刷領域Rdのインク)を媒体としてのカードCaで受けることができない。このため、プラテンローラ45Aの周長はカードCaの搬送方向の長さより大きく設定されており、プラテンローラ45Aは、その周面に搬送されるカードCaの背面側を支持するための第1の周域45Aaと、インクリボン41のダミー印刷領域Rdのインクを受けるための第2の周域(領域)45Abとを有している。
さらに、プラテンローラ45Aのローラ軸には不図示のエンコーダが嵌着しており、制御部100はエンコーダから出力される情報を参照してカードCaの先端と第1および第2の周面との位置合わせの制御を行う。すなわち、図16(A)に示すように、カードCaに各インクパネルのインクによる印刷画像を形成する際には、カードCaの背面側がプラテンローラ45Aの第1の周域45Aaで支持されつつカードCaの画像形成面側に画像が形成され、図16(B)に示すように、プラテンローラ45Aの第2の周域45Abでダミー印刷領域Rdのインクを受けるように制御する。この場合に、プラテンローラ45Aの第2の周域45Abで受けたインクを清浄するクリーンローラ(不図示)をさらに有しており、制御部100は、不図示のエンコーダから出力される情報を参照してクリーンローラを第2の周域45Abに当接ないし退避させるように制御するようにしてもよい。
また、本実施形態ではY、M、C、Bkのインクパネルを面順次に繰り返したインクリボン41を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、Bkのインクパネルを除いたり、カラー印刷の場合にY、M、C、Bkに加えゴールドやシルバーのインクパネルを用いたりするようにしてもよく、さらに、カードCaの表面を覆う保護層のパネルを有していてもよい。また、二色のインクパネルを面順次に繰り返したインクリボンを用いるようにしてもよい。
さらに、本実施形態ではインクパネルを跨ぐ位置の全てにダミー画像を形成する例を示したが、本発明はこれに制約されるものでははい。例えば、複数色のインクパネルのうち印刷領域Rdのインクが用いられないインクパネルにはシワが発生しないので、そのインクパネルと次のインクパネルとを跨ぐ位置についてはダミー印刷領域Rtの二色のインクを用いて転写フィルム46上にダミー画像を形成する必要はない。
また、本実施形態では印刷領域Rtとダミー印刷領域Rdとを離間させダミー印刷領域Rdを矩形状とした例を示したが(図17(A)参照)、本発明はこれに制限されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、印刷領域Rtとダミー印刷領域Rdとを連続させたり(図17(B)、(C)、(E)、(F)参照)、ダミー印刷領域Rdの幅方向両端部を弧状としたりするようにしてもよい(図17(D)〜(F)参照)。また、本実施形態ではダミー印刷領域Rdの形状を隣接するインクパネルの境界線を中心に対称的な形状とした例を示したが(図17(A)参照)、本発明はこれに限定されるものではなく、隣接するインクパネルの境界線を中心に非対称な形状であってもよい。なお、印刷領域Rtとダミー印刷領域Rdとを連続させる場合は、転写フィルム46に形成される印刷画像とダミー画像とを一体とした一つの印刷データを新たに生成するようにしてもよい。このような新たな印刷データの生成は上位機器201側で行っても、または、プリンタ1(制御部100)側でおこなってもよい。
さらに、本実施形態ではダミー印刷領域Rdの幅方向の長さを一定値(実施例では58mm、図15(B)参照)に固定した例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、印刷データに応じて変動させるようにしてもよい。例えば、YインクパネルとMインクパネルとを跨ぐ位置のダミー印刷領域Rdの幅方向の長さを、YおよびMの印刷データを参照してYインクパネルおよびMインクパネルの印刷領域Rtのインクが印刷に供される幅がYインクとMインクのいずれが長いかを判断し、長い方の幅より幅方向両側において所定長さ(例えば、1.5mm)大きくするようにしたり、Y、M、C、Bkの印刷データを参照してY、M、C、Bkのインクパネルの印刷領域Rtのインクが印刷に供される幅が最も長いインクの幅より幅方向両側において所定長さ大きくしたりするようにしてもよい。
また、本実施形態では、画像形成部B1において、転写フィルム46の所定領域にカードCaの一面側の画像を形成した後、転写フィルム46の次の領域に他面側の画像を形成し、転写部B2において、カードCaの一面に画像を転写した後、カードCaを回動ユニットF側に搬送してカードCaを180°回転させ、カードCaの他面に他面用の画像を転写する例を示したが、画像形成部B1において転写フィルム46の所定領域にカードCaの一面側の画像を形成し、転写部B2においてカードCaの一面に画像を転写した後または転写中に、画像形成部B1において転写フィルム46の次の領域に他面側の画像を形成するとともに、カードCaの一面に画像を転写した後にカードCaを回動ユニットF側に搬送してカードCaを180°回転させ、転写部B2においてカードCaの他面に他面用の画像を転写するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、印刷データを上位機器201から受信(入力)する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、プリンタ1がUSBやメモリカード等の外部記憶装置と接続可能な構成の場合には外部記憶装置に格納された情報を読み取ることで印刷データを取得するようにしてもよい。また、プリンタ1がローカルネットワークの一員を構成している場合には上位機器以外のローカルネットワークに接続されたパーソナルコンピュータから入力するようにしてもよい。さらにまた、印刷データに代えて画像データを上位機器201から受信するようにしてもよい。この場合には、プリンタ1側で受信した画像データを印刷データに変換すればよい。
そして、本実施形態では、インクリボンカセット42を例示したが、本発明はこれに制限されず、カセットを用いないタイプのインクリボンに適用可能なことは言うまでもない。
上記では、画像形成部B1におけるインクリボン41に発生するシワによる印刷品位の低下を防止することを中心に説明したが、インクリボン41と転写フィルム46とはともにフィルム状でありインク抜け(インクリボン41の場合)や画像抜け(転写フィルム46の場合)による段差起因のシワが発生する点で共通する。このため、本実施形態のプリンタ1は、転写部B2において転写フィルム46の転写領域(印刷画像が転写される領域)の搬送方向後端隅部で発生するシワを転写フィルム46の次の領域に波及させない点でも利点がある。
ただし、作用・効果の点では、上述したインクリボン41の場合とは若干異なっている。上述したように、画像形成部B1において、印刷領域Rtの搬送方向後端隅部で発生するインクリボン41のシワWr1(図13(B)参照)は、ダミー印刷領域Rdでのインクが抜けた弛みで食い止められるのに対し、転写部B2では、転写領域がカードCaに転写されて転写フィルム46から抜けることにより転写領域の搬送方向後端隅部で発生する(転写フィルム41の)シワが、転写フィルム46上に積層するように形成されたダミー画像(厳密には転写フィルム46の受容層に吸収および堆積されたダミー画像のインク)で食い止められる。また、インクリボン41ではダミー印刷領域Rdのインクが抜けることによりダミー印刷領域Rdの搬送方向後端隅部にシワWr2(図13(B)参照)が発生するのに対し、転写フィルム46上にはダミー画像が積層するように形成されるのみのため(転写の際、ダミー画像は転写フィルム46から抜かれないため)、ダミー画像が形成された転写フィルム46の搬送方向後端隅部には段差起因のシワは発生しないかまたは発生しづらい。
従って、特許請求の範囲には、(1)「複数の加熱素子が配設されたサーマルヘッドを有し、インクリボンと転写媒体とを同速で搬送して入力された印刷情報に従って前記転写媒体に印刷画像を形成する画像形成部と、第1の回転体とこの第1の回転体に対向配置された第2の回転体とを有し、前記転写媒体と前記記録媒体とを同速で搬送して前記画像形成部で前記転写媒体に形成された印刷画像を前記記録媒体に転写する転写部と、前記画像形成部および前記転写部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記転写媒体に形成された印刷画像の前記転写媒体の搬送方向後方のインクパネルを跨ぐ位置にダミー画像を形成するように前記画像形成部を制御するとともに、前記画像形成部で前記転写媒体に形成された印刷画像のみを前記記録媒体に転写するように前記転写部を制御することを特徴とする画像形成装置。」や、(2)「前記ダミー画像は、前記転写媒体の搬送方向と交差する前記転写媒体の幅方向両側において前記印刷画像より幅広である、ことを特徴とする(1)に記載の画像形成装置。」も含めることができる。なお、「第1の回転体」は上記実施形態においてヒートローラ(発熱回転体)33、「第2の回転体」はプラテンローラ31として例示されている。