以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
(1)ハニカム構造体
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、図1に示すようなハニカム構造体100である。図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のハニカム構造体100は、流体の流路となる第一端面1から第二端面3まで延びる複数のセル5を区画形成する隔壁7を有する柱状のハニカム構造部9を備えている。そして、隔壁7が、耐火物骨材と、当該耐火物骨材同士を結合するボンド材とを有する多孔体からなる。また、ハニカム構造部9の隔壁7を構成する多孔体の気孔率が25%以上、70%以下である。また、ボンド材が、金属Si及び酸化物材料としてのコージェライトを含み、多孔体全体の質量に占めるボンド材の質量の比率が、30質量%以上、50質量%以下であり、ボンド材の質量に占めるコージェライトの質量の比率が、30質量%以上、80質量%以下である。多孔体全体の質量中に含まれるボンド材の質量の比率は、以下の方法で測定することができる。まず、ハニカム構造体の隔壁から切り出した材料試験片の全質量を測定する。次に、切り出した材料試験片について、蛍光X線分析を行い、結晶成分の定性把握をする。次に、走査型電子顕微鏡にて当該材料試験片を撮像し、得られたSEM画像より、当該SEM画像中の耐火物骨材の領域面積比を求める。そして、求めた耐火物骨材の領域面積比、及び蛍光X線分析の結果より既知の耐火物骨材の粒子密度から、材料試験片の全質量に占める耐火物骨材の質量の比率を求める。材料試験片中の耐火物骨材以外の残部がボンド材であり、材料試験片の全質量及び耐火物骨材の質量の比率から、ボンド材の質量の比率を求める。また、ボンド材の質量に占める酸化物の質量の比率は、以下の方法で測定することができる。まず、ハニカム構造体の隔壁から切り出した材料試験片について、蛍光X線分析を行い結晶成分の定性把握をする。次に、検量線にもとづき、蛍光X線分析の各結晶成分のカウント数より各成分の定量把握を行う。また、図1において、符号10は外周壁を示す。
上述したように、本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁を構成する多孔体の気孔率、多孔体全体の質量に占めるボンド材の比率、及びボンド材の質量に占めるコージェライトの質量の比率が所定の比率となっている。したがって、本実施形態のハニカム構造体は、熱容量、及び熱伝導率が大きいため、ハニカムフィルタ再生時において、ハニカム構造体の熱応力割れによるPM漏れが生じにくい。また、熱伝導率も大きいため、ハニカム構造体に局所的な温度上昇が生じた場合にも、ハニカム構造体の一部にクラックが発生することも有効に抑止することができる。更に、耐火物骨材と耐火物骨材との結合部分である、ボンドネック部が従来のハニカムフィルタに比べて太いため、ハニカム構造体の強度が高い。
本実施形態のハニカム構造体100における、耐火物骨材同士はボンド材により結合されている。図2Aは、本発明のハニカム構造体における、隔壁の微細構造を示しており、図2Bは、従来のハニカム構造体における、隔壁の微細構造を示している。図2Aに示すように、本実施形態のハニカム構造体の耐火物骨材11同士は、ボンド材13により結合されており、耐火物骨材11同士の間、耐火物骨材11とボンド材13との間、ボンド材13とボンド材13の間に気孔12が形成されている。そして、図2Bに示すように、従来のハニカム構造体の耐火物骨材11’同士は、ボンド材13’により結合されており、耐火物骨材11’同士の間、耐火物骨材11’とボンド材13’との間、ボンド材13’とボンド材13’の間に気孔12’が形成されている。本実施形態のハニカム構造体のボンドネック部14と、従来のハニカム構造体のボンドネック部14’と、を比較すると、本実施形態のハニカム構造体のボンドネック部は、従来のハニカム構造体のボンドネック部よりも太くなっている。このため、本実施形態のハニカム構造体は、ハニカム構造体の強度が高い。
本実施形態のハニカム構造体における、多孔体からなる隔壁は、耐火物骨材と、当該耐火物骨材同士を結合するボンド材と、を有する。多孔体全体の質量に占める、耐火物骨材、及びボンド材の質量の比率は、80質量%以上、99質量%以下であることが好ましく、90質量%以上、99質量%以下であることが更に好ましく、95質量%以上、99質量%以下であることが特に好ましい。多孔体全体の質量に占める、耐火物骨材、及びボンド材の質量の比率が、80質量%より小さいと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。多孔体全体の質量に占める、耐火物骨材、及びボンド材の質量の比率は、蛍光X線定量分析により測定した値である。
本実施形態のハニカム構造体におけるボンド材は、金属Si及び酸化物材料としてのコージェライトを含む。ボンド材の質量中に占める金属Si及び酸化物材料の質量の比率は、80質量%以上、99質量%以下であることが好ましく、90質量%以上、99質量%以下であることが更に好ましく、95質量%以上、99質量%以下であることが特に好ましい。このように構成することにより、耐火物骨材に対するボンド材の濡れ性が向上し、ほぼ全て、或いは全ての気孔が利用気孔(別言すれば、開気孔)となる。また、ボンド材の組成は均一であることが好ましいが、局所的に金属Siのみで耐火物骨材を結合している部分があってもよく、局所的に酸化物材料のみで耐火物骨材を結合している部分があってもよい。金属Si及び酸化物材料を含む、ボンド材の質量中に占める金属Si及び酸化物材料の質量の比率は、蛍光X線定量分析により測定した値である。
ボンド材の質量に占めるコージェライトの質量の比率は、30質量%以上、80質量%以下であり、30質量%以上、60質量%以下であることが好ましく、30質量%以上、50質量%以下であることが更に好ましく、30質量%以上、40質量%以下であることが特に好ましい。このように構成することによりハニカム構造体の熱伝導率を大きく保ちつつ、熱容量を大きくすることができる。したがって、ハニカム構造体をフィルタとして用いた場合に、フィルタ再生時のハニカム構造体の温度を低く保つことができ、熱応力割れによるPM漏れが生じない。ボンド材の質量に占めるコージェライトの質量の比率が30質量%未満であると、熱容量の小さい金属Siの比率が大きくなるため、ハニカム構造体の熱容量が小さくなり、フィルタ再生時にハニカム構造体が高温となり、熱応力割れによるPM漏れを生じやすくなる。また、ボンド材の質量に占める酸化物の質量の比率が80質量%を超えると、熱伝導率の大きい金属Siの比率が小さくなるため、ハニカム構造体の熱伝導率が小さくなり、フィルタ再生時にハニカム構造体が高温となり、熱応力割れによるPM漏れを生じやすくなる。ボンド材の質量に占めるコージェライトの質量の比率は、蛍光X線定量分析により測定した値である。
多孔体全体の質量に占めるボンド材の質量の比率は、30質量%以上、50質量%以下であり、30質量%以上、45質量%以下であることが好ましく、30質量%以上、40質量%以下であることが更に好ましく、30質量%以上、35質量%以下であることが特に好ましい。多孔体全体の質量に占めるボンド材の質量の比率が、30質量%未満であると、耐火物骨材同士を十分に結合できないことがあり、50質量%より大きいと、多孔体の気孔率が低くなりすぎることがある。
隔壁を構成する多孔体の気孔率は、25%以上、70%以下であり、25%以上、55%以下であることが好ましく、25%以上、32%以下であることが更に好ましい。気孔率をこのような値とすることで、ハニカム構造体の熱容量、及び熱伝導率が大きくなり、フィルタ再生時におけるハニカム構造体の最高温度が低くなる。気孔率の値は、水銀ポロシメーターにより測定した値である。
多孔体全体の質量に占めるコージェライトの質量の比率は、26質量%以上、40質量%以下であり、26質量%以上、35質量%以下であることが好ましく、26質量%以上、30質量%以下であることが特に好ましい。このように構成することにより、耐火物骨材に対するボンド材の濡れ性を向上させることができ、ボンドネック部を太くすることができる。また、ハニカム構造体の熱容量を大きくしつつも、ある程度の熱伝導率を確保することができる。多孔体全体の質量に占めるコージェライトの質量の比率は、蛍光X線定量分析により測定した値である。
ハニカム構造体の800℃における熱伝導率が、5W/(m・K)以上、28W/(m・K)以下であることが好ましく、10W/(m・K)以上、28W/(m・K)以下であることが更に好ましく、20W/(m・K)以上、28W/(m・K)以下であることが特に好ましい。ハニカム構造体の800℃における熱伝導率が、5W/(m・K)未満であると、ハニカム構造体に局所的な温度上昇が生じた際に、ハニカム構造体にクラックが発生しやすくなることがある。また、ハニカム構造体の800℃における熱伝導率が、28W/(m・K)より大きいと、ハニカムフィルタ再生時においてハニカム構造体の温度が十分に高くならず、PMが燃え残ることがある。800℃における熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法により測定した値である。
耐火物骨材とは、大気圧において、溶融点、昇華点、及び分解点が1300℃以上であるものを指す。
耐火物骨材としては、炭化珪素、窒化珪素等が挙げられるが、炭化珪素であることが特に好ましい。また、耐火物骨材の平均粒子径は、5μm以上、20μm以下であることが好ましく、10μm以上、15μm以下であることが更に好ましく、10μm以上、13μm以下であることが特に好ましい。耐火物骨材の平均粒子径が、5μmよりも小さいと、多孔体の気孔率が小さくなりすぎることがあり、20μmよりも大きいと、多孔体の気孔率が大きくなりすぎることがある。平均粒子径の値は、レーザー回折法により測定した値である。
酸化物材料は、コージェライトを含む。また、参考例として、酸化物材料としては、Al、Si、及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む酸化物、又は、当該酸化物を2種類以上含む混合物を主成分とすることが好ましい。また、コージェライト及びムライトを主成分とすることが更に好ましく、コージェライトを主成分とすることが特に好ましい。なお、「主成分」とは、酸化物材料の質量に占める比率が、90質量%以上である成分のことを意味し、95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることが更に好ましい。
ハニカム構造体の800℃における比熱容量が、2.5J/(cc・K)以上であることが好ましく、2.5J/(cc・K)以上、3.5J/(cc・K)以下であることが更に好ましく、2.5J/(cc・K)以上、3.0J/(cc・K)以下であることが特に好ましい。ハニカム構造体の800℃における比熱容量が、2.5J/(cc・K)未満であると、フィルタ再生時にハニカム構造体が高温となり、破損することがある。また、ハニカム構造体の800℃における比熱容量が、3.5J/(cc・K)より大きいと、フィルタ再生時において、ハニカム構造体の温度が低くなりすぎ、ハニカム構造体に堆積したPMを燃焼しきれない(燃え残る)ことがある。比熱容量の値は、レーザーフラッシュ法により測定した値である。
ハニカム構造部のセル密度は、10セル/cm2以上、54セル/cm2以下であることが好ましく、11セル/cm2以上、48セル/cm2以下であることが更に好ましく、12セル/cm2以上、30セル/cm2以下であることが特に好ましい。ハニカム構造部のセル密度とは、ハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する断面における、単位面積当たりのセルの個数のことである。セル密度が小さ過ぎると、PM捕集性能が低下することや初期圧力損失が大きくなることやハニカム構造体の熱伝導率が大きくなりすぎることがある。セル密度が大き過ぎると、ハニカム構造部の流入端面付近にPMが堆積し、セルがPMによって閉塞していくため、圧力損失が大きくなることがあり、また、ハニカム構造体の熱伝導率が小さくなりすぎることがある。
隔壁を構成する多孔体に形成された気孔の平均細孔径は、7μm以上、30μm以下であることが好ましく、8μm以上、25μm以下であることが更に好ましく、9μm以上、20μm以下であることが特に好ましい。平均細孔径が小さすぎると、ハニカム構造体の圧力損失が大きくなることがある。平均細孔径が大きすぎると、PMが隔壁に捕集されずにすり抜けることがある。平均細孔径の値は、水銀ポロシメーターにより測定した値である。
隔壁の厚さは、50μm以上、800μm以下であることが好ましく、100μm以上、560μm以下であることが更に好ましく、125μm以上、350μm以下であることが特に好ましい。隔壁の厚さが、50μmよりも薄いと、ハニカム構造体の強度が低下することがあり、800μmよりも厚いと初期圧力損失が大きくなることがある。隔壁の厚さは、光学顕微鏡により測定した値である。
ハニカム構造部の外周壁の厚さは特に限定されないが、0.3mm以上、3mm以下であることが好ましい。0.3mmより薄いと外周壁近傍のセルが欠けやすく、強度が低下することがある。また、3mmより厚いと、圧力損失が増大することがある。また、ハニカム構造部の外周壁は、ハニカム構造部の隔壁と一体的に押出成形されたものであってもよく、外周コート材を塗布することにより外周壁を作成したものであってもよい。
ハニカム構造部のセルの延びる方向に垂直な断面における、ハニカム構造部の形状(以下、単に「ハニカム構造部の断面形状」ということがある)に、特に制限はない。三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形、円形、又は楕円形であることが好ましく、その他不定形であってもよい。また、ハニカム構造部の大きさは、特に限定されないが、セルの延びる方向における長さが50〜400mmであることが好ましい。ハニカム構造部の長さがこのような範囲であると、ハニカム構造体によって、圧力損失を増大させずに、優れた捕集性能で排ガスを処理することができる。50mmより短いと、捕集性能が悪化することがある。また、400mmより長いと、捕集性能向上はあまり期待できず、むしろ、圧力損失が増大することがある。捕集性能と圧力損失のバランスを考えると、ハニカム構造部の長さは、100〜300mmであることが、更に好ましく、120〜260mmであることが特に好ましい。このように構成すると、複数個のハニカム構造体を、缶体内に直列に配置する場合において、効果的である。ハニカム構造部の底面の直径は、上記範囲内において、エンジン排気量や出力に合わせて、適宜選定される。
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁の少なくとも一部に触媒、例えば、酸化触媒が担持されたものであってもよい。更に詳細には、ハニカム構造体を構成するハニカム構造部の隔壁に触媒が担持されていることが好ましい。ハニカム構造体の単位体積当りの触媒の担持量は、5g/cm3以上、200g/cm3以下であることが好ましく、5g/cm3以上、150g/cm3以下であることが更に好ましく、5g/cm3以上、120g/cm3以下であることが特に好ましい。5g/cm3未満であると、触媒効果が発揮され難くなることがある。200g/cm3より多いと、隔壁の細孔が閉塞することにより、圧力損失が大きくなり、捕集効率が著しく低下することがある。
本実施形態のハニカム構造体に触媒を担持する場合には、触媒は、三元触媒、SCR触媒、NOX吸蔵触媒、酸化触媒からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。三元触媒とは、主に炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOX)を浄化する触媒のことをいう。三元触媒としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を含む触媒を挙げることができる。SCR触媒は、被浄化成分を選択還元する触媒である。特に、本実施形態のハニカム構造体においては、SCR触媒が、排ガス中のNOXを選択還元するNOX選択還元用SCR触媒であることが好ましい。NOX選択還元用SCR触媒としては、排ガス中のNOXを選択還元して浄化する触媒を好適例として挙げることができる。また、SCR触媒としては、金属置換されたゼオライトを挙げることができる。ゼオライトを金属置換する金属としては、鉄(Fe)、銅(Cu)を挙げることができる。ゼオライトとしては、ベータゼオライトを好適例として挙げることができる。また、SCR触媒が、バナジウム、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種を主たる成分として含有する触媒であってもよい。NOX吸蔵触媒としては、アルカリ金属、及び/又はアルカリ土類金属等を挙げることができる。アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウム、リチウム等を挙げることができる。アルカリ土類金属としては、カルシウムなどを挙げることができる。酸化触媒としては、貴金属を含有するものを挙げることができる。酸化触媒として、具体的には、白金、パラジウム及びロジウムからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものが好ましい。
これまでに説明した、一の実施形態において好ましいとされる種々の構成は、以下で説明する他の実施形態、及び更に他の実施形態においても好ましい構成である。
次に、本発明のハニカム構造体の他の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体は、図3に示すようなハニカム構造体101である。図3は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。図3において、一の実施形態のハニカム構造体と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図3に示すように、他の実施形態のハニカム構造体101は、ハニカム構造部9bが、外壁16を有する柱状のハニカムセグメント15を複数個有するものである。そして、複数個のハニカムセグメント15の互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合部17により接合されたセグメント構造のハニカム構造部9bを備えるハニカム構造体101である。ハニカムセグメント15は、第一端面1から第二端面3まで延びる流体の流路となる複数のセル5bを区画形成する多孔体からなる多孔質の隔壁7b及び隔壁7bを取り囲むように配設された外壁16を有するものである。接合部17は、隣接して配置されるハニカムセグメント15の外壁16同士を接合するためのものである。この接合部17は、ハニカム構造部9bに生じる熱応力を緩衝するための緩衝剤として機能してもよい。図3に示すハニカム構造体101では、複数個のハニカムセグメント15が接合された接合体の最外周に、外周壁10bが配置されている。セグメント構造のハニカム構造部9bを備えるハニカム構造体101において、隣り合うハニカムセグメント15の外壁16同士が接する部分、及び接合部17については、隔壁7bと見なさない。
接合部については、ハニカム構造体の熱容量を大きくし、且つ熱伝導率もある程度大きくするために、接合部がSiC粒子、及びアルミナファイバを含むことが好ましい。また、従来公知のセグメント構造のハニカム構造部における接合部と同様に構成されたものを用いてもよい。
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体は、図4に示すようなハニカム構造体102である。図4は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。図4において、一の実施形態のハニカム構造体と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図4に示すように、目封止部19は、複数のセル5のうちの、所定のセル5Aの第一端面1側の開口部、及び残余のセル5Bの第二端面3側の開口部、又は、複数のセル5のうちの所定のセル5Aの第一端面1側の開口部のみ等に配設することができる。目封止部19を配設することにより、ハニカム構造体102の熱容量を更に大きくし、且つ、熱伝導率を更に大きくすることができる。
(2)ハニカム構造体の製造方法
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。以下、セグメント構造のハニカム構造体を製造する方法を例として説明するが、本発明のハニカム構造体はセグメント構造のハニカム構造体に限定されるものではない。
まず、耐火物骨材となる炭化珪素粉末と、焼成によりボンド材となるボンド材生成用原料粉末と、焼結助剤としてのアルカリ土類金属の酸化物と、を混合し成形原料を作製する。必要に応じて、更にバインダー、界面活性剤、造孔剤、水等を添加してもよい。耐火物骨材としては、炭化珪素粉末を用いた例を説明するが、窒化珪素粉末等でもよい。ボンド材生成用原料粉末は、焼成により「コージェライトと金属Siを含むボンド材」が生成するものを挙げることができる。例えば、コージェライト粉末と金属Si粉末との混合粉末、コージェライト粉末と焼成により金属Siが生成する粉末との混合粉末、コージェライト化原料粉末と金属Si粉末との混合粉末、コージェライト化原料粉末と焼成により金属Siが生成する粉末との混合粉末、等を挙げることができる。コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライト結晶が生成する原料を意味し、例えば、タルク35.9質量%、水酸化アルミニウム44.3質量%、及びシリカ粉末19.8質量%の混合粉末を挙げることができる。また、ボンド材生成用原料粉末の変わりに、コージェライト化原料を用いてもよい。コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライト結晶が生成する原料を意味する。
焼結助剤としてのアルカリ土類金属の酸化物は、Ca、Sr、及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を含む酸化物、又は、当該酸化物を2種類以上含む混合物を含むことが好ましい。
成形原料に添加するバインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダーを挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが、保形性が良好であるため、好ましい。バインダーの添加量は、成形原料全体に対して2質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。
成形原料に添加する界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。界面活性剤は、これらのうち、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤の添加量は、成形原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
造孔剤としては、焼成後に燃焼し、造孔剤が焼成前に存在していた部分が気孔となるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔剤の添加量は、成形原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。また、造孔剤の平均粒子径は、10μm以上、30μm以下であることが好ましい。造孔剤の平均粒子径が、10μmよりも小さいと、焼成後のハニカム構造体に気孔が十分に形成されないことがあり、30μmよりも大きいと、成形原料を押出成形等によりハニカム成形体とする際に、成形原料が押出用の口金に詰まることがある。造孔剤の平均粒子径は、レーザー回折法により測定した値である。なお、造孔剤が吸水性樹脂である場合、平均粒子径の値は、吸水性樹脂が十分に吸水した後の値である。
次に、成形原料を混練して坏土とする。成形原料を混練して坏土とする方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いることができる。成形原料に対する水の添加量は、成形原料である坏土が、成形しやすい坏土硬度となるように適宜調整されるが、成形原料全体に対して20質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。
そして、坏土を押出成形して、ハニカムセグメント成形体とする。押出成形には、所望のハニカムセグメント形状、セル形状、隔壁厚さ、及びセル密度等になるように設計された口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカムセグメント成形体とは、焼成後にハニカムセグメントとなるものである。ハニカムセグメント成形体の隔壁の厚さ、セル密度等は、ハニカムセグメント成形体を乾燥、焼成した時におこるハニカムセグメント成形体の収縮を考慮し、作製しようとするハニカムセグメントの構造に合わせて適宜決定することができる。
次に、得られたハニカムセグメント成形体を、焼成前に乾燥することが好ましい。乾燥の方法としては特に制限はなく、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘導加熱乾燥等の電磁波加熱方式、及び、熱風乾燥、過熱水蒸気等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、ハニカムセグメント成形体全体を迅速かつ均一に、クラック等が生じないように乾燥させることができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を除いた後、残りの水分を外部加熱方式により除くことが好ましい。乾燥の条件としては、電磁波加熱方式にて、ハニカムセグメント成形体の乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、水分量を3質量%以下とすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
次に、ハニカムセグメント成形体のセルの延びる方向における長さが、所望の長さよりも長い場合は、ハニカムセグメント成形体の両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法については特に制限はなく、例えば、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
次に、ハニカムセグメント成形体を焼成して、ハニカムセグメントを作製する。ハニカムセグメント成形体は、焼成の前にバインダー等を除去するため、仮焼を行うことが好ましい。仮焼は、大気雰囲気下において、200℃以上、600℃以下で、0.5〜20時間行うことが好ましい。焼成は、窒素、アルゴン等の非酸化性雰囲気下(酸素分圧が10−4気圧以下)において、1400℃以上、1460℃以下で、常圧で、1〜20時間行うことが好ましい。また、焼成後に、ハニカムセグメントの耐久性を向上するため、大気雰囲気下(水蒸気を含んでいてもよい)において、1100℃以上、1400℃以下で、酸化処理を1〜20時間行ってもよい。なお、仮焼、焼成、及び酸化処理は、例えば、電気炉、ガス炉等を用いて行うことができる。
ここで、ハニカム構造体が目封止部を備えたものを作製する場合は、得られたハニカムセグメントに目封止部を形成する。即ち、得られた各ハニカムセグメントの第一端面における複数のセルのうち、所定のセルの開口部、及び第二端面における残余のセルの開口部に目封止材を充填し、目封止部を作製する。ハニカムセグメントに目封止材を充填する際には、まず、ハニカムセグメントの一方の端面(例えば、第一端面)側から、所定のセル内に目封止材を充填する。その後、他方の端面(例えば、第二端面)側から、一方の端面において目封止されていないセル内に目封止材を充填する。目封止材を充填する方法としては、以下のようなマスキング工程及び圧入工程を有する方法を挙げることができる。
マスキング工程は、ハニカムセグメントの一方の端面(例えば、第一端面)にシートを張り付け、シートにおける、「目封止部を形成しようとするセル」と重なる位置に孔を開ける工程である。圧入工程は、「ハニカムセグメントの、シートが張り付けられた側の端部」を目封止材が貯留された容器内に圧入して、目封止材をハニカムセグメントのセル内に圧入する工程である。目封止材をハニカムセグメントのセル内に圧入する際には、目封止材はシートに形成された孔を通過し、シートに形成された孔と連通するセルにのみ充填される。ハニカムセグメントの他方の端面(例えば、第二端面)からセル内に目封止材を充填する方法も、上記のようなハニカムセグメントの一方の端面からセル内に目封止材を充填する方法と同様の方法とすることが好ましい。また、ハニカムセグメントの両方の端面から、目封止材を同時に充填してもよい。
次に、ハニカムセグメントのセル内に充填された目封止材を乾燥させて、目封止部を形成し、目封止ハニカムセグメントを得ることが好ましい。また、目封止材を、より確実にハニカムセグメントに固定化するために、目封止材を乾燥させた後に焼成してもよい。また、乾燥前のハニカムセグメントの成形体又は乾燥後のハニカムセグメントの成形体に目封止材を充填し、乾燥前のハニカムセグメントの成形体又は乾燥後のハニカムセグメントの成形体と共に、目封止材を焼成してもよい。
次に、得られた各ハニカムセグメントを接合材により接合して、ハニカムセグメントの接合体を得ることができる。ハニカムセグメントには、目封止部が形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。接合部となる接合材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、炭化珪素粒子等の無機材料に、有機バインダー、発泡樹脂、分散剤等の添加剤を加えたものに、更に水を加えて混練したスラリー等を挙げることができる。
次に、得られたハニカムセグメントの接合体の外周部分を研削して所望の形状にすることが好ましい。また、ハニカムセグメントを接合し、ハニカムセグメントの接合体の外周部分を研削した後に、その外周部分に外周コート材により外周壁を設けることが好ましい。このような外周壁を配設することにより、ハニカム構造体の外形公差を小さくする等の利点がある。外周コート材は、接合材として作製したスラリーと同じものを用いてもよく、異なるものであってもよい。このように製造することによって、本発明のハニカム構造体を製造することができるが、ハニカム構造体の製造方法は、上述した製造方法に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
耐火物骨材として、平均粒子径14μm、比表面積4000cm2/cm3の炭化珪素(SiC)粉末と、金属Si粉末と、酸化物生成用原料粉末とを、59:14:27の質量比で混合し、「混合粉末」とした。酸化物生成用原料粉末としては、タルクを45.1体積%、カオリンを32.8体積%、水酸化アルミニウムを22.1体積%含有する粉末を用いた。そして、上記「混合粉末」に、バインダーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔剤として澱粉、吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。バインダーの含有量は、混合粉末を100質量部としたときに、7質量部であり、造孔剤の含有量は3質量部であり、水の含有量は、70質量部であった。また、造孔剤の平均粒子径は、15μmであった。また、酸化物生成用原料のタルクの平均粒子径は3μmであり、カオリンの平均粒子径は1μmであり、水酸化アルミニウムの平均粒子径は0.2μmであった。平均粒子径の値は、島津製作所社製のSALD3100を用い、レーザー回折法により測定した値であり、比表面積の値は、島津製作所社製のトライスターII3020を用い、BET法により測定した値である。
次に、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、セル形状が四角形で、全体形状が四角柱形であり、隔壁の厚さが0.3mmであり、セル密度が46.5セル/cm2である、16個のハニカムセグメント成形体を得た。次に、得られた各ハニカムセグメントの、第一端面における所定のセルの開口部、及び第二端面における残余のセルの開口部に目封止材を充填し、目封止部を形成した。
次に、ハニカムセグメント成形体を誘電乾燥で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカムセグメント成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。そして、ハニカムセグメント成形体を1410〜1440℃で、5時間、焼成した。得られたハニカムセグメント成形体について、隔壁の気孔率(%)を島津製作所社製の水銀ポロシメーター(型番IV9500)により測定した。
次に、16個のハニカムセグメントを接合材によって接合した後、得られたハニカムセグメントの接合体の外周部分を研削して、後に、その外周部分に外周コート材により外周壁を設けた。外周コート材と接合材には、SiC粒子を10質量%、アルミナ繊維を10質量%、コロイダルシリカを10質量%含有するスラリーを用いた。
得られたハニカム構造体のハニカム構造部は、ハニカム構造部のセルの延びる方向に垂直な断面の直径(外径)が143.7mmであり、ハニカム構造部のセルの延びる方向の長さが152mmの円柱形であった。隔壁の厚さは、300μmであり、セル密度は、46.5セル/cm2であった。セルの形状は、四角形であった。
得られたハニカム構造体について、炭化珪素と金属Siの質量に占める金属Siの質量の比率、酸化物材料と炭化珪素の質量に占める酸化物の質量の比率、多孔体全体の質量に占める炭化珪素の質量の比率、多孔体全体の質量に占める金属Siの質量の比率、多孔体全体の質量に占める酸化物材料の質量の比率、多孔体全体の質量に占めるボンド材の質量の比率、及び、ボンド材の質量に占める酸化物材料の質量の比率を、蛍光X線定量分析により測定した。
表1に、隔壁の気孔率(%)、炭化珪素と金属Siの質量に占める金属Siの質量の比率、酸化物材料と炭化珪素の質量に占める酸化物の質量の比率、多孔体全体の質量に占める炭化珪素の質量の比率、多孔体全体の質量に占める金属Siの質量の比率、多孔体全体の質量に占める酸化物材料の質量の比率、多孔体全体の質量に占めるボンド材の質量の比率、ボンド材の質量に占める酸化物材料の質量の比率を示す。なお、表1においては、以下のように表記した。炭化珪素と金属Siの質量に占める金属Siの質量の比率を、「(Si+SiC)に占めるSi(質量%)」と表記した。酸化物材料と炭化珪素の質量に占める酸化物の質量の比率を、「(酸化物+SiC)に占める酸化物(質量%)」と表記した。多孔体全体の質量に占める炭化珪素の質量の比率を、「多孔体に占めるSiC(質量%)」と表記した。多孔体全体の質量に占める金属Siの質量の比率を、「多孔体に占めるSi(質量%)」と表記した。多孔体全体の質量に占める酸化物材料の質量の比率を、「多孔体に占める酸化物(質量%)」と表記した。多孔体全体の質量に占めるボンド材の質量の比率を、「多孔体に占めるボンド材(質量%)」と表記した。ボンド材の質量に占める酸化物材料の質量の比率を、「ボンド材に占める酸化物(質量%)」と表記した。
得られたハニカム構造体について、以下の方法で、「800℃における比熱容量[J/(cc・K)]」、及び「800℃における熱伝導率[W/(m・K)]」の測定を行った。結果を表2に示す。800℃における比熱容量、及び熱伝導率は、アルバック社製のレーザーフラッシュ法熱定数測定装置(型番:TC1200RH)により測定した。結果を表2に示す。表2においては、「800℃における比熱容量」、及び「800℃における熱伝導率」をそれぞれ、「比熱容量[J/(cc・K)]」、及び「熱伝導[W/(m・K)]」と表記した。
(PM燃焼時におけるハニカム構造体の最高温度Tmax測定)
また、得られたハニカム構造体について、以下の2つの方法で、PM燃焼時のハニカム構造体の最高温度Tmaxを測定した。第一の方法においては、PMを含有する軽油バーナー排ガスを流すことにより、ハニカム構造体の体積1リットル当たりに対して、PMを8g堆積させた。次に、PM堆積後のハニカム構造体を、プロパンを燃料として用いるバーナー試験装置に入れ、PMを燃焼させた。そして、PM燃焼時におけるハニカム構造体の最高温度Tmaxを、K型シース熱電対により測定した。また、第二の方法においては、PMを含むディーゼルエンジン排ガスを流すことにより、ハニカム構造体の体積1リットル当たりに対して、PMを8g堆積させた。次に、PM堆積後のハニカム構造体を、下記のように構成したエンジン試験装置に入れ、PMを燃焼させた。エンジン試験装置は、エンジンから排出される、温度が650℃の排ガスを利用して、PMを燃焼させて、ハニカム構造体の再生を行うものである。そして、PM燃焼時におけるハニカム構造体の最高温度Tmaxを、K型シース熱電対により測定した。測定結果を、表2に示す。なお、最高温度Tmaxの値は、絶対値ではなく、後述する比較例1を基準とし、比較例1のTmaxとの温度差により表記した。例えば、一の実施例のTmaxの欄に「−150」と表記した場合は、比較例1のTmaxの値よりも、Tmaxの値が150℃低かったということを意味する。そして、他の実施例のTmaxの欄に「50」と表記した場合は、比較例1のTmaxの値よりも、Tmaxの値が50℃高かったということを意味する。また、比較例1のTmaxの値を基準とするため、比較例1のTmaxの値は、「0」と表記した。更に、比較例1のTmaxの値と同じTmaxの値であったものに関しても、「0」と表記した。なお、表2においては、「第一の方法で測定したPM燃焼時におけるハニカム構造体の最高温度Tmax」を「最高温度(℃)<バーナー>」と表記した。また、「第二の方法で測定したPM燃焼時におけるハニカム構造体の最高温度Tmax」を「最高温度(℃)<エンジン>」と表記した。以下、「第一の方法によるPM燃焼時におけるハニカム構造体の最高温度Tmax測定結果」を、単に「第一の方法による測定結果」ということがある。また、「第二の方法によるPM燃焼時におけるハニカム構造体の最高温度Tmax測定結果」を、単に「第二の方法による測定結果」ということがある。
(圧力損失測定)
ディーゼルエンジン(3.0リットル、直噴コモンレール、直列6気筒)から排出される排ガスをハニカム構造体に流入させて、ハニカム構造体の体積に対するPMの堆積量が4g/Lとなるように、ハニカム構造体の隔壁にてPMを捕集した。そして、PMの堆積量が4g/Lとなった状態で、200℃のエンジン排ガスを3.0Nm3/minの流量で流入させてハニカム構造体の流入端面側と流出端面側との圧力を測定し、その圧力差を算出することにより、圧力損失(kPa)を求めた。結果を表2に示す。
(総合評価)
第一の方法による測定結果と、第二の方法による測定結果とから、以下の評価基準により、良、可、不可の総合評価を行った。結果を表2に示す。
評価「良」:第一の方法による測定結果が「−150」以下であり、且つ、第二の方法による測定結果が「−130」以下である場合を、評価「良」とする。
評価「可」:第一の方法による測定結果が「−70」以下であり、且つ、第二の方法による測定結果が「−70」以下である場合を、評価「可」とする。
評価「不可」:第一の方法による測定結果が測定不可である場合、第一の方法による測定結果が「−60」以上である場合、又は、第二の方法による測定結果が「−60」以上である場合を、評価「不可」とする。
(実施例2)
炭化珪素(SiC)粉末と、金属Siと、酸化物生成用原料粉末とを、59:20:21の質量比で混合し、「混合粉末」としたこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。
(実施例3)
炭化珪素(SiC)粉末と、金属Siと、酸化物生成用原料粉末とを、56:26:18の質量比で混合し、「混合粉末」としたこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。
(比較例1)
炭化珪素(SiC)粉末と、金属Siとを、73.3:25の質量比で混合し、「混合粉末」としたこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。なお、比較例1では、「混合粉末」が酸化物生成用原料粉末を含まないように作製したが、ハニカム構造体の焼成時において、酸化物が生成するため、ボンド材には酸化物材料が含まれていた。
(比較例2)
炭化珪素(SiC)粉末と、金属Siと、酸化物生成用原料粉末とを、42:12:53.7の質量比で混合し、「混合粉末」としたこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。比較例2のハニカム構造体は、第一の方法によるPM燃焼時におけるハニカム構造体の最高温度Tmax測定において、測定中にクラックが発生したため、最高温度Tmaxを測定することができなかった。
(比較例3)
炭化珪素(SiC)粉末と、金属Siと、酸化物生成用原料粉末とを、31:24:56.7の質量比で混合し、「混合粉末」としたこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。比較例3のハニカム構造体は、第一の方法によるPM燃焼時におけるハニカム構造体の最高温度Tmax測定において、測定中にクラックが発生したため、最高温度Tmaxを測定することができなかった。なお、比較例3では、「混合粉末」が金属珪素を含まないように作製したが、ハニカム構造体の焼成時において、金属Siが生成するため、ボンド材には金属Siが含まれていた。
(結果1)
表2に示すように、実施例1〜3のハニカム構造体は、第一の方法による測定結果と、第二の方法による測定結果の双方の評価において良好な結果を得ることができた。
比較例1のハニカム構造体は、ボンド材の質量に占める酸化物材料の質量の比率が30質量%より小さいため、ハニカム構造体の比熱容量、熱伝導率が共に小さかった。このため、第一の方法による測定結果、及び第二の方法による測定結果が良好でないため、総合評価が不可であった。
比較例2のハニカム構造体は、ボンド材の質量に占める酸化物材料の質量の比率が30質量%より小さいため、ハニカム構造体の比熱容量が小さく、第一の方法による測定結果、及び第二の方法による測定結果が良好でないため、総合評価が不可であった。
比較例3のハニカム構造体は、ボンド材の質量に占める酸化物材料の質量の比率が80質量%より大きいため、ハニカム構造体の熱伝導率が小さく、第一の方法による測定結果、及び第二の方法による測定結果が良好でないため、総合評価が不可であった。
また、多孔体全体の質量に占めるボンド材の質量の比率、及びボンド材の質量に占める酸化物材料の質量の比率をそれぞれ一定の値とし、隔壁を構成する多孔体の気孔率のみがそれぞれ異なるハニカム構造体を作製した。これらを実施例4、実施例5、比較例4、及び比較例5として以下に示す。実施例4、実施例5、比較例4、及び比較例5のハニカム構造体に関しても、第一の方法による測定、第二の方法による測定、及び圧力損失測定を行った。結果を実施例1と同様に、表1、及び表2に示す。
(実施例4、実施例5、比較例4、及び比較例5)
表1に示す構成となるように「混合粉末」を調製し、当該「混合粉末」に、バインダーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔剤として澱粉、吸水性樹脂を適宜添加すると共に、水を適宜添加して成形原料とした。上記以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。
(結果2)
実施例4及び実施例5のハニカム構造体は、隔壁を構成する多孔体の気孔率が25%以上、70%以下であるため、比熱容量、及び熱伝導率が共に大きく、第一の方法による測定結果と、第二の方法による測定結果の双方において良好な結果を得ることができた。一方で、比較例4のハニカム構造体は、隔壁を構成する多孔体の気孔率が25%より小さいため、熱伝導率が大きかった。また、比較例5のハニカム構造体は、隔壁を構成する多孔体の気孔率が70%より大きいため、熱伝導率が小さかった。比較例4及び比較例5のハニカム構造体は、第一の方法による測定結果、及び第二の方法による測定結果が良好でなく、総合評価が不可であった。
また、隔壁を構成する多孔体の気孔率、及びボンド材の質量に占める酸化物材料の質量の比率をそれぞれ一定の値とし、多孔体全体の質量に占めるボンド材の質量の比率のみがそれぞれ異なるハニカム構造体を作製した。これらを実施例6、比較例6、及び比較例7として以下に示す。実施例6、比較例6、及び比較例7のハニカム構造体に関しても、第一の方法による測定、第二の方法による測定、及び圧力損失測定を行った。結果を実施例1と同様に、表1、及び表2に示す。
(実施例6、比較例6、及び比較例7)
表1に示す構成となるように「混合粉末」を調製し、当該「混合粉末」に、バインダーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔剤として澱粉、吸水性樹脂を適宜添加すると共に、水を適宜添加して成形原料とした。上記以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。
(結果3)
実施例6のハニカム構造体は、多孔体全体の質量に占めるボンド材の質量の比率が30%以上、50%以下であるため、比熱容量、及び熱伝導率が共に大きく、第一の方法による測定結果と、第二の方法による測定結果の双方において良好な結果を得ることができた。一方で、比較例6のハニカム構造体は、多孔体全体の質量に占めるボンド材の質量の比率が30質量%より小さいため、比熱容量、及び熱伝導率が共に小さかった。また、比較例7のハニカム構造体は、多孔体全体の質量に占めるボンド材の質量の比率が50質量%より大きいため、熱伝導率が小さかった。比較例6及び比較例7のハニカム構造体は、第一の方法による測定結果、及び第二の方法による測定結果が良好でなく、総合評価が不可であった。
更に、多孔体全体の質量に占めるボンド材の質量の比率、及び隔壁を構成する多孔体の気孔率をそれぞれ一定の値とし、ボンド材の質量に占める酸化物材料の質量の比率のみがそれぞれ異なるハニカム構造体を作製した。これらを実施例7、実施例8、比較例8、及び比較例9として以下に示す。実施例7、実施例8、比較例8、及び比較例9のハニカム構造体に関しても、第一の方法による測定、第二の方法による測定、及び圧力損失測定を行った。結果を実施例1と同様に、表1、及び表2に示す。
(実施例7、実施例8、比較例8、及び比較例9)
表1に示す構成となるように「混合粉末」を調製し、当該「混合粉末」に、バインダーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔剤として澱粉、吸水性樹脂を適宜添加すると共に、水を適宜添加して成形原料とした以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。
(結果4)
実施例7及び実施例8のハニカム構造体は、ボンド材の質量に占める酸化物材料の質量の比率が30%以上、80%以下であるため、比熱容量、及び熱伝導率が共に大きかった。このため、第一の方法による測定結果と、第二の方法による測定結果の双方において良好な結果を得ることができた。一方で、比較例8のハニカム構造体は、ボンド材の質量に占める酸化物材料の質量の比率が80質量%より大きいため、熱伝導率が小さかった。また、比較例9のハニカム構造体は、ボンド材の質量に占める酸化物材料の質量の比率が30質量%より小さいため、熱伝導率が小さかった。比較例8及び比較例9のハニカム構造体は、第一の方法による測定結果、及び第二の方法による測定結果が良好でなく、総合評価が不可であった。