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JP6464866B2 - 表面修飾基材、ポリマー被覆基材、およびそれらの製造方法 - Google Patents

表面修飾基材、ポリマー被覆基材、およびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面修飾基材およびポリマー被覆基材に関する。本発明はフィルム、シートといった表面が平滑な材料のみならず、多孔質材料にも応用することができる。特に、多孔質膜や逆浸透膜の表面を簡便にグラフトポリマー層で被覆することができる。
基材表面の修飾方法としては、基材表面にポリマーをコーティングする方法、プラズマやコロナで処理する方法、表面に重合開始基を導入しグラフト重合する方法等が提案されている。ポリマーをコーティングする方法は簡便であり、幅広く用いられているが、コーティングポリマーが基材から剥離しやすく、長期間安定して機能を維持することが難しかった。また、プラズマ処理やコロナ処理は大掛かりな装置が必要であり、処理の過程で基材を損傷しやすいといった欠点があった。一方、表面に重合開始基を導入し、グラフト重合する方法は長期安定性に優れ、基材の損傷もないことから優れた修飾方法であるが、基材の種類ごとに重合開始基導入方法が異なり、複雑な導入反応を必要とする点が欠点であった。
タンニンは植物由来のポリフェノールであり、加水分解型や縮合型といった幅広い種類の化合物が含まれる。この多様な化学構造に起因して、タンニンは様々な基材に吸着することができ、基材に多様な機能を付与している。例えば、特許文献1には疎水性樹脂粒子に高分子タンニンを吸着させ、更に架橋することで固定化高分子タンニンを製造し、酒造用タンパク質吸着剤や浄水処理剤、廃水処理剤に用いることが記載されている。また、特許文献2には、ポリスルホン膜に五倍子タンニンを吸着させ親水性を付与すること、特許文献3には、逆浸透膜に加水分解型タンニンを吸着させイオンの阻止性能を向上させることが記載されている。更に、特許文献4には、ライチ果皮由来のポリフェノールをポリフッ化ビニリデン(以下PVDFと略す)多孔膜に吸着させ親水性を向上させることが記載されている。
このように、タンニンは様々な基材への吸着特性に優れ、簡便な方法で基材表面を機能化することができるが、付与される機能は限定されており、幅広い機能の付与が望まれていた。
特開平7−24313号公報 特開平5−301036号公報 特開2006−223963号公報 特開2012−254404号公報
本発明は、基材の種類を選ぶことなく、その基材表面に簡便に重合開始基を導入して表面修飾基材を製造し、提供することを目的とする。また、本発明は、表面に重合開始基が導入された表面修飾基材を用いて表面にグラフトポリマー層を有するポリマー被覆基材を製造し、提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討を行った結果、タンニンを用いることで基材の種類を選ぶことなく、その基材表面の修飾が可能であること、またタンニンは多くの水酸基を有しているため容易に重合開始基を導入できることを利用して、タンニンに導入した重合開始基からモノマーが重合可能となった。また本発明者は、更に基材表面にグラフトポリマー層を形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、
[1]重合開始基が導入されたタンニン層を基材表面に有する表面修飾基材。
[2]少なくとも下記2工程を経て表面修飾基材を製造することを特徴とする、表面修飾基材の製造方法。
(1)タンニン、重合開始基及びタンニンの水酸基と反応する官能基を有する化合物とを反応させ、重合開始基が導入されたタンニンを製造する工程。
(2)基材と重合開始基が導入されたタンニンを接触させ、基材表面に重合開始基が導入されたタンニン層を形成する工程。
[3]タンニン層の重合開始基を起点としてモノマーを重合して形成されたグラフトポリマー層で被覆された基材。
[4][3]記載のモノマーがアルコキシアルキル基、アルコキシポリオキシエチレン基、ホスホベタイン基、スルホベタイン基、カルボキシベタイン基から選ばれた官能基とビニル基とを有しているモノマーであることを特徴とするポリマー被覆基材。
[5]基材表面に重合開始基が導入されたタンニン層が形成されている表面修飾基材と、前記重合開始剤基を起点としてモノマー重合することによってグラフトポリマー層で被覆されることを特徴とするポリマー被覆基材の製造方法。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明の表面修飾基材は、基材と、基材表面に形成された重合開始基を含むタンニン層とからなる。
本発明で用いられる基材の材質には特に制限はなく、アルミニウム、鉄、ステンレス、チタン、金、白金、銀、銅等の金属;シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、シリコン、ガラス、炭素繊維等の無機材料;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、酢酸セルロース、PVDF、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル等が挙げられる。中でも、ポリアミド、ポリスチレン、PVDF、金属等は重合開始基が導入されたタンニン層を吸着しやすいことからコート基材として好適である。
基材の形状及び基材の表面形状にも特に制限はなく、板、シート、フィルム、薄膜、網、布、粒子状、粉末状、チューブ状、繊維状等様々な形状の基材を用いることができる。更に表面形状においてもエンボス状、波状、ライン&スペース等を例として挙げられるが、特に制限はない。また、基材として多孔質体も用いることができ、サイコロ状、シート状、平膜状、チューブ状、中空糸、不織布等の形状で用いることができる。好ましい多孔質体としては平膜状多孔質体や中空糸状多孔質体が挙げられ、特に、精密ろ過膜や限外ろ過膜として用いられている多孔質体が本発明においては好ましく用いられる。
ここで言う精密ろ過膜とは、0.05〜10μm程度の孔径を有する多孔質膜であり、材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン、PVDF、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、セルロース等の有機ポリマーやアルミナ等のセラミックスが用いられている。一方、限外ろ過膜とは2〜50nm程度の孔径を有する多孔質膜であり、材質としてはポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル−ポリアクリロニトリル共重合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、PVDF、芳香族ポリアミド、ポリイミド、酢酸セルロース等の有機ポリマーやアルミナ等のセラミックスが用いられている。
限外ろ過膜の多孔構造は、精密ろ過膜が均一多孔構造を有しているのに対し、表面の緻密層と内部の支持層で多孔構造が異なる非対称膜構造を有している。更に、上記の形状を複合化した基材を用いても良く、逆浸透膜のように多孔質膜と非多孔質薄膜を複合化した複合膜も本発明で好適に用いられる。複合膜構造を有する逆浸透膜は、ポリスルホンからなる多孔質支持層(限外ろ過膜)と架橋芳香族ポリアミドからなる水とイオンの分離機能を担う非多孔質薄膜が複合化した構造を有している。
本発明で用いられるタンニンとは、植物に由来し、タンパク質、アルカロイド、金属イオンと反応し強く結合して難溶性の塩を形成する水溶性化合物であり、多数のフェノール性水酸基を持つ複雑な芳香族化合物である。タンニンは化学構造の違いから、加水分解型タンニン、縮合型タンニンに分類されるが、本発明においてはいずれも好適に用いられる。基材が親水性の場合は加水分解型タンニンが、基材が疎水性の場合は縮合型タンニンが好適に用いられるが、この限りではない。
本発明において加水分解型タンニンとは、酸、アルカリ、酵素で多価フェノールと多価アルコールに加水分解されるものであり、多価フェノールが没食子酸の場合はガロタンニン、エラグ酸の場合はエラジタンニンを例示することができる。更にガロタンニンの例としては、五倍子タンニン、没食子タンニンが、エラジタンニンの例としてはゲラニインが挙げられるが、この限りではない。
一方、縮合型タンニンは、フラバノール骨格を持つ化合物が重合した構造を有しており、加水分解を受けない。また縮合型タンニンの具体例としては、カテキン、エピカテキン、プロアントシアニジンやこれらの重合物が挙げられるがこの限りではない。
本発明で用いられる重合開始基は、重合を開始する官能基であればイオン重合の開始基でもラジカル重合の開始基でも良く、重合形式は問わない。本発明において特に制限はないが、モノマーの適用範囲が広く操作も簡便であることから重合形式としてはラジカル重合が好ましい。また重合開始基もラジカル重合の開始基が好ましい。更に、均一性が高くグラフト密度の高い表面グラフト層が形成できることから、制御ラジカル重合が重合形式として好ましいため、重合開始基としては制御ラジカル重合の開始基が更に好ましく用いられる。
重合開始基の例としては、過酸化物、アゾ化合物、有機金属化合物、ルイス酸、ドーマント種等が挙げられる。以下に、制御ラジカル重合における重合開始基について、更に詳しく説明する。ニトロキシドを介した重合法(以下NMPと略す)を表面グラフト重合に用いる場合は、導入すべき重合開始基はニトロキシドとなる。モノマーとしてスチレン誘導体用いる際には、NMPが重合法として好適である。たとえば1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシ)−2−(ジメチルクロロシリルオクチロキシ)エチルベンゼンとタンニンを反応させることで、重合開始基であるニトロキシル基をタンニンに導入することができる。また、原子移動ラジカル重合法(以下ATRPと略す)を用いる場合は、導入すべき重合開始基は有機ハロゲン化合物である。導入方法の例としては、2−ブロモイソ酪酸ブロミドとタンニンを反応させ、重合開始基をタンニンに導入する方法が挙げられるがこの限りではない。
また、モノマーにメタクリル酸エステルを用いる場合、ATRPが好適なでグラフト重合法となるが、この限りではない。可逆的付加−開裂連鎖移動重合法(以下RAFTと略す)でグラフト重合を行う場合は、導入すべき開始基はチオカルボニルチオ基となる。導入方法の例としては、4−シアノ−4−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸クロリドとタンニンを反応させ、重合開始基をタンニンに導入する方法が挙げられる。モノマーとしてアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルを用いる際には、RAFTが好適な重合法となるが、この限りではない。
本発明の基材表面に形成された重合開始基が導入されたタンニン層の厚みは、1〜30nmが好ましく、特に、1〜10nmが好ましい。タンニン層の厚みが1nm未満であると、基材表面への重合開始基導入量が少なくなってしまうため好ましくなく、タンニン層の厚みが30nmを超えると、タンニン層内部からもグラフト重合が進行してタンニン層の剥離が頻発するため好ましくない。
本発明の表面修飾基材の製造方法は、少なくとも下記2工程を経て表面修飾基材を製造することを特徴とする。(1)タンニン、重合開始基及びタンニンの水酸基と反応する官能基を有する化合物とを反応させ、重合開始基が導入されたタンニンを製造する工程。
(2)基材と重合開始基が導入されたタンニンを接触させ、基材表面に重合開始基が導入されたタンニン層を形成する工程。
以下に(1)の工程について説明する。
タンニンの水酸基と反応する官能基としては、重合開始基が変質しないような温和な条件下で水酸基と反応できる官能基を選択する必要があり、例えば、カルボキシル基、酸ハライド基、酸無水物基、スルホニルクロリド基、エポキシ基、イソシアネート基、シリルハライド基等が挙げられる。上記重合開始基とタンニンの水酸基と反応する官能基を有する化合物の具体例としては、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシ)−2−(ジメチルクロロシリルオクチロキシ)エチルベンゼン、1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシ)−2−(トリクロロシリルオクチロキシ)エチルベンゼン、2−ブロモイソ酪酸、2−ブロモイソ酪酸ブロミド、2−ヨードイソ酪酸ブロミド、2−ブロモイソプロピオン酸、2−ブロモイソプロピオン酸ブロミド、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルジメチルクロロシラン、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、4−シアノ−4−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、4−シアノ−4−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸クロリド、2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロピオン酸、2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロピオン酸クロリド、4−シアノ−4−(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸、4−シアノ−4−(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸クロリド等が挙げられる。
タンニンと、重合開始基及びタンニンの水酸基と反応する官能基を有する化合物の反応は、両者を混合するだけでもよいが、温和な条件で反応を定量的に進行させるため、一般的に用いられるジシクロヘキシルカルボジイミドやカルボニルジイミダゾール等の縮合剤や、触媒や酸トラップ剤として働くピリジンやトリエチルアミン等の塩基を添加しても良い。
反応温度は0〜60℃が好ましく、更に好ましくは0〜30℃である。反応時間は、反応が定量的に進行する時間を設定すれば特に制限はなく、通常10分〜24時間の範囲で設定可能である。
反応に用いる溶媒は、タンニンと、重合開始基とタンニンの水酸基と反応する官能基を有する化合物および反応生成物を溶解し、反応を阻害しないことと、基材を溶解・膨潤させないことが必要条件である。好ましい溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等のアミド系溶媒;テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−イミダゾリジノン等の尿素系溶媒;ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等が挙げられる。
反応の際のタンニンの濃度に特に制限はなく、0.01〜10%の範囲で適宜選択すれば良い。タンニンと、重合開始基とタンニンの水酸基と反応する官能基を有する化合物との仕込比は、タンニンの水酸基1モルに対して0.1〜3モルである。
反応後の生成物は、一旦単離して次の(2)の工程に用いても良いし、単離せずに溶液の状態で(2)の工程に用いても良い。
次に(2)の工程について説明する。
基材と重合開始基が導入されたタンニンを接触させる際の溶媒としては、重合開始基が導入されたタンニンを溶解でき、基材を損傷させる恐れのない溶媒であれば特に制限はなく、具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。重合開始基が導入されたタンニンを接触させる際の濃度には特に制限はなく、0.01〜50%の範囲で設定可能である。基材と重合開始基が導入されたタンニンの接触時間は、溶媒の種類やタンニン濃度、接触させる際の温度によって大きく変化するため幅広い範囲から選択することが可能であり、1分〜48時間の範囲で設定できる。また、両者の接触温度も制限はなく、10〜50℃の範囲から任意に選択可能である。
これらの条件を選択することで、基材表面のタンニン層の厚みをコントロールできる。なお本発明において好ましいタンニン層の厚みは、1〜30nm、更に好ましくは1〜10nmである。
次いで、表面修飾基材に固定された重合開始基を起点としてモノマーを重合することで、グラフトポリマー層を形成し、ポリマー被覆機材を得る。本発明で用いられるモノマーは、イオン重合やラジカル重合等各種の重合形式で重合し得るモノマーであれば特に制限はない。モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリル酸2−スルホエチル、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N、N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロアルキルエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体;スチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸エチル、メチルスチレン、クロロスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、(1−エトキシエトキシ)スチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸ブチル、ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン、ビニルベンジルクロリド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニルピリジン等のスチレン誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化ビニル;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のα−オレフィン;(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
これらのなかで、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N、N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン等のアルコキシアルキル基やアルコキシポリオキシエチレン基、ホスホベタイン基、スルホベタイン基、カルボキシベタイン基を有するモノマーを用いてグラフトポリマー層を形成させると、得られたポリマー被覆基材がタンパク質非吸着特性を有するため、好ましい。タンパク質非吸着特性を有する基材は、生体親和性に優れ抗血栓性を示したり、バイオファウリングの抑制に効果的であるため、幅広い用途で用いることができる。
本発明のポリマー被覆基材におけるグラフトポリマー層の厚みは、その用途によって最適値は異なるものの3〜300nmである。グラフトポリマー層の厚みが3nm未満であると、グラフトポリマー層由来の機能が十分に発現せず、基材の特性を完全に遮蔽することができない。一方、グラフトポリマー層の厚みが300nmを越えると、グラフトポリマー層由来の機能が飽和してくるため、それ以上厚みを増やしても際立った効果は得られない。また、該グラフトポリマー層のグラフト密度は、本発明の方法を用いることで0.1〜0.7本/nmと高密度化することができ、グラフトポリマー層由来の機能をより強調することができる。グラフト密度が0.1本/nm未満であると、グラフトポリマー層由来の機能が十分に発現しないため好ましくない。一方、グラフト密度が0.7本/nmを超えると、モノマーの種類によっては成長末端への拡散が不十分となり、グラフト鎖長にばらつきが生じてしまうため好ましくない。
本発明のポリマー被覆基材の製造方法は、基材表面に重合開始基が導入されたタンニン層が形成されている表面修飾基材とモノマーを接触させ、モノマーが重合する条件に保持することを特徴とする。ここで言うモノマーが重合する条件とは、重合形式によってその条件は大きく変動するが、重合温度については0〜120℃、重合時間については1分〜72時間の間で適宜選定することができる。溶媒は用いなくてもかまわないが、用いるのであれば、モノマーを溶解し、重合反応を阻害せず、基材を溶解・膨潤させない溶媒を選定する。好ましい溶媒としては、水やメタノール、エタノール、プロパノール、テトラメチレングリコール、エチレングリコール、トリフルオロエタノール等のアルコール;アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等のアミド系溶媒;テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−イミダゾリジノン等の尿素系溶媒;ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等が挙げられる。また、上記溶媒を二種類以上混合した混合溶媒も好適に用いられる。
モノマーと溶媒の組成比に特に制限はないが、モノマー100重量部に対して溶媒0〜5000重量部の範囲内で選定することが好ましい。
本発明によれば、簡便な操作で様々な基材に重合開始基を導入でき、その重合開始基を起点として多様なモノマーをグラフト重合させたポリマー被覆基材を得ることができる。例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N、N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインなどのアルコキシアルキル基、アルコキシポリオキシエチレン基、ホスホベタイン基、スルホベタイン基、カルボキシベタイン基から選ばれた官能基を有するモノマーを選定しグラフト重合すれば、タンパク質非吸着特性を有するポリマー被覆基材を製造することができる。
このようなポリマー被覆基材は生体親和性や抗血栓性を有することから人工透析装置、人工心肺装置、血漿分離器等の医療機器;輸液ボトル、輸液バッグ、組織再生用補修材、癒着防止材、創傷被覆材、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工血管、カテーテル、ステント、薬剤デリバリー担体、細胞培養基材等の医療用部材;乳製品等食品の分離・精製に用いられる精密ろ過膜、限外ろ過膜や逆浸透膜等に用いることができる。更に、該ポリマー被覆基材はバイオフィルムの形成やバイオファウリングを抑制できるため、浄水処理や下水・排水処理等で用いられる精密ろ過膜や限外ろ過膜として、また、海水淡水化や純水製造用途等に用いられる逆浸透膜として好適に用いることができる。
モノマーとして(メタ)アクリル酸2−パーフルオロアルキルエチル等の含フッ素モノマーを用いれば、撥水性、非粘着性、防汚性に優れたポリマー被覆基材を提供できる。一方、モノマーとして(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N、N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリル酸2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、ビニル安息香酸、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の親水性モノマーを用いれば、親水性が高く、接着性に優れたポリマー被覆基材を提供できる。
上記モノマーの中で[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム基を有するモノマーを用いると、ポリマー被服基材に親水性のみならず抗菌性を付与することができる。また、上記モノマーのうち、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリル酸2−スルホエチル、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸アンモニウム等のポリエーテルやイオン交換基を有するモノマーを用いると、ポリマー被服基材に親水性のみならずイオン伝導性を付与することができる。
また、モノマーとして(メタ)アクリル酸オクチル等の長鎖アルキル基を有するモノマーを用いれば、摺動性に優れたポリマー被覆基材を提供でき、タンニンを使用することで生体及び環境に対し親和性が高く負荷が低減できる点で利点がある。
実施例1の(A)基材のESCA O1sスペクトルである。 実施例1の(B)表面修飾基材のESCA O1sスペクトルである。 実施例1の(C)ポリマー被覆基材のESCA O1sスペクトルである。 実施例3の(A)基材のESCA O1sスペクトルである。 実施例3の(B)表面修飾基材のESCA O1sスペクトルである。 実施例3の(C)ポリマー被覆基材のESCA O1sスペクトルである。 実施例5で基材に用いたPVDF多孔質膜のSEM画像である。 実施例6で基材に用いた逆浸透膜の模式図である。 実施例6の(A)基材のESCAワイドスキャンスペクトルである。 実施例6の(B)ポリマー被覆基材のESCAワイドスキャンスペクトルである。
以下に、本発明を更に詳細に実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
基材:パラ系アラミドフィルム
(重合開始基導入タンニンの製造)
加水分解型タンニン(和光純薬製、分子量1500、タンニン一分子当りの水酸基21個)0.4gを窒素気流下でDMF20mlに溶解させ、トリエチルアミン0.46gを加えた後、氷冷した。2−ブロモイソ酪酸ブロミト1.06gをDMF10mlに溶解させた溶液を上記タンニン溶液に滴下し、0℃で2時間反応させた後室温に昇温して3時間反応させた。反応後、反応液を一部抜き出し、水に滴下して沈殿物を回収した。回収した生成物のH−NMRを測定すると、2.1ppmにブロモイソ酪酸エステル中のメチル基プロトンが検出されたことから、タンニンに重合開始基であるブロモイソ酪酸エステル基の導入が確認できた。同様に、TOF−MS測定からブロモイソ酪酸アシル基に対応するm/z=74のフラグメントが検出され、タンニンへの重合開始基導入が確認できた。
(表面修飾基材の製造)
パラ系アラミドフィルム(東レ製ミクトロン、厚み12μm)を60mm角に切り出し、メタノール180mlに窒素気流下浸漬した。これに上記重合開始基導入タンニンのDMF溶液を添加し、室温にて24時間浸漬後、フィルムを取り出しメタノールで洗浄し、40℃で減圧乾燥した。得られたアラミドフィルムの表面をESCAにより解析した。未修飾アラミドフィルムの表面組成は、C=81.8%、N=6.2%、O=6.7%、Cl=5.2%、O/Nは1.1で臭素は検出されなかったのに対し、修飾後のアラミドフィルムの表面組成は、C=75.4%、N=6.2%、O=11.8%、Cl=2.8%、O/Nは1.9と増大し、臭素も0.4%検出された。また、修飾前後のOisピークを図1〜3に示すが、タンニン修飾により、基材由来のアミドカルボニル中のカルボニル酸素のピーク(531.3eV)が減少し、タンニン由来のエステル中のエーテル酸素のピーク(533.0eV)が増大した。これらのことから、アラミドフィルム表面が重合開始基導入タンニンで修飾されていることがわかる。なお、水中で気泡を基材に接触させて測定した接触角(以下水中接触角と略す。180°−気泡接触角で表記。値が小さい方が親水性を示す。)は、未修飾のアラミドフィルムが84°、タンニン修飾アラミドフィルムは38°であり、タンニン修飾により表面は親水化した。
(ポリマー被覆基材の製造)
ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(アルドリッチ製、分子量300、以下PEGMAと略す)60ml、純水36ml、メタノール24mlを混合し、十分に窒素置換した。ここに臭化第二銅9.4mg、ビピリジル65.6mg、アスコルビン酸740mgを加え、窒素下撹拌して均一溶液とした。この溶液に、上記重合開始基導入タンニン修飾アラミドフィルムを浸漬し、30℃で6時間グラフト重合を行った。重合終了後、フィルムをメタノール、水で順に洗浄し、45℃で減圧乾燥した。得られたアラミドフィルムの表面をESCAにより解析したところ、未修飾アラミドフィルムの表面組成は、C=81.8%、N=6.2%、O=6.7%、Cl=5.2%、O/Nは1.1だったのに対し、グラフト重合後のアラミドフィルムの表面組成は、C=76.4%、N=4.6%、O=14.8%、Cl=2.8%、O/Nは3.2と増大した。また、グラフト重合後のOisピークを図1〜3に示すが、グラフト重合により、基材由来のアミドカルボニル中のカルボニル酸素のピーク(531.3eV)が減少し、グラフトポリマー由来のエステル中のエーテル酸素のピーク(533.0eV)が増大した。これらのことから、アラミドフィルム表面がPEGMAグラフトポリマーで被覆されていることがわかる。なお、グラフト重合後のアラミドフィルムの水中接触角は30°であり、未修飾のアラミドフィルムの水中接触角84°やタンニン修飾アラミドフィルムの水中接触角38°に比べ低下した。PEGMAのグラフト重合により、アラミドフィルムに親水性が付与できた。
実施例2
基材:メタ系アラミド薄膜
(重合開始基導入タンニンの製造)
実施例1と同様の方法で、重合開始基導入タンニンのDMF溶液を製造した。
(表面修飾基材の製造)
ポリ[N,N’−(1,3−フェニレン)イソフタルアミド](アルドリッチ製)をN−シクロヘキシル−ピロリドンに加熱溶解させ、0.02%溶液を調製した。この溶液をQCMセンサーチップ上に滴下し、スピンコーターにて4000rpmでコーティングを行い、120℃で減圧乾燥を行った。得られたメタ系アラミド薄膜の膜厚をエリプソメーターで測定したところ、7nmであった。このセンサーチップをメタノール180mlに窒素気流下浸漬し、これに実施例1と同様の方法で調製した重合開始基導入タンニンのDMF溶液を添加し、室温にて24時間浸漬後、センサーチップを取り出しメタノールで洗浄し、40℃で減圧乾燥した。エリプソメーターにより測定したメタ系アラミド薄膜上に形成されたタンニン層の厚みは、2nmであった。
(ポリマー被覆基材の製造)
ビピリジル65.6mgに代えてトリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン96.8mgを用いたことと、パラ系アラミドフィルムに代えてメタ系アラミド薄膜被服センサーチップを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、重合開始基導入タンニンで表面修飾したメタ系アラミド薄膜被覆センサーチップに、PEGMAをグラフト重合した。エリプソメーターにより測定したグラフトポリマー層の厚みは、5nmであった。得られたグラフトポリマー被覆センサーチップへのタンパク質吸着量を、タンパク質にアルブミンを用い、QCM法にて評価した。その結果、メタ系アラミド薄膜被覆センサーチップへのタンパク質吸着量は230ng/cmであったのに対し、グラフトポリマー被覆センサーチップへのタンパク質吸着量は30ng/cmと非常に小さな値であった。PEGMAグラフトポリマーでメタ系アラミド薄膜を被覆することで、メタ系アラミド薄膜にタンパク質非吸着特性を付与できた。
実施例3
基材:メタ系アラミドペーパー
(重合開始基導入タンニンの製造)
実施例1と同様の方法で、重合開始基導入タンニンのDMF溶液を製造した。
(表面修飾基材の製造)
メタ系アラミドペーパー(デュポン帝人アドバンスドペーパー製ノーメックスペーパー、厚み50μm)を50mm角に切り出し、実施例1と同様の方法でアラミドペーパーを重合開始基導入タンニンで表面修飾し、表面分析をESCAにより行った。未修飾アラミドペーパーの表面組成は、C=86%、N=7%、O=6%、O/Nは0.9であったのに対し、修飾後のアラミドペーパーの表面組成は、C=80%、N=4%、O=15%、O/Nは7.5と増大し、臭素も0.7%検出された。また、修飾前後のOisピークを図4〜6に示すが、タンニン修飾により、基材由来のアミドカルボニル中のカルボニル酸素のピーク(531.7eV)が減少し、タンニン由来のエステル中のエーテル酸素のピーク(533.3eV)が増大した。これらのことから、アラミドペーパー表面が重合開始基導入タンニンで修飾されていることがわかる。なお、水中接触角は、未修飾のアラミドペーパーが71°、タンニン修飾アラミドペーパーは42°であり、タンニン修飾により表面は親水化した。
(ポリマー被覆基材の製造)
パラ系アラミドフィルムに代えてメタ系アラミドペーパーを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、上記の重合開始基導入タンニン修飾メタ系アラミドペーパーに、PEGMAをグラフト重合した。得られたメタ系アラミドペーパーの表面をESCAにより解析したところ、未修飾アラミドペーパーの表面組成は、C=86%、N=7%、O=6%、O/Nは0.9だったのに対し、グラフト重合後のアラミドペーパーの表面組成は、C=78%、N=2%、O=20%、O/Nは10に増大した。また、グラフト重合後のOisピークを図4〜6に示すが、グラフト重合により基材由来のアミドカルボニル中のカルボニル酸素のピーク(531.7eV)が減少し、グラフトポリマー由来のエステル中のエーテル酸素のピーク(533.3eV)が増大した。これらのことから、アラミドペーパー表面がPEGMAグラフトポリマーで被覆されていることがわかる。なお、グラフト重合後のアラミドペーパーの水中接触角は28°であり、未修飾のアラミドペーパーの水中接触角71°やタンニン修飾アラミドペーパーの水中接触角42°に比べ大きく低下した。PEGMAのグラフト重合により、アラミドペーパーに親水性が付与できた。
実施例4
基材:PVDF薄膜
(重合開始基導入タンニンの製造)
加水分解型タンニンの代わりに縮合型タンニン(善ケミカル製柿タンニン)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、重合開始基導入タンニンのDMF溶液を製造した。
(表面修飾基材の製造)
PVDF(アルドリッチ製、数平均分子量71,000、以下PVDFと略す)をDMFに加熱溶解させ、2%溶液を調製した。この溶液をQCMセンサーチップ上に滴下し、スピンコーターにて4000rpmでコーティングを行い、120℃で減圧乾燥を行った。得られたPVDF薄膜の膜厚をエリプソメーターで測定したところ、25nmであった。このセンサーチップをメタノール180mlに窒素気流下浸漬し、これに上記重合開始基導入タンニンのDMF溶液を添加し、室温にて24時間浸漬後、センサーチップを取り出しメタノールで洗浄し、40℃で減圧乾燥した。エリプソメーターにより測定したPVDF薄膜上に形成されたタンニン層の厚みは、3nmであった。水中接触角は、未修飾のPVDF薄膜が77°、タンニン修飾PVDF薄膜は40°であり、タンニン修飾により表面は親水化した。
(ポリマー被覆基材の製造)
メタ系アラミド薄膜被覆センサーチップに代えてPVDF薄膜被覆センサーチップを用いたことを除いて、実施例2と同様の方法で、上記の重合開始基導入タンニンで表面修飾したPVDF薄膜被覆センサーチップに、PEGMAをグラフト重合した。エリプソメーターにより測定したグラフトポリマー層の厚みは、13nmであった。得られたグラフトポリマー被覆センサーチップへのタンパク質吸着量を、タンパク質としてアルブミンを用い、QCM法にて評価した。その結果、PVDF薄膜被覆センサーチップへのタンパク質吸着量は396ng/cmであったのに対し、グラフトポリマー被覆センサーチップへのタンパク質吸着量は45ng/cmと非常に小さな値であった。PEGMAグラフトポリマーでPVDF薄膜を被覆することで、PVDF薄膜にタンパク質非吸着特性を付与できた。なお、グラフト重合後のPVDF薄膜被覆センサーチップの水中接触角は33°であり、PVDF薄膜被覆センサーチップの水中接触角77°に比べ大きく低下した。PEGMAのグラフト重合により、PVDF薄膜にタンパク質非吸着特性のみならず、親水性も付与できた。
実施例5
基材:PVDF多孔質膜(図7参照)
(重合開始基導入タンニンの製造)
実施例4と同様の方法で、重合開始基導入タンニンのDMF溶液を製造した。
(表面修飾基材の製造)
PVDF多孔質膜(メルクミリポア製デュラポア、孔径0.22μm、精密ろ過膜)を50mm角に切り出し、実施例1と同様の方法でPVDF膜表面に重合開始基導入タンニンを導入した。修飾前後の水中接触角は、修飾前のPVDF多孔膜が62°、タンニン修飾PVDF膜は33°であり、タンニン修飾により多孔質膜は親水化した。
(ポリマー被覆基材の製造)
PEGMA60mlの代わりに2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(東京化成製、以下MPCと略す)60mlを用いたことと、パラ系アラミドフィルムに代えてPVDF多孔質膜を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、上記の重合開始基導入タンニン修飾PVDF多孔質膜に、MPCをグラフト重合した。得られたグラフトポリマー被覆PVDF多孔質膜へのタンパク質吸着量をタンパク質としてアルブミンを用い、ビシンコニン酸法にて評価した。その結果、未修飾PVDF多孔質膜へのタンパク質吸着量は56μg/cmであったのに対し、グラフトポリマー被覆PVDF多孔質膜へのタンパク質吸着量は80ng/cm以下と非常に小さな値であった。MPCグラフトポリマーでPVDF多孔質膜を被覆することで、PVDF多孔質膜にタンパク質非吸着特性を付与できた。なお、グラフト重合後のPVDF多孔質膜の水中接触角は20°であり、未修飾のPVDF多孔質膜の62°やタンニン修飾PVDF多孔質膜の33°に比べ大きく低下した。MPCのグラフト重合により、PVDF多孔質膜に親水性も付与できた。
実施例6
基材:逆浸透膜
(重合開始基導入タンニンの製造)
実施例1と同様の方法で、重合開始基導入タンニンのDMF溶液を製造した。
(表面修飾基材の製造)
逆浸透膜(ダウケミカル製BW−30、ポリアミド複合膜以下RO膜と略す)を50mm角に切り出し、実施例1と同様の方法で逆浸透膜表面に重合開始基導入タンニンを導入した。ここで用いた逆浸透膜は、図8の様に、架橋芳香族ポリアミドからなる均質層(t=0.2μm)とそれを支えるポリスルホン多孔質層(t=45μm)およびポリエステル不織布(t=150μm)からなる複合膜構造を有している。修飾前後の水中接触角は、修飾前のRO膜が42°、タンニン修飾RO膜は49°であり、タンニン修飾によりRO膜は若干疎水化した。
(ポリマー被覆基材の製造)
メタ系アラミド薄膜被覆センサーチップに代えてRO膜を用いたことを除いて、実施例2と同様の方法で、上記の重合開始基導入タンニンで表面修飾したRO膜に、PEGMAをグラフト重合した。得られたRO膜の表面をESCAにより解析した。基材である未修飾RO膜と、PEGMAグラフト重合後のRO膜のESCAワイドスキャンスペクトルを図9〜10に示す。未修飾RO膜の表面組成は、C=80%、N=6%、O=13%だったのに対し、グラフト重合後のRO膜の表面組成は、C=80%、N<1%、O=19%であり、基材のRO膜にのみ含まれるNがグラフト重合後に観測されなかったことから、RO膜表面がPEGMAグラフトポリマーで被覆されていることがわかる。なお、グラフト重合後のRO膜の水中接触角は29°であり、未修飾RO膜の水中接触角42°やタンニン修飾RO膜の水中接触角49°に比べ大きく低下した。PEGMAのグラフト重合により、RO膜に親水性が付与できた。

Claims (5)

  1. 重合開始基が導入されたタンニン層を基材表面に有する表面修飾基材。
  2. 少なくとも下記2工程を経て表面修飾基材を製造することを特徴とする、表面修飾基材の製造方法。
    (1)タンニン、重合開始基及びタンニンの水酸基と反応する官能基を有する化合物とを反応させ、重合開始基が導入されたタンニンを製造する工程。
    (2)基材と重合開始基が導入されたタンニンを接触させ、基材表面に重合開始基が導入されたタンニン層を形成する工程。
  3. 請求項1に記載の表面修飾基材のタンニン層に導入された重合開始基を起点としてモノマーを重合して形成されたグラフトポリマー層で被覆された基材。
  4. ノマーがアルコキシアルキル基、アルコキシポリオキシエチレン基、ホスホベタイン基、スルホベタイン基、カルボキシベタイン基から選ばれた官能基とビニル基とを有しているモノマーであることを特徴とする請求項3記載のグラフトポリマー層で被覆された基材。
  5. 基材表面に重合開始基が導入されたタンニン層が形成されている表面修飾基材と、前記重合開始剤基を起点としてモノマー重合することによってグラフトポリマー層で被覆されることを特徴とするポリマー被覆基材の製造方法。
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