以下、本発明に係るフィルム搬送装置及びこれを備えた樹脂モールド装置の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。以下では、ワークとして例えば各辺が600mm程度の矩形状ワークを用いるものとし、フィルムとしてはそれ以上の大きさの枚葉フィルムを用いて樹脂モールドする樹脂モールド装置を用いて説明する。尚、樹脂モールド装置は一例として下型を可動型、上型を固定型として説明するものとする。また、樹脂モールド装置は、型開閉機構を備えているが図示を省略するものとしモールド金型の構成を中心に説明する。
先ず、樹脂モールド装置の概略構成について図1を参照して説明する。この樹脂モールド装置では、制御部(図示せず)が後述する各部を制御して各種の動作を行う。本実施例におけるモールド装置は、ワーク処理ユニットUw、2台のプレスユニットUp、ディスペンスユニットUdが連結されて構成されて、装置内におけるワークWに対する樹脂モールドを自動的に行う構成である。
ワーク処理ユニットUwは、例えば、ワーク供給部1、成形品収納部2、キュア炉3及びロボット搬送装置4を備えている。ワーク供給部1には、例えばワークWとして各辺が600mm程度の大きさの矩形パネル(基板、キャリア等)が収納されている。成形品収納部2には、後述するプレス部5において樹脂モールドされた成形品Mが収納される。キュア炉3は、後述するプレス部5で樹脂モールドされた成形品Mを炉内に設けた多段の棚に各別に収納してアフターキュアすることで樹脂パッケージ部を加熱硬化させる。ロボット搬送装置4は、これを取り囲んで配置された各部の間においてワークW及び成形品Mの受け渡しや搬送を行う。このロボット搬送装置4は、例えば、ワーク供給部1からワークWを取り出して供給し、成形品Mをキュア炉3へ搬送し、キュア炉3から成形品収納部2へ順次搬送し収納する。ロボット搬送装置4は、例えば垂直多関節型、水平多関節型、またはこれらを複合した多関節型のロボットが用いられ、ロボットハンド4aにワークWや成形品Mを吸着や把持により保持して搬送する。また、ワーク処理ユニットUwにおいて、成形品Mを冷却する冷却部や、成形品の外観検査などを行う検査部や、個々のワークWに紐付けられた成形条件を読み取るデータ読み取り部や、ワークW又は成形品Mの表裏を反転する反転部30をロボット搬送装置4の周囲に配置してもよい。例えば、反転部30は、ワーク供給部1においてワークWにおいて樹脂モールド成形する面(成形面)が上向きに供給されたときに、成形面を下面に向ける。また、反転部30は、樹脂モールド成形が完了した成形品Mを成形品収納部2に収納するまでに成形面が上向きとなるように反転する。
プレスユニットUpにおけるプレス部5は、四隅に設けたポスト5aに対してプラテンを昇降させる公知の型開閉機構に開閉する圧縮成形用のモールド金型6(上型6A及び下型6B)を備えている。本実施例では、プレスユニットUpは2カ所に設けられているが、1カ所でもよく、3カ所以上設けてもよい。
フィルムハンド13(フィルム搬送装置)は、ディスペンスユニットUdにおいてフィルム供給部8から供給された枚葉フィルムFに、ディスペンサー9よりモールド樹脂(例えば顆粒樹脂や粉末樹脂)が供給された状態でプレス部5のモールド金型6内に搬送される。フィルム供給部8には、長尺状のフィルムがロール状に巻かれたフィルムロール8aが設けられている。このフィルムロール8aよりフィルム端が引き出された状態で、任意のサイズの矩形状に切断(裁断)して枚葉フィルムFとしてステージ17上に準備する。枚葉フィルムFを後述するフィルムハンド13に所要の張力(テンション)を付与して支持した状態で、ディスペンサー9は枚葉フィルムF上に1回の樹脂モールドに必要なモールド樹脂R(顆粒樹脂)を供給する。尚、顆粒樹脂に替えて粉末樹脂、液状樹脂又はシート樹脂、若しくはこれらを組み合わせて用いてもよい。
枚葉フィルムFは、耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するもの、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEPフィルム、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリジン等を主成分とした単層膜又は複層膜が好適に用いられる。
パネルローダー10は、いわゆるワークローダーであり、ロボット搬送装置4のロボットハンド4aからワークWを受け取ってプレス部5のモールド金型6(上型6A)に搬入する。また、パネルローダー10は、モールド金型6aから成形品Mを受け取ってロボット搬送装置4のロボットハンド4aへ受け渡す。パネルローダー10は、成形品Mをモールド金型6から取り出す際に、使用済みの枚葉フィルムFも吸着保持して取り出し、取り出された枚葉フィルムFはフィルム回収部12へ回収される。
フィルムローダー11は、フィルムハンド13に所要の張力が付与されて保持した枚葉フィルムF及び該フィルムF上に供給されたモールド樹脂R(顆粒樹脂)を受け取ってモールド金型6(下型6B)へ搬送する。パネルローダー10及びフィルムローダー11は、装置の長手方向に沿って敷設された複数のガイドレール14に沿って往復移動するように設けられている。また、ガイドレール14上の位置から直交するように各部(例えばプレス部5)へ図示しないローダハンドが移動するようになっている。
ここで、フィルムハンド13の構成について図2及び図3を参照して説明する。
図2(B)に示すように、フィルムハンド13は、後述する下型キャビティ凹部6Cを囲む下型クランプ面に対応した所定形状の枠体(例えば矩形枠体13a)を備えている。また、フィルムハンド13において支点部となって枚葉フィルムFに張力を付与する支点枠体13bが矩形枠体13aに沿って矩形状に設けられている(図3参照)。支点部としては、支点枠体13bを設ける代わりに、矩形枠体13aの外側角部を用いてもよい。
また、フィルムハンド13の外側において枚葉フィルムFの外周縁部を全周にわたって把持する複数のフィルムチャック13c(フィルム把持部)が設けられている。具体的には、図2(B)に示すように、矩形状の枚葉フィルムFを把持して搬送するために、対向する辺において一対のフィルムチャック13c(フィルム把持部)が設けられる。一対のフィルムチャック13cは、開閉式のチャックが用いられ、矩形状の枚葉フィルムFの外周縁部を各辺において挟み込んで保持する。一対のフィルムチャック13cの長手方向両端は一対の回転レバー13d(回転部材)によって各々支持されている。一対の回転レバー13dは、矩形枠体13aにおいてフィルムチャック13cよりも内側に形成された回転軸13eを中心に回転可能に設けられている。このため、一対のフィルムチャック13cは、回転レバー13dにおいて回転軸13eとは反対側に設けられることになる。回転レバー13dは、支点枠体13bに対してオフセットさせる方向にのみ回転させるオフセット機構が設けられている。
具体的には、図3に示すように、フィルムチャック13cの回転軸13eにはラチェット歯とラチェット爪が噛み合うラチェット機構13fが設けられている。ラチェット機構13fは、フィルムチャック13cが回転軸13eを中心に所定の角度だけ支点枠体13bから離間する方向(図2(C)の矢印方向)のみへ回転するのを許容する。これによって、フィルムチャック13cを一方向に回転させた所定回転位置で留めることにより、枚葉フィルムFに加えた張力を維持した状態で搬送することができる。なお、ラチェット機構13fに替えて、サーボモータやトルクモータのような駆動機構によって枚葉フィルムFに任意の張力を加え、その加えた張力を維持する構成とすることもできる。この場合は、ラチェット機構13fを設ける構成よりもフィルムハンド13が大型化しやすい反面、枚葉フィルムFに加える張力を随時調整することができる点で好ましい。
図2(C)に示すように、一対のフィルムチャック13cによって枚葉フィルムFの外周縁部(4辺)を把持したまま、図示しない昇降駆動機構(シリンダ駆動、ソレノイド駆動、モータ駆動等)により昇降する押し上げピン15によって回転レバー13dを押し上げる。このとき回転レバー13dは回転軸13eを中心に回転してフィルムチャック13cを支点枠体13bに対して離間する向き(矢印方向)にオフセットさせる。これにより、フィルムハンド13の枠体開口部を覆う枚葉フィルムFの端部同士が支点枠体13bを介して引き離される量を増やして所要の張力を加えた状態で一体に保持される。尚、回転レバー13dをもとの位置に戻す場合には、再度押し上げピン15によって回転レバー13dを所定の角度まで押し上げるとラチェット機構13f(図3参照)の噛み合いが解除されて回転レバー13dをもとの位置に戻すことができる。
図2(C)に示すように、フィルムチャック13cを回転軸13eを中心に回転させてフィルムチャック13cを支点枠体13bから離間させることで、枚葉フィルムFの端部同士が支点枠体13bを介して引き離される量が増加して張力を強めることができる。特に、四辺に配置したフィルムチャック13cの回転軸13eを中心とした各々の回転により枚葉フィルムFの張力がフィルムの辺毎に調整できるので、枚葉フィルムFに対して適切な張力を加えることが可能なフィルムハンド13を小型かつ簡易な構成とすることができる。
この所要の張力を付与した枚葉フィルムF上に、ディスペンサー9(図1参照)から1回分の樹脂モールドに必要なモールド樹脂R(顆粒樹脂)が例えばトラフ16(図2(D)参照)を通じて供給されて、枚葉フィルムF上に偏ることなく一様に供給される(図2(E)参照)。尚、矩形枠体13aの上部開口には、平面視矩形状の開口端部ほど口径が広がる傾斜部13gが形成されている。この傾斜部13gの内側にモールド樹脂Rを供給することで、モールド樹脂Rを任意の形状で枚葉フィルムF上に供給することができる。この場合、傾斜部13gにより、枚葉フィルムF上に供給されるモールド樹脂Rが矩形枠体13aの上に乗り上げてしまうことを防止する。なお、傾斜部13gを含め矩形枠体13aの内側を円形状にすることで、枚葉フィルムF上において円形領域内にモールド樹脂Rを供給することもできる。これによれば、部分的な構造を変更するだけで、外形円形又は外形矩形といったキャビティの形状に関わらず、同様の枚葉フィルムFの搬送構造を利用することができる。
そして、図2(F)に示すように、枚葉フィルムFにモールド樹脂Rが供給された状態で、フィルムローダー11によってフィルムハンド13(矩形枠体13a)がチャックされてモールド金型6へ搬送される。
ここで、フィルムローダー11によって枚葉フィルムFがステージ17から持ち上げられるときに、張力が不十分であるとモールド樹脂Rの重量によって枚葉フィルムFが中央などで垂れ下がることがある。そこで、ステージ17に近接した位置にフィルム垂下検出部20を設けてもよい(図2(E)参照)。フィルム垂下検出部20としては、例えば発光部と受光部とを備えてこれらの間の遮蔽状態や遮蔽位置を検出するレーザーセンサを用いることができる。この場合、発光部と受光部は、フィルムハンド13を挟む位置に設けることが好ましい。また、フィルム垂下検出部20としては、ステージ17上の空間における遮蔽物を検出することで、フィルムハンド13を持ち上げたときに枚葉フィルムFが適切な位置から垂れ下がっているときに検出できる。フィルム垂下検出部20は、1方向における垂れ下がりを検出するように1組だけ設けてもよいし、図3に示すように交差する2方向において検出するように2組設けてもよい。なお、フィルム垂下検出部20としては、枚葉フィルムFの垂れ下がりを検出できればどのような構成としてもよい。例えば、接触センサ(スイッチ)としてもよく、フィルムハンド13を所定の高さまで持ち上げたときに垂れ下がったフィルムが接触していることを検出するようにしてもよい。
尚、図3に示す矩形状の枚葉フィルムFの各辺を各々把持するフィルムチャック13cは、各辺において押し上げる量を均一とすることもあるいは異ならせることもできる。この場合、例えば枚葉フィルムFの辺ごとに設けられる押し上げピン15による押し上げ量を均一にすることで、回転軸13eを中心とした回転量に対応する張力を加えることができる。また、対向する辺における一対のフィルムチャック13cの組ごとに押し上げる量を異ならせることもできる。この場合、枚葉フィルムFの各辺の長さや、フィルムロール8aから引き出した方向などによるフィルムの伸び易さなどに応じて、フィルムチャック13cの組ごとに押し上げる量を異ならせることで、枚葉フィルムFの各辺に加えられる張力を均一にすることもできる。例えば、図3に示すような横長のフィルムであれば、長手方向(同図の左右方向)に引っ張る2辺(右辺及び左辺)における一対のフィルムチャック13cの押し上げ量を、短手方向(同図の上下方向)に引っ張る2辺(上辺及び下辺)における一対のフィルムチャック13cの押し上げ量を異ならせればよい。即ち、長手方向のフィルムチャック13cの押し上げ量を、短手方向のフィルムチャック13cの押し上げ量よりも大きくすればよい。換言すれば、長い辺に対してはより多く引っ張ることで辺の長さによらず、均一に引っ張られた状態とすることができる。これによれば、長手方向及び短手方向の方向において枚葉フィルムFに加えられる張力を均等にすることができる。
また、図3に示すように枚葉フィルムFを一辺ごとに一体的にチャックする場合に限らず、フィルムチャック13cが一辺において複数に分割されて設けられていてもよい。この場合には、枚葉フィルムFに発生する皺の状態(位置)により、辺の位置におけるフィルムチャック13cの回転量を変えて枚葉フィルムFをツイストするように張力を加えることで皺を伸ばした状態で保持することができる。例えば、部分的に張力が高まるとその位置以外に皺が生じることになる。このため、まず、均一にフィルムチャック13cを押し上げて張力を加えた後に、皺が生じたときには、その部分の張力を弱めるようにしたり、その部分以外の張力を高めたりするような構成とすることができる。さらに、フィルムチャック13cは、辺の延在方向に交差するように引っ張るために所定の長さで枚葉フィルムFの辺において把持する構成のみならず、枚葉フィルムFの角部において、中心から引き離す方向に引き伸ばすようにするために枚葉フィルムFの角部を把持するような構成としてもよい。
これにより、分割されたフィルムチャック13cの支点枠体13bからのオフセット量を変えることで、枚葉フィルムFに発生した皺の向きや皺の大きさに応じて枚葉フィルムFをツイストするように張力を加えることでフィルム固有の皺の発生を解消することができる。
次に、プレス部5に備えたモールド金型6の構成について図4を参照して説明する。本実施例は、圧縮成形用のモールド金型6を例示している。このモールド金型6は、任意の位置にヒータ(図示せず)が設けられることで、モールド樹脂Rを加熱硬化させてワークWを樹脂モールドし、成形品Mを製造する。上型6Aの上型クランプ面6aには、ワークWを吸着保持するため、通気孔6b及びこれに連通する通気路6cが形成されている。また、矩形状ワークWの外縁部にはワーク保持ピン6dが複数箇所で対向位置に設けられている。ワーク保持ピン6dは、ワークWの外周面を押圧保持する。ワーク保持ピン6dは円柱状のピンでも角柱状のピンでもよく、弾性体を介してワークWに押し当てる構成とするのが好ましい。また、ワーク保持ピン6dは、ワークWを吸着保持する際にワークWをセンタリングするガイドとしてもよい。このような構成によれば、例えば、ワークWの外周をL字の爪状のフックで保持する構成と比較して、キャビティの面積を広くすることができる。
下型6Bは、下型ブロック6eに下型キャビティ底部を形成する下型キャビティ駒6fが一体に支持されている。下型キャビティ駒6fの周囲には下型キャビティ側部を形成する下型可動クランパ6gが下型ブロック6e上にコイルばね6hを介してフローティング支持されている。下型キャビティ駒6f及び下型可動クランパ6gによって、下型キャビティ凹部6Cが形成される。下型可動クランパ6gと下型キャビティ駒6fとの隙間は、シールリング6i(Oリング)が設けられてシールされている。また、下型可動クランパ6gには、枚葉フィルムFを下型キャビティ凹部6Cを含む下型面に吸着保持するための通気路6g1,6g2が各々設けられている。通気路6g1は、下型キャビティ駒6fと下型可動クランパ6gとの隙間からフィルム内周側を吸着し、通気路6g2は下型可動クランパ6gのクランプ面においてフィルム外周側を吸着するようになっている。これにより、枚葉フィルムFは下型キャビティ凹部6Cの凹形状に倣うように吸着される。尚、上型6Aと下型6Bとの間には、金型クランプ動作を開始すると、金型内に減圧空間を形成するための上下一対のクランプブロック(図示せず)が設けられていてもよい。
また、下型6Bの下型可動クランパ6gの外側には、プッシャー6jが設けられている(張力付加機構)。このプッシャー6jは、枚葉フィルムFへの張力を更に強めるために設けられている。例えば、フィルムローダー11によって、枚葉フィルムFがフィルムハンド13と共に下型6Bに搬入される際に、下型6Bからの輻射熱によって枚葉フィルムFに伸びが生じて張力が低下してしまう。この場合、枚葉フィルムFの張力が低下してたるみが生じると、枚葉フィルムFの自重、又は、供給されたモールド樹脂Rの重量により、枚葉フィルムFの中央部が垂れ下がることになる。この場合、枚葉フィルムFが下型6Bに載置されたときに、枚葉フィルムFのたるみが皺となってしまう場合がある。また、枚葉フィルムFの中央部の垂れ下がりが大きくなると、モールド樹脂Rが中央に集まってしまって、キャビティ内において均一にモールド樹脂Rを供給することが困難となってしまうことが想定される。このため、プッシャー6jは、下型6Bの回転レバー13dに対応する位置に設けられ、例えば昇降駆動機構(例えばシリンダ駆動、ソレノイド駆動、モータ駆動等の駆動機構)により昇降させることで、回転レバー13dを回転可能に構成される。このプッシャー6jは、一対のフィルムチャック13cのオフセット量を増やして枚葉フィルムFへの張力を更に強めるために設けられている。また、このプッシャー6jは、ラチェット機構13fの解除にも用いることができる。
フィルムローダー11によって、フィルムハンド13とともに枚葉フィルムFが下型6B(下型可動クランパ6g)に載置されると、回転レバー13dの直下に配置されたプッシャー6jが作動して回転レバー13dをフィルムチャック13cのオフセット量を増やす向きに回転させる。これにより、金型クランプ前に枚葉フィルムFの張力が低下するのを防止可能となっている。勿論、枚葉フィルムFが下型6Bに近づいたときにフィルムチャック13cのオフセット量を増やす向きに回転させることも可能である。
ここで上型6Aに設けられたワーク保持ピン6dの具体的な構成例について図5を参照して説明する。ワーク保持ピン6dは、上型クランプ面6aに吸着保持されるワークWの外形に沿って複数箇所に所定間隔で配置されている(図7参照)。なお、ワーク保持ピン6dは、ワークWに対して加えられる力が相殺されて位置ずれしないように対向する位置に配置されていることが好ましい。ワーク保持ピン6dは、例えばL型状に形成された一端部6d1が上型6A内に回転軸6d2を中心に揺動可能に収容され、他端部6d3が上型6Aの上型クランプ面6aより突設されている。このため、他端部6d3は、上型6Aの上型クランプ面6aにおいて水平方向(図5における左右方向)に前後動可能となる。具体的には、他端部6d3は、ワークWの外周面に近づく方向であってワークWの中央側に向いた方向(図5における右方向)と、ワークWの外周面から離れる方向(図5における左方向)とで揺動する。
上型クランプ面6aより突設された他端部6d3は、弾性部材(ゴムカバー)6d4により覆われている。また、ワーク保持ピン6dは、上型6A内設けられたコイルばね6d5により回転軸6d2を中心に他端部6d3が、上型クランプ面6aより起立する向き(図5の反時計回り方向)に常時付勢されている。
これにより、ワーク保持ピン6dの他端部6d3は、ワークWの側面(外周面)に押し当てられることになる。従って、ワークWの自重により、又は、図示しない減圧機構でワークWの下方が負圧となることにより、ワークWに対して落下する向きの力が加わってもワークWの落下を防止することができる。また、上型クランプ面6aにおいてワークWをセンタリングしながら保持することができる。また、ワークWの外周面を押圧する弾性部材6d4が弾性変形することで、ワークWの落下を確実に防止することができる。例えば、ワークWがウェハであるときには、その外周面における断面形状は、上下の角部が大きく丸面取りされた形状となる。換言すれば、ワークWの厚み方向の中心位置が凸となる。この場合、弾性部材6d4をワークWの側面に押し付けると、厚み方向の中心位置が弾性部材6d4に食い込んだ状態となる。このため、ワークWがウェハであるときには、弾性部材6d4によるワークWの落下防止機能はより効果的に発揮されることになる。
また、ワーク保持ピン6dのワークWの外周面への押し当てとワークWのエア吸着孔6bからの吸着保持を併用することで、ワークWの上型クランプ面6aに対する位置ずれや脱落を確実に防ぐことができる。
なお、図5に示すワーク保持ピン6dは、図11に示すように駆動源により任意に開閉可能な構成とすることができる。図11は、図5に示す上型6Aの変形例における要部拡大図であり、図5と同等の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。図11に示す上型6Aでは、ワーク保持ピン6dの一端部6d1側に押下げピン6d6が常時押し当てられている。押下げピン6d6は、例えばエアシリンダやサーボモータといった駆動源(図示せず)により任意のタイミングで下降させることで、ワーク保持ピン6dを回転軸6d2を中心として揺動させることができる。例えば、ワークWを上型クランプ面6aにセットする前には、他端部6d3をワークWから離す方向(同図左方向)に移動させる。これにより、他端部6d3をワークWが載置される領域からは退避させて、他端部6d3と干渉することなくワークWを上型クランプ面6aにセットすることができる。また、上型クランプ面6aにセットしたワークWをワーク保持ピン6dで保持する場合には、押下げピン6d6を上昇させることでコイルばね6d5の付勢力によりワーク保持ピン6dを揺動させ、他端部6d3をワークWの外周面に近づける方向(同図右方向)に移動させる。これにより、上型クランプ面6aにセットされたワークWの側面に他端部6d(弾性部材6d4)を押し当てて保持することができる。
図6(A)(B)は、ワーク保持ピン6dの変形例を示す。ワーク保持ピン6kは、コ字状に形成され、ピン本体6k1が上型6A内に回転軸6k2を中心に揺動可能に収容されている。ピン本体6k1の一端部6k3は、ワーク吸着面に相当する上型クランプ面6aより下方に出没可能に設けられている。また、ピン本体6k2の他端部6k4は、上型クランプ面6aより常時下方に突設されている。ワークWに当接する他端部6k4は、弾性部材6k5によって覆われている。
また、ピン本体6k1の一端部6k3側はコイルばね6k6によって上型クランプ面6aより下方に突出するように常時付勢されている。このため、ピン本体6k1の他端部6k4は、弾性部材6k5がワークWの外周面より離間する向き(図6(A)の時計回り方向)に傾斜した状態にある。
パネルローダー10(図1参照)によって、ワークWが上型クランプ面6aに位置合わせして重ね合わせると、図6(B)に示すように、ワーク保持ピン6kはコイルばね6k6の付勢に抗して一端部6k3が上型6A内に押し込まれ、ピン本体6k1が回転軸6k2を中心に反時計回り方向に所定量回転する。これにより他端部6k4が弾性部材6k5を介してワークWの外周面に押し当てられる。また、ワークWは上型クランプ面6aに通気孔6bよりエア吸着されて保持される。このように、ワークWを上型クランプ面6aに押し付けることによりワーク保持ピン6kを回転させて弾性部材6k5をワークWの外周面に押し当てる構成とすることもできる。
ワーク保持ピン6d(6k)の形態及びレイアウト例について図7(A)〜(D)を参照して説明する。図7ではワーク保持ピン6dを図示して説明するものとする。
図7(A)(B)はワークWが半導体ウェハやキャリアプレートなど円形のものを想定している。ワーク保持ピン6d(6k)は、ワークWに外形に沿って所定間隔で配置されしかも径方向に対向する位置に設けられている。また、円形のワークWでは、ワーク保持ピン6d(6k)はワークWの中心点に向けてワーク保持ピン6kを回動させることで、ワークWに押し当てる(押し付ける)のが好ましい。なお、ワーク保持ピン6d(6k)は、径方向に対向する位置に設けられていなくてもよい。例えば、ワークが円形である場合、ワークWに外形に沿って等間隔(5等分、7等分等)位置に配置されていたり、ワーク保持ピン6d(6k)による押し当て力が相殺される位置に配置されていたりしてもよい。
これにより、対向するワーク保持ピン6dの押し当て力により、ワークWを径方向中心に向かってセンタリングすることができる。図7(A)は、ピン形状が円柱状をしたものを用いた場合を例示し、図7(B)は形状がワークWの円弧状に沿って幅広く押え付ける面を有するブロック形状としたものを用いた場合を例示している。
図7(C)(D)は、ワークWが半導体基板やキャリアプレートなど矩形のものを想定している。ワーク保持ピン6d(6k)は、ワークWの各辺に所定間隔で配置され、しかも線対称の中心線を挟んで対向する位置に設けられている。これにより、対向するワーク保持ピン6dの押し当て力により、ワークWを対向辺の中心(中央)に向かって各々センタリングすることができる。図7(C)は、ピン形状が円柱状をしたものを用いた場合を例示し、図7(D)は形状がワークWの直線状辺に沿って幅広く押さえ付ける面を有する矩形状(ブロック状)をしたものを用いた場合を例示している。
次に、パネルローダー10によるモールド金型6へのワーク供給動作について図8を参照して説明する。図8は上型6Aのみを図示して説明するものとする。
図8(A)において、パネルローダー10は、ワークWを半導体チップ搭載面を下面側にして吸着搬送する。即ち、パネルローダー10の上面には、半導体チップ等を収容するための逃げ凹部10aが形成され、その周囲にワークWを吸着保持可能な通気孔10bが形成されている。また、逃げ凹部10aには上型クランプ面6aにワークWを受け渡す際にワークWを引き渡し易くし、ワークWの自重による垂れ下がりを防止するため、エアを吐出する通気孔10cが形成されている。
図8(A)に示すように、ワークWの半導体チップ搭載面を逃げ凹部10aに向けて載置し、通気孔10bからエア吸引してワークWをローダー上面に吸着保持すると共に、逃げ凹部10aに連通する通気孔10cからエアを吐出させてワークWの自重による垂れ下がりを防止しながら保持する。ここで、通気孔10bではワークWを吸着保持しているため、通気孔10cからエアを吐出させてもワークWが所定の位置から移動してしまうことはない。なお、通気孔10cから吐出するエアは加熱したエアとして、ワークWを予熱して熱膨張により任意に伸ばしておくこともできる。この場合、ワークWが図示しないヒーターに加熱された上型クランプ面6aに押し当てられた後の熱膨張率の差による位置ずれを極力軽減することもできる。このように、ワークWを保持したパネルローダー10が、型開きしたモールド金型6に進入する。
パネルローダー10は、上型6Aの上型クランプ面6aに設けられたワーク保持ピン6dとワークWの外形を位置合わせする。このとき、図示しない上型吸排気機構により上型6Aの通気孔6b及びこれに連通する通気路6cから予めエア吸引動作を開始してもよい。
図8(B)に示すように、パネルローダー10を上昇させてワークWを上型クランプ面6aに押し当てる。このとき、パネルローダー10のワークWを吸着していたエア吸引孔10bからエアを吐出させかつ逃げ凹部10aに連通する通気孔10cからエアを吐出させてワークWを上型クランプ面6aに確実に引き渡すことができる。なお、この際に通気孔10cから吐出させるエアを強める(圧力を高める)ことで、ワークWを加圧し、ワークWが中高となるように保持した状態として上型クランプ面6aに押し当てることも可能である。この場合、上型クランプ面6aとワークWとの隙間にエアが残ることがなく、ワークWを平坦に保持することができる。
ワークWは上型クランプ面6aに押し当てられる際に、外周面にワーク保持ピン6dを各々押し当てられてセンタリングされる。このように、ワーク保持ピン6dによりワークWをセンタリングすることができるため、別途のセンタリング用の位置合わせピンが不要となる。位置合わせ(センタリング)が完了した後に、通気孔6bからのエア吸引されることにより上型クランプ面6aに吸着保持される。
これにより、図8(C)に示すように、パネルローダー10を上型クランプ面6aから退避させると、ワークWはパネルローダー10の上面から対向する上型6Aの上型クランプ面6aに受け渡される。このとき、ワークWの周囲に対向配置されたワーク保持ピン6dによりワーク外周面を押圧し、弾性部材6d4(図5参照)を弾性変形させながらワークWを挟み込んで保持するため、ワークWの落下や位置ずれを確実に防止することができる。
また、本実施例に示すような構成によれば、加熱された上型クランプ面6aに押し当てられたワークWが加熱されることで熱膨張して外径が大きくなっても、ワーク保持ピン6dの他端部6d3が前後動可能となっているため、適切な力で保持した状態を維持できる。また、弾性部材6d4を設けている場合には、加熱によるワークWの外径の増大を吸収して、適切な力で保持した状態を維持することができる。
次に、図8(C)に続く樹脂モールド動作の一例について図9を参照して説明する。図9(A)において、下型6Bには、前述したように、フィルムローダー11によって枚葉フィルムF及び顆粒樹脂Rが搬入されているものとする。
図9(A)において、上型6Aには、パネルローダー10(図1参照)により、例えば各辺が600mmの大判サイズのワークW(矩形パネル,矩形基板等)が搬入され、上型クランプ面6aに設けられた通気孔6b及び通気路6cによって吸着保持される。このとき、矩形状ワークWの外周面が、複数箇所で対向位置に設けられているワーク保持ピン6dによってワークWの外周面を押圧保持することで上型6Aに受け渡される。また、矩形状のワークWは、ワーク保持ピン6dによってワークWの外周面が均等に押圧されることで、ワーク保持ピン6dによってセンタリングされる。なお、枚葉フィルムF及び顆粒樹脂Rの搬入及びワークWの搬入は同時に行っても良いし、ワークWを搬入した後で枚葉フィルムF及び顆粒樹脂Rを搬入してもよい。
次いで、図9(B)に示すように、モールド金型6を型閉じする。例えば下型6Bを上昇させて上型6Aとの間でワークWをクランプする。尚、上型6Aと下型6BがワークWをクランプする前に、上型6Aと下型6Bとの間に、後述する上型チャンバーブロック6pと下型チャンバーブロック6mがシール材6nを介してクランプすることにより金型空間が閉止されて減圧空間を形成され、減圧雰囲気下でモールド成形するようになっているのが好ましい(図10参照)。
続いて、モールド金型6をさらに型締めすることで、コイルばね6hが押し縮められて、下型可動クランパ6gが下型ブロック6eに近づくように移動する。これにより、下型キャビティ凹部6Cにおけるキャビティの高さ(深さ)を低く(浅く)し、下型キャビティ凹部6C内で溶融した顆粒樹脂RにワークWを浸漬させると共に樹脂圧を加えることで加熱加圧する。図9(C)は、モールド金型6の型締め動作が完了して、下型キャビティ凹部6C内で溶融した顆粒樹脂RにワークWを浸漬させて加熱加圧して硬化させている(圧縮成形)状態を示す。
モールド金型6における加熱硬化が終了すると、モールド金型6の型開きを行う。ここで、上型6Aの上型クランプ面6aに対する成形品Mの吸着保持と、枚葉フィルムFの下型キャビティ凹部6Cを含む下型クランプ面への吸着保持を維持したまま、型開きが行われる。これにより、図9(D)に示すように、型開きした状態において、成形品Mは上型6Aの上型クランプ面6aに吸着保持された状態となり、枚葉フィルムFは下型キャビティ凹部6Cを含む下型クランプ面に吸着保持された状態となる。このように、成形品Mと、使用後の枚葉フィルムFとを別個の金型に保持した状態とすることで、これらをプレス部5から取り出しそれぞれの収納・収容先に搬送するうえで工程を簡素化することができる。
続いて、図1において、型開きしたモールド金型6にパネルローダー10が進入し、成形品Mは上型6Aより通気孔6bの吸着を解除され通気孔10bからエア吸引してワークWをローダー上面に吸着保持してパネルローダー10に受け渡される。また、使用済み枚葉フィルムFは下型6Bよりパネルローダー10の反対面(下面側)に受け渡される。このとき、成形品Mを上型クランプ面6aからパネルローダー10に受け渡すため、通気孔6bより圧縮空気を噴出させると共に、枚葉フィルムFを下型面からパネルローダー10に受け渡すため、通気路6g1,6g2より圧縮空気を噴出させることが好ましい(図9(D)参照)。成形品Mはパネルローダー10からロボット搬送装置4のロボットハンド4aに受け渡される。使用済み枚葉フィルムFは、パネルローダー10からフィルム回収部12へ排出されて回収される。ロボットハンド4aは、成形品Mを保持して、所定のキュア炉3へ搬入する。キュア炉3において成形品Mのアフターキュアが行われる。続いて、ロボットハンド4aは、キュア炉3から成形品Mを取り出すことで、ワークWに対する全ての工程が完了して成形品Mの製造工程が完了する。続いて、成形品Mは、成形品収納部2へ搬入され、成形品Mが収納される。
このように、本実施例によれば、上述した枚葉フィルムFを搬送するフィルムハンド13を用いることで、フィルム使用量を減らしてランニングコスト低減を図り、大判サイズの成形品の成形品質を向上させかつ設置面積を抑制することができる。
次にモールド金型6に備えたワーク保持部の他例について図10を参照して説明する。この他例の大きな特徴の一つは、ワーク保持部であるチャック本体40bが上型6A内に出没可能に構成される点である。図10(A)に示すように、上型6Aは、上型クランプ面6aにおいて、ワークWの外周にそって対向する位置において、複数(例えば6個、8個等)のチャック40を備えている。チャック40は、上型6Aの下面においてその先端が回動可能に突出し、ワークWの外周面を外側から押圧することでワークWの外周面を挟み込むように保持して落下を防止する。チャック40は、一例として上型6Aに設けられた回転軸40aに対して回転可能に軸支されたチャック本体40bと、チャック本体40bの下端部を覆って設けられる弾性部材40cと、チャック本体40bを回転軸40aを中心として回転方向(図10(A)反時計回り方向)に常時押圧する回転用付勢部材40dと、を備えている。これにより、弾性部材40cは、ワークWの側方から外周面に押し付けられることで、弾性変形してワークWが弾性部材40cに食い込んだ状態となる。したがって、このようなチャック40を用いれば、チャック本体40bに設けた弾性部材40cにより、ワークWを上型6Aに保持し位置ずれや落下を防止することができる。また、下型キャビティ6Cの外周位置をワークWの外周位置に近接した位置にまで拡げることができ、取り個数を増やして生産性を向上させることができる。
また、図10(A)に示すように、チャック40は、上型6Aに設けたストッパ40eによりチャック本体40bの回転角度が規制される。これにより、複数のチャック40における弾性部材40cの下端の型内周位置Pによって区画される領域が、ワークWの外周形状より大きくなるようにすることもできる。換言すれば、チャック本体40bの下端が装置外側に向かって開き気味に設けることもできる。よって、上型6Aに対して下方からワークWをセットするときは、ワークWがチャック40と干渉することがなくなり、ワークWの上型6Aへのセットを容易に行える。
尚、図10(A)において、下型ブロック6e上には下型チャンバーブロック6mが下型可動クランパ6hの外側を囲むように配置されている。また上型チャンバーブロック6pが下型チャンバーブロック6mに対向して上型6Aを囲むように配置されている。下型チャンバーブロック6mのクランプ面には、シール材6nが設けられている。また、上型チャンバーブロック6pには、モールド金型6内に減圧空間を形成するための通気路6qが形成されている。上型6A側に設けられた通気路6c,6qは上型吸排気機構6rに接続され、下型6B側に設けられた通気路6g1,6g2は下型吸排気機構6sに接続されている。
モールド金型6をクランプすると、図10(B)に示すように、上型チャンバーブロック6pと下型チャンバーブロック6mがシール材6nを押し潰してモールド金型6内に閉鎖空間を形成し、通気路6qよりエア吸引することで、減圧空間が形成される。型閉じしたモールド金型6に減圧空間が形成されても、チャック40によってワーク外周面を保持するので、差圧によりワークWが上型クランプ面6aより脱落することがなくなる。
また、上型6Aにチャック40を昇降可能に設けることもできる。この場合、例えば上型6Aの上型クランプ面6aに、チャック本体40bが出没可能な収容凹部40hが設けられる。また、チャック本体40bには、回転軸40aが挿入される長孔状の昇降用孔40fが設けられる。収容凹部40hの底部には、昇降用弾性体40g(例えばコイルばね等)の一端が連結され、他端はチャック本体40bの上端部に連結されている。昇降用弾性体40は、チャック本体40bが上型クランプ面6aより下端部が常時突出する向きに付勢している。
図10(B)に示すようにワークWがモールド金型6にクランプされ下型可動クランパ6gによりチャック本体40bが昇降用弾性体40gの付勢力に抗して押し上げられると、回転軸40aに昇降用孔40fが案内されながらチャック本体40bが上昇し、昇降用弾性体40gが押し縮められてチャック本体40bが収容凹部40h内に収容されてゆく。また、回転用弾性体40dにより、チャック本体40bをストッパ40eに突き当たるように押圧することで、ワークWの外周面に弾性部材40bを押し当ててクランプする。これによれば、チャック40の退避空間を下型可動クランパ6gに設ける必要がなく、金型構成を簡易化できる。また、リリースフィルムFのゆがみを防止して下型6Bへ安定的な貼付けが確保できる。なお、本実施形態におけるチャック機構は、他の実施形態のみならず、下型6Bに下型キャビティ6Cを備える構成の圧縮成形金型であれば任意に適用することができる。
上述した実施形態は、ワークWをパネルローダー10により搬送してモールド金型6の上型クランプ面6aに受け渡す場合について説明したが、下型クランプ面に対してワークWを受け渡すようにしてもよい。
また、矩形状のワークWを矩形状の枚葉フィルムFを用いて樹脂モールドする場合について説明したが、円形状のワークW(例えば半導体ウェハや環状キャリア等)を矩形状の枚葉フィルムFと共に搬送するようにしてもよい。
また、モールド金型6は圧縮成形用の金型を用いて説明したが、トランスファ成形用の金型であってもよい。
またディスペンスユニットUdは、上述したように樹脂モールド装置に組み込んで用いることもできるが、それ単体としても用いることができる。この場合、ディスペンスユニットUdにおいて所定の張力が加えられた枚葉フィルムFを保持するフィルムハンド13を準備し、別途設けたプレスユニットUpに対して、フィルムハンドごと供給するようにしてもよい。
また、例えばワークW又は成形品Mの表裏を反転する反転部30(図1参照)を用いて、ワークWの両面に樹脂モールド成形してもよい。この場合、ワークWの一方の面に樹脂モールド成形をした後にワーク処理ユニットUwに戻し、成形品Mを反転部30で反転させてからワークW(成形品M)の他方の面に樹脂モールド成形をしてもよい。また、反転部30に替えて、ロボットハンド4aを反転可能なロボット搬送装置4とすることもできる。
また、図11に示すワーク保持ピン6dを任意に開閉可能な構成に代えて、図12に示すように、別途の駆動機構を追加的に設けずに、例えば装置構成として必須となるパネルローダー10によるワークWの上型クランプ面6aへの引き渡し動作によってワーク保持ピン6dを開閉可能に構成することもできる。例えば、図12に示すように、上型6Aは、ワーク保持ピン60、ワーク保持ピン60の先端部を覆う弾性部材61及びワーク保持ピン60を閉じる方向に常時付勢するコイルばね62を備えている。ワーク保持ピン60は、例えば同図に示すようにコ字状に形成されて、ワークWの載置位置から離れた位置にある一端部60aとそれより近い位置にある他端部60bとが上型クランプ面6aから下方に突設されている。上型クランプ面6aより突設される一端部60aは、先端部に傾斜面が設けられている。また、パネルローダー10の上面に立設された押上げピン10dの先端部にも一端部60aと対向する傾斜面が形成されている。パネルローダー10の上型6Aに対するワークWの引き渡し動作、即ちパネルローダー10の昇降動作に連動して押上げピン10dと一端部60aの傾斜面どうしが押し当てられたまま摺動することで、ワーク保持ピン60を開閉させることができる。なお、これらの傾斜面は少なくともいずれか一方に設けられていれば同等の効果を奏することもできる。上型クランプ面6aより突設される他端部60bの先端部は、上述した実施例の弾性部材と同様の機能を有する弾性部材61で覆われている。ワーク保持ピン60は、コイルばね62によって他端部60bがワークWの載置位置に近づく方向(ワーク外周面に押し当てる向き;図12の右方向)に向かって常時付勢されている。
上記ワーク保持ピン60の開閉動作の一例について説明する。ワークWを保持したパネルローダー10を上型クランプ面6aに上昇させて近づけると、押上げピン10dが一端部60aの傾斜面に押し当てられる。この押上げピン10dの上昇動作により、コイルばね62による付勢に抗してワーク保持ピン60の一端部60aが同図の左方向に移動する。従って、ワーク保持ピン60の他端部60bがワークWの載置領域から退避することになる。続いて、ワークWを上型クランプ面6aにセットするまでパネルローダー10を近づけて吸着保持させた後に、パネルローダー10を下降させることで、押上げピン10dの下降動作により、コイルばね62の付勢によりワーク保持ピン60の他端部60bはワークWに近づく方向に移動する。これにより、ワークWの外周面に他端部60bの弾性部材61が押し当てられてワークWが保持される。このように、図12に示すようにパネルローダー10の昇降動作を利用してワーク保持ピン60を開閉動作させることにより、ワーク保持ピン60の駆動機構を簡易化できる。
また、上述した実施例では、上型6Aにワーク保持ピン6dを設ける構成について説明したが、下型6Bにワーク保持ピン6dを設ける構成とすることもできる。この場合、ワークWの位置ずれや浮き上がりなどを防止して、適切な位置にモールド成形することもできる。
また、ワーク保持ピン6dは、弾性部材6d4を省略した構成とすることもできる。この場合、例えば弾性部材6d4の位置を任意の凹凸を設けた摩擦面とすることで、別途の部材を組み合わせることなく落下防止を確実に行える構成とすることが可能となる。例えば、ピンの先端のワークWの接触部分に弾性部材6d4に替えて、ローレット加工(斜め、平目又は綾目)した面、梨地面、波状面又は多段溝面を設けることで摩擦力により落下防止することもできる。
また、ワーク保持ピン6dは、ワークWの外周面に押し当てる構成について説明したが、ワークWに設けた穴部にワーク保持ピン6dを挿入し、この穴部の内周面にワーク保持ピン6dを押し当てワークWを保持するようにしてもよい。この場合、例えば、ワークWの中心/中央に向けてワーク保持ピン6dを押し付けるだけでなく、ワークWの外周に向けてワーク保持ピン6dを押し当ててもよい。また、ワークWは、モールド成形するチップを貼り付けたテープを外周で保持するリングフレームでもよい。