次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本発明のコイル製造装置10を図1〜図3に示す。ここで、互いに直交するX、Y、Zの三軸を設定し、X軸が水平前後方向、Y軸が水平横方向、Z軸が垂直方向に延びるものとして本発明のコイル製造装置10について説明する。
本発明のコイル製造装置10は、線材12を回転して巻取る巻取り治具14を備える。この巻取り治具14は、コア11を支持してそのコア11とともに回転し、後述するノズル31から繰出される線材12をその回転するコア11に巻取るものであって、この巻取り治具14は複数設けられる。
この実施の形態におけるコイル製造装置10は、水平な台座13を有し、その台座13にY軸方向に所定の間隔を開けて2台の基台16がX軸方向にそれぞれ移動可能に設けられる。これら2台の基台16に巻取り治具14がX軸方向に所定の間隔を開けてそれぞれ複数設けられる。この実施の形態では、1台の基台16に5個の巻取り治具14がそれぞれ設けられ、2台の基台16で合計10個の巻取り治具14が設けられる場合を示す。これら複数の巻取り治具14は同一構造であるので、その内の1つを代表して説明する。
すると、図4に示すように、巻取り治具14は、その基台16に枢支されるスピンドル軸19と、そのスピンドル軸19の上端に同軸に設けられた胴部20と、その胴部20の上端に同軸に設けられて線材12が巻回されるコア11を把持するチャック21とを備える。
図4の拡大図に示すように、コア11は巻胴部11cの両端部に鍔部11a,11bが形成されたものであって、その鍔部11a,11bのいずれか一方又は双方に電極が形成されたものを巻線の対象とする。この実施の形態では、他方の鍔部11bには電極が形成されないものとし、チャック21は、このようなコア11の一方の鍔部11aの電極が形成されていない辺を両側から把持可能に構成されたものとする。
図4に示すように、スピンドル軸19は、チャック21を上方にして、この基台16に、鉛直方向に延びて枢支される。ここで、図4における符号16aは、このスピンドル軸19を枢支するベアリング16aである。
一方、コア11を把持するチャック21は、胴部20の上端から上部が上方に突出するように胴部20に取付けられた固定側把持部材21aと、その固定側把持部材21aに隣接して鉛直方向の略中央が胴部20に枢支された可動側把持部材21bとを有する。
固定側把持部材21aの上縁には、コア11の一方の鍔部11aが水平状態で載置可能な切り欠き部21cが形成される。可動側把持部材21bは、固定側把持部材21aの上縁における切り欠き部21cに水平に載置された一方の鍔部11aを、その固定側把持部材21aとともにその上部が挟持するように形成される。
可動側把持部材21bの枢支点より下方の固定側把持部材21aと可動側把持部材21bの間にはそれらの間隔を広げるように付勢するコイルスプリング21dが介装される。そして、このコイルスプリング21dは、その付勢力により、枢支点より上方の固定側把持部材21aと可動側把持部材21bの間隔を狭め、それらにより切り欠き部21cに水平に載置された一方の鍔部11aを把持させるように構成される。そして、スプリング21dより下方の可動側把持部材21bの下部はクランク状に折れ曲がって形成され、その下端に固定側把持部材21aの下方に位置する操作辺部21eが形成される。
スピンドル軸19の中心軸には操作ロッド26が上下動可能に挿通される。操作ロッド26の上端、即ち、スピンドル軸19の上縁より上方に突出した操作ロッド26の上部には、上方に向かって縮径する操作体26aが取付けられ、操作辺部21eはこの操作体26aに側面が接触するように構成される。このため、操作ロッド26が操作体26aとともに上昇すると、その操作体26aに側面が接触する操作辺部21eは胴部20の中央から側方に追いやられ、コイルスプリング21dの付勢力に抗して、可動側把持部材21bの枢支点より下方の部位を固定側把持部材21aに近づけるように構成される。すると、枢支点より上方の固定側把持部材21aと可動側把持部材21bの間隔は広げられて、コア11の挟持を解消可能に構成される。
図2に示すように、本発明のコイル製造装置10は、基台16に設けられた複数の巻取り治具14を同時に回転させる回転手段を備える。この回転手段は、基台16に取付けられたモータ23であって、その回転軸に第一プーリ24aが設けられる。基台16に設けられた複数の巻取り治具14の基台16の下方に突出するスピンドル軸19には第二プーリ24bがそれぞれ取付けられる。そして、第一プーリ24aと複数の全ての第二プーリ24bの間にはベルト24cが掛け回され、モータ23が駆動すると、第一プーリ24a,ベルト24c及び第二プーリ24bを介して、複数の巻取り治具14を同一方向に同一速度で同時に回転させるように構成される。
このコイル製造装置10は、X軸方向に並んで、コア11を巻取り治具14へ把持させる図示しない把持手段と、巻線を行う巻線手段、及び配線を行う図示しない配線手段が、この順序でX軸方向に並んで設けられるものとし、これらの各手段を連通するように2台の基台16が、それぞれ別々にX軸方向に移動可能に設けられる。
図1に示すように、2台の基台16はY軸方向に所定の間隔を開けて設けられた2台の可動台18の上端にY軸方向の側部が取付けられ、台座13にはこれら2台の可動台18を搭載するレール28がX軸方向に延びて取付けられる。可動台18の下部にはレール28に沿って移動するスライダ18a(図4)が取付けられ、2台の可動台18にはボールネジ29が螺合する雌ねじ孔18b(図4)がそれぞれ形成される。
2台の可動台18に形成された雌ねじ孔18bに別々に螺合するX軸方向に延びる2本のボールネジ29がレール28に平行にY軸方向に所定の間隔を開けて台座13に枢支され、台座13には、これら2本のボールネジ29を別々に回転させる図示しないモータが取付けられる。そして、図示しないモータによりボールネジ29を別々に回転させることにより、可動台18を基台16とともにレール28上をX軸方向に移動させて、2台の基台16をX軸方向に延びて設けられた把持手段と巻線手段及び配線可能の間に別々に往復移動可能に構成される。
図示しないが、把持手段と配線手段における台座13には、操作ロッド26を昇降させるアクチュエータが取付けられる。この実施の形態におけるアクチュエータは、圧縮エアの給排によりロッドを出没させるいわゆるエアシリンダであって、その出没ロッドを上方に向けて、操作ロッド26と同軸になるように台座13に取付けられる。そして、把持手段又は配線手段において、操作ロッド26に対向する出没ロッドが上方に突出されると、操作ロッド26を上昇させてチャック21によるコア11の把持を解消させ、出没ロッドが没入すると、操作ロッド26は下降し、チャック21によりコア11を把持可能に構成される。
図1及び図2に示すように、本発明のコイル製造装置10は、把持手段と配線手段に挟まれる巻線手段において、線材12を一定のテンションで繰出す線材繰出し機が設けられる。この線材繰出し機は、その線材12が挿通されるノズル31と、そのノズル31を回転させる回転機構32と、そのノズル31を回転機構32とともに三軸方向に移動させるノズル移動機構33と、その線材12に張力を付与するテンション装置42とを備える。
ノズル31は、単一の基台16に設けられた複数の巻取り治具14に対応して複数設けられる。このノズル31は支持板38に枢支された複数の回転部材39に別々に固定される。支持板38はノズル移動機構33により水平に支持され、この支持板38に回転部材39が巻取り治具14に対応するように、所定の間隔を開けてX軸方向に並んだ状態で、その回転軸を鉛直方向にして枢支される。支持板38に対する回転部材39及びノズル31の取付構造は同一であるので、その内の1つを代表して説明する。
すると、図1及び図2のそれぞれの拡大図に示すように、支持板38より下方の回転部材39には略クランク状の取付部材40が取付けられ、回転部材39の回転軸からずれた取付部材40の下部にはノズル31が固定される。ノズル31は六面体をなし、その下部に水平方向に線材12が挿通される繰出し孔31aが形成される。この繰出し孔31aは回転部材39の外側から回転部材39の回転中心に向けて形成され、その回転中心からノズル31までの距離は、その回転部材39が回転したときにノズル31が描く円がチャック21に支持されたコア11の鍔部11a,11b(図4)を包囲するに十分な程度とされる。
回転部材39の回転中心には挿通孔39aが形成され、この挿通孔39aは線材12が挿通可能に形成される。そして、この鉛直方向に形成された挿通孔39aに挿通された線材12を引き回してノズル31の繰出し孔31aにまで案内するプーリ41a〜41cが回転部材39の下部及び取付部材40にそれぞれ取付けられる。
そして、これらのプーリ41a〜41cにより引き回された線材12は,ノズル31の繰出し孔31aに外側から回転部材39の中心に向けて挿通されるように構成される。
図1〜図3に示すように、このノズル31を回転させる回転機構32は、支持板38に取付けられたモータ32であって、その回転軸に第三プーリ32aが設けられ、支持板38の上方に突出する回転部材39には第四プーリ32bがそれぞれ取付けられる。第三プーリ32aと全ての第四プーリ32bの間にはベルト32cが全てにおいて掛け回され、第四プーリ32bの間の支持板38には、ベルト32cの弛みを防止する補助プーリ32dが枢支される。そして、モータ32が駆動すると、第三プーリ32a,ベルト32c及び第四プーリ32bを介して、全ての回転部材39をノズル31とともに同一方向に同一の速度で回転可能に構成される。
このように構成された複数のノズル31を回転機構32とともに三軸方向に移動させるノズル移動機構33は、この支持板38を台座13に対して三軸方向に移動可能に構成される。
図1に示すように、この実施の形態におけるノズル移動機構33は、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ34〜36の組み合わせにより構成される。
このノズル移動機構33を構成する各伸縮アクチュエータ34〜36は、細長い箱形ハウジング34d〜36dと、そのハウジング34d〜36d内部に長手方向に伸びて設けられサーボモータ34a〜36aによって回動駆動されるボールネジ34b〜36bと、このボールネジ34b〜36bに螺合して平行移動する従動子34c〜36c等によって構成される。
そして、これらの各伸縮アクチュエータ34〜36は、サーボモータ34a〜36aが駆動してボールネジ34b〜36bが回転すると、このボールネジ34b〜36bに螺合する従動子34c〜36cがハウジング34d〜36dの長手方向に沿って移動可能に構成される。
この実施の形態では、複数のノズル31が設けられる支持板38のX軸方向の両側をノズル移動機構33によりそれぞれ支持する場合を示し、この支持板38の両側はY軸方向に移動可能にY軸方向伸縮アクチュエータ35のハウジング35dにそれぞれ取付け、そのY軸方向伸縮アクチュエータ35とともにその支持板38をZ軸方向に移動可能に、Y軸方向伸縮アクチュエータ35の従動子35cがZ軸方向伸縮アクチュエータ36のハウジング36dにそれぞれ取付けられる。
また、そのY軸及びZ軸方向伸縮アクチュエータ35,36とともにその支持板38をX軸方向に移動可能に、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ36の従動子36cがX軸方向伸縮アクチュエータ34の従動子34cにそれぞれ取付けられる。
そして、X軸方向伸縮アクチュエータ34のハウジング34dがX軸方向に伸びて、支柱33bを介して台座13にそれぞれ固定される。
それらの各伸縮アクチュエータ34〜36における各サーボモータ34a〜36aは、これらを制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。
図1に示すように、テンション装置42は、繰出される線材12に張力を与えるとともにその線材12を引き戻し可能なものである。このテンション装置42は、ノズル31の数に応じて複数設けられ、1つのテンション装置42から繰り出された線材12が単一のノズル31に供給されるものとする。これら複数のテンション装置42は同一構造であるので、その内の1つを代表して説明する。
この実施の形態におけるテンション装置42は、取付脚43を介して設置されたケーシング44と、そのケーシング44の側面に設けられたドラム45及びテンションバー46とを備える。
線材12はドラム45に巻付けられ、そのドラム45を回転させて線材12を繰出す繰出し制御モータ47がケーシング44の内部に設けられ、ドラム45から繰出された線材12はテンションバー46の先端における線材ガイド46aに導かれる。
テンションバー46は、基端の回動軸46bを支点として回動可能となっている。この回動軸46bの回動角度は、ケーシング44内に収容され回動軸46bに取付けられた回動角度検出手段としてのポテンショメータ48により検出される。ポテンショメータ48の検出出力は図示しないコントローラに入力され、コントローラからの制御出力が繰出し制御モータ47に接続される。
ノズル31とともに回転する回転部材39が設けられた支持板38の回転部材39の近傍には、支持柱38aが立設され、その支持柱38aには、線材ガイド46aからの線材12が掛け回されるプーリ38bが枢支される。このプーリ38bは回転部材39の上方に位置するように枢支され、テンションバー46の先端における線材ガイド46aに導かれた線材12は、その線材ガイド46aからこのプーリ38bに導かれ、このプーリ38bにより転向して回転部材39の挿通孔39aを貫通するように配線される。
また、テンションバー46の回動軸46bと線材ガイド46aとの間の所定位置には、テンションバー46の回動方向に付勢力を与える付勢手段としての弾性部材であるスプリング49の一端が取付けブラケット46cを介して取付けられる。
テンションバー46は、弾性部材であるスプリング49によって回動角度に応じた弾性力が及ぼされる。このスプリング49の他端は、移動部材50に固定される。
この移動部材50はテンション調節ネジ51の雄ネジ51aに螺合しており、この雄ネジ51aの回転に従って移動調整が可能に構成される。このように、スプリング49の他端の固定位置は変位でき、そのスプリング49により一点鎖線で示す方向に付勢されるテンションバー46によって、付与される線材12の張力が調節可能に構成される。
図示しないコントローラは、回動角度検出手段であるポテンショメータ48により検出された回動角度が所定の角度となるように繰出し制御モータ47を制御するように構成される。
従って、このテンション装置42では、スプリング49によりテンションバー46を介して線材12に張力を与えて、そのテンションバー46が所定の角度になるようにドラム45が回転して所定量の線材12が繰出される。よって、線材12の張力は所定の値に維持されるようになっている。
また、このコイル製造装置10は、所定の巻数分の線材12をノズル31から引出して蓄える蓄線手段52を備える。蓄線手段52は、線材12を把持可能に構成されたクランプ装置53と、そのクランプ装置53を三軸方向に移動させる蓄線移動機構54とを備える。このクランプ装置53は、ノズル31の数に応じて複数設けられ、1つのクランプ装置53は、単一のノズル31から繰り出された線材12を把持するものとする。これら複数のクランプ装置53は同一構造であるので、その内の1つを代表して説明する。
図1に示すように、蓄線手段52におけるクランプ装置53は、圧縮エアが供給又は排気されることにより開閉する挟持片53a,53b(図10)を有し、この挟持片53a,53bによりノズル31から繰出された線材12を把持可能なものである。
このクランプ装置53は、ノズル31に臨むようにY軸方向に延びて、移動板58に設けられる。このクランプ装置53の挟持片53a,53bは、ノズル31に臨む先端が上方に折り曲げられて形成される。そして、このクランプ装置53には、図示しないコントローラからの指令により圧縮エアの供給又は排気が行われるように構成される。
図10に示すように、移動板58にはY軸方向に延びてレール59が設けられる。クランプ装置53は、その挟持片53a,53bを巻取り治具14側に突出させた状態で(図1)、このレール59にY軸方向に移動可能に取付けられる。
また、クランプ装置53にはコイルスプリング60の一端が取付けられ、コイルスプリング60の他端は、移動部材61に固定される。この移動部材61はテンション調節ネジ62の雄ネジ62aに螺合しており、この雄ネジ62aの回転に従って移動調整が可能に構成される。
そして、このコイルスプリング60は、そのクランプ装置53を巻取り治具14から遠ざける方向に付勢し、蓄線移動機構54(図1)は、この移動板58をクランプ装置53とともに三軸方向に移動させるように構成される。
図1に戻って、蓄線移動機構54は、前述したノズル移動機構33と同一構造のものであり、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ55〜57の組み合わせにより構成される。
この実施の形態では、複数のクランプ装置53が設けられる移動板58をY軸方向に移動可能にY軸方向伸縮アクチュエータ56のハウジング56dに取付け、そのY軸方向伸縮アクチュエータ56とともにその移動板58をZ軸方向に移動可能に、Y軸方向伸縮アクチュエータ56の従動子56cがZ軸方向伸縮アクチュエータ57のハウジング57dに取付けられる。
また、そのY軸及びZ軸方向伸縮アクチュエータ56,57とともにその移動板58をX軸方向に移動可能に、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ57の従動子57cがX軸方向伸縮アクチュエータ55の従動子55cに取付けられる。
そして、X軸方向伸縮アクチュエータ55のハウジング55dがX軸方向に伸びて台座13に固定される。
それらの各伸縮アクチュエータ55〜57における各サーボモータ55a〜57aは、これらを制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。
なお、各サーボモータ55a〜57aとボールネジ55b〜57bと従動子55c〜57cとの動作については、ノズル移動機構33と同様のため説明を省略する。
また、本発明のコイル製造装置10は、図4に示すように、巻取り治具14に支持させたコア11に巻回させた線材12の端部を保持しかつ切断し得る挟持切断具70が巻取り治具14の胴部20に取付けられる。
図5〜図8に示すように、挟持切断具70は、巻取り治具14の周囲に一方の主面が接するように取付けられる基板71と、その基板71の一方の側部とともに線材12を挟持する第一挟持具72と、その基板71の他方の側部とともに線材12を挟持する第二挟持具73と、基板71の他方の主面に重合して巻取り治具14に枢支されたカッタ部材74と、基板71と巻取り具の間に介在して第一及び第二挟持具72,73並びにカッタ部材74を枢支する取付具76と、その取付具76とともにそれらを挟む押さえ具77とを有する。
図5に示すように、取付具76は、基板71の一方の主面における基端が重合する薄肉部76aと、巻取り治具14の胴部20に取付けるためのネジ78が挿通される孔76dが形成された中肉部76bと、後述するスプリング79,80を収容する孔76eや溝76fが形成された厚肉部76cがこの順序で形成され、薄肉部76aに第一及び第二挟持具72,73を枢支するための一対の枢支ピン76g,76hが設けられる。
基板71は長方形状を成す平板であって、一方の主面の基端が重合する取付具76の一対の枢支ピン76g,76hとの干渉を避ける切り欠き71a,71bが基端側における両側部にそれぞれ形成される。
第一及び第二挟持具72,73は平板を加工することにより対称構造をなして作られ、基板71の切り欠き71a,71bに進入し得る膨出部72a,73aがそれぞれ形成される。その膨出部72a,73aには枢支ピン76g,76hに嵌入可能な嵌入孔72b,73bがそれぞれ形成され、その膨出部72a,73aから基板71の先端における側部に隣接して、その側部とともに線材12を挟持する挟持部72c,73cがそれぞれ形成される。膨出部72a,73aから基端側には取付具76の両側から外側に張り出す張り出し部72d,73dが形成され、この張り出し部72d,73dの基端にコイルスプリング79を支持する突部72e,73eが形成される。
第一及び第二挟持具72,73の基端側には両端が突部72e,73eに支持されたコイルスプリング79が介装され、このコイルスプリング79はそれらの基端を押し広げるように付勢して、第一及び第二挟持具72,73の先端における挟持部72c,73cを基板71の先端における両側部に押しつけ、その間に線材12が進入したならば、その線材12を挟持するように構成される。そして、この挟持部72c,73cの基板71側端縁には、線材12の進入を容易ならしめるための傾斜面72f,73fがそれぞれ形成される。
カッタ部材74は、クランク状を成す平板材であって、その中央直線部74aに第二挟持具73が枢支される枢支ピン76gが進入する枢支孔74bが形成される。この中央直線部74aは、取付具76における中肉部76bに沿って、第一及び第二挟持具72,73を横断するように設けられ、その中央直線部74aの一方の端部から第一挟持具72の挟持部72cに重合するカッタ刃74cが形成される。また、中央直線部74aの他方の端部からは第二挟持具73の張り出し部73dに重合する操作部74dが形成され、この操作部74dは第二挟持具73の張り出し部73dよりも取付具76から離れる方向にずれて形成される。
図6に示すように、操作部74dの端部にはコイルスプリング80が介装され、このコイルスプリング80は操作部74dを取付具76から離すように付勢して、枢支ピン76gを中心にカッタ部材74を回転させ、カッタ刃74cを基板71の先端における一方の側部から遠ざけるように構成される。そして、コイルスプリング80の付勢力に抗して操作部74dを取付具76に近づけると、一点鎖線で示すように、カッタ刃74cと基板71の先端における一方の側部との間の隙間を無くし、基板71の先端における一方の側部と第一挟持具72により線材12が挟持されていたならば、その挟持された線材12を切断可能に構成される。
図5に示すように、押さえ具77は、取付具76における枢支ピン76g,76hに枢支された第一及び第二挟持具72,73並びにカッタ部材74を押さえ具77とともに挟んで、それらが枢支ピン76g,76hから抜け出すことを防止するためのものであり、第二挟持具73とカッタ部材74を枢支する枢支ピン76gが挿通可能なピン孔77aと、この押さえ具77を取付具76とともに、巻取り治具14に取付けるネジ78が挿通するネジ孔77bが形成される。
そして、図5〜図8に示すように、押さえ具77のネジ孔77bに挿通された雄ねじ78を取付具76の孔76dに挿通させて巻取り治具14の胴部20における図示しない雌ねじに螺合することにより、これらからなる挟持切断具70をその胴部20に取付けるものとする。このように胴部20に取付けられた状態で、チャック21が突出して設けられた胴部20の先端縁より基板71の先端は突出し、その突出する基板71の両側部に当接する第一及び第二挟持具73の挟持部72c,73cも胴部20の先端縁より突出し、チャック21に把持されたコア11から延びる線材12を基板71の側部とともに第一及び第二挟持具72,73が挟持可能に構成される。
次に、上記コイル製造装置の動作について説明する。
本発明のコイル製造装置10では、X軸方向に並んで設けられた図示しない把持手段においてコア11を巻取り治具14へ把持させてその巻取り治具14を移動させ、巻線手段に達した巻取り治具14においてその巻取り治具14に把持されたコア11に巻線を行い、その後再び巻取り治具14を移動させて、図示しない配線手段において配線を行うことになる。
図示しないが、把持手段におけるコア11の巻取り治具14への把持は、巻取り治具14の操作ロッド26に対向して設けられた図示しないエアシリンダの出没ロッドを上方に突出させて操作ロッド26を上昇させ、これにより図4に示すチャック21における固定側把持部材21aと可動側把持部材21bの上方の間隔を広げる。そして、固定側把持部材21aにおける切り欠き部21cにコア11の一方の鍔部11aを水平に載置する。その後、図示しないエアシリンダの出没ロッドを没入させて操作ロッド26を下降させて枢支点より上方の固定側把持部材21aと可動側把持部材21bの間隔を狭め、これにより切り欠き部21cに水平に載置された一方の鍔部11aを把持させることになる。
このようにしてコア11を把持した複数の巻取り治具14の移動は、図示しないモータにより図1〜図3に示すボールネジ29を回転させることにより行われる。このボールネジ29は可動台18に螺合されているので、ボールネジ29を回転させると、可動台18は基台16及びその基台16に設けられた複数の巻取り治具14とともにX軸方向に移動して、把持手段から巻線手段にまで移動することになる。
この実施の形態では、巻線手段においてコア11に巻線が行われ、この巻線によりα巻きコイル17を得る場合を説明する。すると、この巻線手段におけるコア11への巻線にあっては、線材操出機におけるノズル31から繰出される線材12を保持して所定長さ引出す線材引出し工程と、巻取り治具14を回転させて、引出された線材12をそのチャック21に設けられたコア11に巻付ける巻付け工程と、ノズル31をコア11と同方向に回転させてノズル31から繰出される線材12をコア11に巻付けてα巻コイル17を形成するα巻コイル形成工程と、α巻コイル17の両端における線材12a,12bを基板71と第一及び第二挟持具72,73により挟持させる線材挟持工程と、コア11からノズル31に延びる線材12bを切断する線材切断工程とを行うことができる。
以下に、このコア11への巻線における各工程を詳説するけれども、2台の基台16を有し、それぞれに5台の巻取り治具14が設けられたこの実施の形態では、一方の基台16において5台の巻取り治具14に把持されたコア11に同時に巻線を行うことになる。そして、各巻取り治具14におけるコア11への巻線は同一の動作になるので、その内の1つの巻取り治具14におけるコア11への巻線を代表して以下に説明するものとする。
<線材引出し工程>
この工程では、ノズル31から繰出される線材12を保持して所定長さ引出す。線材12はドラム45に巻付けられ、ドラム45から繰出された線材12はテンションバー46の先端における線材ガイド46aに導かれ、その線材ガイド46aから補助プーリ38bを介して回転部材39の挿通孔39aを貫通するように配線する。
この実施の形態における線材12は、断面が方形をなす、いわゆる角線である場合を説明し、その角線からなる線材12を挿通孔39aに貫通させた後にノズル31の繰出し孔31aに通過させる。
そして、繰出し孔31aに通過させた線材12は、図1の拡大図に示すように、その端部を斜め上方に引出しておく。この斜め上方に折り曲げることにより、その線材12が繰出し孔31aの孔縁に係止され、テンション装置42側に向かって戻るようなことを防止させておく。
この線材引出し工程では、蓄線移動機構54によりクランプ装置53を移動させ、その挟持片53a,53bによりノズル31から繰出されて斜め上方に折り曲げられた線材12を把持させる。
その後、蓄線移動機構54によりクランプ装置53を再び移動させて、図11に示すように、そのクランプ装置53をノズル31から引き離す。これにより、ノズル31から線材12を所定長さ引出す。
この所定の長さは、得ようとするα巻コイル17(図14)における一方のコイルを巻線するのに必要な線材12の長さであり、その長さに略等しくなった段階でクランプ装置53の移動を停止して、この線材引出し工程を終了させる。
<巻付け工程及びα巻コイル形成>
この実施の形態では巻付け工程とα巻コイル形成が同時に行われる場合を示す。
この工程において図1及び図2に示すノズル移動機構33にあっては、ノズル31が設けられた回転部材39をチャック21の上方にまで移動させ、その回転中心をチャック21の回転中心に一致させる。その状態で、六面体をなすノズル31の繰出し孔31aがコア11の巻胴部11cに臨むまで回転部材39を下降させる。
図12に示すように、次に、ノズル31から引出した線材12がチャック21に設けられたコア11に沿うようにクランプ装置53を移動させる。クランプ装置53の移動は蓄線移動機構54(図1)により行われる。
そして、図13に示すように、巻取り治具14を回転させて引出された線材12をそのチャック21に設けられたコア11に巻き戻すと同時に、ノズル31をチャック21の回転より速い2倍の回転速度で同方向に回転させてノズル31から新たに繰出される線材12をコア11に巻付けてα巻コイル17を形成する。
ノズル31の回転は、そのノズル31が設けられた回転部材39をモータ32(図1)により回転させることにより行われ、これによりコア11の周囲においてノズル31を周回させる。このノズル31の周回は、コア11の周囲をチャック21の回転方向と同方向に2倍の速度で回転させる。
これにより、ノズル31から新たに繰出される線材12は、クランプ装置53から図13の実線矢印で示す方向に巻き戻される線材12とともに同時にコア11に巻線される。この際、ノズル31から新たに繰出される線材12はコア11における他方の鍔部11bに沿って繰出され、その他方の鍔部11bに偏って巻胴部11cに巻回される。
一方、巻取り治具14の回転は、図1に示す台座13に取付けられたモータ23により行い、そのチャック21からクランプ装置53が遠ざかることにより引出された線材12をそのチャック21に設けられたコア11に巻き戻す。
実際の巻き戻しが開始されると、蓄線移動機構54は、その巻き戻される線材12の速度に略等しい速度でクランプ装置53をチャック21に近づけ、その間の線材12が撓んで、得られたα巻コイル17における一方のコイルが膨らむようなことを防止する。
このとき、コイルスプリング60(図10)は、そのクランプ装置53を巻取り治具14から遠ざける方向に付勢し、巻き戻される線材12の量とクランプ装置53の移動量との間に生じる誤差を吸収して、クランプ装置53とコア11との間の線材12の撓みを確実に防止することになる。この際、クランプ装置53から巻き戻される線材12をコア11の一方の鍔部11aに沿って巻胴部11c巻き戻し、その一方の鍔部11aに沿って巻胴部11cに巻回する。
これにより、クランプ装置53により予め引出された線材12のチャック21の回転により巻線された巻初めの線材12a、及びノズル31から繰出されてコア11に巻回された巻終わりの線材12bの双方が最外周に位置するα巻コイル17(図13)が形成されることになる。
<線材挟持工程>
この工程では、α巻コイル17の両端における線材12a,12bを挟持切断具70により挟持させる。
先ず、巻初めの線材12aの挟持を説明する。この挟持にあっては、蓄線移動機構54によりクランプ装置53を移動させ、図14に示すように、そのクランプ装置53からコア11に延びる巻初めの線材12aを、基板71の他方の側部と第二挟持具73の間に挿通過させる。すると、その線材12は基板71の他方の側部を上部から下方にずれて移動し、第二挟持具73の傾斜面73fから基板71の他方の側部と第二挟持具73の間に進入する。これにより、その巻初めの線材12aは基板71の他方の側部と第二挟持具73により挟持されることになる。
この場合、基板71と第二挟持具73はα巻コイル17より斜め下方に位置しているため、線材12aの端縁はコア11から斜め下方に延びて保持される状態となる。
その後、クランプ装置53による巻初めの線材12aの把持を解消させ、その巻初めの線材12aをクランプ装置53から離脱させる。そして、図1に示す蓄線移動機構54によりクランプ装置53を待機位置にまで移動させて、次の線材切断工程まで待機させる。
巻終わりの線材12bの挟持にあっては、図14に示すように、ノズル移動機構33(図1)によりノズル31を移動させ、そのノズル31からコイル17に延びる巻終わりの線材12bを、基板71の一方の側部と第一挟持具72の間に挿通過させる。すると、その線材12は基板71の一方の側部を上部から下方にずれて移動し、第一挟持具72の傾斜面72fから基板71の一方の側部と第一挟持具72の間に進入する。これにより、その巻終わりの線材12bは基板71の一方の側部と第一挟持具72により挟持されることになる。
<線材切断工程>
この工程では、コア11からノズル31に延びる巻終わりの線材12bを切断する。この切断は部材回転手段により行われ、この実施の形態では、蓄線移動機構54が部材回転手段を兼ねるものとして説明する。
即ち、巻終わりの線材12bの切断にあって、蓄線移動機構54は、クランプ装置53を移動させ、図15に示すように、その挟持片53a,53bをカッタ部材74における操作部74dに接触させる。そして、スプリング80の付勢力に抗してその操作部74dを移動させて、カッタ部材74を回転させ、コア11からノズル31に延びる巻終わりの線材12bであって、カッタ刃74cと基板71の一方の側部との間の挿通させた線材12を切断する。
そして、コア11からカッタ部材74に延びる線材12aは、その切断された端縁が基板71の一方の側部と第一挟持具72との間に存在してそれらにより挟持される。
この場合、基板71と第一挟持具72はα巻コイル17より斜め下方に位置しているため、線材12aは斜め下方に引き出された状態となる。
その後、ノズル移動機構33によりノズル31を待機位置まで移動させておく。ここで、そのノズル31の繰出し孔31aを通過させた線材12は、図1の拡大図に示すように、その端部を斜め上方に引出されているので、その線材12は繰出し孔31aの孔縁に係止され、次の巻線がなされるまで、テンション装置42側に向かって戻るようなことはない。
このようにしてコア11に巻かれた線材12から成るα巻きコイル17は、その後、コア11及び巻取り治具14とともにX軸方向に移動して配線手段へと搬送されることになる。けれども、カッタ部材74は第一及び第二挟持具72,73とともに線材12を挟持する基板71に重合して設けられるので、得られたコイル17の巻終わりの線材12bを切断しても、そのコイル17の巻初め及び巻終わりの線材12a,12bは、その基板71及び挟持具72,73により挟持される。
よって、本発明におけるコイル製造装置10は、得られたコイル17の巻始め及び巻終わりの線材12a,12bの双方を保持して、その後の配線のために巻取り治具14を移動させるような場合であっても、巻線された線材12が解けることを防止することが可能となるのである。
そして、一方の基板71における巻取り治具14が配線手段へと搬送されると、他方の基板71が複数の巻取り治具14とともに、把持手段から移動してこの巻線手段にまで搬送される。そして、再び、この他方の基板71の複数の巻取り治具14に把持されたコア11に対して巻線が開始されることになる。これにより、一の基台16における複数のコイルにおける配線作業と他の基台16における複数のコア11への巻線が同時に行われることに成り、これらの各作業を同時に行って単位時間に作製されるコイル17の数を増加させるようなことが可能となる。
ここで、巻終わりの線材12bを切断するけれども、線材12として断面が方形を成すいわゆる角線を用いると、先のα巻コイル形成工程において、ノズル31を回転させて巻線したので、ドラム45からノズル31の間でその角線から成る線材12が捻られることになる。この捻りを解消するために、巻終わりの線材12を切断した後に、そのノズル31をチャック21とともに、巻線時と逆方向に回転させて、その捻れを解消させておくことが好ましい。回転の回数は巻線時に回転させた数と同一であり、この捻れを解消した後に、次の線材引出し工程を再び開始することが可能になる。
このように、本発明にあってはカッタ部材74を巻取り治具14の周囲に設けたので、部材回転手段54によりそのカッタ部材74を回動させるだけで線材12を切断することができる。従って、本発明のコイル製造装置10は、線材12を切断するために従来必要とされたニッパ装置や三軸移動機構を用いない。
この線材12を切断するカッタ部材74は、巻取り治具14の周囲に設けられた平板状物であるので、大型のものとは成らず、そのカッタ部材74は巻取り治具14とともに回転させるので、このカッタ部材74を動作させる独立した駆動機構も必要としない。よって、本発明におけるコイル製造装置10は、得られたコイル17の巻終わりの線材12bを所定の長さで切断し得る比較的小型のものとなるのである。
また、巻取り治具14の回転速度より速い速度で同方向にノズル31を回転させて、チャック21に把持されたコア11にノズル31から繰出される線材12及び蓄線手段52に蓄えられた線材12の双方を巻取るようにしたので、巻始めと巻終わりの線材12a,12bが共に外周になるα巻コイル17を製造することができる。このようなα巻きコイル17を得ても、得られたコイル17の巻終わりの線材12bを切断することができる。
なお、上述した実施の形態では、チャック21の回転速度より速い速度でノズル31を回転させて、α巻コイル17を製造する場合を説明したけれども、図示しないが、巻取り治具14の回転速度より速い速度で同方向に蓄線手段52であるクランプ装置53を回転手段により回転させて、巻始めと巻終わりの線材12a,12bが共に外周になるα巻コイル17を製造するようにしても良い。この場合であっても、本発明では、その両端部を保持するとともに、カッタ部材74により、得られたコイルの巻終わりの線材12bを直ちに切断することが可能になる。
また、上述した実施の形態では、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータの組み合わせにより構成されたノズル移動機構33及び蓄線移動機構54を説明したけれども、これらの機構は、この構造のものに限るものではなく、対象物を三軸方向に移動可能である限り、他の形式のものであっても良い。
また、上述した実施の形態では、断面が方形を成すいわゆる角線が使用される場合を説明したが、線材12は角線に限られずに、その断面は長方形や多角形状であっても良く、円形を成すようないわゆる丸線であっても良い。
また、上述した実施の形態では、チャック21に設けられたコア11に線材12が巻付けられてα巻コイル17を得る場合を説明したけれども、コア11を設けること無く、巻取り治具14に線材12を直接巻付けて、その周囲にコイル17を形成するようにしても良い。この場合の巻取り治具14には、コア11を支持するチャック21に代えて、線材12が巻付けられる巻芯を形成することが好ましい。このような巻芯の周囲に線材12を巻回することにより得られたコイルは、コア11を有しない線材12のみから成る、いわゆる空芯コイルとなる。
また、上述した実施の形態では、2台の基台16を有し、それぞれに5台の巻取り治具14が設けられる場合を説明したけれども、基台16及び巻取り治具14の数はこれに限るものでは無く、3台以上の基台16を有していても良く、単一の基台16に6台以上の巻取り治具14を設けるようにしても良い。
また、上述した実施の形態では、巻付け工程とα巻コイル形成工程が同時に行われる場合を説明した。即ち、上述した実施の形態では、巻取り治具14を回転させて引出された線材12をコア11に巻付けるとともに、ノズル31を巻取り治具14の回転より速い2倍の回転速度で同方向に回転させてノズル31から繰出される線材12をコア11に巻付けてα巻コイル17を形成した。けれども、巻付け工程の後にα巻コイル形成工程を行うようにしても良い。
即ち、巻取り治具14を回転させるとともにノズル31をその巻取り治具14の回転速度と同じ回転速度で同方向に回転させ、それにより引出された線材12をコア11に巻付けて先ず一方のコイルを形成する巻付け工程を行う。その後、巻取り治具14の回転を停止するとともにノズル31の回転を継続して、ノズル31から繰出される線材12を回転が停止したコア11に巻付けて他方のコイルを一方のコイルに隣接して形成するα巻コイル形成工程を行う。すると、α巻コイル形成工程の終了時において、双方のコイルから成るα巻コイル17が形成されることになり、このように、巻付け工程の後にα巻コイル形成工程を行うようにしても良い。
更に、上述した実施の形態では、蓄線移動機構54が部材回転手段を兼ねる場合を説明したけれども、図16に示すように、巻取り治具14が基台16に枢支される場合には、部材回転手段がその基台16に設けられて流体圧により出没ロッド81aを出没させる流体圧シリンダ81を備えるようなものであっても良い。
図16における流体圧シリンダ81は圧縮エアの給排により出没ロッド81aを出没させるものを示し、昇降用シリンダ82を介して基台16にその出没ロッド81aが巻取り治具14に対向するように、巻取り治具14毎に複数設けられる場合を示す。昇降用シリンダ82はその出没ロッド82aを上方に向けて本体部82bが基台16に取付けられ、その出没ロッド82aの上端に流体圧シリンダ81が取付けられるものとする。
昇降用シリンダ82は、その出没ロッド82aを本体部82bに没入させると、流体圧シリンダ81を下降させて一点鎖線で示す待機位置で待機させるように構成される。そして、コイル17が形成されて線材切断工程において、昇降用シリンダ82は、その出没ロッド82aを上方に突出させて流体圧シリンダ81を上昇させ、その出没ロッド81aを挟持切断具70におけるカッタ部材74の操作部74dに対向させるように構成される。
その状態で、流体圧シリンダ81がその出没ロッド81aを突出させると、その先端が操作部74dに接触し、更に突出させると、スプリング80の付勢力に抗してその操作部74dが移動して、カッタ部材74は回転することになる。従って、このような部材回転手段であっても、コア11からノズル31に延びる巻終わりの線材12bであって、カッタ刃74cと基板71の一方の側部との間の挿通させた線材12を切断することが可能になる。