JP6400315B2 - 既製杭の埋設構造、既製杭の埋設方法 - Google Patents

Description

本発明は、杭穴内に既製杭を埋設する既製杭の埋設構造及び既製杭の埋設方法に関する。

地上の構造物を受ける基礎杭で、杭穴内に既製杭を埋設して構成する場合、先端支持力は主に既製杭の下端の面積により発揮されていた。また、表面積の大きさにより、摩擦支持力が発揮されるので、既製杭の途中に大径部や突起を設ける場合もあった。また、上端部では地震などにより水平荷重を受けるので、これに抗するために上端部の断面積を大きくするために大径にする工夫もなされていた（特許文献１〜３）。当然、杭穴は既製杭の最大外径に合わせて掘削していた。
また、事後に既製杭が杭穴内で沈下しないように、既製杭と杭穴内の間にはセメントミルクなどを注入して固化させていた。

特開２００６−１３２１００号公報 特開２００８−４５３２７号公報 特開２００６−１１８２１５号公報

杭穴を掘削して既製杭を納めるプレボーリング工法では、既製杭の外側の表面積で摩擦支持力を発揮させるために、既製杭の外面が直接に杭穴壁の土に接することなく、土より固化強度が高いと考えられてるセメントミルクなどを介して、既製杭は埋設されていた。
また、杭穴の底には、既製杭が杭穴底の土の上に直接に埋設されずに、根固め部という富配合のセメントミルクを充填して、この根固め部の中に既製杭の下端部を埋設して、より大きな先端支持力を発揮させる工夫が成されている。

したがって、この場合には、セメントミルクなどが固化するまでは、何らかの手段で地上で既製杭を吊った状態で、支える必要があった。通常は、既製杭の埋設が完了した後に、１〜５時間ほど要し、それまで、杭打ち機で既製杭を保持する必要があった。
また。既製杭の埋設作業時に既製杭を支えていた杭打ち機は、作業効率上、敷地内の他の既製杭の埋設作業に移動させる必要があったので、杭打ち機を開放するためには、通常は、既製杭の突起部や何らかの突起治具を設けて、ワイヤーなどで既製杭に引っかけ、そのワイヤーを地上で仮固定して、既製杭を保持していた。そして、セメントミルクなどが固化して、既製杭が沈下しない状態になったならば、ワイヤーを取り外していた。よって、このワイヤーなどの着脱作業が煩雑となっていた。
また、地上からは地中（杭穴内）のセメントミルクなどの固化状態を完全には把握できないため、後期の都合上、次工程に進むために少しでも早く次工程に進むべく、既製杭の仮固定を外した場合、あるいは充分な固化時間を経ても何らかの不慮の原因による場合、セメントミルクなどの固化に不足が生じることもあった。この場合には既製杭が仮固定位置から沈下するおそれがあった。

本発明は、既製杭の大径部の下面を杭穴の段差部に係止して埋設したので、前記問題点を解決した。

即ちこの発明は、外径Ｄ０１の上部大径部を有し、該上部大径部の下方を径Ｄ０２（Ｄ０２＜Ｄ０１）の小径部としてなる既製杭を、杭穴内に埋設して、以下のように構成することを特徴とする既製杭の埋設構造である。
(1) 前記杭穴は、杭穴小径部が所定径Ｄ１（Ｄ０２＜Ｄ１＜Ｄ０１）で形成され、前記杭穴小径部の所定高さから上方に径Ｄ２（Ｄ１＜Ｄ２）の杭穴大径部を形成し、前記杭穴小径部の上端に段差部を形成する。
(2) 前記既製杭の大径部下面外周部を前記杭穴の段差部上面に係止した状態で、かつセメントミルクなどの固化材料が充填された前記杭穴内に前記既製杭を埋設する。

また、前記において、杭穴の段差部を、地盤強度が大きな深さ位置に設定することを特徴とする既製杭の埋設構造である。

また、他の発明は、杭穴内に、既製杭を以下のように埋設して基礎杭構造を構築することを特徴とした既製杭の埋設方法である。
(1) 前記既製杭を、外径Ｄ０１の上部大径部を有し、該上部大径部の下方を径Ｄ０２（Ｄ０２＜Ｄ０１）の小径部として構成する。
(2) 所定径Ｄ１（Ｄ０２＜Ｄ１＜Ｄ０１）で杭穴小径部を必要深さまで掘削する。
(3) 前記杭穴小径部を所定深さまで掘削した後に、あるいは、前記杭穴小径部の下端部の掘削と同時に、前記杭穴小径部の所定深さから上方に、径Ｄ２（Ｄ０１＜Ｄ２）の上部大径部を掘削し、前記杭穴小径部の上端に段差部を形成する。
(4) 前記杭穴内にセメントミルクなどの固化材料を注入すると前後して、あるいは同時に、前記既製杭を挿入する。
(5) 前記既製杭の大径部下面が前記杭穴の段差部上面に係止した状態を維持して、前記杭穴内に前記既製杭を埋設する。
(6) 前記固化材料が固化したならば、基礎杭構造を構成する。

この発明は、既製杭の上部大径部の下面、すなわち下に向けた段差部を、杭穴の上方に向けた段差部に係止するので、地上で、既製杭を保持しなくても杭穴内で既製杭は安定して保持される効果がある。したがって、特別な治具を用意して途上で既製杭を保持する必要がなく、かつ杭打ち機の効率的な運用ができる効果がある。
また、既製杭の段差部と杭穴の段差部が直接に接するので、根固め部での先端支持力に加えて、段差部で既製杭から地盤へ荷重を伝達できる。したがって、段差部では摩擦支持力以上の大きな支持力を発揮できる効果がある。

この発明の実施例で、（ａ）は既製杭、（ｂ）は杭穴、（ｃ）は既製杭を杭穴に納めた状態を表す。 この発明の他の実施例で、（ａ）は他の既製杭、（ｂ）は杭穴、（ｃ）は既製杭を杭穴に納めた状態を表す。

図面に基づきこの発明の実施形態を説明する。

１．既製杭１の構成

この発明の実施に使用する既製杭１は、上部が、径Ｄ０１の上部大径部２で、上部大径部２の下方に径Ｄ０の小径部３が、段差部４を介して連続している（図１（ａ））。段差部４は径Ｄ０１からＤ０２へ徐々に径が変化する部分で、正面視で、θ１＝４５度程度になっている。なお、θ１は、
θ１＝０〜６０°
程度の角度で調整できる。
また、小径部３の下端に、径変化部（段差部と同様構造）７を介して、径Ｄ０３の下部小径部６を連設してある。下部小径部６には、上下に等間隔に径Ｄ０４のリング状の節部８、８を形成する。ここで、
Ｄ０３＜Ｄ０２＜Ｄ０３
Ｄ０３＜Ｄ０４
Ｄ０２≒Ｄ０４
Ｄ０４＜Ｄ０１
で形成されている。
また、段差部４は、後に述べる杭穴２０の段差部２３に対応した位置に形成される。

２．既製杭１の埋設

（１） 地面（地上）１８から通常の掘削ロッドを使用して（図示していない）、径Ｄ１の杭穴小径部２１（杭穴軸部）を掘削して、根固め部用に径Ｄ３（Ｄ１＜Ｄ３）に拡径して、拡大根固め部２３を形成する。
続いて、径Ｄ１の杭穴小径部２１（軸部）の上部２１ａの杭穴壁を削って、径Ｄ２の上部大径部２４を形成する（図１（ｂ）鎖線図示２１ａ）。ここで、Ｄ１＜Ｄ２、となっている。
径Ｄ２の上部大径部２４は、Ｄ１からＤ２へ徐々に径が変化する正面視θ２の段差部２３を形成し、段差部２３から上方は、地上１８まで径Ｄ２で形成されて、段差部２３は上方に向けてある。
ここで、
Ｄ０２＜Ｄ１、Ｄ１＜Ｄ０１＜Ｄ２
θ２＝０〜６０°
で形成されている。
また、段差部２３を形成する地盤は、いわゆる中間支持層などの地盤強度がある程度大きな深さ位置に形成することが望ましい。中間支持層（地盤強度が大きな地盤）とは、例えば、
砂質でＮ値１５以上
粘土質Ｎ値５以上
の地盤である。
以上のようにして、杭穴２０を形成する（図１（ｂ））。
なお、ここで、Ｄ２の上部大径部２４はＤ１の杭穴小径部２１を掘削後に、杭穴２０の上部の杭穴壁を削って形成したが、地面（地上）１８から径Ｄ２の上部大径部２４を掘削し、段差部２３で徐々に小径として、続いて、同じ掘削ロッドで、Ｄ１の杭穴小径部２１を掘削することもできる。

（２） 所定形状の杭穴２０を形成しながら、または杭穴２０を形成したした後に、杭穴２０内に杭穴充填物（根固め部液、杭周固定液など。ソイルセメント、セメントミルクなど）を充填する。

（３） 既製杭１を杭打ち機で把持して、杭穴２０の上端から、既製杭１の下端を従来の任意の方法で、徐々に下降する。

（４） 続いて、既製杭１の段差部（すなわち、上部大径部２の下面外周縁）４の外周面を、杭穴２０の段差部２３に乗せて係止する。この状態で、既製杭１は、杭穴２０内の予め定められた位置にあり、この状態を保持できるので、杭穴充填物が固化するまで（通常１〜５時間程度）、放置する。
この状態で、既製杭１は所定の位置を保つので、杭穴２０の段差部２３に係止した後に、杭打ち機から既製杭１を取り外し、その杭打ち機を移動して、他の杭穴へ既製杭を埋設する作業に使用でき、現場内で杭打ち機の効率的な運用ができる。

（５） 杭穴充填物が固化したならば、杭穴２０内に既製杭１が埋設された基礎杭構造３０を形成する（図１（ｃ））。

３．他の実施形態

（１） 前記実施形態において、１本の既製杭１を埋設する例について説明したが、多数の既製杭１、１を接合して埋設こともできる（図示していない）。この場合には、安定して既製杭を保持するためには、最上に位置する既製杭１に段差部４を形成することが望ましい（図示していない）。しかし、多数の既製杭１、１を接合する場合で、地盤強度などとの関係で、中間に位置する既製杭１に段差部４を形成することもできる。また、最下方に位置する既製杭１に段差部４を形成することもできる。

（２） 前記実施形態において、杭穴２０の段差部２３に、硬性材料（鋼などの金属や硬質樹脂、硬質木材など）からなるリング１６を配置することもできる（図１（ｂ）鎖線図示１６）。リング１６の内径は既製杭１の小径部３が挿入できるように、杭穴２０の杭穴小径部の内径Ｄ１に合わせて形成して、これを配置することもできる。また、リング１６に放射方向の切り込みを設ければ（図示していない）、予め既製杭１の小径部３を通して、段差部４に配置して、既製杭１と共に埋設することもできる。
この場合、リング１６に既製杭１の段差部４が載置されるので、既製杭１の沈下をより確実に防止できる。とりわけ、リング１６の外径をＤ２より大きく形成するなどすれば、段差部２３周辺の地盤が比較的弱い場合に有効である。

（３） また、前記実施形態において、杭穴２０を先ず掘削して、その後に既製杭１、１を埋設したが、いわゆる中掘工法で、杭穴２０を掘削しつつ既製杭１、１を埋設することもできる（図示していない）。

（４） また、前記実施形態において、既製杭１の杭穴小径部２１の下端に径変化部７を介して、下小径部６を形成したが、下小径部６を省略して、下端まで径Ｄ０２の構造とすることもできる（図示していない）。また、節８、８を省略することもできる（図示していない）。

（５） また、前記実施形態において、径変化部７を形成したが、径変化部７を覆うように、節８ａ（＝節８と同一の外形）を形成して、節８ａの上端が径Ｄ０２、下端が径Ｄ０３、に形成した既製杭１とすることもできる（図２（ａ））。この場合も同様に、杭穴２０の段差部２３に既製杭１の段差部４を係止して、杭穴２０内に既製杭１を埋設して（図２（ｂ））、基礎杭構造３０を形成することもできる（図２（ｃ））。

（６） また、前記実施形態において、既製杭１の段差部４に、図２の節部８ａ同様の節部で覆い、節の上端を径Ｄ０１、節の下端をＤ０２とすることもできる（図示していない）。この場合には、段差部４の下面の面積をより大きくできるので、安定して、杭穴２０の段差部２３に保持できる。

１ 既製杭
２ 上部大径部
３ 小径部
４ 段差部
６ 下小径部
７ 経変化部（段差）
８、８ａ 節部
１６ リング
１８ 地面（地上）
２０ 杭穴
２１ 杭穴小径部
２２ 拡大根固め部
２３ 段差部
２４ 上部大径部
２６ 中間支持層
３０ 基礎杭構造

Claims (3)

1. 外径Ｄ０１の上部大径部を有し、該上部大径部の下方を径Ｄ０２（Ｄ０２＜Ｄ０１）の小径部としてなる既製杭を、杭穴内に埋設して、以下のように構成することを特徴とする既製杭の埋設構造。
   (1) 前記杭穴は、杭穴小径部が所定径Ｄ１（Ｄ０２＜Ｄ１＜Ｄ０１）で形成され、前記杭穴小径部の所定高さから上方に径Ｄ２（Ｄ１＜Ｄ２）の杭穴大径部を形成し、前記杭穴小径部の上端に段差部を形成する。
   (2) 前記既製杭の大径部下面外周部を前記杭穴の段差部上面に係止した状態で、かつセメントミルクなどの固化材料が充填された前記杭穴内に前記既製杭を埋設する。
2. 杭穴の段差部を、地盤強度が大きな深さ位置に設定することを特徴とする請求項１記載の既製杭の埋設構造。
3. 杭穴内に、既製杭を以下のように埋設して基礎杭構造を構築することを特徴とした既製杭の埋設方法。
   (1) 前記既製杭を、外径Ｄ０１の上部大径部を有し、該上部大径部の下方を径Ｄ０２（Ｄ０２＜Ｄ０１）の小径部として構成する。
   (2) 所定径Ｄ１（Ｄ０２＜Ｄ１＜Ｄ０１）で杭穴小径部を必要深さまで掘削する。
   (3) 前記杭穴小径部を所定深さまで掘削した後に、あるいは、前記杭穴小径部の下端部の掘削と同時に、前記杭穴小径部の所定深さから上方に、径Ｄ２（Ｄ０１＜Ｄ２）の上部大径部を掘削し、前記杭穴小径部の上端に段差部を形成する。
   (4) 前記杭穴内にセメントミルクなどの固化材料を注入すると前後して、あるいは同時に、前記既製杭を挿入する。
   (5) 前記既製杭の大径部下面が前記杭穴の段差部上面に係止した状態を維持して、前記杭穴内に前記既製杭を埋設する。
   (6) 前記固化材料が固化したならば、基礎杭構造を構成する。

Images