《第1実施形態》
図1〜図17を引用して、本発明を適用した積層セラミックコンデンサの製造方法(第1実施形態)について説明する。
製造に際しては、先ず、誘電体セラミック粉末と溶剤とバインダを少なくとも含むセラミックスラリーを用意すると共に、金属粉末と溶剤とバインダを少なくとも含む金属ペーストを用意する。
セラミックスラリーの誘電体セラミック粉末は、好ましくはチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、酸化チタン等から選択された少なくとも1種の粉末、より好ましくはε>1000又はクラス2(高誘電率系)に該当する誘電体セラミックスの粉末である。溶剤は、好ましくはエタノール、ブチルカルビトール等から選択された少なくとも1種である。バインダは、好ましくはポリビニルブチラール、アクリル系樹脂、エチルセルロース等から選択された少なくとも1種である。因みに、セラミックスラリーは、誘電体セラミック粉末と溶剤とバインダの他に、分散剤等の周知の添加剤を含んでいても良い。
一方、金属ペーストの金属粉末は、好ましくはニッケル、銅、パラジウム、白金、銀、金、チタン、スズ、亜鉛、これらの合金等から選択された1種の粉末である。溶剤は、好ましくはターピネオール、ミネラルスピリット等から選択された少なくとも1種である。バインダは、好ましくはエチルセルロース、ポリビニルアセタール、アクリル系樹脂等から選択された少なくとも1種である。因みに、金属ペーストは、金属粉末と溶剤とバインダの他に、分散剤等の周知の添加剤や、ガラス成分や、前記セラミックスラリーに含まれる誘電体セラミック粉末又はこれと実質的に同じ誘電体セラミック粉末を含んでいても良い。
次に、前記セラミックスラリーと前記金属ペーストを用いて、図1(A)及び図1(B)に示した第1未焼成シート11と、図2(A)及び図2(B)に示した第2未焼成シート12と、図3(A)及び図3(B)に示した第3未焼成シート13を作製する。
図1(A)及び図1(B)に示した第1未焼成シート11は、図1(B)に仮想線で示した矩形状のキャリアフィルムCFの表面に、ダイコータやグラビアコータ等の塗工装置と乾燥装置とを用いて、前記セラミックスラリーを塗工し乾燥して所定厚さ及び形状のグリーンシート11a(図1中は矩形)を形成し、続いて該グリーンシート11aの表面に、スクリーン印刷機やグラビア印刷機等の印刷装置と乾燥装置とを用いて、前記金属ペーストを印刷し乾燥して所定厚さ及び形状の位置決めマーク11b(図1中は2個の円形マーク)を形成し、続いてキャリアフィルムCFを取り除くことによって作製されている。キャリアフィルムCFは、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等から選択された合成樹脂のフィルムである。因みに、この第1未焼成シート11は、前記キャリアフィルムとして帯状で長尺なものを用い、該キャリアフィルムの表面に帯状のグリーンシートを形成し、続いて該グリーンシートの表面に前記同様の位置決めマーク11bを順次形成し、続いて該グリーンシートを適宜カッティングして矩形状のものを取り出す方法によっても作製することができる。
図2(A)及び図2(B)に示した第2未焼成シート12は、図2(B)に仮想線で示した矩形状のキャリアフィルムCFの表面に、ダイコータやグラビアコータ等の塗工装置と乾燥装置とを用いて、前記セラミックスラリーを塗工し乾燥して所定厚さ及び形状のグリーンシート12a(図2中は矩形)を形成し、続いて該グリーンシート12aの表面に、スクリーン印刷機やグラビア印刷機等の印刷装置と乾燥装置とを用いて、前記金属ペーストを印刷し乾燥して所定厚さ及び形状の未焼成位置決めマーク12b(図2中は2個の円形マーク)を形成すると共に、所定厚さ及び形状の回り込み下地導体層用の未焼成導体パターン12c(図2中は6個の帯形パターン)をストライプ配列で形成し、続いてキャリアフィルムCFを取り除くことによって作製されている。1個の未焼成導体パターン12cの幅(図2(A)の左右方向寸法)は、図15に示した回り込み下地導体層21cの長さ(図15の左右方向寸法)の約2倍である。因みに、この第2未焼成シート12は、前記キャリアフィルムとして帯状で長尺なものを用い、該キャリアフィルムの表面に帯状のグリーンシートを形成し、続いて該グリーンシートの表面に前記同様の未焼成位置決めマーク12b及び未焼成導体パターン12cを順次形成し、続いて該グリーンシートを適宜カッティングして矩形状のものを抜き出す方法によっても作製することができる。
図3(A)及び図3(B)に示した第3未焼成シート13は、図3(B)に仮想線で示した矩形状のキャリアフィルムCFの表面に、ダイコータやグラビアコータ等の塗工装置と乾燥装置とを用いて、前記セラミックスラリーを塗工し乾燥して所定厚さ及び形状のグリーンシート13a(図3中は矩形)を形成し、続いて該グリーンシート13aの表面に、スクリーン印刷機やグラビア印刷機等の印刷装置と乾燥装置とを用いて、前記金属ペーストを印刷し乾燥して所定厚さ及び形状の未焼成位置決めマーク13b(図3中は2個の円形マーク)を形成すると共に、所定厚さ及び形状の内部電極層用の未焼成導体パターン13c(図3中は36個の矩形パターン)をマトリックス配列で形成し、続いてキャリアフィルムCFを取り除くことによって作製されている。1個の未焼成導体パターン13cの長さ(図3(A)の左右方向寸法)は、図15に示した内部電極層21bの長さ(図15の左右方向寸法)の約2倍である。因みに、この第3未焼成シート13は、前記キャリアフィルムとして帯状で長尺なものを用い、該キャリアフィルムの表面に帯状のグリーンシートを形成し、続いて該グリーンシートの表面に前記同様の未焼成位置決めマーク13b及び未焼成導体パターン13cを順次形成し、続いて該グリーンシートを適宜カッティングして矩形状のものを抜き出す方法によっても作製することができる。
前掲の第1〜第3未焼成シート11〜13におけるグリーンシート11a、12a及び13aの厚さ及び形状(何れも公差を含まない基準寸法)は互いに同等であるが、各々の厚さが例えば0.5〜10μmの範囲内、好ましくは0.5〜5μmの範囲内で設定されていれば、後述の位置調整ステップを支障なく行うことができる。また、未焼成位置決めマーク11b、12b及び13bの厚さ(公差を含まない基準寸法)と未焼成導体パターン12c及び13cの厚さ(公差を含まない基準寸法)も互いに同等であり、各々の厚さは例えば0.5〜5μmの範囲内で設定されている。
次に、図4に示したように、アライメントテーブル14の表面に置いた紙や不織布等の通気性シート15の表面に、1枚の第2未焼成シート12を、未焼成位置決めマーク12bと未焼成導体パターン12cが通気性シート15と向き合うように、換言すれば未焼成位置決めマーク12bと未焼成導体パターン12cが外向き(図4中は下向き)になるように載置する。この載置は、図4に示した吸着ヘッド16とは異なる吸着搬送装置(図示省略)を用いて、第2未焼成シート12の中心がアライメントテーブル14の表面中心に概ね一致するように行われる。因みに、アライメントテーブル14は図4に破線矢印で示したX方向の直線移動の他、該X方向と直交するY方向の直線移動と、θ方向の回転移動を可能としている。X方向とY方向とθ方向については図1〜図3を参照されたい。
次に、図4に示したように、2台の照明器付きカメラ17が取り付けられた可動型吸着ヘッド16をアライメントテーブル14上の撮影位置P1に移動して停止させ、続いて照明器による照明を行いながら各カメラ17で第2未焼成シート12の未焼成位置決めマーク12bをそれぞれ撮影する(図4の実線矢印を参照)。因みに、吸着ヘッド16は、第2未焼成シート12と向き合う面に多数の吸引孔(図示省略)を有すると共に、同面を所定温度に加熱するためのヒータ(図示省略)を内蔵している。
このときの未焼成位置決めマーク12bの撮影は、図4から分かるように、第2未焼成シート12の未焼成位置決めマーク12b及び未焼成導体パターン12cが形成されている面とは反対側の面(図2(B)の下面)に各カメラ17を向けて行われるが、該撮影で得た画像に基づく各未焼成位置決めマーク12bの位置認識は十分に行える。即ち、グリーンシート12aの厚さが薄くその色合いは概ね乳白色又は薄灰色であり、しかも、未焼成位置決めマーク12bの色合いが概ね濃灰色でグリーンシート12aよりも明度が低いことから、前記反対側の面に向けられた各照明器による照明によって、図5(A)及び図5(B)に示した画像IMのようにグリーンシート12aを通じて未焼成位置決めマーク12bの輪郭が浮かび上がる。この輪郭の浮かび上がりは、各照明器(各カメラ17に設けられた撮影用照明器)の照明条件を調整することにより最適化することが可能であり、該照明条件には、例えば照明光の明るさ(光束や光度)や、照明光の照射角度や照射距離や、照明光の色(波長や色温度)等が挙げられる。勿論、この照明条件は、前記各照明器と別の照明器を併用、或いは、前記各照明器の代わりに別の照明器を用いて、該別の照明器によって、第2未焼成シート12の未焼成位置決めマーク12b及び未焼成導体パターン12cが形成されている面(図4の下面)に向けて照明を行う場合の照明条件としても適用できる。
前記位置認識の結果、各未焼成位置決めマーク12bの位置(中心位置)と画像IMの中心とに例えば図5(A)に示したようなズレがあるときには、画像処理下でズレ量を演算して、該ズレが矯正されるようにアライメントテーブル14、即ち、第2未焼成シート12をX方向、Y方向及びθ方向に適宜移動させて該第2未焼成シート12の位置調整を行う(図5(B)を参照)。
次に、図6に示したように、吸着ヘッド16をアライメントテーブル14上の吸着位置P2に移動して停止させ、続いて吸引開始した吸着ヘッド16を下降して位置調整後の第2未焼成シート12を吸着する(図6の実線矢印を参照)。吸着後は、吸着位置P2において吸着ヘッド16を上昇させて(図6の破線矢印を参照)、該吸着ヘッド16によって第2未焼成シート12を取り出す。
次に、図7に示したように、吸着ヘッド16を積層テーブル18上の積層位置P3に移動して停止させ、続いて吸着ヘッド16を下降して、積層テーブル18の表面に置いた前記通気性シート15と同様の通気性シート19の表面に、未焼成位置決めマーク12bと未焼成導体パターン12cが通気性シート19と向き合うように、換言すれば未焼成位置決めマーク12bと未焼成導体パターン12cが下向きになるように第2未焼成シート12を載置する(図7の実線矢印を参照)。載置後は、積層位置P3において吸引停止した吸着ヘッド16を上昇させて(図7の破線矢印を参照)、該吸着ヘッド16から第2未焼成シート12を解放する。
次に、図4〜図7を用いて説明した手順を第1未焼成シート11に対して実行し、図8に示したように、第2未焼成シート12の表面に第1未焼成シート11を所定枚数、順次積み重ねる。因みに、第1未焼成シート11には第2未焼成シート12の未焼成導体パターン12cや第3未焼成シート13の未焼成導体パターン13cは形成されていないため、図4及び図5を用いて説明した位置調整ステップを行わなくても積層上で特段支障は生じない。換言すれば、第1未焼成シート11には未焼成位置決めマーク11bを必ずしも形成する必要はない。
次に、図4〜図7を用いて説明した手順を第3未焼成シート13に対して実行し、図9に示したように、最上位の第1未焼成シート11の表面に第3未焼成シート13を所定枚数、順次積み重ねる。所定枚数の第3未焼成シート13を順次積み重ねるときには、図10に示したように、奇数番目の第3未焼成シート13に対して偶数番目の第3未焼成シート13が長さ方向(図3(A)の左右方向)に寸法L1(図3(A)を参照)だけシフトするようにする。この長さL1は、[未焼成導体パターン13cの長さ/2]+[未焼成導体パターン13cの長さ方向間隔/2]である。因みに、図10の符号CVLは後述の分断ステップにおける切断仮想ラインである。
次に、図4〜図7を用いて説明した手順を第1未焼成シート11に対して実行し、図11に示したように、最上位の第3未焼成シート13の表面に第1未焼成シート11を所定枚数、順次積み重ねる。因みに、第1未焼成シート11に対して図4及び図5を用いて説明した位置調整ステップを行わなくて良いこと、第1未焼成シート11に未焼成位置決めマーク11bを必ずしも形成する必要がないこと、は先に述べた通りである。
次に、図4〜図7を用いて説明した手順を第2未焼成シート12に対して実行し、図12に示したように、最上位の第1未焼成シート11の表面に、未焼成位置決めマーク12bと未焼成導体パターン12cが外向きになるように1枚の第2未焼成シート12を積み重ねる。この場合の未焼成位置決めマーク12bの撮影は、最下位の第2未焼成シート12の未焼成位置決めマーク12bの撮影と異なり、第2未焼成シート12の未焼成位置決めマーク12b及び未焼成導体パターン12cが形成されている面(図2(B)の上面)に各カメラ17を向けて行われる。
次に、積層テーブル18の通気性シート19から積み重ねシート(符号無し)を取り出し、熱間静水圧プレス機や機械式又は油圧式プレス機等の本圧着装置を用いて該積み重ねシートを本熱圧着して、図13に示した未焼成積層シート(符号無し)、即ち、高さ方向の最下位と最上位において未焼成位置決めマーク12bと回り込み下地導体層用の未焼成導体パターン12cが外向きになるように位置する未焼成積層シートを作製する。この積み重ねシートの取り出しと本圧着装置への搬送は、吸着ヘッド16とは異なる吸着搬送装置(図示省略)を用いて行われる。因みに、図13の符号CVLは後述の分断ステップにおける切断仮想ラインである。
次に、ブレードダイシング機やレーザーダイシング機等の切断装置を用いて、図13に示した未焼成積層シートを切断仮想ラインCVLに沿って格子状に切断して、図14(A)及び図14(B)に示した未焼成チップ20を作製する。この未焼成チップ20は、長さ(図14(A)及び図14(B)の左右方向寸法)と幅(図14(A)の上下方向寸法)と高さ(図14(B)の上下方向寸法)とで規定された略直方体状のコンデンサ本体対応部分の内部に、内部電極層21b(図15及び図16を参照)に対応する複数(図14中は4層)の未焼成導体パターン13c1を有すると共に、該コンデンサ本体対応部分の高さ方向両面の長さ方向両端部それぞれに、未焼成導体パターン12c1(図14中は4個)を有している。
次に、トンネル型焼成炉や箱型焼成炉等の焼成装置を用いて、多数の未焼成チップ20を、前記セラミックスラリーに含まれている誘電体セラミック粉末と前記金属ペーストに含まれている金属粉末に対応した雰囲気下及び温度プロファイルにて焼成(脱バインダ処理と焼成処理を含む)して、図15に示した焼成チップ21(端面下地導体層22を除く)を作製する。この焼成チップ21は、長さ(図15の左右方向寸法)と幅(図15の左右方向寸法及び上下方向寸法と直交する方向の寸法)と高さ(図15の上下方向寸法)とで規定された略直方体状を成す積層構造のコンデンサ本体21aと、該コンデンサ本体21a内に設けられた複数(図15中は4層)の矩形状の内部電極層21bと、該コンデンサ本体21aの高さ方向両面の長さ方向両端部それぞれに設けられた回り込み下地導体層21c(図15中は4個)とを備えている。各内部電極層21bの長さ(図15の左右方向寸法)は図3に示した未焼成導体パターン13cの1個の長さ(図3(A)の左右方向寸法)の約1/2倍であり、各回り込み下地導体層21cの長さ(図15の左右方向寸法)は図2に示した未焼成導体パターン12cの1個の幅(図2(A)の左右方向寸法)の約1/2である。
次に、ローラ塗布機やディップ塗布機等の塗布装置と乾燥装置とを用いて、焼成チップ21のコンデンサ本体21aの長さ方向両面それぞれに金属ペースト(前記金属ペーストを流用)を塗布して乾燥し、続いて前記同様の雰囲気下で焼き付け処理を行って、図15に示した端面下地導体層22を作製する。一方の端面下地導体層22は、高さ方向両面の長さ方向一端部それぞれに設けられた回り込み下地導体層21cと連続していると共に、コンデンサ本体21aの長さ方向一面で露出する内部電極層21bの端縁に電気的に接続している。また、他方の端面下地導体層22は、高さ方向両面の長さ方向他端部それぞれに設けられた回り込み下地導体層21cと連続していると共に、コンデンサ本体21aの長さ方向他面で露出する内部電極層21bの端縁に電気的に接続している。
前掲の焼成チップ21の作製と端面下地導体層22の作製は、所謂同時焼成を利用して行うこともできる。即ち、未焼成チップ20を作製した後に、ローラ塗布機やディップ塗布機等の塗布装置と乾燥装置とを用いて、該未焼成チップ20のコンデンサ本体対応部分の長さ方向両面に金属ペースト(前記金属ペーストを流用)を塗布して乾燥し、続いてトンネル型焼成炉や箱型焼成炉等の焼成装置を用いて、多数の未焼成チップ20を、前記同様の雰囲気下及び温度プロファイルにて焼成(脱バインダ処理と焼成処理を含む)すれば、焼成チップ21の作製と端面下地導体層22の作製を一度の焼成にて行うことができる。
次に、電解メッキ装置やスパッタ装置や真空蒸着装置等の薄膜形成装置を用いて、コンデンサ本体21aの長さ方向一方の2個の回り込み下地導体層21cと端面下地導体層22との連続物の表面と、該コンデンサ本体21aの長さ方向他方の2個の回り込み下地導体層21cと端面下地導体層22との連続物の表面のそれぞれに、各々の表面を覆う図16に示した主導体層23を作製する。以上で、図17に示した積層セラミックコンデンサMLCC、即ち、略直方体形状のコンデンサ本体21aの長さ方向両端部それぞれに多層構造の外部電極24(図17中は2個)を有する積層セラミックコンデンサMLCCが製造される。
図14〜図16を用いて説明したように、前述の製造方法は、コンデンサ本体対応部分の高さ方向両面の長さ方向両端部それぞれに回り込み下地導体層用の未焼成導体パターン12c1が形成された未焼成チップ20を作製するステップと、この未焼成チップ作製ステップの後に、未焼成チップ20を焼成して、コンデンサ本体21aの高さ方向両面の長さ方向両端部それぞれに回り込み下地導体層21cが形成された焼成チップ21を作製するステップと、この焼成チップ作製ステップの後に又は該焼成チップ作製ステップと同時の焼成によって、コンデンサ本体21aの長さ方向両面それぞれに、高さ方向両面の長さ方向一端部それぞれに設けられた2個の回り込み下地導体層21cと連続する端面下地導体層22と、高さ方向両面の長さ方向他端部それぞれに設けられた2個の回り込み下地導体層21cと連続する端面下地導体層22を作製するステップと、この端面下地導体層作製ステップの後に、コンデンサ本体21aの長さ方向一方の2個の回り込み下地導体層21cと端面下地導体層22との連続物の表面を覆う主導体層23と、該コンデンサ本体21aの長さ方向他方の2個の回り込み下地導体層21cと端面下地導体層22との連続物の表面を覆う主導体層23を作製するステップとによって、コンデンサ本体21aの長さ方向両端部それぞれに多層構造の外部電極24(図17を参照)を作製している。
つまり、前述の製造方法によれば、各外部電極24の主導体層23における回り込み下地導体層21a上に略平坦な面状の被接続区域CA(図17を参照)を形成することができるため、該被接続区域CAを利用して導体パッドや導体ビアに対する接続を高信頼下で行うことができる。例えば、被接続区域CAをハンダを介して導体パッドに接続する場合、該被接続区域CAに従前のような顕著な段差や起伏がないことから導体パッドとの隙間を略一様にすることができ、これによりハンダ量の偏りを原因とした接続不良を未然に防止することができる。また、被接続区域CAに導体ビアに接続する場合、該被接続区域CAに従前のような顕著な段差や起伏がないことから導体ビアが接続できる区域を十分に確保することができ、これにより導体ビアの位置公差を原因とした接続不良を未然に防止することができる。
また、前述の製造方法は、第1未焼成シート11と第2未焼成シート12と第3未焼成シート13を適宜積み重ねて、高さ方向の最上位と最下位に第2未焼成シート12が存する積み重ねシート(図12を参照)を作製するときに、最下位の第2未焼成シート12に対しては未焼成位置決めマーク12b及び回り込み下地導体層用の未焼成導体パターン12cが形成されている面とは反対側の面にカメラ17を向けて撮影を行い、該撮影で得た画像に基づいて未焼成位置決めマーク12bの位置認識を行い、未焼成位置決めマーク12bの位置にズレがあるときに該ズレが矯正されるように該第2未焼成シート12を移動させてその位置調整を行っている。
つまり、最下位の第2未焼成シート12の未焼成位置決めマーク12b及び回り込み下地導体層用の未焼成導体パターン12cが形成されている面にカメラ17を向けて撮影を行う場合には、未焼成位置決めマーク12bの位置認識と第2未焼成シート12の位置調整を行った後に該第2未焼成シート12を上下反転させてから積み重ねる必要があるため、上下反転のときの位置誤差が積み重ねシートに現れる懸念がある。これに対し、前述の製造方法によれば、このような上下反転が不要であるため、最下位の第2未焼成シート12に前記のような位置誤差が生じることを防止して、位置精度に優れた積み重ねシート(図12を参照)及び未焼成積層シート(図13を参照)を作製することができる。
さらに、前述の製造方法によれば、最下位の第2未焼成シート12の未焼成位置決めマーク12b及び回り込み下地導体層用の未焼成導体パターン12cが形成されている面とは反対側の面にカメラ17を向けて撮影を行うときに、撮影用照明器の照明条件を調整することにより該未焼成位置決めマーク12bの輪郭を浮かび上がらせてその位置認識を的確に行うことができる。
さらに、前述の製造方法によれば、各カメラ17が、積み重ねシート(図12を参照)を作製するときに用いられる可動型吸着ヘッド16に取り付けられているため、該各カメラ17をアライメントテーブル14の上方に固定配置する場合に比べて、該各カメラ17を撮影対象に近付けた状態で所期の撮影を的確に行うことができる。詳しく述べれば、遠距離で撮影を行って未焼成位置決めマーク12bの位置認識を行う場合には拡大画像を得るための光学系が必要になるが、近距離で撮影を行って未焼成位置決めマーク12bの位置認識を行う場合にはこのような光学系は不要である。
〈第1実施形態の変形例〉
(1)前述の製造方法では、円形の未焼成位置決めマーク11b、12b及び13bを示したが、該マークとして+形、T形、×形、L形等の他の形状を採用しても、前記同様の位置認識を行うことができる。
(2)前述の製造方法では、内部電極層用の未焼成導体パターン13cをマトリックス配列で形成した第3未焼成シート13を示したが、図18に示したように、内部電極層用の未焼成導体パターン13c(図18中は30個の矩形パターン)を千鳥配列で形成した第3未焼成シート13’を代わりに用いても良い。因みに、図18に示した内部電極層用の未焼成導体パターン13cは、図18の上から偶数番目の行が先に述べた寸法L1だけ左右にずれていているため、積み重ねシートを作製するときに偶数番目の第3未焼成シート13’をθ方向に180度回転させて図18における上下向きを変えれば、図12に示した積み重ねシートと同等の積み重ねシートを作製することができる。
(3)前述の製造方法では、主導体層23が1層である外部電極24(図16及び図17を参照)を示したが、主導体層23の表面に別の主導体層を1層形成して3層構造の外部電極24を作製したり、別の主導体層を2層以上形成して3層を超える多層構造の外部電極24を作製しても良い。
(4)前述の製造方法では、本発明を積層セラミックコンデンサに適用した製造方法を示したが、積層セラミックインダクタや積層セラミックバリスタ等の他の積層セラミック電子部品の製造方法に本発明を適用しても、前記同様の効果を得ることができる。
《第2実施形態》
図19〜図26を引用し、且つ、図1〜図18を適宜流用して、本発明を適用した積層セラミックコンデンサの製造方法(第2実施形態)について説明する。
製造に際しては、先ず、誘電体セラミック粉末と溶剤とバインダを少なくとも含むセラミックスラリーを用意すると共に、金属粉末と溶剤とバインダを少なくとも含む金属ペーストを用意する。セラミックスラリーと金属ペーストの材料詳細は第1実施形態欄で述べた通りであるため、ここでの記載を省略する。
次に、前記セラミックスラリーと前記金属ペーストを用いて、図1(A)及び図1(B)に示した第1未焼成シート11と、図2(A)及び図2(B)に示した第2未焼成シート12と、図3(A)及び図3(B)に示した第3未焼成シート13と、図19(A)及び図19(B)に示した第4未焼成シート12’を作製する。第1未焼成シート11、第2未焼成シート12及び第3未焼成シート13の作製手法の詳細は第1実施形態欄で述べた通りであるため、ここでの記載を省略する。
図19(A)及び図19(B)に示した第4未焼成シート12’は、図19(B)に仮想線で示した矩形状のキャリアフィルムCFの表面に、スクリーン印刷機やグラビア印刷機等の印刷装置と乾燥装置とを用いて、前記金属ペーストを印刷し乾燥して所定厚さ及び形状の未焼成位置決めマーク12b(図19中は2個の円形マーク)を形成すると共に、所定厚さ及び形状の回り込み下地導体層用の未焼成導体パターン12c(図19中は6個の帯形パターン)をストライプ配列で形成し、続いてキャリアフィルムCFの表面に、ダイコータやグラビアコータ等の塗工装置と乾燥装置とを用いて、該未焼成位置決めマーク12b及び未焼成導体パターン12cを覆うように前記セラミックスラリーを塗工し乾燥して所定厚さ及び形状のグリーンシート12a(図19中は矩形)を形成し、続いてキャリアフィルムCFを取り除くことによって作製されている。1個の未焼成導体パターン12cの幅(図19(A)の左右方向寸法)は、図28に示した回り込み下地導体層21cの長さ(図28の左右方向寸法)の約2倍である。因みに、この第4焼成シート12’は、前記キャリアフィルムとして帯状で長尺なものを用い、該キャリアフィルムの表面に前記同様の未焼成位置決めマーク12b及び未焼成導体パターン12cを順次形成し、続いて該キャリアフィルムの表面に帯状のグリーンシートを形成し、続いて該グリーンシートを適宜カッティングして矩形状のものを抜き出す方法によっても作製することができる。
前掲の第4未焼成シート12’の未焼成位置決めマーク12cの厚さ(公差を含まない基準寸法)と未焼成導体パターン12cの厚さ(公差を含まない基準寸法)は、第1〜第3未焼成シート11〜13の未焼成位置決めマーク11b、12b及び13bの厚さ(公差を含まない基準寸法)と未焼成導体パターン12c及び13cの厚さ(公差を含まない基準寸法)と同等であり、これら厚さは例えば0.5〜5μmの範囲内で設定されている。また、第4未焼成シート12’のグリーンシート12’の形状(何れも公差を含まない基準寸法)は、第1〜第3未焼成シート11〜13のグリーンシート11a、12a及び13aの形状(何れも公差を含まない基準寸法)と同等である。さらに、第4未焼成シート12’にあっては未焼成位置決めマーク12c及び未焼成導体パターン12cが各々の下面がグリーンシート12cの下面で露出すように埋め込まれたような形態となるため、該グリーンシート12cの厚さは未焼成位置決めマーク12c及び未焼成導体パターン12cが存する部分が存しない部分よりも薄くなるが、該存する部分の厚さが0.5〜10μmの範囲内、好ましくは0.5〜5μmの範囲内で設定されていれば、後述の位置調整ステップを支障なく行うことができる。
次に、図20に示したように、アライメントテーブル14の表面に置いた紙や不織布等の通気性シート15の表面に、1枚の第4未焼成シート12’を、未焼成位置決めマーク12bと未焼成導体パターン12cが通気性シート15と向き合うように、換言すれば未焼成位置決めマーク12bと未焼成導体パターン12cが外向き(図20中は下向き)になるように載置する。この載置は、図20に示した吸着ヘッド16とは異なる吸着搬送装置(図示省略)を用いて、第2未焼成シート12の中心がアライメントテーブル14の表面中心に概ね一致するように行われる。因みに、アライメントテーブル14は図20に破線矢印で示したX方向の直線移動の他、該X方向と直交するY方向の直線移動と、θ方向の回転移動を可能としている。X方向とY方向とθ方向については図19及び図1〜図3を参照されたい。
次に、図20に示したように、2台の照明器付きカメラ17が取り付けられた可動型吸着ヘッド16をアライメントテーブル14上の撮影位置P1に移動して停止させ、続いて照明器による照明を行いながら各カメラ17で第4未焼成シート12’の未焼成位置決めマーク12bをそれぞれ撮影する(図20の実線矢印を参照)。因みに、吸着ヘッド16は、第2未焼成シート12と向き合う面に多数の吸引孔(図示省略)を有すると共に、同面を所定温度に加熱するためのヒータ(図示省略)を内蔵している。
このときの未焼成位置決めマーク12bの撮影は、図20から分かるように、第4未焼成シート12’の未焼成位置決めマーク12b及び未焼成導体パターン12cが形成されている面とは反対側の面(図19(B)の上面)に各カメラ17を向けて行われるが、該撮影で得た画像に基づく各未焼成位置決めマーク12bの位置認識は十分に行える。即ち、グリーンシート12aの厚さが薄くその色合いは概ね乳白色又は薄灰色であり、しかも、未焼成位置決めマーク12bの色合いが概ね濃灰色でグリーンシート12aよりも明度が低いことから、前記反対側の面に向けられた各照明器による照明によって、図5(A)及び図5(B)に示した画像IMのようにグリーンシート12aを通じて未焼成位置決めマーク12bの輪郭が浮かび上がる。この輪郭の浮かび上がりは、各照明器(各カメラ17に設けられた撮影用照明器)の照明条件を調整することにより最適化することが可能であり、該照明条件には、例えば照明光の明るさ(光束や光度)や、照明光の照射角度や照射距離や、照明光の色(波長や色温度)等が挙げられる。勿論、この照明条件は、前記各照明器と別の照明器を併用、或いは、前記各照明器の代わりに別の照明器を用いて、該別の照明器によって、第4未焼成シート12’の未焼成位置決めマーク12b及び未焼成導体パターン12cが形成されている面(図20の下面)に向けて照明を行う場合の照明条件としても適用できる。
前記位置認識の結果、各未焼成位置決めマーク12bの位置(中心位置)と画像IMの中心とに例えば図5(A)に示したようなズレがあるときには、画像処理下でズレ量を演算して、該ズレが矯正されるようにアライメントテーブル14、即ち、第4未焼成シート12’をX方向、Y方向及びθ方向に適宜移動させて該第4未焼成シート12’の位置調整を行う(図5(B)を参照)。
次に、図21に示したように、吸着ヘッド16をアライメントテーブル14上の吸着位置P2に移動して停止させ、続いて吸引開始した吸着ヘッド16を下降して位置調整後の第4未焼成シート12’を吸着する(図21の実線矢印を参照)。吸着後は、吸着位置P2において吸着ヘッド16を上昇させて(図21の破線矢印を参照)、該吸着ヘッド16によって第4未焼成シート12’を取り出す。
次に、図22に示したように、吸着ヘッド16を積層テーブル18上の積層位置P3に移動して停止させ、続いて吸着ヘッド16を下降して、積層テーブル18の表面に置いた前記通気性シート15と同様の通気性シート19の表面に、未焼成位置決めマーク12bと未焼成導体パターン12cが通気性シート19と向き合うように、換言すれば未焼成位置決めマーク12bと未焼成導体パターン12cが下向きになるように第4未焼成シート12’を載置する(図22の実線矢印を参照)。載置後は、積層位置P3において吸引停止した吸着ヘッド16を上昇させて(図22の破線矢印を参照)、該吸着ヘッド16から第4未焼成シート12’を解放する。
次に、図20〜図22及び図5を用いて説明した手順を第1未焼成シート11に対して実行し、図23に示したように、第4未焼成シート12’の表面に第1未焼成シート11を所定枚数、順次積み重ねる。因みに、第1未焼成シート11には第4未焼成シート12’の未焼成導体パターン12cや第3未焼成シート13の未焼成導体パターン13cや第2未焼成シート12の未焼成導体パターン12cは形成されていないため、図20及び図5を用いて説明した位置調整ステップを行わなくても積層上で特段支障は生じない。換言すれば、第1未焼成シート11には未焼成位置決めマーク11bを必ずしも形成する必要はない。
次に、図20〜図22及び図5を用いて説明した手順を第3未焼成シート13に対して実行し、図24に示したように、最上位の第1未焼成シート11の表面に第3未焼成シート13を所定枚数、順次積み重ねる。所定枚数の第3未焼成シート13を順次積み重ねるときには、図10に示したように、奇数番目の第3未焼成シート13に対して偶数番目の第3未焼成シート13が長さ方向(図3(A)の左右方向)に寸法L1(図3(A)を参照)だけシフトするようにする。この長さL1は、[未焼成導体パターン13cの長さ/2]+[未焼成導体パターン13cの長さ方向間隔/2]である。
次に、図20〜図22及び図5を用いて説明した手順を第1未焼成シート11に対して実行し、図25に示したように、最上位の第3未焼成シート13の表面に第1未焼成シート11を所定枚数、順次積み重ねる。因みに、第1未焼成シート11に対して図20及び図5図を用いて説明した位置調整ステップを行わなくて良いこと、第1未焼成シート11に未焼成位置決めマーク11bを必ずしも形成する必要がないこと、は先に述べた通りである。
次に、図20〜図22及び図5を用いて説明した手順を第2未焼成シート12に対して実行し、図26に示したように、最上位の第1未焼成シート11の表面に、未焼成位置決めマーク12bと未焼成導体パターン12cが外向きになるように1枚の第2未焼成シート12を積み重ねる。この場合の未焼成位置決めマーク12bの撮影は、第4未焼成シート12’の未焼成位置決めマーク12bの撮影と異なり、第2未焼成シート12の未焼成位置決めマーク12b及び未焼成導体パターン12cが形成されている面(図2(B)の上面)に各カメラ17を向けて行われる。
次に、積層テーブル18の通気性シート19から積み重ねシート(符号無し)を取り出し、熱間静水圧プレス機や機械式又は油圧式プレス機等の本圧着装置を用いて該積み重ねシートを本熱圧着して、図13に示した未焼成積層シート(符号無し)、即ち、高さ方向の最上位と最下位において未焼成位置決めマーク12bと回り込み下地導体層用の未焼成導体パターン12cが外向きになるように位置する未焼成積層シートを作製する。この積み重ねシートの取り出しと本圧着装置への搬送は、吸着ヘッド16とは異なる吸着搬送装置(図示省略)を用いて行われる。
次に、ブレードダイシング機やレーザーダイシング機等の切断装置を用いて、図13に示した未焼成積層シートを切断仮想ラインCVLに沿って格子状に切断して、図27(A)及び図27(B)に示した未焼成チップ20’を作製する。この未焼成チップ20’は、長さ(図27(A)及び図27(B)の左右方向寸法)と幅(図27(A)の上下方向寸法)と高さ(図27(B)の上下方向寸法)とで規定された略直方体状のコンデンサ本体対応部分の内部に、内部電極層21b(図28及び図29を参照)に対応する複数(図27中は4層)の未焼成導体パターン13c1を有すると共に、該コンデンサ本体対応部分の高さ方向両面の長さ方向両端部それぞれに、未焼成導体パターン12c1(図27中は4個)を有している。また、この未焼成チップ20’にあっては、前述の積み重ねシート作製ステップで第4未焼成シート12’を用いているため、図27(B)においてコンデンサ本体対応部分の下面に存する2個の未焼成導体パターン12c1は該コンデンサ本体対応部分の下面からは下方に突出していない。
次に、トンネル型焼成炉や箱型焼成炉等の焼成装置を用いて、多数の未焼成チップ20’を、前記セラミックスラリーに含まれている誘電体セラミック粉末と前記金属ペーストに含まれている金属粉末に対応した雰囲気下及び温度プロファイルにて焼成(脱バインダ処理と焼成処理を含む)して、図28に示した焼成チップ21’(端面下地導体層22を除く)を作製する。この焼成チップ21’は、長さ(図28の左右方向寸法)と幅(図28の左右方向寸法及び上下方向寸法と直交する方向の寸法)と高さ(図28の上下方向寸法)とで規定された略直方体状を成す積層構造のコンデンサ本体21aと、該コンデンサ本体21a内に設けられた複数(図28中は4層)の矩形状の内部電極層21bと、該コンデンサ本体21aの高さ方向両面の長さ方向両端部それぞれに設けられた回り込み下地導体層21c(図28中は4個)とを備えている。各内部電極層21bの長さ(図28の左右方向寸法)は図3に示した未焼成導体パターン13cの1個の長さ(図3(A)の左右方向寸法)の約1/2倍であり、各回り込み下地導体層21cの長さ(図28の左右方向寸法)は図19及び図2に示した未焼成導体パターン12cの1個の幅(図19(A)の左右方向寸法と図2(A)の左右方向寸法)の約1/2である。また、この焼成チップ21’にあっては、前述の積み重ねシート作製ステップで第4未焼成シート12’を用いているため、図28においてコンデンサ本体21aの下面に存する2個の回り込み下地導体層21cは該コンデンサ本体21aの下面からは下方に突出していない。
次に、ローラ塗布機やディップ塗布機等の塗布装置と乾燥装置とを用いて、焼成チップ21’のコンデンサ本体21aの長さ方向両面それぞれに金属ペースト(前記金属ペーストを流用)を塗布して乾燥し、続いて前記同様の雰囲気下で焼き付け処理を行って、図28に示した端面下地導体層22を作製する。一方の端面下地導体層22は、高さ方向両面の長さ方向一端部それぞれに設けられた回り込み下地導体層21cと連続していると共に、コンデンサ本体21aの長さ方向一面で露出する内部電極層21bの端縁に電気的に接続している。また、他方の端面下地導体層22は、高さ方向両面の長さ方向他端部それぞれに設けられた回り込み下地導体層21cと連続していると共に、コンデンサ本体21aの長さ方向他面で露出する内部電極層21bの端縁に電気的に接続している。
前掲の焼成チップ21’の作製と端面下地導体層22の作製は、所謂同時焼成を利用して行うこともできる。即ち、未焼成チップ20’を作製した後に、ローラ塗布機やディップ塗布機等の塗布装置と乾燥装置とを用いて、該未焼成チップ20’のコンデンサ本体対応部分の長さ方向両面に金属ペースト(前記金属ペーストを流用)を塗布して乾燥し、続いてトンネル型焼成炉や箱型焼成炉等の焼成装置を用いて、多数の未焼成チップ20’を、前記同様の雰囲気下及び温度プロファイルにて焼成(脱バインダ処理と焼成処理を含む)すれば、焼成チップ21’の作製と端面下地導体層22の作製を一度の焼成にて行うことができる。
次に、電解メッキ装置やスパッタ装置や真空蒸着装置等の薄膜形成装置を用いて、コンデンサ本体21aの長さ方向一方の2個の回り込み下地導体層21cと端面下地導体層22との連続物の表面と、該コンデンサ本体21aの長さ方向他方の2個の回り込み下地導体層21cと端面下地導体層22との連続物の表面のそれぞれに、各々の表面を覆う図29に示した主導体層23を作製する。以上で、図30に示した積層セラミックコンデンサMLCC’、即ち、略直方体形状のコンデンサ本体21aの長さ方向両端部それぞれに多層構造の外部電極24(図30中は2個)を有する積層セラミックコンデンサMLCC’が製造される。
図27〜図29を用いて説明したように、前述の製造方法は、コンデンサ本体対応部分の高さ方向両面の長さ方向両端部それぞれに回り込み下地導体層用の未焼成導体パターン12c1が形成された未焼成チップ20’を作製するステップと、この未焼成チップ作製ステップの後に、未焼成チップ20’を焼成して、コンデンサ本体21aの高さ方向両面の長さ方向両端部それぞれに回り込み下地導体層21cが形成された焼成チップ21’を作製するステップと、この焼成チップ作製ステップの後に又は該焼成チップ作製ステップと同時の焼成によって、コンデンサ本体21aの長さ方向両面それぞれに、高さ方向両面の長さ方向一端部それぞれに設けられた2個の回り込み下地導体層21cと連続する端面下地導体層22と、高さ方向両面の長さ方向他端部それぞれに設けられた2個の回り込み下地導体層21cと連続する端面下地導体層22を作製するステップと、この端面下地導体層作製ステップの後に、コンデンサ本体21aの長さ方向一方の2個の回り込み下地導体層21cと端面下地導体層22との連続物の表面を覆う主導体層23と、該コンデンサ本体21aの長さ方向他方の2個の回り込み下地導体層21cと端面下地導体層22との連続物の表面を覆う主導体層23を作製するステップとによって、コンデンサ本体21aの長さ方向両端部それぞれに多層構造の外部電極24(図30を参照)を作製している。
つまり、前述の製造方法によれば、各外部電極24の主導体層23における回り込み下地導体層21a上に略平坦な面状の被接続区域CA(図30を参照)を形成することができるため、該被接続区域CAを利用して導体パッドや導体ビアに対する接続を高信頼下で行うことができる。例えば、被接続区域CAをハンダを介して導体パッドに接続する場合、該被接続区域CAに従前のような顕著な段差や起伏がないことから導体パッドとの隙間を略一様にすることができ、これによりハンダ量の偏りを原因とした接続不良を未然に防止することができる。また、被接続区域CAに導体ビアに接続する場合、該被接続区域CAに従前のような顕著な段差や起伏がないことから導体ビアが接続できる区域を十分に確保することができ、これにより導体ビアの位置公差を原因とした接続不良を未然に防止することができる。
また、前述の製造方法は、第1未焼成シート11と第2未焼成シート12と第3未焼成シート13と第4未焼成シート12’を適宜積み重ねて、高さ方向の最下位に第4未焼成シート12’が存し、且つ、最上位に第2未焼成シート12が存する積み重ねシート(図26を参照)を作製するときに、最下位の第4未焼成シート12’に対しては未焼成位置決めマーク12b及び回り込み下地導体層用の未焼成導体パターン12cが形成されている面とは反対側の面にカメラ17を向けて撮影を行い、該撮影で得た画像に基づいて未焼成位置決めマーク12bの位置認識を行い、未焼成位置決めマーク12bの位置にズレがあるときに該ズレが矯正されるように該第2未焼成シート12を移動させてその位置調整を行っている。
つまり、最下位の第4未焼成シート12’の未焼成位置決めマーク12b及び回り込み下地導体層用の未焼成導体パターン12cが形成されている面にカメラ17を向けて撮影を行う場合には、未焼成位置決めマーク12bの位置認識と第4未焼成シート12’の位置調整を行った後に該第4未焼成シート12’を上下反転させてから積み重ねる必要があるため、上下反転のときの位置誤差が積み重ねシートに現れる懸念がある。これに対し、前述の製造方法によれば、このような上下反転が不要であるため、最下位の第4未焼成シート12’に前記のような位置誤差が生じることを防止して、位置精度に優れた積み重ねシート(図26を参照)及び未焼成積層シート(図13を参照)を作製することができる。
さらに、前述の製造方法によれば、最下位の第4未焼成シート12’の未焼成位置決めマーク12b及び回り込み下地導体層用の未焼成導体パターン12cが形成されている面とは反対側の面にカメラ17を向けて撮影を行うときに、撮影用照明器の照明条件を調整することにより該未焼成位置決めマーク12bの輪郭を浮かび上がらせてその位置認識を的確に行うことができる。
さらに、前述の製造方法によれば、各カメラ17が、積み重ねシート(図26を参照)を作製するときに用いられる可動型吸着ヘッド16に取り付けられているため、該各カメラ17をアライメントテーブル14の上方に固定配置する場合に比べて、該各カメラ17を撮影対象に近付けた状態で所期の撮影を的確に行うことができる。詳しく述べれば、遠距離で撮影を行って未焼成位置決めマーク12bの位置認識を行う場合には拡大画像を得るための光学系が必要になるが、近距離で撮影を行って未焼成位置決めマーク12bの位置認識を行う場合にはこのような光学系は不要である。
さらに、前述の製造方法によれば、第2未焼成シート12とは作製手法が異なり、且つ、未焼成位置決めマーク12b及び回り込み下地導体層用の未焼成導体パターン12cの位置が異なる第4未焼成シート12’を別途用意しているので、前述の積み重ねシート作製ステップにおいて第4未焼成シート12’をアライメントテーブル14の通気性シート15の表面に載置するときに、第4未焼成シート12’を作製時の向きのまま通気性シート15の表面に載置することができる。つまり、第4未焼成シート12’の厚さを薄くしても、該第4未焼成シート12’を通気性シート15の表面に載置するときに皺や破れが生じ難い。
尚、前述の製造方法(第2実施形態)には、前記〈第1実施形態の変形例〉で述べた変形例(1)〜(4)を同様に適用できるため、ここでの記載を省略する。