以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、本発明の一の実施形態に係る空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、カーカス10、ベルト12、バンド14、一対のフィラー16、インナーライナー18、一対のチェーファー20及び中間層22を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、レース用又は乗用の四輪自動車に装着される。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面24を形成する。このトレッド4は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。このトレッド4には、溝が刻まれていない。このタイヤ2は、スリックタイプである。このトレッド4に溝が刻まれて、トレッドパターンが形成されてもよい。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。サイドウォール6は、カーカス10よりも軸方向外側に位置している。このサイドウォール6は、カーカス10の損傷を防止する。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。
それぞれのビード8は、半径方向においてサイドウォール6よりも内側に位置している。ビード8は、コア26と、このコア26から半径方向外向きに延びるエイペックス28とを備えている。コア26は、リング状である。コア26は、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス28は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス28は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス10は、第一カーカスプライ30及び第二カーカスプライ32からなる。第一カーカスプライ30及び第二カーカスプライ32は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。第一カーカスプライ30及び第二カーカスプライ32のそれぞれは、コア26の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。折り返された第一カーカスプライ30の端は、半径方向において、折り返された第二カーカスプライ32の端よりも外側に位置している。
第一カーカスプライ30及び第二カーカスプライ32のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス10が、1枚のカーカスプライから形成されてもよい。このカーカス10が3枚以上のカーカスプライから形成されてもよい。
ベルト12は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト12は、カーカス10と積層されている。ベルト12は、カーカス10を補強する。
図1において、符号PTはトレッド面24の端を表している。両矢印WTは、トレッド面24の一方の端PTからその他方の端PTまでの軸方向長さを表している。この長さWTは、トレッド面24の軸方向幅である。符号PBは、ベルト12の端を表している。両矢印WBは、ベルト12の一方の端PBからその他方の端PBまでの軸方向長さを表している。この長さWBは、ベルト12の軸方向幅である。
大きな幅を有するベルト12は、カーカス10を効果的に補強する。カーカス10の補強の観点から、幅WBの幅WTに対する比率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。一方ベルト12の端PBがタイヤ2の外面に近接すると、耐久性が損なわれる恐れがある。耐久性の観点から、この比率は98%以下が好ましい。
ベルト12は、内側層34及び外側層36からなる。このベルト12は、2層を備えている。このベルト12が、3以上の層を備えてもよい。図示されていないが、内側層34及び外側層36のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、20°以上40°以下である。内側層34のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層36のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。コードに有機繊維が用いられる場合、好ましい有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。効果的な補強の観点から、この有機繊維としては、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維がより好ましい。
バンド14は、ベルト12の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド14の幅はベルト12の幅と同等である。このバンド14の幅がベルト12の幅よりも若干小さくてもよい。このバンド14の幅がこのベルト12の幅よりも若干大きくてもよい。図示されていないが、このバンド14は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド14は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードにより、ベルト12が拘束される。このバンド14は、ベルト12のリフティングの抑制に寄与する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
このタイヤ2では、ベルト12及びバンド14は補強層38を構成している。ベルト12のみから、この補強層38が構成されてもよい。
それぞれのフィラー16は、ビード8の近くに位置している。このタイヤ2のフィラー16は、ビード8とカーカス10との間に位置している。フィラー16は、ビード8のコア26の周りにて折り返されている。図示されていないが、フィラー16は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。コードは、半径方向に対して傾斜している。フィラー16は、ビード8の部分の剛性に寄与する。フィラー16は、ビード8の部分の倒れを抑える。このフィラー16が、コードを含むことなく、架橋ゴムのみから構成されてもよい。
インナーライナー18は、カーカス10の内側に位置している。インナーライナー18は、カーカス10の内面に接合されている。インナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
それぞれのチェーファー20は、ビード8の近くに位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー20がリムと当接する。この当接により、ビード8の近傍が保護される。このチェーファー20は、布とこの布に含浸したゴムとからなる。
中間層22は、ベルト12とカーカス10との間に位置している。中間層22は、タイヤ2のトレッド4の部分の剛性に寄与する。
図1において、符号PMは中間層22の端を表している。両矢印L1は、中間層22の一方の端PMからその他方の端PMまでの軸方向長さを表している。この長さL1は、中間層22の軸方向幅である。
大きな幅を有する中間層22は、トレッド4の部分の剛性に寄与する。この観点から、幅L1の幅WBに対する比率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
図1から明らかなように、軸方向において、中間層22の端PMはベルト12の端PBよりも内側に位置している。このタイヤ2では、軸方向において中間層22はベルト12から突出していない。このタイヤ2では、中間層22の端PMに歪みが集中しにくい。このタイヤ2では、中間層22の端PMにおけるセパレーションが防止される。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から、幅L1の幅WBに対する比率は98%以下が好ましく、95%以下がより好ましい。
このタイヤ2では、中間層22は一対のサイド部40を備えている。詳細には、この中間層22は一対のサイド部40からなる。この中間層22では、両サイド部40は軸方向に離間して配置されている。
図2には、このタイヤ2の中間層22の一部が模式的に示されている。図2において、上下方向がタイヤ2の周方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向である。
このタイヤ2では、それぞれのサイド部40はサイドコード42を含んでいる。このタイヤ2では、それぞれのサイド部40において、多数のサイドコード42が周方向に並列されている。なお、このタイヤ2のサイド部40では、サイドコード42以外の部分はトッピングゴム44である。
図2において、サイドコード42は軸方向に延在している。サイドコード42は、軸方向の剛性に寄与する。このサイドコード42を含むサイド部40は、バックリングの発生を防止する。このタイヤ2では、接地面積が十分に確保される。十分な接地面積は、タイヤ2のグリップに寄与する。さらにこのサイド部40は、軸方向に作用するワイピングの発生防止にも寄与する。このサイド部40は、ワイピングによるグリップ及び耐摩耗性の低下を抑える。
このタイヤ2では、サイドコード42が軸方向の剛性に寄与するのであれば、このサイドコード42は周方向に対して傾斜していてもよい。具体的には、このサイドコード42が周方向に対してなす角度の絶対値が50°以上であればよい。これは、この角度の絶対値が50°以上に設定されたサイドコード42は、軸方向の剛性に寄与するからである。サイドコード42が軸方向の剛性に効果的に寄与するとの観点から、この角度の絶対値は80°以上90°以下がより好ましく、85°以上90°以下がさらに好ましく、90°が特に好ましい。なお、本願においては、この角度の絶対値が50°以上90°以下に設定されたサイドコード42は、略軸方向に延在していることを表す。この角度の絶対値が80°以上90°以下に設定されたサイドコード42は、実質的に軸方向に延在していることを表す。この角度の絶対値が90°に設定されたサイドコード42は、軸方向に延在していることを表す。
前述したように、このタイヤ2の中間層22は一対のサイド部40からなり、これらのサイド部40は軸方向において離間して配置されている。つまり、このタイヤ2の中間層22には、略軸方向に延在し、一方のサイド部40と他方のサイド部40との間を架け渡すコードは設けられていない。このタイヤ2では、赤道面の部分において周方向に作用するワイピングの増幅が抑制されている。
このように、このタイヤ2の中間層22は、バックリング及びワイピングの抑制に寄与する。このタイヤ2では、グリップが十分に確保されるとともに、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられている。言い換えれば、このタイヤ2はグリップ及び耐摩耗性に優れる。本発明によれば、グリップ及び耐摩耗性の向上が達成された空気入りタイヤ2が得られる。
図2において、両矢印L2は一方のサイド部40と他方のサイド部40との軸方向距離である。この距離L2は、一方のサイド部40の軸方向内側端46から他方のサイド部40の軸方向内側端46までの軸方向長さで表される。この図2の両矢印L1は、図1に示された中間層22の軸方向幅である。
このタイヤ2では、距離L2の幅L1に対する比率は10%以上70%以下が好ましい。この比率が10%以上に設定されることにより、周方向に作用するワイピングの増幅が効果的に抑制される。サイドコード42が蛇行することなくサイド部40が形成されるので、このサイド部40がバックリング及びワイピングの発生防止に有効に機能する。このタイヤ2では、グリップ及び耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。この観点から、この比率は15%以上がより好ましい。この比率が70%以下に設定されることにより、サイド部40がバックリングの発生を防止するとともに軸方向に作用するワイピングを効果的に抑制する。このタイヤ2では、グリップが十分に確保されるとともに、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。この観点から、この比率は65%以下がより好ましい。
このタイヤ2では、サイドコード42の材質はスチールである。このサイドコード42は、スチールコードである。このサイドコード42の弾性率は、タイヤ工業で一般的に用いられる有機繊維からなるコードの弾性率よりもかなり高い。
前述したように、このタイヤ2では、その中間層22のサイド部40において、サイドコード42は略軸方向に延在している。高い弾性率を有するサイドコード42は、軸方向の剛性に効果的に寄与する。このサイドコード42を含むサイド部40は、バックリングの発生を防止する。さらにこのサイド部40は、軸方向に作用するワイピングの発生防止にも寄与する。
図3には、サイドコード42の断面が示されている。このサイドコード42は、複数のフィラメント48からなる。具体的には、このサイドコード42は、4本のフィラメント48からなる。詳細には、このサイドコード42は、2本のコアフィラメント48cと2本のシースフィラメント48sとからなる。それぞれのフィラメント48の材質は、スチールである。このサイドコード42では、2本のコアフィラメント48cが撚られることで、軸が形成されている。それぞれのシースフィラメント48sは、この軸の周りを巻かれている。このサイドコード42は、いわゆる層撚りタイプである。このサイドコード42の構造は、「2+2」構造と称される。このサイドコード42の構造に、特に、制限はない。このサイドコード42が1本のフィラメント48からなってもよい(「1×1」構造)。このサイドコード42が1本のコアフィラメント48cとこのコアフィラメント48cに巻かれた2本のシースフィラメント48sとからなってもよい(「1+2」構造)。このサイドコード42が、4本のフィラメント48を撚り合わせたものであってもよい(「1×4」構造)。サイドコード42を構成するフィラメント42の数は、1本以上10本以下である。
図3において、両矢印Scはサイドコード42の外径を表している。両矢印Sfは、サイドコード42をなすフィラメント48の外径を表している。
このタイヤ2では、サイドコード42の外径Scは0.5mm以上2.0mm以下が好ましい。この外径Scが0.5mm以上に設定されることにより、サイドコード42が剛性に寄与する。バックリング及びワイピングの発生が効果的に抑制されるので、このタイヤ2では、十分なグリップが確保されるとともに、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。この外径Scが2.0mm以下に設定されることにより、サイドコード42の端における歪みの集中が抑えられる。セパレーション等の損傷の発生が防止されるので、このタイヤ2は耐久性に優れる。
このタイヤ2では、フィラメント48の外径Sfは0.15mm以上0.3mm以下が好ましい。この外径Sfが0.15mm以上に設定されることにより、サイドコード42が剛性に寄与する。バックリング及びワイピングの発生が効果的に抑制されるので、このタイヤ2では、十分なグリップが確保されるとともに、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。この外径Sfが0.3mm以下に設定されることにより、サイドコード42の端における歪みの集中が抑えられる。セパレーション等の損傷の発生が防止されるので、このタイヤ2は耐久性に優れる。
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用の場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。本明細書において正規荷重とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。後述するタイヤの各部材の寸法及び角度も、同様にして、測定される。
図4には、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤ52が示されている。図4において、上下方向がタイヤ52の半径方向であり、左右方向がタイヤ52の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ52の周方向である。図4において、一点鎖線CLはタイヤ52の赤道面を表わす。このタイヤ52の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ52は、トレッド54、一対のサイドウォール56、一対のビード58、カーカス60、ベルト62、バンド64、一対のフィラー66、インナーライナー68、一対のチェーファー70及び中間層72を備えている。このタイヤ52のベルト62及び中間層72以外は、図1に示されたタイヤ2の構成と同等の構成を有している。
ベルト62は、トレッド54の半径方向内側に位置している。ベルト62は、カーカス60と積層されている。ベルト62は、カーカス60を補強する。
図4において、符号PTはトレッド面74の端を表している。両矢印WTは、トレッド面74の一方の端PTからその他方の端PTまでの軸方向長さを表している。この長さWTは、トレッド面74の軸方向幅である。符号PBは、ベルト62の端を表している。両矢印WBは、ベルト62の一方の端PBからその他方の端PBまでの軸方向長さを表している。この長さWBは、ベルト62の軸方向幅である。
大きな幅を有するベルト62は、カーカス60を効果的に補強する。カーカス60の補強の観点から、幅WBの幅WTに対する比率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。ベルト62の端PBがタイヤ52の外面に近接すると、耐久性が損なわれる恐れがある。耐久性の観点から、この比率は98%以下が好ましい。
このタイヤ52では、ベルト62は、内側層76及び外側層78からなる。図示されていないが、内側層76及び外側層78のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、20°以上40°以下である。内側層76のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層78のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。コードに有機繊維が用いられる場合、好ましい有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。効果的な補強の観点から、この有機繊維としては、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維がより好ましい。
このタイヤ52のベルト62では、軸方向における外側層78のそれぞれの端において、内側層76は半径方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、この内側層76には、主部80と一対の折り返し部82とが形成されている。
このタイヤ52では、主部80は外側層78の半径方向内側に位置している。それぞれの折り返し部82は、外側層78の半径方向外側に位置している。このタイヤ52では、外側層78の端は内側層76で包み込まれている。このベルト62は、フォールド構造を有する。このタイヤ52では、そのトレッド54の軸方向外側部分において、ベルト62が効果的に拘束される。このフォールド構造は、タイヤ52の高速耐久性に寄与する。
図4において、符号PFは折り返し部82の端を表している。両矢印WFは、この折り返し部82の端PFからベルト62の端PBまでの軸方向長さを表している。この長さWFは、折り返し部82の軸方向幅である。
このタイヤ52では、折り返し部82の軸方向幅WFの、ベルト62の軸方向幅WBに対する比率は5%以上25%以下が好ましい。この比率が5%以上に設定されることにより、折り返し部82がベルト62の拘束に効果的に寄与する。このタイヤ52は、高速耐久性に優れる。この比率が25%以下に設定されることにより、ベルト62及びバンド64からなる補強層84の軸方向における剛性のバランスが効果的に整えられる。このタイヤ52では、この補強層84による接地形状及び操縦安定性への影響が効果的に抑えられる。
このタイヤ52では、中間層72は、図1に示されたタイヤ52の中間層72と同様、ベルト62とカーカス60との間に位置している。中間層72は、タイヤ52のトレッド54の部分の剛性に寄与する。
図4において、符号PMは中間層72の端を表している。両矢印L1は、中間層72の一方の端PMからその他方の端PMまでの軸方向長さを表している。この長さL1は、中間層72の軸方向幅である。
大きな幅を有する中間層72は、トレッド54の部分の剛性に寄与する。この観点から、幅L1の幅WBに対する比率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
図4から明らかなように、軸方向において、中間層72の端PMはベルト62の端PBよりも内側に位置している。このタイヤ52では、軸方向において中間層72はベルト62から突出していない。このタイヤ52では、中間層72の端PMに歪みが集中しにくい。このタイヤ52では、中間層72の端PMにおけるセパレーションが防止される。このタイヤ52は、耐久性に優れる。この観点から、幅L1の幅WBに対する比率は98%以下が好ましく、95%以下がより好ましい。
前述したように、このタイヤ52のベルト62はフォールド構造を有している。このタイヤ52では、ベルト62の端PBの動きが効果的に抑えられている。中間層72の端PMに歪みが集中することが効果的に防止されるとの観点から、この中間層72の端PMは半径方向において折り返し部82の内側に位置しているのが好ましい。言い換えれば、中間層72の端PMは、軸方向において、折り返し部82の端PFとベルト62の端PBとの間に位置しているのが好ましい。
このタイヤ52では、中間層72は、センター部86と一対のサイド部88とを備えている。詳細には、この中間層72はセンター部86と一対のサイド部88とからなる。センター部86は、赤道面上に位置している。それぞれのサイド部88は、軸方向においてセンター部86の軸方向外側に位置している。このタイヤ52の中間層72では、両サイド部88は軸方向に離間して配置されている。一方のサイド部88と他方のサイド部88との間に、センター部86が位置している。
図5には、このタイヤ52の中間層72の一部が模式的に示されている。図5において、上下方向がタイヤ52の周方向であり、左右方向がタイヤ52の軸方向である。
このタイヤ52では、センター部86はセンターコード90を含んでいる。このタイヤ52のセンター部86では、多数のセンターコード90が軸方向に並列されている。このセンター部86では、センターコード90以外の部分は、トッピングゴム92である。なお、このタイヤ52では、このセンター部86が、1本又は複数本のセンターコード90とトッピングゴム92とからなるリボンを、螺旋状に巻き回すことで形成されてもよい。この場合においては、センター部86は1本又は複数本のセンターコード90を含んでいる。そして、センターコード90を一巻きすることで得られる多数のリングが、軸方向に並列される。
図5において、センターコード90は周方向に延在している。このセンターコード90は、周方向の剛性に寄与する。このセンターコード90を含むセンター部86は、タイヤ52の赤道面の近傍において周方向に作用するワイピングの抑制に寄与する。このセンター部86は、ワイピングによるグリップ及び耐摩耗性の低下を抑える。
このタイヤ52では、センターコード90が周方向の剛性に寄与するのであれば、このセンターコード90は周方向に対して傾斜していてもよい。具体的には、このセンターコード90が周方向に対してなす角度の絶対値が40°以下であればよい。これは、この角度の絶対値が40°以下に設定されたセンターコード90は、周方向の剛性に寄与するからである。センターコード90が周方向の剛性に効果的に寄与するとの観点から、この角度の絶対値は0°以上10°以下がより好ましく、0°以上5°以下がさらに好ましく、0°が特に好ましい。なお、本願においては、この角度の絶対値が0°以上40°以下に設定されたセンターコード90は、略周方向に延在していることを表す。この角度の絶対値が0°以上5°以下に設定されたセンターコード90は、実質的に周方向に延在していることを表す。この角度の絶対値が0°に設定されたセンターコード90は、周方向に延在していることを表す。
このタイヤ52では、センターコード90が周方向に対して傾斜するように配置される場合には、このセンターコード90の傾斜方向はベルト62の外側層78のコードの傾斜方向と同じになるように、中間層72のセンター部86が構成されるのが好ましい。これにより、大きなプライステアが得られ、車輌がコーナーに進入するときこの車輌のフロント部分の横力が大きくなり、このフロントの切り込みが容易になるからである。
このタイヤ52では、センターコード90の材質はスチールである。このセンターコード90は、スチールコードである。このセンターコード90の弾性率は、タイヤ工業で一般的に用いられる有機繊維からなるコードの弾性率よりもかなり高い。
前述したように、このタイヤ52では、その中間層72のセンター部86において、センターコード90は略周方向に延在している。高い弾性率を有するセンターコード90は、周方向の剛性に効果的に寄与する。このセンターコード90を含むセンター部86は、周方向に作用するワイピングの抑制に寄与する。このセンター部86は、ワイピングによるグリップ及び耐摩耗性の低下を抑える。
図6には、センターコード90の断面が示されている。このセンターコード90は、複数のフィラメント94からなる。具体的には、このセンターコード90は、4本のフィラメント94からなる。詳細には、このセンターコード90は、2本のコアフィラメント94cと2本のシースフィラメント94sとからなる。それぞれのフィラメント94の材質は、スチールである。このセンターコード90では、2本のコアフィラメント94cが撚られることで、軸が形成されている。それぞれのシースフィラメント94sは、この軸の周りを巻かれている。このセンターコード90は、いわゆる層撚りタイプである。このセンターコード90の構造は、「2+2」構造と称される。このセンターコード90の構造に、特に、制限はない。このセンターコード90が1本のフィラメント94からなってもよい(「1×1」構造)。このセンターコード90が1本のコアフィラメント94cとこのコアフィラメント94cに巻かれた2本のシースフィラメント94sとからなってもよい(「1+2」構造)。このセンターコード90が、4本のフィラメント94を撚り合わせたものであってもよい(「1×4」構造)。センターコード90を構成するフィラメント94の数は、1本以上10本以下である。
図6において、両矢印Mcはセンターコード90の外径を表している。両矢印Mfは、センターコード90をなすフィラメント94の外径を表している。
このタイヤ52では、センターコード90の外径Mcは0.5mm以上2.5mm以下が好ましい。この外径Mcが0.5mm以上に設定されることにより、センターコード90が剛性に寄与する。周方向に作用するワイピングの発生が効果的に抑制されるので、このタイヤ52では、十分なグリップが確保されるとともに、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。この外径Mcが2.5mm以下に設定されることにより、サイド部88との剛性のバランスが適切に維持される。このタイヤ52では、センター部86とサイド部88との境界における剛性段差の形成が防止されている。このタイヤ52では、この段差を起因とする摩耗(段差摩耗)が生じにくい。このタイヤ52は、耐偏摩耗性に優れる。
このタイヤ52では、フィラメント94の外径Mfは0.15mm以上0.4mm以下が好ましい。この外径Mfが0.15mm以上に設定されることにより、センターコード90が剛性に寄与する。周方向に作用するワイピングの発生が効果的に抑制されるので、このタイヤ52では、十分なグリップが確保されるとともに、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。この外径Mfが0.4mm以下に設定されることにより、サイド部88との剛性のバランスが適切に維持される。このタイヤ52では、センター部86とサイド部88との境界における剛性段差の形成が防止されている。このタイヤ52では、この段差を起因とする摩耗(段差摩耗)が生じにくい。このタイヤ52は、耐偏摩耗性に優れる。
このタイヤ52では、それぞれのサイド部88はサイドコード96を含んでいる。このタイヤ52では、それぞれのサイド部88において、多数のサイドコード96が周方向に並列されている。なお、このタイヤ52のサイド部88では、サイドコード96以外の部分はトッピングゴム98である。
このタイヤ52では、サイド部88は、図1に示されたタイヤ2の中間層22におけるサイド部40の構成と同等の構成を有している。このサイド部88は、バックリングの発生を防止する。このタイヤ52では、接地面積が十分に確保される。十分な接地面積は、タイヤ52のグリップに寄与する。さらにこのサイド部88は、軸方向に作用するワイピングの発生防止にも寄与する。このサイド部88は、ワイピングによるグリップ及び耐摩耗性の低下を抑える。
前述したように、このタイヤ52の中間層72では、センター部86のセンターコード90は略周方向に延在している。このタイヤ52では、一方のサイド部88と他方のサイド部88との間、すなわち、赤道面の部分には、略軸方向に延在するコードは設けられていない。つまり、このタイヤ52の中間層72には、略軸方向に延在し、一方のサイド部88と他方のサイド部88との間を架け渡すコードは設けられていない。しかも略周方向に延在するセンターコード90がセンター部86における周方向の剛性に寄与する。このタイヤ52では、周方向に作用するワイピングが効果的に抑制されている。
このように、このタイヤ52の中間層72は、バックリング及びワイピングの抑制に効果的に寄与する。このタイヤ52では、グリップが十分に確保されるとともに、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられている。言い換えれば、このタイヤ52はグリップ及び耐摩耗性に優れる。本発明によれば、グリップ及び耐摩耗性の向上が達成された空気入りタイヤ52が得られる。
図5において、両矢印L2は一方のサイド部88と他方のサイド部88との軸方向距離である。この距離L2は、一方のサイド部88の軸方向内側端100から他方のサイド部88の軸方向内側端100までの軸方向長さで表される。この実施形態においては、この距離L2はセンター部86の軸方向幅でもある。この図5の両矢印L1は、図4に示された中間層72の軸方向幅である。
このタイヤ52では、距離L2の幅L1に対する比率は10%以上70%以下が好ましい。この比率が10%以上に設定されることにより、周方向に作用するワイピングが効果的に抑制される。サイドコード96が蛇行することなくサイド部88が形成されるので、このサイド部88がバックリング及びワイピングの発生防止に有効に機能する。このタイヤ2では、グリップ及び耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。この観点から、この比率は15%以上がより好ましい。この比率が70%以下に設定されることにより、サイド部88がバックリングの発生を防止するとともに軸方向に作用するワイピングを効果的に抑制する。このタイヤ52では、グリップが十分に確保されるとともに、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられている。この観点から、この比率は65%以下がより好ましい。
図7には、本発明のさらに他の実施形態に係る空気入りタイヤ102が示されている。図7において、上下方向がタイヤ102の半径方向であり、左右方向がタイヤ102の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ102の周方向である。図7において、一点鎖線CLはタイヤ102の赤道面を表わす。このタイヤ102の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ102は、トレッド104、一対のサイドウォール106、一対のビード108、カーカス110、ベルト112、バンド114、一対のフィラー116、インナーライナー118、一対のチェーファー120及び中間層122を備えている。このタイヤ102のベルト112及び中間層122以外は、図1に示されたタイヤ2の構成と同等の構成を有している。
ベルト112は、トレッド104の半径方向内側に位置している。ベルト112は、カーカス110と積層されている。ベルト112は、カーカス110を補強する。このタイヤ102のベルト112は、図4に示されたタイヤ52のベルト62の構成と同等の構成を有している。このベルト112は、フォールド構造を有している。このベルト112は、このタイヤ102の高速耐久性に寄与する。
このタイヤ102では、中間層122は、図1に示されたタイヤ2の中間層22と同様、ベルト112とカーカス110との間に位置している。中間層122は、タイヤ102のトレッド104の部分の剛性に寄与する。
図7において、符号PMは中間層122の端を表している。両矢印L1は、中間層122の一方の端PMからその他方の端PMまでの軸方向長さを表している。この長さL1は、中間層122の軸方向幅である。符号PBは、ベルト112の端を表している。両矢印WBは、ベルト112の一方の端PBからその他方の端PBまでの軸方向長さを表している。この長さWBは、ベルト112の軸方向幅である。符号PFは、ベルト112の一部をなす内側層124の折り返し部126の端を表している。
大きな幅を有する中間層122は、トレッド104の部分の剛性に寄与する。この観点から、幅L1の幅WBに対する比率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
図7から明らかなように、軸方向において、中間層122の端PMはベルト112の端PBよりも内側に位置している。このタイヤ102では、軸方向において中間層122はベルト112から突出していない。このタイヤ102では、中間層122の端PMに歪みが集中しにくい。このタイヤ102では、中間層122の端PMにおけるセパレーションが防止される。このタイヤ102は、耐久性に優れる。この観点から、幅L1の幅WBに対する比率は98%以下が好ましく、95%以下がより好ましい。
前述したように、このタイヤ102のベルト112は、フォールド構造を有している。このタイヤ102では、ベルト112の端PBの動きが効果的に抑えられている。中間層122の端PMに歪みが集中することが効果的に防止されるとの観点から、この中間層122の端PMは、半径方向において、内側層124の折り返し部126の内側に位置しているのが好ましい。言い換えれば、中間層122の端PMは、軸方向において、折り返し部126の端PFとベルト112の端PBとの間に位置しているのが好ましい。
図8には、このタイヤ102の中間層122の一部が模式的に示されている。図8において、上下方向がタイヤ102の周方向であり、左右方向がタイヤ102の軸方向である。
このタイヤ102では、中間層122は多数のコード128を含んでいる。これらのコード128は、周方向に並列されている。この中間層122では、コード128以外の部分はトッピングゴム130である。
図8に示されているように、この中間層122のコード128では、その中央部分は蛇行している。この中央部分以外は、蛇行することなく略直線である。このコード128は、一対の直線部分132と、両直線部分132の間に位置する蛇行部分134とで構成されている。このコード128の直線部分132とその蛇行部分134とは一体的である。
この中間層122では、周方向に並列された多数の蛇行部分134を含む部分はセンター部136と称される。周方向に並列された多数の直線部分132を含む部分はサイド部138と称される。この中間層122は、赤道面上に位置するセンター部136と、それぞれがこのセンター部136の軸方向外側に位置する一対のサイド部138とで構成されている。このタイヤ102の中間層122では、両サイド部138は軸方向に離間して配置されている。一方のサイド部138と他方のサイド部138との間に、センター部136が位置している。
図9には、図8のコード128の蛇行部分134が拡大して示されている。この図9において、左右方向はタイヤ102の軸方向であり、上下方向はこのタイヤ102の周方向である。この図9において、左右方向はコード128の長さ方向でもある。左右の直線部分132は、このコード128の長さ方向に延在している。
図9から明らかなように、蛇行部分134は複数の成分140で構成されている。詳細には、この蛇行部分134は、第一成分140a、第二成分140b、第三成分140c及び第四成分140dからなる4つの成分140で構成されている。第一成分140a、第二成分140b、第三成分140c及び第四成分140dのそれぞれは、コード128の長さ方向に対して傾斜している。第二成分140bの傾斜方向は、第一成分140aの傾斜方向とは逆である。第三成分140cの傾斜方向は、第二成分140bの傾斜方向とは逆である。第四成分140dの傾斜方向は、第三成分140cの傾斜方向とは逆である。この蛇行部分134は、ジグザグ状を呈している。
このタイヤ102では、中間層122において、コード128の蛇行部分134の一部をなす第一成分140aは、周方向に対して傾斜して延在している。図9において、角度θ1は、第一成分140aが周方向に対してなす角度を表している。このタイヤ102では、角度θ1の絶対値は0°よりも大きい。この角度θ1の絶対値は40°以下である。つまり、この第一成分140aは略周方向に延在している。この角度θ1は、この第一成分140aの長さ方向中央において計測される。
第二成分140bは、周方向に対して傾斜して延在している。図9において、角度θ2は、第二成分140bが周方向に対してなす角度を表している。このタイヤ102では、角度θ2の絶対値は0°よりも大きい。この角度θ2の絶対値は40°以下である。つまり、この第二成分140bは略周方向に延在している。この角度θ2は、この第二成分140bの長さ方向中央において計測される。
第三成分140cは、周方向に対して傾斜して延在している。図9において、角度θ3は、第三成分140cが周方向に対してなす角度を表している。このタイヤ102では、角度θ3の絶対値は0°よりも大きい。この角度θ3の絶対値は40°以下である。つまり、この第三成分140cは略周方向に延在している。この角度θ3は、この第三成分140cの長さ方向中央において計測される。
第四成分140dは、周方向に対して傾斜して延在している。図9において、角度θ4は、第四成分140dが周方向に対してなす角度を表している。このタイヤ102では、角度θ4の絶対値は0°よりも大きい。この角度θ4の絶対値は40°以下である。つまり、この第四成分140dは略周方向に延在している。この角度θ4は、この第四成分140dの長さ方向中央において計測される。
このタイヤ102では、蛇行部分134をなす第一成分140a、第二成分140b、第三成分140c及び第四成分140dはいずれも略周方向に延在している。この蛇行部分134は、周方向の剛性に寄与する。この蛇行部分134を含むセンター部136は、タイヤ102の赤道面の近傍において周方向に作用するワイピングの抑制に寄与する。このセンター部136は、ワイピングによるグリップ及び耐摩耗性の低下を抑える。なお、このタイヤ102では、蛇行部分134を構成する複数の成分140のうち、少なくとも一つの成分140が略周方向に延在していればよい。この蛇行部分134を構成する成分140の数は2以上であればよく、この成分140の数に特に制限はない。
このタイヤ102では、中間層122において、コード128の直線部分132は実質的に軸方向に延在している。言い換えれば、この直線部分132が周方向に対してなす角度の絶対値は80°以上90°以下である。
実質的に軸方向に延在する直線部分132は、軸方向の剛性に寄与する。この直線部分132を含むサイド部138は、バックリングの発生を防止する。このタイヤ102では、接地面積が十分に確保される。十分な接地面積は、タイヤ102のグリップに寄与する。さらにこのサイド部138は、軸方向に作用するワイピングの発生防止に寄与する。このサイド部138は、ワイピングによるグリップ及び耐摩耗性の低下を抑える。この観点から、前述された、直線部分132が周方向に対してなす角度の絶対値は85°以上90°以下が好ましく、90°がより好ましい。
前述したように、このタイヤ102の中間層122では、センター部136に含まれる蛇行部分134をなす第一成分140a、第二成分140b、第三成分140c及び第四成分140dはいずれも略周方向に延在している。このタイヤ102の中間層122には、略軸方向に延在し、一方のサイド部138と他方のサイド部138との間を架け渡すコードは設けられていない。しかも蛇行部分134がセンター部136における周方向の剛性に寄与する。このタイヤ102では、周方向に作用するワイピングが効果的に抑制されている。
このように、このタイヤ102の中間層122は、バックリング及びワイピングの抑制に効果的に寄与する。このタイヤ102では、グリップが十分に確保されるとともに、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられている。言い換えれば、このタイヤ102はグリップ及び耐摩耗性に優れる。本発明によれば、グリップ及び耐摩耗性の向上が達成された空気入りタイヤ102が得られる。
前述したように、このタイヤ102では、中間層122に含まれるコード128は、一対の直線部分132と、両直線部分132の間に位置する蛇行部分134とで構成されている。センター部136に含まれる蛇行部分134は、略周方向に延在する複数の成分140で構成されている。それぞれの成分140は、図4に示された中間層72のセンターコード90に対応する。つまり、この中間層122は、そのセンター部136に略周方向に延在する複数のセンターコードを含んでいる。サイド部138に含まれる直線部分132は、略軸方向に延在している。この直線部分132は、図1に示された中間層22のサイドコード42、又は、図4に示された中間層72のサイドコード96に対応する。つまり、この中間層122は、それぞれのサイド部138に実質的に軸方向に延在するサイドコードを含んでいる。
図8において、両矢印L2は一方のサイド部138と他方のサイド部138との軸方向距離である。この距離L2は、一方のサイド部138の軸方向内側端142から他方のサイド部138の軸方向内側端142までの軸方向長さで表される。この実施形態においては、サイド部138の軸方向内側端142は、中間層122のコード128の直線部分132と蛇行部分134との境界である。さらにこの実施形態においては、この距離L2はセンター部136の軸方向幅でもあり、コード128の蛇行部分134の軸方向幅でもある。この図8の両矢印L1は、図7に示された中間層122の軸方向幅である。
このタイヤ102では、距離L2の幅L1に対する比率は10%以上40%以下が好ましい。この比率が10%以上に設定されることにより、周方向に作用するワイピングが効果的に抑制される。このタイヤ102では、グリップ及び耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。この観点から、この比率は15%以上がより好ましい。この比率が40%以下に設定されることにより、サイド部138がバックリングの発生を防止するとともに軸方向に作用するワイピングを効果的に抑制する。このタイヤ102では、グリップが十分に確保されるとともに、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられている。この観点から、この比率は35%以下がより好ましい。
前述したように、このタイヤ102では、その中間層122のコード128は、その中央部分において蛇行している。図9において、両矢印αはこの蛇行部分134の振幅を表している。
このタイヤ102では、振幅αは2mm以上が好ましい。これにより、蛇行部分134が周方向の剛性に効果的に寄与するので、周方向に作用するワイピングが効果的に抑制される。このタイヤ102では、グリップ及び耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。この観点から、この振幅αは3mm以上がより好ましい。
このタイヤ102では、振幅αは17mm以下が好ましい。これにより、コード128全体の剛性がバランスよく維持される。このタイヤ102では、中間層122によるグリップ及び高速耐久性への影響が効果的に抑えられる。この観点から、この振幅αは16mm以下がより好ましい。
このタイヤ102では、中間層122のコード128の材質はスチールである。このコード128は、スチールコードである。このコード128の弾性率は、タイヤ工業で一般的に用いられる有機繊維からなるコードの弾性率よりもかなり高い。
前述したように、このタイヤ102では、その中間層122のサイド部138において、コード128の直線部分132は実質的に軸方向に延在している。高い弾性率を有するコード128は、軸方向の剛性に効果的に寄与する。この中間層122のセンター部136においては、コード128の蛇行部分134をなす各成分140が略周方向に延在している。高い弾性率を有するコード128は、周方向の剛性にも効果的に寄与する。このタイヤ102では、サイド部138はバックリングの発生を防止するとともに軸方向に作用するワイピングを効果的に抑制する。センター部136は、周方向に作用するワイピングを効果的に抑制する。
図10には、中間層122のコード128の断面が示されている。このコード128は、複数のフィラメント144からなる。具体的には、このコード128は、4本のフィラメント144からなる。詳細には、このコード128は、2本のコアフィラメント144cと2本のシースフィラメント144sとからなる。それぞれのフィラメント144の材質は、スチールである。このコード128では、2本のコアフィラメント144cが撚られることで、軸が形成されている。それぞれのシースフィラメント144sは、この軸の周りを巻かれている。このコード128は、いわゆる層撚りタイプである。このコード128の構造は、「2+2」構造と称される。このコード128の構造に、特に、制限はない。このコード128が1本のフィラメント144からなってもよい(「1×1」構造)。このコード128が1本のコアフィラメント144cとこのコアフィラメント144cに巻かれた2本のシースフィラメント144sとからなってもよい(「1+2」構造)。このコード128が、4本のフィラメント144を撚り合わせたものであってもよい(「1×4」構造)。コード128を構成するフィラメント144の数は、1本以上10本以下である。
図10において、両矢印Rcはコード128の外径を表している。両矢印Rfは、コード128をなすフィラメント144の外径を表している。
このタイヤ102では、コード128の外径Rcは0.5mm以上2.0mm以下が好ましい。この外径Rcが0.5mm以上に設定されることにより、コード128が剛性に寄与する。バックリング及びワイピングの発生が効果的に抑制されるので、このタイヤ102では、十分なグリップが確保されるとともに、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。この外径Rcが2.0mm以下に設定されることにより、コード128の端における歪みの集中が抑えられる。セパレーション等の損傷の発生が防止されるので、このタイヤ102は耐久性に優れる。
このタイヤ102では、フィラメント144の外径Rfは0.15mm以上0.3mm以下が好ましい。この外径Rfが0.15mm以上に設定されることにより、コード128が剛性に寄与する。バックリング及びワイピングの発生が効果的に抑制されるので、このタイヤ102では、十分なグリップが確保されるとともに、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。この外径Rfが0.3mm以下に設定されることにより、コード128の端における歪みの集中が抑えられる。セパレーション等の損傷の発生が防止されるので、このタイヤ102は耐久性に優れる。
このタイヤ102の製造では、複数のゴム部材がアッセンブリーされて、ローカバー(未加硫タイヤ)が得られる。このローカバーが、モールドに投入される。ローカバーは、モールド内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、図7に示されたタイヤ102が得られる。
このタイヤ102の製造では、ローカバーを得る工程において、中間層122のためのシートが準備される。このシートにおいては、多数のコード128が長さ方向に並列されている。それぞれのコード128は、このシートの幅方向に延在している。この準備されたシートにおいては、コード128の中央部分は蛇行していない。このシートは、円筒状に巻かれたカーカス110上に巻回される。このとき、コード128が実質的にタイヤ102の軸方向に延在するように、このシートはカーカス110に積層される。このシートの上には、ベルト112が積層される。
このタイヤ102の製造では、ローカバーを加圧及び加熱する工程において、ローカバーの内側に位置するブラダーが膨張させられる。これにより、ローカバーは変形する。このローカバーの変形のとき、カーカス110及びベルト112は軸方向に狭まりながら半径方向に膨らんでいく。シートはカーカス110とベルト112との間に位置しているので、このシートの幅方向には圧縮方向の力が作用する。シートのコード128は実質的にタイヤ102の軸方向に延在しているので、ローカバーの拡張率が最大となる、このシートの幅方向中心にこの圧縮の力は集中する。この圧縮力の集中により、コード128の中央部分に蛇行部分134が形成される。このようにして、図8に示された中間層122が得られる。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、280/680R18である。この実施例1には、フォールド構造のベルトは採用していない。このことが、表の「フォールド構造」の欄に、「N」で表されている。この実施例1では、中間層が用いられている。このことが、表の「中間層」の欄に、「Y」で表されている。この実施例1には、図2に示された構成の中間層が用いられている。サイドコードには、「2+2」構造のスチールコードが用いられた。このサイドコードは軸方向に延在していた。トレッド面の幅WTに対するベルトの幅WBに対する比率は、97%とされた。ベルトの幅WBに対する中間層の幅L1の比率は、90%とされた。
[比較例1]
比較例1は、従来のタイヤである。この比較例1には、中間層は設けられていない。このことが、表の「中間層」の欄に、「N」で表されている。この比較例1では、フォールド構造のベルトは採用していない。
[参考例1]
参考例1は、従来のタイヤである。この参考例1には、中間層が採用されている。この中間層では、実質的に軸方向に延在するコードがこの中間層の一方の端PMとその他方の端PMとの間を架け渡している。この中間層以外は、比較例1の構成と同等の構成を有している。
[参考例2]
参考例2は、従来のタイヤである。この参考例2では、フォールド構造のベルトが採用されている。このことが、表の「フォールド構造」の欄に、「Y」で表されている。折り返し部の軸方向幅WFのベルトの幅WBに対する比率は、12%とされた。このベルト以外は、参考例1の構成と同等の構成を有している。
[実施例2−5]
一方のサイド部と他方のサイド部との軸方向距離L2の、中間層の幅L1に対する比率L2/L1を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−5のタイヤを得た。
[実施例6−9]
サイドコードのフィラメント外径Sfを下記の表3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例6−9のタイヤを得た。
[実施例16]
図4に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、280/680R18である。この実施例16には、フォールド構造のベルトが採用された。折り返し部の軸方向幅WFのベルトの幅WBに対する比率は、12%とされた。この実施例16には、図5に示された構成の中間層が用いられている。センターコードには、「2+2」構造のスチールコードが用いられた。このセンターコードは実質的に周方向に延在していた。サイドコードには、「2+2」構造のスチールコードが用いられた。このサイドコードは軸方向に延在していた。トレッド面の幅WTに対するベルトの幅WBに対する比率は、97%とされた。ベルトの幅WBに対する中間層の幅L1の比率は、90%とされた。
[実施例10−12]
フォールド構造のベルトを採用せず、センターコードのフィラメント外径Mf及び比率L2/L1を下記の表4の通りとした他は実施例16と同様にして、実施例10−12のタイヤを得た。
[実施例13−15]
フォールド構造のベルトを採用せず、センターコードのフィラメント外径Mfを下記の表5の通りとした他は実施例16と同様にして、実施例13−15のタイヤを得た。
[実施例24]
図7に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、280/680R18である。この実施例24には、フォールド構造のベルトが採用された。折り返し部の軸方向幅WFのベルトの幅WBに対する比率は、12%とされた。この実施例24には、図8に示された構成の中間層が用いられている。コードには、「2+2」構造のスチールコードが用いられた。このコードのフィラメント径Rfは、0.20mmとされた。中間層において、サイド部に含まれる直線部分は軸方向に延在していた。センター部に含まれる蛇行部分をなす各成分は、略周方向に延在していた。トレッド面の幅WTに対するベルトの幅WBに対する比率は、97%とされた。ベルトの幅WBに対する中間層の幅L1の比率は、90%とされた。
[実施例17−20]
フォールド構造のベルトを採用せず、振幅αを下記の表6の通りとした他は実施例24と同様にして、実施例17−20のタイヤを得た。
[実施例21−23]
フォールド構造のベルトを採用せず、比率L2/L1を下記の表7の通りとした他は実施例24と同様にして、実施例21−23のタイヤを得た。
[グリップ]
タイヤをリム(18×12J)に組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を200kPaとした。このタイヤを、排気量が3000cm3である競技用四輪自動車に装着した。ドライバーに、この四輪自動車をレーシングサーキット(1周=3.7km)で走行させて、グリップを評価させた。この結果が、参考例1を100とした指数で、下記の表1−7に示されている。数値が大きいほど好ましい。
[耐摩耗性]
タイヤをリム(18×12J)に組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を200kPaとした。このタイヤを、排気量が3000cm3である競技用四輪自動車に装着した。ドライバーに、この四輪自動車をレーシングサーキット(1周=3.7km)で走行させた。1周あたり1分30秒程度のラップタイムで40周走行した時点での摩耗量を測定した。この結果が、参考例1を100とした指数で、下記の表1−7に示されている。数値が大きいほど、摩耗量は小さく寿命は長い。
[高速耐久性]
タイヤをリム(18×12J)に組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を200kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、6kNの縦荷重をタイヤに負荷した。キャンバー角は、0°とした。スリップ角は、0°とした。このタイヤを、直径が3mであるドラムの上を走行させた。速度を段階的に上昇させて、タイヤが破壊したときの速度に基づいて、評価を行った。この結果が、参考例1を100とした指数で、下記の表1−7に示されている。数値が大きいほど、高速耐久性に優れる。
表1−7に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。