<発明の分野>
本発明は、引込み可能な針を含む前部アタッチメントを有する医療デバイスである。本発明の一態様は、好ましくは、コネクタハウジングにクリップ留め及び摺動可能に係合する前部アタッチメントに関し、前記コネクタハウジングには、一体に成型又は形成された針引込みキャビティと関連医療器具の少なくとも本体部又はバレル部とが互いに横方向に間隔をあけて設けられる。関連医療器具は、例えば、シリンジ、IVカテーテル挿入デバイス、輸液セット、流体収集デバイス、若しくは引込み可能な針が用いられることができる他の医療装置を含むことができる。
本発明の他の態様は、後方に付勢されて引込み可能な針及び針引込み機構を有する前部アタッチメントに関するもので、針は、流体が針の中を通るときは常に、コネクタハウジングを通り関連器具への流体流れ経路の長手方向で同一線上にあるが、針の引込みが開始するまでは針引込みチャンバーと同一線上にない。
本発明の他の態様は、好ましくは、一端部が開口した針引込みチャンバーを具えるコネクタハウジングに関するもので、針引込みキャビティを有し、使用中及び針引込み前、前記キャビティは、長手方向軸が、針の長手方向軸又は針の中心線と略平行であるが横方向にオフセットした位置にある。
本発明の他の態様は、好ましくは、前部アタッチメントに着座された引込み可能な針の長手方向軸をほぼ横切る方向にある前部アタッチメントに関して係合し摺動可能なコネクタハウジングに関する。前記摺動は、好ましくは、対向する方向の力を少なくとも前部アタッチメント及びコネクタハウジングに加えることによって開始する。対向する方向の力の1つは例えば抵抗力である。
本発明の他の態様は、医療デバイスに関するもので、引込み可能な針ホルダーと針は使用前に前部アタッチメントの中に着座され、使用後、安全位置に付勢され、針チップは露出されることなく、前部アタッチメントは再使用されることはできない。針と針ホルダーが“安全位置”にあるとき、針ホルダー及び針の一部分は、好ましくは、針引込みチャンバー内部の引込みキャビティの中に配備される。前記針引込みチャンバーは、医療デバイスの使用中、流体が針の中を通るとき、針と同軸線上にない。
<関連技術の記載>
従来のシリンジで、略円筒状バレル、該バレルから前方に突出する針、及びバレル内部に配備されバレル後部の開口部を通って摺動可能なプランジャーを含むものは広く知られている。従来のシリンジの中には、バレルの前部にスリップ式又はロック式のルアーコネクタが設けられ、これに協同作用可能で交換可能な針又は針ハブが取付け可能であり、異なるゲージ又はサイズの針を用いられることができるものがある。このようなシリンジのルアーチップは、一般的には、使用中に不注意で人又は物体に接触すると、細菌又はウイルスの汚染に曝される。例外は、米国特許第8343094号に開示されたシリンジで、これは、交換可能な針と共に用いられることができ、ルアーチップを通って前方に延びる保護ガード構造を有しているので、接触による汚染の可能性は低減される。
最近になって、露出した針、体液その他の汚染物体又は表面との接触による血液感染性病原菌及び汚染の広がりを制御するために、固定針又は交換可能針を有するシリンジ及び他の医療デバイスに様々な「安全」要素を用いることが検討されている。そのようなデバイスは、米国特許第7351224号に示される引込み可能な針を含むことがあるが、「安全」という用語は、使用後引き込むことができない針の先端をカバーするか針に触れないようにするために、手で操作されなければならない移動可能なガード、シールド又はカバーを有する製品に適用されることもある。流体が注入又は引き出された時、針が最初に患者又は他のデバイスから取り除かれないと、移動可能なガード、シールド又は針を使用しても効果がない。移動可能なガード、シールド又はカバーを「安全」要素として有する製品を使用すると、針が偶発的に突き刺さる回数が増えるという報告もあり、引込み可能な針を有する製品とは区別されるべきであり、特に、まだ患者又は他のデバイスに挿入されている状態で引き込まれることができる針を有する製品とは区別されるべきである。引込み可能な針でない「安全」要素を組み込んだデバイスの例が米国特許第5370628号及び第8500690号に記載されている。米国特許第8500690号は、開示された安全シールドは、患者から完全に取り除かれるまで針カニューレを完全に取り囲むことができないし、また、パッケージングカバーを取り外した後はいつでも、使用者が自動シールディングがフィンガータブを意図的に又は意図的でなく解除するとトリガされる問題がある。
引込み可能な針及び針引込み機構を有する公知の医療デバイスでは、使用中、通常は、針引込みキャビティが針の長手方向軸と同一線上に配備される。このようなデバイスでは、バレル及び/又はプランジャーハンドルの円筒状内部が針引込みキャビティとして供されることもある。そのようなデバイスの例は米国特許第7351224号に開示されている。
他の医療デバイスでは、針引込みキャビティは、バレル及び針引込みキャビティを含む本体部の一体部品として作られ、各々の長手方向軸は、使用中、他方の長手方向軸と略平行で間隔を有するものがある。しかしながら、これらのデバイスでは、針と針引込みキャビティは、使用中及び針引込み中の両方とも整列状態が維持され、バレルと針の後端部との間に交差流体経路が形成される。針が後方に付勢されないこのようなデバイスの例は米国特許第4941883号に開示されている。針が後方に付勢されるそのようなデバイスの例は米国特許第6468250号に開示されている。
引込み可能な針を有する医療デバイスの中には、引込み力が手動で加えられるアクチュエータを有し、使用後、前記アクチュエータにより針を後方に向けて針引込みキャビティの中へ摺動させることにより針が引き込まれるようにしたものがある。他のデバイスとして、使用後、針が針引込みキャビティの中に自動的に引き込められるようにするか、又は針引込みを開始するのに別個の力を手動で加えるものがある。針引込みを開始させるのに必要な手動力は、例えばプランジャーの全部又は一部を通じて長手方向に加えることによってもたらされ、プラグ又はリテーナー部材が再配置され、干渉要素がカット若しくは破壊されるか又は孔が空けられる。このようなデバイスは、例えば米国特許第5503010号及び米国特許出願公開第2008/0287881号に記載されている。場合によっては、手動による最初の力は、トリガ要素を回動させて針の長手軸と角度関係にすることによって加えられ、例えば米国特許出願公開第2010/0317999号に示されるように、後方に付勢された要素の引込みと干渉する要素が再配置される。最初の力は、例えば、米国特許出願公開第2009/0306601号に開示されているように、針引込み機構を具えるハウジング内に配備されたアクチュエータを横方向に移動させることによって加えられるものがある。また、最初の力は、レバー棒を針の長手方向軸を横切る方向に押圧してトリガピンを引くことによって加えられものがあり、例えば米国特許第4973316号に開示されたバネによって後方に付勢された摺動可能なピストンアッセンブリが解放される。例えば米国特許第7351224号に開示されているように、針を患者から直接引き込ませることができる針引込み機構を有する幾つかの医療デバイスが知られているが、多くの他のデバイスはそのようなことはできない。
他に、ヨーロッパ特許出願EP0479303A1号に開示された医療デバイスが知られており、該デバイスは、ルアーチップシリンジ用の前部アタッチメントであり、該前部アタッチメントは、シリンジのルアーチップが接続されるコネクタ部の長手軸と平行で離間した長手方向軸を有する針引込みキャビティを含む。しかしながらこのデバイスの場合、針は常に引込みキャビティと同軸線上にあり、流体経路は、シリンジと針との間で流体が交差するように配備される。また、使用されることができるシリンジが、開示の中で「従来型」として特徴づけられるとしても、シリンジのプランジャー部は、前部アタッチメント協同作用するプランジャーシールから前方に延びるプッシュロッドを追加することによって特に適合される。デバイス内での針引込みは、引込みキャビティの遠位側端部に接続された緊張状態のゴムバンドによる補助により、手動で開始される。
引込み可能な針を有する医療デバイスの安全性の利点については、最近になって広く認識されているが、患者、患者の家族及び介護福祉者に対する安全性の点で、ロック式又はスリップ式ルアーコネクタを有する公知のシリンジ又はIVカテーテルイントロデューサ等の医療デバイスと共に用いられることができ、経済的で信頼性を有する医療デバイスに対する要請が依然としてある。要請されているのは、関連医療器具(例えば、シリンジ)に特別な取付具又は変形を加えることなく使用されることができ、部品数が少なく、製造費用が比較的安く、選択的に取付け可能で引込み可能な所望サイズの針を具え、片手で作動されることができ、針引込み時に力を加えることなく患者から直接針を引っ込めることができる針引込み機構を具えるデバイスである。
<発明の要旨>
この明細書に開示された発明は、前部アタッチメントとコネクタハウジングとを具える医療デバイスである。前部アタッチメントとコネクタハウジングは、好ましくは、両者の一方又は両方に接続された1又は2以上の構造要素により、選択的に取付け可能であるか、又は互いに狭い間隔で摺動可能に維持される。発明の一実施態様において、前部アタッチメントは、好ましくは、コネクタハウジングにクリップされて摺動係合され、移動超過又は係合解除を防止するためのストップ部材が設けられる。コネクタハウジングは、好ましくは、医療デバイスの一体部分として、引込み可能な針が用いられる関連医療器具の少なくとも一部を含む。この関連医療器具として、例えば、シリンジ、IVカテーテル挿入デバイス、輸液セット又は流体収集デバイスが挙げられる。コネクタハウジングは、好ましくは、針引込みチャンバー及び針引込みキャビティをさらに含んでおり、両方に共通する長手方向軸を有し、該長手方向軸は、医療デバイスの使用中及び針引込み前、針の長手方向軸とは同一線上にないオフセットされた位置である。
発明の一実施態様において、前部アタッチメントは、本体部と、該本体部に着座された針引込みアッセンブリと、前方に突出する針とを具える。針引込みアッセンブリは、好ましくは、針ホルダーと、該針ホルダーを本体部に関して後方に付勢する付勢部材とを含む。前方に突出する針は、好ましくは、前部アタッチメントの本体部の内部に着座された針ホルダーによって支持される。満足できる付勢部材は、本体部がコネクタハウジングに取り付けられるとき、圧縮状態が保持される圧縮コイルバネであるが、他の同様に有効な付勢部材が用いることもできる。
コネクタハウジングは、好ましくは、針引込みチャンバーをさらに具え、該チャンバーは、後方に延びる針引込みキャビティに連通すると共に、遮られるものがない少なくとも1つの前方に面する開口端部を有する。所望により、針引込みキャビティの後端部又はその近傍に小さな通気口を設けることがもできる。コネクタハウジングは、好ましくは、関連医療器具の少なくとも一部と共に一体成型されるが、接着剤、プラスチック溶接等の他のほぼ剛性取付手段を用いて、コネクタハウジングの針引込みチャンバーに対してほぼ固定された位置関係となるように、シリンジバレル等の関連医療器具の一部と接合することもできる。コネクタハウジングが関連医療器具と一体成型されるか、関連医療器具の少なくとも一部に取り付けられるか、又は関連医療器具の少なくとも一部の一体部品として作られるかの如何に拘わらず、コネクタハウジングは、好ましくは、関連器具と針ホルダーとの間にほぼ直線的な流体流れ経路を形成するので(交差(cross-over)チャンネル等は必要がない)、流体チャンバーと引込み可能な針との間に交差チャンネルを有するデバイスに起こり得る非直線的流れ経路の場合と比べて、一方から他方へ流体を移動させるのに必要な圧力は低減される。
前部アタッチメントとコネクタハウジングのコネクタ部との間には、流体シールが好ましくは配備され、引込み前に針と同軸線上にあるコネクタハウジングのコネクタ部と同軸線上に形成された凹部に着座される。発明の一実施態様において、流体シールは環状で移動可能であり、コネクタハウジングのコネクタ部との整列状態が維持され、針の引込みが開始すると再配置され、前部アタッチメントの本体部の後部と面接触する。環状の流体シールは、好ましくは、針引込み前にコネクタハウジングと前部アタッチメントとの間の流体流れ経路を取り囲み、針引込み前、針引込みが行われる間及び針引込み後における本体部及びコネクタハウジングの対向面間の流体漏洩を制限する。コネクタハウジングの針引込みチャンバー内部の針引込みキャビティは、最初は、針の長手方向軸からオフセットされた位置にあるが、針の引込み中、横方向に移動して、針軸とほぼ同一線上にあるのが好ましい。針引込み機構が使用開始前に、包装、出荷及び取扱い中に作動するのを防止するために、また、使用前に針先端が鈍くなったり、屈曲したり、損傷しないように、好ましくは、ロック式針キャップが設けられる。
針引込みは、好ましくは、医療デバイスを患者に関して安定化させることによって開始され、次に、好ましくは片手で圧力を加えて、引込みキャビティが針の長手方向軸とほぼ同軸上に位置するまで針引込みキャビティ及びコネクタハウジングは前部アタッチメントに関して移動する。一実施態様に示されるように、前部アタッチメント及びコネクタハウジングの少なくとも一方に、対向方向の力を容易に作用させることができるように、所望により、テクスチャ構造の接触面が設けられる。手操作による圧力は、前部アタッチメントとコネクタハウジングとの間の摺動界面とほぼ平行で、針及び針引込みチャンバーを通り横方向に間隔を有する長手方向軸をほぼ横切る軸に沿って対向する方向に加えられることが好ましい。ここで用いられる「摺動界面(sliding interface)」という語は、前部アタッチメントとコネクタハウジングの対向する表面間を相対的に摺動移動することができる界面を意味する。しかしながら、医療デバイスの針引込みを開始するために加えられた対向方向の力は抵抗力であることは理解されるべきである。添付の図面には示されていないが、この開示を読めば、針引込みを開始するために用いられる手動力に代えて、同じように有効であるがより複雑な装置を用いられることは認識されるであろう。例えば、発明の医療デバイスに、バネ駆動式又は同様な作用を有する機構の如き他の付勢手段を組み込むことにより、針とほぼ同軸線上となるように針引込みキャビティを再配置し、デバイスの使用後の針引込みを容易にすることができる。そのような付勢手段を使用する場合、付勢を解除するのに解除又はトリガ要素を必要とし、これによって前部アタッチメントとコネクタハウジングとの間での相対的摺動移動が開始されることは、この開示を読んだ当業者であれば明らかであろう。
引込みキャビティ内の開口と針ホルダーのヘッド部とが十分に整列され、針ホルダーが針引込みキャビティの中に収容されると、本体部の中に配備された圧縮コイルバネ等の付勢部材が針ホルダーと針とを後方に向けて移動させて、同時に針の斜めカットされた先端チップを後退させるので、その後、針の先端チップは前部アタッチメントの本体部から前方に突出することはない。使用後、針引込みチャンバーは、針に関して横方向に摺動するので、その後は、環状流体シールにより、関連医療器具からの流体流れによる医療デバイスからの流体漏洩の虞れは低減される。
本発明の医療デバイスは、従来のデバイスに比べて多くのメリット及び利点を有する。このような利点の一つは、針引込みが吸引から独立して行われることである。例えば、流体は膝から引き出されることができるが、その場合でも、針はプランジャーハンドルを完全に押し下げなくても引き込められることができる。本発明の医療デバイスの他の利点は、針を最初に手操作で後退させなくても、針を患者から直接引き込められることであり、感染性病原体が含まれる体液に曝されて汚染される危険がないことである。針引込みの開始は、投与量の一部を注入した後にも行えることである。本発明の医療デバイスを用いると、引込みの開始をデバイスのベース部に近い部位に圧力を加えることによって行なうことにより、患者の体内での針の「ぐらつき(wobble)」の虞れは低減されるので、医師はより多くの制御が可能となる。
発明の一実施態様において、本発明の医療デバイスは本体部に着脱可能に係合する針キャプ又は針カバーが設けられることができる。また、この針キャップ又は針カバーはコネクタハウジングを所定位置にロックすることができ、針キャップ又は針カバーを最初に取り外さない限り、針引込み機構は作動することができない。所望により、本発明の医療デバイス自体を、予め充填されたシリンジのカバー、閉鎖具又はキャップとして用いられることができる。本発明の前部アタッチメントは、例えば、シリンジバレルと共に作られると、高価で腐食性の薬剤の投与量を調製するのに用いられることができ、使用後は、廃棄又は損傷を回避するためにキャッピングされる。針キャップ又は針カバーが適所に配置されると、本発明の医療デバイスは、特に以下に記載の如く構成されるとき、ポケットの中に入れて、又はポケットの中又はポケットの上にクリップされて都合良く持ち運ばれることができる。
所望により、本発明の医療デバイスは、関連医療器具に固定したり、医療装置と一体に成型したり、医療装置の少なくとも一部として製造又は組み立てられることができる。一実施例として、コネクタハウジングとシリンジバレルは、成型可能な医療グレードのポリマー樹脂から一体成形されることができる。他の実施例として、シリンジバレルは、コネクタハウジングのコネクタ部にほぼ固定された状態で取り付けられるか又は接続され、使用後で針引込み前、コネクタハウジングが前部アタッチメントに関して移動する前に、針引込みアッセンブリ及び針とほぼ同軸上に配置される。この実施態様において、針引込みチャンバー及び針引込みキャビティを通る長手方向軸はほぼ平行で中央にあり、針引込みチャンバー及びシリンジバレルが一体に成型されている場合でも、好ましくは互いに横方向に離間して両者間に開放空間が形成されないように、並んだ位置にあり、針引込みチャンバーの一部とシリンジバレルの一部が壁を共通する。この実施態様を使用することにより幾つかの利点が達成される。プランジャーとプランジャーシールとを組み合わせて包装され販売されることができ、これらの組合せにより、針と同一線上にあるデバイスの内部に容量可変(variable volume)の流体チャンバーを作ることができるので、正圧又は負圧を作用させることにより、針の中に流体を注入する場合又は回収する場合のどちらにもデバイスの使用が可能である。
本発明の前部アタッチメントは、ゲージ及びサイズが異なる針及びシリンジに対しても特別な改変を行うことなく用いられることができる。所望により、本発明の医療デバイスと共に用いられる関連医療器具又は医療デバイス自体に、血液ガス用に用いられるヘパリン等の抗凝結剤プラグが設けられることができる。本発明の構造及び作用は、ほぼ直線状の流体流れ経路を設け、流体の注入又は回収中、流体流れ経路から横方向にオフセットされた位置に針引込みチャンバー及び連繋された引込みキャビティを設けることによって簡素化される。本発明の医療デバイスは、部品数を少なくすることできるので、成型が容易でコストが低減される。
本発明の医療デバイスはまた、従来の多くの装置には一般的に用いられていない安全機構を具える。例えば、本発明のデバイスは、針の引込み後、バネと針が針引込みキャビティと本体部に跨るようにしているので、再作動及び再使用ができない「ロックされ閉じられた(locked shut)」状態にある。針引込みキャビティがコネクタハウジングの流体流れ経路に関する横方向の摺動及びこれに関連した再配置と、本体部とコネクタハウジングとの間における流体シールの存在との協同作用により、流体流れ経路が遮断され、使用後、関連医療器具からの逆流が防止される。本発明の医療デバイスは、針が引き込まれた後、関連医療器具から取り外されることができ、他の針カバーと共に処分されることができる。関連医療器具が再使用可能である場合、針が入れられた部品から独立して、加圧滅菌、消毒又は再使用のための処理を行なうことができる。
本発明の医療デバイスの他の利点については、当業者であれば、添付の図面に関する開示を読むことにより、上記利点と同じように明らかとなるであろう。
<望ましい実施態様の説明>
図1、2及び10を参照すると、医療デバイス(30)は、コネクタハウジング(32)、前部アタッチメント(34)及びロック式針カバー(36)を具える。図3、4及び9は、ロック式針カバー(36)は取り外され、斜めカットされた先端部の面が上向きの状態を示す。図5及び9を参照すると、医療デバイス(30)のコネクタハウジング(32)は、好ましくは、後方に面する閉端部(44)と前方に面する開口部(46)とをさらに具え、前方に面する開口部(46)は針引込みキャビティ(58)と境界を成す。開口部(46)は、好ましくは、細長い形状又は卵形であり、横方向寸法は、針引込みチャンバー(42)の細長い円筒部の内径よりも大きい。図5〜8に示されるように、開口部(46)は、好ましくは、テーパ状内壁(102)(図8では背部(103)が見える)に沿って、針引込みチャンバー(42)の内径に移行する。テーパ状内壁(102)は、ロック式針カバー(36)のロッキングアーム(98)の挿入及び取外しを容易にし、また、針引込み時、針ホルダー(72)及び引込みバネ(80)の針引込みキャビティ(58)への進入を容易にする。これについては後でより詳しく説明する。所望により、閉端部(44)は、小さな孔(例えば、通気目的のため)を設けることができるが、針引込みバネ(80)、針ホルダー(72)又は針(38)が針引込みチャンバー(42)の後部から出て行くような大きさであってはならない。
図5に示されるように、コネクタハウジング(32)は、好ましくは、医療デバイス(30)を関連医療器具(例えば、シリンジ(104))に取り付けるのに用いられるコネクタ(48)をさらに具える。これについては、図11〜15に示される医療デバイス(30)に関して説明する。コネクタ(48)は、内側に流体流れ経路(54)を有する略円筒状の側壁を有しており、前記流体経路は、前方に面する開口(52)と後方に面する開口端(50)を有する。後端部(50)の近傍には、直径方向に2つのロック式ルアータブ(56)が放射状に突出しており、該タブは、コネクタ(48)を関連医療器具に取り付けるのに用いられる。前方に面する開口(52)は、好ましくは、流体シール(68)を受ける環状凹座面を更に含む。流体シール(68)は、好ましくは、コネクタ(48)の中を通る流体流れ経路(54)と同軸の流体流れ経路を中央に有する。図4、6〜10を参照すると、針の引込みを開始する時、手動力(図4中、矢印(35)で示される)がコネクタハウジング(32)に作用し易くするように、テクスチャ構造のデジタル接触面(100)が、好ましくは所望により、針引込みキャビティ(42)に設けられる。
図5では、医療デバイス(30)の前部アタッチメント(34)は、ベース部(82)と前方に突出する針支持体(84)をさらに具える。針支持体(84)は、好ましくは、ロック式針カバー(36)のカラー(97)の内側と着脱可能に摩擦係合できるように、間隔をあけた複数のテーパ状リブ(88)を有する。なお、当業者であれば、この開示を読むことにより、ロック式針カバー(36)を針支持体(84)に取外し可能に固定できる他の同様な有効な手段を設けることはできるであろう。図5、20〜22を参照すると、ベース部(82)及び針支持体(84)は、好ましくは、段付きボア(86)を有する。図20〜21をさらに参照すると、ベース部(82)は、後方に面する表面(87)が段付きボア(86)の中に開口している。なお、前記表面は、針ホルダー(72)の大径ヘッド部(76)(図5を参照)が収容され着座する環状凹所を有することが好ましい。バネ(80)及び針ホルダー(72)を含む針引込み機構(図5)は、前部アタッチメント(34)をコネクタハウジング(32)に取り付ける前に、前部アタッチメント(34)に挿入される。針引込み時、図4の矢印(45)で示される力を作用させるのに使用するために、所望により、外方に面するテクスチャ構造の接触面(90)をベース部(82)の端部に設けることが好ましい。これについては後で詳しく説明する。前部アタッチメント(34)に加えられる力は、抵抗力であり、主成分は、好ましくは、コネクタハウジング(34)に関して矢印(35)で示される方向に加えられる力とは反対方向の向きである。
図1〜23、より具体的には、図5〜8及び19〜23を参照すると、医療デバイス(30)の組立時、コイルバネ(80)の前方端部は好ましくはボア(86)の中に挿入されて着座され、針ホルダー(72)の細長い筒状軸部(74)は、好ましくはコイルバネ(80)の中に挿入され、下向きに作用してバネを押圧し、針ホルダー(72)の大径ヘッド部(76)がボア(86)の内部で着座されることができる。これによりバネ(80)が圧縮され、ヘッド部(76)の下面に対する後方向きの付勢力が作用する。針ホルダー(72)は、長手方向に延びるボア(78)を有し、該ボアの内部に針(38)が配置されると、針(38)と流体接続される位置にある。
本発明の一実施態様では、針ホルダー(72)(図5では見えない)のヘッド部(76)の後方に面する端部に浅い凹部が形成され、該凹部は、医療デバイス(30)が組み立てられると、流体シール(68)の前方に面する端部と着脱可能に係合する。図3及び4に示されるように、針ホルダー(72)の前方に延びる端部は、好ましくは、針支持体(84)の前方先端部を僅かに超えて突出させることにより、当業者にとって既知の適当なあらゆる方法により針引込み機構の設置及び前部アタッチメント(34)のコネクタハウジング(32)への取付けを行なった後、針(38)の針ホルダー(72)への取付けが容易になる。針(38)の針ホルダー(72)への取付けは、針ホルダー(72)を前部アタッチメント(34)内部に設置する前又は後のどちらでも可能であるが、針引込み機構の設置後に取り付けることが望ましい。
流体シール(68)を、コネクタハウジング(32)(例えば、図5を参照)の前方に面する開口(52)内部の環状凹部の中に挿入した後、そして、前部アタッチメント(34)内部の針ホルダー(72)を圧縮バネによる後方への付勢力に抗して保持している状態で、前部アタッチメント(34)のベース部(82)の後方に面する表面(87)がコネクタハウジング(32)の前方に面する表面(61)(図5参照)と対向して配置される。コネクタハウジングの対向レール(64)(66)(図5、8、19〜23参照)がベース部(82)の対向レール(91)(93)と係合するので、コネクタハウジング(32)の前方に面する表面(80)は、好ましくは、ベース部(82)の後部(87)に対向して摺動可能に係合するように構成される。レール(64)(66)とレール(91)(93)はスナップ式に嵌って摺動係合できるように作られることが好ましく、コネクタハウジング(32)及び前部アタッチメント(34)が向かい合う平行配列状態で保持されて、ボア(86)が開口(52)に対向すると摺動係合し、前部アタッチメント(34)の前部とコネクタハウジング(32)の背部に同時に力を作用させると、共に圧搾される(squeezed)。前部アタッチメント(34)はコネクタハウジング(32)に取り付けられるので、流体シール(68)は圧搾されて、針ホルダー(72)のヘッド部(76)の後方に面する端部に突合せ接触する。環状の流体シール(68)は、針引込み前に前部アタッチメント(34)に関してコネクタハウジング(32)を再配置する前、並びに医療デバイス(30)及び関連医療器具を使用する間、コネクタハウジング(32)と前部アタッチメント(34)との間での流体漏洩を防止する。
図5、17、20を参照すると、ストップ部材(62)(63)が配備されることが好ましく、該ストップ部材は。前部アタッチメント(34)のベース部(82)に隣接する後部表面(87)の対向する上肩部及び下肩部(図20では下肩部(65)が見えている)と突合せ接触して係合し、コネクタハウジング(32)の前部アタッチメント(34)に対する横方向摺動範囲を制限することにより偶発的な分離が防止される。医療デバイス(30)が前述したように組み立てられると、針ホルダー(72)(図5)のヘッド部(76)は、前部アタッチメント(34)内の凹部(86)(図19〜20)の内部で着座され、好ましくは、コネクタ(48)のボア(54)、流体シール(68)のボア(70)、針ホルダー(72)のボア(78)及び針(38)を通じて、略直線状の流体経路が形成される。
図1〜3、5〜6及び11を参照すると、ロック式針カバー(36)は、好ましくは、略円筒状側壁(92)を含み、該側壁は、閉端部(94)、開端部(96)及び長手方向に延びる複数の外部補強リブを有しており、針(38)の使用前の損傷を防止するのに必要な剛性がもたらされる。ロッキングアーム(98)は、好ましくは、ロック式針カバー(36)のカラー(97)から後方に突出して、コネクタハウジング(32)の開口部(46)に挿入されることにより、ロック式針カバー(36)が針支持体(84)から取り外す前にコネクタハウジング(32)と前部アタッチメント(34)との間での相対的なスライド移動が制限される。なお、他の同様なロック式構造を設けることは本発明の範囲内であり、そのようなロック式構造は針カバーの一部である必要がないことは理解されるであろう。図6は、ロック式針カバー(36)がある医療デバイス(30)を前部から見た状態を示しており、図7は、ロック式針カバー(36)の無い医療デバイス(30)を前部から見た状態を示している。
図11〜15を参照すると、本発明の医療デバイス(30)と共に、関連医療器具が仮想線で示されている。関連医療器具は、従来のシリンジ(104)であり、該シリンジは、前方面がロック式ルアーコネクタである円筒状バレル(106)と、該バレルの内壁に摺動可能に係合するプランジャーシールを有するプランジャー(108)とを具えている。プランジャー(108)はバレル(106)と協同作用してシリンジの内部に容量可変流体チャンバー(110)を画定し、該シリンジから、流体が、前述した医療デバイス(30)の中の流体経路を通じて針(38)に供給される。図11及び12では、医療デバイス(30)とシリンジ(104)が完全に組み立てられ、針カバー(36)が針(38)の適当位置に配置された状態が示されている。バレル(106)に関するプランジャー(108)の図示位置は、「プレインジェクション(pre-injection」位置と称されることができ、例えば、従来の針無しシリンジが使用前にパッケージされ出荷されることができる位置である。
図13及び14は、図11及び12の組立て完了後の医療装置を再び示しており、針カバーは取り外され、プランジャー(108)は流体チャンバー(110)の中に流体が吸引される位置に引き込まれている。このような吸引は、例えば、流体をバイアル又は他の流体源からシリンジの中に引き入れることにより、又は流体サンプルを患者から抽出する(流体チャンバー(110)から空気を追い出した後)ことにより行われることができる。プレフィル用のために、シリンジ(104)は、所望レベルまで充填され、医療デバイス(30)と共に又は医療デバイス(30)無しで出荷のためのパッケージングが行われる。
図13及び図15を参照すると、組立て完了後の医療装置の使用後、針の引込みは、好ましくは医療デバイス(30)の中で、コネクタハウジング(32)を前部アタッチメント(34)に関して再配置することにより行われ、針引込みチャンバー(42)は針(38)と同軸線上に配列される。これは、例えば、バレル(106)及び前部アタッチメント(34)を安定化させた状態で、コネクタハウジング(32)の選択的に設けられた接触面(100)に対して手作業で圧力を作用させることにより(図4の矢印(35)で示される方向)、及び/又は、前部アタッチメント(34)の選択的に設けられた接触面(90)に対して抵抗圧力を作用させることにより(図4の矢印(45)で示される方向)行われることができる。針引込み時に針(38)が患者の中に挿入されない場合、前部アタッチメント(34)及びコネクタハウジング(32)は、接触面(90)(100)又は前部アタッチメント(34)及びコネクタハウジング(32)の他の部分に対して反対方向の圧力をに手作業で加えることにより、互いに再配置されることができる。上記のように圧力を加えることにより、流体シール(68)及びコネクタハウジング(32)は、シリンジ(108)が針(38)と同一線上にある第1の位置(図13)から、コネクタハウジング(32)の針引込みキャビティが針(38)と同一線上にある第2の位置(図15)に移動する。この再配置が行われると、針ホルダー(72)及び針(37)は、完全な引込みが行われるように同一線上に揃えられたとき、バネ(80)の後方に向かう付勢力によって、開口(46)に進入することができる。同様に、所望により、医療デバイス(30)は、コネクタハウジング(32)を前部アタッチメント(34)に関して付勢することによって構築されることができ、協同作業できるように構成された解除要素に対してトリガ力を作用させると、再配置の付勢力により針は引き込まれることができる。
図13及び図14の組立て完了した医療デバイスが 図15に再び示されており、インジェクションの後、プランジャー(108)は完全に押し下げられてバレル(106)の内部にあり、コネクタハウジング(32)が図14に示される位置から前部アタッチメント(34)に関して再配置され、針ホルダー(72)、バネ(80)及び針(38)が全て医療デバイス(30)の中の安全位置に引き込まれており、針のどの部分も前部アタッチメント(34)から前方に突出していない。引込みの後、伸長したバネと引き込まれた針は、前部アタッチメント(34)とコネクタハウジング(32)との間にブリッジ接続を形成し、前部アタッチメント(34)はコネクタハウジング(32)からの脱落が阻止され、医療デバイス(30)はその引込み前の状態にセットされる。また、コネクタハウジング(32)は前部アタッチメント(34)に関して逆方向の移動は阻止される。逆方向の移動があると、医療デバイス(30)の中の流体経路は再調整せねばならない。
図16〜18において、シリンジ(104)は、ロック式ルアーコネクタのネジを緩めることにより医療デバイス(30)から取り外され、医療デバイス(30)は安全に処分できる状態にある。図18において、流体シール(68)は、針の引込み後、ボア(70)の周りで前部アタッチメント(34)のベース部(82)の背面と突合せ接触した状態の儘である。
医療デバイス(30)のコネクタハウジング(32)、前部アタッチメント(34)及び針カバー(36)は全て、好ましくは、医療用及び殺菌用として承認されているあらゆる成型可能なポリマー材料から作られる。流体シール(68)は、好ましくは、弾性ポリマー材料から作られ、該材料は、コネクタハウジング(32)と前部アタッチメント(34)との間の流体経路内で流体を含むのに十分な組成及びデュロメータ硬度を有し、使用前及び使用中に劣化しない材料である。シール(68)と針引込みチャンバー(42)は針引込み前に横方向に再配置されるので、この材料はまた、針ホルダー(72)との係合を解除することができ、コネクタハウジング(32)と前部アタッチメント(34)との間の相対的摺動できる組成及びデュロメータ硬度を有する。針(38)は、好ましくは、ステンレス鋼、他の金属又は合金、セラミック又はそのような用途として認可されている他の材料から作られる。圧縮バネは、当該分野で一般的に知られている金属から作られ、商業的に容易に入手可能である。
本発明の他の実施態様を、添付図面の図24〜33に関連して記載する。図24及び25を参照すると、医療デバイス(200)が開示されており、該デバイスには、関連医療器具(この例ではシリンジ(222))が、コネクタハウジングの一体部品として配備される。医療デバイス(200)は、好ましくは、前部アタッチメント(204)及びコネクタハウジング(202)を具え、これらは選択的に互いに取り付けられ、1又は2以上のアタッチメント部材により、少なくとも1つの摺動界面に沿って互いに狭い間隔で摺動関係が維持される。これにより、図1〜23の実施態様に関して既に説明したように、前部アタッチメント(204)とコネクタハウジング(202)との間で横方向の摺動移動が制限されることができる。図24において、針カバー(図26〜28に関して説明する)は取り除かれ、針(210)が現れる。
前部アタッチメント(204)は、好ましくは、本体部(206)、前方に延びるノーズ部(208)、引込み可能な針(210)、及びテクスチャ構造の接触面をさらに含む。コネクタハウジング(202)は、ベース部(216)、針引込みチャンバー(218)及びシリンジバレル(222)をさらに含む。図24において、針カバー(図26〜28に関して説明する)が取り除かれた第1の位置が示されており、この位置では、バレル(222)が針支持体と同軸上にあり、針引込みチャンバー(218)は横方向にオフセットされるので、前方に面する開口を有する針引込みキャビティ(220)は前方に遮るものがない。図25において、コネクタハウジング(202)は前部アタッチメント(204)に関して横方向の第2の位置に移動している。第2の位置では、針引込みチャンバー(218)は、針支持体とほぼ同一線上にあり、針(210)(図面では見えない)は、針引込みチャンバー(218)内部の針支持体(208)及び針引込みキャビティ(220)(図24)の中に引き込まれている。
本発明のこの実施態様において、例えばシリンジバレル(222)(又はこの開示の中で前述した他の医療装置)等の関連医療器具は、コネクタハウジングに剛体接続され、該ハウジングの一部である。成型可能な医療グレード材料で作られた部品において、この略剛体接続は、任意の適当な方法によって行なうことができる。この方法は、例えば、ベース部(216)、針引込みチャンバー(218)及びシリンジバレル(222)を単一ユニットして含む単一又は一体成型されたコネクタハウジング(202)により、又は限定するものでないが、レーザー溶接又は接着剤、その他同様に有効であると知られた技術を用いることにより行われることができる。医療デバイス(200)はこのように構成されるとき、針引込みキャビティ(220)は、針引込みチャンバー(218)及びバレル(222)が壁を共通にする(図27により良く示される)場合でも、バレル(222)から横方向に間隔を有していると考えられる。また、医療器具が連繋された本発明の医療デバイスは、針引込みチャンバー及び関連医療器具は共通の壁を有しないように作られることができる。図24及び25を再び参照すると、横方向に突出するバレルフランジ(224)(226)もまた、バレル(222)の一部として一緒に一体成型されることができるし、別個に作製して公知の方法によりバレルに取り付けられることもできる。プランジャー(228)は、バレル(222)の内部に摺動可能に配置され、バレル(222)に関する典型的な位置が図24に示されている。この位置は、使用前に出荷され保管されることができる。図示のように、プランジャー(228)は、ハンドル(230)、端部キャップ(232) 及びプランジャーシール(238)を具えている(図27〜29に示されている)。図25において、プランジャーハンドル(230)は、インジェクション用途であるときのように、バレル(222)に関してより完全に押し込まれている。例えば患者から体液を引き出す等の他の用途の場合、針(210)が引き込まれるとき、プランジャーハンドルは、バレル(222)に関する距離が図2に示される距離よりも大きく引き込められる。
図27を参照すると、取外し可能な針カバー(234)は、医療デバイス(229)に設置された状態が示されており、ロッキングアーム(236)は、針引込みキャビティ(220)の中に突出し、使用前における出荷及び取扱い時、前部アタッチメント(204)(図26)とコネクタハウジング(202)のベース部(216)(図26)との間で相対的な摺動は制限される。使用前にバレル(222)の流体経路(244)及び流体チャンバー(240)と略同軸線上にロッキングアーム(236)又は他の同様に有効な構造が無い場合、前部アタッチメント(204)及び/又はコネクタハウジング(202)の他方に対する横方向移動が不十分であると、ホルダー(246)及び圧縮された針引込みバネ(250)を具える引込み可能な針アッセンブリ位置は再び整えられ、バネ(250)は針ホルダー(246)及び針(210)を伸ばし、針引込みキャビティ(220)の中へ後方に駆動する。
図27〜28を参照すると、医療デバイス(200)は、好ましくは、環状プランジャーシール(238)がプランジャーハンドル(230)の前方に面する端部に配置され、バレル(222)の内壁(図28)と摺動係合及び封止係合する。図28を参照すると、コネクタハウジング(202)は、好ましくは、横方向に間隔を存して前方に面する開口(241)(248)を有する。開口(221)は、針引込み時、コネクタハウジング(202)が前部アタッチメント(204)に関して再配置及び再整列された後、針ホルダー(246)及び伸長した針引込みバネ(250)を受けることができる。前部アタッチメント(204)のコネクタハウジング(202)への組立てを容易にするために、好ましくは、上下ストップ部材(245)及び上下レール(223)(下レールは見えない)が設けられ、両者間に少なくとも1つの横方向摺動界面が提供される。この界面は、針(210)及びバレル(222)を通る長手軸をほぼ横切るため、第1の実施態様に関して詳細に説明したように、偶発的な外れは防止される。一実施態様において、ストップ部材(245)及び上下レール(223)は、前部アタッチメント(204)がコネクタハウジング(202)に対してスナップ式に摺動係合され、予め決められた移動範囲内で互いに摺動係合状態が維持される。前記移動範囲は、針(210)がバレル(222)と同一線上にある第1又は初期位置と、針(210)が針引込みキャビティ(218)と同一線上にある第2又は次位置との間を移動するのに十分であることが好ましい。
図27〜29及び32を参照すると、コネクタハウジング(202)の開口(248)と針ホルダー(246)の後方に面する環状端面との間の流体経路(244)(図27)の周りで流体の漏洩を防止するために、環状流体シール(242)等の流体シールを設けることが好ましい。この実施態様において、流体シール(242)は、好ましくは、医療グレードのエラストマー材料から作られ、コネクタハウジング(202)のベース部(216)の開口(248)の内部で封止される。流体シール(242)の長さ、半径、デュロメータ硬度、及び流体シール(242)を通る流体経路(244)の内径は、使用中、流体シール(242)の前方に面する端部が、流体経路(244)を通る流体流れを遮断又は過度に制限することなく、針ホルダー(246)のヘッド部に押圧されることができるように構成される。図29を参照すると、コネクタハウジング(202)は引込みを開始するために前部アタッチメント(204)に関して再配置されるので、医療デバイス(200)の使用後、流体シール(242)は、好ましくはコネクタハウジング(202)によって運ばれる。再配置が行われる間、流体シール(242)の前方に面する端部は、好ましくは、針ホルダー(246)から離れる方向に移動し、前部アタッチメント(204)の本体部(206)(図32)の後方に面する対向面と流体封止係合され、シリンジ(222)からあらゆる流体漏洩又は逆流が防止される。ここに記載した環状流体シール(242)の使用が好ましいが、他の同様に有効な流体シールを用いることも本発明の範囲内である。
図29〜33を参照すると、コネクタハウジング(202)を前述した第1位置から第2位置へ再配置した後、針引込みバネ(250)は針支持体(208)から後方に伸びて、針ホルダー(246)を後方に駆動するので、針ホルダー(246)はチャンバー(218)内部の針引込みキャビティ(229)に入る。これによって、針(210)の前端部は、針支持体(208)又は針引込みキャビティ(220)の中に引き込まれる。針支持体(208)、針引込みキャビティ(220)及び針引込みバネ(250)の相対長さは、使用されることが予想される医療デバイス(200)の針長さ範囲に応じて協同作用し得るサイズであることが好ましい。
図24〜33の実施態様に関して記載した医療デバイスは、、図1〜23の実施態様に関して説明した医療デバイスと多くの点で同様であるが、医療デバイス(200)は幾つかの異なる利点がある。この利点は、シリンジ等の関連医療器具が医療デバイスの一体部分として作られる実施態様に唯一利用可能なことである。より具体的には、プランジャーシール(238)等の摺動可能な流体シールを有するプランジャー(228)等のプランジャーと共にシリンジバレルが存在すると、1つのデバイス内で、流体チャンバー(240)等の容量可変流体チャンバーを作り出すことができる。さらに、使用者には、引込み可能な針と流体経路内に常に配備されていない針引込みキャビティを有する流体送達又は流体抽出デバイスの内部に正圧又は負圧のどちらかを生じさせる能力がもたらされる。この構成により、使用者は、用途に適した可変圧力で様々な粘度を有する可変容量の種々流体を、破裂又は針引込みの危険がなく注入又は引き抜くことができる。さらに、本発明のデバイスは、針の片手による引込み操作に関連する安全を全て確保することができ、使用後は、患者から直接、針の再使用ができない安全位置に針を引き込めることができる。さらに、シンプルでコンパクトな構造であり、移動部品が少なく、製造及び組立コストを低減できるため、広範囲に及ぶ使用可能性を高めることができる。
本発明の他の実施態様について、図34〜44を参照して説明する。この実施態様は、コネクタハウジングの一体部品である関連医療器具部品を含む点において、図24〜33の実施態様と同様である。図34〜44に示される実施態様において、関連医療器具はシリンジである。これらの図を参照すると、医療デバイス(300)は、好ましくは、コネクタハウジング(302)及び前部アタッチメント(304)を含む。コネクタハウジング(302)は、略円筒状バレル(306)と針引込みキャビティ(310)とをさらに含み、これらは一体成型されるか、又はベース部(326)と一体構造として作られる(図37)。ベース部(326)は、好ましくは、横方向に間隔をあけて前方に面する開口部を有しており、該開口部は、バレル(306)の内部に設けられた流体チャンバー(352)(図39)と連通する針引込みキャビティ(320)及び円筒状ボアの中に開口している。また、図24〜33の医療デバイス(200)に関して説明したように、針引込み時、前部アタッチメント(304)に対するコネクタハウジング(302)(図34〜36)の移動を制限するために、ストップ部材(328)(330)(図37)が対向配備される。図34〜42に示されるように、前方に面するプランジャーシール(324)を有するプランジャーハンドル(308)は、バレル(306)の内部を長手方向に摺動可能であり、バレル(306)に関して挿入又は引抜きを行なうことにより、流体チャンバー(352)の前端部に連通する流体経路(354)(図39)を通じて、吸入、注入又は抽出に必要な流体チャンバー(352)の容積を変えることができる。
図34〜37、43及び44を参照すると、前部アタッチメント(304)は、好ましくは、後方に面する一対の上下クリップ部材(315)が横方向に対向配備された本体部(312)をさらに有することが好ましく、該クリップ部材は、本体部(312)のベース部(326)の対向するストップ部材(328)(330)間に配備された上下レールの上を滑動してこれらレールとスナップ式に摺動係合する斜面を有する。図44に示されるように、上下クリップ部材(315)の各部材の背部に配備された四角形状の肩部は好ましくは、横方向に延びる少なくとも1つの摺動界面に沿う前部アタッチメント(304)と本体部(312)との摺動係合を維持する。環状流体シール(336)(図37、39、42)は、好ましくは、コネクタハウジング(302)と前部アタッチメント(304)との間に配備され、互いに摺動係合され、医療デバイス(300)が使用されているとき、両者間の流体漏洩を制限する。
図37、39、42を参照してより具体的に説明すると、前部アタッチメント(304)は、好ましくは、針ホルダー(338)及び取り付けられた引込み可能な針(340)を有する針引込み機構と、針ホルダー(338)に対して後方の付勢力を作用させるコイルバネ(342)等の付勢部材を具えており、後記するように、針引込み時、患者、バイアルその他の流体源又はレセプタクルから針(340)の引抜きを容易にする。バネ(342)の前端部は、好ましくは、ノーズ部(344)の内部に着座され、針ホルダー(338)の細長い部分は好ましくはバネ(342)の内部に挿入される。なお、組立て中、前部アタッチメント(304)がコネクタハウジング(302)のベース部(326)と係合されるまで、前記バネ(342)は圧縮状態に保持されることが好ましい。前部アタッチメント(304)をコネクタハウジング(302)に取り付ける前、環状流体シール(336)は、好ましくは、円筒状ボア(334)(図37)の内部に着座され、針ホルダー(338)の後方に面する表面は、好ましくは、圧縮されたバネ(342)に押圧され、シール(336)の対向部と突合せ係合される。
使用前、取外し可能な針カバー(314)(図37、37〜39)は、好ましくは、本体部(312)のノーズ部(344)(図37)と摩擦係合状態で設置される。これにより、針(340)は、鈍化又は汚染が防止され、医療デバイス(300)の使用前の取扱い時に不注意で針が突き刺さることが防止される。図示の如く、針カバー(314)は、好ましくは、前方に突出するロッキングアーム(318)を具え、該アームは、針引込みキャビティ(320)の前開口部の中で受けられ、使用前に、コネクタハウジング(302)と前部アタッチメント(304)との間で相対的摺動が起こるのが防止される。しかしながら、当業者であれば、この開示を読むことにより、使用前に、医療デバイス(300)の前部アタッチメント(304)に関するコネクタハウジング(302)の移動又は再配置を防止するために、他の有効なロッキングデバイスを使用し設けることはできるであろう。
前部アタッチメント(304)は、使用後、針引込みを開始させるために、横方向に面するテクスチャ構造の表面をさらに具えており、前記表面は、針(340)及び流体経路(354)を通じて、流体の流れ方向を横切る方向に圧力又は抵抗力を作用させるのに用いられるように構成される。このような圧力又は抵抗力は、コネクタハウジング(302)の一部に加えられた対向方向の圧力と組み合わせられると、前部アタッチメント(304)に対するコネクタハウジング(302)の横方向の再配置を容易に行なうことができ、流体経路(354)を通る流体流れが遮断され、使用後に針の引込みが開始される。コネクタハウジング(302)が前部アタッチメント(304)に関して横方向移動すると、環状シール(336)の前方に面する表面が針ホルダー(338)の後方に面する表面との係合が解除され、環状シール(336)は横方向に摺動させられ、本体部(312)の後方に面する表面と係合する。これにより、そのような再配置後におけるシリンジバレル(308)又は円筒状ボア(334)から前方へのあらゆる流体流れが遮断される。
コネクタハウジング(302)と前部アタッチメント(304)の間での相対的な横方向移動は、針(340)がシリンジバレル(306)と略同軸線上を前部アタッチメント(304)から前方に延びる第1の位置と、針が使用後、安全位置に引き込まれ、ノーズ部(344)(図37)及び本体部(312)からもはや前方への突出がない第2の位置との間での移動に制限される。針カバー(338)の後方に面するヘッド部が、前部の対向開口部と略同軸線上を針引込みチャンバー(310)の針引込みキャビティ(320)の中に移動すると、バネ(342)の後方に向かう付勢力により針ホルダー(338)は後方に向けて移動し、針引込みチャンバー(310)の閉じた後端部に入る。針引込みチャンバー(310)の後端部は、針ホルダー(338)が針引込みキャビティ(310)の内部に収容されている限り、所望によって通気が行われる。バネ(342)と針(340)は、一般的に、針引込みチャンバー(310)と前部アタッチメント(304)の本体部(312)の間のギャップに跨るので、前部アタッチメント(304)は、その後、第2の位置で保持され、使用済みの医療デバイス(300)を分解しなければ(これは許されない)第1の位置へ戻ることができない。
重要なことは、ここに開示される医療デバイスの製造及び組立は、プランジャー作動式の引込み可能な針を有する従来の医療デバイスに必要な条件と比べて、許容範囲が大きいことである。これに関連して、製造費用を低減することができるので、医療提供者及び消費者に対して、低コストで提供できる基礎となり得る。横方向に間隔をあけて存在する針引込みキャビティを有することによる他の利点は、一連の作業で、切断、破壊を必要としないことであり、従来では針引込み機構とシリンジバレルの壁との間に配置されていたリテーナー又は保持部材の使用が不要である。
ルアーコネクタ及び圧縮バネは、本発明で使用する上で満足すべきものであるが、ここに開示され、特許請求の範囲に記載された一般的パラメータを充足するものであれば、他のコネクタ及び付勢部材を用いることもできる。当業者であれば、この明細書を添付の図面と共に読むことにより、本発明について他の変更及び変形は成し得るであろう。ここに開示された発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の最も広義の解釈によってのみ制限されることが意図される。