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JP6371075B2 - フィラメント - Google Patents

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Description

本発明は、エネルギー利用効率を改善したフィラメントに関し、特に、可視光や近赤外光の放射効率を高めたフィラメントに関する。
タングステンフィラメント等に電流を流すことにより、フィラメントを加熱し、電球とする白熱電球が広く用いられている。白熱電球は、太陽光に近い演色性に優れた放射スペクトルが得られ、白熱電球の電力から光への変換効率は95%以上になるが、放射光の波長成分は、図1に示すように赤外放射光成分が90%以上である(図1の3000Kの場合)。このため、白熱電球の電力から可視光への変換効率は、凡そ15 lm/Wと低い値になる。一方、蛍光灯は、電力から可視光への変換効率が約90 lm/Wであり、白熱電球よりも大きい。このため、白熱電球は、演色性に優れているが、環境負荷が大きいという問題がある。
白熱電球を高効率化・高輝度化・長寿命化する試みとして,様々な提案がなされている。例えば、特許文献1および2には、電球内部に不活性ガスやハロゲンガスを封入することにより、蒸発したフィラメント材料をハロゲン化してフィラメントに帰還させ(ハロゲンサイクル)、フィラメント温度をより高くする構成が提案されている。一般的にこれらはハロゲンランプと呼ばれている。これにより、可視光への電力変換効率の上昇およびフィラメント寿命の延長の効果が得られる。この構成では、高効率化並びに長寿命化のために、封入ガスの成分並びに圧力の制御が重要となる。
特許文献3〜5には、電球ガラスの表面に赤外線反射コートを施し、フィラメントから放射された赤外光を反射して、フィラメントに戻し、吸収させる構成が開示されている。これにより、赤外光をフィラメントの再加熱に利用し、高効率化を図っている。
特許文献6〜9には、フィラメント自体に微細構造体を作製し,その微細構造体の物理的効果により,赤外放射を抑制し,可視光放射の割合を高めるという構成が提案されている。
非特許文献1には、黒体放射の放射率を1以上に大きくすることが出来る可能性が指摘されている。例えば,カーボン黒体の上に赤外・可視領域にて透明な屈折率の高い半球レンズ(例えば,ZnSe、屈折率n=2.4)を密着させて置くと,通常は1以上を取ることが出来ないと考えられている放射率を4以上に大きくすることが出来る実験結果が報告されている。
また、非特許文献2には、空気中にLED等の光を出射させる際の光取り出し効率を向上させるために、LEDを構成する屈折率の高い半導体薄膜よりも、高い屈折率を有する透明体を配置する技術が開示されている。
特開昭60−253146号公報 特開昭62−10854号公報 特開昭59−58752号公報 特表昭62−501109号公報 特開2000−123795号公報 特表2001−519079号公報 特開平6−5263号公報 特開平6−2167号公報 特開2006−205332号公報
Z. Yu, et al. Nature Communications, 4:1730, DOI: 10.1038 / ncomms 2765 W. N. Carr, et al., Appl. Phys. Lett. 3, 173 (1963).
しかしながら,特許文献1,2のようにハロゲンサイクルを利用する技術は、寿命延伸効果を図ることはできるが、変換効率を大きく改善することは困難であり、現状,20 lm/W程度の効率である。
また,特許文献3〜5のように、赤外放射を赤外線反射コートで反射して、フィラメントに再吸収させる技術は、フィラメントによる赤外光の反射率が70%と高いために再吸収が効率良く起こらない。また,赤外線反射コートで反射された赤外光が、フィラメント以外の他の部分,例えばフィラメント保持部分並びに口金等に吸収され,フィラメントの加熱に利用されない。このため,本技術により、変換効率を大きく改善することは困難である。現状,20 lm/W程度の効率となる。
特許文献6〜9のように微細構造により赤外放射光の抑制効果を図る技術は、非特許文献1のように赤外放射スペクトルの極一部分の波長に対して放射増強並びに抑制効果を示す報告は存在するものの、広範囲な赤外光全体に亘って赤外放射光の抑制を図ることは非常に困難である。これは、ある波長が抑制されると,別の波長は増強される性質のためである。このため、本技術を利用して大幅な効率改善を図ることは難しいと考えられている。また,微細構造作製に際して,電子ビームリソグラフィー等の高度な微細加工技術を利用するため,これを使用した光源は非常に高価なものとなる。更に,高温耐熱部材であるW基体上に微細構造を作り込んでも1000℃程度の加熱温度でW基体表面粒子の再結晶化並びに結晶粒成長がおこり,この再結晶化に伴い微細構造部分が破壊されてしまうと言う問題も存在する。
また、非特許文献1,2の技術は、光の取り出し効率を向上させる技術であるが、波長を選択して光取り出し効率を向上させることはできない。よって、赤外放射を抑制し,可視光放射や近赤外光放射の割合を高めることはできない。
本発明の目的は、電力を可視光または近赤外光に変換する効率が高いフィラメントを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明のフィラメントは、金属,半導体,または誘電体材料により形成された基体と、基体の表面に配置され、基体から放射された可視光および近赤外光のうち少なくとも一部を外部に向かって出射する光出射層とを有する。光出射層は、可視光および近赤外光に対して透明であって、可視光および近赤外光についての屈折率が基体よりも大きく,近赤外光よりも長波長の光についての屈折率は基体よりも小さい材料によって構成される。このように、光出射層と基体との間に波長依存性を有する屈折率差を持たせることによって,近赤外光よりも長波長の所定波長領域の赤外光が基体から外部へ放射されるのを抑制し、可視光および近赤外光の所定波長領域の光が基体から外部へ放射されるのを増強するように構成されている。
本発明によれば、光出射層が、近赤外光よりも長波長の所定波長領域の赤外光が基体から外部へ放射されるのを抑制し、可視光および近赤外光の所定波長領域の光が基体から外部へ放射されるのを増強する作用を有するように構成されているため、可視光放射の効率の高いフィラメントが得られる。
黒体の放射スペクトルを示すグラフ。 第1の実施形態のフィラメントの構造を示す説明図。 図2のフィラメントの基体1(Ta)と光出射層2(HfO)の屈折率の波長依存性を示すグラフ。 図2のフィラメントの放射特性を示すグラフ。 第1の実施形態のフィラメントの別の構造例を示す説明図。 図2のフィラメントの基体1(W)と光出射層2(HfO)の屈折率の波長依存性を示すグラフ。 第2の実施形態のフィラメントの構造を示す説明図。 第2の実施形態のフィラメントの2500Kの放射特性を示すグラフ。 第2の実施形態のフィラメントの3000Kの放射特性を示すグラフ。 比較例のWフィラメントの2500Kの放射特性を示すグラフ。 比較例のWフィラメントの3000Kの放射特性を示すグラフ。 各温度における第2の実施形態のフィラメントの光束効率並びに比較例のWフィラメントの光束効率を示すグラフ。 第3の実施形態のフィラメントの構造を示す説明図。
フィラメントを加熱することにより熱放射される光は、一般的に物体の放射率に依存した放射スペクトルを示すことが知られている。フィラメントが黒体の場合は,放射率がすべての放射波長に亘って最大値の1を取り,以下の式(1)に示すプランクの放射則により、図1のような放射スペクトルを示す。
Figure 0006371075
ただし,式(1)において、α=3.747×10Wμm/m,β=1.4387×10μmK,である。
本発明は、図1の放射スペクトルにおいて所定波長の放射を抑制する。そのため、本発明のフィラメントでは、金属,半導体または誘電体材料により形成された基体の表面に、基体から放射された可視光および近赤外光のうち少なくとも一部を外部に向かって出射する光出射層を配置する。光出射層は、可視光および近赤外光に対して透明であって、可視光および近赤外光についての屈折率が基体よりも大きく,近赤外光よりも長波長の光についての屈折率は基体よりも小さい材料によって構成される。
このように、光出射層と基体との間に波長依存性を有する屈折率差を持たせることによって,近赤外光よりも長波長の所定波長領域の赤外光が基体から外部へ放射されるのを抑制し、可視光および近赤外光の所定波長領域の光が基体から外部へ放射されるのを増強されるように構成されている。よって、光出射層放射光のうち可視光および近赤外光のうちの所定波長の光の割合が高まり、可視光または近赤外光の放射効率を高めることができる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、所定波長領域の可視光が基体から外部へ放射されるのを増強すると同時に所定波長領域の赤外光が基体から外部へ放射されるのを抑制する構造をスネルの法則を利用して実現する。光出射層は、可視光および近赤外光に対して透明であって、可視光および近赤外光についての屈折率が基体よりも大きく,近赤外光よりも長波長の光についての屈折率は基体よりも小さい材料によって構成される。このような構成においては,スネルの法則により、可視光および近赤外光については,可視光および近赤外光が基体と光出射層の界面で透過する割合が高まる一方,近赤外光よりも長波長の赤外光が基体と光出射層の界面で全反射される割合が高まるため、相対的に可視放射を増強し赤外放射を抑制することができる。
具体的には、図2のように基体1の上に光出射層2を配置する。光出射層2の屈折率は、一例を図3に示すように、可視光領域および近赤外光のうち少なくとも一部の波長領域の光30について、基体1の屈折率より大きく、所定波長領域の赤外光31について基体1の屈折率よりも小さくなるようにする。また、光出射層2の外部との界面2aは、図2のように外部に向かって凸の曲面となるように形成する。凸の曲面の形状は、ドーム形状(例えば、半球)であることが好ましい。
光出射層2と基体1の屈折率が上記の関係になるように光出射層2および基体1の材料をそれぞれ選択することにより、式(2)に示すスネルの法則により、基体1から放射された所定波長領域の赤外光31は、基体1よりも光出射層2の屈折率が小さいと感じるため、基体1と光出射層2と境界1aにおいて臨界角θc以上で全反射が生じる。一方、基体1から放射された可視光および近赤外光の波長領域の光30は、基体1よりも光出射層2の屈折率が大きいと感じるため、境界1aにおいて臨界角θcが90°以上となり,可視光および近赤外光の波長領域の光30の略全ての光が外部に取り出される。
sin(θ1)=(n2/n1)・sin(θ2) ・・・(2)
ただし、θ1は、基体1から出射された光が境界1aに入射する角度、θ2は、境界1aから光出射層2に出射する角度である。n1は、基体1の屈折率、n2は、光出射層の屈折率である。
よって、基体1と光出射層2との境界1aにおいて、可視光および近赤外光の波長領域の光30(図3の例では、0.4〜2μmの光)は、全反射されることなく通過することができるのに対し、所定波長領域の赤外光31(2μmより長波長の光)は、θ2が90度以上となるθ1の角度(臨界角θc)以上で境界1aに入射するとすべて全反射される。よって、光出射層2に入射する赤外光31の割合を抑制することができ、可視光および近赤外光の波長領域の光30の割合を増加させることができる。
また、光出射層2と外部との界面2aは、凸の曲面に形成されているので、光出射層2よりも外部の屈折率が小さくとも、凸の曲面を臨界角以下の角度(局面に垂直に近い角度)で通過することができる。よって、凸曲面の界面2aの形状の効果により、光出射層2を通過する光を高効率で外部に放射することができる。
すなわち、本実施形態では、屈折率の大きなレンズ(光出射層2)を配置することによって,基体1の屈折率が外部よりも大きい為に基体1の内側に閉じ込められていた光を、レンズ(光出射層2)により取り出すことが可能となる。
なお、可視光領域および近赤外光の少なくとも一部の波長領域の光30について、基体1の屈折率より大きく、所定波長領域の赤外光31について基体1の屈折率よりも小さい光出射層2は、一部の金属(Ta金属等)が,屈折率に大きな波長依存性を有することを利用することにより実現できる。
例えば、基体1をTaで形成し、光出射層をHfOで形成することにより実現することができる。これらの材料の屈折率の波長依存性は、図3に示した通りである。
基体1をTaで、光出射層2を半球形状のHfOで形成したフィラメントの2500Kに加熱した場合の放射特性をシミュレーションで求めた結果を図4に示す。比較例として、黒体およびTa基体1のみの放射特性もそれぞれ示す。
図4のように、本実施形態のフィラメントは、Ta基体1のみを2500Kに加熱した場合よりも、赤外光領域の放射が抑制されている。これにより、全放射光に対して可視光領域の放射光の割合が高くなっており、可視光の放射効率が高くなっていることが確認できる。
なお、光出射層2の形状としては、一つのドーム形状でなくてもよい。例えば図5のように、基体1の表面に、複数のドーム形状を隙間なく配列した光出射層2を配置した構造にすることができる。これにより、光出射層2の厚さを抑制しながら、基体1の全体をドーム形状の光出射層2で覆うことができる。
図5の構造のフィラメントの製造方法の一例を説明する。まず、熱処理により再結晶化させたTa基板を鏡面研磨し,基体1を作製する。その上に、HfO膜を気相成長法等により数μmを堆積させる。これを、2000K程度の温度で熱処理すると、HfO層が自発的に凝縮し,図5に示すように直径5μm程度のドーム形状をTa基体1の表面全体に隙間なく配置された光出射層2を形成することができる。
なお、本発明は、TaとHfO材料の組み合わせに限定されるものではなく、上記した屈折率の関係を満たし、かつ、フィラメントの放射時の高温に耐えられる材料(高温耐熱誘電体)であれば、他の材料を用いることができる。例えば、基体1をWで、光出射層2をHfOで形成することも可能である。この場合、図6に屈折率の波長依存性を示したように、近赤外光(波長1.5〜4.5μm)の波長領域の光30は、基体1よりも光出射層2の屈折率を大きく感じるため、全反射されることなく境界1aを通過するのに対し、赤外光31(4.5μmより長波長の光)は、基体1よりも光出射層2の屈折率を小さく感じるため、臨界角以上で入射すると全反射される。よって、波長4.5μmより大きい赤外光31の割合を抑制し、近赤外光(1.5〜4.5μm)の波長領域の光30の割合を増加させることができるフィラメントを提供できる。
第1の実施形態のフィラメントの基体1の材料および光出射層2の材料は、上述した材料に限定されるものではない。例えば、基体1を構成する材料としては、Ta,Os,Ir,Mo,Re,W,Ru、Nb,Cr,Zr,V,Rh,C,BC,SiC,ZrC,TaC,HfC,AlN,BN,ZrN,HfN,TiN,LaB,ZrB,HfB,のうちのいずれか、またはこれらの合金を用いることができる。
光出射層2は、2000K以上の融点を有する金属膜,金属の炭化物膜、窒化物膜,ホウ化物膜、酸化物膜、のいずれかであって、基体1の屈折率の関係が、上述した関係を満たすものを、選択して用いることができる。例えば、Ta,Os,Ir,Mo,Re,W,Ru、Nb,Cr,Zr,V,Rh,C,BC,SiC,ZrC,TaC,HfC,AlN,BN,TiN,ZrN,HfN,LaB,ZrB,HfB,SiO,TiO,Ta,Al,CaO,CeO,MgO,ZrO、Y、HfO、Lu、Yb、ThO,ZnS,ZnO,ZnSeのいずれかまたはこれらの混合体で形成された膜のうちから選択して用いることができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、基体1または光出射層2の屈折率の波長依存性を利用せず、光出射層2の形状の効果により、赤外光の放射を抑制する。
具体的には、図7のように、光出射層2の外部との界面2aに、所定の波長よりも波長の大きい赤外光を散乱させず、所定波長以下の光を散乱する凹凸で形成された光散乱構造20が備えられている。なお、基材1の光を光出射層2に取り出すために、光出射層2の屈折率は、放射効率を向上させたい波長(例えば、可視光領域や近赤外領域)において基体2の屈折率よりも大きいことが望ましい。
光散乱構造20の凹凸の大きさを、抑制したい赤外光の波長に応じて設定することにより、抑制したい赤外光波長よりも小さい波長の光30は、凹凸構造で散乱される。散乱された光30は、光出射層2から外部に出射される。一方、抑制したい波長よりも波長が長い赤外光31は、その波長に対して凹凸が小さいために凹凸を感じず、界面2aを鏡面に感じる。よって、赤外光31は、臨界角以上で入射すると界面2aで全反射される。これにより、所定の波長領域の赤外光の放射を抑制し、それよりも波長が短い可視光や近赤外光が放射される割合を高めることができる。なお、凹凸構造の作製は,太陽電池技術分野における,光トラッピングのためのテクスチャー構造作製並びにフォトニック結晶作製技術分野におけるナノ構造作製技術等の公知の技術を用いることができる。
凹凸の具体的な大きさは,凡そ、抑制したい赤外波長の1/(4n)程度に設定する。ただし、nは、光出射層の屈折率である。例えば、500nm中心とする可視波長を効果的に放射させる場合、光出射層2の屈折率を2とすると,凡そ50〜60nmの高さおよび周期の凹凸構造体を界面2aに設ければよい。このような光散乱構造を形成することによって,基体1から可視光領域の放射は,界面2aにおいて略全方位に放射される。一方,長波長の赤外放射は,ナノ構造光散乱体を鏡面と感じてしまうので,臨界角度以上の放射は全反射される。これにより、赤外放射が抑制される。例えば、光出射層2の屈折率を2とすると,外部(空気)との界面2aにおける赤外光の全反射の臨界角は30°となる。よって、臨界角を用いて、立体角計算より赤外光が抑制される比率を計算により求めると、赤外光は、高屈折率膜を付与しない状態と比較して,その放射が0.134倍に抑制される。一方、可視放射は、散乱によりほぼ全て放射される。
なお、基体1の表面には、所定の波長よりも長波長の赤外光の反射を抑制する凹凸構造21が備えられていることが望ましい。その理由は、光出射層2の外部との界面2aで全反射された所定の波長よりも長波長の赤外光31は、基板1に向かう。ここで、基板1と光出射層2との境界1aで再び反射されると、界面2aと境界1aとの反射を繰り返し、光出射層2内を伝搬して、端面から出射される。これにより、フィラメントの放射効率が低下する恐れがある。そこで、基体1の表面に所定の波長よりも長波長の赤外光の反射を抑制する凹凸構造21を設け、赤外光31の再反射を防止し、赤外光31が基板1に再吸収させる。これにより、赤外光31は、基体1に吸収されて基体1を加熱し、放射に利用されるため、より一層の効率向上効果を期待することが出来る。
なお、基体1の表面の凹凸構造21は、あまり密度高く形成しないようにすることが望ましく、例えば、面積比で10%以下であることが望ましい。というのは、基体1の表面の凹凸構造21の密度が高いと、光出射層2の外部との界面2aで反射されやすいS偏光のみならずP偏光の赤外光も基体1から放射されるようになり,光出射層2の界面2aからP偏光の赤外光が外部に出射されやすくなるためである。
基体1をWにより形成し、光出射層2をHfOにより形成し、光散乱構造20として凡そ50〜60nmの高さおよび周期の凹凸構造体を光出射層2の表面に形成したフィラメントを、2500K、3000Kに加熱した場合の放射特性をシミュレーションで求めた。その結果を図8、図9にそれぞれ示す。また、比較例として、W基体1のみを2500K、3000Kに加熱した場合の放射特性をシミュレーションで求めた。その結果を図10、図11にそれぞれ示す。
比較例のWフィラメントの放射効率は、図10,図11に示すように,2500Kの温度では12.2 lm/W,3000Kの温度では29.3 lm/Wである。これに対し、本実施形態のフィラメントは、図8、図9に示すように、比較例の倍以上の放射効率,具体的には、2500Kの温度では37.9 lm/W,3000Kの温度では73.9 lm/Wの放射効率を得られることがわかる。
また、屈折率2の高屈折率膜を5μm程度の厚さでWフィラメント上に成膜し,本高屈折率膜表面に凡そ50〜60nmの高さおよび周期の凹凸構造体を形成した本実施形態のフィラメントについて、各加熱温度における放射効率をシミュレーションにより求めた。その結果を図12に示す。図12には、比較例としてのWフィラメント単体での放射効率も示されている。図12より、本実施形態のフィラメントは、比較例のWフィラメント単体よりも各温度において放射効率が高いことがわかる。
第2の実施形態のフィラメントの基体1の材料および光出射層2の材料は、上述した材料に限定されるものではない。例えば、基体1を構成する材料としては、Ta,Os,Ir,Mo,Re,W,Ru、Nb,Cr,Zr,V,Rh,C,BC,SiC,ZrC,TaC,HfC,AlN,BN,ZrN,HfN,TiN,LaB,ZrB,HfB,のうちのいずれか、またはこれらの合金を用いることができる。
また,光出射層2は、2000K以上の融点を有する金属膜,金属の炭化物膜、窒化物膜,ホウ化物膜、酸化物膜、のいずれかで形成することも可能である。例えば、Ta,Os,Ir,Mo,Re,W,Ru、Nb,Cr,Zr,V,Rh,C,BC,SiC,ZrC,TaC,HfC,AlN,BN,TiN,ZrN,HfN,LaB,ZrB,HfB,SiO,TiO,Ta,Al,CaO,CeO,MgO,ZrO、Y、HfO、Lu、Yb、ThO,ZnS,ZnO,ZnSeのいずれかまたはこれらの混合体で形成された膜のうちから、選択して用いることができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第2の実施形態のフィラメントに対して更なる効率向上を図るために,図13で示すように,赤外反射多層膜130を基体1と光出射層2の間に挿入し,0°方向(垂直方向)に出射される赤外光の放射も抑制するようにする。赤外反射多層膜130は、基体1から放射される赤外光のうち、0°方向を中心とした所定の出射角範囲の赤外光を反射して基体1に戻す。0°方向を中心とした所定の出射角範囲の赤外光は、光出射層2によるスネルの法則の作用では抑制出来ないためである。これによりこの出射角範囲の赤外光放射を抑制する。光出射層2の構成は、第2の実施形態と同様であり、光出射層2の外部との界面2aに、所定の波長よりも波長の大きい赤外光を散乱させず、所定波長以下の光を散乱する凹凸で形成された光散乱構造が備えられている。なお、図13では、光散乱構造の図示を省略している。
赤外反射多層膜130は、反射率の角度依存性が大きく、基体1からの出射角が30°以上になると、赤外反射多層膜130の反射率が急激に低下し,赤外光が光出射層2に漏れ出す。大きな角度で赤外反射多層膜130から漏れ出した赤外光は、光出射層2と外部の界面2aにおいて、実施例2で記載したようにスネルの法則に基づいて反射される。よって、第3の実施形態では、全方位において赤外光を抑制することが出来,より一層の効率向上効果を期待することが出来る。
赤外光反射多層膜130は、いずれも赤外光を透過する材料、例えば高耐熱性誘電体層でそれぞれ構成された第1の層および第2の層の組を少なくともひと組含むように構成する。第1の層の屈折率をn1、厚さをd1、第2の層の屈折率をn2、厚さをd2とする赤外光の所定の波長λに対して、式(3)を満たす。
n1・d1=n2・d2=λ/4 ・・・(3)
このように屈折率の異なる2種類の層を積層することにより、光の干渉を利用して、所定の波長λ1を中心波長とする所定の波長範囲の赤外光の反射率を高めることができる。
本実施形態では、広い波長範囲の赤外光を反射するため、赤外光反射多層膜130は、2種類の層の組を複数組積層した構成としている。それぞれの組の反射の中心波長λを異ならせ、積層された各組でそれぞれ少しずつ異なる波長の赤外光を反射させることにより、赤外光反射膜全体として広い波長範囲の赤外光を反射することができる。第1の層と第2の層の屈折率差が大きいほど、反射できる波長幅が大きくなるため、反射したい波長幅に応じて第1の層と第2の層の材料を選択する。
例えば、第1の層を低屈折率SiO層とし、第2の層22を高屈折率ZrO層とする。2500 Kの温度における黒体からの放射は、1200 nm程度の赤外波長においてピークを有するので、このピーク周辺の波長を選択し,この波長帯において、赤外光反射多層膜130の反射を高めるように設計することができる。第1の層および第2の層の組の数を26組,合計52層積層し、例えば,SiO層の膜厚を200 nmから50 nmまで,また,ZrO層の膜厚を180 nmから30 nmまで組ごとに徐々に異なる値に設計することにより、中心波長λ1〜λ26=1〜4μmの範囲で良好な赤外線反射特性を得ることができる。
赤外反射多層膜130を構成する低屈折率材料としては,SiOの他に,MgO,MgF,Al等の高温耐熱性低屈折率材料を利用することが出来る。また,高屈折率材料としては,ZrOの他に,Ta,TiO,HfO,等の酸化物系材料,ダイヤモンド,SiC等の炭化物系材料,BN,GaN等の窒化物系材料を利用することが出来る。
W基体の上に赤外反射多層膜130を配置し、その上に、5μm程度の厚さの屈折率2の高屈折率膜を配置したフィラメントについて各加熱温度における放射効率をシミュレーションにより求めた。なお、高屈折率膜の表面には、凡そ50〜60nmの高さおよび周期の凹凸構造体が形成されている。その結果、図12と同様の放射効率が得られた。
上述してきた各実施形態のフィラメントは、赤外放射を抑制して、可視光および/または近赤外光の放射効率を高めることができるため、高効率な、近赤外光ヒーター,並びに、可視光光源として用いることができる。よって、照明用光源,自動車用電球,プロジェクター用光源,液晶バックライト光源,近赤外ヒーターとして用いることが可能である。
1…基体、1a…境界、2…光出射層、2a…界面

Claims (2)

  1. 金属、半導体、または誘電体材料により形成された基体と、
    前記基体の表面に配置され、前記基体から放射された光の一部の波長を外部に向かって出射する光出射層とを有し、
    前記光出射層の屈折率は、可視光領域および近赤外光のうち少なくとも一部の波長領域について前記基体の屈折率より大きく、所定波長領域の赤外光について前記基体の屈折率よりも小さく、前記基体と光出射層との屈折率の大小関係によって前記所定波長領域の赤外光が前記基体から外部へ放射されるのを抑制することにより、前記可視光領域および近赤外光のうち少なくとも一部の波長領域の光が前記基体から外部へ放射されるのを増強し、前記光出射層の外部との界面は、外部に向かって凸のドーム状の曲面であり、
    前記基体の表面は、前記基体の外部から前記基体の内部へ入射する前記所定波長領域の赤外光の反射を抑制する凹凸構造を備えた
    ことを特徴とするフィラメント。
  2. 金属、半導体、または誘電体材料により形成された基体と、
    前記基体の表面に配置され、前記基体から放射された可視光および近赤外光のうち少なくとも一部を外部に向かって出射する光出射層とを有し、
    前記光出射層は、可視光および近赤外光に対して透明であって、前記光出射層の屈折率は、可視光領域および近赤外光のうち少なくとも一部の波長領域について前記基体の屈折率より大きく、近赤外光よりも長波長の所定波長領域の赤外光について前記基体の屈折率よりも小さい材料によって構成され、前記所定波長領域の赤外光が前記基体から外部へ放射されるのを抑制することにより、可視光領域および近赤外光のうち少なくとも一部の波長領域の光が前記基体から外部へ放射されるのを増強し、前記光出射層の外部との界面は、外部に向かって凸のドーム状の曲面であり、
    前記基体の表面は、前記基体の外部から前記基体の内部へ入射する前記所定波長領域の赤外光の反射を抑制する凹凸構造を備えた
    ことを特徴とするフィラメント。
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