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JP6353751B2 - 新規複素環式化合物及びその塩、並びに、発光基質組成物 - Google Patents

新規複素環式化合物及びその塩、並びに、発光基質組成物 Download PDF

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JP6353751B2 JP2014189314A JP2014189314A JP6353751B2 JP 6353751 B2 JP6353751 B2 JP 6353751B2 JP 2014189314 A JP2014189314 A JP 2014189314A JP 2014189314 A JP2014189314 A JP 2014189314A JP 6353751 B2 JP6353751 B2 JP 6353751B2
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Description

本発明は、新規複素環式化合物及びその塩、並びに、発光基質組成物に関し、特には、pHが中性付近の緩衝液への溶解性に優れ、ホタル生物発光系における発光基質として利用可能な複素環式化合物に関するものである。
生物発光系の中でも、ホタルの発光系は、発光効率に優れた系として知られている。該ホタルの発光系においては、発光基質であるホタルルシフェリンが、発光酵素のホタルルシフェラーゼと、アデノシン三リン酸(ATP)及びマグネシウムイオン(Mg2+)の存在下、励起状態のオキシルシフェリンに変換され、該オキシルシフェリンが基底状態へと失活する際に波長が約560nmの黄緑色の蛍光が発せられる。
また、昨今、かかるホタルの発光系の発光基質の類似体として、多彩な発光波長を実現する化合物が合成されている。例えば、下記特許文献1には、ホタルルシフェリンのフェノール性水酸基を2級又は3級アミノ基で置換したルシフェリン誘導体が開示されている。また、下記特許文献2及び3には、ホタルルシフェリンと類似の分子構造を有するルシフェラーゼの発光基質が開示されている。
これらのホタルルシフェリン類似体の中でも、長波長の光を発する発光基質は、長波長光は生体内での透過率が高いため、生体内深部の病巣を可視化するための標識材料として有望であり、例えば、和光純薬工業株式会社から商品名「アカルミネ」として、長波長光を発するホタルルシフェリン類似体が市販されている。
特開2007−91695号公報 特開2009−184932号公報 国際公開第2013/027770号
しかしながら、上記ホタル発光系の発光基質類似体は、多彩な発光波長を実現できるものの、水溶性が低く、特に、生体内深部の可視化に有用な長波長光を発する発光基質で顕著である。一般に、マウスやラット等の実験動物の生体内への投与においては、発光基質は1〜15mg/ml程度の溶解度を有することが必要であるが、上記の長波長光を発する発光基質は、水への溶解度が約0.1mg/mlであり、実用性に問題が有った。
これに対して、本発明者らは、特定の分子構造を有し、ホタル生物発光系における発光基質として機能する水に難溶性の発光基質を、ハロゲン化水素で塩化することで、ホタル生物発光系における発光能を保持しつつ、水溶性が大幅に向上することを見出している。
しかしながら、上記水に難溶性の発光基質のハロゲン化水素塩は、生体内への投与のために、pHが中性付近の緩衝液に添加すると、水に難溶性の発光基質が析出してしまうという問題があった。また、上記水に難溶性の発光基質のハロゲン化水素塩をpHが約2の酸性溶液として、実験動物の生体内へ投与すると、生体内の細胞が適切に活動するためにpHが7.4前後で調節されている血液(細胞外液)のバランスが崩れる等の問題があり、実験動物への投与は可能であるが好ましくない。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、pHが中性付近の緩衝液への溶解性に優れ、ホタル生物発光系における発光基質として利用可能な新規化合物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の複素環を有する化合物が、ホタル生物発光系における発光基質として機能する上、pHが中性付近の緩衝液への溶解性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明によれば、下記一般式(I):
Figure 0006353751
[式中、R1は、−H、又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は、−OH、−NH2、又は−N(CH32であり、R3は、−N=、−CH=、又は−CR4=で、ここで、R4は−CH2CH=CH2であり、但し、1つ以上のR3は−N=であり、nは0〜3の整数である]で表される複素環式化合物が提供され、該複素環式化合物は、pHが中性付近の緩衝液への溶解性に優れ、また、ホタル生物発光系における発光基質として機能する。
本発明の複素環式化合物の好適例においては、前記一般式(I)中のR1が−Hである。この場合、複素環式化合物の発光効率及びpHが中性付近の緩衝液への溶解性が更に良好である。
本発明の複素環式化合物の他の好適例においては、前記一般式(I)中のR2が−N(CH32である。この場合、複素環式化合物の発光効率が更に優れる。
本発明の複素環式化合物の中でも、下記化学式(II)、(III)又は(IV):
Figure 0006353751
で表される化合物が好ましく、上記化学式(III)又は(IV)で表わされる化合物が特に好ましい。上記化学式(II)、(III)又は(IV)で表される複素環式化合物は、pHが中性付近の緩衝液への溶解性、発光効率、生体内深部の可視化、入手容易性が特に優れ、また、上記化学式(III)で表わされる化合物は、pHが中性付近の緩衝液への溶解性が非常に高い上、発光波長が長く、生体内深部の可視化に特に有用であり、また、上記化学式(IV)で表わされる化合物は、pHが中性付近の緩衝液への溶解性が極めて高い。
また、本発明によれば、前記複素環式化合物の塩が提供され、該塩も、pHが中性付近の緩衝液への溶解性に優れ、ホタル生物発光系における発光基質として機能する。
また、本発明によれば、前記複素環式化合物又は塩を含む発光基質組成物が提供され、該発光基質組成物は、pHが中性付近でも安定であり、発光酵素のホタルルシフェラーゼと共にホタル生物発光系を構成できる。
本発明によれば、pHが中性付近の緩衝液への溶解性に優れ、ホタル生物発光系における発光基質として利用可能な新規化合物を提供することができる。
天然ホタルルシフェリン、アカルミネ及びピリジン環含有発光基質(7)の発光経時変化を示す。 天然ホタルルシフェリン、アカルミネ及びピリジン環含有発光基質(17)の発光経時変化を示す。 天然ホタルルシフェリン、アカルミネ及びピラジン環含有発光基質(27)の発光経時変化を示す。 天然ホタルルシフェリン、アカルミネ及びピリジン環含有発光基質(7)の発光スペクトルを示す。 天然ホタルルシフェリン、アカルミネ及びピリジン環含有発光基質(17)の発光スペクトルを示す。 天然ホタルルシフェリン、アカルミネ及びピラジン環含有発光基質(27)の発光スペクトルを示す。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の複素環式化合物は、上記一般式(I)で表される。本発明の複素環式化合物は、ジヒドロチアゾール環に加えて、複素環をもう一つ有し、該複素環は、ベンゼン環よりも極性が高い。そのため、本発明の複素環式化合物は、水溶性が高く、また、pHが中性付近(好ましくはpHが4〜10、より好ましくはpHが6〜8)の緩衝液への溶解性に優れる。また、本発明の複素環式化合物は、分子構造がホタルルシフェリンと類似しているため、ホタル生物発光系における発光基質として利用できる。
<一般式(I)で表される複素環式化合物>
上記一般式(I)中、R1は、−H(水素)又は炭素数1〜3のアルキル基である。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基が挙げられる。なお、R1としては、発光効率及びpHが中性付近の緩衝液への溶解性の観点から、−Hが好ましい。
上記一般式(I)中、R2は、−OH(ヒドロキシ基)、−NH2(アミノ基)、又は−N(CH32(ジメチルアミノ基)である。なお、R2としては、発光効率の観点から、−N(CH32が好ましい。
また、上記一般式(I)中、R3は、−N=、−CH=、又は−CR4=で、ここで、R4は−CH2CH=CH2(アリル基)であり、但し、1つ以上のR3は−N=である。なお、本発明においては、合成の容易性の観点から、4つのR3の内、1つが−N=で、3つが−CH=であることが好ましく、即ち、本発明の複素環式化合物は、ピリジン環を有することが好ましい。また、本発明においては、pHが中性付近の緩衝液への溶解性の観点から、4つのR3の内、2つが−N=で、2つが−CH=であることが好ましく、即ち、本発明の複素環式化合物は、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環を有することも好ましく、ピラジン環を有することが更に好ましい。
上記一般式(I)中、nはビニレン単位(−CH=CH−)の繰り返し数を示し、0〜3の整数である。nの数が大きい程、発光波長が長くなるため、生体内深部の可視化の観点から、nは2又は3であることが好ましく、入手容易性の観点から、nは2であることが好ましい。
上記一般式(I)で表される複素環式化合物は、特に限定されるものではないが、以下のようにして合成することができる。例えば、出発物質として2−アミノ−5−シアノピリジン、5−アミノ−2−シアノピリジン等のシアノピリジン誘導体を使用し、所望により、ヨードメタンと反応させて、ジメチルアミノ体を得、次いで、水素化ジイソブチルアミニウムと反応させて、アルデヒド体を生成させる。或いは、出発物質として2−アミノ−5−ブロモ−ピラジン等のブロモピラジン誘導体を使用し、所望により、ヨードメタンと反応させて、ジメチルアミノ体を得、次いで、ノルマルブチルリチウム等のアルキルリチウムと反応させた後、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド化合物と反応させて、アルデヒド体を生成させる。次いで、該アルデヒド体を4−ホスホノクロトン酸トリエチルと反応させてエチルエステル体を得、次いで、該エチルエステル体を水酸化ナトリウム水溶液中でカルボキシル体に変換する。一方、D−システイン−S−トリチル化合物を塩化水素、1,4−ジオキサン溶液存在下、メタノール溶液中で反応させて、メチルエステル体を準備し、次いで、該メチルエステル体と前記カルボキシル体とを反応させて、アミド体を生成させる。次いで、該アミド体をトリフルオロ酢酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物等の酸無水物によって環化させて複素環を生成させ、チアゾリン体を得る。次いで、所望により、チアゾリン体のメチルエステル部分を加水分解して、チアゾリン環を有するカルボキシル体を得る。また、出発物質を適宜変更したり、種々の置換基を導入したりする等して、或いは、他の合成経路を利用して、所望の複素環式化合物を得ることができる。
上述した一般式(I)で表される複素環式化合物の中でも、pHが中性付近の緩衝液への溶解性、発光効率、生体内深部の可視化、入手容易性の観点から、上記化学式(II)、(III)又は(IV)で表される複素環式化合物が好ましく、化学式(III)又は(IV)で表わされる化合物が特に好ましい。なお、上記化学式(III)で表わされる化合物は、pHが中性付近の緩衝液への溶解性が非常に高い上、発光波長が長く、生体内深部の可視化に特に有用である。また、上記化学式(IV)で表わされる化合物は、pHが中性付近の緩衝液への溶解性が極めて高い。
<一般式(I)で表される複素環式化合物の塩>
上記一般式(I)で表される複素環式化合物は、塩とすることもできる。ここで、本発明の複素環式化合物の塩は、酸との付加塩でも、塩基との付加塩でもよい。例えば、本発明の複素環式化合物と酸との付加塩における酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、亜リン酸、亜硝酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、安息香酸、マンデル酸、ケイ皮酸、パモ酸、ステアリン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、コハク酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられ、また、酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、スルファミン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、亜リン酸塩、亜硝酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、安息香酸塩、マンデル酸塩、ケイ皮酸塩、パモ酸塩、ステアリン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンジスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、トリフルオロ酢酸塩等が挙げられる。一方、本発明の複素環式化合物と塩基との付加塩における塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、また、塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
上記一般式(I)で表される複素環式化合物の塩も、pHが中性付近の緩衝液への溶解性に優れ、ホタル生物発光系における発光基質として機能する。上述のように、上記一般式(I)で表される複素環式化合物はpHが中性付近の緩衝液への溶解性に優れるため、上記一般式(I)で表される複素環式化合物の塩をpHが中性付近の緩衝液に溶解させても、上記一般式(I)で表される複素環式化合物の析出を抑制することができる。
<発光基質組成物>
本発明の発光基質組成物は、上述した一般式(I)で表される複素環式化合物又はその塩を含み、上述した一般式(I)で表される複素環式化合物又はその塩のみからなってもよい。本発明の発光基質組成物は、pHが中性付近でも、上記一般式(I)で表される複素環式化合物の析出が抑制されているため、安定であり、また、発光酵素のホタルルシフェラーゼと共にホタル生物発光系を構成できる。
上述した本発明の複素環式化合物及びその塩は、発光甲虫ルシフェラーゼ、アデノシン三リン酸(ATP)及びマグネシウムイオン(Mg2+)の存在する系に添加することによって、発光甲虫ルシフェラーゼにより酸化して発光する。なお、本発明の複素環式化合物及びその塩は、ATP及びMg2+と共に発光検出キット(発光基質組成物)として提供することもでき、また、該発光検出キットには、他の発光基質や適切なpHに調整した溶液を含めてもよい。
本発明の複素環式化合物及びその塩を発光系に応用する場合、好適な発光強度を得るためには、本発明の複素環式化合物及びその塩を1μM以上の濃度で使用することが好ましく、5μM以上の濃度で使用することが更に好ましい。即ち、本発明の発光基質組成物は、上述した一般式(I)で表される複素環式化合物又はその塩を1μM以上の濃度で含むことが好ましく、5μM以上の濃度で含むことが更に好ましい。また、本発明の発光基質組成物のpH、並びに、発光系のpHは、好ましくは4〜10、より好ましくは6〜8であり、必要に応じて、pHを安定化するために、リン酸カリウム、トリス塩酸、グリシン、HEPES等の緩衝剤を含んでもよい。
また、本発明の複素環式化合物及びその塩は、ホタル発光甲虫ルシフェラーゼ発光系において、種々の酸化酵素によって発光させることができる。ルシフェラーゼは、北アメリカ産ホタル(Photinus pyralis)、鉄道虫(Railroad worm)等から単離されており、いずれも使用できる。また、使用可能な酸化酵素としては、ヒカリコメツキムシルシフェラーゼ、イリオモテボタルルシフェラーゼ、フラビン含有モノオキシゲナーゼ等も挙げられる。
本発明の複素環式化合物及びその塩を発光基質とする生物発光は、発光系にコエンザイムA(CoA)、ピロリン酸又はマグネシウムイオン(Mg2+)が存在すると、その発光が増強される。これらの化合物の発光増強効果は、発光系におけるCoA、ピロリン酸又はMg2+の濃度がそれぞれ5μM以上において顕著であり、濃度の増加にしたがって発光が増強される。
ホタル生物発光系を測定/検出に使用するためには、酵素の失活を防止してプラトーな発光挙動を示すように、発光を安定化させることが好ましく、例えば、発光系にマグネシウムイオンを存在させることが好ましく、マグネシウムイオンとピロリン酸を共存させることが更に好ましい。なお、マグネシウムイオン単独の場合、発光安定化の観点から、発光系のマグネシウムイオン濃度は、0.5mM以上が好ましく、濃度の増加に従って発光の安定性が向上する。また、ピロリン酸マグネシウムを使用する場合、発光安定化の観点から、発光系のピロリン酸マグネシウム濃度は、10μM以上が好ましく、100μM以上が更に好ましい。なお、ピロリン酸とマグネシウムイオンとの割合は、当量比でなくてもよい。また、好適なマグネシウム塩としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機酸塩、酢酸マグネシウム等の有機酸塩が挙げられる。また、好適なピロリン酸塩として、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のピロリン酸塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属のピロリン酸塩、鉄のピロリン酸塩が挙げられる。
本発明の複素環式化合物及びその塩は、生物学的測定/検出における発光標識として利用でき、例えば、アミノ酸、ポリペプチド、タンパク質、核酸等を標識するために使用できる。なお、本発明の複素環式化合物又はその塩をこれらの物質に結合させる方法は、当業者に周知であり、例えば、当業者に周知の方法を使用して、目的の物質のカルボキシル基やアミノ基に対して本発明の複素環式化合物又はその塩を結合させることができる。
また、本発明の複素環式化合物及びその塩は、発光基質の発光によって発光甲虫ルシフェラーゼ活性を検出することを利用した測定/検出に利用することができる。例えば、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞又は動物に対して本発明の複素環式化合物又はその塩を投与することにより、インビボにおける標的遺伝子又はタンパク質の発現などを測定/検出することができる。なお、波長の長い光は、光透過性が高く、組織透過性も高い。従って、本発明の複素環式化合物及びその塩の中でも、長波長の発光を有する複素環式化合物及びその塩は、生体内深部を可視化するための標識材料として有用である。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(1)機器分析及び測定装置
1H核磁気共鳴スペクトル(1H NMR)
日本電子社製ECA500(500MHz)を使用して測定し、“1H NMR(測定周波数,測定溶媒):ケミカルシフト値(水素の数,多重度,スピン結合定数)”と記載した。ケミカルシフト値(δ)はテトラメチルシラン(δ=0)を内部基準とし、ppmで表記した。多重度は、s(単一線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、m(多重線あるいは複雑に重なったシグナル)で表示し、幅広いシグナルについては、brと付記した。スピン結合定数(J)は、Hzで記載した。
13C核磁気共鳴スペクトル(13C NMR)
日本電子社製ECA 500(125MHz)を使用して測定し、“13C NMR(測定周波数,測定溶媒):ケミカルシフト値(多重度)”と記載した。ケミカルシフト値(δ)はテトラメチルシラン(δ=0)を内部基準とし、ppmで表記した。多重度は、s(単一線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、m(多重線あるいは複雑に重なったシグナル)で表示した。
・質量スペクトル(MS):電子衝撃法(EI)
日本電子社製JMS−600H型質量分析計を用い、電子衝撃法(EI、イオン化エネルギー:70eV)により測定した。“MS(EI)m/z 質量数(相対強度)”と記載した。
・質量スペクトル(MS):エレクトロンスプレーイオン法(ESI)
日本電子社製JMS−T100LC型TOF質量分析計AccuTOFを用い、エレクトロンスプレーイオン化法(ESI)により測定した。なお、装置の設定は、脱溶媒ガス250℃、オリフィス1温度80℃、ニードル電圧2000V、リングレンズ電圧10V、オリフィス1電圧85V、オリフィス2電圧5Vとした。サンプル送液は、インフュージョン法で行い、流速30μl/minとした。“MS(ESI)m/z 質量数(M+付加イオン)”と記載した。
(2)クロマトグラフィー
・分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)
E.Merck社製のTLCプレート、シリカゲル60F254(Art.5715)厚さ0.25mmを使用した。TLC上の化合物の検出はUV照射(254nm又は365nm)及び発色剤に浸した後に加熱して発色させることによって行った。発色剤としてはp−アニスアルデヒド(9.3ml)と酢酸(3.8ml)をエタノール(340ml)に溶解し、濃硫酸(12.5ml)を添加したものを使用した。
・分取用薄層クロマトグラフィー(PTLC)
E.Merck社製のTLCプレート、シリカゲル60F254(Art.5744)厚さ0.5mmを用いるか、又はE.Merck社製の薄層クロマトグラフィー用シリカゲル60GF254(Art.7730)を20cm×20cmのガラスプレート上に、厚さ1.75mmに調整したものを使用して行い、“[使用したガラスプレートの縦の長さ×横の長さ×厚さ×枚数;展開溶媒]”と記載した。
・高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
Agilent社製の1100seriesを用いて測定した。
・シリカゲルカラムクロマトグラフィー
E.Merck社製のシリカゲル60F254(Art.7734)を使用して行い、“使用したシリカゲルの重さ、展開溶媒”と記載した。
(3)基本操作
・反応後の抽出溶液の乾燥は、飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムを加えることで行った。
・反応後の中和を樹脂で行ったものについては、オルガノ株式会社製陽イオン交換樹脂アンバーライトIR120B NA、又は陰イオン交換樹脂アンバーライトIRA400 OH AGを用いた。
・溶液の減圧濃縮は、アスピレーターの減圧下(20〜30mmHg)、ロータリーエバポレーターを用いて行った。痕跡量の溶媒の除去は、液体窒素浴で冷却したトラップを装着させた真空ポンプ(約1mmHg)を用いて行った。
・溶媒の混合比はすべて体積比で表した。
(4)溶媒
・蒸留水
アドバンテック東洋株式会社製GS−200型蒸留水製造装置を用いて蒸留、及びイオン交換処理したものを使用した。
・トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル
関東化学株式会社製の有機合成用脱水溶媒、又は特級溶媒を、モレキュラーシーブス(4A)を用いて乾燥させて使用した。
・NMR測定用溶媒
以下に示すものをそのまま用いた。
CDCl3:ISOTEC Inc.製 99.7 ATOM%D、0.03% TMS
CD3OD:ISOTEC Inc.製 99.8 ATOM%D(〜0.7 ATOM%13C)、0.05% TMS
<ピリジン環含有発光基質の合成1>
(2−ジメチルアミノ−5−シアノピリジン(1)の合成)
2−アミノ−5−シアノピリジン(0)(1,185mg、10mmol)、ヨードメタン(MeI)(2.83ml、45mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(50ml)に溶解させた。この溶液を0℃にし、60%水素化ナトリウム(NaH)(1,437mg、35mmol)をゆっくり加え、混合物を30分間撹拌した。反応混合物を室温に昇温し、12時間撹拌した。反応混合物に少量のメタノールを加え、過剰のヨードメタン、水素化ナトリウムを分解させた。続いて水(10ml)を加え、酢酸エチル(3×30ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル62.9g;ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]にて精製すると、2−ジメチルアミノ−5−シアノピリジン(1)(1,121mg、7.62mmol、76.2%)が茶褐色粉末固体として得られた。
Figure 0006353751
・2−ジメチルアミノ−5−シアノピリジン(1)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 3.15 (6 H, s), 6.48 (1 H, d, J = 9.1 Hz), 7.58 (1 H, dd, J = 9.1, 2.3 Hz), 8.41 (1 H, d, J = 2.3 Hz)
13C NMR(125 MHz, CDCl3):δ 38.0 (q) × 2, 95.3 (d), 105.2 (s), 119.1 (s), 139.4 (s), 152.8 (s), 159.7 (s)
MS(EI) m/z 147 (M+・,97%),132 (100%), 118 (78%)
(5−アルデヒド−2−ジメチルアミノピリジン(2)の合成)
5−シアノ−2−ジメチルアミノピリジン(1)(1,121mg、7.62mmol)を脱水テトラヒドロフラン(THF)(10ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下とした。この溶液を0℃まで冷却し、1.0M水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)−トルエン溶液(12ml)をゆっくり加え、30分間撹拌した。続いてこの混合溶液を室温に昇温させ、1時間撹拌した。その後この反応混合物に少量のアセトン、水を加え過剰の還元剤を分解させた。さらにこの混合溶液に飽和酒石酸カリウムナトリウム水溶液(50ml)、酢酸エチル(10ml)を加え、一晩攪拌した。その後、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[シリカゲル60g;ヘキサン−酢酸エチル(1:1→0:1)]にて精製すると、5−アルデヒド−2−ジメチルアミノピリジン(2)(699.5mg、4.67mmol、61.0%)が淡黄色粉末固体として得られた。
Figure 0006353751
・5−アルデヒド−2−ジメチルアミノピリジン(2)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 3.21 (6 H, s), 6.55 (1 H, d, J = 9.2 Hz), 7.91 (1 H, dd, J = 9.2, 2.3 Hz), 8.55 (1 H, d, J = 2.3 Hz), 9.77 (1 H, s)
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ 38.3 (q) × 2, 105.8 (d), 121.8 (s), 136.1 (d), 154.7 (d), 161.5 (s), 189.3 (d)
MS(EI) m/z 150 (M+・, 100%), 135 (74%), 121 (60%)
(エチルエステル体(3)の合成)
5−アルデヒド−2−ジメチルアミノピリジン(2)(600mg、4mmol)、4−ホスホノクロトン酸トリエチル(1.5ml、12mmol)を、脱水テトラヒドロフラン(THF)(3ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下とした。この溶液を0℃まで冷却し、水素化ナトリウム(NaH)(342mg、14.3mmol)をゆっくり加え、30分間撹拌した。この反応混合物に水(10ml)を加えて過剰の水素化ナトリウムを分解し、この溶液を室温に昇温させた。続いて、酢酸エチル(3×30ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[シリカゲル60.1g;ヘキサン−酢酸エチル(2:1)]にて精製すると、エチルエステル体(3)(433mg、1.76mmol、44.0%)が黄色粉末固体として得られた。
Figure 0006353751
・エチルエステル体(3)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 1.30 (3 H, t, J = 7.2 Hz), 3.12 (6 H, s), 4.21 (2 H, q, J = 7.2 Hz), 5.88 (1 H, d, J = 14.9 Hz), 6.50 (1 H, d, J = 9.2 Hz), 6.66 (1 H, dd, J = 10.9, 16.0 Hz), 6.79 (1 H, d, J = 16.0 Hz), 7.42 (1 H, dd, J = 14.9, 10.9 Hz), 7.62 (1 H, dd, J = 2.3, 9.2 Hz), 8.19 (1 H, d, J = 2.3 Hz)
13C NMR(125 MHz, CDCl3):δ 14.4 (q), 38.2 (q) × 2, 60.2 (t), 105.9 (d), 119.0 (d), 120.1 (s), 122.4 (d), 134.4 (d), 138.0 (d), 145.3 (d), 148.9 (d), 159.2 (s), 167.4 (s)
MS(ESI) [M+H]+ ; m/z 247.11
(カルボキシル体(4)の合成)
エチルエステル体(3)(340mg、1.38mmol)をイソプロパノール(iPrOH)(10ml)に溶解し、5.0M水酸化ナトリウム水溶液(560μl)を加え、その溶液を5時間加熱還流した。反応混合物に5.0M塩酸(560μl)を加え中和した後、THF(3×50ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。カルボキシル体(4)(240.2mg、1.10mmol、79.7%)が薄黄色固体として得られた。
Figure 0006353751
・カルボキシル体(4)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 3.13 (6 H, s), 5.88 (1 H, d, J = 15.4 Hz), 6.51 (1 H, d, J = 9.2 Hz), 6.69 (1 H, dd, J = 11.4, 15.2 Hz), 6.83 (1 H, d, J = 15.4 Hz), 7.50 (1 H, dd, J = 11.4, 15.2 Hz), 7.63 (1 H, dd, J = 2.3, 9.2 Hz), 8.20 (1 H, d, J = 2.3 Hz)
13C NMR(125MHz, DMSO-D6):δ 38.1(q) × 2, 106.6(d), 120.1(d), 122.9(s), 135.0(d), 138.0(d), 138.3(d), 145.6(d), 149.1(d), 159.3(s), 168.3(s)
MS(ESI) [M+H]+ ; m/z 219.08
(アミド体(5)の合成)
カルボキシル体(4)(126mg、0.58mmol)とS−トリチル−D−システインメチルエステル(261mg、0.70mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(5.0ml)に溶解した。この溶液に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)(278mg、1.45mmol)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)(141mg、1.15mmol)を加え、この反応混合物を室温で15時間撹拌した。反応混合物に水(50ml)を加え、酢酸エチル(3×50ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[シリカゲル50g;酢酸エチル−ヘキサン(1:1)]にて精製すると、アミド体(5)(264mg、0.46mmol、79.0%)が黄色固体として得られた。
Figure 0006353751
・アミド体(5)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 2.69 (2 H, m), 3.13 (6 H, s), 3.70 (3 H, s), 4.73 (1 H, m), 5.84 (1 H, d, J = 15.0 Hz), 6.50 (1 H, d, J = 9.2 Hz), 6.64 (1 H, dd, J = 10.9, 15.5 Hz), 6.76 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 7.18-7.38 (17 H, comp), 7.60 (1 H, dd, J = 2.3, 9.2 Hz), 8.19 (1 H, d, J = 2.3 Hz)
13C NMR(125 MHz, CDCl3):δ 34.2 (t), 38.2 (q) × 2, 51.2 (q), 52.7 (d), 67.0 (s), 105.9 (d), 120.3 (s), 121.0 (d), 122.4 (d), 127.0 (d), 128.1 (d) × 2, 129.6 (d) × 2, 134.5 (d), 137.4 (d), 142.5 (d), 144.4 (s), 148.6 (d), 159.1 (s), 165.8 (s), 171.2 (s)
MS(ESI) [(M+H)+] m/z : 578.22
(チアゾリン体(6)の合成)
アミド体(5)(160mg、0.28mmol)をアルゴン雰囲気下にし、ジクロロメタン(5.0ml)を加えた。この溶液を0℃に冷却し、トリフルオロ酢酸無水物(TFAA)(0.2ml、1.44mmol)をゆっくり加え、30分間撹拌した。続いて室温に昇温させ、24時間撹拌した。原料が消失したのを確認した後、陰イオン交換樹脂IRA400 OH AGを用いて中和した。樹脂を洗浄して濾別し、得られた洗液を減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー[20cm×20cm×1.75mm×3枚;ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]で精製すると、チアゾリン体(6)(13.4mg、0.042mmol、15.0%)が黄色固体として得られた。
Figure 0006353751
・チアゾリン体(6)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 3.11 (6 H, s), 3.56 (2 H, m), 3.81 (3 H, s), 5.15 (1 H, t, J = 9.2 Hz), 6.49 (1 H, d, J = 9.2 Hz), 6.53 (1 H, d, J = 14.9 Hz), 6.72 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 6.92 (1 H, dd, J = 9.8, 15.5 Hz), 7.37 (1 H, dd, J = 9.8, 14.9 Hz), 7.61 (1 H, dd, J = 2.3, 9.2 Hz), 8.16 (1 H, d, J = 2.3 Hz)
13C NMR(125 MHz, CDCl3):δ 34.6 (t), 38.2 (q) × 2, 52.8 (q), 77.9 (d), 106.0 (d), 120.2 (s), 123.1 (d), 123.3 (d), 134.1 (d), 136.3 (d), 143.3 (d), 148.8 (d), 159.0 (s), 170.2 (s), 171.4 (s)
MS(ESI) m/z: [(M+H)+] 318.08
(ピリジン環含有発光基質(7)の合成)
チアゾリン体(6)(10.7mg、0.034mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(5ml)に溶解し、5.0M塩酸(300μl)を加え、その溶液を24時間室温で撹拌した。反応混合物に重曹を加え中和した後、酢酸エチル(3×50ml)で抽出した。ピリジン環含有発光基質(7)[即ち、上記化学式(II)で表される化合物](9.2mg、0.030mmol、88.2%)が粗生成物として得られた。
Figure 0006353751
・発光基質(7)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CD3OD):δ 3.29 (6 H, s), 3.76-3.68 (2 H, comp.), 5.25 (1 H, m), 6.69 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 7.10 (1 H, dd, J = 10.9, 15.5 Hz), 7.22 (1 H, d, J = 9.8 Hz), 8.05 (1 H, s), 7.23 (1 H, m), 8.25 (1 H, d, J = 9.7 Hz)
13C NMR(125 MHz, CD3CD):δ 35.5 (t), 37.2 (q) × 2, 80.8 (d), 106.5 (d), 120.7 (d), 123.3 (d), 123.6 (d), 134.4 (s), 135.3 (d), 142.5 (d), 147.7 (d), 158.9 (s), 169.5 (s), 176.9 (s)
MS(ESI) m/z: [(M+H)+] 304.10
<ピリジン環含有発光基質の合成2>
(2−シアノ−5−ジメチルアミノピリジン(11)の合成)
5−アミノ−2−シアノピリジン(10)(1,308mg、11mmol)、ヨードメタン(CH3I)(2.0ml、33mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(100ml)に溶解させた。この溶液を0℃にし、60%水素化ナトリウム(NaH)(1308 mg、33mmol)をゆっくり加え、混合物を50時間撹拌した。反応混合物に少量のメタノールを加え、過剰のヨードメタン、水素化ナトリウムを分解させた。続いて水(10ml)を加え、酢酸エチル(3×30ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル59.2g;ヘキサン−酢酸エチル(1:2)]にて精製すると、2−シアノ−5−ジメチルアミノピリジン(11)(1,303.8mg、8.86mmol、80%)が茶褐色粉末固体として得られた。
Figure 0006353751
・2−シアノ−5−ジメチルアミノピリジン(11)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 3.08 (6 H, s), 6.87 (1 H, dd, J = 9.2, 2.9 Hz), 7.48 (1 H, d, J = 9.2 Hz), 8.12 (1 H, d, J = 2.9 Hz)
13C NMR(125 MHz, CDCl3):δ 39.8 (q) × 2, 116.5 (s), 119.0 (d), 119.1 (s), 129.1 (d), 135.3 (d), 147.2 (s)
MS(EI) m/z 146 (M+・, 100%), 147 (81%)
(2−アルデヒド−5−ジメチルアミノピリジン(12)の合成)
2−シアノ−5−ジメチルアミノピリジン(11)(723.0mg、4.9mmol)を脱水テトラヒドロフラン(THF)(20ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下とした。この溶液を0℃まで冷却し、1.0M水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)−トルエン溶液(7.5ml)をゆっくり加え、15分間撹拌した。続いてこの混合溶液を室温に昇温させ、1時間撹拌した。その後この反応混合物に十分量のアセトン、水を加え過剰の還元剤を分解させた。さらにこの混合溶液に飽和酒石酸カリウムナトリウム水溶液(50ml)、酢酸エチル(10ml)を加え、一晩攪拌した。その後、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[シリカゲル56.9g;クロロホルム−メタノール(10:1)]にて精製すると、2−アルデヒド−5−ジメチルアミノピリジン(12)(368.7mg、2.46mmol、50%)が淡黄色粉末固体として得られた。
Figure 0006353751
・2−アルデヒド−5−ジメチルアミノピリジン(12)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 3.13 (6 H, s), 6.96 (1 H, dd, J = 8.6, 2.9 Hz), 7.86 (1 H, d, J = 8.6 Hz), 8.19 (1 H, d, J = 2.9 Hz), 9.88 (1 H, s)
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ 39.7 (q) × 2, 116.5 (d), 123.4 (d), 133.9 (d), 141.5 (s), 148.2 (s), 191.5(s)
MS(EI) m/z 150 (M+・, 100%)
(エチルエステル体(13)の合成)
2−アルデヒド−5−ジメチルアミノピリジン(12)(31.4mg、0.21mmol)、4−ホスホノクロトン酸トリエチル(80μl、0.36mmol)を、脱水テトラヒドロフラン(THF)(10ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下とした。この溶液を0℃まで冷却し、60%水素化ナトリウム(NaH)(21.6mg、0.54mmol)をゆっくり加え、30分間撹拌した。この反応混合物に水(10ml)を加えて過剰の水素化ナトリウムを分解し、この溶液を室温に昇温させた。続いて、酢酸エチル(3×30ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー[20cm×20cm×1.75mm×2枚;ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]にて精製すると、エチルエステル体(13)(38.7mg、0.157mmol、74%)が黄色粉末固体として得られた。
Figure 0006353751
・エチルエステル体(13)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 1.31 (3 H, t, J = 7.5 Hz), 3.03 (6 H, s), 4.21 (2 H, q, J = 6.8 Hz), 5.98 (1 H, d, J = 14.9 Hz), 6.87 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 6.90 (1 H, dd, J = 8.6, 2.8 Hz), 7.12 (1 H, dd, J = 11.4, 15.5 Hz), 7.22 (1 H, d, J = 8.6 Hz), 7.46 (1 H, dd, J = 11.5, 15.5 Hz), 8.14 (1 H, d, J = 2.8 Hz)
13C NMR(125 MHz, CDCl3):δ 14.4 (q), 40.0 (q) × 2, 60.3 (t), 118.0 (d), 120.7 (d), 123.8 (d), 125.4 (d), 135.0 (d), 139.8 (d), 142.3 (s), 144.9 (s), 145.6 (d), 167.4 (s)
MS(ESI) [M+H]+ ; m/z 247.15
(カルボキシル体(14)の合成)
エチルエステル体(13)(54.0mg、0.22mmol)をイソプロパノール(iPrOH)(10ml)に溶解し、5M水酸化ナトリウム水溶液(130μl)を加え、その溶液を26時間加熱還流した。反応混合物に4M塩酸を加え中和した後、減圧濃縮した。カルボキシル体(14)(240.2mg、1.10mmol、79.7%)が薄黄色個体として得られた。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[シリカゲル11.9g;クロロホルム−メタノール(5:1)]にて精製すると、カルボキシル体(14)(50.0mg、0.23mmol、115%)が淡緑色粉末固体として得られた。
Figure 0006353751
・カルボキシル体(14)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CD3OD):δ 3.02 (6 H, s), 5.99 (1 H, d, J = 15.4 Hz), 6.86 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 7.06 (1 H, dd, J = 11.5, 15.4 Hz), 7.12 (1 H, dd, J = 2.9, 8.6 Hz), 7.37 (1 H, dd, J = 11.5, 15.4 Hz), 7.45 (1 H, d, J = 8.6 Hz), 8.00 (1 H, d, J = 2.9 Hz)
13C NMR(125MHz, CD3OD):δ 38.6 (q) × 2, 118.9 (d), 123.1 (d), 123.6 (d), 126.1 (d), 133.2 (d), 137.8 (d), 142.0 (s), 143.5 (s), 146.0 (d), 172.3 (s)
MS(ESI) [M+H]+ ; m/z 219.11
(アミド体(15)の合成)
カルボキシル体(14)(104.8mg、0.48mmol)とS−トリチル−D−システインメチルエステル(386.8mg、1.06mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(50ml)に溶解した。この溶液に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)(300.6mg、1.57mmol)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)(295.1mg、2.41mmol)を加え、この反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物に水(50ml)を加え、酢酸エチル(3×50ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[シリカゲル50.5g;クロロホルム−メタノール(10:1)]にて精製したのち、さらに、分取薄層クロマトグラフィー[20cm×20cm×1.75mm×4枚;クロロホルム−メタノール(10:1)]にて精製すると、アミド体(15)(264mg、0.46mmol、79%)が黄色固体として得られた。
Figure 0006353751
・アミド体(15)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 2.70 (2 H, m), 3.02 (6 H, s), 4.73 (1 H, m), 5.91 (1 H, d, J = 14.9 Hz), 5.96 (1 H, d, J = 8.0 Hz), 6.49 (1 H, m), 6.84 (1 H, d, J = 15.4 Hz), 6.90 (1H, dd, J = 2.9 Hz, 8.6 Hz), 7.12 (1 H, dd, J = 11.5, 15.4 Hz), 7.25-7.39 (15 H, m), 8.14 (1 H, d, J = 2.8 Hz)
13C NMR(125 MHz, CDCl3):δ 34.1 (t), 40.1 (q) × 2, 51.2 (s), 52.8 (d), 67.1 (s), 118.1 (d), 122.6 (d), 123.8 (d), 125.5 (d), 127.0 (t) × 3, 128.1 (d) × 6, 129.6 (d) × 6, 135.0 (d), 139.1 (n), 142.2 (d), 144.4 (s) × 3, 145.5 (s) × 3, 149.4 (s), 165.7 (s), 171.1 (s)
MS(ESI) [(M+H)+] m/z : 578.22
(チアゾリン体(16)の合成)
アミド体(15)(145.1mg、0.25mmol)をアルゴン雰囲気下にし、ジクロロメタン(10.0ml)を加えた。この溶液を0℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(Tf2O)(105μl、0.62mmol)をゆっくり加え、50分間撹拌した。原料が消失したのを確認した後、陰イオン交換樹脂IRA400 OH AGを用いて中和した。樹脂を洗浄して濾別し、得られた洗液を減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー[20cm×20cm×1.75mm×2枚;酢酸エチル]で精製すると、チアゾリン体(16)(15.6mg、0.049mmol、20%)が黄色油状物として得られた。
Figure 0006353751
・チアゾリン体(16)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CD3OD):δ 3.05 (6 H, s), 3.56 (2 H, m), 3.82 (3 H, s), 5.16 (1 H, t, J = 9.2 Hz), 6.64 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 6.79 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 6.89 (1 H, dd, J = 2.9, 8.6 Hz), 6.95 (1 H, dd, J = 10.9, 15.5 Hz), 7.13 (1 H, dd, J = 10.9, 15.5 Hz), 7.20 (1 H, d, J = 8.6 Hz), 8.12 (1 H, d, J = 2.9 Hz)
13C NMR(125 MHz, CDCl3):δ 34.6 (t), 40.0 (q) × 2, 52.9 (q), 78.0 (d), 118.1 (d), 123.7 (d), 125.1 (d), 126.3 (d), 135.0 (d), 138.1 (d), 142.6 (s), 142.9 (s), 145.5 (d), 170.2 (s), 171.5 (s)
MS(ESI) m/z: [(M+H)+] 318.12
(ピリジン環含有発光基質(17)の合成)
チアゾリン体(16)(15.6mg、0.049mmol)をH2O(1ml)に溶解し、4M塩酸(1ml)を加え、その溶液を40時間室温で撹拌した。反応混合物に重曹を加え中和した後、減圧濃縮した。ピリジン環含有発光基質(17)[即ち、上記化学式(III)で表される化合物](3mg、0.01mmol、20%)が粗生成物として得られた。
Figure 0006353751
・ピリジン環含有発光基質(17)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CD3OD):δ 3.02 (6 H, s), 3.52 (2 H, m), 5.95 (1 H, t, J = 9.2 Hz), 6.63 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 6.81 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 6.96 (1 H, dd, J = 10.9, 15.5 Hz), 7.08 (1 H, dd, J = 10.9, 15.5 Hz), 7.11 (1 H, dd, J = 2.8, 8.9 Hz), 7.44 (1 H, d, J = 8.9), 7.99 (1 H, d, J = 2.8 Hz)
13C NMR(125 MHz, CD3OD):δ 35.5 (t), 38.7 (q) × 2, 80.9 (d), 118.9 (d), 122.9 (d), 125.1 (d), 126.6 (d), 133.3 (d), 136.9 (d), 141.8 (s), 142.2 (s), 146.0 (d), 169.2 (s), 176.8 (s)
MS(ESI) m/z: [(M+H)+] 304.09
<ピラジン環含有発光基質の合成>
(2−ジメチルアミノ−5−ブロモ−ピラジン(21)の合成)
2−アミノ−5−ブロモ−ピラジン(20)(1,170mg、6.72mmol)、ヨードメタン(CH3I)(1.2ml、19.5mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(100ml)に溶解させた。この溶液を0℃にし、60%水素化ナトリウム(NaH)(1.5g、37.5mmol)をゆっくり加え、混合物を5時間撹拌した。反応混合物に少量のメタノールを加え、過剰のヨードメタン、水素化ナトリウムを分解させた。続いて水(10ml)を加え、酢酸エチル(3×200ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル48.5g;ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]にて精製すると、2−ジメチルアミノ−5−ブロモ−ピラジン(21)(1,096mg、5.4mmol、80%)が淡黄色粉末固体として得られた。
Figure 0006353751
・2−ジメチルアミノ−5−ブロモ−ピラジン(21)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 3.08 (6 H, s), 7.74 (1 H, s), 8.10 (1 H, s)
13C NMR(125 MHz, CDCl3):δ 37.9 (q) × 2, 124.7 (s), 129.2 (d), 143.8 (d), 154.0 (s)
MS(ESI) [M+H]+ ; m/z 201.96, 203.96
(5−アルデヒド−2−ジメチルアミノピラジン(22)の合成)
2−ジメチルアミノ−5−ブロモ−ピラジン(21)(1.37g、6.8mmol)を脱水テトラヒドロフラン(THF)(50ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下とした。この溶液を、アセトンバスを用いて−80℃まで冷却し、1.57Mノルマルブチルリチウム(n−BuLi)−ヘキサン溶液(10.8ml)をゆっくり加え、1時間撹拌した。続いてこの混合溶液にN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(2.0ml、26mmol)をゆっくり加えた後、室温に昇温させ1時間撹拌した。その後この反応混合物に水を加え15分間撹拌し、酢酸エチル(2×200ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[シリカゲル46.9g;ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]にて精製すると、5−アルデヒド−2−ジメチルアミノピラジン(22)(975mg、6.5mmol、95%)が淡黄色粉末固体として得られた。
Figure 0006353751
・5−アルデヒド−2−ジメチルアミノピラジン(22)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 3.23 (6 H, s), 8.05 (1 H, d, J = 1.2 Hz), 8.64 (1 H, d, J = 1.2 Hz), 9.86 (1 H, s)
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ 38.0 (q) × 2, 129.4 (d), 136.8 (s), 144.4 (d), 155.7 (s), 190.8 (d)
MS(ESI) [M+Na]+ ; m/z 174.04
(エチルエステル体(23)の合成)
5−アルデヒド−2−ジメチルアミノピラジン(22)(44.5mg、0.29mmol)、4−ホスホノクロトン酸トリエチル(150μl、0.58mmol)を、脱水テトラヒドロフラン(THF)(20ml)に溶解した。この溶液を0℃まで冷却し、60%水素化ナトリウム(NaH)(27.4mg、0.69mmol)をゆっくり加え、15分間撹拌した。この反応混合物にエタノール(EtOH)(5ml)を加えて過剰の水素化ナトリウムを分解し、この溶液を室温に昇温させた。続いて、酢酸エチル(3×30ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー[20cm×20cm×1.75mm×1枚;ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]にて精製すると、エチルエステル体(23)(47.6mg、0.19mmol、65%)が黄色粉末固体として得られた。
Figure 0006353751
・エチルエステル体(23)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 1.31 (3 H, t, J = 7.4 Hz), 3.17 (6 H, s), 4.22 (2 H, q, J = 7.4 Hz), 5.99 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 6.83 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 7.14 (1 H, dd, J = 11.5, 15.5 Hz), 7.45 (1 H, dd, J = 11.5, 15.5 Hz), 7.22 (1 H, d, J = 8.6 Hz), 8.04 (1 H, s), 8.05 (1 H, s)
13C NMR(125 MHz, CDCl3):δ 14.4 (q), 37.8 (q) × 2, 60.4 (t), 120.7 (s), 121.2 (d), 125.7 (d), 130.0 (d), 136.2 (s), 142.4 (d), 144.5 (d), 153.9 (s), 167.3 (s)
MS(ESI) [M+H]+ ; m/z 248.11
(カルボキシル体(24)の合成)
エチルエステル体(23)(47.6mg、0.19mmol)をイソプロパノール(iPrOH)(10ml)に溶解し、5M水酸化ナトリウム水溶液(120μl)を加え、その溶液を45分間加熱還流した。反応混合物に4M塩酸を加え中和した後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[シリカゲル16.5g;クロロホルム−メタノール(5:1)]にて精製すると、カルボキシル体(24)(36.8mg、0.16mmol、84%)が淡黄色粉末固体として得られた。
Figure 0006353751
・カルボキシル体(24)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CD3OD):δ 3.15 (6 H, s), 5.97 (1 H, d, J = 14.9 Hz), 6.87 (1 H, d, J = 14.9 Hz), 7.13 (1 H, dd, J = 11.5, 14.9 Hz), 7.39 (1 H, dd, J = 11.5, 14.9 Hz), 8.07 (1 H, s), 8.11 (1 H, s)
13C NMR(125MHz, CD3OD):δ 36.6 (q) × 2, 121.7 (d), 125.5 (d), 129.8 (d), 135.8 (d), 136.8 (d), 142.0 (d), 144.5 (s), 153.3 (s)
MS(ESI) [M+H]+ ; m/z 220.07
(アミド体(25)の合成)
カルボキシル体(24)(720.0mg、3.3mmol)とS−トリチル−D−システインメチルエステル(3,600mg、9.9mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(50ml)に溶解した。この溶液に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)(2,035mg、6.6mmol)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)(1,270mg、6.6mmol)を加え、この反応混合物を室温で17時間撹拌した。反応混合物に水(50ml)を加え、酢酸エチル(3×50ml)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[シリカゲル56.0g;ヘキサン−酢酸エチル(1:2)]にて精製すると、アミド体(25)(1,626mg、2.81mmol、84%)が黄色固体として得られた。
Figure 0006353751
・アミド体(25)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 2.66-2.75 (2 H, m), 3.17 (6 H, s), 3.72 (3 H, s), 4.73 (1 H, m), 5.93 (1 H, dd, J = 7.5, 14.9 Hz), 6.81 (1 H, d, J = 14.9 Hz), 7.13 (1 H, dd, J = 11.4, 14.9 Hz), 7.20-7.43 (16 H, m), 8.05 (2 H, s)
13C NMR(125 MHz, CDCl3):δ 34.1 (t), 37.8 (q) × 2, 51.2 (q), 52.7 (d), 67.1 (s), 123.0 (d), 125.7 (d), 127.0 (d) × 3, 128.1 (d) × 4, 129.6 (d) × 4, 135.7 (d), 137.4 (d), 141.8 (d), 142.3 (d), 144.4 (s) × 3, 153.9 (s), 165.6 (s), 171.1 (s)
MS(ESI) [(M+Na)+] m/z : 601.13
(チアゾリン体(26)の合成)
アミド体(25)(114.0mg、0.20mmol)をアルゴン雰囲気下にし、ジクロロメタン(10.0ml)を加えた。この溶液を0℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(Tf2O)(100μl、0.6mmol)をゆっくり加え、35分間撹拌した。原料が消失したのを確認した後、陰イオン交換樹脂IRA400 OH AGを用いて中和した。樹脂を洗浄して濾別し、得られた洗液を減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー[20cm×20cm×1.75mm×1枚;ヘキサン−酢酸エチル(1:2)]で精製すると、チアゾリン体(26)(28.2mg、0.089mmol、44%)が黄色固体として得られた。
Figure 0006353751
・チアゾリン体(26)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ 3.16 (6 H, s), 3.53 (1 H, dd, J = 9.2, 11.5 Hz), 3.60 (1 H, dd, J = 9.2, 11.5 Hz), 3.82 (3 H, s), 5.17 (1 H, t, J = 9.2 Hz), 6.65 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 6.77 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 6.96 (1 H, dd, J = 11.2, 14.9 Hz), 7.16 (1 H, dd, J = 11.2, 14.9 Hz), 8.03 (2 H, s)
13C NMR(125 MHz, CDCl3):δ 34.6 (t), 37.8 (q) × 2, 52.9 (q), 78.1 (d), 125.4 (d), 126.5 (d), 130.0 (d), 134.6 (d), 137.4 (d), 142.3 (s), 142.5 (d), 153.8 (s), 170.1 (s), 171.4 (s)
MS(ESI) m/z: [(M+H)+] 319.05
(ピラジン環含有発光基質(27)の合成)
チアゾリン体(26)(11.2mg、0.035mmol)をH2O(2ml)に溶解し、4M塩酸(1.5ml)を加え、その溶液を19時間室温で撹拌した。反応混合物にアンモニア水を加え中和した後、減圧濃縮した。逆相カラムクロマトグラフィー(SupelcleanTM LC−18 SPE)で精製すると、ピラジン環含有発光基質(27)(4.1mg、0.013mmol、37%)が茶色固体として得られた。
Figure 0006353751
・ピラジン環含有発光基質(27)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CD3OD):δ 3.15 (6 H, s), 3.52-3.62 (2 H, m), 5.04 (1 H, t, J = 9.2 Hz), 6.60 (1 H, d, J = 15.4 Hz), 6.85 (1 H, d, J = 15.5 Hz), 7.02 (1 H, dd, J = 11.2, 15.5 Hz), 7.17 (1 H, dd, J = 11.2, 15.5 Hz), 8.08 (1 H, s), 8.11 (1H, s)
13C NMR(125 MHz, CD3OD):δ 35.1 (t), 36.6 (q) × 2, 79.1 (d), 124.5 (d), 126.3 (d), 129.8 (d), 133.8 (d), 134.5 (d), 137.1 (s), 141.8 (d), 142.2 (s), 153.9 (s)
MS(ESI) m/z: [(M+H)+] 305.06
<溶解度測定>
上記のようにして得たピリジン環含有発光基質(7)、ピリジン環含有発光基質(17)、ピラジン環含有発光基質(27)又は下記化学式(a):
Figure 0006353751
で表されるアカルミネ(黒金化成株式会社製、Lot No.0022)に、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBSバッファー)を50μl加え、よく振盪させた。続いて、不溶物を沈殿させるため、遠心分離を13,000rpmで、3分間行った後、上澄み液を採取した。得られた上澄み液(飽和溶液)を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 0006353751
表1から、ピリジン環含有発光基質(7)は、アカルミネより、pHが中性付近の緩衝液への溶解性が5.7倍高く、また、ピリジン環含有発光基質(17)は、アカルミネより、pHが中性付近の緩衝液への溶解性が9.7倍高く、また、ピラジン環含有発光基質(27)は、アカルミネより、pHが中性付近の緩衝液への溶解性が14倍高いことが分かる。
<発光測定>
上記のようにして得たピリジン環含有発光基質(7)又は(17)、或いは、ピラジン環含有発光基質(27)を用いて、発光経時変化及び発光強度、並びに、発光スペクトルの測定を行った。また、比較対照として、上記アカルミネ、並びに、下記化学式(b):
Figure 0006353751
で表される天然のホタルルシフェリン(和光純薬工業株式会社製)を用いて、発光経時変化及び発光強度、並びに、発光スペクトルの測定を行った。
・発光経時変化及び発光強度測定
pH8.0で0.5Mのリン酸カリウム緩衝液(KPB溶液)を20μl、各発光基質の溶解液(発光基質濃度=100μM)を20μl、発光基質を分解する酵素である0.01mg/mlのphotinus pyralis(Promega社製)を20μl、0.2mMのMg−ATPを40μl混合し、発光測定装置(ATTO株式会社製、AB−2270)で60秒間発光経時変化の測定を行った。結果を図1、図2及び図3に示す。
また、同測定条件下、発光測定装置(ATTO株式会社製、AB−1850)で300秒間積算し、発光強度測定を行った(N=2)。なお、天然ホタルルシフェリンは570nm、アカルミネは675nm、ピリジン環含有発光基質(7)は625nm、ピリジン環含有発光基質(17)は670nm、ピラジン環含有発光基質(27)は625nmの発光強度で比較した。天然ホタルルシフェリンの発光強度を100とした相対発光強度の値を表2に示す。
Figure 0006353751
図1、図2及び図3から、ピリジン環含有発光基質(7)及び(17)、並びに、ピラジン環含有発光基質(27)は、ホタル生物発光系における発光基質として機能することが分かる。また、図1、図2及び図3から分かるように、ピリジン環含有発光基質(7)及び(17)、並びに、ピラジン環含有発光基質(27)の発光経時変化は、アカルミネの発光経時変化とほぼ同じであった。
また、表2から、ピリジン環含有発光基質(7)及び(17)、並びに、ピラジン環含有発光基質(27)の発光強度は、天然のホタルルシフェリンに比べ約1割の発光強度であるものの、アカルミネとほぼ同じ発光強度であることが分かる。
・発光スペクトル測定
pH8.0で0.5Mのリン酸カリウム緩衝液(KPB溶液)を20μl、各発光基質の溶解液(発光基質濃度=100μM)を20μl、発光基質を分解する酵素である0.01mg/mlのphotinus pyralis(Promega社製)を20μl、0.2mMのMg−ATPを40μl混合し、発光測定装置(ATTO株式会社製、AB−1850)で180秒間発光スペクトルを測定した。結果を図4、図5及び図6に示す。
図4及び図6から分かるように、ピリジン環含有発光基質(7)及びピラジン環含有発光基質(27)の発光スペクトルにおける極大波長は625nmであり、天然のホタルルシフェリンの極大波長560nmに比べ、65nm長波長であり、また、アカルミネの極大波長675nmに比べ、50nm短波長であった。
また、図5から分かるように、ピリジン環含有発光基質(17)の発光スペクトルにおける極大波長は670nmであり、天然のホタルルシフェリンの極大波長560nmに比べ、110nm長波長であり、また、アカルミネの極大波長と同等であった。
本発明の複素環式化合物及びその塩は、pHが中性付近の緩衝液への溶解性に優れ、ホタル生物発光系における発光基質として利用できる。

Claims (6)

  1. 下記一般式(I):
    Figure 0006353751
    [式中、R1は、−H、又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は、−OH、−NH2、又は−N(CH32であり、R3は、−N=、−CH=、又は−CR4=で、ここで、R4は−CH2CH=CH2であり、但し、1つ以上のR3は−N=であり、nは0〜3の整数である]で表される複素環式化合物。
  2. 前記一般式(I)中のR1が−Hであることを特徴とする請求項1に記載の複素環式化合物。
  3. 前記一般式(I)中のR2が−N(CH32であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複素環式化合物。
  4. 下記化学式(II)、(III)又は(IV):
    Figure 0006353751
    で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の複素環式化合物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の複素環式化合物の塩。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の複素環式化合物又は請求項5に記載の塩を含む発光基質組成物。
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