以下、図面を参照しながら、本発明に係る排水ます、および、排水システムの実施形態について説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
まず、本実施形態に係る排水システム1について説明する。図1は、本実施形態に係る排水システム1の平面図である。図2は、排水システム1の正面図である。図1に示すように、排水システム1は、排水が流れるシステムである。ここで、「排水」には、汚水および雨水が含まれる。「汚水」とは、トイレ、風呂、および、台所の流し台などから排出される水であり、そのままでは河川に放流させることができないものである。本実施形態では、トイレ、風呂、および台所の流し台などのように、汚水が排出される設備を排水設備5とする。「雨水」とは、降雨などの自然現象に起因する水であり、そのまま河川に放流させることができるものである。ここでは、排水システム1は、排水のうち排水設備5から流出する汚水が流れるシステムである。しかし、排水システム1は、雨水が流れるシステムであってもよい。この場合、例えば、排水設備5は、雨水が集約される側溝などに置換され、下水本管15は、雨水本管などに置換される。図2に示すように、排水システム1は、地中に埋設されている。排水システム1は、排水管路10と、排水の流路を切り替えることが可能な排水ます20と、貯留槽70とを備えている。
排水管路10は、特に図示はしていないが、下流に向かって下方に傾斜している。図1に示すように、排水管路10は、流入管路11と、第1流出管路12と、第2流出管路13とを備えている。流入管路11には、排水設備5から排出された汚水が流入する。流入管路11の上流端は、排水設備5に接続されている。流入管路11の下流端は、排水ます20に接続されている。第1流出管路12には、排水ます20から流出した汚水が流入する。第1流出管路12の上流端は、排水ます20に接続されている。第1流出管路12の下流端は、汚水を汚水処理場(図示せず)などに導く下水本管15に接続されている。なお、第1流出管路12は、本発明の「流出管路」に対応する。ここでは、第1流出管路12の下流側には、公共ます16が設けられている。公共ます16は、排水ます20と下水本管15との間に設けられている。
第2流出管路13には、排水ます20から流出した汚水が流入する。第2流出管路13の上流端は、排水ます20に接続されている。第2流出管路13の下流端は、汚水を一時的に貯留する貯留槽70に接続されている。なお、「管路」とは、水を流通させる通路を意味する。「管路」は、一本の配管によって構成されていてもよいし、本実施形態のように、複数本の配管とそれら配管を接続する継手によって構成されていてもよい。
排水ます20と、貯留槽70とを備えている。
次に、本実施形態に係る排水ます20について説明する。排水ます20は、排水(本実施形態では、汚水)の流路を切り替えることが可能なますである。排水ます20は、排水管路10の途中箇所に設けられている。ここでは、排水ます20は、流入管路11の下流端と第1流出管路12の上流端との間に設けられている。図3は、排水ます20の平面図である。図4は、排水ます20の正面図である。図5は、図3のV−V断面における排水ます20の正面断面図である。なお、以下の図面において、符号F、Rr、LおよびRは、それぞれ排水ます20の前、後、左および右を表している。ただし、各方向は説明の便宜上定めたものであり、本発明を特に限定するものではない。図5に示すように、排水ます20は、ます本体21と、蓋体26とを備えている。
図6は、ます本体21の平面図である。図7は、ます本体21の正面断面図である。図8は、ます本体21の右側面図である。図6から図8では、ます本体21から蓋体26を取り外した状態が示されている。図7に示すように、ます本体21は、略筒状であり、内部に空間を有する形状である。本実施形態では、図5に示すように、ます本体21は、縦筒状部21aと流入筒状部21bと第1流出筒状部21cと第2流出筒状部21dとによって構成されている。縦筒状部21aは、底面21aaを有し、上方に開口するように上下方向に延びている。流入筒状部21bは、縦筒状部21aの側面から側方(図5では、左方)に延びるように設けられている。第1流出筒状部21cは、流入筒状部21bと向かい合うようにして、縦筒状部21aの側面から側方(図5では、右方)に延びるように設けられている。第2流出筒状部21dは、縦筒状部21aと連通し、縦筒状部21aの底面21aaの中央部分から下方に延びるように設けられている。ここでは、第2流出筒状部21dは、上下方向、すなわち、下方に向かって真っ直ぐに延びた筒である。第2流出筒状部21dの上端から第2流出筒状部21dの外方へ延びるように縦筒状部21aの底面21aaが設けられている。第2流出筒状部21dの上下方向の長さは、第2流出筒状部21dの内径と同じ程度の長さである。しかし、第2流出筒状部21dの上下方向の長さは、第2流出筒状部21dの内径より長くてもよいし、短くてもよい。なお、本実施形態では、第2流出筒状部21dは、本発明の「流出筒状部」に対応する。図7に示すように、ます本体21には、点検口31、流入口32、第1流出口33および第2流出口34が形成されている。
点検口31は、ます本体21の上部において、上方に向かって開口している。本実施形態では、点検口31は、ます本体21の縦筒状部21aの上端に形成されている。点検口31は、作業者がます本体21の内部に破損または詰まりなどがないかのメンテナンスを行う部位である。点検口31は、流入口32、第1流出口33および第2流出口34よりも大きく開口している。言い換えると、点検口31の内径は、流入口32の内径、第1流出口33の内径および第2流出口34の内径よりも長い。そのため、作業者は、点検口31を通じて、ます本体21の内部のメンテナンスを容易に行うことができる。図2に示すように、点検口31には、点検筒17が接続されている。ここでは、点検筒17の上端が地面と略同じ高さに配置されるように、排水ます20は地中に埋設されている。なお、点検筒17の上端には、蓋18が配置されている。通常時、点検筒17は、蓋18によって閉じられている。
図7に示すように、流入口32は、ます本体21の側部に設けられている。流入口32は、側方に向かって開口している。本実施形態では、流入口32は、ます本体21の流入筒状部21bの端面に形成されている。流入口32には、排水設備5から排出された汚水が流入する。図1に示すように、流入口32には、流入管路11の下流端が接続される。なお、流入口32には、流入管路11の一部をなす配管が直接接続されるが、流入口32に上記配管が他の部材などを介して間接的に接続されていてもよい。ここでは、流入口32は、配管が挿入される受口であるが、配管に挿入される差口であってもよい。
図8に示すように、第1流出口33は、ます本体21の側部に設けられている。図7に示すように、第1流出口33は、側方に向かって開口している。ここでは、第1流出口33は、流入口32の反対側に配置されている。第1流出口33は、流入口32と対向している。ただし、第1流出口33の配置位置は特に限定されない。本実施形態では、第1流出口33は、ます本体21の第1流出筒状部21cの端面に形成されている。第1流出口32からます本体21内を流れる汚水が流出する。図1に示すように、第1流出口33には、第1流出管路12の上流端が接続される。第1流出口33には、第1流出管路12の一部をなす配管が直接接続されていてもよく、上記配管が他の部材を介して間接的に接続されていてもよい。ここでは、第1流出口33は受口であるが、差口であってもよい。
図7に示すように、第2流出口34は、ます本体21の底部に設けられている。第2流出口34は、下方に向かって開口している。本実施形態では、第2流出口34は、ます本体21の第2流出筒状部21dの端面に形成されている。図6に示すように、第2流出口34は、ます本体21の底部の中央部分に設けられている。第2流出口34は、平面視において、点検口31内の中央部分に設けられている。第2流出口34は、平面視において、流入口32と第1流出口33との間に設けられている。図7に示すように、第2流出口34は、流入口32および第1流出口33よりも低い位置に設けられている。ここでは、第2流出口34の内径は、流入口32の内径および第1流出口33の内径と同じである。しかし、第2流出口34の内径は、流入口32の内径および第1流出口33の内径より大きくてもよいし、小さくてもよい。ここでは、第2流出口34の形状は、真円形状である。しかし、第2流出口34の形状は特に限定されず、惰円形状であってもよい。この場合、第2流出口34の長軸の方向は、流入口32の中心軸L32の方向と平行であるとよい。このことによって、第2流出口34が開放されているとき、流入口32からます本体21に流入した汚水が第2流入口34を乗り越えて第1流出口33へ流れにくくなる。第2流出口34からます本体21内を流れる汚水が流出する。図2に示すように、第2流出口34には、第2流出管路13の上流端が接続される。第2流出口34には、第2流出管路13を介して貯留槽70が接続されている。ただし、第2流出口34には、貯留槽70が直接接続されていてもよい。この場合、第2流出管路13は省略することができる。また、この場合、排水ます20は、貯留槽70の上に載置される。ここでは、第2流出口34は受口であるが、差口であってもよい。なお、排水ます20は、貯留槽70の内部に配置されていてもよい。この場合、貯留槽70の上部の開口部分に、排水ます20の点検口31が配置されていてもよい。このことによって、排水ます20および貯留槽70の配置スペースが小さくなるため、コンパクトに配置することができる。
図7に示すように、ます本体21において、縦筒状部21aの底面21aaと第2流出筒状部21dとの接続部分のうち流入口32と繋がる接続部分には、傾斜面22が設けられている。傾斜面22は、蓋体26を第2切替位置Bに配置したとき、ます本体21内の汚水を第2流出口34に導く部位である。傾斜面22は、第2流出口34に向かうに連れて下方に滑らかに傾斜している。傾斜面22は、第2流出口34に向かうに連れて傾斜が急になっている。ここでは、傾斜面22は、ます本体21の内部に向かって凸となるように湾曲している。具体的には、傾斜面22には、流入口32に向かうに連れて曲率半径が大きくなるようにアールが設けられている。
なお、本実施形態では、縦筒状部21aの底面21aaのうち流入口32と傾斜面22との間の底面には、設置段差部21abが形成されている。設置段差部21abは、第2流出口34側に下がった段差である。設置段差部21abには、後述する蓋体26のインバート部51の端部51aが設置される。ここでは、設置段差部21abの高さは、インバート部51の端部51aの厚みと略同じである。このことによって、インバート部51の端部51aが設置段差部21abに設置されることで、汚水を円滑にインバート部51に流すことができる。また、インバート部51が設置段差部21abに設置されていない状態、すなわち、第2流出口34が開放されている状態において、流入口32からます本体21内に流入した汚水は、設置段差部21abを通じて第2流出口34へ流れ易い。
ます本体21において、縦筒状部21aの底面21aaと第2流出筒状部21dとの接続部分のうち第1流出口33と繋がる接続部分には、上述したような傾斜面22が設けられていない。本実施形態では、縦筒状部21aの底面21aaと第2流出筒状部21dとの接続部分のうち第1流出口33と繋がる接続部分には、角部23が設けられている。角部23は、ます本体21の内部に向かって角張っている。ここでは、角部23は、直角になっている。図6に示すように、角部23は、平面視において、第2流出口34の周縁に沿って設けられており、第1流出口33の中心軸L33に向かうに連れて第1流出口33に近づいて配置されている。このことによって、第2流出口34が開放されているとき、流入口32からます本体21に流入した汚水が第2流入口34を乗り越えて第1流出口33へ流れにくくなる。このように、縦筒状部21aの底面21aaと第2流出筒状部21dとの接続部分のうち流入口32と繋がる接続部分と、第1流出口33と繋がる接続部分とでは、形状が異なる。なお、本実施形態では、角部23に対応するます本体21の外面は、湾曲しており、角部23が形成された部分は、第2流出筒状部21dよりも肉厚になっている。このことによって、角部23の強度が増している。
ここでは、図6に示すように、平面視において、ます本体21の内面であって、第2流出口34の前方および後方には、互いに対向するようにガイド面40が設けられている。図8に示すように、ガイド面40は、側面視において、第2流出口34に向かうにしたがって下方に傾斜している。このことによって、ガイド面40に汚水が乗り上げた場合、乗り上げた汚水を、ガイド面40に沿って、ます本体21の底に流すことができる。よって、ガイド面40に汚水が溜まることを防ぐことができる。
図6に示すように、排水ます20は、段差部41と、支持溝42と、確認部43を備えている。段差部41は、蓋体26を後述する第1切替位置A(図3参照)に配置したとき、蓋体26を支持する部位である。段差部41が蓋体26を支持することの詳しい説明は、後述する。段差部41は、平面視において、ます本体21の内面であって、第2流出口34の前方および後方に互いに対向するように設けられている。段差部41は、平面視において、流入口32の中心軸L32(なお、本実施形態では、中心軸L32は第1流出口33の中心軸L33と一致する)を挟んで対向するようにます本体21の側部に2つ設けられている。段差部41は、平面視において、流入口32の軸方向(または、第1流出口33の軸方向)において、点検口31内の中央部分に設けられている。ここでは、段差部41は、平面視において、ガイド面40よりも第2流出口34側に設けられている。図7に示すように、段差部41は、点検口31の中心軸L31に向かうにしたがって下方に傾斜する面41aを有している。図6に示すように、段差部41は、円弧状の形状を有している。
支持溝42は、蓋体26を後述する第2切替位置B(図9参照)に配置したとき、蓋体26を支持する部位である。支持溝42が蓋体26を支持することの詳しい説明は、後述する。支持溝42は、平面視において、ます本体21の内面であって、第2流出口34の前方および後方に互いに対向するように2つ設けられている。ここでは、支持溝42は、段差部41内に設けられた溝である。支持溝42は、平面視において、ガイド面40よりも第2流出口34側に設けられている。図7に示すように、支持溝42は、正面視において、段差部41よりも下方(詳しくは、真下)に設けられている。図6に示すように、支持溝42は、平面視において、流入口32の軸方向L32(または、第1流出口33の軸方向L33)において、ます本体21の中央部分に設けられている。図7に示すように、支持溝42は、下方に凹んだ円弧状の溝である。ただし、支持溝42の形状は特に限定されない。支持溝42の表面には、複数の突起45が設けられている。ここでは、各支持溝42につき、5つの突起45が設けられているが、突起45の数は特に限定されない。複数の突起45は、互いが等間隔になるように支持溝42の表面に配置されているが、その間隔は特に限定されない。例えば、複数の突起45の互いの間隔は、平面視において、支持溝42の中央に近づくにしたがって狭くなってもよい。
図3に示すように、確認部43は、蓋体26が第1切替位置Aに配置されたとき、蓋体26が段差部41に正しく配置されているか否かを確認するための部材である。図6に示すように、確認部43は、平面視において、ます本体21の内面であって、第2流出口34の前方および後方に設けられている。確認部43は、第2流出口34を挟んで互いに対向している。ここでは、確認部43は、段差部41よりも外方であって、ガイド面40の中央部分に配置されている。確認部43の一部は、ガイド面40から段差部41に突出している。確認部43は、板状である。確認部43は、弾性部材によって形成されているとよく、ここでは、ゴム製である。確認部43は、ます本体21の他の部位とは異なる色彩であるとよい。例えば、確認部43は、黄色で彩られていてもよい。
次に、蓋体26について説明する。図3に示すように、蓋体26は、ます本体21内に着脱可能に設けられており、ます本体21に対して着脱することでます本体21を流れる汚水の流路を切り替える部材である。図9は、蓋体26を第2切替位置Bに配置した状態を示しており、排水ます20の平面図である。図10は、蓋体26を第2切替位置Bに配置した状態を示しており、排水ます20の正面断面図である。なお、図3から図5は、蓋体26を第1切替位置Aに配置した状態を示している。蓋体26は、ます本体21内において、第1切替位置A(図3参照)と第2切替位置B(図9参照)との間で位置変更が可能なものである。図5に示すように、第1切替位置Aは、ます本体21内に設けられた状態で、流入口32から流入した汚水が第1流出口33に流れるように流入口32と第1流出口33とを連通させる位置である。図10に示すように、第2切替位置Bは、ます本体21内に設けられた状態で、流入口32から流入した汚水が第2流出口34に流れるように流入口32と第2流出口34とを連通させる位置である。ここでは、蓋体26は、ます本体21の第2流出口34を開閉自在に設けられている。図5に示すように、蓋体26は、第1切替位置Aに配置されたときに第2流出口34を閉鎖する。このとき、図3に示すように、蓋体26は、平面視において、点検口31内の中央部分に配置されている。一方、図10に示すように、蓋体26は、第2切替位置Bに配置されたときに第2流出口34を開放する。このとき、図9に示すように、蓋体26は、平面視において、点検口31内の中央部分に配置されている。すなわち、ます本体21内を流れる汚水の流路が切り替わる前後において、蓋体26は、平面視において、点検口31内の中央部分に配置されている。本実施形態では、蓋体26は、本発明の「流路切替手段」に対応する。
図11は、蓋体26の平面図である。図12は、蓋体26の正面図である。図13は、蓋体26の側面図である。図14は、蓋体26の底面図である。なお、図11から図14において、符号F、Rr、L、Rは、第1切替位置Aにおける蓋体26の方向を示している。図12に示すように、蓋体26は、インバート部51と、突出部52と、把持部53と、嵌合凸部54と、越流防止板55とを備えている。
図5に示すように、蓋体26を第1切替位置Aに配置したとき、インバート部51は、流入口32からます本体21に流入した汚水を第1流出口33へ流す流路となる部位である。蓋体26が第1切替位置Aに配置されたとき、インバート部51は、流入口32と第1流出口33とを繋ぐ。図13に示すように、インバート部51は、流入口32の底面および第1流出口33の底面と連続するように、略Uの字状に形成されている。インバート部51は、流入口32と第1流出口33との間の溝である。ここでは、図11に示すように、インバート部51は、真っ直ぐな溝である。しかし、インバート部51は、一部が湾曲した溝であってもよい。蓋体26を第2切替位置Bに配置したとき、インバート部51の端部51aは、ます本体21の支持溝42に配置される。そのため、インバート部51の端部51aの外周面は、支持溝42に対応する形状であるとよい。ここでは、インバート部51の外周形状は、円弧形状である。
図3に示すように、突出部52は、蓋体26が第1切替位置Aに配置されたとき、段差部41によって支持される部位である。図11に示すように、突出部52は、インバート部51の側部から外方に突出している。詳しくは、図13に示すように、突出部52は、インバート部51の前部および後部の上端から外方に突出するように、インバート部51に設けられている。図3に示すように、突出部52は、ます本体21の段差部41に合致する形状を有している。ただし、突出部52は、段差部41に合致する形状でなくてもよく、この場合、段差部41よりも小さいことが好ましい。ここでは、突出部52は、板状であり、円弧状の形状を有している。
図11に示すように、把持部53は、作業者が蓋体26の位置を切り替える際に使用する部位であり、把持可能なものである。把持部53は、インバート部51を跨ぐように配置されている。把持部53は、インバート部51の流路方向において、インバート部51の中央部分に設けられている。把持部53の形状は特に限定されない。ここでは、図13に示すように、把持部53は、インバート部51の2つの上端を架け渡すような形状を有している。把持部53は、インバート部51と一体であってもよいし、別体であってもよい。ここでは、図11に示すように、インバート部51の両端部51aには、補強部材53aが設けられている。補強部材53aは、インバート部51の右上端部同士、および、インバート部51の左上端部同士を架け渡すように設けられている。この補強部材53aによって、インバート部51を変形しにくくすることができる。なお、補強部材53aは、把持可能であるため、把持部53と同様に、作業者が蓋体26の位置を切り替える際に使用する部位として使用されてもよい。
図5に示すように、嵌合凸部54は、蓋体26を第1切替位置Aに配置したとき、第2流出口54を閉塞する部位である。ここでは、嵌合凸部54は、ます本体21の第2流出筒状部21dに嵌合可能な部位である。図14に示すように、嵌合凸部54は略円筒状である。本実施形態では、図13に示すように、嵌合凸部54の外周面には、ゴム製のシール部材54aが設けられている。このシール部材54aによって、第2流出筒状部21dと嵌合凸部54との間のシールが図られている。
図10に示すように、越流防止板55は、蓋体26を第2切替位置Bに配置したとき、流入口32からます本体21内に流入した汚水が、第2流出口34を超えて、第1流出口33に流れることを防止する部位である。図12に示すように、越流防止板55は、インバート部51の底面の中央部分から下方に向かって延びている。図14に示すように、越流防止板55は、嵌合凸部54に囲まれるようにして配置されている。図12に示すように、越流防止板55は、下部に向かう程、幅が短くなっている平板状の部材で形成されている。
次に、蓋体26を第1切替位置Aおよび第2切替位置Bに配置したときの、蓋体26とます本体21との位置関係について詳しく説明する。図3に示すように、蓋体26を第1切替位置Aに配置したとき、蓋体26の突出部52は、ます本体21の段差部41に配置される。蓋体26は、段差部41によって支持されている。このとき、蓋体26は、平面視において、点検口31内の中央部分に配置されている。蓋体26は、平面視において、点検口31の中心点L31と重なる位置に配置されている。ここでは、蓋体26の中心軸L26と点検口31の中心軸L31とは一致している。このとき、蓋体26のインバート部51は、流入口32と第1流出口33とを繋いでおり、汚水の流路となっている。インバート部51の両端51aは、流入口32の中心軸L32(言い換えると、第1流出口33の中心軸L33)上に配置されている。ここでは、図5に示すように、インバート部51の一方の端部51aは、縦筒状部21aの底面21aaのうち流入口32と傾斜面22との間の底面の形成された設置段差部21abに配置されている。このとき、インバート部51は、流入口32側の底面21aaと滑らかに連続している。ここでは、インバート部51と第1流出口33側の底面21aaとによって段差が形成されている。蓋体26の嵌合凸部54は、ます本体21の第2流出筒状部21dに嵌っている。そのため、蓋体26が第1切替位置Aに配置されたとき、蓋体26は、ます本体21に固定されており、揺動不能となっている。なお、このとき、越流防止板55は、その面が前後方向に向くようにして配置されている。また、このとき、図4に示すように、越流防止板55の下部は、第2流出口34から下方へ突出している。なお、蓋体26を第1切替位置Aに配置したとき、ます本体21の傾斜面22は、蓋体26のインバート部51の下方に位置している。詳しくは、蓋体26を第1切替位置Aに配置したとき、傾斜面22は、インバート部51によって覆われている。
本実施形態では、上述したように、蓋体26が第1切替位置Aに配置されたとき、蓋体26の突出部52がます本体21の段差部41に正しく載置されているかを確認部43によって確認することができる。図15は、突出部52が段差部41に正しく載置されている状態を示す突出部52および段差部41の断面図である。図16は、突出部52が段差部41に正しく載置されていない状態を示す突出部52および段差部41の断面図である。
図15に示すように、蓋体26の突出部52が段差部41に正しく載置されているとき、確認部43の先端部分43aは、突出部52の上方に位置している。この場合、図3に示すように、平面視において、確認部43の先端部分43aを目視することができる。一方、図16に示すように、突出部52が段差部41に正しく載置されておらず、段差部41に対して多少ずれて載置されている場合、確認部43が折れ曲がる。そのため、確認部43の先端部分43aは、突出部52と段差部41との間に位置する。この場合、平面視において、確認部43の先端部分43aを目視することができない。このように、本実施形態では、平面視において、確認部43の先端部分43aが目視できるか否かによって、蓋体26が第1切替位置Aに正しく配置されているか否かを判別することができる。
図9に示すように、蓋体26を第2切替位置Bに配置したとき、蓋体26のインバート部51の端部51aが、ます本体21の支持溝42に載置されている。このとき、蓋体26は、支持溝42によって支持されている。図10に示すように、蓋体26が第2切替位置Bに配置されたとき、蓋体26は、第1切替位置A(図5参照)のときよりも高い位置に配置されている。このとき、第1切替位置Aに配置されたときと同様に、蓋体26は、図9に示すように、平面視において、点検口31内の中央部分に配置されており、かつ、点検口31の中心点L31と重なる位置に配置されている。ここでは、蓋体26の中心軸L26と点検口31の中心軸L31とは一致している。このとき、インバート部51の両端は、平面視において、流入口32の中心軸L32(言い換えると、第1流出口33の中心軸L33)と直交し、かつ、点検口31の中心点L31を通る直線L1上に配置されている。
このとき、図10に示すように、越流防止板55は、その面が左右方向に向くようにして配置されている。蓋体26の嵌合凸部54は、ます本体21の第2流出筒状部21dよりも上方に位置しており、第2流出筒状部21dには嵌っていない。ここでは、インバート部51の端部51aが支持溝42に載置されている状態のみで、蓋体26がます本体21に支持されている。蓋体26は、ます本体21に対して揺動可能である。蓋体26は、支持溝42に沿って、その位置および角度を変更することが可能である。図17は、蓋体26がます本体21に対して揺動した状態を示す図である。蓋体26が第2切替位置Bに配置された状態において、流入口32からます本体21内に汚水が流れてきた場合、その汚水は、第2流出口34の上方において、蓋体26の越流防止板55にぶつかる。このとき、蓋体26が第1流出口33側へ回転する。そして、越流防止板55の下部が、縦筒状部21aと第2流出筒状部21dとの接続部分のうち第1流出筒状部21c側の接続部分23に接触する。第1流入口33は、越流防止板55によって閉鎖される。このことによって、蓋体26を第2切替位置Bに配置したとき、流入口32からます本体21内に流入した汚水が、第2流出口34を超えて、第1流出口33に流れることを防止することができる。
貯留槽70は、図2に示すように、貯留槽70は、排水設備5から排出された汚水を貯留する槽である。貯留槽70は、タンクによって構成されており、内部に密封された空間を有している。貯留槽70の側面上部には、排水口71が形成されている。排水口71には、第2流出管路13の下流端が接続されており、第2流出管路13を介して排水ます20の第2流出口34が接続されている。
貯留槽70の上面には、鉛直方向に円筒78が突設されている。円筒78は、上端が地面と略同一の高さとなるようにして、貯留槽70の上面に設けられている。作業者は、円筒78を通じて、貯留槽70の内部を保守および点検することができる。なお、通常時において、円筒78の上部は蓋79によって閉塞されている。
次に、本実施形態に係る排水システム1および排水ます20の利用方法について説明する。図1に示すように、排水システム1は、通常時には排水設備5から流出した汚水を下水本管15に排出し、地震または津波などの災害が発生して、下水本管15が破損したときには、排水ます20内を流れる汚水の流路を切り替えて、排水設備5から流出する汚水を貯留槽70へ排出するように用いられる。以下の説明では、通常時の利用態様を通常時モードといい、災害時の利用態様を災害時モードということとする。
通常時モードでは、図3に示すように、流入口32と第1流出口33とを連通させる第1切替位置Aに、蓋体26をます本体21内に配置する。詳しくは、蓋体26の嵌合凸部54をます本体21の第2流出筒状部21dに嵌めると共に、蓋体26の突出部52をます本体21の段差部41に載置する。
通常時モードでは、図1に示すように、排水設備5から流出した汚水は、流入管路11を流れた後、排水ます20の流入口32からます本体21内に流入する。図3に示すように、ます本体21内に流入した汚水は、蓋体26のインバート部51を通り、第1流出口33からます本体21の外へ流出する。このとき、図5に示すように、第2流出口34は、蓋体26によって閉塞されている。傾斜面22は、インバート部51によって覆われている。よって、ます本体21内の汚水は、傾斜面22に沿って第2流出口34には流れない。図2に示すように、第1流出口33から流出した汚水は、第1流出管路12を流れ、下水本管15に排出される。下水本管15に排出された汚水は、汚水処理場などに導かれ、浄化処理される。
災害時モードでは、第1切替位置Aから、流入口32と第2流出口34とが連通する第2切替位置Bへ蓋体26の位置を変更する。例えば、以下のようにして蓋体26の位置を変更することができる。まず、作業者は、点検筒17に被せられた蓋18を取り外す。次に、図5に示すように、作業者は、蓋体26の把持部53を持って、蓋体26を引き上げる。そして、図9に示すように、作業者は、蓋体26のインバート部51の端部51aがます本体21の支持溝42の上方に位置するように、蓋体26を90度回転させる。このときの回転の向きは右回りでもよいし、左回りでもよい。作業者は、インバート部51の端部51aを支持溝42に載置することによって、蓋体26を第2切替位置Bに配置する。
災害時モードでは、図1に示すように、排水設備5から流出した汚水は、第1流出管路11を流れた後、流入口32からます本体21内に流入する。図17に示すように、ます本体21内に流入した汚水が蓋体26の越流防止板55にぶつかることで、蓋体26が第1流出口33側へ回転する。そして、越流防止板55の下部が、縦筒状部21aと第2流出筒状部21dとの接続部分23に接触する。このことによって、第1流出口33は越流防止板55によって閉塞される。よって、ます本体21内の汚水は、ます本体21の傾斜面22に沿って、第2流出口34に向かって流れ、第1流出口33には流れない。その後、図2に示すように、汚水は、第2流出口34からます本体21の外へ流出する。第2流出口34から流出した汚水は、第2流出管路13を通じて貯留槽70へ排出され、貯留槽70に貯留される。貯留槽70に貯留された汚水は、例えば、吸引ポンプによって吸い上げられる。この場合、作業者は、貯留槽70の上面に設けられた円筒78の上部を閉塞する蓋79を取り外す。そして、円筒78を介して、貯留槽70に上記吸引ポンプを挿入する。そして、上記吸引ポンプによって、貯留槽70に貯留された汚水を外部へ吸い上げる。
以上のように、本実施形態では、第2流出管路12または下水本管15が破損した場合であっても、排水ます20によって汚水の流路を切り替えることで、排水設備5から流入管路11に流入する汚水を、排水ます20を通じて、第2流出管路13から貯留槽70に排出することができる。
本実施形態では、図10に示すように、ます本体21の縦筒状部21aの底面21aaと第2流出筒状部21dとの接続部分のうち流入口32と繋がる接続部分には、第2流出口34に向かうに連れて下方に傾斜した傾斜面22が設けられている。このことによって、蓋体26を第2切替位置Bに配置したとき、流入口32と第2流出口34とは連通しているため、流入口32からます本体21内に流入した汚水を第2流出口34へ流すことができる。このとき、傾斜面22によって、汚水は第2流出口34へ導かれる。よって、蓋体26を第2切替位置Bに配置したとき、汚水が第2流出口34へ流れ易くなると共に、第1流出口33には流れにくくなる。
傾斜面22は、第2流出口34に向かうに連れて下方に滑らかに傾斜している。ここでは、傾斜面22は、ます本体21の内側に凸となるように湾曲している。このことによって、蓋体26を第2切替位置Bに配置したとき、流入口32からます本体21内に流入した汚水が傾斜面22に溜まることなく傾斜面22に沿って第2流出口34へ流れ易い。
ます本体21の第2流出筒状部21dと縦筒状部21aの底面21aaとの接続部分のうち第1流出口34と繋がる接続部分には、ます本体21の内部に向かって角張った角部23が設けられている。蓋体26を第2切替位置Bに配置して、流入口32からます本体21内に汚水が勢いよく流入した場合、その汚水は第2流出口34を乗り越えるおそれがある。しかし、本実施形態では、第2流出口34を乗り越えた汚水は、角部23によって第1流出口33に流れることを塞き止められ易くなる。
本実施形態では、蓋体26を第2流出口34に着脱することによって、蓋体26で第2流出口34を閉鎖したり開放したりすることができる。よって、蓋体26で第2流出口34を閉鎖したり開放したりするという簡単な構成で、ます本体21内を流れる汚水の流路を切り替えることができる。本実施形態では、作業者は、点検口31を通じて蓋体26を操作することによって、第2流出口34を開閉することができる。よって、作業者が汚水の流路を容易に切り替えることができる。
以上、本実施形態に係る排水システム1について説明した。しかし、本発明に係る排水システムは、本実施形態に係る排水システム1に限らず、他の種々の形態で実施することができる。
<他の実施形態>
上記実施形態では、図5に示すように、傾斜面22は、ます本体21の内部に向かって凸となるように湾曲していた。しかし、傾斜面22の形状は特に限定されない。例えば、傾斜面22は、ます本体21の外部に向かって凹むように湾曲していてもよい。傾斜面22は、真っ直ぐな傾斜面であってもよいし、波打った傾斜面であってもよい。
上記実施形態では、ます本体21の第2流出筒状部21dと縦筒状部21aの底面21aaとの接続部分のうち第1流出口33に繋がる接続部分には、ます本体21の内部に向かって角張った角部23が設けられていた。しかし、この角部23は省略することが可能である。また、角部23の代わりに傾斜面22と同様な傾斜面を設けてもよい。すなわち、第2流出筒状部21dと縦筒状部21aの底面21aaとの接続部分のうち第1流出口33に繋がる接続部分には、第2流出口34に向かうに連れて下方に傾斜した傾斜面が設けられていてもよい。