以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
実施形態1の低高地用交通システム(以下、交通システムという)は、低地と高地との間における人員搬送用の交通システムである。この交通システムは、図1に示されるように、低地に設けられた第1の乗降場1と、高地に設けられた第2の乗降場2と、これらを接続するよう敷設された環状レール3と、環状レール3上を走行する搬送車両5と、搬送車両5を駆動させる駆動装置7とを備えている。
第1の乗降場1は、低地に設けられる。ここで言う低地は、山地等の高い土地に比べて低い土地を指し、例えば、平野や盆地や山麓等が挙げられる。第1の乗降場1は、搭乗者が搬送車両5に乗り込んだり、搬送車両5から降りたりする、いわゆるプラットホームである。第1の乗降場1は、図2に示されるように、搬送車両5が入場する入口部11と、搭乗者が搬送車両5に乗降するための乗降部12と、第1の乗降場1から搬送車両5が出るための出口部13とを備えている。第1の乗降場1は、環状レール3に沿って入口部11・乗降部12・出口部13と順に形成されており、環状レール3に沿って所定の長さを有している。本実施形態の第1の乗降場1は、平面視略U字状に形成されている。
第2の乗降場2は、高地に設けられる。言い換えると、第2の乗降場2は、第1の乗降場1よりも高い位置に設けられる。ここで言う高地は、低地に比べて高い土地を指し、例えば、山頂や高原や高台等が挙げられる。また高地は、山の中腹であってもよい。第2の乗降場2も、第1の乗降場1と同様、搭乗者が搬送車両5に乗り込んだり、搬送車両5から降りたりする、いわゆるプラットホームである。第2の乗降場2は、図2に示されるように、第1の乗降場1と同様の構造となっている。第2の乗降場2は、入口部21と、乗降部22と、出口部23とを備えている。第2の乗降場2も、環状レール3に沿って入口部21・乗降部22・出口部23と順に形成されており、環状レール3に沿って所定の長さを有している。本実施形態の第2の乗降場2は、平面視略U字状に形成されている。
環状レール3は、往路31と復路32との両端が相互に連結されている(なお、本実施形態では、低地から高地へ向かう経路を往路31とし、高地から低地に向かう経路を復路32とする)。言い換えると、環状レール3は、搬送車両5が循環可能な、いわゆる無端レールである。環状レール3は、図2に示されるように、第1の乗降場1内に敷設された第1のレール部33と、第2の乗降場2内に敷設された第2のレール部34と、第1の乗降場1と第2の乗降場2との間に敷設された第3のレール部35とを備えている。第3のレール部35は、一方の端部に第1のレール部33が連結されており、他方の端部に第2のレール部34が連結されている。
第1のレール部33は、第1の乗降場1の入口部11・乗降部12・出口部13に沿って形成されている。第2のレール部34は、第2の乗降場2の入口部21・乗降部22・出口部23に沿って形成されている。第1のレール部33及び第2のレール部34は、平面視略略U字状をしている。第1のレール部33は第1の乗降場1と同じ高さに設けられている。第2のレール部34は第2の乗降場2と同じ高さに設けられている。言い換えると、第2のレール部34は、第1のレール部33よりも高い箇所に設けられている。
第3のレール部35は、一方の端部側ほど、漸次高い位置に位置するよう傾斜している。言い換えると、第3のレール部35は、第1の端部351と、第1の端部351とは反対側の第2の端部352とを有しており、第1の端部351から第2の端部352に近づく程、漸次高い位置に位置するよう傾斜する。本実施形態の第3のレール部35は、水平方向に対して約25°傾斜している。第1の端部351は、第1のレール部33に接続される。第2の端部352は、第2のレール部34に接続される。
環状レール3は、図5,6に示されるように、地面に固定される基体部36と、基体部36に固定された一対の鋼管軌条37とを備えている。鋼管軌条37は、筒状に形成されている。本実施形態の鋼管軌条37は円筒状に形成されている。
基体部36は、地面に設けられた複数の支柱部361と、支柱部361に支持される横架部362と、横架部362に設けられて鋼管軌条37を支持する正面視U字状の支持腕部363とを有している。基体部36は、地面に固定されており、これにより横架部362及び支持腕部363を介して、一対の鋼管軌条37を支持する。支持腕部363は、鋼管軌条37の対向間の距離を保持する。また支持腕部363は、鋼管軌条37の相互の高さを同レベルに保ったまま保持する。
本実施形態の交通システムは、図2に示されるように、第1の乗降場1と第2の乗降場2とを繋ぐ歩廊4を備えている。歩廊4は、環状レール3に沿って設けられている。歩廊4は、環状レール3の第3のレール部35に略平行に設けられており、第2の乗降場2側ほど高くなるよう漸次傾斜している。本実施形態の歩廊4は、第1の乗降場1から第2の乗降場2まで連続している。
歩廊4は、図6に示されるように、搬送車両5に隣接配置されており、搬送車両5が緊急停止した場合に、搭乗者が搬送車両5から降り立つことができる位置に設けられている。本実施形態の歩廊4は、搬送車両5よりもやや下方に設けられている。これにより、作業者が、搬送車両5と環状レール3との間の隙間を通して、歩廊4から搬送車両5の下方を点検することができるようになっている。歩廊4は、環状レール3の基体部36から側方に延設された支持台部41に取り付けられている。支持台部41は、基体部36から片持ち梁状に突出している。
搬送車両5は、搭乗者を乗せて第1の乗降場1と第2の乗降場2との間を移動する。搬送車両5は、図5等に示されるように、人員が搭乗可能な搬送器51と、回転自在な車輪52と、車輪52を搬送器51に回動自在に取り付けるための台車部53とを備えている。
搬送器51は、図5,7等に示されるように、内部に搭乗空間が形成されている。搬送器51は、略矩形箱形状に形成されている。搬送器51は、環状レール3上に車輪52を介して載せられており、これにより環状レール3上をレールに沿って移動することができるようになっている。搬送器51は、進行方向に直角な方向(側方)に開口する出入口用開口部511と、出入口用開口部511を開閉自在に閉塞する開閉扉512とを備えている。また搬送器51は、自動的に開閉扉512を開閉駆動させる扉開閉機構部(図示せず)を備えている。
本実施形態の開閉扉512は、2枚扉により構成されている。開閉扉512は、左右方向に互いに離接するよう移動自在となっている。開閉扉512は、搬送器51の出入口用開口部511の上縁及び下縁に設けられたガイドレール(図示せず)に沿ってスライド移動する。
扉開閉機構部は、搬送器51が第1の乗降場1及び第2の乗降場2内に入場すると、自動的に開閉扉512を開放させる。また扉開閉機構部は、第1の乗降場1及び第2の乗降場2以外の場所では、自動的に開閉扉512を閉塞させる。扉開閉機構部は、機械的に開閉扉512を開閉させるものであってもよいし、電気的な信号により制御されたアクチュエータを駆動させて開閉扉512を開閉制御するものであってもよい。
搬送器51は、内部の搭乗空間に、座席54が設けられている。座席54は、図8に示されるように、搬送器51が環状レール3における傾斜する箇所に位置しても、シート部542の座部が略水平状態を保持するよう駆動する。言い換えると、座席54は、その座部が常時略水平状態を保持するよう駆動する可動式の座席である。座席54は、搬送器51内部に固定された座席用固定台541と、座席用固定台541に回動自在に設けられたシート部542と、シート部542の回動速度を和らげるダンパ543を備えている。
座席用固定台541は、図7に示すように、平面視コ字状をしている。座席用固定台541は、進行方向に並ぶよう複数設けられている。座席用固定台541は、シート部542に設けられた軸部545を回動自在に支持する軸受部544を備える。軸受部544は、進行方向とは直角な方向に離間して一対設けられている。
シート部542は、進行方向及び上方に開口しており、断面略L字状に形成されている。シート部542は、搭乗者が座る部分となる座部と、座部から立設された背凭れ部と、背凭れ部に設けられて進行方向とは直角な水平方向に突出する軸部545とを備えている。シート部542は、軸部545と軸受部544とを介して、座席用固定台541に揺動自在に取り付けられている。
ダンパ543は、シート部542の下端部と、搬送器51の底面との間に取り付けられている。ダンパ543は、シート部542の回動の速度(言い換えると揺動速度)を減衰させる。ダンパ543は、ショックアブソーバにより構成されている。なお、ショックアブソーバとしては、ガス封入式であっても、オイル封入式であってもよい。またダンパ543は、回動するシート部542と搬送器51の底面との間に設けられたものに限られず、シート部542と座席用固定台541との間に取り付けられていてもよい。
座席54は、環状レール3の傾斜に伴い、搬送器51が傾斜すると、図8に示されるように、搭乗者の自重を利用して、シート部542が揺動する。ダンパ543は、それに連動して伸縮するよう駆動する。シート部542は、ゆっくりと軸部545廻りに回動する。これにより座部が、常時、水平状態を保持するよう駆動する。
車輪52は、図5,6に示されるように、搬送器51に台車部53を介して取り付けられている。車輪52は、搬送器51と環状レール3との間に設けられている。車輪52は、搬送器51の四隅部に設けられている。各車輪52は、環状レール3を構成する鋼管軌条37の表面を転動する。本実施形態の各車輪52は、3つのタイヤにより構成されており、鋼管軌条37を上下方向の2点及び水平方向のいずれか一方の1点の計3点で抱持する。車輪52は、鋼管軌条37の上方を転動する上タイヤ521と、鋼管軌条37の下方を転動する下タイヤ522と、鋼管軌条37の側方を転動する横タイヤ523とを備えている。横タイヤ523は、一対の鋼管軌条37の対向側とは反対側(つまり外側)に位置するよう、それぞれ設けられている。上タイヤ521と横タイヤ523と下タイヤ522とは、鋼管軌条37に対し、全てのタイヤが接触していてもよいし、上タイヤ521のみ接触して下タイヤ522及び横タイヤ523は近接対向していてもよい。
台車部53は、図5,6に示されるように、搬送器51の下面に固定されている。台車部53は、台車本体により主体が構成されている。台車本体には、車輪52が取り付けられている。台車本体には、後述の集電装置59の受電部55、後述の動力受け部56、後述の握索装置6等が設けられている。
握索装置6は、環状レール3に沿って張設された索条81(ワイヤー)を握放索自在に構成されている。握索装置6は、台車本体を介して搬送器51に固定されている。握索装置6は、図6等に示されるように、索条81の下方に位置する第1の握子61と、第1の握子61に接離自在に設けられた第2の握子62と、第2の握子62を第1の握子61に向けて付勢する弾性体63と、第1の握子61と第2の握子62とを開く方向に駆動させる押圧開放部64とを備えている。
第1の握子61は、台車本体の下面から下方に向けて突出した取付片66に設けられている。第1の握子61は、取付片66から側方に向けて突出している。第1の握子61の先端には、下方に凹曲する第1握部611が設けられている。
第2の握子62は、取付片又は第1の握子61に回動自在に取り付けられている。第2の握子62は、第1の握子61の長手方向に沿うようにして配置される。第2の握子62の先端には、上方に凹曲する第2握部621が設けられている。第2握部621は、第1握部611との間で、索条81を挟圧する。
弾性体63は、回動自在な第2の握子62を、第1の握子61側に常時付勢する。これにより第2握部621は、第1握部611側に押し付けられる。弾性体63は、コイルバネにより構成されている。
押圧開放部64は、第2の握子62に設けられている。押圧開放部64は、第2の握子62の第2握子とは反対側の端部に設けられている。言い換えると、押圧開放部64は、第2の握子62の回動中心を挟んで、第2握部621とは反対側に設けられている。押圧開放部64は、下方側に押圧されると、第2握部621を上方側に移動させ、これにより第1握部611と第2握部621とが離れる。本実施形態の押圧開放部64には、搬送器51進行方向に沿って回転自在に設けられた開閉ローラ65を備えている。
環状レール3には、図3,4に示されるように、押圧開放部64を押圧して、第1握部611及び第2握部621を離間させる押圧ガイド部38が設けられている。押圧ガイド部38は、第1の乗降場1及び第2の乗降場2に対応する箇所に設けられている。押圧ガイド部38は、第1の乗降場1の入口部11及び出口部13にそれぞれ設けられている。また押圧ガイド部38は、第2の乗降場2の入口部21及び出口部13にそれぞれ設けられている。言い換えると、押圧ガイド部38は、後述の乗降場1,2内の摩擦タイヤ71が設けられた領域と、索条81が設けられた領域とが重複する箇所に設けられている。押圧ガイド部38は、搬送器51の移動方向の上手側の端部には、同端部側に行くほど上方に位置するよう傾斜した導入部(図示せず)が形成されている。
なお、第1の乗降場1及び第2の乗降場2にそれぞれ設けられた押圧ガイド部38は、乗降場1,2の全長(入口部11,21・乗降部12,22・出口部13,23)に亘って連続して設けられてもよい。
例えば、搬送器51が第1の乗降場1に入場すると、握索装置6の押圧開放部64が、入口部11側の押圧ガイド部38の導入部に当接する。この状態で搬送器51が移動を続けると、押圧ガイド部38が下方に押圧され、これにより握索装置6が放索状態となる(図5参照)。
搬送器51が第1の乗降場1の入口部11に沿って移動し、押圧ガイド部38が押圧開放部64から離脱すると、弾性体63の付勢力に従って第2握部621が第1握部611側に移動し、これにより握索装置6が握索状態となる(図6参照)。このまま搬送器51が乗降部12に沿って移動し、出口部13に差し掛かると、握索装置6の押圧開放部64が、出口部13側の押圧ガイド部38の導入部に当接する。これにより、再度、握索装置6が開放する。この後、搬送器51が第1の乗降場1から出ると、握索装置6は、押圧開放部64が出口部13側の押圧ガイド部38から離脱し、これにより握索状態に切り替わる。
なお、第2の乗降場2内での握索装置6の動作は、第1の乗降場1内における動作と同じであるため説明は省略する。
本実施形態の低高地用交通システムは、搬送器51を環状レール3上で駆動させる駆動装置7が設けられている。駆動装置7は、搬送器51ではなく、環状レール3側に設けられている。
駆動装置7は、第1の乗降場1内での搬送器51の駆動源となる第1の駆動部70と、第1の乗降場1と前記第2の乗降場2との間での搬送器51の駆動源となる第2の駆動部80と、第2の乗降場2内での搬送器51の駆動源となる第3の駆動部90とを備えている。駆動装置7は、第1の乗降場1又は第2の乗降場2に設けられた制御装置100に接続されており、各駆動部70,80,90が駆動制御されている。なお本実施形態の制御装置100は、図4に示されるように、第2の乗降場2に設けられた上側ピット24内に配置されている。
第1の駆動部70は、図3に示されるように、第1の乗降場1内の略全長に亘って設けられている。第1の駆動部70は、第1の乗降場1内で搬送器51を一定の速度で移動させる。第1の駆動部70は、図5に示されるように、環状レール3の基体部36の支持腕部363に固定されている。第1の駆動部70は、図3に示されるように、進行方向に並ぶよう複数設けられている。第1の駆動部70は、図5に示されるように、搬送器51に固定された動力受け部56に接触する摩擦タイヤ71と、摩擦タイヤ71を駆動するモーター72とを備えている。
動力受け部56は、進行方向に長尺な摩擦板561を備えている。摩擦板561は、その主面が下方に臨むよう配置されている。動力受け部56は、台車部53に設けられており、これにより搬送器51の下面に固定されている。動力受け部56は、搬送器51の進行方向に平行となるよう配置され、本実施形態においては、搬送器51における進行方向の略全長に亘って設けられている。
摩擦タイヤ71は、動力受け部56の摩擦板561に接触した状態で回転することで、搬送器51を進行方向に推進する。摩擦タイヤ71は、モーター72に接続されている。摩擦タイヤ71は、モーター72が回転駆動することで回転する。なおモーター72は、制御装置100に設けられたインバータ回路により、回転停止制御だけでなく、回転速度の制御(回転数の制御)をも行なわれている。
第1の駆動部70は、図3に示されるように、回転駆動する摩擦タイヤ71が、第1の乗降場1に沿って略U字状に複数配列された構成となっている。摩擦タイヤ71は、一定のピッチで設けられている。摩擦タイヤ71間の距離(ピッチ寸法)は、動力受け部56の摩擦板561の長手方向の長さよりも短くなっている。言い換えると、複数の摩擦タイヤ71のうちの少なくとも一つは、第1の乗降場1内に位置する搬送器51の摩擦板561に、常に接触した状態となっている。
第1の駆動部70は、進入方向から順に、高速運転を行なう第1の区間73、減速運転を行なう第2の区間74、低速運転を行なう第3の区間75、加速運転を行なう第4の区間76、高速運転を行なう第5の区間77に分けられる。
第1の区間73内の摩擦タイヤ71は、高速回転を行うことで、第3のレール部35を高速移動した搬送車両5をスムーズに第2のレール部34に移行させる。第1の区間73内の摩擦タイヤ71は、全て略同じ一定の回転速度で回転する。第1の区間73内を走行する搬送車両5は、第3のレール部35上を走行する搬送車両5と略同じ速度で走行する。
第2の区間74内の摩擦タイヤ71は、第1の区間73内の摩擦タイヤ71よりも回転速度が遅くなっている。第2の区間74内の摩擦タイヤ71は、第3の区間75に近い摩擦タイヤ71ほど、回転速度が遅くなるよう制御されているのが好ましい。第2の区間74内の摩擦タイヤ71は、第1の区間73を高速で走行した搬送車両5の速度を減速する。
第3の区間75内の摩擦タイヤ71は、第2の区間74における第3の区間75に最も近い摩擦タイヤ71と略同じ回転速度になっている。第3の区間75内の摩擦タイヤ71は、全て、低速回転を一定の速度で行なう。これにより、乗降部12に沿って移動する搬送車両5の速度を、搭乗者が容易に搭乗できる速度で走行させる。このとき、搭乗者として、老人や子供が搭乗することを考慮する必要がある。このため第3の区間75の摩擦タイヤ71は、搬送車両5を、できるだけゆっくりとした速度で走行させるものであることが好ましい。
第4の区間76内の摩擦タイヤ71は、第5の区間77に近い摩擦タイヤ71ほど回転速度が速くなるよう制御されている。第4の区間76内の摩擦タイヤ71は、第3の区間75を低速で走行した搬送車両5の速度を加速する。
第5の区間77内の摩擦タイヤ71は、高速回転を行うことで、第4の区間76内で加速した搬送車両5をスムーズに第3のレール部35に移行させる。第5の区間77内の摩擦タイヤ71は、全て略同じ一定の回転速度で回転する。第1の区間73内の摩擦タイヤ71は、第1の区間73内の摩擦タイヤ71と同じ回転速度に設定されている。言い換えると、第5の区間77内を走行する搬送車両5は、第3のレール部35上を走行する搬送車両5と略同じ速度で走行する。
第3の駆動部90は、図4に示されるように、第2の乗降場2内の略全長に亘って設けられている。第3の駆動部90は、第1の駆動部70と比較すると、第2の乗降場2に設けられている点でのみ異なっており、その他の構造は同じである。このため、説明は省略する。
第2の駆動部80は、第1の乗降場1と第2の乗降場2との間で搬送器51を移動させる。言い換えると第2の駆動部80は、第3のレール部35上に配置された複数の搬送器51を一定の速度で、同時に移動させる。第2の駆動部80が搬送器51を駆動する速度は、第1の駆動部70及び第3の駆動部90が搬送器51を駆動する速度よりも速く設定されている。
第2の駆動部80は、図3,4に示されるように、第3のレール部35の鋼管軌条37に沿って配置された索条81と、この索条81を巻き上げる巻上げ装置82とを備えている。
索条81は、図6に示されるように、握索装置6に対応する位置に設けられている。索条81は、いわゆるワイヤーロープである。索条81は、第3のレール部35に沿って配設されている。索条81は、ループ状に形成されている。索条81は、環状レール3の基体部36に回転自在に設けられた小シーブ83に支持されている(図3,4)。小シーブ83は、第3のレール部35に沿って並ぶよう複数配置されている。
索条81は、往路31と復路32との折返し部分のうち、第2の乗降場2側の折返し部分に、巻上げ装置82が接続されている。また第1の乗降場1側の折返し部分にテンション装置86が設けられている。
巻上げ装置82は、図4に示されるように、索条81を往路31から復路32へと折り返す駆動用メインシーブ84と、この駆動用メインシーブ84を回転させる第2駆動部用モータ85とを備えている。巻上げ装置82は、上側ピット24内に配置されている。この第2駆動部用モータ85は、制御装置100に電気的に接続されてインバータ制御される。言い換えると巻上げ装置82は、索条81の駆動速度が可変となっている。巻上げ装置82は、制御装置100により、通常時は、常時駆動し続けるよう制御される。これにより索条81は、長手方向に移動し続ける。なお巻上げ装置82は、非常時には駆動停止するよう制御される。
テンション装置86は、巻上げ装置82に対し接離自在な構造となっている。テンション装置86は、索条81を往路31から復路32へと折り返す緊張用メインシーブ87と、緊張用メインシーブ87を環状レール3の長手方向に沿って移動させるスライド部88とを備えている。テンション装置86は、下側ピット14内に配置されている。スライド部88は、緊張用メインシーブ87を巻上げ装置82から離れる方向に移動させることで、索条81の張力を調整する。言い換えるとテンション装置86は、巻上げ装置82との間で索条81を張設する。
第1の乗降場1内の搬送車両5は、第1の駆動装置7に推進されて、出口部13を通過して第1の乗降場1から出る。出口部13から出た搬送車両5は、第3のレール部35に進入すると、握索装置6の押圧開放部64が押圧ガイド部38から離脱し、これにより握索装置6が握索状態に切り換えられる。すると握索装置6は、駆動する索条81を握索する。搬送車両5は、索条81の移動に追従して、第3のレール部35上を移動し続ける。
この後、搬送車両5は、第2の乗降場2内に入場すると、握索装置6の押圧開放部64が押圧ガイド部38に押圧されて、握索装置6が放索状態となり、これにより第2の駆動部80の駆動力から切り離される。すると、第2の乗降場2に設けられた第3の駆動部90の摩擦タイヤ71が、搬送車両5の摩擦板561に接触し、これにより搬送車両5が第2の乗降場2内で推進される。第2の乗降場2内を移動した搬送車両5は、再び、第3のレール部35に進入する。第3のレール部35に進入した搬送車両5は、駆動源を第3の駆動部90から第2の駆動部80へと切り換える。
ここで、本実施形態の交通システムは、環状レール3の凍結又は環状レール3上への積雪を防ぐレール加熱装置(図示せず)が取り付けられている。このレール加熱装置は、例えば、筒状をした鋼管軌条37の内部に温水パイプを配管するものが考えられる。温水パイプは、温水循環装置に接続される。レール加熱装置は、常時高温の湯水が循環するよう構成される。また、レール加熱装置の別の例としては、鋼管軌条37の内部に電熱線が配設されるものがある。このように本実施形態のレール加熱装置は、鋼管軌条37を加熱することで、鋼管軌条37の凍結又は積雪を防止する。
また本実施形態の交通システムは、搬送器51の速度異常を検知する異常検知装置(図示せず)を備えている。また搬送車両5には非常ブレーキ57(図9参照)が設けられている。非常ブレーキ57は、異常検知装置が検知した検知信号に基づいて動作する。
本実施形態の異常検知装置は、速度計58と制御機103とを備えている。速度計58は、搬送車両5の速度を計測してその速度信号を制御機103に出力する。制御機103は、速度計58から入力された信号に基づいて異常の有無の判断を行なう。速度計58は、各搬送車両5に設けられている。また制御機103は、各搬送車両5に設けられている。制御機103は、後述の集電装置59を介して、制御装置100に電気的に接続されている。なお速度計58及び制御機103は、搬送車両5に設けられてもよいし、環状レール3側に設けられてもよい。
制御機103は、マイクロプロセッサを主構成要素とする。制御機103は、速度計58からの信号が入力されると異常の有無を判断する判断部101と、この判断部101から入力された信号に基づき非常ブレーキ57の駆動を制御するブレーキ制御部102とを備えている。また制御機103は、判断部101が異常と判断したときに制御装置100に信号を出力する送信部104をさらに備えている。
非常ブレーキ57は、環状レール3上に当該搬送器51を緊急停止させる。非常ブレーキ57は、例えば、環状レール3の鋼管軌条37を両側から挟圧して搬送器51を停止させるものや、環状レール3に沿ってブレーキ板を設け、そのブレーキ板を挟圧して搬送器51を停止させるもの等が挙げられる。
制御機103は、異常検知装置が検知した検知信号に基づいて非常ブレーキ57の駆動を制御する。具体的に、制御機103は、異常検知装置が異常を検知すると、非常ブレーキ57を作動させる。例えば、索条81が切断した場合、上昇中の搬送車両5の速度は減少してゆく。また下降中の搬送車両5の速度は、増加する。この場合、制御機103は、速度計58から入力された速度信号から、搬送車両5に異常が生じたと判断し、同搬送車両5の非常ブレーキ57を作動させるよう制御する。このとき同時に制御機103は、送信部104が、制御装置100にその旨の信号を出力する。制御装置100は、制御機103からの信号が入力されると、駆動装置7の全てを緊急停止させる。
また本実施形態の搬送車両5には、エアコンや照明装置といった定格電圧の高い負荷装置(図示せず)が設けられている。この負荷装置は、集電装置59を介して、電源装置に接続されている。言い換えると負荷装置は、集電装置59を介して電源装置からの電力の供給を受けるよう構成されている。
集電装置59は、図5等に示されるように、搬送車両5に設けられた受電部55と、環状レール3の支持腕部363に固定された給電部39とを備えている。受電部55は、給電部39に摺接する複数の集電子により構成される。受電部55は、摺動しながら給電部39に接触できる構造となっている。これにより受電部55は、搬送器51の移動中にも、給電部39に電気的に接続される。
給電部39は、環状レール3側に固定されている。給電部39は、環状レール3に沿って設けられている。給電部39は、環状レール3との距離が常に一定となるよう配置されている。給電部39は、電力を供給する電源部に接続されている。
本実施形態の交通システムは、負荷の大きい負荷装置が搬送車両5に取り付けられている。そして、走行時にも搬送車両5に給電できる集電装置59が設けられている。このため負荷装置は、搬送器51に蓄電池が設けられていなくとも、常時、十分な電力の供給を受けることができる。
なお本実施形態の集電装置59は、搬送車両5の制御機103に接続された接触子と、制御装置100に接続された被接触体とを備えている。接触子は、板状の被接触体に摺動しながら接触する。接触子は、受電部55に並設されている。これにより、制御機103は、制御装置100に信号を送信することができる。
なお、本実施形態の低高地用交通システムは、第1の乗降場1及び第2の乗降場2にそれぞれ操作室(図示せず)が設けられている。各操作室には、システムの電源を手動でON/OFFする主電源が設けられている。また第1の乗降場1に設けられた操作室には、第1の駆動部70の駆動を停止させる停止操作部(図示せず)が設けられている。また第2の乗降場2に設けられた操作室には、第2の駆動部80の駆動を停止させる停止操作部(図示せず)が設けられている。これにより、例えば、老人等が搬送車両5に乗り込む際、移動した搬送車両5に乗り込むのは危険であると操作室内の作業者が判断した場合には、一旦、搬送車両5を手動で停止させるといった操作が可能となる。なお、この場合、第2の駆動部80の駆動速度を減速させるよう連動させてもよい。
このような構成の本実施形態の交通システムは、駆動装置7が、第1の乗降場1内で搬送器51を移動させる第1の駆動部70と、第1の乗降場1と第2の乗降場2との間で搬送器51を移動させる第2の駆動部80と、第2の乗降場2内で搬送器51を移動させる第3の駆動部90とを備えている。そのため、第1の乗降場1及び第2の乗降場2と、第1の乗降場1と第2の乗降場2との間の箇所と、で独立して搬送器51を駆動させることができる。これにより、乗降場を走行する搬送器51の速度に拘らず、第1の乗降場1と第2の乗降場2との間を走行する搬送器51の速度を変更することができる。また第1の乗降場1と第2の乗降場2との間を走行する搬送器51に拘らず、乗降場を走行する搬送器51の速度を変更することができる。この結果、搭乗者を効率良く低地から高地へと搬送することができ、しかも乗降場において搭乗者が安心して搬送器51に乗り込むことができるようになる。
特に本実施形態の交通システムは、第1の乗降場1と第2の乗降場2との間で搬送器51を移動させる第2の駆動部80は、第1の駆動部70及び第3の駆動部90よりも、搬送器51を速く移動させるものである。このため、効率のよい搭乗者の搬送を行なうことができる。
ところで、往復路が共通するケーブルカーや斜行式エレベータは、軌道上に1台のキャビンしか設けることができない。この点、本実施形態の交通システムは、環状レール3に、複数の搬送器51が設けられている。このため、効率よく多くの人員を搬送することができる。
また本実施形態の交通システムは、第1の乗降場1と第2の乗降場2とを繋ぐ歩廊4を備えているため、仮に、搬送車両5が緊急停止するような事態が生じたとしても、搭乗者は搬送車両5から歩廊4に降り立って避難することができる。また、仮に津波や洪水などにより、低地から高地に非難しなければならない場合が生じたとしても、避難者は、歩廊4を利用して、低地から高地へと避難することもできる。
また本実施形態の交通システムは、搬送車両5の車輪52が、前記環状レール3に対し、環状レール3の断面において、上側及び下側及び左右方向の少なくとも一方の3点以上で接触又は近接対向するものである。これにより、搬送車両5が脱線することを防ぐことができ、十分な安全性を確保することができる。
また本実施形態の交通システムは、環状レール3の積雪又は凍結を防止するレール加熱装置を備えているため、環状レール3を走行する搬送車両5が滑るのを防ぐことができる。特に、搬送車両5が緊急停止しようとする時に環状レール3が凍結していると、搬送車両5を確実に停止させることができないおそれがある。
また本実施形態の交通システムは、搬送車両5の座部が略水平状態を保持するよう駆動する座席54を備えているため、仮に搬送車両5が急勾配を走行したとしても、搭乗者は姿勢をほとんど変える必要がない。このため、搭乗者として、老人や子供が搭乗した場合でも、搭乗者に対し負担を少なくできる。
しかも、ケーブルカーのように斜面に沿うよう段階的に高さを異ならせて固定座席を設けるものでは、乗降場をその傾斜に沿った形状とする必要があった。しかしながら本実施形態の座席54は、常時水平状態を保つよう駆動する可動式の座席54であるため、搬送器51が水平状態になれば、座席54も水平な状態に変化する。つまり搬送器51は、傾斜した状態と水平な状態とに姿勢を変えることができるので、乗降場1,2の乗降部12,22を水平に形成することができる。この結果、老人や子供に対しても安全に且つ移動しやすいような乗降場1,2とすることができる。
また本実施形態の交通システムは、第2の駆動部80として、索条81と、搬送器51に設けられた握索装置6とを備えているため、各搬送器51に駆動部を設ける必要がなくなる。これにより、搬送器511台に掛かるコストを低減することができる。また複数の搬送器51が設けられていても、索条81により走行している領域では搬送器51間の距離を変えないで環状レール3上を走行させることができるので、安全に搬送器51を走行させることができる。
また本実施形態の交通システムは、搬送器51の速度異常を検知する異常検知装置を備えており、搬送器51の非常ブレーキ57が異常検知装置の検知信号に基づいて駆動するものであるため、万が一、索条81が切断した場合や握索装置6が誤作動を起こした場合においても安全性を確保できる。
また本実施形態の交通システムは、搬送器51の走行中にも、搬送器51内の負荷装置に対して電力を供給することができるので、定格電圧が高いエアコンなどの電気機器を搬送器51内に設置することができる。また照明装置も設置することができる。これにより、搭乗者を快適に低地から高地への搬送することができる。照明装置を設置することで、深夜における運転も行なうことができる。
このような交通システムは、例えば、山麓と山頂とを繋ぐようにして設けられる。山頂には、住宅地等の居住エリアが設けられる。山麓から平野にかけて、例えば、スーパーマーケットや職場やアミューズメントパークなどの施設、電車や道路などの交通網等の非居住エリアが設けられる。
次に、実施形態2について図10〜21に基づいて説明する。なお、本実施形態は実施形態1と大部分において同じであるため、同じ部分においては同符号を付して説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
実施形態2の低高地用交通システムは、実施形態1の低高地用交通システムにおいて、高地側の環状レール3を延長して移動範囲を拡大し、さらに低地側の環状レール3を延長して移動範囲を拡大したものである。
本実施形態の低高地用交通システムは、第1の乗降場1と、第2の乗降場2と、第3の乗降場200と、第4の乗降場201と、第5の乗降場202とを備えている。また、低高地用交通システムは、環状レール3と、搬送車両5と、駆動装置7とを備えている。この駆動装置7は、実施形態1と同様、第1の駆動部70と、第2の駆動部80と、第3の駆動部90とを備えている。
低地には、第1の乗降場1と、第4の乗降場201と、第5の乗降場202とが設けられている。高地には、第2の乗降場2と、第3の乗降場200とが設けられている。各乗降場は、互いに距離をおいて配置されている。環状レール3は、各乗降場を接続する。環状レール3は、第1のレール部33と、第2のレール部34と、第3のレール部35とに加えてさらに、高地側レール部300と、低地側レール部301とを備えている。
高地側レール部300は、高地に設けられている。高地側レール部300は、高地において人員等を輸送するために用いられる。高地側レール部300は、第2の乗降場2と第3の乗降場200とを接続する。高地側レール部300は、第2の乗降場2から延出している。第2の乗降場2は、実施形態1と同様、第2のレール部34に沿って設けられている。
第2のレール部34は、図10,13に示されるように、往路側第2レール341と、復路側第2レール342とを有している。第3のレール部35は、往路側第3レール353と、復路側第3レール354とを備えている。往路側第3レール353は、進行方向に向かうほど上方に位置するよう上り傾斜している。復路側第3レール354は、進行方向に向かうほど下方に位置するよう下り傾斜している。往路側第2レール341は、往路側第3のレールの進行方向の先端に連結されている。復路側第2レール342は、復路側第3レール354の進行方向の後端に連結されている。
高地側レール部300の進行方向の後端は、往路側第2レール341の進行方向の先端に連結されている。高地側レール部300の進行方向の先端は、復路側第2レール342の進行方向の後端に連結されている。
高地側レール部300には、高地側搬送器移動手段が設けられている。高地側搬送器移動手段は、高地側レール部300に沿って搬送車両5を移動させる。本実施形態の高地側搬送器移動手段は、引揚装置316を用いて、搬送車両5を地上から上昇させた後に、自重を利用して搬送車両5を下降させ、走行させる。高地側搬送器移動手段は、上昇レール部302と、下降レール部303と、引揚装置316とを備えている。
高地側レール部300は、上昇レール部302と、下降レール部303と、移送レール部304とを備えている。上昇レール部302と下降レール部303とで、1つの移動ユニットを構成する。高地側レール部300は、2つの移動ユニットを備えている。移送レール部304は、2つの移動ユニットの間に設けられている。また移送レール部304は、第2のレール部と上昇レール部302との間に設けられている。
上昇レール部302は、搬送車両5を上昇させるためのレール部である。言い換えると、上昇レール部302は、搬送車両5に位置エネルギーを与えるための区間である。上昇レール部302は、進行方向の先端側に向かうほど、上方に位置するよう上り傾斜している。上昇レール部302には、引揚装置316が設けられている。引揚装置316は、上昇レール部302に沿って下降レール部303の上端部に搬送車両5を引き上げる。
下降レール部303は、上昇レール部302の進行方向の先端側に位置している。下降レール部303は、進行方向の先端側に向かうほど、下方に位置するよう下り傾斜している。下降レール部303は、搬送車両5の位置エネルギーを運動エネルギーに変換するための区間である。下降レール部303を移動する搬送車両5は、上昇レール部302により与えられた位置エネルギーを運動エネルギーに変換し、これにより前進するようになっている。
移送レール部304は、略水平となっている。移送レール部304には、後述の移送装置315が設けられている。
低地側レール部301は、低地に設けられている。低地側レール部301は、低地において人員等を輸送するために用いられる。低地側レール部301は、第1の乗降場1と第4の乗降場201と第5の乗降場202とを接続する。低地側レール部301は、第1の乗降場1から延出している。第1の乗降場1は、実施形態1と同様、第1のレール部33に沿って設けられている。
第1のレール部33は、往路側第1レール331と、復路側第1レール332とを有している。往路側第1レール331は、往路側第3レール353の進行方向の後端に連結されている。復路側第1レール332は、復路側第3レール354の進行方向の先端に連結されている。
低地側レール部301の進行方向の後端は、復路側第1レール332の進行方向の先端に連結されている。低地側レール部301の進行方向の先端は、往路側第1レール331の進行方向の後端に連結されている。
低地側レール部301には、低地側搬送器移動手段が設けられている。低地側搬送器移動手段は、低地側レール部301に沿って搬送車両5を移動させる。本実施形態の低地側搬送器移動手段は、引揚装置316を用いて、搬送車両5を地上から上昇させた後に、自重を利用して搬送車両5を下降させ、走行させる。低地側搬送器移動手段は、上昇レール部302と、下降レール部303と、引揚装置316とを備えている。 低地側レール部301は、高地側レール部300と同様、上昇レール部302と、下降レール部303と、移送レール部304とを備えている。上昇レール部302と下降レール部303とで、1つの移動ユニットを構成する。低地側レール部301も、2つの移動ユニットを備えている。移送レール部304は、第1の乗降場1と、上昇レール部302との間に配置されている。また移送レール部304は、第1のレール部33と上昇レール部302との間に設けられている。
搬送車両5は、環状レール3を走行する。搬送車両5は、第1の乗降場1内では、第1の駆動部70によって駆動する。搬送車両5は、第3のレール部35においては、第2の駆動部80によって駆動する。搬送車両5は、第2の乗降場2においては、第3の駆動部90によって駆動する。搬送車両5は、低地側レール部301と高地側レール部300とにおいては、引揚装置316によって引き揚げられた後に下り傾斜面を走行することで前進するようになっている。
搬送車両5は、図16に示されるように、搬送器51を有している。搬送車両5には、走行するための駆動装置が設けられていない。搬送車両5は、係止部500と、ブレーキフィン504とを備えている。係止部500は、引揚装置316の被係止部305に係止される。被係止部305は、上昇レール部302に沿って斜め上方に向かって上昇するようになっている。
係止部500は、フック501と、支持部502と、回動規制部503と、付勢体(図示せず)とを備えている。フック501は、側面視略L字状をしている。フック501は、支持部502を介して回動自在に軸支されている。支持部502は、フック501の中心部(屈曲部)を支持する。回動規制部503は、フック501の所定角度以上の回動を規制する。回動規制部503は、フック501が被係止部305に引掛けられると、フック501の回動を規制するようになっている。付勢体は、フック501の上端が回動規制部503に当接する方向に向けて回動するよう当該フック501を付勢する。付勢体は、例えば、コイルばねにより構成されている。係止部500は、車両が被係止部305に対し進行方向に前進しているときは被係止部305に係止されない。係止部500は、被係止部305が車両に対し進行方向に前進したときに、被係止部305に係止される。
ブレーキフィン504は搬送器51に固定されている。ブレーキフィン504は、ブレーキ装置105によって挟圧される。これにより、搬送器51はレール上に停止する。ブレーキフィン504は、進行方向に長さを有している。ブレーキフィン504は、上下方向に幅を有している。ブレーキフィン504は、板状をした側面視矩形形状となっている。ブレーキフィン504は、台車本体の左右方向の略中央に位置するよう配置される。これにより、ブレーキフィン504は、対向する鋼管軌条37の略中間部に位置している。ブレーキフィン504は、例えば、アルミニウムやステンレスやジュラルミン等により形成されている。
ブレーキ装置105は、図19に示されるように、基体部36に固定されている。ブレーキ装置105は、図20に示されるように、一対のブレーキパット106を有している。ブレーキパット106は、互いに接離自在となっている。ブレーキパット106は、搬送車両5に設けられたブレーキフィン504を挟持する。ブレーキ装置105は、搬送車両5を停止させる。ブレーキ装置105は、第3の乗降場200と、第4の乗降場201と、第5の乗降場202とにそれぞれ設けられている。
引揚装置316は、搬送車両5を上昇レール部302に沿って下降レール部303の上端部に引き揚げる。引揚装置316は、図14,15に示されるように、ワイヤー317と、被係止部305と、回転駆動装置306とを備えている。
ワイヤー317は、上昇レール部302に沿って張設される。ワイヤー317は、上昇レール部302の下端部から上端部に亙って張られている。ワイヤー317には、被係止部305が連結されている。ワイヤー317は、リフト用ワイヤー307と、リターン用ワイヤー308とを備えている。リフト用ワイヤー307は、被係止部305を上昇レール部302に沿って斜め上方に上昇させる。リターン用ワイヤー308は、被係止部305を上昇レール部302に沿って斜め下方に下降させる。言い換えると、ワイヤー317は、被係止部30を上昇レール部302に沿って往復動させる。ワイヤー317は、回転駆動装置306に接続され、これにより長手方向に移動するようになっている。
回転駆動装置306は、ワイヤー317を巻上げたり、巻き戻したりする。言い換えると、回転駆動装置306は、正逆回転が可能となっている。回転駆動装置306が正回転すると、回転駆動装置306はリフト用ワイヤー307を巻き上げ、これにより被係止部305を上昇レール部302に沿って上昇させる。回転駆動装置306が逆回転すると、回転駆動装置306はリターン用ワイヤー308を巻き上げ、これにより被係止部305を上昇レール部302に沿って下降させる。
被係止部305は、上昇レール部302に沿って移動する。被係止部305は、ワイヤー317に連結されている。被係止部305は、上昇レール部302の下端部から上端部にまで移動する。被係止部305は、チェーンによって構成されている。チェーンは、図15に示されるように、複数のリンク309と、このリンク309を連結する連結軸310とを備えている。各リンク309は、連結軸310を介して回動自在に連結されている。各リンク309は、ブッシュ312とプレート311とを有している。プレート311は、ブッシュ312を介して対向配置されている。これにより各リンク309のプレート311間には、間隙313が形成されている。
間隙313には、搬送車両5の係止部500が挿入される。この状態で、被係止部305が搬送車両5に対し進行方向に前進すると、係止部500は被係止部305に係止される。そして、被係止部305が上昇レール部302に沿って上昇すると、搬送車両5は、被係止部305と共に上昇する。
なお引揚装置316としては、上記構成のものだけではなく、搬送車両5を下降レール部303の上端部に引き上げるものであれば、種々のものを採用することができる。例えば、実施形態2の引揚装置316では被係止部305の部分のみをチェーンで構成していたが、ワイヤー317を排除してチェーンを輪状に連結し、このチェーンを上昇レール部302に沿うよう配設し、回転駆動装置306によって、当該チェーンをその長手方向に移動させるようにしたものであってもよい。また、上記構成とは異なり、上昇レール部302に沿って電磁石を複数並設し、当該電磁石から磁界を発生させ、この磁界中に、搬送車両5の下面に設けられた導体フィンを横切らせて当該導体フィンに渦電流を発生させ、これより生じる力を搬送車両5の推進力に換える、リニアモータのような構造を利用して引き揚げるものであってもよい。
また、本実施形態の低高地用交通システムには、逆走防止装置505が設けられている。逆走防止装置505は、搬送車両5が進行方向とは反対側に移動するのを防止する。逆走防止装置505は、図21に示されるように、搬送車両5側に固定された掛止部506と、環状レール3側に固定された被掛止部550とを備えている。
掛止部506は、レバー部507と、ピン508とを備えている。レバー部507は、ピン508により回動自在に軸支される。レバー部507の突出先端は、環状レール3側に向かって付勢される。なお、レバー部507の付勢力は、レバー部507の自重によって生じるものであってもよいし、ばね等の弾性部材を介在させて生じさせるものであってもよい。
掛止部506の先端には、ローラー509が設けられている。ローラー509は、搬送車両5が進行方向に向かって移動しているときに、被掛止部550の上面を転動する。これにより、ローラー509は、掛止部506の先端が被掛止部550に引っ掛ったり、掛止部506の先端が磨耗したりするのを防ぐ。このローラー509により、掛止部506は、進行方向に向かって移動しているときに、スムーズに移動することができる。
被掛止部550は、掛止部506が下方に向かって移動するのを規制する。被掛止部550は、図17に示されるように、引揚装置316のワイヤー317及び被係止部305を収容する受け部314を利用して固定されている。言い換えると、被掛止部550は、上昇レール部302に沿って固定されている。被掛止部550は、複数の山部551を有している。複数の山部551は、上昇レール部302に沿って配置されている。山部551は、傾斜面部552と、規制部553とを備えている。傾斜面部552は、進行方向に向かうほど上方側に移動するよう傾斜する。規制部553は、上昇レール部302に直角な面を有している。
搬送車両5が進行方向とは反対側に移動しようとすると、掛止部506の先端が山部551の規制部553に引っ掛り、搬送車両5の下降移動が規制される。これにより、仮に、引揚装置316のワイヤー317が搬送車両5を引き揚げ中に切断されたとしても、搬送車両5が逆走するのを防ぐことができる。
移送装置315は、図10に示されるように、移送レール部304に設けられている。移送装置315は、移送レール部304に沿って複数配置されている。移送装置315は、搬送車両5を移送レール部304に沿って移動させる。また、移送装置315は、第3の乗降場200と、第4の乗降場201と、第5の乗降場202とにそれぞれ設けられている。
移送装置315は、図19に示されるように、摩擦タイヤ71と、モーター72とを備えている。摩擦タイヤ71は、基体部36の支持腕部363に回転自在に固定されている。摩擦タイヤ71は、モーター72によって回転駆動する。摩擦タイヤ71は、搬送車両5の動力受け部56の摩擦板561に接触する。摩擦タイヤ71は、摩擦板561に接触した状態で回転することで、搬送車両5を進行方向に移送する。
次に、本実施形態の低高地用交通システムにおいて、搬送車両5が移動する場合につき、図10に基づいて説明する。
第2の乗降場2から出た搬送車両5は、移送装置315により環状レール3上を進行する。搬送車両5は、上昇レール部302にまで移動し、その後、引揚装置316によって下降レール部303の上端部にまで引き揚げられる。次いで搬送車両5は、下降レール部303に沿って下降し、これにより走行する。搬送車両5は、第3の乗降場200の直前に至ると、移送装置315によって、さらに前進する。搬送車両5は、第3の乗降場200にまで移動すると、ブレーキ装置105によって停止する。
搬送車両5は、移送装置315によって再び前進する。その後、搬送車両5は、上昇レール部302に移動し、再び、下降レール部303に沿って走行する。搬送車両5は、第2の乗降場2に到着し、第3の駆動部90を駆動源として移動する。搬送車両5は、ゆっくりと移動して第2の乗降場2を通過し、第3のレール部35に移動する。この後、搬送車両5は、第1の乗降場1に到着して、第1の駆動部70を駆動源として、ゆっくりと移動する。
搬送車両5は、この後、低地側レール部301を走行する。搬送車両5は、移送装置315により、第4の乗降場201まで移動する。搬送車両5は、第4の乗降場201まで移動すると、ブレーキ装置105により停止する。
この後、搬送車両5は、移送装置315を駆動源として、再び走行し始める。搬送車両5は、上昇レール部302まで移動し、引揚装置316により引き揚げられて、下降レール部303の上端部にまで移動する。搬送車両5は、下降レール部303を走行し、第5の乗降場202・移送装置315・上昇レール部302・下降レール部303を介して、第1の乗降場1に戻る。
このように、本実施形態の低高地用交通システムには、高地側レール部300が設けられている。高地側レール部300は、第2の乗降場2と第3の乗降場200とを接続する。高地側レール部300には、高地側搬送器移動手段が設けられている。高地側搬送器移動手段は、高地側レール部300に沿って搬送器51を移動させる。
本実施形態の低高地用交通システムによれば、高地と低地との間を繋ぐだけでなく、高地においても、広範囲で移動することができるようになる。しかも、高地側搬送器移動手段は高地側レール部300に設けられており、搬送器51には設けられていないため、搬送器51の軽量化を図ることができる。この結果、多数の搬送器51を製造しても、コストを抑えることができ、しかも、環状レール3や、基体部36の軽量化も図ることができる。
また、高地側レール部300は、環状レール3の一部を構成しており、第3のレール部35に連続しているため、例えば、低地から高地へ移動した後、乗り換えることなく高地側の所望の乗降場にまで移動することができる。
また、本実施形態の低高地用交通システムには、低地側レール部301が設けられている。低地側レール部301は、少なくとも第1の乗降場1と第4の乗降場201とを接続する。低地側レール部301には、低地側搬送器移動手段が設けられている。低地側搬送器移動手段は、低地側レール部301に沿って搬送器51を移動させる。
本実施形態の低高地用交通システムによれば、高地と低地との間を繋ぐだけでなく、低地においても、広範囲で移動することができるようになる。しかも、低地側搬送器移動手段は低地側レール部301に設けられており、搬送器51には設けられていないため、搬送器51の軽量化を図ることができる。
本実施形態の高地側搬送器移動手段と、低地側搬送器移動手段とは、それぞれ、上り傾斜を有する上昇レール部302と、下り傾斜を有する下降レール部303と、引揚装置316とを備えている。引揚装置316は、搬送器51を上昇レール部302に沿って下降レール部303の上端部に引き上げる。第3の乗降場200には搬送器51を停止させるブレーキ装置105が設けられている。搬送器51は、引揚装置316によって下降レール部303の上端部まで引き揚げられ、自重で落下することで下降レール部303に沿って移動する。
なお、高地側搬送器移動手段、及び低地側搬送器移動手段は、実施形態2におけるような構成でなくてもよい。例えば、高地側搬送器移動手段、または低地側搬送器移動手段として、環状レール3に沿って電磁石を配置し、搬送車両5の下面に磁石を固定し、環状レール3側の電磁石の磁界を変化させて搬送車両5を走行させるようなリニアモータを用いてもよい。また、高地側搬送器移動手段、または低地側搬送器移動手段として、高地側レール部300または低地側レール部301の全長に亙って、実施形態2の移送装置315を配置して、搬送車両5を走行させるようにしたものであってもよい。また、高地側搬送器移動手段、または低地側搬送器移動手段として、高地側レール部300または低地側レール部301の全長に亙って索条81を配設し、この索条81を長手方向に移動させ、搬送車両5の握索装置6を利用して、搬送車両5を走行させるようにしたものであってもよい。
また、実施形態1の第1の駆動部70、第3の駆動部90、実施形態2の移送装置は、摩擦タイヤ71とモータ72とを備えたものであったが、この構成にのみ限定されない。例えば、搬送車両5に磁石を固定し、環状レール3に電磁石を配置して、両者に生じる磁界を変化させて、搬送車両5を移動させるものであってもよい。
なお、実施形態2の低高地用交通システムは、低地側と高地側のそれぞれに、環状レール3が設けられていたが、低地側のみに設けられたものであってもよいし、高地側にのみ設けられたものであってもよい。