本明細書中、「GaN系半導体」とは、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、InN(窒化インジウム)およびそれらの中間組成を備える半導体の総称である。
また、本明細書中、「チャネル領域」とは、ゲート電極に印加されるバイアスにより、ポテンシャルが積極的に制御され、キャリアの密度が変化する半導体領域を意味する。また、本明細書中、「アクセス領域」とは、ソース電極―ゲート電極間、および、ゲート電極−ドレイン電極間のキャリアが流れる半導体領域を意味する。
また、本明細書中、「上方」、「下方」とは、構成要素の相対的位置関係を示す用語であり、必ずしも重力方向を基準とする用語ではない。
(第1の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1のGaN系半導体の第1の半導体層と、第1の半導体層の上方に設けられ、第1のGaN系半導体よりバンドギャップの小さい第2のGaN系半導体の第2の半導体層と、第2の半導体層の上方に設けられ、第2のGaN系半導体よりバンドギャップの大きい第3のGaN系半導体の第3の半導体層と、第3の半導体層の上方に設けられ、第3のGaN系半導体よりバンドギャップの小さい第4のGaN系半導体の第4の半導体層と、第4の半導体層の上方に設けられ、第4のGaN系半導体よりバンドギャップの大きい第5のGaN系半導体の第5の半導体層と、第3の半導体層、第4の半導体層、および、第5の半導体層上に設けられるゲート絶縁膜と、第3の半導体層、第4の半導体層、および、第5の半導体層との間にゲート絶縁膜を介して設けられるゲート電極と、第5の半導体層上に設けられるソース電極と、第5の半導体層上に、ソース電極に対し、ゲート電極の反対側に設けられるドレイン電極と、を備える。
図1は、本実施形態の半導体装置の構成を示す模式断面図である。本実施形態の半導体装置は、GaN系半導体を用いた横型のトランジスタである。
本実施形態のトランジスタ100は、基板10、基板10上に形成されるバッファ層12、バッファ層12上に形成される第1の半導体層14、第1の半導体層14上に形成される第2の半導体層16、第2の半導体層16上に形成される第3の半導体層18、第3の半導体層18上に形成される第4の半導体層20、第4の半導体層20上に形成される第5の半導体層22を備える。
基板10は、例えば、シリコン(Si)からなる。シリコン以外にも、例えば、サファイア(Al2O3)や炭化珪素(SiC)を適用することも可能である。
バッファ層12は、基板10と第1の半導体層14との間の格子不整合を緩和する機能を備える。バッファ層12は、例えば、窒化アルミニウムガリウム(AlxGa1−xN(0<X<1))や窒化アルミニウム(AlN)等の多層構造で形成される。
第1の半導体層14、第2の半導体層16、第3の半導体層18、第4の半導体層20、第5の半導体層22は、それぞれ、第1のGaN系半導体、第2のGaN系半導体、第3のGaN系半導体、第4のGaN系半導体、第5のGaN系半導体で形成される。そして、第2のGaN系半導体は、第1のGaN系半導体よりバンドギャップが小さい。また、第3のGaN系半導体は、第2のGaN系半導体よりもバンドギャップが大きい。また、第4のGaN系半導体は、第3のGaN系半導体よりもバンドギャップが小さい。また、第5のGaN系半導体は、第4のGaN系半導体よりもバンドギャップが大きい。
したがって、トランジスタ100では、バンドギャップの比較的小さい第2の半導体層16が、バンドギャップの比較的大きい第1の半導体層14と第3の半導体層18で挟まれ、バンドギャップの比較的小さい第4の半導体層20が、バンドギャップの比較的大きい第3の半導体層18と第5の半導体層22で挟まれる層構造を備えている。なお、GaN系半導体のバンドギャップの大小関係は、GaN系半導体の組成を分析することで判別することが可能である。
例えば、第1のGaN系半導体がAlX1InY1Ga1−(X1+Y1)N(0≦X1≦1、0≦Y1≦1、0≦X1+Y1<1)、第2のGaN系半導体がAlX2InY2Ga1−(X2+Y2)N(0≦X2≦1、0≦Y2≦1、0≦X2+Y2<1)、第3のGaN系半導体がAlX3InY3Ga1−(X3+Y3)N(0≦X3≦1、0≦Y3≦1、0≦X3+Y3<1)、第4のGaN系半導体がAlX4InY4Ga1−(X4+Y4)N(0≦X4≦1、0≦Y4≦1、0≦X4+Y4<1)、第5のGaN系半導体がAlX5InY5Ga1−(X5+Y5)N(0≦X5≦1、0≦Y5≦1、0≦X5+Y5<1)で示される組成を備える。
例えば、X1+Y1、X2+Y2、X3+Y3、X4+Y4、X5+Y5が、X1+Y1>X2+Y2、X3+Y3>X2+Y2、かつ、X5+Y5>X4+Y4の関係を充足することで、上記バンドギャップの大小関係が充足される。
また、第1の半導体層14、第2の半導体層16、第3の半導体層18、第4の半導体層20、第5の半導体層22は、それぞれ、膜厚(d1)、膜厚(d2)、膜厚(d3)、膜厚(d4)、膜厚(d5)を備える。
第1の半導体層14を形成する第1のGaN系半導体は、例えば、アンドープのAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)である。第1のGaN系半導体は、高耐圧化を目的として、C(炭素)等の不純物を含んでいてもかまわない。第1の半導体層14の膜厚(d1)は、例えば、0.5μm以上3μm以下である。
第1の半導体層14は、第2の半導体16のポテンシャルを持ち上げて、トランジスタ100の閾値電圧を上昇させる閾値制御層として機能する。トランジスタ100の閾値電圧を上昇させる観点から、第1の半導体層14の膜厚(d1)が、第2の半導体層16の膜厚(d2)よりも厚いことが望ましい。
第2の半導体層16を形成する第2のGaN系半導体は、例えば、アンドープのGaN(窒化ガリウム)である。第2の半導体層16の膜厚(d2)は、例えば、3nm以上300nm以下である。
第3の半導体層18を形成する第3のGaN系半導体は、例えば、アンドープのAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)である。第3の半導体層18の膜厚(d3)は、例えば、5nm以上30nm以下である。
第2の半導体層16と第3の半導体層18との界面には、ヘテロ接合が形成される。この界面には、二次元電子ガス(2DEG)が形成され、トランジスタ100のキャリアとなる。すなわち、第2の半導体層16はHEMTの動作層(キャリア層)として機能し、第3の半導体層18はHEMTの障壁層(電子供給層)として機能する。
第4の半導体層20を形成する第4のGaN系半導体は、例えば、アンドープのGaN(窒化ガリウム)である。第4の半導体層20の膜厚(d4)は、例えば、3nm以上50nm以下である。
第5の半導体層22を形成する第5のGaN系半導体は、例えば、アンドープのAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)である。第5のGaN系半導体は、Si(シリコン)またはGe(ゲルマニウム)等のn型不純物を含んでいてもかまわない。第5の半導体層22の膜厚(d5)は、例えば、3nm以上30nm以下である。
第4の半導体層20と第5の半導体層22との界面には、ヘテロ接合が形成される。この界面には、二次元電子ガス(2DEG)が形成され、トランジスタ100のキャリアとなる。すなわち、第4の半導体層20はHEMTの動作層(キャリア層)として機能し、第5の半導体層22はHEMTの障壁層(電子供給層)として機能する。
トランジスタ100は、一端が第5の半導体層22に位置し、他端が第3の半導体層18に位置するトレンチ24を備えている。トレンチ24は、例えば、第5の半導体層22表面から、RIE(Reactive Ion Etching)法により、第4の半導体層20を貫通し、第3の半導体層18に達するよう形成される。
そして、トレンチ24の内壁上にゲート絶縁膜26が、設けられる。ゲート絶縁膜26は、トレンチ24の内壁の第3の半導体層18、第4の半導体層20、第5の半導体層22上に連続的に設けられる。ゲート絶縁膜24は、例えば、シリコン酸化膜である。シリコン酸化膜以外にも、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、アルミニウム酸化膜等、その他の材料を適用することも可能である。ゲート絶縁膜26の膜厚は、例えば、10nm以上100nm以下である。
ゲート絶縁膜26上には、ゲート電極28が形成されている。ゲート電極28は、トレンチ24内を埋め込んでいる。ゲート電極28は、第3の半導体層18、第4の半導体層20、および、第5の半導体層22との間にゲート絶縁膜26を介して設けられる。ゲート電極28は、例えば、B(ボロン)がドーピングされたp型ポリシリコン、または、P(リン)がドーピングされたn型ポリシリコンである。ゲート電極30には、ポリシリコン以外にも、金属シリサイド、金属等も適用可能である。
そして、第5の半導体層22上に、ソース電極30とドレイン電極32が形成される。ドレイン電極32は、ソース電極30に対し、ゲート電極28の反対側に形成される。
ソース電極30とドレイン電極32は、例えば、金属電極であり、金属電極は、例えば、アルミニウム(Al)を主成分とする電極である。ソース電極30およびドレイン電極32と、第5の半導体層22との間は、オーミックコンタクトであることが望ましい。ソース電極30とドレイン電極32との距離は、例えば、10μm程度である。
図2は、本実施形態の半導体装置の閾値電圧の上昇効果を示す図である。図2は、閾値制御層である第1の半導体層14によってもたらされる、トランジスタ100の閾値電圧の上昇効果を示す。GaNの動作層とAlGaNの障壁層とからなるHEMTにおいて、GaNの動作層の下に、本実施形態のようにAlGaNの閾値制御層がある場合と、ない場合(比較形態)でトランジスタの閾値電圧を測定した結果である。閾値制御層上の動作層(第2の半導体層16に相当)の膜厚(d2)をパラメータとしている。
図2から明らかなように、閾値制御層を設けることにより、閾値電圧が上昇する。これは、閾値制御層により、動作層のポテンシャルが持ち上げられることにより、動作層と障壁層との界面のヘテロ接合における2次元電子ガス密度が低下するためであると考えられる。
そして、閾値電圧は、動作層(第2の半導体層16に相当)の膜厚(d2)に依存し、膜厚(d2)が100nmを超えると、閾値電圧の上昇効果が小さくなる。したがって、第2の半導体層16の膜厚(d2)は、100nm以下であることが望ましく、50nm以下であることがより望ましい。
図3は、本実施形態の半導体装置の作用および効果の説明図である。上述のように、第2の半導体層16の下方に、第2の半導体層16よりもバンドギャップの大きい第1の半導体層14を閾値制御層として設けることにより、ノーマリーオフトランジスタの閾値電圧を上昇させることが可能になる。これは、上述のように第2の半導体層16と第3の半導体層18の界面での2次元電子ガス(図3中、第1の2DEG領域で表記)の密度が低下し、キャリア密度が低下するためであると考えられる。
このため、仮に、この第1の2DEG領域を、ソース電極−ゲート電極間、および、ゲート電極−ドレイン電極間のアクセス領域として利用する場合、キャリア密度が低いことによりトランジスタのオン抵抗が増大し、オン電流が低減するという問題が生じる。
本実施形態のトランジスタ100では、第4の半導体層20と第5の半導体層22との界面にも2次元電子ガスが発生する第2の2DEG領域を設ける。第2の2DEG領域は、第1の2DEG領域と比較して、第1の半導体層14から距離が離れている。したがって、第1の半導体層14による、ポテンシャルの持ち上げ効果の影響が小さい。よって、2次元電子ガスの密度は低下せず、高いキャリア密度が保たれる。
図3中に、トランジスタ100がオンの時の電流経路を矢印で示す。矢印で示されるように、ソース電極−ゲート電極間、および、ゲート電極−ドレイン電極間のアクセス領域では、電流はキャリア密度の高い第2の2DEG領域を流れる。したがって、オン抵抗は低く、オン電流が高くなる。
一方、ゲート電極直下のチャネル領域は、第1の半導体層14による、ポテンシャルの持ち上げ効果が顕著になる第1の2DEG領域となる。したがって、トランジスタ100の閾値電圧を高く保つことが可能になる。
図4は、HEMTの障壁層の組成および膜厚と2次元電子ガス密度との関係を示す図である。動作層がGaN、障壁層が窒化アルミニウムガリウム(AlXGa1−XN(0<X<1))とする。横軸が障壁層の膜厚、縦軸がヘテロ接合の2次元電子ガス密度である。窒化アルミニウムガリウムのAl組成を、X=0.05〜X=0.35の範囲で変化させている。
図4から明らかなように、Al(アルミニウム)の割合が高く、膜厚が厚いほど、2次元電子ガス密度が高くなる。したがって、第2の2DEG領域の2次元電子ガス密度を、第1の2DEG領域の2次元電子ガス密度よりも高くする観点から、第5の半導体層22のAlの割合が、第3の半導体層20のAlの割合よりも高いことが望ましい。よって、Alの割合を示す上記X3、X5が、X5>X3の関係を充足することが望ましい。
また、第1の半導体層14のAlの割合は、第2の半導体層16との格子整合の観点からは、低い方が望ましい。したがって、上記X1、X3、X5が、X5>X3≧X1の関係を充足することが望ましい。
また、第5の半導体層22にn型不純物、例えば、Si(シリコン)が含有されることが望ましい。第5の半導体層22がn型不純物を含有することにより、第5の半導体層22中の電子濃度が上昇する。したがって、第2の2DEG領域への電子の供給量が増加し、第2の2DEG領域の2次元電子ガス密度がより高くなる。よって、トランジスタ100のオン抵抗が、より低減する。
また、第5の半導体層22のIn(インジウム)の割合が、第3の半導体層20のIn(インジウム)の割合よりも高いことが望ましい。すなわち、Inの割合を示す上記Y3、Y5が、Y5>Y3の関係を充足することが望ましい。Inの割合が高くなることで、2次元電子ガス密度が高くなる。したがって、第2の2DEG領域の2次元電子ガス密度が、より高くなる。よって、トランジスタ100のオン抵抗がより低減する。あるいは、第5の半導体層22の薄膜化が可能となり、生産性が向上する。
そして、閾値制御層である第1の半導体層14の膜厚(d1)は、望ましくは0.5μm以上3μm以下、より望ましくは、1μm以上である。上記範囲を下回ると、ポテンシャルを引き上げる効果が十分得られないおそれがある。また、上記範囲を上回ると、製造の際の生産性が低下するおそれがある。
そして、動作層である第2の半導体層16の膜厚(d2)は、望ましくは3nm以上300nm以下、より望ましくは100nm以下、さらに望ましくは50nm以下である。上記範囲を下回ると、膜厚の制御が困難となるおそれがある。また、上記範囲を上回ると、ポテンシャルを引き上げる効果が十分得られないおそれがある。
そして、障壁層である第3の半導体層18の膜厚(d3)は、望ましくは3nm以上30nm以下、より望ましくは5nm以上10nm以下である。上記範囲を下回ると、膜厚の制御が困難となるおそれがある。また、上記範囲を下回ると、トレンチ24形成の際に、トレンチ24の底部を第3の半導体層18内に位置させるよう制御することが困難となるおそれがある。また、上記範囲を上回ると、トレンチ24の側壁部に電子が流れる際の抵抗が大きくなり、トランジスタ100のオン抵抗が増大するおそれがある。
そして、動作層である第4の半導体層20の膜厚(d4)は、望ましくは3nm以上50nm以下、より望ましくは5nm以上20nm以下である。上記範囲を下回ると、膜厚の制御が困難となるおそれがある。また、上記範囲を上回ると、トレンチ24の側壁部に電子が流れる際の抵抗が大きくなり、トランジスタ100のオン抵抗が増大するおそれがある。
そして、障壁層である第5の半導体層22の膜厚(d5)は、望ましくは3nm以上30nm以下、より望ましくは5nm以上10nm以下である。上記範囲を下回ると、膜厚の制御が困難となるおそれがある。また、上記範囲を下回ると、第2の2DEG領域の電子密度が低下するおそれがある。また、上記範囲を上回ると、膜厚が厚くなりすぎ、生産性が低下するおそれがある。
以上のように、本実施形態のトランジスタ100によれば、閾値制御層とともに、2つのヘテロ接合を設けて2つの2DEG領域を形成する。これにより、チャネル領域の閾値電圧上昇と、アクセス領域の低抵抗化を両立することができる。したがって、閾値電圧が高く、オン電流の高いノーマリーオフトランジスタを実現できる。
(第2の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第3の半導体層と第4の半導体層との間に、窒化アルミニウム(AlN)層が設けられること以外は、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
図5は、本実施形態の半導体装置の構成を示す模式断面図である。本実施形態の半導体装置は、GaN系半導体を用いた横型のトランジスタである。
図5に示すように、トランジスタ200は、第3の半導体層18と第4の半導体層20との間に、窒化アルミニウム(AlN)層40が設けられている。トレンチ24の底部は、第3の半導体層18内に位置する。AlNは、Gaを含有するAlGaNやGaNに対して、トレンチ24形成の際のエッチングレートを遅くすることが可能である。いいかえれば、AlNは、AlGaNやGaNに対して、高いエッチング選択比を得ることが容易である。
したがって、本実施形態の半導体装置は、トレンチ24形成のエッチングの際に、AlN層40でエッチングをとめることが可能となる。そして、その後に第3の半導体層18をエッチングする。したがって、トレンチ24形成の際の、トレンチ深さの制御性が向上する。したがって、トレンチ24下部の第3の半導体層18の膜厚制御性も向上する。よって、閾値電圧の制御性も向上する。また、第3の半導体層18の膜厚(d3)の膜厚を薄くすることが可能となり、トランジスタ200のオン抵抗の低減が可能となる。
AlN層40の膜厚は、望ましくは1nm以上10nm以下、より望ましくは5nm以上8nm以下である。上記範囲を下回ると、膜厚の制御が困難となるおそれがある。また、トレンチ24形成の際のストッパ性に問題が生ずおそれがある。また、上記範囲を上回ると、トレンチ24の側壁部に電子が流れる際の抵抗が大きくなり、トランジスタ200のオン抵抗が増大するおそれがある。
(第3の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1のGaN系半導体の第1の半導体層と、第1の半導体層の上方に設けられ、第1のGaN系半導体よりバンドギャップの小さい第2のGaN系半導体の第2の半導体層と、第2の半導体層の上方に設けられ、第2のGaN系半導体よりバンドギャップの大きい第3のGaN系半導体の第3の半導体層と、第3の半導体層の上方に設けられ、第3のGaN系半導体よりバンドギャップの小さい第4のGaN系半導体の第4の半導体層と、第4の半導体層の上方に設けられ、第4のGaN系半導体よりバンドギャップの大きい第5のGaN系半導体の第5の半導体層と、第3の半導体層と第4の半導体層との間に設けられるAlN層と、AlN層、第4の半導体層、および、第5の半導体層上に設けられるゲート絶縁膜と、AlN層、第4の半導体層、および、第5の半導体層との間にゲート絶縁膜を介して設けられるゲート電極と、第5の半導体層上に設けられるソース電極と、第5の半導体層上に、ソース電極に対し、ゲート電極の反対側に設けられるドレイン電極と、を備える。
第3の半導体層と第4の半導体層との間に、窒化アルミニウム(AlN)層が設けられ、トレンチの底部が、窒化アルミニウム(AlN)層内に位置すること以外は、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
図6は、本実施形態の半導体装置の構成を示す模式断面図である。本実施形態の半導体装置は、GaN系半導体を用いた横型のトランジスタである。
図6に示すように、トランジスタ250は、第3の半導体層18と第4の半導体層20との間に、窒化アルミニウム(AlN)層40が設けられている。トレンチ24の底部は、窒化アルミニウム(AlN)層40内に位置する。ゲート絶縁膜26は、AlN層40、第4の半導体層20、および、第5の半導体層22上に設けられる。ゲート電極28は、AlN層40、第4の半導体層20、および、第5の半導体層22との間にゲート絶縁膜を介して設けられる。
第2の半導体層16と第3の半導体層18との界面には、ヘテロ接合が形成される。この界面には、二次元電子ガス(2DEG)が形成され、トランジスタ250のキャリアとなる。すなわち、第2の半導体層16はHEMTの動作層(キャリア層)として機能し、第3の半導体層18はHEMTの障壁層(電子供給層)として機能する。
AlNは、Gaを含有するAlGaNやGaNに対して、トレンチ24形成の際のエッチングレートを遅くすることが可能である。いいかえれば、AlNは、AlGaNやGaNに対して、高いエッチング選択比を得ることが容易である。
したがって、本実施形態の半導体装置は、トレンチ24形成のエッチングの際に、AlN層40でエッチングをとめることが可能となる。したがって、トレンチ24形成の際の、トレンチ深さの制御性が向上する。よって、閾値電圧の制御性も向上する。また、第3の半導体層18の膜厚(d3)の膜厚を薄くすることが可能となり、トランジスタ250のオン抵抗の低減が可能となる。
AlN層40と第3の半導体層18のヘテロ界面の、トランジスタ250の動作に対する影響を低減する観点から、トレンチ24の底部のAlN層40の膜厚は薄いことが望ましい。トレンチ24の底部のAlN層40の膜厚は、望ましくは0.5nm以上2nm以下である。
第3の半導体層18の膜厚(d3)は、トランジスタ250の閾値電圧の制御性を確保する観点から、例えば、5nm以上10nm以下であることが望ましい。
(第4の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1のGaN系半導体の第1の半導体層と、第1の半導体層の上方に設けられ、第1のGaN系半導体よりバンドギャップの小さい第2のGaN系半導体の第2の半導体層と、第2の半導体層の上方に設けられ、第2のGaN系半導体よりバンドギャップの大きい第3のGaN系半導体の第3の半導体層と、第3の半導体層の上方に設けられ、第3のGaN系半導体よりバンドギャップの小さい第4のGaN系半導体の第4の半導体層と、第4の半導体層の上方に設けられ、第4のGaN系半導体よりバンドギャップの大きい第5のGaN系半導体の第5の半導体層と、第2の半導体層と第3の半導体層との間に設けられるAlN層と、AlN層、第3の半導体層、第4の半導体層、および、第5の半導体層上に設けられるゲート絶縁膜と、AlN層、第3の半導体層、第4の半導体層、および、第5の半導体層との間にゲート絶縁膜を介して設けられるゲート電極と、第5の半導体層上に設けられるソース電極と、第5の半導体層上に、ソース電極に対し、ゲート電極の反対側に設けられるドレイン電極と、を備える。
図7は、本実施形態の半導体装置の構成を示す模式断面図である。本実施形態の半導体装置は、GaN系半導体を用いた横型のトランジスタである。
本実施形態のトランジスタ300は、基板10、基板10上に形成されるバッファ層12、バッファ層12上に形成される第1の半導体層14、第1の半導体層14上に形成される第2の半導体層16、第2の半導体層16上に形成される第3の半導体層18、第3の半導体層18上に形成される第4の半導体層20、第4の半導体層20上に形成される第5の半導体層22、第2の半導体層16と第3の半導体層18との間に設けられるAlN層42を備える。
基板10は、例えば、シリコン(Si)からなる。シリコン以外にも、例えば、サファイア(Al2O3)や炭化珪素(SiC)を適用することも可能である。
バッファ層12は、基板10と第1の半導体層14との間の格子不整合を緩和する機能を備える。バッファ層12は、例えば、窒化アルミニウムガリウム(AlxGa1−xN(0<X<1))や窒化アルミニウム(AlN)等の多層構造で形成される。
第1の半導体層14、第2の半導体層16、第3の半導体層18、第4の半導体層20、第5の半導体層22は、それぞれ、第1のGaN系半導体、第2のGaN系半導体、第3のGaN系半導体、第4のGaN系半導体、第5のGaN系半導体で形成される。そして、第2のGaN系半導体は、第1のGaN系半導体よりバンドギャップが小さい。また、第3のGaN系半導体は、第2のGaN系半導体よりもバンドギャップが大きい。また、第4のGaN系半導体は、第3のGaN系半導体よりもバンドギャップが小さい。また、第5のGaN系半導体は、第4のGaN系半導体よりもバンドギャップが大きい。
したがって、トランジスタ100では、バンドギャップの比較的小さい第2の半導体層16と第4の半導体層20が、バンドギャップの比較的大きい第1の半導体層14、第3の半導体層18、第5の半導体層22で挟まれる層構造を備えている。なお、GaN系半導体のバンドギャップの大小関係は、GaN系半導体の組成を分析することで判別することが可能である。
例えば、第1のGaN系半導体がAlX1InY1Ga1−(X1+Y1)N(0≦X1≦1、0≦Y1≦1、0≦X1+Y1<1)、第2のGaN系半導体がAlX2InY2Ga1−(X2+Y2)N(0≦X2≦1、0≦Y2≦1、0≦X2+Y2<1)、第3のGaN系半導体がAlX3InY3Ga1−(X3+Y3)N(0≦X3≦1、0≦Y3≦1、0≦X3+Y3<1)、第4のGaN系半導体がAlX4InY4Ga1−(X4+Y4)N(0≦X4≦1、0≦Y4≦1、0≦X4+Y4<1)、第5のGaN系半導体がAlX5InY5Ga1−(X5+Y5)N(0≦X5≦1、0≦Y5≦1、0≦X5+Y5<1)で示される組成を備える。
例えば、X1+Y1、X2+Y2、X3+Y3、X4+Y4、X5+Y5が、X1+Y1>X2+Y2、X3+Y3>X2+Y2、かつ、X5+Y5>X4+Y4の関係を充足することで、上記バンドギャップの大小関係が充足される。
また、第1の半導体層14、第2の半導体層16、第3の半導体層18、第4の半導体層20、第5の半導体層22は、それぞれ、膜厚(d1)、膜厚(d2)、膜厚(d3)、膜厚(d4)、膜厚(d5)を備える。
第1の半導体層14を形成する第1のGaN系半導体は、例えば、アンドープのAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)である。第1のGaN系半導体は、高耐圧化を目的として、C(炭素)等の不純物を含んでいてもかまわない。第1の半導体層14の膜厚(d1)は、例えば、0.5μm以上3μm以下である。
第1の半導体層14は、第2の半導体16のポテンシャルを持ち上げて、トランジスタ300の閾値電圧を上昇させる閾値制御層として機能する。トランジスタ300の閾値電圧を上昇させる観点から、第1の半導体層14の膜厚(d1)が第2の半導体層16の膜厚(d2)よりも厚いことが望ましい。
第2の半導体層16を形成する第2のGaN系半導体は、例えば、アンドープのGaN(窒化ガリウム)である。第2の半導体層16の膜厚(d2)は、例えば、3nm以上300nm以下である。
第2の半導体層16と第3の半導体層18との間には、窒化アルミニウム(AlN)層42が設けられている。
第2の半導体層16と、AlN層42との界面には、ヘテロ接合が形成される。この界面には、二次元電子ガス(2DEG)が形成され、トランジスタ300のキャリアとなる。すなわち、第2の半導体層16はHEMTの動作層(キャリア層)として機能し、AlN層42は、HEMTの障壁層(電子供給層)として機能する。もっとも、AlN層42が薄い場合には、二次元電子ガス(2DEG)が十分に形成されない場合も考えられる。
第3の半導体層18を形成する第3のGaN系半導体は、例えば、アンドープのAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)である。第3の半導体層18の膜厚(d3)は、例えば、5nm以上30nm以下である。
第4の半導体層20を形成する第4のGaN系半導体は、例えば、アンドープのGaN(窒化ガリウム)である。第4の半導体層20の膜厚(d4)は、例えば、3nm以上50nm以下である。
第5の半導体層22を形成する第5のGaN系半導体は、例えば、アンドープのAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)である。第5のGaN系半導体は、Si(シリコン)またはGe(ゲルマニウム)等のn型不純物を含んでいてもかまわない。第5の半導体層22の膜厚(d5)は、例えば、3nm以上30nm以下である。
第4の半導体層20と第5の半導体層22との界面には、ヘテロ接合が形成される。この界面には、二次元電子ガス(2DEG)が形成され、トランジスタ100のキャリアとなる。すなわち、第4の半導体層20はHEMTの動作層(キャリア層)として機能し、第5の半導体層22はHEMTの障壁層(電子供給層)として機能する。
トランジスタ300は、一端が第5の半導体層22に位置し、他端がAlN層42に接するトレンチ24を備えている。トレンチ24は、例えば、第5の半導体層22表面から、RIE(Reactive Ion Etching)法により、第4の半導体層20および第3の半導体層18を貫通し、AlN層42に達するよう形成される。
AlNは、Gaを含有するAlGaNやGaNに対して、トレンチ24形成の際のエッチングレートを遅くすることが可能である。いいかえれば、AlNは、AlGaNやGaNに対して、高いエッチング選択比を得ることが容易である。
したがって、本実施形態の半導体装置は、トレンチ24形成の際にAlN層42でエッチングをとめることが可能となる。したがって、トレンチ24形成の際の深さ制御性が向上する。
そして、トレンチ24の内壁上にゲート絶縁膜26が、設けられる。ゲート絶縁膜26は、トレンチ24の内壁の第3の半導体層18、第4の半導体層20、第5の半導体層22上に連続的に設けられる。ゲート絶縁膜26は、AlN層42、第3の半導体層18、第4の半導体層20、および、第5の半導体層22上に設けられる。ゲート絶縁膜24は、例えば、シリコン酸化膜である。シリコン酸化膜以外にも、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、アルミニウム酸化膜等、その他の材料を適用することも可能である。ゲート絶縁膜26の膜厚は、例えば、10nm以上100nm以下である。
ゲート絶縁膜26上には、ゲート電極28が形成されている。ゲート電極28は、トレンチ24内を埋め込んでいる。ゲート電極28は、AlN層42、第3の半導体層18、第4の半導体層20、および、第5の半導体層22との間にゲート絶縁膜26を介して設けられる。ゲート電極28は、例えば、B(ボロン)がドーピングされたp型ポリシリコン、または、P(リン)がドーピングされたn型ポリシリコンである。ゲート電極30には、ポリシリコン以外にも、金属シリサイド、金属等も適用可能である。
そして、第5の半導体層22上に、ソース電極30とドレイン電極32が形成される。ドレイン電極32は、ソース電極30に対し、ゲート電極28の反対側に形成される。
ソース電極30とドレイン電極32は、例えば、金属電極であり、金属電極は、例えば、アルミニウム(Al)を主成分とする電極である。ソース電極30およびドレイン電極32と、第5の半導体層22との間は、オーミックコンタクトであることが望ましい。ソース電極30とドレイン電極32との距離は、例えば、10μm程度である。
本実施形態のトランジスタ300では、トレンチ24直下のAlN層42と第2の半導体層16との界面近傍が、チャネル領域となる。チャネル領域におけるキャリアは、AlN層42と第2の半導体層16との界面のヘテロ接合に発生する2次元電子ガス、または、AlN層42と第2の半導体層16との界面にゲート電圧の印加により蓄積される電子である。キャリアが蓄積される電子である場合、トランジスタ300のチャネル領域は、HEMTではなくMISFET(Metal Insulator Field Effect Transistor)として動作する。
いずれの場合であっても、第1の実施形態同様、第2の半導体層16の下方に、第1の半導体層14を閾値制御層として設けることにより、チャネル領域のポテンシャルが持ち上がり、電子の密度が低下する。したがって、ノーマリーオフトランジスタの閾値電圧を上昇させることが可能になる。
そして、本実施形態のトランジスタ300では、第1の実施形態同様、第4の半導体層20と第5の半導体層22との界面に、2次元電子ガスが発生するアクセス領域を設ける。この領域は、チャネル領域と比較して、第1の半導体層14から距離が離れている。したがって、第1の半導体層14による、ポテンシャルの持ち上げ効果の影響が小さい。よって、2次元電子ガスの密度は低下せず、高いキャリア密度が保たれる。
第1の実施形態同様、アクセス領域の2次元電子ガス密度を高くする観点から、第5の半導体層22のAlの割合が、第3の半導体層20のAlの割合よりも高いことが望ましい。よって、Alの割合を示す上記X3、X5が、X5>X3の関係を充足することが望ましい。
また、第1の半導体層14のAlの割合は、第2の半導体層16との格子整合の観点からは、低い方が望ましい。したがって、上記X1、X3、X5が、X5>X3≧X1の関係を充足することが望ましい。
また、第5の半導体層22にn型不純物、例えば、Si(シリコン)が含有されることが望ましい。第5の半導体層22がn型不純物を含有することにより、第5の半導体層22中の電子濃度が上昇する。したがって、アクセス領域への電子の供給量が増加し、アクセス領域の2次元電子ガス密度がより高くなる。よって、トランジスタ300のオン抵抗がより低減する。
また、第5の半導体層22のIn(インジウム)の割合が、第3の半導体層20のIn(インジウム)の割合よりも高いことが望ましい。すなわち、Inの割合を示す上記Y3、Y5が、Y5>Y3の関係を充足することが望ましい。Inの割合が高くなることで、2次元電子ガス密度が高くなる。したがってアクセス領域の2次元電子ガス密度がより高くなる。よって、トランジスタ300のオン抵抗がより低減する。あるいは、第5の半導体層22の薄膜化が可能となり、生産性が向上する。
そして、閾値制御層である第1の半導体層14の膜厚(d1)は、望ましくは0.5μm以上3μm以下、より望ましくは、1μm以上である。上記範囲を下回ると、ポテンシャルを引き上げる効果が十分得られないおそれがある。また、上記範囲を上回ると、製造の際の生産性が低下するおそれがある。
そして、動作層である第2の半導体層16の膜厚(d2)は、望ましくは3nm以上200nm以下、より望ましくは100nm以下、さらに望ましくは50nm以下である。5以上3μm以下、より望ましくは、1μm以上であることが望ましい。上記範囲を下回ると、膜厚の制御が困難となるおそれがある。また、上記範囲を上回ると、ポテンシャルを引き上げる効果が十分得られないおそれがある。
そして、動作層である第4の半導体層20の膜厚(d4)は、望ましくは3nm以上50nm以下、より望ましくは5nm以上20nm以下である。上記範囲を下回ると、膜厚の制御が困難となるおそれがある。また、上記範囲を上回ると、トレンチ24の側壁部に電子が流れる際の抵抗が大きくなり、トランジスタ300のオン抵抗が増大するおそれがある。
そして、障壁層である第5の半導体層22の膜厚(d5)は、望ましくは3nm以上30nm以下、より望ましくは5nm以上10nm以下である。上記範囲を下回ると、膜厚の制御が困難となるおそれがある。また、上記範囲を下回ると、アクセス領域の電子密度が低下するおそれがある。また、上記範囲を上回ると、生産性が低下するおそれがある。
AlN層42と第2の半導体層16のヘテロ界面の、トランジスタ300の動作に対する影響を低減する観点から、トレンチ24の底部のAlN層42の膜厚は薄いことが望ましい。トレンチ24の底部のAlN層42の膜厚は、望ましくは0.5nm以上2nm以下である。
以上のように、本実施形態のトランジスタ300によれば、閾値制御層を導入するとともに、チャネル領域とアクセス領域を分離することで、チャネル領域の閾値電圧上昇と、アクセス領域の低抵抗化を両立することができる。したがって、閾値電圧が高く、オン電流の高いノーマリーオフトランジスタを実現できる。また、AlN層42を設けることで、トレンチ形成の制御性が向上し、安定した特性を備えるトランジスタ300が実現される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換えまたは変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。