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JP6258708B2 - 粘性率測定方法、粘性率測定装置、検査方法、及び体液電解質濃度及び粘性検査システム、並びに食品製造装置 - Google Patents

粘性率測定方法、粘性率測定装置、検査方法、及び体液電解質濃度及び粘性検査システム、並びに食品製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、電解質を含む水溶液試料の粘性率を測定する技術とそれを用いた検査技術に関する。
脱水や出血、その他様々な疾患、例えば、心筋梗塞、脳梗塞、肝硬変、膜性腎炎、ネフローゼ症候群、その他のいわゆる生活習慣病などで、血液の粘性率が大きくなることが知られている。粘性率が大きいということは、血液が血管中を流れにくいということであり、極端な状態では血管が詰まりやすくなる。一方、血液の粘性率の値が小さくなる疾患もある。したがって、血液の粘性率およびその経時変化を知ることは、さまざまな疾患の予防や診断、治療にとって極めて有効である。
血液全体の粘性率は、血球数や血球の変形能によって変化することが知られている。いわゆる「血液サラサラ検査」と銘打って、毛細管中を移動する血液の流速を測定する検査装置なども開発されている。しかし、血液全体の粘性率は血球と血清または血漿の双方のさまざまな要因の影響を受けて変化するので、その評価は困難である。
従来、液体の粘性率の測定には、(1)毛細管粘度計、(2)回転粘度計、(3)落球粘度計、(4)振動粘度計、などが用いられてきた。しかし、いずれも多量の試料が必要であったり操作が煩雑であったりするために、臨床検査に応用することは困難である。そのため、微量の試料で簡便・迅速に粘性率を検査できる検査方法及び装置の開発が望まれている。
上記の従来法の欠点を克服すべく、血中アルブミン分子の拡散係数変化を光散乱の手法で計測し、血清あるいは血漿の粘性率を求める方法が提案されている(特許文献1参照)。この手法は、血清又は血漿の試料にHe−Neレーザー等のレーザー光を入射して、試料内の血中アルブミン分子により散乱された散乱光を検出する。液中の粒子はブラウン運動をしているために、散乱光はドップラー・シフトにより波長の分布が生じる。この波長分布から拡散係数Dを求め、これと気体定数R、温度T、血中アルブミン分子の粒径aから、アインシュタイン・ストークスの式に基づいて粘度ηを求めるものである。
また、微量な試料の粘性率を迅速に検査する目的で、2本のパルスレーザーを試料表面上で2光束収束させて瞬間加熱し、試料表面に発生したレーザー誘起表面波を観察・解析することによって試料の粘性率を求める方法が提案されている(非特許文献1参照)。
特許第4958272号明細書
助川翔太郎、田口良広、長坂雄次,「簡易・迅速なin situ粘性計測を実現するOptical MEMS粘性センサーの開発」,第33回日本熱物性シンポジウム(Thermophys Prop),日本,日本熱物性学会,2012年10月03日,33巻,56-58ページ. Walden, P.Z., "Uber organische Losungs-und Ionisierungsmittel. III. Teil: Innere Reibung und deren Zusammenhang mit dem Leitvermogen", Zeitschrift fur Physikalische Chemie, vol. 55, 1906, p.207-246. 日本化学会編,「化学便覧 基礎編II」,改訂4版,日本,丸善株式会社,1993年,445−454ページ. アトキンス著,千原秀昭・中村亘男訳「物理化学(下)」,第4版,日本,東京化学同人,2008年7月10日,1155ページ.
上記特許文献1に記載の血漿粘度測定方法は、微量な試料に適用できるという意味では大きな前進であるが、操作および粘性率算出法が煩雑であり、検査装置も高価であるため、手軽に検査室や実験室に普及させることができないという難点がある。また、血中アルブミン分子の拡散係数測定に依存するため、血液以外の他の生体試料には適用しがたいという問題がある。
また、上記非特許文献1に記載の粘性率測定方法は、微量な試料の粘性率を高速・非接触で測定できるという利点がある反面、独立した2本のパルスレーザーを試料表面に同時照射し、かつ誘起された表面波の解析が必要であるため、簡素な測定系とは言い難く、検査室レベルでの測定には適用困難であるという問題がある。
そこで、本発明の目的は、微量な試料の粘性率を高速かつ簡易に測定でき、検査室レベルでの測定に適用可能で、かつ様々な種類の液体試料の粘性率測定に適用可能な粘性率測定技術を提供することにある。
〔1〕本発明の背景及び概要
1906年に、Waldenは電解質溶液の粘性率と電気伝導率の間に簡単な関係があることを発見し提唱した(非特許文献2)。これは、現在、Walden則(Walden's rule)と呼ばれている。
そこで、本発明者らは、醤油など調味料を含む種々の電解質溶液の電気伝導率を測定して、(1)電気伝導率が温度によって大きく変わること、および(2)粘性の大きな電解質溶液の、電気伝導率の測定値から逆算した塩濃度が、表示された値より顕著に小さいという観察をした。そして、この電気伝導率の温度敏感性や粘性液体の電気伝導率「異常」が、後述の拡大解釈したWalden則(以下「拡張Walden則」)により統一的に理解されることに思い至った。
そして、本発明者らは、前項に記載した観察結果から、血漿など生体由来の電解質溶液をも候補とする多くの電解質溶液の電気伝導率を測定し、拡張Walden則を適用することによって、該溶液の粘性率を求められる可能性に思い至り、本発明に想到した。
具体的には、本発明者らは、拡張Walden則に依拠して、いわゆるfeasibility studyとして、(1)種々の濃度のグリセリンあるいはショ糖を混入した食塩水の粘性率の測定、(2)水の粘性率の温度依存性の測定、(3)牛乳の電解質濃度と粘性率の測定、(4)食塩を含む調味料の電解質濃度と粘性率の測定、(5)唾液の電解質濃度と粘性率の測定、(6)出血モデル動物と対照動物の血漿電解質濃度と粘性率の測定、などを行い本発明による粘性率の測定の精度検証を行った。さらに、粘性率変化の連続記録の可能性をさぐるべく、(7)ヨーグルト発酵過程の電気伝導率変化の追跡、(8)煮凝りのゲル化過程の電気伝導率変化の追跡、を行った。尚、(1)〜(8)の実験の詳細については後述する。
上記の予備実験の結果、本発明者らは、測定対象を血液に限っても、(1)モデル動物と対照動物の血清および/または血漿の電解質濃度および粘性率の比較、(2)モデル動物の血清および/または血漿の電解質濃度および粘性率の経時変化の計測、のみならず、(3)疾患に由来するヒト血清および血漿の電解質濃度および粘性率の正常値との比較、(4)疾患に由来するヒト血清および血漿の電解質濃度および粘性率の経時変化の記録、に適用できるとの確信を得た。
そこで本発明では、電気伝導率の測定から試料の電解質濃度や粘性率を少量の試料で簡便・迅速に決定できる技術としてのみならず、さまざまな疾患の予防や診断、治療に寄与する測定方法および装置として適用することができる。
なお、ヒト体液は例外なく電解質を含むので電気伝導性である。つまり、この手法の測定対象は血液にとどまらない。
〔2〕本発明における仮定及び立場
以下、「電気伝導率測定によって電解質溶液の粘性率を推定できる」との発想に至った経緯を公知例および本発明の実施例に即して述べる。
(拡散係数について)
溶液内での分子の動きやすさを支配しているのが、拡散係数Dと呼ばれる物理量である。拡散係数Dの大きさは「分子」によって異なる。半径aの球状分子が粘性率ηの溶液中にあるとき、この球状分子の拡散係数Dは、
Figure 0006258708
と表わされる。「ストークス・アインシュタインの式」と名付けられた式である。ここで、Tは絶対温度(K)であり、kはボルツマン定数と名付けられた物理定数である。式(1)から、他の条件が同じなら(温度Tや分子の半径aが同じなら)、粘性率ηの値が大きいほど(ネバネバなほど)Dの値が小さい(分子は動きにくい)ということがわかる。
(レーザー散乱法による粘性率測定)
血清あるいは血漿中に多量に存在する血清アルブミン分子の光散乱の測定からその拡散係数を求め、血清あるいは血漿の粘性率を求める手法を提案したのが特許文献1である。これは、従来、巨視的な(最小でも光学顕微鏡で観察できる程度の大きさの)物体に働く摩擦力として定義されていた粘性率を、分子的な(血清アルブミンは分子量約66,000、大きさ8nm程度のタンパク質である)大きさのレベルに適用して粘性率測定の実用化を提案したものである。
(拡散係数と移動度について)
溶液内に電場があり、溶液内の粒子(分子あるいはイオン)が電荷qを持っていれば粒子に力が働き、粒子は移動する。移動速度v[m/s」を電場の強さE[V/m]で割った量(単位電場あたりの速度)を移動度uという。
Figure 0006258708
つまり、粒子(イオン)の移動度は溶液の粘性率に反比例する。また式(1)と式(2)とから拡散係数と移動度の間に成り立つ関係式、
Figure 0006258708
が得られる。「アインシュタインの関係式」と呼ばれている。
式(3)から、以下のことが発想される。特許文献1は拡散係数Dを測定して血清あるいは血漿の粘性率を求める提案である。温度Tを一定にすれば、式(3)右辺のkT/qは一定であるから、拡散係数Dを求めることは移動度uを求めることと事実上同じである。以下に述べるように移動度は電気伝導率(電気の流れやすさ)を定める。すなわち、電気伝導率を測定することによって、電解質溶液の粘性率を決めることができる。
(電解質溶液の電気伝導について)
電気伝導とはすなわち「電気」が「伝わる」ことである。電解質溶液中では、イオンの移動つまり電荷の移動によって電気伝導(電流)が生じる。イオンの移動を生じさせるのは溶液中の電場である。電場Eと電流密度Jの間には比例関係、
Figure 0006258708
が成り立つ。ここでσは該溶液の電気伝導率である。電気伝導率σは、該溶液の「電気の流れやすさ」を表す量であり、溶液の電解質濃度、粘性率などによって定まる。式(4)は、いわゆる「オームの法則」を電場と電流密度で表現したものである。電荷qを持った粒子(イオン)の数密度をnとすると、
Figure 0006258708
が得られる。
(電気伝導率と粘性率の関係)
化学者の習慣にしたがって、数密度nをモル濃度cであらわし、式(2)のuを式(5)に代入すると、
Figure 0006258708
という関係が得られる。
(推定)
式(6)から以下のような「推定」に導かれる。
「電解質濃度cが同一の溶液を考える。溶液の温度を上げたり下げたり、グリセリンを加えたりして粘性率を変える。このとき、電気伝導率と粘性率の積σηは一定である。」
式(6)は「イオン間の相互作用が無視できる」という条件の下での計算によって導かれた結論である。これは電解質濃度が無限に希薄な場合でのみ実現されるいわば理想化された状況である。本発明が測定対象とする血清や血漿などのように有限の電解質濃度(NaCl 150mM程度)では状況は遥かに複雑である。生理的濃度の電解質溶液では、式(6)はむしろ「単純な形では成立しない」と考えるのが化学の常識である。後述の実施例3,4,6,および7は、上記「推定」がどの程度妥当であるかを検査するための測定である。
(モル伝導率と極限モル伝導率)
電気伝導率σをモル濃度cで除した量を「モル伝導率(molar conductivity)」といい、Λで表す。
Figure 0006258708
したがって、式(6)は、
Figure 0006258708
と書くことができる。
極限モル伝導率(limiting molar conductivity)Λ は、電解質が無限に希薄なときの(イオンが相互作用しないときの)モル伝導率の値である。
Figure 0006258708
(Walden則)
Walden則あるいはWaldenの規則(Walden's rule)は経験的な観察結果から導かれた規則である。物理化学のテキスト(非特許文献4)では次のように記述されている。
「Waldenの規則はηΛという積が同種のイオンならば、いろいろな溶媒中でほぼ一定だという経験的な観察結果である。」
なお、他の文献では、「粘性率と極限モル伝導率の積が一定」と表現されている例が多い。
Waldenの「観察結果」は、電解質溶液の電気伝導の初歩的な議論から導いた式(8)と同じである。
しかし、上に引用したテキストでは続いて次のように記載されている。「・・・この規則がどれほど役に立つかは溶媒和のことを考えるとあやしい。溶媒が異なれば同じイオンでも溶媒和の程度は違うし、流体半径と粘度の両方とも溶媒によって変わるからである。」
(本発明者らの立場:1)
Walden則は、「ηΛという積が同種のイオンならば、いろいろな溶媒中でほぼ一定」ということを提唱している。また、多くの文献では極限モル伝導率への言及があることを考えると、「希薄電解質溶液に限って成立する」規則であると考えられる。しかし、「希薄溶液に限って」いては、血液や髄液など、生理的濃度の電解質溶液は扱うことができないので実用的ではない。よって、本発明者らはWalden則をいわば拡大解釈して、
(1)「生理的濃度であっても、電解質濃度が一定であれば、その溶液の電気伝導率と粘性率の積がほぼ一定である」と仮定する。以下、この仮定のように拡大解釈されたWalden則を、本来のWalden則と区別して「拡張Walden則」とよぶ。
一方、本発明者らは、
(2)「電気伝導率と粘性率の積がいろいろの溶媒中でほぼ一定」であることを求めない。
(本発明者らの立場:2)
前項の(1)は実験でその妥当性を検証しなければならない。本発明者らは、「拡張Walden則」に依拠して求めた粘性率の値と、従来法によって定めた粘性率の値に「相関があればよい」とする。値が正確に一致することは求めない。
(本発明者らの立場:3)
上述の(2)で述べたことの意味を説明する。本発明者らは、本発明に係る方法によって、たとえば「ヒト血漿の粘性率」と「ヒト唾液」の粘性率を比較してその値の大小を議論することが重要な課題であるとは考えない。ましてや、「ヒト血漿の粘性率」と「牛乳の粘性率」の値の大小を比較することが課題であるとは考えない。本発明者らは、本発明に係る方法によって、例えば「ヒト血漿」あるいは「ヒト髄液」という限られたカテゴリーの中で、さまざまな試料(正常値を示す平均的な試料や疾患由来の試料)の粘性率を測定して、その値の大小あるいは時間経過に伴う値の変化を検出することが重要な課題であると考える。後述の実施例7「ラット血漿の粘性率測定」はこのような観点からの実証実験である。
〔3〕本発明の構成及び作用
本発明に係る粘性率測定方法は、電解質と電解質以外の不純物とを含んだ液状の試料の粘性率を測定する粘性率測定方法であって、
前記試料の原液の電気伝導率σを測定する第1ステップと、
前記試料の原液の電解質濃度cと同じ電解質濃度となるように、純水に前記試料の電解質を溶解した水溶液における電気伝導率σを、既知の所定の溶液の電解質濃度と電気伝導率との関係を表す換算テーブル又は換算式を参照することにより推定する第2ステップと、
前記推定した電気伝導率σと前記試料の原液の電気伝導率σとの比から、前記試料の原液の粘性率ηを算出する第3ステップと、を有することを特徴とする。
上記〔2〕で説明した通り、この粘性率測定方法によって、試料の電気伝導率の測定のみから粘性率の算出が可能となるため、微量な試料の粘性率を高速かつ簡易に測定でき、検査室レベルでの測定に適用可能となる。また、後述の実証試験から、様々な種類の液体試料の粘性率測定に適用可能であることが証明された。
ここで、「換算式」とは、理論計算や換算テーブルのデータをフィッティング(最小二乗法などによる近似)することによって得られる電解質濃度と電気伝導率との関係を表す式をいう。
また、本発明の粘性率測定方法において、前記既知の所定の溶液は、溶質イオンが水和状態を形成する電解質水溶液とすることができる。
換算テーブル又は換算式に使用する電解質水溶液の電気伝導に寄与する電解質イオンは、その移動度と粘性率の間に相関関係が成り立つ必要があるが、溶質イオンが水和状態を形成する電解質水溶液を使用することでこの相関関係が保証される。
「水和状態を形成する電解質水溶液」としては、例えば、NaCl、KCl、CaCl、MgSO、NHClなどの水溶液などを使用することができる。但し、HCl、HSOのような、陽イオン媒質が水素イオンであるような電解質や、酢酸、乳酸、クエン酸のような弱酸の水溶液は除かれる。水素イオンの移動度は溶液の粘性率にほとんど依存しないことが知られており、また、弱酸は濃度によって電離する媒質の割合が変化するため電気伝導率σから電気伝導率σの換算を正常に行うことができないからである。尚、換算テーブル又は換算式に使用する電解質は、試料の主たる電解質成分と同じものであることが好ましいが、必ずしも同じである必要はない。
また、本発明に係る、電解質濃度cが未知の前記試料の前記電解質濃度c及び前記粘性率ηを測定する粘性率測定方法は、前記第2ステップにおいて、
前記試料の原液を純水により所定の倍率nに希釈した希釈溶液の電気伝導率σを測定するステップと、
前記希釈溶液の電気伝導率σから、既知の所定の溶液の濃度と電気伝導率との関係を表す換算テーブル又は換算式を参照することにより、前記試料の原液の電解質濃度cと当該電解質濃度に換算した電気伝導率σとを求めるステップと、を有することを特徴とする。
試料の原液を蒸留水により希釈すると、溶質の濃度が下がるため、試料に含まれる高分子物質などの電解質以外の不純物(以下単に「不純物」という。)の濃度が低下する。そのため、希釈溶液中の電解質のイオンは、不純物に邪魔されることなく自由に溶液中を泳動することが可能となり、希釈溶液の電気伝導率は、不純物を含まない同濃度の同電解質の純粋な溶液の電気伝導率とほぼ等しいとみなすことができる。したがって、希釈溶液の電気伝導率σを同電解質の純粋な溶液の電気伝導率とみなせば、換算テーブル又は換算式により希釈溶液の電解質濃度を推定することができる。ついで、推定された電解質濃度を仮想的に希釈前の濃度に濃縮して、あらためて換算テーブルもしくは換算式を参照することによって、希釈前における同電解質の純粋な溶液の電気伝導率σが推定される。したがって、換算した電気伝導率σと試料の原液の電気伝導率σとの比に拡張Walden則を適用して原液の粘性率を推定することができる。上述の通り、本来のWalden則は理論的に求められた法則ではなく、無限希釈の場合にのみ成立するものとされていたが、本発明では上記換算法とともに拡張Walden則を適用することで、多くの種類の試料で原液の粘性率がほぼ正確に算出できることを実験的に確認した。
尚、本発明で「所定の倍率n」は、「所定の倍率nに希釈した希釈溶液の粘性率が純水の粘性率(20℃において1.0mPa・s)に極めて近い」という条件を満たすように設定すればよい。
また、本発明の粘性率測定方法において、前記第1又は第2のステップにおいて前記試料の電気伝導率を測定するにあたり、CRタイミング方式発振回路を使用し、
前記試料の液中に1対の電極を離隔して配置することにより構成したインピーダンスを、前記CRタイミング方式発振回路の時定数を決定するインピーダンスとして組み込み、前記CRタイミング方式発振回路を発振させてその発振周波数又は発振周期を測定することにより、当該発振周波数又は発振周期から前記試料の電気伝導率を決定することができる。
試料の溶液(原液又は希釈溶液)の電気伝導率の測定にはインピーダンス・ブリッジあるいはウイーンブリッジ発振方式あるいは交流発振回路と交流電流測定装置を備えた測定方法などを使用することもできるが、特にCRタイミング方式発振回路の発振周波数又は発振周期を使用することによって、簡単な測定器の構成により、試料の溶液の正確な電気伝導率を測定することが可能となる。
尚、本発明で「CRタイミング方式発振回路」としては、CMOSシュミットトリガーあるいは演算増幅器を能動素子として採用した非安定マルチ・バイブレータなどを使用することができる。また、発振回路は、Duty約50%の矩形波や正弦波などの特定の基本発振周波数を有する周期波形を発振するような回路であればよい。
本発明に係る粘性率測定装置の第1の構成は、電解質と電解質以外の不純物とを含んだ液状の試料の粘性率を測定する粘性率測定装置において、
前記試料の原液の電気伝導率σを測定し、
前記試料の原液の電解質濃度cと同じ電解質濃度となるように、純水に前記試料の電解質を溶解した水溶液における電気伝導率σを、既知の所定の溶液の電解質濃度と電気伝導率との関係を表す換算テーブル又は換算式を参照することにより推定し、
前記推定した電気伝導率σと前記試料の原液の電気伝導率σとの比から、前記試料の原液の粘性率ηを算出することを特徴とする。
この構成により、試料の電気伝導率の測定のみから粘性率の算出が可能となるため、微量な試料の粘性率を高速かつ簡易に測定でき、装置構成が従来に比べて簡単となるため、検査室レベルでの測定に適用可能となる。また、後述の実証試験から、様々な種類の液体試料の粘性率測定に適用可能であることが証明されている。
本発明に係る粘性率測定装置の第2の構成は、前記第1の構成において、前記既知の所定の溶液は、溶質イオンが水和状態を形成する電解質水溶液であることを特徴とする。
前述の通り、換算テーブル又は換算式に使用する電解質水溶液の電気伝導に寄与する電解質イオンは、移動度と溶液の粘性率との間に相関関係が成り立つ必要があるが、溶質イオンが水和状態を形成する電解質水溶液を使用することでこの相関関係が保証される。
本発明に係る前記電解質濃度cが未知の前記試料の前記電解質濃度c及び前記粘性率ηを測定する粘性率測定装置の第3の構成は、前記第1又は2の構成において、前記試料の原液を純水により所定の倍率nに希釈した希釈溶液の電気伝導率σを測定し、
前記希釈溶液の電気伝導率σから、既知の所定の溶液の濃度と電気伝導率との関係を表す換算テーブル又は換算式を参照することにより、前記試料の原液の電解質濃度cとその電解質濃度に換算した電気伝導率σとを算出することを特徴とする。
この構成により、上述した通り、電気伝導率σと原液の電気伝導率σとの比から、拡張Walden則を用いて試料の原液の粘性率を求めることができる。本発明においては、実際の測定部分は、試料の原液及び希釈溶液の電気伝導率の測定だけであり、この測定は簡易な測定装置を用いて行うことが可能であり、また電気伝導率から粘性率の換算も簡易な演算(割り算とテーブル参照(又は換算式参照))で行うことができるため、装置全体を簡単化・小型化することが可能である。したがって、検査室レベルでの測定にも十分に適用可能である。さらに、希釈操作の自動化を含め全体を電池駆動にして掌サイズ以下の測定装置を実現することは容易に可能である。
なお、原液の電解質濃度が既知の場合は希釈操作が不要となり、その場合の粘性率測定装置は電気的回路のみとなるため、一層の小型化が可能である。IC製造技術を応用すればRFID(Radio Frequency IDentification)のように外部からRFで電源を供給し、測定結果をRFで返信するような超小型の測定チップとすることも可能である。
体液の電解質濃度及び粘性率の変化の傾向、経時的傾向を捉えるだけならば、後述の図5もしくは図6のようなCRタイミング方式発振回路に前記体液の収容体(セル)に備えた電極を接続し、その周波数もしくは周期を連続記録・監視するだけでも可能である。事前に設定した閾値を逸脱したらアラームを発するような掌サイズ以下の小型軽量「体液モニタリング装置」が可能となる。ここで体液とは血液、リンパ液、髄液、腸液、胆汁、膵液、涙(眼房水)、唾液、汗等をいう。
また、本発明に係る粘性率測定装置の第4の構成は、前記第3の構成において、前記試料を貯留する収容体と、
前記収容体内に貯留された前記試料の電気伝導率を測定する電気伝導率測定手段と、
前記収容体内に貯留された前記試料に、水を注水する注水手段と、
前記収容体内に貯留された前記試料の原液の電気伝導率σを前記電気伝導率測定手段により測定した後、前記注水手段により前記試料の原液を純水により所定の倍率nに希釈し、その希釈溶液の電気伝導率σを測定する測定制御手段と、
前記希釈溶液の電気伝導率σから、所定の既知の溶液の濃度と電気伝導率との関係を表す換算テーブル又は換算式を参照することにより、前記試料の原液の電解質濃度cとその電解質濃度に換算した電気伝導率σとを算出する電気伝導率換算手段と、
前記換算した電気伝導率σと前記試料の原液の電気伝導率σとの比から、前記試料の原液の粘性率を算出する粘性率算出手段と、
を備えたことを特徴とする。
また、本発明に係る粘性率測定装置の第5の構成は、前記第4の構成において、前記電気伝導率測定手段は、
前記試料の液中に1対の電極を離隔して配置することにより構成したインピーダンスが、時定数を決定するインピーダンスとして組み込まれたCRタイミング方式発振回路と、
前記CRタイミング方式発振回路の発振周波数又は発振周期を測定する発振状態測定器と、
前記発振状態測定器により計測される発振周波数又は発振周期から前記試料の電気伝導率を決定する電気伝導率換算手段と、を備えたことを特徴とする。
ここで、「発振状態測定器」は、発振周波数及び発振周期を同時に測定するものでもよい。また、その後の電気伝導率換算等のデータ処理を容易にするため、発振状態測定器は測定した発振周波数又は発振周期をディジタルデータに変換して伝送するものを使用するのが好ましい。
また、本発明においては、測定制御手段、電気伝導率換算手段、及び粘性率算出手段をコンピュータプログラムとして提供し、プログラムは、コンピュータに読み込んで実行することにより、該コンピュータを、前記第4の構成の粘性率測定装置における測定制御手段、電気伝導率換算手段、及び粘性率算出手段として動作させるようにしてもよい。
プログラムは、CD−ROM、DVD−ROM、メモリースティックその他のプログラムの記録媒体に記録されたものであってもよいし、インターネットなどの電気通信回線を通して必要に応じてコンピュータに配信されるものであってもよい。「コンピュータ」は、パーソナル・コンピュータやワークステーションのような汎用型コンピュータに限らず、マイコン、再構成可能論理回路のようなチップ型コンピュータも含む。
本発明に係る血液又は血管疾患の検査方法は、前記粘性率測定方法により血清又は血漿の電解質の粘性率及びそれと同時に得られる電解質の濃度を測定し、これを正常値と比較することを特徴とする。
従来の粘性率測定方法(例えば、振動型粘度計により測定する方法等)では、測定のために比較的多くの試料(血液)が必要であったため、微量の血液の粘性率測定は事実上できなかったが、本発明に係る粘性率測定方法では試料(血液)の電気伝導率が測定できさえすればよいため、微量の血液の粘性率測定が可能となる。
また、本発明に係る血液又は血管疾患若しくはその病態変化の検査方法は、前記粘性率測定方法により血清又は血漿の粘性率及びそれと同時に得られる電解質濃度を経時的に測定して記録し、該粘性率及び電解質濃度の経時変化に基づき血液又は血管疾患若しくはその病態変化を検査することを特徴とする。
また、上記の本発明に係る血液又は血管疾患の検査方法、又は、本発明に係る血液又は血管疾患若しくはその病態変化の検査方法により、血清又は血漿の粘性率増加をきたす疾患を検査することもできる。「血清又は血漿の粘性率増加をきたす疾患」とは、骨髄腫、原発性マクログロブリン血症、慢性肝炎、心筋梗塞、脳梗塞、膜性腎炎、その他のいわゆる生活習慣病などをいう。
また、上記の本発明に係る血液又は血管疾患の検査方法、又は、本発明に係る血液又は血管疾患若しくはその病態変化の検査方法により、血清又は血漿の粘性率低下が生じる病態を検査することもできる。「血清又は血漿の粘性率低下が生じる病態」とは、鉄欠乏性貧血、溶血性貧血など各種貧血や、ネフローゼ症候群、肝障害など低蛋白血症をいう。
また、本発明に係る体液電解質濃度及び粘性検査システムは、体液の粘性率を測定する体液粘性検査システムであって、前記第1乃至5の何れかの構成の粘性率測定装置を備えたことを特徴とする。ここで、「体液」とは、血液、リンパ液、髄液、腸液、胆汁、膵液、涙(眼房水)、唾液、汗等をいう。
また、本発明に係る食品製造装置は、液体もしくはゲル状の食品製造過程における食品材料の温度と粘性率を測定し制御し記録する食品製造装置において、前記第1乃至5の何れかの構成の粘性率測定装置を備えたことを特徴とする。
以上のように、本発明によれば、少量の試料を用いてその電解質濃度および粘性率を簡便かつ迅速に判定することが可能となる。このことを利用して、上述したような各検査方法、体液粘性検査システム、食品製造装置を提供することが可能となる。
NaCl,KCl水溶液の濃度とモル伝導率の関係を表す図である。 本発明の実施例1に係る粘性率測定装置の全体構成を表すブロック図である。 図2の電気伝導率測定セル群3の1つの測定セル10の一例を示す図である。 図2のインピーダンス測定器6及びコンピュータ7の機能構成を表すブロック図である。 図4のCRタイミング方式発振回路21の具体的な構成例を示す図である。 図4のCRタイミング方式発振回路21の他の具体的な構成例を示す図である。 本発明の実施例1に係る粘性率測定装置の動作を表すフローチャートである。 タイミング抵抗の抵抗値Rと発振周期Tとの関係を示す図である。 実施例4におけるグリセリン−食塩水溶液の粘性率の、既製の粘度計(Viscomate)による測定値と本発明の粘性率測定方法による測定値との相関を示す図である。 純水及びNaCl希薄溶液の温度と粘性率との関係を示す図である。 純水及びKCl希薄溶液の温度と粘性率との関係を示す図である。 純水及びHCl希薄溶液の温度と粘性率との関係を示す図である。 純水及び希釈海水の温度と粘性率との関係を示す図である。 ヨーグルトの発酵過程を電気伝導率の変化として追跡した測定結果である。 温度を上げて流動化させた煮凝りを室温に放置して、その電気伝導率を、図5のCRタイミング方式発振回路21を用いて発振周波数として測定し、連続記録した図である。 CRタイミング方式発振回路21を用いた高分子膜型湿度センサのインピーダンスの変化の測定結果を示す図である。 実施例17に係る粘性率測定装置の全体構成を表すブロック図である。 図17の測定セル10の一例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
〔1〕本発明に係る粘性率測定方法の基本的な考え方
本発明は、基本的には、特定の温度条件における試料の電気伝導率を測定して該電気伝導率を粘性率に換算する技術である。測定した試料の電気伝導率のデータに、溶液中のイオンのモル伝導率と粘性率との関係を表す拡張Walden則を適用して、試料の電解質濃度と粘性率とを算出する。電解質溶液の電気伝導率は、試料の電解質濃度と試料の粘性率の双方が組み合わさって定まると考えられる。したがって、電気伝導率に対する「電解質濃度の寄与」と「粘性率の寄与」とを分離しなければならない。電解質濃度が既知であればこの「分離」は容易である。しかし、電解質濃度が未知の場合は、測定操作に工夫が必要である。
本発明においては、試料の原液の電気伝導率σの測定に加えて、新たに「試料の原液を水(純水)により所定の倍率nに希釈した希釈溶液の電気伝導率σを測定する」という新たな測定ステップを加えることによってこの問題を解決する。希釈倍率(所定の倍率n)は、「希釈溶液の粘性率が純水の粘性率(20℃において1.0mPa・s)に極めて近い」という条件を満たせばよい。この条件が満たされれば、電気伝導率に対する「粘性率の寄与」は無視することができ、公表されている換算テーブル(例えば、非特許文献3参照)を参照して、「希釈溶液の電気伝導率」から「希釈溶液の電解質濃度」が求められる。希釈溶液の電解質濃度が定まれば、これを希釈倍率nだけ「算術的に濃縮」して「試料の原液の電解質濃度」を定めることができる。「算術的に濃縮された試料」、すなわち試料の原液と同じ濃度の電解質溶液を仮想的に「タンパク質や糖などの不純物の混在のない純水に電解質を溶かした溶液」(以下「仮想的溶液」と呼ぶ。)とみなす。そうすると、再び上記換算テーブルを参照して、その仮想的溶液の電気伝導率σが求められる。試料の原液の電気伝導率の実測値σは、仮想的溶液の電気伝導率σより必ず小さい。
試料の原液の粘性率をηとし、拡張Walden則を当てはめると、粘性率ηは次式によって求めることができる。
Figure 0006258708
したがって、(1)試料の希釈操作、(2)2回の電気伝導率の測定、及び(3)換算テーブル(電気伝導率−濃度の換算テーブル)の参照による電解質濃度の算出、によって未知の試料の粘性率を求めることができる。
〔2〕希釈率の選択
ここで、上記本発明に係る粘性率測定方法において、希釈率nをどのように定めるべきかについて考察する。上述の通り、試料の原液の希釈操作は、試料の電気伝導率に対する「粘性率の寄与」を除去する目的でなされるものであるため、基本的には希釈溶液の粘性率が純水の粘性率と同程度となるように希釈すればよい。そこで、予備実験として、身近にある電解質溶液である、
(a)醤油 (粘性率 3〜4mPa・s)
(b)牛乳 (粘性率 〜1.8mPa・s)
を純水で21倍希釈して、既製の粘度計により粘性率を測定した。その結果、何れの希釈溶液の粘性率も、純水の粘性率(1mPa・s)に極めて近い値であった。そこで、血漿などの生体試料でも21倍希釈で充分であろうと推定した。
後述するラット血漿の粘性率測定では、使用できる試料の原液の量が1mL程度と少ないため、希釈溶液の粘性率の確認をせず、21倍希釈を採用した。測定後、全試料をそれぞれ約20mLにまで希釈して既製の粘度計により粘性率を測定した。その結果、何れの希釈溶液の粘性率も、純水の粘性率に極めて近い値であった。
〔3〕電解質濃度:「標準電解質換算」という考え方
上述の本発明に係る粘性率測定方法において、「(1)試料の希釈操作」及び「(2)2回の電気伝導率の測定」に関しては特に問題はない。しかし、「(3)換算テーブル(電気伝導率−濃度の換算テーブル)の参照による電解質濃度の算出」では、換算テーブルを参照して「電気伝導率σ」から「電解質濃度c」、「電解質濃度nc」から「電気伝導率σ」を換算し決定する必要がある。しかし、希釈溶液中の電解質の種類が定まらなければ換算テーブルを参照することができないため、前記換算を行うことができない。
後述の実施例では「標準電解質換算」(具体的には「NaCl換算」)という考え方を採用して、牛乳、醤油、唾液、ラット血漿などの粘性率の推定を行った。「標準電解質換算」とは、試料中に溶解している電解質をある特定の代表的な電解質のみであるとみなし、その標準的な電解質の換算テーブルを用いて電気伝導率−濃度間の換算を行う考え方である。即ち、例えば「NaCl換算」の場合、それぞれの試料を単純に「(電気伝導に寄与しない)不純物の混入した食塩水」と捉え、その食塩濃度を決定するという問題に帰着させるのである。
醤油は、そもそも濃い食塩水であるため、NaCl換算によって近似するのは自然である。しかしながら、牛乳や血漿、その他の生体由来試料のイオン組成は、一般に遥かに複雑である。かかる複雑な組成の電解質溶液を、単純な食塩水で近似し「NaCl換算」を適用することが妥当であるかに関しては検討が必要である。
これは理論的に決定できるような問題ではない。なぜなら、純粋なNaCl溶液でさえ、生理的濃度(〜150mM)になると、その電気伝導を第一原理から説明することは困難であり、況してや、混合物となると更に困難となるからである。また、本来のWalden則は無限希釈の電解質溶液で成り立つ経験則であり、例外があることも指摘されている。したがって、本発明における立場としては、とりあえず「標準電解質換算」という近似と拡張Walden則を用いて粘性率を計算し、実験によってこの近似の妥当性を検証する。
一般に、ヒトを含む動物体液の電気伝導の主役(陽イオン)はナトリウムイオン(Na)である。本発明では、それ以外に混在する他のイオン(例えば、カルシウムイオンなど)の電気伝導への寄与を、「ナトリウムイオンであればこの濃度に相当する」として代表的なイオン種(標準電解質)に換算して近似したことになる。一方、陰イオンの寄与は、同様に、クロライドイオン(Cl)に換算して近似したことになる。
尚、本発明においては、「標準電解質」は「NaCl」に限られるものではなく、測定する試料に応じて適宜適切な「標準電解質」を選択すればよい。
カリウムイオン(K)は、動物細胞内には多量に存在するが、細胞外(すなわち、体液内)には少ない。従って、例えばヒト血漿の塩濃度を「KCl換算」で評価することは、生物学的には不自然である。しかしながら、KCl水溶液は、その電気伝導率の濃度依存性がNaClとよく類似している(図1参照)。従って、「KCl換算」によって近似したとしても、「NaCl換算」と近似した粘性率の値が得られるはずである。後述の実施例で示すように、「KCl換算」によって求めたラット血漿の粘性率の値は「NaCl換算」で求めた粘性率の値とよい精度で一致することが実験的に確認されている。
本発明に係る粘性率測定方法は、試料の溶液を入れる収容体(盲端ガラス管、試験管、ビーカー等)、液体の電気伝導率を計測する伝導率計(電気伝導率計)その他の電気伝導率計測装置、収容体に試料や水を注液/注水する器具(ピペット、分注器、洗浄瓶など)さえあれば、測定者が手作業によって伝導率測定を行い、上述の算出方法によって粘性率を算出することが可能である。この作業は機械的作業であるため、ある程度自動化し、測定を簡易に行うようにすることが可能である。そこで、本実施例では、上述の伝導率測定を簡易に行うことを可能とする粘性率測定装置の実施例について説明する。
図2は、本発明の実施例1に係る粘性率測定装置の全体構成を表すブロック図である。本実施例の粘性率測定装置1は、蒸留水タンク2、電気伝導率測定セル群3、試料希釈装置4、セル洗浄乾燥装置5、インピーダンス測定器6、コンピュータ7、表示装置8、及び入出力装置9を備えている。
蒸留水タンク2には、希釈用又は洗浄用に使用される蒸留水(純水)が貯留されている。電気伝導率測定セル群3は、試料溶液の電気伝導率の測定を行うための測定セル(収容体)を1乃至複数備えている。試料希釈装置4は、電気伝導率測定セル群3の各測定セルに、蒸留水タンク2から設定された量の蒸留水を供給し、試料溶液の希釈を行う装置(注水手段)である。セル洗浄乾燥装置5は、蒸留水タンク2から電気伝導率測定セル群3の各測定セルへ蒸留水を送水して各測定セルの洗浄を行うとともに、各測定セルに対し乾燥空気を送風して各測定セルの乾燥を行う装置である。セル洗浄乾燥装置5は、各測定セルへ送水する蒸留水にマイクロバブルを発生・混合させ、洗浄能力を高めるように構成してもよい。インピーダンス測定器6は、電気伝導率測定セル群3の各測定セル内の試料溶液の電気伝導率を測定する装置(電気伝導率測定手段)である。
コンピュータ7は、粘性率測定全体の制御とデータ演算を行うための制御装置である。コンピュータ7は、内部に記憶装置を備え、記憶装置には、標準電解質の濃度と電気伝導率との関係を表す換算テーブルが記憶されている。コンピュータ7は、各測定セル内に貯留された試料の原液の電気伝導率σをインピーダンス測定器6により測定した後、試料希釈装置4により試料の原液を蒸留水で所定の倍率nに希釈し、その希釈溶液の電気伝導率σをインピーダンス測定器6により測定する測定制御手段として機能する。また、コンピュータ7には、希釈溶液の電気伝導率σから、換算テーブルを参照することにより、試料の原液の濃度に換算した電気伝導率σを算出する電気伝導率換算手段、及び、換算した電気伝導率σと試料の原液の電気伝導率σとの比から、試料の原液の粘性率を算出する粘性率算出手段としても機能するプログラムがインストールされている。
表示装置8は、コンピュータ7に接続されたディスプレイである。入出力装置9は、コンピュータ7に接続された、マウス、キーボード、CD−ROMドライブ、DVD−ROMドライブ、外部記憶装置、プリンタ等の入出力機器である。
図3は、図2の電気伝導率測定セル群3の1つの測定セル10の一例を示す図である。測定セル10は、ガラスや樹脂などで形成された収容体11の内部に、空洞状に収容室12が形成され、収容室12の上部には上に向かって開口する上部開口12aが形成されている。また、収容室12の左右側壁には、細管状の流入路13及び流出路14が水平に穿設されており、流入路13及び流出路14の外側端は収容体11の側壁に管状に突出しその先端で開口している。流入路13の中間には、流入路13を開閉する流入側コック15が設けられ、流出路14の中間には、流出路14を開閉する流出側コック16が設けられている。流入側コック15及び流出側コック16は、モータによって電気的に駆動され、その開閉動作はコンピュータ7によって制御される。また、収容室12内には、上部から電極17a,17bが挿入されており、電極17a,17bの下端は収容室12の内底面近傍まで延出している。電極17a,17bは、先端以外は絶縁体で被覆されている。電極17a,17bの先端は、耐腐食性を持たせるため、金メッキが施されている。この電極17a,17bによって収容室12内の液体の電気伝導率を測定する。また、電極17a,17bの基端側は、インピーダンス測定器6に接続されている。さらに、収容室12の底面付近の側壁には、収容室12内の液体の温度を計測するための温度センサ18が設置されている。収容室12の底面には、収容室12内の液体の温度を制御するためのペルチェ素子19が設置されている。温度センサ18及びペルチェ素子19は、コンピュータ7に接続されており、コンピュータ7から収容室12内の液体の温度を計測し制御することが可能とされている。
尚、図3では、電気伝導率の測定に電極17a,17bを使用する構成を示しているが、電極17a,17bの代わりに伝導率計(電気伝導率計)のようなセンサを使用することもできる。
図4は、図2のインピーダンス測定器6及びコンピュータ7の機能構成を表すブロック図である。図4において、図2,図3に対応する構成部分は同符号を付している。
インピーダンス測定器6は、CRタイミング方式発振回路21、及び発振状態測定回路23を備えている。CRタイミング方式発振回路21は、通常のCR回路を用いた発振回路であり、時定数を決定するインピーダンス(タイミング抵抗)の部分が、電極17a,17bとされている。発振状態測定回路23は、発振信号の電圧の基本周波数又は周期を検出し、周波数値又は周期値に比例するデジタル信号(周波数検出値信号)として出力する。発振状態測定回路23は、マイコンなどを用いて構成することができる。
コンピュータ7は、開閉制御回路31、電流制御回路32、A/D変換回路33、I/F回路34、電気伝導率換算部35、換算テーブル記憶部36、粘性率算出部37及び測定制御部38を備えている。
開閉制御回路31は、各測定セル10の流入側コック15及び流出側コック16の開閉を制御する制御信号を出力する回路である。電流制御回路32は、各測定セル10のペルチェ素子19に通電する電流を制御する回路である。A/D変換回路33は、各測定セル10の温度センサ18から出力されるアナログ電圧信号をデジタル信号に変換する回路である。I/F回路34は、インピーダンス測定器6の発振状態測定回路23から出力される周波数検出値信号を受信するための回路である。
電気伝導率換算部35は、周波数検出値信号の値を電気伝導率に換算する。
換算テーブル記憶部36には、標準電解質の溶液濃度と電気伝導率との関係を表す換算テーブルが記憶されている。
粘性率算出部37は、換算テーブルを参照することにより電気伝導率から標準電解質の濃度を算出する。また、希釈溶液の電解質濃度から算出される原液の電解質濃度に対応する標準電解質溶液の電気伝導率を、換算テーブルを参照することにより算出する。また、電気伝導率換算部35により算出される試料の原液の電気伝導率σ及び換算した標準電解質溶液の電気伝導率σとから試料の原液の粘性率ηを算出する。
測定制御部38は、セル洗浄乾燥装置5、開閉制御回路31、電流制御回路32、A/D変換回路33、電気伝導率換算部35、粘性率算出部37を制御することによって、粘性率測定全体の制御を行う。
図5は、図4のCRタイミング方式発振回路21の具体的な構成例を示す図である。CRタイミング方式発振回路21は、シュミット・インバータ41、コンデンサ42、帰還インピーダンス43により構成された非安定マルチ・バイブレータである。この回路の発振周波数は、コンデンサ42及び帰還インピーダンス43により決まる時定数によって決定される。そこで、帰還インピーダンス43を、測定セル10の電極17a,17b(又は伝導率センサ)とする。これにより、電極17a,17bの抵抗に反比例して発振の基本周波数が決定される。従って、出力端子OUTの電圧の基本周波数を発振状態測定回路23で検出することにより、電極17a,17b間の抵抗(すなわち、試料溶液の伝導率)を測定することができる。
図6は、図4のCRタイミング方式発振回路21の他の具体的な構成例を示す図である。図6では、図5のシュミット・インバータ41に変えて、差動アンプ41’を用いて非安定マルチ・バイブレータを構成している。この場合も、帰還インピーダンス43を、測定セル10の電極17a,17b(又は伝導率センサ)とする。これにより、電極17a,17bの抵抗に比例して発振の基本周波数が決定される。従って、出力端子OUTの電圧の基本周波数を発振状態測定回路23で検出することにより、電極17a,17b間の抵抗(すなわち、試料溶液の伝導率)を測定することができる。
尚、図5及び図6は一例であり、これ以外の公知のCRタイミング方式発振回路を使用することもできる。例えば、試料に流す電流波形を正弦波にしたいという局面が生じる可能性もある。この場合、CRタイミング方式発振回路21に正弦波発振器を使用することもできる。
また、本実施例では、試料溶液の電気伝導率の測定にCRタイミング方式発振回路21を使用した構成について説明したが、本発明では電気伝導率の測定については、これ以外の公知の方法を採用することもできる。例えば、(イ)インピーダンス・ブリッジ回路や、(ロ)発振器と、IVコンバータ及びA/Dコンバータを使う方法などが考えられる。
以上のように構成された本発明の実施例1に係る粘性率測定装置において、以下その動作を説明する。図7は、本発明の実施例1に係る粘性率測定装置の動作を表すフローチャートである。
まず、測定者は、粘性率を測定したい試料の原液を、測定セル10の収容室12に上部開口12aから注入する(S101)。ここで、「試料」は、電解質と電解質以外の不純物とを含んだ液状の試料である。例えば、血液、リンパ液等の体液やゲル状の食品などである。原液の注入は、ピペットなどを用いて行う。このとき、流入側コック15及び流出側コック16は閉じた状態にある。そして、使用者はコンピュータ7を操作して、粘性率測定プログラムを起動する。そして、測定者は、測定セル10に注入した原液の量(体積V又は質量m)、粘性率測定を行う設定温度T、換算に使用する標準電解質の種類(NaCl,KCl等)、希釈倍率n、セル定数(測定セル10の周波数−電気伝導率換算の際のキャリブレーション定数)などの測定条件をコンピュータ7に入力した後、測定実行開始の指示を入出力装置9から入力する。
測定実行開始の指示が入力されると、測定制御部38は、温度センサ18により試料の原液の温度Tを測定し、電流制御回路32によりペルチェ素子19の通電制御を行うことによって、試料の原液の温度Tが設定温度Tとなるように調節する(S102)。
次に、測定制御部38は、インピーダンス測定器6により試料の原液に通電し、その発振周波数又は発振周期を検出する。そして、電気伝導率換算部35が検出された発振周波数又は発振周期を電気伝導率σに換算し、測定制御部38に出力する(S103)。
次に、測定制御部38は、原液の量(体積V又は質量m)から希釈に用いる水の量を計算し、希釈倍率が設定された倍率nとなる注入水量を計算する。そして、開閉制御回路31により流入側コック15を開き、試料希釈装置4により収容室12に蒸留水タンク2から計算された注入水量の純水を注入し、収容室12内の試料溶液をn倍に希釈する(S104)。
次に、測定制御部38は、温度センサ18により試料の希釈溶液の温度Tを測定し、電流制御回路32によりペルチェ素子19の通電制御を行うことによって、試料の希釈溶液の温度Tが設定温度Tとなるように調節する(S105)。
次に、測定制御部38は、インピーダンス測定器6により試料の原液に通電し、その発振周波数又は発振周期を検出する。そして、電気伝導率換算部35が検出された発振周波数又は発振周期を電気伝導率σに換算し粘性率算出部37に出力する(S106)。粘性率算出部37は、設定された標準電解質の換算テーブル(又は換算式)を参照して電気伝導率σに対応する標準電解質の濃度cを算出する(S107)。
次に、粘性率算出部37は、原液の電解質濃度c=n・cを算出し、設定された標準電解質の換算テーブル(又は換算式)を参照して電解質濃度cに対応する標準電解質の電気伝導率σを算出し、電解質濃度c,c,電気伝導率σ,σを測定制御部38に出力する(S108)。そして、粘性率算出部37は、試料原液の粘性率η=(σ/σ)×η(ηは同じ温度・同じ電解質濃度における水溶液の粘性率)を算出し、測定制御部38に出力する(S109)。
次に、測定制御部38は、測定又は算出された粘性率η,電解質濃度c,c,電気伝導率σ,σ,σを表示装置8に出力・表示するとともに、入出力装置9に出力する(S110)。
測定を終わる場合、測定者は、入出力装置9からコンピュータ7に洗浄実行指示を入力する(S110)。洗浄実行指示が入力されると、測定制御部38は、まず開閉制御回路31により流出側コック16を開弁して収容室12内の溶液を排出させる(S201)。
次に、測定制御部38は、開閉制御回路31により流入側コック15を開き、セル洗浄乾燥装置5に洗浄指示を出力する。セル洗浄乾燥装置5は、収容室12への蒸留水の注水(S202)と排出(S203)とを所定の回数Nだけ繰り返し行い(S204)、測定セル10の洗浄を行う。
洗浄終了後、セル洗浄乾燥装置5は、測定セル10の収容室12に乾燥空気を送風して収容室12内の乾燥を行い、洗浄プロセスを終了する(S205)。
以上の方法によって、試料の粘性率η及び電解質濃度cが測定される。本実施例の粘性率測定装置1は、微量な試料の測定を容易に行うことが可能なため、従来試料が少量すぎて粘性率の測定ができなかったような分野において様々な応用が可能となる。例えば、粘性率測定装置1により血清又は血漿その他の体液の電解質の粘性率及びそれと同時に得られる電解質の濃度を測定し、これを正常値と比較することで、血液又は血管疾患の検査装置や体液粘性検査システムとして応用することができる(実施例7〜9参照)。また、液体もしくはゲル状の食品製造過程における食品材料の温度と粘性率を、本実施例の粘性率測定装置1で測定し制御し記録するように構成することで、食品製造装置にも応用することができる(実施例10,11,12,16参照)。
以下では、本発明に係る粘性率測定方法の精度及び有効性の検証のために行った幾つかの実施例について説明する。
(シュミット・インバータ発振回路を用いた電気伝導率の測定)
まず、図5に示したCRタイミング方式発振回路21と一対の電極17a,17bを使用して、電解質溶液の電気伝導率を測定する実験手順について説明する。電極17a,17bは、金メッキの施された「ヘッダーピン端子」にリード線を接続し、接続部を防水絶縁加工したものを使用した。
図8は、図5のタイミング抵抗Rとしてダイヤル抵抗器(YOKOGAWA2768)を接続し、その抵抗値を変化させて測定された発振周波数から、発振周期を算出してプロットした図である。横軸をタイミング抵抗Rの抵抗値、縦軸を発振周期Tとしている。図8より、発振周期Tはタイミング抵抗Rに完全に比例していることが分かる。
次に、ダイヤル抵抗器に代えて、電極17a,17bのリード線を接続し、電極17a,17bをそれぞれの標準電解質溶液(10mM NaCl溶液、10mM KCl溶液、100mM KCl溶液、及び100mM NaCl溶液)に順次浸漬して発振させ、発振周波数を測定した。発振周波数から、それぞれの塩溶液に対応する電極間抵抗Rを定めた。電極間抵抗Rは、図8のグラフから求めることができるが、今回は測定精度を上げるために、電極17a,17bに代えて再びダイヤル抵抗器を接続して、それぞれの基準溶液に対応する発振周波数を再現して定めた。表1に、電極間抵抗Rとそれぞれの溶液の電気伝導率(非特許文献3)をあわせて示す。
Figure 0006258708
電解質溶液の電気伝導率の初歩的な理論(非特許文献3)によれば、電解質溶液の電気伝導率σと、それに浸漬した電極間抵抗Rとの間には次式のような関係がある。
Figure 0006258708
ここで、定数Kは電極17a,17bや収容室12の幾何学的形状によって定まる固有の量で電極定数(セル定数)と呼ばれる。
表1の結果から、シュミット・インバータ発振回路の発振周波数として表現された電極間抵抗Rの抵抗値は、電解質溶液の電気伝導率を正しく反映しているといえる。また、この測定から、今回実験において使用した電極17a,17bの電極定数Kの平均値は、334m−1であった。
既に説明した通り、CRタイミング方式発振回路21を使用した未知試料の電気伝導率σの測定は、次の手順で実行することができる。
(1)電極定数Kが既知である一対の電極17a,17bを用意する。
(2)電極17a,17bをCRタイミング方式発振回路21に接続する。
(3)電極17a,17bを試料溶液に浸漬して発振周波数を測定する。
(4)測定された発振周波数に対応する抵抗値Rを、図8のようなグラフ、回帰式、或いはダイヤル抵抗器を用いて定める。
(5)未知試料の電気伝導率σを、式(11)を用いて算出する。
(種々の濃度のグリセリンを溶かした食塩水の粘性率の測定)
次に、試料としてグリセリンを使用した場合を例にとって、電解質溶液の粘性率を電気伝導率測定から推定する手順を詳細に説明する。
(試料)
種々の濃度のグリセリンを加えた食塩水を用意した。グリセリン溶液は、何れも厳密にNaCl濃度が150mMとなるように調整し、グリセリン濃度を変えて、その粘性率が1.0〜1.2mPa・sの範囲に収まるように、一連の系列の試料を作成した。また、グリセリンを含まない150mM NaCl溶液を基準試料とした。この基準試料の粘性率は、純水と同じ1mPa・sであった。
(既製粘度計)
市販の振動型粘度計(yamco MODEL VM-1A:以下「Viscomate」という。)で測定した粘性率の値と、本発明に係る粘性率測定方法により求めた粘性率の値との比較を行った。Viscomateは、室温(〜20℃)の純水(粘性率1mPa・s)により較正した。
(発振回路)
電気伝導率の測定に使用する発振回路には、実施例2と同様に、シュミット・インバータ発振回路を使用した。実施例2で述べた通り、この発振回路の発振周期Tは、タイミング抵抗Rの抵抗値に厳密に比例する。即ち、次式が成り立つ。
Figure 0006258708
タイミング抵抗Rを電解質溶液に浸漬した電極17a,17bに置き換えると、発振周期が電極間抵抗に比例することになる。実施例2で示したように、「電極間抵抗の抵抗値は溶液の電気伝導率に反比例」する。
Figure 0006258708
発振周波数fは1/Tであるから、式(12),式(13)から、同一の電極を使用すれば(Kが同じであれば)、「発振周波数は溶液の電気伝導率に比例する」という結果になる。即ち、次式が成り立つ。
Figure 0006258708
実施例3で使用する試料の電解質濃度はすべて同一である。従って、各試料間に電気伝導率の差があれば、それは電解質濃度の違いによるものではない。拡張Walden則に依拠すると、各試料間の電気伝導率の違いの主たる要因は試料の粘性率である、というのが本発明における立場(推定)である。拡張Walden則は次式で表される。
Figure 0006258708
ここで、σは溶液の電気伝導率、ηはこの溶液の粘性率である(尚、多くの文献に記載されている本来のWalden則は、極限モル伝導率と粘性率との積が一定である(ηΛ =const.)という形式で書かれている)。式(14),式(15)から、次式が導かれる。
Figure 0006258708
式(16)から、粘性率が既知の基準溶液を用意すれば、「発振周波数を測定するだけで粘性率が算出できる」ことが分かる。
ここで、式(16)を導くに至る測定条件と仮定を整理すると次の通りである。
(1)発振周期がタイミング抵抗値に比例するようなCRタイミング方式発振回路を採用した。
(2)試料の電解質濃度はすべて同じであり、電気伝導率の違いは粘性率の違いのみによるものとした。
(3)同一の電極(セル)を使用し、その電極間抵抗値が溶液の電気伝導率に反比例するとした。
(4)Walden則が有限の電解質濃度で成立すると仮定した(拡張Walden則)。
図9に、実施例3におけるグリセリン−食塩水溶液の粘性率の、既成の粘度計による測定値と本発明の粘性率測定方法による測定値との相関を示す。図9から分かるように、式(16)から求めたグリセリン−食塩水溶液の粘性率と、既製の粘度計で求めた粘性率とは、絶対値は異なっているが、互いに線型な相関関係にあることが実験により確認された。
(電解質濃度が既知である場合の粘性率決定法)
実施例2では、種々の濃度のグリセリンを加えた食塩水(150mM NaCl)の粘性率を、粘性率のわかっている150mM NaCl水溶液(純水にNaClを溶かした溶液)を基準にして推定する方法について述べた。もし、試料の電解質濃度が既知である(例えば150mM NaCl含有とわかっている)ならば、「基準溶液」を準備する必要はない。「基準溶液」の電気伝導率が既知だからである。
粘性率推定の手順は以下のようになる。
(1)実施例1に述べた方法により、試料の電気伝導率σを定める。
(2)換算テーブル(例えば「化学便覧」)あるいは換算式を参照して該濃度の電解質溶液の電気伝導率σを算出する。
(3)拡張Walden則に依拠すれば、σをσで除した値に基準溶液の粘性率(純水ならば20℃で1mPa・sとわかっている)を掛けた値が試料の粘性率である。
表2は、NaCl濃度を厳密に150mMに合わせた種々の濃度のショ糖(sucrose)液の粘性率を上に述べた方法で推定した値(以下「Walden粘性率」という。)と振動型粘度計(Viscomate)で測定した値(以下「Viscomate粘性率」という。)を比較したものである。粘性率が大きくなると相対誤差は大きくなる傾向がみられるが、ショ糖液においてもViscomate粘性率の大きな試料はWalden粘性率の値も大きい、つまり、測定された粘性率の値の大小の順序は正しく再現されていることがわかる。
Figure 0006258708
(水の粘性率の温度依存性の測定)
水の粘性率は、近似的に絶対温度Tの指数関数に比例することが知られている。すなわち、水の粘性率ηの温度依存性は、近似的に
Figure 0006258708
また、種々の温度における水の粘性率は、詳細な表によって提供されている(例えば、国立天文台編,「平成24年 理科年表(第85冊)」,389頁参照)。本実験例では、蒸留水に種々の電解質(NaCl,KCl,HCl,及び海水)を微量加えた試料(最終濃度10mM程度)をそれぞれ用意し、温度を変化させてその電気伝導率を発振周波数として記録した。測定結果を図10〜図13に示す。横軸は絶対温度の逆数(単位:mK−1)、縦軸は粘性率(単位:mPa・s)の対数である。各図において、純水の粘性率データは非特許文献3から引用したものである。また、電解質希薄水溶液のデータは、測定された発振周期の対数を表している。
図10〜図13より、NaCl,KCl,及び海水を加えた蒸留水を試料とした場合、CRタイミング方式発振回路21の発振周期は、純水の粘性率と略平行に温度変化していることが見て取れる。一方、HClを加えた蒸留水を試料とした場合、CRタイミング方式発振回路21の発振周期は温度にあまり依存しない。すなわち、HClを加えた蒸留水試料の電気伝導率は、水の粘性率にあまり影響を受けない。
これは、本発明に係る粘性率測定方法の有効性を補強する観察結果である。水素イオンによる電気伝導のメカニズムは、他のイオンによる電気伝導のメカニズムとは全く異なる。水素イオンに電場が加わると、「連鎖機構(chain mechanism)」と呼ばれる仕組みで電荷が移動するため、事実上、水の粘性率には影響されないのである。また、この結果から、水素イオンが電解質の主成分であるような液体(例えば、胃液)の粘性率の測定には、本発明に係る粘性率測定方法は適用できないことが分かる。
(牛乳の粘性率の測定)
牛乳は、その電解質濃度も粘性率も未知である。従って、その粘性率の推定には実施例4で用いたような手法は適用できない。以下、牛乳の粘性率を、本発明に係る粘性率測定方法を用いて推定する過程とその結果について説明する。
(試料)
試料としては、市販の牛乳を使用した。電解質成分としては、包装に100mL当たり、ナトリウム42g,カルシウム114mgと記載してあるが、それ以上のことは不明である。予備実験として、この牛乳を蒸留水により21倍希釈した希釈試料の粘性率をViscomateで測定し、室温で1mPa・s(蒸留水の粘性率)に極めて近いことを確認した。
(測定手順)
(1)牛乳の原液(以下「原液」という。)を蒸留水により正確に21倍希釈した試料(以下「希釈試料」という。)を用意する。
(2)原液及び希釈試料のそれぞれについて、実施例2及び実施例4に記載した手順により、電気伝導率を測定する。原液の電気伝導率は0.515S/m,希釈試料の電気伝導率は0.0467S/mであると算出された。
(3)希釈試料の粘性率は、純水の粘性率と同じであるから、電気伝導率に対する粘性率の寄与は無視できると考えられる。従って、希釈試料を標準電解質(ここでは、NaClを用いる。)の水溶液であると仮定して、図1に示したような換算テーブル又は換算式(換算テーブルから導かれる近似曲線の式)を用いて、希釈試料の濃度を算出する。この希釈溶液の電気伝導率は、3.9mM NaCl溶液相当であると計算される。
(4)算出された希釈試料の濃度に希釈倍率を掛けて、原液の電解質濃度を算出する。ここでは、原液の電解質濃度(塩濃度)は、NaCl換算で、3.9×21=81.9mMとなる。
(5)再び、標準電解質の換算テーブル又は換算式から、原液の電解質濃度における電気伝導率を算出する。ここでは、81.9mM NaCl溶液の電気伝導率は、0.850S/mであると計算される。
(6)拡張Walden則(式(15))により、原液の粘性率を計算する。この場合、原液の粘性率ηは、
Figure 0006258708
と算出される。尚、原液をViscomateで測定した粘性率の値は1.85mPa・sであった。本発明に係る粘性率測定方法によって、相対誤差およそ10%で粘性率が求められた。
以上の検証試験により、(1)検体の量が微量であり、(2)塩濃度も粘性率も不明な電解質溶液の、電気伝導率測定による電解質濃度と粘性率の測定方法が確立された。
(出血モデル動物と対照動物の血漿粘性率の比較)
(試料)
ラット大腿動脈にカテーテルを挿入して、その平均血圧がおよそ35mmHgになるまで出血させた。処置後3時間経過後に抗凝固剤(EDTA)を加えたスピッツに採血し、遠心分離して血球を除き、得られた血漿を「出血モデルラット」由来の試料とした。出血モデルラット及び対照ラット由来の試料について、それぞれの電解質濃度と粘性率を、実施例6と同様の方法により推定した。
(測定手順)
何れの試料も、蒸留水で正確に21倍希釈した試料を希釈試料として電気伝導率を測定した。測定結果は表3の通りとなった。また、実施例6と同様の方法により算出したNaCl換算電解質濃度及び粘性率を表4に示す。
Figure 0006258708
Figure 0006258708
出血モデルラットでは、その血漿の粘性率も電解質濃度も、対照ラットに比べて顕著に大きくなっていることが分かる。試料の量が何れも1mL程度であるので、従来の粘性率測定方法では実現の困難な測定である。本発明に係る粘性率測定方法は、簡便かつ迅速に結果が出るという利点もある。本方法で得られた対照ラットの血漿粘性率が、報告されているヒト血漿の粘性率の正常値と極めて近いことにも注目しておきたい。
(ラットの血漿粘性率をKCl換算で評価した実験例)
実施例6及び実施例7では、標準電解質としてNaClを用いて電解質濃度を推定し、粘性率を求めた。ここでは、生物学的には不自然であるが、標準電解質としてKClを用いて電解質濃度を算出してみる。つまり、仮想的に、ラットの血漿を「KCl水溶液に不純物(糖、タンパク質など)が混入した溶液」であると捉えるのである。非特許文献3に記載の換算テーブルによれば、濃度が同じであればKCl水溶液の電気伝導率はNaCl水溶液よりも必ず大きい(図1参照)。従って、電気伝導率から逆算した電解質濃度は、KClのほうがNaClより小さくなることは明らかである。一方、粘性率は、2つの濃度における電気伝導率の比を採っているため、電気伝導率から逆算した電解質濃度の違いは相殺される。標準電解質としてKClを用いて算出したKCl換算電解質濃度及び粘性率を表5に示す。
Figure 0006258708
標準電解質としてNaClを用いても、KClを用いても、算出される粘性率の値は、相対誤差5%以内で一致することが分かる。当然ながら、粘性率の大小関係は、何れの標準電解質を用いて計算しても同じである。これは、図1から分かるように、電解質濃度に対する電気伝導率の変化の曲線形状が、NaClとKClでほぼ一致している(すなわち、σNa(c)/σ(c)=ほぼ一定 の関係が成り立っている)ことによる。
(唾液の粘性率の測定)
試料として、ヒトの唾液を使用した。採取した唾液の量は1mL強であった。濾過も遠心分離もせずにそのまま測定を行った。上述の牛乳や血漿の場合と同様、唾液の原液とそれを蒸留水により21倍に希釈した試料(希釈試料)について電気伝導率の測定を行った。原液の電気伝導率は0.807S/m、希釈試料の電気伝導率は0.0495S/mであった。標準電解質をNaClとして、これらの電気伝導率から算出される電解質濃度は、希釈試料で0.00408M(NaCl換算)、原液で0.0857M(NaCl換算)となる。従って、原液と同濃度のNaCl溶液の電気伝導率は0.921S/mである。拡張Walden則により計算される唾液の粘性率は0.921/0.807=1.141mPa・sとなる。
(低脂肪乳飲料の粘性率の測定)
市販の低脂肪乳飲料について粘性率の測定を行った。商品の包装に記載された原材料名は、乳、乳製品、乳糖、及び香料であった。この低脂肪乳飲料を試料として、その粘性率を(1)市販の粘度計Viscomate、(2)本発明に係る粘性率測定方法、により測定し、比較を行った。Viscomateによるこの試料の粘性率の測定値は、20℃で1.55mPa・sであった(つまり、この低脂肪乳飲料は、通常の牛乳と比べ、よりサラサラである)。
本発明に係る粘性率測定方法で測定した結果は、試料の原液の電気伝導率は0.496S/m、21倍希釈溶液の電気伝導率は0.0523S/mであった。標準電解質をNaClとした場合、電気伝導率から、希釈溶液の電解質濃度は0.0043M、原液の電解質濃度は0.0903Mとなる。再度、換算テーブルを参照してNaCl 0.0903M水溶液の電気伝導率を求めると、0.968S/mとなる。従って、試料の原液の粘性率は、0.968/0.496=1.95mPa・sと推定され、Viscomateによる測定値よりも、通常の牛乳よりも大きな値となった。
そこで、製造元に問い合わせたところその理由が判明した。原材料として記載されている「乳製品」とは「ホエーパウダー」(ヨーグルトの生産時に生じる乳清(ホエー)を粉末化したもの。)であった。「ホエー」は乳酸を多量に含んでおり、乳酸は弱酸であるから、希釈することにより解離度が増加する。従って、乳酸を希釈すると、単に薄めただけでなく、イオンを新たに追加したと同じ効果を生じる。そのため、この希釈液の電気伝導率を用いて原液の電解質濃度を推定すると、実際の値よりも大きな値が見積もられてしまうことになる。従って、拡張Walden則を単純に適用すると、実際よりも大きな粘性率が得られることになる。
以上の実験から、本発明に係る粘性率測定方法は、電気伝導の主体が水素イオンであるような試料や、たとえ電気伝導において脇役ではあっても乳酸や酢酸のような弱酸が存在する試料の粘性率の測定には適さないことが確認された。
(ヨーグルトの発酵過程の連続追跡)
図14は、ヨーグルトの発酵過程を電気伝導率の変化として追跡した測定結果である。最初の約60分間は、牛乳のみの電気伝導率の変化である。冷蔵庫から取り出した牛乳を38℃に保持したYogurt Maker(東芝製)に移して、図5のCRタイミング方式発振回路21を用いて発振周波数(電気伝導率と1対1対応)を連続記録したものである。温度上昇に伴う電気伝導率の増加が記録された。温度がほぼ一定値に達した時点で、同じ温度に温めた種ヨーグルトを加え(図14の周波数に飛びが生じている時点)、発振周波数の記録を継続した。発振周波数(電気伝導率)は更に上昇を続けてほぼ一定値に達した。流動性のないヨーグルトができあがっていた。
ヨーグルトの「固化」に由来する電気伝導率の減少が観察されると予想していたが、今回の条件ではそれは見られなかった。乳酸発酵によって放出される水素イオンによる電気伝導が、粘性率の上昇による効果を覆い隠しているものと解釈した。「固化」を捉えることはできなかったが、単に発振周波数を連続監視するだけで、ヨーグルトの発酵過程を連続追跡できることが分かった。製品管理に応用が可能である。
(煮凝りのゲル化の追跡)
図15は、温度を上げて流動化させた煮凝りを室温に放置して、その電気伝導率を、図5のCRタイミング方式発振回路21を用いて発振周波数として測定し、連続記録した結果である。この試料では、電解質濃度が時間的に変化することはない。
温度が徐々に低下すると、ゲル化に伴って粘性率も大きくなる。発振周波数(電気伝導率)の変化は、温度と粘性率との双方の因子を含んでいるので、このデータ自身の解釈は困難である。
しかしながら、この実験と同じ発想で、例えば血漿の凝固過程を連続監視することができる。血漿の凝固過程では、電解質濃度も温度も、共に一定にして実験することができるため、血漿の凝固(ゲル化)過程における粘性率の変化を連続記録することが可能である。
(血漿凝固過程の連続監視)
血液凝固は、多くの因子が関与する複雑でダイナミックな生理学的プロセスである。血管が傷ついて出血すると、血の塊を形成して傷ついた部位からの出血を止める。つまり止血がその役割である。血管内で血液凝固が過度に進むと血栓を生じ、血管が詰まる。一方、血液凝固システムがうまく働かないと、出血が止まりにくいという結果になる。いずれも生体にとっては危険な事態である。
怪我や出産や手術時には大量の輸血が行われることがあるが、輸血血液には血液凝固を抑制するために抗凝固剤(EDTA等)が添加されており、輸血後には深刻な凝固障害におちいるため、過剰な出血を防ぐために早急に元の状態に戻す必要がある。凝固と出血の微妙なバランスを保つために、患者の血液の凝固能(凝固時間)を一定時間おきに継続的に監視する必要がある。
血液凝固時間監視の従来法では、例えば患者から採取した血液試料中に小さなスチールボールを入れ、それを外部振動磁場で振動させてボールの振動の振幅を外部から磁気的に検知するシステムが市販されている(全自動血液凝固線溶測定装置 STA Compact : ロシュ・ダイアグノスティック株式会社製など)。
実施例12で見たように、電解質溶液がゲル化(凝固)すると粘性率が増加し、それは電気伝導率の減少として検出可能である。つまり、上述の煮凝りのゲル化の追跡と全く同様の方法によって血液凝固の過程を監視できることになる。一方、実施例2,4に記述したように、電解質溶液の電気伝導率は簡単な電気回路で測定できる。つまり、(1)一対の電極を備えた収容体(セル)、(2)電極間の電気抵抗値を測定する機構、および(3)抵抗値を電気伝導率に変換し、表示する機構、があればよい。血液凝固時間の測定には粘性率の正確な値を算出して表示する必要はない。したがって、電気的手法による血液凝固時間測定システムは非常に簡素な検査装置として実現可能であり、患者のベッドサイドで継続的に簡便に検査する装置となる。
(血球崩壊過程の連続追跡)
血球内にはカリウムイオンが多い。血球が崩壊すると、カリウムイオンが外液に放出され、血漿の電解質濃度が上昇する。さらに、カリウムイオンの移動度は、ナトリウムイオンの移動度よりも大きいので、血球崩壊過程を、血液の電気伝導率の増大として観察することができる。
動物から採取した血液に、抗凝固剤を加えた全血を試料とした。室温(23℃)に静置して、その電気伝導率を連続記録した。これにより、血球崩壊過程が電気伝導率の増大として記録される。
(湿度の連続記録)
本発明に係る粘性率測定装置で用いたCRタイミング方式発振回路21は、単に粘性率の測定だけではなく、インピーダンスの変化を検出するセンサとして応用することができる。特に、インピーダンスの変化域が大きく、従来のようなインピーダンス−電圧変換方式では、対数変換のような複雑な回路技術を要するような測定に応用すると、回路の簡略化に大きな効果を上げることができる。
一つの応用例として、CRタイミング方式発振回路21を湿度センサに応用した例を示す。高分子膜型湿度センサHS15P(General Electric Company(GE)社製)は、環境湿度に応じてその抵抗値が数桁に亘り変化する(典型的には、RH100%で200Ω、RH20%で>10MΩ)。このように広範囲に亘ってインピーダンスの変動する対象のインピーダンス測定は、従来の技術では困難であり、複雑な回路技術を要する。
そこで、上述のCRタイミング方式発振回路21のタイミング抵抗Rの部分を、湿度センサに置き換えて、湿度センサのインピーダンス変化を、発振周波数の変化として検出する。図16に、CRタイミング方式発振回路21を用いた高分子膜型湿度センサのインピーダンスの変化の測定結果を示す。図16においては、湿度センサを、(a)室内(湿度40%以下)から、順次、3種の基準湿度空間((b)飽和NaCl溶液空間(RH77%)、(c)飽和KCl溶液空間(RH85%))に移し、次いで、(d)飽和水蒸気空間(RH100%)に移して連続記録したものである。センサ以外の回路定数を全く変えることなく、20Hzから25kHz(センサの抵抗値に換算すると600kΩから200Ω)まで連続記録できることが分かる。これを電解質溶液に引き直して考えると、NaCl 0.0005MからNaCl 約1.0Mまでを「同じ回路定数」で「自動的に」発振周波数として記録できることが分かる。
(「醤油」の粘性率測定)
食塩を含む3種類の調味料、
イ)白だし
ロ)薄口しょうゆ
ハ)濃口しょうゆ
の粘性率を実施例6乃至7と同様の手順で推定し(Walden粘性率)、振動型粘度計で測定した値(Viscomate粘性率)と比較して表6に示す。表中、食塩濃度(表示)は包装に記載された食塩量(100mLあたり17g、あるいは15mLあたり2.5gなどと記載されている。)から計算した濃度である。また、食塩濃度(測定)は、それぞれの試料を21倍希釈した希釈試料の電気伝導率から求めた値である。
Figure 0006258708
実施例2のショ糖液の粘性率の例と同様に、粘性率が大きいほど2つの測定法による粘性率の値の相対誤差が大きい。また、白だしと薄口しょうゆの粘性率を比較すると、Viscomate粘性率は後者が前者より約3.3%大きいにもかかわらず、Walden粘性率は後者が前者より約2.6%小さい。
この「粘性率測定値の大小逆転」は以下のように理解される。式(10)の計算式を参照すると、試料の粘性率は電気伝導率の比に「純粋な食塩水の粘性率」を掛けたものである。ところが、表6に示したWalden粘性率の値は「純粋な食塩水の粘性率」として「純水の粘性率」つまり1.0mPa・sを採用して算出したものである。塩濃度が150mM程度つまり生理食塩水程度ならばこれは良い近似である。しかし、塩濃度が2〜3Mの濃厚な食塩水の粘性率は「純水の粘性率」で近似することができない。
濃厚食塩水の粘性率の値はデータテーブル(換算テーブル)として提供されていないので、
1)手近にあった3種類の濃度(1.04M、2.36M、および4.67M)の食塩水の粘性率をViscomateで測定し、
2)これらの値から補間法でそれぞれの「醤油」のNaCl濃度に相当する食塩水の粘性率を推定し、
3)その値を使用して表6のWalden粘性率の値を再計算した。
結果は、白だし、薄口しょうゆ、濃口しょうゆ の順に3.10,3.68,3.93(単位はそれぞれmPa・s)となり、一応、「粘性率測定値の大小逆転」は解消された。
試料の電解質濃度が非常に大きい場合には、本発明に係る「電伝導率測定による粘性率(Walden粘性率)の推定」には限界があることを、この実施例の結果は示している。上の例では、「醤油」は濃厚な食塩水に「不純物」の混入した試料と考えてよいので、「純粋な濃厚食塩水」の粘性率をViscomateで測定して補間法により推定し、その値を代入して「Walden粘性率」を算出した。「2回の電気伝導率測定とデータテーブル参照」だけで試料の粘性率を算出する本来の簡素さが失われた。さらに、濃厚な電解質溶液(電気伝導率が大きい)ではあるがそのイオン組成が不明な場合は、上の手順を採用することができない。
しかしながら、使用できる試料の量が少量(例えば1mL以下)で粘性率測定の従来法が適用困難な場合に、粘性率の近似値を推定する手段としては依然として有効である。従来法(例えばViscomate)は濃厚食塩水(一般に濃厚電解質溶液)の粘性率を測定すればよいので、基準試料には量的制限がない。必要ならばこの測定値をもとにして換算式を作っておけばよい。
本実施例では、本発明に係る粘性率測定装置の他の実施例について説明する。図17は、実施例17に係る粘性率測定装置の全体構成を表すブロック図である。実施例1と比較すると、本実施例では、測定セル10が、原液用セル10a及び希釈液用セル10bを1つずつ備えており、それに対応してインピーダンス測定器6a,6bを備えている点、並びに、試料希釈装置4、セル洗浄乾燥装置5、流入側コック15、流出側コック16を省略した点で相違している。原液用セル10a、希釈液用セル10bは、それぞれ、試料の原液専用、試料の希釈液専用の測定セルである。原液用セル10a及び希釈液用セル10bは、それぞれが電極17a,17b、温度センサ18、ペルチェ素子19を備えている。
図18は、図17の測定セル10の一例を示す図である。測定セル10は、収容体11の上面から下面に貫通して、原液用セル10a及び希釈液用セル10bの円孔状の収容室12が1つずつ貫通形成されている。各収容室12の上面側は開放されており、これが上部開口12aをなす。また、各収容室12の下面側は、ペルチェ素子19によって閉塞され、容器状となっている。各収容室12の内側面には、電極17a,17b及び温度センサ18が、収容室12内に突き出すように配設されている。
本実施例の粘性率測定装置では、試料の原液の希釈操作は、使用者が手で行う必要がある。使用者はまず試料の原液と希釈液とを用意して、ピペットなどにより、それぞれ原液用セル10a及び希釈液用セル10bの収容室12に注入する。そして、コンピュータ7を操作して、各セル内の溶液の電気伝導率の測定を行い、粘性率の算出を行う。粘性率の算出方法については、実施例1で説明した方法と同様であるため、説明は省略する。
1 粘性率測定装置
2 蒸留水タンク
3 電気伝導率測定セル群
4 試料希釈装置
5 セル洗浄乾燥装置
6,6a,6b インピーダンス測定器
7 コンピュータ
8 表示装置
9 入出力装置
10 測定セル
10a 原液用セル
10b 希釈液用セル
11 収容体
12 収容室
12a 上部開口
13 流入路
14 流出路
15 流入側コック
16 流出側コック
17a,17b 電極
18 温度センサ
19 ペルチェ素子
21 CRタイミング方式発振回路
23 発振状態測定回路
31 開閉制御回路
32 電流制御回路
33 A/D変換回路
34 I/F回路
35 電気伝導率換算部
36 換算テーブル記憶部
37 粘性率算出部
38 測定制御部
41 シュミット・インバータ
41’ 演算増幅器(オペアンプ)
42 コンデンサ
43 帰還インピーダンス

Claims (15)

  1. 電解質と電解質以外の不純物とを含んだ液状の試料の粘性率を測定する粘性率測定方法であって、
    前記試料の原液の電気伝導率σを測定する第1ステップと、
    前記試料の原液の電解質濃度cと同じ電解質濃度となるように、純水に前記試料の電解質を溶解した水溶液における電気伝導率σを、既知の所定の溶液の電解質濃度と電気伝導率との関係を表す換算テーブル又は換算式を参照することにより推定する第2ステップと、
    前記推定した電気伝導率σと前記試料の原液の電気伝導率σとの比から、前記試料の原液の粘性率ηを算出する第3ステップと、を有する粘性率測定方法。
  2. 前記既知の所定の溶液は、溶質イオンが水和状態を形成する電解質水溶液であることを特徴とする請求項1記載の粘性率測定方法。
  3. 前記電解質濃度cが未知の前記試料の前記電解質濃度c及び前記粘性率ηを測定する請求項1又は2記載の粘性率測定方法であって、
    前記第2ステップにおいて、
    前記試料の原液を純水により所定の倍率nに希釈した希釈溶液の電気伝導率σを測定するステップと、
    前記希釈溶液の電気伝導率σから、既知の所定の溶液の濃度と電気伝導率との関係を表す換算テーブル又は換算式を参照することにより、前記試料の原液の電解質濃度cと当該電解質濃度に換算した電気伝導率σとを求めるステップと、を有する粘性率測定方法。
  4. 前記第1又は第2のステップにおいて前記試料の電気伝導率を測定するにあたり、CRタイミング方式発振回路を使用し、
    前記試料の液中に1対の電極を離隔して配置することにより構成したインピーダンスを、前記CRタイミング方式発振回路の時定数を決定するインピーダンスとして組み込み、前記CRタイミング方式発振回路を発振させてその発振周波数又は発振周期を測定することにより、当該発振周波数又は発振周期から前記試料の電気伝導率を決定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一記載の粘性率測定方法。
  5. 電解質と電解質以外の不純物とを含んだ液状の試料の粘性率を測定する粘性率測定装置であって、
    前記試料の原液の電気伝導率σを測定し、
    前記試料の原液の電解質濃度cと同じ電解質濃度となるように、純水に前記試料の電解質を溶解した水溶液における電気伝導率σを、既知の所定の溶液の電解質濃度と電気伝導率との関係を表す換算テーブル又は換算式を参照することにより推定し、
    前記推定した電気伝導率σと前記試料の原液の電気伝導率σとの比から、前記試料の原液の粘性率ηを算出することを特徴とする粘性率測定装置。
  6. 前記既知の所定の溶液は、溶質イオンが水和状態を形成する電解質水溶液であることを特徴とする請求項5記載の粘性率測定装置。
  7. 前記電解質濃度cが未知の前記試料の前記電解質濃度c及び前記粘性率ηを測定する請求項5又は6記載の粘性率測定装置であって、
    前記試料の原液を純水により所定の倍率nに希釈した希釈溶液の電気伝導率σを測定し、
    前記希釈溶液の電気伝導率σから、既知の所定の溶液の濃度と電気伝導率との関係を表す換算テーブル又は換算式を参照することにより、前記試料の原液の電解質濃度cとその電解質濃度に換算した電気伝導率σとを算出することを特徴とする粘性率測定装置。
  8. 前記試料を貯留する収容体と、
    前記収容体内に貯留された前記試料の電気伝導率を測定する電気伝導率測定手段と、
    前記収容体内に貯留された前記試料に、水を注水する注水手段と、
    前記収容体内に貯留された前記試料の原液の電気伝導率σを前記電気伝導率測定手段により測定した後、前記注水手段により前記試料の原液を純水により所定の倍率nに希釈し、その希釈溶液の電気伝導率σを測定する測定制御手段と、
    前記希釈溶液の電気伝導率σから、所定の既知の溶液の濃度と電気伝導率との関係を表す換算テーブル又は換算式を参照することにより、前記試料の原液の電解質濃度cとその電解質濃度に換算した電気伝導率σとを算出する電気伝導率換算手段と、
    前記換算した電気伝導率σと前記試料の原液の電気伝導率σとの比から、前記試料の原液の粘性率を算出する粘性率算出手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項7記載の粘性率測定装置。
  9. 前記電気伝導率測定手段は、
    前記試料の液中に1対の電極を離隔して配置することにより構成したインピーダンスが、時定数を決定するインピーダンスとして組み込まれたCRタイミング方式発振回路と、
    前記CRタイミング方式発振回路の発振周波数又は発振周期を測定する発振状態測定器と、
    前記発振状態測定器により計測される発振周波数又は発振周期から前記試料の電気伝導率を決定する電気伝導率換算手段と、を備えたことを特徴とする請求項8に記載の粘性率測定装置。
  10. 請求項3又は4記載の粘性率測定方法により血清又は血漿の電解質の粘性率及びそれと同時に得られる電解質の濃度を測定し、これを正常値と比較することを特徴とする血液又は血管疾患の検査方法。
  11. 請求項3又は4記載の粘性率測定方法により血清又は血漿の電解質の粘性率及びそれと同時に得られる電解質の濃度を経時的に測定して記録し、該粘性率及び濃度の経時変化に基づき血液又は血管疾患若しくはその病態変化を検査する検査方法。
  12. 血清又は血漿の粘性率増加をきたす疾患を検査する請求項10又は11記載の検査方法。
  13. 血清又は血漿の粘性率低下が生じる病態を検査する請求項10又は11記載の検査方法。
  14. 体液の粘性率を測定する体液粘性検査システムにおいて、請求項5乃至9の何れか一記載の粘性率測定装置を備えたことを特徴とする体液粘性検査システム。
  15. 液体もしくはゲル状の食品製造過程における食品材料の温度と粘性率を測定し制御し記録する食品製造装置において、食品材料の粘性率を測定する請求項5乃至9の何れか一記載の粘性率測定装置を備えたことを特徴とする食品製造装置。
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