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JP6253264B2 - 耐腐朽性が高められた木材の製造方法 - Google Patents

耐腐朽性が高められた木材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐腐朽性が高められた木材の製造方法、該製造方法によって製造される木材、及び木材に耐腐朽性を付与する方法に関する。
木材は、CO2を長期間固定できる工業材料として地球温暖化問題を解決する上で重要な役割を果たす。しかし、木材には微生物等の影響で腐朽するという問題があるため、微生物等が繁殖し易い環境下では木材の耐用年数は大幅に低下する。したがって、木材を長期間利用するためには、耐腐朽性を高めることを目的とした処理が必要となる。
耐腐朽性を高めるための方法として、抗菌性を有する薬液を木材に注入する方法が各種報告されている。しかしながら、木材は、リグニンなどからなる細胞壁で囲われた細胞が密に連結した構造を有しているので、木材の内部にまで薬液を注入することは困難である。
一方、耐腐朽性を高める方法として、木材にイオン液体を浸透させる方法が報告されている(非特許文献1〜3)。この方法によれば、イオン液体が有する抗菌性、及びイオン液体の優れた浸透性と相まって、効率的に木材の耐腐朽性を高めることができる。
Holzforschung, Vol. 58, pp. 286-291, 2004 Holzforschung, Vol. 59, pp. 473-475, 2005 Holzforschung, Vol. 62, pp. 309-317, 2008
本発明は、耐腐朽性が高められた木材の製造方法を提供することを目的とする。さらに、耐腐朽性が高められた木材を、簡便且つ効率的に製造する方法を提供することをも目的とする。
本発明者等は、鋭意研究の結果、ラジカル重合性基含有カチオン及びアニオンからなるイオン液体を保持する木材に対して電離放射線を照射することにより、耐腐朽性をより高められることを見出した。さらに、適当な溶媒を保持する木材をイオン液体に浸漬することにより、イオン液体をより効率的に木材に浸透させられることをも見出した。これらの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明が完成した。
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
項1.(a)ラジカル重合性基含有カチオン及びアニオンからなるイオン液体を保持する木材を用意すること、及び
(b)該木材に対して電離放射線を照射すること
を含む、耐腐朽性が高められた木材の製造方法。
項2.前記(a)が、木材をラジカル重合性基含有カチオン及びアニオンからなるイオン液体を含有する液体に浸漬することである、請求項1に記載の製造方法。
項3.前記木材が溶媒を保持する、請求項2に記載の製造方法。
項4.前記溶媒が炭素数1〜4のアルコールである、請求項3に記載の製造方法。
項5.前記ラジカル重合性基含有カチオンが、一般式(1):
Figure 0006253264
[式中、R及びRは同一又は異なって、ラジカル重合性基、ラジカル重合性基で置換されたアルキル基、アルキル基、又は水素原子を示す(但し、R及びRは同時にアルキル基及び/又は水素原子ではない)。]
で表されるカチオンである、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
項6.前記アニオンがハロゲン化物イオンである、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
項7.(a)ラジカル重合性基含有カチオン及びアニオンからなるイオン液体を保持する木材を用意すること、及び
(b)該木材に対して電離放射線を照射すること
を含む、木材に耐腐朽性を付与する方法。
項8.請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法によって製造される、耐腐朽性が高められた木材。
本発明によれば、耐腐朽性が高められた木材の製造方法、該製造方法によって製造される木材、及び木材に耐腐朽性を付与する方法を提供することができる。本発明の製造方法によれば、単にイオン液体を浸透させる方法に比べて、より耐腐朽性が高められた木材を得ることができる。また、本発明の製造方法は、特定のイオン液体を保持する木材に対して電離放射線を照射するという極めて簡便な工程を必須としているので、簡便且つ効率的に耐腐朽性が高められた木材を製造することができる。さらに、適当な溶媒(アルコール等)を保持する木材をイオン液体に浸漬することによって、一層効率的にイオン液体を木材内部に浸透させること、すなわちより耐腐朽性を高めることが可能となる。
耐候操作中に試験片から溶脱したイオン液体の割合を示す。 耐腐朽性試験後の試験片の写真を示す。
1.耐腐朽性が高められた木材の製造方法
本発明は、(a)ラジカル重合性基含有カチオン及びアニオンからなるイオン液体を保持する木材を用意すること(以下、「工程a」と示すこともある)、及び(b)該木材に対して電離放射線を照射すること(以下、「工程b」と示すこともある)を含む、耐腐朽性が高められた木材の製造方法に関する。
イオン液体としては、ラジカル重合性基含有カチオン及びアニオンからなり、且つ常温において液体状態である塩であれば特に限定されない。常温において液体状態である塩の具体例としては、融点が40℃以下、好ましくは25℃以下、より好ましくは10℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である塩が挙げられる。イオン液体は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合性基含有カチオンとしては、イオン液体を構成するカチオンとなり得、且つ分子内にラジカル重合性基を有する限り特に限定されない。ラジカル重合性基としては、ラジカルによって付加重合することが可能であり、且つラジカル重合成基含有カチオンがイオン液体を形成し得る限り特に限定されない。ラジカル重合性基の具体例としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びマレオイル基等が挙げられ、好ましくはビニル基、アリル基、及びアクリロイル基等が挙げられる。ラジカル重合性基含有カチオンの具体例としては、一般式(1)で表されるイミダゾリウムイオン、一般式(2)で表されるピリジニウムイオン、一般式(3)で表されるアンモニウムイオン、一般式(4)で表されるピロリジニウムイオン、一般式(5)で表されるホスホニウムイオン、及び一般式(6)であらわされるスルホニウムイオン等が挙げられ、好ましくは一般式(1)で表されるイミダゾリウムイオンが挙げられる。ラジカル重合性基含有カチオンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 0006253264
一般式(1)中、R及びRは同一又は異なって、ラジカル重合性基、ラジカル重合性基で置換されたアルキル基、アルキル基、又は水素原子を示す(但し、R及びRは同時にアルキル基及び/又は水素原子ではない)。アルキル基は、ラジカル重合性基含有カチオンがイオン液体を形成し得る限り特に限定されない。アルキル基は、分枝状又は直鎖状のいずれでもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基としては、例えば炭素数1〜8のアルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、より具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基等が挙げられる。
一般式(1)の1つの好ましい態様としては、Rがラジカル重合性基であり、且つRがアルキル基であるという態様が挙げられる。
一般式(2)中、Rはラジカル重合性基、又はラジカル重合性基で置換されたアルキル基を示す。アルキル基は、ラジカル重合性基含有カチオンがイオン液体を形成し得る限り特に限定されない。アルキル基は、分枝状又は直鎖状のいずれでも良いが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基としては、例えば炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基が挙げられ、より具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基等が挙げられる。
一般式(3)中、R〜Rは同一又は異なって、ラジカル重合性基、ラジカル重合性基で置換されたアルキル基、アルキル基、または水素原子を示す(但し、R〜Rが同時にアルキル基及び/又は水素原子ではない)。アルキル基は、ラジカル重合性基含有カチオンがイオン液体を形成し得る限り特に限定されない。アルキル基は、分枝状又は直鎖状のいずれでも良いが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基としては、例えば炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基が挙げられ、より具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基等が挙げられる。
一般式(4)中、R及びRは同一又は異なって、ラジカル重合性基、ラジカル重合性基で置換されたアルキル基、アルキル基、又は水素原子を示す(但し、R及びRが同時にアルキル基及び/又は水素原子ではない)。アルキル基は、ラジカル重合性基含有カチオンがイオン液体を形成し得る限り特に限定されない。アルキル基は、分枝状又は直鎖状のいずれでも良いが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基としては、例えば炭素数1〜8のアルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、より具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基等が挙げられる。
一般式(5)中、R10〜R13は同一又は異なって、ラジカル重合性基、ラジカル重合性基で置換されたアルキル基、アルキル基、または水素原子を示す(但し、R10〜R13が同時にアルキル基及び/又は水素原子ではない)。アルキル基は、ラジカル重合性基含有カチオンがイオン液体を形成し得る限り特に限定されない。アルキル基は、分枝状又は直鎖状のいずれでも良いが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基としては、例えば炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基が挙げられ、より具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基等が挙げられる。
一般式(6)中、R14〜R16は同一又は異なって、ラジカル重合性基、ラジカル重合性基で置換されたアルキル基、アルキル基、または水素原子を示す(但し、R14〜R16が同時にアルキル基及び/又は水素原子ではない)。アルキル基は、ラジカル重合性基含有カチオンがイオン液体を形成し得る限り特に限定されない。アルキル基は、分枝状又は直鎖状のいずれでも良いが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基としては、例えば炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基が挙げられ、より具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基等が挙げられる。
アニオンとしては、イオン液体を構成するアニオンとなり得る限り特に限定されない。アニオンの具体例としては、ハロゲン化物イオン、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4 -)、BF3CF3 -、BF3C2F5 -、BF3C3F7 -、BF3C4F9 -、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6 -)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン((CF3SO2)2N-)、過塩素酸イオン(ClO4 -)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸イオン(CF3SO2)3C-)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3 -)、ジシアンアミドイオン((CN)2N-)、トリフルオロ酢酸イオン(CF3COO-)、アミノ酸由来イオン、及び有機カルボン酸イオン等が挙げられる。これらの中でも、木材に難燃性を付与し得るという観点から、ハロゲン化物イオンが好ましく挙げられる。ハロゲン化物イオンとしては、例えばヨウ化物イオン、臭化物イオン、及び塩化物イオン等が挙げられ、好ましくはヨウ化物イオンが挙げられる。アニオンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イオン液体は、公知の方法(例えば、Chem. Lett. ,2000, 第922頁、J. Phys. Chem. B, 103, 第4164頁(1999)等参照)に従って製造することができる。本発明では、公知の方法に従って製造したイオン液体を使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
木材としては、伐採された樹木である限り特に限定されず、原料となる木本の種類や製材の有無(及びその程度)を問わず多様の木材を採用できる。本発明の製造方法によれば、イオン液体を内部にまで浸透させることができるので、比較的厚みのある木材であってもより効率的に耐腐朽性を高めることができる。木材は、1種の木本を原料とするものでもよいし、2種以上の木本を組み合わせて原料とするものでもよい。
木本としては、木材の材料となり得る限り特に限定されず、例えば、針葉樹材、及び広葉樹材等が挙げられ、より具体的には、スギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイ、ネズコ、ハリモミ、イラモミ、イヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロ、ヒバ、ツガ、コメツガ、ヒノキ、イチイ、イヌガヤ、トウヒ、イエローシーダー(ベイヒバ)、ロウソンヒノキ(ベイヒ)、ダグラスファー(ベイマツ)、シトカスプルース(ベイトウヒ)、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタンホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンヘムロック、タマラック等の針葉樹材;アスベン、アメリカンブラックチェリー、イエローポプラ、ウォールナット、カバザクラ、ケヤキ、シカモア、シルバーチェリー、タモ、チーク、チャイニーズエルム、チャイニーズメープル、ナラ、ハードメイプル、ヒッコリー、ピーカン、ホワイトアッシュ、ホワイトオーク、ホワイトバーチ、レッドオーク、アカシア、ユーカリ等の広葉樹材等が挙げられる。また、辺材及び心材のいずれも木材の材料とすることができる。本発明の製造方法によれば、通常は薬液が浸透し難い心材であってもイオン液体をより内部にまで浸透させることができるため、心材の耐腐朽性をより効率的に高めることができる。
木材の種類としては、イオン液体が浸透し得る限り特に限定されない。例えば、丸太、角材、板材、無垢材、木質材料、集成材、単板積層材、合板、木質ボード、パーティクルボード、及びファイバーボードが挙げられる。
「イオン液体を保持する木材」とは、構造の一部又は全部にイオン液体が浸透している木材を意味する。なお、イオン液体を保持する限りにおいて、他の液体を保持していてもよい。
他の液体としては、例えば水や各種有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えばアルコール、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、及びトルエン等が挙げられる。他の液体は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
「イオン液体を保持する木材」の用意は、例えば、木材を、ラジカル重合成基含有カチオン及びアニオンからなるイオン液体を含有する液体に浸漬したり、イオン液体が予め保持された木材を購入又は譲り受けたりすることによって行うことができる。
イオン液体を含有する液体に浸漬する木材は、溶媒を保持する木材であることが好ましい。溶媒を保持する木材をイオン液体に浸漬することにより、より効率的にイオン液体を木材に浸透させることができる。
溶媒としては、イオン液体と置換し得る溶媒である限り特に限定されない。溶媒の具体例としては、アルコール、水、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、及びトルエン等が挙げられ、好ましくはアルコール及び水等、より好ましくはアルコールが挙げられる。アルコールとしては、例えば炭素数1〜4のアルコールが挙げられ、より具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノール等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはメタノール及びエタノールが挙げられる。溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒を保持する木材は、例えば木材を溶媒に浸漬することによって得ることができる。
溶媒への浸漬は、溶媒を木材に浸透させることができる限りどのような態様であってもよく、例えば木材の一部又は全部が溶媒に浸漬されるような態様が挙げられる。浸漬は、減圧下、加圧下、及び大気圧下のいずれで行われてもよい。浸漬温度は、溶媒を木材に浸透させられる限り特に限定されない。浸漬温度は、例えば0〜40℃、好ましくは15〜25℃であることができる。浸漬時間は、溶媒を木材に浸透させられる限り特に限定されず、浸漬時の圧力及び温度に応じて適宜選択される。例えば大気圧、室温下での浸漬時間としては、4〜24時間、好ましくは6〜16時間程度であることができる。
イオン液体を含有する液体とは、イオン液体からなる液体であってもよいし、イオン液体と、前述の他の液体との混合液体であってもよい。
イオン液体を含有する液体への浸漬は、イオン液体を木材に浸透させることができる限りどのような態様であってもよく、例えば木材の一部又は全部がイオン液体を含有する液体に浸漬されるような態様が挙げられる。浸漬は、減圧下、加圧下、及び大気圧下のいずれで行われてもよい。浸漬は、イオン液体をより効率的に木材に浸透させられるという観点から、好ましくは減圧下、より好ましくは真空状態で行われる。浸漬温度は、イオン液体を木材に浸透させられる限り特に限定されない。浸漬温度は、例えば0〜40℃、好ましくは15〜25℃であることができる。浸漬時間は、イオン液体を木材に浸透させられる限り特に限定されず、浸漬時の圧力及び温度に応じて適宜選択される。例えば真空状態、室温下での浸漬時間としては、4〜48時間、好ましくは16〜32時間程度であることができる。
電離放射線の種類は、ラジカル重合成基含有カチオン同士がラジカル重合することができる限り特に限定されない。電離放射線としては、例えばγ線、紫外線、X線、α線、電子線、β線、中性子線、及び陽子線等が挙げられる。これらの中でも、より効率的にラジカル重合させることができるという観点から、好ましくはγ線が挙げられる。電離放射線は1種単独で採用してもよいし、2種以上を組み合わせて採用してもよい。
電離放射線の照射条件は、ラジカル重合性基含有カチオン同士がラジカル重合することができる限り特に限定されない。例えば、電離放射線の吸収線量が10 kGy以上であることができる。電離放射線の吸収線量は、より効率的に耐腐朽性を高めることができるという観点から、好ましくは40 kGy以上、より好ましくは40〜100 kGyであることができる。
斯かる製造方法によって、耐腐朽性が高められた木材を製造することができる。なお、「耐腐朽性が高められた」か否かは、JIS A 1456 2010の項目6.8の耐腐朽性試験に従って判断することができる。また、製造された木材は、長期間での屋外使用を経ても、高い耐腐朽性を発揮することができる。
2.木材に耐腐朽性を付与する方法
本発明は、(a)ラジカル重合性基含有カチオン及びアニオンからなるイオン液体を保持する木材を用意すること、及び(b)該木材に対して電離放射線を照射することを含む、木材に耐腐朽性を付与する方法に関する。
工程a及び工程bについては、上記「1.耐腐朽性が高められた木材の製造方法」に記載されて工程a及び工程bと同様である。
斯かる方法によって、木材に耐腐朽性を付与することができる。なお、「耐腐朽性」は、JIS A 1456 2010の項目6.8の耐腐朽性試験に従って評価することができる。また、斯かる方法によって付与された耐腐朽性は、長期間の屋外使用を経ても維持することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
製造例1.1−ブチル−3ビニルイミダゾリウムアイオダイドの製造
ラジカル重合性基含有カチオンを有するイオン液体として、1−ブチル−3ビニルイミダゾリウムアイオダイド(以下、単に「イオン液体」と示すこともある)を製造した。具体的には、次のように行った。
1−ビニルイミダゾール(1.54モル)と1−ブチルアイオダイド(1.60モル)をトルエン(100mL)の存在下で40℃、24時間撹拌することで合成した。合成後、デカンテーションにてトルエンを除去したのち、エバポレーターを用いて溶媒および未反応物を取り除いた。1−ブチル−3ビニルイミダゾリウムアイオダイドの精製はジエチルエーテルでの洗浄を4回繰り返すことで行った。洗浄後の1−ブチル−3−ビニルイミダゾリウムアイオダイドは100℃で真空乾燥を行った後に使用した。得られた生成物はフーリエ変換赤外分光法、熱分析法などによる物性評価を行った。具体的には、ビニル基、C=CおよびC=N環伸縮、芳香族C-H伸縮に関する赤外吸収ピークをそれぞれ900〜950cm-1、1550cm-1付近、3000cm-1付近で観測した。分解温度、ガラス転移温度はそれぞれ532.3K、218.95Kであった。なお、1−ブチル−3−ビニルイミダゾリウムアイオダイドの密度は1.49gcm−3(25℃)、粘度は11727cP(25℃)であった。
実施例.耐腐朽性が高められた木材の製造
イオン液体の浸透処理及び電離放射線の照射処理を下記表1の条件で行った。具体的には次のように行った。
Figure 0006253264
[イオン液体の浸透処理]
スギ(Cryptomeria japonica D.Don)の辺材及び心材から、20 mm(線維方向)×5 mm(放射方向)×10 mm(接線方向)の試料を切り出した。各試料を2つのグループに分け、異なる方法でイオン液体を浸透させた。一方のグループ(グループI)は、試料をイオン液体に浸漬し、室温下でイオン液体を24時間減圧注入した。他の一方のグループ(グループII)は、試料をエタノールに一晩浸漬した後、試料を取り出してイオン液体に浸漬し、室温下でイオン液体を減圧注入した。
[電離放射線の照射処理]
イオン液体の浸透処理後の試料について、グループIの試料に対しては100 kGyでγ線を照射し、グループIIの試料に対しては10 kGy、40 kGy、又は100 kGyでγ線を照射した。また、グループIIの試料についてはγ線未照射のサンプルも準備した。
試験例1.イオン液体の吸収量の測定
イオン液体の浸透処理前の試料の質量、及び該浸透処理後の試料の質量から、木材に吸収されたイオン液体の量を求めた。具体的には下記式(1)に従って求めた。結果を下記表2に示す。
Figure 0006253264
Figure 0006253264
表2に示されるように、木材1m3当たりのイオン液体の吸収量は約1000 kgであった。イオン液体として用いた1−ブチル−3ビニルイミダゾリウムアイオダイドの密度が1.49 gcm-3(25℃)であるので、1m3の1−ブチル−3ビニルイミダゾリウムアイオダイドの重量は、約1490 kgとなる。スギの全乾密度を0.4とすると空隙率は約0.73となり、木材1m3中のイオン液体が浸透可能な空間の体積は、0.73 m3となる。従って全乾状態の木材の全ての空隙にイオン液体が注入されたと考えると1088kg(1490 kg×0.73)となる。このことから、表2の結果は、木材中のイオン液体が浸透可能な領域の大半の領域に、イオン液体が浸透したことを意味すると考えられる。以上より、イオン液体の浸透処理によって、木材のほぼ全領域に(木材の内部にまで)イオン液体が浸透していることが示唆された。
また、実施例1と実施例2〜3との比較、及び実施例4と実施例5〜7との比較より、エタノールを浸透させた木材に対して、イオン液体を減圧注入することによって、より効率的にイオン液体を浸透させられることが分かった。
試験例2.耐候操作
木材の屋外での使用環境を模擬的に再現し、上記実施例で各処理が施された試料が、屋外での使用に耐え得るか否かを評価した。具体的には次のように行った。まず、実施例で得られた試料(心材)から、10 mm(線維方向)×4.5 mm(放射方向)×7.5 mm(接線方向)の試験片を切り出した。次に、この試験片を、温度約25℃脱イオン水中で、マグネチックスターラを用いて約400回転/分で8時間撹拌し、続いて温度約60℃の乾燥機内にて16時間乾燥させた。この撹拌・乾燥処理を1サイクルとし、このサイクルを計10サイクル行うことにより耐候操作を行った。耐候操作前の試験片質量、及び各サイクル終了後の試験片の質量から、耐候操作中に溶脱したイオン液体の割合を求めた。具体的には、下記式(2)に従って求めた。結果を図1に示す。
Figure 0006253264
図1に示されるように、γ線照射の有無に関わらず、10サイクル終了後であっても溶脱したイオン液体の割合は1に満たなかった。このことは、γ線未照射であっても、耐候操作終了後もイオン液体が木材中に残存していることを示す。また、各試験片について、溶脱したイオン液体の割合は、8〜10サイクル終了後で変わっていない(プラトーに達している)ことから、サイクル数をこれより多くしたとしても、一定量のイオン液体は木材内に残存することが示された。更には、γ線照射レベルの順に溶脱した割合が減少することからγ線照射により木材中のイオン液体がラジカル重合することで木材外への溶脱を抑制していると考えられた。このことは、得られた木材が屋外における長期間の使用にも耐え得ることを示唆する。
試験例3.耐腐朽性試験
耐候操作が施された試験片の耐腐朽性を評価した。具体的には次のように行った。試験例2で耐候操作を施した試験片を殺菌処理した。海砂と培養液を加えてオオウズラタケを十分に培養した培養瓶中に耐熱性プラスチック網を敷き、その上に殺菌処理した試験片を設置し、温度約60℃、相対湿度70%以上の環境で12週間放置した。試験後に目視による観察にて腐朽の有無を評価した。試験後の試験片の写真を図2に示す。
図2に示されるように、イオン液体を浸透させ、且つγ線を照射して得られた試験片(実施例1〜7)には、菌糸がほとんど付着していなかった。一方、イオン液体を浸透させてはいるがγ線を照射していない試験片(比較例1及び3)には、多くの菌糸が付着していた。このことより、イオン液体が浸透した木材に対して電離放射線を照射することにより、耐腐朽性をより高められることが示された。また、実施例7(γ線照射有り)と比較例3(γ線照射無し)は耐候操作後に残存しているイオン液体量にほとんど差がないことから(図2)、γ線照射による耐腐朽性の向上は、木材内のイオン液体量の多少が原因ではないと考えられた。

Claims (8)

  1. (a)ラジカル重合性基含有カチオン及びアニオンからなるイオン液体を保持する木材を用意すること、及び
    (b)該木材に対して電離放射線を照射すること
    を含む、耐腐朽性が高められた木材の製造方法。
  2. 前記(a)が、木材をラジカル重合性基含有カチオン及びアニオンからなるイオン液体を含有する液体に浸漬することである、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記木材が溶媒を保持する、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記溶媒が炭素数1〜4のアルコールである、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記ラジカル重合性基含有カチオンが、一般式(1):
    Figure 0006253264
    [式中、R及びRは同一又は異なって、ラジカル重合性基、ラジカル重合性基で置換されたアルキル基、アルキル基、又は水素原子を示す(但し、R及びRは同時にアルキル基及び/又は水素原子ではない)。]
    で表されるカチオンである、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記アニオンがハロゲン化物イオンである、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. (a)ラジカル重合性基含有カチオン及びアニオンからなるイオン液体を保持する木材を用意すること、及び
    (b)該木材に対して電離放射線を照射すること
    を含む、木材に耐腐朽性を付与する方法。
  8. イオン液体を構成し得るラジカル重合性基含有カチオンのラジカル重合体、及びイオン液体を構成し得るアニオンを保持する、耐腐朽性が高められた木材。
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