次に、本発明に係る使い捨ておむつの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
(1)使い捨ておむつの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る使い捨ておむつ10の展開平面図である。図2は、図1に示したF1-F1線に沿った使い捨ておむつ10の断面図である。図3は、図1に示したF2-F2線に沿った使い捨ておむつ10の断面図である。図1に示す展開平面図は、使い捨ておむつを構成するトップシート50、サイドフラップ70等の皺が形成されない状態まで、レッグ伸縮部75及びレッグサイドギャザー80の弾性部材71を伸長させた状態の図である。
また、図4は、ファスニングテープ90の拡大平面図であり、図5は、図4に示したF3-F3線に沿ったファスニングテープ90の断面図である。
使い捨ておむつ10は、前胴回り域20と、股下域25と、後胴回り域30とを有する。前胴回り域20は、着用者の前胴回り部(腹部分)と接する部分である。また、後胴回り域30は、着用者の後胴回り部(背部分)と接する部分である。股下域25は、前胴回り域20と後胴回り域30との間に位置する。
また、使い捨ておむつ10には、一対の脚回り開口部35が形成される。脚回り開口部35は、使い捨ておむつの製品幅方向の側端部に設けられており、使い捨ておむつが着用者に着用された状態で、着用者の脚回りに沿って配置される部分である。
なお、本実施形態では、前胴回り域20から後胴回り域30に向かう方向を製品長手方向Lと呼び、製品長手方向Lと直交する方向を製品幅方向Wと呼ぶ。
使い捨ておむつ10は、股下域25を跨ぎ、かつ股下域25から前胴回り域20及び後胴回り域30のうち少なくともいずれか一方に向かって延びる吸収体40を備える。吸収体40は、吸収性コア40aとコアラップ40bとによって構成される。
吸収性コア40aは、従来の使い捨ておむつと同様であり、粉砕パルプや高吸収ポリマーなど、公知の部材や材料を用いて適宜構成することができる。吸収性コア40aは、シート状のコアラップ40bによって包まれている。
コアラップ40bは、吸収性コア40aを被覆するシートである。コアラップ40bの少なくとも肌面側の一部は、透液性を有する各種の繊維不織布もしくはティッシュシートによって構成される。例えば、質量約10〜30g/m2のエアースルー繊維不織布、スパンボンド不織布、SMS(スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド)不織布、または質量約10〜30g/m2のティッシュシートを用いることができる。
吸収体40の表面側(肌当接面側)には、液透過性のトップシート50が備えられる。また、吸収体40の裏面側(非肌当接面側)には、液不透過性のバックシート60aが備えられる。
吸収体40の製品幅方向Wにおける側縁部には、サイドフラップ70がそれぞれ備えられる。サイドフラップ70は、1枚または2枚以上の複数枚重ねた不織布によって構成されている。また、一対のサイドフラップ70には、ファスニングテープ90がそれぞれ備えられる。
ファスニングテープ90は、後胴回り域30において、製品幅方向Wに沿って延び、前胴回り域20の非肌当接面に止着されることにより、使い捨ておむつ10を着用者の身体に保持する。
ターゲット部95は、前胴回り域内の非肌当接面に配置され、一対のファスニングテープ90がそれぞれ止着するように構成されている。
本実施形態において、前胴回り域20、後胴回り域30、及びファスニングテープ90によって胴回り保持部が構成される。後胴回り域30の胴回り保持部は、ファスニングテープ90の係合部材が設けられた領域から幅方向に延びる範囲である。前胴回り域20の胴回り保持部は、ターゲット部95が設けられた領域から幅方向に延びる範囲である。
また、使い捨ておむつ10は、股下域25の吸収体に重なる領域に配置されたクロッチ伸縮部200を備えている。なお、クロッチ伸縮部200の構成については、後述にて詳細に説明する。
吸収体40の表面側(トップシート50側)は、吸収体40の製品幅方向Wにおける中心に向かって凹んだ脚回り開口部35に沿って形成され、製品長手方向Lに伸縮可能な一対のレッグ伸縮部75が備えられる。
レッグ伸縮部75は、製品長手方向Lにおいて、クロッチ伸縮部200よりも長いと共に、製品幅方向Wにおいて、クロッチ伸縮部200よりも外側に備えられている。また、レッグ伸縮部75は、股下域25からファスニングテープ90に向かって湾曲している。
レッグ伸縮部75は、脚回り開口部35を製品長手方向に伸縮できるように構成されていればよく、脚回り開口部35に沿って配置されていてもよいし、一部が脚回り開口部35に対して傾斜した状態で配置されていてもよい。
また、レッグ伸縮部75は、伸縮性シート等によって実質的に製品長手方向に収縮する部分であり、収縮力が発揮されない状態で伸縮性シートが配置された部分を除く概念である。なお、レッグ伸縮部75の構成については、後述にて詳細に説明する。
<レッグサイドギャザー>
また、一対のレッグ伸縮部75の内側(製品幅方向Wにおける中央寄り)には、製品長手方向Lに沿って延びる一対のレッグサイドギャザー80が備えられる。レッグサイドギャザー80は、サイドフラップ70の製品幅方向の内側端部に設けられており、レッグ伸縮部75よりも製品幅方向内側に配置される起立性の伸縮ギャザーである。レッグサイドギャザー80は、レッグ伸縮部75よりも製品幅方向内側に配置されている。レッグサイドギャザー80は、従来において周知の構成を採用することができ、具体的には、サイドフラップ70と別のシート材によって構成されていてもよい。
サイドフラップ70は、製品幅方向における内側端部において表面シート側に折り返されており、2層積層されている。この2層のサイドフラップ70間に、長手方向に伸長された状態で弾性部材71(図2参照)が設けられている。このサイドフラップ70と弾性部材71とでレッグサイドギャザー80が形成される。
レッグサイドギャザー80は、トップシート50又はバックシート60aに接合される接合部分81と、弾性部材が配置された自由端部分82とを有する。自由端部分82のうち、股下域25を含む長手方向中央部分は、弾性部材71によって製品長手方向に収縮し、収縮部84を構成する。レッグサイドギャザー80は、着用時には接合部分81を基端部として立ち上がり、自由端部分82の収縮部84が頂点部として着用者の肌と接触する。すなわち、接合部分は、レッグサイド伸縮部の立ち上がりの基端部となる。
なお、収縮部84は、弾性部材71によって実質的に製品長手方向に収縮した部分であり、収縮力が発揮されない状態で弾性部材71が配置された部分を除く概念である。また、図2に、レッグサイドギャザーにおいて、サイドフラップ70とトップシート50(又はバックシート60a等)とが接合された接合部分81に斜線を付して示す。
接合部分81は、複数設けられており、第1接合部分81Aは、収縮部84よりも製品長手方向外側に配置され、第2接合部分81Bは、収縮部84よりも製品幅方向外側に配置されている。よって、レッグサイドギャザー80は、股下域25を含む製品長手方向の中央部分が着用者側に立ち上がるように構成される。
レッグサイドギャザー80の接合部分81のうち、収縮部84よりも製品長手方向外側に配置されている第1接合部分81Aは、トップシート50に接合される。
レッグサイドギャザー80の接合部分81のうち、収縮部84よりも製品幅方向外側に配置されている第2接合部分81Bは、製品幅方向Wにおいて、クロッチ伸縮部200とレッグ伸縮部75との間に配置される。第2接合部分81Bは、製品長手方向の全長にてバックシート60a(及び一部において外装シート60)に接合される。なお、バックシート60aは、吸収体40と外装シート60との間に配置されており、防漏シートとして機能する。
なお、レッグサイドギャザー80の接合部分81は、種々の構成を採用できる。接合部分は、例えば、製品長手方向に股下部から前胴回り域及び後胴回り域に延び、トップシートに接合される部分であってもよいし、吸収性コア40aよりも幅方向外側において液不透過性のバックシートや外装シートに接合される部分であってもよく、起立の基端部となるように構成される。
また、レッグサイドギャザーは、レッグ伸縮部よりも製品幅方向内側に配置される起立性のギャザーであればよく、上記構成に限定されず、従来において周知のレッグサイドギャザーの構成を採用できることは勿論である。
<腰回り伸縮部>
また、製品幅方向における一対のファスニングテープ間には、製品幅方向に伸縮可能な腰回り伸縮部85が設けられている。腰回り伸縮部85は、ファスニングテープ間を幅方向に収縮する。
本実施形態において、腰回り伸縮部85は、伸縮性シートによって構成されている。腰回り伸縮部85を構成する部材については、特に限定されないが、出来る限り薄くて曲げ剛性が低く、幅入り率が小さいものを用いることが好ましい。曲げ剛性を低い材料によって腰回り伸縮部85を構成することにより、腰回り伸縮部85が身体に沿って曲がりやすくなり、着用者の身体に負荷をかけずに腰回り伸縮部85を身体に沿わせてフィットさせることができる。また、幅入りが小さい材料によって腰回り伸縮部85を構成することにより、使い捨ておむつが製品幅方向に伸長した場合における使い捨ておむつの製品長手方向の収縮を抑制し、着用者の腰回りにおいて使い捨ておむつが股下側に引き下がることを抑制できる。
本実施形態では、腰回り伸縮部85として、目付けが20〜45g/m2の伸縮性フィルムを用いた。
腰回り伸縮部85は、非伸長状態(自然状態)における長さの1.5〜2.5倍に引き延ばされた後、ホットメルト接着剤又は加熱処理等によって外装シート60に接着される。
本実施の形態では、腰回り伸縮部85は、外装シート60とバックシート60aとの間に配置されている。しかし、コアラップ40bが吸収性コア40aよりも製品長手方向外側に延出する構成にあっては、腰回り伸縮部85は、コアラップ40bと、バックシート60a又は外装シート60と、の間に配置されていてもよい。腰回り伸縮部の位置は、特に限定されない。また、吸収体が配置されない領域にあっては、サイドフラップ70と、バックシート60a又は外装シート60と、の間に配置されていてもよい。
なお、本実施の形態に係る腰回り伸縮部は、製品幅方向に伸縮するように構成されているが、腰回り伸縮部が製品幅方向と製品長手方向に伸縮するように構成されていてもよい。
<吸収体の切り欠き>
後胴回り域の吸収体40には、吸収体の他の部位よりも目付けが低い、または吸収性コア40aが存在しない低剛性領域としての切欠き110が設けられている。切欠き110は、吸収体40の後胴回り域側の端部の製品幅方向中央から前胴回り域側に向かって徐々に製品幅方向の長さが短くなる形状である。より具体的には、使い捨ておむつの平面視においてくさび形状である。また、吸収性コア40aの切欠き110との境界は、製品幅方向Wの中心に向けて凸となるような円弧で形成される。切欠き110よりも製品幅方向外側の吸収体40は、後胴回り域側の端部に向けて凸となる台形形状である。
切欠き110の一部は、使い捨ておむつの平面視において、腰回り伸縮部85と重なって配置されている。なお、本実施形態では、腰回り伸縮部85は、切欠き110の一部と重なって配置されているが、腰回り伸縮部85の全てと切欠き110が重なって配置されていてもよい。
このような切欠き110が形成されていることにより、腰回り伸縮部85の伸縮を阻害せず、腰回り伸縮部85が収縮しても、切欠き110が狭まり、切欠き110よりも製品幅方向両側の吸収体間の間隔が狭くなるため、吸収体40が意図しない形状で隆起し難くなる。なお、切欠き110は、排泄物の漏れ防止を考慮すると、腰回り伸縮部85の幅より狭いことが好ましい。
また、腰回り伸縮部85によって吸収体40が製品幅方向Wにおいて収縮させられて、切欠き110よりも製品幅方向両側の吸収体間の間隔が狭くなると、切欠き110の後胴回り域30側の端部寄りの部位が股下域25寄りの部位よりも大きく製品幅方向W中央に寄せられるため、後胴回り域30側の部位と股下域25寄りの部位とでは製品幅方向Wにおける収縮量の差が発生し、後胴回り域30が起立するようになる。
すなわち、製品幅方向Wに伸縮可能な腰回り伸縮部85とくさび状の切欠き110とを有するため、使い捨ておむつ10の装着時に、非肌面側に使い捨ておむつ10が膨らむカップ形状が形成され易い。
また、本実施形態では、切欠き110には、吸収性コア40aが存在せず、切欠き110と重なるように腰回り伸縮部85が存在するため、製品長手方向Lにおける後胴回り域30側の端部寄りの部位が吸収性コア40aの端部位置よりも大きく製品幅方向W中央に寄せられ、後胴回り域30の立ち上がりがより顕著になるため、カップ形状をより安定して形成し得る。
本実施形態では、腰回り伸縮部85は、吸収性コア40aの製品幅方向Wにおける側縁を超えて存在するため、使い捨ておむつ10をカップ形状に形成しつつ、製品長手方向Lにおける後胴回り域30側の端部側より位置の吸収性コア40aについては着用者の体に積極的に沿わせることができる。さらには、腰回り伸縮部85及び低剛性領域110の少なくとも一部は、一対のファスニングテープ90から幅方向に延びる領域に存在する。よって、使い捨ておむつ10を下に敷いて着用者を寝かせた状態で使い捨ておむつ10を装着する際でも、吸収性コア40aの製品幅方向Wにおける側縁を超えて存在する腰回り伸縮部85が着用者の身体の下に敷かれない。したがって、ファスニングテープ90を引っ張ることによって腰回り伸縮部85の側縁が伸長し、カップ形状のウエスト側より位置をより確実に体に沿わせることが容易となる。
本実施形態では、切欠き110よりも製品幅方向外側の吸収性コア40aが、後胴回り域側に向かって凸形状である。このため、上述したように非肌面側に使い捨ておむつ10が膨らむカップ形状が形成され易くすることに加え、吸収性コア40aの表面面積が維持されるため、吸収性コア40a端部からの排泄物の漏れを防止し得る。
本実施形態では、切欠き110はくさび状であり、吸収性コア40aの切欠き110との境界は、股下域25に向けて凸となるような円弧である。なお、円弧の半径は50mm〜200mmである。このため、切欠き110の製品幅方向Wにおける幅は、製品長手方向Lにおける後胴回り域30側の端部に行くに連れて非線形に大きくなり、後胴回り域30の立ち上がりがより顕著になるため、カップ形状をより安定して形成し易い。さらに、吸収性コア40aの切欠き110との境界が股下域25に向けて凸となるような円弧であるため、切欠き110の収縮によって後胴回り域30が丸みのあるカップ形状となり、着用者の丸みのある臀部に沿い易い形状となる。
また、切欠き110が形成されていることで、吸収体40の後胴回り域側の端部には、左右それぞれに後回り域側に向かう凸形状が形成されている。この吸収体形状は、おしりを載せることを想起させるため、より使用者がおむつを着用者にとって正しい位置に合わせやすくなるという効果がある。
<吸収体の曲げ剛性>
本実施の形態における曲げ剛性は、テーバー法(JISP8125)に準拠した剛性値に基づいており、以下の方法によって測定される。まず、使い捨ておむつを展開状態にて、曲げ剛性の測定対象部分のサンプル(例えば、吸収体)を採取する。サンプルは、測定対象部分について、製品幅方向の長さ70mm×製品長手方向38mmの寸法とする。サンプル中に伸縮弾性部材が含まれる場合には、弾性部材を取り除いておく。なお、剛性値の測定の試験器は、(株)安田精機製作所製のテーバースティフネステスターを使用する。また、サンプル数は、10であり、各サンプルについて測定し、その平均値を剛性値とする。
測定の手順は、以下の(a)〜(e)の通りである。
(a)採取したサンプルの厚み(A)を測定する。
(b)次いで、試験機のチャック(下側)の中心に触れる程度にサンプルを挟み込む。
(c)支持ローラとサンプルとの左右隙間の合計を(A)×0.80(mm)に調節する。
(d)指示荷重目盛が最大目盛りの15〜85%の範囲に入るように、補助おもりを適切に選択する。
(e)サンプルを左右両方向に回転させ、15度支持刻線と振り子の中心刻とが一致した点で停止させ、試験機の目盛りを読み取る。目盛りの左側の数値を(B)とし、目盛りの右側の数値を(C)とする。
剛性値は、以下の式によって求められる。
式: 剛性値(mN・m)=(((B)+(C))/2)x(補助おもり係数)x9.81×10-2
なお、試験片の幅が38mmを採取できない場合には、38mm幅の曲げモーメントへ換算を行う。
このように測定した剛性値が高いほど、曲げ剛性が高く、剛性値が低い程、曲げ剛性が低くなる。
<ファスニングテープ及びターゲット部の構成>
ファスニングテープ90は、後胴回り域30に対応するサイドフラップ70の領域に取り付けられている。ファスニングテープ90は、サイドフラップ70に連結され、サイドフラップ70から延在する基材シート91と、複数の係合部材としての係合フック(図示せず)が設けられ、基材シート91に固定されたフックシート92と、を備える。ファスニングテープ90は、製品幅方向W外側に向かうに連れて製品長手方向Lにおける幅が狭くなる先細り状である。
フックシート92は、基材シート91の肌当接面の一部に備えられ、複数の係合フックが設けられた領域であり、上述の胴回り保持部は、フックシート92から幅方向に延びる領域である。また、フックシート92は、基材シート91の製品幅方向W外側の端部まで備えられる。さらに、本実施形態では、フックシート92は、基材シート91の製品長手方向L外側の端部まで備えられる。すなわち、フックシート92は、ファスニングテープ90の製品幅方向Wの外側部分において、基材シート91の領域全体に渡って設けられる。
フックシート92は、基材シート91に固定、具体的には接合されている。フックシート92と基材シート91との接合は、ファスニングテープ90の剛性が必要以上に高くなることがないようされていることが好ましい。具体的には、フックシート92と基材シート91とは、点状、線状或いはスパイラル状のような間欠的に塗布されたホットメルト接着剤によって接合されていることが好ましい。なお、フックシート92と基材シート91とは、熱シールなどで接合されてもよい。
本実施形態では、ファスニングテープ90が接合されるサイドフラップ70の部分は、製品幅方向Wに沿って伸縮可能な要素によって構成することもできる。さらに、左右一対のファスニングテープ90の一方と、ファスニングテープ90の他方との間にも、製品幅方向Wに沿って伸縮可能な要素が設けられる。具体的には、伸縮可能な要素としては、伸縮不織布を用いることができる。例えば、ウレタン、スチレンのよう熱可塑性エラストマ樹脂を溶融し、フィルム状とした伸縮性フィルムや、それらの伸縮繊維からなる不織布、また伸縮性フィルムや伸縮性不織布に部分的に切断され、または脆弱化された非伸張性シートを張り合わせた複合シートなどを用い得る。また、伸縮性シートの代わりに、非伸縮性の不織布上にポリウレタン弾性要素を、互いに並列に並べることによって構成された伸縮性不織布シートも用いてもよい。
基材シート91は、1枚または2枚以上の複数枚重ねた不織布によって構成されている。基材シート91としては、スパンボンド(SB)またはスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)などの製法によって製造された不織布を用いることができる。基材シート91を構成する不織布の目付け(複数枚の場合は合計目付け)は、30〜100g/m2であり、好ましくは40〜90g/m2である。
また、フックシート92が存在するフックシート存在域SHSにおけるファスニングテープ90の製品幅方向Wにおける単位長さ当たりのKES曲げ剛性値は、0.015974N・cm2/cm以下である。
ここで、表1は、ファスニングテープ90の実施例及び比較例に係る基材シート91の構成及びKES曲げ剛性値の値を示す。
ファスニングテープ90の曲げ剛性値については、カトーテック株式会社製のKES曲げ測定機を用いて測定した。具体的には、B値を測定した。
具体的には、KES法に関しては、「風合い評価の標準化と解析」第2版(社団法人日本繊維機械学会 風合い計量と規格化研究委員会 昭和55年7月10日発行)に詳細が説明されている。よって、力学的性質毎の測定方法に関し、本測定に関連した測定条件についてのみ説明する。
KES曲げ剛性値は、カトーテック株式会社製KES-FB2を用いて、各サンプルをチャック間に固定し(おむつにおけるファスニングテープの肌面側(内側)を下向きとする)、最大曲率+2.5cm-1まで表側に曲げ、次に、最大曲率-2.5cm-1まで裏側に曲げた後に元に戻すことによって測定した。なお、表1は、製品長手方向Lにおける曲げ剛性値、及び製品幅方向Wにおける曲げ剛性値ともに測定し、両測定値のうち大きい値を示す。
また、ファスニングテープ90の係合力は、0.3N/30mm以上、1.5N/30mm以下に設定されることが好ましい。係合力は、島津製作所株式会社製のオートグラフ試験機(AG-X10plus)を用いて測定することができる。具体的には、測定対象のファスニングテープからフックシートと基材シートとを幅30mm(幅30mmで切り出すことが不可能の場合は、幅30mm当たりに換算して結果を判断)で切り出したサンプルを準備する。同様に、ファスニングテープが係止されるターゲットテープを、フックシートよりも大きなサイズで切り出したサンプルを準備する。
次いで、700gローラー(直径85mm、幅45mm)を5mm/分の速度で主なファスニングテープの着脱方向に沿って動かして両サンプルを圧着する。圧着した両サンプルを、オートグラフ試験機にセットし、引っ張り速度300mm/分における両サンプルの係合力を測定する(単位:N/30mm)。この際、引っ張る方向は、ターゲットテープ面に対して、フックシート面が135°の角度となるように設定する。また、フックシートのピール方向は、ファスニングテープを操作する(着脱する)時における主な着脱方向とする。
このようなファスニングテープの係合力が大きすぎると、付け外しし難いという印象を試験者(乳幼児を持つ母親)が有するようになる傾向にあることが確認されている。一方、係合力が小さすぎると、ファスニングテープが使い捨ておむつ本体に係合し難い印象を与え、実際にはファスニングテープが外れなくても、ファスニングテープが外れてしまうという印象を抱いてしまうため好ましくないことが解っている。そこで、表1に示した実施例及び比較例では、ファスニングテープ90の係合力が、0.3N/30mm以上、1.5N/30mm以下になるように調整した。
表1に示す「試験結果」は、ファスニングテープ90の製品幅方向Wの端部が、乳幼児により触れられる状態となってしまうか否かについての結果を示す。当該試験では、実施例または比較例に係るファスニングテープ90を備える使い捨ておむつ10を乳幼児に装着し、装着した使い捨ておむつ10を通常どおりに使用してもらい、使い捨ておむつ10の交換時におけるファスニングテープ90の製品幅方向Wの端部のターゲット部95からの浮きの有無を目視にて確認した。10名の試験対象者それぞれに対して、10枚の使い捨ておむつ10のサンプルを提供し、合計100枚のサンプルを用いた。
100枚のサンプルのうち、浮きの発生が2枚以下のサンプルを「良」とし、当浮きの発生が3枚以上のサンプルを「不良」とした。
また、上述したように、基材シート91のシート(不織布)枚数を1枚ではなく複数枚とすることによって、各シートの目付けを低くし、厚みを薄くしながらファスニングテープ90の強度をより高くでき、柔軟性を高くできる。
一方、1枚のシートで構成する場合には、シートの目付けを低くし、厚みを薄くすることで柔軟性を高めつつ、強度を確保する必要があるため、例えば、不織布シートへエンボスを施すことが挙げられる。この場合、エンボスは、点エンボスよりも線エンボス(但し、全てのエンボスが繋がっている必要はない)が好ましい。また、線エンボス同士は互いに交差しないように配置されていることによって、より柔軟性を維持しながら強度を高めることができる。
また、内曲げ(ファスニングテープ90の係合要素(フックシート92)側が近づく方向の曲げ)と外曲げとの関係性において、内曲げよりも外曲げし易くすることによって、ファスニングテープ90が同様の柔軟性を有する場合でも、より使い捨ておむつ10の変化に追従し易い。不織布の内側層(フックシート92側)のシート厚みを外側層よりも厚くすることによって、内曲げよりも外曲げし易くなる。なお、シート厚み(不織布の厚み)は、例えば、株式会社尾崎製作所社製ピーコックダイヤルシックネスゲージを用い、円形測定子の直径を10mm、3.0g/cm2の荷重となるように調整して測定できる。
ターゲット部95は、前胴回り域の外装シート60の非肌当接側の面に設けられている。ターゲット部95は、ファスニングテープの係合フックが引っ掛かるように構成されており、フックとループの係止システムのループとして機能する。ターゲット部としては、例えば、エアースルー不織布を用いることができる。
ターゲット部95は、例えばポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂繊維から作られた繊維不織布またはポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂フィルムを用いることができる。また、ターゲット部に取り付けられたループは、ポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂によって形成できる。
更に、ターゲット部95として、嵩高の不織布であって、その一部をエンボスすることで不織布表面の毛羽立ちを防止した不織布を用いてもよい。
また、使い捨ておむつの外装シート60を不織布によって形成し、ファスニングテープ90の取り付け位置を示す図柄をバックシート60a又は外装シート60の非肌当接側の面に印刷する、若しくは図柄のシートをバックシート60a又は外装シート60の非肌当接側に配置することによってもターゲット部とすることができる。
(2)レッグ伸縮部
レッグ伸縮部75は、吸収体40よりも製品幅方向外側に設けられた脚回り開口部35に沿って配置され、製品長手方向Lに伸縮可能に構成されている。レッグ伸縮部75は、幅方向における位置が股下域において最も内側に位置する幅方向内端領域75Iを有している。脚回り開口部35及びレッグ伸縮部75は、特に後胴回り域において、股下域25から製品長手方向外側に向かうにつれて製品幅方向外側に向かって延びている。なお、レッグ伸縮部75の幅方向内端領域75Iは、製品長手方向に連続して配置されていてもよいし、製品長手方向に連続していなくてもよい。本実施の形態では、脚回り開口部35の幅方向における位置が股下域において最も内側に位置する領域は、レッグ伸縮部75の幅方向内端領域75Iと一致しているが、必ずしも一致していなくてもよい。
本実施の形態のレッグ伸縮部75は、伸縮性シートによって構成されている。例えば、かかる伸縮性シートとしては、ウレタンやスチレンのような熱可塑性エラストマ樹脂を溶融しフィルム状とした伸縮性フィルムや、伸縮繊維からなる伸縮性不織布や、伸縮性フィルムや伸縮性不織布に部分的に切断され又は脆弱化された非伸張性シートを張り合わせた複合シート等を用いることができる。
また、かかる伸縮性シートの代わりに、ポリウレタン弾性繊維や天然ゴムからなる糸状・帯状の弾性部材を、1本又は複数本配置することによってレッグ伸縮部75を構成してもよい。
レッグ伸縮部75は、サイドフラップ70と外装シート60との間に配置されている。或いは、吸収体40と外装シート60との間に配置されるバックシート60aが備えられる領域では、レッグ伸縮部75は、バックシート60aとサイドフラップ70との間に配置されている。
レッグ伸縮部75を構成する伸縮性シートは、少なくとも股下域25において、幅5mm(使い捨ておむつ10の自然状態における製品幅方向Wにおける幅)以上45mm以下、より好ましくは、12.5mm以上35mm以下であることが好ましい。5mm未満では、実質的に面で着用者の脚回りに沿うことで、部分的に締め付ける力が集中せずに、弾性要素による肌への負荷を下げるという効果が発現せず、45mmを超えると、使い捨ておむつ全体の製品幅方向の長さと比較して脚回りに沿う領域が広くなり過ぎてしまい、伸縮性シートが着用者の身体側に巻き込んだり、めくれたりし易くなってしまう。
レッグ伸縮部75の伸長率は、1.5〜2.2倍であることが好ましい。本実施形態では、レッグ伸縮部75の伸長率は、1.8〜2.0倍に設定される。なお、伸長率とは、レッグ伸縮部の伸長の程度を意味し、以下のように規定される。
伸長率=(伸長状態のレッグ伸縮部の長さ)÷(自然状態のレッグ伸縮部の長さ)
なお、本明細書において、かかる伸長率は、例えば、次のように測定されるものとする。
第1に、使い捨ておむつ10がパッケージ等に封入されている場合には、パッケージから使い捨ておむつ10を取り出す。次いで、レッグ伸縮部の配置領域を切り出す。このとき、レッグ伸縮部に接合される外装シートも含めて切り出す。切り出した後のレッグ伸縮部のサンプルの伸長率を測定して、レッグ伸縮部の伸長率を計測する。
各サンプルについて、20℃±2℃、相対湿度60%±5%RHの雰囲気下において60分間放置し、伸縮方向に沿ってレッグ伸縮部の長さを測定する。この長さを、「自然状態のレッグ伸縮部の長さ」とする。
第2に、かかる状態(すなわち、自然状態)における所望領域の伸縮方向における長さ、及び、自然状態から弾性部材による皺が非伸縮性シート上に目視にて確認できない状態まで延伸した時の所望領域の伸縮方向における長さを測定する。この長さを、「伸長状態におけるレッグ伸縮部の長さ」とする。
これら測定結果を用い、上述の式にて算出することで伸長率が測定される。
また、左右一対のレッグ伸縮部75の製品幅方向Wにおける内側端の間隔は、股下域25から前胴回り域20に向かうに連れて広くなるとともに、股下域25から後胴回り域30に向かうに連れて広くなる。着用者の体におむつを装着する場合、股下部にて狭く、前後の胴回りに向かって広がる形状にレッグ伸縮部を配置することで、よりレッグ伸縮部が身体のラインに沿うことが可能となり、着用者の脚回りに好適にレッグ伸縮部が伸長配置されることとなる。
さらに、左右一対のレッグ伸縮部75の前胴回り域20の端部における当該間隔(図中のD1)は、左右一対のレッグ伸縮部75の後胴回り域30の端部における間隔(図中のD2)よりも狭い。なお、当該間隔は、使い捨ておむつ10を自然状態からしわがない状態に製品長手方向L及び製品幅方向Wに拡幅して保持した後、左右一対のレッグ伸縮部75の製品幅方向Wにおける内側端間の距離を測定したものである。
着用者の身体の皮膚表面の伸びは、臀部において特に大きく、その幅方向外側寄りの位置にて顕著である。また、レッグ伸縮部75は、着用者の身体に密着している。そこで、D2>D1とすることで、着用者の動きが使い捨ておむつ10に加わった場合でも、臀部側でのレッグ伸縮部75が密着したまま伸びることができ、伸びの変化量が大きくてもレッグ伸縮部75が突っ張ることがない。従って、レッグ伸縮部75による使い捨ておむつ10のズレを抑制し得る。
また、着用者の両脚の間隔は、股下域が最も狭く、股下域から腹側や背側に向かって広がる形状である。脚回り開口部及びレッグ伸縮部75は、股下域から長手方向外側に向かって幅方向外側に向かって延びる形状であるため、着用者の脚繰りに沿って脚回り開口部及びレッグ伸縮部75を配置でき、局所的な応力集中を抑制できるため、比較的低い伸長率にて着用者に密着でき、肌への負担を減らすことが可能となる。
レッグ伸縮部75は、着用者の脚回りに沿って使い捨ておむつを湾曲させて収縮するように構成されている。レッグ伸縮部75の製品長手方向端部は、幅方向に広がるように配置されており、胴回り保持部の近傍に配置される。よって、レッグ伸縮部75の製品長手方向端部は、胴回り保持部と共に幅方向に収縮するように作用する。
(3)クロッチ伸縮部の形状
次に、クロッチ伸縮部200の形状について説明する。クロッチ伸縮部200は、吸収体40の他の部分よりも、使い捨ておむつの着用時において股下域の一部に平坦な形状を維持できるように構成されている。クロッチ伸縮部200は、少なくとも製品長手方向Lまたは製品幅方向Wに伸縮可能に構成されている。
クロッチ伸縮部200は、前胴回り域20及び後胴回り域30と、レッグ伸縮部75とは個別独立して設けられている。クロッチ伸縮部200は、吸収性コア40aと重なる位置(本実施形態では、吸収性コア40aを包むコアラップ40bとバックシート60aとの間の位置)において、当該重なる位置における吸収性コア40aの幅方向の長さの60%以上を収縮させるように構成されている。すなわち、クロッチ伸縮部200は、吸収性コア40aの製品幅方向Wにおける幅の60%以上の領域に形成されることが好ましい。
このように、クロッチ伸縮部200によって吸収性コア40aが配置された部分を収縮させることにより、吸収性コア40aが縮み、吸収性コア40aが縮まない部分と比較して平坦な形状を維持し易くなる。
一方、クロッチ伸縮部200よりも製品長手方向外側に位置する前胴回り域や後胴回り域に位置する吸収性コア40aは、クロッチ伸縮部200によって収縮していない。したがって、ファスニングテープにより、着用者の腰・ウエスト周りに保持された状態において、使い捨ておむつの股下部に平坦な形状で維持されるクロッチ伸縮部200が過度に身体に密着することなく、結果、クロッチ伸縮部200が適度に身体に沿って配置される。
また、クロッチ伸縮部200が、製品長手方向Lに沿って伸縮可能である場合、前胴回り域20及び後胴回り域30が、クロッチ伸縮部200の収縮によって立ち上がり易くなり、着用時には、着用者の股部にて身体に沿って平坦な股下域を形成することができる。
その結果、クロッチ伸縮部200から前胴回り域20及び後胴回り域30が立ち上がるので、使い捨ておむつ10の着用者へのフィット性が向上する。
すなわち、クロッチ伸縮部200の収縮によって、使い捨ておむつ10の股下域25が、着用者の股下部に配置されるように、安定して使い捨ておむつ10を装着することができる。
また、本実施形態では、使い捨ておむつ10におけるクロッチ伸縮部200の幅は、吸収性コア40aのクロッチ伸縮部200が存在する領域における、製品幅方向Wにおける吸収性コア40aの幅の1/2以上である。従って、クロッチ伸縮部200によって吸収性コア40aが配置された部位の一定幅以上を収縮させることによって、吸収性コア40aが縮み、着用者の身体に近づくように吸収性コア40aが持ち上がる。
このような吸収性コア40aの持ち上がりを股下域25で実現することによって、使い捨ておむつ10と着用者との間の隙間を減少することができる。製品幅方向Wにおけるクロッチ伸縮部200の幅が製品幅方向Wにおける吸収体40(吸収性コア40a)の幅の60%以上である場合、より好ましくは80%以上である場合には、使い捨ておむつ10と着用者との間の隙間をさらに減少することができる。
さらに、クロッチ伸縮部200の幅が吸収性コア40aの幅と比較して狭すぎると、上述した吸収性コア40aを持ち上げる効果が得られにくい。一方、クロッチ伸縮部200の幅が吸収性コア40aの幅と比較して広すぎると、吸収性コア40aが配置されていない部位が、吸収性コア40aが配置されている部位よりも収縮した状態で、使い捨ておむつ10が装着される。これによって、吸収性コア40aが配置されていない部位を構成する部材が重なりあって、クロッチ伸縮部200が硬くなり、使い捨ておむつ10の履き心地が損なわれる。
例えば、吸収性コア40aのクロッチ伸縮部200が存在する領域における、最も幅が狭い部位の寸法(伸長状態における)が120mmである場合において、クロッチ伸縮部200の幅は、60〜110mmであることが好ましい。さらに好ましくは、クロッチ伸縮部200の幅は、90〜110mmであることが好ましい。
また製品幅方向Wにおいて吸収性コア40aの幅が最も狭い部位は、製品長手方向Lにおける中心線CLに対して10〜60mm前側に設けられることが好ましく、製品幅方向Wにおいて吸収性コアの幅が最も狭い部位は、中心線CLに対して20〜40mm前側に設けられることが好ましい。クロッチ伸縮部200は、製品幅方向Wにおいて吸収性コア40aの幅が最も狭い部位を跨がって形成されることが好ましい。
着用者の左右の大腿部が互いに最も近接する位置は、着用者の身体の前後方向
における中心よりも前側である。従って、クロッチ伸縮部200の収縮力によって、製品幅方向Wにおいて吸収性コア40aの幅が最も狭い部位を着用者の左右の大腿部が互いに最も近接する位置に積極的に配置することができる。言い換えると、母親などの着用補助者が吸収性コア40aの位置合わせを行わなくても、吸収性コア40aの位置合わせが自然と行われる。
上述したようなクロッチ伸縮部200は、伸縮性シートによって構成されることが好ましい。伸縮性シートによってクロッチ伸縮部200を構成することにより、伸縮性シートを配置した領域の吸収性コア40aが一様に縮められ、平坦な形状維持がより容易になる。なお、伸縮性シートは、例えば、レッグ伸縮部75と同様の伸縮性シートによって構成することができる。
また、かかる伸縮性シートの代わりに、ポリウレタン弾性繊維や天然ゴムからなる糸状・帯状の弾性部材を、複数本配置することによってクロッチ伸縮部200を構成してもよい。この場合、クロッチ伸縮部200によって吸収性コア40aを一様に縮めるためには、弾性部材同士の間隔を7mm以下、より好ましくは5mm以下であるとよい。また、吸収性コア40aを一様に縮めるために、隣り合う弾性部材の間隔の差は、2mm以下であることが望ましい。
また、クロッチ伸縮部200の伸長率は、具体的には、1.2倍以上、1.8倍以下であることが好ましい。本実施形態では、クロッチ伸縮部200の伸長率は、1.4倍に設定される。伸長率は、クロッチ伸縮部200の伸縮方向(製品長手方向L)における伸長の程度を意味し、以下のように規定される
伸長率は、伸縮方向(本実施形態では、製品長手方向L)におけるクロッチ伸縮部200の伸長の程度を意味し、以下のように規定される。
伸長率=(最大伸張状態におけるクロッチ伸縮部200の伸縮方向における長さ)/(自然状態におけるクロッチ伸縮部200の伸縮方向における長さ)
なお、本明細書において、かかる伸長率は、例えば、次のように測定されるものとする。
第1に、使い捨ておむつ10がパッケージ等に封入されている場合には、パッケージから使い捨ておむつ10を取り出し、その状態にて20℃±2℃、相対湿度60%±5%RHの雰囲気下において60分間放置し、伸縮方向に沿ってクロッチ伸縮部の長さを測定する。この長さを、「自然状態におけるクロッチ伸縮部200の伸縮方向における長さ」とする。
第2に、かかる状態(すなわち、自然状態)における所望領域の伸縮方向における長さ、及び、自然状態から弾性部材による皺が目視にて確認できない状態まで延伸した時の所望領域の伸縮方向における長さを測定する。この長さを、「最大伸張状態におけるクロッチ伸縮部200の伸縮方向における長さ」とする。
これら測定結果を用い、上述の式にて算出することで伸長率が測定される。
このように、クロッチ伸縮部200の伸長率を、1.2倍以上1.8倍以下とすることによって、着用者の皮膚の伸縮に好適に追従することができる。
例えば、着用者が、身体前側が縮むような前屈みの姿勢をとると、着用者の臀部側の皮膚において、身体を伸ばした状態に対して30%程度伸びる部位が存在する。
つまり、クロッチ伸縮部200の伸長率を1.2倍以下とすると、自然状態におけるクロッチ伸縮部200の収縮が十分でなく、クロッチ伸縮部200が設けられていない場合と比較して、使い捨ておむつ10の股部における吸収体領域の収縮が小さく、着用者の股部において、身体に沿うように平坦な形状をとる事が不十分になってしまう。
一方、クロッチ伸縮部200の伸長率を1.8倍よりも大きくすると、クロッチ伸縮部200の収縮方向における収縮寸法が大きくなり過ぎるため、クロッチ伸縮部200が存在する領域が、身体に沿うよりも密着する状態となり易く、使い捨ておむつ10が、着用者の下方にズレ易くなってしまう。
また、クロッチ伸縮部200の製品長手方向Lにおける収縮量は、使い捨ておむつ10の製品長手方向Lにおける長さの2〜8%となるように構成されていてもよい。
なお、収縮量は、皺が十分に小さくなり、サンプルの表面が平滑に近くなるように伸長した状態での長さ「b(mm)」と、サンプルの伸縮方向に沿う向きにおける自然状態での長さ「a(mm)」との差であり、(b-a)によって算出されることができる。
本発明者は、クロッチ伸縮部200の製品長手方向Lにおける収縮量を、使い捨ておむつ10の製品長手方向Lにおける長さの2〜8%とすると、使い捨ておむつ10を着用者に対して装着する過程において、クロッチ伸縮部200が、好ましく着用者の身体に沿い易くなることを確認することができた。
ここで、クロッチ伸縮部200の製品長手方向Lにおける収縮量を、8%より大きくすると、クロッチ伸縮部200が、縮み過ぎてしまい、使い捨ておむつ10の製品長手方向Lにおける長さが足りず、使い捨ておむつ10を着用者の身体に付け難くなったり、使い捨ておむつ10及び着用者の身体が、股下域25において、過度に密着してズレ易くなったりしてしまう。
一方、クロッチ伸縮部200の製品長手方向Lにおける収縮量を、2%以下とすると、使い捨ておむつ10を着用者の身体に近付けるというクロッチ伸縮部200の効果そのものが発現し難くなってしまう。
また、製品長手方向Lにおけるクロッチ伸縮部200の中心は、製品長手方向Lにおける使い捨ておむつ10の中心よりも、前胴回り域20側に配置されている。また、クロッチ伸縮部200は、製品長手方向Lにおける使い捨ておむつ10の中心を跨ぐように配置されている。
かかる場合、吸収性コア40aの剛性及び使い捨ておむつ10を構成する他の部材の剛性を考慮して、用いる弾性部材の太さや配置するピッチを適宜選択できるが、使い捨ておむつ10本体を自然状態(非伸張状態)とした際に、吸収性コア40aの製品幅方向Wにおける側縁部全域が収縮した状態となるようにすることが好ましい。
また、吸収体40の股下域25には、切欠き115(切欠き125)が形成される。切欠き115及び切欠き125は、吸収体40を構成する吸収性コア40aが存在しない領域である。本実施形態において、切欠き115及び切欠き125は、吸収性コア40aの目付けが吸収性コア40aの他の部分よりも低い低剛性部に該当する。なお、切欠き115及び切欠き125を形成することに代えて、切欠き115及び切欠き125の領域を、吸収性コア40aの目付けが吸収性コア40aの他の部分よりも低くするようにしてもよい。
切欠き115及び切欠き125は、クロッチ伸縮部200の製品長手方向Lにおける縁部に沿って存在する。なお、切欠き115及び切欠き125が形成されていても、前胴回り域20及び後胴回り域30に位置する吸収性コア40aと、股下域25に位置する吸収性コア40aとは、完全に切り離されることなく特に幅方向において連続していることが好ましい。
切欠き115及び切欠き125は、製品幅方向W外側に行くに連れて製品長手方向Lにおける長さが広くなっている。このような形状により、吸収性コア40aの製品幅方向W外側がより縮み易くなるため、平坦な「底部」がより容易に形成される。更には、切欠き115よりも前胴回り域20寄りに位置する吸収性コア40a、及び切欠き125よりも後胴回り域30寄りに位置する吸収性コア40aが、「底部」から立ち上がり、着用者の体(腹部および臀部)の丸みに沿うように湾曲し易くなるため、使い捨ておむつそのものの形状が着用者の体の形により近づくことができる。
また、切欠き115(切欠き125)の前胴回り域20(後胴回り域30)寄りの縁部は、円弧状である。切欠き115(切欠き125)の縁部は、円弧の中心が当該縁部よりも後胴回り域30(前胴回り域20)に位置するような形状である。このような形状により、着用者の体の丸みに沿った変形がより容易かつ顕著に起き易い。
(4)使い捨ておむつの製造方法
次に、本実施形態に係る吸収性物品の製造方法の一例について説明する。なお、本実施の形態において説明しない方法については、既存の方法を用いることができる。また、以下に説明する製造方法は、一例であり、他の製造方法によって製造することもできる。吸収性物品の製造方法は、構成部品形成工程と、構成部品載置工程と、脚回り形成工程と、切断工程とを少なくとも含む。
構成部品形成工程では、吸収性物品を構成する構成部品を形成する。具体的には、例えば、吸収材料を積層して吸収体40を成型する。
構成部品載置工程では、バックシートを構成するウェブ上に、レッグ伸縮部75を構成する伸縮性シートや、トップシートを構成するウェブ等の他のウェブ、防漏シート、吸収体等の使い捨ておむつ10を構成する構成部品を載置する。
より具体的には、レッグ伸縮部75を構成する伸縮性シートを伸長させ、更に幅方向に変位させつつ間欠ドラム上に転写し、間欠ドラム上で個々の製品長さに伸縮性シートを切断する。間欠ドラムの回転に伴って伸縮性シート同士の間隔を設け、伸縮性シートを連続するウェブ上に転写する。このようにしてレッグ伸縮部を曲線状に配置できる。
脚回り形成工程は、レッグ伸縮部75の幅方向外側端部に沿って、トップシート50、外装シート60、及びバックシート60aを切断する。これにより、着用者の脚回りに配置される脚回り開口部35が形成される。
切断工程では、トップシート50、バックシート60a、吸収体40等が配置された連続体を製品幅方向Wに沿って一製品の大きさに切断する。これにより、使い捨ておむつ10が製造される。
(5)作用・効果
上述した使い捨ておむつ10によれば、複数の係合フックを有するフックシート92は、基材シート91の製品幅方向W外側の端部まで備えられる。また、フックシート92が存在するフックシート存在域SHSにおけるファスニングテープ90の製品幅方向Wにおける単位長さ当たりのKES曲げ剛性値は、0.015974N・cm2/cm以下である。
このため、ファスニングテープ90の製品幅方向Wにおける外側端がターゲット部95から外れ難く、着用者が乳幼児である場合でも、ファスニングテープ90(タブ)を不用意に引っ張ってしまい、ファスニングテープがターゲットテープから外れてしまうことを防止し得る。また、ファスニングテープ90のKES曲げ剛性が低く、吸収体40と同様に軟らかいため、ファスニングテープ90が吸収体40の変形に追従し易く、ファスニングテープ90がターゲット部95から外れ難い。すなわち、使い捨ておむつ10によれば、使い捨ておむつ全体の柔軟性を確保しつつ、ファスニングテープ90が不用意にターゲット部95から剥がれてしまうことを防止し得る。
本実施形態では、脚回り開口部35に沿って延在するとともに、製品長手方向Lに沿って伸縮可能な一対のレッグ伸縮部75が備えられ、レッグ伸縮部75は、股下域25からファスニングテープ90に向かって湾曲している。また、ファスニングテープ90は、サイドフラップ70を構成する伸縮性不織布に取り付けられる。
このため、使い捨ておむつ10の着用時には、ファスニングテープ90の基端部側にファスニングテープ90が引っ張られた状態となり、ファスニングテープ90は、基端部側においてより強く係合される。一方、先端部側は、基端部側に向かって引っ張られることで、ファスニングテープ90が使い捨ておむつ10側に湾曲することが妨げられる方向に負荷が掛かり、先端部側が離れ易くなるが、本実施形態では、ファスニングテープ90の先端部までフックシート92が存在し、柔軟となっていることから、先端部側においてもフックシート92の係合が外れ難い。すなわち、ファスニングテープ90全体としての係合性が高まり、着用者の動きによるファスニングテープ90の外れや、着用者によってファスニングテープ90を不用意に外されることをより確実に防止できる。
本実施形態では、ファスニングテープ90は、製品幅方向W外側に向かうに連れて製品長手方向Lにおける幅が狭くなる先細り状である。このため、ファスニングテープ90の先端部側は、より強くターゲット部95に係合し易く、ファスニングテープ90が外れることをさらに確実に防止できる。
また、本実施形態では、ファスニングテープ90の製品幅方向Wまで係合要素(フックシート92)が存在するため、使い捨ておむつ10の着用時には、クロッチ伸縮部200が形成されている領域の製品長手方向Lに沿った延長領域(吸収性コア40a上)にファスニングテープ90が係合される。このようにファスニングテープ90が係合されると、クロッチ伸縮部200によって着用者の身体に沿って持ち上がった吸収性コア40aの腹側よりの領域は、ファスニングテープ90によって確実に押さえられ、着用者のウエスト周りのズレが発生し難い。
特に、乳幼児の腹部は、食後に大きく飛び出し易く、吸収性コア40aの股部部分を持ち上げ、腹部側を左右のファスニングテープ90で押さえる、つまり、3点(股部部分と左右のファスニングテープ90)で身体に沿わせることによって、腹側のズレや使い捨ておむつ10と身体との間の隙間を低減できる。また、ファスニングテープ90の端部に力が掛かっても、当該端部まで押さえられるため、着用者の動いた場合でもズレのない使い捨ておむつ10の装着状態を維持し易い。
(6)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。図6は、本発明の変更例に係るファスニングテープ90Aの肌当接面側の平面図である。図6に示すように、ファスニングテープ90Aの肌当接面(内側面)には、肌当接面側から非肌当接面(外側面)側に向けて圧搾されたエンボス120が形成されている。エンボス120は、フックシート92の一部と、フックシート92と基材シート91との境界Bを跨ぐように形成されている。このようなファスニングテープ90Aによれば、肌当接面側から非肌当接面(外側面)側に向けて圧搾されたエンボス120が形成されているため、基材シート91と比較して剛性の高いフックシート92が基材シート91の曲げに追従しやすくなり、その結果、ファスニングテープ90全体としての曲げ剛性を抑えることができる。
図7は、本発明の他の変更例に係るファスニングテープ90Bの肌当接面側の平面図である。ファスニングテープ90Bでは、エンボス120が形成されている領域、つまりエンボス120の密度が、製品幅方向W内側から製品幅方向W外側に向かうに連れて高くなっている。なお、エンボス120の密度とは、ファスニングテープ90B内の所定面積内に占めるエンボス120の形成領域の面積の比率によって示すことができる。ファスニングテープ90Bによれば、ファスニングテープ90Bの製品幅方向W外側に向かうに連れて曲げ剛性が低くなるため、特に、ファスニングテープ90Bの製品幅方向Wの外側端がターゲット部95から外れることを効果的に防止し得る。なお、図6及び図7に示したエンボス120のパターンは、格子状であるが、このようなパターンに限定されるものではなく、ドット状やストライプ状などでも構わない。
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。