本願の発明者らは、特許文献1及び非特許文献1に記載の技術が有する課題に鑑み、様々な分析に対応可能で、かつ、ディスポーザルなマイクロチップを使用して、分析が必要な現場において、短時間でかつ高精度な評価分析を行うことができる光分析方法及び光分析装置を考案した。
まず、本願発明者らがこれまでに開発した技術とその課題について述べるが、以下に述べる技術は、本願の出願時点で非公知である(例えば、特願2013−035581参照)。
発明者らが考案した光分析装置は、画像を表示するためのディスプレイを備え、演算機能と上記ディスプレイに表示される画像を制御する機能を有する制御部とを内蔵した処理装置と、光導入部と光導出部を有するマイクロチップとからなる。そして、光分析処理は、上記処理装置のディスプレイ上に、マイクロチップを配置し、上記ディスプレイからマイクロチップに光を導入して行う。
上記処理装置は、タブレット端末、携帯電話、パソコン等の処理装置(以下では、主としてタブレット端末を例として説明する)であり、また、ディスプレイとしては、例えば、液晶、有機EL等の表示装置を用いることができる。
すなわち、発明者らが考案した光分析装置200は、図23に示すように、上記タブレット端末211のような処理装置のディスプレイ213上にマイクロチップ215を配置する。
次に、タブレット端末211(処理装置)のディスプレイ213上に配置されたマイクロチップ215の流路へ、マイクロピペット203により採取された検体201が滴下される。
その結果、検体201が注入されたマイクロチップ215内部(流路)で検体201の反応(例えば、抗原抗体反応等の生体分子反応)が発生する。
マイクロチップ215には、タブレット端末211のディスプレイ213から放出される光が照射される。この照射光により、マイクロチップ215内で発生する反応が測定される。例えば、測定方法として照射光を用いた誘起蛍光法を採用した場合、上記反応に対応した蛍光が観測される。
具体的には、ディスプレイ213から放出される光をマイクロチップ215の光導入部に導入する。そして、マイクロチップ215の流路に導入された検体201を含む流体に該光を照射する。光照射された該検体201を含む流体からは光(蛍光)が観測される。この観測光をマイクロチップ215の光導出部から導出させ、タブレット端末211が備える受像手段(受光素子)に観測光を受光させることにより、上記反応は検出される。検出結果は、ディスプレイ213の表示領域217に表示される。
なお、マイクロチップに導入されたディスプレイからの光を用いて、マイクロチップに導入された検体を含む流体の流れを制御するよう構成してもよい。
以上のように、発明者らが考案した光分析装置によれば、画像を表示するためのディスプレイから放出される光を用いて、マイクロチップの流路内で発生する反応を検出している。例えば、上記したように、検体が注入されたマイクロチップ内部(流路)で検体の反応(例えば、抗原抗体反応等の生体分子反応)を検出している。
また、マイクロチップにおいて、流路内の液体を送給するための光により駆動される液体送給手段(例えば光駆動エアポンプ)を設けることにより、マイクロチップの流路に導入された検体を含む流体の流れもディスプレイから放出される光によって制御される。
しかしながら、タブレット端末(処理装置)のディスプレイから放出される光の光強度は、必ずしも十分な大きさではない場合がある。当該光の光強度が十分な大きさではない場合、マイクロチップの光導入部から導入され、マイクロチップの流路に導入された検体を含む流体に照射される光(以下、照射光ともいう)の強度も弱く、光照射された該検体を含む流体から観測される蛍光などの光(以下、観測光ともいう)の強度も弱くなり、場合によっては、観測不能となる場合もある。
また、タブレット端末、携帯電話、パソコン等の処理装置のディスプレイにおいては、必ずしも所望の波長域において、望ましい強度の光を放出させることができるわけではない。例えば、タブレット端末のディスプレイから放出される光の分光分布は、各タブレット端末メーカーの設計仕様に依存するので、各メーカー毎に相違する。よって、タブレット端末によっては、ある波長域においては十分な光強度の光をディスプレイから放出可能であるが、特定の波長域においては十分な光強度の光をディスプレイから放出できない場合もある。
更に、マイクロチップの流路内で発生する反応を検出するにあたり、流体の種類によっては、ディスプレイから放出可能な光の波長以外の波長(例えば、紫外光、赤外光、完全白色光)の光が必要とされる場合もある。また、ディスプレイから放出される光は一般に連続光でインコヒーレント光であるが、測定によっては、パルス光、コヒーレント光、テラヘルツ光など、ディスプレイから放出される光とは性質の異なる光が必要な場合もある。
すなわち、タブレット端末によっては、マイクロチップの流路に導入された検体の反応を観測するのに適した特定波長の光を、観測に適した光強度で、ディスプレイから放出させることが困難となる場合もある。また、デイスプレイからは放出させることが困難なパルス光、コヒーレント光、テラヘルツ光といったディスプレイ光とは性質の異なる光が必要とされる場合もある。
上記した事情は、流路内の液体を送給するための光により駆動される液体送給手段の駆動においても当てはまる。すなわち、上記ディスプレイによっては、光駆動エアポンプ等の光駆動型液体送給手段を駆動するのに十分な光強度の光を放出させることが困難であったり、光駆動エアポンプの駆動に適した特定波長の光のみ光駆動型液体送給手段を駆動するのに十分な光強度が得られない場合もある。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、その課題は、様々な分析に対応可能で、かつ、ディスポーザルなマイクロチップを使用して、分析が必要な現場において、短時間でかつ高精度な評価分析を行うための光分析装置において、少なくとも光分析に適応した特定波長域の光の光強度を十分に確保できる光源を備える光分析方法等を提供することである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
図1は、本発明に係る光処理装置1の概略構成例を示す図である。図1(a)は、外部光源3が処理装置5と脱着可能に接続され、上記処理装置5と一体化した例である。上記外部光源3は、処理装置5に装着された時点で当該処理装置5と電気的に接続可能な状態となる。処理装置5の制御部によって、処理装置5から外部光源3への電力供給が制御される。
上記外部光源3は、例えば、USB(Universal Serial Bus)端子7を有する外部光源モジュール9に搭載され、上記USB端子7と外部光源3は電気的に接続されている。外部光源3は、例えば、LED(Light Emitting Diode)11から構成される。
外部光源モジュール9のUSB端子7は、処理装置5に設けられるUSBポート13と接続される。その結果、外部光源モジュール9と処理装置5はUSBポート13を介して一体化され、外部光源モジュール9は、USBポート13、USB端子7を介して、上記処理装置5と電気的に接続可能な状態となる。
そして、上記タブレット端末のような処理装置5のディスプレイ15上にマイクロチップ17が配置される。なお、マイクロチップ17は、ディスプレイ15上に載置されてもよいし、ディスプレイ15表面に対して所定の間隙をもって、近接した状態で保持されていてもよい。
外部光源3から放出される光は、光ファイバ19等の導光手段を介してマイクロチップ17の光導入部21に導光される。光ファイバ19の一端は外部光源モジュール9に固定され、他端はマイクロチップ17の光導入部21に図示を省略した接続機構を介し着脱可能に設置される。なお、光ファイバ19の一端をマイクロチップ17の光導入部21に固定し、他端を図示を省略した接続機構を介して外部光源モジュール9と着脱可能に設置してもよい。
なお、上記外部光源3(LED11)は、上記マイクロチップ17の流路に導入された検体を含む流体への照射光の波長が最適であって、光強度が十分な光を放出可能なものが選択される。
図1(b)は、光処理装置22の概略図であり、外部光源がマイクロチップ25と脱着可能に接続され、上記マイクロチップ25と一体化した例である。上記外部光源は、例えば、マイクロチップ25と脱着可能に構成された外部光源モジュール27に搭載され、外部光源としては、例えば、LED29が搭載される。
このLED29は、上記マイクロチップ25の流路31に導入された検体を含む流体への照射光の波長が最適であって、光強度が十分な光を放出可能なものが選択される。
外部光源から放出される光はマイクロチップ25の光導入部21に導光される。
上記外部光源への給電は、処理装置5と脱着可能に設けられる給電モジュール33より給電線35を介して行われる。給電モジュール33は処理装置5に装着された時点で当該処理装置5と電気的に接続可能な状態となる。処理装置5の制御部によって、処理装置5から給電モジュール33への電力供給が制御される。
上記給電モジュール33は、例えば、USB端子7を有し、処理装置5に設けられるUSBポート13と接続される。その結果、給電モジュール33と処理装置5はUSBポート13を介して一体化され、上記給電モジュール33は、USBポート13、USB端子7を介して、上記処理装置5と電気的に接続可能な状態となる。
図2(c)は、光処理装置36の概略図であり、外部光源がマイクロチップ自体に内蔵された例である。マイクロチップ37に内蔵される外部光源は、例えば、上記した図1(a)、(b)と同様LED39が搭載される。このLED39は、上記マイクロチップ37の流路31に導入された検体を含む流体への照射光の波長が最適であって、光強度が十分な光を放出可能なものが選択される。
上記外部光源への給電は、処理装置5と脱着可能な処理装置側給電モジュール43ならびにマイクロチップ37と脱着可能なマイクロチップ側給電モジュール45とからなる給電モジュールより行われる。給電モジュールは処理装置5に装着された時点で当該処理装置5と電気的に接続可能な状態となる。処理装置5の制御部によって、処理装置5から給電モジュールへの電力供給が制御される。
処理装置側給電モジュール43は、例えば、USB端子7を有し、処理装置5に設けられるUSBポート13と接続される。その結果、処理装置側給電モジュール43と処理装置5はUSBポート13を介して一体化され、上記処理装置側給電モジュール43は、USBポート13、USB端子7を介して、上記処理装置5と電気的に接続可能な状態となる。
また、上記マイクロチップ側給電モジュール45は、給電線47を介して上記処理装置側給電モジュール43と電気的に接続されている。このマイクロチップ側給電モジュール43は、マイクロチップ37に接続された際、マイクロチップ37に内蔵されている外部光源(LED39)と電気的に接続されるよう構成される。
すなわち、マイクロチップ側給電モジュール45と外部光源(LED39)とにより外部光源モジュール49が構成される。
図3(d)(e)は、図2(c)に示す外部光源がマイクロチップ自体に内蔵された例の変形例である。図3(d)は、光処理装置50の概略図である。本変形例においては、マイクロチップ51が外部光源内蔵チップ53と、検体光測定用チップ55とが積層された構造となる。
外部光源57は、上記外部光源内蔵チップ53に内蔵され、外部光源57は、例えば、上記した図2(c)と同様LEDが搭載される。このLEDは、上記マイクロチップ51の流路に導入された検体を含む流体への照射光の波長が最適であって、光強度が十分な光を放出可能なものが選択される。
図3(e)に示すように、上記マイクロチップ51は、例えば、外部光源内蔵チップ53の上に検体光測定用チップ55が積層され、外部光源内蔵チップ53の外部光源57(LED)からの光が、検体光測定用チップ55の光導入部59に照射される。
上記外部光源57への給電は、図2(c)と同様の処理装置側給電モジュール43とマイクロチップ側給電モジュール45とからなる給電モジュールを用いて行われる。給電モジュールは処理装置5に装着された時点で当該処理装置5と電気的に接続可能な状態となる。処理装置5の制御部によって、処理装置5から給電モジュールへの電力供給が制御される。
処理装置側給電モジュール43は、例えば、USB端子7を有し、処理装置5に設けられるUSBポート13と接続される。その結果、処理装置側給電モジュール43と処理装置5はUSBポート13を介して一体化され、上記処理装置側給電モジュール43は、USBポート13、USB端子7を介して、上記処理装置5と電気的に接続可能な状態となる。
また、上記マイクロチップ側給電モジュール45は、給電線47を介して上記処理装置側給電モジュール43と電気的に接続されている。このマイクロチップ側給電モジュール45は、マイクロチップ51の外部光源内蔵チップ53に接続された際、当該外部光源内蔵チップ53に内蔵されている外部光源57(LED)と電気的に接続されるよう構成される。
すなわち、マイクロチップ側給電モジュール45と外部光源内蔵チップ53に内蔵されている外部光源57(LED)とにより外部光源モジュール61が構成される。
図4に本発明における分析例の概略工程を示す。光処理装置としては、図1(a)に示す実施例1の光処理装置1を例に取る。
図4(a)に示すように、まず分析対象である検体63をマイクロピペット65により分析に必要な分だけ採取する。なお、検体63は例えば人体、動物、河川、廃液等から採取される。そしてマイクロピペット65により必要量採取される前に、必要に応じて不純物等の除去等の前処理が施される。
次に、タブレット端末(処理装置5)のディスプレイ上に配置されたマイクロチップ17の流路31へ、マイクロピペット65により採取された検体63が滴下される。
その結果、検体63が注入されたマイクロチップ内部(流路31)で検体63の反応(例えば、抗原抗体反応等の生体分子反応)が発生する。
上記マイクロチップ17には、ファイバ19によって導光される外部光源3からの光が照射される。外部光源3は、例えば、LED11であり、LED11から放出される光の光強度、波長は、後で示す測定用に適した条件に合致している。
この照射光により、マイクロチップ内で発生する反応が測定される。例えば、測定方法として照射光を用いた誘起蛍光法を採用した場合、上記反応に対応した蛍光が観測される。
上記マイクロチップ17は、光導入部21と光導出部67を備え、上記光導入部21で外部光源3からファイバ19により導光される光を受光し、マイクロチップ17に導入された上記検体63を含む流体に該光を照射し、該検体63を含む流体から光を放出させ、上記光導出部67から、上記該検体63を含む流体から放出された光を外部に導出する。
なお、外部光源を複数設け、上記照射光を放出する外部光源3とは異なる外部光源から放出され光ファイバにより導光される光により、マイクロチップ17に導入された検体63を含む流体の流れを制御するよう構成してもよい。
マイクロチップ内での反応に対応して放出される上記光は、当該光が可視光である場合、目視により放出光の有無を確認することにより、マイクロチップ内での反応の有無が判断される。
一方、タブレット端末にカメラ等の受光素子が内蔵されている場合、上記放出光を受光素子に導光することにより、上記反応はタブレット端末の受光素子にて検出される。
カメラの分解能を利用することにより、位置合わせなどは自動調整が可能で有り、さらにマイクロチップ内に分散素子を内包することで、信号光のスペクトル測定することも可能である。受光素子から出力される検出信号は、タブレット端末の演算装置により演算処理される。演算装置は検出信号を処理して分析を実施するのみならず、分析結果のディスプレイ15の表示領域16への表示、データのロギング、データ通信等を行う(図4(b))。
なお、検出信号を処理・演算するための分析用ソフトウエアは、タブレット端末の通信機能を用いて、測定対象の分析内容に応じて外部より適宜ダウンロードされる。そして、計測・分析を実施する際、測定対象の分析内容に応じて適宜ソフトウエアが選択される。このダウンロードされる分析用プログラムは、タブレット端末の通信機能を用いて、適宜、新しいヴァージョンに更新される。
(作用・効果)
本発明の分析装置は、分析計(処理装置)として演算機能を有する携帯可能なディスプレイユニット(タブレット端末)を使用し、当該ディスプレイ上に配置されたマイクロチップよりなるマイクロリアクタを用いて微量の試薬の分離、合成、抽出、分析などを実施可能に構成されている。
ここで、給電ポートを有するタブレット端末を使用することにより、上記給電ポートから給電される外部光源からの放出光を分析対象の検出光・駆動用エネルギー源として使用でき、また、タブレット端末に内蔵される演算装置を用いて、分析対象からの検出データを演算して分析し、また分析結果をディスプレイに表示することが可能となる。
外部光源としては、例えば、LEDやLDを使用することが可能であり、これらの外部光源から放出される光の強度や分光特性を適切に選択することにより、マイクロチップの流路に導入された検体の反応を観測するのに適した特定波長の光を、観測に適した光強度で利用することが可能となる。また外部光源から放出される光の特性(パルス光、コヒーレント光等)を適切に選択することにより、マイクロチップの流路に導入された検体の反応を観測するのに適した性質の光を利用することが可能となる。外部光源は当該外部光源と電気的に接続される給電端子を有する給電モジュールとともに外部光源モジュールを構成し、上記給電モジュールとタブレット端末の給電ポートとを電気的に接続することにより、上記タブレット端末から上記外部光源モジュールに給電することができる。
すなわち、本実施例の分析装置は、外部光源モジュール、演算装置が携帯可能なタブレット端末として集約されていて、このタブレット端末と能動素子を含まないマイクロチップを用いて分析を実施する分析装置であり従来のように専用の制御ツール(図22参照)を必要としないので、本発明の分析装置は、小型かつ携帯可能であり、分析が必要な現場において、検査時間が短く、かつ高精度な評価分析を実施することができる。すなわち、本発明の分析装置によれば、例えば、ライフサイエンス分野におけるポイントオブケア検査(POCT)の要請に対応することができる。
検出システム自体はタブレット端末が担当するので、マイクロチップは、能動素子を含まない従来の安価なものを使用することが可能となり、ディスポーザルに取り扱うことが可能となる。すなわち、例えば有機ELが集積化された構造の検出システムと一体化された高価なマイクロチップを使用する必要はない。
さらに、図1(a)に示すようにタブレット端末に着脱可能に外部光源3が搭載される場合、外部光源3からの光は光ファイバ19によりマイクロチップ17に導光され、また図1(b)に示すように外部光源がマイクロチップ25に着脱可能に搭載される場合は、外部光源から直接光がマイクロチップ25に導光され、また図2、図3に示すように外部光源がマイクロチップ37,51に内蔵される場合、外部光源からの光は直接マイクロチップ37,51の光導入部に導光されるので、タブレット上に配置したマイクロチップ37,51の位置が少し変わっても、光分析には影響しない。また、外部光源がマイクロチップ37,51に内蔵されているので、外部光源とマイクロチップ37,51の光導入部とのアライメントも不要となる。これにより、タブレット上のマイクロチップ37,51の位置の調整を無用にし、迅速な測定が可能となる。
また、上記したように、本実施例の分析装置は、タブレット端末の通信機能を用いて、適宜、測定対象の分析内容に応じた分析用ソフトウエアをダウンロードすることができる。よって、様々な検体に対して多種多様な分析を実施することが可能な分析装置として使用することが可能となる。
そのため、従来のように特定の分析に対して設定された専用の検出システムを用いる場合とは異なり、多種多様な分析に対応するために、各分析に対してカスタマイズされた分析装置を多数用意する必要はない。
更に、本発明の分析装置は、タブレット端末への測定データのロギングが容易に可能であり、専用のストレージ手段を必要としない。また、通信機能を用いた分析システム構築が容易である。更には、ディスプレイにおける表示を、発光色の選択、分析データ表示といった機能に応じてカスタマイズすることが可能となる。
なお、本発明において用いられる処理装置はタブレット端末に限定されるものではなく、要するにディスプレイを有し、演算機能を備えた処理装置であれば、例えばパソコン、携帯電話等であってもよい。
図5に本発明の第3の実施例を示す。図5は、光処理装置68の概略図である。本実施例は、図1(a)に示すような外部光源が処理装置と脱着可能に構成され、当該外部光源からの光が光ファイバを介してマイクロチップに導光される構成の具体例である。
本実施例では、前記ディスプレイ15を備え制御部72を内蔵した処理装置として、携帯可能なタブレット端末73を用いた場合を示し、該タブレット端末73は、受光素子として内蔵カメラ75を具備している。また、マイクロチップ71は、タブレット端末表面において、ディスプレイの一部と内蔵カメラを含む領域上に載置されている。なお、マイクロチップ71は所定の間隙(例えば、1mm程度)を介して上記領域上に近接して配置されていてもよい。
なお、理解を容易にするために、マイクロチップ71の大きさは誇張して描かれており、実際のタブレット端末73とマイクロチップ71との大小関係は図5とは相違している。
マイクロチップ71は、例えば、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane :PDMS)等のシリコーン樹脂からなる。このマイクロチップ71は、図5に示すように、少なくとも、光導入部(例えば、照射光導入穴77、駆動光導入穴A79、駆動光導入穴B81)、光導出部(例えば内蔵カメラ導光穴82)と、検体を含む液体及び/またはバッファ液を保持する複数のポート(ポートA〜E)と、該ポート間を結ぶ流路(マイクロ流路83)と、ポートに設けられ該ポートに保持された液体を送給するための光により駆動される液体送給手段(例えば光駆動エアポンプ85)と、上記光導入部からの光を導光し検体を含む液に光を照射する導光路(フィルタ87、第1のレンズ89等から構成される光路)と、該検体を含む液体に光を照射することにより該検体から放出される光を上記光導出部に導く導光路(第2のレンズ91、第1の平行光フィルタ92、第2の平行光フィルタ93等から構成される光路)とを備える。
図6は、外部光源3を構成する外部光源モジュール9の構成例である。図6に示す外部光源モジュール9は、例えば、USB端子7である給電用端子を有する。このUSB端子7を、処理装置であるタブレット端末73のUSBポート(給電用ポート)に装着することにより、タブレット端末73から外部光源モジュール9への給電が可能となる。
図6の外部光源モジュール9は、内部に3つの光源を有する。各光源は、例えば、LED11からなり、各LED11から放出される光は、後で示すように、光ファイバ69を介してマイクロチップ71の照射光導入穴77、および駆動光導入穴A79、駆動光導入穴B81に導光される。
ここで、照射光導入穴77に対応するLEDからは、マイクロチップ71の流路に導入された検体を含む流体への照射光として最適な波長であり、かつ光強度が十分な光が放出される。また、駆動光導入穴A79、駆動光導入穴B81に対応するLEDからは、光駆動エアポンプ85の駆動光として最適な波長であり、かつ光強度が十分な光が放出される。
各LED11の光放出側には集光用穴部97が設けられ、この集光用穴部97にはLED11に近い側からコリメータレンズ99、集光レンズ101が順に設けられている。
LED11からの放出光は、コリメータレンズ99に入射してコリメートされ、集光レンズ101に入射する。集光レンズ101に入射した光は、光ファイバ69の端面に集光される。各光ファイバ69は、光ファイバ用マニホールド103により各LEDからの集光光が放出される位置に位置決めされる。
図5に戻り、マイクロチップのポートA、ポートBには、光駆動エアポンプ85(光駆動マイクロポンプ)が設けられる。光駆動エアポンプ85は、例えば特許文献2に開示されているように、光が照射されるとガスを発生するガス発生剤が収容されているガス発生室が設けられている構造であり、光照射時に発生するガスにより流路内の流体を送出する。
ポートA、Bに外部光源モジュール9のLED11からの光が導光されると、上記光駆動エアポンプが作動する。
図5に示す、各ポートの機能は以下の通りである。
ポートAは、光駆動エアポンプ85が備えられた溶液溜りであり、検体が導入される。
ポートBには、光駆動エアポンプ86が備えられる。
ポートCは、溶液溜りであり、例えば、バッファー液であるりん酸緩衝生理食塩水(Phosphatebuffered saline, 以下、PBSと呼称する)が注入・貯蔵される。
ポートDは、検体溜りである。
ポートEは、検体排出口である。
本実施例において、マイクロチップ71に導入された検体の分析は概ね以下のようにおこなわれる。
マイクロチップ71の光導入部(照射光導入穴77、駆動光導入穴A79、駆動光導入穴B81)に対応する位置に、図6に示す外部光源モジュール9からの光を導光する光ファイバ69を配置する。図7(a)は駆動光導入穴A79、駆動光導入穴B81に相当する位置に光ファイバ69を配置する例を示し、図7(b)は照射光導入穴77に相当する位置に光ファイバ69を配置する例を示す。
図7に示すように、駆動光導入穴A79、駆動光導入穴B81、照射光導入穴77は、光ファイバ69と対面する側と反対側の面(以下、マイクロチップ裏面ともいう)に設けてあり、各穴の底面には、マイクロチップ裏面に対して傾斜している斜面が設けてある。
外部光源モジュール9から延びる各ファイバは、当該ファイバから放出される光がマイクロチップ内部を経由して上記斜面に到達するように、光ファイバ用ホルダ105により位置決めされる。
上記したように、マイクロチップ71はPDMS等のシリコーン樹脂からなる。一般に、シリコーン樹脂の屈折率は大気の屈折率より大きい。よって、大気に対するマイクロチップ71(シリコーン樹脂)の臨界角以上の入射角で上記光ファイバ69からの放出光が斜面を形成する駆動光導入穴A79、駆動光導入穴B81、照射光導入穴77の底面に入射すると、当該放出光は上記底面により全反射される。斜面の角度を適切に設定することにより、光ファイバ69からマイクロチップ表面に対して垂直方向に放出される放出光は、斜面により横方向に折り返される。
駆動光導入穴A79、駆動光導入穴B81に設けられる斜面は、斜面に照射され折り返される光が、ポートA,ポートBに備えられた光駆動エアポンプ85,86に照射されるように形成されている。同様に、照射光導入穴77に設けられる斜面は、後で示す第1のレンズ89の方へ導光されるように形成されている。すなわち、外部光源モジュール9から光ファイバ69を介してマイクロチップ71に導光される光により、液体送給手段(例えば光駆動エアポンプ85,86)を駆動して、マイクロチップ71に導入された検体を含む流体の流れを制御するとともに、該検体を含む流体に光を照射し、該検体を含む流体から光を放出させ、該放出された光により上記検体の分析を行う。
図8に本実施例の分析手順を示す。本実施例においては、マイクロチップ71に導入される検体は、同図に示す手順でマイクロチップ内の流路を移動、分析処理がおこなわれる。
まず、ポートAから検体が導入される。また、ポートC、ポートD、ポートEからはバッファー液として例えばPBSが導入される(ステップS1)。
次に、タブレット端末73に内蔵されている制御部72は、外部光源モジュール9のうち駆動光導入穴A79に導光される光を放出するLEDに給電し、上記LEDを発光させる(ステップS2)。
上記LEDから放出される放出光は光ファイバにより駆動光導入穴A79に導光され、駆動光導入穴79の斜面により折り返されてポートAに導光され、当該ポートAに備えられた光駆動エアポンプ85が駆動する(ステップS3)。
光駆動エアポンプ85が駆動されると、ステップS1においてポートAに導入された検体が流路AD(ポートAとポートD間の流路)内をポートDに向かって送出され、流路AD内においてポートAに注入された検体がポートDに注入されているバッファ液(PBS)と流体的に繋がる(すなわち、流路AD内がバッファー液(PBS)に希釈された検体溶液によって満たされる:ステップS4)。
なお、上記ステップS1において、ポートAにバッファー液、ポートDに検体を導入しておき、ステップS4において、光駆動エアポンプ85を駆動してポートAのバッファー液をポートDの検体に向けて送出するようにしてもよい。
ステップS4で流路AD内がPBSに希釈された検体溶液により満たされた後、タブレット端末73に内蔵されている制御部72は、駆動光導入穴A79に導光される光を放出するLEDに給電を停止して、上記LEDの発光を停止し、光駆動エアポンプ85の動作を止める。(ステップS5)。
次に、タブレット端末73に内蔵されている制御部72は、外部光源モジュール9のうち駆動光導入穴B81に導光される光を放出するLEDに給電し、上記LEDを発光させる(ステップS6)。上記LEDから放出される放出光は光ファイバにより駆動光導入穴B81に導光され、駆動光導入穴B81の斜面により折り返されてポートBに導光され、当該ポートBに備えられた光駆動エアポンプ86が駆動する(ステップS7)。
光駆動エアポンプ86が駆動されると、ポートBにて発生したガスがステップS1においてポートCに注入・貯蔵されているバッファー液が流路CE(ポートCとポートE間の流路10)内をポートEに向かって送出される。その結果、流路CEと流路ADとが交差する部分FにあるPBSに希釈された検体溶液が、ポートCから送出されるバッファー液によって、上記交差部分FからポートEに向かって送出される。その結果、流路AD内に満たされているPBSに希釈された検体溶液の一部が、ポートCから送出されるバッファー液により切り出されてポートEに向かって送出され、流路FE(上記交差部分FとポートE間の流路)内において上記切り出されたPBSに希釈された検体溶液がポートEに注入されているバッファ液(PBS)と流体的に繋がる(すなわち、流路FE内がバッファー液(PBS)に希釈された検体溶液によって満たされる:ステップS8)。
ステップS8で流路FE内がPBSに希釈された検体溶液により満たされた後、タブレット端末73に内蔵されている制御部72は、駆動光導入穴B81に導光される光を放出するLEDに給電を停止して、上記LEDの発光を停止し、光駆動エアポンプ86の動作を止める。(ステップS9)。
後で説明する光分析手段により、流路FEの流路間で光分析がされたあと、タブレット端末73に内蔵されている制御部72は、外部光源モジュール9のうち駆動光導入穴B81に導光される光を放出するLEDに給電し、上記LEDを発光させる(ステップS10)。上記LEDから放出される放出光は光ファイバにより駆動光導入穴B81に導光され、駆動光導入穴B81の斜面により折り返されてポートBに導光され、当該ポートBに備えられた光駆動エアポンプ86が駆動する(ステップS11)。光駆動エアポンプ86が駆動されると、上記したようにポートCからバッファー液が送出され、流路FE内の光分析済みのPBSにより希釈された検体溶液が上記バッファー液(正確には、交差部分Fから切り出された検体溶液を含む、光分析がされていない新鮮なPBSにより希釈された検体溶液)によりパージされ、ポートEより排出される(ステップS12)。
流路FE間で光分析を実施する光分析手段は、例えば、図5に示すように、照射光導入穴77、フィルタ87、第1のレンズ89、第2のレンズ91、2つの平行光フィルタ(第1の平行光フィルタ92、第2の平行光フィルタ93)、フィルタ94、集光穴95、内蔵カメラ導光穴82からなる。
先に述べたように、照射光導入穴77に設けられる斜面は、第1のレンズ89の方へ導光されるように形成されている。なお、光ファイバ69で導光されるLED11からの光は拡散光であるので、横方向(第1のレンズ89へ進む方向)に進行する放出光のある成分は垂直方向に広がりながら、マイクロチップ71の上面へと入射する。このマイクロチップ71の上面へと入射する光も、入射角が大気に対するマイクロチップ71(シリコーン樹脂)の臨界角以上である場合、マイクロチップ71と大気との界面で反射され第1のレンズ89の方へ導光される。
すなわち、照射光導入穴77から第1のレンズ89までの光が進行するマイクロチップ内部(シリコーン樹脂)の光路は、放出光に対する導光路として機能する。
なお、照射光導入穴77と第1のレンズ89との間の光路中には、フィルタ87が設けられる。LED11から照射光導入穴77に導入される光は、流路FE内部に位置する検体を励起するための照射光として用いられる。
照射光導入穴77に導光される光を放出するLED11は、検体を励起するのに適した波長の光が放出されるように選定され、外部光源モジュール9に組み込まれている。ここで、LED11から放出される光はスペクトル線幅も比較的広い。よって、放出光には、検体を励起するのに不要な波長成分も含まれる。この不要な波長成分の光は測定の誤差に繋がる。フィルタ87は、放出光のうち、上記した検体を励起するのに不要な波長成分をカットする。
第1のレンズ89は、マイクロチップ内部に設けられた空洞として構成され、放出光の光入射面、出射面は凹面となっている。この光入射面および出射面の凹面形状は、第1のレンズ89を通過した光がマイクロチップの流路FE内に入射して、流路FE内部で集光されるように設定される。
すなわち、照射光導入穴77は光ファイバ69により導光されたLED11からの放出光を、フィルタ87、第1のレンズ89に向けて反射する。反射された光は、例えばシリコーン樹脂からなるマイクロチップ内部を進行して、フィルタ87、第1のレンズ89に入射する。フィルタ87を介して第1のレンズ89に入射したLED11からの放出光は、第1のレンズ89により流路FE内部で集光され、流路FE内部のバッファー液(PBS)により希釈された検体溶液が励起される。
励起された検体からは、検体の物性に依存する光(例えば、蛍光)が放出される。この光は、観測光として第2のレンズ91、2つの平行光フィルタ(第1の平行光フィルタ92、第2の平行光フィルタ93)、フィルタ94、集光穴95、内蔵カメラ導光穴82をこの順に経由して、タブレット端末73の内蔵カメラ75に入射し、当該内蔵カメラ75により検出される。
第2のレンズ91は、マイクロチップ内部に設けられた空洞として構成され、観測光の光入射面および出射面の曲面形状は、第2のレンズ91を出射する光が平行光となるように設定される。
第1の平行光フィルタ92は、マイクロチップ内部に設けられた空洞として構成される。空洞は、例えば三角柱構造であり、その斜面は第2のレンズ93から出射される平行光が入射し、当該平行光の光軸に対して45度をなすように構成される。マイクロチップの材質が屈折率1.41のPDMSである場合PDMSの臨界角はほぼ45度であるので、上記斜面への上記平行光の入射角はほぼ臨界角となり、斜面へ入射した平行光は直角方向(図5では上方向)に全反射される。
第2の平行光フィルタ93は、マイクロチップ内部に設けられた空洞として構成される。空洞は、例えば三角柱構造であり、その斜面は第1の平行光フィルタから出射される平行光が入射し、当該平行光の光軸に対して45度をなすように構成される。第1の平行光フィルタ92のときと同様、第2の平行光フィルタ93の斜面への上記平行光の入射角はほぼ臨界角となり、斜面へ入射した平行光は直角方向(図5では左方向)に全反射される。
なお、上記したようにマイクロチップ71の材質がPDMSである場合第1の平行光フィルタ92、第2の平行光フィルタ93の臨界角はほぼ45度となる。よって、第1の平行光フィルタ92、第2の平行光フィルタ93は、入射する光のうち、入射角が45度以上の成分を全反射する。
ここで、第1の平行光フィルタ92、第2の平行光フィルタ93の光入射面は、入射する平行光の光軸に対して45度をなすように構成されているので、第1の平行光フィルタ92に45度より大きい入射角で入射する光は第1の平行光フィルタ92で全反射するものの、第2の平行光フィルタ93に入射するときの入射角は45度より小さくなる。よって、この光は第2の平行光フィルタ93によって反射されず、第2の平行光フィルタ93をなす空洞を通過する。
すなわち、平行光フィルタ(第1の平行光フィルタ92、第2の平行光フィルタ93)を上記のように構成、配置することにより、平行光フィルタは入射する光のうち、平行成分ではない光をフィルタリングして平行光のみをフィルタに導光する。
フィルタ94に入射する平行光フィルタから出射される光は、必ずしも検体から放出される観測光(例えば、蛍光)のみではない。検体の励起に寄与しなかった照射光も平行光フィルタからの出射光に含まれる。この照射光は、検体の光分析のノイズとなるため除去する必要がある。
フィルタ94は、平行光フィルタから導光されてくる光のうち、照射光をカットする作用を奏する。フィルタ94としては、誘電体光学素子(ノッチフィルタ)をマイクロチップ71に組みこんだ構成としてもよいし、マイクロチップ71に照射光を吸収する色素を埋め込んだ構成(吸収フィルタ構成)としてもよい。
集光穴95は、マイクロチップ内部に設けられた空洞として構成される。空洞は、例えば柱構造であり、平行光フィルタから導光されてくる光の入射面は、入射光が反射かつ集光され、更に、反射集光光の光軸方向が入射光の光軸と略直交するように形成される。図5に示す例では、図5の内蔵カメラ導光穴82において反射光が集光するように設定されている。
なお、できるだけ効率的に入射光を反射させるために、この集光穴95の反射面の形状は、マイクロチップ71の材質に依存する界面(前記反射面)の臨界角を考慮して設計される。
図9は内蔵カメラ導光穴82の断面を示す図である。内蔵カメラ導光穴82の底面は、マイクロチップ表面に対して傾斜している斜面が設けてある。
集光穴95から集光される観察光は、内蔵カメラ導光穴82の底面に入射する。上記したように、マイクロチップ71の臨界角等を考慮して斜面の角度を適切に設定することにより、集光穴95から集光される観察光は、斜面により下方向(内蔵カメラのある方向)に折り返され、集光される。
すなわち、検体からの観測光(例えば、蛍光)および励起に寄与しなかった照射光は、第2のレンズ91によりコリメートされ、2つの平行光フィルタ92,93により平行光のみ取り出されてフィルタ94に入射し、当該フィルタ94より照射光がカットされ、集光穴95により集光されて内蔵カメラ導光穴82に導光され、当該内蔵カメラ導光穴82によりタブレット端末73の内蔵カメラ75に導光される。そして、観察光は、上記内蔵カメラ75により検出される。
〔光学測定とタブレットの演算処理:光分析〕
図8のステップS9とS10との間に、流路FEの流路間で光分析(流路FE間に位置する検体溶液の光学測定と、測定結果の演算処理)が行われる。
この光分析は、図10に示すように、例えば以下のような手順で行われる。
まず、タブレット端末73に内蔵されている制御部72は、外部光源モジュール9のうち照射光導入穴B81に導光される光を放出するLEDに給電し、上記LEDを発光させる(図10のステップ21)。なお、このLEDから放出される光は、流路FE間に位置する検体溶液の光学測定に適した照射光(検体を励起するのに適した波長の光)の波長成分を含む。
照射光導入穴に導入された、LEDから放出される放出光は、フィルタ87、第1のレンズ89を介して、流路FE内部で集光される。すなわち、検体を励起するのに適した波長を有する照射光が流路FE内部の検体溶液に集光され、当該検体溶液が励起される(ステップS22)。
励起された検体から放出される観測光が、第2のレンズ91、2つの平行光フィルタ92,93、フィルタ94、集光穴95、内蔵カメラ導光穴82をこの順に経由して、タブレット端末73の内蔵カメラ75に入射し、当該内蔵カメラ75により検出される(ステップS23)。
内蔵カメラ75により検出された観測光に相当する検出信号が、内蔵カメラ75からタブレット端末73に内蔵される制御部72に送信される(ステップS24)。
内蔵カメラ75から検出信号を受信した制御部72は、予め記憶しておいた、もしくは、タブレット端末73の通信機能を用いて外部より適宜ダウンロードされる分析用ソフトウエアにより上記検出信号を処理・演算する(ステップS25)。
制御部72は、処理・演算結果を、タブレット端末73のディスプレイ15の分析結果等の表示領域16に表示する(ステップS26)。
以上のように、タブレット端末73のディスプレイ15上にマイクロチップ71を配置し、上記した手順により光分析が行われる。検体からの観察光が内蔵カメラ75により検出され、タブレット端末73に内蔵されている制御部72により上記検出情報が演算処理される。演算処理された分析結果は、適宜、ディスプレイ15上に表示される。
以上説明した実施例の分析装置は、分析計として演算機能を有する携帯可能なタブレット端末73を使用し、当該ディスプレイ15上に配置されたマイクロチップ71よりなるマイクロリアクタを用いて微量の試薬の分離、合成、抽出、分析などを実施可能に構成されている。
ここで、給電ポートを有するタブレット端末73を使用することにより、上記給電ポートから給電される外部光源からの放出光を分析対象の検出光・駆動用エネルギー源として使用でき、また、タブレット端末73に内蔵される演算装置を用いて、分析対象からの検出データを演算して分析し、また分析結果をディスプレイ15に表示することが可能となる。
外部光源3としては、例えば、LEDやLDを使用することが可能であり、これらの外部光源3から放出される光の強度や分光特性を適切に選択することにより、マイクロチップ71の流路に導入された検体の反応を観測するのに適した特定波長の光を、観測に適した光強度で利用することが可能となる。外部光源3は当該外部光源3と電気的に接続される給電端子を有する外部光源モジュール9に集約することが可能であり、上記給電端子とタブレット端末73の給電ポートとを接続することにより、上記外部光源モジュール9とタブレット端末73を一体化することができる。
すなわち、本実施例の分析装置は、外部光源モジュール9、演算装置が携帯可能なタブレット端末73として集約されていて、このタブレット端末73と能動素子を含まないマイクロチップ71を用いて分析を実施する分析装置であり従来のように専用の制御ツール(図22参照)を必要としないので、小型かつ携帯可能であり、分析が必要な現場において、検査時間が短く、かつ高精度な評価分析を実施することができる。すなわち、本発明の分析装置によれば、例えば、ライフサイエンス分野におけるポイントオブケア検査(POCT)の要請に対応することができる。
検出システム自体はタブレット端末73が担当するので、マイクロチップ71は、能動素子を含まない従来の安価なものを使用することが可能となり、ディスポーザルに取り扱うことが可能となる。すなわち、例えば有機ELが集積化された構造の検出システムと一体化された高価なマイクロチップを使用する必要はない。
さらに、外部光源3からの光は光ファイバ69によりマイクロチップ71に導光されるので、タブレット端末73上に配置したマイクロチップ71の位置が少し変わっても、光分析には影響しない。これにより、タブレット端末73上のマイクロチップ71の位置の調整を無用にし、迅速な測定が可能となる。
また、上記したように、本実施例の分析装置は、タブレット端末73の通信機能を用いて、適宜、測定対象の分析内容に応じた分析用ソフトウエアをダウンロードすることができる。よって、様々な検体に対して多種多様な分析を実施することが可能な分析装置として使用することが可能となる。
そのため、従来のように特定の分析に対して設定された専用の検出システムを用いる場合とは異なり、多種多様な分析に対応するために、各分析に対してカスタマイズされた分析装置を多数用意する必要はない。
更に、本発明の分析装置は、タブレット端末73への測定データのロギングが容易に可能であり、専用のストレージ手段を必要としない。また、通信機能を用いた分析システム構築が容易である。更には、ディスプレイ15における表示を、発光色の選択、分析データ表示といった機能に応じてカスタマイズすることが可能となる。
なお、本発明において用いられる処理装置はタブレット端末に限定されるものではなく、要するにディスプレイを有し、演算機能を備えた処理装置であれば、例えばパソコン、携帯電話等であってもよい。
図11に本発明の第4の実施例を示す。図11は、光処理装置106の概略図である。本実施例は、図1(b)に示すような外部光源がマイクロチップ107と脱着可能に構成され、タブレット端末73等の処理装置から外部光源に対して給電される構成の具体例である。
本実施例の分析装置は、上記したように外部光源がマイクロチップ107と脱着可能に構成されている点、マイクロチップ107にポートA,ポートBに光駆動エアポンプの代わりにピエゾポンプ(圧電型ダイヤフラムポンプ)109,110が備えられる構造、および、流路FEの流路間で光分析を実施する光分析手段の構造以外は、第1の実施例に示す分析装置と同じである。
よって、ここでは、外部光源、ピエゾポンプ、光分析手段のみ説明する。なお、理解を容易にするために、マイクロチップ107の大きさは誇張して描かれており、実際のタブレット端末73とマイクロチップ107との大小関係は図11とは相違している。
〔外部光源〕
図12は、後で示すマイクロチップ107に装着される外部光源を構成する外部光源モジュール111へ電力を供給する給電モジュール113の構成例を示す。図12に示す給電モジュール113は、例えば、USB端子7である給電用端子を有する。このUSB端子7を、処理装置であるタブレット端末73のUSBポート(給電用ポート)に装着することにより、タブレット端末73から給電モジュール113への給電が可能となる。上記給電モジュール113からは、上記外部光源モジュール113へ給電するための給電線35が設けられる。
図13は、外部光源モジュール111の構成例を示す。
図13の外部光源モジュール111は、例えば、マイクロチップ107の側面部に装着される。外部光源モジュール111の装着面には、固定用凸部115や複数の給電用端子117等の突出部が形成される。一方、これらの突出部に対応した陥没部119がマイクロチップ107の側面部に設けられる。上記突出部と陥没部119とを勘合することにより、外部光源モジュール111はマイクロチップ107に脱着可能に装着される。
図13に示す外部光源モジュール111は、内部に1つの光源を有する。光源は、例えば、LED11からなる。LED11からは、マイクロチップ107の流路に導入された検体を含む流体への照射光として最適な波長であり、かつ光強度が十分な光が放出される。
LED11の光放出側には集光用穴部97が設けられ、この集光用穴部97にはLED11に近い側からコリメータレンズ99、集光レンズ101が順に設けられている。
LED11からの放出光は、コリメータレンズ99に入射してコリメートされ、集光レンズ101に入射する。集光レンズ101に入射した光は、マイクロチップ内部を進行し、後で示す導入光導光路121の光入射面である照射光導入端123に集光される。
なお、上記突出部と陥没部119との位置関係は、外部光源(LED11)から放出される光が照射光導入端123に入射するように設定されている。
また、外部光源モジュール111がマイクロチップ107に装着されると、外部光源モジュール111から突出している給電用端子117が、後で示すマイクロチップ107のポートA,ポートBに設けられたピエゾポンプ109,110から延びるポンプ給電用配線125に接続される。
〔ピエゾポンプ〕
ポートA,ポートBに設けられるピエゾポンプ109,110は、ピエゾ素子(圧電素子)による駆動されるダイヤフラム式ポンプである。マイクロチップ107には、上記ピエゾポンプ109,110に給電するためのポンプ給電用配線125が設けられている。そして先に述べたように、上記外部光源モジュール111がマイクロチップ107に装着されると上記ポンプ給電用配線125と上記外部光源モジュール111の給電用端子117とが電気的に接続される。
〔光分析手段〕
流路FEの流路間で光分析を実施する光分析手段は、図11に示すように、フィルタ126、導入光導光路121、フィルタ127、観測光導光路128、フィルタ129、内蔵カメラ導光穴82からなる。
上記したように、マイクロチップ107に装着された外部光源モジュール111のLED11からの放出光が、外部光源モジュール111のコリメータレンズ99に入射してコリメートされ、集光レンズ101に入射して、マイクロチップ107の側面部から当該マイクロチップ内部に入射する。マイクロチップ内部に入射した光は、マイクロチップ内部を進行して、後で示す導入光導光路121の光入射面である照射光導入端123に集光される。
導入光導光路121は、外部光源モジュール111から放出される光を導光するものであり、導入光導光路121の光出射部は流路FEの側面に設けられている。導入光導光路121はシリコーン樹脂等の材料で構成される。当該導入光導光路121を構成する材料としては、その屈折率がマイクロチップ107を構成する材料(例えば、シリコーン樹脂)の屈折率や大気の屈折率より大きく、ディスプレイ15からの放出光が透過可能なものが選択される。
導入光導光路121の光入射面である照射光導入端123は、外部光源モジュール111からの光が入射する位置に設けられる。一方、導入光導光路121の光出射面は、PBS等のバッファー液に希釈された検体溶液により満たされた流路FEの側面部に対向する位置に設けられる。
照射光導入端123から導入光導光路121に入射する放射光は、集光後拡散する拡散光であるので放出光の一部は、光出射面に到達する前に導入光導光路121の上下面、左右側面に入射する。ここで、導入光導光路121の屈折率はマイクロチップの屈折率、空気の屈折率より大きいので、導入光導光路121の上下面、左右側面へ入射する光の入射角が導入光導光路121の臨界角以上である場合、導入光導光路121の上下面、左右側面へ入射した光は全反射され、光出射面に進行する。
すなわち、導入光導光路121は、ディスプレイからの放出光を流路FE内の検体溶液まで当該検体の照射光として導光する導光路として機能する。
導入光導光路121において、照射光導入端123から流路FEの側面部に至る途中にはフィルタ126が配置される。このフィルタ126は、照射光導入端123から導光される照射光から検体を励起する波長成分以外をカットする。
すなわち、導入光導光路121に入射した上記照射光は、フィルタ126を介して流路FEの側面に導光され、流路FE内部のバッファー液(PBS)により希釈された検体溶液が励起される。
励起された検体からは、検体の物性に依存する光(例えば、蛍光)が放出される。この光は、観測光として観測光導光路128により、フィルタ127,129、内蔵カメラ導光穴82をこの順に経由するように導光されてタブレット端末73の内蔵カメラ75に入射し、当該内蔵カメラ75により検出される。
観測光導光路128において、流路FEの側面部から内蔵カメラ導光穴82に至る途中にはフィルタ127,129が配置される。
観測光導光路128の光入射面に入射する光は、必ずしも検体から放出される観測光(例えば、蛍光)のみではない。検体の励起に寄与しなかった照射光も流路FEを横切って観測光導光路128の光入射面に入射する可能性がある。この照射光は、検体の光分析のノイズとなるため除去する必要がある。
フィルタ127,129は、励起光をカットする作用を奏するものであり、例えば、誘電体光学素子(ノッチフィルタ)や色ガラスフィルタ(吸収フィルタ)である。
内蔵カメラ導光穴82は、第3の実施例のものと同じであり、詳細な説明は省略する。
図9に示すように、内蔵カメラ導光穴82の底面はマイクロチップ表面に対して傾斜している斜面が設けてある。マイクロチップ107の臨界角等を考慮して斜面の角度を適切に設定することにより、観測光導光路128から導光される観察光は、斜面により下方向(内蔵カメラ75のある方向)に折り返され、集光される。
図14に本発明の第5の実施例を示す。図14は、光処理装置130の概略図である。本実施例は、図2(c)に示すような外部光源がマイクロチップ自体に内蔵され、タブレット端末等の処理装置から外部光源に対して給電される構成の具体例である。
本実施例の分析装置は、第4の実施例におけるピエゾポンプ、光分析手段を採用した例を示しており、外部光源がマイクロチップに内蔵されている構造以外は、第4の実施例に示す分析装置と同じである。
よって、ここでは、外部光源についてのみ説明する。なお、理解を容易にするために、マイクロチップ131の大きさは誇張して描かれており、実際のタブレット端末73とマイクロチップ131との大小関係は図14とは相違している。
〔外部光源〕
図15は、マイクロチップ131に内蔵される外部光源へ電力を供給する給電モジュールのうち、処理装置側給電モジュール135の構成例を示す。図15に示す処理装置側給電モジュール135は、例えば、USB端子7である給電用端子を有する。このUSB端子7を、処理装置であるタブレット端末73のUSBポート(給電用ポート)に装着することにより、タブレット端末73から処理装置側給電モジュール135への給電が可能となる。上記処理装置側給電モジュール135からは、上記外部光源へ給電するための給電線が設けられる。
図16は、マイクロチップ側給電モジュール139とマイクロチップ131に内蔵された外部光源の構成例を示す。
図16のマイクロチップ側給電モジュール139は、例えば、マイクロチップ131の側面部に装着される。マイクロチップ側給電モジュール139の装着面には、固定用凸部115や複数の給電用端子117等の突出部が形成される。一方、これらの突出部に対応した陥没部がマイクロチップ131の側面部に設けられる。上記突出部と陥没部とを勘合することにより、マイクロチップ側給電モジュール139はマイクロチップに脱着可能に装着される。
図16には、マイクロチップ131に1つの外部光源が内蔵されている例が示されている。外部光源は、例えば、LED11からなる。LED11からは、マイクロチップ131の流路に導入された検体を含む流体への照射光として最適な波長であり、かつ光強度が十分な光が放出される。
マイクロチップ131のLED11の光放出側には、LED11に近い側からコリメータレンズ141、集光レンズ143が順に設けられている。
LEDからの放出光は、コリメータレンズ141に入射してコリメートされ、集光レンズ143に入射する。集光レンズ143に入射した光はマイクロチップ内部を進行し、図13に示す第4の実施例のときと同様、導入光導光路121の光入射面である照射光導入端123に集光される。
なお、上記突出部と陥没部との位置関係は、マイクロチップ側給電モジュール139とマイクロチップ131とが勘合された際、マイクロチップ側給電モジュール139から突出している給電用端子117の一部が外部光源であるLED11の給電用配線に接続され、上記給電用端子117の残りが、図14に示すマイクロチップ131のポートA,ポートBに設けられたピエゾポンプ109,110から延びるポンプ給電用配線125に接続されるように設定されている。
上記したように、外部光源やピエゾポンプ109,110への給電は、処理装置側給電モジュール135、給電線137、マイクロチップ側給電モジュール139からなる給電モジュールを用いて行われる。処理装置側給電モジュール135は処理装置に装着された時点で当該処理装置と電気的に接続可能な状態となる。よって、マイクロチップ側給電モジュール139がマイクロチップ131に接続されることにより、処理装置とマイクロチップ131とは電気的に接続可能な状態となる。そして処理装置の制御部によって、処理装置からマイクロチップ131への外部光源、ピエゾポンプ109,110への電力供給が制御される。
第5の実施例においては、外部光源とマイクロチップ側給電モジュール139とが第4の実施例における外部光源モジュールに相当する。
第4の実施例と同様、図14に示すポートA,ポートBには、ピエゾ素子(圧電素子)による駆動されるダイヤフラム式ポンプであるピエゾポンプ109,110が設けられている。また、流路FEの流路間で光分析を実施する光分析手段は、図14に示すように、フィルタ126、導入光導光路121、観測光導光路128、フィルタ127,129、内蔵カメラ導光穴82からなる。
また、第4の実施例と同様、外部光源から放出される光は、コリメータレンズ141、集光レンズ143を介して導入光導光路121の照射光導入端123に入射し、PBS等のバッファー液に希釈された検体溶液により満たされた流路FEの側面部に対向する位置に設けられた導入光導光路121の照射光の光出射面から放出される。なお、導入光導光路121において、照射光導入端123から流路FEの側面部に至る途中には検体を励起する波長成分以外をカットするフィルタが設けられているので、流路FE内部のバッファー液(PBS)により希釈された検体溶液は、導入光導光路121の照射光の光出射面から放出される光により励起される。
励起検体からの蛍光は、観測光として観測光導光路128により、フィルタ127,129、内蔵カメラ導光穴82をこの順に経由するように導光されてタブレット端末73の内蔵カメラ75に入射し、当該内蔵カメラ75により検出される。
なお、観測光導光路128において、流路FEの側面部から内蔵カメラ導光穴82に至る途中には、検体からの光(蛍光)以外のノイズ光をカットするフィルタ127,129(ノッチフィルタ、吸収フィルタ)が設けられている。
〔第5の実施例の変形例〕
上記した第5の実施例の分析装置においては、光分析手段やピエゾポンプ109,110等の送液手段が組み込まれたマイクロチップ131に内蔵させるものであるが、図17に示すように、マイクロチップ131を光分析手段やピエゾポンプ109,110等の送液手段が組み込まれた検体光測定用チップ147と外部光源内蔵チップ145とに分割して両者が積み重ねる構造とし、外部光源を上記外部光源内蔵チップ145に内蔵させるようにしてもよい。
この場合、図16に示すマイクロチップ側給電モジュール139は、例えば、図17(a)に示すように外部光源内蔵チップ145の側面部に装着される。マイクロチップ側給電モジュール139の装着面には、固定用凸部115や複数の給電用端子117等の突出部が形成される。一方、これらの突出部に対応した陥没部119が外部光源内蔵チップ145の側面部に設けられる。上記突出部と陥没部119とを勘合することにより、マイクロチップ側給電モジュール139は外部光源内蔵チップ145に脱着可能に装着される。
図17(a)には、外部光源内蔵チップ145に1つの外部光源が内蔵されている例が示されている。外部光源は、例えば、LED11からなる。LED11からは、マイクロチップ131の流路に導入された検体を含む流体への照射光として最適な波長であり、かつ光強度が十分な光が放出される。
図17(a)のA−A断面図である図17(b)に示すように、LED11からは図17の上方向に光が放出される。放出光は、外部光源内蔵チップ145の内部、検体光測定用チップ147の内部を通過して、検体を光測定するための光導入部である照射光導入穴149に照射される。
図17(b)に示すように、照射光導入穴149は、検体光測定用チップ147において、外部光源内蔵チップ145との接触面と反対側の面(以下、検体光測定用チップ上面ともいう)に設けてあり、この照射光導入穴149の底面には、検体光測定用チップ上面に対して傾斜している斜面が設けてある。
検体光測定用チップ147はPDMS等のシリコーン樹脂からなる。一般に、シリコーン樹脂の屈折率は大気の屈折率より大きい。よって、大気に対する検体光測定用チップ147(シリコーン樹脂)の臨界角以上の入射角で外部光源内蔵チップ145からの光が斜面を形成する照射光導入穴149の底面に入射すると、当該光は上記底面により全反射される。斜面の角度を適切に設定することにより、外部光源内蔵チップ145から図17の上方向に放出される光は、上記斜面により横方向に折り返される。
ここで、照射光導入穴149に設けられる斜面は、図17(b)に示すように、斜面に照射され折り返される光が検体光測定用チップ147に設けられたコリメータレンズ141に照射されるように形成されている。検体光測定用チップ147において、コリメータレンズ141の光出射側には、コリメータレンズ141に近い側から集光レンズ143、導入光導光路121が設けられている。外部光源内蔵チップ145に内蔵されたLED11からの放出光は、照射光導入穴149に設けられる斜面に折り返されてコリメータレンズ141に入射してコリメートされ、集光レンズ143に入射する。集光レンズ143に入射した光はマイクロチップ内部を進行し、導入光導光路121の光入射面である照射光導入端123に集光される。
図17(a)のB−B断面図である図17(c)や検体光測定用チップ147の上面図である図17(d)に示すように、外部光源内蔵チップ145には、検体光測定用チップ147側に突出した複数の給電用端子が設けられている。一方、検体光測定用チップ147には、この給電用端子に対応した陥没部119が設けられている。
外部光源内蔵チップ145にマイクロチップ側給電モジュール139が装着された際、外部光源内蔵チップ145の複数の給電用端子117はマイクロチップ側給電モジュール139から突出している給電用端子117の一部と給電用配線を介して電気的に接続されるように構成されている。なお、マイクロチップ側給電モジュール139から突出している給電用端子117の残りは、外部光源であるLED11の給電用配線と電気的に接続される。
すなわち、第6の実施例においては、外部光源内蔵チップ145に内蔵された外部光源とマイクロチップ側給電モジュール139とで外部光源モジュールを構成する。
また、外部光源内蔵チップ145に検体光測定用チップ147が積み重ねられた際には、外部光源内蔵チップ145から検体光測定用チップ147側に突出した複数の給電用端子117は、検体光測定用チップ147の陥没部119に勘合し、検体光測定用チップ147に設けられているポンプ給電用配線125に電気的に接続される。
ポンプ給電用配線125は、第4の実施例と同様、ポートA,ポートBに設けられたピエゾポンプ109,110(図14参照)に接続されている。
上記した実施例の分析装置は、発明者らが考案した光分析装置(例えば、特願2013−035581参照)において、マイクロチップに照射する照射光としてタブレット端末のディスプレイから放出される光を用いる代わりに、外部光源から放出される光を照射するものである。
外部光源としては、例えば、LEDやLDを使用することが可能であり、これらの外部光源から放出される光の強度や分光特性を適切に選択することにより、マイクロチップの流路に導入された検体の反応を観測するのに適した特定波長の光を、観測に適した光強度で利用することが可能となる。また外部光源から放出される光の特性(パルス光、コヒーレント光等)を適切に選択することにより、マイクロチップの流路に導入された検体の反応を観測するのに適した性質の光を利用することが可能となる。
ここで、外部光源は、タブレット端末のディスプレイから放出される光の代替光源として使用する場合のみならず、ディスプレイからの放出光と同時に使用される場合もある。例えば、マイクロチップに導入された検体を含む流体にディスプレイから放出される光(可視光)を照射して、当該光を検体を含む流体に吸収させ、この検体を含む流体から光を放出させる場合、上記検体を含む流体に、別途第2の光(紫外光)を照射することにより、上記検体を含む流体におけるディスプレイから放出される光(可視光)の吸収が変化することがある。
すなわち、外部光源は、上記第2の光を放出する光源として使用される場合がある。
図18は、光処理装置150の概略図であり、発明者らが考案した光分析装置の特許出願(特願2013−035581)における第4の実施例(図11)に、第2の光源としての外部光源(給電モジュール113、外部光源モジュール111)、外部光源からの光を導く第2の導入光導光路151を設けたものである。
ディスプレイ15から放出される放出光の採光手段153等は特願2013−035581に記載されているので、詳細な説明は省略するが、上記ディスプレイ15から放出される放出光は、採光手段153により採光され、駆動エアポンプ(光駆動マイクロポンプ85)が設けられたポートA、ポートBに導光される。採光手段153は、液晶光コリメータマイクロレンズアレイ(コリメータレンズアレイ155)、コリメータレンズアレイ155から出射される光を折り返してマイクロチップ内部を進行するように上記光の光路を変更する光路変更穴157、平面テーパ導光路159からなる。
また、ディスプレイ15から放出される光は、照射光導入穴77よりマイクロチップ161に入射し、導入光導入路121によって導光され、マイクロチップ161に導入された検体を含む流体に照射される。
ディスプレイ15からの放出光により、光駆動エアポンプ85が駆動されるとともに、マイクロチップ161に導入された検体を含む流体に上記放出光が照射され、この検体を含む流体から放出される光を検出するが、これについては、特願2013−035581に記載されているので、説明を省略する。
〕
一方、図18に示す外部光源の構成は、図11に示す第4の実施例のものと同様であり、外部光源がマイクロチップ161と脱着可能に構成され、タブレット端末73等の処理装置から外部光源に対して給電される。
すなわち、外部光源モジュール111へ電力を供給する給電モジュール113の構成例は、図12と同様であり、例えば、USB端子である給電用端子を有する。このUSB端子を、処理装置であるタブレット端末73のUSBポート(給電用ポート)に装着することにより、タブレット端末73から給電モジュール113への給電が可能となる。上記給電モジュール113からは、上記外部光源モジュール111へ給電するための給電線が設けられる。なお、給電モジュール113は、第4の実施例のようなピエゾポンプへの給電は行わないので、図18に示すように、ピエゾポンプへの給電線は省略される。
また、外部光源モジュール111の構成例は、図13と同様であり、例えば、マイクロチップ161の側面部に装着される。外部光源モジュール111の装着面には、固定用凸部や複数の給電用端子等の突出部が形成される。一方、これらの突出部に対応した陥没部がマイクロチップ161の側面部に設けられる。上記突出部と陥没部とを勘合することにより、外部光源モジュール111はマイクロチップ161に脱着可能に装着される。
外部光源モジュール111は、内部に1つの光源を有し、光源は、例えば、紫外線を放出するLEDからなる。
図13に示すように、LEDの光放出側には集光用穴部が設けられ、この集光用穴部にはLEDに近い側からコリメータレンズ、集光レンズが順に設けられている。
LEDからの放出光は、コリメータレンズに入射してコリメートされ、集光レンズに入射する。集光レンズに入射した光は、マイクロチップ内部を進行し、図18に示す第2の導入光導光路151の光入射面である第2の照射光導入端163に集光される。
なお、上記突出部と陥没部との位置関係は、外部光源(LED)から放出される光が照射光導入端に入射するように設定されている。
第2の導入光導光路151は、外部光源モジュール111から放出される光を導光するものであり、第2の導入光導光路151の光出射部は、流路FEにおいて、デイスプレイ15からの放出光が照射される領域に第2の光(外部光源からの光)が照射されるような位置に設けられる。第2の導入光導光路151はシリコーン樹脂等の材料で構成される。当該第2の導入光導光路151を構成する材料としては、その屈折率がマイクロチップを構成する材料(例えば、シリコーン樹脂)の屈折率や大気の屈折率より大きく、ディスプレイ15からの放出光が透過可能なものが選択される。
第2の照射光導入端163から第2の導入光導光路151に入射する放射光は、集光後拡散する拡散光であるので放出光の一部は、光出射面に到達する前に第2の導入光導光路151の上下面、左右側面に入射する。ここで、第2の導入光導光路151の屈折率はマイクロチップ161の屈折率、空気の屈折率より大きいので、第2の導入光導光路151の上下面、左右側面へ入射する光の入射角が第2の導入光導光路151の臨界角以上である場合、第2の導入光導光路151の上下面、左右側面へ入射した光は全反射され、光出射面に進行する。
すなわち、第2の導入光導光路151は、外部光源からの放出光を流路FE内の検体溶液まで当該検体の照射光として導光する導光路として機能する。
このように、実施例7によれば、ディスプレイ15からの放出光による光分析の際、第2の光を外部光源からマイクロチップ161に導入された検体を含む流体に照射することが可能となる。
上記した実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7に示す分析装置に用いられるタブレット端末73は内蔵カメラ75が搭載されており、当該内蔵カメラ75により観測光が検出され、タブレット端末73に内蔵されている制御部72により上記検出情報が演算処理される。
一方、実施例8に示す分析装置に用いられるタブレット端末165は内蔵カメラが搭載されておらず、検体からの観測光を目視にて観測するものである。
図19は、光処理装置164の概略図であり、図5に示す第3の実施例における分析装置において、内蔵カメラ、内蔵カメラ導光穴、集光穴を省略し、第3のレンズ167、観測穴169を設けたものである。
また、図20は、光処理装置170の概略図であり、図11に示す第4の実施例における分析装置において、内蔵カメラ、内蔵カメラ導光穴を省略し、観測穴を設けたものである。
図19において、流路FEの流路間で光分析を実施する光分析手段は、照射光導入穴77、第1のレンズ89、第2のレンズ91、2つの平行光フィルタ(第1の平行光フィルタ92、第2の平行光フィルタ93)、フィルタ94、第3のレンズ167、観測穴169からなる。
第1のレンズ89、第2のレンズ91、2つの平行光フィルタ(第1の平行光フィルタ92、第2の平行光フィルタ93)、フィルタ94の構造、機能は、第1の実施例と同じであるので、ここでは説明を省略する。
第3のレンズ167は、マイクロチップ166の内部に設けられた空洞として構成され、放出光の光入射面、出射面は凹面となっている。この光入射面および出射面の凹面形状は、第3のレンズ167を通過した光が観測穴169に入射して、当該観測穴内部で集光されるように設定される。
観測穴169には、例えば、所定の波長の観測光が照射されると発光する色素等が埋め込まれており、目視にて検体の分析結果を確認できる。
一方、図20において、流路FEの流路間で光分析を実施する光分析手段は、照射光導入穴、フィルタ126、導入光導光路121、観測光導光路175、フィルタ127、フィルタ129、観測穴171からなる。励起光導入穴、フィルタ126、導入光導光路121、観測光導光路175、フィルタ127、フィルタ129の構造、機能は、第2の実施例と同じであるので、ここでは説明を省略する。
観測穴171には、観測光導光路175からの観測光が導光される。観測穴171は、上記したように、例えば、所定の波長の観測光が照射されると発光する色素等が埋め込まれており、目視にて検体の分析結果を確認できる。
第5の実施例の分析装置によれば、分析結果を目視にて確認できる光分析に対応することが可能となり、内蔵カメラを必要としない分、第3、第4の実施例の分析装置よりも安価に構成することが可能となる。
なお、上記実施例3,4,5においては、一つのマイクロチップに種々の機能を組み込む場合について説明したが、例えば、光分析手段を備えたマイクロチップ、光駆動エアポンプを備えたマイクロチップ等を用意し、これらを積層したり並列配置し、上記実施例3,4,5に示した機能を有するマイクロチップを構成するようにしてもよい。
〔実施例3,4,5,6,7,8の変形例〕
上記した実施例3,4,5,6,7,8に示したマイクロチップにおいて、マイクロチップ内にフィルタ機能等を有する前処理モジュールを組み込んでもよい。前処理モジュールとしては、例えば特許文献3,4,5等に記載される、ピラー構造を有する分離処理用フィルター(血球、血漿の分離)や、固体や粒子の捕捉分離フィルタ等が考えられる。前処理モジュールは、検体を含む流体から光照射対象でない非検体物質(例えば、上記した血球、血漿や光照射対象ではない固体や粒子)を分離する。
図21(a)(b)に、図5に示したマイクロチップに前処理フィルタを組み込んだ例を示す。同図は、光処理装置176の概略図であり、ポートBとマイクロ流路83の交差部分Fの間に、図21(b)に示すピラー構造により血球、血漿等の分離処理を行う前処理フィルタを設けた場合を示しており、前処理フィルタ177を設けることにより、ポートBから交差部分Fに送出される液体から血球、血漿等を分離する等の前処理を行うことができる。
なお、同図では、前記実施例3に前処理フィルタ177を設けた場合を示したが、前記第4、第5の実施例に示したものに前処理フィルタ177を設けてもよい。
また、図21では前処理フィルタ177をマイクロチップ179に組み込む場合について示したが、前処理フィルタ機能177を有するチップを予め用意し、前記実施例3等に示したマイクロチップと積層したり並列配置して流路を連結し、前処理機能を付加するようにしてもよい。