前記課題を解決するためになされた第1の発明は、撮像領域を照明しながら被写体を撮像する撮像装置であって、赤外光を発光する第1の照明手段と、この第1の照明手段を挟んで配置されて赤外光を発光する第2の照明手段と、を少なくとも含む照明部と、この照明部の出力を制御する出力制御手段と、を備え、前記第1の照明手段は、前記撮像領域の中心部を照明するように第1の出射角度範囲で光を出射する配光特性に設定され、前記第2の照明手段は、前記撮像領域の中心部より外側にずれた領域を照明するように前記第1の出射角度範囲よりずれた第2の出射角度範囲で光を出射する配光特性に設定され、前記出力制御手段は、前記被写体までの距離が短い場合には、前記第1の照明手段に対して消灯を含む出力制限を行う構成とする。
これによると、被写体までの距離が大きく異なる場合でも、撮像領域に対応する必要照明領域を適切な照度で照明するとともに必要照明領域外の無駄な照明を抑えることができる。特に、被写体までの距離が短い場合に、第1の照明手段に対して出力制限を行うことにより、必要照明領域の中心部での照度が過度になることを避けることができる。これにより、防犯や監視の目的で撮像装置を設置する場合に、近距離の位置で必要照度を満足するように出力を低く抑えることで、照明領域内の人物から照明光が見えにくくなり、秘匿性を確保することができる。
また、第2の発明は、前記照明部は、赤外光を発光する第3の照明手段をさらに含み、前記第1の照明手段は前記第3の照明手段を挟んで配置され、前記第3の照明手段は前記第1の照明手段より前記外側にずれた領域を照明し、前記第2の照明手段は前記第3の照明手段より前記外側にずれた領域を照明し、前記出力制御手段は、前記被写体までの距離が短い場合には、前記第1の照明手段を前記第3の照明手段以下の出力で点灯し、前記被写体までの距離が長い場合には、前記第1の照明手段を前記第3の照明手段と同様に点灯する構成とする。
また、第3の発明は、前記照明部は、赤外光を発光する第3の照明手段をさらに含み、前記第1の照明手段は前記第3の照明手段を挟んで配置され、前記第3の照明手段は前記第1の照明手段より前記外側にずれた領域を照明し、前記第2の照明手段は前記第3の照明手段より前記外側にずれた領域を照明し、前記出力制御手段は、前記被写体までの距離が短い場合には、前記第3の照明手段を前記第2の点灯手段よりも出力制限して点灯し、前記被写体までの距離が長い場合には、前記第3の照明手段を前記第2の点灯手段と同様に点灯する構成とする。
第2,3の発明によると、照明領域内の人物から照明光が見えにくくなり、秘匿性を確保することができるとともに、必要照明領域の中心部での照度が過度になることを避けながら、必要照明領域の全体に渡って必要照度を満足することができる。
また、第4の発明は、前記出力制御手段は、前記被写体までの距離について、第1の距離およびこれより短い第2の距離により、近距離、中距離および遠距離の3通りに場合分けして、前記照明部の出力を制御する構成とする。
これによると、3通りの場合分けで済むため、ユーザが選択する場合の煩わしさを解消することができ、また、実用上十分な程度で、必要照明領域を適切な照度で照明するとともに必要照明領域外の無駄な照明を抑えることができる。
また、第5の発明は、前記出力制御手段は、前記近距離の場合には、前記第1の照明手段を消灯するとともに前記第2の照明手段を点灯し、前記中距離の場合には、前記第2の照明手段を点灯するとともに前記第1の照明手段を前記第2の照明手段よりも出力制限して点灯し、前記遠距離の場合には、前記第1の照明手段および前記第2の照明手段の双方を点灯する構成とする。
これによると、近距離、中距離および遠距離のいずれの場合でも、必要照明領域を適切な照度で照明するとともに必要照明領域外の無駄な照明を抑えることができる。
また、第6の発明は、前記出力制御手段は、前記近距離および前記中距離の場合には、前記第3の照明手段を前記第2の照明手段よりも出力制限して点灯し、前記遠距離の場合には、前記第3の照明手段を前記第2の照明手段と同様に点灯する構成とする。
また、第7の発明は、前記出力制御手段は、前記中距離および前記遠距離の場合には、前記第1の照明手段を前記第3の照明手段と同様に点灯する構成とする。
また、第8の発明は、前記第3の照明手段は、前記第1の出射角度範囲と前記第2の出射角度範囲との間の第3の出射角度範囲で光を出射する構成とする。
また、第9の発明は、前記照明部は、赤外光を発光する第4の照明手段をさらに含み、前記第4の照明手段は前記第2の照明手段の少なくとも一部を挟んで配置され、前記第2の照明手段より前記外側にずれた領域を照明し、前記出力制御手段は、前記被写体までの距離が短い場合には、前記第4の照明手段を前記第2の点灯手段と同様に点灯し、前記被写体までの距離が長い場合には、前記第4の照明手段に対して消灯を含む出力制限を行う構成とする。
また、第10の発明は、前記照明部は、赤外光を発光する第4の照明手段をさらに含み、前記第4の照明手段は前記第2の照明手段の少なくとも一部を挟んで配置され、前記第2の照明手段より前記外側にずれた領域を照明し、前記出力制御手段は、前記近距離および前記中距離の場合には、前記第4の照明手段を前記第2の点灯手段と同様に点灯し、前記遠距離の場合には、前記第4の照明手段に対して消灯を含む出力制限を行う構成とする。
第9,10の発明によると、遠距離の位置で、必要照明領域の外にいる人物から照明光が見えなくなり、秘匿性を確保することができる。
また、第11の発明は、前記第4の照明手段は、前記第1の出射角度範囲〜前記第3の出射角度範囲のいずれよりも大きい第4の出射角度範囲で光を出射する構成とする。
また、第12の発明は、前記照明手段の各々は、光源と、この光源から放射される光を集光するレンズとを有し、前記第1の照明手段では、前記光源および前記レンズが、前記光源の光軸と前記レンズの中心軸とが第1のずれ量をもって相対的にずれた状態で配置され、前記第2の照明手段では、前記光源および前記レンズが、前記光源の光軸と前記レンズの中心軸とが前記第1のずれ量より大きな第2のずれ量をもって相対的にずれた状態で配置された構成とする。
これによると、光源の光軸とレンズの中心軸とを相対的にずらすことで、レンズの断面形状を変更することなく、出射角度範囲を変えることができ、これにより製造が容易になり、製造コストを低く抑えることができる。
また、第13の発明は、前記レンズは、一定の間隔をおいて複数配置され、前記光源は、前記レンズの中心軸に対して光軸がずれた状態で複数配置された構成とする。
これによると、レンズに比較して光源は寸法が小さくなるため、レンズの幅内で光源をずらせばよく、これにより複数のレンズを密接して配置することができるため、装置の小型化を図ることができる。
また、第14の発明は、前記被写体までの距離を測定する測距部をさらに備え、前記出力制御手段は、前記測距部で取得した距離に基づいて前記照明部の出力を制御する構成とする。
これによると、ユーザが測定器具を用いて距離を測定する手間や、測定距離に対応する制御を行うように撮像装置に対して必要な入力操作を行う手間を省くことができるため、ユーザの利便性が向上する。
また、第15の発明は、赤外光を発光する第1の照明手段と、この第1の照明手段を挟んで配置され赤外光を発光する第2の照明手段と、を少なくとも含む照明部を備え、前記第1の照明手段は、撮像領域の中心部を照明するように第1の出射角度範囲で光を出射する配光特性に設定され、前記第2の照明手段は、前記撮像領域の中心部より外側にずれた領域を照明するように前記第1の出射角度範囲よりずれた第2の出射角度範囲で光を出射する配光特性に設定された撮像装置の制御方法であって、前記被写体までの距離が短い場合には、前記第1の照明手段に対して消灯を含む出力制限を行う構成とする。
これによると、被写体までの距離が大きく異なる場合でも、撮像領域に対応する必要照明領域を適切な照度で照明するとともに必要照明領域外の無駄な照明を抑えることができる。特に、被写体までの距離が短い場合に、第1の照明手段に対して出力制限を行うことにより、必要照明領域の中心部での照度が過度になることを避けることができる。これにより、防犯や監視の目的で撮像装置を設置する場合に、近距離の位置で必要照度を満足するように出力を低く抑えることで、照明領域内の人物から照明光が見えにくくなり、秘匿性を確保することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る撮像装置1を示す斜視図である。撮像装置1は、被写体を撮像する撮像部2と、被写体を照明する照明部3と、撮像部2および照明部3を収容する筐体4と、を備えている。筐体4は、有底の箱状をなし、その上側開放部が上カバー5で覆われ、さらにその上側に日よけ6が設けられている。筐体4の前面側には、カバーガラスにより構成される撮像窓7および照明窓8が横方向に並べて設けられており、照明部3が発する照明光が照明窓8を介して出射され、被写体からの光が撮像窓7を介して撮像部2に入射する。
図2は、撮像装置1の設置状況を示す側面図である。撮像装置1は、支柱11に支持された状態で所要の高さ(例えば2m〜5m)に設置され、防犯や監視などの目的で道路や建物の敷地上に存在する人物や車両などの被写体を撮像する。撮像装置1の照明部3には、赤外光を発光する光源が用いられており、これにより人物に気づかれることなく撮像することができ、景観を害することもなく、特に透過性に優れた近赤外光を発光する光源を用いることで、降雨や霧の影響を受けることなく撮像することができる。
また、この撮像装置1は、撮像装置1から被写体までの投光距離に応じて照明モードを切り替えて使用される。特に本実施形態では、第1の距離(例えば15m)とこれより短い第2の距離(例えば10m)とにより、近距離(例えば5m〜10m)、中距離(例えば10m〜15m)、および遠距離(例えば15m〜30m)の3通りに場合分けされ、投光距離に応じて対応する照明モードが選択される。
この照明モードの設定は、装置の据え付け時に行われ、また、撮像位置を変更する際に行われ、撮像装置1から被写体までの投光距離を適宜な測定器具を用いて測定し、その測定距離に応じてユーザが照明モードを選択設定する。
なお、図1に示した撮像装置1の筐体4内には、撮像部2および照明部3の他に、撮像部2および照明部3を駆動する制御基板(図示せず)が収容され、この他に、外部の装置との間での通信に必要となるインタフェイス24,25(図3参照)や、ユーザによる各種の入力操作が行われる入力操作部26(図3参照)が設けられるコントローラ12が、図2に示したように、筐体4とは別体で設けられている。このコントローラ12はユーザが作業しやすいように地上近くに設置され、ケーブル13を介して筐体4内の制御基板に接続される。
図3は、撮像装置1のブロック構成図である。撮像装置1は、前記の撮像部2および照明部3と、照明部3を駆動する駆動部21と、撮像部2での撮像により得られた画像データを記憶する記憶部(メモリ)22と、画像データの暗号化および符号化を行う暗号化/符号化部23と、ネットワーク(インターネットなど)を介したデータの送受信を行う出力インタフェイス24および入力インタフェイス25と、ユーザによる各種の入力操作が行われる入力操作部26と、各部を総括的に制御する制御部27と、を有している。
制御部27は、プログラムが格納されるROMと、プログラムを実行するCPUと、ワーク領域として使用されるRAMと、例えば撮像部2に対する制御信号を生成するタイミングジェネレータとを有している。
照明部3は、光源31と、レンズ32とで構成される複数の発光部33a〜33dを有している。光源31は、赤外光(例えば近赤外光)を発光する赤外LEDである。レンズ32は、光源31から放射される光を集光する集光レンズ(例えばコリメートレンズ)である。発光部33a〜33dは、4つの照明グループA〜Dにグループ分けされている。駆動部21は、発光部33a〜33dの光源31を駆動する駆動回路34を有している。この駆動回路34は、発光部33a〜33dの4つの照明グループA〜Dごとに設けられた定電流電源であり、4つの照明グループA〜D単位で光源31が制御される。
光源31は、駆動回路34から印加される駆動電流値を増減することで出力(発光輝度)を変更することができる。各駆動回路34は、図示しないDA変換器を有しており、制御部(出力制御手段)27のCPUから出力される駆動制御信号(ディジタル値)に基づいて駆動電流を出力する。駆動電流値は、駆動制御信号に応じて所定のステップ数(例えば0〜255)で変更することができ、この駆動電流値を増減することで光源31の出力(発光輝度)が制御される。また、制御部27では、タイミングジェネレータから所定時間幅のパルス信号を出力しており、各駆動回路34はパルス信号のONデューティ時間だけ光源31を駆動する。即ち本実施形態では、光源31としてのLEDはPWM駆動されている。そして光源31が点灯、消灯されるタイミングは、照明グループA〜Dで同一とされ、例えば照明グループA〜Dの全てを点灯させる場合には、各照明グループ間で光源31は同期して点灯と消灯を繰り返す。この間欠駆動によって、瞬間的に非常に高輝度な発光が得られる。そして、各光源31が点灯する期間(ONデューティ期間)は、後述のイメージセンサ35の露光期間に含まれるようにタイミングジェネレータによって制御される。
撮像部2は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型のイメージセンサ35を備えている。上述したように、光源31のパルス発光は周期的に行われるから、CMOSを構成する各画素の露光タイミング(期間長)を同一とすべくグローバルシャッタ方式が採用されている。このイメージセンサ35は、所要のフレームレート(例えば30fps)で画像データを出力し、この画像データはAD変換器36でディジタル化されて、画像処理部37で例えばγ補正等の通常のモノクロ画像に対する画像処理を施された後、単色画像データとして記憶部22に一時的に記憶される。なお、撮像部2は、照明部3から出射される赤外光で照明された被写体からの反射光を捉えるため、いわゆるIRカットフィルタを備えていない。
記憶部22に記憶された画像データは制御部27のCPUから直接的に参照することができ、特に制御部27のCPUは特定のメモリ領域(つまり画像の一部)に強制的にデータを書き込めるようになっており、例えば、撮像装置1の識別情報や撮像時刻等の情報を画像に直接的にマージすることができる。
暗号化/符号化部23では、記憶部22に記憶された画像データを出力インタフェイス24からネットワークに送出する際に必要となる暗号化および符号化が行われる。この暗号化および符号化では、TCP/IPに対応したパケット信号への変換などの処理が行われる。暗号化/符号化部23から出力された画像データは、出力インタフェイス24からネットワークを介して遠隔地にある外部装置に送信されて、その外部装置で画像を閲覧することができ、これにより遠隔監視が実現される。
また、外部装置からネットワークを介して撮像装置1の各種の動作を指示することができる。例えば、撮像部2では、画像データが動画または所定時間間隔で撮影された静止画として出力されるが、この動画または静止画を出力させる撮像モードが外部装置から指示される。外部装置からの動作指示信号は、ネットワークを介して入力インタフェイス25で受信され、この動作指示信号に基づいて制御部27が撮像部2を制御する。
また、撮像装置1自体に設けられた入力操作部26でも同様の動作指示を行うことができる。また、前記のように、撮像装置1の据え付け時には、近距離、中距離および遠距離の照明モードを設定する操作が行われるが、この照明モードの設定が入力操作部26で行われる。この操作に応じて制御部が駆動部21を制御する。
なお、ここでは、画像データがネットワークを介して遠隔地にある外部装置に送信されるようにしたが、撮像装置1又はコントローラ12が記録メディアを読み書きするリーダライタを備え、記録メディアに画像データを記憶させて、PCなどの画像再生装置で記録メディアから画像データを読み出して画像を閲覧することができるようにしてもよい。また、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等のいわゆる大容量ストレージ装置を備え、これに記録するようにしてもよい。
図4は、撮像装置1の正面図である。この図4では、図1において照明部3の前面に設けられる照明窓8を構成するカバーガラスを省略して示している。照明部3は、第1の照明ユニット41と、第2の照明ユニット42とを有している。
図5は、照明部3の正面図である。第1,第2の各照明ユニット41,42には、発光部33a〜33dを構成する光源31が2次元的に複数配列されており、レンズ32も光源31の各々に対応して2次元的に複数配列されている。特にここでは、光源31およびレンズ32が、X軸方向に5個、Y軸方向に7個並べて、合計35個配置されている。なお、以降の説明において、X軸の矢印方向を+、その逆を−と定義して説明する。
図6は、照明ユニット41,42の側面図である。光源31は、表面実装型の面発光赤外LEDであり、光源基板45上に配置されている。レンズ32は、アクリル樹脂(PMMA)などの光透過性材料にて一体成形されてレンズアレイ(レンズ集合体)46を構成している。レンズ32は全て、光軸C2について点対称で、同一の断面形状に形成された非球面レンズである。
図示するように光源31の光出射側はドーム形状をなしており、特定の配光特性を持つ。レンズ32はこの光源31の配光特性を考慮した上で、最終的に投光距離が遠方になるほど照射範囲が広がる特性とされている。具体的には、光源31の光軸とレンズ32の光軸を一致させた場合には、撮像装置1から30mの距離において、1つの光源31の発光領域(約1mm×1mm)が、約5m×5mに拡大するような配光特性を有している。そして光源31から出射された光は、照射領域で重なり合って(正確には、個々の光源31について配置ピッチP(図8参照)だけずれている)1つの光スポットを形成する。なお、配光特性とは、照明による光度の分布であって、主に出射角度範囲によって制御が可能である。
光源基板45およびレンズアレイ46は、ブラケット47に固定されて一体化されており、特にここでは、ビス48により締結される。光源基板45とレンズアレイ46との間にはスペーサ49が介装されており、これにより光源31とレンズ32とが一定の間隔に保持される。
図5に示したように、第1の照明ユニット41および第2の照明ユニット42では、発光部33a〜33d(光源31およびレンズ32)が配光特性に応じて4つの照明グループA〜Dにグループ分けされている。この配光特性に応じたグループ分けは、第1の照明ユニット41と第2の照明ユニット42とで左右対称となっている。以下に、発光部33a〜33dの配光特性について説明する。
図7は、第1の照明ユニット41の正面図である。図8は、第1の照明ユニット41を構成する光源基板45およびレンズアレイ46を別々に示す正面図である。なお、この図7,図8では、向かって左側に配置される第1の照明ユニット41のみを示すが、向かって右側に配置される第2の照明ユニット42は第1の照明ユニット41と左右対称に現れる。
図7に示すように、光源31およびレンズ32は、光源31の光軸(LEDの面発光部分(通常は正方形又は長方形)の対角線の交点を通る法線を指す)とレンズ32の中心軸(幾何光学的な中心軸)とが略平行な状態で、光源31の光軸とレンズ32の中心軸とが相対的にずれるようにオフセット配置されている。特に本実施形態では、レンズ32をX,Y方向に一定間隔Pで配置して、このレンズ32の中心軸に対して光軸がX方向にずれるように光源31が配置されている。すなわち、図8(B)に示すように、レンズアレイ46では、レンズ32が一定の間隔P(例えば12mm)で配置されており、図8(A)に示すように、光源基板45では、レンズ32の中心軸に対して光源31の光軸がずれるように光源31が配置されている。
このように光源31およびレンズ32は、光源31の光軸とレンズ32の中心軸とが相対的にずれるように配置されており、この光軸シフト幅(ずれ量)に応じて、光源31およびレンズ32からなる発光部33a〜33dの配光特性が異なるものとなる。
発光部33a〜33d(光源31およびレンズ32)は、光軸シフト幅(ずれ量)に応じて4つの照明グループA〜Dにグループ分けされている。最も内側の1列を構成する5個が照明グループB(第3の照明手段)となり、内側から数えて2列目から5列目までの各列を構成する20個が照明グループA(第1の照明手段)となり、外側から数えて2列目と最も外側の1列の一部を構成する7個が照明グループC(第2の照明手段)となり、最も外側の1列の一部を構成する3個が照明グループD(第4の照明手段)となる。
照明グループAの光軸シフト幅(第1のずれ量)SaはX軸方向に+0.2mm、照明グループBの光軸シフト幅(第3のずれ量)SbはX軸方向に+0.4mm、照明グループCの光軸シフト幅(第4のずれ量)ScはX軸方向に+0.9mm、照明グループDの光軸シフト幅(第2のずれ量)SdはX軸方向に+2.7mmにそれぞれ設定されている。なお、この光軸シフト幅は特に限定されるものではなく、光源31およびレンズ32の光学特性などに応じて適宜に設定すればよい。
ここで、光源31は互いに同一のものであり、光源31の駆動電流を同一とした場合は、照明グループA〜Dごとの光量は光源31の個数に応じて異なる。すなわち照明グループA(20個)が最も光量が大きく、照明グループC(7個)、照明グループB(5個)、照明グループD(3個)の順で光量が小さくなる。
なお、図5に示したように、照明グループA〜Dのグループ分けは、第1の照明ユニット41と第2の照明ユニット42とで左右対称となっており、向かって右側に配置される第2の照明ユニット42の光軸シフト幅Sa〜Sdは、図7,図8に示した第1の照明ユニット41と比較すると、同じ照明グループA〜D同士で正負が逆になり、例えば第2の照明ユニット42の照明グループAの光軸シフト幅SaはX軸方向に−0.4mmとなる。
また、本実施形態では、光軸シフト幅の比較的小さな照明グループB(光軸シフト幅Sb=0.4mm)を最も内側に配置しているが、これは、左右の照明ユニット41,42にそれぞれ設けられた照明グループBの光源31を単一の駆動回路で駆動させるためであり、左右の照明グループBを近接させることで配線を簡素化してコストを削減することができる。
図9は、照明グループA〜Dごとに発光部33a〜33d(光源31およびレンズ32)を示す断面図であり、図9(A)は照明グループA(光軸シフト幅Sa=0.2mm)を、図9(B)は照明グループB(光軸シフト幅Sb=0.4mm)を、図9(C)は照明グループC(光軸シフト幅Sc=0.9mm)を、図9(D)は照明グループD(光軸シフト幅Sd=2.7mm)をそれぞれ示す。
光源31およびレンズ32は、光源31の光軸C1とレンズ32の中心軸C2とが相対的にずれるように配置されており、光軸シフト幅(ずれ量)Sa〜Sdに応じてレンズ32から光が出射する出射角度範囲が変化し、照明グループA〜Dごとに出射角度範囲が異なる。この出射角度範囲は、直進方向(Z軸方向、光源31の光軸C1およびレンズ32の中心軸C2に平行となる方向)に対して、シフト方向(X軸正方向)と逆方向(X軸負方向)に傾き、この出射角度範囲の傾きは光軸シフト量Sa〜Sdが大きくなるのに応じて大きくなる。
具体的には、図9(A)に示すように、光軸シフト幅が最も小さい照明グループA(第1の照明手段、光軸シフト幅Sa=0.2mm)では、直進方向(Z軸方向)に近い出射角度範囲(第1の出射角度範囲)で光が出射される。一方、図9(D)に示すように、光軸シフト幅が最も大きい照明グループD(第4の照明手段、光軸シフト幅Sd=2.7mm)では、照明グループAの出射角度範囲より水平方向(X軸方向)の外側に大きくずれた出射角度範囲(第4の出射角度範囲)で光が出射される。
また、図9(B)に示すように、光軸シフト幅が比較的小さい照明グループB(第3の照明手段、光軸シフト幅Sb=0.4mm)では、照明グループAの出射角度範囲より直進方向に対する傾きが大きな出射角度範囲(第3の出射角度範囲)で光が出射される。また、図9(C)に示すように、光軸シフト幅が比較的大きい照明グループC(第2の照明手段、光軸シフト幅Sc=0.9mm)では、直進方向に対する傾きがさらに大きな出射角度範囲(第2の出射角度範囲)で光が出射される。
このように光源31およびレンズ32を、光源31の光軸とレンズ32の中心軸とが相対的にずれた状態で配置することで、レンズ32は、光源31から放射される光を集光する集光レンズとして機能する他に、出射角度範囲を変化させる光学素子として機能する。
各照明グループA〜Dでは、光軸シフト幅Sa〜Sdが大きくなるのに応じて、直進方向に対する出射角度範囲の傾きが大きくなり、この出射角度範囲の傾きに応じて、各照明グループA〜Dごとの被写体上の照明領域も水平方向(X軸方向)にずれる。このため、光軸シフト幅が最も小さい照明グループAは被写体の撮像領域の中心部を照明し、次に光軸シフト幅が大きい照明グループBは照明グループAより外側にずれた領域を照明し、次に光軸シフト幅が大きい照明グループCは照明グループBより外側にずれた領域を照明し、光軸シフト幅が最も大きい照明グループDは照明グループCより外側にずれた領域、すなわち最も外側の領域を照明する。
なお、ここで、撮像領域は、撮像部2により撮像される被写体の領域を示し、この撮像領域の中心部を照明グループAで照明することになるが、この照明グループAの照明領域は、撮像領域の中心位置に厳密に一致させる必要はなく、撮像領域の中心位置からずれた状態となる場合もある。また、所定の照度以上で照明する必要がある必要照明領域が撮像領域を含むように設定され、通常は、必要照明領域の中心部と撮像領域の中心部とが概ね一致するが、必要照明領域の中心位置と撮像領域の中心位置とを厳密に一致させる必要はなく、必要照明領域の中心位置と撮像領域の中心位置とがずれた状態となる場合もある。
図10は、第1の照明ユニット41の変形例を示す正面図である。図11は、図10に示した第1の照明ユニット41を構成する光源基板45およびレンズアレイ46を別々に示す正面図である。なお、この図10,図11では、向かって左側に配置される第1の照明ユニット41のみを示すが、向かって右側に配置される第2の照明ユニット42は第1の照明ユニット41と左右対称に現れる。
図7,図8に示した例では、レンズ32を一定間隔で配置して、このレンズ32の中心軸に対して光源31の光軸がずれるように光源31が配置された構成となっていたが、図10,図11に示す変形例では、光源31を一定間隔Pで配置して、この光源31の光軸に対してレンズ32の中心軸がずれるようにレンズ32が配置された構成となっている。
すなわち、図11(A)に示すように、光源基板45では、光源31が一定の間隔P(例えば12mm)で配置されており、図11(B)に示すように、レンズアレイ46では、光源31の光軸に対してレンズ32の中心軸が所定の光軸シフト幅Sa〜Sdをもって相対的にずれるようにレンズ32が配置されている。
ここで、図7,図8に示したように、一定間隔で配置されたレンズ32に対して光源31をずらして配置する構成では、一般に個々のレンズ32の直径よりも光源31のサイズが小さいことから、レンズアレイ46においてレンズ32を密接して配置して小型化を図ることができるが、図10,図11に示したように、一定間隔で配置された光源31に対してレンズ32をずらして配置する構成では、レンズ32を外側にずらすことで、隣接するレンズ32との間に隙間が生じるため、小型化が制限され、小型化を図る上では図7,図8に示した構成が有利である。
次に、光源31の出力制御について説明する。図3に示したように、光源31は駆動回路34から印加される駆動電流により駆動され、この駆動電流値に応じて光源31の出力(発光輝度)が制御される。ここで、最大の駆動電流値(最大定格)とすると、最大出力で光源31を点灯させることができ、最大の駆動電流値より駆動電流値を小さくすると、光源31の出力が制限され、駆動電流値を増減することで所要の割合で光源31の出力を制限することができる。
図12は、近距離、中距離および遠距離の各照明モードでの光源31の出力制御状況を示す説明図である。図13は、各照明グループA〜Dでの駆動電流値をグラフで示す説明図である。図14は、近距離、中距離および遠距離の各照明モードでの照度分布をグラフで示す説明図である。
本実施形態では、図2に示したように、撮像装置1から被写体までの投光距離が近距離、中距離および遠距離である場合にそれぞれ選択される3つの照明モードごとに光源31の出力制御が行われ、このとき、図12,図13に示すように、照明モードに応じて照明グループ単位で光源31の出力制御が行われる。
この光源31の出力制御では、最大の駆動電流値(第1の駆動電流値)Maxで光源31を点灯させる他に、光源31に駆動電流を印加しない、すなわち光源31を消灯したり、最大の駆動電流値Maxより小さい駆動電流値、特にここでは最大の駆動電流値Maxの1/2となる中間の駆動電流値(第2の駆動電流値)Midで光源31を点灯させる出力制限が行われる。最大の駆動電流値Maxおよび中間の駆動電流値Midはそれぞれ、電力に換算すると、例えば3.4Wおよび1.7Wとなる。
ここで、図12,図13に基づいて、光源31の出力制御状況を4つの照明グループA〜Dごとに説明する。
まず、照明グループA(第1の照明手段、光軸シフト幅Sa=0.2mm)では、近距離照明モードで光源31を消灯する出力制限が行われ、中距離照明モードで中間出力、すなわち中間の駆動電流値Midで光源31を点灯させる出力制限が行われる。一方、遠距離照明モードでは光源31の出力制限は行われず、最大出力、すなわち最大の駆動電流値Maxで光源31を点灯させる。
照明グループB(第3の照明手段、光軸シフト幅Sb=0.4mm)では、近距離および中距離の各照明モードで光源31の出力制限が行われるが、この照明グループBでは、照明グループAとは異なり、近距離および中距離の各照明モードともに中間出力、すなわち中間の駆動電流値Midで光源31を点灯させる出力制限が行われる。一方、遠距離照明モードでは、照明グループAと同様に、光源31の出力制限は行われず、最大出力、すなわち最大の駆動電流値Maxで光源31を点灯させる。
照明グループC(第2の照明手段、光軸シフト幅Sc=0.9mm)では、照明モードに関係なく最大出力、すなわち最大の駆動電流値Maxで光源31が点灯され、出力制限は行われない。
照明グループD(第4の照明手段、光軸シフト幅Sd=2.7mm)では、近距離および中距離の各照明モードともに最大出力、すなわち最大の駆動電流値Maxで光源31が点灯され、光源31の出力制限は行われない。一方、遠距離照明モードでは、光源31を消灯する出力制限が行われる。
なお、本実施形態では、上述したように光源31を駆動する電流値を複数段階に設定しておき、撮像装置から被写体までの距離に応じて駆動電量を選択する構成としたが、駆動電流を一定(例えば最大定格)としておき、距離に応じてPWM駆動のON期間を増減するように構成してもよい。少なくとも、光源31のON期間がグローバルシャッタ方式で駆動されるイメージセンサ35の露光期間に包含されれば、駆動電流を選択する場合と同等の作用効果が得られ、撮像される画像の明るさは同じになる。
次に、光源31の出力制御状況を近距離、中距離および遠距離の照明モードごとに説明する。
図9に示したように、各照明グループA〜Dでは、光軸シフト幅Sa〜Sdが大きくなるのに応じて、直進方向に対する出射角度範囲の傾きが大きくなり、これにより各照明グループA〜Dの被写体上の照明領域が水平方向(X軸負方向)にずれる。このため、図14に示すように、各照明グループA〜Dでは、被写体上の照度のピークが順に外側にずれた状態となる。
ここで、図12(A)に示したように、近距離照明モードでは、光軸シフト幅が最も小さい照明グループAで光源31を消灯する出力制限が行われ、光軸シフト幅が比較的小さい照明グループBで中間の駆動電流値Midで光源31を点灯させる出力制限が行われ、光軸シフト幅が大きい照明グループC,Dでは出力制限が行われない。
このように制御することで、近距離照明モードでは、図14(A)に示すように、照明グループBが必要照明領域の中心領域を照明し、照明グループCが照明グループBの照明領域より外側にずれた領域を照明し、照明グループDが必要照明領域の周辺領域を照明し、これにより必要照明領域の全体に渡って必要照度を満足することができる。
特に、光軸シフト幅が最も小さい照明グループAで光源31を消灯する出力制限を行うことにより、必要照明領域の中心部での照度が過度になることを避けることができる。また、光軸シフト幅が比較的小さい照明グループBは、照明領域の中心寄りの領域を照明するため、この照明グループBの駆動電流を小さくすることにより、必要照明領域の中心部での照度が過度になることを避けることができる。
また、図12(B)に示したように、中距離照明モードでは、光軸シフト幅が小さい照明グループA,Bで中間の駆動電流値Midで光源31を点灯させる出力制限が行われ、光軸シフト幅が大きい照明グループC,Dでは出力制限が行われない。
このように制御することで、中距離照明モードでは、図14(B)に示すように、照明グループAが必要照明領域の中心領域を照明し、照明グループBが照明グループAの照明領域より外側にずれた領域を照明し、照明グループCが照明グループBの照明領域より外側にずれた領域を照明し、照明グループDが必要照明領域の周辺領域を照明し、これにより必要照明領域の全体に渡って必要照度を満足することができる。
特に、光軸シフト幅が小さい照明グループA,Bは、必要照明領域の中心部およびその近傍の領域を照明するため、この照明グループA,Bの駆動電流を小さくすることにより、必要照明領域の中心部での照度が過度になることを避けることができる。
また、図12(C)に示したように、遠距離照明モードでは、光軸シフト幅が最も大きい照明グループDで光源31を消灯する出力制限が行われ、その他の照明グループA〜Cでは出力制限が行われない。
このように制御することで、図14(C)に示すように、照明グループAが必要照明領域の中心領域を照明し、照明グループBが照明グループAの照明領域より外側にずれた領域を照明し、照明グループCが照明領域の周辺領域を照明し、これにより必要照明領域の全体に渡って必要照度を満足することができる。
特に、光軸シフト幅が最も大きい照明グループDで光源31を消灯する出力制限を行うことにより、必要照明領域から外れた領域の無駄な照明を避けることができる。また、点灯させる全ての照明グループA〜Cで駆動電流を大きくすることで、遠距離での必要照明領域内の全体に渡って必要照度を確保することができる。
以上のように、本実施形態では、被写体までの距離が短い場合(近距離および中距離の照明モード)には、照明グループA(第1の照明手段)に対して出力制限を行い、被写体までの距離が長い場合(遠距離照明モード)には、照明グループD(第4の照明手段)に対して出力制限を行うため、被写体までの距離が大きく異なる場合でも、撮像領域に対応する必要照明領域を適切な照度で照明するとともに必要照明領域外の無駄な照明を抑えることができる。
すなわち、被写体までの距離が短い場合には、照明グループAに対して出力制限が行われるため、必要照明領域の中心部で照度が過度になることで撮像画像内に発生する白とびを抑えることができる。一方、被写体までの距離が長い場合には、照明グループDに対して出力制限が行われるため、必要照明領域外の無用な方向に光が拡散されることを抑制するとともに消費電力を低く抑えることができる。
ところで、防犯や監視の目的で撮像装置1を設置する場合には、秘匿性、すなわち撮像領域内に存在する人物に撮像装置1で監視されていることを気づかれないようにする必要があり、このために本実施形態では、光源31に赤外光を発するLEDが用いられている。さらに光源31には、降雨による影響を避けるためには透過性に優れた近赤外光を発するものが好適である。ところが、近赤外光を発するLEDでは、可視域に入る波長の光も僅かながら出射されるため、高出力の場合には、照明領域内の人物から照明光が僅かに赤く見えてしまい、秘匿性が低下する。
このような問題に対して、本実施形態では、前記のような光源31の出力制御を行うことで秘匿性を確保することができる。以下、秘匿性に関する本実施形態の意義について説明する。
図15は、従来構成および本実施形態による照明の状態を模式的に示す平面図であり、図15(A)に従来構成による場合を、図15(B−1),(B−2)に本実施形態による場合をそれぞれ示す。
ここで、撮像装置1,51は、防犯などの目的で道路や建物の敷地を撮像するものであり、撮像装置1,51から被写体までの距離に関係なく、撮像領域の横幅は一定であり、したがって必要照明領域の横幅も一定である。
図15(A)に示すように、従来構成による撮像装置51では、距離に応じた照明モードの切り替えが行われないため、近距離で実際の照明領域が必要照明領域を含むように広範囲に赤外光を照射し、かつ遠距離で必要照度を満足するように高出力で赤外光を照射する必要がある。このため、近距離では、照明領域内の人物から照明光がはっきりと赤く見えてしまい、また遠距離では、必要照明領域の外にいる人物からも照明光が見えてしまい、いずれにしても秘匿性を確保することができない。
一方、本実施形態による撮像装置1では、図15(B−1),(B−2)に示すように、距離に応じて照明モードを切り替える。これにより、図15(B−1)に示す近距離照明モードでは、近距離の位置で必要照度を満足するように出力を低く抑えることで、照明領域内の人物から照明光が見えにくくなり、秘匿性を確保することができる。また、図15(B−2)に示す遠距離照明モードでは、遠距離の位置で実際の照明領域が必要照明領域を満足するように照明領域を狭く制限するため、必要照明領域の外にいる人物から照明光が見えなくなり、秘匿性を確保することができる。
(第2実施形態)
前記の第1実施形態では、撮像装置1から被写体までの投光距離に応じてユーザが照明モードを手動で切り替えるものとしたが、以下に説明する第2実施形態では、投光距離を測定して、その測定距離に基づいて照明モードを自動的に設定するようにしている。なお、特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図16は、第2実施形態に係る撮像装置61のブロック構成図である。図17は、撮像装置61の正面図である。
図16に示すように、撮像装置61は、撮像装置61から被写体までの投光距離を測定する測距部62を備えている。この測距部62は、いわゆるTOF(Time of Flight)法に基づいて投光距離を計測するものであり、赤外線センサ63と、アンプ64と、比較器65と、D/A変換器66と、高速カウンタ67と、クロックジェネレータ68と、を有している。
赤外線センサ63は例えばフォトダイオードで構成されている。この赤外線センサ63は、図17に示すように、撮像装置61の前面側に撮像部2や照明部3と並んで設けられる。
図18は、撮像装置61による測距の状況を示す説明図であり、図18(A)に撮像装置1の背面側から見た状況を、図18(B)に撮像装置1の側方から見た状況をそれぞれ示す。
撮像装置61から被写体までの投光距離を測定する測距の処理は、例えば撮像装置61の設置時に一度行っておけばよいため、測距の際には、想定される被写体の位置にダミーの被写体を配置して計測することで精度を向上させることができる。図18の例では、被写体となる道路の路面上の照明領域の中心位置に、ダミーの被写体として反射板71を配置している。この反射板71は、例えば撮像装置から5m〜30mといった比較的広い範囲において任意位置に置かれるため、反射特性をなるべく一定にするため、例えばガラスビーズ等を利用した再帰性反射材で構成されていることが望ましい。
図19は、撮像装置61で行われる処理の手順を示すフロー図である。ここでは、撮像装置1から光を照射してから反射板71で反射された光が撮像装置1に入射するまでの時間を計測して、撮像装置1から反射板71までの距離を算出し、この距離に基づいて照明モードを選択する。
具体的には、まず、事前に、制御部27から比較器65に対して閾値レベル信号を出力して、反射光検出用の閾値レベルを設定する。そして、照明部3から測定用の赤外光を出射する(ST101)。なお、測定に際して、近距離〜遠距離照明モードのいずれにも対応させるため、全ての光源31を最大光量で点灯するとよい。ここでは、制御部27が、高速カウンタ67のカウント値をリセットすると共に、4つの照明グループA〜Dのいずかの光源31、例えば照明グループA(光軸シフト幅=0.2mm)の光源31を駆動して所定時間幅を有する光パルスを出力する。ここで、リセットされた高速カウンタ67は、クロックジェネレータ68から出力される1GHz(1周期は1ns)のクロック信号に基づきカウントアップを行う。
そして、照明部3から出射された赤外光(光パルス)は、反射板71で反射されて赤外線センサ63に入射し、測距部62において反射赤外光が入射したことが検知される(ST102)。このとき、赤外線センサ63の出力が図示しないオペアンプによってオフセット成分を除去された後にアンプ64によって増幅されてアナログレベル信号が生成される。このアナログレベル信号は比較器65で閾値レベルと比較され、アナログレベル信号が閾値レベルを上回ると、比較器65は検出信号を高速カウンタ67及び制御部27に出力する。検出信号を受信した高速カウンタ67は、その時点のカウント値を図示しないレジスタにキャプチャする。一方、制御部27に入力される検出信号は、CPUに対する割り込み信号(IRQ)として機能し、割り込み信号に基づきCPUは高速カウンタのレジスタにアクセスしてカウント値を取得する。
ついで、制御部27においてカウント値に基づいて反射板71までの距離が算出される(ST103)。このとき、制御部27のCPUが、光速C(300×106[m/s])と、カウント値Nに基づき、次のようにして距離を計算する。
300×106[m/s]×10−9×N/2=0.15×N[m]
ここでは、カウント周波数を1G(1×109)[Hz](周期=1×109[s]=1[ns])としている。また、カウント値Nを2で除するのは、測定された距離は往復分であるから、これを片道分にするためである。これにより、1G[Hz]のクロックを用いれば、15cmの精度で想定被写体位置までの距離を計測できることになる。
ついで、制御部27において、測定された距離に基づく照明モードの判定が行われる(ST104)。ここでは、測定された距離を所定のしきい値と比較することで照明モードが決定される。本実施形態では、近距離、中距離および遠距離の3つの照明モードがあり、したがって中距離と遠距離とを区別する第1のしきい値(15m)と、近距離と中距離とを区別する第2のしきい値(10m)との比較で照明モードが決定される。
ついで、決定された照明モードに基づいて光源31の駆動条件(点灯の有無および駆動電流値)を設定する処理が行われる(ST105〜ST107)。光源31の駆動条件は、照明モードごとに制御部27のROMなどに予め記憶されており、これを参照して光源31の駆動条件を設定する処理が行われる。
なお、本実施形態では、TOF法による例について説明したが、光の代わりに超音波(例えば20〜30KHz程度)を用いるようにしてもよく、また、ステレオ法や他の公知の測距方法を用いるようにしてもよい。また、本実施形態では、反射板71までの距離を算出するようにしたが、カウント値N(反射時間)から直接、照明モードを決定するようにしてもよく、さらに、カウント値Nから直接、光源31の駆動条件を求めるようにしてもよい。
また、図18(B)に示すように、これまでの説明では(図2参照)投光距離を水平方向の距離Dで説明したが、TOF法で得られる距離(反射経路長)D’は水平方向の距離Dとは厳密には異なり、両者の関係は撮像装置61の設置高さHで規定されるが、実際の照明状態に影響を及ぼすものは距離D’である。このため、第2実施形態のように距離D’をTOF法で実測する場合には距離D’に関するしきい値で照明モードを判定し、また、第1実施形態のようにユーザが照明モードを選択設定する場合には撮像装置1の設置高さHを考慮して照明モードを決定すればよい。
(第3実施形態)
前記の第2実施形態では、測定距離に基づいて照明モードを自動的に設定するにあたり、撮像装置61から被写体までの投光距離をTOF法で測定するようにしたが、以下に説明する第3実施形態では、被写体上の照明領域を撮像してその照明領域の横幅に基づいて投光距離を測定するようにしている。このため、本実施形態では、図16に示したように、投光距離をTOF法に基づいて測定する測距部62は備えていない。なお、特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図20は、第3実施形態による測距の状況を示す説明図である。撮像装置81から被写体(道路の路面)に光を照射すると、被写体上に明るく照らし出された照明領域が現れるが、この照明領域の横幅は撮像装置81からの投光距離に応じて変化する。ここで、撮像装置1の撮像倍率(特定の離間距離を前提とした場合に、所定の基準長を持つ物品を撮像したときの対応画素数)を調整しておくことで、照明領域の横幅に基づいて投光距離を取得することができ、照明領域の横幅は、被写体上の照明領域を撮像し、得られた撮像画像を制御部27で画像処理することで取得する。
具体的には、まず、照明部3の光源31を点灯させる。4つの照明グループA〜Dでは光の拡散状況が異なり、例えば拡散幅が最も狭い照明グループAの光源31を点灯させる。ついで、被写体上に出現した照明領域を撮像部2で撮像する。そして、制御部27において、撮像部2による撮像で得られた画像に対して画像処理を行うことで、被写体上の照度分布パターンを取得し、この照度分布パターンに基づいて有効照明領域を抽出して、その有効照明領域の横幅を求める。ついで、算出された有効照明領域の横幅から投光距離を求める。このとき、投光距離と照明領域の横幅との相関関係を例えばテーブルで予めROMに記憶させておき、これを参照して有効照明領域の横幅から投光距離を求める。
(第4実施形態)
前記の第1から第3の実施形態では、投光距離に応じて近距離、中距離および遠距離の照明モードに場合分けして、照明モードごとに予め設定された光源31の駆動条件(点灯の有無および駆動電流値)にしたがって光源31の出力制御を行うものとしたが、以下に説明する第4実施形態では、光源31の駆動条件が投光距離に応じて予め設定されており、投光距離に基づいて選択された駆動条件で光源31の出力制御を行うようにしている。なお、特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図21は、第4実施形態に係る光源31の電流制御の状況をグラフで示す説明図である。この図21には、図13に示した第1実施形態に係る電流制御の状況を併せて示す。
この第4実施形態では、投光距離に応じた駆動電流値を照明グループごとに予め設定しておき、測定された投光距離に応じて駆動電流値を変化させるようにしている。放射照度(パワー密度)は距離の2乗に反比例するため、距離に応じた駆動電流値を2次関数(放物線)で変化させることで、照度分布をより適切なものとすることができる。
照明グループA(光軸シフト幅Sa=0.2mm)では、近距離の場合に、第1実施形態と同様に、消灯による出力制限が行われる。一方、中距離および遠距離の場合には、投光距離が長くなるのに応じて駆動電流値が2次関数的に大きくなるように制御される。照明グループB(光軸シフト幅Sb=0.4mm)では、近距離の場合に、第1実施形態と同様に、中間の駆動電流値Midで一定の出力制限が行われる。一方、中距離および遠距離の場合には、投光距離が長くなるのに応じて駆動電流値が2次関数的に大きくなるように制御される。照明グループC(光軸シフト幅Sc=0.9mm)では、第1実施形態と同様に、投光距離に関係なく最大の駆動電流で光源31が点灯され、出力制限は行われない。照明グループD(光軸シフト幅Sd=2.7mm)では、投光距離に応じた場合分けは行われず、投光距離が長くなるのに応じて駆動電流値が2次関数的に小さくなるように制御される。
これにより、本実施形態では、第1実施形態と同様に、被写体までの距離が短い場合(近距離および中距離の照明モード)には、照明グループA(第1の照明手段)に対して出力制限が行われ、また、被写体までの距離が長い場合(遠距離照明モード)には、照明グループD(第4の照明手段)に対して出力制限が行われるため、被写体までの距離が大きく異なる場合でも、撮像領域に対応する必要照明領域を適切な照度で照明するとともに必要照明領域外の無駄な照明を抑えることができる。
また、本実施形態では、被写体までの距離が短い場合(近距離および中距離の照明モード)には、照明グループAに対して出力制限が行われる他に、照明グループDに対しても出力制限が行われるが、照明グループDに対しては照明グループAより小さな割合で出力が制限されるため、必要照明領域内の照度を確保することができる。また、被写体までの距離が長い場合(遠距離照明モード)にも、照明グループDに対して出力制限が行われる他に、照明グループAに対しても出力制限が行われるが、照明グループAに対しては照明グループDより小さな割合で出力が制限されるため、必要照明領域内の照度を確保することができる。
(第5実施形態)
前記の第1から第4の実施形態では、投光距離を測定してその投光距離に基づいて光源31の出力制御を行うものとしたが、以下に説明する第5実施形態では、被写体上の実際の照度分布を測定し、その実際の照度分布に基づいて理想的な照度分布が得られるように光源31の駆動条件(点灯の有無および駆動電流値)を調整するようにしている。なお、特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図22は、第5実施形態による照度分布測定の状況を示す説明図である。ここでは、測定結果が路面の状態(乾燥、濡れている等)に左右されないよう、所定の反射率を有する基準シート92を路面に敷設する。この基準シート92は薄い樹脂製のものを採用するとよく、これにより基準シート92上を車両が通行することを妨げずに済む。なお、基準シート81は、撮像領域より十分に大きなサイズのものを用いる。
照度分布測定では、まず、撮像装置91において照明部3の光源31を点灯させる。このとき、4つの照明グループA〜Dの全ての光源31を最大の駆動電流値で点灯させる。ついで、基準シート92を撮像部2で撮像する。そして、制御部27において、撮像部2による撮像で得られた画像に対して画像処理を行うことで、基準シート81上の照度分布パターンを取得し、この照度分布パターンに基づいて有効照明領域を抽出する。なお、この際には基準シート92の撮像を比較的長期にわたって行って、いわゆる前景を除去した画像に基づいて照度分布を求めるとよい。具体的には、撮像期間を例えば30〜60秒程度に設定し、この期間に取り込んだフレーム画像の各画素について平均値を求める。これによって、監視領域を通過する人や車といった前景の影響を低減することができる。また、このようにしても平均化による影響(前景成分の残存)が問題となる場合は、メディアンフィルタ処理を行なうことで、より外乱の影響を低減することが可能となる。
ついで、その有効照明領域における照度分布パターンと予め用意された目標パターンとの対比を行う。この対比では、両者のサイズを同一に正規化したうえ、複数画素からなるブロックに分割してその代表値(平均値)を算出し、これらの差分の平方和を評価関数とする。そして、この評価関数が最小となるように光源31の駆動条件を設定する。なお、第4実施形態で示したように光量制御を微小なステップで行う場合において、評価関数が最小となる駆動条件を求めるには、公知のアルゴリズム、例えば遺伝的アルゴリズム等を利用することができる。
ここで、光源31の駆動条件は、前記の実施形態と同様に、4つの照明グループA〜Dごとに設定すればよいが、光源31ごとに駆動条件を設定することも可能である。
なお、前記の各実施形態では、赤外光を発する光源31を用いるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、可視光を発する光源を用いることも可能である。
また、前記の各実施形態では、図5に示したように、照明部3が2つの照明ユニット41,42で構成されたものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば照明部を単一の照明ユニットで構成してもよく、この場合、光源基板やレンズアレイは1つで済む。
また、前記の各実施形態では、図5などに示したように、照明グループA〜Dで出射角度範囲を変えるため、光源31から放射される光を集光するレンズを用いて、光源およびレンズが、光源の光軸とレンズの中心軸とが相対的にずれた状態で配置されるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばレンズ以外の光学素子(例えばプリズム)を用いて出射角度範囲を変えるようにしてもよい。
また、前記の各実施形態では、図5などに示したように、複数の発光部33a〜33d(光源31およびレンズ32)を配光特性に応じて4つの照明グループA〜Dにグループ分けしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発光部を2つや3つ、あるいは4つ以上の照明グループにグループ分けすることも可能である。また、各照明グループを構成する発光部の配置位置も、図示した構成に限定されるものではない。
また、前記の各実施形態では、図5などに示したように、4つの照明グループA〜Dの全てで光源31の光軸とレンズ32の中心軸とを相対的にずらすようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば照明グループAは、被写体の中心領域を照明するものであるため、光源31の光軸とレンズ32の中心軸とを相対的にずらさない構成も可能である。
また、前記の各実施形態(第4実施形態を除く)では、図13に示したように、光源31の出力制限を行う際に、最大の駆動電流値(第1の駆動電流)より小さい第2の駆動電流値で点灯させる場合と消灯させる場合との2段階に切り替えるものしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、最大の駆動電流値より小さい複数の駆動電流値で光源31の出力制限を多段階に行うようにしてもよい。
また、前記の各実施形態(第4実施形態を除く)では、光源31の出力制限を行う際に光源31に印加される第2の駆動電流値を、第1の駆動電流値である最大の駆動電流値Maxの1/2となる中間の駆動電流値Midとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、光源31の発光特性や配置数などに応じて第2の駆動電流値を適宜に設定すればよい。
また、前記の各実施形態では、光源31に、駆動電流値を増減することで出力(発光輝度)を変更することができるものを採用して、最大出力で点灯させる他に、中間出力で点灯させたり、あるいは最大出力より低い任意の出力で点灯させて、照明状態の適正化を図るようにしたが、このような駆動電流値による出力制御の他に、照明グループ内の点灯させる光源31の数を変更する出力制御も可能であり、さらに、このような点灯光源数による出力制御と駆動電流値による出力制御とを組み合わせることも可能である。
また、前記の各実施形態では、撮像装置を地上から所定高さに設置した場合を説明したが、設置する場所は適宜変更が可能である。地上のような静止体に限らず、移動体に設置することも可能である。移動体として、車の車内または車外に搭載してもよい。さらに撮像装置を携帯可能として、人が手に持ち使用するようにしてもよい。